○伏見康治君 恐らく、正直なところまだそういうことを余り考えていないという
段階であろうと思うのですが、SDIをこれ以上もし対応を強めるということになった場合に、第一義的に考えることは、もっぱら秘密の問題であると私は考えるわけです。
アメリカのいろいろな学界の動きというものを眺めておりますというと、まず第一に、近ごろ科学研究費の出どころが国防省から出る部分が非常にふえてまいりまして、ある
意味では我々
日本人から見ますとそら恐ろしくなるようなふえ方でございます。これは、「サイエンス」という雑誌の二月号に出ていた曲線でございますが、この指数線的に上がっているのが国防省
関係のRアンドD、研究開発費用です。それに対して、その中にも
基礎研究が含まれておりますが、それをほかの省庁とも合わせてやった
基礎研究の数字というのがこういうものです。それで、一九八〇年ぐらいまでは国防省の研究開発費というものとほかの省庁の全研究費というものが大体拮抗していたんですが、
レーガン政権になってから急速にふえまして、現
段階では国防省
関係の研究開発費の方が大きくなっているわけです。非常に大きくなっている。
そういうことを考えますと、
アメリカの現在の状態というものは非常に危険な状態だと私は考えます。特に
基礎の科学研究といったようなものは、秘密のとばりの中に置かないで、オープンな形で研究討論をやらせるということが進歩を促す一番大事な条件であるということは、学界全体の信念だと思うのでございますが、そういう
意味で、例えばいろんな学会が
アメリカで開かれたといたします。そうすると、ある学会のセッションの中に、そこで講演なさる方が国防
関係の予算を使ってある
基礎研究をなさったという方がおられますというと、そのセッションに突然国防省のお役人が入ってこられて、このセッションは公開にできないから秘密にするということになって突然その学会がいわばよその方には閉鎖されてしまうといったようなことが起こっているということが雑誌を拝見いたしますとしばしば出てまいります。
それから、やはりある大学の
先生が研究費をもらわれて——従来からの
アメリカのやり方をお話ししないと話が通じなくなるおそれがありますが、国防省が出すお金だからといって、いつも直接に軍備に関する研究であるとは限らないわけでして、遠い将来には国防
関係に役立つかもしれないという
基礎の
基礎の学問に対しても国防省がお金を出すことができるわけですから、国防省の出すお金は全部兵器に直結しているとお考えになるのは間違いなんですけれ
ども、ですから割合に大学の
先生方は気楽に国防省のお金をおもらいになる。それは
日本の
状況と非常に違うわけです。ですが、近ごろは、国防省のお金をもらわれますというと、そしてその研究成果が少しでも評価すべき
段階に到達いたしますと、突然それがグラシファイされるということが頻々と起こっております。つまり、大学の
先生としては初期は要するに自由なる研究をするつもりでお
仕事をお始めになったんだと思うんですが、それがいつの間にか秘密の枠の中に閉じ込められてしまうといったようなことが
アメリカの
国内で頻々と起こっております。
私はそれと同じようなことがSDIに関与した
日本の
企業や
日本の
先生方の間にも起こるのではないかということを非常に心配するわけです。つまり、初めは別に秘密協定なんか結ばなくてもいいよということでSDI
関係の予算をおもらいになって何かしたといたしますというと、それがある
段階に到達したときに突然グラシファイされるということは十分あり得ることだと思うんですが、そういう
意味で私はSDIの当初の
アメリカ側の言い方がそれほど秘密なことを考えていない、守秘義務のようなことは余り考えていないと言われたといたしましても、それが将来までそうであるという保証は
一つもないように思うものですから、そういう点をひとつ十分お考えに入れて
アメリカとの折衝をやっていただきたいと思うわけです。
それで、私は
日本と
アメリカとの
関係の中で武器
関係の秘密の問題が起こり得る例としてほかのことを考えてみたいと思うんですが、対米武器技術供与の取り決めというのが三年ほど前に成立いたしました。そういうときのいろいろないきさつといったようなものが今後のSDIを考える上において非常に大事だと思いますので、この武器技術供与の取り決めの中で、秘密保持に関することはどういうふうに取り扱われているかということを伺いたいと思います。