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参考人(
宮川隆泰君) 私は、
日本データベース協会の
会長を務めさせていただいております
宮川隆泰と申します。
本日、御
審議をいただいております
著作権法の一部を
改正する
法律案につきまして、
意見を申し述べさせていただきます。
まず、
日本データベース協会という
団体は、現在
日本で
データベースサービスを
一般に提供しております
民間機関を
中心にした
団体でございます。一部
政府特殊法人もメンバーに入っております。
協会は、
昭和五十四年の十二月に十九社をもって設立をされまして、現在八十六社の
会員を数えております。現在のところ、私
どもの
協会が、
日本におきまする
商業用の
データベースサービスを行っております業者の大部分をカバーをしているというふうに考えております。
初めに、本
法律案に関します私
どもの態度を申し上げさせていただきますが、私
どもは本
改正案に賛成でございます。
次に、
データベースというものがどのようなものであるか、また、それが現在
我が国におきましてどういうふうに利用されているかということについて簡単に申し上げさせていただきます。
まず、私
ども日本データベース協会では、
データベースというものを定義いたしまして、各種のデータを整理統合いたしまして、
電子計算機によって処理することができるような形態にした
情報のファイルもしくはその
集合体である、そういうふうに定義をしております。
一般に、
産業活動でございますとか
科学技術に関する
研究調査、より理論的な
学術研究、
自然現象の観察あるいは政治的経済的
社会的な諸
現象の
調査による統計というようなもので各種のデータが発生をしております。通常これらのものは、形としては文字、数字、図形それから音声というような形で表現をされております。文字で表現をされましたデータは、例えば新聞記事でありますとか雑誌論文でありますとか単行本でありますとか、その他の各種の文書がこれに相当いたします。それから、数字で表現をされましたデータは、いろいろな統計類、人口統計でありますとか経済統計でありますとか、天気予報の数値でありますとかあるいは実験によって得られました観測値、データというようなものであります。それから図形のデータというものは、
一般には、例えば地図でありますとか設計図でありますとかレントゲン写真でありますとか心電図でありますとか、そういうようなものが図形のデータであります。
これらのデータというものは、長い間印刷冊子体の形で
一般に提供され利用されてまいりました。保存もその形で行われてまいりました。ところが、近年のこの
情報処理に関します
技術、それから電気通信に関します
技術の開発と発達によりまして、
電子計算機を用いましてこれらのデータを加工をし、蓄積をし、それから利用をするということが可能になってまいりました。このような機械で読み取れる形にしたデータ、これを
日本語では機械可読データ、マシーンリーダブルというふうに言っておりますが、これらの機械可読の形にしたデータを集めましたものが
データベースであると、こういうことであります。
具体的にどういうことかということを実例を挙げてちょっと御説明をしてみたいと思いますが、例えば、現在
我が国の国内で発行をされております単行書は、すべて国立国会図書館に納本をされることが
制度として決まっております。そして、国立国会図書館では、これをもとに
日本全国書誌というものを編集をいたしまして、これを毎週発行いたしております。(資料を示す)これがそれでありまして、
日本全国書誌週刊版。私
どもはこれは納本週報と、こういうふうに呼んでおりますが、通常の図書館へ行きますと大体こういうものがみんなそろっております。この一週間に国会図書館に収録をされました国内刊行物はすべてここに出てきている、こういうことになっております。これは非常に長い間こういう形で使われてまいりました。
ところが、近年
日本国内で刊行されます本あるいは出版物というのは非常に多うございまして、一年間に平均約五万件というような膨大な数字に上っております。具体的に申しますと、
昭和五十九年の一月から十二月まで、
日本全国書誌のこれに収録をされました収録数は五万八千八百九件、これは五万八千冊ということじゃなくてそれ掛ける発行部数であります。
昭和六十年の一月から十二月末までの収録件数は六万四千六百二十四件、それから今年の一月一日から——これきょう出てくるときに持ってきたんですが、今私の手元にございます納本週報の一番新しいものは四月十八日発行のものが国会図書館から届けられておりますが、その一番最後の番号は一万八千八百七十七であります。つまり、一月一日から四月十八日、第十五週ですね、今年の第十五週の終わりまでに一万八千八百七十七件の国内刊行物が国立国会図書館に納本をされたということになるわけです。
一般国民は、これは入手できます、一冊三百五十円でありますが入手できますので、これで探しなさいということになっておるわけでありまするが、これが毎週来て、一年に六万冊のものをこういう形で探せと言われても、なかなか容易に探すことは難しいということでございまして、そこで国立国会図書館では、
日本全国書誌週刊版を機械可読にいたしましたものを
昭和五十六年から
一般に頒布するようになりました。これが
日本全国書誌機械可読版というものでございまして、これは
データベースであります。すなわちこれはJAPAN MARCという名前がついておりまして、MARCはマシーン・リーダブル・カタログの省略であります。(資料を示す)これ、ちょっと同じものを持ってきたんですけれ
ども、これは四月十八日に終わった一週間で国内で刊行された国内刊行物を磁気テープにおさめた
データベースであります。これとこれとは同じものなんです、全く同じものです。中身は、これは人間の目では読めません、機械でないと読めないんです。だからこれは機械可読、マシーンリーダブル、こう言うわけです。これが
データベースです。こういう形にいたしますと、今度は、六万冊あるいは五万冊、過去のものを数十万件ということでありますが、その中から必要なものを必要な約束事に従って出すことができるということでございまして、これまで国立国会図書館に行きまして一日かかっていろいろ探すということが、端末さえあれば、
日本全国どこからでも瞬時にして必要な本の
情報を探すことができる、これが
データベースサービスであります。
これらの同様のことは、新聞記事でありますとか雑誌論文でありますとか、あるいは各種の経済
情報でありますとか株式市況でありますとか円相場でありますとか人口統計であるとか産業の活動であるとか、それぞれについてすべて利用できるようになっておりまして、現在
我が国で商業的に利用可能な
データベースの数は一千二百四十二と言われております。これは
通産省が
データベース台帳というものをつくっておりまして、これの一番新しいものは
昭和五十九年十月一日付の業者の申告によるものでございますけれ
ども一千二百四十二であります。このうち一番多いものが
ビジネス・経済系の
データベースでありまして四百六十六件、全体の三八%。それから次が自然科学・
技術分野の
データベースでありましてこれが四百五十九件、全体の三七%。両方合わせますと七五%ほどになりますので、これが大部分ということになります。この中には、特許
情報な
どもこの自然科学の中に入っています。続いて、
一般という分類の包括的な
データベースが百八十一件、全体の一五%になっております。この中には、新聞記事でありますとかニュースでありますとか、あるいは各種の行政データあるいは判例などの法律に関する
データベースが含まれております。最後に
社会科学・人文科学系の分野の
データベースが百十七件ございまして、これが全体の九%ということでございます。この
データベースの数は、年々国内で利用できますものは非常にふえておりまし
て、多分間もなく
昭和六十年度の、六十年十月一日現在の
調査が発表されると思いますけれ
ども、数はさらにふえておると思います。
次に、このような
データベースがどういうふうにしてつくられて、それからどういうふうにして
流通をしてどういうふうにして利用されているかということを申し上げたいと思います。
データベースの
製作者はプロデューサーと申しておりますが、これは
民間機関それから公的機関、一部では大学のような研究機関でもつくっています。この
データベースをつくります際に、幾つかの作業段階があります。まず、その
データベースを構築をしようとする特定のテーマ、主題、あるいは専門分野がありますので、その分野を定めまして、その分野についての
情報であるとかデータを収集をいたします。ですから、
情報の収集というのがまず第一。それから第二に、集めました
情報を選択をいたします。この
情報の収集と選択ということが
データベースの
製作者の創作性の第一の源泉になります。ただ、これは通常の編集
著作物でも同じようなことが行われまするので、そこと基本的にどのくらい違うかということは議論の多いところでございますけれ
ども、もとになる
情報の収集と選択ということが第一の問題で、ここに
一つの創意工夫がある。
それから続いて
情報の加工をしなければいけない。この加工の段階はどういうことをいたしますかというと、ここでプロデューサーは、あらかじめ定めましたシステムがございまして、そのシステムに基づいてある手続、ルールがあるわけです。このルールもしくは基準に従って、集まりましたいろんな雑多な
情報を標準化をまずする必要があるわけです。標準化をいたしませんと、
情報やデータはいろんな形をしておりますので、こういうものには入らないので、標準化をいたします。それで、もとの
情報を一次
情報、生の
情報、生のデータというふうに呼びますと、ここでは二次
情報、セカンダリーインフォメーションというものをつくる。
例えば、先ほどのこういう文献
情報の例で申しますと、書誌事項というものを一定のルールに従いまして標準化をいたしまして、それからどういうことが書いてあるかという内容に関する抄録をつくりまして、それから関連事項のノートをつくります。例えば一冊の本がありますが、一冊の本というのは
一つのレコードでございますけれ
ども、このレコードの中に大体百ぐらいのデータがあるわけです。だれが書いたか、厚さは何センチであるか、
値段は幾らであるか、いつ出たかというようなこと、それから何の続きであるかとかですね。そういうようなことでありまして、そういう
一つの
情報についてのたくさんの側面、あるいはその内容を示すデータを加工をいたしまして標準化をする。また、この段階で、後に利用者が
情報を検索するときに非常に便利なような標識、インデックス、タック、要するにその手がかりになるような分類コードでありますとかキーワードでありますとか、そういうものを付与をいたします。このときに、キーワードは勝手につけるのではありませんで、これとは別につくりました。語集、シソーラスと申しておりますが、そういうものに基づいて必要な索引語をつけていく。
このような
情報の整理、加工の段階に、
データベース製作の第二の創意の源泉があります。この標準化、それから二次
情報の作成、それからコードやキーワードの付与というような作業は、
データベース構築のシステムの約束に従って行われますので、恐らくこれらを総括的に考えますと、体系的な構成に基づいて
情報を整理、加工するというところかと思います。大変時間とお金がかかるプロセスであります。こうして加工されました
情報が磁気テープに入力をされてこういう形になる。これを今度は機械にかけて読むというわけでありますから、ここができるまでが、
データベースの
製作の段階がこれで終わるということになります。
次に、今度は
データベースを
流通をするというプロセスがありまして、
データベースは、物によっては
製作者と
流通者が同一機関の中にありましてやっている場合もありますが、多くの場合に、専門的な
流通担当機関というものが存在をしておりまして、これを我々はディストリビューターというふうに呼んでおります。
流通者は大部分が民間
企業であります。
我が国の場合には、部分的に一部公的機関がございますが、大部分は民間
企業でございまして、その
流通担当者では大容量の、非常に大きい記憶装置を持ちました
電子計算機を備えておりまして、同時に、
データベースを管理したりそれから検索するための
プログラム、
ソフトウェアでありますが、そういうものを用意しております。それで、
流通者はプロデューサーからこういうテープを受け取りまして、これをそれぞれの
流通サービスセンターの
コンピューターに載せるわけですが、そのときにこれをこのまま複写をして載せるわけではありませんで、これもある一定の約束事に従ってこの中をばらばらにばらしまして、利用者が後でそれぞれの利用目的に従ってオンラインもしくはオフラインで利用しやすいような形にファイルをつくりかえていくわけです。ここにも
流通者としては工夫があるところでありまして、場合によっては、
流通者がつくります。そういうファイルというものは、もとの
データベースに対する二次
著作物になるという関係もございます。それで、この
流通がオンラインとオフラインと、この両方の形でサービスが行われるわけでありますが、オンラインといいますのは、それぞれが持っております、
ユーザーが持っております端末を使いまして、
データベースのサービスセンターの
電子計算機に接続をして使うと、こういうことでございます。
最後に、今回の法
改正の内容に多少わたりまして、
意見を申し述べさしていただきたいと思います。
四点ございまして、第一は、
データベースはそれを構築するのに非常に複雑な作業とそれから創造性と工夫と努力を要しますから、多額の費用がかかるものでございますので、したがいまして、このような
データベースが
著作物として
保護されるようにしていただけるということは大変望ましいことであります。
それから第二は、
データベースはこういう形で機械可読の形態をとっておりますので、これは非常に機械操作によって複製の対象になりやすい特性を持っておりますので、
データベースの
著作物とこれを複製をする
行為との間の関係が現行の
著作権法の原則に従いまして処理していただけるというのは大変結構なことじゃないかというふうに思います。
それから第三は、
データベースは従来個々の契約によってその利用形態が定められてきておりますが、今回の法
改正によりまして、
データベースの著作者、
流通者あるいは利用者との間での
権利が、契約の裏にさらに法的な裏づけができるということになりましたこと、これはこれまでの業者の
権利が主張できることになって大変結構なことだというふうに考えております。
それから第四番目に、オンラインサービスということについてでありますが、オンラインサービスという利用形態は、新しい知識の伝達、
情報の伝達の形態でございまして、これは一体どういう法律的な裏づけに基づいてこういうことが行われるんだろうかということでありまして、私
どもこれまで
著作権法上は有線放送の規定を解釈をいたしまして、これの拡張解釈をして、これに当たるんではないかというふうに考えたこともございますが、今回は、有線による送信という概念を整備されて、そういう規定を整備していただきましたことは、より現在の
データベースのオンラインサービスの実態に即した御措置でないかというふうに考えております。
私
どもは、以上のような考えをもちまして、
昭和五十四年に会ができまして以来、
データベースにかかわる諸
権利の
確立ということをお願いをしてまいりました。五十九年からは
著作権審議会にも
委員を、第七小
委員会に会の代表を出さしてい
ただきまして、いろいろ
意見を申し上げてまいりました。そういう意味で、今回の法
改正には賛成をさしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。