○下村泰君 いや、もし漏れるような人がいたら気の毒ですからね。大体これは役所の方が悪いんですからね、これは。あなたこれも入りなさい、これも入りなさいと、これもいただけるんだからこんないいことはありません、こんな結構なことありませんと入れておいて、今さらちょんなんて、これはちょっと話になりませんからね。どうぞひとつそういう間違いのないようにしてください。
それから、今年度の
予算案の中に、こちらを拝見しますと、身体障害者
実態調査費として五千四百万円計上されております。まあ身体障害者の
実態調査、まことに結構なんですけれ
ども、私の手元にいただきました資料、これは実に、私はもう単細胞でね、涙腺故障者なものですからね、これを読んでいて、五十六年の九月ですね、国際障害者年に入った年です。厚生省社会局更生
課長板山賢治さんという方、これがどちらにいらっしゃるのか知りませんけれ
ども。まあこの方の文章を読んで私はびっくりしましてね。厚生省の中にこんなつわものがいるのかと思ったよ。これだけ骨身を削るように障害者の
実態調査をした人がいるのかと。さらにこの方を手助けした人たちの名前も出ております。それを一々申し上げて本当に賞状渡したいぐらい、これ。私ら、あゆみの箱という運動をやっておりますからね、あゆみの箱の方から森繁久彌の名前で本当に感謝状贈りたいぐらいです、これは。
ところが、五十年の
調査が集計不能となったと。このときには、一部の障害者団体の反対に遭った十三都府県で集計が不能になったと。その
理由が幾つか挙げられております。まず、「
調査の
目的が、障害者を家庭や地域から隔離し、施設に収容しようとするところにあること。」、二番目が、「
調査用語、
調査事項に障害者の人権を侵害するおそれのあるものがあること。」、三番目が、「
調査の実施に関して障害者団体等に事前の
協議がなかったこと。」、こういうことから十二都府県が反対運動を起こしてこれは集計不能になったと。で、この方は、「たしかに、
指摘されるような誤解を生ずる部面が当時の
行政をとりまく環境、方向のなかに一部とはいえ認められたことは否定できない。しかしながら、
調査阻止という事態がうみ出した悪影響には、はかり知れないほどのものがあった。」と。後遺症ですわね、これの。「その第一は、身体障害
福祉施策の企画立案、
予算の編成にあたって四十五年
調査結果に依存せざるを得なかった点である。」と。そうすると、これ十年の長きにわたって古いデータによって身体障害者の問題を、結局
予算立案でも何でもしなきゃならなかった。これじゃもうまるっきり数字がいませんわね。
第二には、障害者運動への偏見と障害者問題を敬遠する風潮の醸成である。
実態調査反対運動の激しい展開の後遺症として残されたものは、①障害者運動は極端なもの、話しあう余地のないもの、②障害者問題はタブーだ。ヤケドをするからそっとしておけといった「偏見」と「敬遠」の風潮であった。とりわけこうしたふんいきは障害者
福祉行政担当者に著しく、ある種の「ことなかれ」主義をも生み出していたようである。
「データーのないところに計画はなく」「計画のないところに
行政はない」というのがわたくしの信念である。
昭和五十三年の春、身体障害者
福祉を担当することになって今更のようにデーターの不足に驚かされた。
予算積算数値が現実ばなれしていることにもあきれた。また一方、障害者
福祉関係者の障害者団体ないし障害者運動に対するアレルギーの強いことにも驚いた。
こういうふうにこの方は自分の感想を述べているのですね。実際このとおりなんです。しかし、こういうことを厚生省の一部門の中で、これだけのことがはっきり言えるという人もまた立派だと思いますよ。
本日、障害者の
方々も来ていらっしゃるけれ
ども、あなた方も失望ばかりしてはいけないと思うし、文句ばかり言ってもしようがないと思う。厚生省の中にも、これだけあなた方のことを真剣に
考えてやっていらっしゃる一人の官吏もおるということ、これは私は大変感激しちゃうの。もう涙腺故障者だから読んでいるうちに涙が出そうになる。
そうして、いよいよ
調査が始まりました。五十四年四月早々から入った。五月から十二月までの約半年間にわたって延べ五十回を数えたそうですね、その方たちとの交渉が。で、中には全然取り合ってくれない人もいる。ところが、だんだんだんだんと空気が変わってきて、「全面的賛成はできないが反対はしない」、「賛成はできないが、今後諸問題について継続
協議する」といったような回答がそれぞれの団体から寄せられてくるようになった。そして、今申し上げたように、七カ月、約八カ月にかかって
調査をした。その結果五十五年に
調査の数が百九十七万七千というような数ですね。しかし、これだけの数じゃないですよ。実際は。ここが問題なんですね。これだけこの人が苦労をして、それこそノイローゼに近いような状態に私は追い込まれたと思いますよ、こういう
方々を相手にして。しかも、身体障害者自身でなく、身体障害者にかかわっている人たち、そういう方の中にはいろいろの思想を持った方もいらっしゃいましょう、そういう方が矢面に立ってやるんですから、恐らく私は本当に心身を削るような思いだったと思う。その結果が百九十七万七千。こんなものじゃないですよ、
実態の数字は。推定だけでどのぐらいだとお思いになりますか。推定でいいですから、別にそれを責めやしませんから。