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1986-05-15 第104回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十五日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  五月十五日     辞任         補欠選任      福岡日出麿君     倉田 寛之君      山田  譲君     糸久八重子君      桑名 義治君     太田 淳夫君      鈴木 一弘君     服部 信吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本 富雄君     理 事                大河原太一郎君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 竹田 四郎君                 多田 省吾君     委 員                 伊江 朝雄君                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 宮島  滉君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 糸久八重子君                 村沢  牧君                 山田  譲君                 太田 淳夫君                 鈴木 一弘君                 服部 信吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   的場 順三君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        外務大臣官房領        事移住部長    妹尾 正毅君        大蔵政務次官   梶原  清君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵省主計局        次長       保田  博君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        足立 和基君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        大蔵省証券局長  岸田 俊輔君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長       行天 豊雄君        大蔵省国際金融        局次長      橋本 貞夫君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        社会保険庁医療        保険部健康保険        課長       佐々木典夫君        農林水産省経済        局国際部国際経        済課長      白井 英男君        通商産業省産業        政策局調査課長  深沢  亘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○有価証券に係る投資顧問業規制等に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○預金保険法及び準備預金制度に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国有財産法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     —————————————
  2. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 赤桐操

    赤桐操君 ただいま審議に入っております財源確保に関する法律でございますが、この二条の四項、五項には特例公債借りかえの規定が書かれております。この内容を見ますると、四項では「国の財政状況を勘案しつつ、できる限り行わないよう努めるものとする。」また第五項には「第五条ノ二の規定による償還のための起債を行った場合においては、その速やかな減債に努めるものとする。」こういう二つの項目が置かれているわけであります。  まず第一点の、「できる限り行わないように努める」、こういうことなんですが、この「できる限り」とは一体どういうような意味のものであるのか。「努めるもの」とは財政当局としてどのような努力をするということなのか。この点をひとつ伺っておきたいと思います。
  4. 保田博

    政府委員保田博君) 先生既に御承知のことでございますけれども特例債発行しました五十年度以来五十八年度までは、特例公債はやむを得ず発行したとしましても償還期が来ますと全額これを現金償還するということでございました。しかし、五十九年度財確法におきましてこの借りかえ禁止規定を削除させていただいたわけでございます。その結果、赤字国債につきましても、全額現金償還ということではなくて一部償還のための借換債発行するということがやむを得ずお許しをいただいたわけでございます。しかしながら、特例債というものはこれはできるだけ早く残高をなくすることが必要であるということは当然のことでございます。釈迦に説法かもしれませんが、経常的経費に充てる財源が不足するためにやむを得ず発行した赤字国債でございますから、その償還並びに利子負担を後世代に残すということは我々の世代としましてまことに慎まなきゃならぬことであるということでございます。  したがいまして、やむを得ず借換債発行するといたしましても、その借換債発行額はできるだけこれを少額にするというのが四項でございますし、そうやってやむを得ず発行した借換債につきましても、できるだけ早く残高を減らすという のが第五項の趣旨でございます。できるだけということは、先ほど先生も御質問の中でおっしゃいましたが、「国の財政状況を勘案しつつ、」ということでございまして、そことの兼ね合いということができるだけという言葉意味するところではないかと考えておるわけでございます。  この借換債を認めていただくという際に、ではどういう考え方でやったのかということをざっと振り返ってみますと、赤字国債としての新規財源債というものと借換債というものの性格はやはり違ったものがあると思うのでございます。  そのまず第一点でございますけれども、借換債発行というのは、いわば過去の債務償還するための財源の調達ということでございますから、この発行それ自体としては新たな債務残高増加をもたらすものではない。これに対しまして、赤字国債でも新規財源債として発行されるものはこれは新たな債務残高増加をもたらすものである。そういうふうな性格の差がございますので、財政改革を進めるに当たりましては、まず第一に、一般会計におきまする単年度ごと新規財源債としての特例公債発行新規発行をとにかく六十五年度にはゼロにしたいということをまず第一段階の目標としたわけでございます。そうすることによりまして、新規特例債発行がゼロとなりますれば、特例公債残高はそれ以後ふえることはないわけでございますから、そうなりました段階で、今度はその特例債の残っております残高につきまして、財政状況を見ながらでございますけれども、できるだけ早く減らしていきたい。そういう順序で、まず新規財源債としての特例債発行をゼロにした後でできるだけ借換債発行並びにその残高減少に努めたい、そのための財政改革を進めていく、こういうふうに御理解をいただけたらと思います。
  5. 赤桐操

    赤桐操君 一昨年の大蔵委員会財源確保等に関する法律で大論争をやった経過があるんですよ。私はそのときに、十年という期間国民に対する担保ではないのか、十年償還するという赤字国債の十年という期間国民に対する担保ではないのか、国が借金する上において。担保のない借金というのはない。そういうことで今のやつを全部取っ払うということについてこれは反対だということをはっきり申し上げたはずなんです。だから、言ってみれば赤字国債というのは十年で返すのが原則なんですよ、そうでしょう。それを借りかえとかいろんなことをやることはこれは原則に反するんですよ、どだい。そういう意味で一昨年私どもはもう猛烈に反対したわけです。これは建前に反するし、本来の趣旨と違うんじゃないか、建設国債子孫に橋でも道路でも残すことができるけれども、これは残すものではない、子孫にこういうものまで残してやるものではない、十年を担保として借りたものじゃないか、担保を取っ払うような借金というのはないだろう、こういうことでやったはずなんです。  しかし、今あなたの説明を聞いていますと、それはもう通り越しちゃっているわけだな。借りかえというのはこれは新しい国債発行ではございませんと、こういう建前から出発したという。私どもはそうじゃなくて、十年担保のものなんだからもう早くこれは返済しなきゃならぬじゃないのか、こういう考え方に立っている。  そこで伺いたいと思うのは、できる限りとかできるだけとかという言葉のあやではなくて、そういう私どもの立場からあなた方に伺いたいことは、それなら財政当局は一体本当にこれを返済していく見通しはどうなんだ、こういうことになってくるんですけれども、この借換債を出すということについては当然それが裏づけられるんじゃないですか。その見通しというもの、その考え方というもの、これなくして借換債というものはあり得ないと私は考えるんですが、どうですか、その点は。
  6. 保田博

    政府委員保田博君) 先生の御指摘のとおり、特例債は十年を限度としまして、それ以上借金を後代に残すことはないということでスタートしたわけでございます。でございますが、その後財政状況はますます厳しくなっておりまして、五十五年度以来歳出削減を中心としました財政改革に努めておるわけでございます。  赤字国債償還期が来るごとにその全額現金償還するということになりますと、当然のことながら一般会計からその金額を繰り入れなければならないことになるわけでございます。この一般会計から赤字国債全額償還のための財源繰り入れるということになりますと、そのことは当然財政事情歳出歳入両方にまたがりまして非常に厳しい制約を課するわけでございます。その結果としまして、歳出の現在以上のより厳しいカットをするか、あるいは極度の負担増を求めるか、いずれしかないわけでございます。あるいはその組み合わせということもございましょうが、そのいずれかしかない。しかし、そのいずれの道をとりましても、一方では国民の生活あるいは国民経済に対しまして少なからざる影響を与えるということから、やむを得ず借りかえをお認めをいただいたわけでございまして、しかし、さはさりながら、御指摘のとおり、この残高減少のために財政改革を一生懸命汗を流しながら進めていきたい、こういうことでございます。
  7. 赤桐操

    赤桐操君 特例債発行はなるべく行わないようにするんだという建前でこの項目が入っているわけでありますが、そこで特例債の今後の十年間の要償還額、これをひとつ明らかにしてもらえませんか。
  8. 保田博

    政府委員保田博君) 多少の前提がございます。  第一は、今後の特例債発行額でございますが、昭和六十五年度には特例公債に依存しない体質にするということでございますので、今後一兆三千百億円ずつ新規特例公債発行額を減らすという前提。それからもう一つは、先ほど来おしかりを受けておるわけでございますけれども赤字公債についても四条債と同様の六十年償還ルールで一部の借換債発行させていただくという前提での試算を御紹介申し上げますと、その場合の特例公債償還額は、昭和六十一年度で約三兆五千九百億円、それから六十二年度が四兆六千億円、六十三年度が三兆四千億円、六十四年度には、五十四年度特例債発行を大幅にふやさざるを得なかったという事情もございまして、償還額は六兆五千四百億円、それから六十五年度には七兆四千二百億円、六十六年度六兆一千四百億円、六十七年度七兆四千百億円、六十八年度七兆一千百億円、六十九年度六兆八千億円、七十年度八兆一千百億円というふうになっております。
  9. 赤桐操

    赤桐操君 今のような数字を見ますると、借換債発行を行わないように努めると、こう言ったって努めようがないんですね、これは実際問題として。さらに、六十一年度以降六十五年度までの、それ以降も特例債を出していく危険性が高くなってきておりますが、そうなると、借換債発行を行わないなんということは、そういう芸当はできないということになってくるんじゃないですか、実際問題として。  ここにこういう項目が入っておりますけれども、これは全く何の意味もない項目になる、こういうように私は思うんです。できる限りであるか努めるかどうか知らぬけれども、やれるんですか。
  10. 保田博

    政府委員保田博君) 御承知おきのように、国債整理基金の資金の状況も、過去におきまして定率繰り入れを五年間停止をいたしてまいりましたといったようなことから枯渇状況にあるわけでございますから、特例公債全額償還期が来るごとに償還をするということになりますれば、当然これは一般会計から繰り入れをしなければならない。そのための余裕といいますか、そのための財源一般会計歳出歳入のやりくりの中から捻出をしなければならないというのが基本でございます。ではございますが、先生指摘のように、現在の財政事情は非常に厳しいわけでございますから、現在のところその余裕がなくて、御指摘のように、今なお新規赤字国債発行せざるを得ない状況にあるわけでございます。  でありますので、我々といたしますれば、歳出歳入両面にわたりまする改革を毎年毎年積み上げまして、その中から財政改革を進め、新規特例国債発行をまずゼロにし、そういう状況をつくりました後で、さらに財政改革を根気強く続けることによって借換債発行をできるだけ縮減をする。やむを得ず残りました残高につきましても、極力これを減らしていくための財源を捻出するべく財政改革を死に物狂いで続けていきたい、こういう所存でございます。どうか御理解をお願いいたしたいと思います。
  11. 赤桐操

    赤桐操君 言わんとすることはわからぬわけではありませんけれども、要するにここへこう書いてあるんですよ、できる限り行わないようにするんだと。毎回出てくるたびにこう書いてある。だけど、今あなたからお伺いしたとおり、とてもじゃないけれども行わないというような芸当はできない。これは有名無実の空文なんです、書いてあるだけで。七十年度なんて八兆一千百億円でしょう。六十九年度が六兆八千、六十八年度が七兆。これはとてもじゃないけれども問題にならぬですよね。  こういうようにできないことをわざわざ書かなきゃならぬというのは一体どういうわけなんだ。これはもともと議員立法で出しているわけじゃなくて、一昨年からこういう形で出ているんですからね。当然これはもういろいろ提出する前においては関係方面意見調整を全部やって出されたと思うんですけれども、どう考えてみても、国債管理政策それから財特法、こうしたものから考えていってみて、つじつまの合わないものだと私は考えております。  したがって、そういう意味で、せっかく書くならばこの条文が守れるんだということが明らかにされなければ意味がないだろうと、こう思いますが、あなたどうですか、この点は。
  12. 保田博

    政府委員保田博君) 御指摘のように、四項、五項の規定を文字どおり実現するというめどは現在必ずしも持ち合わせていないまことに残念な状況にあるわけでございます。  先生の御指摘は、赤字国債現金償還のための財源を捻出すべきいわば財政計画というようなものを将来にわたって提出せよ、それが担保である、恐らくそういう御主張なのかと思うわけでございますが、財政はやはり経済情勢あるいは社会情勢その他にも非常に大きく影響をされるものでございます。今後の経済成長あるいは物価の状況等々によりまして税収につきましてもかなり大きな変動があり得るわけでございます。歳出の将来につきましては、我々毎年毎年厳しい予算の査定を通じまして財政改革を進めておるわけでございますけれども、今後の歳出の規模につきましてもなおいろいろ変動の要因もあるというようなことでございます。  したがって、一義的に、今後各年度にわたりまして赤字国債償還のための財源をかくかくしかじか捻出できるという見通しを、具体的な数字をもってお示しすることはできませんけれども、そういう方向に向かって毎年毎年の予算編成におきまして汗をかいてまいりたい、こういうことでございます。
  13. 赤桐操

    赤桐操君 大変汗をかきながらいろいろ御苦労いただいていることは、私たちもその労苦を多としておりますよ。それはわからないわけじゃないけれども、出ているから質問しているわけです、私は。できるだけというなら、きちっとそのとおりやらなきゃいかぬじゃないか、こうなるんだけれども、言いわけになったんじゃこれは法律じゃないですよ。意味ないですよ。  それからさらに、今あなたもおっしゃっているように、五十一年度の補正以来もう定率繰り入れをやめたんですから底をついてきていますよ、これは確かに。私も承知していますよ。だから、こんな状況の中で借換債裏づけをどうするかといったって、これは減債措置といっても容易なことじゃない。これもわかる。  それからもう一つは、NTTの株の問題が一つあるでしょう。これは去年、おととしあたりから竹下大蔵大臣とらの子みたいに大事にされてきたようでありますけれどもNTTのこれだって、六十一年度から六十五年度までといったって毎年四千億ぐらいでしょう、見込みは。六十六年度を加えたってせいぜい、幾らぐらいになるんですか、大したことないでしょう。そうなってくると、これである程度の救いということになるかもしれぬが、額から見ていったってこれはそういうあれにはならないと思う。先ほどの償還額から見ていったってこれは問題にならないという程度のものでしょう、このNTT売却益にしたって。これはどのくらいに見込んでいるんですか、あなたは。政府資料によれば、僕らは各年度四千億程度だなと見ていますけれども、もっとこれは高く売る方法があるんですか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど来の御議論でございますが、それこそ、要するに五十八年度までの特例法では、いわゆる努力規定でなしに借りかえは禁止規定であった。しかし、努力規定あるいは訓示規定と言われようとも、そういうものが残っておることによって我々も汗をかかなきゃいかぬということで、努力規定に五十九年から変わって、それが今日六十年、六十一年と続いておるわけであります。五十九年というのはまさにその意味においては大政策転換であったということになろうかなと思っております。  ただ、四千億しかないじゃないか、そのとおりでございますが、今の場合は、本当はまだ値決めしたわけではございません。しかし、とはいえ、まさか額面で出しておくわけにもいかぬ。将来の値決め影響しない何らかの説明のつく額を計上しようというので、純資産を株式総数で割ったという機械的なもので四千億、こういうことを書いておるわけでございます。  それはもっと高く売れるだろうとおっしゃる人もございますが、これは株のことでございますので、はい売れるでございましょうとも、今のところ、要するに価格に影響を与えるような発言はしてはならぬ、これから専門家に決めてもらおう、こういうことでございますから、売り方について、三日前に初めて国有財産中央審議会に私行きまして、本当に久しぶりに楽しいような気がいたしました。そこで、検討会はこういう結論を出しておりますが、皆さん値決めはどうしましょうかと。それでおおよその方向をこれから出してもらうわけですから、私も、いわゆる純資産割る株式総数のものよりはそれは高く売れるだろうという期待も持っております。何倍になるかというと、そこまでは私も予見できないわけでございます。  しかし、そういうものが初めてこの六十一年度から書けたわけですね。五十九年、六十年は、赤桐さんにしかられながらも、期待感は述べておったけれども数字には少なくとも書けなかったわけでございますから、それがおよその値決めがつきますと、来年からはまたそういう数字がそっちへ入っていくというようなことですから、やっぱり国債整理基金特会の中のとらの子になることは間違いありません。
  15. 赤桐操

    赤桐操君 大変蔵相からいろいろの御説明をいただいたわけでありますが、いずれにしましても、どうもこのとらの子をもってしても、これはとてもじゃないが縮まってこないと考えるわけであります。  そうすると結局、言ってみれば四項、五項なんというのは精神規定というか、本当にこれはもうどうにもならないような内容のものでありまして、言ってみれば、今竹下大蔵大臣の御答弁にもありましたけれども、この基本的な考え方が転換したのだと、こう言われますが、しかし、正直申し上げて、これだけの償還額をやっていくのにはそれだけのやはり対応する政策なりそういうものが出てこなきゃならぬはずであります。こういうものを常に努力するんだ、あるいは努めるんだというだけでもって、お茶を濁されると言うと語弊がありますけれども、そういう形で推移していくということはこれは少なくともいかがなものか、こういうことになると思うんです。  私は、去年もこういう形で出ているし、ことしも出ているわけでありますが、来年もこういうことで出すのかということになると、この四項、五項なんというのはもう削除してしまって、きちっとした姿勢を国民皆さんに明らかにする、そういう政策裏づけをこの際ははっきり出すべきじゃないか。こういう状態で来年も続けますよ、再来年も続けますよということは許されませんよ。後段で私はあともう一つ別質問に入りますが、私はこんな状態をいつまでも続けていくということは許されないと思うんです。  久しぶり大蔵大臣も、言うなれば電電株論議の中で気分よく論議に参画されたようでありますけれども、それもつかの間の話であって、到底そういうものだけでは賄うことはできないわけで、四項、五項を一応の盾にとりながら当座を過ごしていくというやり方をいつまでも続けることはできないと思うんです。これは一時の盗み休みみたいなものですよ、私に言わせれば。そういうことでは、国民皆さんを本当にきちっと納得させ、信頼を確立しながら財政の運用をするということはできないんじゃないか。国債というものは、これは申し上げるまでもありませんが、国民からの借金ですから、それに信用がなくなったらもう終わりになるでしょう。十年を取っ払ってしまった。  そういうように、考えるというと、私はもう四項、五項はそれこそ削除をして、それにかわるところのきちっとした政策を提示する段階に来ている、こう思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お言葉でございますが、特例債というのをこうして毎年毎年御審議いただくという姿勢は、私は本当は、非常に楽に考えますならば、向こう何カ年間、金額は予算で示すというようなことにすれば一回で済むかもしれませんけれども特例債でございますから、やっぱり毎年毎年国会でいじめられながら、そのいじめられることによって猛烈に緊張するわけですから、やるのが本当はいわゆる財政秩序に対するせめてもの姿勢じゃないかな。  毎年毎年そういう精神規定訓示規定も残しながら、今のような質問をいただきながらやりますから、少しでも何とか工夫をしようという内なる縛りがかかってきて、大蔵大臣の出席時間は大変でございますけれども、本当は特例債というのはそれだけ汗かかなきゃいかぬものだなということで毎年お願いしておるところでございます。
  17. 赤桐操

    赤桐操君 特例債の問題いろいろとございますけれども、ことしはこういうことで出ておりますが、来年の段階からは、財確法では、こういった単なる精神、慰め的なもの、気休め的なものはもう条文から外す、こういうことにして、それに見合うところのきちっとした政策を提起するように私はひとつ求めておきたいと思います。  それから次に、特例公債の予定額についてことしも出されております。六十一年度発行予定額は当初予算分で五兆二千四百六十億円になっております。六十一年度財政の運営をこれで賄えるかどうか、この点ひとつ大蔵大臣のお考えをただしておきたいと思います。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 恐らく、この法律を通してもらっても、いろんな経済情勢の変化で追加発行でもしなきゃいかぬようになるんじゃないかという懸念をも含めてのお尋ねだろうと思います。  一つは、六十年度の出納整理期間発行、まだ発行しないで残っておりますのが千三百億ぐらいあります。これまだどうするかきちんとは決めておりません。それを発行しなくても、結果として発行しなくても、不用とか節約とかあるいは税外収入とかいうようなもので決算ができるかもしれませんし、しかし、もしできなくては大変だから幾ばくか発行しておくか、こういうことが恐らくそう遠くなく決断をしなきゃならぬと思っております。が、三月末まではまずまずでございますが、三月期決算の法人税が全くわかっておりませんので、今のところ、非常に悪い方向で仮に見ても、よく言います、補正後の一%は誤差のうちぐらいなところでおさまるんじゃないか。だから、出納整理期間発行はできたらしない方がそれはいいわけですけれども、その辺は私どもに授権していただいておるわけですから、これからの決断をどうするか、六月までに、六月に入ってからでもいいわけですが、決断をしなきゃならぬ問題であります。  そこで今度は六十一年度でございますが、六十一年度ということになりますと、それは何分まだ要するに税収等の見込みが全くつく段階じゃございませんので、今の段階で言えば、下から積み上げた予測数字で、見込みでございますので、大きく崩れることはないでしょうと言わざるを得ないと思います。
  19. 赤桐操

    赤桐操君 そういうことだとすると、これは経済の動向や税収の状況を見なきゃわからない、こういうことになると思うんです。  六十年度当初予算のときには、特例債発行見込みが五兆七千三百億円だった。これが補正で約四千億円増発されたわけでありまして、したがって、当初予算では対前年七千二百億円、こういう減額予定のところが、実際には補正でそれだけ出ましたから三千二百億円しか減額できなかったということになると思うんです。この補正で、毎年度一兆円ずつ特例公債を減らすという政府の財政計画、これは、六十五年度までそういうことで、後は公債発行については、赤字国債については脱却したいというのが当初からの計画だったと思いますが、これはいささか財政計画全体から見て問題の段階に来たんじゃないか、こういうように私ども指摘してきているわけです。  もし六十一年度において同じような事態が起こるということになれば、補正段階では六十一年度特例公債の削減ができないということにもなりかねないのではないだろうか、こういうように思うんです。そういう危険性はございませんか。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに税収に三角を立てた分だけ四千五十億円をいわゆる特例債の増発ということで補正予算を組ましていただいたわけです。五十六年、五十七年は世界同時不況で三兆、六兆というような歳入欠陥がありましたが、五十八年、五十九年ではそれぞれ三千三十五億、八百三十六億というものを決算ベースで減額ができた。それで、今おっしゃいましたとおり四千五十億が六十年では追加発行をした。それがまた千三百億は発行しないで今日ございますが、どうするかというのはこれからの判断。  そこで六十一年度ということになりますと、今日時点で、大体そうなりそうでございますというわけにも、まだ年度始まったばかりでございますから言えないというお答えをせざるを得ない。経済動向の中で税収が本当に落ち込めば、それは六十年度措置のようなものも絶対にないとは言えぬと思いますけれども、現段階ではまだそれを見込んでお答えするような月数の進みぐあいでもないということであります。
  21. 赤桐操

    赤桐操君 六十一年度特例債の追加発行危険性はどうかという問題で今お尋ねしたら、大臣はそういう御答弁でありますけれども、私は率直に申し上げて、またいろいろそういう見方が各方面から強く出てきていますけれども、かなり追加発行危険性は高いのではないか、こういう見方が強いようであります。政府の特例債削減による六十五年度財政再建にこの結果は大変な大きなストップがかかってしまうだろう、こういうように憂慮するわけであります。財政当局にそうした懸念、不安はない、こういうことになりますか。それとも不安がございますか。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今のところは、一生懸命頑張りますということに尽きるのかな、まだそれこそ四月、五月を歩いたばかりでございますから、そうお答えせざるを得ない。ただ、いろんな経済指標などが出ますと、これは確かに——まあ今のところはそのとおりでございます、個別税目ごとに適正に見積もったわけでございますから。だから、今日の時点では確たることを申し上げるわけにはまいらないということでございます。しかし、六十年度も当初追加発行しますなんということは答弁してないわけでございますから。結果 として補正予算でありました。  ちょっと見ても、五十七年は別といたしまして、結局三兆八百四十七億追加発行しておりますが、五十八年度はいわゆる減額の方で三千三十五、五十九が減額の方で八百三十六。それで六十年が四千五十ということになっておるということでございますので、六十一年にそうなるかもしれませんというのを現時点でお答えするわけにはいかぬだろう、適正に見積もっておりますということであります。
  23. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、これは私の取り越し苦労だということでよろしいわけですな、大臣。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 取り越し苦労であったと言ってもらえるように頑張ろう、こういうことであります。
  25. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろお伺いしてきておりますけれども、私がそういうことをいろいろ申し上げてきたのは、六十年度、六十一年度ともに税収が政府見込みを達成できないという状況でありまするし、税収に大きな穴があく危険を感じるからこれは指摘しているわけでありまして、最近の報道等を見ましても、六十年度の税収については補正で減額したものが確保できそうもない、こういうように報じられております。これは六十一年の五月三日の日経だと思いますが、その辺で出ておるようです。そういうようにいろいろ出されております。税収見込みが法人税で大体二千億から三千億の穴があく、こういうように報ぜられておりますが、政府の六十一年度税収見込みは、六十年度税収を前提にしているわけでありますから、土台の部分に大きな穴があくということになればこれは大変なことになる。去年もこんな論争したことを私は記憶しておりますけれども、ことしも同じような事態になってきているんじゃないか。  六十一年度税収見込み当時は、さらに加えて、去年と違うのは、円高がなかったんですね。ことしはこれに円高が加わっておる。去年の十二月ごろには円レートは二百円ちょっとぐらいだった。ところが円高がその後出てきて、今日の段階になるというとこれはもう大変な、百六十円台にまで上がってきちゃっている。そうなると、まずこの円高不況による企業収益の悪化がもろに出てくるのではないか。恐らくことしの後半には出てくるだろう。六十一年度税収にはそういう昨年とは違った場面が展開されるのではないだろうか。企業収益が悪化する、賃金、ボーナス、さらにはまた消費面にまでいろんな影響が出てくる、こういうことになってくる。どうも税収を高めていくためには悪い条件ばかり重なっているんじゃないだろうか。こういうように私には感ぜられるわけです。  そこで、六十一年度税収は本当に見込みどおり入るかどうか、その辺のところをひとついろいろ私たちも重ねて伺いたいのでありますけれども、そうであればもうこれは問題ない。今も大臣が大分いろいろの御答弁をなされておりますが、もう一度ひとつその点、先行きの展望を含めて御説明願いたいと思います。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、一番私どもわかりやすいのは、従価税であります石油税が、これは今の状態が続くとすれば恐らく明瞭に落ち込むと思います。二月末がバレル当たり二十七ドル台で、三月が二十二ドル台で、それで四月末が十六・四幾らでございましたから、恐らく今ごろ十四ドル台のものが入りつつあるのではないか。そうしますと半値でございますから、したがって、価格に従って課税する従価税でございますからこれは落ち込む、将来上がれば別でございますけれども。  しかし、またこのことは別の意味において、今円高ということを前提の御議論でございましたので、輸出が弱含みとなっております。Jカーブでございますから、いわば値上げできる製品、これはドル建てではふえております。が、明瞭に数量ベースで少しずつですが落ちてきておりますから、したがって輸出が弱含みとなって企業の景況感に影響が出ているということであります。  それからもう一つ別の角度からいえば、物価が極めて安定している中で、内需は今日着実な増加基調にある。それで全体として見ると緩やかながら内需中心の拡大局面にある。私どもが政府見通しで、内需で四・二、外需で三角〇・二として、それで差し引きで四%成長、こういうことを申し上げておるわけですが、OECDの、これも客観的な見方とある程度言えると思いますが、これは四・二五内需で引っ張るだろう、そのかわり外需でマイナス一・〇、それで三・二五と見ておりますから、いろいろな見方がございますけれども、やっぱり円高のいわゆる交易条件改善効果、これは出てまいります。今直ちに出ておるのは電力とガスでございましょうが、全般的に出てまいります。それから原油価格、いわゆる石油税そのものじゃなく、原油価格が低下したことによるところの企業収益の改善、これが将来考えられる。  それから、三回にわたって行われた内需拡大策と公定歩合の引き下げ、この効果が今後本格的に出てまいりますので、結局インフレなき安定的成長というものにつながって、よく言われる、今デメリットが非常に多く出ておりますが、下期に至っていわゆる安定的成長というものが持続されるであろうというのが一般的な今日の見方であるということでございます。
  27. 赤桐操

    赤桐操君 私は、六十一年度政府見込みの租税収入が四十兆五千六百億になっておる、これがまず確保できるかどうかということが大きな問題だと思うんです。その点については恐らく大臣も余り自信がないんじゃないかと思う。だからなかなか言い切れない、こういう状況に置かれている。対前年増収見込み二兆百億円、これは私は倒底難しいんじゃないだろうか。まずこの半分だろう、こういうふうに概算を見る。  その一つの根拠は、今回%台の安定成長を六十一年は続けるだろう、こういう見方をされておりますけれども、最近の民間機関は、権威ある民間機関のどの数字を見ても、六十一年度経済成長率の見通しをそう見ているところは一つもない。まずその半分です。二%台に全部下方修正しているじゃありませんか。これを、今述べられたような諸条件をもとにして、当初の二%から三%程度のものを四%台に戻しているなんというのはまずない。高目に見たところがみんな低目にこれを修正している、こういう状況なんです。  そうすると、政府の四%成長見込みというのは、いろんなOECDや何かの例を言われておりますけれども、結局はいささか当初の見込みとして高過ぎたんじゃないだろうか、こういうことをまた再び私は指摘せざるを得ないのであります。円高不況でますますそのことがはっきりしてきている。こういう点を私はどうしても指摘をせざるを得ないと思うんです。  そうすると、ことしのこれからの見通し、こうした税収その他を含めた見通しというのは大変な事態になるのではないか。秋には恐らく決着がつくことになるだろうと思いますけれども、今蔵相が言われたようなそういう見方があるかどうか知りませんが、もともと政府の見方というのは常にそういう見方で来ています。昨年もそうでした。だけれども実際はみんなそうじゃないんです。だから私は今こういうように再度指摘をするわけであります。そうでなければ結構な話でありますが、その点どうですか。
  28. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) ただいま御指摘のとおり、最近の急速な円高ということで我が国経済に大きな影響が出ているということは御指摘のとおりでございまして、特に輸出面での伸びの鈍化ということははっきりしているわけでございます。  ただ、私ども、全体の方、経済成長率というのを見ます場合に、六十一年度といったような期間をとって見ます場合には、当面そういった円高のデフレ的な影響というものと、それから円高によりまして経済全体に出てまいりますいわゆる価格効果と申しますか、経済的に見ますとプラスの面というものもあるわけでございまして、当面今の円高でそういったものが、いわゆる円高メリットということで言われておりますが、そういうものが生じているわけでございます。ですから、こう いうものがいろいろな形をとりまして全体の経済に均てんしてくる。特にそれは現象的には物価の低下と申しますか、安定と申しますか、そういう形で均てんしてくるといったような効果があるわけでございまして、これが全体の経済に、いわゆる今申し上げたようなデフレ効果を減殺し、消費あるいは設備投資といったようなことに結びついていく面というものがあるんではないかというふうに見ているわけでございます。  それから、もう御承知のとおり、政府といたしましていろいろな内需拡大策を先般来三度にわたって講じてきております。そういったことの効果も期待されるわけでございますし、また金融面、これもかなり公定歩合の引き下げ等に伴いまして、現実の金融が緩和しています。こういったことがやはり一般的な設備投資、消費といったようなことに結びつくといった面も期待しているわけでございます。  それから、先ほど来大臣も申し上げているとおり、原油の価格低下、これは非常に急速な低下をしておるわけでございまして、三月あるいは四月といったところで顕著に低い原油が入ってきております。ですから、こういうものが日本経済に現実の形でメリットが還元する。これは電力等の公共料金の引き下げという面で還元される面もございますし、実際の市場メカニズムを通じまして還元されるという面もあろうと思います。  こういったものが実際に均てんいたします場合には、若干の時間がかかるということはあろうかと思いますけれども、そういった効果を考えますと、確かに御指摘のとおり、昨年の十二月、一月、政府が経済見通しをつくりましたときの前提と、いろいろな意味前提が違っている点がございます。ただ、その前提の差というのは、プラスに働いている差もございますし、マイナスに働いている差ということもあるわけでございまして、当面、確かに現時点ではそのデフレ効果というのがかなり出ているということは御指摘のとおりでございますけれども、全体として六十一年度というものを見てまいりましたときには、やはり内需を中心とした成長路線というものが依然として維持されているのではないかという見方をしているわけでございます。
  29. 赤桐操

    赤桐操君 それでは、私は若干東京サミットと日本経済の関係をお尋ねしておきたいと思いますが、去年の九月のG5、蔵相が行かれたわけでありますが、この会議を境にいたしまして、ドル高が大きく修正をされ円高になってきた。以来、協調介入というのが大変高く評価をされて、国際舞台ではこの協調介入というのが大変な実は比重を持ってくるようになったように思います。  それで、協調政策で各国間のこれからの問題は大体解決できるんだ、こういうように、政府もそういう態度をおとりになっているように思いますし、私どももそういうことになったのかな、これは大変いいことだ、こう思ってきたわけでありますが、どうもその後の円の異常な暴騰ぶり、それから、政府は協調介入、協調介入と言われるんだけれども、円高についての問題をめぐっての状況を見ていると、さっぱりこれには歯どめがかからない。それで協調政策万能というようなわけにはいかないんじゃないか、私どももこれはいかぬというように考えるわけであります。  結局は、各国とも自分のところの利益というものをこれは基準にするわけでありまして、それを十分に計算に入れた上で協調介入もやるだろうし、協調と称する行動にも出るのだろうと思いますが、どうも今回のサミットを見ていると、大変冷ややかなものであったんじゃないだろうか。円に対する協調介入なんということは考えられることもなかったんじゃないだろうか。もう頭からそでに振られた、そんな感じを強く国民に印象づけているんじゃないだろうか、こう思うのでありますが、その点ひとつ御答弁願いたいと思います。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今度のサミットから見ますと、今おっしゃるように、私は新聞論調等でもそういう批判をいろいろいただいております。それを別に避けようとも思いませんけれども、本来少し期待感も大き過ぎたんじゃないか。と申しますのは、G5というのは、五人の大蔵大臣と五人の中央銀行の総裁とが、すなわち十人で会議をするわけであります。  そこで、少し時間をいただいて申し上げさせていただくならば、要するに、我が国は、例えばここへ澄田さんと私とがこう呼ばれたり、何か中央銀行と大蔵省ツーカーと、こういう感じがいたします。ところがほかの国は、政権が交代したりしますから、中央銀行だけは政治の恣意に左右されない存在だ、すなわち非常に中立性の強い、独自性の強いものである。それは実際そうあってしかるべきだろうと思います、通貨の番人ですから。それだから、サミットというのは中央銀行の総裁はいないわけでございますから、ここでは具体的ないわゆる通貨についてのレートの話というのはどっちかといえば禁句でございます。政治が左右した通貨ということは、それは中央銀行の方で見ればかたくななまでにも遮断したいという気持ちがあろうかと思います。したがって、基本方針しかこれは議論できるところではない。  そこで、中曽根総理初め私もでございますが、とにかく今急激な円高で日本経済がこのような困った状況が出ておるということの説明はいたします。そこで最終的に、ウィリアムズバーグ・サミットで合意しておるように、お互いが政策の調整をやって、それがサーベーランスになるわけでありますが、そして有用と認める場合は共同して行動する、すなわち協調介入するという原則を再確認をしたということになるわけであります。  それで、あのサミットで個別通貨の話まで入り込む会議では現実ないわけですけれども、それに対する期待が私はあり過ぎたんじゃないかな。弁解になりますので余り言わぬようにしておりますが、実際サミットそのものは個別の通貨を議論する場ではないということであったことは事実であります。ただ、基本的な政策の話をしてもいいわけですから、それで政策協調をやろうやということになりまして、今までG5というのは、これは本当におかしな話でございまして、ベルサイユ・サミットで、おまえさんら五つはSDRの構成国だから、時に集まってお互い相互監視したらどうですかというのは決まっているわけですけれども、大体ないしょでやってきたわけです。G5というのはインフォーマル、まさに非公式な会合であった。ところが、今御指摘なさいましたニューヨークのプラザ合意、去年の九月二十二日で、何か世界じゅうがG5というその場所が権威あるようにみんなが思って、そうなると今度は、イタリー、カナダで見ますと、サミットに参加しておって、G5と我々とは先進国の中で色分けするのかということで、今度はG7でやろうということになったわけであります。しかしG7にしても、イタリーとカナダはSDRの構成国じゃないわけですから、五カ国でお話し合いするのも結構だというので、G5もG7も両方ともに国際的にオーソライズされた、こういうことになったわけです。  それで、きのうも連絡がありまして、近く、うちで言えば大場財務官あるいは行天国金局長、これらが代理会議というもので、サーベーランスのやり方をできるだけ早い機会にこれだけは決めようじゃないかということがきのうまでの段階でして、それで政策協調といいますと、日本はもっと内需拡大しなさい、市場を開放しなさい、アメリカは財政赤字をもっと減しなさい、それからヨーロッパは構造変化して失業者があんなに多い状態を直しなさい、大ざっぱに言えばそういうものが、今度は、失業率だのインフレ率だの経常収支だの、いろんな数字をIMFの方でつくってもらって、それを基礎にしてお互いが議論し合おう。しかし、それを余りがっちりやりますと、いわば政策主権を侵す、お互いが内政干渉のし合いになるというようなことではいかぬから、その辺はお互い節度を持ってやろうということが決まったということでございますので、個別の通貨についてお話しするようなG5ないしG7というのはいずれあろうかと思いますけれども、この間のサミットは個別通貨の会議をする場所ではなかったとい うことでございます。  ただ、お互い私どもも言い合いしますから、それはいわゆるドル以外の通貨で、円ももちろんでございますが、もうここまでは適正だぞという国も複数ありますし、いやもう少し市場がどう判断するか見ておるべきだという複数国もある。しかし個別の通貨の話し合いはしない。こういう性格のものであったというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。  ただおっしゃいますとおり、きのうちょっと反転いたしましたけれども、日本が百六十四円で終わりまして、地球が丸うございますので、ロンドンの終わりが百六十三円八十五銭になって、ニューヨークの終わりが百六十三円六十五銭で、それから米国の西海岸が百六十三円五十銭で動いておって、日本の寄りつきが百六十二円九十銭というような感じで動いております。  それからもう一つ、五十九年のときも赤桐さんと長い議論をしましたので、あえてつけ加えさせていただくならば、大体いつも一日の出来高が二十五、六億ドルでございます、東京市場は。最近五、六十億ドル出ますからね。そうすると、仮に日本の貿易が三千億ドルぐらいとしまして、五十兆円ぐらいとしますと、為替市場だけで百兆以上動いておる。こんな感じは、幾らか市場の投機性というような思惑というものも見定められるような感じがいたすわけでございます。
  31. 赤桐操

    赤桐操君 去年からの経過を考えてみる必要があると思うんですよ、いろいろおっしゃっておられますけれども。いずれにしても、九月の段階におけるG5を境にして円の対策に入ったことは事実じゃないですか、我が国が。私も大蔵委員会で澄田総裁と竹下大蔵大臣に、その後の状況等をずっと見詰めながら、多分ごとしに入ってからだと思いますけれども、ちょっと円が急激過ぎやしないのか。これは大変な反動が出てきていますよ。中小企業の動きも非常に苦しくなっている。下請に全部いろいろしわ寄せもきている。そういうことを私たちが町を歩いているといろいろ業界から話がもたらされる。そういうのを踏まえて、いささか急激過ぎやしないのか。たったわずかに去年の九月から三、四カ月の間にぐんぐん上がってきている。二月現在で百七十円だったでしょう。そういうやり方でいっていいのかということで私も指摘したはずであります。  これについては澄田さんもいろいろ答弁されておりましたけれども、特に財政当局の方の答弁は、円高にはプラスもたくさんございましてと大分長々と述べていましたよ。それだけのプラスがたくさんあるならば不況の方は相殺されるのかなと思っていましたところが、それは逆になってきている。そういうことだと思うんですよ。そういう円高をとにかく全力を挙げて支えてきたわけでしょう、政府も日銀も。それで今日いろいろ、ちょっとこれは円高になり過ぎたんじゃないか、過熱し過ぎたんじゃないか、これをひとつ協調介入かなんか求めて何らかの格好をつけなきゃならぬということで、いろんな言いわけはなさっているけれども、このサミットでかなり各国の了承を得ようということが期待され、また中曽根さん御自身のこれに対する勝負というものではなかったか。  そういうように見ますと、言うなれば私は円高礼賛のこの半年ぐらいの間の経過だったんじゃないかと思うんですね。こういう政府の指導といいますか、これはやっぱり私は大変大きな責任があると思うんですよ。これによって大変な日本の産業界や経済界に新しい混乱が発生しているわけなんだから。円高というのはプラスでございますと大分強調されていましたけれども、プラスがマイナスを相殺するほどのプラスかなと思って聞いていましたが、とんでもない話だ。そういう意味では私は政府の責任は大変重いと思うんですが、この点いかがですか。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに全体的に、ニューヨークのプラザ合意というものは、要するに今のドルと非ドル通貨との間が、すなわちドル高ということが経済の実態を反映していないじゃないかということが合意されたわけですね。したがって、今度はドル以外の通貨がそれからその政策判断の中でぐっと強くなって、だが私どもは、為替は市場が決めるものですからターゲットをお互いが持つということはいけない、しかし何ぼ何でも急激過ぎるという認識は持っておるわけです。  したがって、今おっしゃいましたように、もう私もこれは批判を受けることを承知の上で輸出産業の現場へも出かけますと、それは例えて申しますと、岐阜の多治見へ参りました。これは陶磁器でございます。全くそれは一番もろに打撃を受けておる。あの方々がおっしゃいますのは、我々は日米貿易摩擦を起こしたわけじゃない、アメリカにないものをつくっているわけですから。ただ完全にシェアがNICSカントリー、まあ韓国、台湾の方へ移ってしまって、そしてこの間もバイヤーがおみえになって、一番いい見本だけはくれと、見本持って今度は韓国、台湾でこれができぬかと言われたというような話までありまして、それは本当に大変ですから、したがって、法律通していただいてそういう産地対策というのは万全を期してやろうではないかというので、金利も五%の金で、あるいは五・三%の金でこれに対応していこうというので、今通商産業省、なかんずく中小企業庁の方で精いっぱい産地対策をおやりいただいておる、地方自治体と一緒になって。  それから、今度はいささか大企業の輸出産業へも参りました。通産省には非常に感謝しておられますが、私どもには感謝していらっしゃらないということは本当にわかりました。あのおとなしい人の集まりですから、それはおまえけしからぬとはおっしゃらないにいたしましても。輸出産業になりますと、大企業にいたしましても、これは企業は待ったなしてございますから、したがって、今おっしゃった下請をたたくというような表現は別として、場合によっては部品は外国の一番安いのを、どこかの一番安いのを調達していくということになりますと、あるいは日本の産業の雇用の中にも影響が出かねないという感じは私もいたしておるわけであります。したがって、やっぱり為替はまずは安定すること、そしてそういう産地の中小対策はこれは徹底的にやること、そして安定さすのには、やはりサーベーランスを、相互監視をやってお互いが話し合いをたびたびやることが必要であるというふうに思っております。  そこで、メリットの分でございますが、それは私ども、よく世の中では、デメリットの人の声は聞こえるがメリットの人は黙っていらっしゃる、これもそれはあるかもしれません。しかし、電力、ガスで一兆、あれも赤桐さんの前の論理からいうと、本当は、一兆円還元しましたが、あれしなかったら半分は法人税で五千億入るわけでございますけれども、それは吐き出そう、だからいいところは皆吐き出そう、といって石油税の従価税を上げるわけにいきませんから、それはそれで我慢しようという大変な縛りの中で毎日を過ごしておるわけでございます。  さらに、現実に港の帳簿価格ではもうメリットが出ておりますが、我々の庶民生活にそのメリットというのは、今度政府が管理価格でやったもの、きのう決めた分は、それはメリットが直ちに、減税と同じことでございますから、一兆円。が、あとの製品はどちらかといえば市場メカニズムを通じて自然に出てくる、こういうことになりますし、それから、原燃料ばかりでなく原材料も下がるわけでございますから、したがってそのメリットというものは、私は個々の問題は後半に全く出ないとは言えない。今一番外国旅行、本当に僕もこの間質問を受けてなるほどなと思いましたが、円高で外国旅行をしようというキャンペーンがいっぱい今出ております。それは確かに外国旅行をしたときはメリットがすぐわかるわけでございますけれども、そうしたら向こうでバスが転落したりですね、だから余りいいことじゃないなと思っておりますけれども。それはトタのメリットですが、中長期の分は今後企業収益の改善の中に出てくるだろう。  だから、赤桐さんの頭の中には、大体為替レー トをあの経済見通しのときには二百四円で組んでおったじゃないか、そのとおりでございます。しかし、原油価格の値下がりとかいろんな要素を組み合わせますと、今直ちに経済見通しを変えるという状態には必ずしもない。いつも十二月に見直しをいろいろやるわけでございますけれども、そういう上に立って、細心な注意を払って政策執行をやっていかなきゃならぬというのが現在の立場でございます。
  33. 赤桐操

    赤桐操君 私どもは、いろいろ円高が急激過ぎるんじゃないかという指摘をしながら、政府が真剣に円高誘導を努力している、一体どの辺まで持っていったらいいんだ、ある程度の展望というものを持たないで円高誘導をただやればいいということにはならぬのじゃないかということも指摘いたしたと思います。  こういう中では、残念ながら円の妥当な水準というものは暗示もなければ、もちろん示されもしなかった。それで、円高はこれでもまだいいんだ、これでもまだいいんだという調子だったと思うんですよ、今日までの状態からいえば。今になって慌てて、言うなればそういうことになったんですけれども、ある程度一定の戦略、戦術というものを、展望というものを物事というのはみんな持つんでしょうけれども、この場合にはなかったというふうに私は思うんです。こういうのも円が急速に上がり過ぎた一つの原因じゃなかったんじゃないかな、こう思います。  また、きょうは十五日ですから、一昨日ですか、ベーカー財務長官が、ドルはもう十分下落したという一言で、これはもう途端に円高に歯どめがかかった、こういう報道も出ているわけですね。日本には一体こういう力はないのかということも我々は感ずるわけです。それとも、為替相場については米国のおっしゃるとおり結構ですということでいくのか、どうもそういう点がいささか私どもにはわからぬわけです。その点大蔵大臣いかがですか。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのベーカー財務長官の発言も非常に注意して言っていらっしゃいます。が、我々十人は、いわゆるターゲットを示すとかいうことは、何分世界じゅうの金が相場で動くわけでございますから、それは非常に注意しなきゃならぬということをお互いが合意しておるわけでございます。だから表現は非常に気をつけなきゃなりません。ちょっとした表現で相場が動くわけであります。だから、通貨制度自身の問題についても、そこでほかに、変動相場制にかわるべきものはそれは実際なかなか難しい。  昭和四十六年の八月、ニクソン大統領から、その当時は佐藤総理、各首脳に連絡があって、ドルもこれから金への兌換制をやめましたというところからいわゆる新しい通貨体制が出てきて、それで予算組むときに途中で変動したら一体どうなるんだと。で、スミソニアンレートというのができまして、三百八円でございました。やれやれと思って、四十七年度予算というのはそれで組んだわけでございますが、その後四十八年になって、いわゆる完全に市場にゆだねようという変動相場制というものになったわけです。そのときの通貨の量と今日の量とは、それは大変な差がございます。  したがって、要するに相場を動かす力というのは、それは本当に難しいものであるとでも申しましょうか、そこで相場は片言隻句をとらえて動いたりしていく。だから余計我々は気をつけなきゃいかぬということになりますが、よく口で介入しているんじゃないかなんて言われますが、実際口介入みたいな感じで相場が動いていく。でございますから、我々もやっぱり基本的には各国の政策調整というものをやっていって、有用とある場合は、二カ国であろうと五カ国であろうと、あるいは七カ国であろうと、いわゆる協調した行動をとるという大原則というものを踏まえて、毎日の市場を見ながら、時には介入というものもやっておるというのが、これは各国ともの姿であるということでございます。
  35. 赤桐操

    赤桐操君 通産の方来ていらっしゃいますか。——円高不況の大変いろんな苦しみをそれぞれの業界では受けているわけです。その状況の方をひとつ説明してくれませんか。
  36. 深沢亘

    説明員(深沢亘君) お答え申し上げます。  先ほど大蔵大臣の方から、円高の中小企業それからまた大企業の輸出の状況につきまして御報告があったとおりでございますけれども、私どもの方も常時状態の把握等々に努めてきております。  その辺のところによりますと、もう既に先生御案内のところかもしれませんけれども、やはりこの円高の進行ということによりまして輸出採算の悪化、それから輸出数量の減少傾向、そういうことのために、何といいましても輸出関連のところを中心にして、それから製造業を中心に影響というものは出てきてございます。  それで、産業、これ仕分け方が非常に難しゅうございますけれども、まず一つの区切りとしまして、自動車だとかVTRだとか工作機械だとか、こういう組み立て加工型の産業、こんなふうにちょっととらえてみますと、これが大体我が国の輸出の七割ちょっとぐらいを占めるところでございますけれども、この辺の状況を見てまいりますと、輸出の円ベースでの手取り、円換算の手取り額が非常に悪くなってきてございまして、それからまた数量もちょっと減少ぎみになってきてございます。それで、こういうような事態に対処いたしまして輸出価格の引き上げということに各企業いろいろ努力をするわけでございますけれども、やはり思うに任せないということでございます。それで合理化、コストダウンというところで努力するわけでございますけれども、限度もございますから、結局は収益の悪化というところにつながらざるを得ないというような状況に相なるわけでございます。これまで輸出というところで設備投資を引っ張ってきた分野でございますから、この辺の動向を今後よく注意していかなければならないかなというところでございます。  それからもう一つの分類をしてみますと、これも先生の御案内のところでございますが、素材型の分野というものがございます。鉄だとか合成繊維だとかそれから石油化学だとか、こういう分野がございます。こういう分野で見てまいりますと、やはり国内の需要サイドからの市況というのは弱まってきておりますし、それから価格なんかにつきましての引き下げの要求なんかもございます。それからまた、この分野でまいりますと、やはり円高ということを背景にしまして輸入が増加してきてございます。こういったこと等々からやはり市況の低下というところにつながるような状況でございます。また、素材の中でも例えば鉄等々につきましても比較的輸出比率の高いところがございますけれども、こういったところにつきましてはまた輸出サイドからの影響というものが重なるような格好で影響が出てくるわけでございます。  それからまた、素材も広うございますけれども、輸入の面で非常に厳しい局面に立たされている例えば非鉄のような分野がございます。こういったところになりますと、これも御案内のことでございますが、価格等につきましては国際相場に連動して動きます。これに円高が加わった格好で、これまた非常に厳しい事態に直面しているところもございます。一部生産をやめるとか、それから御案内のとおり国内の山など閉山するというような状況に陥っているところもあるわけでございます。  製造業全体で見ますと、組み立て加工型、素材型、今申し上げたような状況でございますが、これにあと中小企業サイドでの状況ということにつきましてもちょっと申し上げてみますと、現在急速な円高の進展ということで、やはりこれも輸出型の中小企業の経営状況といいますのは非常に厳しくなってきてございます。私どもいつも五十五の輸出中心の産地の状況の把握に努めているわけでございますが、また現在も調査中でございますけれども、それの中間的な調査の感じということで申し上げてみますと、やはりいろいろな事例がございますが、多数の企業で輸出向けの新規成約 のストップとか、それから契約単価の低下とか操業短縮、休業、廃業というようなものも見られる。またそういう倒産も増加傾向というふうな状況に相なってきております。  今のところ、これは全体としまして輸出中心の、製造業中心のデフレ的な面というのが非常に出てきているというところでございます。
  37. 赤桐操

    赤桐操君 さらに、倒産状況がきょうの新聞なんかでも報ぜられていましたが、どんなふうになっていますか、通産省。
  38. 深沢亘

    説明員(深沢亘君) お答えいたします。  負償金額が一千万円以上の、これは帝国データバンクの調べでございますが、昨年の十月以降すっととってまいりますと、四月まででトータル百十四件ぐらいに相なってございます。昨年の十月から十二月までの段階ですと十件未満でございましたけれども、最近の三月、四月の状況を申し上げますと三十二件、四十二件というふうにちょっとふえてきてございます。こういう比較がいいかどうかは別でございますが、前回、五十二年の七月から五十三年の一月の七カ月間ぐらいのところでは八十三件ぐらいでございましたから、同じような期間をとりました百十四件とを比較していただきますと、最近のペースはちょっと多くなっているかなというところでございます。
  39. 赤桐操

    赤桐操君 やはり円高の不況は大変なものであろうと思います。  こういう状況に入っておるわけでありますが、いろいろ大臣は答弁されてはおりますけれども、円が安過ぎるんだという昨年からのそういう一つ考え方であおられて、どの程度までこれを持っていってとめるかとか、どの辺でどうひっくり返していくかというそういう腹もなく、いろいろ各国との詰めなんかも十分じゃなかったんじゃないかと思いますけれども、結局私は、この段階に来て追い込められた、こういうふうに見わざるを得ないと思うんです。ですから一般的に、政策的な失敗じゃないのか、政策的に一体どうこれに対処するんだという声が強まってくるのも仕方ないわけでありまして、そういう意味の批判等もかなり高まってきている中で、ひとつ大蔵大臣のお考えを示されたいと思うんです。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、いわゆる円高不況、特に今通産省からお答えのありました五十五産地等々の対策は徹底的にやらなきゃならぬ。さらに、経済企画庁、通産省それから私どもの方で、経済企画庁長官の言葉をかりれば、夜を徹してと、こう言っておりましたが、今いろいろな問題を詰めております。これはやっぱり短期的な対策として徹底的にやっていかなければいかぬ。それで中期的には、今度は円高のメリットを生かしていくというようなことをやっていかなきゃならぬ。長期的には、結局はそれはお互いのある種の国際分業とでも申しましょうか、経済構造自身を転換していかなきゃならぬ。しかし、それはあくまでもソフトランディングと申しましょうか、軟着陸する形でやらなければならない課題だというふうに考えておるところでございます。  したがって、その軟着陸さすためにはお互いの国際協調が必要でございますから、まずは、オーソライズされたG5なりG7なり、赤桐先生の出身の千葉県のゴルフ場の方から税関通ってニューヨークへわからぬように行かなくてももういいわけでございますから、ちゃんとオーソライズされたわけでございますから、サーベーランスやりまして、それでお互いが本当に痛みをわかっていかなきゃいかぬというふうに思っております。いつの日か日本経済が通らなければならない一つの関門ではあると私も思っております。  それだから、責任はだれにあるかと言われるとしたならば、私は最近皆さん方に申し上げております。これは政府の責任じゃない、竹下登の責任である、こう申し上げております。円は上がりましたが、登は下がりました、確かに。がしかし、それはいつの日か対応していかなければならぬ。私は、この日本経済の今一番痛いところをいかに軟着陸の形で持っていくかということが当面課せられた使命じゃないか。だから、私自身が要するに今の職を去って済むものでもないという気持ちで毎日毎日対応をしておるというのが実情でございます。  それからもう一つ、落としましたが、やっぱりG5というものの効果は、ロンドンG5で政策を協調してやって、結果として協調利下げが行われればいいなというような、これが大体どことも実現した、若干の時間差はありながらも。だから、我が日本銀行におかれても公定歩合三・五%、史上最低のこれは公定歩合でございます、今日。しかし、これが本格的に出ますのは、十九日からいわゆる預貯金金利とかプライムレートにすべてが出そろうわけでございますが、そういうものはやはり一つの支えにこれもならなきゃいかぬ課題だ。  だから、財政の出動というものに大変な狭い狭い選択肢しかないから、金融、いろいろなまた執行面における公共事業の前倒し七七・四%、こういうのでもって対応をして、日本経済全体がいい方向へ軟着陸していかなきゃならぬ。そして、やっぱりインフレのない、毎月見ておりますが、西ドイツにはちょっと時にかなわぬなと思いますが、とにかく超物価安定の状態で実質所得の増加という形の経済運営で運んでいかなきゃならぬというのが現状の素直な私の気持ちであります。
  41. 赤桐操

    赤桐操君 どうもこのところのアメリカのベーカー長官の発言だとか竹下登の発言とを比較しながら見るわけじゃありませんが、率直に申し上げまして、ベーカー長官のいろいろ言動なんかを見ていると、ドルのいわゆる暴落に対する歯どめ策、それからもう一つ輸出回復力ですね、これの復元、こうしたものを明確に、一つの戦略的展望なり戦術を持ってきてたんじゃないのかな、こういうように感ずるんですよ。もちろん蔵相もそれなりの今述べられておるような考え方を持ってこられたと思いますけれども、国際舞台の中では残念ながらアメリカの自国を優先する政策にかなり大きく乗せられてしまったんじゃないのかな、こういうような批判も相当今出てきております。  私は今率直に申し上げまして、選挙区を歩いておりますから、中小企業のおっさん連中にも会っておるし、かなりアメリカとの交流をしている幅との会見もいたしております。そういうところから大変手厳しい批判も私も受けております。時に大蔵大臣の代弁までするような場面もあるんです、率直に申し上げて。そういう批判が強く出ております。そう見ると、どうも私もそういう話を実際聞いて話し合っている中で感ずることは、やはりこれはアメリカの戦略、戦術、自国優先の政策にかなり大きく引っ張られたな、乗せられたんじゃないかな、引っかけられたんじゃないかな、こういう感じがするんです。  中曽根総理という人は組閣以来アメリカに何遍も渡って、ロン・ヤスの仲だと言われてきたわけであります。このサミットにも相当の勝負をかけたところだと思いますが、そういう人たちの言をかりるというと、見事に振られたねと、こういう一言ですよ。  そういう点から考えてみたときに、一体我が国の円高政策というのはあったんだろうか、ないんだろうか、これから一体どうするんだろうか、こういう実は疑問を持つんですが、この点いかがですか。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃったような批判を私も肌で感じております。したがって、余りちゅうちょしないでそういう批判も受けようと思って産地にも出かけてみたりしておるところでございます。  まず、アメリカの一番痛いのは、これはやっぱり財政赤字と、まあ両立ての赤字、すなわち貿易赤字、この赤字でそれは今の政府も大変な批判を受けておったと思います。逆に私どもの方は経常収支ないし貿易収支の黒字というものが、まあ私どもとドイツとでも申しましょうか、西ドイツとはそれが批判の対象になっておった。だから避けて通れない道として、仮に今アメリカに提出されて通った法律、しかしながら大統領の拒否権というのがございますが、それを行使するというよう な状態になっておりますが、数百のいわば保護貿易の法律が出ておる。そういう中で仮に日本全体が世界の不買同盟の対象になった場合に一体どうなるか。実際考えてみますと、油の一滴も出ない国でございますから、したがって最低限油だけはあかなわなければならない、それに見合う貿易立国、輸出立国として一生懸命努力して、それがその度合いをはるかに超したという、力がついた、競争力がついた、したがって大きな黒字が出てきた。  それについては、我々もアメリカとよく話しますように、日本が売り込んでいるんじゃなく、吸引されているんだ。安くて長持ちしてガソリンの消費量の少ない自動車ですから、一日にアメリカだけで二百三十五万台、三百六十五で割れば六千四百台。で、アメリカから恐らく一日六台か七台だと思います、入ってくるのは。だから、吸引されたてばないか、そういう意味においてはおたくも努力をしてもらわなきゃいかぬというような議論もするわけでございますが、今御指摘のありましたように、確かに輸出競争力の回復ということも米国にとっては一つの大きな課題だと思います、これだけ貿易赤字が出ちゃいけませんし。  それから今おっしゃったドルの暴落懸念、これは最近の発言に出てくるようになりましたが、仮にこれが本当にドルの暴落につながったらアメリカ経済自身がそれこそむちくちゃになってしまう。だからドルの暴落は避けたい。そしてまた、今財政赤字があれだけありますから、したがっていわば短期、長期は別として借金しなきゃならぬ、公債を発行しなきゃならぬ。ところが、公債を買うだけの金融市場が整っていないから、金利を上げて日本のお金やら世界じゅうのお金を持ってきて運営しなきゃならぬから、それは財政赤字という問題とこの二頭立ての赤字というのはアメリカにとっても大変な重圧であると思います。我我もまたその逆の面における黒字によって世界からターゲットにされて、いわゆる貿易立国、自由貿易でないと日本は立ち行かない国でございますだけに、それが保護貿易が台頭してまいりますと、また、じいさん山へしば刈りに、ばあさん川へ洗濯にというような自給自足の昔の体制に返らなきゃならぬ。  それは耐えがたいことですから、したがって、それぞれの国が政策調整をしながら、みずからの正さなければならない問題を正しながら、先進国全体がインフレのない持続的成長を続けていけば、それこそ日本並みの、国の人口といえば恐らくサミット全部で七億弱でございますから、あとの四十数億は中進国ないし開発途上国であるわけですから、それらに対してもインフレのない持続的成長というものが先進国が続けられたら、そしてまた、金利が下がれば開発途上国の債務累積問題にも役立ちますし、そして保護貿易主義が出ないから開発途上国の一次産品も輸入ができるというような、まさに世界的な視野に立って対応していかなきゃならぬ。  今おっしゃいましたアメリカの一つ政策の基本戦略というのは、私は赤桐さんのおっしゃっておるのは間違いではないと思っております。そういう基本的な考え方はあろう。実際問題として、ドルの暴落だけはもとより大変な懸念をしていらっしゃると思います。最近余りにもドル安になりますと今度は海外からの資本の流入がとまります。これはアメリカの資金需要からしてまた逆に金利を上げなきゃいかぬ、そういう向こうは向こうなりの苦しみがあるではないか、そういう感じで対応をしておるというところでございます。
  43. 赤桐操

    赤桐操君 それでは次に、サミット関係でもう一つ大変重要な問題がありますので伺っておきたいと思います。  サミットにおけるもう一つの課題としては、相互監視制度の創設です。これは私はこれから大きな問題になるのではないかなと思っております。このサミットでは、ベーカー財務長官の提案だと言われておりますけれども、経済政策の相互監視制度の強化、これが打ち出されてまいりました。日本はこれに対しまして承認をいたし、のみ込んだわけでありますが、今後大きな重荷を日本は背負ったんじゃないだろうか、こう思いますが、この点はどのようにお考えですか。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 東京サミット経済宣言、これにサーベーランス、相互監視ということの強化がうたわれ、それによって主要国間の緊密、継続的な国際的政策協調の重要性ということに合意をしたわけであります。このサーべーランスが強化されることは、先進諸国のインフレのない持続的成長と為替相場の一層の安定等に寄与することになろうというふうな期待をいたしておるところであります。  そこで、日本にとって重荷になるんじゃないか、この評価もございます。ただ、相互監視というのは、今までもIMFの専務理事さん、ドラロジェールという人がいろんな資料を提供して、要するにISDRの参加国が五カ国でございますから、時にはやっておったわけでございます。が、それはどっちかといえばないしょでやっておったという感じがいたしますので、したがって、今度はそれがもう認められて、やれということでございますから、私は、従来もやってきたことであるわけでございますので、一挙にそこで重荷を背負ったというふうには思っておりません。すなわち一番大事なことは、一つだけはみんな合意しなきゃだめよ、すなわち、政策の主権はお互いあるということだよ、しかし協調は必要だということは否定するものではないよというので、多少特定の国に圧力をかけるための場だというふうには私は思っておりません。そして、内政干渉の道を開くことになってはならない、これはお互いが合意をいたしておるところでございます。  ただ、恐らくおっしゃいますのは、その上に今度はいろんな指標を参考にして話し合いするそうだ、そうなりますと、貿易収支、経常収支も当然入るでございましょうし、インフレ率も入れば失業率も入れば、貿易経常収支を二つに計算すればおよそ十ぐらい指標がございます。それでお互いが相互に監視し合いながら話し合いするわけでございますから、これは私は世界経済全体にとって有用に働くものではないかというふうに思っております。日本が特定のターゲット、攻撃目標になるというようなことは、お互いが通貨主権と同じように政策の主権というものを侵さないというところは節度を守っていかなきゃならぬことではないかというふうに思っております。
  45. 赤桐操

    赤桐操君 それでは重ねて伺いますが、今大蔵大臣も述べておられますけれども、指標というものが出てくるんだ、こう言われているわけでありますが、相互監視のための経済指標を決める、それから目標値までいろいろ決めるんだということが報道されております。その指標とは具体的に言うと一体どんなものなのか、それから目標値とは具体的にどういうものを指すのか。これをひとつ、どこから御答弁いただくのかわかりませんが、御答弁願いたいと思います。
  46. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) 先般サミットにおいて合意をされましたサーベーランスのやり方でございますが、御高承のことと思いますが、まず、いわゆるサミット参加国、G7の大蔵大臣会議におきまして、それぞれの国がそれぞれの経済目標、あるいは見通しというものを持ち寄って、これを、レビューという英語が使われておりますが、吟味をし合うというのが一つの仕組みでございます。  それからもう一方、先ほどから大蔵大臣のお話にございますG5という五カ国の大蔵大臣及び中央銀行総裁会議におきまして、同じようにそれぞれの国の経済目標、見通しについての吟味を行うとともに、もし実際の経済の動きというものが当初のこういった予想されたコースから非常に大きく乖離をしてしまったというようなときには、それをどうしたらいいかという点につきまして五カ国がお互いに相談をいたしまして、いわゆる是正措置というものについて理解が得られるようできるだけの努力をしてみようじゃないか、これが今度のサーベーランスの大まかな仕組みだと理解をいたしております。  この吟味をいたします場合に、単に話をしておったんじゃ余り話が具体的にならぬじゃないかということで、先ほどからも大臣の御答弁にもございましたが、十のいわゆる経済指標というものを、例えばこういう経済指標を使って吟味をしようということが言われておるわけでございます。具体的にこのサミットの経済宣言で一応列記をされております指標というのは、GNP成長率、インフレ率、金利、失業率、財政赤字比率、経常収支及び貿易収支、貨幣供給量の伸び、外貨準備、為替レート等ということになっておるわけでございます。
  47. 赤桐操

    赤桐操君 今の局長からの御答弁によりますと、内容的に見て大体みんな日本は他国に比較して大変いいものばかりですよ。日本がこの中でいろいろ問題になるというところはないんじゃないでしょうか。財政が赤字だというだけでしょう。あとは全部ほかから見ていいものばかりだ。大蔵大臣は衆議院の方でもいろいろ答弁なさっているようでありますが、こういうことで一国の物差しとして当てはめられるものではないだろうと僕ら見ても思うんですよ。例えばいろんな我々の生活環境とかそういうものは正直申し上げて全然出ておらないわけです。国の政策として大きな柱になっているようなそういうものがいろいろあるんだけれども、全然そういうものとはかかわりないというわけじゃないが、そういうものは全部外されて十のものに集約されちゃっている。  西ドイツは大分反対されたそうでありますが、こういうものは私もちょっと反対ですね。こういう十の指標にまとめたということ自体少しおかしいんじゃないか。これでは日本が国際舞台でいろいろ論議をする前にもう勝負は決められている、そんな感じさえするんですが、この点はどんなふうにお考えですか。  それからまた、これから将来いろいろ数値の問題なんかについては日本政府は大分慎重な態度を今日までとってきたわけでありますが、これについては出されるというふうに了解したようでありますけれども、目標値を根拠にこれから国際的にいろいろ我が国のあげつらいが出てくるということになれば、なおいろいろ苦しい状態に追い込められるんじゃないんでしょうか。そういう感じがするんですが、この点はどうですか。
  48. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) この経済指標といいますものは、先ほども申し上げましたとおり、G5あるいはG7の場におきましてそれぞれの国の経済見通しをレビューする場合に、一つの何と申しますか体温計のようなものとして、例えばこういうものでやってみよう、こういうものを使ってやってみようということでございますので、必ずこの指標をすべて使わなきゃならぬとかあるいはこの指標以外のものを使ってはいけないというようなことではございません。それぞれ必要に応じまして、もしこれ以外にもお互いにこういう指標を使った方がいいねということが起こりますれば、これは当然将来そういったものも使う道は十分開かれていると私ども理解しておるわけでございます。  それから、その目標値という点でございますが、それぞれの国がそれぞれ経済見通しを立てるというこの自主性はこれは従来と全く変わっていないわけでございます。あくまで問題は、そういった主要国の間での経済見通しというものがお互いに整合性のあるものであろうかどうかということ、それから、実際の実績が当初考えていたコースと全然違ってしまった場合にどうするか、これが問題なんだろうと思いますので、何かこういう指標がいわば非常に厳しい目標値になって、それを達成しなかったらすぐ何か罰則のようなことが起こるとか、そういう形でこの指標は使われるものではないと私ども理解しております。
  49. 赤桐操

    赤桐操君 東京宣言の中にはもう一つ農業問題がことしは取り入れられておるわけでありますが、この宣言に同意をして農産物の輸入自由化が欧米からさらに強く迫られてくることになるのではないか、こういう危惧の念が農村には出てきております。私も随分歩いておりますが、そういう質問を受けます。この点については、農水関係の方が来ていると思いますが、答弁を願いたいと思います。
  50. 白井英男

    説明員(白井英男君) 御答弁申し上げます。  今回のサミットの経済宣言に農業のコミュニケが盛られた背景でございますけれども一つには、国際的な農産物の過剰問題があるかと思います。それが輸出競争の激化、農産物の価格低迷等が背景にあってそのようなものが盛られたというふうに考えております。  したがいまして、当面問題となりますものは輸出補助金のあり方にあるものと理解をしております。このような背景から見まして、今回の経済宣言の内容は、第一義的には、補助金によって国内の非効率な生産を増大しまして、そして余剰分を輸出するということによって世界的な過剰を生み出す、こういう輸出国の問題であるというふうに私ども理解をしているわけでございます。さはさりながら、輸入国であります我が国といたしましても、農業構造の改善なり市場アクセスの改善等とも関連する問題というふうに受けとめておりまして、国内の生産性の向上等を通じまして我が国農業の体質強化を図っていくことが重要であるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、今回のコミュニケの中にも盛られておりますけれども、OECDの作業を通じまして今後検討を進めるということになっておりますので、我が国といたしましてもこの検討に積極的に参加をしていくということで、我が国農業の実情を十分これに反映していくように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  51. 赤桐操

    赤桐操君 次に、内需拡大対策について若干お尋ねしたいと思いますが、円高不況と東京サミットの結論、こうしたものからすれば、我が国が当面する最大の課題の一つとしては内需拡大になるだろう、こう思うんです。言うならば、百六十円という物すごいデフレ圧力、これがかかっている中で内需拡大をどうするか、これは容易じゃないと思いますけれども、まずひとつ具体的なお考えを大臣からお示し願いたいと思います。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まずは予算の中身から申し上げてみますと、大変厳しい財政事情のもとではございますが、一般公共事業の事業費、これにつきまして民間資金や財投のお金等を活用して工夫を行いまして、いわば四・三%の伸び率というものが確保されておるということが一つでございます。これは内需拡大に配意した一つの点でございます。  さらに、内需拡大のための施策といたしましては、消費を刺激するとかいうようなことから、輸入品が皆下がってまいりますから、それが市場メカニズムを通じて可能な限りスピードを持って一般消費者の目の前に並べられるように、それから管理価格でありますところの電力、ガス、これは減税と同じように、還元する、こういうようなこと。  それから、三回にわたって経済対策が出ております中で、中小企業対策や産地対策等の分はもうしばらく別といたしまして、前倒しでしかもやれということであります、公共事業等は。一応建設省、農林水産省は八〇%やれる。今まで七七・二しかやったことがないですから七七・四というのはこれは相当な構えでやらぬと本当はなかなか言うはやすく行うほかたし、しかしきちんとそこまではやろう。そうしますと、若干いわゆる円高のプラスの面、すなわち交易条件の改善というような点からして、原材料、原燃料は下がっておるわけですから、したがってあるいは、短絡的な説明をしますと、同じ事業費で百メートル道路ができるところが百十メートルできるかもしらぬ。これは今の十メートルなんというのは基礎的に根拠があって言ったわけじゃございません。感じで言っただけでございますけれども、そういうようなものが内需対策に役に立つだろう。  それからもう一つは、いわゆる政策減税もやらしていただいておる住宅でございます。これの住宅金融公庫の利子と、それからいま一つは減税等 によりまして住宅、今幸い百三十万程度が大体きておりますので、それをさらに促進していこうというような、総合的な経済対策というものを行って内需を拡大していこうということでございます。  すぐ問題がそこで出てまいりますのは、もっと財政が出動したらどうだ、こういう議論が当然のこととして出るわけでございます。この問題につきましては、今日の財政、今通していただきました予算の執行の中で対応できて、今直ちに財政の出動、補正予算をきょう組むとかというような状態ではない。  そもそも、いつでもサミットの冒頭に書かれますのは、「公共支出の確固たる抑制を維持することが依然として必要不可欠である。」これはもう必ずサミットの一番最初の部分に書かれるわけです。よく人は、それは当たり前じゃないか、大蔵大臣同士が集まって、赤字財政を広げることが有益であるなんて書くわけないじゃないか、まあそれもそのとおりでございますけれども、そういう公共支出の抑制というこの大前提の枠内において、いわばインフレなき持続的成長に持っていくための内需拡大というのは、たび重なる経済対策等で打ち出されている施策を着実に実行していくということにほかならないわけでございます。
  53. 赤桐操

    赤桐操君 今お話しの点は私も前から聞いておりますが、したがって、全然新しい対策や施策は取り上げない、こういうように理解をせざるを得ないんです。この際でありますから思い切った補正を行うとかあるいは減税措置を行うとかという何か新しいにおいがするかなと、こういう期待を持って実は伺ったんですけれども、そのにおいはとうとうなかったということですね。そのにおいは全然ございませんか。
  54. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 内需というのは、今決められたことをまずはきちんとやっていく、すなわち前倒し、それからきのう決まりましたですか、いわゆる差益還元、こういうような決められたものを一つ一つやっていくということではなかろうか。  減税ということになりますと、これも釈迦に説法でございますが、私どもとしては、この秋口までに総合的な答申をいただいて、そうしてその上でもって六十二年度税制というもので税制の抜本改正を行おう、こういうことになっておるわけであります。しかし一方、各党の幹事長・書記長の申し合わせによって、年内に成案を得るというのがございますが、恐らく政府税調の進みぐあいを横目で見ながら話し合いをしょうということでそういう申し合わせが存在しておるであろうというふうに思っておるところでございます。  それから補正予算をどうするかという問題でございますが、これはきのうも竹田委員からお話をいただきましたが、それは、財源確保する法律を今審議してもらっておるときに補正予算を検討しますと言えば、それではこれを出し直してこい、こういうことにもなりかねません。したがって、補正予算を、ほかの人はいいですよ、大蔵大臣だけは言っちゃいかぬというふうに幼少のころから聞かされております。が、いずれにせよ、それはいわば経済の推移を見ながら総合的に判断すべき課題でございましょう、そういうお答えに尽きるのではなかろうかというふうに思います。
  55. 赤桐操

    赤桐操君 今お話しの前倒しの問題であるとか、これは幾ら前倒しをやっても、契約は契約ですから、全体の契約はふえるわけじゃないんですから、業界はそれをもってふえたとは考えませんよ。その分だけ後半になってなくなっちゃうんじゃないか、こういう心配さえ出てくるわけで、それによって契約がふえるなんて考える人は一人もありません。幾ら前倒ししてもその程度の効果しかない。  それからもう一つ、差益還元と言われているけれども、今出されているようなあの程度の差益還元で、この間どこかのテレビで大分皮肉めいたいろいろ数字が出ておりましたけれども、正直申し上げて、差益還元というのはこんな程度かなということじゃないでしょうかね。そういうものをもって少なくても内需拡大のてこ入れになるなんて考えられないことですよ。さらにまた減税の問題にしても、来年本格的にやるんですと言ったって、来年の話は鬼が笑いますよ。今どうしますかということを言っている。内需拡大は今やれ、こういうふうに言っている。来年になったら、そんなことでは恐らくまた来年のサミットでは批判を受けますよ。日本はやることをやらなかったじゃないか、こういう批判を受けるのが関の山、私はそういうふうに思います。  だから、それは大臣の御答弁の限界があるかどうか知りませんけれども、ここまで来た以上は、やはり竹下大蔵大臣、私は決断を必要としますよ。そう思います。ベーカー財務長官に我が竹下大蔵大臣が負けているとは思っておりません、私は。少なくとも見識高い竹下大蔵大臣が一大決断を下して見識ある措置とらるべきだ、私はもうそういう時期が来たと思っていますが、この点どうですか。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 減税問題というのは、結局昭和五十四年からかかって抜本改正の環境はやっと熟したというふうに私は思うわけでございます、五十九年に減税はあるにはありましたけれども。したがって、政策というものが実際にあらわれるためにはある程度の時間がかかるものだなということを痛感しております。本当に税調に諮問することがやっとできたわけでございますから、そこまで進んだことでございます。  もう一つ、指標の話の中にありましたが、仮に国民負担率なんという指標があったとしたら、今度は逆に私は不思議がるだろう。ヨーロッパ等に比べれば、今私の方が三六・一で向こうは五五以上でございますから、そういうことも議論の種になるでございましょうが、今減税を行う、いろいろな意見が出ております、戻し税ならできるじゃないかとかいろいろな意見が出ておりますが、その環境にはないと言わざるを得ない。したがって差益還元とはまさに一兆円減税であるというふうに国民皆さん方には理解していただきたい。  それから補正予算の問題は、毎度お答えしますように、それは限界がおのずからございますが、下期のいわば経済状態を見て、それは少しでも内需依存型の経済構造に変えていく努力は引き続きやっていかなきゃならぬというふうには考えております。ただ、決断の時期とおっしゃいましたが、どっちかといえば、私自身の性格もそうでございますけれども一つの決断をしておれについてこい、こういう感じはありません、日本人というのは買うございますから。だからよく言いますように、国会で問答して、野党のお方がおっしゃっているのを三年後ぐらいに取り上げたから大体自民党は続いてきたんじゃないかというようなことを時々申します。が、そんな感じが今でもなきにしもあらずというのがあるいは私の手法かもしれません。
  57. 赤桐操

    赤桐操君 時間がありませんので最後に一つだけ伺っておきたいと思いますが、その前に、私は今年度予算の編成についても考え方を持っておりますが、対前年度五%減という投資的経費の予算の分け方というのは、これだけのダブル不況を目前にして、このまま放置できる状態では私はないと思うんですよ。これが一つ。それから、これを乗り切っていくのには、六兆円の減税をアメリカの減税並みにやれとは言わぬけれども、二兆円以上の減税を行えということはこれは僕は最低の常識だと思いますよ。そういう意味で、公共投資の増額、さらにまた減税、これはもう年内早急にやるべきだ、こういうことをひとつ提起しておきたいと思います。  最後に、投機的傾向が非常に強くなってきている現象がございます。それは最近の土地の値上がり、株式の大幅上昇、先ほどゴルフ場の話が出ておりましたが、ゴルフ場の会員権なんかの値上がりも大変ひどいところが大分あります、千葉県にもたくさんありますけれども。そういう状況等を見て、投機的な傾向が大変強まってきているんじゃないかという懸念が大分出ておりますが、この点について最後にひとつ伺って終わりたいと思い ます。
  58. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 今御指摘の土地あるいは株式といったようなことについての値上がりの御指摘でございますけれども、まず地価の面で見ますと、確かに都心の商業地といったところで最近地価の上昇がかなり顕著に見られるところでございます。ただ、これはその要因を若干分析してみますと、ある程度それは実需が存在している面がございまして、東京にオフィスを求める傾向がこの情報化社会が進む中で進展しているとか、あるいはオフィスオートメーションの進展に伴いまして機械設置のための必要床面積が拡大しているといったようなこととか、あるいは経済の国際化に伴いまして外資系の企業の進出が相次いでいるといったような実需がある程度あるようでございます。ただしかし、そうは申しましても、こういったことの中にいわゆる投機的な取引といったようなものが入るということは好ましくないことでございますので、大蔵省といたしましても、先般、土地関連融資の取り扱いにつきまして、投機的な土地取引が助長されることのないよう十分配慮するように金融機関に注意を促したところでございます。  ただ、全般として見まして、金融が若干緩和しているということを背景といたしましてマネーサプライ等やや高水準で推移しておりますけれども、しかし全体として見ますと物価動向はかなり落ちついたものがございますし、また先ほど来出ておりますような原油価格の低下といったような現象もございますので、物価全体としては安定的に推移するというふうに見ておりますが、先ほども指摘ございましたような現象につきましては十分注意をしていかなくてはいけないというふうに考えております。
  59. 赤桐操

    赤桐操君 最後に。  この傾向は、一部銀行筋の見解によれば、異常に伸び続けてきているマネーサプライにも一つ原因があるということが一つと、それから、その結果は過剰流動性が発生する懸念があるということも専門家筋では見られているようでありますから、この点についてひとつしかと腹構えを決めて対策を早急におとりになることが必要だ、こういうように提言をして終わりたいと思います。
  60. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  61. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  62. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最初、法案とは全然関係のないことからお伺いしたいんですが、昨日も衆議院の大蔵委員会大蔵大臣に我が党の矢追秀彦さんが聞いたようでありますが、そのときに大蔵大臣が、裏口入学みたいな発言をなさったことは行き過ぎであったというようなことをおっしゃったようなんですが、一つは、衆議院の定数是正ができた場合、そうすると現状のあれは違憲であるということから早期是正の必要がある、こんな声もあります。どうも大蔵大臣は何か早期の解散を考えているような発言が時々あるものですから、一体どういう御真意なのか、ひとつ伺いたいと思うんです。
  63. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、私どこかの記者会見で聞かれました後でございましたが、言ってみれば、不正入試を指摘されたけれども合格は取り消されていない、だから新しい試験場ができたらそこで、解散というようなことは別として、みんながやめてもう一遍正規の試験を受けて合格してきた方がいいじゃないかなというようなことを言ったことは事実ですが、それを裏口入学というふうに一遍言いまして、それで私自身もちょっとこれは言い過ぎだと。壇上で安倍外務大臣も、おいおまえ、裏口入学というと今度で引退される人に対しても失礼じゃないか、なるほどそうだ、それは一切今後裏口入学なんということは言わぬと約束をしてきまして、きのうも委員会でその点だけは訂正をしておきました。  非常にこれは書生論かもしれませんけれども、本当は違憲を指摘されておって、もちろん選挙無効ではないと言われておるものの、可能な限り新法ができたら早目にお互いが洗礼を受けるというのが本当ではないかな。解散というよりも、むしろみんなで一箱にやめてでも試験を受けたらいいじゃないかなという、純粋論みたいなものが私の頭の一隅にあることは事実でございますが、しかし一人やめてみても、補欠選挙もございませんし、その場合皆さんがそういう心境になっていただくということになりますとこれはなかなか難しいことだが、本来ならば、せっかく新しいものができたらそこで違憲性の指摘されない形で洗礼を受けるのも一つ考え方ではないかというようなことを考えたことも事実でございます、現実問題は別としまして。  解散ということになりますと、これは総理が解散は考えていないと言っておられる限り、それの一閣僚が論評は差し控えなきゃいかぬと思って、総理が考えていないとおっしゃっているから、そうであろうと信じておりますという優等生答弁みたいなのを繰り返しておりますが、私がそのような出直し論みたいなことを言ったことは事実でございます。ただ、本当に書生論といいますか、素朴な感じを述べただけでございますので、現実味があるかどうかとかいうことになりますと、論評の対象になることかどうかも私自身必ずしも自信がございません。
  64. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今まだ会期が残っておりますから、これから聞くことにはお答えがしにくいと思うんですけれども、もう何か知りませんけれども、臨時国会を続けてやるとか、あるいはきょうも何か新聞によると円高国会が必要だとか、また法案処理の問題がいっぱいあるから必要なんだというようなことで、材料がいっぱいあるというようなことが出ておりますけれども、やはり本来ならば参議院選挙をやってその後ゆっくりとおやりになるのが普通じゃないか。私は秋口の臨時国会が通常なら本当だろうと思うんですね。  そういうことから考えて、どうもいろんな動きがあるんですが、閣僚の一員としての大蔵大臣と、それから政治家としての、また自民党幹部としての経験のある竹下登個人としての感覚をお伺いしたいんです。
  65. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆるこの国会が機能しておるかどうかという判断の問題だと思いますが、私が抱えさせていただいている法律案は国会の場で十分機能しておりますということを、お礼の気持ちも含めて申し上げなきゃならぬではないかというふうに思っております。私も朝から晩までこうして国会におりますので、どの法律がどうなっているかというのは実際のところ、平素ならもっと詳しい私でございますけれども、わかりません。が、少なくとも物理的抵抗とかそんなような形で国会が機能していないという状態にはないだろう、整々と機能しておるだろうと思っております。まだ今週も来週もあることでございますので、閣僚としては、私の守備範囲のものももちろんでございますが、国会で提案した法律が成立して、行政が機能するようにひたすらお願いするというのが閣僚の立場であろうというふうに思っております。  それから、政治家個人ということになりますと、ちょっとまだ整理してみておりませんけれども、いずれにせよ、先生方の任期が半数が七月七日までだと思います。したがって、理論的には七日まではやれるという理屈は立つと思いますけれども、大体法律上は、任期前三十日で、その間に国会があったら三十一ないし三十五の間、何かそういったしか法律であろうと一思っております。が、政治家としても、今臨時国会が必要かどうかというのは、今の場合閣僚でございますから、ひたすら決められた国会で守備範囲内にあるものも 含む早期成立をお願いするという以上にはちょっとやっぱり、お互いがつくっておるプライベートなチューチュー会とかいうなら別でございますが、ここでちょっと言う状態は御勘弁ください。
  66. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほどの御質問がございましたことについて最初に関連して伺っておきたいんですが、昨年の十一月以来、マネーサプライ、M2プラスCDでございますが、その状況が対前年月比で九%以上の伸び率になっております。これがずっと続いております、昨年十一月以来。このことは言いかえれば通貨インフレというようなことが将来起こり得るという心配があるわけですが、日銀等では売りオペということやなんかで御操作はしていると思いますけれども、調整手段はとっていると思いますが、財政当局として、現在こういう金融緩和の中であるけれども、やはり無制限な貸し出しというわけにもいかぬでしょう、こういうときには。そうなれば金融機関における貸し出しの規制が既に若干厳しくなっているということは実態としては私ども聞いておりますけれども、大蔵省として取り扱っていけるという対策を含めて、このマネーサプライの増加傾向に対しては大臣は今どう見ておりましょうか。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 九%台といいますと、我我が常日ごろの頭にある数字からいうとちょっと多いなという感じはいつも抱いております。しかしながら、幸いに物価が安定しておりますのでインフレを招来するような種にはなっていない。  どういう理由がなと思って私なりに、これはプロじゃございませんから非常に漠然としたとらまえ方ですけれども、新種の商品がいっぱい開発されたというようなこともあるいはマネーサプライの多い一つの要因かもしらぬなと思います。したがって、これが赤桐さんのお話にも出ておりましたように、株式投資と土地投機ということ。地価は全体は安定しておりますけれども、いわば大都市の都心部、こういう感じでございます。あるいは本当は、金融の自由化、国際化、またオフショア市場の法律まで議了していただいたのでございますから、やっぱり金融機関の店ということになりますと、ちょっと世田谷の方にありますというわけにいきませんし、それだから私どもの自由化、国際化の問題も、いわば都心部のそれだけ需要が多くなった要素の一つではないかと思います。が、これにつきましては我が方でも、いわば土地投機への資金貸し出しについては金融機関の、指導というとちょっとオーバーになるかもしれませんが、協力依頼とでも申しましょうか、そうしたことをして対応しておる。  それからいま一つは株の問題でありますが、たしか二回東証で引き上げの措置が行われたということで、これは適切な措置であるというふうに評価して、証券局等も絶えず注目しておるということでございますので、我が方としてはその二つのことを、指導というと少しオーバーになりますが、注意して配意されておるというふうに今見ておるというところでございます。
  68. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 内需拡大という観点から政府金融機関の貸出金利の引き下げが求められておると思います。その際、その障害になっていくのは資金運用部資金、その預託金利の設定方法ということになってきます。資金運用部資金法によるというと、長期預託金利は最低で年六・〇五%、こうなっております。そうすると、今のように金利が下がってくるとなりますとこれはどうしても法律改正の必要が出てくると思いますが、法律改正に向けるそういう意図はございませんか。
  69. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 政府関係金融機関の貸出金利の基準金利は長期プライムレートでございます。これは現在六・四%でございまして、財投金利の六・〇五よりまだやや高目になっております。資金運用部の預託金利、これはイコール運用金利でございますが、昨年十月以降一・〇五%引き下げております。この間公定歩合は一・五%下がっております。また貯金金利は一・三七%下がっておりますが、民間の長期プライムレートはこの間〇・七%しか下がっていないわけでございます。現在この六・〇五%という運用部金利は、過去の最低の水準、公定歩合が三・五であったときの最低の水準となっております。長期の民間の金利が必ずしも下がるという情勢でもございませんので、この金利の動向を今見きわめて注視をしているところでございます。  なお、この間に、御指摘のように資金運用部資金法の四条に金利が法定をされている事情がございますので、これ以上の引き下げを行う場合には法律改正が必要になることは御指摘のとおりでございますが、この法律の六%プラス特利という水準は昭和三十六年に実はつくられておりますが、その当時は郵便貯金が赤字でございましたし、国民年金が新たに創設されまして、年金の運用利回りを高めるという要請がありましてこれが設けられたものでございます。したがいまして、そういう預託者側の事情がこの中にあるものでございますから、改正するといいましてもなかなかこれは困難な問題でございまして、もしこれ以上さらに長期金利が下がる、法律が障害になるという場合には預託者と十分相談をしていかなければならないと、こう考えている次第でございます。
  70. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 よくわかりました。これからさらに第四次の公定歩合の引き下げ、いろいろなものが出てくるといずれは何かの対応を考えなきゃならぬときが来ると思いますので、十分見ていかなきゃならないだろうと思います。  次は、増税なき財政再建についての具体的な方策について伺いたいんですが、税制の問題、この抜本的改革については、先日の答弁等を見てもいわゆるニュートラルである、中立であるとの方針を政府は示しておられますが、レベニュー・ニュートラルであるというのは税制改革を行った初年度のみの効果と見ているんじゃないか。時間をかけて増収に持っていくということになれば抜本的改革の範囲の外になるんではないかというふうに考えられるわけですね。やっぱり増税なき財政再建とそうすると変わってくる。当初においては、確かに初年度だけでは増税なきでいっても、二年目以降になると今度は平年度からだんだん増収になるということになれば、増税なきということとは完全にぶつかってくるんじゃないかと思うんですが、この点はいかがでございましょうか。
  71. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに諮問の仕方としては、これは税でございますから、安定的歳入確保というのが大前提にあるにいたしましても、レベニュー・ニュートラルであるべきだと思います、増収目的ではなく抜本策をお願いしますと、こう言っているわけですから。  それで今度は、増税なき財政再建の増税なきとは何ぞやということになりますと、新しい税目によって大きく租税負担率が変わるというようなものを指摘されておるということになりますと、仮に答申、そして政策選択によって、抜本改正でございますから、新しい税目というようなのができたとしたらどうなるか。一方大きく国民の負担率を変えないというようなことになればそういうのもあり得るのかな。したがって、この増税なき財政再建というものに抵触するしないというものは、やっぱり政策選択のその段階で詰めて考えなきゃいかぬのではなかろうか。今のところ、レベニュー・ニュートラルなもので定性的に出てくると思うんです、実際問題。そうすると、それをどういうふうな組み合わせになるものかというふうなところは政策選択の問題になるでございましょうし、したがってその時点でもう一遍吟味してみなきゃならぬであろう。  だから、現在段階においては定性的なものであろうとレベニュー・ニュートラルなものが出てまいりますから、すぐその段階で増税なき財政再建の増税なぎの範疇を飛び出るものかどうなのかというのは、今の段階ではわからぬなというふうに考えております。
  72. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それはわかるんです。そのところは確かにそうですね。しかし、それから後になるというと、増収効果が甚だしく大きくあらわれるものも出てくるでしょうし、そうでないものもあらわれてくるだろう。単年度主義という日本の予算制度そのものが、本来ならば、そういう単年度 でないもので見ていかなければならないところにもう入ってきているような感じがするんです。そうすると先々の方まで論議をして、まあ政治とは全部後追いなものですから現場処理ばかりしかございません。しかし、これから出されるとなったならば、二年先、三年先、四年先、十年先というところまでのいわゆる、こういうふうに変えるならばこういうふうになっていきますというようなものを見せていく必要があるんじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  73. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政策選択の段階でどの辺まで見通せるものか。予算は単年度主義でございますし、税収の将来にわたっての効果というものは十年、二十年先まで図面が描けるかどうかということになりますと、ちょっと自信がございません。しかし、恐らく鈴木さん、税制改正があった、そしてそれが平年度化するのは二年後あるいは三年後の分もあるかもしらぬとか、そういうようなことを考えた場合にはその時点でいわゆる増税なぎの範疇の議論はしていかなきゃならぬ問題だとは思います。  振り返ってみますと、増税なき、いろんな御無理もお願いしました、ことしの場合でも。たばこの問題もありますし、それから直近一年の繰り戻しをやめたりというような措置もありましたけれども、今まではやっぱり増税なき財政再建というかんぬきの中におったから、前年度同額以下というような予算編成も、そういう理念がてこになっておったことは事実じゃないかなという気持ちで振り返っております。
  74. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 六十一年度国民負担率というのは三六・一%、そういうように計算されております。そのうち社会保障負担率が一一%。年金負担、医療費負担、そのいずれを見ましても、高齢化社会を控えていますのでこれから一層上昇するということが見込まれます。社会保障負担率については現在一一%というけれども、近いうちには確実に二〇%になるだろう。したがって、二〇%台になるということになりますと、国民負担率から計算していくと租税負担率の引き上げの余地がない。特に臨調答申の趣旨に沿うとほとんどないことになる。欧米諸国の国民負担率より下回る水準にとめろということになりますと、五〇%以下ということになる。五〇%のうちの二〇%が社会保障負担率ということになれば、租税の方はほとんどないということにならざるを得ないわけでございます。  大蔵省が国会に提出したところの「中期的な財政事情の仮定計算例」がございます。それによると、一般歳出の伸びが五%の場合、要調整額の対国民所得比が二・一%ということになっていくわけでございます。つまり、要調整額を租税で賄った場合、国民負担率は二・一ポイント上昇するというふうになるわけです。そうすると臨調答申以上のものを考えなければならないときが来るわけでございますが、今言われたようなこういう措置から考えると、増税なき財政再建の許している範囲内の選択肢であると、こういうふうに言えるかどうかということが問題になってくるだろうと思いますが、その点ちょっと伺いたいんです。
  75. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現在の負担率、御指摘のとおり三六・一%でございまして、これがヨーロッパ水準よりもかなり低い水準にとどめる、これがどの程度の水準であるかということはいろいろ御議論があるところでございますが、とにかく西ヨーロッパの水準五〇%前後よりはかなり低いところだということでございますから、おのずとある程度の水準が描かれようかと思うわけでございます。そうしたものを前提といたしまして、さらに社会保障負担の方も少しずつ上昇していくということを考えますと御指摘のような点はあるわけでございます。  四月二十八日、行革推進審議会での小委員会報告でもこの点は指摘されているところでございまして、「五〇%をかなり下回る水準に国民負担率を抑えることを目標とするならば、租税負担率を現状よりも引き上げうる余地は少ない。」余り大きな幅はなかろうというような指摘があるわけでございます。そこらを具体的にどのようなパーセントで、これだけ余裕があるとか、そもそも出発点としてかなり低い水準というのをどこらに置くかということにもよりますが、そこらの点については必ずしも明確でございませんので、何%あるんだ、それからまた、先ほどのお話の二・一ポイントはこれが必ず税で調整されるというお話であればまたそういうことにもなるわけでございますが、そこらが全体としては必ずしもパーセントで明確になっているわけではございませんので、そこらの問題を頭に置きながら今後、ただいま大臣からも申し述べられましたように、毎年毎年の予算編成、税制改正作業の中で御検討をいただいていくということであろうかと思うわけでございます。  しかし、大勢としては、御指摘のような、余りそれほどの幅は残されていないということは、これは行革推進審議会の小委員会でも述べられているとおりではございます。
  76. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の答弁でわかったように、答申で述べられたところから言うと、租税で賄うというものの増税というか、租税負担率引き上げの余地はもうないというふうに思わなきゃなりません。そうなると、増税なき財政再建を維持しながら昭和六十五年度特例公債の依存脱却という公約、さっき申し上げたように、自然に増収してくるという分であればまた考えようがあるかもしれませんが、それが頭打ちをされているということになれば、特例公債の依存脱却というのは、増税なき財政再建という枠の中ではとてもできないんじゃないかという感じがするわけです。この点いかがでしょうか。
  77. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま申しましたように、「余地は少ない。」という審議会の指摘はありますが、これが何%で、もうないんだということでもございません。それから、推進審議会の報告では、さればこそ「歳出の各分野にわたり徹底的な制度改革の推進が不可欠なのである。」とあわせて指摘はされているところでございます。
  78. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大変いろんなところの歳出削減という言葉が私はうつろに聞こえてしようがないんです、実は。もういっぱいいっぱいやったようでございますし、先日の参考人の意見でも、いわゆる歳出カットあるいは一方の特例公債を減らすために、はっきり申し上げれば、あっちこっちから金を絞り出してきたという格好ですから、悪い言葉で言えばごまかしみたいだというような言い方をされていましたよ。  そうなると、そういうことよりは、もう特例公債依存脱却という公約は増税なき財政再建という言葉でできるかどうかということは問題だと思うんですね。大臣いかがでございますか。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今まさにまだ——まだといいますか、増税なき財政再建という厳しいかんぬきの中にみずからを位置づけして今日までやってきた。それで、最終的には国民の選択ということになりましょう、実際問題が。公共支出の水準をもっとふやせと言われればそれに見合う歳入は必要になってくるわけでございますから、国民皆さん方がもう少し耐え忍ぼうや、そういうコンセンサスが成り立つかどうかという、最終的にはそういうことで決まっていくべきものだというふうに考えております。したがって、いわゆる電電株売却益というようなものはこれは大変な魅力のあるものだというふうに考えております。  いろんな提言の中に、短期的な税収措置でもって考えるべきだというような御提言もあってみたりしますけれども、それこそ、私も今考えますことが、八月にいわゆる概算要求基準を設定しなきゃならぬわけですが、しかし、現状で緩める環境にはない中でどういうふうな形で設定しようかというのが今から本当に頭の痛いところだというふうに考えております。しかし、今まだ増税なき財政再建というかんぬきの中へ入っておりますので、このいわゆる公債脱却と、そして依存度を減してさらに残高を対GNP比で下げますというときに、今の手法だけでやり得るかどうかということになりますと、それはやっぱり毎年毎年の予算 の中で、また国会で問答しながら、国民のコンセンサスを結局は引き出していく努力をしていかなきゃならぬだろうというふうに思っております。  ヨーロッパのそれとはかなり下ということになりますと、あの当時五〇%でございましたが、今恐らくヨーロッパは五五以上になっておりますと、ははあ五二、三まではいいのかなと錯覚を起こして計算してみたりしたこともございますが、実際選択の幅は小さくなっておりますので、負担するも国民、受益者も国民ですから、そのコンセンサスを見定めながら進めていかなきゃならぬという難事業だと思っております。
  80. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次は、減債基金制度というのがもうほとんど形骸化しているのではないかということで伺いたいんです。  昭和六十年の十二月、昨年の十二月、財政審の建議はどういうふうに言っておりますか。それを見ると、国債整理基金余裕金の取り崩しによって国債償還財源が不足するという事態になってきた、基金残高を考慮した必要最小限度のものというのを、定率繰り入れの一部実施としてでなくて、予算繰り入れとして行う、こういうことになってまいりました。ですから、この論旨を突き詰めていきますというと、今後基金の中で起きてくる不足分については、その資金の不足相当分については、定率繰入分でもって充足するのではなくて、不足分に見合った予算繰り入れで毎年度年度対応するということになるのではないか。そうなりますと、国債費の定率繰り入れというものの位置づけは根本的にもはや変えられた、こういうふうに思わざるを得ないんですが、この点はいかがでございますか。
  81. 保田博

    政府委員保田博君) 昨年十二月の財政制度審議会の建議におきまして、国債費の定率繰り入れにつきまして先生指摘のような建議が行われたということは事実でございます。  ちょっと拾い読みをいたしますと、「六十一年度においては、歳出の徹底した節減合理化等を行っても、なお特例公債を含む多額の公債を発行せざるを得ない厳しい財政事情にあり、このような状況下において、六十五年度特例公債依存体質脱却を目指し特例公債発行額の縮減に最大限の努力を傾けなければならないことを考慮すれば、定率繰入れを実施することは困難と考えられる。」ということでございます。でございますが、この建議の最後には、「この定率繰入れをめぐる公債の償還財源の問題は、六十二年度以降更に深刻なものとなることが予想されるので、この問題についてどのように対応するか、今後、歳入歳出全般を通じて幅広く検討していく必要があると考える。」というふうに言っておられるわけでございます。  確かに御指摘のとおり、五年間定率繰り入れを停止せざるを得ないといったような財政事情にございました結果、基金の資金繰り等も大変苦しい状況になっているわけでございますが、一方で、我々財政当局といたしましては、歳出の削減ということを柱といたしまして財政体質の改善、改革に努めますとともに、同時にまた、最低限の基金に対する手当てを行っておるわけでございます。四千百億円の予算繰り入れを行うことによりまして最低限の償還財源確保するということを措置いたしましたとともに、NTTの株式の売却収入をそのまま整理基金に置きまして、この基金の円滑な運営に資するということも行っておるわけでございます。  いずれにしましても、我々といたしましては、現行の減債制度の基本は今後ともこれを維持したいという基本的な考え方を捨て去ったということではございません。何とかこの基本的な考え方を維持すべく、今後とも、税収の動向でございますとか、あるいはNTTの株式の売却収入等々のいろんな事情を勘案しながら適切な対処を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  82. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、定率繰り入れをやめたとは言っているわけじゃなくて、定率繰り入れをしてきた、それが定率繰り入れでなくなって予算繰り入れになってきた、事実上その意味がなくなってきていませんかということですよ。  言えば、NTT株式の売却益といってもこれは一過性のものですね、未来永遠にNTTの株というわけじゃございませんで。そうなりますと、その一過性のときには一息つけるでしょうけれども、それが終わった後ではもう再び、よほどのことがない限り、新しく産業が勃興して税収が急激に倍とか三倍になるというわけじゃないと思いますので、そうなると予算繰り入れというのはもう定常化してくるだろう。予算繰り入れが定常化してくれば、もはや定率繰り入れという言葉は必要がなくなってくるということにならざるを得ないんですよ。とはいっても、それを外したらとんでもないことになるから守らなきゃならないという答弁になるんだろうと思いますけれども、それ以上の工夫した答弁はございませんか。
  83. 保田博

    政府委員保田博君) 本年度の四千百億円の一般会計から基金への繰り入れは、御指摘のとおり、定率繰り入れということではなくて、最低限の基金の資金繰りのために必要な予算繰り入れであります。定率繰り入れを行いたい、それによりまして国債に対する国民の信頼を確保する、あるいはまた財政支出の平準化を図るといったような基金制度のねらいを文字どおりそのまま予算にあらわせないのがまことに残念なわけでございますけれども、現下の財政事情のもとではやむを得ないということございます。  一たんそういうふうな予算繰り入れに踏み切った以上、将来定率繰り入れを復活することはできないのではないかという御懸念でございますが、そういう御懸念を解消すべく、今後とも歳出歳入の両面にわたりまして最大限の努力をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  84. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、事実上意味がなくなってきている。将来再びきちっと定率繰り入れができるようにしていきたいという希望はわかりますし、望みはわかりますけれども、そのとおりいくかどうか大変な疑問がございます。何かかわるべきことを考えざるを得ないところに来ているように思うんです。  次に、公債の償還方法について伺いますが、現在の建設国債償還のルール、つまり六十年間で償還するというそのルールを変更する、短縮していくという意図はないかどうか。特例公債借りかえについても、現在は建設国債の同一の償還ルールを使っているわけですから、そのまま適用している。そういうことですから、一層その残高というものを削減させるという意味で、やはり建設国債というか、借款債全体でも結構ですが、その借款債の発行割合というものを縮減させていく必要があるのではないか、そういう考えについての意図はございませんか。
  85. 保田博

    政府委員保田博君) 国債償還ルール、要するに六十年間で元金を全部償還してしまうというルールを変更するつもりはないかというお尋ねでございますけれども、六十年償還ルールというのは、我々として、建設国債については、それによって得られました施設の平均的な効用発揮期間を基準としたものでございまして、現在のところ、それにかわる基準を求めまして、そしてそれによって六十年の償還のルールを変更するといったようなことを現在検討しているというような事実はございません。  特例公債について、六十年の償還ルールは適当ではないのではないかといったような議論も当然ございます。特例公債につきましては、そもそも借りかえをすること自体が我々としてはまことに残念なことでございます。五十九年度財確法におきまして、従来からの借りかえ禁止規定を削除していただくことになりました。借りかえを認めていただけるようにはなったわけですが、けさほどの御質問にもございましたように、この借りかえはできるだけ金額的には少なくする、そしてまた、やむを得ず借りかえを行った場合にも、その残高償還して縮減をすることに努めなければならないという二条四項、五項の規定の精神を実現できるように、先ほど来も申し上げております が、財政改革歳出歳入の両面にわたりまして営々と続けていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  86. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の答弁は、毎年毎年やっている借換債論議の中の答弁と少しも変わりませんで、特例債については、建設債と違うんだから、その借りかえについてさらに借換債を減らしていく、そういうような工夫を凝らしていきたいという精神的な問題ばかりありますけれども、具体的な答えというのはありませんね。ずっと同じで来ているわけです。いつまでもこれが続くのかと思うと非常に残念なんです。  それ以上に恐ろしいと思うのは、はっきり言って、全額換債発行というのは論外だろうと僕は思います。しかし、もし、これは仮定の議論で大変恐縮でありますけれども、満期が来た、その満期到来債について全額借りかえという措置をとる、そういうことになるというと、現在の国債整理基金特別会計法というのに完全に触れてくる。一・六%ずつ積むということは、言えば十年間で六分の一は返しましょうということでありますけれども、それを全部借換債でもって返す金までつくるということになると、これは完全に触れてくるんじゃないかと思うんですね。こういう意図は現在ございませんか。また検討もしておりませんか。
  87. 保田博

    政府委員保田博君) 御指摘国債全額借りかえということになりますと、国債整理基金特別会計法上どういうことに相なるかという御質問でございますが、非常に形式的な法律の読み方をすれば、特会法の改正は必ずしも必要ではないのかというふうにも読めないわけでは実はございません。  直接的な規定というのは特別会計法の第五条でございまして、第一項に「政府ハ各年度ニ於ケル国債ノ整理又ハ償還ノ為必要ナル類ヲ限度トシ借換国債ヲ超スコトヲ得」ということでございまして、法律上には特別の縛りが実はないということでございますから、ストレートにこの第五条に抵触するということにはならないのかなというふうに思います。ただ、御指摘のとおり、第二条の第二項にございます定率繰り入れ規定な、当然のことながら、国債償還を六十年で行うということをいわば前提として一・六を決めておるということでございますから、それとの関係もあわせて考えると、先ほど御答弁申し上げましたように、全然無関係でございますというわけにもいかないのかなというふうに思います。実はその点はまだ全額借りかえについて部内で検討を開始したというような状況ではございませんので、その辺の解釈も必ずしもはっきりしていないということでございます。  仮に全額借りかえを行うといった場合にいかなる法的な措置が必要であるかということにつきましては、まさにそういうふうな踏ん切りをしようとする段階におきまして、いかなる対応において全額借りかえをするかという、その対応ともかかわる問題でございます。したがいまして、御質問に正確にお答えをするということはお許しをいただきたいと思っております。  いずれにしましても、この償還財源の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますけれども減債制度の基本はこれを維持してまいりたいという基本的な姿勢を堅持しつつ、そういうことを可能にならしめるような財政状況に早く持っていきたい、そのための改革努力を続けていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  88. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 満期到来債を全額借りかえでもしやったとして、これは償還があるわけですけれども、そうじゃなくて、借りかえたものが永久に返らないということになると、今度は永久債の発行ということで、二段にだんだん広がっていくおそれがあるわけですね。一つ済ませると次に行く、その全額借りかえのものは今度は永久に返らないというふうになる。こういうふうにだんだんなっていくんじゃないかということで、その点の心配があるから私は伺っているんです。だから、最初の一歩は恐る恐るであるけれども、二歩、三歩になるというと恐ろしさがわからなくなってくるというのは何でもございますから、そういうことに入っていくんじゃないかという心配があるんです。  その先々の方まではお答えは無理かもしれませんが、永久債なんということは考えていらっしゃらないとは思うけれども、その点について大臣いかがですか。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最近、衆参ともども各種委員会の中で、提言として、あるいはそういう考え方は持ってはいけないぞという前提において、いずれにしてもその議論が各党の皆さん方から質疑の過程において出てきておる問題でございます。  結局は、そうなると我々は、いわゆる財政審の縛りの中でみずからを位置づけておるところの減債制度の根幹を維持しつつという問題に触れてくるわけでございますから、したがって、これは一つの提言として勉強するということはいといませんが、実際にそういう段階でやるということになると相当な政策転換、仮に期限を盛るとかいうことがありましても、政策転換になりますから、これは軽々に踏み込むわけにはまいらぬというふうに率直に考えておるところでございます。六十二年度予算編成のぎりぎりの段階まで汗をかいてみなきゃならぬことだろうというふうに思っております。
  90. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、建設国債に対しての考え方ですが、行革審の小委員会の報告では、制度、施策の抜本的見直しの努力の放棄を許すことになってしまう、建設債のために、こういうことがございます。それからもう一つは、景気浮揚効果に疑問がある。必ずしも建設公債を出してやったからといって景気浮揚効果がすぐに出ないということ、こんなことを理由に内需拡大のための建設公債の発行という考え方を否定しているわけですが、そういう行革審の小委員会の報告という考え方と、一方では、経構研での論議や、総理大臣の建設公債についてはフリーハンドが与えられているという発言、こういうもので見ますというと、財政政策を介した内需拡大論もある。  これは両方が全然別のことを言っているわけです。方向が違うように思われるんですが、内閣としてというか、これは大蔵省それ自体としてというか、この問題では財政運営に関する確固とした方針をも打ち出さなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、この点いかがでございましょうか。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、財政改革に当たっての基本的考え方、すなわち六十五年までに赤字公債依存体質から脱却すると同時に、いわゆる公債の率を滅していく、二〇・二まできたわけですから、その方針の範囲内でやるというのはなかなか難しいのかな。したがって、五十七年以後やっております、いわゆるゼロ国といいますか、債務負担行為の追加によっての補正予算をやらしていただいてきておる。だから、その二つの歯どめの一つの公債依存度を下げていくということとの兼ね合いで、これもやっぱり政策転換になっちゃうんじゃないかと思いますものですから、したがって、単純な、いわばフリーハンドというふうには言えないんじゃなかろうか。  毎年いわゆる災害部分を建設公債の増発で補正予算等でやらしていただいておるわけでございますけれども、公債依存度というものとの整合性というのは一つ残る問題だから、完全フリーハンドというわけにはいかぬのではなかろうかというふうに思っております。
  92. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 短期国債発行について次は伺います。  六十年度には約一兆円、中期国債発行未達成分の振替という形で出しています。今後短期借換国債発行額についてはどういうふうにしていくつもりか、それを伺いたいんです。短期借換国債発行をめぐっては、償還の負担を過重にさせ、国債の平均残存年数の短縮化をもたらし、金融政策の運営を困難にさせる、こういうことがござい ます。  いま一つは、年度内に償還される短期国債は、歳計外で償還されますから限度額が歯どめがない。当然これは出てくるわけじゃありません、どこにも数字出てきませんし。そういう問題がありますが、これについての考え方はどうですか。
  93. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 短期国債は、今御指摘のように、国債償還財源を機動的に調達するという目的で借換債として発行するものでございますが、これを今後どう発行していくかということは、今後の国債発行の環境でございますとか短期金融市場の状況、長短金利の水準等によって機動的にやる考えでございますので、今具体的な目標を持っているわけではございません。  しかし、財政の中期展望を見ましても、今後当分の間相当多額の借換債発行が必要となることが予想され、しかも、これが五月、八月、十一月というふうな特定の月に非常に集中してまいります。したがいまして、この資金繰りを円滑に行う必要がございますので、かなり出していく必要があるかなと考えておりますが、ただ、現在は金利がかなり低下しておりますので、こういう低金利時代にはむしろ長期のものを出していくという選択もあり得るわけでございます。反面また、短期の金融市場を育てていくべきであるという要請もございます。こういうものをにらみながらやっていく必要があると思います。  御指摘のように、国債償還負担が非常に大きくなるとか、あるいは平均残存年数の短期化による金融政策の困難化というふうな問題は、過度に短期国債に依存してどんどん回転していくというふうになりますと、確かにそういう心配もございますので、その辺はほどほどにしていかなければならないと考えております。  現在、市場関係者の要望等を聞きますと、短期の金融市場、金融商品いろいろございますが、例えばCDは今十兆円ぐらい出ておりますが、そのうち流通しているのが三兆程度、現先の市場の規模が四兆円ということでございまして、遅くとも数年の間にこういった他の金融商品に拮抗して短期金融市場の中核となるに足る規模にしてほしいというふうな要望もございますので、その辺を念頭に置きながら、機動的にやってまいりたいと思っております。
  94. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 経済的には、短期国債それからTB、政府証券がございますが、ほとんど違いがありませんよね。ところが、一方は日銀引き受けである、他方は公募入札発行である、こういうことになっております。そのTBの低利発行の矛盾がそのたびに一層表面化してきている。これはやはりTBの公募入札発行化をやらなければ、同じような経済性を持つものが、他方は日銀で引き受け、片方はそうじゃないということになるとまずいので、発行を公募の入札発行化に努力をしていった方がいいんじゃないか。そういう点が一つです。  それから、短期国債の売買を法人投資家に限定したという理由は何なのかということです。そのためにいろんな問題が出ております。  TBの最低の券面額を百万円から一億円に引き上げた。これは一方に連動してやったようなものだと思いますが、こういうことがこれは金利の自由化の動きに逆行することになるわけです。  今申し上げた三点について聞きたいんです。
  95. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) TB、いわゆる政府短期証券につきましては市場で公募すべきだという御意見もございますが、御承知のように政府短期証券、特に大蔵省証券につきましては、政府の資金繰りの手段でございます。したがいまして、例えば四月の初め地方交付税を交付する日あたりに一遍に多額の国庫金が要るわけでございますが、そういうものを円滑に調達するためにはやはり日銀引き受けという方式をお願いするのが一番いいと考えております。ただ、そうやって一たん日銀に引き受けていただいたものを日銀の御判断でオペレーションの手段としてお使いいただく、これはだんだんに拡大をしてきているわけでございます。  短期国債につきましては、これはTBにそういう制約がございますので、むしろ短期国債を短期金融市場の中核的な商品にしてまいりたいと考えておるわけでございますが、法人投資家に限定した理由は、日本の源泉徴収制度と短期国債を市場で円滑に流通させるという、この二つの要請を調和させるためには、やはりこの流通の範囲を法人投資家に限定し、そしてそれを日銀のブックエントリーと申しますか、国債登録制度にのせて、それにのったものについては、源泉徴収したものを後でその全保有期間についてお返しをする、結果的に源泉徴収税額が全部がからない形にするということで、流通性が非常に高まるであろう、こういうことを考えましてそういう仕組みにいたしたわけでございます。現に、六十年度に一兆円出しました短期国債は、三月中取引額七兆八千億円にも上っておりまして、大変流通性が高まっております。したがいまして、法人投資家に限定し、源泉徴収制度と調和を図ったことが市場の流通という面ではよかったのではないかと思います。  もしこれを個人にも保有することを認めますと、源泉徴収制度を厳格に運用するという建前から、恐らく流通性をかなり制限せざるを得なくなりますから、現在の状況では個人の保有というものがそれほど大きなものと見込まれませんので、これでやってまいりたいと思っているわけでございます。  御指摘のように、この最低額面を一億円にいたしまして、それに応じて政府短期証券、TBの最低額面も一億円といたしました。これは他の短期の自由金利商品とのバランスをとったものでございます。CDが一億円でございます。円建てバンクアクセプタンス、銀行引受手形も一億円、そういうものをにらみまして、一億円ということにいたしましたが、これは金利自由化の進展その他を見まして今後見直してまいりたいと考えております。
  96. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大きな話で大変恐縮ですが、本年度国債発行は、新規財源債で十兆九千四百億、約十一兆、借換債が十一兆ということで二十二兆円ですね。借りかえは新規じゃないと言われればそれはそれまでのことでございますが、しかし、政府が大量国債発行であるといって口にするのは新規財源債の方のものだけです。  そういうことになりますと、国民にとっては、予算が決定したときに新聞報道されたりいろいろされますけれども、非常にわかりにくいものになっているわけですね。五十四兆円、うちこうこうとかなって、次に財源きまるけれども、借換債はまた別のところへ出てくるわけです。一体これは一緒なのか何なのかということがよくわからない。やっぱり財政民主主義の上からいったら、国民に対して国の借金は明確にわかるようにさせるということが私は非常に大事なように思うんです。こういう点をひとつ大蔵大臣から、いろいろこれからどういうふうに発表方を考えたらいいかということが一つ。  これだけ大量な国債を抱えておりますが、この国債をだんだん整理していくことになるというと、即効薬はないにしても、考えられることは、現在のようにだんだん金利が下がってくれば調整インフレのおそれが出てくる。そういうことからインフレ待ちということで、国債そのものの減価を図るということになりますと非常に私は心配なわけでございますので、この点についてどういうふうに考えていらっしゃるかを伺っておきたいと思います。
  97. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 要するに、借りかえを行い、そうしてまた新たに短期国債が出て、したがって流通してしまった場合区別ができなくなりますが、いわば元帳といいますか、元帳の方では大体きちんとわかるわけでございます。  先般来、可能な限りそうしたものが国民にわかりやすいような形の措置はないかというような御意見もあっておりますので、少しく勉強させていただこうということにはお答えをいたしておりますが、我々の側では確かに元帳でわかるという点、国民皆さん方に対してその都度どのような 形で実態をお知らせした方がいいものか、わかりやすく。鈴木先生からどうなっているのかと言えば、元帳を持っていって話せば済むわけですけれども国民に対しては、その辺少しく勉強させてもらってからお答えしなきゃならぬというふうに思っております。
  98. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 インフレの件はいかがですか。
  99. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃるとおり、私いつも感じますのは、西ドイツが物すごいインフレに対して国民性が厳しい。あれは二回戦争に負けたからだ。日本は一回だから、あのショックの方が大き過ぎたために、かつての国債がパアになって、インフレの中で消化されてしまったということからして、その衝撃の方が大き過ぎたから、敗戦という、したがって、特に我々の年輩はあの痛みというのを感じていない、我々のおやじは感じておったとしても。  そういうことからして、インフレ期待があって、調整インフレ政策というのが政策として掲げられるようになってはならぬということは、厳しく我々みずからにも言い聞かせておるわけであります。したがって、国債国民にわからない場合、何となくインフレ期待感みたいなのが出たらなおいかぬから、したがって、先ほどお答えしたように、そのあり方も勉強してみよう。しかし、調整インフレということに対しては、私は政策運営の上で一番厳しく対応をしていくべきものだというふうに考えております。
  100. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、一昨日の質問に続きまして財確法について若干質問をいたします。法案に入る前に円高不況問題で二、三御質問しておきたいと思います。  昨日総理は、アメリカのベーカー財務長官の発言を歓迎されましたけれども、日本経済新聞の報道によりますと、渡辺通産大臣が昨日の自民党中曽根派総会で、最近の円相場の動向につきまして、一ドル百六十円から百六十五円の間でとにかく安定することを望むと述べられて、円相場が安定するなら現状程度の円高はやむを得ないというような考えを明らかにされたために、この発言が直ちに市場に反映いたしまして、ベーカー財務長官証言の影響で一時百六十五円五十銭まで下落した円相場が百六十四円ちょうどまで戻してしまったというような報道があります。きょうは聞いてみますと現在百六十二円四十銭だと、また円高が進んでいるようでございます。  同じ日経新聞の報道によりますと、日銀当局は、ベーカー証言というものはこれは円高評価ではなくて客観的な分析だろう、むしろ政策協調の説明が中心だったのではないか、だから円高が十分な水準に来たとか円高ドル安が行き過ぎているとかと評価したわけではないだろうとクールな考え方をしている、こういうような報道がなされております。  私も大体そんなところだろうとは思うのですが、今西ドイツのマルクなんかと比べても、円だけがドルに対して独歩高のような姿にございます。やはり円高基調というものはなかなか変わらない。ですから、私どもが主張するように、やはりこれは為替相場に対するアメリカ等との協調介入のようなものを具体的に行わなければ、円高がこれからも急激に進むということは避けられないのではないか、このように心配するわけでございます。その点大蔵大臣がどのように考えておられるか、これが一点です。  もう一点は、昨日は円高不況対策で閣議あるいは自民党総務会等でいろいろ論議がされたやにお伺いいたします。報道によりますと、総務会等でも、幾ら公共投資の七七・四%の前倒しをやったとしても、秋口の補正予算による公共投資の追加等がはっきりしなければ、企業も発注を手控えたりして本当の効果が出ないのではないかというような論議もあったやに聞きます。また、閣議等でも三塚運輸大臣等が具体的な提言をなさったとも聞いております。しかし、大蔵大臣の立場では、財確法案の審議をやっている最中に補正予算云々という話は具体的にできない、本委員会でもそのように述べられておりますが、私は、やはり国民的立場に立って、閣内で統一して中曽根内閣としての態度を鮮明にすべきときではないか、このようにも思うわけでございます。  今円高不況で日本の産業界は大変な苦境に陥り、大きな打撃をこうむっている現状を考え、また国民生活への影響というものを考えますと、やはり私は、国民的立場に立って、中曽根内閣としての統一見解、円高不況対策、補正予算や公共投資を含めた考え方を鮮明にすべきではないか、このように思いますが、いかがでございますか。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初の問題でございますが、相場でございますから、それと、きのう六十億ドル弱ぐらいでございますから、平素の倍でしょう。やっぱり相場でございますから、そして巨大な量でございますから、したがって閣僚の発言の片言隻句が相場に影響をもたらすということも確かにないとは申しません。したがって、私自身は通貨当局そのものですから、言わない方が一番いいのでございますけれども質問なんかがあれば言わなきゃならぬというような立場にもありますが、あくまでも安定を、急激過ぎるわけですから安定を期待して、そして基本的には政策協調でございますが、有用と認める場合は介入あり得るということでお答えの限界としておるというところでございます。  それから円高対策の問題でございます。これは、ちょっと自民党の総務会のことはわかりませんが、三塚運輸大臣から私に朝連絡がございまして、各省でやっておる、各省というか、三省でございますが、経済企画庁、通産省、大蔵省でやっておるが、我々もそれぞれの業種も抱えておるので、それを少し早目に進めてもらうような意味において発言してみたらどうだろうか、こういうお電話がありまして、おれも朝から晩まで国会だからどの程度進んでおるか中身が実際よくわからぬが、それならば閣議が終わったところで発言を求められたらいいじゃないかと言ったら、そうしましょうということで、運輸省も運輸省として円高対策を必要とする業種を持っておる。したがって今経済企画庁中心で行われておる対策について我我もあらゆる角度から協力を惜しまない。ただ相場だけは閣議で議論するものではないということは自分もよく承知しております、したがって急いでもらいたいという趣旨の御発言でございました。私、タイミングいいなと思って実は聞いておりました。したがって、経済企画庁長官の言をかりれば、夜を徹して今やっておるという状態であるというふうに私も感じております。
  102. 多田省吾

    ○多田省吾君 四月八日に打ち出された総合経済対策はどのような効果が出ているのか、これを時間もありませんので簡明にお述べいただきたい。
  103. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政府としての総合対策、これは今着実に実施しておりますが、公共事業の促進、これは上半期今おっしゃったように、七七・四、また住宅金融公庫の利下げ、それから中小企業国際経済調整対策特別貸付制度、小企業等経営改善資金融資制度の金利引き下げ、これも既に実施しております。それから電力料金は六月から、それで五月十三日に改定申請が通産省に出された。したがって、効果はやっぱりこれからということだと思います。
  104. 多田省吾

    ○多田省吾君 ではこの問題の最後で大臣にお尋ねしたいのですが、総理は本会議でも、円高と中小企業対策を検討しており、できるだけ早く実施したいと、このように答弁されておりますが、このいわゆる第二弾というものを大蔵大臣はどのような方策で対処すべきであるとお考えでございますか。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは端的に申しますと、今申し述べたようなものは既に着実に実施しておりますが、それ以上の問題につきましては事務当局間において検討をまさにしておる最中でございますので、私も時間が余りございませんので、整理して頭の中へ入れては残念ながらまだおりません。
  106. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、法案に入りますが、大蔵省内に、将来長短金利の状況を見ながら年度償還の短期国債も積極的に発行したいという意向を明 らかにされているようでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  107. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 六十年度以降に大量の国債償還借りかえが参りますので、これに円滑に対処するため短期国債の制度をお認めをいただいたわけでございます。今、積極的に発行していく考えがあるやに聞いているかとおっしゃいましたが、特に積極的にこれを発行していくということではございませんで、やはり国債の満期が五月、八月、十一月というふうな特定の月に集中をしている、あるいは全体として、六十一年度でも借換債発行が十一兆四千億という巨額に上るわけでございますから、こういう借りかえを円滑に進めていくためにやはり短期国債をある程度活用していかざるを得ないというふうに考えております。
  108. 多田省吾

    ○多田省吾君 積極的ではないというお答えでございますが、この年度内で償還される短期国債というものは、歳入歳出外で発行償還される上に、その限度額に制限もないわけです。これでは健全な金融政策財政運営に反するわけでございまして、この点はやはりよほどお考えになっていただかなければならない、このように思います。  それからもう一点は、短期国債発行につきましては、国債償還負担を一層過重させ、国債の平均残存年数をも短期化させることになりまして、金融政策の運営をますます難しくすることになります。  この二点から私はやはり自重を望みたい、このように思いますが、いかがでございますか。
  109. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 確かに年度内に償還される国債は歳計外で発行されるわけでございますが、しかしこれは借換債の一種でございますので、その償還額の範囲内に限られるという、いわば内在的な歯どめはあるわけでございますけれども、しかし短期でぐるぐる回すというようなことは安定性を欠きますし、御指摘のような問題も確かにございますので、安易に短期国債に依存することのないように節度を守ってまいりたいと思っております。  現在のような金利の安いときには、むしろ長期の安定した国債を出したいというのが国債管理者の希望でございます。しかし他方、短期国債で短期の金融市場を育成すべきであるという御要請もございますので、その両方をにらみながら適切に運営してまいりたいと存じております。
  110. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、国債整理基金制度についてまとめてお伺いいたしますけれども、五年間の繰入停止ということでますます形骸化されようとしております。この国債整理基金制度というものは、財政負担の平準化のためにもなくてはならないものであり、また財政節度を保持するための基本的な柱の一つでもございます。これからますますこの繰り入れを停止するということになりますと、新たな財政負担を生じさせることにもなります。  こういう意味で、財政節度を保持するあるいは財政負担の平準化、こういった意味から、早急に私はもとに戻さなければならない、このように考えますが、基本的に大臣としてどのようにお考えでございますか。
  111. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに今御指摘なさいましたとおり、いわゆる公債政策に対する国民の信頼、それから財政負担の平準化、これで昭和四十二年に確立されてその役割を果たしてきておる。がしかし、御指摘のとおり、五十七年から六十一年まで、財政の環境が変化いたしましたので、五年連続定率繰り入れを停止せざるを得なかったということも事実であります。  したがって、これまでも一生懸命で歳出歳入両面にわたるぎりぎりの努力を積み重ねて、可能な限り公債発行額の縮減を図って、財政運営に誠心誠意努めてきたわけでございます。しかしながら、それでもこういう措置をせざるを得なかったということでございます。新たな問題としてはNTT株の問題もございますが、これは減債制度の根幹にかかわる問題でございますから、私ども、六十二年予算編成までにぎりぎりの知恵を絞り、汗をかいてみたいというふうに思っておるところでございます。
  112. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は最後に、国債発行と所得再配分機能との問題で御質問しておきたいと思います。  国債の大量発行、そしてその累積のもたらす影響一つといたしまして、所得の再配分機能を逆行させるという面があるわけでございます。すなわち、国民の中でも、富める者はますます富むということになりますし、また反対に所得の少ない方はますます苦しくなる、結果的には私はそのようになると思います。もちろん金融資産家にとりましては、国債以外のものでその運用を図ることによりまして多額の利子所得等を得るわけでありますが、国の政策でこのように大量の金融資産としての国債が恒常的に発行されるということの所得再配分機能への影響というものを非常に心配されるわけでございます。  正直に言いまして、所得の低い方は、幾ら国債が大量に出回っているとしてもそれを資産運用に充てるということは恐らく考えられないと思います。そういうことで、これはますます財政の持つ所得再配分機能をゆがめていると言わざるを得ません。  本年度末百四十二兆円にも及ぶ国債発行ということになりますと、これは大変なことになると思いますが、大臣として、この国債の大量発行と、それから所得再配分機能をゆがめるという問題をどのように考えておられるか、御見解をお伺いしたいと思います。
  113. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実際、純粋個人の保有額のかなりの部分は現物であると考えられます。しかし、転々流通するものでございますので、どのような所得階層に保有されておるかということを正確に把握することは困難と言われておりますが、大筋、多田さんおっしゃったように、感じとしては私も十分理解できるところであります。  したがって、一般論として、たびたび御指摘がありますように、公債の利払いについて、公債の保有状況等によっては意図せざる所得再配分が行われる可能性があることは事実でございます。だからこそ、結局公債依存体質を何とか変えていくためにこの発行額を当面は縮減することに努めるということに尽きるのではなかろうかというふうに考えております。いわゆる百四十三兆にも及ぶ残高をどう考えるかという以前に、発行額を縮減するということに努めるというのが本来のあるべき姿だというふうに考えております。
  114. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に私は大蔵大臣に対する要望でございますけれども、二つあります。  一つは、円高不況に悩む輸出関連の中小企業初め産業界全般のために早急なる対策を講ぜられたいこと。  それからもう一つは、この前も申し上げましたけれども、公明党初め野党が二兆三千億円の大幅所得税、住民税あるいは政策減税を要求し、また内需拡大や公共投資の拡大を強く要求し、また福祉、文教費等の増加を要求したのですが、ほとんど受け入れられずに、六十一年中に、幹事長・書記長会談等によりまして今後にまだ余地が残されておりますけれども、やはりこのような赤字国債を初めとする大量の国債発行の現状を考えるときに、むしろ内需拡大あるいは大幅所得税、住民税、政策減税というものを六十一年中に断行いたしまして、また公共投資の追加拡大、こういったものを早急に図ることによって法人税等の税収を増加させ、景気を回復させる、その方がやはり今後の赤字国債発行や大量国債発行を阻止し得る、このように私は考えております。ですから、早急なるやはり内需拡大策を図られたい、これを二つ目に要求する次第でございます。  この二つに対して御答弁をお願いしたいと思います。
  115. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つは、まさに急を要するいわゆる輸出関連中小企業等の対策であろうと思います。恐らくかなり私は議論が詰まってきておると思いますので、総理からも申しましたとおり、早急に対応策を明らかにしなきゃならぬと思っておるところであります。御趣旨に沿ってその ように対応してまいりたいと思います。  それから二番目は、一つの産地とか問題をとらえてではなく、今年度経済全体の動きの中で財政、税制が果たす役割、こういうことについてしっかりやれ、こういう御鞭撻であろうと思っております。  減税問題は、御案内のとおり、政府といたしましては、秋までに答申してもらって六十二年度税制、こう申しておるところであります。公明党を含む戻し説とかいうような形で御要請があっておることは十分承知しておりますが、その問題は年内に成案を得るという各党間のお約束があるということも承知いたしておるところであります。  さらに、内需拡大のための公共投資の追加等の問題でございますが、これについては私は、今前倒し効果というのがどういうふうに出ていくかというその時点の経済状態全体を眺めて対応すべきものではなかろうかというふうに考えておるところでありますが、それらも含めて近日中に議論はしてみようというふうに思っておるところでございます。
  116. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大蔵大臣、一昨日の大臣の答弁の中でこういう発言があったですね。私の答弁のように最後は何だかわけがわからなくなるというんですが、これは大臣本気でそうおっしゃったのか。いや私はそうだと思うんですよ。いつも大臣の話を聞いていて、どっからかわからなくなる。大体大方の皆さんはそうだと思うんですね、あのあたりはどうかわからぬけれども。しかし、こちらはそれでいいんですよ、まさに客観的事実だから。  しかし、大臣が本気でそういうおつもりで、私の発言は最後は何だかわけがわからなくなるということを自覚して発言をしているということは、これは一大事だと思うんです。もしそうだとしますと、本当に国の財政、現在と将来の財政に責任を負い得るのかと私は思うんですが、この発言は取り消されてしかるべきだと思うんですが、いかがですか。
  117. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いやこれは自覚しております。よく与野党を通じて、君は言語は比較的明瞭だが意味不明なことをよく言うと。それを自覚しておるからこそ、そうでないようにと思って一生懸命でお答えしておるわけでございます。したがって、それはいい意味において、みずからに言い聞かしておるということでございますから、そういう批判にこたえて可能な限り明瞭な答えをしていく努力をするということは私のむしろやるべきことではないか。だから、これはわからぬと思って答弁しておるなんということじゃございません。そう言われておりますから、そうならぬよううに自覚してお答えするように努力しておる、こういうことでございます。
  118. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そういう自覚をして発言してなおかつ意味不明ということは、これはやはりまさに自覚のとおりになっているんではないか。  ということは、先ほど、毎年毎年同じことを議論しているということについて歯どめの関係もありましたけれども、それについてはいじめの問題とか、緊張とかということで、大蔵省がいじめられることによる一つの歯どめのような、そういう発言もあったんですね。それで緊張していると。ところが今の発言を見ますと、余り緊張せずに、要するにこの場所を、この期間、二日か三日間何とかうまくごまかせばそれで過ぎちゃうんだと、こういうような気持ちがありはしないかということを私は心配するものだから、それでお聞きをするわけなんです。
  119. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、ごまかせるような方々の会合だとは思っておりません。それは皆さんのペースに僕は、みずからの低いペースを皆さん方の高いペースに合わせるのが精いっぱいでございます。  いじめという表現は悪かったかもしれませんが、毎年毎年出すというのは、本当は当分の間とかいった方がそれは国会自身から見れば楽かもしらぬ。しかし、特例公債については毎年毎年出させてもらうから、やっぱりそれが緊張感を維持するためのものだ。それから中に入っております訓示規定も、毎年毎年それで指摘を受けるから緊張して対応していくということに結果としてはなっているんじゃないかな。それを自分として便宜主義に考えれば、あれは当分の間、法律を毎年出さなくてもやれるようにということを考えるかもしれませんが、それじゃいかぬということでございます。
  120. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、私の発言もまともにしっかりと聞いていただけるということで、これから若干質問したい、こう思うんです。  まず一つは、前回も、そしてきょうも質疑の中で、NTTや東北開発公庫の株式の売却などによる収入を期待している旨の発言がありましたね。これは先ほども鈴木委員から指摘があったとおり、一過性であると同時に、全体の百四十三兆という額から見ればごく本当に微々たるものなんですね。ということが一つ。  それから、全体的に見ますと、国債発行残高の減る要因よりもむしろふえる要因の方がやっぱり圧倒的に多いと思うんです。となりますと、こういうものに期待すること自身が私は全体の中で余り意味のないことではないか。むしろここで国債発行残高のふえる要因、そのことを真剣に検討していくべきじゃないかと思うんで、そこでまず認識として、ふえる要因としてはどういうものがあるのか。どういう理解しておりますか。
  121. 保田博

    政府委員保田博君) 当然のことでございますけれども国債残高が今後どういうふうに推移するかということは、今後の国債発行額がどのようになるか、それから償還がどのようになるかということにかかわるものでございます。したがって、将来国債残高がどのように推移するかという計算をするには幾つかの前提を置かなければいかぬのではないかと思うんです。  その計算の前提としまして、一つには、財政の中期展望。したがって、建設国債については今後とも六十一年度並みの発行を将来とも続けていく。それから第二に、特例公債については六十五年度依存体質脱却ということで、六十五年度にはゼロにする。それから第三の前提としまして、特例公債についても建設国債と同様の借りかえをするという前提に立って計算をいたしますと、残念ながら国債残高はなお漸増を続けてまいるわけでございます。昭和七十四年に約百九十二兆円ぐらいになるのではないかと考えております。ただ、そのうちの特例公債につきましては六十四年度がピークで、六十五年度以降は減少に転ずるということでございます。  なお、それ以上の先のことについては、先ほどのような前提を将来いつまでもというわけにはなかなかいかない。したがって、財政運営が果たしてどうなるのかということについて、一義的に前提を置くわけにもまいりませんので、それより先のことはいささか数字をもってお示しするのはいかがかというふうに考えております。
  122. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先のことは計算が不可能なのか、大体やることが意味がないのか、どちらかということですね。  しかし、それについては経団連の試算によりますと、ピークは昭和百九年、こういう年は昭和としてはもちろんないんですけれども昭和百九年、残高は二百六十二兆円となる、こういう試算がありますよね。こういう試算についてはどうですか、大蔵省どう見ていますか。
  123. 保田博

    政府委員保田博君) 経団連の試算がいかなる前提に立つものかちょっと存じませんので、論評は差し控えさせていただきたいと思います。
  124. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ピークについてなかなか今言えないと思うんですが、ただ私はこの経団連の試算でさえもっとふえるんじゃないか。というのは、私は先ほどふえる要因と減る要因で、減る要因など額も小さいし一過性のものだということを指摘したんですが、ふえる要因としますと、地方交付税特会の国庫負担分五兆八千二百七十八億円とか、それから国鉄の累積債務、これ今議論されているところでは十六兆七千億円、これが国の負担。さらに特別会計の累積赤字では、国有林野特会累積 赤字七千三百五十二億円、そのほか厚生年金など国庫負担四分の一減額等々たくさんの負担繰り延べ措置が恐らく四兆円以上ありますよね。これは全部ふえる要因なんです。減る要因なんというのはせいぜい一兆かそのあたりであって、ふえる要因の方が圧倒的に多い。となりますと、ふえる要因がふえればまたそれは金利を呼び、さらに返済が不可能ということになってくると、これは本当に容易ならざる事態ということになると、本当にピークはまさになくなっちゃうんじゃないか、こういう心配はないんでしょうか。率直にお伺いしたいと思います。  今言ったような事実をやがて全部かぶるんでしょう。かぶらざるを得ないんですよね。かぶらぬというならまた別の話だけれども。となると、ほかのこともいろいろ問題があるけれども、しかしこういう大きく見ますとまさにふえる要因が決定的に大きいのではないか。となると、先ほどの昭和七十四年百九十二兆円というその数字自身がもっともっとこれはカーブの高いもの、はるかに昭和七十四年説を超える可能性さえ出てくるんじゃないかと思うんですが、その辺についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  125. 保田博

    政府委員保田博君) 将来の歳出増加要因としては、先生指摘のとおり、現行の制度を前提としますと、地方交付税ございますし、問題になっておる国債費もございます。それから、先ほど来御指摘になりましたようないろんな財政上のやりくりに伴う負担もございます。と同時に、これから我が国は急速な高齢化社会を迎えていくわけでございますから、人口の高齢化に伴います年金負担、それから医療費の負担といったようなもの、あるいは国際社会におきまする我が国の地位の向上に伴って、経済協力だとか、あるいは立場によっていろいろでございますけれども、防衛といったような問題もあるわけでございますから、将来の財政需要というのはやはり非常に大きなものがある。現在のような比較的まだ老齢化が進んでいない段階で、将来にわたってそういうこれからの財政需要に柔軟に対処し得るような財政体質に今のうちから改革をしておく必要があるということで、ここ数年来主として歳出カットを中心として財政改革を進めておる、そういうことで御理解をいただきたいと思うわけであります。  先ほどのような増加要因を、何年にはどんな具体的な数字になるというようなことで数字で表現するということはなかなか難しいと思いますけれども、ほうっておけば国債はふえていく、そのことは間違いないわけでございます。そのことによって将来の我が国の財政の対応力がなくならないように今のうちから懸命の手当てをしていかなければならない、そういうふうに考えておるわけであります。
  126. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 思い切った歳出カット、もう一つは増税の問題だと思うんです。しかし、ずっと何年か前の将来予測、これを見てみますと、ほぼ当たっているか、むしろそれを上回っている、こういう状況で来ています。となると、今既に仮定計算等で出ているこの数字というのはほぼ同じようなことでいくんじゃなかろうか。  というのは、歳出カットといいますけれども、まさにこれ容易ならざることでしょう。既に建設国債を増発してでも景気浮揚策をとれというような意見もあるし、特に社会保障、教育費はもとよりですけれども、公共事業についてだってもう我慢ならぬというところまで来ている。そういういわば要請も強いわけですからね。となると、とても歳出カットを思い切ってやったとしても限度があるとなると、大体今予測しているような線で進まざるを得ない。私の指摘したこと、それに加えた、さっきの国鉄その他の増加要因というのはそれ以上のものですからね。  となりますと、今度は大臣にお聞きしたいんですけれども、大臣がそのどの段階で総理大臣をやっているかそれはわからないですけれども、いずれにしても、重要な時期に担当することを考えますと今以上に責任が重くなってくる。今私が指摘したような問題についてどのようにお考えですか。
  127. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大体特例公債残高は計画どおりにいけば六十四年度をピークに次第に減少をしますが、総公債の残高は徐々に増加していく、こういうことになるわけです。しかし増加のテンポは緩やかにしなければならぬし、それがいわゆる公債残高のGNP比で六十二年ごろまでは横ばいでいって、その後は次第に低下していくであろう、七十一年ですか、三〇%台になっていくであろうというふうなことをいつも仮定計算、ある種の前提を置いてではございますが、お示ししているわけでありますが、数字で示すことは非常に困難でございますけれども、当面はやっぱり発行額を抑えていくということです。  だから、発行額、すなわち公債依存度を減らしていくということ、それがやはり当面の問題であって、そして六十五年以降対GNP比に対して抑制していく。だが大きな国債を背負い込んだ財政であるということは十分自覚をいたしております。  それで、子や孫にこんなにツケを回さない方がいいじゃないか、この際生きとし生ける我々がひとつ負担しようじゃないかというコンセンサスになれば、それも一つ考え方でございましょう。しかし今直ちにそのコンセンサスができるかどうかということになりますと、私はまだまだ時間がかかる問題じゃないかというふうに考えます。
  128. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今言われた中の一つはやっぱり増税だと思いますね。ことしの秋以降増税議論が盛んになってくると思うし、来年以降の増税問題も出てくると思うんですが、私は、この大蔵省のつくった財政の中期展望などを見ましても、増税分は結局要調整額に消えてしまうんじゃないかという気がするんです。今言われているのは、春に減税案を出して、まあ大した減税案じゃないようですけれども、秋にその財源案といって、あたかも減税のための財源というようなことが宣伝されてきたんですが、よく見てみれば、減税の財源に回らない、ましてや国債残高を減らす方にも回らない、増税しましても。むしろ要調整額を消すのにやっとのことじゃないかと思うんですが、これは数年の話ですから、この程度のことは予測できるだろうと思うんです。  国債整理基金の繰入停止ということは恐らくまたやっていくでしょうけれども、それをやったって当然まだ相当額の要調整額が残るんですから、増税分はそこへいってしまうんじゃないかと思うんですが、その辺どうですか。
  129. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の質問、いろいろな前提は別としまして、結局しかし、過去をまたさかのぼっていただきますと、毎年出す中期展望の要調整額をよかれあしかれ埋め込んできたわけでございますから、その努力は削減の方で埋め込んできたわけですから、つじつま合わせとかいろいろ言われながらも、だからその努力はこれからも重ねていかなきゃいかぬ。だから、現行の施策、制度がすべて前提という考え方ではまだまだいけないと思っております。
  130. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、その努力の中に、そういう大変な削減の努力と、それからもう一つ、言われておったように数字のつじつま合わせだから、やがてこれは出てきますよね。しかし、いずれにしたって要調整額は相当部分、計算の仕方によって若干差はあるけれども、普通に進んでいく限りは相当ありますよね。六十二年度に三兆四千、六十三年四兆三千億円、六十四年六兆円。国債整理基金繰り入れをやめたとしてもまだまだ相当の額です。しかも、そんな何十兆という増税ができるわけないんで、せいぜいやっぱり何兆円ですよね、増税による増収、仮に一番最悪のものを考えておったとしてもですね。  となれば、仮に増税してもそこに消えてしまうことではないかというこの私の指摘に対しては、これはどうですか。最後はわけのわからない答弁ということじゃなくて、私は端的にひとつお答えいただきたいと思うんです。
  131. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 仮に増収措置ということでコンセンサスがなったとしましょう。その場 合、これは近藤さんのおっしゃる額でございましたら、恐らく当然増経費と余り変わらないものではないかなというふうな印象で今受けておりました。が、またいわゆる増収措置というところまではいってないわけですから、今の場合、それは要調整額を、とにかくそれはつじつまを合わせて、いろいろな議論はありますけれども埋めてきたわけですから、その努力はやっぱり引き続きやっていかなきゃいかぬ、容易なことじゃなくてもやっていかなきゃならぬと思っております。
  132. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私が言っているのは、その中に相当つじつま合わせもあり、相当無理があって、例えば公共事業だってもうこれ以上抑えるのは相当苦しいでしょう、竹下さんだって。支持母体からいったって苦しいと思うんですよ。その気持ちはお察ししますけれども、ただ、無理がここまできておるので、もうそこへ抑え込むこと自身が無理だとなればもう増税しかないんです。増税して、それがやっぱり要調整額を埋めるにすぎないんではないかという、この指摘は相当当たっているのではないかと思うんですが、それに対してお答えいただきたいと思うんです。  それから次の問題に進みますが、歯どめの問題ですが、赤字国債借りかえ発行国債整理基金の繰入停止、これは全部突破してきたんですが、そういう意味では、国債発行二十年の経過というものはまさに歯どめを取ってきた歴史だと思いますが、これは言葉をかえてわかりやすく言いますと、期限到来の債務は返さない、返済の貯金はしない。既に議論になっているとおり、新しい借金はほとんどが返済に回り、しかもほとんど金利だ。となりますと、個人で見ますと、大体こういう状況というのはサラ金の債務者の最悪事態ですから、やがて家出、蒸発、自殺というところなんですね。まさにそこへ来ているという、こういう認識が、国家だから多少違うというけれども、やっぱり基本的には同じではないかと、こう思うんです。  となりますと、今歯どめとしては市中消化の原則だけになってしまっているんじゃないかと思うんですが、この二点について端的にお答えいただきたいと思うんです。
  133. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 後段の場合ですね、その市中消化の原則、すなわち日銀引き受けしない、こういうことはこれは守っていかなきゃいかぬということでございます。
  134. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ただもうそれだけじゃないかというんです、歯どめは。
  135. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、それは減債制度ですね、今確かに減債制度が形骸化しているんじゃないかという前提に立ては、その議論も可能でございましょうけれども、その根幹を維持しながらやっていこうという、我々は精いっぱい年末まで汗かこうと、こう言っているわけですから、歯どめはそれだけだとは私は必ずしも言えないではなかろうかと思います。  それから前段は何でしたか。
  136. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間ないからいいです、どっちみち大したことじゃないから。  時間の関係で、厚生省来ていますから厚生省。銀行局はちょっと時間ないので、同じ大蔵省だから勘弁してください。  厚生省の関係で、今度の政管健保への国庫補助削減問題が、昨年度の九百三十九億円に続いてことしも一千三百億円とするというこの減額措置については、去年一年限りの特別措置だと言っておったのに、二年連続で減額する。大臣、これは約束違反じゃないでしょうかね。そう言われても仕方がないと思うんですが、どうですか。
  137. 佐々木典夫

    説明員佐々木典夫君) 昨年に引き続きまして政管健保への繰り入れの特例措置を行ったことにつきましてのお尋ねでございます。  今回のこの措置につきましては、御案内のとおりの国の財政状況というふうなことでございまして、一方、私どもの所管いたしております政府管掌健康保険につきましては、五十九年度で約二千億強の黒字を生じたわけでございますが、六十年度におきましても黒字を生じ、積立金を生ずることが見込まれましたので、国の財政事情大変厳しいというふうなことで強い要請がございましたので、今回の措置をやむを得ず講じたと、こんな次第でございます。
  138. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それでは端的に聞きますけれども、これは本人の一割負担が出てきた結果、やっぱり医療費が急激に下がってきた結果金が余ってきたのだと思うんですね。そこで、もし本人十割給付に戻した場合と、それから今の九割給付の場合との差、本人一割自己負担分に見合う金額は大体どれくらいですか。
  139. 佐々木典夫

    説明員佐々木典夫君) ちょうど六十一年度予算ベースで申し上げますと、私どもの見込みでございますと、政府管掌健康保険の本人の保険給付費が一兆七千五百九十二億と見ておりまして、総医療費は一兆九千四百三十億というふうに見込んでおりますので、その差が健康保険本人の一部負担というふうに考えております。
  140. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 金額。一そちらから伺った数字があるから言いますと、二千四百億円なんですね。そうでしょう、間違いないでしょう。
  141. 佐々木典夫

    説明員佐々木典夫君) お尋ねが、現在の給付が九割給付にいたしてございますが、これを仮にもとの制度の十割給付に戻した場合にどのくらいの財政影響があるかというふうなお尋ねでございますと、約二千四百億程度というふうに見ております。
  142. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、年間二千四百億円の財源があれば十割給付の復活は可能だということなんですね。健保財政の黒字額、五十九年度末二千四十億円、六十年度末一千八百七十二億円、合わせて三千九百十二億円ですから、六十年度九百三十九億円、六十一年度一千三百億円の国庫補助減額がなければ、もう年間これは十分今の財源余裕を持って確保できる。だから十割給付は可能であるということだと思うんですね。  ですから、私は、その出てきた黒字分というのは結局ここですから、やっぱり一割負担になった結果なんですから、この分を国庫に召し上げるんじゃなくて、むしろ十割給付復活に優先的に充てるべきではないか。まさにこれは国民の犠牲なんですから、むしろこういったところを復活するのが正しいんじゃないか。  これは課長じゃこの辺のお答えはお気の毒なんで、ちょっと大臣、今言ったことは、健康保険、これが一割負担になった結果ここに黒字が出たんですからね。今度その分召し上げるというわけでしょう。だからその分は、むしろ十割負担が今財源的には可能だということ、二千四百億円です、年間。となれば、今の黒字分から見れば十割給付は可能ではないか、こう思うんですが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  143. 保田博

    政府委員保田博君) 数字の点は先生指摘のとおりなのでございます。ただ、五十九年度におきまして健康保険法の改正をいたしまして、本人の定率で一割負担を導入したわけでございますが、そのねらいは二つございます。  一つは医療費の効率化ということでございまして、当時もいろいろ御議論ございましたけれども、医療費のむだを排除するということが国民経済的にも非常に大きなねらいだったわけでございます。一割負担をすることによりまして、患者がお医者さんに行ったときに自分の医療費がどれだけかかったかというのがすぐわかる。それからまた、そういうことから、自分のお金がかかることによりまして、自分の健康保持についてあるいは疾病の予防について自覚をする、そうすることによりまして国民経済全体としての医療費負担のむだな膨張を防ぐというのが一つのねらい。それからもう一つは、保険制度がいろいろ多岐にわたっておりまして、その給付と負担がばらばらであるといったようなことから、その公平化を図らなきゃならぬという観点からこの制度改正を行ったわけでございます。  これは、そうすることによって健康保険の財政をよくして、それによって浮いたお金を国が吸い上げようというような意図に出るものではございませんで、いずれにしましても、国民経済全体と しての医療費のむだをなくするためにやった制度でございますので、せっかくの御提案でございますけれども、これをもとへ戻すということは我々としては考えられないということでございます。
  144. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そのうち今度二割負担にしようと。今の次長の話ですと、じゃ本人の負担をふやせば余計自覚が高まり、医療費のむだがなくなるというようなつもりで、次また二割やろうという、そういう魂胆ですか。
  145. 保田博

    政府委員保田博君) 突き詰めていけばそういうことも考えられないわけではございませんが、いずれにしましても、給付と負担との間のバランスというもの、むだをなくすという観点を考えながら、各保険の財政、そういうものを総合的に勘案して決定されるべき問題ではないかというふうに考えておりまして、現在すぐ二割にしようということを考えているということではございません。
  146. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 あとわずかな時間ですから、せっかく銀行局長に来てもらったので一言だけ質問しますと、今金融機関なかなか金融自由化で大変だということと同時に、いろんなサービスを出しているということで、手数料が大分ふえていますね。ただ余り手数料がどんどんふえていくと、最近値上げの話もある。しかも電力、ガスも、あのお金のあそこまで手数料を取ろうなんというと、せっかくの円高差益の還元などの方向にも反するので、そういう方向についてどう思うのかということが一つです。  それからもう一つ、CDの手数料も問題になっているんですが、例えば千円引き出すのに百円となると、これは場合によっては利息制限法違反問題だとかそういう法的な問題も出てくるんじゃないかと思うんですが、その点について見解を聞いて質問を終わります。
  147. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 金融機関のサービスの手数料についてのあり方についてのお尋ねでございますけれども、基本的には、これは顧客の利便性とコストを勘案して金融機関が自主的に決定すべきものであるというふうに考えております。  現在いろいろの決済サービスが出てきております。現に存在しており、またこれからふえていくと思うのでありますけれども、その手数料の中には、無料のものとかあるいはコストに比して割安の手数料となっているケースがあると思われます。今後、金融の自由化の進展の中で、よりコストを考慮した水準に改める動きが進むことが予想されるわけであります。これにつきましては、やはり金融機関の提供するサービスは、預金におきます金利、サービスに対する手数料、こうなりますので、どちらかがゆがんだ形になりますると、あるいは非価格的な手数料でのサービスを行いますと、預金金利の自由化の中で、金利の形でお返しすることができないという問題になるわけでございます。結局だれかが負担しなければならないとすれば、利用者が負担するという考え方があるというふうに私どもは考えております。  この場合ただ大切なのは、今まで非価格的な競争などをやりまして、顧客の理解が得られないままに、いわばコスト計算なしにサービスしているような面もあったわけでございます。したがいまして、こういう経理の適正化をする場合には、顧客の理解が得られるように努める必要があるというふうに考えておるわけでございます。  それから第二点の、CDの夜間営業延長に関しての手数料の問題でございます。これは基本的には私ども、この時間延長につきましては、実は昨年十月の経済対策閣僚会議で、内需拡大に関する対策では、個人消費の喚起のために、そういう夜間サービスの延長などについてもこの対策の中に含まれているわけでございまして、私どもからは、コスト面や体制整備等にも配慮しながら対処するように要請したわけでございます。  御指摘の利息制限法の問題につきましては、これは出資法の問題もございますわけで、これは法務省の所管でございますけれども、一般的に貸し付けに関する手数料は利息とみなされるというふうに両方の体系でなっているというふうに聞いておりまして、利息制限法の制限を超えて利息は徴収することはできない、こういうわけでございます。そこで金融機関は現在、時間延長そのものの問題、これをどうするかという問題と、その場合の手数料の徴収と、それからこの利息制限法との関係等を検討しているというふうに聞いておりまして、今検討中ということで、もちろん法律に触れないようなことでなければいかぬというふうに考えられるわけでございます。
  148. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 終わります。
  149. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大臣、質疑を伺っていて感ずるのでありますが、きのう参考人の諸先生においでいただいてお話を伺ったのでありますが、特例債について、これはあってはならない公債なんですとおっしゃっておりました。言われるまでもなく当たり前のことでありまして、公債で資金調達をしながらその資金は一般歳出で使ってしまう、これはもうあってはならないことなんであります。これは常識だと思うんですね。この常識がいつの間にか常識でなくなってしまった。特例債というのは本来はあってはだめなんです。この常識に立って議論というのはできないものなんだろうか。  毎回財確法をお出しになっておられますから、やがて、もういっときの審議の苦痛さえしのげばとにかく特例債は出せる、こうなってしまったのでは、もう財政の節度もへったくれも何にもない。私、今問われているのは財政の節度だと思うんです。審議に参加している我々でさえ胸が痛いんですから、財政の責任者として大臣のお気持ちもさぞかしつらかろうと思いますけれども、議論していく入り口というのは、特例債というのはあってはいけないものなんでありますから、その上に立って多少でも議論ができるんだろうか。  以下、若干意見を交えて申し上げますけれども減債制度がございますれば多少ある面で言いわけもつかないまでのことはありません。減債制度はどうかといいますと、その根幹部分というのは定率繰り入れでありまして、これは以前よく議論をしましたように、片方で特例債発行していながら定率繰り入れができるか、これはもうナンセンスなんです。したがって、特例債発行している限り定率繰り入れはできないんですよ。ところが減債制度は何としてもこれは維持していかなければいかぬ、私もそう思うんです。そうすると定率繰り入れは毎年していかなければいかぬ。そのためには、特例債発行しておりますと、幾らしたくたって定率繰り入れをすること自体がナンセンスなんです。多少ややこしい借換債と一緒でして、片一方で借金しながら片一方で定率繰り入れで計上していくというのはどだいナンセンスでありまして、したがって、赤字国債特例債をなくすというのが財政再建を考える場合の私は大切な前提条件だと思うんです。もちろん建設公債もありますから、国の借金という意味では姿、格好は同じでありますけれども、これをごちゃごちゃにしますと話がどうも見えてこなくなるものですから、きょうは特例債と建設公債を分けて議論を申し上げます。  そこで、減債制度の基本的な枠組みを守るためにも特例債発行しないことがまず第一の前提条件だ、私にはそうとしか思えない。ではそのためにどうやって特例債発行を中止なさいますか。今のところは六十五年特例債依存体質から脱却とおっしゃっておりますが、なぜ六十五年ならよかったんですか。特例債をとにかくなくさなきゃいかぬというのは日々の課題でして、六十五年までは特例債を出しても結構などという理屈はどこからも出てこない。そこで、ではどうやって特例債を減らすのでございますか、こうなりますと、仮にもこれは公債ですから、特例債発行することによっていかなる便益がそこに生じているんだろうか。そこに便益を感ずる人たちからいただくというのは、税金としてですよ、だれが見てもわかる筋道です。  増税なき財政再建ということがあるものですから、なかなかに増税問題は議論がしづらかったんですけれども、ただ、臨調がなぜ増税なき財政再建ということを言い出したか。それは政府の、何 も政府だけの責任に私は押しつけるつもりはありませんけれども、政府の自律能力に対する不信感ですよね。あくまでも増税なしということでしりを押さえておかないととてもできないだろう、それが増税なき財政再建ということを第二臨調が言い出した本当の意味ですよね。それは確かに第二臨調としてそう思いたくなるような現実があっただろうと私は思います。では一体、第二臨調がそう言うから税については一切考えません、そして片一方では、何と言われましょうとも金は要るんですという格好でずるずる特例債発行に追い込まれていく、これは決していいことでは私はないと思うんです。それは税をもって充てるのか、あるいは歳出の削減になるか、どちらかはそれはわかりません。いずれにしてもどっちかの道筋しかないわけです。そこで、特例債はゼロにいたします、したがってこうであります、私は大蔵大臣としてここまでのお話はする責務があると思うんです。  建設公債については今ちょっと私触れておりません。特例債についてはこれはあってはいけない公債なんです。この常識の上にしっかりと座って議論をしていくのが今何よりも必要であり大切なことではないだろうか、こう思われてならないんですが、御所見伺います。
  150. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはおっしゃるとおり、二十一年ですか、あの財政法の審議の際、まさにあれが原点であります。昭和四十年に二千億、あれは建設国債特例債かちょっと性格はわかりませんけれども、あれは建設国債のうちに入れていいんじゃないかと私は思っておりますが、いずれにせよ四十年から建設国債を出した。そこのところから、いみじくも御指摘なさいましたように建設国債が当たり前化して、それで五十年についに赤字国債を出して、それからこれが、いわゆるあってはならないことがあることが普通だというふうな認識になりがちな環境になった。そうあるのが普通だとは思っておりませんけれども、間々そう思いがちな環境にそのときなった。  したがって、おっしゃいますように特例債というのは本当はあってはならないものでございますから、これはまさにソフトランディングというだけが五十九年であり六十五年の目標年次であって、その途端に、どんな増税をお願いしてでも本当はなくすべきが本来のあるべき姿であるというふうに私も思っております。  だから、今の六十五年とは何ぞやということになりますと、これはまさに私は、さはさりながら、先ほどもおっしゃいましたように、いわば増税なき財政再建というかんぬきの中で歳出削減の方を一方やってきておるわけですから、したがって、ソフトランディングということを考えて初めて五十九年なり六十五年なりが定められたものだというふうに私も感じておるところでございます。  だから、時として、一遍きりの増税、増収措置というようなことに何度か私も魅力を感じたことがあります、ここのところ五回予算編成させていただいて。本来あってはならないものだということが、何といいますか、あることが常識というふうにしたという責任は、これは私はだれにあるかということをあえて、いや国会にもあるだろうとか、あるいは歳出圧力を加えた人にもあるだろうとかというようなことは横に置いておいて、やっぱり財政当局自身の姿勢にその責任は帰するという気持はいつでも持っておるということであります。  本当にあってはならないものが残っておる。建設公債だから善だとか悪だとか、その議論はきょうは栗林さんも横に置いておられますから私も横に置いて、あってはならないものが存在しておる。だからせめてものつもりが、毎年毎年というのは、その都度、あってはならないものだという意識を自分にも言い聞かすために毎年毎年法律を出しておる、こういうことがわずかながらの良心の残っておるところではないか、こんな感じがいたしております。
  151. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 お気持ちはよくわかりますが、あってはならない公債ということを言い直しますと、今回の法律は出してはいけない法律なんです。それを毎回お出ししておりますからと、そう言わざるを得ない環境でありますから、ついつい慢性になってしまうんですね。  この間の経構研の報告書を拝見して、これがどうやって具体化されていくのか私もつまびらかではありませんけれども、恐らく相当規模のこれは建設公債を頭に置かないとできないのではあるまいか、そんな気がいたしました。特に、社会資本の整備充実、しかも都市住宅について環境の整備をせよ。これまで立ちおくれてきた日本の土地問題まで実は片方の視野におさめながらやっていかないと本当の日本の歴史的な転換はできません、こうなりますと、幾らかは別にして、相当の建設公債は私は必要になってくるんではあるまいか、そんな気がするんです。  ただ、見方を変えますと、日本は貯蓄率が大変高いと言われますと、貯蓄率が高いからいけないんではなくて、あの高さに見合った投資の機会が提供されていないところに問題があるとある学者がおっしゃっていましたが、私もそんな気がするんです。  そこで、建設国債だけを抜き出して考えてみますと、きのうも引受団体の代表の銀行の方がおっしゃっていましたが、市中消化は大変順調だそうであります。したがって、ある意味では投資の機会を提供しているという役割を果たしているのかもしれない。したがって、建設国債だから、国債なら全部だめだということもいささかどうなんであろうか。しかも、片一方で建設国債で資金調達をいたしまして、どこそこで橋をつくったといたします。そこに大変な便益が発生するわけです。あるいはあるところで相当住宅地の区画整理をやったとします。これは相当な便益が発生する。それは当然そこの地価に反映されてくるはずであります。そうすると、建設公債である事業をしたことによってある便益が発生して、しかもそれが金額に換算をして、何も受益者負担などという裸の議論をいたしませんが、そういった格好で、建設公債にはある程度将来の償還期待できるようなある政策の形成というのはできるんではないだろうか。これは本当の頭の中で思いついただけでありますから、ただ感じだけ申し上げます。  ただ、私が申し上げたかったのは、いずれにしても建設公債が相当量これから出ていきそうだ。そうなると、減債制度の枠組みは何としてもこれは崩すわけにいかない。毎年定率繰り入れはしっかりとやっておかないとこれはもう惨たんたることになる。その定率繰り入れができるためにはどうしたらいいのか、それが、繰り返しになりますけれども、結局特例債発行しないことです。  そういった意味で、今の円高局面にある日本経済を考えましても、大蔵大臣としますと、当面六十五年でいいですよ。中期展望をやってみたらどんなに急いだってその辺だということが六十五年だったんでしょう。ただ、六十五年にはそういきますということが、回りから見てわかるだけの説得力があるプランとして私は御提示なさる必要は何としてもあると思うんですよ。なぜそれをしなきゃいけないかと考えますと、片一方では、減税が、あるいは景気浮揚が欲しいばかりの一念から、六十五年の目標はもっとずらせなどという議論の方がどっちかというと国会議員好みでありまして、どうしてもそちらの方に議論は走ってしまう。そうじゃなくて、こうすればできるではありませんか、しかもそのある一部が今税制の全般にわたって見直し中であります、そこの中でこれは考えるんですとおっしゃったからといったって、今までずっとお答えになってきたこととそんなに変わったことをおっしゃっているわけではない。六十五年特例公債依存体質からの脱却ということについてもう少し説得力のある見解を示していただくわけにいかないでしょうか。  私がなぜこんなことを申し上げるかといいますと、実は、こんなことばかりいつも申し上げるんですが、最初の特例債発行した大蔵委員会以降私も参加をしておりまして、私も胸が痛いんで す。この法案をここで通してしまっていいんだろうか。そのうちにだんだんもう特例債に慢性になってしまって、とどのつまりは残高は救いがたい勢いで膨れ上がっていく、そのときに責任を果たしていると言えるんだろうか、こう自問自答いたしますと、どうしても大臣に六十五年依存体質脱却に至る道筋を明らかにしていただきたい。少なくも内容を今ここでということは無理でありましょうが、いつまでにそれを示していただけるのか、せめてそれぐらいのことはおっしゃっていただきたいと思うのであります。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは大変難しい問題でございます。  幾らかでも透かしが浮き彫りになったのが、電電株というのが一つあろうと思います。最初電電株につきまして心の中には存在しておりましたが、これが法律としてきちんと電電株措置を決めていただいたわけですから、したがってことしから初めて、まだ値決めのできたものじゃございませんけれども、透かしが浮き彫りになったということは一つ言えると思います。  御指摘のとおり、私は定率繰り入れというのは、信用の問題もそれはございましょう。が、将来の平準化のことを考えればやっぱり必要だという感じは今でも持っております。が、特例債発行して、一方定率繰り入れすればそれだけ特例債をまた余計発行して財源に充てるわけでございますから、したがって、特例債を減らすという至上命題のもとに定率繰り入れをここのところストップしてきた。そういう状態でありますから、特例債がなくなれば、それは私はそれなりにきちんとした説明ができるようになると自分でも思っております。  したがって、全く例えばの話でございますけれども、今建設国債の議論もありましたが、それはあらゆる特定財源を全部一般会計に、一般財源化して、そしてその分だけが建設国債にシフトしていくということになれば、私はある時期可能な措置はあるではないかと思わないわけでもございません。  しかし、税の問題は、まさに今税調べ、逃げ込んでおるわけじゃございませんが、あそこへゆだねておるということでございますので、その税制調査会の答申というものがいま一つ私は透かしが浮き彫りになっていくではないか。だから、おっしゃいますように、可能な限りきちんとした財政再建計画とでも申し上げるべきものが本当は出されるのが好ましいと思いますが、これは今はまさに定性的なものしか御説明申し上げていない。定量化していくとすれば、電電株は来年からは少し定量化するでございましょう。そして税の問題が透かしが浮き彫りになってきました場合に、どのような形でいわゆる説明資料になっていくかということが、この秋以後の私は問題であろうというふうに思っております。  ただ、今特定財源を全部一般財源に入れるなんということはこれは普通言えた話ではございません。それに対してはまた相当な抵抗もあるでございましょうが、例えばの話で申し上げただけでございますから、そういうこともあり得るものであるかな。いろんなことを考えながら、結局毎年毎年少しずつ透かしが浮き彫りにされていくということの経過しか、なかなかリジッドな財政再建計画というのは現実問題として立ちにくい。何年からかくかく増税いたしますというところまで国会が、あるいは国民のコンセンサスが許すという環境にあるとも今思えませんので、そういう毎年毎年の努力の中に透かしになっておったものが浮き彫りにされてくるというのが現実の対応の仕方ではないか。  特例債というものは、初めて二千億のときに福田先生大蔵大臣でございました。私は内閣官房副長官をしておりました。それは閣議でも、私もその後何回か閣議に列席しておりますが、あのときはやっぱり一番大変な議論があったという印象が今でも残っております。ただ、建設か赤字がという区別はありませんでしたけれども、公債発行に対する財政当局の物すごい議論の姿勢というのは今でも私の脳裏に残っておりますから、本当にあってはならないものが存在しておるということは嫌というほど私も承知いたしております。
  153. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いろんな特別会計等を含めて云々というのは、大臣がよく口走られる悪知恵のたぐい、そういったことも私はあるのかもしれないと思うんです。  ただ、財政の再建、歳出の削減ですね、レーガンがやっている奇妙な名前の法律案の姿を見ましても、やっぱり切るときには頭からどかっと切っていくのがそう珍しいケースではない。ですから、リジッドなものは難しいとおっしゃいましたけれども、そうおっしゃられてしまったのではなかなか前に進まないのではなかろうかという気がいたします。  今電電の株の評価を含めて未知数が多いわけですから、したがってここで追い込んだ議論をすることはできますまいから、こういったお伺い方だけしておきます。  ことしの暮れになりますと、今見えないものが、おっしゃった透かし彫りがだんだん見えてまいります。今のままいきますと、来年もこのいわゆる財確法案は御提出にならざるを得ないんでありましょう。そのときに法案の姿、格好並びに御提案に当たっての御説明、それはことしとはいささか違うはずであります。したがって、来年は今おっしゃったそのもろもろの要因を入れたところで、もう少し手がかり、足がかりがある状態財政再建の議論をさせていただける、こう理解をしておきたいと思いますが、よろしいですか。
  154. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあいわばこの紙の下にあったものが若干でも顕在化してくる。今の電電株の問題は、まさにあれは仮設の値段でございますけれども、少なくともそうしたものが現実化してくるということは言えると思います。税制の問題では、安定的な財源確保ということが基本的には存在するわけでありますが、どういう形でこれが透かしから顕在化するかということに対しては、今にわかに自信はございませんが、去年、おととし、その前と同じことを言って、ことし本当に電電株が仮設の価格のものでも出たということが一つの顕在化の証拠、それがなお仮設でない実態として出てくるというような経過は恐らく続いていくであろう。だから、一番出ない間の大蔵大臣しておったと、こういう感じでございます。
  155. 青木茂

    ○青木茂君 私の本日の御質問は、一昨日の質問と連動をいたします。同時に、今栗林先生おっしゃいましたいろいろな御疑問、それとも連動をいたします。  私も、特例債というものが絶対という言葉をつけていいほどあってはならないと思っております。しかし現実には借りかえさえ行われるという現実ですね。そういう現実を踏まえて、六十五年度脱却がどういうスケジュールとプログラムにおいて可能なのかということを出していただきたいんですよ。ところが出ない。今最後の栗林先生に対するお答えを私非常に注意深く伺っておったわけですけれども、出ない。出ないということはできないということです。それならば、首が回らないんだから、あってはいけないんだけれども、何とか現実の問題としてこれは処理をしないと、論理の問題はある程度外れても、リアリティーの問題として何とかこれをしないと本当に日本の財政壊れてしまうという非常に強い危機感というものを持っておるわけでございます。そうなりますと、少々乱暴ではございますけれども、一昨日いろいろなことを言いました。それを少し繰り返してみます。  第一は、これからの新発債で、もう二十年ぐらいの長期の償還、そういうようなものをお考えになる余地があるかないかということをまず伺いたいと思います。
  156. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 国債の種類を多様化してまいりまして、最近は短い方に多様化してまいりましたが、おっしゃるように長いものもこれから工夫してまいりたいと思っております。
  157. 青木茂

    ○青木茂君 長いものも今後お考えになる、こういうことでございますね。  それから第二の御提案でございますけれども、六十五年目標に対して説得力のあるスケジュールとプランニングが出ないということならば、これは大蔵大臣の首をかけて五年だけ私は一昨日ですか延ばしてみることを御提案したわけですね。もう論理外れていることは百も承知ですよ。それでも現実の処理としてはやらざるを得ないんじゃないか。例えば、一昨日私申し上げたことは、七十年度までに赤字国債の依存体質をゼロにする、そして七十年度までは建設国債償還を一応ストップする、そして七十一年から建設国債償還を大幅に開始するというような、そういう問題意識というものは全然暴論として話にならないんでしょうか。
  158. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財政再建を一時的に極端に言うと棚上げして、積極財政に転換するということが一つ考え方としての背景にある考え方なのかなと思っても聞きましたが、要するに六十五年度脱却ということは、実際問題としてそれを先へ延ばせば確かに財政改革の進展は緩やかなものになりますけれども、しかし、その間それだけの特例公債を出していくわけですから、それがふえていくというのは、私がいつも感じ方としては、よしんばいわば悪知恵の範疇に属するものであっても、特例債は可能な限り早くなくしていくというのがオーソドックスな考え方ではなかろうかなというふうに思います。それから、七十一年度までの間は恐らく全額借りかえでいって、元帳における償還をストップするわけでございますが、永久国債じゃございませんが、期限つき永久国債でございますか、表現はちょっとおかしいんですが、それは議論として最近出ております。やるべきだとか、まさかこんなことはやらないだろうなとか、いずれの議論もあるわけでございますが、一時的にせよ減債制度の根幹が完全になくなるわけですから、今のところは、財政審から根幹は維持しなさいという枠をはめられた中に私は今立っておるわけですから、したがって、それらを念頭に置きつつも、六十二年度予算編成までにそれこそ汗かいて勉強していかなきゃならぬ課題だという問題意識の上に立っております。  それは一つ考え方ですが、大政策転換になって、今までの縛りが全部、自分で縛りの中から飛んで出るような話になりますから、その辺が時間がかかりましてもいろんなコンセンサスなりを得ながらでないと実際問題としてはやり切れぬだろうというふうに感じております。
  159. 青木茂

    ○青木茂君 私が非常に強く申し上げているのは、その六十五年度ということが果たして縛りになっているんだろうか。それから減債制度の根幹はもう崩れているんじゃないか、実質的に見て。形式的にはあるかもしれませんよ。実質的に見てもし崩れておると考えるならば、実質的に新しい縄をここでなってみるという発想の転換こそ政治ではないのか。六十五年度やりますというふうに事務的に進めているのはこれはいわゆる行政の発想ですよ。政治の発想としてここで新しいものが出てくるんではないか、また出さなければならないんじゃないかということを私はおとついからくどく申し上げておるわけです。  大臣もお急ぎでしょうから、そこら辺のところをもう一回ひとつ御決意を願いたいんです。
  160. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに六十五年というのはこれはいわば縛りではありません。みずからがつくった努力目標でございます。だから、いわゆる各種八条機関等からのかけられた縛りであるとは思っておりません。しかしみずからの努力目標として掲げたものであることは事実であります。  それから減債制度の問題は、実質論はおっしゃる意味わかりますが、財政審ですね、我々の縛りの役割をするとしたら、これにはまだきちんと根幹維持という縛りがかかっておるというふうに対応していかなきゃならぬじゃないかなと思っておるところでございます。
  161. 青木茂

    ○青木茂君 どうも大臣との問答は、最後になりますと何か言葉のあやで行き違いというような気がして仕方がないんですよ。そういう意味においてこれ以上深くは申し上げませんけれども、ここまで来てしまった日本の財政が、行政論理の発想だけで解決できるものではない、どうしてもここに政治論理が発動されなければならないんだということだけは強く申し上げまして、次の質問に移ります。  景気対策でございますけれども、とにかく少し持ち直したとはいうものの円高と。円高というのが一体どういうメリット、デメリットをもたらすか、これはいろいろな解釈があることは事実でございます。事実でございますけれども、現実の問題として、輸出に大きく依存している特に中小企業ですね、中小企業が非常に困っておることは事実の問題ですね。ですからこれをどうして救わなければならないか。それからもう一つは、もう輸出依存国家ということは世界的に認められないんだから、内需依存国家に国家の体質そのものを転換をさせていかなければならない。  そうしますと、これは前々から私が申し上げておって皆さんから笑われるあれなんだけれども、特定の財源担保にした、建設国債でもない赤字国債でもないというものの発想ができないだろうか。例えば円高差益でもいいですよ。この前脱税、漏税ということであれしたんですけれども、円高差益だっていいですよ。仮に何兆円があって、その何兆円かの収入があるとするならば、公共事業に何%、減税分に何%とする。そして財源担保は円高差益でもいいし、私が前々から主張している脱漏税でもいい。そうしておいて、減税分についてはいわゆる一回限りの戻し税方式で五〇%なら五〇%やって、残りの五〇%はこの中に負の所得税という発想を入れまして、消費需要の拡大という方向に持っていくというようなのは景気対策になりませんでしょうかね。
  162. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 脱漏税の問題は別として、円高差益で得た、まあ例えばとおっしゃいましたが、円高差益というものを中心にしてその税収増分を別会計建てにして何かやったらどうだ、こういう議論、これは随分各省ごとにいろんな議論がありまして、いわば諸外国から得たものだからこれこそまさに経済協力で還元すべきだ、こういう議論が一つありました。それから、国内の円高差益をこれによって差損を食っているところへ還元すべきだ、この議論もありました。いや国民全体というのが今度の一兆円の戻し、まあ戻し税です、あの一回きりの戻し税ということでございますが、いろんな議論をしました。  別会計にするため税収のうちの円高差益部分を特定する必要がありますが、それは理論的にどれが円高差益かというのは実際問題としてできない、こういう議論がありました。個々の法人の所得のうちどれだけのものが円高によるものか、他の損益要因とは切り離して、企業努力とかいうようなものを切り離してやるということは実際税の問題では不可能ではないか、こんな議論がありました。それから円高による輸出企業の今度は減益がございますから、税収全体として差益分だけが飛び出るということも実際問題考えられないではないか、グロスで見たときに。したがって、いわゆる税収の一部だけを先取りして、特定の新規歳出、減税でも結構でございますが、に結びつけることは全体としての財政のアンバランスをもたらす。だから、それはそれというので、結局電力、ガスは値下げによるところの還元、こういうことにしたわけでございますので、一つの特定のものを実際選別するというのは、およそどこまでが企業努力でどこまでが円高差益かということは非常に難しいということを言わざるを得ないというのが実態ではなかろうかと思います。
  163. 青木茂

    ○青木茂君 いろいろの議論があることはこれはよく存じ上げております。ただ、日本の場合、いろいろな議論というのがどうも縦割り行政からくる議論という印象が非常に強いんですね。各省庁間で自分の権益を守ろうと、そこから何かぽんともっともらしい論理が浮かび出てきちゃって百家争鳴ということになって、結局何もできなくなってしまうというような気がして仕方がないというのが率直な印象です。  それはもう一つ突っ込んでみますと、円高差損益というようなものがここまで出てきた場合に、円高差損益を特定できるかどうかという議論、これはおいておきますよ。もしできたとしたならば、負の法人税みたいな発想が出ないでしょうかね。つまり、円高差益でもうけた部分を円高差損に何とか還元するというような発想が何か政策的に構想できないだろうかという感じを持っておるわけなんですけれども、これはむしろ当局にお伺いした方がいいかな。
  164. 水野勝

    政府委員(水野勝君) その場合につきましても、円高差益のあるところから円高で赤になっているところへ回すということにつきまして、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、どれが円高差益分、どの赤字が円高による赤字分であるかということは技術的にまた理論的にも難しいんじゃないか。それが仮にできた場合という先生のお話でございますが、まずそれがやっぱり非常に難しいではないかという気がするわけでございます。  ちょうどただいまと逆のケースとして、昭和四十八年、四十九年に石油ショックで一斉に物価が上がり、便乗値上げ、そういったものが非常に問題にされたわけでございます。そこで便乗利益に対して特別に課税をしたらどうかと、これがかなり強い御議論になりましたが、どれが原油価格の高騰による便乗値上げ分か、インフレによる利得分かということはなかなか難しい。しかし何かやりたいということで、しかしこれはどうしても政府立法としてということは御提案難しい。そこで議員提案によりまして、法人税の中の特別の部分、その会社の資本金の二〇%を超える部分でございますとか、最低五億円を超えた部分とか、そういったもので足を切りまして、結局そうして出てまいりました通常の法人税の一〇%を課税標準にした特別税をつくる、そういうことで議員立法で二年間だけ会社臨時特別税として実施された経緯があるわけでございます。  やはり何か特別のものをお願いをしてそれを何かに使うという場合に考えられるのは、現行の税額部分につきまして特別の措置を講ずるのが限界ではないか。その場合におきましても、どうも政府提案として申し上げるのはかなり構成が難しいということから議員立法になった、そういう経緯もございます。  そういう例から見ましても、特定の利益部分を抜き出し、特定の赤字部分を抜き出しての立法というのはやはり難しいのではないかというお答えにならざるを得ないのでございます。
  165. 青木茂

    ○青木茂君 実はここで本当に言いたかったのは、法人税を累進課税にして、そしてそこに負の法人税的な発想を持っていけば特定という点が消えるからいいわけなんですが、こいつを言ってしまいますと、本当は黒字だけれども赤字に偽装したところまで救済することになりますから、ここまではよう言い切れない点があったわけです。  大臣、外交日程か何かでお急ぎのようでございますから、一昨日と本日、私は実は竹下大蔵大臣としてよりも次代を担うニューエージリーダーとしての御抱負と御見識を伺いたいというところからおとつい始めたんですけれども、短い言葉で結構でございますからそれをおっしゃっていただいて、次の日程の方にいらしていただければ結構だと思いますけれども
  166. 竹下登

    国務大臣竹下登君) きょうの外交日程というのは、豪州のホーク首相に、端的に言いますと、サミットの、この辺の代表でございますから、その中身の説明、それは全部で往復で三十分ぐらいですから本当に短いことでございますが、役目柄させていただく、その時間が決まっておるというだけのことで、またそれが済んだら帰ってまいります。また総理づきの質疑が行われるというふうに承っております。  私自身今、あるいはユニークな、時によっては税制論理からいうと、何といいますか、独特な発想といいますか、思いつきとは申しませんけれども、私も時々思いつきやりますが、そんな議論が積み重なる中で大体国民のコンセンサスが僕はできていくものだ。したがって、我かく思うということは、国民の知識水準が高いだけに、現状の日本の我々みんながある意味において指導者という意識を持ったとしても、それは時に危険な道に行きはしないかという感じがいつでも自分にはございます。それはやっぱり一つのゼネレーションもあるかもしれません。青木さんと僕とはそう違いませんわね。我々やっぱり戦前を知り、時に鉄砲玉みたいになり、そして戦中を知り戦後を知って、その中で現状に巧みに調和しながら生きてきたから、それで気宇壮大性がないじゃないかと。  こんなお話をしちゃ申しわけないんですが、この間あるリーダーの人が、政治家じゃございませんけれども、あんたと話しておっても、十ぐらい違う人ですけれども、やっぱり発想が大変なものが出てこない。今七十の人ですが、八十の人には明治の気宇壮大性がある。そして、最近若い政治家とつき合うようになった、僕よりも十も下の。この人たちは物心ついたときに既に、金融大国がなんかは別としまして、世界の中の日本という気宇壮大性がある。しょせん今の七十から大体昭和の一けたの初めぐらいまではこれは本当につなぎにすぎない、こういうことを言われまして、それでその八十歳の人が、しかしうれしかったのは、若い人と話しておると、これは与野党を通じて若い代議士とお話しになっているようです。ああこれでおれも死ねる、日本にはまだこんないい若い衆がおる、近ごろの若い者はなどと思っちゃいかぬということを言っておられまして感銘をいたしました。どうしても一つのゼネレーションから来る宿命なのか、気宇壮大性に欠けておるのがニューエージの私がその一つの代表的な人物ではないかという感じがいつもいたしておるということを、これは素直に申し上げておきます。
  167. 青木茂

    ○青木茂君 明治のお話が出ましたから、明治の先達、財政がとまった場合にはなすことなく五年我慢しろ、何にもやらずに五年寝ておれ、それが財政再建の第一歩だ、こういうことを言った明治の学者がいらっしゃいますね。  それはともかくとして、じゃ大臣ありがとうございました。  残りの時間は、大臣いらっしゃいませんから、例のこの前の税調の中間報告でございますね、それについて、これは議論というよりちょっと教えていただきたいところがあるんです。  第一に、給与所得控除につきまして、この税調答申を読みますと、給与所得控除というのは、とにかく勤務費用の概算控除と他の所得との負担調整のための特別控除と、この二つから成り立っているという説明があるんです。そういたしますと、私どもがサラリーマンの必要経費、必要経費というのを口を酸っぱくして言い続けてまいりました場合、すぐ返ってくる給与所得控除というのは、平均三〇%もあって非常に高い水準だから、サラリーマンの必要経費問題はもう完全にフルカバーされているんだという論理は消えたわけですね。ここのところどうなんでしょうか。
  168. 水野勝

    政府委員(水野勝君) これは、今回の中間報告すべてがそうでございますが、定量的と申しますよりは定性的な方向が示されておるわけでございます。したがいまして、この給与所得控除、その中の実額控除と負担力の調整に分解する云々というのも一つ方向でございます。じゃ、現在ある平均三〇%のものをどの部分を負担調整部分に充てるか、どのくらいの部分を実額控除にするか、これはまだ今後の問題でございます。  三〇%マクロで見て十分カバーされているという定量的な認識としては特に変わっているということではございませんが、とにかく給与所得者といたしましては、ほとんどの方が、千五百万円以下の方であれば年末調整で済まされてしまう。もちろん医療費控除等によりまして還付をされる方は申告の機会がございますが、給与所得そのものを算定する手続においてはすべて毎月の源泉徴収と年末調整で済まされてしまう。それで完結だと言われる。それに対しては、給与所得そのものにつきましても自分で算定をするというか、そういう算定方式というものも方向として道としてあっ ておかしくないんじゃないか。また、それが定量的にカバーされているから、実益があるとかないとかというそういう損得の話ではなくて、そういう方法、道も開かれる、開くことが適当ではないかという、そういう定性的なと申しますか、そういう方向での御議論ではないかと思うわけでございます。
  169. 青木茂

    ○青木茂君 定性的な議論をしておるわけなんですけれども、よく誤解があるように、給与所得控除の全部がサラリーマンの必要経費カバーである、これはもう消えておるわけですね。
  170. 水野勝

    政府委員(水野勝君) その点は、この二つの部分に分けようということの根底には、そこは全部がそうではないという認識があろうかと思います。
  171. 青木茂

    ○青木茂君 わかりました。  次の問題は、これはどういう表現を使っていいのか、新聞によりますと、内助特別控除と書いてあるんですけれども、こういう表現が当たるか当たらぬかは別問題として、今度、主婦の内助の功を認める特別控除と、これまである配偶者控除との性格の差というのは一体何なんでしょうか。
  172. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 戦後、人的控除が現在のような形になりました後でも、配偶者につきましての控除は、基礎控除以外の普通の子供に対する扶養控除などと一緒になった扶養控除でございました。それが三十六年に、いや奥さんというのは、配偶者というのは、それだけの単なる生計費に対するしんしゃくだけではなかろう、奥さんの内助の功の部分もある、他の所得者とのバランスもある、あるいは共稼ぎの世帯とのバランスもあるという議論がありまして、昭和三十六年に配偶者控除というもので独立したわけでございますが、その後金額が基礎控除と一時一緒になったり、また分かれたりして、これが昭和四十九年以来はすべて人的控除、同じその線に乗ってきているわけでございます。したがいまして、現在の配偶者控除というのも、単に扶養されていることによる生計費控除だけではなかろう。そういうことになりますと、その中には、今申し上げました内助の功に対する部分あるいは共稼ぎ世帯とのバランスの部分、そういったものも含まれているとも言えるわけでございます。  それはあらわれ方が時代によっていろいろ違うわけでございますので、今回の特別控除部分というものも、そういうことからいたしますと、全く新しい配偶者控除とも言えるかどうか、その点はそこまではっきりは言い切れない。やはり今までの配偶者控除の中にもそういったものがいろいろ同居をしていたのかなと。その中で特に内助の功と申しますか、片稼ぎ世帯での配偶者の貢献と申しますか、それからまた他の共稼ぎ世帯あるいは事業所得の世帯、そうしたものとのバランスというものをよりはっきり、今までも含まれておったと言えばおったんだろうと思います、三十六年の経緯等から見ますと。そこを端的に脱してきているというものではなかろうかと思いますが、これもまた今後の仕組み方によって、どこを強調するのか、どういう性格を顕著に出すのかによってその性格もまたいろいろ変わってこようかと思いますので、そこは全く違ったものとも言えないし、全く今までと同じものとも言えないというような、現在まだ中間報告でございますが、方向がそういうものを打ち出してきているという段階ではないかと思います。
  173. 青木茂

    ○青木茂君 正直申し上げてよくわからぬ。お答えはよくわからぬけれども、もう時間ありませんから。  ただ、片稼ぎという表現が出てくるんですけれども、何か片稼ぎ控除をつくっちゃうと、女性は家におって内助の功を発揮する、外へ出て稼ぐのは何となく気持ちの上で抑えられるという、共稼ぎ不利というような印象があるんですけれども、これはどうお思いになりますか。
  174. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 全くおっしゃるとおりの御議論ずっとあったわけでございまして、端的にもう二分二乗まで行けばそこの問題は極めてすっきりと解決されるわけですが、しかし、二分二乗というのはこれはまさに今御指摘のような問題点がさらに拡幅される。しかし、やはり今お話しの片稼ぎ世帯が今のままでいいのかという意識もまたいろいろあるわけでございまして、いろいろ今御指摘のような問題点も全部踏まえながら、まず当面こういう形でのものを定性的なものとして中間報告で盛り込むのが今の段階ではないかということではなかったかと思うわけでございます。
  175. 青木茂

    ○青木茂君 最後に。  むしろ逆に、二分二乗で都合が悪ければ、僕は六、四でも七、三でもいいと思いますよ。所得分割の不公平こそ一番大きな不公平なんだから、五、五、六、四、七、三、それを持っておいて、そして逆に勤労主婦控除を設けて共稼ぎの不利を救うということの方が僕は税制上は逆に言うとすっきりすると思います。  もう時間ございませんから、これは問題提起だけにしておいて、終わります。
  176. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 午後五時四十分まで休憩いたします。    午後四時三十五分休憩      —————・—————    午後五時四十一分開会
  177. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、山田譲君及び桑名義治君が委員を辞任され、その補欠として糸久八重子君及び太田淳夫君が選任されました。     —————————————
  178. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 休憩前に引き続き、昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  179. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 財確法に入る前に、当面の問題について二、三総理の所信をお伺いをしておきたいと思います。  日本時間ではけさの未明でありますけれども、ソ連の共産党書記長ゴルバチョフ氏が、チェルノブイリ原発の事故に関連して、ソ連はこの事故が制御を逸脱した核エネルギーの恐ろしい力に直面をしまして、事故の重大性とその原因並びに事故によるところの放射能被害、こうしたものの深刻さを受けて発言をなさっているようでございますけれども、その中でソ連は、核実験の凍結をことしの広島の原爆の日まで一方的に凍結をする。そして米ソの核実験の凍結について、欧州の都市、あるいは広島の地ということを言っておられるわけでありますが、広島という土地で開催をしたい、このように国営テレビで述べたようでございますが、これに対して、特に広島という問題もございますので、中曽根総理の所感を賜りたいと思います。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核実験の禁止問題につきましては日本も非常に熱意を持っておる国で、国連あるいは軍縮委員会において常に積極的な努力をしておる国であります。今後も努力していくつもりでございます。  そこで、この問題に関する米ソ交渉、もう長い間引き続いて行われており、ジュネーブにおきましても行われておる問題でございますが、ソ連はいわゆるモラトリアムというようなことを提議したのに対して、アメリカ側は、核実験禁止については自分たちも賛成だけれども、その前にまず専門家会議をやって、そして具体的なそれをやっていくための手順をよく検討しようじゃないか。それから、新しい探知の方法についてアメリカは技術を持っておる。したがって、ソ連の技術者が何ならアメリカの実験場へ来て、いかにそれを検証するかという方法を見てください、そういうことも言っております。そういうようなことで、つまり検証問題というものが両方が安心できるものができて初めて核実験禁止というものは現実的に安心して行える、口先だけで言っているんじゃだめだ、アメリカはそういう科学的な現実的な態度で 終始しておるわけであります。  我々は、やっぱり検証というものは非常に大事である、そういうふうに考えて前からも言っており、地震国である日本もそれに対するいささかなりとも貢献をしようと、ジュネーブにおいても我我は積極的に努力しておるところであります。最近はアメリカは、新しい地震計のような計器を埋めて、それによって地下核実験もある一定規模以上のものを探知するという技術開発をやって、それについてもソ連の技術者を呼んで、見てくれ、そういうことも言っておるようであります。  いずれにせよ、やはりそういう現実的に科学的に認証、検証ができる方法というものが相ともにつくられて安心した実験禁止に臨めるものである、私はそのように考えて、これは参議院本会議や参議院の委員会においてもお答えしてきたとおりでございます。  広島云々という問題につきましては、これは米ソ間においてレーガン・ゴルバチョフ会談というものがジュネーブで行われた際に、次はワシントンで行いましょう、アメリカへ御招待いたしますと、それでゴルバチョフ氏は応諾して第二回会談はアメリカで行われるというふうに両方の了解ができていたと私覚えております。そういうことでありますから、私はアメリカで行われるものであるとばかり思っていましたが、そういうような新しい御提議があったということは新聞あるいは情報を通じて知っておりますが、それらの問題については米ソ間でいろいろ話し合っている継続中の問題でございますので、我々はこの問題についてはノーコメントという立場が適当である、そう考えて、けさも新聞記者の皆さんの御質問についてはそのように申し上げているところでございます。
  181. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 じゃ二番目に、ジャカルタでテロ事件が実は起きているわけでありまして、これには日本の大使館もねらわれたし、カナダの公用車も爆破されたわけでありますが、リビア問題に絡んでいるんではないだろうかというふうに報道されております。  私ども、サミットにおいて、テロの声明についてリビアを名指しにしたということは各方面から批判がありました。そして場合によってはそのことによって日本が巻き込まれるんではないかという心配もあちらこちらからそういう意見があったわけでありますけれども、現実にそうした問題が起きたわけでありまして、幸いなことに被害というものは非常に少なかったのが幸いだった、こういうふうに思います。しかし、このことを見まして、特にインドネシアあたりでこれが起きるということはちょっと予想されなかったわけでありますけれども、案外我々の身近で起きてきたということは今後の日本人の国外のいろいろな旅行等につきましても非常な心配がふえてきた、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。  総理はあの宣言に対しては議長の役割をなさったわけでありまして、みんなが言うから仕方がないという言い方もありますし、議長であるからこそその問題は議長国の日本としての立場をもう少し貫いての宣言にすべきではなかったかという批判もありますけれども、現実にこういう問題が起きてきたということについて、総理はこれは責任を感じてもらわなくちゃ困ると私は思いますけれども、この問題についてどのようにお考えでございますか。
  182. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 東京サミットにおける国際テロに対する声明というものについては、参議院でも御説明申し上げましたが、やはり無事の市民を殺傷するような凶悪な国際的なテロというものは糾弾すべきであって、これは絶滅させなければならぬというのは世界人類の一致した願いであり、どの国も同じ方針を持っておると私は確信しています。日本もそういうことはかねてから言ってきておるところであります。  そこで、そのような国際テロに対する防護措置を声明したのがこの間の声明でありまして、特に国家に支援されたような国際テロというようなものについては、これは防護する措置を我々共同でとらなければ有効でない。例えば外交官特権を利用していろいろやる。今までの国際法というものは、国家はそういうことをやらない、そういう特権を利用して国際テロをやるようなそういうようなことが前提でない、約束でない上に立った国際法であって、外交行のうであるとか、外交官特権というものが認められておるわけであります。それが、その特権を悪用してもし万一そういうことが行われるようになれば、新しい防護措置を講じなければならぬのは当然であります。  そういうような面から見まして、そういう政府に支援された国際テロという問題に対する構えも、これは一般論として、五項目にわたって、いざという場合にはそういう措置もとろうということで話したので、これは私は当然の行為であると思っておるのであります。  新聞の世論調査等を見ましても、やはりあのテロ問題に対する国民の反応というものは、六三%以上が支持しておるというのを私見た記憶がございます。  ただ、リビアというものの名前を入れるか入れないかという問題については、私は議長といたしまして、いろいろな議論があって、独立にリビアを名指した声明を出そうじゃないかという議論もあったぐらいですが、あの国際テロの中のセンテンスの中に文を入れた、目立たないようにした、そういう措置を私は議長としてとった次第でもあります。  しかし、そのことは、アラブを敵にするとかアラブと対決するなんという考えは毛頭ない。今までの中東和平や中東政策、アラブ政策というものは、日本は外交政策は変わっておりませんということも申し上げてきたとおりなのであります。したがって、日本のこのような立場に対しては、国際的理解は進んでおると私は考えておるのでございます。  きょう報ぜられましたジャカルタにおける事件というものは、まだ真相が不明であります。しかし、新聞やあるいは通信社に来ているいろいろな情報を見ますと、反帝国主義国際旅団と名乗る外国人が日本の通信社に国際電話で犯行声明を伝えてきた。それで、この人がどういう人であるかわからないんですが、自動ダイヤル式で直接かけてきて、強い巻き舌の流暢な英語で、ややアメリカ英語のアクセントが感ぜられた。東南アジア、ラテン系のアクセントはない。日本人の声では全くなかった。こういうことで、氏名は一切明らかにせず、発信地や年齢については、少なくとも十六歳以上、地球のどこかだ、そういうふうに答えたということなのであります。それで、ホテルの受け付けた人の情報では、皮膚の色から見て日本人ではない、そういうようなことを言った由伝えられております。  ですから、まだ正体が不明な相手方でございますから、真相はまだよくわかっておらないという状態でありまして、しかし、こういう事態が起きたこと自体は甚だ遺憾な事態である。日本の真意をよく理解していただくように、在外公館を通じてアラブや関係諸国にはよく説明しておるのでございますが、日本の立場や考え方をよく理解してくれるようにさらに努力してまいりたいと思っておるところであります。
  183. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理、具体的にこれは人身に問題が出てくるわけでありますし、この間私もちょっと海外へ出ましたんですけれども、やはり在外公館の人の安全というようなこともこれはすぐの問題であろうと思います。また、最近の国外へのいろんなビジネスマンの活動というのはかなり広くされているわけであります。こういうものに対する安全、保護ということについては、具体的にどのようにしようとなさっているのか。  確かにだれがやったかというそういう面でのところはまだ明確ではないわけでありますけれども、日本大使館がねらわれたという事実、また、サミットに加わっていたカナダの公用車が爆破されたという事実はこれははっきりしているわけであります。そういう意味で、どういう処置をなさるつもりですか。  今、日本の方針を理解してくれという話でありますが、そんなことで理解されるならテロ問題というのは恐らく起きないだろうと思うんですね。もちろんテロを撲滅しなきゃならぬというそういう目標は同じでありますけれども、そうした意味では、随分いろいろ議論がありましたけれども、リビアを名指しで入れたというところに今度のテロの問題点があるのではないかと思いますから、もうやってしまったことであります。恐らく今後もテロというものは起きるということを予想しなきゃならぬと思いますけれども、それに対して安全を確保する道、ただ単なる理解を求めるだけの問題では私はないと思います。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) サミットの終わるころから、在外公館には命じまして、在外公館の防護、それから在留邦人の保護については十分注意するようにそれは指示しておるところでございます。今後もそういうような措置を十分とることによって、そういう不幸なことを未然に防止するように関係各国とも協力してやってまいりたいと思うのであります。  しかし、あの悪質なテロというものについて正しい国家が屈服するということは、これは世界の秩序が無法状態になるということを意味するのでありまして、そういう凶悪なテロに対しては中立はないと私は前でも申し上げたとおりであります。やはり正しいことは正しいものとして、国際連携でそういう不幸なことをなくすように積極的に努力していくのが正しい態度である、そう考えて、そのような不幸な事態を起こさないように最善の努力を尽くしつつ、テロというものを根絶する方向に協力していくべきである。日本がもし、この間のサミットのような場合で、自分だけ安全を図り、あるいは利己主義的な立場ともとられるようなことで離れておった場合には、国際的にどういう評価が日本に生まれるであろうか。依然としてエコノミックアニマルで、そうして自分の利益だけを追求する、国際的な凶悪な事犯に対しても一緒に手を結んで立ち向かえない国であるという、今まで以上の悪い国際環境が日本に生まれるのではないか、私はそういうことを恐れたのであります。     —————————————
  185. 山本富雄

    委員長山本富雄君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、福岡日出麿君が委員を辞任され、その補欠として倉田寛之君が選任されました。     —————————————
  186. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 次は、きのう東京高裁で佐藤孝行議員の控訴審の判決がございまして、控訴棄却ということになったわけでありまして、ロッキード問題というものは一段と明確になってきたと思うわけであります。そして、さきには撚糸工連の事件がありまして、稻村代議士が取り調べを受け、起訴される、こういう事態であります。幸か不幸か両方とも中曽根派の幹部であったわけであります。今は離党されておられるようでありますが、いずれにしても中曽根派と全然無関係ではないと思います。  佐藤孝行議員に対する衆議院の政治倫理審査会への申し立てということは恐らく行われるであろう、こういうふうに思います。ただ、新聞の報ずるところによりますと、どうも自民党は、政治倫理審査会にかけるのをなるべく妨げようとしている空気があるということを報じております。特に、政治倫理審査会に自民党の衆議院の議員が加わっているのは大変自民党でも幹部の方々でありまして、金丸幹事長とか櫻内義雄さんとか、藤尾政調会長とか宮澤総務会長とか、こういう自民党のトップクラスの人たちが実はこれに加わっているわけでありますけれども、これに対して総理はどのようにお考えになっているのか。  国会における自浄作用ということが最近はないということで世間の批判というものは非常に厳しいところでありますけれども、私は、今ここでやはりそうした国会の自浄作用ということがこれで完全にできるとは思いませんけれども、少なくとも政治倫理審査会の審査を明確に受けて、その判決を求めて、政治活動についてのけじめをしっかりとつける、このことが必要だと思うわけであります。  特に中曽根派の方々であるだけに、中曽根派のボスである総理にこの問題について明確な態度を示していただきたいと思います。
  187. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) きのうの判決は甚だ遺憾な結果でございました。しかし、判決が出たのでございますから厳粛にこれを受けとめております。そして、最高裁に上訴されるのかどうか、今後の裁判関係の推移を静かに見守っていきたい、そう考えております。  国会における取り扱いにつきましては、二人とも無所属の方になっておりますが、各党各派がどういうような話し合いになるか、それの動向を見守ってまいりたいと思っております。
  188. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから次へ進みます。  いよいよ会期もあと一週間を残して五月の二十二日には終わりになるだろうと思います。今度の国会の場合は、後に参議院の選挙があるということはこれはもう明確であります。ただ、一般的には、五月二十二日に国会が終わるわけであるから、六月二十二日ごろが投票日になるだろう、こういうふうに言われておりますけれども、いつになるのか明確でありませんけれども、候補者になってる者にいたしましても私どもにいたしましても、いつが投票日になるかということは大変関心のあるところでありますし、私ども自身の行動もそれによって左右されてくることも御案内のとおりであります。この辺は総理はどのように考えておるか。  いろいろ議論があるようでありまして、何か最近の円高の経済特別法案を出して臨時国会をすぐに開こうというような推測も一部にありますけれども、もうここで政府としても参議院通常選挙の投票日を決めてよかろう、こういうふうに思いますけれども、この点について総理のお考えをお伺いしておきます。
  189. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題につきましては今研究をさせております。今までの先例を聞いてみたところによりますと、大体五月下旬に決めているケースが多いようであります。今はしかし国会開会中で重要法案を審議している最中でございますから、我々としても慎重な態度を期さなければならぬと思っておりますが、ともかく今事務当局に検討させておる最中であります。
  190. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 くどいようですが、いつごろまでにその結論は出ることになりますか。もうそんなに先というわけにはいくまいと思います。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今専門家に検討させている最中でございますから、その研究の結果を聞いてから判定してみたいと思っております。
  192. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは本題に入ります。  国債発行残高というのは六十一年度末になりますと百四十三兆円という巨額になるわけであります。今後も恐らく、建設国債であるか特例国債であるかの別はいろいろあるといたしましても、国債がさらに増額をされていくということはこれは常識的であります。この百四十三兆の残高、しかもその中の四割五分ぐらいは特例国債になっているわけでありますけれども、こういう数字について総理は一体どんな御感想をお持ちになっているのか、まず御感想を伺いたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 特例国債あるいは建設国債増加した時代を考えてみますと、四十年代は非常に少なかった。それで五十年代に入ってから非常に急増した。たしか昭和五十二年か三年でしたか、七兆が十四兆に上がっていったことがありました。そういうようなことで、それが次第に累積をして、年度末には百四十三兆にもなるというところまで累積して、この公債管理にもう寧日もないというぐらいの大きな重荷をしょってしまったわけであります。  そういうような面からも行革、財政改革ということが叫ばれて、微力を尽くして私もやってきた わけでございますが、何としてもこの累積していくのをできるだけ軽減して減らしていく、そういう努力を真剣にやりませんと、ちょっと安易な気持ちを起こすとこれは雪だるまのようにすぐ膨れていく、そういう点を心配しなきゃならぬと思うんです。そういう点で、公債管理についてはやはり戦々恐々として進まなければ、一たびこれが爆発しますと、悪性インフレが起きて、国民が大変な迷惑を受けるわけでございますから、我々は真剣に努力していかなければならない、そう思っておるところであります。
  194. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 真剣に努力しなくちゃならぬのはこれは総理だけじゃないと思うんです。きょうのここの議論にいたしましても、それぞれの委員から、累積していく国債について非常な心配の声というのが出たわけでありまして、むしろ委員の方が余計心配している。いろんなことの事例もありましてむしろ心配をしているというふうに私は受けとめたわけであります。  しかし、まだまだふえていく国債というものは、建設国債がいい国債特例国債が悪い国債であるというような今までの話、そういうものはもう今の段階ではなくなってきた。どちらにしてもこれだけ国債がふえている。これは今後の財政運営を非常に硬直化するし、今総理自体も申し述べられましたように、今の土地の値上がりあるいは株の暴騰とか、こういうものを見れば、いつこれがインフレに転化するか、わけのわからないようなそういう今危険な状態にあることを考えてみますと、ただ単に特例債を六十五年度にはゼロにするというだけのことで済む問題じゃないと思うんです。  自民党の総裁の任期というのが二期四年ということで非常に短いということもあるかもしれません。しかし、もう戦後ずっと、一つの時期を除いては自民党が政権を担当してきたことも事実であります。そう考えてみますと、これだけ膨大に膨れ上がった国債、これについてはどうこれを処理していくのか、どうコントロールしていくのか。この点について基本的な方針を出すことは、これは私は政府並びに自民党に課せられている大きな任務だと思うんです。ところが、私はこういうことでこの大きな国債に対して対処します、このようにしてこの国債の負担というものを軽減していきます、こういうことは残念ながら今まで出ていないんですね。私はこれはある意味では歴代総理の一つの怠慢である、こういうふうに言わざるを得ません。  それは中曽根さんになって国債残高が少なくなったというんならそれもいいでしょう。しかし現実には毎年毎年ふえておるわけです。そして、毎年特例国債をやる、審議する、大蔵大臣はこれで身が引き締まるとおっしゃっていらっしゃいますけれども特例国債法律を我々が審議すればするほど毎年実は国債の管理は悪くなってきている。昔は特例債建設国債の差別はありました。短期国債という手法を導入して、そろばん勘定だけでこの問題を処理しようとするところに国債に対する節度というものが失われ始めてきたと私は考えざるを得ません。その償還も借換債でどんどん延ばしていくというような議論も今されている。  こう考えてみますと、だんだん悪くなってくる。よくなっていくということはない。これは一体どのように処理をしていくつもりなのか、グランドデザインというようなものを中曽根さんは示すべきだ。あなたがいつまで総理大臣をやっているかわかりませんけれども、しかし、それだけは、あなたの責任としてグランドデザインはかいておくことが日本の国債政策の上で私は必要だ、こう思うんです。その辺はいかがですか。
  195. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一つの方法として大蔵省が予算編成の前に仮定計算例を出したり、あるいは中期的な展望、考え方というものを出しておりますのは、参考資料として見ていただきたい、そういう意味で出しておるんだろうと思います。  それから、国債管理に関する基本的立場というのは、臨時行政調査会及び臨時行政改革推進審議会、臨行審の答申というものがやはりグランドデザインであり、基礎である、そう考えて、我々は国債管理については極めて厳しい態度をとって、毎年一兆円減らしていこうという方針もどって鋭意努力してきているところであります。しかし、遺憾ながら日本の財政的な環境というものは極めて悪い状態で、それすら十分できないのは甚だ遺憾に思っておりますが、その旗をおろすことなく、ともかく六十五年赤字公債依存体質から脱却していこうという努力を続けてまいりたいと思っております。  ちなみに、国債の累積率を調べさせてみますと、GNPに対する長期政府債務残高を見ますと、八六年で日本が大体五〇%、それよりちょっと多いのがカナダが五六%、英国が四七%、アメリカが三六%。アメリカは財政赤字で苦しんでいると言っていますが、この点では日本よりまだいいわけです、三六%。西ドイツが二〇%、フランスが意外に九・九%。こういうような状態でありまして、日本は最悪の国家の一つになっておるわけでございます。  それで、赤字公債については割合に警戒的ですが、建設公債についてどうかと言われますと、やはりこれは公債であって、借金として子孫に残っていくもので、利子も払わなきゃならぬ。最近見たあるモデルによりますと、例えば三兆円の建設国債を出した場合にどういう税収効果があるかというのを見てみますと、初年度が六千億円、その次が四千億円、その次が二千億円、後はもうプラスはなくなってくる。そのかわり毎年毎年二千億円の利子を払わなきゃならぬ。そうすると、税収増は六千、四千、二千で一兆二千億円あるけれども、毎年二千億円ずつ利子を払っていると六千億円払うから、結局実質的には六千億円の税収増があるだけだ。しかも四年目以降も二千億円の利子は毎年支払っていかなきゃならぬ。そういうような事例がモデル計算からも出てきておる。  そういう点も見ますと、建設国債というものについても我々はよほど注意深くやらなければならぬ面がある。私は為政者の一人としてそういうことを勉強もしておるわけでございます。しかし、災害とかやむを得ざるものについては今までも補正予算等でも建設国債を出し、あるいは毎年度一般会計予算でも建設国債は出しております。これはかなりの長期にわたるもので、しかもその成果が、果実が次に生まれてくるという考えもございますから、そういう面においては長期的にはそれはプラスの面が出てくるのでございますが、税収増という面から見た場合にどうかというと、今のようなモデル計算も一応は参考にしなきゃならない、そう思っておるのでございます。
  196. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理の今の御発言の中に、総理自体が自分のところから国債に対するグランドデザインというものをやっぱり出していく、その指導性が今あるんじゃないですか。それは臨調なり行革審なり、あるいはその他いろんな人の意見は意見として受け入れていいと思う。しかしそれが中曽根総理大臣の計画として出される。臨行審はこれはあくまでも臨行審です。臨時のものです。そうじゃなくて、自民党の政府の総理大臣としてそうした基本的なものを出さなければ、これはだれだって臨行審のものだとしか私は考えないと思うんです。ここはやっぱり中曽根さんあなたの本当の指導力をここで発揮されて、あなたが二十世紀の総理大臣として評価されるか評価されないか、こういうことだと思うんです。  国民に対してうまいことばかり言ったって私はしようがないと思うんです。ある点では大きな犠牲を総理大臣みずからが訴えるというようなそういうこともしなければ、やがて二百兆にもなろうとするこの国債の処理というものはめどはつかないと思うんですよ。私は全部国債をゼロにしろということを今ここで言っているわけじゃないんですよ。ある適度の国債であれば、あるいは世代間の負担の公平を図るという国債のメリットも図られると思うんですが、これだけ大きくなってしまうとそういうことも実はできなくなってしまう。  この辺で私は中曽根さんの本当の指導力という ものを発揮できるかできないのか、歴史上に残る総理となるかならないか、その境にあるんじゃないか、こう思うんです。私も中曽根さんの若いときからの性格はよく知っている一人でございますから、私はあえてあなたにこのくらいの指導力はここで発揮してほしいと願わざるを得ないわけであります。どうなんでしょうか。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 竹田さんは私の旧制高校の先輩で、竹田さんの前へ出るとあんまり頭が上がらないのでありますが、いつも非常に御見識あるお話を承って勉強させていただいております。国債管理の問題についても、まさにそれは議員の皆さんがみんな共通で御心配になっていただいておることであると自分も考えております。  そこで、私が内閣を組織して皆さんにその点に関して申し上げているのは、六十五年赤字国債依存体質からの脱却を目標にして努力します、そういうことを申し上げて、予算編成のたびに一兆円の赤字国債減額を今まで心がけてきましたが、事志と違って、それが必ずしも完遂されないのを甚だ遺憾に思っておるところであります。しかしこの旗はおろしませんと今も申し上げておるところで、全力を尽くしてみたい、そう思っておるところであります。
  198. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ちょっと具体的なことをお聞きしたいと思いますけれども、三月の末だったと思いますが、この席に総理がお見えになりまして、私も税金問題でお伺いしたことがあるわけであります。そのときに、五つ挙げられている税制改革の中の選択ということについてここでお尋ねした覚えがございます。  そのときに総理は、選択というのは、答申についても国民が選択できるようなそういう答申を求めているんだ、それが財政民主主義なんだ、こういうことで、税制の内部におけるところの選択制度でなくて、税制を決めるときにもそういう選択という手法を使っていきたいんだ、こういうお話でございました。  四月末に中間報告というのが出されました。中間報告というのはどういうのか私もよくわかりませんけれども、小倉会長の話によりますと、第二部会と第三部会の報告だけなんだ、こういうことでありますし、また総理は、今度の税制改革はかなり大きなものである、抜本的なものである、こういうようなお話があったように記憶しておりますけれども、小倉会長は、財源の話が出ていないわけであるから、どれだけ大きなものになるか、案外小さなものになるんじゃないか、こういうコメントも出しているわけであります。  そういう点から見ますと、国民が今度の税制について選択できるようなそういうような報告ではどうもなさそうであります。規模も明確でございませんし、内容についてもよくわかりません。低所得の人は、課税最低限が引き下げになるのか、維持されるのか、引き上げになるのかもわかりません。それから、下の税率がどうなるか、これもわかりません。そういう点では私は選びようがないと思うんです。この辺については一体どうお考えになるんですか。  同時に、税制にしても、また財政にしても、これは私は、一つは所得の再配分機能というものが重要な財政、税制の機能としてあるものだ、このように理解をしているわけでありますけれども、どうも今度の税制改正でそうした所得再配分の機能というようなものが果たしてワークするのかどうなのか、これも大変心配なところであります。また、国債がこれほど多くなってくるということになりますと、やはりこれによって所得再配分機能というのは失われる。弱い者が金持ちの利子のために税金を払う、こういうようなことにもなってしまうと思うのでありますけれども、そうした財政、税制、そういうものの所得再配分の機能というのは、私はむしろ最近の状態から見ると強化をすべきである、こう思っております。  この点は前川さんのレポートにも、あるいは経済審議会の去年の答申にもそういうことが書いてあるわけです。そういう点に対して総理はどのようにこれから配慮をしていくつもりなのか、政府税調の答申に対してどういうふうにそうした面を実現していくつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 選択という言葉を使いましたのには二つのカテゴリーがあると私は申し上げたと思います。それは、制度自体をどちらを選ぶか、そういう意味国民に選択していただく。百花斉放でいろいろ議論をしていただいて、まあこっちがいいんだなという意味の制度自体の選択の問題。それから今度は税制の内部に入りまして、個々の税制の問題に入って、自分はこっちを選ぶ。例えば間接税のようなものは本人が買わなければ税金を払わぬで済むという性格を持っている。今でも物品税はそういう性格を持っていますですね。そういう意味の税制の学問上の点から選択制というものがそこにも出てくる。それすべてを含めた意味で選択という言葉を用いていますと、そういうふうに私は御答弁申し上げた記憶がございます。そういう意味でございます。  そこで、じゃ内容についてどうするのかという御質問でございますが、この点では、一つ申し上げてきましたことは、税収増を目的とするものではない、それは申し上げてまいりました。それから、それらの内容については政府税調あるいは党税調においてよく議論して考えていただく、そういうことも申し上げてきております。  それで、この間の中間答申というものは定性的な答申をいただきました。これをどう定量化していくかということがこれからの我々の作業でありまして、どこを中心にするか。私は聞かれましたから、時によっては、二百万から八百万ぐらいの間と申し上げたこともありますし、また四百万から八百万ぐらいが中心になるでしょうと申し上げたこともあります。ともかく、源泉課税にしてみれば、やはり中堅サラリーマンで家族を持ってローンの支払い、そういうものに困っていらっしゃる、教育独の支払いに非常に困っていらっしゃる、そういう方々を中心に一つの重点を入れようということは申し上げてきているとおりです。それ以外の個々の問題につきましては、非常に専門的な問題になりますし、政府税調でも本格的にいずれ研究していただくことであり、党の税調におきましてもいろいろ試案もあるようでございます。それらについてよく目を通して最終的に考えていかなければならぬ、そう思っておるところであります。
  200. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最初にサミットの問題で伺いたいんですが、総理がさきに議長として行われた東京サミットで、中曽根内閣がこれまで三年半にわたって行ってきた経済運営のどうも失敗というか、そのツケを国際的に追及されたサミットではなかったかと、今そういうふうに思いました。特に経済問題について日本を非難するような、そういう声はなかったということのように総理は言っておられるんですが、あそこで決められた経済宣言の内容は、我が国の経済政策の百八十度転換というものを求められている、そういうものを迫っているということを思いますと、私はこれは明白なことじゃないかと思います。  そこで総理にお伺いしたいんですが、議長としてお取りまとめになられた経済宣言ですが、この宣言に沿った我が国の経済運営を行っていくというふうな決意でよろしゅうございますか、その辺について詳しく聞きたいんです。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結構でございます。
  202. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 経済の動きに対してこの実態を右、右させる、それを政治の力で行うということになりましたり、政府がことごとく介入するというのは必ずどっかで今までツケができてきております。しかし現実は介入をしないというわけにいかないということになってきていまして、それがちょっとした政策当局が発言した言葉で、あるいは円の対ドルレートについての問題が起きてきたり、あるいは株価が急騰したり急落したりということが今まであるわけでございます。それほど重要な役割を今政府は占めていると言わざるを得ません。  そうすると、ほかの国にございます、アメリカ のように政府がかわるたびに経済の流れが大きく変わる、そのツケが結局レーガン大統領もしょわなきゃならないような状況になってきたんだと思うんです。そういう点から見まして、国際的にも責任を持つようになった、また国際的に経済の中でのウエートを増したというか、そういう日本の立場から見て、政府のトップがかわることがあっても、今総理がそのとおりでございますと言われた経済運営のことですが、これはずっと受け継がれていかなきゃならない問題になるのではないかと思うんです。そういうことについての総理の決意のほどといいますか、お考えを伺いたいんです。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 共同声明でございますから政治的に拘束されると考えております。条約とかあるいは協定のような性格のものではございません、政治宣言でございますから。したがいまして、これは政治的に拘束される、そういうふうに考えて、あの我々が合意した線に向かってそれぞれおのおのがやるべきことをやっていく、そういう考えております。
  204. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理がずっと総理をおやりになれば今のお話はよくわかるんですけれども、これはこれから先のことでございますから、政界は一寸先はやみですので何とも物の言いようがないんですけれども、このことについては、ずっと引き続いて、因民党政府がまだ続くでしょうけれども、その政府において同じような経済に対する運営、財政に対する運営のかじ取りを続けていくというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの内容は、世界経済に明るさ、希望をつくっていく、そういうために各国が政策協調を行う、あるいは世界的スケールにおける構造改革をみんなが行っていく、グローバルベース、そういう言葉を使っていますが、そういうような合意をやって、そしておのおのがやるべき仕事についていろいろ話し合った。アメリカの場合は膨大な財政赤字、日本の場合は膨大な輸出黒字、ヨーロッパの場合は産業活動の不活発や失業問題、端的に言えばそういうような問題についておのおのが努力をするし、発展途上国の問題についても我々はお互いに助け合う。特に資金のフローについて、国際機関等も強化しつつ協力し合おう。それから債務国の立場についても、アメリカのベーカー長官と名前は出ていませんが、アメリカのイニシアチブを歓迎して協力し合おう。そういうようなことを決めたのでございまして、これは正しい道であります。  また通貨関係については、G5、G7でサーべーランスをやって協議していく。そしてウィリアムズバーグ・サミットで決めた、もし有用である場合には介入も行う、そういうことも確認をいたしました。そういうような政策協調と構造改革というものが一段と前進を見た。  そうして、世界経済というものは北だけで繁栄できるものでない。私がいつも申し上げますように、南の繁栄なくして北の繁栄なしと言ってきましたが、南北を通ずる大循環を起こしていかなければだめだ、そういう考えに立ってあの経済宣言はできておるのでございまして、私はこの道が正しい道である、こう思っておるのであります。
  206. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 中曽根内閣の今までとってきた経済財政政策、これは簡単に言うと、特に財政関係は節約一本やり、こういう言い方ではおかしいんですが、そういう財政経済政策と民活による内需拡大策、こういうふうにとれます。それに対して、国民生活重視、経済全体のバランス、国際経済社会での我が国の立場に立つところの政策転換を我々はずっと求めてきました。しかし、今までは総理は、大体大変頑強に節約一本やりと内需拡大という二本柱で自説を言うのみでございましたが、今回のサミットにおける内需拡大、国内産業構造の調整ということは、今までの態度を一転なされてそのような方向へ実行しようということじゃないか、こう思われてならないんです。そうなりますと経済財政政策の転換ということにならざるを得ない。  今のお話の中の産業構造の問題と経済構造の問題ということになれば、日本の財政経済の政策の大転換をしなきゃならないんじゃないかと思わざるを得ないわけでございますが、その辺はいかがでございますか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやはり臨調答申を基調にして、そうして、例えば円高のような問題については我々は臨時緊急の対応措置を講じていく、そういう立場をこの間も申し上げたとおりなのでございます。また内需につきましては、四月八日の我々の総合政策の決定でも言っておりますし、またいわゆる経済構造研究会の答申を受けた、我々の国際経済に調和する国民経済の構造調整の問題についてもこの間我々は閣議決定もいたしまして、今党でも一緒になってやっておるところでございますが、これも内需とか休暇の問題とか、かねて言っていることをまた言っておるわけでございます。  そういう面については、やり方はいろいろあります。財投を使うやり方もあるし、去年のように予算外国庫負担契約で繰り上げをやるという場合もありますし、デレギュレーションによる場合もありますし、東京湾横断架橋やあるいは明石の橋のように、民間資金を八〇%導入して一兆前後の仕事をやる、そういうケースもございます。そのためにはいわゆる政府保証債方式を民間株式会社に認めるという特例措置までやりましたし、あるいは出資金に対する免税措置もやる、そういうようないろんなコンビネーションがあり得るのでございまして、今後もそういう努力をしていきたいということでございます。
  208. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理は、サミット前までは特に財政再建を強く言われてきたと思うんです。増税なき財政再建、先ほどもそういうふうに言っておられましたけれども、増税なき税改革のことを言っておられましたが、六十五年度赤字国債依存を脱却するということはずっと言ってこられたわけです。また、六十一年度経済成長の問題についても、内需だけで実質四・一%の成長をなして、円高による外需によるマイナス〇・一%をカバーできるというふうに断言をされました。  ところが、サミット後の動きというのは、あのような経済宣言等があれば、どうしても政策が現状に合わない、何とか政策の転換をしなきゃならないということになるんじゃないか、私はその点では総理の立っていたスタンスが大きく変わったような感じがしまして、責任をとらざるを得ないようなふうになるんじゃないかというように思うわけですけれども、そのことについての今の心境をお伺いいたします。
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調路線を基調にして、そして今のように応用問題については臨時緊急措置としてやるべきものをどしどしやっていく、そういう考えが現在の考えでございます。  大転換があるのではないかというお話でございますが、例えば、フランスのミッテランさんが政権をとりまして、そして当初の政策というものは非常に緩めた政策をやって、相当なインフレが出てきて、そして途中になってこれが修正に転じて厳しい財政政策をとって、最近ようやくフランス経済が非常に安定して失業率も減りつつあるということで、あれは片っ方の保守派から見れば随分回り道した、そう言われております。また、アメリカにおける財政赤字という問題を見るというと、やはり減税というものが相当あれの原因になっているんじゃないか。相当な減税をやりました。しかし、減税によって景気が上昇して失業が吸収されたことは事実です。事実でありますが、財政赤字があのように出てきているということは、また別の面で出てきているということも学者によって指摘されております。  日本の場合を見ますと、GNPの五〇%になんなんとする長期的政府債務というものを考えてみますと、そう簡単に今のようなフランスやアメリカがやっているような政策に走るわけにいかぬ。また国民は次の段階で大きく、さらにもっと大きく苦しむときが出てこやしないか。そういう意味で、堅実な道をたどりつつ、しかも、今申し上げた時機に応じた弾力的措置をその場で図ってい く、そういうことがまず当面正しい道ではないかと考えておるのであります。
  210. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理の御答弁を伺っていると、行き詰まって、手詰まりで堅実に行きたいというふうに私は受け取ったんです。  確かに累積する国債、いわゆる財政の赤字が山のようにございますし、いろいろありますから思うように行けないことはわかりますけれども、私は大転換というより政策の変更ということがあり得るんじゃないかと思わざるを得ない。特にサミット後において、あれだけのことを言われていれば、それだけのものをこちらも考えなきゃならない。しかし、総理はそれに対して一歩一歩ということですから、急激には行わないけれども、宣言に沿うように一生懸念やっていく、こういう意味なんですか。その辺のところがちょっとよくわからない。
  211. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりです。  経済について大事なことは、急激な変化というものが一番禁物でございまして、着実に一歩一歩前進していくというのが正しいやり方であると思います。
  212. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理が経済財政についての国会における御答弁と、それから外国へ行って発言をなさるときと内容が違っているという声がある。国内では簡単にできないことをあたかもすぐ実行できるようによそへ行くと言っていらっしゃる、こういう不信の声がございます。例えば、サミット直前に訪米なさった。その際に、レーガン米国大統領に実行の約束をしたと伝えられているのが、経済構造調整研究会の報告書、いわゆる前川レポートです、その最たるものであるというふうに思わざるを得ないわけです。前川レポートの内容は、何も特に目新しいものではございませんし、今まで再三各党が総理や政府に対して主張してきたことが大変多かったように思うんです。さらに内需拡大、輸入拡大、産業構造の転換、これは中曽根内閣が口では言っても今まで余り効果が出てこなかったことです。  今、一兆円の一つの事業について民活の話がございましたけれども、それだけというとおかしいですが、今までは内需、輸入拡大、産業構造の転換というようなことも大きな効果を上げていらっしゃらない。そのことを向こうへ行くとさっと約束なさってくみということは、これは総理の単なる個人の意見として米国の大統領に約束をされたというふうに受け取ってよろしいんですか。それとも、そうじゃない、もっとウエートがあってこういうふうに合意をされたということとか、何かあるんでしょうか。
  213. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は米国との首脳会談の際非常に注意しておりまして、いわゆる公約、国際公約ととられないように、非常に注意深くよく説明もしたのであります。  それは、ややもするとアメリカでは誤解を受けます。すぐ、プレッジした、そういうふうに外国人は受け取るものであります。ですから、前川リポートというのはこういう性格のものである、行革の答申とは別である、政府はこれを参考にして、そして政府独自の見解でこれからつくって、大体あの内容は非常に評価しているのであって、この内容というものを参考にしてつくり上げていく、そのためにこれこれ手続を持っていく、そういう考えを自分は持っておる、そういうことを申し上げたので、それは私の政治的決意の表明である、そういうふうにとってもらいたい、そう言っておるので、プレッジとかあるいはアグリーメントとか、そういうようなものではない、それははっきり言ってきておるのであります。
  214. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この前川レポートの意見というのは、総理が今決意を言ってきたと言われましたが、考え方については総理も前川レポートに示されている意見と同じ御意見をお持ちと、こう確認してよろしゅうございますか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは経対閣、経済対策閣僚会議におきまして、前川リポートについては、まことに時宜に適したものであり、貴重な意見としてこれを評価する、そういうふうに政府・与党で決定したのであります。そういう評価に基づきまして、これを政府・与党は自分の独自の政策として練っていってこれを実行していく、そういうふうに考えております。
  216. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 前川レポートの意見と東京サミットの経済宣言の実行、こういうことになってくると、今まで中曽根内閣がおとりになってきた経済財政政策を放棄して、私は変えてきたというふうに受け取れてならないんです。  そこで確認をしておきたいんですが、今の政策を放棄して、新しい道を探っていらっしゃるというふうにとっていいのかということと、いま一つ確認しておきたいのは、昭和六十五年度赤字国債脱却の公約は変更なさるかどうかが二点目です。  三点目は、先ほども増税なき税改革を言われましたけれども、増税なき財政再建の公約はおろさないでずっと続けられていくのかどうか。  それから、今までは財政の出番なしということでありましたけれども、そういうことから積極財政政策に転換をなさるかどうか。  以上四つについてお伺いをしたいんです。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六十五年赤字公債依存体質脱却の旗はおろさない。増税なき財政再建の理念はこれを一貫して守っていきたい。それから、臨調答申を基調にして、事態の変化等に応じて臨時緊急の対応措置を講じていく、そういうことを申し上げておるのでございます。  あとの二点はどういう問題だったか、ちょっと今不明であったんですが、いかがでございますか。
  218. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 つまり、総理は現状では積極財政政策には転換はなさらない、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 積極財政という言葉意味がなかなか難しいのでありまして、インフレ的なものが積極財政というならそういう考えは持ちません。しかしながら、臨調路線を基本にしつつも、その時宜に応じて内需の拡大等を、民活やそのほか民間資金の流用あるいは活用、あるいはデレギュレーション、そういうものによって思い切ってやっていくという意味においては積極財政でもある、そうとも言えると思うのであります。
  220. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私もその規制を外すということについては大いにやっていただきたいと思うんです。  それから次に、東京サミットで決められたいわゆるサーベーランスの問題についてお尋ねしたいんですが、多角的な監視の強化ということになっております。この制度を設けるとか充実するとか、今までもいろいろ相互監視のことはございますけれども、この制度を設けるとか充実させるという言葉でなくて、なぜ強化という言葉になったのか、そういう強い内容になさったのかということを伺いたいんです。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、竹下大蔵大臣がG10の議長としてもかかわってきたいろいろないきさつがございますので、大蔵大臣から御説明を願うことにいたします。
  222. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 東京サミット経済宣言で、国際的な経済政策の協調を促進するため、相互監視に関して、強化というのは、ストレングスという言葉はベルサイユ・サミット時代からずっとこの言葉が続いておりまして、昨年の十カ国蔵相会議の報告書においても同じ表現が使われておる。そういう流れの中でこの言葉を使うということであります。鈴木さんがおっしゃる意味は私わかりますが、流れとしてこういう言葉になっておるというふうに御理解いただいた方が正確ではなかろうかと思います。
  223. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 このサーベーランスで使われている十項目の指標でございますが、実質国民総生産の成長率とかインフレ率、金利、失業率、GNPに対する財政赤字の比率、経常収支とか貿易収支、通貨供給量の伸び、外貨準備高とか為替レート、こうありますけれども、そのどうもいずれをとっても、我が国としての優位性を示すものほか りのような感じがしてならないんです。この十項目に決めることについて、我が国としてはこの十項目でいいんだというふうな、これじゃ困るんだとか、そういった意見というものが示されたのかどうか伺いたいんです。
  224. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、通常各国がサーベーランスで用いてきました指標を例示として並べたということでございます。確かに、非公式ながら今までやってきたサーベーランスということにつきましては、あそこへ出ておりますように、ああいう指標が十ございますが、IMFのドラロジェール専務理事から間々そういう指標が使われて我々も議論したことは事実でございます。  しかし、私なりにも感じましたのは、これからIMFの理事会においていろいろな議論をしていただけるし、また我々の蔵相代理会議においても近く議論を始めることになっておりますので、例えば租税負担率とか国民負担率とか、そうした問題、あるいは恐らく公的投資比率とかそんなようなのが当然また議論の中では出てくるだろうというふうに私も思っておりますから、固定したものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  225. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 よくわかりました。ですが、今まで見たこの十項目と言えば、どうしても我が国の優位性を示すものばかりで、国民生活の実情を示すというにはちょっと不十分だ。日本国民に限らず世界じゅうの国民とも同じように生活をしているわけですから、やはり指標については考えてほしい。  前に、我が国の住宅はウサギ小屋だと言われたことがあります。そういうことから見ると住宅の指標も必要じゃないか。あるいは下水道の整備については参加国中最低でございますから、当然のことながら下水道の整備の指標とか福祉水準の指標とかというものを取り入れていかなければ、ただ何というか、生活と遊離したとは言えないけれどもちょっと離れたところに行くんじゃないか。やはりこういうような、恥さらしになるかもわかりませんけれども、そういうことも入れてもらうということが私は大事ではないか。今の答弁でも若干そういう話がございました。公共投資の指標をというような話がありましたけれども、その点についてはどうでしょう。福祉も全部含めて言ってください。
  226. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる社会資本の整備の比率とか、どういう形でとるか難しい点もあろうかと思いますが、当然、今までは公共投資比率なんというのは使って議論したことがございますが、そういうこともあり得るでございましょう。それから、よく言われる、これは国土の面積の問題もございますが、国民一人当たりの公園面積比率とか、いろいろなものが恐らくこのサーベーの段階では私は出てくるであろうし、私どもも積極的にそうしたものは可能な限り整合性のあるものがあった方がいいと思っております。
  227. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは月並みな質問でありますけれども、東京サミットで決まった各国経済政策の相互監視というこの制度ですが、これはどの新聞やいろいろなものを見ましても、我が国の経常収支の大幅黒字が完全な標的になる、場合によるとそれだけがねらい撃ちされているんだというふうな被害者意識的にならざるを得ないような面もございますが、円高が持っている経常収支のインバランスを是正するという、そういう働きだけじゃ無理じゃないかと思うんですね。だからそれは過大評価すべきじゃないだろう、こう思うんです。  この円高の持っている経常収支のインバランス是正の作用と効果というものは、どういうふうに判断をしておりますか。
  228. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆるドル高基調が是正されてきて、現実我が国の通貨を中心にすれば円高基調であるということが、私は経常収支の改善のための一つの役割は果たすであろう。だが、ここへみんなぶっかけた議論をするのは私どもは非常に危険だと思っております。  それからもう一つ、経常収支の問題の中で、あるいは貿易収支でも結構ですが、円高とは別のいわゆる原粗油の値下がりによるところの効果というようなものは、サミット参加国では特に日本と西ドイツに出てくるわけでございますが、それらは十分議論の中で消化できたというふうに私は思っております。
  229. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それで、経常収支黒字幅の対GNP比についてですが、先日の経構研の報告では四%弱ですが、それを危機的状況にあると見ている。政府も同様に指標を持っていらっしゃるんだと思います。五月一日に政府が決定した経済構造調整推進要綱でも同趣旨のものが入っている。であるならば、一体どこが妥当というふうな、そういう経常収支の黒字幅の水準というものを私は示すべきであろうと思いますし、またどの辺がいいとお考えになっているのか、ちょっと伺いたいんです。
  230. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはなかなかそれこそ定量的に示すことは難しいであろうと思います。が、原則的に、油の全く出ない国でございますから、それらをあがなうための貿易立国、それがためには自由貿易体制の維持ということで今日まで来ておりますが、いずれにせよ、海外経済協力でございますとか、そういう面の役割が新しく徐々に多く与えられておる今日でございますので、おのずからいわば黒字というものの必要性は存在しておる。しかし、どれぐらいかということになりますと、これはますます今後議論してみなきゃならぬ問題ではなかろうかとは思いますが、今これぐらいが適切でございますと言うだけの自信はございません。
  231. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国際通貨、いわゆる為替市場の問題についてですが、このサミットの経済宣言では、有益であれば為替市場に介入するというのみで、先ほど御答弁のありましたウィリアムズバーグ・サミットでの再確認をしたにとどまっている。為替利場での是正の努力については、「是正努力は、何よりも基礎となる政策要因に焦点を当てる」と言っているだけで、一つも協調介入という言葉はない。  円高行き過ぎでもって、御承知のように現在円高不況が起きたり円高倒産が増加している。その日本経済の中で、今度の東京サミットで議長をおやりになられた総理大臣は、日本のこの円高不況とかあるいは円高倒産とかいう問題、これは急激に来ただけに大変なんですね、徐々に来れば違うんでしょうけれども。それを、協調介入という言葉が入らないということはちょっと私ども納得できないんですが、どうしてそういう不況とかということについてのことを反映させるための努力をなさらなかったのか。なさったならなさったで、どういうふうであったのかということを御答弁いただきたい。
  232. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) サミットは、ポンドとかマルクとか円とかという個別通貨の価値を論ずる場所ではないんです。しかし、各国が自分の国の経済情勢を報告するという場はある。その場で私は、日本経済が昨年の九月から急な円高が起きて約四十数%の急上昇になって、これを、普通の経済学者や評論家ならば数字で済むことであるけれども、実際企業を運営していらっしゃる方は、四十数%も上げられて経営の見通しが立てられるはずがない。大変なショックで今日本は困っておる。茫然自失というのが実際は企業の姿だ。その上に台湾あるいは韓国から、あれがドルにリンクしているために非常に強くなって日本へ流入してきている。鉄鋼のようなものでも輸入が非常にふえてきている。そういう情勢で日本の中小企業は非常に困っておる。そういう状態であるという認識だけは深めるように非常に訴えてまいったのでございます。  それから、レーガン大統領との事前の二回首脳会談に際しましては、その状況も訴えて、そしてお互いに善処し合おうじゃありませんか、そういうような話もいたしました。これは二国間の会談の際にしたのであります。  私は、そういうようないろんな結果、最近におけるベーカー長官の発言になって出てきたものであると確信しておるところでございます。  アメリカ政府としても、ある限度以上のドル安というものはまたおそれなきゃならない。ボルカー連銀議長あたりも非常にそれをおそれておる。そういう意味において、相場の地合いを見詰めているという状況に順次今来つつあるのではないか、そういうふうに考えております。
  233. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほど竹田委員の方からロッキード事件、佐藤孝行被告に対する昨日の控訴審の有罪判決について質問がありましたが、総理は、今後の裁判の推移を見守りたいという答弁であります。佐藤本人も、最高裁があると、これは冤罪事件の被告人がよく言葉にすることですが、私は政治家としてはこれは通らぬと思うんです。総理も御承知のとおり、第二審は事実審としては最終審であるということで、やっぱり総理もさっきのような発言では済まされない。要するに、二百万円の授受の事実と、それからわいろ性の認識、これは今後の裁判の中で、幾ら総理が推移を見守りましても変わる可能性はないと見なきゃいかぬと思うんです。  この事実を前提として、総理はどう受けとめておられるか、まずお答えいただきたいと思います。
  234. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ああいう結果が出たことは甚だ遺憾であります、そして裁判の結果については厳粛に受けとめております、そうして、日本では三審制度でありますから、どういう態度をとって今後裁判事務を進めていくのか見守りたいと思います、そういうことを申し上げておるのが私の立場であります。
  235. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは先ほども指摘がありましたが、自民党には籍はないとはいえ、やっぱり中曽根さんの傘下にいる人物です。これは稻村代議士も同じです。この時期に二人の汚職議員を抱えておられる心境はこれはどんなものでしょうか。
  236. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 甚だ残念であり、遺憾でございます。
  237. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それだけですか。我が党はやっぱりこの際に議員を辞職すべしという考えを持っておるんですが、こういう意見に対してはどうですか、もうちょっと具体的に踏み込んで。ただ遺憾、残念だけではこれは済まないんで、やはり汚職ということで今こういう裁判があり、そして今国民の批判も上がっている。それに対して、ただ残念というんじゃ、有罪になったのが残念で、無罪ならよかったのかということになる。  問題は、二百万を受け取った事実、そしてわいろ性の認識があったという事実、これを前にしてひとつお答えいただきたいと思います。
  238. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 裁判に係属中の事件については、余り行政の長は言葉を差し挟まない方が適当である、そう思っております。  ただ、政治倫理に関するという部面については、これは政党の責任者として、各党間のいろいろな話し合いや動向を見つめていくというところであります。
  239. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私が言ったことは、法的評価の問題で、これはまだ最高裁があるということはいいと思うんです。ただ、事実審としては、今言ったとおり二百万受け取った事実、わいろ性の認識があったという事実、あと職務性その他の問題でいろいろあるかと思いますよ。しかしそれは前提としてお答えいただけると思います。そういう場合に、行政の長だから云々というのは、これはやっぱり理由にならぬと思いますが、どうでしょうか。
  240. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あなたの御意見として承っておきます。
  241. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 十一分しかない時間なんで、これ以上ちょっと追及できないのが残念です。  次に円高の問題です。  総理は茫然自失の状況をサミットで伝えたというんですが、この円高の激烈さというのは大変なもので、値引きという面から見ますと三十何%ですから、この激烈さは、史上最大の恐慌であった一九二九年恐慌のときに卸売物価の下落率が日本、アメリカ、ドイツで三二から三三%、ほぼこれに匹敵するものだと思うんです。この責任について、先ほどの当委員会では竹下さんが、これは竹下登の責任で、日本政府の責任ではないという発言をされたんです。私は決して竹下さんをかばうつもりじゃないし、もちろん竹下さんにも責任があるけれども、これは竹下さんだけの責任じゃなくて、基本的にはやっぱり日本政府、中曽根内閣の責任だと思うんです。  というのは、やっぱり貿易摩擦の原因が二つあって、一つはアメリカの赤字病とそれから日本の黒字病だと思います。アメリカの赤字病、これは一つは軍拡からくる財政赤字、そしてそれがさらに高金利、ドル高、そして貿易赤字、もちろんそういうドル高がありますけれども、同時にアメリカ経済の空洞化ということですね。やっぱりこれが改められない限りは、円高になりましてもアメリカのこの貿易赤字は基本的にはもう変わらないんじゃないか。要するにこれはアメリカの責任ですよ。もう一つ日本側の黒字病の原因がいろいろありますけれども、しかし一方、こういうアメリカ側の責任となれば、この点について当然はっきりとレーガン大統領に言ってしかるべきだったと思いますが、こういう指摘はなさいましたか。
  242. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの財政赤字を速やかに解消するようにということはよく言っておるところであります。
  243. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その一つが軍拡であります。特に核軍拡だ。この点の指摘はどうでしょうか。
  244. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政策内容についてとやかく言うことは内政干渉になりますから言いません。ともかく、国際経済上外国に影響を及ぼすというこの結果がそのアメリカの財政赤字ということで出てきておるんですから、その問題についてはアメリカは日本のみならず韓国からも指摘を受けておるところであります。
  245. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、そこまで踏み込んで言わぬと言ったことにならぬと思うんです。  次に、日本の黒字病の原因は、労働者の低賃金、長時間労働、それから下請中小企業の低工賃などの悪条件による日本の大企業の国際競争力が基本的だと思うんですね。この点を解決しないで為替相場に介入しても、今回のように国内の、特に中小企業の犠牲が発生するだけで基本的問題の解決にならぬと思うんです。やっぱり真の内需拡大が必要だと思うんですが、この真の内需拡大という面から見ますと、今中曽根さんがやろうとしている、特に税制改革で累進性緩和という方向が出されようとしていますけれども、私はこれやっぱり逆行するんではないかと思うんです。  これは一昨日も当委員会で私が指摘したんですが、こういう累進性緩和の根拠として、所得は平準化したということが言われているんですが、具体的に、しかも最新の資料で調べてみると、平準化ではない、逆に所得格差が広がっているという事実。  一つ私はジニ係数でお示ししました。これは時間がないんで詳しくは申しませんけれども昭和五十九年、税調が資料としたのはこれは昭和五十六年、三年前の資料。それまで確かにジニ係数で所得格差が縮まっていることを一見示す資料があったんですが、最近は、それがもっと昔、三十六年段階にさかのぼって格差が広がっているという、こういう資料ですね。それからもう一つは、大蔵省自身が採用しておった、かってに比べての所得、収入の差が昔は五・何倍だったのが二・七倍になっている。しかしこれもいろんな資料を見てみると逆になっている。つい最近はやっぱりまた上がっている。だから、そんな昔の昭和二十六年段階という、コッペパンなどを食っておった段階のそういうことの比較じゃなくて、最近の資料で比較すれば格差は広がっているんですね。  そういうときに、税制で、平準化したという認識のもとに累進性を緩和することは、これはまさに間違いではないか、逆行するんではないかと思うんですが、この点について総理の見解を伺っておきたいと思います。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世界的に見たら日本は一番平準化している国じゃないかと思うんです。海上自衛隊の自衛官で調べてみたことがあり ますが、あの海上自衛隊の自衛官とアメリカの水兵さんと比べてみますと、同じクラスでも、曹クラスまでは海上自衛隊の方が給料が高い。今のように円高になるともっと高くなる。三割も四割も高くなっている。ところがアドミラルになるというともう俄然アメリカの方が高くなって、日本のアドミラルのたしか二倍か三倍ぐらい余計取っているというぐらいです。  これが一つの例でありまして、これは会社におきましても大体そういうようなことです。大学教授の給料をあなたお調べになってもそうでしょう。日本の大学教授の給料というのは高くないですね。そういうようにやはり平準化されているんじゃないでしょうか。
  247. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 平準化の数字をそういうぐあいに使うことは余りよろしくないということは、主税局長と議論しましたけれども、大体私の意見、主税局長それを認めたばかりなんで、余り中曽根さんその意見は当たらぬと思いますよ。しかし平準化はいいと思うんですね、もちろん大事なことなんで。  それはさておきまして、私が今指摘したいのは、政府税調は総理の諮問機関でありますから、ジニ係数その他私が先日お示ししたこういう資料、これをもう一度税調に示して、もう一度そういう新しいデータ、税調は五十六年ですから、五十九年のデータに基づいて根本的に再検討を加えるべきだと思いますが、総理からそういうことをやられることをお勧めしたいと思いますが、どうですか。
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 勉強してみます。
  249. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 財源確保に関する法律に絡んで総理に二、三お尋ねをいたします。  先ほど総理も触れられましたように、日本の財政というのは世界で一番悪い。これを審議をしておりまして甚だ胸が痛いんでありまして、そういった気持ちで二、三お尋ねをしたいと思います。  こういった状況ですから、戦々恐々として公債管理をしていくし、六十五年赤字特例公債依存体質の脱却の旗はおろさないというお話がございました。ただ、六十五年脱却という旗をおろさなければそれで間に合うんだろうか。六十五年というのはその積極的意味があったんだろうか。  なぜこんな伺い方をするかと申し上げますと、いよいよ円高の中で円高と久しくつき合いながら暮らしていくことを我々は覚悟せざるを得ないと思うんです。それは別な表現によりますと、歴史的な転換期にいよいよ我々はチャレンジをするということだと思うんです。それは細かくはわかりませんけれども、大ざっぱに申し上げますと、恐らく財政の対応力はよほど要請されてくるんではないだろうか。そう考えますと、六十五年特例公債依存体質脱却では間に合わないんではないか、こんな気もいささかするのであります。  そんなところからお尋ねするんですが、中曽根さんが前任者から総理の座をお引き継ぎになったときには、財政の危機宣言を出すような惨たんたるありさまでございました。中曽根さんの後どうなるかわかりませんけれども、遅かれ早かれしかるべき後継者にまたお渡しになるわけでありますけれども、その後継者に今のこの財政状況でそのままお渡しになるんだろうか。赤字公債を出して、例えば今回の御提案の法律のように、定率繰り入れもできない。これはもう惨たんたるありさまでありまして、こんな状態でお渡しになるんだろうか。ひとつこれを伺いたいんです。  なぜこんなことを伺うかといいますと、赤字公債、平たくいいますと、歳入以上の振る舞いをしているのが原因でありまして、じゃ減らすためにどうしたらいいかというと、歳入をふやすか、振る舞いを減らすか、どっちかなんですね。ところが、増税で歳入をふやす、あるいは歳出を切る、どちらも政治的には非常に重い負担を含んだ行為だと思うんです。したがって、中曽根総理としますと、その次の、いわば円高のもとで国際国家日本として未知の道を歩いていく後継者のためにもこの財政はもう身軽にしてやろう、そのためにも、増税にしてもあるいは歳出カットにしてもその荷物はわしがしょってやろう、こうおっしゃるんですと、伺っている私どもにも将来の見通しが立つのでありますが、それについては御所見いかがでございましょうか。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 栗林さんが六十五年赤字公債依存脱出を延ばしたらどうかと前からおっしゃっているのは、内需喚起論に立脚して言われているので、言わんとすることはよくわかるのでありますが、しかし、実際政治をやって行政を預かっている者の身になりますと、この旗をおろしてはいかぬ、やっぱり歯を食いしばっても頑張るべきである、そういうふうに考えておるところであります。
  251. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 六十五年をもうちょっと延ばしたらどうかということは、我が党も予算委員会等でたびたび申し上げておりますので、実は余り大きな口はたたけないんでありまして、ただそれはそれとしまして、今の円高の状況の中で、例の経構研リポート等も熟読させていただきますと、やはりこれはなかなかの、公共事業出動も必要なんではあるまいかと考えますと、財政としての対応力がいよいよ必要になってくる。従来の六十五年脱出というのは、線を引っ張ってみたら毎年一兆円ずつ減らしていけば六十五年で大体ゼロになるぐらいの、そう申し上げては失礼ですけれども、大ざっぱな話でありまして、六十五年ということに特段大きな周りを見渡しての意味があったわけではございません。  しかも今円高の中に我々はいるわけでありまして、そういった意味で今の財政状況を見ますと、政治は次々にまさにバトンを渡しトーチを渡していくんでありまして、その渡す側にある総理、しかも現在の最高責任者、最高実力者でありますから、そこで一番政治的に重たいお荷物をよりしょっていただけますでしはうかという、そういった意味で、失礼かもしれませんが、御所見だけ伺って終わります。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱりピッチャーとしてマウンドにある間は、厳しい気持ちで、力を抜かないで、一球一球渾身の力で、あらゆる種類の球を厳しく使いながら投げていく、ちょっとでも息抜くと打たれちゃう、そういうような感じが私しておりますです。
  253. 野末陳平

    ○野末陳平君 税制改革の中間答申が税調から出まして、方向としてはまあ評価できるわけですけれども、中身についての具体的なところで、何かもうすぐにでも減税が実行されると期待する国民にとっては余りにも内容がはっきりしていないわけです。  例えば財源についてまずお聞きしますけれども、先日あの答申の出る前に、総理にどんな財源を頭に置かれているのかお聞きしましたところ、まだ考えていない、こういうお答えでしたが、しかし今度答申が出てきたわけですから、この段階では財源のめどというのは総理もかなりはっきりしてきているんじゃないか。そうならなきゃ、減税を積極的にやりたいとおっしゃった総理のお答えもむなしいものになるわけですから、そこで総理の希望あるいは期待でも結構ですが、財源にはどんなものが考えられますか。
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのことこそ大事なポイントでありまして、税調の皆さん方に、いろいろ国民皆さんの御意見も承りながら研究してもらいたい、そう考えておるところでございます。
  255. 野末陳平

    ○野末陳平君 いや国民に研究とか税調じゃなくて、希望でも期待でもそれは結構ですが、総理は何をお考えか一番積極的に税制改正をやり、減税をやりたいとおっしゃった総理なんですから、どうも人ごとのように言われても困るんですがね。
  256. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱり相当な権威者がそろっていて国民皆さんの考えを承った方が、私ごとき者が申し上げるよりもより的確なものが出てくると期待しておるわけであります。
  257. 野末陳平

    ○野末陳平君 参りましたね。それを国民にテレビなんかで言ってごらんなさい。がっかりしますよ、せっかく支持率が高いというのに。じゃ、減税の規模、これはもう希望、期待じゃ困ります ね。やはりあれだけの税制改正をやる、あの方向は出ましたが、どの程度が実現するか知りませんが、総理としてはやはり減税の規模はこのくらいであってほしいんだ、これがはっきり数字が出なきゃおかしいと思うんですが、どうですか。
  258. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度の税調の中間答申はその点も注意深く出されていると思うんです。定性的なものにしまして、数字は載せておりません。  しかし、あの定性的なものの中でも、四百万、八百万、あの辺を非常に重視して、負担を軽くするとかあるいは刻みを少なくするとか、なるたけフラットにしていくとか、あるいは家庭の主婦、内助の功の奥さん、これに対する減税をかなり考えている。あるいはサラリーマンについても、野末さん前から御主張あるいはサラリーマン党も御主張であられた必要経費の問題についても認めよう、選択的にこれを考えたらどうかというような提案が出ておりますが、私はああいう点は非常におもしろいものが出てきたし、私個人としては非常に共鳴するところもあるのであります。今後どういうふうにしていくか、党ともよく相談すべき課題であると思っておるわけです。
  259. 野末陳平

    ○野末陳平君 今のお答えのとおり、方向としては非常に評価できるし、あるいは実現したらかなりサラリーマン層を中心にして国民も喜んで、不公平も少しでもこれで解消されるというふうに考える人も多いと思いますが、それにしたって、減税の規模によってはもうほとんど実現しないかもしれないし、あるいはほんのちょっとかもしれないし、もう全く規模次第でしょう、あれは。方向はいいんですが。だからあえて減税の規模という点をお聞きしたんで、ひとつそれについてお答えをいただきたいんです。
  260. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ああいうものが課題として検討されるに値するぐらいの相当額の規模というものを私は期待しておるのでございます。
  261. 野末陳平

    ○野末陳平君 相当額の規模になればこんなにいいことないし、それを願っているんですが、そうなると相当額の財源ということになりますからね。考えられる財源は常識的に、相当額となれば何兆という、これはもうそんな簡単にあるわけじゃありませんからね。マル優を仮に廃止するとしても、すぐに財源として間に合うかどうか難しいところですね。あるいは大型の間接税もこれは当然検討しなきゃいけないんでしょうけれども、これだってすぐに財源として減税の実現あるいは税制改革の実現と結びつくとも思えないしと。  いろいろ考えますと、やはり総理、減税を言ってみたものの、あるいは税制改革方向はできたものの、財源次第ではまるでシャボン玉みたいになっちゃう、そんな気さえするんで、来年度減税をどうしても総理は実行してそして公約を果たす、これは財源いかんを問わず変わりないわけですね、ここだけは。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 税調の皆さん方に、さきに出した減税に関するいろいろな中間答申、それから実現できるような収支調う財源措置というものを期待しておるわけであります。
  263. 野末陳平

    ○野末陳平君 その財源措置ですが、どうも手詰まりで、いい案が秋に出るかどうかはわからないと思うんですね。そうなると、例えばここで、減税のためだけというわけじゃないでしょうけれども国債を増発してでも減税をやれ、その方が、一時マイナスのような、あるいは財政再建の途中で抑制の手を緩めるようなのはとんでもないという声があると同時に、しかし、やはりここで減税をすることが結果的に将来プラスじゃないかという意見も出てくるんじゃないか。もう現にそういうことを言っている人もいますからね。だから、手詰まりで万策尽きたときに国債をというような、そんな意見については総理はどうですか。
  264. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど来申し上げておりますように、臨調答申の基調を堅持していく、そしてそのときのいろいろな経済情勢その他を考えて、応急、緊急の対策を用意していく、そういう形で基本的には考えてまいるべきであると思います。
  265. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはどうも具体的なところへいけないので困りますね。選挙近いでしょう。そうしますと、減税減税と仮に言っても、だれだってもう聞いている人は、今財源どうするんだとすぐ聞くし、それがなくして減税やりますなんてばかなこと言えませんね。ですから総理にいいお答えをいただこうと思っているんですけれどもね。  それじゃちょっと角度を変えまして、国債ですけれども、最近この委員会でもいろいろと質疑の中に入ってきたんですが、金余り現象ですね、これはアングラマネーも含めて相当な金がどうもだぶついているような感じでして、それが投機に回っている。土地でも株でもゴルフ場でもそれはいろいろあるんでしょうけれども、その金余りの現象に対して、政府が手をこまねいていていいものかどうか。そんなような立場から、このだぶついている金を吸収するために魅力のある投資対象を考えてもいいんじゃないか。その一つ国債ども検討しまして、これは簡単に言えば、要するに利子を優遇するかなり長期の国債ということになるんでしょうけれども、いわゆる免税債あるいは無税国債、いろいろ考えられると思います。そのようなものを出してこのだぶついた金を吸い上げる、それをむしろ有効に使うということも政治課題としては検討していい時期に来ているんじゃないか、そんな気がしているんですけれども、これについてはどうですか。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 野末さんは免税国債とか無税国債をあるいはお考えになっていらっしゃるのかもしれませんけれども、あれはやっぱり国債で利子を払わなきゃならぬので、国民皆さんにいずれ税金でお返し願わなきゃならぬというものなのであります。現在は割合国債の消化の方法は悪くはないですね。無理しなきゃ国債が消化できないというほどではない、かなり金はだぶついておる、そういう情勢にあるのではないかと思っております。
  267. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、今までの国債発行の動機とは違う意図があるのでお聞きしているんですけれども、これはなかなか簡単なものじゃないので、そういうことも検討したらどうかというだけのことなんです。  ただ一つだけ、時間なくなりましたが、国債は確かによくないし、ここまで百四十兆からのものを抱えて、もう非常に、栗林さんの意見じゃありませんけれども、惨たんたる状況にある。だけども国債政策というものをある時期軌道修正せざるを得なくなるんじゃないかという不安があるんです。六十五年の話もそうですが。要するに国債子孫にツケを回すのでだめなんだ、何とかしなきゃと、これは努力目標あるいは理念としてはいいんですが、現実は必ずしもそうはいかないことがはっきりしているわけですから、国債というものに対して考え方を少しずつ変えて、国債は必ずしも悪じゃないと、この国債の使い方次第で将来にはという、やっぱりいずれそういう検討を迫られるような気がしてならないので、あえてそれをお聞きしたわけなんです。それについて総理のお答えをいただいて終わります。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は国債を必ずしも否定しているものではないんです。経済学一般論としまして、日本がこれだけの大きな金融市場、経済力を持っておる国になりましたから、国債もある程度は必要であって、国債と同棲するという考えは必ずしも悪い考えではないんです。これは金融市場を維持して民間金融を活発にしていくという意味においては、国債との同居も辞すべきものではない、同棲も悪くはない、そう私は思っておるんです。  ただ、余り多くの国債というものは危険であって、将来インフレを生む大きな危険性が出てくる。これは火薬庫にしっかり閉じ込めておかないと、野方図にするというと爆発する。それは悪性インフレが起きたらこれはもう一遍に国民経済は崩壊するし、サラリーマンや老人が一番苦しむ。そういう意味において、我々は将来を見つつかなり厳しい管理政策をとっていかなければ国民に申しわけがない、そう思っておるのであります。
  269. 青木茂

    ○青木茂君 どうも総理は私の旧制高校時代の先輩で頭が上がらないんですが、特に、総理お忘れかもしれないけれども、四十数年前、おまえは生意気だとどなり上げられたことがあります。しかし、こういう立場になると立ちすくむわけにはいきませんからね、となり上げられても。  申し上げますけれども、今野末先生からもお話ございました税調の中間報告、あれは確かに主婦の内助の功の評価であるとか、それからサラリーマンにも必要経費を実額で認めるとか、我が見どころか、私が二十数年来言い続けてきたことが初めて具体化されて大変うれしいですようれしいですけれども、ちょっと心配なのは、これは読売新聞の五月十一日の記事なんですけれども、これだけおいしいあめというのか、いい内容を出していただいたにもかかわらず、これ期待しないというグループが五一%あるんですよ。期待するというグループが四四%なんです。これは数字もっと大きく逆に開いてもいいはずなんです。この落差、期待するというのがもっと大きくあってもいいのが逆に出ている。これについてまず総理はどういうふうにお考えでしょうか。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今までの政治不信の状況から見ると、その数字がよく出たと私はありがたく思っておるのであります。     —————————————
  271. 山本富雄

    委員長山本富雄君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、鈴木一弘君が委員を辞任され、その補欠として服部信吾君が選任されました。     —————————————
  272. 青木茂

    ○青木茂君 もう総理は四年も政治の最高責任者をやっていらっしゃるわけだから、そうすると、政治不信の状況から見るとということになると、かなり中曽根さん不信ということにもつながってしまうんですけれども、お認めになりますか。
  273. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新聞やテレビで随分批判も受けたり悪口も言われてますから、そういう面から見るとありがたいことだと感謝したわけです。
  274. 青木茂

    ○青木茂君 そんなにありがたいかな。これは本当にあれですよ、冗談の問題は抜きにいたしまして、これだけの前向きの内容であってなおかつ期待しないということは、どうも、春にあめが出て、それでもうすぐ参議院選挙がございますね。それが終わってから財源難を理由にして大増税案が出るんじゃないかという国民の不安と不信が僕はこの数字にあらわれているんじゃないかと思いますけれども、さらに大きく政治不信というものをなくするために、四年間で政治不信をつくっちゃったら、この際なくすのがやっぱり有終の美ですからね。そういう意味においては、秋に財源難を理由にした増税案はないと、これはひとつ中曽根総理の責任のもとに御確認願えますか。
  275. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 終局的に財源措置というものは税制調査会でいろいろ御検討願うようにしてあるのでございまして、私らが事前にいろいろ口を挟むのは控えた方がいい、そう思っております。
  276. 青木茂

    ○青木茂君 共産型独裁国家というのもあるそうですけれども、民主型独裁国家というのもあるんじゃないですか。税制調査会、税制調査会と。僕は、この大蔵委員会で税制調査会の名が一年間に何回出たか、一回勘定してみるといいと思うんです。国民から選ばれた委員会です。単なる、調査会にしろ審議会にしろ僕は違うと思うんですよ。それが全部税調の名で逃げられてしまうんでは、委員皆さん、これは与党の方も含めて何のためにここに座っているかわからないんじゃないですか。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々がうかつなことを申しますと小倉さんにまた怒られるものですから。
  278. 青木茂

    ○青木茂君 怒られたって構わないじゃないですか。そんなに怖いですか。小倉先生はむしろもうお怒りになっているんですよ。それはなぜかというと、みんな税調に逃げるからお怒りになっているんであって、もっとどなり上げてもらわなきゃ困るな、小倉さんは。  とにかく、国民がかなりはっきりした姿で疑問を持っているのは、税調の中間答申でまずあめを出しておいて、選挙を済ましてむちが出る、これに対してはかなり国民の確信に近いような状況が出ている。初志貫徹、不公平税制打破のサラリーマン新党、初志貫徹、大型間接税の自民党なんという選挙の争点にならないようにひとつぜひこれはお願いをしたいと思っております。  問題を転換させます。中曽根内閣は結局、いわゆる外交スタイルというか、外交ゼスチャーというか、言葉が悪いのは御勘弁願いたいのですけれども、そういうもので非常に高く国際的な、あるいは国内的な評価を受けている。これが支持率の高さになってきているんですね。しかしながら、もう円高がここまで来て、あのサミットの結果から見ると、外交大国というものから内政大国と申しますか、さらに言えば生活大国と申しますか、そういうところへ国の構造の転換がなされなければならないんじゃないか。これはまさに七十年代、二十一世紀の国内の姿だと僕は思うんです。だからそういう意味において、外交国家から内政国家への基盤づくりだけは僕は中曽根総理の今後の御努力でお願いをしたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 部分的には賛成の点もございます。サミットも終わりまして、内政を最も充実させる方向に我々も力を入れていかなきゃならぬと思いますが、しかし、日本はこれだけの貿易大国でございますから、経済外交というものを無視して日本の内政的な充実もあり得ないわけであります。  一つ申し上げれば、いわゆる為替相場の問題にいたしましても、サーベーランスという問題があるわけであります。協調介入という問題もあるわけでございます。それによって随分今度は経済関係や会社の経営が違ってきて、サラリーマンの給料やボーナスにもすぐ響いてくるという状況であります。でありますから、これだけの経済貿易国家になりますと、もう経済外交というようなものは内政の一種である、また内政自体が外交の一つのブランチである、そういうふうに考えないと間違いではないかと思っております。
  280. 青木茂

    ○青木茂君 そこら辺のところはよくわかります。しかしながら、これからの日本で、一歩後退、二歩後退しなければならないのは、貿易大国という言葉ではないかと私は思うんですよ。むしろ、貿易大国というのか輸出大国、これをもう輸出中国、貿易中国ぐらいまで下げておいて、そして逆に大国は生活大国である、それを可能ならしめるものは行政小国であるというような新しいビジョンというものを本当に、中曽根総理というのか、中曽根先輩というのか、とにかくぜひこの際お示しを願いたい。決して僕は遅くないと思いますよ。お示しをいただきたい。それだけお願い申し上げて終わります。
  281. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今非常に興味のあるお言葉をいただきましたが、確かに私は生活大国はいいし、それから行政小国もいいですね。ただしやっぱり貿易大国は維持していった方がいい、そういうふうに思っております。
  282. 青木茂

    ○青木茂君 終わります。
  283. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  285. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になっております昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置法案に、理由を挙げて反対の討論をいたします。  特例国債発行してから十一年目になりました。毎年毎年この法案が出されて審議をするたび に、国債発行残高は雪だるま式に膨れ上がり、国債管理のやり方は複雑怪奇となり、国債を減額し健全財政を回復する道はいよいは困難になるばかりであります。百四十三兆円にもなる国債発行残高に対応するすべを失い、もう残された道は、永久国債によるか、インフレーションによる減価による実質的な破棄か、大増税による以外方途は全くないという状況であります。  私どもこの十年間重要法案として審議をしてきたわけでありますが、今や自民党政府の国債政策は一大転換の時期に突入し、危険な道をばく進し始めたと言うべきでありましょう。  以下、反対理由を申し述べます。  第一の反対は、現行財政法に違反する赤字国債の五兆二千四百六十億円の発行であります。そしてますます財政法を空洞化する方途をとってしまっております。また、累積する国債残高を清算し、財政の健全性を確保するための長期的計画もなく、だれにでも実行不可能だと判断されるような昭和六十五年度特例国債ゼロ計画しかないという無責任な状態の中で、建設国債であれ特例国債であれ、発行することには反対であります。もし明確で実現可能な計画があれば、国債発行についてその弾力性を認めるにやぶさかではありませんが、今日の状況ではそれを認めるわけにはまいりません。  第二は、減債基金への定率繰り入れでありますが、減債制度は国債に対する国民の信頼を高めるものであり、国債発行に対する歯どめ装置でもあります。したがって、減債制度を実質的に停止することには反対するものであります。  第三には、一般会計からの厚生保険特会への繰入額から千三百億円を控除することに反対するものであります。政管健保の適用対象は中小企業であり、今後さらに小零細企業の従業員にも拡大していかなくてはならないのであります。また、円高や財政支出の縮小によって労使とも大きな被害を受けているだけではありません。健康保険の自己負担分も増加しておるのであります。政管健保勘定に余裕があるならば、給付内容の改善、健康保険料の引き下げ等をやるべきであります。経営改善された分を今度の措置のようにカットしてしまうということになれば、経営改善の努力もむだとなって、努力の意欲もなくなってしまうものであります。  以上述べまして、反対の討論を終わります。
  286. 矢野俊比古

    矢野俊比古君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、賛成の意を表明いたします。  改めて申し上げるまでもなく、現下の我が国財政は、巨額の公債残高を抱えるなど極めて厳しい状況にあります。このような財政状態をこのまま放置するならば、今後の社会経済の急激な変化に財政が適切かつ柔軟に対応することが困難となるばかりでなく、後世代の国民は多額の公債の元利払いのための負担を強いられるという事態に至ってしまいます。  そのため、先般成立を見た六十一年度予算においては、歳出面では、既存の制度、施策の改革を行うなど徹底した節減合理化を行い、全体としてその規模を抑制し、一般歳出の規模は前年度に比べ十二億円の減に圧縮し、また、歳入面においても、税負担の適宜見直しを行うとともに、税外収入の可能な限りの確保を図っております。  しかしながら、政府のこのような努力にもかかわらず、六十一年度においてなお財源が不足するため、本案によって特例公債発行し、国債定率繰り入れを停止するとともに、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れの特例を講じようとするものでありまして、本法案はまさに六十一年度予算と一体不可分の重要な財源確保のための法案であり、いずれの措置もまことに必要にしてかつやむを得ないものと考えます。  まず第一に、特例公債発行であります。  特例公債の本年度発行額は、前年度補正後予算に比べ八千八百九十億円圧縮され、五兆二千四百六十億円が予定されておりますが、本年度財政運営を適正に行っていく点から見て是認せざるを得ないものであります。  なお、六十一年度における全体の公債依存度が二〇・二%と、五十年度以降で最低の水準にまで引き下げられていることに関しては、政府の努力を多とするものであります。  第二は、国債定率繰り入れの停止であります。  この措置は、特例公債依存体質からの早期脱却を目指し、特例公債発行額の減額に最大限の努力を傾けている現段階のもとではやむを得ないものと言わざるを得ません。また、六十一年度においては、別途、国債整理基金残高等を考慮した必要最小限の予算繰り入れを行うこととしており、国債定率繰り入れの停止を行っても本年度の公債の償還には支障が生じないものと認められます。  第三は、政府管掌健康保険事業に係る千三百億円の国庫補助の削減についてであります。  この特例措置は、国庫補助金の減額を行いましても、政管健保の事業運営に支障の生じないことが見込まれていることや、将来仮に事業の適正な運営が困難になるようなおそれが生じた場合には、補助金の減額分の繰り戻しを行うなどの適切な措置を講ずることとしていることから、これまたやむを得ないものと考えます。  今後とも、政府におかれましては、国民各位の理解と協力を得て、国、地方を通ずる行財政改革に積極的に取り組み、歳出全般にわたる節減合理化を一層推進することにより、限られた財源の中での財政資金の一段の効率化と行政運営の能率化を図られることを切望し、私の賛成討論といたします。
  287. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、反対の討論をいたします。  本法案に反対する第一の理由は、巨額の赤字公債発行し、しかも、昭和六十五年度において特例公債依存体質を脱却するための方策も明らかにしなかったことであります。  本年度特例公債発行減額は目標の一兆円強をはるかに下回り、この結果、六十二年度以降毎年一兆三千億円を超える減額を必要といたします。したがって、事実上、政府公約の増税なき財政再建も六十五年度特例公債脱却も明らかに破綻しているのに、政府は言い逃れに終始して、肝心の財政改革を放棄しているのは全く許せません。  反対する第二の理由は、国債整理基金への定率繰入停止を昭和五十七年度より連続五年間行うことにより、償還財源の枯渇を一層深刻なものとしたことであります。これは減債基金制度を政府みずからの手で崩壊させることであり、財政民主主義の上からも断じて認めるわけにはまいりません。さらに、一昨年赤字国債借りかえの立法措置を独行した上で、また全額換債発行を強行することになれば、財政当局への信頼を根本から揺るがすことになるのであります。  また第三に、政府管掌健康保険事業に係る一般会計からの厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れを六十年度に引き続いて減額することにも強く反対いたします。現在健康保険勘定には巨額の累積赤字も存在しているのであります。さらに、公債依存度を、予算編成技術を駆使して、形だけ、数字だけ低く見せようとしたことなど、種々の問題もあります。  反対する第四の理由は、本法案の審議の過程で、政府の財政運営の失敗から急激なる円高不況を招き、中小企業初め産業全般に大きな打撃を与え、国民生活に危機的影響を及ぼしたことに責任もとらず、反省もしない態度は断じて許すことができないからであります。政府は、我が党の主張するごとく、内需拡大、大幅所得税減税、公共投資追加拡大等を早急に行い、さらに円高不況に苦しむ中小企業に対し十分なる対策を講じ、国民生活安定の方策を直ちに実行すべきであります。  以上、本法案に強く反対する立場を表明し、反対討論を終わります。
  288. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に、反対の討論をいたします。  反対の第一の理由は、五兆二千四百六十億円にも上る特例公債発行が、「公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」ことを定めた財政法第四条第一項の規定に反し、これに真っ向から挑戦するものだからであります。  当初予算で一兆円減額を打ち出し、財政再建の重要な一歩を進め得たとして自画自賛した昭和六十年度予算も、その後の補正で特例債四千五十億円を含む総額七千五百八十億円の追加発行を決め、大きくつまずいたのであります。今回、これに引き続いて昭和六十一年度予算では、対前年度当初と比べ特例債の減額は四千八百四十億円とされ、一兆円減額目標の半分以下にとどまりました。自民党の宮澤総務会長でさえ、昭和六十五年度赤字国債依存体質から脱却するとの財政再建目標は実体がないに等しいと断言するに至っております。  この結果、国債残高昭和六十一年度末には百四十三兆二千億円となることが見込まれ、これは予算規模の二・六倍、GNPの四二・五%を占める膨大な額であります。  また、国債費も対前年度比一〇・七%増の十一兆三千百九十五億円と一般会計の二割の大台を初めて突破、新規財源確保債よりも国債費が上回るというサラ金財政の新たな重大な段階に踏み込んだのであります。このような国債費の年々の膨張は、歳出予算のますます大きな部分を先取りして、財政の硬直化を一層進行させ、社会保障、福祉、教育など国民生活向け予算の切り捨てと大型間接税導入など、国民への犠牲の転嫁と負担増の押しつけに一層拍車をかけることにつながるものであります。  第二に、二兆九千六百四十二億円に上る特例公債借りかえは、満期償還を大原則とし、借りかえは行わないとの約束を一方的に破棄し、例外中の例外を今や恒常化させるばかりでなく、特例公債全面借りかえに大きく道を開くものであります。  赤字国債借りかえは、元金償還を先送りして当面の負担を軽減する一方、将来にわたって国債残高の累増と利払い費の急増をもたらし、長期的には、財政危機を一層泥沼化するだけでなく、財政運営の歯どめをなくし、将来にわたって財政の所得再配分機能を損ない、金利自由化を中心とした金融政策、金利体系の全面見直しへの大きな圧力になるなど、重大な諸問題を持つものであります。  第三に、二兆七百三十八億円に上る国債定率繰り入れ等の停止は、一般会計からの予算繰り入れを見込んでも、昭和六十一年度末の国債整理基金残高を四千十七億円へと枯渇させ、その資金繰りを綱渡り状態に追い込むものであります。減債制度を事実上崩壊させるに等しいこのようなやり方は、国債政策への国民の信頼を裏切るはかりでなく、財政負担の平準化、財政膨張に対する間接的歯どめ、公債の市価維持など、減債制度本来の役割にも重大な支障を来すものであります。  第四に、一千三百億円に上る政管健保への国庫補助削減措置は、昨年度の九百三十九億円の減額措置に引き続いて、昭和六十年度の一年限りの特例措置との約束を一方的にほごにし、二年連続で削減するもので、到底容認できないものであります。  そもそも、今回の国庫補助削減の口実である健保財政の黒字額は、本人一割負担導入など一昨年の健康保険法大改悪により、受診率及び一人当たり医療費の大幅な低下が進行したことなど、専ら受診抑制と患者負担増によってもたらされたものであります。したがって、健保財政の黒字分は、健保本人十割給付の復活に優先的に充てられるのが本筋であり、次いで保険料率の引き下げに用いられるべきものであって、逆に国庫へ召し上げる政府のやり方は極めて不当な措置であります。  以上の理由により、本法律案に断固反対の態度を表明し、反対討論を終わります。
  289. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保に関する法律案に対して、反対の討論を行います。  反対理由の第一は、準憲法規範とも言うべき財政法を頭から踏み倒した法律案である点であります。ことしもまた放漫財政の象徴である赤字公債発行するとともに、減債制度の根幹とも言うべき定率繰り入れを見送りました。ないそでは振れないということで済ますにしては、余りに節度を欠いた態度であります。  これまで財政再建については、臨調の強い意向もあって、増税なき財政再建路線が主張されてまいりました。しかし、このことは、筋の通った増税も含めて一切の増税に目を覆い続けるということではないはずであります。あくまでも目標は財政再建であって、増税の有無は単にその手段であるにすぎません。  既に円高のもとで我が国はまさに歴史的転換が迫られております。この際、不退転の決意をもって財政再建に邁進するよう強く求めて、反対討論といたします。
  290. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  291. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  292. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、竹田四郎君から発言を求められておりますので、これを許します。竹田四郎君。
  293. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、ただいま可決されました昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新政クラブ及びサラリーマン新党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。  昭和六十一年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一、東京サミットにおける議論等を踏まえ、急激な円高の我が国経済への影響等が極めて大きいことに配慮し、今後、為替相場の安定等に一層努め、国内産業、とくに苦境にある中小企業に対し、適確な指導を早急に行うとともに、国民生活の充実を図ること。  二、現下の内外経済情勢にかんがみ、均衡と調和のあるインフレなき経済発展を図るため、財政・金融政策について、引き続き適切かつ機動的な運営を行うこと。  三、財政再建の基本的な考え方と税制改革の全体的な方向を明確にし、もって国民理解と協力を確保できるよう努めること。  四、公債残高の累増に伴い、国債費が増嵩の一途をたどるという歳出構造の変化が生じている現状を直視し、特例公債をはじめ借換債を含めた総公債発行額をできる限り抑制するとともに、所得再分配等財政に課せられている機能の充実を図るため、徹底した歳出歳入構造の見直しを行うこと。  五、公債の償還財源に係る問題は、今後更に深刻なものとなることが予想されるので、この問題について歳入歳出全般を通じた幅広い検計を行い、公債に対する国民の信頼の確保に万全を期しつつ、適切な公債政策を推進する  こと。  六、財源対策としては、中長期にわたる展望に基づいて対応を図り、税外の臨時的な財源に安易に依存することのないよう努めること。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。
  294. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいま竹田四郎君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  295. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 多数と認めます。よって、竹田四郎君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹下大蔵大臣
  296. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。
  297. 山本富雄

    委員長山本富雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  298. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  299. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 次に、有価証券に係る投資顧問業規制等に関する法律案預金保険法及び準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案及び国有財産法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題とし、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  300. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました有価証券に係る投資顧問業規制等に関する法律案預金保険法及び準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案及び国有財産法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、有価証券に係る投資顧問業規制等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  近年、我が国におきましては、金融資産の増大、金融の自由化、国際化の進展等の状況のもとで効率的な資産運用を図る観点から、国民有価証券に係る投資顧問業へのニーズが急速に高まってきております。しかしながら、他方では、悪質な投資顧問業者による投資者被害の問題も生じてきているのが実情であります。  このような状況を踏まえ、有価証券に係る投資顧問業に関し投資者の保護を図るため、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、投資顧問業を営もうとする者に対して大蔵大臣への登録を義務づけるとともに、営業保証金の供託、帳簿の作成、記録の保存等の義務に関する規定及び立入検査、登録取り消し等の監督に関する規定を設けることとしております。  第二に、顧客に対する融資、顧客にかわっての有価証券の売買や金銭等の預かりといった行為を通じて投資者被害が生じている実情にかんがみ、投資顧問業に関し、これらの行為を禁止するための規定を設けるとともに、広告規制、契約締結に際しての一定の事項の開示義務、いわゆるクーリングオフ制度の導入等に関する規定を設けることとしております。  第三に、投資一任契約に係る業務につきましては、顧客の財産に直接関与する業務である点等にかんがみ、登録を受けた投資顧問業者のうち一定の要件を満たすものに対して認可を行う旨の規定等を設けることとしております。  第四に、証券投資顧問業協会についての規定を設けることとしております。  次に、預金保険法及び準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  金融自由化は、我が国経済の効率化と発展に資するものであると同時に、我が国が世界経済の発展に貢献していく上で有意義なものであります。  他方、このような金融自由化を進めるに際しては、信用秩序に混乱を来さないようにするための方策を整備する等、金融自由化の環境整備を図っていく必要があります。このような観点から、金融機関の経営危機に対応するための預金保険制度の拡充を図るとともに、金融政策を効果的に運営するために準備預金制度を整備することとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  まず、預金保険法の改正について申し上げます。  第一に、経営が破綻した金融機関を対象とした合併等で大蔵大臣の適格性の認定またはあっせんを受けたものについて、預金保険機構が、貸し付け、不良資産の買い取り等の資金援助を行うことができることとしております。  第二に、預金の払い戻しの停止等の保険事故が発生した場合に、本格的な保険手続が開始されるまでの間に一定金額までを仮払いする制度を導入することとしております。  第三に、労働金庫を預金保険制度の対象とすることとしております。  以上のほか、所要の措置を講ずることとしております。  次に、準備預金制度に関する法律の改正について申し上げます。  準術預金制度につきましては、超過累進準備率を導入することとし、準備預金に係る指定勘定の残高に金額による区分を設け、その指定勘定区分額ごとに異なった準備率を定めることができることとしております。  次に、国有財産法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  国有地の管理及び処分につきましては、公用公共用優先の基本原則を維持しつつも、極力民間の活力を活用してその有効活用を図るという管理から活用への発想の転換が求められているところであります。  一方、民間においては、土地の有効活用の手段として土地信託制度が急速に普及してきているところであります。  このような状況を踏まえ、国有地の一層の有効活用及び処分の促進等に資するため、国有地に土地信託制度を導入し、国有地の管理及び処分の手段の多様化を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、国有地の処分の手段に信託を加えることとしております。また、国有地を信託した場合に国は信託の受益権を取得しますので、この信託の受益権を国有財産とし、管理及び処分の対象とすることとしております。  第二に、信託の対象となる財産は、普通財産である土地及びその土地の定着物に限ることとしております。  第三に、土地を信託しようとする場合には、信託の目的、信託の受託者の選定方法、信託の受託者の借入金の限度額等につきまして、国有財産審議会に諮問し、その議を経なければならないこととしております。  そのほか、信託期間の上限、会計検査院への事前通知等所要の改正を行うこととしております。  以上が、有価証券に係る投資顧問業規制等に関する法律案預金保険法及び準備預金制度に関する法律の一部を改正する法律案及び国有財産法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  301. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 以上で三案の趣旨説明の聴取は終わりました。 三案に対する質疑は後日に譲ります。本日はこれにて散会いたします。    午後八時五分散会