○井上計君 総括的な御答弁をいただきました。ただ、大臣今おっしゃったように、ただ
考えておるとおっしゃってもなかなかこれは容易なことじゃありません。
そこで、先般の
予算委員会のときと重複いたしますけれ
ども、いま一度改めて、私はお配りした資料に基づいて全国印刷健保がどのような方法をやってどういう
成果を上げている、どういうふうな
努力をしたかということを申し上げて、ただ単にこれは厚生省だけの問題ではないと、こう思います。
政府全体がこの問題と取り組んでいただかないとなかなかこのようなことは実現が不可能であるし、また効果は上がらぬと、こう
考えますので、あえて重ねて御説明を申し上げたい、こう思うわけであります。
二枚目をひとつごらんをいただきますと、これは
一つ重要であります。従来、新聞報道あるいは厚生省のお
考えも、健康保険組合は大企業を主とした組合で、大企業のサラリーマンを被保険者としている組合である、したがって標準報酬も高い、またいろいろな面で恵まれておるから
黒字が当たり前だ、こういうふうなことがしばしば言われておりますが、実際は現在約千五百ある健保組合のうち約半分の八百幾らは
中小企業の総合健保なんですね。いわば
政府が管掌しておる同じような事業所を集めた健保組合が半数以上あるということ、これが第一点ですね。
そこで、例として、私が
関係しております全国印刷健保と政管との比較がこの二枚目の半ペラの数字であります。政管の被保険者数は千五百三十六万二千、全国印刷健保は十二万六千七百。といいますのは、全国印刷の組織は沖縄と九州の宮崎、大分等、一部を除いた四十四都道府県にまたがっておるわけです。その被保険者数が十二万六千七百一人である、印刷業の
中小企業ばかりです。大企業はこれに入っておりません。零細な企業もかなり入っております。そこで、平均年齢は
政府管掌四十歳に対して三十八・五歳、若干若いですが大して変わりません。ただ、扶養者の数においては
政府管掌は被保険者数の一・一一倍で約千七百万人でありますが、印刷健保は一・二四倍ですから扶養者をたくさん抱えておるわけですね。平均の標準報酬一カ月
政府管掌十九万七千五百九十八用に対して印刷健保は二十三万七千五百八十一円、高いです。高い理由は、これは同業のこういうふうな組合でありますから、標準報酬のつかみ方が的確なんですね。
政府管掌の場合のように一方的な申告と違いますから、やはり実態をつかんでおると、こう思う。ですから、もしこれが小さな地域の組合になれば
政府管掌の平均標準報酬は私は必ず上がると、こう思います。それからあとは一人当たりの保険料等々ありますが、省略いたしますけれ
ども、余り大した変わりはないですね。
しかも、ここで表の最後にありますように、料率は
政府管掌は従来は千分の八十四、今年度から引き下がって八十三、印刷健保は従来千分の八十三、
政府より一か安いんです。さらに六十一年度から八十一というふうに一下げるわけですね。これらのほかに
政府管掌と違うのがたくさんありますのは、まず本人及び家族の自己負担分を、五千円の足切りはありますけれ
ども、それ以上は給付しているわけですね、現金給付。それから、出産とか死亡等の付加給付も
政府管掌のさらに上積みをしておる。だから、実際に支出は
政府管掌よりはるかにいいわけですね。だから、被保険者は大変喜んでおるわけです。こういうふうないわば
政府
管掌と比較して、実際は中小零細企業の集まりである健保組合ですけれ
ども、こういうふうなことを行っておって、そこで五十九年度の収入、支出の実態を、一枚目をごらんいただくとわかりますけれ
ども、
政府管掌の場合には保険料収入が三兆一千二百六十四億円あります。ところが、さらに五千五百三十六億円という国庫の補助が入っているわけですね。その他を入れまして三兆六千九百三十五億円という収入でありますが、支出は三兆四千八百九十五億円でありますから、剰余金が二千四十億円出たと、こう言われておりますが、国庫補助の五千五百三十六億円を差っ引きますと、実質的には三千八百億円ばかりの赤字になるということですね。これがなぜこのようなことになるかと。後で申し上げますけれ
ども、要するに医療給付費が保険料収入の八一%に上がっているわけですよ。これが一番大きいんですね、差が。
なお、もう
一つつけ加えますが、支出の中で職員給与の三百三十六億円というのはこれは社会保険事務所トータルでありますから、いわば厚生年金の職員も入っております。私の推定で六〇%が健康保険にかかわっておるであろうということで、三百三十六億円という推定を出したということでありますから、これは必ずしもどんぴしゃり正確ではないということで御了承をいただきたいと、こう思います。
これに対しまして印刷健保の方は、以下ずっと読むのを省略いたしますけれ
ども、ずっと参りまして、国庫補助が五千二百四十万円、微々たるものです。これは事務補助であります。これらのものをずっとトータルいたしまして、実質的な剰余金が国庫補助の五千二百四十万を抜きまして二十四億四千四百六十万円という実質的な剰余金があるわけですね。
政府管掌よりも料率が低い、そして
政府管掌よりも上積みが多い、なおかつこれだけの実質的な剰余金があるというのは、印刷健保の場合には医療給付費が六三・八%であるということです。じゃ極端に医師にかかる等のいろんな抑制をしているかというと、全くそうじゃありません。積極的に健康診断等受けさしたりいろんなことをやっておるわけですね。特に入院ドックなんかについてもかなりの
補助金を出してやっておる。そういうことをやりながら、なおこれだけの
黒字が出ておるわけです。しかし、全国的に全部
黒字じゃありません。先ほど申し上げました四十四都道府県を十三の支部に分けていますが、そのうち赤字の支部が七支部あるわけです。これは創設以来ずっと赤字です。例を挙げますと、北海道あるいは四国、中国、東北、九州もそうでありますが、ずっと赤字です。その赤字をどこでカバーしているかというのは東京、大阪あるいは東海、神奈川とか大体都市周辺のところでカバーしておりますけれ
ども、ただ単にこれは標準報酬が安いから赤字ということでなくて、地方へ行けば行くほど扶養者が非常に多いこと、それから医療費がまことに高いわけですね。そういう面で赤字になること。かなり
努力していますけれ
どもやむを得ぬということですが、これらをカバーして、なおかつこういう剰余金が出ておるということです。
なぜ剰余金が出ておるかというのは、大変な経営
努力をもう二十年来やってきておるわけです。レセプトの点検を二十年前から実施をしました。当初随分と実は抵抗がありました。しかし、それだけでは十分でないので五十二年度からは、八、
九年前でありますが、医療費の通知制度というのをやりました。若干月がおくれますけれ
ども、あなたは何月には病院へ何回通って幾らの医療費を払っています、健康保険組合から幾ら払いましたと、こういう通知をするわけです。そうすると、最初は随分と、そんなに病院にかかっていませんという返事が来るわけですね。いや一日は行ったけれ
ども五日も行っていませんとか、あるいは風邪だけでそんな大きな病気じゃありませんとかというのが随分返ってくるわけです。だから、これについて当時、はっきり申し上げますけれ
ども、
日本医師会から大変な圧力がかかってきたんです。印刷健保はけしからぬ、印刷健保の患者は今後診ないとか、うるさ過ぎると随分圧力がかかってきた。しかも、当時厚生省からも実は強い行政指導があったんです。このようなことをやってはいかぬと、こういう行政指導があった。しかし、それを我々は実ははね返してずっとこれをやってきたんですね。そのために現在のような実は大変な
成果があらわれておるということであります。だから、五十九年度だけ見ましても、このレセプト点検によっての要するに過誤訂正ということで、支払基金を通じて医療側から返ってきた金が十二億七千五百万円あるわけですよ、五十九年度だけで。
だから、いろんな経営
努力に加えてそういうものを加えますから、先ほど申し上げましたように、実質二十四億四千万円という剰余金が出ておるということなんですね。これはもちろん
努力した結果でありますけれ
ども、実は
努力できるような組織体制にあるということです。現在のような膨大な、言えば
政府管掌の全国一本の運営では、厚生省がどんなに
努力されてもこれは不可能だ。だから、できるだけ小さなといいますか、適正規模は三千人なのか五千人なのか、これは地域によって違ってまいりますけれ
ども、そのような従来と違った地域の健保組合をつくって、その健保組合でそのような経営
努力をする。同時に、それは医療費の抑制ということじゃなくて、文字どおり節減です。医療は後退しません。逆に前進します。健康診断をやったりいろんなことをやりますから、逆に前進をします。私はこのようなことをやれば、
考えられるこういうメリットというものが、そういう効果は随分あると思うんです。要するに、適正な医療等の本人の認識は深まってまいりますし、定期的な検査もできます、実質的に。
それから地域には、例えて言うと会館、先ほど箱物の整理を申し上げましたけれ
ども、総合的なそういうふうな会館ができればその中に事務所も置く、あるいは若干の検査設備も置く、あるいはまた老人クラブ等々の集会所を置いて老人医療の問題も扱える。いろんな面で私は地域の、町の開業医等々とタイアップすることによってかなり疾病予防にも効果がありますし、また成人病、老人病等のやはりそういう効果のある指導ができる。現在、病院等では、もう皆さん御承知のように外来が非常に多い。特に老人外来が多くて、朝六時か七時に受け付けを済ませてやっと終わるのがお昼ごろだというふうな大変なむだが多いですね、各地とこへ行っても。このようなこともやっぱりある程度整理できるんではなかろうかと、こう思います。
それから、社会保険事務に精通をした職員がたくさんおられます。そういう人たちの退職後の職場も確保できるわけですね。あるいは行政改革の中で、余剰人員等できればそういうところに確保できれば、すべていいことばかりとは言いませんけれ
ども、そういう面で、この際根本的に健康保険のあり方、運営を
考えていくことによって、私は冗費の節約、これから今後ほうっておけばますます高騰するであろう医療費、それについての適正な抑制、さらには医療の後退ではなくて逆に医療の前進というふうなことに相通じていくであろう、このように
考えます。これについては特に厚生大臣から御答弁をもらわぬでいいですが、あわせて申し上げます。
ところが、それをやるためには健康保険の運営のあり方、組織のあり方を変えると同時に大変な
努力が要りますが、もう
一つは現在支払基金の問題があります。
現在、いただいた資料によりましても、五十九年度は取扱件数が五億二千百万件、大変な数です。金額が七兆一千四百六十億円ですか、の取り扱い金額ですね。これをどの程度の人数で全国四十七カ所の支部でやっておられるか。約六千名の職員で点検をしておるわけですが、実際にこのレセプトの点検をどういう形でやっているか。事務点検の面では七・五秒で一人一枚やっているんでしょう、レセプトの点検を。医者の請求されるいろいろな請求書を一人が七・五秒でどうやって点検をしておるか、こういう問題ですね。だから、このあり方をまず変えていかなくちゃならない。だから、印刷健保が先ほ
ども申し上げました十二兆幾らと
いう過誤訂正でもらえるのは、この事務点検、支払基金で行う事務点検のそこでもらっているわけですね、見つけているわけです。だから、支払基金がやっておる医師の審査なんというものは、一切健保組合、資格ありませんからできないわけでしょう。職員がやっておるその段階で既にそういうものがあるわけでありますから、だから支払基金の審査の方法、あり方、これまた根本的に
考え直しをすれば、私はもっともっとむだな医療費というものが見つかっていくのではないか、こう思います。
もちろん、お医者さん、病院の全部が間違っておるとは言いません。非常にまじめな方もおられます。しかし、悪意とは言いませんけれ
ども、人間ですから間違いがあるわけですね。一日しか来ない外来患者を五日に書き間違えることもあるでしょう。あるいは実際には使わなかった、やらなかった治療をやったことにする場合、間違いがあるかもしれませんが、まずそういう点検をできる体制というものをつくっていかなくては、私はなかなかこの医療費問題については解決しない、このようにもう前々から強く感じておるので、今まで時に触れて
提言したんですが、なかなか一向に進みませんので、
予算委員会に続いてきょうは特にこのことを、これは厚生省という問題では解決しませんから、
総理、
総務庁長官にぜひこれらについて本格的な取り組みをひとつお願いをしたい、こういう要望をするわけであります。
あわせて、
国民健康保険についてもそうであります。
国民健康保険に対する国庫補助額が二兆一千億円、六十一年度あるわけですね。前年度と比べまして八百七十九億円ふえております。このうち二兆百六十二億円というのは医療に対する補助ですよね。これは全都市町村に任じておるからこうなるんです。これも、健保と申し上げたが、健保と同じように国保についても地域で国保組合をつくっていく。そして、適正規模の組合をつくってそのような指導をしていけば、随分と私は国保についてもむだな医療費の節減ができるのではないか、こう
考えております。
資料説明を含めて大分長くなりましたけれ
ども、以上のような問題等含めて、まず厚生大臣に伺って、あと
総務庁長官に伺って、できますれば
総理からも御所見をひとつお伺いしたいと、こう思います。