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参考人(
小沢雅子君)
小沢でございます。
実は私、先ほどからお話しされました
木下先生、
西野先生、
市川先生とは全く異なっておりまして、
税制の専門家でもなければ
法律の専門家でもございませんでして、全くの素人でございます。なぜこの場に呼ばれたのか、いろいろ考えてみますと、どうも二つの
理由がありそうであります。一つは、至って庶民の
税金を納める納税者として呼ばれたのであろうと。
税金を納めている人の大半というのは、別に
税金の専門家でもなければ
法律の専門家でもございませんでして、全くそういうことには素人の
国民大衆でございます。そういう大衆の
意見というのもこういう場に反映させることが必要であろうと恐らくお考えになりまして、そういう大衆の一人を引っ張ってこようということで私が呼ばれたのだと解釈させていただいております。
ただ、私ごらんのようにまだ若輩でございまして、それほどたくさん
所得を得ているわけじゃございません。至って低
所得でございます。ですから、納めております
税金の額も大変小さなものでございます。ですから、有名な多額納税者として新聞やテレビにお出になる
方々のように、納税者の代表というほどの立場は全くございませんでして、低
所得の庶民の代表、こういう立場が一つあろうかと考えております。
じゃ、二番目に、なぜ私が呼ばれたか考えてみますと、ここ四、五年ほど私は、
国内の消費需要がなぜ盛り上がらないのか、消費需要を回復させるにはどうしたらいいか、こうした問題について少しく考えてまいりました。特にここ一、二年、
海外から、日本の
国内の需要をもう少し
拡大させるべきである、特に消費需要を
拡大させるべきで
ある、こういう
要請が強い折でもあり、先ほどから
木下先生、
西野先生、
市川先生などの専門的なお話を聞いておりましても、今回の
税制改正において、そういう
内需拡大、こういう政策も織り込まれているというふうな御
意見でございましたので、消費需要を
拡大するためにはどうしたらいいか、それを考える立場から私がこの場に呼ばれたというのが恐らく二番目の
理由であろうと考えております。
二番目の、消費需要を
拡大するにはどうしたらいいかという
観点から今回の
税制改正案というのを眺めてみますと、恐らく関係がありそうなポイントというのは二つありまして、一つは住宅取得促進
税制の創出ということで、二番目が住宅取得金にかかわる贈与税の軽減、こちらの方ではなかろうかと考えております。
住宅ローンに関して少し述べさせていただきますと、まず、日本の
国民の貯蓄率というのが大変高い、これは
海外からいろんな批判を浴びているわけでございます。
現在日本人の
家計の貯蓄率は一八%でございます。この一八%という数字は、貯蓄の金額を可処分
所得で割った数字でございます。御承知のように、可処分
所得と申しますのは、
国民が給料とか、あるいは自営業の方ですと利益とか、こうしたことによって稼いだお金から
税金等を引いた金額でございます。この貯蓄率一八%というのは
海外と比較しましても大変高うございまして、
アメリカですともう七%ぐらいになっております。ヨーロッパ諸国も大体一〇%から一二%ぐらいで、日本より高いのはイタリアぐらいである、こういうふうな数字が出ております。非常に貯蓄率が高いので、日本人は生活にゆとりがあるんじゃないかと
海外から批判されているわけでございますが、実はこの一八%という数字、必ずしもゆとりを示してはおりませんでして、むしろこれまでのツケを払っている、こういう側面もあるわけでございます。
と申しますのは、貯蓄率一八%の三分の一に当たります六%の部分というのが、実はこれは預貯金がふえたわけでも株式の保有株数がふえたわけでもございませんでして、これまでにしてきた借金を支払っている、この金額に当たるわけでございます。この六%というのが、実は借金を背負っている
家計も背負ってない
家計もすべて
平均した数字でございます。
ちなみに、借金を背負っている
家計というのは全体の
国民のうち何%いるかと申しますと、まず、日本の人口は大体一億人強でございますが、そのうち
所得を稼いでいる人が六千万人と言われております。その六千万世帯のうち半数に当たります三千万世帯が大体住宅ローンを保有しております。この住宅ローンを保有している人々がどのくらい可処分
所得のうちローンを返済しているかと申しますと、一四%に当たるお金を返済いたしております。大体
平均の可処分
所得が五百万円といたしますと、一四%ですから年間七十万円、月にいたしますと五万円強を住宅ローンの返済に充てているわけでございます。ですから、こうした
方々が仮に住宅ローンの債務残高の一%を税額控除されるとすれば、それによってかなりの程度消費が盛り上がるわけでございます。
ところが、ここに難点が二つございまして、一つは今回の
改正というのが、六十一年一月一日以降に居住に供する住宅について適用されるということが一点でございまして、二番目の点が、居住用財産の譲渡
所得の
課税の特例を受けた場合にはこの
制度は受けられない、この点でございます。
これがなぜ問題になるかと申しますと、現在の日本人の持ち家率、自分名義の家に住んでいる率というのが既に六〇%近くになっております。これから住宅を買う人というのは、今まで借家にいて新たに持ち家を持とうとする人であるよりは、むしろ今自分の名義で持っている家が例えば狭いとか古いとかあるいは勤務地から遠過ぎるとか、こういったもろもろの
理由によって買いかえていこうとする人々であるわけでございます。こういう買いかえ需要が今後の住宅需要の大半に当たるわけでございますので、仮にこうした買いかえ需要を
拡大させて
内需を
拡大しよう、あるいは買いかえ需要によって新しく住宅を買った人々の
税金を軽減してあげて、その分消費需要を
拡大しようということであれば、やはりそれなりの配慮が必要ではないかと思われます。ところが、今回の
税制改正ですと、どうも買いかえ需要ということは余り盛り込まれていなくて、今借家に住んでいる人たちが新たに買う場合に大変恩恵を受けるような形になっております。
先ほどからおっしゃいました
税制の公正、
中立、簡素という原則からいえば、こうしたやり方の方が恐らく望ましいと思われるのでございますが、ただ、
内需拡大という面からいいますと、恐らく今後の住宅需要は買いかえが
中心になることから考えますと、それほど金額的な住宅需要の
拡大あるいは消費の
拡大というのは見込めないのではないかというふうに考えております。
これが
内需拡大という点から見た場合の今回の
改正法に関する若干の難点でございます。
以上、消費需要を
拡大するためにどうしたらいいかということに対する私の
意見を若干述べさせていただきましたが、最後に、庶民の納税者として今回の
税制改正についてどう思うかという私的な感想を述べさせていただきますと、先ほどから
木下先生、
西野先生、
市川先生が繰り返しておっしゃいましたように、
税制というのは公正、
中立、簡素の三原則をもってすべきであり、そのためには
租税特別措置法はなるべく見直すべきである、こういった御
意見を拝聴させていただきました。もちろん専門的な難しいことは素人の私にはわかりかねる面が多うございましたが、ただ、庶民の一人として、低額納税者の一人として実感として申し上げさせていただければ、全く賛成でございまして、やはり
租税というのは公正であり
中立てあり、なおかつわかりやすいものであってほしいと願っている次第でございます。
以上、全く素人的見地で、なおかつ簡単なもので恐縮でございますが、私の
意見を述べさせていただきました。