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説明員(
若林之矩君) 我が国の
退職金制度は、大
企業では大変
普及しているわけでございますけれども、
中小企業、わけても
零細企業、十人
未満の
ところの
普及状況が極めておくれているわけでございます。半分ぐらいの
企業は
退職金制度がないというのが
現状でございます。そこで、こういった十人
未満の
退職金制度のないところ、しかしこれからは高齢化社会でございまして、老後の
退職金制度の持つ
意味というものは極めて大きいわけでございます。そういった
意味で、
退職金制度の充実というのは急務になっておるわけでございます。
ところで、私どもの
中小企業退職金共済制度の
現状を見てみますと、
退職金の
支給実績、一番新しいところで
平均三十七万ぐらいということでございまして、
退職金というには大変低い
水準でございます。
そこで、今回の
改正の主眼といたしましては、
一つは
中小零細企業、わけても
零細企業に
中小企業退職金共済制度の
加入促進を図っていくと、一人でも多くの
労働者がこの
中小企業退職金共済制度に入って
退職金制度を持つようになるようにというのが一点でございます。
もう
一つは、今申しましたように、現在の
支給実績が三十七万ということでございますので、これをできる限り高い
水準にするというための
方策を講じるというものでございます。
こういった二つの
観点に立ちまして幾つかの
改正を行うことにいたしておるわけでございますが、
一つは、現在三十七万と申し上げましたが、その三十七万という低い
水準の原因は、
一つには、
中小企業の
労働者は移動が激しいということでございまして、大体一人七年ぐらいで転職をしているということでございます。そこで今回は、
通算制度というのを
導入いたしまして、
一つの
企業で
中小企業退職金共済制度に入っていた
従業員が、
中小企業退職金共済制度へ入っている別の
企業に移動いたしました場合は、
掛金を通算するという
制度を
導入することにいたしております。そういたしますと、
退職金カーブというものを
退職金共済制度がとっておりますので、
勤続年数が長くなりますと加速的に
支給額が多くなるという形になっております。七年で二回もらうよりは、十四年で一回もらった方が
退職金の額が大変有利になるということでございますので、そういった形での
通算制度をとるようにさせていただきたいというふうに
考えております。
それからもう
一つは、さっき三十七万と申しましたけれども、この原因の
一つは、
掛金の月額が低いということでございます。現在は最低
掛金が千二百円でございますけれども、その千二百円の最低
掛金のところに一五%ぐらい張りついているということでございますし、三千円
未満のところが三十数%あるということでございます。そこで最低
掛金を思い切って引き上げるということにいたしまして、千二百円の現行の最低
掛金月額を三千円に引き上げることにいたしております。こういたしますと、直接的に千二百円から三千円に上がりますと同時に、その周辺につきまして波及的効果で
掛金月額が引き上がっていくということが期待されるわけでございます。
それから、さらに第三点といたしましては、この
制度への
加入を促進いたしまして、また
給付の
水準を引き上げますために
一般の
退職金共済制度におきましては、新たにこの
退職金制度に
加入いたしました
事業主につきましては、二年間にわたりまして
掛金の月額についての
助成をするということを
考えております。それから、既に入っている
事業所が
掛金を引き上げる、例えば三千円を六千円に引き上げるといったような場合には、一年間にわたりましてその増額に必要な経費の一部を
助成しようというものでございます。
それから第四点といたしましては、かねてから建設業等の特定業種の
退職金共済制度につきましては、手帳の交付でございますとか、印紙の貼付、そういった履行が進んでいないという御
指摘を受けておりますので、こういった問題を解決いたしますために、初めて
労働者に第一冊目の手帳を交付する
事業主に対しましては、一年間にわたりまして
掛金の
助成をするという
制度を新設したいと
考えております。
それから最後になりましたが、第五点目でございますが、
事業協同組合でございますとか
中小企業団体中央会、商工会議所、商工会、こういった
中小企業の
事業主団体に対しまして
加入促進についての
業務の
委託をすることにしたいと思っております。やはり
中小零細企業に日々直接にかかわっている
事業主団体がそういった面での
加入促進活動を一番やっていただきやすいというふうに
考えまして、こういった
事業主団体に対して
加入促進の
業務を
委託することにいたした次第でございます。
こういうことで、こういったものを全部有機的に活用いたしまして
中小零細企業、わけても
零細企業の本
制度への
加入促進を図ってまいりたいというふうに
考えている次第でございます。