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政府委員(
枇杷田泰助君) 大変な難しい問題を提起されましたんですが、前提としてちょっと申し上げておきたいのは、
我が国の
法例では、その
婚姻の無効とか取り消しとかというのは、
婚姻の効力の
関係での
準拠法によって決するということになっておりまして、これが配分的適用主義に立っておるわけなんです。ですから、例えばA国の人とB国の人との
婚姻が無効だとか取り消したとかという場合には、両方の
法律を一応見まして、それで片方の
法律で無効あるいは取り消し事由があれば、
日本の
裁判所はそこで無効の
判決をしたり取り消しの
判決をしたりするということに、なる。
ところが、ただいま御指摘のように、両方の国で無効だという事実があるということになりますと、その場合にこの四条二項では、じゃ、そのときの
扶養関係についてはどちらに行くかということになりますと二つの
法律が問題になるわけでございます。実際問題といたしますと、その場合の無効
判決とか取り消し
判決とかというものがありまして、その
判決の中でどっちかの
法律によるというふうに書いてあれば、それによるということが実際上の
処理としてはあり得るだろうと思います。どちらの
法律でも無効ならば無効ということになりますので、実際の訴訟の形態から申しますと二つともそうだということは言わないで、片一方で無効だと。例えば片一方が
日本法だという場合には、
日本法の無効原因があるということを主張して無効
判決をもらうということになります。
そういう場合には、
裁判所は
日本の
法律に基づいて無効
判決をしたのだということが一応言えますので、その場合には
扶養の
関係も
日本の
法律だということが言えようかと思うのでありますが、たまたまその両方の
法律を引っ張ってきて、いずれからしても無効であるというふうな
判決をするとか、
判決がなくていろんな客観的な
状況から両方とも無効だということになった場合にどちらかということになりますと、これは大変難しい問題でございまして、実はこの
国内法の場合でもその点についての手当てはいたしておらないわけでございます。解釈にゆだねるということになるわけでございますが、その場合の解釈といたしましていろいろな
考え方が出てこようかと思います。
一つは累積的適用説という
考え方、これはA国、B国の両方の
扶養関係の
法律を突き合わせまして、そこで最大公約数といいましょうか、共通する部分、そういうもので考えていくべきだという
考え方が累積的適用説ということになる。ただ、その場合には、どちらかといいますと、権利者にとっては不利に働くわけでございますね、最大公約数でございますから。ですから、それは
条約とか
国内法の
考え方にはそぐわないのではないか。
したがって、この
国内法の
考え方の基本には
扶養権利者の立場に焦点を合わせて
準拠法を決めていこうという思想があるのだから、そういう場合には要するに
扶養権利者側の
法律というふうに考えるべきではないかという説も十分に成り立ち得ようかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、この点については
立法上の手当てをしておりません、なかなか
立法するというのも難しい問題ございますので。したがいまして、こういう問題が起こるのは、
一つはそういう配分的適用主義というものが起こる場合に生ずるわけであります。
ですから、これからの
国際私法の
条約とかあるいは
立法の
傾向として、なるべく配分的適用主義というものをやめて、単一法の適用主義というものに切り変えていくべきではないかという
考え方があるわけです。それが
我が国の
法例の
全面改正の際に直ちに採用できるかどうかはわかりませんけれ
ども、そういうふうな方向で行けば前提問題が消えてしまうということにもなるでありましょうし、そういうことをにらみながら考えていくべきじゃないかということでございまして、実は御指摘の問題は解釈にゆだねておるということで、明確でないということを申し上げざるを得ないわけでございます。