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穐山篤君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
厚生省設置法の一部を改正する
法律案に反対の討論を行うものであります。
反対の第一の理由は、本
法律案の
内容が国会の
審議権を著しく制約していることであります。
本来、単独の施設等
機関は
一つ一つ法律で規定すべきものでありまして、特に国民の今、健康を守るための
厚生省のナショナルセンターは、その機能強化を図りながら
疾病名を列記して法律で規定すべきであります。
しかるに、今回の
措置は、
厚生省の施設等
機関である
国立がんセンター及び
国立循環器病センターを法律の規定から削除して、
国立高度専門
医療センターという抽象的な名称の
機関を設置し、このセンターの中に、
国立がんセンター、
国立循環器病センター及び
国立病院、
国立療養所の再編成計画の一環として本年十月から新たに設置することを予定している
国立精神・神経センターを含め、これらの個別の名称及び所掌事務は政令で定めることとしているのであります。
このことは、今後新たにナショナルセンターを設置する場合でも、そのたびごとに法律の改正を要しない条件整備を図ろうとするものでありまして、国会の
審議権を著しく制約することになり、私
どもとしては断じて認めることができないのであります。
反対の第二の理由は、今回の
措置が
国立病院・
療養所の再編成計画の基盤整備に通ずることであります。
国立病院・
療養所は、戦後四十年余にわたり、憲法の精神に基づき国民の命と健康を守るため、
地域住民に密着した
医療に貢献してきたのであります。しかるに、政府は国民や自治体の要望を無視し、
地域一般
医療から撤退することを前提として、高度専門
医療にその役割を限定する
国立医療機関の縮小再編成を図るために、全国二百三十九カ所の
国立病院・
療養所の三分の一に当たる七十四施設を統廃合によって切り捨てようとしているのであります。
これらの統廃合の対象となっております施設は、辺地や山間部の温泉
病院など、採算が合わない、
民間や自治体でも消極的なところが多いのでありまして、このような再編成計画が実施に移されることは
医療の公共性が突き崩されるると言わなければなりません。このような部面にこそ国が責任を持って
地域医療の充実を図るべきであります。
政府が意図しております
国立病院・
療養所の再編成計画が実施に移されることになれば、現在の
国立病院や
療養所よりも水準の低い
医療施設が拡散されることになるだけであり、また国が高度専門
医療を推進するといたしましても、各県ごとの医大
病院との
関係もあって、国の
機関は医大
病院の出先となるような中途半端な存在にしかならない懸念があるのであります。
政府は、
昭和二十七年に
国立病院六十の施設の地方への移譲を計画したのでありますが、
地域住民の反対に遭い十施設だけで挫折した前例を想起すべきであります。
国鉄赤字ローカル線廃止の
病院版と言われる
国立病院・
療養所の再編成計画は、単に国費の効率的、合理的な使用を図る行革の観点からの図式だけのものでありまして、そこには、
医療が国民の健康を支える命綱であり、それぞれの
地域や
病院の特殊事情は全く含まれていないのであります。
このような再編成計画は即時中止すべきであり、この再編成計画の基盤となっております本
法律案には賛成することはできないのであります。
以上、私は、二点に絞って反対の理由を述べてまいりましたが、政府は
国立病院・
療養所の充実と存続を求める
地域の声に率直に耳を傾けるべきであることを要望いたしまして、私の反対討論を終わります。