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1986-05-13 第104回国会 参議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十三日(火曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      石井 道子君     杉山 令肇君      添田増太郎君     守住 有信君      宮島  滉君     大木  浩君      吉川  博君     沖  外夫君  五月十日     辞任         補欠選任      杉山 令肇君     岩本 政光君  五月十二日     辞任         補欠選任      岩本 政光君     関口 恵造君  五月十三日     辞任         補欠選任      関口 恵造君     岩本 政光君      浜本 万三君     対馬 孝且君      井上  計君     三治 重信君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 前田 勲男君                 松岡満寿男君                 市川 正一君     委 員                 佐藤栄佐久君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 関口 恵造君                 降矢 敬義君                 松尾 官平君                 梶原 敬義君                 浜本 万三君                 田代富士男君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   渡辺美智雄君    政府委員        通商産業政務次        官        大坪健一郎君        通商産業大臣官        房長       児玉 幸治君        通商産業大臣官        房総務審議官   鎌田 吉郎君        通商産業大臣官        房審議官     松尾 邦彦君        通商産業省立地        公害局長     黒田 明雄君        通商産業省機械        情報産業局次長  棚橋 祐治君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        逢坂 国一君        中小企業庁長官  木下 博生君        中小企業庁計画        部長       広海 正光君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    参考人        日本弁護士連合        会消費者問題対        策委員会幹事   三木 俊博君        読売新聞社論説        委員       国政 恒裕君        日本訪問販売協        会副会長     小林豊次郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○特定商品等預託等取引契約に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月九日、宮島滉君、吉川博君、添田増太郎君が、また昨五月十二日、岩本政光君が委員辞任され、その補欠として大木浩君、沖外夫君、守住有信君、関口恵造君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、この消安法については、もう先発議員から大分議論が尽くされておりますし、余り問題にするところもないようでございますので、後で時間がありましたら二、三ちょっと質問させていただきたいのです。  それで、実は私、原発行政のあり方について、通産省考え方をお聞きしたいと思うわけなんです。  ソ連チェルノブイル原子力発電所事故を起こしまして、それに対する対応、これは世界的な大問題になっているわけですが、日本対応を見ておりまして、従来どおりのパターンではあるんですけれども、そろそろ一部対応を変えなきゃいけないんじゃないかという気がするわけなんですね。といいますのは、きのうも決算委員会で、科技庁長官説明を聞いていたんですけれども、やはり対応が、いかにもああいう事故があった、しかしながら日本にはああいう事故はないんだとか、日本の場合は安全なんだとかというふうなことを、国民に向かって説得なさろうという態度が非常に強いわけですね。しかしながら、もう日本国民というのは、ここまでレベルアップしてきていますし、教養もあるし、教育もあるし、判断力もあるので、ある程度は国民判断に任すという方向に向いてしかるべきじゃないかという気がするわけです。悪い言い方をしますと、お上が、自分の方が全部資料を集めてそれを判断して、その結果を国民に示して国民をリードする。極端に言えば、知らしむべからず寄らしむべしみたいな、お上に任じておけ、おれの言うとおりにすればいいんだ、おれが安全と言えば安全でいいんだというふうな態度にも受けとれるわけですね、これは行政全般について。  しかしながら、私は、もう余りそういうふうに何もかもお上が引き受けていると、どうも社会全体のコストが高くなるんじゃないかという気がするわけです。したがって、例えばチェルノブイル原発と同じようなメルトダウン事故が仮に日本で起こったとすると一こういうものが絶対に起こらないということはあり得ないわけですね。確率は低いかもしれないけれどもあり得るわけですね、人間のやっていることですから。そうして、もしも日本で、例えば東京真ん中では原子力発電所はあるわけないんですけれども、それは東海村でもいいし、あるいは敦賀でもいいし、どこでもいいんですけれども、一番そういうふうな影響力が大きそうなところでメルトダウンが仮に起こったということになると、どのくらいの被害が起 こるのだと、人身事故死者の数だけということでやりますと、仮にそこで起こると日本の場合は十万人の死者が出る可能性がある。しかしながらソ連型の、何というのですか、黒鉛減速軽水冷却沸騰水型ですか、ソ連のそういうものに比べて、日本の軽水炉型はこういう事故可能性が仮に十分の一だとすると、死者の数にしたら一万人で済むわけですね。  それで、こういうものが仮に十年に一度しか起こらないということになれば、さらに十分の一で、年間にすれば千人だというふうになっていく。世界的に見て、そういうものが起こる可能性がこれがまた十分の一なら百人というふうに、それをそういう数字であらわすのはいいかどうかは別にして、確率可能性としては、年間仮に百人なら百人の死者可能性があるということになった場合に、それを国民に示して、年間に百人の犠牲を必要とするのだ、しかし、この百人の犠牲原子力発電所を続けていくメリット、デメリット価値判断国民の皆さんしてくださいというふうな持って行き方がやっぱり必要なんじゃないかと思うわけです。  これは、どんな文明の利器でも必ず犠牲はあるわけです。例えば今通産省がやっておられる石炭行政でも、年間五十人の死者が出ているわけですね、ずうっと平均的に。それから、例えば日航機事故だって五百人の事故が一遍に出るわけです。それが十年に一回であったら五十人と平均考えられるわけですね。そのほか例えばまあコロンビアのルイスの火山だって、それから北洋漁業だって毎年、数字ははっきりしませんけれども、百五十人から二百人ぐらいの事故犠牲を払っているわけです。そういう片一方で犠牲を払いながらいろいろなことが進められるわけです。したがって犠牲がゼロということはあり得ないわけです。    〔委員長退席理事前田勲男着席〕  したがいまして、こういう原子力発電所をどうしてやっていくかということを考える場合にも、犠牲はこのくらいである、しかしメリットはこうだというふうな点から考えて、そしてそういうデータ国民に示して、それで国民判断をするというふうに持っていく必要があるんじゃないかと思うんですが、その辺まず御意見を承りたいと思います。
  5. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) ただいま先生から、原子力の安全につきまして確率計算をした上でというお話がございました。ただ、私どもは、原子力発電所の安全を確保するためのいろいろな行政をやっておりますが、この基本的な考え方は、発電所の周辺の住民の方々に対して放射線障害を与えない、こういうことを目標にやっておるわけでございまして、何十万分の一であるからあってもいいとか、そういうような立場はとっておらないわけでございます。  先ほど先生から、そのような安全の説明はというお話でございましたけれども、私どもといたしましては、我が国原子力発電所安全対策につきましては万全をとっておるつもりでございます。
  6. 木本平八郎

    木本平八郎君 その万全を期するとか安全というのは、これはもうもちろん一番大事なことだと思うんです。しかしながら、言葉で万全を期すとか、言葉で安全第一だとか言っても、例えば石炭事故ね、毎年毎年もう二度とこういう事故は繰り返しませんと、安全を万全を期してやりますと、何回もここで通産大臣がおっしゃっているわけですね。しかしやっぱり起こるんですよ。起こるのを、これを絶対に起こらないなんていうことを言い切れないと思うんですね。やっぱりその確率をできるだけ少なくするということであっても、ゼロにできないわけですよ。  例えば原子力発電所のこういう事故をゼロにするんなら、やめてしまったら一番いいんです。ある限りは必ず確率としては残るわけですね。それが致命的なものかどうかという判断に基づいて、やるかやらないかということがあるわけですね。例えば日航機事故で五百何十人死んだと、だからもう飛行機やめてしまえという理論にはならないでしょう。もう国民がそれはちゃんと考えて判断するわけですね。  そういう点で、私は今の日本行政というのが、お上というか、そういう非常にリードされるという態度でこられたと。それで今後も続くかもしれません。しかしながら、それがやはり過保護になって、この消安法の、これも後で私は申し上げようと思うんですけれども、過保護ママみたいなものになって、国民がそれに甘えちゃって、自分で考えない、自分判断しないということになりますと、政府がやっていくとどんどんコスト高になるんですね。  例えば原子力発電所で、ここまででいいと思っているのに、政府は責任追及されちゃ困るからもう二重三重にプロテクションをやれというふうなことになっていくと、やっぱりそのコストは結局消費者にはね返ってくるわけですね。したがって、それはどこまでコストをかければいいかということとの兼ね合いになると思うんですよ。その辺がやはりお役人立場としては安全な方がいいんだから、ぐるぐるぐるぐる何重にもやれということでしょうけれども、そのために電力料金がどんどんどんどん高くなっていくというふうになれば余り意味がないんじゃないかと思うんですがね、その辺はいかがですか。    〔理事前田勲男退席委員長着席
  7. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) お言葉を返すようでございますが、私ども安全確保言葉で言っているわけではございませんで、それぞれの対策を、建設段階から建設中及び運転管理の詳細にわたりますまで十分安全確保のための対策をやっておるわけでございます。  それが、その要求が過剰であるかどうかというお話でございますが、これにつきましては、日本安全委員会が決めました指針によって設計安全部分につきましての設計要求事項というのが決まっておりまして、これに基づきまして安全の対策のための投資をしているところでございます。  これの基準は、もちろん我が国特殊性の地震とか、そういう問題についても対応するようにはなっておりますが、そういう面では若干厳しいところもありますけれども、一般の安全の機器関係考え方につきましては、世界の西側の安全についての考え方の水準に合っているものでございまして、それによって非常に過剰な投資になって身動きできないというような、そういうような状況ではないように私ども判断しております。
  8. 木本平八郎

    木本平八郎君 ちょっとその議論をやる前に、私かつて外国で、これは雑談的なんですけれども、こういう例え話をしたことがあるんです。  それは、神様があるときに人間代表をお呼びになって、ここに自動車という非常に便利で快適な乗り物がある。これを人間に与えてもいいんだけれども、ただ交換条件一つあるというわけですね。それは毎年一万人ずついけにえを出せ。それもなるべく若いぴちぴちした元気のいいいけにえの方がいいということをおっしゃったわけですね。その代表が今度帰りまして、そこで皆いろいろ相談したわけです。そしたら、一万人は多いから、せめて五千人ぐらいにしてもらえぬかとかね、いろいろあったんですけれども、結論はイエスかノーかだということで、そこのジパングの長老は、部落会議を開いた結果、それじゃもうその自動車というのをいただきましょうと、そのかわり毎年一万人ずつのいけにえを出しますということを約束したわけですな。それが現状の自動車なんですね。車なんです。  それで、車というのは、なるほど快適だけれども、毎年日本でも一万人、この一万人という数字は少しあれかもしらぬけれども、一万人の犠牲を払っているわけですね。これをなるべく少なくしたいというのは、それはもうみんなの願望ではありますけれども自動車というものを使っていく以上、この犠牲はもう避けられないんですね。外国の場合はもっともっとたくさんの犠牲を払っているわけですよ。日本の十倍も払っているところもありますね。そういうもので犠牲をゼロにする ということはもう考えられない。  したがって、それじゃ国民の場合に、今交通事故で一万人の犠牲が嫌だから自動車はやめるという判断をするかどうかですね。したがって、私はそれは役所の方が、そういうふうにして安全性だとかいろいろな指示をしていただく、指導をしていただくのもいいけれども、あくまで基本は国民判断に任せるべきじゃないかという気がするわけです。それで、例えばこの委員会を見ておりましても、我々は国民代表でしょうね。その我々の国会の判断というのがやっぱり中心になっていかなきゃいかぬのじゃないかという気もするわけです、ちょっと話は余談になりますけれどもね。  そういう点で、必ず犠牲が伴うんだということを前提にして、じゃ国民にやはり自決というか、自分判断をさせるということがそろそろ必要になってくる段階じゃないかというふうに思うわけなんですね。長官、いかがですか。
  9. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) もちろん科学に絶対というのはないことは、私もそういうつもりでおりますし、常に前進をする必要があると思っております。  ただ、現実の問題としまして、我が国では既に原子力発電所を運転いたしまして二十年になるわけですが、今まで原子力発電所の中で死亡事故が起こったというのが四名ございます。ところが、この四名というのは原子炉そのもの関係がなく、三名は修理中の墜落事故でございますし、一名は修理中に潤滑油に火がついてやけどをして死亡したという形でございまして、原子炉そのものが安全でないということを証拠づける死亡事故というのはもちろんないわけでございます。その意味では、自動車あるいはジャンボよりも現実の問題として安全であったわけでございます。  もちろん私どもとしては、それだからといって安全を無視するということは毛頭ございませんし、永久に死亡ゼロということを目指して今後ともやっていきたいと思っております。確率計算というのはどうしてもある事象をもとにして計算をいたしますので、今まで私どもはゼロという数値しか持っておりませんので確率計算のしようがないわけでございますので、今後とも確率計算のベースがゼロであるように努力をするということだろうと思います。  それから、安全規制によりまして設備投資負担が大きくなるというのは、これはあり得ると思いますが、逆に私どもは、これを標準化することによりまして世界的に非常に安い発電所をつくるという方向で考えておりまして、国民に対する負担というものも、安全とバランスのとれた負担になるように心がけていきたいと思っております。
  10. 木本平八郎

    木本平八郎君 私、東海村に前に行きまして、常陽を見たんですね。それで、あの上に行きますと非常にぽかぽか暖かいわけです、ちょうど冬だったんですがね。それで、その案内していただいた技師の方と話しましてね、これは非常にぽかぽか暖かいから、この上で昼寝すればいいでしょうねと言ったら、いや、それは確かにいいと。私どももまあ昼寝が許されるなら、ここで昼寝しているのが一番いいと、こう言っていたわけですね。下からの放射能心配なんか、もう本人はそういう心配全然してないんですね。  それから、原子力発電所の動いている地元の方々は、そのくらい安全なら、東京真ん中へつくったらどうだということをおっしゃるというわけですね。それで、技術者方々の自信としては、本当に一番つくりたいのは東京湾だというわけですね。東京湾地下にそれをつくって、その上に高層アパートを建てるというわけですね。そうすると非常に眺めもいいし、そして地下発電所で全部コスト負担してくれるので、上の方の分譲住宅、三LDKであっても一千万ぐらいで分譲できるはずだ。どうしてそれがいいかというと、確実に安全だということが一つと、万一メルトダウン、その他起こっても、海の下だとすぐ放射能なんかを自動的に抑えることができる。したがってそれがいいんだ。しかしながら、国民感情として、あるいは国民の何というんですか、恐怖感というか、心配というか、そういったところを考えて、やはり東京湾にはできないし、東京には持ってこれないんだと、念のために地方につくっているんだ。本当は、安全面から見ても、コスト面から見ても、東京へ置くのが一番いいということなんですね。  この技師意見がいいか悪いかは別にして、こういうことというのは科学的にも相当やれるわけですね。そういうふうなことを国民が踏まえた上で、それで東京湾はちょっと無理だから、もう少し送電コストがかかっても地方がいいんじゃないかというふうなことを国民にPRして、国民が認識した上で、そして原子力発電所を是か非か、そしてこの安全性はどうなんだと、それ以上余りにもコストをかけ過ぎるというのはいかがなものかというふうな判断をさせるところまでもう持っていかにゃいかぬじゃないか。これは外国のように非常に文盲率が高い、あるいは教育が進んでいないという国は別ですけれども日本の場合にはそういう時代になっているんじゃないかという気がするわけですね。  したがって私は、例えばこれを石炭火力にかえて、きょう発表される電力の値下げても、北海道は石炭が多いからあんまり値下げできないということなんですが、それはまあいろいろの事情があると思いますよ。しかし、要するにそういうふうな国民の錯覚と言ったらなんですけれども、ちょっと誤解というか、知らないための恐怖みたいなものでコストが非常に高くなっていく。例えば今、石炭火力日本でこれ原子力のかわりに全部やりますと、こんな狭い列島がスモッグでいっぱいになってしまって、出てくる放射線だけでも、これはもう原子力発電所の何百倍も放射線が出るわけですね。そういう状況にあることを考えれば、やはり石炭をやるか原子力をやるかというふうな選択は、きちっとやっぱり国民判断に任せるというか、国民にそういうデータを示してその判断を求めるというふうなことも私は必要なんじゃないかと思うんですが、長官、いかがですか。
  11. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 原子力発電所をつくるということについての国民理解協力が必要であるというのは、御指摘のとおりでございまして、今後とも国民皆様に十分御理解をいただけるように一層努力はいたしたいと思っております。  二、三点、先生の御質問の中で指摘をされました点について御説明申し上げたいんですが、一つは、原子力発電所の上でもぼかぼかと暖かくて危険がないというお話、そのとおりでございまして、私ども自然界から年間ミリレム放射能を受けておりまして通常に生活をいたしておりますし、それからレントゲン一枚撮りますと百ミリレム放射能が当たるわけでございますが、原子力発電所放射能管理最高年間ミリレムでございまして、現実はそれ以下でございます。したがいまして、非常に厳重な放射能管理が行われておりまして、自然界から受けるものあるいはレントゲンから受けるものに比べまして、圧倒的に低い数値で置かれております。  それから、安全であるのなら東京でつくったらどうだという御意見はよくあるんですが、実は安全じゃないから東京でつくらないんじゃございませんで、幾つかございますが、一つは、あれだけ広大な土地東京で見つけようとしますと、これはもう天文学的な土地代を払わざるを得ません。それから、発電所をつくるためには大量の水が必要でございますので、とても都内新宿であれだけの水を取ることは不可能でございますが、フランスあたり土地も水もございまして、パリに近いところに置かれております。それから、もう一つ地盤でございまして、やはり地盤の強固なところにつくるというのが原則でございますが、残念ながら新宿あたりはそれほど地盤が強くないと、いろんな理由がございまして、もちろん東京にそれだけ十分な土地確保ができ、水ができ、安全な地盤ができましたら、東京でつくりました方が送電費も安くなるわけでございます。したがって、これはコスト、それからそういう条件面から いってとても都内につくるのは無理だろうと思っております。  こういう原子力発電によってコストが安くなっております。今石油がどんどん下がってきてはおりますが、それでもなおかつバレル十ドル以下に下がりませんと、とても原子力に匹敵するほど安くはなりません。今後ともやっぱり電気料金を安く安定させるというためには、原子力は重要であろうというふうに考えております。したがいまして、安全に十分心がけ、国民皆様理解協力を得ながら、長期的な観点からエネルギー政策を進めてまいりたい、かように考えております。
  12. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひ私はそういう方向が望ましいと思うんですけれども、今現在の段階で、一つだけ国民の側からいって不信感があるわけですね。それは率直に言って、役人さんとか政府がおっしゃると、どうもためにするためにこじつけてというか、あるいはある程度真実を隠して、そして国民によらしむべしというふうなことで物を言っておられるんじゃないかということを、国民としては疑うわけですね。それから私自身も、例えば私は経済学部ですけれども、文科の連中の言うことというのは余り信用できないですね、こういう問題については。したがって、私はやっぱり科学者というか、理科を出たまじめな人がそれを言う必要があると思うんですよ、皆さんの中におられるかどうか知りませんけれどもね。したがって、例えば原子力委員会委員長とかそういう、伏見先生おられませんけれども伏見先生のような方がちゃんとおっしゃっていただくと、あるいはそういう方がアメリカ式に宣誓して証言していただいたら、これは私は非常にいいと思うんですね。  したがって、原子力発電所のようなこういう事故があった場合には、皆さん方は少しへこんで、そういう方々がすべて客観的に分析して、こうこうこういう可能性がある、ここまでは大丈夫であるというふうなことをおっしゃっていただくのが一番いいんじゃないかと思うんですよね。そういう点をぜひ今後、こういう事故がありましたときに、例えばこれは、ここには関係ないですけれども日航機事故なんかでもそうなんですが、ああいうものがどうして起こったかということですね。それの安全性について、いや、あれは特殊な場合であって、安全だ安全だと幾ら運輸省がおっしゃっても、国民はあんなもの全然ちょっと信用する気にはならない。そういう点で、皆さんには申しわけないですけれども、少しへこんでいただいて、そういう権威のある方、国民に信用のある方が前に出ていただくという行政のあり方も必要じゃないかと私は思うわけです。それで一応この問題はこれだけにしまして、消安法との関連でも申し上げたいんです。  要するに、私この消安法、実はよく知らなかったんです。この参考資料を見て、ベビーベッドから何からね、こんなにたくさん検定というか、そういうものがあるとは知らなかったわけです。私はここで一つ問題の提起をしたいんですけれども、これほど官庁統制というか、行政がぎりぎりに今まで縛ってきていると、こういうものが非常に日本のそういう製品の安全性を高めたという点においては貢献があったかもしれません。しかし、非常にコスト高にしている、あるいは何と言うんですか、非関税障壁、バリアになっているというふうな面も相当あったんじゃないかと思うんですけれども、その辺の反省については通産省の方はいかがお考えですか。
  13. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 今回改正を提案いたしております法律の中には、各種の検査、検定等の事業が規定されておるわけでございます。そういったものの中には、国民の生命、安全の確保に大変重要な役割を果たしているものも多いわけでございます。こういった規制につきましては、今回の改正に関係なく今後とも維持していくという考え方でございますが、ただいま先生からお話がございました、少し過重規制になっておるんではないかというような御指摘ではないかと思うんでございますが、私どもといたしましては、本当の意味で必要最小限度の規制ということで、各種それぞれの法律の要件に照らしまして規制をやってきておるところでございます。  また、民間能力が充実してまいっておりますので、そういった面から、例えば、さきの国会では若干の法律につきまして自己認証制度というようなことを採用いたしまして、技術の向上等々による安全性の向上、このために規制が軽減できる、こういう事態には十分対応しているつもりでございます。
  14. 木本平八郎

    木本平八郎君 この問題もやはりもう少し日本国民というのを信じていただいて、国民の良識と判断を少し尊重していただきたいと思うわけです。何でもかんでも国民はわからないから、全部お上が準備して、料理してやって、そこへ出してやらなきゃ飯食えないというんじゃなくて、やはり国民自身がメニューを選択するという、材料を選択するというふうな方向に多少行政のあり方を持っていっていただかないと、このままで行くとコストが高くなってしまうというふうに考えるわけです。  次に、一つお聞きしたいのは、米国ではこういう規制でなくて、プロダクトリアビリティーですか、生産物責任というのですか、そういうことで賄っていますね。その辺はどういうふうに受けとめられておりますか。
  15. 松尾邦彦

    政府委員松尾邦彦君) 先生指摘のように、アメリカにおきましては、製造物責任の制度が導入されておりまして、我が国のような過失責任主義をとります法制と違っているわけでございます。  ただ、アメリカにおきますこの製造物責任の考え方というのは、ある意味では大変企業に対しては厳しい面があるわけでございます。懲罰的な賠償を含めて巨額の損害賠償を命じる判決が最近激増しております。そういう意味で、損害保険会社がもうどんな損害賠償を取られるかわからないものにまで保険を付するわけにいかないというわけで、保険の引き受けを拒否するような弊害も一部には見られているようでございます。そういう意味で、製造物責任の考え方は、一つ考え方ではございますけれども、これが行き過ぎますと、またかえって企業の経営の安定性が損なわれてしまうという面もあるわけでございます。  したがいまして、我が国でこの問題を考える際には、消費者保護の見地から重要な問題ではございますけれども、過失責任主義をとる民法の基本にかかわる問題でございますから、関係省庁とよくこれ相談をしながら慎重に検討すべき問題だと思いますけれども、実は私ども立場からこの製品の安全を考える場合には、昨年も自己認証制度を導入するに当たりまして産業構造審議会で種々御議論をいただきました。  安全法を施行されて以来十年以上の経験を踏まえて考えてみますと、国も国なりの責任をとるべきでございますけれども、また企業も企業なりの責任をとるべきである、御指摘になりましたように、消費者もそれなりに安全マインドをみずから向上していかなければならない。国と企業と消費者、それぞれが役割分担を適正に保っていくことによりまして安全の確保を図ることが大事なことだと、その流れに沿いまして、一つは自己認証制度を導入いたしました。それからもう一つ、今回は安全協会の、いわゆる民営化ということについて御審議を賜っているというような次第でございます。
  16. 木本平八郎

    木本平八郎君 今のプロダクトリアビリティーは、私も商社におりましてもう嫌というほどひどい目に遭っているわけです、アメリカで。ちょっと何かあるとすぐ裁判所に訴えられる、そして、莫大な損害賠償をやられる、そのためには保険を掛けておかなければいかぬ。保険を掛けると保険料が高くてもう困るというふうなことで、とんでもない制度だなという感覚で受けとめてきたわけです。  ところが、私そういう点から考えまして、日本の官庁統制というのが、ある意味では国民経済全体として非常にコストを下げた面もあるんじゃな いかと思うんです、さっきの話とちょっと違いますけれども。これをアメリカ式にやっておけば、国民経済としては物すごいコスト高になる。そして、結果的にはそれは全部消費者へ返ってくるわけですから。その点を、そのプロダクトリアビリティーのかわりに日本政府が一生懸命にいろいろな気配りをして、指標をつくったり指導をしたりしてやってきた。だから結果的には、あるいは比較してみたら日本のやり方の方が非常にコストが安かったと言えるかもしれないと思うんです。  ただ、私は先ほどからも言っておりますように、もう少し国民が、甘えて何でもかんでもお上に頼るとかということじゃなくて、やっぱり自分たちの責任でやる時代にもうなってきているんじゃないかという感じがするわけですね。ちょっとこれは話がそれますけれども、例えば日航機事故、日航の方には気の毒だけれども日航機事故は、私は一〇〇%日航が悪いと、したがって、運輸省は悪くないとは言えないんですが、私はもう運輸省の責任というのは余りないと思うんですね。これはあくまで日航の社長以下、日航の責任であるというふうにすべきだと。それで、原子力発電所も、万一事故を起こしますと、その電力会社が全面的に悪いというふうにしなければいかぬじゃないかという気がするわけです。  それを政府が悪い、悪いということになりますと、政府としては自分がどうしても安全サイドをとらざるを得ない。それで、しかも自分の手で抑えることができないから、やっぱり規制を強くして、できるだけもう念には念を入れてということにならざるを得ないわけですね。したがって、やはり当事者責任だと。だから、例えばファンヒーターならファンヒーターが事故を起こしたら、その業者がまず第一に絶対的に悪いということにして、それを検定した方がどうだったか、そのJISの規格がどうとか、そういうふうな方向国民サイドを持っていかないようにしないと、やはりこれからコスト高になるんじゃないかという気がするわけですね。  したがって、こういうふうに私はどんどん規制を緩和して、やはりメーカーなり消費者なりの自主責任というものを強化していくということはもう大賛成ですし、同じやるにしても、民営でやった方がよっぽど効率がいいわけです。どうしても公営でやりますと、私の経験でも非常に効率が悪いということがありますんで、こういうことで今後ともどんどん緩和して、こういう方向に持っていっていただくということは、もう非常に私はいいと思うんですが、そういう点で、あと時間もありませんので、最後に大臣の総合的な御所見を承って私の質問を終わります。
  17. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 安全につきましては、何から何まで役所の監督ということも大事でしょうが、やはり自分たち自身、電力会社なら電力会社自身が、事故を起こせばもう会社はつぶれるようなものでありますから、そういうことの趣旨をやっぱり末端の従事者にまで徹底をさせるということが非常に大切であると考えます。
  18. 木本平八郎

    木本平八郎君 では、終わります。
  19. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最初に、円高差益還元の問題についてお尋ねする予定でありましたが、十一時から電力会社その他、通産省の方に申請に来るやに聞いておりますから、十一時十五分過ぎまして正式に通産省受け取りましてから、この問題については後ほど、途中からでありますが、お尋ねをいたしたいと思います。  非常に分厚い消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案関係資料集、これをいただきまして、少し目を通したんですが、どうも最初に矛盾を感じるのは、本法案の中には、消費生活用製品に関するものがあったり、あるいは全く関係のない電源開発促進法や中小企業投資育成株式会社法等の九つの法案を一括して提案をしております。非常にわかりにくくてしようがないんですが、後日これを、何か法律を探るときに、これは関係のない法律の中にぼっと九つ出てきますから、これも大変国民は困るだろうと思うんですが、一体どうしてそのようになったのか、その利点は一体何なのか、最初にお尋ねいたします。
  20. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 今回この法律案におきましては、先生指摘のように、九本の法律を一括して改正するということでお願いいたしているわけでございます。  その理由でございますが、第一に、いずれの法案も臨時行政調査会の答申に基づきます行政改革の具体化を図るためのものでございまして、同じ趣旨、目的のための改正ということでございます。さらに第二に、各法律の改正内容でございますが、あるいは特殊法人等の民間法人化あるいは活性化あるいはまた国家試験事務の民間委譲等、それぞれの法律の改正内容も類似性、関連性があるということでございます。  さらに先生、どういう利点があるのかという御質問でございますが、私どもといたしましては、通産省が行おうといたしております行政改革につきまして、一括して具体化することによりましてこれを統一的に推進することができる、あるいはまた改正内容が総合的に把握できるということのため、関係者を含めまして国民理解を深めていただくことが可能になるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。  こういった意味で、一括してあえて提案さしていただいた次第でございます。
  21. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 行政改革をなし遂げるためにこういうことをやったようですが、行政改革そのものに対する物の考え方の、我々とすれば意見があるわけでありますが、それはまた後ほど私の方も主張してみたいと思いますが、今後行政改革は、一応行革審等がどうなるかまだわかりません。先般の大臣答弁によりましても、なかなかニュアンスがいろいろ出てきておりますが、これは今後ともこういうような形でできるだけ法律をまとめて、いろいろなやつをまぜてまとめてどんどんやっていくという方向は変わりないですか。
  22. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) これは目的、それから中身について似たようなものにつきましては、法案を別々に全部出すというのは、審議をする側からすればそれぞれの法案全体について審議がしやすいということで、別に出してくださいという御意見はわかりますが、私どもといたしましては、同じようなものについては、やはりいろんな面で行革の精神にのっとり、できるだけ一括してなるべく出さしていただけたら大変ありがたいというような気持ちでおります。
  23. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 電源開発、電発の関係法律なんかと消費生活用製品の安全にかかわる問題と、まるっきり違ったものを一緒に出して一緒に審議するというのはなかなか、中身も変わっておりますから非常に困るんですが、大臣、今言われました内容もわからないことはないんですが、行革審がどう言うたがら、あるいは行革方針がどうだから、だからそれに沿ってしゃにむに油と水みたいなものを一緒にまぜて、そして提案するというような形については、私は意見として、これからはぜひ反省をしていただきたいと思います。  次に、製品安全協会について新しく指定機関をつくる必要性がどうして生じたのか、また、政府出資を回収して、この本法案に盛られているようなことを実施すれば、そのことによってどのようになるのか、これは国民生活にとってどういうような好影響を与えるのか、どうもぴんとこないんですが、これも最初に簡単にお答えをお願いします。
  24. 松尾邦彦

    政府委員松尾邦彦君) 御指摘の製品安全法関係、製品安全協会につきましては、今おっしゃいましたように、指定検定機関制度を導入いたしますほか、政府出資の廃止など一連の措置を講じまして、これによりまして安全協会の経営をできるだけ活性化して、事業運営も効率化していきたいというのが私ども考え方でございます。  まず、その指定検定機関を設けるということにつきましては、御案内のように、現在これまで国及び製品安全協会が、この種の第一種特定製品の検定ですとか型式承認に係る試験は独占的に実施してまいっておるわけですけれども、このようにいわゆる指定検定機関制度を導入いたしまして、 こうした事務を一定の能力や公正、中立性を持っております民法法人にも行わせる道を開くことにいたしますと、これによりまして検査・検定等の行政事務に関しまして民間能力の一層の活用を図ることができるようになるわけでございますし、さらには、こういった事務につきまして新規参入を可能とする道を開きますということになりますと、安全協会自身も経営意識を高めて、会社でいえばいわゆる企業マインドが高まり、企業合理化の意識が高まってまいるということで、業務遂行の活性化、効率化を図るということの基盤ができてまいるというふうに考えるわけでございます。  また、政府出資の廃止等の点につきましては、確かに財政的にこれまで政府からの出資及び補助を仰いでおったわけでございますけれども、このような政府の出資及び補助を廃止することによりまして、協会の政府資金への依存体質というものを配慮いたしまして、できるだけ協会はみずからの努力によりまして自立的、積極的な経営を行っていくような、そういう環境が整備されるということになるわけでございます。それを通じまして協会の仕事も大変活発に行われ、また事業の運営も効率的に行われていく、そういうような基盤が整備されていくものと考えております。
  25. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 審議官、私が何を考えているかというのは恐らくわかっているはずですが、全く反対というか、私の意と反するような答弁が次々に出てまいりました。  確かに民間能力の一層の活用とか、新規参入業者が入れば活性化する、政府依存体質からの脱却、こういうことを述べられましたが、通産省の皆さんは、これは審議官は今担当になったかもわかりませんが、ずっとこれを担当してきたわけです。担当してきて、結果が、私はどこがどう悪いのか、活性化していないのか、あるいは何かマンネリに陥っているのか、よう中身がわかりません。しかし、仮に言われるようなことがあったとすれば、これまで長い間みずからあなた方が指導したその指導の目が行き届かない。どこかが活性化していないというならば、それは日々刻々と注意をし、それを活性化するのがあなたたちの仕事でありますが、それを行革審か何かから言われてしゃあしゃあと今のような答弁をするというのは、どうも納得がいかないんです。  実際にこの協会が、どこが活性化をしてなくて、そして新規業者を入れれば、そんなに安全協会の仕事はたくさんあるわけじゃないんですが、入れたら両方ともそれでやっていけるような中身になっているのかどうなのか、ちょっとその辺についてお尋ねします。
  26. 松尾邦彦

    政府委員松尾邦彦君) 先生御案内のように、製品安全協会は四十八年に設立をされまして、これまで十数年の業務の実績があるわけでございます。  昨年の産業構造審議会で種々御議論いただいたわけでございますけれども、十数年のこの製品安全法の運用の実績を考えてみますと、やはり企業の方にも安全マインドがある程度高まってまいりました。消費者の方にもある程度安全問題に対する理解も高まってまいりました。しかし、まだまだ、国民の生命、身体にかかわる安全行政ということについては、国も引き続き大きな役割を果たさなければなりませんし、安全協会も引き続きこの安全行政の中核的な機関として存在していくことが必要だということでございます。  いずれにいたしましても、製品安全法施行後十数年を経まして、それなりに安全協会も業務の実績を積み重ねて安定してまいってきた。そして先ほど申し上げたように、国、民間の産業界、そして消費者それぞれの間に安全行政に関する、あるいは安全マインドに関する一つ考え方が定着しつつある。このような大きな流れの中で、これからは安全協会はどのような役割を果たしていくべきなんだろうかということを考えましたときに、やはり先ほど申し上げましたように、ずっと業務の独占をみずから行いまして、そして国の出資あるいは国の補助に依存して行っていくことが引き続き必要なことなんだろうかどうだろうか。  むしろある程度指定検定機関制度という道を開きまして、安全協会がこれまで積み上げてきました実績を踏まえて、さらに一層効率的な事業運営に努めれば、引き続き安全協会は安全行政の中核的な組織たり得るわけでございますけれども、もし従来の実績の上に万々一にも効率化への努力を怠るようなことがあれば、新しい競争相手と申しますか、機関が出てくるということになってはこれは大変なことになるという意識で、いつも心を引き締めて安全行政の効率化に取り組んでもらいたい、そういう考え方が一方にあるわけでございます。そしてそのように指定制度を導入したり、あるいは政府出資等の廃止を行いましても、安全行政の基本的な枠組みは引き続き変えずに、消費者の安全がいささかも害されることがないように、大枠はきちっと国において守っていくという仕組みは残しているわけでございます。  そして政府の出資や補助が廃止されたこととの関連におきまして、これまで協会に対していろいろな財務、会計に関する規制が厳しく行われておりました。資金計画の認可制とか財務諸表の承認制とか借入金の認可制とか、その他もろもろの財務、会計に関する規制も厳しく行われておりましたし、役員の選任についても厳しい規制が行われておりました。その他いろいろ安全協会みずからが効率化行政に取り組みたくても、どうしても国の規制を受けている以上、そちらの方にかなりの精力を割がなければならない、こういうことでは本来果たすべき事業の活性化、効率化への精力をそがれてしまうというようなことがあってはならない、かような考え方のもとにこのたび民間法人化の考え方を進めさせていただいた次第でございます。
  27. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 長々答弁をいただきましてありがとうございました。  ただ、安全協会が現状やってきたことが、あなた今言われますようにどうもだめだと、だからこうするんだということかどうなのか、そこが私はポイントだと。何でも言われたから法律をつくるという考え方、それは私は、悪いならどこがどう悪いからここをこうするというような問題の提起じゃないと、これから困ると思うんです。  次に移ります。また、これも同じような問題ですが、高圧ガス保安協会の問題です。  この協会も、いろいろ改正点が出ておりますが、なぜこの時点で改正をしなければならないのか、これが第一点です。今、その必要性がどうしてあるのかわかりません。  それから、今回の法改正案の中で、高圧ガス保安協会の独占性を排除するために指定講習機関、指定試験機関、指定容器検査機関、指定特定設備検査機関などを指定することになっておりますが、それぞれ新しい機関をつくるといったって、できるようなめどがあるのかどうなのか。そういう仕事量があるのか。高圧ガス保安協会は、役員数七名、職員数百三十四名、ここでぎりぎりやっているのを、これまたつくれば、これは競争が激しくなって、それは一時的にはいいかもしれないけれども、その後これはだれかが首を切られてどこかに仕事を分け合う、こういうことになりますと、これは一体それが本当に言われているような役に立つのかどうなのか、それが第二点。  それから一億円の出資を全額返済することについて、その必要性が今あるのかどうなのか、これが第三点であります。なぜならば、私はやっぱり今の高圧ガス協会は、そう僕らどうもあれがどうにもならぬという、私も民間の出身ですが、なかなかそんなことも聞いておりませんし、順調に目的を果たしているのではないか、こう思っております。高圧ガス、LPガスの関係事故件数を見ましても、これは国会の参議院の調査室に作成をしていただきました資料の中に、高圧ガス事故発生状況とそれからLPガス事故発生状況というのが載っておりますが、これも皆さん方の目から見ますと、これは大した数字じゃないと、こう言うかもしれないけれども、我々の目からしますとこれまた大変な大きな数字だと、こう思っておるんです。  そういう状況の中で、政府は変なところに変なお金使うのですが、この一億円を引き揚げて、まだまだ国としてもやらなきゃならないようなそういう要請があるにもかかわらず、これも行革審から言われたからどうもこれもやっちまう。何かもう右向けと言えば右向くんですかね、どうもそんな気がしてなりませんが、今幾つかの点につきましてまとめて質問しましたので、短く今度は答弁をお願いします。
  28. 黒田明雄

    政府委員(黒田明雄君) まず、高圧ガス保安協会を現時点で民間法人化する必要性につきましては、先ほど製品安全協会について松尾審議官が御答弁申し上げたのと趣旨はほぼ同様でございます。繰り返しは避けたいと思いますが、基本的には行政改革の精神、もう少し具体的に言えば特殊法人を自立化させる、そして独占性を排除すること等によって業務の効率化を図るというのが趣旨でございます。  そうではございますが、高圧ガス保安協会に即して申し上げますと、高圧ガス保安協会自体は、昭和三十八年に設立された法人でございますが、その趣旨は、このころ石油化学コンビナート等に見られますように高圧ガスの製造及び利用に関する分野が大変に広がりまして、こういった広い分野で、かつ各種各様の技術が変化していく、そういう状況のもとにおきまして、国だけが保安を的確に施行するというには無理がある。むしろ自主保安体制の整備が重要であるということで、その中核体として設立されたわけでございます。それで、この状況は現在も進行しているわけでございますけれども、民間法人化することによりまして、自主保安体制の中核体たる性格がより鮮明に出てくるのではないかという点に大きな期待を持っているわけでございまして、特に私ども重視いたしたいと思いますのは、官依存ではなくて、民間法人であるという意識改革が相当に影響を持つものではないかというふうに考えております。保  具体的に私どもが特に期待いたします点は、技術基準の整備の点につきまして、産業界で進展しております技術革新の実態でございますとか、内外の保安に関する情報をよく把握して、学識経験者の意見も含め集約をいたしまして、新しい適正な技術基準体系を整備していくという意味合いで、意識変革が大きな効果を及ぼすのではないかというふうに期待いたしております。  二番目の御質問でございますが、この指定検査機関につきましては、各様のものの道を開いておりますけれども、高圧ガスの関連事業者は非常に幅広いわけでございますし、用途も急拡大いたしておりまして、今後検査等のニーズの拡大の可能性もあるわけでございますが、現段階におきまして、どのような機関が指定の申請を具体的に行ってくるかという点については、まだ何とも申し上げられない状況にございます。これは仕事量の点について御指摘がございましたが、梶原委員指摘のとおり、現段階ではこの保安協会が行っております仕事量はそれほど膨大なものではないわけでございますが、将来の問題としてその事業量の拡大というのを背景に可能性はあるというのが実情ではないかと考えております。  それから一億円の出資の返還でございますが、第一問についてお答え申し上げたのとほぼ同じことでございます。国からの出資一億円を引き揚げるというのは、自立できる特殊法人は民間法人化するという行革の方針に私どもとしてもアプライしようというわけでございます。幸いにして高圧ガス保安協会は、一億円の出資を返還しても経理的にはそれほどの影響はないということと、特に国に出資を返還することによりまして、資金計画、財務諸表等の経理面におきまして大幅な規制緩和が可能になるわけでございまして、それによる活性化が期待できるという点が第一点、第二点は、何と申しましても、民間法人化され、国の出資がないということで、緊張感のある経営を通じて業務の効率化が期待されるという点でございます。  以上でございます。
  29. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 高圧ガス保安協会の役員名簿を見ますと、会長以下七人、監事を入れまして七名おるわけですが、通産省OBの皆さんが三人、会長以下ですね、会長、理事、理事、こうなっておるんですよ。一方、高圧ガスの保安協会の収入の内訳をいただきましたが、これは年間二十三億ですか、これで先ほど言った人が食っているわけですね。一つは、保安協会に皆さんの先輩がたくさん行っていて一生懸命やっているのに、どうも仕事が独占化しておってなまぬるいと、何か言われるような問題があるとすれば、やっぱりおのずから恥じなければいけないんじゃないか。私はそんなに今までやっていることが、行革審から言われるようにそう悪いことはやっていない、これは確信があるんですよ。余りそこのところを私は変にこじつけない方がいいと思う。  それから二十三億の売り上げの中で、これを今黒田局長はいろいろ伸ぶだろうと、指定機関いっぱいつくって伸ぶだろうと言いおるけれども、これが伸ぶったってそれは年間一〇%、二〇%どんどんどんどん伸ぶったって、これなかなか問題があるかもしれない。少しは伸ぶでしょう、恐らく。これを指定機関いっぱいつくってまた競争さして、国鉄じゃないですが、また人員整理とかなんか、今まで一生懸命苦労した百三十四名の雇用は、理事はいいですよ、プロパーの人たちの雇用問題というのはこれは大問題ですよ。何でもかんでもそうして、やっぱり人が言うから言うというやり方については、私はどうも納得ができません。答弁はまた同じようなことを答弁されると思いますから、これは本当に天の声と思って聞いてください。  次に関連して、今回の改正で、高圧ガス保安協会について新たな事業を行い得るような事業範囲の見直しを行うとしておりますが、ここも今関連ですが、ちょっとなかなかわかりにくい。この点についていかがでしょうか。
  30. 黒田明雄

    政府委員(黒田明雄君) 民間法人化するに当たりまして、特殊法人としての独占性を保持することは必要なくなりましたので、新しい業務の道を開くという趣旨でございますが、具体的に私ども期待いたしております点は、海外等からの委託によりまして日本から輸出されるプラント類の安全性のチェックをするという仕事があろうかと思います。もう一つは、発展途上国から我が国の高圧ガス保安に関する技術的なノーハウ、こういったものについての技術協力を要請される機運にございまして、これにこたえていくことができるというふうに考えておりまして、さしあたりこの二つについて私どもは期待いたしておるところでございます。
  31. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それは言いますと、仕事分量でいきますと、いろいろ指定機関が入ってきまして競争になってくると、なかなか今まで働いておりました人たちの雇用問題にもかかわってきますが、これらを入れればまあまあやれるというぐらいの仕事量があるんでしょうか。
  32. 黒田明雄

    政府委員(黒田明雄君) 仕事量の具体的見積もりはないんでございますが、私ども指定機関の選定に当たりましては、それぞれ経理的な基礎などをチェックいたした上で指定をいたしたいというふうに考えておりますので、全体としては協会の存立の基礎を脅かすようなことにならないと思います。その上に新しい業務として今申し上げたようなことがあるわけでございますので、協会の経理的な問題については今後とも十分に配慮してまいりたいと考えます。
  33. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう円高問題の件は時間的にはいいですか、まだですか。受け取ったですか。
  34. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 結構です、どうぞ。
  35. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私はゆうべの朝日新聞を持っております。テレビでも放映をされましたが、電力料金あるいはガス料金の円高差益の還元の問題につきまして、もう正式に業界から通産省は受け取って、これを子として、そしてそういう方針で差益の還元をしていこうということのようでありますが、そういう方向なのかどうなのか。  それから、この差益の還元の中身は、新聞で書いているような内容であるかどうか、さらに還元 をする期間ですね、いつから還元を始めてどうするのか。それを入れて算出根拠なり、説明をお願いいたします。
  36. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) そのような方向です。委細は政府委員から答弁いたさせます。
  37. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 本日十一時に、認可申請書が正式に提出されたはずでございます。国会、会議中でございますから大臣こちらにおりますので、公益事業部長が代理で受け取っているはずでございます。  新聞記事を、私まだけさ読んでおりませんので、記事内容については存じませんが、差益額につきましては約一兆五千億、九電力会社合計と三大手ガス合計で約一兆五千億程度になろうかと考えられますので、その七割または八割、これは会社によって異なりますが、これを料金値下げという形で還元をすることになっておりますので、還元額は電力、ガス合計で一兆八百億強になろうかと思います。  具体的な時期でございますが、六月一日検針分から来年の三月末まで、差益の対象は、ことしの四月以降来年三月までの十二カ月間を十カ月に割って、十分の十二の還元を行うという考え方でございます。
  38. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 六月一日の検針分からというのはちょっとわかりにくいんですが、要するに、四月の電力料から、あるいはガス代金も還元するということですか。
  39. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 六月一日検針分からと申しますと、実態的には五月に使った電気料になると思います。  それから、四月分につきましては、もう検針が済んでおりますので、それに見合った分というのは、十二カ月分全体の中で十に割って、各月にばらまかれて値下げをされるということになろうかと思います。
  40. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そうすると、四月の分についても同じような率で、結局年間通せば還元される、こういうことですね。  昨年の九月二十二日から急激な円高が始まりましたが、それからことしの三月三十一日までの分については、これはもう還元をしない。なぜこういうことになったのか。これはそれなりに理由はあろうかと思いますが、この点についていま一度、これは通産大臣の方から、国民に対してこの点についてはひとつ明確な答弁をお願いいたします。
  41. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 実は、昨年の九月以降円高が進みました段階で、直ちに電気料金改定にさわってはどうかという御意見もございましたんですが、円高の動きというものは非常に急激かつ不安定でございましたので、一体どの時点で対応していいのかということがわからない状態でございました。電気料金というのは、できるだけ安定した方が望ましいというのが一般論で言えるかと思っております。  その後、今度は石油の値動きが急速に出てまいりまして、こうなりますと、為替だけで料金の改定をやるよりは、石油も含めて一括してやった方がいい、その方が国民にとって大きな還元が行えるという判断をいたしまして、石油の落ちつきを見ておりましたが、もうこれ以上待っておりますと余りにも長くなりますので、四月分以降の改定ということにしたわけでございます。したがいまして、三月までの差益につきましては、これは利益でございますので半分税金に取られますが、残りは別途積立金の形でガラス張りの経理をし、将来の電気料金の安定に役立てたいというふうに考えております。
  42. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そのように、なかなかこの辺は国民理解しにくいところなんですね、本当は。だから、よく考えておるということなら、そういうようにやっぱり国民に対しても理解をしていただくように、通産省としてもそれは責任があろうかと思いますから、ひとつそういう方向で頑張っていただきたいと思います。  それから、三つ聞きますが、一つは、九電力会社あるいはガスの大手三社、これは申請主義になって、申請をして、それを通産省が認めるという形になっておりますが、それ認める以上は、原価構成なりそういう状況の中身のチェックについては本当に十分なされたのかどうなのか、それが第一点。それから第二点は、これは地方都市に小さなガス会社がいっぱいあるんですね、これらについては一体どうするのか。それから三番目に、プロパンについてはどう考えているのか。この三つについてお尋ねします。
  43. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 通常、料金改定の方法は二万法ございまして、電力でまいりますと、電気事業法十九条に基づきます抜本的な料金改定と、今回のようにそれによりがたい暫定的な場合と、二万法あるわけですが、第一の方法の場合には、非常に長期の時間をかけまして、公聴会も開いて抜本的にやるわけですが、今回のように暫定的かつ緊急の場合には、できるだけ早く国民に還元をしたいということで、ずっと打ち合わせをしながら進めてまいりましたので、本日の申請が出次第、できるだけ早く認可をいたしたい、六月一日実施するためには、できるだけ早く認可をして、その準備に取りかかる必要があるというふうに考えております。したがいまして、チェックにつきましては、むしろ事前の打ち合わせ及び統一的な考え方に基づいて申請が行われておりますので、非常に早く認可ができるんではないかというふうに考えております。  それから、三社以外の地方都市ガスにつきましても、三社同様、できるだけ還元をするように指導をいたしております。ただ、地方都市ガス、たくさんございますので、その中には経理内容の悪いところもありますし、また三大ガスのように、原料を輸入するということによって直接円高差益あるいは原油値下がり益がないところもございます。例えば国内天然ガスを使っている場合にはそういうことはないわけでございまして、それぞれの事情によりますが、可能なところについてはできるだけ同様の措置をとるように指導をいたしております。  それから、プロパンガスにつきましても、これは全国に何万軒か、かなり多うございますが、できるだけ同様の措置をとるように通達をし、指導をいたしております。
  44. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 電力差益の算出根拠といたしまして、円は百七十八円ではじいておられます。これはいろいろ平均してそうなったんでしょうが、今、百六十円を切ろうかと、こういう時期で、これからの見通しはなかなか定かではありませんが、もしこれがもっと上がりまして百六十円台、百五十円台にずっとなった場合は一体どうするのか、その点をお聞きします。
  45. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 円とか石油の見通しはだれもわかりません、当たったことも余りないし。したがって、過去三カ月というやつの平均をとる。私は、円はもう少し強くなるであろう、石油ももう少し下がるんじゃないかというような思惑もあったものですから、国会などでも円高還元を早くやれ、早くやれと随分やかましく言われましたが、ぎりぎり待てるところまで待って、見通しを立てて、それでやろうということでやったわけです。もっと円が強くなるんなら、じゃまた還元を延ばすかという話になるわけですが、これはなくなってしまうわけじゃありませんので、とりあえず一兆円余の還元を実行すると。したがって年度内は改定する見込みはありません。しかし、来年以降またどういうようなことになるかわからぬことですから、円が安くなる、あるいは石油が反騰するというようなことも予想としては、特に円なんかは安くなってもらいたいという人は多いわけですからね。ですから、そこらのところはわかりませんので、一年過ぎた後でまたそのときの情勢を見て、電気料金をどう決めるかということはその次の課題である、そう考えております。
  46. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 改定する見込みないと言ったって、これ大幅に上がったら、これから百五十町台、百六十円台と定着すれば、百七十八円というのは、これで改定する必要ないと言ったってそういうわけにはいかないと思いますし、我々もそれは、これから見守り、強く要請をしていきたいと 思っております。  そこで、中小企業庁長官もお見えですが、通産大臣、今御承知のように、円高で非常に中小企業は困っております。これは輸出産業だけじゃないんです、困っているのは。私もずっと歩いて知っておりますが、全般に消費が落ち込んでおりますから困っておるんですよ。  それで、ちょっと検討していただきたいんですが、今非常に金利が下がっておりますが、前に高い、一割前後でほとんど金を借りているんですよね。歩積み両建てはできぬとか言っても、これは実質やっておりますから、実質金利は一割をほとんど超えているところが多いんではないでしょうか、中小企業では、実質金利ですよ。そういう点から見ますと、下がったところでの借りかえを進めるように通産省が音頭をとって、これは銀行はうんとは言わぬでしょうけれども、そうしてでもやらないと、中小企業に対する対策、打つ手があるとか、いろいろやったやったと言うけれども、中身がないのは私は一番よく知っております。まあ、それを言ったってしようがないんですが、実質的にこういうことは非常に中小企業としては助かることであります。  それから、特定中小企業者事業転換法がこの前、国会で審議され、決まりましたが、担保があればだれでも借りるんです。私は実地に話をあちこちで聞いておりますが、やはり担保力がないところというのは、幾ら制度があってもなかなか難しいんです、実際に、現行では。だから、もっとこの辺についての指導を、やはりケース・バイ・ケースで、地方自治体に対しても、あるいは金融機関に対してもやってもらうように、この点の指導を強めていただきたいと思います。  この問題については、また日を変えて、後日もう少し具体的に中小企業庁長官なりに、もうちょっと事実の状況を突き合わせて私は質問していきたいと思いますが、この二点だけちょっと……。
  47. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 確かに、金利が高かった時代に、中小企業者が一般市中金融機関あるいは政府関係金融機関から高い金利で借りていた金があるわけでございます。市中金融機関の場合には、契約の中身によっては変動金利ということで、全体の金利水準が下がればそのまま下がるというものもあるわけでございますが、政府関係金融機関の場合には、一応固定金利というようなことになっております。  ただ、中小企業者の場合、市中金融機関から借りておったものを借りかえて、安い金利で借りるというような業者も現実にはいるわけでございますし、それから、政府関係金融機関の場合にも、実際問題として、早目に期限前償還ということで、高い金利のお金を政府関係金融機関に返して、それで市中金融機関から安い金利で借りるというようなことをやっている中小企業者の人たちもいるわけでございます。そういうことでございますので、全体の金利水準が下がってくれば、当然やはり低い金利水準の恩恵を受ける形の人たちも非常に多くいるというのが実情ではないかと思います。  ただ、中小企業者の中には、そういうことも十分にできないという方がおりまして、そういう意味で大変だという声は聞きますので、私どももいろいろ検討はしておりますけれども、過去にそういう契約で借りたものをそう簡単に、金融機関の側としてみても、自分の高い金利、資金ソースで借りたものを貸しているわけでございますので、なかなかそこのところがそう簡単に解決できる問題ではないというのが現状でございます。  それから、二番目の担保力の問題でございますが、これは、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法に基づきまして、別枠の信用保証を受けることができるようになっておるわけでございますので、現在、普通の場合には一千万の無担保保証、七千万の担保による保証というのが信用保証協会によってなされておりますものが、そういう対象業種になりますと、同額のものがそれぞれ保証を受けることができるというようなことになっておりますので、信用保証協会がそのような保証業務をやれば、中小企業者の方々に相当お手伝いになるのではないかという感じがしております。  それで、円高が進みました段階で、昨年の暮れ以降、私どもは信用保証協会に対しまして、できる限り円高によって影響を受けた中小企業者に対しては、保証業務についても弾力的に対応するようにという通知を出しておりますので、今後もそのようなものが個別の信用保証協会によって十分守られ、弾力的な運用ができるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  48. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ぜひ、本当に打つ手をぴしゃっと打っていただきたいと思います。  ちょっと時間がなくなりまして、あと大きな問題が三つ残っておるんですが、急いでいきます。  日本電気計器検定所に関する件でありますが、ここも独立採算制でやっておりますし、検定所の業務は、機械化、自動化が進む中で、国内的にもあるいは国際的にも権威のある仕事がなされてきたと私は見ております。消費者からも不満は出ておりませんし、みんな安心してやっているわけでありますから、どうしてこういう時期に、今これを特殊法人から民間法人にやらなきゃならないのか。特に、役職員を入れますと約千百名近い人がここで働き、食っておるわけであります。これにまたいろいろ雇用問題が心配になってくるし、これは不安がつきまとうわけであります。うまくいっているものを、どうも何かどこかから言われたから変える。  かつて幕末、徳川時代に、日本には昔からつながったいい遺産やなんかあった、それも何もかんも日本のはもう売って、ヨーロッパのを買ったような形で、何か人から言われれば自分も何も見失って、何でもかんでもそうやっていくような姿勢があってならないんです。私はこの点については、雇用の安定、そしてそこで働いている人が将来希望が持てるように、例えばこの中でも、これから役員の問題にしても、プロパーで働いている人が企画立案、それから重要な方針の決定をする役員会、こういうところにやっぱりどんどん出ていって、将来不安がないようにやるべきだと考えております。  諸外国の例を見ましても、イギリスやあるいは西ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、これはもう国が国の機関としてやっているわけですからね。何もそれを、資本主義も、日本はよそが始まって百年かそこらたって始まったわけですからね、そう先走って何もかんもよそより先に進むわけないんで、見習う必要はないと思うんですが、この点についてきちっとした考えをお伺いし、今後日本電気計器検定所が本当にこれまでどおりにうまくやれるように、この運用方をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。できるだけ短く、要点をまとめてお願いします。
  49. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 日本電気計器検定所の今回の関連の法改正につきましては、先ほど来製品安全協会などのところで出ておりました議論と同様でございまして、先生指摘のように、特に業務に具体的な問題があるから改正をするということではございません。臨調答申に基づきまして、指摘されております特殊法人等の民営化、民間法人化の一環として実施するものでございます。  御指摘のとおり、計器は公共性のあるものでございます。また重要性という観点からも大切な業務でございます。この業務で十分やってきておるわけでございますが、同時に、臨調の答申に従いまして、民間能力の向上に伴う活力を養成し、それを活用するといいますか、そういう観点の要請が高まっておりまして、また規制の緩和によりまして検定所の自主性を確保する、同時に国の行政の事務の簡素化ということが要請されているわけでございます。このような状況の中で行われているものでございます。  役員の問題あるいは労働者の労働の条件の問題、そのようなことは、これからこの検定所が自主的に判断していくことになると思いますが、その業務につきましては、国としても十分指導してまいりたいと思っております。
  50. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 この問題で少し準備をしておった んですが、時間がありませんから、最後に私の方からこの問題についてはお願いをしたいと思います。  要するに、その中に問題があるからではなく、臨調答申に沿って活力をということでありますが、私は今の臨調答申そのものが、臨調行革の線で中曽根内閣がやってきた。やってきた結果、内需が落ち込んで外需依存の体質になっている。そしてこの急激な円高になっているわけです。だから何もかんも臨調、臨調でやってきたことが果たしてよかったのかどうなのか、これは問い直さなきゃならない時期に既に来ていると思うんです。だから、この点についてはしかと、もっと冷静に考えていただきまして、いいものはいいようにこれはやっていただきたいし、したがいまして、これまでうまくいっている日電検のこの問題につきましては、法律変わったからといって何かそんなに、そう動くような内容にはならぬと思うんですが、いいものをいじり回しておりますと、これは外科手術で、下手な医者がいじってかえって悪くするのと一緒ですから、いいものは余りいじらぬようにぜひお願いをしたいと思います。  次に、電源開発株式会社につきまして、これも議員立法で、かつて昭和二十七年に電源開発促進法がつくられまして電源開発株式会社が生まれたわけですが、これは非常に私はやっぱり時代の要請にこたえて数々の実績を挙げてこられたと思うんです。今日も海外の石炭を利用する発電、あるいは中小の水力、地熱等を利用した発電、非常によく私は頑張っていると思うんです。なぜ一体ここで、これをいまさらいじらなきゃならないのか、これもよくわからないところであります。それは、答弁は先ほどのようなことが返ってくると思いますが、これからぜひお願いをしたいのは、電発会社が今後この法案によって変わるとしても、今までのやっぱりよかった面は残していくということが第一点であります。  それから第二点は、先般、同僚議員からの質問が出ましたが、やはりプロパーも育ってきておりますから、今後株を七二・三六から六七%に何年かでするというわけ、そしてその株の引き取り先は九電力に買ってもらうということですから、これはただ政府の支配力が九電力に肩がわりするようなものでありまして、なかなかやっぱり内部というのはそう浮かばれないと思っております。したがいまして、プロパーの皆さんも積極的にやっぱり企画立案、そして重要な方針決定の場に積極的に出られるように、そういう指導を強めていただきたいと思います。  現在、総裁が東電から来ておりますが、副総裁は通産省OB、それから理事八名のうちに通産省OBが三名、こうおりますから、これは役員を少しふやして云々ということですが、役員をふやすことがいい、悪いということを議論しているのではなくて、もう少しやっぱり自立性を高めるというんなら、そのような形でやっていただきたいと思います。  そこで、株の関係でありますが、七二・三六を六七%にするということですが、株の譲渡の問題について同僚議員からも質問がありましたが、現在の発行株価は幾らか。そして、株の譲渡価格については一体どう考えておるのか。私の考えを申し上げ、質問をしたいと思うんですが、北海道電力は今千円ぐらいしております。東京電力は一株八千円ぐらい。この電発という会社の株をもし市場に放出したならば、私は随分高い値がつくと思う。政府もずうっと金を入れてきたわけですから、これは政府の金を引き揚げるとかなんとかじゃなくて、この株の場合は、前からずうっと投資が進んでいるわけですから、株というのは、やっぱり九電力にもし売却をするんなら、私はそれなりの理屈の通った価格で払い下げをしなければいけない、こう思うんです。この点いかがでしょうか。  そして、できれば私は、この従業員あたりにこのくらいの、五%そこらの株は持たせる。そして中で変なことが起こったら、売価を適当に調整したり、電力の売価をそこの中で調整したり何やらしたら、やっぱり内部から告発するぐらいのものが必要ではないか、こう思うんですが、この点についてお尋ねをいたします。
  51. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) まとめてお答え申し上げます。  まず一つは、電源開発は、従来から大規模水力開発とか石炭火力とか、いろいろな業務を通じまして、一般の電気事業会社が、地域性あるいは私企業性という限界がある、それを補完しながら、国のエネルギー政策を実施する国策会社としましてすぐれた実績を上げてきていると私どもは高く評価をいたしておりまして、今後ともエネルギー政策上のそういう役割を果たし続けていただきたいというふうに考えております。  それから、今回の改正も、そういういい面をより伸ばすために、会社を活性化するという観点からの改正でございますので、職員が喜んで働けるような環境づくりに私ども努力をし、経営者側も努力をしてくれるものと期待をいたしております。  それから、株の譲渡でございますが、これはどこに幾らで譲渡するかというのはまだ全く決まっておりません。今後、関係各省と御相談をしながら、国有財産中央審議会の審議を経て、売り先、売却方法、価格というようなものが決定されるというふうに理解いたしております。
  52. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 時間が来ましたが、もう一つだけ、中小企業投資育成株式会社についてお尋ねをします。  この会社を見てみますと、やっと最近になりまして順調に軌道に乗ってきたわけです。収益の内訳を見ますと、配当金よりむしろ持ち株会社の、その中小企業が上場した際に売った株で東京投資育成会社あるいは大阪も経営内容がよくなっておるわけであります。名古屋はそういう上場する企業が少ないものですから、少し差がついております。したがって、これは今のような状況の中で、政府資金というのは消却をされておりますが、一転してこういう厳しい状況の中で、場合によるとこれは投資育成会社が厳しい状況に追い込まれる場合だって想定されないわけではないわけです。実質にはもう消却されております政府資金は、これは法文上はそれを削除するということですが、そう急いでやらなくても、先々のことを考えたら私は急がぬでもいいんじゃないか、こういう気がしてなりません。それが第一点。  それから第二点は、私は大分県の出身ですが、この育成会社にお世話になっている中小企業というのはもう一つか二つか、何か私前に調べたんですが、ほとんどないんです。そんなものがあること自体、私どものところの中小企業の経営者の皆さんは知らぬのです。だから、こういう点についてはもっと積極的に、今のような時期ですから、これが本当に中小企業やあるいは国民のために役立つというなら、もう少し宣伝をして、こんなところに金も入れて、そして、少し中小企業のためになるのなら手を打っていただきたいんですが、何かこれは後ろに手を引くような印象を受けてならない、その点についてお伺いをします。
  53. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 投資育成会社に対します国からの出資につきましては、御指摘のとおり、当初から投資育成会社法の規定に基づきまして、消却することを実は予定していたものでございまして、昭和五十九年の七月に全額これを消却を終えているわけでございます。  今回の改正におきましては、全額もう消却をしてしまったという実態、それから、さらにこれも御指摘ございましたけれども、国からの出資は十億五千万ございましたが、地方公共団体あるいは民間からの出資金が相当あった、それから内部留保も大変増加してきたということで、経営基盤が非常に安定化してきている、こういう実態の上に乗って、五十八年の臨調答申の趣旨を踏まえまして、出資規定を削除したわけでございます。  今後の見通してございますけれども、出資規定は削除されましても、経営基盤が非常に充実してきている。さらに必要があれば中小企業金融公庫からの借り入れの道もあるということでございま して、今後さらに積極的な事業運営が期待されるところでございます。  それから次に、大分県への投資実績が非常にわずかであるというお話がございましたが、それはまさに御指摘のとおりでございまして、今まで約三社の投資がございます。三社ということでございますので比較的少ないわけでございますが、この点につきましては、従来から、毎年二、三万件につきましてダイレクトメールを投資育成会社からしたり、あるいは中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫に相談の窓口を設けたり、あるいは地方公共団体、商工会議所、商工会を通じまして説明会を開いたり、いろいろと、せっかくの制度でございますので、全国的にこれを利用していただけるようにということで、いろんな努力を払ってきたわけでございますが、御指摘のとおり、今後もさらに全国でこれを活用していただけるように、こうしたPR活動に努めてまいりたい、このように考えております。
  54. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 終わります。
  55. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  57. 市川正一

    ○市川正一君 私は、日本共産党を代表して、消費生活用品安全法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  反対理由の第一は、通産省関係のいわゆる行革一括法として提出された本法案の対象となっている九本の法律は、法の目的、内容、制定の経緯、その後の経過などにおいてそれぞれ異なるものであり、これを一括して提出することは、先ほど社会党理事も言及されたように、国会の審議権を形骸化し、議会制民主主義の根幹にもとるものであるからであります。  第二は、従来まで、国が責任を持って実施してきた資格試験を安易に民間機関に委譲して実施させることは、本来公正であるべき国家試験に不公正さや不統一性を持ち込むことになるとともに、受験料の値上がり等によって、受験者である国民負担が増大するおそれがあるからであります。  第三は、本法案によって民間法人化される製品安全協会、高圧ガス保安協会、日本電気計器検定所は、本委員会での質疑の中で各委員指摘されたように、それぞれ国民生活の安全や、取引の適正化を確保するために重要な役割を現に果たしている特殊法人であります。これが民間法人に移行されることによって、通産大臣の監督権限は大きく制約されたものとなり、また総務庁の行政監察や会計検査院の検査からも全く除外されることなどによって、国の監督権限が及ばず、国民的視点に立った民主的な規制が阻害されるおそれがあるからであります。  第四は、今述べた三特殊法人が実施してきた検査・検定業務に競合機関を認めるということは、検査・検定が恣意的になり、安全基準などがあいまいにされ、安全行政が後退し、国民生活への影響が懸念され、加えて、民間法人化による検査・検定料金の引き上げは、関連中小企業者への負担増に道を開くことになるからであります。  第五は、今回の改正で、活性化されると言われる電源開発株式会社は、運営の中で配当金を支払えるようにすることが意図されておりますが、九電力会社に電気の卸売をすることが電発の主な業務の一つになっていることを考えれば、これは必然的に九電力会社の電力コストを押し上げ、電気料金に総括原価方式をとっている現行電気料金制度のもと、家庭用の電気料金の値上げとなって国民生活を圧迫することを指摘しなければなりません。  以上五点の理由を述べ、私の反対討論を終わります。
  58. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  60. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  62. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、井上計君、浜本万三君、関口恵造君が委員辞任され、その補欠として、三治重信君、対馬孝且君岩本政光君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  63. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 特定商品等預託等取引契約に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、お手元に配付してあります名簿の参考人方々から御意見を聴取いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。  それぞれのお立場からの本案に対する忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方につきましては、三木参考人、国政参考人、小林参考人の順で、お一人から十分ずつ御意見をお述べいただき、その後委員質疑にお答えいただくという方法で進めてまいりたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は、委員長の許可を得ることになっておりますので、あらかじめ御了承願います。  それでは、まず三木参考人にお願い申し上げます。三木参考人
  64. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) ただいま御紹介いただきました弁護士の三木でございます。私は、日本弁護士連合会にあります消費者問題対策委員会の幹事を務めております。  本日、十分程度で意見を述べよという御連絡をいただきまして、十分に述べられるかどうかわかりませんので、私の意見を文書にまとめて持ってまいりました。お手元に事務局を通じて御配付いただけておるやに聞いておりますので、それをごらんいただければ幸いでございます。
  65. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) どうぞ座ったままで結構でございます。
  66. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は、全国各地で先物取引による一般市民の被害の救済活動に取り組んでおります先物取引被害全国研究会という弁護士グループの代表幹事をも務めております。さら滝、本案に関係あります豊田商事に対する破産申し立ての代理人を務めまして、その後、全国豊田商事被害者弁護団連絡会議のメンバーともなっております。このように私が先物取引や現物まがい商法の一般市民の被害救済に取り組んだ経験に基づきまして、法律実務家の視点から、この法案についての意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  本法案は、豊田商事などの現物まがい商法の再発防止を目的として立案され、提出されておりますが、豊田商事のような悪質な詐欺的商法をぜひとも根絶しなければならないという、政府及び議員各位、あるいはまた私たち法律実務家の共通した願い、立場及び私の被害救済実務の経験から見ますと、この法案の規制内容は極めて不完全であって、被害再発を防止できないばかりか、かえって現物まがい商法を預託取引の名のもとに法的に認めて、これを助長することにすらなりかねないという危惧を抱いております。  以下、問題点を申し上げさせていただきます。  第一番目は、商品等の政令指定制をとっておることでありまして、そのため、悪質業者に非指定商品などを用いた規制回避を許す危険があります。  このことは、単なる懸念ではございませんでして、海外先物取引被害の多発を背景といたしまして、昭和五十八年一月から海外先物取引規制法が施行されておりますが、同法が本法と同じように商品と市場の政令指定制をとっていることから、あえて指定外の商品や市場を舞台とする悪質業者が後を絶たず、その被害が続発し、通産省あるいは経済企画庁、国民生活センター等も頭を痛めておられるところであります。  同法は、当初香港市場を規制しておりましたが、その規制を回避して、英国や米国の市場へ舞台を移す業者がいて、被害が出たところから、六十年一月、約二年後に英米の幾つかの市場を規制対象として追加いたしました。しかし、さらにそれを逃れる業者がおりまして、本年五月一日より、さらに若干の英米の市場と商品を指定するに至っております。しかし、通貨や株式指数の先物取引は非指定のままであり、私も現実に、大阪におきまして、その被害を弁護士会の被害者救済センターなどで受け付けております。政令指定制では、どうしても被害が相当数出てから指定し、規制することになってしまうわけでありまして、後追いというのが残念ながら実情であります。そもそもこの種の商法に対して政令指定制をとらねばならない本質的な理由はないと考えます。  二番目に、顧客からの預かり金銭、商品を安全、確実に保管、運用することを監視し、これを担保、保証する措置が講じられていないという点であります。  現物まがい商法は、顧客から単に商品などを預かり受けるのではなく、その前提として、豊田商事の場合を例に挙げれば金地金でございましたが、そういう商品を売りつけ、そして直ちに預かると称して、金銭の支払いと引きかえに預かり証券を手渡すものであります。そこで、顧客の交付した金銭やそれらの商品などが安全、確実に保管され、運用され、返還されることが不可欠と考えます。しかし、本法案には何らその規定が置かれておりません。  私は、先ほど申し上げましたような被害救済の実務経験を持っておりますが、被害に遭って一たん金銭を支払った後に、この種悪質な業者から金銭を返還させるのはなかなか難しいのであります。私もみずから研修もし、それ相当の努力はするつもりではありますが、いかんせん資力がないそういう業者でありますので、裁判で勝訴したとしても、返還、賠償能力がなく、泣き寝入りにならざるを得ないという例があって、非常に残念に思うことがしばしばでございます。業者の財務状態の健全性と言いかえることもできますが、その確保が預託取引の場合に不可欠と考えます。第三番目は、本法案では、業者の事業所に業者及び財産の状況を記載した書類を備え置かせ、預託者に閲覧させることとし、またその要旨を申込書面に記載させることとしております。しかし、これまた私が多く接した主婦や老人の被害者の方々の実情を目に浮かべて考えますと、実際に勧誘を受けたり預託者となった一般市民の方が、みずから積極的に事業所へ出向いてそれらの書類を閲覧し、精査することは到底考えられないのです。しかも、その備え置き書類の真実性の確保措置は講じられておりません。その真偽を判断し、財務状況や信用力を正確に評価することが、一般の市民の人、特に主婦や老人の人たちにできるでしょうか。だからこそ、銀行法や信託業法のもとでは大蔵省の監査、監督が実施され、一般市民の預貯金などの保護が図られているのではないでしょうか。  四番目は、契約書面や申込書面での開示規制においても、預託取引の根幹をなす顧客からの預かり商品などの保管方法、運用方法が開示されていない点が問題であります。  この法律では、ディスクロージャー、開示の法思想をとりまして、その徹底を図るという立場から、幾つかの契約における重要事項が開示されることとなっておりますけれども、豊田商事の例などを考えますと、この程度ならば今までも、豊田商事も開示してきていないことはないわけであります。  被害防止の観点からいいますならば、財務状況の健全性の確保に加えて、書面で商品などの保管、運用方法が明記される必要があると考えます。  五点目は、違法不当な勧誘行為の禁止についても、規定自体が不明確であること、担保措置に欠けること、そしてそのために実効性が極めて疑問なことであります。  豊田商事等の現物まがい商法業者とそのセールスマンのさまざまな悪質勧誘行為の中には、この法案が規定しております。威迫する言動を交えてこの勧誘だけではございませんでした。長時間の居座り、深夜にわたる居座り、執拗な勧誘、洗濯、肩もみ、品さすりなどの過剰な親愛行為が、老人、主婦を中心とする一般市民の平穏な市民生活や冷静で合理的な判断を妨げる行為として、具体的に列挙して禁止される必要があると考えます。これらの悪質勧誘行為があったことは、本法案の前提となりました産業構造審議会の答申でも、問題があるとして触れられているところであります。  特に、過剰な親愛行為については、その卑劣さは許しがたいが、法的規制は難しいという意見を聞くことがございます。しかし、過剰な親愛行為は、それ自体を目的に行われているのではありません。営利の目的を持ち、しかもその目的を秘して、さらに常識的程度を超えて実行されているのであります。例えば、不当景品類及び不当表示防止法という法律がございますが、顧客を誘引するための手段として不当な景品類を提供することを禁止しております。これと同様に考えて、取引の目的外の物品・役務を提供して相手方の合理的判断を妨げる行為の禁止を規定することが十分考えられると思うわけであります。  そもそも、預託取引が訪問勧誘によって行われてよいものでしょうか。訪問勧誘は日常生活用品に限られるべきだと考えます。預託取引あるいはその前提としての商品等の売却の訪問勧誘や、また突然平穏な生活を破る電話勧誘は禁止さるべきだと考えます。  また、実効性を確保する点からは、罰則による制裁が必要であるとともに、禁止行為が行われた場合には、その結果締結された契約を無効としたり、無条件で取り消し得ることが必要です。また、そのような行為によって一般市民が被害をこうむった場合には、業者に対して損害賠償を求め得ることが明文化されなければなりません。本法案には、残念ながらこのような禁止行為違反に対する罰則や民事効果が規定されていないのであります。  確かに、こういう違法なことを行った場合には、業務停止命令の対象とされてはいますが、現在の消費者保護行政の人員等の体制の中で、十分機動的に行政権限が発動されていないことは、残念ながら海外先物取引規制法の不完全な施行状況が教えるところであります。通商産業省が海外先物取引規制法の施行直後に、全力を注がれまして調査をし、業務停止命令を発しました本社を大阪市に置く日本貴金属は、その後業態を変え、今なお海外の先物取引の営業を継続し、私のところへも被害者が訴えてきておりますし、社長はざっく ばらんな話として、もう今は詐欺みたいなことをやっておりますというふうなことを率直に言うような状況で、仕事を継続しておるわけであります。  禁止行為の実効性確保のためには、確かに行政方々努力していただくことは不可欠ではございますが、さらに行政を補完する意味でも、あるいは消費者がみずから立ち上がる意味でも、消費者みずからが行使し得る権利、すなわち違法な行為があった場合には取り消し得るとか、損害賠償を請求し得るということを明記することが何を差しおいても不可欠であり、実務に携わる弁護士としての願いであります。  六番目は、本法案では、クーリングオフ権や違約金支払いによる中途解約権が規定されてはおりますが、注意を要しますのは、それによって返還されるのが商品や施設利用権であって、それを購入するために支払った代金ではないという点であります。金地金ならともかく、その他の商品、例えば豊田ゴルフや鹿島商事が扱ったゴルフ会員権の場合、価値も換価性も乏しく、その返還を受けたとて被害回復にはなりません。  私は大阪の弁護士でございますので、大阪の例をちょっと出しますと、大阪府下南部及び和歌山、奈良地域に発生しました観音行商法では、三十万円で取引されておりますのが、実際はわずか三千円でございます。そこで、観音竹業者は、顧客の請求に対し、観音竹を預かったのだから観音竹を返すと言っております。この観音竹業者は、現在、和歌山地方裁判所で破産手続が進んでおるわけであります。業者が顧客に売却した商品等を預かった場合には、その売却代金の返還を義務づけることが必要だと考えます。  七点目は、中途解約の場合に、一〇%の違約金を控除されるのも問題であります。業者は顧客から預かり受けた金銭あるいは商品などを換価した上で運用しているわけであります。銀行の例を出しますと、定期預金はある一定期間拘束されるわけですが、その期間中に解約しても普通預金の利息がつきます。政府原案では一五%であったのが、衆議院で四党派の共同提案によって一〇%に減率されたわけでありますが、地方自治体で消費生活の相談を担当している方々の中にも高率過ぎるとの批判も強く、業者がこの資産を運用しているところに着目いたしますと、違約金の控除は不要と考えるわけであります。  こういうふうな問題点を含みます本法案の最も大きな問題点は、本法案のもとで豊田商事を初めとする現物まがい商法業者が、名実ともに営業することができるということであります。  形式的な問題は一たんおくとしましても、実質的にも禁止されないということであります。実質面において禁止となるような立法措置をとるのであれば、既に申し上げましたように、預かり金銭や資産の保全措置の確保、預かり資産の運用面を含む業務全体の開示の徹底、違法行為があった場合の民事、刑事両面での効果の徹底が不可欠であります。それに加えての行政の機動的対応によってこそ実質的禁止が図り得るのです。  少し長くなりまして恐縮でございましたが、私は先物取引、現物まがい商法の被害救済に取り組んだ経験から、まことに残念なことに、本法案では現物まがい商法とその被害の再発を防止できないと断言せざるを得ないのであります。  以上です。ありがとうございました。
  67. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。  次に、国政参考人にお願いいたします。
  68. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 読売新聞の国政でございます。  この豊田商事由法の問題点と、それから一般的な現物まがい商法というのは、私はちょっと違ったところがあるんではないかというふうに考えます。  豊田商事の場合は、まさにこれは詐欺だと思うのですね。詐欺というのは必ず後で罰せられることになっておりますが、しかし、これは後でなければ詐欺であったかどうかわからないという基本的な問題がございます。それから、詐欺の場合はその範囲の立証をしなきゃいけないという問題がございます。そういう意味で、この場合は会長が亡くなられたということで詐欺の立証がなかなか難しいといったようなところから、新規立法が必要だという意見が強まったと思われます。  このケースの場合には、やはり詐欺罪だけでは不十分であるという現在の法制の不十分さ、それから行政対応が不十分であったと、この二つの不十分さが指摘されるんではないかと思います。その後者の行政の不十分さということについては、既にかなり被害が出ているにもかかわらず、世間に周知徹底する努力が必ずしも十分でなかった、しかもその時期がかなり遅かったということが指摘されると思います。しかしこれも新しい経験だったという点がありますので、一〇〇%非難するわけにはいきませんが、しかしそれを勘案してもなおかつ行政対応は遅過ぎたんではないか、そういうふうに考えます。  次に、その法規制についての考え方ですが、それでは一体こういったような商法をどう規制すればいいのか。まずその場合に、産業政策の考え方というのもある程度考慮に入れるべきであろうと思います。その場合に、新しい産業あるいは新しい業種として育成すべきものと、それから、そういうものは育成する必要はなくて、むしろ悪いものだから全面禁止すべきものである、そういうものと、それから、あるいはその中間のものと、大体こういう三つのものに分けられるんではないかと思います。  もしこれが育成すべきものに属するものであるならば、行政及び法制は、これは完全なものをつくって、悪いことをしないように、あるいはお客の権利、財産が保護されるようなシステムをつくるべきであろうと思います。一方、悪いもの、こういったものはいいものも悪いものもすべて業種としてあるいは商法として否定すべきものである、そういうものについては、これは全面禁止すべきだと考えます。  しかし、ではこの豊田商法の事件がどこに属するかということについては、いわゆる積極的に育成すべきものというところには入らないと思います。では全面禁止すべきものかということになると、やや疑問が残ります。というのは、豊田商事は、あれは詐欺商法ですから、これは禁止すべきですが、現物まがい商法というものが必ずしも一○〇%全部悪いものかということについて、果たして国民的コンセンサスが得られるものかどうかについてやや疑問が残るからです。もし国民的なコンセンサスとして、現物まがい商法すべてを否定すべきであるというコンセンサスが得られるならば、これを全面禁止すべきということについては私もやぶさかではありません。しかし、今のところまだそういう自信はございません。とするならば、これは恐らく私の考えとしては中間的なものに入るのではないか、こういうふうに考えます。  そうしますと、次に、中間的なものに入る場合は、ビジネスチャンスと、それからその悪との二つの間の接点をどうとるかという問題になるんだと思います。そうしてもう一つ、その場合の行政コストとの関係という問題になると思います。  そこで、ビジネスチャンスをできるだけ確保するという意味からいけば、規制はできるだけ少ない方がいい。悪いものは悪いけれども、いいものの将来のチャンスの芽を摘むということは慎むべきであろうと思います。それでは、再発防止をどうすればいいかということになるわけですが、ここで実は行政コストとの関係が出てまいります。先ほども言いましたように、もし育成すべきものであるならば、例えば今現在ある銀行あるいは証券会社のように厳重な法律をつくって、厳重な行政組織をつくるべきだと思います。しかし、そうすると、例えば銀行については大蔵省に銀行局、さらに証券については証券局というそれぞれ一つずつ局を持っております。それから日銀という大きな組織もございます。こういったような組織をつくらないと恐らく無理であろうと思われます。 そのコスト関係なくすべて完全に規制するんである、あるいは絶対に安全なようにやるんであるということになれば、その行政コストは大変大きなものになると思われます。  そこで、この法案を見ますと、許認可制をとらずに行為規制という考え方をとっておりますが、これは現段階ではやむを得ないと考えます。それから商品指定という方法をとっておりますが、これも同様だと思います。許可制にした場合には、むしろこれは通産省許可といったような形で悪用される可能性も決してないとは言えない、むしろ大きいんではないかと考えます。したがって、この法案の内容はディスクロージャー中心になっております。そのディスクロージャーは、私はさらに進めていくべきであろうと思います。極端に言えば、これは元本の保証はございませんといったような注意書きまで書く方がいいと思います。  それから、クーリングオフの期間十四日を設けたのは結構でございますし、十四日以降でも客が自由に解約できる権利、これには違約金を払うという条件はございますが、自由な解約権を与えたというのは大変大きな出来事であろうと思います。しかし、今後の問題点もまだ残っております。それは商品指定という制度をとったために、新しく出てきた商品あるいは商法に対して追いついていかないということが出てきます。したがって、追加指定については、機敏にこれを行う必要があるだろうと思われます。  それから、疑惑の企業が出てきた場合に、一番いいのは事前に消費者に、あれは危ない企業ですからそれに近づかない方がいいですよと言うのが、これは一番国民のためになるわけです。ところがこれをどの段階で、だれが、どういう言い方をするかというのは非常に難しいから、だからこそ、これまでこれがおくれてきていたんだと思いますが、その疑惑の企業の公表、国民に対する周知徹底をどの段階で、どういう形で、どの手段で行うかという手法の開発をぜひやらなければいけないと思います。その場合に、消費者団体の果たす役割というのも重要だと思われます。  今回の事件を見てみますと、消費者団体に対して苦情あるいは相談がかなり早い段階から持ち込まれております。それだけの知識がありながら、受けた方もいろんな配慮からなかなかそれを公にできない。個人的な相談に対しては答えられるけれども、公の出版物、機関誌のようなものでやるとすると、当の業者から苦情が来るおそれがある、場合によっては訴訟になる可能性もあるという点からだと思われますが、公表には非常に慎重であったということは否定できないと思います。これをどういうふうに解決するかが大きな問題だと思われます。  それから、一般的な消費者教育というものが必要だと思われます。これを投資あるいは利殖として考えるならば、ハイリスク・ハイリターンは、これは大原則。豊田商事のように金を預かった上に、一〇%から一五%という利息を出せるとは、経済常識から考えるととても考えられない。それと、やっている企業がこれまでの実績がない、それから公的な許認可あるいは制度そういったものにのっとっていない。その二つの点からだけ見ても、これはかなり危ない企業であったことがわからなければいけないはずだと思います。しかし、それがわからないところが実は現実でございまして、わからない人がいけないというつもりは毛頭ございませんけれども、高齢の方が被害者に多かったというのも、実は高齢の方が、これまで利殖と言えば銀行の預金か郵便局の貯金しかなかった、そういう時代に長く育ってこられた、それが今現在、金融商品多種多様化しております。  実は、日本の金融行政かなり規制色が強く、統制色が強かったために、非常に限られた投資手段しかなかった。それがまた国民投資知識を乏しくし、こうした詐欺的商法にひっかかる一つの原因になったと思われます。そういう意味でも、余り統制を強くしてはいけないという先ほどの私の議論に出てくるわけですが、そうした意味の一般的な消費者教育というものを徹底させる必要があるだろうと思われます。それから、高齢の方の被害が多かったということが問題になっておりますが、これはむしろ社会問題としても考える余地が大きいのではないかと、そういうふうに考えます。  時間がありませんのでここまでで終えまして、また後ほど御質問がありましたら……。  失礼さしていただきます。
  69. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。  次に、小林参考人にお願いいたします。小林参考人
  70. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 私、日本訪問販売協会の副会長をいたしております小林でございます。きょうは意見を求められたわけでございますが、訪問販売協会の立場で、若干私見を述べさしていただきたいと思います。  豊田商事を初めとするベルギーダイヤモンドあるいはジャパンライフ等一連の消費者問題が発生いたしましたが、これらの販売方法は、たまたま家庭を訪問する販売方法をとられておったということで、訪問販売法の手直してこれを規制しようというふうな考えが出てきたようでござい・ますが、消費者問題、特に消費者との取引においての現在の消費者保護法律は、割賦販売法と訪問販売法が二つあるだけだろうと思います。したがって、訪問販売法の手直してこれを片づけたらいいんじゃないかというようなお考えがあるようでございますが、かなり我々といたしましては実態が違うので、そのように簡単に考えられては非常に困るということで、若干言いわけめいた説明をさしていただくことになります。  まず、我が国の訪問販売業界の現状を御説明申し上げますが、最近の流通業界の全体の伸び悩みの中で、毎年約二けたの高い成長率を示しておるのが訪問販売業界の姿でございます。昭和五十九年で約一兆九千八百億円の売上高、この数字は小売業全体の売上高の二・五%を占めるに至っております。  では、なぜこのように訪問販売が盛んになったか、その背景を少し考えてみたいと思いますが、私は大体次の二つの理由からだろうと思い良す。一つは産業構造の変化、それからライフスタイルの変化が考えられます。  産業構造の変化でございますが、高度成長の結果、まず物が余った、それから金が余ってきた、次に人が余ってきた、こういう三つの具体的な現象がございます。  物が余るということで、店頭ではなかなか売れない。これを積極的に売るためには、無店舗販売等の手法で積極的な販売をやった方がいい、やらなければいけないという状況が考えられ、その最も積極的な手段として訪問販売方式がとられたということ。  それから、金が余ったということでございますが、消費者ローンが盛んになった、その結果消費者の購買力が非常に強くなったということで、訪問販売企業の方に金が回るようになりまして、零細企業でも金の心配をしなくて訪販事業を拡大することが楽になったということが一つ挙げられます。  次に、人の余った問題でございますが、生産部門から余った余剰人員が流通部門に入ってまいりました。そしてその結果、非常に人が集めやすくなった。つまりマンパワーを主力とする訪問販売がやりやすくなったという状況が考えられます。これが産業構造上の変化の具体的な例でございます。  次に、ライフスタイルの変化といたしまして、生活が非常に電化されて家庭の主婦が時間が余ってまいった。その結果、生きがい論だとかあるいは社会参加の意欲が非常に出てまいりまして、とにかくカルチャーあるいは仕事だということで余裕が出てきた。それから同時に、住宅ローンの返済などで、主婦が積極的にアルバイトやパートをやるようになったというようなことがいろいろ絡み合いまして、訪問販売が盛んになるような条件がそろった結果であろうと考えます。したがいま して、このような我が国の流通業界の中で、構造的に非常にもう確固たる地位を占めるようになったわけでございます。  ちなみに、セールスマンの数を申し上げますと、約百万人と言われておりますが、これは雇用の確保という点から見ると非常に大きな役割を果たしているんじゃないかと考えます。  次に、訪問販売協会の活動の現状について、簡単に御説明申し上げます。  昭和五十一年に訪問販売等に関する法律が制定され、それを受けまして、業界みずからこの業界の健全化を図るという目的のために、五十五年四月に日本訪問販売協会が設立されました。  設立以来どういうことをやっておるかと申しますと、まず倫理綱領の制定を行いました。これは訪問販売ビジネスに携わる者の行動基準を定めたものでございまして、これを徹底することによって健全化を図ろうというねらいでございます。それから、倫理綱領を積極的に裏づけるために、訪問販売員の登録制度を実施しております。これはただ登録というのではなくて、一応一定の教育を行いまして、その教育を終わった人に試験を行って、それに合格した人に教育登録証を発行するということで、訪問販売員の資質の向上に努めておるわけでございます。それから第三に、顧客からの苦情を迅速に処理するということでいろいろ措置を講じておるわけでございます。  こんな状況で、まじめに仕事をしている中に、昨年の豊田商事の問題が起きまして、非常に訪問販売に対する評判が悪くなる。したがってこの波をまともに受けまして、健全な業者でも家庭から締め出されるというようなことで、非常に苦境に立っているところが多いわけでございまして、特に中小企業の多いこの業界におきましては非常に大きな痛手を受けているという現状でございます。したがいまして、今回豊田商事のような商法が法律によって厳しく規制されるということは、我々といたしましては非常に歓迎するところでございますので、ひとつ大いにこんなことが起こらないような禁止的な立法措置をとっていただくことを希望するわけでございます。  実は、日本の訪問販売業界は、やはり急速に成長いたしましただけになかなかウイークポイントがたくさんございまして、業界としても若さゆえのいろいろな矛盾点がたくさんございます。したがって、それらを啓蒙する意味もございまして、ことし国際シンポジウムを東京で開催いたしました。そして、先進国であるアメリカあるいはヨーロッパのEC諸国等から講師をお招きいたしましてシンポジウムを開いたわけでございますが、その結論を申し上げますと、これらの業界の方々が一致しておっしゃったことは、なかなか法律による規制は難しい、業態が次々と変わっていくし、これに対して一番効果的な決め手は、やはり倫理綱領をしっかりしたものをつくり、それを監視する機構をつくって、自主規制を行うことが一番望ましいのだというような結論が出ました。それに対して、参加した日本側の委員も、学識経験者の皆さんも非常に深い理解を示されまして、日本も遅まきながらアメリカのような形の体制をつくっていくべく目下努力いたしているところでございます。  時間も来たようでございますので、大体そんなところでございます。
  71. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終了いたしました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 参考人の三人の先生方には、貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。座ってやらせていただきます。  今お聞きしました話を中心に、私の方から質問させていただきますが、なかなかこっちも頭が今整理できているわけではありませんので、質問があっちこっち飛ぶかもわかりませんが、御了承をお願いいたします。  最初に、日本訪問販売協会副会長の小林さんにお聞きしますが、今御説明がありました、訪問販売をやっておりますセールスマンの数が今約百万人と、こう言われましたが、そのうちに、今私たちが審議を始めようとしておりますこの特定商品等預託等取引契約に関する法律にかかわる人たちですね、その中でも特に豊田商法のような、そういうような関係にかかわっている人たちの数は大体どのくらいおるんでしょうかね。
  73. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) お答えいたします。  私どもの協会には、このような業種は加盟しておりませんので、全くちょっと数を想定することはできませんので、わかりません。
  74. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それでは、訪問販売協会、小林さんの協会に関する人たちの数は大体どのくらいおるんでしょうか。
  75. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 七十万人が加盟登録いたしております。
  76. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 小林さんから先ほどありました、私も賛成なんですが、法律をつくったからといって悪いことをする人間をそんなに規制はできにくいと思うんですが、倫理綱領、これをおたくの協会でつくられたのはいつからですか、大体でいいですが。そしてその綱領ができまして今日まで、いろんなトラブルとかそういう顧客に対する迷惑、そういうものが減ってこられたかどうかですね。
  77. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 倫理綱領をつくりましたのはもう七、八年、登録をやりましてから五、六年でございますから、その前でございます。七、八年たつと思います。  それで、倫理綱領をつくった効果でございますが、もちろん綱領をつくった効果はございまして、具体的には、この綱領をもとにしましてそれぞれの参加団体がその業界に合ったものをさらに細かく具体的につくっておりまして、それを実行しております。
  78. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そうすると、効果というのですかね、それは目に見えてやはりよくなっているということは言えるんでしょうか。
  79. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) それぞれの業界によって若干の違いはございますが、この倫理綱領の罰則担保的な意味も含めまして、綱領違反の悪質セールスマンに対してはまず登録証の没収をやるとか、あるいは企業全体の登録を全部取り消すというようなこともいたしておりまして、さらに再教育をやってから再交付するというところもございますし、それぞれ真剣に取り組んでおりますので、かなり効果は上がっております。
  80. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それから、これは直接この法案なんかに関係ないことですが、豊田商法が問題になりまして、おたくの訪販協会の商売にも私は影響があったのではないかと思うんですが、それはどんなでしたですか。
  81. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) やはり非常に全般的にダメージが欠きゅうございました。とにかく新聞等で盛んに訪問販売、訪問販売ということで書き立てられたものでございますので、やはり消費者が拒否反応を示しまして、なかなか訪問しにくくなったということをよく聞いております。
  82. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それで、最後の結論のところで少し小林さんのお話があったのですが、豊田商法のようなものについては厳しく法律をつくるなりしてやっぱり取り締まってほしい、こういう御意見がちょっとあったように聞きましたが、その点につきましては、今私どもが審議をしておりますこの特定商品等預託等取引契約に関する法律案、これは衆議院で修正されましたが、された事項も入れましてこれが法律になれば、協会の皆さんから見た場合には、これは好ましい、こういうことになるのでしょうか、いやもっと中身の問題だと、こういうことになるのでしょうか、そのあたりをちょっとお伺いします。
  83. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 一応特別立法のような格好で制定されましたので、訪問販売とは違うという印象をはっきり与える、健全な訪問販売と違うという印象を与える意味では非常によかったと思っております。  ただ、この中身につきましては、私法律の専門家じゃございませんので、特にどこがどうという批判はちょっとしにくい立場にございます。
  84. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 いずれにしても、皆さんの訪販協会から見ますと、大変迷惑をしたということは変わりないわけですね。
  85. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) はい。
  86. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それでは、読売新聞社論説委員をされております国政参考人にお尋ねします。  私は、豊田商事の問題のときに、何回も本委員会でも質問し、通産省にアクションも求めたんです。実は、昭和五十七年ごろからこの豊田商法の問題というのは、本委員会あるいは国会で何回か問題の指摘が出ておったんであります。これは、それぞれ関係する省庁の皆さんも、その指摘に対しては問題意識は持っておったようですが、結局は行き着くところまで行き着いてしまった。我々も国会で議論する中で、家に火がついてどんどん燃えて、もう燃え落ちるまで見ながら非常にじりじりして、結果的にああいうことになったわけですが、その辺の見方について、先ほどもちょっと御指摘がありましたが、もし国会やあるいは担当している政府に対して御意見があれば、率直にお考えを聞かせていただきたいと思います。
  87. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 国会でのそのやりとりを私直接聞いておりませんので、具体的にはちょっと言いにくいんですが、ただ、あれだけの広い範囲にわたって被害者が出たということは、やはり結果的に見れば対応が遅かったという点は否定できないであろうと思います。  そこで、じゃどうすればいいかという実は話なんですが、これが先ほども申しましたように非常に難しい。例えば一挙に企業名を言うとかということになりますと、要するに、あの企業は悪い企業だよという判決を下すような形になるわけですね。それじゃ判決までいかない警告みたいなものが何かないか、あるいは最高裁みたいに、一遍に言わないで、民間的なところからだんだんやっていって、だんだんと最終的な公的なところの判断になるとか、そういったようなシステムを考える必要があるんではないか。各地の消費者センターなどでかなり早くから相談あるいは被害の申し出があったようですから、その段階であるいは何かできなかったのか。いろいろなその段階、言い方、機関についてもう少し考えなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。  それと、それをマスコミを通じて公表するというところへいくまでに何とかならないのか、あるいは名前を公表しなくてもそれとわかる方法で言うことはできるんではないか、それが被害を防ぐ一番の方法なんですね。消費者としても、かなりいい話であると、しかし本当かどうかという疑いを持っているけれども、要するにだれに聞いていいかわからない。本来ならばそのときに、私ならば、そういうどっちかわからないやつはやめておきなさい、こういうふうに言うんですけれども、そういったような質問もあったんですけれども、後で見ますと、どうもその人は実はやったらしい。  だから、そうは言われても、やはりあれはかなりいい利息になるとか利回りになるとかというと、どうしても人間弱いですからそっちの方へ引かれていきます。そのときに、あそこはやめなさいということを言ってくれるところがあるかどうかが、実は被害を防ぐ決め手であろうと思うんです。それで、そのさらにもとにあるのが、本人、消費者の自覚だろうと思われる。そういうことも含めて、私は、行政というのは今後十分考えていってほしい、決して今回はよかったとは言えない、そういうふうに考えます。
  88. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  そこで、法律の専門家でありますし、豊田商事問題を手がけてこられました三木参考人にお伺いをいたします。  私どもも、とにかく今火が燃えているじゃないか、とにかく出資法とかあるいは訪販法とか、いろんなことでなかなか問題があるとしても、やっぱり早く、税務調査なんかで現場に飛び込んで、それで実際に金の裏づけがあるのかどうなのか、そんなものをつかんできて、そして法律的とかなんとかは別にして、もうとにかく実態を早くつかむと。実態をつかんで、そして問題があるかないかという把握をして、早く対応しなきゃ、これはもう見る見るうちにどうにもならぬではないかという、そういう気がし、そういう意見も述べてきたんですが、専門家の立場で、この法律を審議する前に、豊田商事の問題で一体どこが問題だったのか、こうすれば法律的にも早く手は打てたんではないか、そのような問題について気がついておられることがあるだろうと思うんですが、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  89. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 豊田商事の問題というのを要約してみますと、詐欺的な欠陥のある金融貯蓄商品を販売したという側面と、もう一つの側面は、これが悪質な訪問販売によって行われた、この二つの側面から把握できると思います。  どこが問題であったのかということからすれば、その両面とも十分な規制措置がなされていなかったということになるのですが、少し豊田商事の経過を振り返ってみますと、豊田商事は、もともと金の私設市場を舞台とする金の先物取引をやっておりましたが、これが政令指定によってできなくなって後、金という商品の誘引性に着目して問題になりましたファミリー証券という現物まがい商法を始めたんですが、社会問題になりまして、五十八年の十月に、全国の弁護士が連名で公開質問状を出しました。その際、その眼目でありましたのは、豊田商事が売り、預かって運用するという金地金の保管、運用がどのようになっているのかということでありました。それがなければ詐欺的なことということになるわけでありますし、また金の裏づけなく金銭だけを預かっているということになりますので、今申し上げた点を眼目にして質問いたしましたところ、何ら答えないということでありました。  その後、そういう応答を見まして、五十九年三月に、また全国の弁護士が連名をいたしまして、大阪地方検察庁へ詐欺罪及び出資法違反で刑事告訴をいたしました。その捜査が、捜査といいますか、調査のレベルであったかと思いますが、進んでいる段階に豊田商事倒産に至ったわけであります。その後六十年に入りまして、六月に、商法五十八条に基づく非常に不当違法な会社であるから、法務大臣は裁判所に対して会社の解散命令を申し立ててほしいという申し立てをいたしました。ところが、その直後に永野氏が刺殺されて、破産申し立てということになったわけです。  その間、政府の方は、大蔵省が、国税庁なんでありますが、税務調査に入りました。その結果、実は豊田商事が金地金を保有、運用するのではなくて、その名下に集めた金銭を費消しておる、そして入ったお金の大半を経費に使っているがために、極めて大きな赤字を出している会社であることを国税庁は察知されたわけであります。私ども外部におる人間からすれば、そういうことはわかりませんでして、もう御承知かと思いますが、豊田商事は、更新書用に虚偽の財務諸表を意図的に流す、それで目くらましをやるというふうなことをやっておりましたが、国税庁はそういう点をつかんでおられたわけであります。  そういう経過を踏まえますときに、一つは、やはり出資法を厳格に適用していただきたかった。ただ、出資法が刑罰法規でもってその実効が担保されるという構造になっておりますので、やや使いにくかったという面は否めないと思いますので、そういう点からすれば、早期に出資法の改正を行って、大蔵省による監督調査権限を創設し、あるいはまた、被害者あるいは消費者団体からの措置請求権を創設して、それによって立入調査、行政監督等を行うという方向が考えられたのではないかというふうに思います。  また、私たちの問題提起も、豊田商事倒産の直前になりましたが、法務大臣においては、社会的に存在を許されないような会社であるわけでしたので、商法五十八条を活用して解散命令の申し立てをすることができたのではないか、してほしか った、そういうふうなことを考えます。  以上です。
  90. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 参考までに、三木参考人に少し意見を聞かしていただきたいんです。  やはりいろいろ努力をして、あるいは各県の消費生活センターから中央の国民生活センターへ逐一苦情なんかも情報が入っておった、皆さんも刻々とそういう問題をつかんでおった、そして先ほど言いましたように、政府に対してもとにかく何とかしてくれという要請を出しておられた。そういう点から見ますと、やはり国全体の、これは大蔵省とかあるいは警察庁とか通産省といいますと、それぞれ法律がありますが、とにかく全体として見ると、まことに指摘されますように問題があるんですが、やはり私は国の責任はあると思うんですね。その点についてお考えはいかがでしょうか。
  91. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 国の責任を考える出発点としまして、私は、この問題をやはり憲法二十九条が保障する国民の財産権、及びこの被害に遭った方々の被害の資金の性格、すなわち生活維持資金であったというところに着目するならば、これが奪われたということは、憲法二十五条の保障する生存権を奪われたことであり、生存権を確保するための預貯金であったという視点から出発する必要があると思いますし、さらに、消費者保護基本法の第七条によりますと、国は、国民の生命、身体に加えまして、財産に危害が生ずる場合には、それに対する適切な処置をとらなければならない責務を課されております。それが一つ法律論であります。  もう一つは、私自身が体験しました経験、事実を先ほども申し上げましたが、国としては、先ほど申し上げました点では、出資法の改正による行政的調査あるいは商法五十八条の解散命令の活用、そしてまた、この豊田商事が販売したと言われる金地金は、訪問販売法の指定商品ではございませんでした。それがゆえに訪問販売法の規制が及ばなかったわけであります。そのことはまた、この法令を所管される省庁はわかっておられたわけであります。したがって、従来の行政的基準を被害救済、被害防止の立場から見直されて、金地金を政令指定するという形での防止ということも可能ではなかったかというふうに思います。そう思ってまいりますと、被害者がお年寄りや主婦で、その切実な生活資金であるだけに、高齢化社会を迎えて、既存の法令及びその改正を通じて対処し得なかった国の責任はまことに大きいというふうに考える次第であります。
  92. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 よくわかりました。  これから法案の審議に私どもも入るわけですが、具体的に法案の問題に関する点で、最初に三木参考人にお尋ねをいたします。  この審議しようとしている特定商品等預託等取引契約に関する法律案の中には、業務停止命令等の行政による監督や立入調査が規定をされておりますが、悪質会社は結局それで営業はできなくなるんではないか、こういう見方もあるんですが、いかがでしょうか。
  93. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は、そういう業務停止命令などを出せる行政権限が創設されるということは結構なことなんでありますけれども、しかし、その発動が十分行われていないという経験を持つものですから、悪質業者の営業を禁止できないことになってしまうというふうに思っておるわけなんです。  それは、私自身の体験に基づくものなんですが、当初申し上げました海外先物取引規制法というのがございまして、これによって通商産業省あるいは農林水産省が立入調査等をして、調査の上処分をすることができておって、その発動が期待されておったわけなんであります。確かに、通商産業省及び農林水産省も当初は随分力を入れられました。体制を整えて日本貴金属やらプラングッド・インベストメント社などの調査をし、違法行為があったとして処分されました。その後、警察による書面不交付罪などの活用がございましたが、その後はなかなか立入調査をしたり、あるいはまた行政処分を行うということができておりません。  そういうことは、被害がなければあるいはそういう悪質行為がなければそれでいいんでありますが、国民生活センターなどに集中される消費者苦情や、あるいは私たち弁護士会にございます消費者被害救済センターなどでは、海外先物取引が非常に多く来ております。特に弁護士会などは、海外先物取引の被害というのは、大阪などの場合は過半を占めるぐらいであります。そういう違法、不当なことをやっているにもかかわらず、そしてまた行政はその事情を把握されておると思うんでありますが、なぜか機動的に立入調査などが行われていないのが実情であります。  以上です。
  94. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 次に、同じく三木参考人にお尋ねしますが、商品指定制を機動的に運用する、被害の蓋然性があれば指定をするというような、通産省はそういう方針でありますね。これで実際に効果が上がるのかどうなのか、この点についてお尋ねします。
  95. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) これもまた、私の海外先物取引の被害の経験に基づいて今の行政を見て申し上げるわけなんでありますが、まず指定するには、一定の被害が出てこないと指定されないというのが実情であります。  確かに政府などは、そういう被害のおそれがあれば積極的にと、こう言われるわけであります。それはそうあってほしいわけでありますが、しかしこの法律の性格を見ますと、例えば消費者保護の措置がとられるような、例えば銀行だとか信託銀行などは、同種の取引をしてもこの法律の適用を受けないというふうなことになっておりまして、余り問題のない業者にはこの法律を適用しない。そうなりますと、問題のある業者に適用するということになってしまいます。問題ある業者ですから、すべて指定すればいいわけですけれども、その中で選択して指定するということになれば、一定の被害が出てから指定するということになって、海外先物取引の例も申し上げましたけれども、二年たち三年たって、被害が一定数出てきて初めて指定するということであり、さらに海外先物取引の経験で申し上げれば、通貨であるとか株式指数という、通商産業省や農林水産省の所管外の広い意味での商品ということでありますが、には指定が及ばずに、それをいいことに業者がまた仕事をするというふうなことになっているのが残念ながら実情であります。  そういうことから、機動的に商品指定をしていくといいますが、商品指定制というもの自体がやはり後追いにならざるを得ないわけでありまして、考えますと、こういう業種は商品の売り買い、あるいは預かり業種ではなくて、商品を預かって運用するという資産運用の業種なんでありますから、商品によって指定をして法律をつくるという必要が全くない分野であろうというふうに考えたりもするわけです。  以上です。
  96. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もう一点だけ。  本法案では、営業は自由だと、形式的に自由だが、悪質業者に対しては、場合によっては実質禁止をさせるんだと、こういうようなことになっておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
  97. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 形式的には営業できる、そして実質的に禁止するという場合に、実質的禁止を図るには、非常に強力な措置がなければならぬかと思うんです。それは、一つはその会社の健全性、返還能力といいますか、運用能力といいますか、それを裏づける措置、さらには書面にいろいろ書いて契約に入ろうという人にわかりやすく理解をしてもらおうということがこの法案の一つの思想でもあろうかと思います。  その場合にも、会社の運営実態、あるいは資産を運用する取引ですから、運用の実態などがきちっと書かれて、消費者がそれを理解をし、やや不審に思えば調査もできるというふうな状況になっていること、それから悪質な行為をやった場合に は、徹底して追及されてできなくなる、この三つがそろっておる必要があると思うんですけれども、一番後で申し上げた第三点目について言いますと、悪質な行為をやったときに、それが刑罰に処せられるわけでもなし、さらには、そういうやり方をして契約を結んだら、契約が無効になるわけでもなしということであれば、やはり業者は、行政の命令が来るまで、調査が来るまではやるということなんです。行政を補完する意味でも、被害に遭った人が、これは無効だとか、あるいは賠償を請求するというふうにしておいて初めてそういう消費者の立ち上がりによって業者の悪質行為を抑え得ると思うんですが、それらの点が非常に不徹底なものですからなかなか禁止できないというふうに思います。  例えば、最近京都で出ておりますが、家具を顧客に売って、それを預かって、その家具を他の顧客に売るまでの間、他の顧客というのは本当にその商品が必要な人でありますが、その人に売るまでの間、月二、三分の金利を払うというふうな取引が出ておりまして、この事件はやはりそういうふうなことをやる業者は必ず行き詰まるわけでありまして、現在京都地方裁判所で破産手続中であります。広い意味でみれば、これも家具の預託取引なんでありましたが、破産管財人は、これは金銭の貸借であるというふうに決めつけておりまして、預かり金を受け入れたという実質判断法律実務家の常識かと思います。  以上です。
  98. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  小林参考人か国政参考人、どちらでも結構ですが、広い意味の訪問販売の範疇に入るわけですが、訪問販売というのはアメリカで非常に進んでいるやに聞いております。これまで皆さんの知識の中で、こういう豊田商事みたいなそういう問題があっちであったかどうか、そんなことがもしわかっておれば教えていただきたいと思います。
  99. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 寡聞にして私はアメリカでは聞いておりません。
  100. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 国政参考人、やっぱりこういう豊田商事みたいなまがい商法というのはこれからも、今言われましたように家具の問題が出たりしますが、日本ではこれから、この法律をつくったからもう起きないというようなことでもない、これは歴史がありまして、ネズミ講が出たり、今度豊田商法が出たり、次々にこういうのがまだ出る可能性だって、なかなか悪知恵働かしてあると思うんですが、その点はいかがでしょうか。もう今審議している法律をつくったらなくなると、先の見通しをひっくるめまして御意見を賜りたいと思います。
  101. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 豊田商事のようなのは、私は当面はすぐには出ないんじゃないかと思うんですけれども。というのは、豊田商事の場合は、まず商品が金であったということ、これはダイヤモンドでもプラチナでも、白金でもいいんですが、あるいはゴルフ会員権であってもいいし、それは何であってもいいですけれども、やはりお客さんの信用力という点から見れば、金というのが最高であったと思うんですね。したがって、金がもしだめになりますと、それにかわるものはもちろんダイヤモンド、白金はありますけれども、そういうものを指定すれば、そう簡単には出てこないんじゃないか。しかも、同じシステムでは余りないであろう。  特にこれは、これだけ被害が出たということで広く一般に知られまして、不幸なことですがそれが教育効果になりまして、大変高い代償であったわけですけれども。ですから私は、すぐ同じような商法が出るとは思いません。ただし、何年かたって忘れられたころ、衣がえして出てくる可能性というのはあるんじゃないかと、そういうふうに考えます。
  102. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 三木参考人にもう一度重ねて聞きますが、日弁連の方でこの現物まがい商法に対して、これ新法ではなくて、具体的にどういうように、幾つか皆さんの御意見も我々いただいておりますが、どうすればいいのか、この問題についてもう一度整理をしていただきたいと思います。
  103. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 豊田商事のような現物まがい商法といいますのは、商品を売って預かって運用すると言いながら、そういう商品がない、あるいはほとんどないという特徴を有しております。そういうものについては、出資法あるいは詐欺罪によって速やかに処断すると、これがもう最も肝要なことかと思います。  そういう一般市民をだますようなことをやれば犯罪になるということをはっきりさせることが大事でありますが、次に、確かに物品を介在させておりますところから、単に金銭だけを預かっているように見えない面が表向きあります。このようなことは出資法の制定当時にも議論されておりまして、それがゆえに脱法行為をいかに防ぐかというのが出資法の当時の立法者の関心であり、そのような立法措置がとられています。  日弁連としては、こういう豊田商事のような現物まがい商法に対しては、出資法を使いやすくする。そのためには、物品を介在させるような形態をとっていても、預かり金行為であるという解釈例規を置くこと。二つ目には、大蔵省の行政権限を創設して調査・処分等ができるようにすること。三つ目は官庁だけが目を光らせるのではなくて、消費者の側でそういう被害事案、事例を察知したときには、大蔵省に申し出ることができるようにする、いわゆる措置請求権を創設することによって機動的な対処を図るべきだというふうに考えております。  ただ、これは非常に平たい言い方で、よい豊田、悪い豊田などと言われるんですが、そういう詐欺まがいでなく、本当に物を預かって運用するという形態があり得るのではないかという議論があります。その具体例がなかなかなくて、私どもも日弁連のルートを通じて捜してみても、先ほど言いました京都の例だとか、観音竹という、本当に詐欺まがいしか出てこないんでありますが、ただ金融の自由化、多様化の中で、そういう預託取引的なことが国民のニーズに合い、必要なことであるとすれば、それは信託業法あるいはその関連法規のもとでやるべきであろうというふうに考えております。  具体的には、東京大学の竹内昭夫教授が朝日新聞に述べられたことが非常に示唆的なんでありますが、この金融自由化の中で、そういう知識、経験のない被害者の資金が悪質な業者に流れないようにするためには、銀行や信託銀行などが新しい商品開発を行うこと。そのためには行政を必要な範囲で緩和していくということも必要である。というふうに示唆をされております。日弁連としても、預託取引というのは資産運用取引でありますから、信託業法などをにらみながら、その新商品の開発及び信託業免許を広げていくということも考えられるかと思いまして、そういう方向で対処すべきであろうというふうに考えるわけであります。  以上です。
  104. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最後になりますが、国政参考人にお尋ねをいたします。  参考人の、六十一年三月十三日の読売新聞の「〝現物まがい〟の被害を防ぐには」という論説も読ましていただきましたし、今参考人からの御意見もちょっと聞きましたが、その中で、「ハイリスク・ハイリターン」、リスクは大きいけれども、逆に利益も危険に対しては大きいこともあり得るんではないかと、こんな意味のことがずっと底流に流れておりますが、先ほどから私も、要するに資産運用取引で、特に物が介在をして、その物を預けてやる商売で、金、ダイヤモンドやその他以外に一体何があるのか、何をしようとしているのか、それがちょっとぴんとこないんですが、何か頭に描いていることがありましたら教えていただきたいと思います。
  105. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 預託商法ということでしたら、一応何でも対象にはなるわけです。ただ、それがお客に人気が出て売れるかどうかの差はあるわけです。  ハイリスク・ハイリターンとの関係で言います と、それは確定利息、例えば銀行の預金、郵便局の貯金、これはもうまず間違いない、そのかわり利回りが低いということで、利回りの高いのは当然のことながら危険がある。まあ一番わかりやすいのは株ではないかと思われますが、株はもうかるときにはもうかるけれども、損をするときには損をするということで、これも一つのハイリスク・ハイリターンの典型的な例だと思います。  それで、金の場合は、似たような商品を銀行、証券会社が持っておりまして、金貯蓄口座とか金投資口座という名前になっておりますが、これはせいぜい金利に相当する部分は年五%、最低四%台だったと思いますが、しかないわけで、これは金の現物と先物価格の差から見て非常にリーズナブルな、これぐらいはいくという水準で、それ以上の一〇%とか一五%というのは普通にはあり得ないというふうなことだと思います。したがって、確実でやっぱり高い利回りというのはまず基本的にないんだと、うまい話というのはまあないんだということをまず基本に置いて、しかしその接点ほどこら辺がということをやはり一人一人の投資家が考える必要があるんだろうと思います。
  106. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もうちょっと時間がありますので。  先ほどから、消費者教育お話がたびたび出てきておりますが、訪販業者の立場で実際にやっておられる中で、日本消費者というのは、消費者教育が本当にされていないということはもう実感でおわかりになっておられるだろうと、こう思うんです。  小林参考人、その点について、消費者教育の問題について、売っている方の立場から逆に見て、もし何か我々に示唆をしていただくようなことがおりましたら、その点について聞かしていただきたいと思います。
  107. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 我々は、消費者教育の重要性を十分わかっておりまして、行政にもしばしば要望しているところでございますが、何分にも大海に石を投げるような状態でございまして、少々ぐらいの金を使ってもほとんど効果がないという実情でございます。しかし、現実には非常に苦情が起きてまいりまして、消費者センターあるいは行政の相談窓口を通じて、ストレートに業界の方に批判という形で来るわけでございますが、今までの消費者問題に対する業界の対応というのは、比較的逃げの姿勢でございました。したがって、一つの言いわけとしましては、企業としてはそういう教育はしていないんだけれども、これはセールスマンが勝手に言ったんだと、困ったものだと、我々も被害者であるんだというような言い方で逃げている場合もあったわけですが、こういったらい回し的なことをやっておってもちっとも業界はよくならないし、ますます業界の信用がなくなるということがこのごろわかってまいりまして、むしろ逆に、その消費者の苦情というものを経営体質の改善に使うというような考え方が出てきております。  そういう意味で、私は、本来この消費者問題というのは、産業側と消費者側との接点にある者がやはり共同して、お互いに協力してやらなければいけないことじゃないだろうかと考えております。その方がより効果的であり、そういうシステムが具体的にできて機能することを心から望んでおるわけでございますが、残念ながらまだそういうブリッジはできておりません。しかし、これから徐々にそういう方向にいくのじゃないだろうかと期待しているわけでございます。  以上でございます。
  108. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 もうちょっと時間がありますから、もう一度重ねてお尋ねしますが、去年でしたか割賦販売法の改正をやりまして、クーリングオフが一週間になりましたね。今度この法案でも、クーリングオフが十五日ですか、出ておりますが、クーリングオフというのを長くしまして、四日が一週間になったんですが、そういう面の実際に消費者に対する周知徹底ですかね、その辺はいかが感じておられますでしょうか。
  109. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) クーリングオフに対する考え方というのは、随分消費者側にもわかってきていただいているようでございます。ただ長くなればいいというものじゃなさそうで、これはやはり取引の不安定を来しますし、一応業界サイドの常識といたしましては七日ぐらいが妥当じゃないだろうかという意見で、割賦販売法の改正のときに、そういう考え方でお通しいただいたはずでございますが、この辺の判定は、国によって短いところと長いところとございまして、日本は大体真ん中程度というところでございます。効果はかなり出てきているのじゃないかと思います。
  110. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私は、法律政府はよくつくりますけれども、その法律が対象になります一般消費者とかあるいは国民に対しては、なかなか周知徹底されにくい点がある。つくればいいというものじゃないわけでして、その点について非常にもどかしさを感じておるところです。時間が来ましたので、これで質問を終わらせていただきます。参考人の皆さんにはありがとうございました。
  111. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三人の先生方に貴重な時間を割いていただいてありがとう存じます。厚くお礼申し上げます。私は三十分間でございます。要点だけを質問さしていただきますからよろしくお願いいたします。  今、梶原先生からも御指摘になりましたクーリングオフの期間はどれぐらいがいいかということで、今日本法律では、宅地建物の場合は五日、訪問販売、割賦販売が七日、それからネズミ講、マルチ商法の場合が十四日、海外取引十四日と、こうなっていましてまちまちなんですけれども、この法律の場合どれくらいが適当とお考えになりますか、それぞれお一人ずつ結論だけおっしゃっていただけたら幸いです。
  112. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) この法律に関しましては長い方がいいのじゃないかと思います。
  113. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 十四日というのはいいところじゃないかと思います。一週間はちょっと短過ぎると思います。
  114. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は、ちょっと問題を分けて考える必要があるのじゃないかと思っております。一つは、普通の消費者の場合は十四日程度でいいのじゃないかと思うんですが、この種の被害者の人は非常に老人が多いんです。老人の方はなかなか家族にすぐ打ち明けられずに、どうも様子がおかしいなということで家族の方が察知されて、それで私ども弁護士のところへ相談に連れてこられるというのが多いんです。そうなりますと、老人の方の場合には、その期間を延長をするとか、あるいはクーリングオフに限りませんが、解約して契約から離脱できる保護の手当てを厚くするとか、そういうことが必要ではないかというふうに思います。  さらにもう一つの点は、クーリングオフを入れます場合に、本法案でクーリングオフを行うのが預託取引になっておるのですが、その前段階で売買契約が行われることが多いわけなんです。ですから、そこまでクーリングオフが及ぶ必要があろうかというふうに考えます。  以上です。
  115. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ありがとうございました。  次に、衆議院でも修正されてこちらへ回ってきていますが、解約手数料の一五%が衆議院の段階で一〇%になったのですが、この一〇%が適正かどうか、三先生方にそれぞれ御意見を承りたいと思います。
  116. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 一〇%という線で結構だろうと思いますが。
  117. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 一〇%でいいと思います。
  118. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は反対なんです。  冒頭意見を申し上げましたが、この業者が詐欺的な業者ならそんなのに解約手数料を認めてやる必要はないのですが、まともな形態があり得ると考えましても、その預かった資産を換価するなどして運用しておるわけであります。そこで、銀行等の例などを考えましたときに、定期預金を解約しても普通預金の利子がつくというふうなことな ど、こういう資産運用取引の貯蓄性の商品について考えましたときに、解約手数料は不要なのではないか。消費生活の相談にあずかっておられる地方自治体の相談員の方に聞きましても、解約手数料稼ぎのような悪質な業者が、これはもう言語道断でありますが、出るようでありまして、違約金なく解約できるということでいいのではないかと考えます。以上です。
  119. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ありがとうございました。  指定品目として今通産省が考えておられるのは、金、ダイヤモンド、ゴルフ会員権、それから銀、白金、こういうもののようでありますが、これに、もっとこういうものを加えたらどうかというふうな御意見がありましたらお教えいただきたいと思いますが、小林さん、いかがですか。
  120. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 大体そんなところでいいのじゃないでしょうか。
  121. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 国政さん、いかがですか。
  122. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 私も、ちょっとほかにどんなのがあるか、大まかなところはそんなところかなという気がいたしますけれども
  123. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木さん、いかがでしょう。
  124. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は、この種業者はいろいろ考え出すものですから、包括的な指定がなければならぬと思いますが、私の経験で申し上げますと、先ほど申し上げました観音竹の被害、それから家具を売って、家具のセットなんでありますが、それを預かるというふうな形態のが京都で出ております。さらに、これは東京のようでありますが、このような真珠のネックレスを、(写真を示す)セットで一千万円ほどするのを、やはりよくわからない老人に売りつけまして、これを結婚式場などに貸すので高い配当金といいますか、払えるということで誘いまして、よくわからない老人から数百万円をせしめ取った、しかもそれが豊田商事の流れをくむものであるというふうな被害が現実に出ておるわけであります。  以上です。
  125. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木先生に、弁護士の経験上よくおわかりだろうと思いますが、いかがでしょうか、こういう犯罪を犯す人はなかなか後を絶たない、一回覚えた技術を、ノーハウを使って盛んにまたいろんなことをやり出す。どうでしょう、その点は。
  126. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) まことに御指摘のとおりでありまして、人を予断と偏見で見るのは望ましくなく、控えるべきことなのでありますが、実際にこの事件をやっておりますと、モグラの穴たたきみたいなことばかりやっておって、もどかしい思いをしているのが事実であります。そういうことを繰り返す人間ほど、刑事的にも詐欺であることが多いわけであります。  そういう意味で、警察に大いに力を発揮してもらわなければならない分野ですが、警察だけに頼るのではなくて、さらに行政の権限によってそういうのを摘発してもらわないといけませんし、さらに、繰り返しになりますが、被害に遭った人が契約を取り消してその被害を回復できる、損害賠償を請求できる、そういう消費者の具体的な権利行使を法律で整備するということが被害をできるだけ防いでいく方策として大事かというふうに考えます。  以上です。
  127. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 それについても、罰則がこの程度でいいんでしょうか、二年もしくは五十万、こういうことですが、三木先生お願いします。
  128. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) まず、罰則の対象になっている行為が範囲として十分なのかという問題と、罰則の程度がどうかという問題があります。  罰則の範囲に関しては、この法案の第五条で不当な勧誘行為というのが規定されておりまして、社会常識上望ましくない行為があるんですが、この範囲が非常に不明確で不十分であるわけなんです。さらに、そういうふうな行為をしても何らの罰則に触れないということになっておりまして、この種業者の常として、法律を破ることもあえてやりますけれども、ぎりぎりのところを追求するという性向もありまして、やはり不当な行為については罰則で担保する必要があると思います。  罰則の程度も、多少の罰金なら払ってもまたできるということがありますので、かなり重くしておくということが実効性確保の面から必要と考えます。  以上です。
  129. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 本法における罰則は、他の法律と比較してどうですか、重いですか、軽いですか。
  130. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 急に質問いただきましたが、ちょっと私他の法律との比較する条文等を持っておりませんですが、この法案について考えますに、現物まがいという詐欺的な商法業者を処罰するものとしてはやはり軽過ぎる。特に最近、経済の多様化という大きな背景もあるんでしょうが、経済に名をかりた経済犯罪といいますか、がふえてきている中で、厳罰をもって対処するということが重要になってきておる時期かと考えています。  以上です。
  131. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 犯罪を防止するためには、営業を許可制にせよという意見も一部には見られているようですけれども、この点いかがでしょうか、小林さん。この法律の程度でよろしいか、それとも営業を許可制まで持っていくべきか。
  132. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 営業の許可制はよく話題に上りますけれども、実際問題として行政負担が非常にふえるということと、それから要件を備えて許可されると、お墨つきをいただいたというふうなことで、かえって大威張りで暴れ回られる可能性もなきにしもあらずでございますので、余り適当だとは思いません。
  133. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 国政さん、いかがでしょうか。
  134. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 私も、行政コストということから考えると、それを厳密にやろうとすれば大変なコストがかかるだろうと思います。この場合、そこまでやる必要があるのかどうかという点については、私もそうだとまだ言い切れない。少なくとも今の段階はこの程度でいいんではないか、そういうふうに考えます。
  135. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ありがとうございました。  三木さん、どうぞ。
  136. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は先ほど、よい豊田と悪い豊田という言い方をしましたが、まともな資産運用取引があるとすれば、それは許可制でなければならないというふうに考えます。そして、豊田商事のような詐欺的商法については、これはもう許可されるどころか、絶対に禁止されなければならないというふうに考えております。  それから、そういうまともな業者の場合に、許可制といいますと、この法案が目の前にありますので、この法案の中で許可制というふうに考えがちなんでありますが、そういう資産運用取引を一つ国民の金融商品の形態として認めていくということであれば、信託業あるいはその関連法域の中で許可していく、その許可の基準等を規制を緩和して対処していくという形での許可制があり得るかと思います。  そうなれば、行政負担という点も、通産省に新しい部局をつくらにゃいかぬということではなくて、大蔵省の信託業を監督される部局の中で対処することができるというふうに考えますし、また、許可制という考え方そのものについても、経済の自由を束縛するのではないかというお考えもあるんですけれども国民の財産にかかわる重要な業種については、許可、登録などの制度が設けられて、その規律といいますか、ルール化が図られているのが常なのではないかというふうに考えます。  以上です。
  137. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木先生に二つお伺いしますが、第一は、この豊田商事の事件を処理なさっておられて、被害者は、二度三度とこういう経験をしている人が多いでしょうか、それとも初めてだという人が多いんでしょうか。これが第一点。  第二点は、豊田商事に顧問弁護士の先生がついておられる、我々は、弁護士というのは正義の擁護者であり、もう全面的に信頼しておったが、そういうところに弁護士が加担しておったというこ とで非常な驚きを感じているわけですが、その点はいかがなものでし占うか。
  138. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 第一の、豊田商事の被害者が、二度三度被害に遭っているのか、一度遭ったらその痛みでもう遭わないのかという御質問は、まさに前者でして、何度も被害に遭っている人が多いというのが残念ながら実情なんです。  それは、主婦の方もありますが、特に御老人の方に二度三度被害に遭うのがいる。被害に遭うのは、一つは、被害者側はやはり判断力が十分でない、それから、抵抗する気力、体力が御高齢の方の中には十分でなくなっている方がいる。それから、好々爺という言葉がありますが、人格円満な方が多くて、人をなかなか疑いの目で見ない。そして、退職教員の方の場合、先生の教え子ですとか、そういうふうに言い寄られますと、気持ちの緊張を開いて応対されるというふうな被害者側の事情がございます。  もう一つは、勧誘員の側の事情なんですが、これは顧客名簿などが悪質な勧誘員の中で流れ出します。それを持ってよその会社へ移籍して、同じように前の会社の顧客をねらう。例えば豊田商事の場合、最近大阪で豊田商事の幹部が創設したアド・インベストメント社というのが摘発されましたが、これなどは豊田商事の社員が顧客名簿を持って外へ出て会社をつくって、同じようなことをやる。その際に、豊田商事はもう危ないですよ、早く解約してこちらへ切りかえないといかぬというふうに、名簿が流れているというふうなことなどから二度三度被害に遭いますし、先ほど紹介しましたネックレスの件ですが、これも豊田商事の被害者の方がまた被害に遭ったという例なんだそうであります。それだけに書面の開示とか、緩やかな行為規制ではだめだという思いが強くするわけであります。  二点目の顧問弁護士の問題でありますが、非常にけしからぬ話でして、私たち――私たちと今申し上げておりますのは全国豊田商事被害者弁護団連絡会議のことでありますが、は、本年二月に七名の顧問弁護士、主要な役割を果たした七名の弁護士を弁護士倫理にもとるということで懲戒の申し立てを行いました。現在、各単位弁護士会で懲戒手続中でありまして、既に東京弁護士会では懲戒相当の意見が出て、綱紀委員会から懲戒委員会に手続が移っております。さらに、仙台弁護士会でも、二名の弁護士について懲戒相当であるという結論に基づいて、現在懲戒手続中でありまして、弁護士会としては、五弁護士会にまたがるわけでありますが、それぞれの弁護士会で弁明も聞きつつ調査を続けておって、近日中にしかるべき判断に到達するであろうという状況であります。  以上です。
  139. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 また三人の先生方にお伺いしますが、ディスクロージャー制度を導入して内容を明らかにする、趣旨は私は結構だと思いますが、そのときに使う文字が非常に細かくて、特に御老人なんかでは虫めがねをかけても読めないような文章が非常に多い。現に私、二、三取り寄せて調べてみたのですけれども、普通の目では読めませんね。そういうふうなことは、私は遺憾だと思うので、やるならやはり徹底的に、大きな文字で、わかりやすく、だれでもわかるようにしなければいけないと考えておりますが、そういう点はいかがでしょうか。
  140. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) ごもっともだと思います。
  141. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 全くおっしゃるとおりで、この法律を見ましても、まず契約前と契約時と、こういうふうに分けてありますが、この契約前の方がこの条文そのものでは比較的簡単な条文になっていまして、あとは通商産業省令で決めるというふうになっておりますが、これを具体的についでに書式まで決めて、そういうふうにやっていただきたい。それがディスクロージャーのまさに一番表面的な大切な点だと思います。
  142. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は、例えば赤字で書くとか、活字を大きくしてもだめだと思います。それは、一つは御老人や主婦の方がなかなか詳細に読まない。さらに、業者の勧誘員が読ませないということも非常に多いんです。  私も海外の先物取引などの例で体験しましたが、少し知識のある方、主婦などはどうもおかしいと思って、契約書を読んでからサインしようとして読み始めると、それはもう細かい字で書いてあって難しいことだから読まれても余りわかりませんよということで、読ませないでせかせて判を押させるということがありました。そういうふうなことで、書面をきちっとつくってわかりやすくするということは非常に大事なことで、それはやらないといけないんですが、この現物まがい商法の被害に遭った人たちの老人や主婦の多くが読んでいない、読まない、読まされないということから、こういう業者、私の先ほどの言い方からすれば金融商品の安全性というふうに申しました。そこをきちっと確保しないと、幾ら開示をしてもだめだと思います。  例えば、もう普通のことに翻って考えてみましても、銀行取引約款だとか、生命保険約款というのは読まないですね。読まないけれども、銀行や保険会社等に対しては行政の監督があって、そういう契約者の安全は確保されているという信頼のもとで契約していくわけですので、そういうことが大切かと思います。  以上です。
  143. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 業者の立場から倫理綱領をおつくりになる。大変結構なことで、ぜひそうしていただきたいのですが、問題は、業者の中にアウトサイダーがいて、倫理綱領を守るのは組合員であって、アウトサイダーの方は平気でそれを守らないでいる場合が非常に多い。そこに犯罪が起きる可能性も非常に多いのですが、どうでしょうか、今の現行法のもとでは強制加入ということはできませんけれども、犯罪撲滅という観点から見れば、私は業を営む以上はその組合に入るのが当然だというぐあいに考えるんですが、その点小林さんいかがでしょうか、お考えは。
  144. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) アウトサイダーの問題は、どこの協会も、どこの業界も非常に頭の痛い問題でございますが、現実には非常に行政から協力していただいておりまして、直接インサイダーに対するような指導は協会としてはできませんが、行政を通じて呼びかけるということで皆さん対処しておられます。  最終的には、私ども、アウトサイダーに対してはインサイダーにならないと損だと、だからアウトサイダーとインサイダーを見分けられるような識別をすることによりまして、消費者からアウトサイダーを排除していただくような動きをしようかと思っております。
  145. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 小林さん、では、訪販業界ではアウトサイダーはどのくらいおりますか。
  146. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 一応会社の数からいきましたら、アウトサイダーの方が圧倒的に多いわけで、七割ぐらいがアウトサイダーでございますが、販売員の数からいきますと、インサイダーが七〇%でアウトサイダーが約三〇%ぐらいでございます。したがって、実質的には大手の業界はほとんど入っておりますから、アウトサイダーは大体三〇%より小さいところと、そういうふうに考えております。
  147. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 今のままでよろしいという御意見ですか、小林さんは。アウトサイダーに対しては何も規制できないままでよろしいというお考えでしょうか。
  148. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) それは行政の方からインサイダーになるように、問題が起きるときに指導するという立場で、インサイダーになるように勧奨していただいております。法的にはどうというわけにはいかないだろうと思います。
  149. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 では、国政さんお願いいたします。
  150. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) ちょっとよくわかりません。
  151. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木先生、いかがですか。
  152. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私の個人的な考えてして、まだ日本弁護士連合会などでは審議途上なん でありますが、訪問販売に対する規制のあり方にかかわる問題かと思います。  私は、訪問販売に対して事業規制を行う必要がある。二つ目は、業務規制を徹底する必要がある。三番目は、消費者の被害救済の措置を強化徹底する必要がある。この三つが大切かと考えます。  先ほど斎藤議員が御指摘になりました、事業を営む以上それの協会へ入るのは当然ではないかというようなことは、私全く御指摘のとおりというふうに思いまして、行政による監督とあわせて、すべての業者が協会などに加入して高度な自主規範を持たれるという方向へ進む必要があるかというふうに考えます。  以上です。
  153. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 この法律が、皆様方の御意見で、大体今まで拝聴したところでは二対一の御意見のようで、この法律の程度でもいいじゃないかというような御意見が両先生から述べられ、三木先生はもっと資産運用法という広い枠で考えるという御意見であります。  私は、金、銀、ダイヤモンド、こういうものは一応これで押さえられるんじゃないかと思いますが、またほかの方向へ出てくるんじゃないか。そういう意味において、私はやはり低金利時代になると金利だけじゃ食えない時代なものですから、もう一分でもいい、高いところへと皆ウの目タカの目で見ている。したがって、まだこの法律だけで全部完全に犯罪が防げるとは思っておりません。  それからもう一つ、先ほど三木先生の御指摘になった、よいものと悪いものと区別なさいましたが、今東京で大流行しているのは、建物を建ててマンションを売る、代金は取っちゃっておく、その売った部屋を借りて、そして運用してあげます、年五ないし八%ぐらいの利回りにいたします、こういうことがあって、これは大変なブームで、ちょっと小銭を運用しようと思うとこれが大流行になっています。今のところでは幸いにしてまだ弊害は出ていませんけれども、今まで悪名をとどろかせた業者が、そういうところへ出てくるとまた同じような被害が出るんじゃないだろうか。  先ほど三木先生が御指摘になった観音竹問題でも、この法律では通産物資だけですけれども、農林物資とかその他の官庁にわたるものについては、これはカバーしてない。そういう点になると、どうもこの法律だけでは財産をめぐる犯罪というのは防ぎ切れないんじゃないかという考え方を持っております。この点について小林先生いかがでしょうか。
  154. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 私もいわゆる商品指定ではとても防ぎ切れないだろうと思います。したがって、もっと広範な網をかぶせて予防できたらその方が望ましいと考えております。
  155. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 国政さんいかがでしょうか。
  156. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 御指摘のとおり、次から次へいろんなのが出てくるだろうと思われます。したがって、これだけでは防止できないということになるだろうと思います。したがって、もし必要ならばすぐ追加指定するという、そういう行政の機敏な動きというのがこれまで以上に重要になるんではないか。その点では、今まで以上の努力をしていただく必要があるだろう、こういうふうに考えます。
  157. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三木先生いかがでしょうか。
  158. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) この預託取引の例で一つまたございましたので申し上げますと、土地の取引でありまして、北海道の無価値な原野を売るという、まあ新聞記事などでは原野商法とか別荘地商法と言われておりまして、やはりこれも、そういう資産の運用という視点で見直しますと、そういう側面を持った取引であり、また悪質な業者という点で言えば被害であったわけでありますが、最近、売却して預っておいて、一定期間預って、そしてその期間後転売して、確定した利率二〇%を土地の代金とともに返すというふうな形態が出てきております。土地を、この法律の言い方をすれば商品としたような預託取引、聞こえはいいんですが、詐欺商法なわけなんでありますけれども、そういうのが出てきております。  それで、斎藤議員がお尋ねになりました点についてなんでありますが、確かにこの資産運用の多様化ということであらわされる状況がございます。金利の低下によって、特に退職された方が生活を維持するに、従前と違いましてやはり年金だけには頼れないという状況と、さらには家族関係が核化しまして、息子や娘だけに頼れないというふうな状況が相まちまして、余計に金融資産に対する関心度というのが高まってきており、しかし知識がないことをいいことに足元をすくっているわけであります。  それで、やはり資産の運用についての体系的な法体制あるいは行政の整備ということが不可欠だと思いますし、私はもう一点強調したいのは、比喩を出して恐縮なんですが、例えばペストやコレラが外国で蔓延しても、日本への検疫体制が徹底しておって上陸しなければ、日本では被害が広がらないわけであります。それと同様に考えまして、この種の詐欺商法は訪問販売の形態をもってやってまいります。訪問販売には訪問販売法の適用を受けている、あるいはその範囲に所属する訪問販売と、その外にあったこの現物まがい商法など、まあ原野商法もそうでありますが、私はまとめて利殖商法と呼んでおりますが、そういう分野があります。やはり訪問販売法を抜本的に改正して、悪い製品、商品取引が一般市民の家の中へ上陸してこないようにする、それが大切であって、訪問販売法の抜本的改正が不可避かと考えます。  以上でございます。
  159. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 三先生に大変いろいろと教えていただいてありがとうございました。私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
  160. 田代富士男

    田代富士男君 最初に、日弁連の三木参考人にお尋ねをいたします。私も参考人と同じように大阪でございます。本日、お忙しいところ本当にありがとうございました。  三木先生が日ごろ消費者の力強い味方といたしまして、複雑な消費者トラブルの解決のため努力されていることを地元でもよく聞いて、敬意を表している次第でございます。  そこで、ただいま参考人としておいでいただきまして、この商品預託取引法案の問題に対して貴重な御意見を賜っておりますけれども、この法案は、御承知のとおりに、契約の前にその内容を開示することを規定しているわけでございますが、これで被害発生の防止に十分寄与することができるかどうか。これに対して三木参考人は、ただいま最初お話しいただいたときに、本法案では現物まがい商法とその被害の再発防止はできないと断言せざるを得ないという、こういう御発言でございました。それで、不十分とするならばどのような点であるのか、そういうお考えであるかということが第一点でございます。  第二点は、本法案は、規制方法としては商品の政令指定制をとっておりますけれども、将来問題を生じるとするならば、どのようなものが想定されるのか。また一方、許可制という方法も考えられますけれども、今もいろいろ議論が出ていたところでございますが、行政に過大な負担をかける、また悪徳業者に逆にお墨つきを与えることになりはしないかなどが心配される、そういう御議論も出ておりましたけれども、三木参考人としてこの点についてどのようにお考えであるのか。  第三点は、本法案では、業者が預託を受けたものをそのまま保持すること、いわゆる要物性については排除していないようでございますが、もし問題が起きるとすればどのようなことが考えられるのか。  この三点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  161. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 第一に御質問いただきました開示の内容に関することですが、まず、この法案は言うなれば開示主義といいますか、ディスクロージャーの法思想を押し出している法律かと思います。そのこと自体は契約関係をルール化す ることで必要なことでありますが、現物まがい商法の被害に着目したときに、ディスクロージャーを中心にする規制だけでは被害が防げないということであります。  先ほど申し上げましたが、本当におじいさん、おばあさんが多くて、私のところへ来られましても、一つは契約書自体が朗読できない、あるいは目が不自由で見えない、難しい漢字が読めないというふうなことがもう多々ございます。そういうことがありまして、例えば私が事件処理に当たるために委任状をもらいますにも、その文字が読めないということがありますので、かみ砕いてこういうこと、業者はだれだれで、そこから奪い取られたものを取り返すための委任状をいただくんですよというふうに話をしまして、委任状をいただくというふうなことでありますので、開示をするということは大事ですが、この現物まがい商法の規制の基本にそれが据えられるのは間違っているということであります。  開示の内容も問題でありまして、この預託取引というのが物品の預かりと返還だけであれば、この法案に書いてあります開示内容で足りるかとは思うんです。契約の重要な要素が物を預かって返す、それに利息を一定の金額を払うというだけでありますが。しかしこれが大事なことでありまして、この種の取引は、お金あるいは商品を預けてそれを運用してもらって返還してもらうというのでありまして、ですから、物品を預かるところにこの種業態の本質があるのではなくて、それを運用して利益を生み出すというところに本質があるわけでありまして、いろいろな要素がありますが、それがゆえに有利な利殖方法として誘引力があり、顧客がそれに応ずるわけであります。ですから、開示をするときにも、どのように運用するのか、その運用される確実性、安全性の保障はどうなっているのか、この点をはっきりしないと、この商法の本質をついた規制にならないというふうに考えます。  二点目、政令指定制と許可制に触れられたのでありますが、こういう資産を運用して利益を出す、資産運用取引という言葉であらわされる法律的行為でありますので、物資の流通を円滑にするという観点から物を見るべきではなくて、そういう利を図る、もう少し広い意味では、いわゆる投資的行為という本質をとらまえますならば、物資を政令指定するというのは本質から外れることであって、それゆえに指定されない商品への逃避、回避を許すことになるわけです。  何が考えられるかという御質問をいただきましたが、私も先ほど来申し上げておりますように、日本弁護士連合会のルートを通じて幾つかの例を集めまして、その中に観音竹があり家具があり、そして土地があったわけです。先ほど斎藤議員から御指摘のリースマンションも同じような形が考えられましょうし、また紹介しましたネックレスも考えられます。そのほかあらゆる動産類、そしてそれが一定の価値を持っているというふうに国民の認識があるようなものであれば、あらゆるものが取り上げられると私は思います。ですから、政令指定では足らないということ。であります。  許可制の点についてでありますが、行財政改革を進めないといかぬ中で、許可制というのは行政コストを大きくするということからの批判があるわけですが、こういう主婦や老人の生活資産を守るということについては、やはり国がきちっと面倒を見ないといかぬと思います。御老人の中で、何といいましょうが、御老人であるがゆえに国というものに対する期待が我々若い者以上に大きい、保護してくれるもの、きちっと管理してくれるものというふうに思っておる期待にこたえる必要があると思いますのと、先ほど申し上げましたように、この預託取引で通産省に許認可を担当する部局を置くのではなくて、信託業の領域で発想を進めていきますと、それほど負担にならないと思いますし、さらに許可する要件を、一定の資産があるとか、そういう返還能力を裏づける要件を定めて客観的に判定し得るようにすれば、そう大きな負担にもならないというふうに考えます。  三番目の、現物の裏づけの存否の問題であります。この法律の非常に問題なところ、核心に当たるところでありますが、物の裏づけがなくともやれるというところであります。物の裏づけが要らないということを提案者が言われているのではないとは思いますが、法律の規定からすれば、物の裏づけは要らないことになります。受け入れるときに金地金などを売ったようにしてまた預かって、そして金銭を受け入れて預かり証券を渡す、現物を預かっているかのような証券を渡すことができますし、またこれ売却のときについては十分な規定がないわけでありますが、返還のときについては、その物を返さなくとも、その物と同等の金銭で返してもいいということが容認されております。  そういうことが重なりますと、結局物の裏づけがないのに預かり証だけ発行しておいて、返してくれといったときには資金の手当てをしてきて、お金だけ返すというふうなことが可能なんでありまして、それを法律的に言えば、出資法違反行為を誘発していくということにつながります。  出資法といいますのは、もう言うまでもなく、保全経済会の問題が起きたときに制定された法律でありますが、当時もやはり対象事象が経済事案であるがゆえに、さまざまな脱法形態、変化形態が考えられるというところで、その脱法を許さないようにしようということで出資法の規定ができているわけです。この法律で裏づけがなくできるということになれば、出資法違反を容認していって、出資法が適用されにくくなる、そういう危惧を持っております。  以上です。
  162. 田代富士男

    田代富士男君 ありがとうございました。  次に、読売新聞の国政参考人にお尋ねをいたします。  参考人には、極めてお忙しい中をおいでいただきましてありがとうございました。また、ただいまは示唆に富んだ御意見を拝聴いたしました。  最近は、国民の間に利殖に対する関心が強く、このような背景の中で悪徳商法による消費者トラブルが多発をしているわけでありますけれども我が国ではいまだ資産形成取引の歴史も浅いわけでございまして、投資による損失を自己責任のみに帰するのも無理があるのではないかと思われます。こういう点で大事なことは、消費者教育あるいは啓蒙の重要性ということではないかと思いますが、この点についてどのように国政参考人はお考えであるのか。  ただいま小林参考人が、この消費者教育に対しまして行政に要望しているところであるけれども、大海に石を投げる状態である、少々の金を使っても効果はない状態である、また業者の対応も逃げの姿勢であった、業者としてもそういうことはセールスマンに教育していない、セールスマンだけがやったのであると逃げの姿勢であった、これでは業界の信用もなくなってくる、こういう反省から、この業界側と消費者側との接点にあるものがお互いに協力してやらなくちゃならない、ここらあたりが効果のあることであるけれども、まだブリッジができてない状態であるという意味の御発言等がございましたけれども、どのようにお考えであるのか。  特に私は、今も議論が出ておりますけれども、被害者に高齢者が多数含まれていることから、高齢者に対する消費者啓発についてどのようにお考えであるかお聞かせいただきたいのが第一点。  第二点は、この種の商法というのは、法の網の目をくぐって新手の商品、商法が次から次に出てきて、行政対応がおくれがちになりまして、被害を拡大してしまうおそれがあることもありますけれども、この点新法で十分対応できるとお考えであるのかどうか。  この二点についてお聞かせいただきたいと思います。
  163. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 消費者教育の具体策というのは、御指摘のとおり重要でありながら、非常に難しい問題だと思います。特に高齢者への教育をどうしたらいいかというのは、高齢者に対して まず基本的に経済の知識を持っていただくのが一番いいんですが、そうは言っても、それは読まない、聞かないんだ、それが現実だということのようなんで、そうなってくると、いかなる方法も意味がないということになるんですが、現在非常にいわゆる利殖に関する雑誌、新聞あるいはテレビなどの番組がふえておりますので、基本的にはまずこうしたことを見ていただくことが必要だろうと思います。  しかし、先ほど言いましたようにそれを読まないんだと、聞かないんだと、それが現実なんだから何とかしろと言われると、かなりこれお手上げなんですけれども、まあそれこそ敬老会とかいろんな組織もありますので、あるいは各地に消費者センターがあります。そういったようなところを通じて、やはりうまい話はまず考えると、うまい話はまずだれかに相談しなさいと、肉親に相談する人がいなければ、消費者センターとか役所の窓口へ来てくださいということを徹底的に通知していただくことがまず必要かなという気がするんです。幾らやっても、とにかく聞いてもらわなければ、読んでいただかなければしようがないわけでして、ですから、特に高齢者に対する教育と言われると本当に困るんですけれども。  先ほども言いましたように、高齢者というのは若いころに利殖になれておりませんので、本当にもう決まり切った銀行預金か郵貯しかなかったわけですから、今の時代になかなか合わないかもしれません。ですから、若いうちからやはりそういったような教育をする必要があるんではないか。日本では昔から金は不浄なものというふうな意識がありまして、金もうけの話などというふうな観念があります。したがって、学校教育でもそういったような教育をしておりませんので、その考えをまず改めて、何も投資の方法まで教える必要はありませんけれども、もうちょっと金利とか利殖だとか、世の中の金の動き方というようなところは教えるべきであろうと、こういうふうに思います。  それから、業界の努力というのも次に必要であろうと思います。しかし、これは悪いことをする意思のある業者にとってはそういうことはしないわけで、むしろいかにごまかすかというだましのテクニックを使うわけですから、ごまかす業者に努力要求するのはこれは無理で、ですから、ごまかさない業者の方に業界全体として何とかやろうという、業界ぐるみのシステムをつくっていただく以外はないと、こういうふうに考えます。  それから役所の対応については、一つは、役所というのが消費者行政のためにあるんだという感じをもう少し強く出していただきたい。大体どの役所もそうですが、まず業界行政が先にありまして、消費者行政というのはどうしても後回しになる傾向が少なくともこれまでにあったんではないかと、そういう感じがいたします。したがって、役所の行政の中で、業界と同時に消費者保護というのも大変な大きな分野なんであって、これは両々相まって初めて行政として完結するんだという感じ、考え方をまず持っていただきたいと、そういうふうに思います。  そして、先ほどもちょっと触れましたけれども、何か問題が起きたときに、できるだけ消費者をそれに触れさせない、できるだけそこから避けるという情報を出していただくことが、被害を防ぐ意味で非常に重要なんではないか。被害が起きてから、そうした相手が破産してから残っているものを取り上げようというのは、実はこれはかなり難しい話でして、いわば企業が破産したときに、破産の後債権者が債権を取り戻すのが難しいと同じように、起きてから債権を取り戻すんではなくて、起こさないようにする、それに近づかせないようにするというふうなことが必要であろうと思います。したがって、そういう意味の情報提供のシステムなり組織なりというものをもう少し役所として考えていただきたい、そういうふうに考えます。どうも不十分ですが。
  164. 田代富士男

    田代富士男君 時間の関係もございますから、次に、日本訪問販売協会の小林参考人にお尋ねをいたします。  業界の代表として、貴重な御意見を聞かしていただきましてありがとうございました。本法案とは直接関連のない業界かもしれませんが、消費者保護という観点からお伺いをいたします。  訪問販売では、御承知のとおりに、販売員が商品を売らんがために、今さっきもたびたび出ておりましたとおりに、誤解を招くような説明をする、何といいますか、過量販売をするなど販売員の資質にかかわるトラブルが多いようでありますけれども、業界あるいは販売員の資質の向上についてどのようにお考えであるのか。今さっきも逃げの姿勢というようなあれもありましたけれども、この点についてどうお考えになるのか。  第二番目には、悪質な業者はアウトサイダーに多いと言われておりますけれども、今さっき同僚の委員の質問におきまして、会社の数でアウトサイダーが七割、販売員の数では三割程度であるから少ないというようなお話でございましたけれども、私は多いのではないか。これはお互いの理解の違いでありますけれども、そのように思っておりますが、そのような業者の駆逐が業界全体のイメージ向上には重要ではないかと思うんですが、協会として自主規制への取り組みをいかにお考えであるのか。ただいまは行政サイドにお願いをして指導をして今進めているというようなお話もございました。しかし三木参考人からは、事業する以上は協会に入るのは当然であるというこういう強い姿勢でやるべきであるという参考人の御発言等もありましたけれども、この点についていかにお考えであるのか。  第三点は、消費者トラブルに対し、協会としても消費者にわかりやすい窓口を設け、積極的に取り組んだらどうかと思いますけれども、いかにお考えであるのか。  この三点に対してお願いをしたいと思います。
  165. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 協会の基本的な姿勢は、先ほど申しましたように、セールスマンの倫理綱領から登録制度というものが柱になっておりますが、これを実際に効果あらしめるために、ステッカーを消費者の家庭に張っていただく運動を今やろうとしております。これは教育登録証をお持ちですかということをセールスマンに聞いていただくためのステッカーでございまして、訪問販売のこれは原点でございます。今までは登録証を見せてくださいということを消費者の方も要求しなかったし、セールスの方も積極的に見せることはなかった。したがって、登録制度そのものの効果が非常に薄かったわけでございますが、これではいかぬということで、この徹底的な普及ということをことしの事業の大きな柱にしております。  これによりまして、トラブルが発生したときには、まずそのセールスの方が登録者であるかどうかということがはっきりわかりまして、登録者である場合には、その登録証を二回以上の場合は取り上げる、登録の取り消しということで、個人に対してはそういう処置をとると同時に、それを繰り返す企業に対してはその企業のセールスマン全体の登録証の回収を図りまして、再教育をしてそしてまた再度交付をするというふうにやっております。これはやはり何といっても消費者センター、消費者窓口等で御協力をいただかないと実行できませんので、この点につきましては通産省を通じましていろいろお願いいたしまして、我々としても地方消費者センターあるいは相談窓口にも出かけまして御協力をお願いしているわけでございます。  この場合に、たまたまアウトサイダーの方々事故であった場合には、これは当然その属する業界団体に対して、おたくの会員さんの会社が、これは我々のインサイダーではないけれども、そちらの団体の方の会員でございますから、処置をしていただくように申し入れます。そして、基本的にはお行儀をよくした上で、訪問販売協会の方に加入して登録制度に協力するようにというふうにお願いするようにしております。  総合的にお話し申し上げましたが、基本的には消費者問題というのは、私はやはり発生したら直 ちにそれを業界が受けとめまして、そしてこじらせないで速やかに解決するということが一番基本姿勢だろうと思います。解決ということになると、今までは無条件解約とか、あるいは解約によってせっかくとってきた、成約した取引がだめになるわけでございますから、当然セールスの方の受け取った歩合金もキックバックですね、これもまた取り消しになるということで、消費者にはまことに申しわけなかったんですけれども、現場の話を聞いておりますと、セールスの方はあくまでも自分は合法的にやったということを主張するわけで、セールスの話と消費者側の話と全く食い違っておりまして、実はこういうことを言った、ああいうことを言った、これを約束した、サインも自分がサインして無理やり判を押させられたというような正反対の話が出てまいります。これをできるだけニュートラルに是々非々で解決していく機構上の整備が必要であるということは、協会スタートのときから既にわかっておりまして、苦情処理機構というものは組織としてはつくってございますが、十分に機能しなかった面もございますので、これからはその部分は積極的に機能させながら、先ほど申し上げたように消費者機関と協力しながら業界の健全化に進んでいきたい、こういうふうに考えております。
  166. 市川正一

    ○市川正一君 私、日本共産党の市川でございます。私の持ち時間は参考人の皆さん方とのやりとりを含めて合計二十分なので、ひとつよろしくお願いいたします。  最初に、小林参考人にお伺いいたすのですが、先般訪問販売に関する東京国際シンポジウムというのが行われました。新聞記事によりますと、年商売上高は約二兆円、先ほど一兆九千八百億円とおっしゃいましたが、世界一でありながら、消費者保護の面では有効な手を打っていない日本の業界の立ちおくれが浮き彫りにされた形だと、こう報道されております。また当日、学者や消費者代表からの厳しい批判も見られたようでありますが、率直に言って業界の責任は重大な社会問題になっておると、こう思います。  そこでお聞きしたいのですが、そういう社会的責任を果たそうとなすっておる業界にとって、この法案が成立しますと、訪問販売でこの種の商売、言うならば預託方式によるいわゆる豊田商法というのが合法化、公認化されることに相なるのですが、それは結果的に訪問販売業界全体のイメージダウンにつながるおそれはないのだろうか。言いかえれば、もし本当に健全な訪問販売業界の発展を望まれるならば、この法案はまことに迷惑だと言わざるを得ぬと思うのですが、どういうふうに受け取っていらっしゃいますか。
  167. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 御指摘のとおり、豊田商事事件は業界にとっては非常に迷惑だと考えております。  なぜ迷惑かと申しますと、これが同じ訪問販売の土壌で議論されるとまことに迷惑であるということでございますが、訪問販売法の中にこれを取り込まれないで、別途立法されれば、はっきりと外で法制化されることになるので、これを厳しく立法されることについては原則的には賛成でございます。
  168. 市川正一

    ○市川正一君 私、非常にパラドックス的な言い方をしたんですが、この法案によると結局豊田商法も取り込まれることになってくるんですよ。ですから、私も研究しますから、業界の方も、小林参考人の方もぜひもう一歩突っ込んだ研究をしていただくことを私お願いしたいと思います。  国政参考人にお伺いいたしますが、参考人はこの法案の土台になった産構審答申の小委員会のメンバーの一員でいらっしゃいます。ある意味ではこの法案の作成者の発想といいますか、立場というものを反映する御意見としても、私先ほど来の御発言を興味深く拝聴いたしました。また、先ほど梶原委員も触れましたけれども参考人が論説委員をやっていらっしゃる読売新聞の三月十三日付の社説「〝現物まがいの〟被害を防ぐには」、ここに持ってまいりましたが、その内容や表現に至るまで、当然のことでありますが、同一の御見解として、この点も興味深く拝聴いたしました。  そこで、結論的にお伺いしたいのですが、今度のこの法案で、この種豊田式の悪徳商法というものが根絶できると考えていらっしゃるのかどうか、その認識と判断を伺いたいのであります。というのは、産構審の小委員の一員としても、またマスコミ界の一員としても、責任ある立場にいらっしゃる参考人の率直な見解をこの機会に承りたいからであります。
  169. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 私、確かに御指摘のように小委員会委員をしておりましたが、きょう申し上げているのは私個人の意見でございます。それから読売新聞の社説については、これは論説委員会議論してみんなで決めることになっております。その点ちょっと一言。  それから、これによって被害が全くなくなるかという御質問でございますが、これはなくならないだろうと思います。法律というのはそういうものだと思いますね。たとえこれ全部禁止しても、こういうのはだめなことですよと、いわゆる禁止してもそれを破る人は出てくるわけですね。そのかわりその破った人は罰せられる、あるいはそうできないようにかなりたがをはめられると。だけど、それを乗り越える悪い人が出てくれば、当然それは起こり得るわけで、そういう意味では根絶というのは不可能だと思いますね。しかし、ないよりはこちらの方が前進であろう。これだけさんざん騒がれましたし、したがってかなりの教育効果も行き渡っているのではないか。それも含めて考えてみれば、前よりはかなり前進しているのではないか。  それからもう一つ、出資法と信託法について、これも、もう動員していればできるじゃないかという御意見は確かに私一理あると思います。したがって、これだけがすべてと私は別に考えておりませんけれども、しかしこれでもないよりはまあいいであろう。それから、信託法と出資法については、これは大蔵省の方で、大蔵省がやるといえば本来できるのではないかとも考えます。したがって、そういうことになれば、それはそれで意味があるしと考えます。
  170. 市川正一

    ○市川正一君 きょうは討論の場でございませんので、御意見を率直に、私ども大いに参考に聞かせていただくということなんですが、私の判断では、ないよりある方がましというよりも、あることによっていろんな問題が逆に出てくる、ちょうどサラ金規制法みたいな側面を持っているということを私は思うんです。  それで、今参考人のおっしゃいました出資法や訪問販売法の改正の問題でございますね、これ確かに三月十二日付の社説の結びに、これは何も参考人がお書きになったとは申しませんが、論説委員をなさっていらっしゃるわけですから、大きな影響というか、イニシアチブ、かかわり合いを持っていると思うんですが、「この種の商法の規制は現行の出資法や訪問販売法の改正でできる、との日本弁護士会連合会の意見にも一理ある。」というふうに結ばれておりますが、今お話しになっている点をもう少し突っ込んで御教示いただけませんでしょうか。
  171. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 出資法の場合は、現金が中心になっておりますね。ですから、これをもし金を預けるものの形を変えたものであって、本質的にお金を預けて利子をもらうんだ、あるいは運用益をもらうんだということだけに限ってみれば、あるいはそういうこともあり得るのかなと、こういうふうに考えます。
  172. 市川正一

    ○市川正一君 それでは残念ですが、時間がございませんので進めさせていただきます。  三木参考人にお伺いいたしますけれども、今回の豊田商事の被害の特徴ですね、それから被害者の方々の深刻な現状について、実は私、豊田の一一〇番というのをこの委員会で提案しまして、通産省もそれを採用したんですけれども、多くの実態に直接触れていらっしゃる三木参考人から、この機会に被害者にかわってというふうなことも含めて、できるだけリアルに状況を聞かせていただきたいというのが一つです。  それから、そのことと関連して、先ほど国政参考人は、豊田商事と現物まがい商法とは違うんだ、区別して考える必要がある、こうおっしゃったし、三木参考人もよい豊田と悪い豊田というふうに比喩的におっしゃいましたけれども、そういうことが今度の豊田事件の経過から見て、現実に実際的にあり得るのかどうかということについても、見聞された状況に即してお伺いしたいというふうに思います。
  173. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) まず最初の被害の実情なんですが、豊田商事の場合は裁判所の破産手続が進んでおりますので、そこにあらわれた被害者の数は二万七、八千人、被害金額が現在のところ一千百十五億円として届けられておりますが、これは当然この種の事件として暗数もありますので、私は経験的なものも含めまして被害者数三、四万、被害金額一千五百億円というふうに推計をしております。これは豊田商事だけでありまして、東京では三和信託、関西方面では大泉商事、それ以外に名古屋でも九州でも同種の現物まがい商法の被害者が多数出ております。  それで、被害者の実情なんですが、御老人が多いのと、それからもともと病気であったのに加えて、さらに精神的ショックから寝込んでしまったという方もおります。それから、これが深刻なんでありますが、家庭の生活資金を奪われた。そして、主婦が被害にあった場合なんですが、奥さんは知識がない、強引なのに負けて家庭のためによかれと思ってやりました。ところが、ふたをあけるとこういう詐欺会社に、被害にひっかかったわけです。そのことから、生活資金が奪われるということで、家庭に亀裂が入りまして、家庭が暗くなる、言えない、けんかになる、そういうふうな精神的な被害まで出ております。その行き着いたのが、非常に御不幸なことに自殺されるという方でありまして、自殺されてない方でも、私も実際に線路をさまよったというふうな人も見聞きいたしました。それほど深刻であります。  二点目のことでありますが、豊田商事のような詐欺商法は根絶しないというふうに関係者はすべて思うわけでありますが、この法案は、そういう根絶しなければならない豊田商事に想像されるところの預託取引、それを含ませて一緒に規制しようとするものですから、具体例はないわけですけれども、想像される預託取引、正常であると予想される預託取引に対する規制ということのために足を引っ張られまして、豊田商事を抑えつけられないということになっております。  私たちが第一線の実務家として危惧いたしますのは、出資法の範囲が狭められないか。法律上は別という形式はありますけれども、これはまた実務家の第一線における感覚として、出資法違反の行為も一応外形上は預託取引をとります。そうすると、預託取引のこの法律で規律されるということから、警察によって出資法が適用されるということが非常に難しくなるという危険がありまして心配しております。  以上です。
  174. 市川正一

    ○市川正一君 先ほど三木参考人の基本的な見解を伺いましたし、また文書も拝見いたしました。これによりますと、法案はかえって現物まがい商法を法的に認知するものであり、そして結論的には、一番最後のところで、「本法案では現物まがい商法とその被害の再発を防止できないと断言せざるを得ない」というふうに結んでいらっしゃるのでありますが、私の立場からすれば、まことに傾聴に値する見解として伺いました。  そこでお聞きしたいのは、ではどうするかという問題なんですが、日弁連が二月にお出しになった意見書によりますと、その要旨でありますが、第一は出資法の積極的適用ということがうたわれ、第二は訪問販売法の抜本的改正ということが提起されております。そこでその点をもう少し解明していただきたい。今も出資法との関係ちょっとお触れになりましたけれども、それとこの法案との関係などについても、その際に触れていただければ幸いです。  それから、もう時間が参りましたので、最後に、実は私ども日本共産党として五月二日に、「悪徳商法の被害をなくすために」という政策大綱を発表いたしました。これは日弁連にもお届けいたしましたので、もしお読みになっていただいているならば、大綱は四つございまして、一つは「現物まがい」商法の禁止、二つは訪問販売法による業者規制の強化、三つは私設市場の禁止、四つは海外先物の市場・商品の指定制の廃止などでありますが、どうすべきかということと関連して、もし御感想などあれば御所見を伺って、深刻なこの被害者の救済のために、その生活と文字どおり命を守るために一層御奮闘を希望して、もう時間が参りましたので、私の質問は結ばさせていただきたいと思います。
  175. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 日本弁護士連合会では、御指摘のとおり、豊田商事のような詐欺的現物まがい商法に対しては、出資法を適用し、さらには詐欺罪で取り締まるべきだというふうに申し上げております。  それは、出資法の制定当時の議論を振り返ってみれば、まさにこのような事態が予測されていたということがわかるわけであります。出資法の制定当時に、いろいろ脱法行為があるのではないかというふうに議論がされました。その当時は、まだ金地金の流通等が自由化されておりませんでしたから、直接に金地金を取り上げて議論はされておりませんが、例えば金銭の受け入れが実態なのに、収入印紙にかえて受け入れるとか、あるいは返還するときにお金でそのまま返しては出資法違反がはっきりするから、一たんは物品で返して、それをまた買い取る、そのことによって結局金銭を返す、何かパチンコ屋のような話でありますけれども、そういうふうなことも議論されておりました。  これは一端でありまして、そういう商品に仮託して金銭を集めて、それを高利を支払うといって金銭を集める、そういう業態といいますか、業者が多数出てくることを当時の国会議員の方々政府関係者はお考えになっておって、そして脱法行為の禁止ということを、これはやや珍しい法規定でありますが、出資法に置かれました。  こういう精神にかんがみるならば、この豊田商事の金地金あるいはその他会員権に仮託して金銭だけを集めたということは、もう実態がはっきりしておりますから、出資法による取り締まり、あるいは詐欺罪による取り締まりを徹底していただきたい。悪いことをやったら処罰されるということを被害者、特に老人の方は願っております。それがまず再発を防止する原点であるというふうに考えます。  しかし、出資法も完璧ではございませんでしたので、日本弁護士連合会が申し上げておりますのは、出資法の運用をしやすいように法規制を改善する必要もあるということを考えておりまして、一つは、そういうものを媒介としたときの解釈例規を置くこと。二つ目は、大蔵省による行政権限を創設すること、この点に関しましては、この出資法が成立をしたときに同じく議論がありましたが、行政権限が創設されずに、しかしながら大蔵省設置法において、この出資法の施行状況については十分監視していくということが定められておるわけでありますので、この際一歩進んで行政権限の創設が必要かと思います。第三に消費者、被害者からの措置請求権を認めることによってその活用を図っていく、ちょっと平たい言い方になるんですが、民間活力を大いに導入するというふうに私など申しておるんですが、被害者や消費者からの訴えを聞いて行政が動いていく、そういう消費者、被害者の民間の活力を行政に反映していく法制度をつくる必要があるというふうに考えております。  さらに、この現物まがい商法は、ほとんどすべてが訪問販売の形態であります。訪問販売法の改正が不可避かと思います。  さらに、先ほど日本共産党・革新共同から発表されました「悪徳商法の被害をなくすために」というのを読ませていただきました。私は、先ほど来申し上げておりますように、先物取引の被害の 救済から取り組んでまいりました。そのときの法規制の際にも、通商産業省、農林水産省は、一般の国民を海外の市場に誘導するといいますか、投資機会を与える必要は経済的に存在しないという立場にお立ちになりながら、それを認めるような法律になっております。私たち先物取引被害全国研究会は、この法案ができたときから、一般の市民を海外の先物取引の投機に誘うことは禁止してほしいというふうに申し上げてまいりました。そういうふうな趣旨で共産党と革新共同の方も指摘されておりますので、意を強くした次第でございます。  以上です。
  176. 市川正一

    ○市川正一君 どうもおおきにありがとうございました。
  177. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は二、三の点お伺いしたいんです。  まず第一に、こういうふうな詐欺まがいの商法というのは、今後ふえていくかどうかということなんです。というのは、先ほど御説明がありましたように、現在低金利で、利殖法がないとか、あるいは不況になってくるとか、そういった特殊な事情が今あるわけです。しかしながら、例えば去年までのような社会情勢が変わらないとして、文明の進歩とといったらおかしいですけれども、社会の発展とともにこういうものはふえていく傾向にあるのかどうか、お三方おのおのからお伺いしたいわけです。どういうふうに見ておられますか。
  178. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 現在、末端の流通形態は非常に多様化いたしておりまして、また私どもでも、今どういう新しいやり方が行われているかという実態を把握しておらない状態でございますが、とにかくあっと驚くような売り方、システムを頭のいい人は考えながらやっておるわけです。うまく成功すると企業の発展に結びつきますが、なかなか際どい、詐欺まがい的な手法を取り入れる可能性は非常に多いんじゃないかと考えております。なくならないだろうと思いますね。    〔委員長退席理事前田勲男着席
  179. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 利殖の種類、形態というのはこれからどんどんふえていくだろうと思います。今までが少な過ぎた、それは金融業界が非常な統制のもとにあったからだと、こう言っていいと思います。今非常に国民の金融資産がふえておりますので、なお利殖のニーズというのは高まっている。したがって、新しい金融商品あるいは利殖の方法というのはどんどんふえていくだろう。  それと詐欺というのはちょっと別の話でありまして、利殖はふえても詐欺する人がいなければ別に悪いことはふえないわけですが、しかし、どんなにいい利殖の方法であっても、詐欺をする人は常にいるわけですから、したがって、利殖の種類がふえれば詐欺の機会もふえるであろう、こういうふうに考えます。
  180. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 私は、規制する法律行政が今のようなままでは被害はふえるというふうに考えます。  先ほど御指摘のありましたこの種被害の社会情勢といいますか、金利が低下し、人の退職後の生活期間が長くなり、それを金融資産を中心として、それに頼って維持していかなければならないという状況があり、片や産業界といいますか、金融界の方で金融の多様化が図られる、国民の関心も高まる、しかし知識が十分でないというその状況は続くと思います。だからこそ、そういう知識が十分ない人も保護されるような的確な、厳重な法規制が必要だというふうに考えるわけなんです。  以上です。    〔理事前田勲男退席委員長着席
  181. 木本平八郎

    木本平八郎君 それじゃ、またちょっと繰り返しになりますけれども、例えばそういう商法が年々といいますか、陰湿化しているというか、悪質化しているというか、巧妙化しているというか、例えば法だとか取り締まりの規制が厳しくなると、それの裏をかくようにどんどん、例えばばい菌の場合、その抗生物質ができるとそれの耐性菌ができて、どんどんどんどんそっちの方も強くなっていくような、そういう傾向というのはやっぱりこの商法にも感じられると解釈していいわけですか。三木さんからお願いします。
  182. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) それは、一つの傾向性としてこういう業者にはありますが、問題は、そうだからこそできるだけの規制を考えないといけないわけでありまして、なかなか規制が難しいからやむを得ないんだというふうにあきらめますと、私のように被害者とともに被害救済に当たっておる弁護士としては、甚だ残念なことでありまして、私たち弁護士の世界の中で、特に刑事手続においては一人の無事をも罰しないという刑事原則がございます。無実の者を罰するようなことがあってはいけないという原則でありますが、この消費者取引の問題についても、一人の被害者も出さない、そういうことを念頭に置いて法規制をやはり考えていかないといけないんじゃないかと思います。  それも、具体的にどうするかが問題でありますが、特に高齢な方の金融資産を守るということからすれば、悪質な業者が活動できないような、そしてそういう被害者の方々のニーズには正規の業者が応じられるような、そういう体制が必要だというふうに思いまして、この法律では開示も不徹底だし、悪いことをやってもそれの取り消しや罰則が不十分だし、行政もいろいろ事情があるんだと思いますが、なかなか機動的になれないのが現場にいる者から見ていて実際なんです。ですから、この法律を超えて、もっと厳格なものをつくってほしいということを強く感じます。
  183. 木本平八郎

    木本平八郎君 国政参考人にお伺いしたいんですが、これ私の感じだけの問題なんですけれども、世界で文明国の方がこういう詐欺まがいのものがどんどんふえていくんじゃないか。  それで、例えば教育程度が低いとか、余り知恵がないとか、頭が悪いというのは、詐欺なんてものはなかなかできない。もっと直接的な暴力犯で財を奪おうとするわけですね。したがって、私の海外経験でも、どうも外国の方が非常に単純な感じがするわけですね。こういう面において、私ちょっと欧米先進国というのはよくわからないんですけれども、文明の進歩とこういうものがふえていくというのは、相関性がやっぱりあるわけですか。
  184. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) ちょっと難しい御質問で、私余り文明と詐欺の研究をしておりませんので、ちょっとつまびらかに言えないと思いますが、ただ一般的には、やはりそれは確かに、何というんですか、先進国の方がこういったようなのはふえるんではないかなと、確かにそういうふうに思います。  その場合は、やろうとする人がふえる、逆にそれにひっかからない人もふえる。結局やろうとする人とひっかかるまいとする人の闘いで、どっちにバランスが崩れるかという、こういう問題じゃないかと、こういうふうに考えます。
  185. 木本平八郎

    木本平八郎君 ほかの方で何か御意見ありましたら聞かせていただきたいんですが、今の問題で。
  186. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) アメリカでは、この種のというのか、対象範囲をどう確定するのかということがありますけれども、やはり有利な利殖を掲げた詐欺的な商法がかなり多いようであります。それはやはり金融の自由化といいますか、多様化というのが進んでいみことと、それからやはり一定の金融資産が蓄積されてきているという、日本と似たような状況かと思います。ヨーロッパの方でもあるとは聞くんですが、それほど、アメリカほどこの被害の広がりがないというふうに聞いたりします。  そこで、十分な研究をせずに、私の実務経験など踏まえての感想でまことに恐縮なんですけれども、アメリカの場合は、割と法制といいますか、法律によって規制するということが素早く行われます。そしてまた、証券取引委員会であるとか、先物取引委員会であるとか、そういう独立行政委員会をつくりまして迅速に対処するということが ありまして、被害はかなり出るんですけれども、その対処が徹底しているというよさがありまして、それは学ぶ必要があるんじゃないかと思います。ヨーロッパを見ますと、余りこういう利殖詐欺的なことはないと言われるんですが、定かではございません。  ただ、私の経験で感じますのは、人々の間における個人主義の確立というふうなことと大いに関係があるんじゃないかと思われまして、日本の場合は、訪問販売でいろいろ電話がかかってきたり訪ねてきたりすると非常に断りにくい。その点、ヨーロッパなどは個人主義が確立しておりまして、イエス・ノーをはっきり言って断るということになっておる。そういうことが日本で訪問販売、特にこういう利殖商法による被害を諸外国に比べて深刻化さしている理由ではないかなというふうに思います。  そういう国民の現状からしましても、こういう悪質な商法については、出資法によってきちっと禁止をする、ニーズのある新しい金融商品については信託業法なり銀行法なりの領域で大いに基準を緩和し、開発していただくということが必要でないかと考えます。  以上です。
  187. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、引き続きお伺いしたいんですが、外国の場合、私の聞いたところでは、アメリカなんかは、法律というのは割合に簡単にしておいて、その運用上というか、行政で非常に敏感にビビッドにはっと動いて、さっと手を打つというふうな対応をしているというふうに私は聞いているわけなんですけれども、今お話を聞いていますと、日本も今後さらに、低金利だとか不況の問題がありまして、こういう詐欺商法がどんどんふえていくであろうということはもう予測されるんで、今いろいろこういう対策を考えているわけですけれども、その対応の仕方として、外国の場合はむしろ法律の内容は簡単にして、こうやる。  ということは、私はこれゴキブリ法案だと思うんですがね。ゴキブリを追っかけても追っかけても、どんどんどんどん次から来て、もう到底追っかけ切れないという感じはするわけですね。そうすると、やはり運用の方に重点を置いておいた方がむしろいいんじゃないかという気もするんですけれどもね。三人の方々の御意見を、それではまた三木さんから順番にちょっと、外国ではどういうふうにやっていて、その運用の方に力を入れた方がいいかどうか、そういった点から所見をお伺いしたいわけですが。
  188. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 外国といいましても、私も余り十分勉強しておりませんでして、私の経験は、日本弁護士連合会が派遣しました米国での先物取引の事情調査の調査団に所属して、米国の政府及び各商品取引所あるいは被害救済に関与する弁護士事務所を訪ねたこと、及び最近訪問販売法の改正に関心を持っておりまして、経済企画庁がおまとめになったと思いますが、無店舗販売に関する諸外国の法制等を勉強した程度でございますけれども、アメリカでも包括的にしておいて、あとは運用でということに、必ずしもそうきちっとなっているんじゃなくて、私たち日本法律を扱っておる者から考えますと、米国の法律は、割と事細かに違法な行為を決めておるというふうに感じます。そこで、アメリカの場合は、もしそれでうまくいかなければすぐ法律を変えて、対処が早い、被害が少し出たらすぐ対処する。日本の場合は、まことに残念なんですけれども、かなり被害が蓄積して、破綻して、ようやく考え出すということになっている、そういう違いが感じられます。  あと、訪問販売でも、諸外国、まあ各国の法律文化がございますので一概に決められませんが、訪問販売による被害が、資本主義経済体制の国では割と目立つようになってきておりますので、どの国もかなり詳細な法律を決めて、クーリングオフを初めとする消費者の取り消し権を強化するという方向で進んでいることは事実がというふうに思います。  以上です。
  189. 国政恒裕

    参考人(国政恒裕君) 法律には罪刑法定主義というのもございますので、結局それとの兼ね合いになるんだろうと思います。基本的なところは法律で決めて、あとは政令とか省令といったものでやっていく。法律そのものを改めるのがもし時間がかかるならば、そこら辺は政令、省令で機動的にできるようなシステムにしておくなどの方法が必要ではないか。それから、法律そのものを改めるのもちょっと時間がかかり過ぎるのはやや問題ではないか、そういうふうに考えます。
  190. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) 先ほど来同じような御意見が出ておりますが、私も日本法律はなかなか改正が難しいというのが事実だろうと思います。しかし、現実には、こう薬張りで、一応現象が起きてくるとかなり時間かけてこう薬を張っていく、次に新しい事態が起きてまたこう薬を張っていくというふうな格好で、法体系がどんどんどんどん乱れて変わってくるような感じがいたしますが、この種の消費者問題に絡む、例えば割賦販売法とか訪問販売法のような非常に変わりやすい業態を対象にした法律は、なるべく基本的なことを決めておいて、あと行政指導ベースで対応した方が実際的じゃなかろうかなという感じがいたします。  それから、アメリカの訪問販売関係法律を見ておりますと、大体民間の自主規制の方にウエートを置いておりまして、ピラミッドセールス的なものについては禁止的なあれをやっておりますが、余り法律ではやかましいことを言っていないような感じでございます。  以上でございます。
  191. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、ちょっと時間がなくなってきたんで、まとめて質問したいんですが、先ほど三木さんから、民間活力を利用して、行政に訴えがあったら、それにビビッドに反応するというふうな方法がいいという御意見だったわけですけれども、そこで小林参考人にお伺いしたいんですが、例えば訪問販売関係でおかしなことをやっている業者がおり、あるいはセールスマンがおると、おたくの協会の会員の人たちで何かおかしなことをやっているとか、あの会社は変だとかいうことが、すぐ仲間内でやっぱりわかるんじゃないかと思うんですが、そういう点では、むしろ協会さんを中心にしてというか、監視役になってもらってやるのが非常に現実的じゃないかと思うんですがね、その辺いかがですか。
  192. 小林豊次郎

    参考人小林豊次郎君) おっしゃるように、業界の情報はやはり業界が一番よく知っておるわけでございまして、おかしなことをやっていると、これは危ないということでうわさが飛びまして、警戒警報が発せられるわけです。法的な力はないんですが、割賦販売法で信販会社とのつながりで抗弁権の切断ができなくなりまして、信販会社は融資の場合に非常に慎重になるようになりました。  したがって、問題の多い業者については、融資面で今非常に慎重になってきておりまして、資金面から徐々に詰まっていくという実態でございます。したがって、これはもっと組織的に、信販会社が融資をする際に、訪問販売関係のことに関しては協会の情報をお互いに交換し合うようなシステムを取り入れたら、かなり実際的な効果は出てくるんじゃなかろうかと考えております。
  193. 木本平八郎

    木本平八郎君 最後に、三木さんにお伺いしたいんですがね。  こういう実際の被害が起こってきますね。ところが、初期の段階は、だまされた人もだまされたということは余りわからずに、そのうちに何かごっそり配当があるんじゃないかと待っている。ところが、幾ら待っても配当が来ないから、おかしいということで少しやり出す。ところが、何かかにかごまかされて、そのうち半年ぐらいたっていよいよだめだ、だまされたということがわかるというのがまあ一般的じゃないか。  それから、今小林参考人から御説明いただきましたように、そのプロのセールスマン仲間でも、あいつ何かおかしいなと思うけれども、はっきり おかしなことをやっているという確信を持てるのにはやっぱり時間がかかるということがあると思うんですね。それに対して、私は、やっぱりこういう被害というのは絶無にはできないけれども、ちょっとでも、例えば豊田商事でも、もう一カ月早ければ被害は大分減ったかもしれないし、もう三カ月早ければ半分で済んだかもしれないということはあると思うんですね。時間との関数みたいなことがあるんですが、初めの段階というのは、やっぱり当事者も外から見ていてもなかなかわからないんじゃないかと思うんですけれども、その辺の感触をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  194. 三木俊博

    参考人(三木俊博君) 御指摘のとおりでありまして、最初は強引な勧誘を受けて、どうもおかしいんだけれども、どこが悪いんだろうというふうなところから、被害者の方も私たち弁護士のところへ相談に来られますし、また、相談を受けました私たち弁護士も、それはこういう高齢の方を長時間にわたって懐柔したり、脅迫的なことをやって契約に持っていったというのは悪いとわかる。しかし、じゃその契約のどこが悪いのか、そしてその会社が信用力、財務要件についてどうなのかということは、その一事例などからはなかなかわかりにくいわけでありまして、やはり御指摘のように、一定の被害事例の集積を待たないと見えてこないということがあります。  ですから、それだからこそ、事前の予防というのが大切でありまして、この種の悪質な業者についてはもう出資法によってきちっと禁止していただく、そして御老人の方の生活を支える金融商品の多様化が必要であれば、信託業法なり銀行法なり、あるいはその他の関連領域の中でどんどん新種商品を開発していただいて、安全な金融商品が消費者の手元へ届くというのが根本でありまして、そういうことを含めて、私たち日本弁護士連合会は許可制ということの不可避性を言っているわけで、今回の法案を見ますと、非常に指摘申し上げてきました問題点が多々ありまして、機敏に対処するというふうに行政の方は言われるんですが、なかなかそうなっていないのが実情で、さらに悪質な業者による被害が私は出るというふうに、まああえて断言とまで言ったのは、こういう実務の経験に基づいておるわけなんですが、そういう場合に、行政の方はどういう対処策をとられるのか、私の方から聞きたいぐらいでございます。  以上です。
  195. 木本平八郎

    木本平八郎君 どうもありがとうございました。
  196. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり御出席を賜り、また貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会      ―――――・―――――