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国務大臣(
中曽根康弘君) 多田議員に
お答えをいたします。
まず、
サミットについて御
質問でございますが、私は、現在
日本が
世界的にどう見られているか、どういう国際的地位にあるかということを
国民の
皆さんにこの
機会にお訴え申し上げたいと思うのです。
今までややもすれば、
日本人は利己主義的で、自分で汗や血は出さないで、いつも要領よく立ち回って金もうけをしているアンフェアな
国民である、そういう印象を持たれておった。ですから、この議場におきましても、アンフェアという
言葉を
日本語に直せばインチキという
意味です、そういうような、
日本人が不名誉な
言葉を浴びせられるということは耐えられないことであって、断じてそういう
言葉を消させなければならぬと、そういうふうに私は申し上げてきたところであります。
日本の名誉と地位というものをここでもう一回
考えてみなければならぬ。その場合には、
サミットの場合におきましてもこれを痛み分けでやるべきである。
日本だけが勝手にここでまたうまいことをしようというようなことをやって
サミットがうまくいくはずはないのであります。
そういう
意味において、今回は痛み分けの
サミットという形で、
アメリカの
レーガン大統領も
保護主義法案と闘う、そういう重い荷を背負って帰っておるわけです。イタリーのクラウン首相は、我々の要望に対して、制限しているクォータを倍に上げます、ふやしますと、そう言って我々にも
約束をして実行することになりました。そういうように、
各国とも痛み分けをやりながら、
世界経済の順調な
発展、それから
発展途上国や債務国のためにこの際思い切って汗を出そうと、そういう
約束をしたのでありまして、そういう
意味におきましては、私は
サミットは
実質的には大きく前進しているし、
世界のインフレなき持続的
拡大に向かって前進する大きな動機、転機を得た、そのように
考えておることなのであります。
円高の問題がよく言われますが、
サミットというのは御存じのように、さっきから申し上げますように、一般
政策を話し合う
場所であって、マルクであるとかポンドであるとか円であるとか、そういう
個別通貨を話す
場所ではないのです。しかし私は、
各国の
経済情勢を述べるという場がありますから、その
場所で、この円の急上昇がいかに
日本の
国民経済に大きな被害を与えているか、特にこれによってドルと連係している韓国や台湾や香港が
日本と比べて四〇%も割安になっているものですから、これが
日本に殺到している。鉄鋼においても、もはや韓国の鉄鋼は
日本に相当入ってきている。こういう実情も述べて、
日本の
中小企業の苦難や現状をよく訴えて、認識を深めた。したがって、
日本を
非難するとか、いわゆる
日本問題、
ジャパンプロブレムというような
言葉は一切なかった。みんなで痛み分けをしながら、みんなでまあまあよかったと言って帰ってくれたのですから、これは成功じゃないですか。私はそう確信しておる。少なくとも
日本の名誉、
日本人に対する誤解というものは明らかにこれで解消しつつあると私は確信しておるものなのでございます。
次に、今後の
経済運営の問題でございますが、四月八日に決定した総合
経済対策を着実に実行してまいります。このためには、内外の
経済動向、国際
通貨情勢等を注目しつつ、適切な
内需刺激策等もこれから実行してまいるつもりでおります。
円高の問題につきましては、
経済条件を適切に反映した
為替レートというものが長続きをするのが好ましい
状況です。現在の急激な円上昇というものは決して
経済条件を適切に反映しているものとは
考えない、前から申し上げているとおりです。しかし、そういうことに対してどういう対処をするかということは
日本銀行やその他専門機関が実行することでございますから、我々はそれを、特に
日本銀行を干渉しようとは思いません。思いませんけれ
ども、今申し上げたように適切とは思っておらぬと。そういう
意味におきまして、我々は適当な時期に適当な
措置をするように
大蔵大臣等を通じて要請しておるところなのでございます。今後とも、この
経済条件を反映した適正な円レートというものを維持するように努力してまいる
考えております。特に今回、
サミットにおきまして、為替市場に介入するとの
約束を再確認しました。これを大いに今後活用してまいりたいと思っておるのでございます。ドイツなんかも
日本と同じような立場にありまして、そういう点においては、ドイツの
総理大臣や
大蔵大臣も非常に共鳴していたところなのでございます。
公定歩合については、四月二十一日から〇・五%引き下げまして、金利水準というものは全般的に低下が進んでおる。ただ、今このようにコンピューターが発達しておりまして、数字の入れかえをやるという点については相当な時間がかかるわけです。そういう
意味で、若干の時間をいただかないというと末端にまでその恩恵は及ばない。今それをやっている最中でございます。
郵貯金利につきましては、先般の第三次引き下げに伴いまして、今月の十九日からさらに引き下げる、そういう予定でございます。この郵貯金利の問題については、従来、公定歩合その他の金利の動向や
経済、金融情勢を総合的に勘案して決めておりまして、今後ともこの方針に従って適切かつ機動的に運用していくつもりでございます。
次に、
経済摩擦の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、
各国がおのおの痛み分けで荷物を背負って帰る。我々にとって一番大きな問題は、
アメリカの
保護主義を防圧して、今議会に出ているオムニバス法案と言われておる法案を成立させないということなのであります。そういうようにして
保護主義を防圧すると同時に、
貿易制限を軽減、撤廃する、そして
ニューラウンドを推進する、そういうコミットメントを我々はここで獲得したのでありまして、これをさらに推進してまいりたいと思っておるところであります。また、一面におきましては、現在の急激な
円高の是正というものを、適正レートにこれを実現していくというそういう
考え方と同時に、
内需の
拡大を図りつつ、積極的な市場の開放や輸入の促進等についても適切に進めてまいりたいと
考えておる次第でございます。
六十五
年度赤字公債依存体質からの脱却の問題は、先ほど申し上げましたように、この間の行革審の答申というものも、臨調答申を基調にして、それを基調にしつつ機動的に運用するということを認められておりまするので、その方針に従って
考えてまいりたい。しかし、六十五
年度赤字公債依存体質脱却というこの旗をおろしますと、やはり人間のことですから、安易な
要求も出るし、
経済にも締まりがなくなってくる、そういう危険性もございまして、今までの努力が水泡に帰さないように、我々はこの目標のもとに努力してまいりたいと思うのでございます。
補正予算につきましては、
公共事業の前倒しを今まで最大
規模行うと言っておりますがら、秋になって仕事がなくなるという情勢も
考えられない
こともない、そういうことも
考えまして、
補正予算の検討もあり得る、そういうことも申し上げておるわけなのでございます。これらは将来の検討課題として我々は慎重に検討してまいりたいと
考えておるところでございます。いずれにせよ、
中小企業対策は急を要しますから、先ほど申し上げましたように、けさの閣議でも関係各
大臣に、至急対策を
提出し、官房長官が取りまとめるようにと指示しておいたところなのでございます。
次に、
内需拡大と
財政の問題でございますが、既に
公共事業については昨年の三・七%を四・三%に増大すると同時に、さらに
規制解除あるいは大型
公共事業の実施あるいは地方単独事業の推進、地方の公債の枠を広げるとか、そういうようなさまざまな
政策をこれから推進いたしまして、所期の目的を達するように努力してまいりたいと思うのでございます。
残余の答弁は関係
大臣がいたします。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕