○村沢牧君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま
議題となりました
昭和六十一年度の
財源確保法案について
反対の
討論を行います。
我が国の財政
経済を取り巻く
環境は極めて厳しく、東京サミットにおいて円高抑制のために何らかの合意を取りづけようとした中曽根総理のもくろみはもろくも失敗に終わり、逆に円高防止の協調介入の方途が閉ざされ、
我が国の大幅な貿易黒
字の是正をねらった
相互監視
制度の強化に合意するなど、東京サミットに照準を合わせて行ってきたこれまでの
政府の
経済運営が完全に行き詰まり、その結果、円高デフレの様相をますます強くし、中小企業と
国民生活に大きな不安を与えています。
一方、
昭和六十一年度の経常収支黒字幅は八百億ドルに達する
規模になると見込まれ、対外摩擦の一層の激化が危惧されております。
政府は、経常収支の不均衡是正を
国民的
政策目標として掲げているとはいうものの、それを確実に達成するに必要な具体的な実行手段とそのタイムスケジュールについては何ら提示しておらず、内需
拡大、構造調整に実を上げることができなければ、各国の失望をまた大きくし、
我が国への批判も極めて厳しいものになることは自明のことであります。
次に問題としなければならないのは、
財政運営の基本姿勢についてであります。
対外
経済摩擦の緩和、円高デフレの解消、大幅減税、内需
拡大とともに、財政再建が
我が国の当面する重大な
政策課題であることは改めて申すまでもありませんが、ただ緊縮予算を組み、しかも国庫負担繰り延べの粉飾予算を毎年繰り返していたのでは財政再建の目標に到達し得ないことは、中曽根
内閣が五年間にわたって証明してきたところであります。六十五年度赤字公債依存体質脱却という目標の達成は今やだれの目にも実現不可能となってきていますが、
政府は目標達成のために必要な具体的方策を示さず、単に脱却方針の堅持を空念仏のごとく繰り返すばかりであります。
また、円高不況に対する適切な対策、内需
拡大の決め手もなく、補助金の一括削減、与野党幹事長・書記長合意による減税実施に
政府・自民党の誠意が見られないなど、前途に展望を持たせるものは何一つありません。
日本社会党は、このように一層混迷を深め、先行きに対する展望を見失い、いたずらに
国民経済に不安を与えている中曽根
内閣の
財政運営を厳しく追及するとともに、
経済、財政
政策の転換を強く求めるものであります。
次に、本
法律案に関し、具体的な
反対の
理由を申し述べます。
中曽根
内閣は、国の一般会計予算において一般歳出を四年連続して伸び率ゼロに抑えたり、公債依存度を引き下げることで
国民に対してはあたかも行財政改革が進められているかのように見せかけています。しかし、それは、本
法律案によって講じようとする国債費定率繰り入れの停止による
財源の大幅な先食いや
政府管掌健康保険への国庫負担繰り延べのほか、国庫補助率引き下げによる地方への負担転嫁、厚生
年金への国庫負担繰り延べ等の広
範囲にわたるツケ回しによって、形の上だけのつじつま合わせにすぎないのであります。これらの
措置は、財政法の根幹を踏みにじり、財政全体の姿を不明瞭にして財政
制度を素乱すること甚だしいと言わなければなりません。
六十一年度の国債残高は百四十三兆円余にもなり、国債の元利償還額が国債発行収入金を上回っていることは、もはや国債発行は新規
財源調達としての
機能を果たし得なくなっていることであり、文字どおり借金を返すために新たな借金をするという極めて異常な事態に至っていることは全くもって許せないことであります。このような財政の異常事態を招いた
政府の責任は極めて重大であると言わなければなりません。
次は、減債基金
制度にかかわる問題であります。
政府は五十七年度より連続して減債基金
制度の根幹とも言うべき国債費定率繰り入れを停止するという安易な収支均衡策を強行し、その結果、国債整理基金の資金枯渇という危機的事態を招いております。六十一年度においても定率繰り入れを停止したまま不足分を予算繰り入れで補てんし、さらにNTT株式売却収入金を計上して現状を糊塗しようとしておりますが、このような場当たり的な償還
財源調達は無責任きわまるものと言わなければなりません。その上
政府は、現在の国債償還ルールを変更し、全額借換債の発行による国債償還という、いわば元本は償還しない実質上の永久国債の構想を描いていることは、一層
国民の国債に対する不安を増長させることになります。次は、本格的な国債償還時代到来に即した国債管理
政策の確立の問題であります。
政府は六十年度に一兆円の短期借換国債を発行しており、また今後も長短金利
状況を見ながら年度内償還の短期国債を発行することとしていますが、短期国債の増発は国債償還費を加重させるとともに、国債の平均残存年数を短縮化させ、金融
政策の運営を困難にさせるという重大な問題を抱えているにもかかわらず、依然として場当たり的な国債管理に終始しておることは、これまた容認することのできないところであります。
最後に、
政府管掌健康保険の国庫負担繰り延べについてであります。
本来、特別会計健康勘定に黒字が生ずるならば、
保険料率の引き下げや給付
改善を第一義的に考えるのが当然でありますが、今回のように収支残があるからといって国が吸い上げ、国庫負担を減額するということに至っては、何のために国庫負担率を法定し、被保険者、
事業主、国の負担割合を定めてきたのか、また保険としての経営
努力が何の意味もなくなるのであって、このような
措置は全くもって邪道と言わざるを得ません。我が党は、
委員会において、
政府が行っている場当たり的でその場を取り繕うよう
なつじつま合わせ的な予算編成を改めて、確固たる財政再建の具体的方策、あるいは将来の高齢化社会において財政の占める役割の長期的ビジョンを
国民に明示することを強く指摘し、論議を重ねてまいりましたが、しかるに
政府は、これに対して何一つ明確な誠意ある答弁をなし得なかったことはまことに遺憾であります。ここに猛省を促して、私の
反対討論といたします。(
拍手)