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青木薪次君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました国の
補助金等の
臨時特例等に関する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に対し質問いたします。
まず、過日の
日米会談について伺います。
中曽根総理は、先週末、
サミット調整と
経済摩擦解消を
理由に訪米されました。キャンプ・デービッドでのロン・
ヤス会談と歓待は、
派手好みの
総理にとって満足すべきものであったでありましょう。しかし、
会談を通じて、
中曽根総理自身が米国に約束し、背負った課題は極めて重いと言わざるを得ません。
総理は、いわゆる
前川レポートに沿い、
日本の
経済体質を
輸出依存から
内需中心、
製品輸入拡大の方向に改めることを約束し、
貿易黒字の縮小と
輸入志向型の
経済構造に向けて、試練を受けて立つ決意を表明されたのであります。
しかし、
中曽根総理が公約した
経済政策はほとんど達成されておりません。
内需主導経済の
移行への失敗はもちろん、
財政再建の
行き詰まり等内外の不信を買ってまいりました。今回の
経済構造の
調整、
体質転換はさらに奥深く、多くの
中小企業や
農業を初め、
石炭産業等に大きな打撃と出血を求めている問題であり、言うべくして困難なことは過去の例に照らし明らかであります。任期残すところ七カ月の
中曽根総理に、果たして重大な
国際公約を実行し、かつ指導する自信がおありかどうかお伺いするとともに、具体的な
政策手段と
方法をお示し願いたいのであります。
レーガン大統領は、
日米経済摩擦に関連し、半導体を初め、たばこ、ワインの
市場開放を要求し、
輸送機器関連分野については
MOSS協議を提起しましたが、いずれも
日本にとって不利なものであり、
政府は拒否すべきだと思いますが、あわせて答弁してください。
一方で、
総理、
外務大臣は、国会で慎重な姿勢を見せていたSDIについて、従来の「
研究に理解を示す」ことから発展し、「
政府部内で十分に相談する」と前向きの
発言をしたと言われますが、真実はどうなのか、今までの方針を変えたのか、明確に答弁してください。
総理、平家物語に「衣の袖から鎧が見える」という言葉があります。戦後最もタカ派である
中曽根総理は、オーストラリア、ニュージーランドなど、太平洋戦争で重大な影響を受けた国々の首脳がSDIに対する拒否の選択をしています、このこととあわせ、平和憲法を守るべき立場の
総理としてどう考えているか答弁してください。
さて、行政
改革を旗印に政権を担当し三年余、
中曽根総理の最大の政治課題である
財政再建計画は破綻に追い込まれております。そして、
計画達成の目標を六十五
年度に後送りし、毎
年度の赤字公債の減額幅を一兆円に下方
修正したにもかかわらず、過去三年間の赤字公債の減額累計は九千億円に達しないのが現実であります。
政府は、公約どおり
財政再建を達成しようとすれば、今後毎
年度一兆三千億円以上の赤字公債の減額が必要でありまするが、実行不可能なことはだれの目にも明らかであり、
政府の公約はまさに絵にかいたもちであります。しかして、
政府公約を破綻に追い込んだ原因が、
財政再建を推進したはずの
中曽根総理の
財政政策にあったことは皮肉と言わなければならぬと思うのであります。
五十八
年度以来、歳出削減一本やりの政策
運営は、五百億ドルを超える経常黒字を突出させて海外との経済摩擦を激化させる一方、内需を抑制して税の自然増収率の低下をもたらして
財政再建の推進力を奪ったのであります。歳出削減に偏った
財政再建策は角を矯めて牛を殺したのであります。硬直的
財政運営に対する批判は、野党だけでなく与党内部にさえ巻き起こっておりますが、
中曽根総理は、あくまでも
昭和六十五
年度赤字公債脱却という破れ傘の
財政再建方針を堅持されるのかどうか。堅持するとすれば、具体的にどのようにして赤字公債を脱却するのか、国民の前にその道筋を明らかに示していただきたいと思うのであります。
しかも、最近の棒上げとも言うべき円高は、中小輸出
企業はもとより、
日本経済全体をデフレの渦に巻き込み、景気を後退させておるのであります。急激過ぎる円高にあわてふためいた
政府が、各国に為替市場への協調逆介入を要請したものの、冷たく拒否されたばかりか、現行の円水準さえ納得されず、世界で孤立したことは、
日本の政策
運営に対する強い拒絶反応を示すものと言わざるを得ないのであります。
今後、円高デフレが浸透するにつれて経済がますます下降することが危惧されております。
政府は、総合経済対策を打ち出したことで経済への悪影響を防止できるとの立場でありまするが、最も期待される公共事業の契約前倒しも、事業総量を抑制しようとしているため、下期の大幅な公共投資の追加なくしては、単なる公共事業の朝三暮四になりかねません。
政府は今や、迫りくる不況を克服し、
総理がアメリカで公約した四%の実質経済成長の達成と内需主導の
経済構造の
調整のためにも、
財政政策を抜本的に転換すべきだと思いまするけれども、
総理の見解を伺いたいと思います。
本補助金
法案は、中曽根
内閣の圧縮型
財政政策にかかわる歳出削減の典型的な例であります。以下、具体的な問題点について伺います。
まず指摘したいのは、
政府の約束違反についてであります。昨年の補助金
法案審査の際、
政府は
補助率カットは六十
年度一年限りと約束し、我々も本
年度の暫定
措置とすることを
決議し、
竹下大蔵大臣も十分配意すると答弁したはずであります。しかるに
政府は、それをほごにしたばかりか、
補助率引き下げ対象を拡大し、一兆一千六百三十七億円の減額を強行し、あまつさえ、その期間を三年間に延長したことは全く許しがたい行為だと思うのであります。
補助金問題検討会の結論や、一律でないことに力点を置き説明しておりまするが、国の
財政赤字を地方自治体にツケを回す構造に変わりはなく、
政府の反省を求めざるを得ないのであります。
苦肉の策のたばこ消費税の
引き上げは、手続上の問題をおくとしても、国からの補てんが一年に限っていることは、補助金削減が三年に及ぶことを勘案すれば、明らかにバランスを失していると指摘をせざるを得ないのであります。本
法案による地方自治体の負担増加額について
一般財源で必ず補てんずるとともに、三年後の六十四
年度予算では従前の補助負担率に戻すことを確約すべきと思いますが、大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
また、三年間の暫定期間中、補助金負担率の
引き下げや負担
対象の縮小など、国、地方の新たな
財政調整措置は行うべきでないと思いますが、あわせて大蔵大臣、自治大臣に伺いたいと思います。
五十七
年度以来、
公的年金の
国庫負担の繰り延べが実施されてきましたが、さらに三年間延長されようとしています。既に六十一
年度までの
国庫負担繰り延べ額は一兆三千五百三十億円に達しております。
政府は、将来必ず元利合計を含めて
年金会計に返済すると説明しておりまするが、現時点では全く返済の時期、
方法が定まっておらず、踏み倒しの危険性さえあるのであります。この際
政府は
年金国庫負担の繰り延べの元利返済について具体的な
計画を策定し、六十四
年度から速やかに繰り入れるべきではありませんか、大蔵大臣、厚生大臣の見解を伺いたいと思います。
政府は従来、盛んに地方自治体余裕論を強調してきました。しかし、三千を超える自治体の
財政は千差万別であり、しかも各自治体とも骨身を削って
財政の
改善に努めており、その中で補助事業は温存しつつ、
補助率だけの
引き下げや、交付税総額を据え置いたまま
一般財源化を
促進することは、明らかに地方
財政への圧迫以外の何物でもありません。地方の自立が叫ばれている今日こそ、地方
財源の
充実や補助金の地方への移管が
促進されるべきであります。今回の補助金
法案はまさにこれに逆行するものでありまするが、今後の税
財政制度の
検討に当たっては、近年の
財源不足を補てんするため発行した建設地方債の償還について国が完全に保障するのはもちろん、地方交付税の基本税目の拡大と総額の安定的確保を図ることが何よりも重要と思いまするが、
総理と自治大臣の見解を伺いたいと思います。
四月十五日のアメリカによるリビア攻撃は宣戦布告なき戦争であり、一触即発の世界大戦が憂慮されると、世界各国の
政府と指導者が
発言しておりますが、
中曽根総理はいかが考えますか。国際テロの発生などは人類に対する挑戦として国際連合などで協議すべき課題であり、ましてやアメリカが小国リビアを近代科学を駆使した戦力でたたくということは驚くべき行き過ぎではないでしょうか、御答弁ください。
総理が、十四日午前十一時、
日本時間十五日午前一時にホワイトハウスに
レーガン大統領を訪ね、二回目の首脳
会談を終え、同日四時過ぎワシントンを立ち帰国の途につき、三時間後にリビア攻撃が開始されております。そして、事前にアメリカは世界の主要国にこの
計画を説明しております。国際テロ対策で意見が一致した
中曽根総理との間で、リビア攻撃が事前に知らされていたと国民ほとんどが信じているのでありますが、いかがですか、御答弁ください。
最後に、うわさされる
衆議院解散と同日選挙について伺います。
自民党金丸幹事長が「
衆議院解散権は
総理の特権、常在戦場で対処」との
発言に
中曽根総理はいたく「感謝する」旨の報道がされております。
衆議院の定数是正をめぐって各党の話し合いがなされておりますが、言うまでもなく定数是正なき解散は違憲であり、例えば定数是正されたとしても大義名分なき解散は制約されるとした保利元
衆議院議長の見解で明白であります。最近、
総理周辺より吹かれる解散、同日選挙論は極めて不謹慎でありますが、
総理はこの際明確に、国権の最高機関たる国会において国民に意思を鮮明にするとともに、軽々に
衆議院解散、同日選挙を
総理周辺においては特に言及しないよう要求いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕