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稲村稔夫君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
提案されました
研究交流促進法案について、
総理並びに
科学技術庁長官に質問したいと存じますが、本論に入ります前に、
総理にぜひお尋ねしておきたいことがございます。
それは、先ほどのニュースで、
自民党の稻村佐近
四郎衆議院議員が
撚糸工連の問題で
任意出頭を求められ、取り調べが始まったと報ぜられております。この
撚糸工連の問題については、我が党も
予算委員会でこれを鋭く追及をしてきたところでございますけれども、こうした
政治家への波及というものは、それこそ
議員として襟を正していかなければならない問題だというふうにも思います。同時に、これが表面化いたしましてからもうかなりの日時が
経過をしているわけでありますが、同
議員は、
総裁派閥にも所属をしているそうでございますし、これまでの
経過の中でも、私は、襟を正したきちんとした対応を本来しておられれば、もっと早く問題が処理できたのではないかとも考えられるわけであります。そういう
意味で、
自民党総裁を兼ねておられます
総理、この問題をどのように考えておられますか、そのお考えを聞きたいわけであります。
私は、念のために申し添えておきますが、遠い先祖ではあるいはつながっておるかどうかわかりませんけれども、私も名字が同じでありますから大変迷惑をしております。そのこともひとつよろしくお願いしたいと存じます。
そこで、
法案の
内容について御質問申し上げる前に、またさらに
総理に伺っておきたいと存じます。
それは、
我が国における
科学技術の
研究について
政府としてはどのような
基本的観点を持っておられるかということであります。
私は、
我が国においては、
学問としての
科学、あるいはその
学問を
利用して社会に貢献するために行われる
科学技術の
研究というものは、
平和目的と
利用の
範囲のもとに、
研究者にその
研究の自由が保障されるというのが
我が国の
原則であると思いますが、その点、
総理はどのように考えておられるか、まずお聞きをしておきたいと思います。
そこで、
提案をされた
法案についてであります。
まず第一は、本
法案がその
対象としている
国立試験研究機関の
研究職の
取り扱いについて、
整合性を欠いているのはなぜかという点であります。
一方では、
教育公務員特例法の
適用を受ける
大学関係の
研究者がその
対象から除外されておりまして、もう一方では、
防衛庁設置法による
自衛官の
研究者が
適用の
対象に加えられているわけであります。もしも、
大学を除く
理由が、
身分法第三条及び第四条については既に
特別立法があり、第五条については
臨教審答申を待って検討することを予定しているということにあるとすれば、
大学の場合とは全く違うといたしましても、特異な
身分にある
自衛官について、なぜ本
法案から除外して別の対策が立てられなかったのか。別に
法案を用意して
国会に
提出するなど、もっと他に適切な
方策がとられてしかるべきだったと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
マスコミの報ずるところでは、
科学技術庁における
原案検討の
経過の中で、初めの
原案の段階では
一般職の
研究者のみを
対象にしたものだったようでありますけれども、なぜか
最終案には
自衛官の
研究者が
対象に加えられたということであります。そしてそれは、
総理の
制服組を排除する
理由はないとの
判断によるとも伝えられているわけであります。
総理、それがもし事実であるとすれば、あなたはなぜ、特別な
身分の
公務員について一方は除外し、もう一方は加えて、あえて
法案の
整合性を欠いたのか、その
理由を明確にしていただきたい。
また、
科学技術庁長官は
制服組を含むことには
反対だったとも伝えられておりますが、
整合性を欠いているという
観点も含めて、
自衛官の
研究を行う者というものを
対象に加えたことをどうとらえておられるのか、
科学技術庁長官の御
見解が伺いたいのであります。
次に、
自衛官である
研究者の行う
研究の性格についてどう考えているか、伺いたいのであります。
私は、
自衛官の行う
研究というものは、そもそもが
平和目的と
利用という
範囲からはみ出すものにほかならないと思います。そうであれば、本
法案が
科学技術庁所管で
提案されるのはおかしいと思います。
科学技術庁設置法の
趣旨にも反するということになると思うからであります。
自衛官という
身分と
職責は、
軍事目的あるいは
軍事的応用に全く
関係ない
研究に従事することができない
立場にあるはずだからであります。もし
軍事に全く
関係のない
研究を進めようとするときは、
自衛官という
身分と
職責を離れなければならないということになるのではないでしょうか。もし基礎的な知識を身につけ、
基礎的技術を習得するという
範囲であれば、それは学習であり、訓練と言うべきであります。いわゆる
研究の
範囲には入らないものだと思うのであります。
さらに、もしこれが
外国との
共同研究に
自衛官が
参加できる道を開くとすれば、問題はもっと重大だと思うのであります。
平和目的と
利用という
我が国と同じような制約のない
外国において、
自衛官の
研究者の
参加を受け入れる
共同研究というのはどういうものでありましょうか。必ず
軍事目的と結びついていると言えましょう。この場合、
軍事目的と
関係のない
自衛官との
共同研究とか、あるいは
基礎技術を身につけるだけの
共同研究などというものは事実上あり得ないのではないでしょうか。とすれば、
外国との
共同研究が
我が国憲法に反しかねない、ゆゆしき方向に道を開くものになりかねないという危惧を持つものであります。この点について、
科学技術庁長官並びに
総理の御
見解を伺いたいのであります。
第三は、これも
原案にはなかったと言われておりますが、第十条の「
配慮事項」なるものは、これが閣議によってつけ加えられたと言われていることであります。
それでは、もし
自衛官の
研究者とともに
一般職の
研究者が加わって
外国との
共同研究に
参加した場合に、一体どうなるでありましょうか。
自衛官の
参加する
共同研究、
軍事目的があるとすれば、その国の
軍事機密の網にその
一般職の
研究者も取り込まれてしまうという
可能性が多分にあるのではないでしょうか。極めて重大だと思うのであります。
その場合、さらに、「
条約その他の
国際約束を誠実に履行すべき
義務」とこの「
配慮事項」には書かれているわけでありますが、それとのかかわりで、
我が国の
憲法、諸
法律に
優先をして
外国の
機密保護義務が生かされるとしたら、これも極めて重大であります。この条文の後段で、たとえ国際平和と安全について特別の
配慮ということがうたわれているといたしましても、それが
意味のない
空文句になってしまう危険があります。なぜならば、平和と安全ということに関しては、時の
権力者に都合のよい解釈が間々されるからであります。かつて
東条英機が、東洋平和のためという口実で戦争を推し進めたという歴史的事実を考えていただき、
総理の御
見解をお聞かせいただきたいと存じます。
総理、これまで私がそれぞれお伺いしてきた点は、
自衛官の
研究者をあえて本
法案の
対象者として加えられたことに由来する
懸念に基づく疑問にほかなりません。それでもなお
制服組を排除する
理由はないとおっしゃるならば、それこそこの
法案は、アメリカの要請にこたえて、
SDI計画に
参加するための布石ではないかと言われてもやむを得ないのではないでしょうか。
SDIについて言えば、これへの
参加は
我が国の
憲法にかかわる問題でもさえありますし、
宇宙開発にかかわる
平和利用に限定した
国会の意思にも反することであります。さらに、
国民世論に背を向けるものであると断ぜざるを得ないのであります。
日本学術会議平和問題研究連絡委員会が、
SDI研究と
日本の
参加に
反対する約千七百人の
物理学者の署名で、同
委員会が検討したことそのこと自体、そしてその
委員会の
報告の中で、深い
憂慮の念を披瀝するとしていることを初めといたしまして、今多くの
反対、
憂慮の声が上がってきているのであります。
また、
SDI研究についてのアメリカと西ドイツ間の
協定は、我々に
SDI研究参加の
意味するものを教えてくれていると思います。
研究協力に関する
協定と技術移転に関する
協定というこの二つの
協定が両国間で結ばれていると言われますけれども、しかし特許権、
利用権についてはすべてアメリカの側に属するということになっていると言われております。そして、それがさらにアメリカの
軍事機密の厚いベールに包まれてしまうということになれば、こう考えてまいりますと問題点は明らかではありませんか。そこで
総理、ここで明確に
SDI研究への
参加はないということを明らかにしていただけませんか。さもなければ、あなたの答弁が能弁であればあるほど心配はますます高くなってくる、こういうことになるのではないかと思います。いかがでありましょうか。
最後に、国と
民間との
共同研究、
委託研究について
科学技術庁長官の
見解を伺います。
この
法案によって、国及び国家
公務員が特定の私企業の利益のために奉仕する傾向が生まれませんでしょうか。確かに、
研究に従事をする人たちが自由に、
民間、
国立を問わず
交流することというのは大切なことでありますけれども、同時に、もしこうした私企業の利益のために奉仕するなどという傾向が今度の
法案によって起こるといたしましたら、
憲法に
規定をされました、「
公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」としている
公務員の基本的任務にかかわる重大問題になると思うわけであります。
法案提出の直接の責任を持つ
科学技術庁長官の御答弁を求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕