○近藤忠孝君 私は、
日本共産党を代表して、
日本国有鉄道の
経営する
事業の
運営の
改善のために
昭和六十一年度において緊急に講ずべき
特別措置に関する
法律案に対し、
反対の
討論を行います。
反対理由の第一は、本
法案が、無謀な投資計画を
国鉄に押しつけ、その
経営を危機に陥れてきた歴代自民党
政府の
責任を一切棚上げし、専ら分割・民営に向けて
国鉄解体を強行するための地ならし
法案であるという点であります。
百十四年という
国鉄の長い歴史の中で、
国鉄が赤字に陥ったのは一九七一年に至ってのことであります。当時二兆六千億円程度であった
国鉄の
長期債務は今日二十兆円をはるかに超え、
経営危機の最大の
原因になっておるのであります。この巨額の
長期債務の
原因となった過大な設備投資については、そもそも中曽根総理自身、一九六九年九月、第二次佐藤
内閣の運輸大臣として、みずから主宰した
国鉄財政再建推進
会議の
意見書に基づいて、十年間の
国鉄の設備投資枠を三兆七千億円に抑制するとの閣議決定がなされていたのであります。ところが一九七三年、中曽根総理自身が今度は通産大臣として入閣していた田中
内閣になると、この投資抑制方針を投げ捨て、
日本列島改造論に基づき設備投資の規模を十兆五千億円へと一挙に三倍化する暴挙を行ったのであります。
それ以来
国鉄は、
政府・自民党から、乱脈経理で工事費を当初予定の三倍にも膨張させてきた上越新幹線や東北新幹線、いまだに使い道も決まらない青函トンネル工事など、採算無視の莫大な投資計画を次々と押しつけられ、ついに今日の財政破局にまで突き進んできたのであります。それにもかかわらず、
中曽根内閣が、総理みずからが直接かかわってきた
国鉄の財政破綻の
政府の
責任を棚に上げ、分割・民営化のための
国鉄再建監理
委員会の答申をにしきの御旗として、
国鉄解体のための一連の
法案を提出し、
国鉄の解体と地方ローカル線の切り捨てなどを強行することは断じて許せないのであります。本
法案はまさにそのための地ならしにすぎず、到底認めることはできないものであります。
反対理由の第二は、本
法案は、二万人に上るいわゆる希望
退職という名の首切りを強行し、
労働者に重大な犠牲を強いることであります。
そもそもその
理由とされている余剰人員なるものは、
国鉄の解体、分割・民営化を進めるため当局によってつくり出されたものであり、
国民本位の真の
国鉄再建を図るならば全く必要がなくなるものであることであります。
国鉄は、一九八一年以来、動力車の一人乗務、列車係の廃止、無人駅や無人ホーム、線路見回りの間引きや保守の手抜き、車両検修周期の延伸、出改札、検修の部外
委託、下請化、過密ダイヤの超過勤務労働などの押しつけによって意図的に余剰人員をつくり出すとともに、この五年間でも既に十五万四千人の人減らし合理化を強行しておるのであります。
国鉄再建監理
委員会の答申ではさらに九万三千人の首切りが計画されており、本
法案はその先駆けとして緊急に二万人もの
退職を強要しようとするものであります。このような短期間における大量の人減らし合理化が、
国鉄労働者の人権と誇りを著しく傷つけ、大量公共輸送機関の安全とサービスの確保に重大な支障を来すものであることは
明白であります。昨年八月の日航機墜落
事故を想起するまでもなく、
国鉄の人減らし合理化が重大な
事故の
発生につながる危険をはらむものであることをこの際厳しく警告するものであります。
今、
国鉄の職場では、分割・民営化による新会社への移行を前提として、進路調査や広域配転、勤務評定による選別作業など、いわゆる余剰人員対策が
既成事実として進められております。その
やり方がいかに過酷なものであるか、
国鉄労働者の自殺が多発している事実が如実に物語っているのであります。しかも、
国鉄当局はこれに対し、「
職員自殺の
報告方について」という統一書式の
報告書作成まで指示しており、自殺を当然視して、これを前提とするという驚くべきことが起きているのであります。我が党は、このように非情で人道に反する人減らし策の強行に厳しく抗議するものであります。
本
法案は、このような事態を一層
促進するため、危険なホーム要員の廃止など必要な要員配置までを机上計算で一方的に削減し、それを余剰人員と称して希望
退職という名目で首切りを行うものであり、絶対に認められないのであります。しかも、希望
退職を募るといいながら、労働条件の根幹にかかわる首切り雇用問題や広域配転という労働条件の重大な変更について労働組合との団体交渉さえ認めず、職場では差別や
処分の乱発で専制的支配をつくり出し、問答無用式に合理化を強行しようとしておるのであります。このような事態は、一九四九年、アメリカ軍占領下の悪名高い定員法首切り以上に
労働者の権利を侵害し、憲法二十八条、公労法八条を真っ向からじゅうりんし、団結権を破壊する違法な不当労働
行為であって、断じて許せないのであります。
反対理由の第三は、本
法律案に盛り込まれた
長期債務対策が、
国民の求める真の
国鉄再建のためでなく、分割・民営化という名の
国鉄解体のためのものにすぎず、必要な抜本的解決策が全くないということであります。
国鉄財政再建の基本は、今日の
経営危機をもたらした過大な設備投資による
長期累積
債務の巨大化と、それを引き起こした歴代自民党
政府と財界の
責任をまず
国民の前に明確にし、その上に立って、
政府の
責任で
長期債務の抜本的解決策を示すことであります。十六兆円を超える巨額の
長期債務を
国民の
負担に回すなど、もってのほかでありますが、言われているように、このため毎年国の予算で一兆数千億円を今後二十五年間にもわたって支出するというのであれば、これを必要な国の助成として現在の
国鉄に対して行うなら、
国鉄当局の試算でも
国鉄経営は大きく
健全経営に向かって前進することは明らかであります。分割・民営化による
国鉄解体の方向ではなく、まさに現在の国有
鉄道のままで再建することは十分可能なのであります。
ところが、今回の
措置は、
国鉄が
資金運用部から借り入れた
長期債務のうち、元利償還を棚上げされている五兆五百九十九億円を
一般会計からの借り入れに切りかえ、将来とも無
利子化するものであって、結局は
国民に十六兆七千億円の
負担を押しつける
国鉄再建監理
委員会の計画を
既成事実化する以外の何物でもありません。
以上、本
法案は、真の
国鉄再建とは無縁の
国鉄解体を
促進するためのものであり、
国鉄労働者に耐えがたい苦痛を与える首切り
法案にほかならないのであります。かかる重要
法案を
委員会で十分な
審議を尽くすことなく強行した
やり方に断固抗議し、
反対討論を終わります。(
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