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上田耕一郎君 安倍
外務大臣は先日のこの
委員会で、一義的には
フィリピン政府の問題であって
我が国は当事者でない、そう答えられました。けさの
黒田通産省通商政策
局長の
報告を拝見しましても、
日本側が悪かったのは多少正直過ぎて相手を信頼し過ぎたこと程度で、特に日本の
政府ですね、そういう印象なんですが、
ソラーズ委員長に言わせてみますとマルコス政権は泥棒の集まりだと、ああいうやり方を日本
政府が知った上で
円借款その他をずっとやっていたとするとかなり事態は変わってくるんじゃないかと思うんです。
世界の六月号にフリージャーナリストのアルファロ女史が「「
フィリピン株式会社」の構造」という論文を書いているんですね。これは、とにかくマルコス政権は
フィリピンの
経済、政治機構をそっくりそのまま私的蓄積の手段にしてしまったと。マルコスの二十年間の恐怖政治を支えてきたアメリカと日本の絶えざる直接
資金援助、この
責任を糾弾しているんですね。これは
フィリピンの雑誌に載る論文だというんですけれ
ども。だからこういう事態を、日本
政府は相当親しかったし、情報も集まっていたわけだから、まるきり知らないということは考えられない。
アジア
経済研究所、とれは
通産省認可の特殊法人で、
政府の委託
調査なんかも大いにやっているわけですね。先日の
委員会で
内藤委員が政治腐敗問題についてアジア
経済研究所の「現代
フィリピンの政治構造」を引用して聞いたわけです。ここにちゃんと
報告がある。選挙用の歳出が六八会計年度歳出の九・五%から二三%に及んでいるという
報告があったというんですね。
経済の問題では、このアジア
経済研究所のナンバー三二二「発展途上国のビジネス・リーダーシップ」という論文集がある。これを読むと、この中の第六章というところに「マルコスの盟友たちの財閥」という章があるんです。
これを読むと、これ二つの実例が出ているんだけれ
ども、ちょっと驚くべき事態です。クローニーズ・キャピタリズムという新語が使われている。クローニーというのはマルコスの盟友たちの
企業グループの名前だそうです、ちょっと
田中ファミリーを思い出しますけれ
ども。二つの実例が追及されておりますけれ
ども、その一つはCDCP社、コンストラクションアンドデベロプメントコーポレーションオブザ
フィリピン、これは七二年にはわずか百二十八名の建設会社だったけれ
ども、たちまち数年にしてフノリピン最大、東南アジア最大の国際的土木建設会社にの上がっていったと。それが八一年に全くめちゃくちゃなやり方で破産するんですな。破産してマルコス政権は国家
資金による救済策に出るわけです。
これは詳しいことをぜひ読んでいただきたいんだが、七十億ペソ、
政府金融機関が融資をすると。この七十億ペソというのは、
フィリピンの通貨供給量の二七%だというんですね。それで、こういう
フィリピンの通貨供給量の三割近い融資をして、それでもう
フィリピン経済は大変撹乱されたということで、この論文はこう書いてある。「クローニーズ・キャピタリズムを支えてきたのはマルコス政権およびその保証の下でクローニーたちが借り入れてきた巨額の
海外借款であった。」と。そうすると、日本はこれは有名なことだけれ
ども、
外務省監修の「
フィリピンの
経済社会の現状」の中に
数字が出ていますけれ
ども、二国間の援助では日本が第一位です、五〇%です。八一年から八三年の平均で五一・四%、アメリカが三五・二%だからアメリカの二倍です。
フィリピンの二国間援助で日本が最大の
責任を負っているわけだから、そういう
海外借款がこういうクローニーズ・キャピタリズムを支えてきたと。日本が最高大きな
責任を負っているということになるんですね。
それでひとつ安倍
外務大臣にお伺いしたいんだが、このアジア
経済研究所に書かれておりますCDCP社に対するこういうマルコスの違法の国家金融機関の援助等、こういうとてつもない事柄が起きているということを大体
外務省は全く知らなかったのか。もし知らなかったとしたら、これは
外務省の情報収集能力、
フィリピンの情勢検討能力、結論に大きな欠陥があったということになる。もし知っていたとしたら、こういうことを知っていて、しかしずっと続けていて
円借款をどんどんやっていくと、これもまた今度は
政府の能力の欠陥ということになってくると思うんですが、振り返っていかがですか。