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政府委員(
加戸守行君) 昨年九月に第七小
委員会から御報告いただきましたデータ
ベース及びニューメディア
関係の
著作権問題に関する報告、それを受けて今回の法提案をさしていただいたわけでございますが、内容的には、データ
ベース関係並びに有線系ニューメディアに関します部分の法改正を提案さしていただきまして、無線系ニューメディアに関しましては今回の法改正の対象とはしていないわけでございます。
しかしながら、この第七小
委員会で御審議いただきました無線系ニューメディアといたしましては、直接衛星
放送、それから衛星通信、文字多重
放送、ファクシミリ
放送、静止画
放送といった分野につきましてそれぞれの御議論をちょうだいしましたし、それからパッケージ系ニューメディアとしては、ビデオディスク及びディジタルオーディオディスクにつきましての御検討をいただいたわけでございます。現
時点におきましては法改正の必要はないという結論をいただいているわけでございますが、それぞれ将来の課題はかなりあるわけでございます。
第一の、無線系ニューメディアの中の直接衛星
放送につきましては、これは現在の
放送と同じように、衛星
放送であっても
放送概念でカバーされるということで特に問題はないであろうということでございましたが、衛星通信の場合におきましては若干の問題は残っておるわけでございまして、衛星通信が一般に傍受されることを目的として行われれば、これは直接衛星
放送と同様な形態になってくるわけでございますけれども、例えば
アメリカでございますように、CATVに番組を供給するための通信衛星による衛星通信が行われた場合、そういったものをCATV業者以外の、つまり当初予定した伝達機関以外の者が受信をして流すというケースは将来想定されるわけでございますので、この問題につきましては、国際的に衛星信号
保護条約というのがございますけれども、その
条約の批准問題、あるいはそれに基づく法改正の措置というのが必要になる事態は出てくる可能性は現在予見はされるわけでございます。
それから、文字多重
放送の問題につきましては、非常に
技術的な問題でございますけれども、現在
放送のための一時的固定というのが録音・録画だけに限られておりますので、例えばあらかじめディスクに文字図形情報を固定しておいて文字多重
放送用に使用するというような、一種の固定、複製のプロセスを経るといたしますと、そういったものも四十四条の一時的録音・録画の
規定の改正ということが将来想定されるんではないかということでございます。
それから、静止画
放送につきましても同様でございまして、そういった文字図形情報というものを一たん信号を停止信号の形で固定いたしまして、それをキャプテンサービス等で使うということも
考えられますので、そういった措置をどうするのかという問題がございます。
それから、ファクシミリ
放送につきましては、現在
考えられているのはテレビジョン
放送波に重ねて
放送するというような手段等が現在開発研究中のようでございますけれども、将来、
一つの例としてはファクシミリ新聞という形で、
放送波によってそのファクシミリを受信して自動的に複製される、つまり、家庭にいるままで新聞が、従来の伝統的な新聞配達ではなくて、電波によって新聞が送られるというような形態も出現してくるのではないか。そういたしますと、現在のそれを
放送と
考え放送事業者として措置する現在の法制度のままでいいのかどうか。実体的にはまさに新聞を配って歩くのではなくて電波で届くということで、実体上の効果は全く同じで手段の違いにしかすぎない場合に、それを
著作権法上どう評価するのかという難しい難問があるわけでございまして、これはその実用化が想定される
段階で検討すべき課題であろうと思っております。
それから、パッケージ系ニューメディアにつきましては、ビデオディスクの問題がございまして、現在のところ
一つの問題としては、出版と同じように百科事典とか写真集のようなものをビデオディスクに入れまして、いわゆる電子出版という形で行われる、そういった業態が想定されるわけでございますけれども、現在、出版につきましては、
出版者の独占権を
保護するために「出版権の設定」という制度が
著作権法上ございますけれども、このような電子出版についてもその電子
出版者の独占権を
保護するための同様な法体系というものは
考える必要がないのかどうかという問題がございますし、将来におけるこのような
業界の現出あるいはその
権利保護といった観点から
一つの検討すべき課題であろうかと思っておるわけでございます。
それからそのほかに、先般小泉参考人が申し上げましたように、実演家の出演しました映画フィルムが例えばビデオディスクの中に全く別の形で、人格権を侵害するような、人格的利益を失わせるような形で利用されている問題等についての問題提起がございました。ただ、これは映画の
著作権との
関係、実演家の取り扱いの全体との絡みがございますので、小
委員会におきましては単に問題点を指摘するにとどめるという報告になっておりますけれども、事柄はかなり重要な事柄であろうかとは思っております。
今申し上げたような事柄について、今回の法改正では必要ないと
考えたわけでございますけれども、近い将来におきましてそれぞれの具体的な開発の進み方によりまして迅速な事前の対応を
考える必要がある課題は多々あるということでございます。