○片山甚市君 私は、
日本社会党を代表し、
研究交流促進法案に対し反対の討論を行うものであります。
まず、
本法案の立法
趣旨についてでありますが、
我が国が、来るべき二十一世紀に向けて、人類の平和と福祉の向上を願い、豊かな国づくりを目指す中で、国際
社会に寄与する科学技術の振興とその研究交流が進められるべきであり、いやしくも軍事利用を
目的とする科学技術の研究交流などは、平和
憲法のもとで絶対に許されるべきものでないことは言をまちません。
〔副
議長退席、
議長着席〕
しかるに、
本法案のねらいは、中曽根
総理が大義名分とする第二
臨調答申や
行革審答申が要求した民間活力を前提に、産官学の連携
強化により、特定企業、大企業のハイテク研究開発に国の資金、施設、研究者、特許等を投入させるに加え、産官学軍の共同研究による科学技術の軍事利用とその
推進体制づくりの
意図が、
審議を通じて一層明白になったと断ぜざるを得ないのであります。既に
日本学術
会議が科学研究
基本法及び研究公務員特例法など
基本法
制定を
政府に勧告していることを見ても、
本法案が平和
憲法の理念に基づいた真の科学技術振興及び研究交流の促進にはそぐわない異質のものであることは明らかであります。
本院における科学技術特別委員会の
審議を通じても多くの
問題点が指摘されましたが、いずれも
国民の疑惑が十分に解明されてはいないのであります。ここで幾つかの
問題点を挙げてみますと、まず
本法案には、平和
目的、民主的運営、公開の原則という最も重要な文言が明定されていないばかりか、
本法案策定に至る二月六日の第四次案までは入っていなかった。防衛庁の研究
機関が二月二十五日突如として
本法案の対象とされ、自衛隊員が他の
国家公務員と同等の立場で加わることによって産官学軍の共同研究が公然と
推進することができる道を開いたことであります。一方で、人文科学のみにかかわるものは研究交流の対象から除いたままであり、科学諸部門の調和ある発展を図るという観点の全く欠如した
法案なのであります。
このことによって、戦後三十有余年にわたり、平和
憲法のもとに、科学技術が平和利用に限るとされてきた研究開発上の大原則を放棄し、今日的、国際的課題である宇宙開発、特にSDI、すなわち宇宙戦争構想と言える危険な
政策に対しても無原則に追随する危険な側面を持ち、こうした研究開発への参加が、宇宙の開発と利用は平和の
目的に限るとする
国会決議に真っ向から反するものであり、立法府として重大な関心を持つべき問題であります。まさに、
我が国の歩むべき平和
国家としての未来をもゆがめる危険な
法案と言わざるを得ないのであります。我が党が衆議院において、研究交流に関する
基本方針として、平和
目的の限定、民主的な運営、研究者の自主性の確保及び公開を明記した修正案を提案したのも、これらの原則を正しく継承すべき必然性があったからにほかなりません。
また、共同研究という名目のもとに、防衛庁と民間企業が共同研究しているところに国立の試験研究
機関が加わることは、結局のところ、民間企業を媒体として防衛庁と国の
機関が共同して軍事研究を行うことであり、平和
目的に限定した研究を担保することはできず、出向先での研究公務員が結果的に特定企業に奉仕することによって、その地位や
各省庁
設置法の
目的の範囲内でのみ研究に従事するという
任務からも逸脱し、
国民全体に奉仕するという
国家公務員の立場、すなわち
憲法第十五条の
規定あるいは
国家公務員法第九十六条の
規定に抵触することによってその
基本的立場が問われることになります。
国際技術交流、共同研究では、例えば
アメリカとの共同研究に参加した研究公務員が、途中で研究
意図が軍事研究に属するものと判明したからといって、研究者の
意思で拒否できる自由が保障されていません。当該国の機密保持を理由に一方的に拘束することは
我が国の公務員の地位を侵すことであり、さらに
本法案第五条に言う「当該共同研究等への従事が当該共同研究等の効率的実施に特に資するものとして政令で定める要件」とは他の
関係省庁をすべて拘束することであり、政令の
内容についてもこれまでに慎重な協議がなされた形跡もなく、その基準も不明確なままで明定されてはいないのであります。このような欠陥
法案をどうして認められましょうか。
私は、科学技術交流、共同研究が真の
目的を達成するためには、次の諸点が明確にされることが大前提であると
考えます。
その一は、研究交流、共同研究は、相互の自主性の尊重、対等平等、公開の原則を保障すべきこと。その二は、
憲法の平和主義、学術研究の自由公務員の
国民全体への奉仕者であることの諸
規定を遵守し、軍事研究に国の研究
機関、研究公務員を利用しないこと、この
法律からは防衛庁と自衛隊員を除くこと。その三は、研究交流、共同研究を進めるに当たっては、公共性のあるものに限定し、
設置目的の範囲を超える研究交流は行わないこと。
その四は、研究者の自主性を尊重し、強制は絶対に行わないこと、研究者に拒否する
権利を保障すること。その五は、国有施設の使用に際しては、当該研究
機関の運営に圧迫を来さないようにすること、また、運営経費等の当該研究
機関への
還元を行うこと。
以上の諸点が法制化の要件であることを指摘し、私は、科学の地位に関するユネスコ勧告及び
日本学術
会議の一九七六年勧告に基づく科学技術
基本法を速やかに
制定するとともに、研究公務員の身分保障を定める特例法を法制化すべきであります。
本法案の撤回を求め、反対の討論を終わります。(
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