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1986-02-28 第104回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業・雇用構造検討小委員打合会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月二十八日(金曜日)    午前十時三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     小委員長        梶木 又三君     小委員                 関口 恵造君                 山内 一郎君                 佐藤 三吾君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 藤井 恒男君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君         —————        東京大学工学部        教授       柳田 博明君        株式会社第一證        券経済研究所所        長        山本 秀之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○技術革新に伴う産業雇用構造等に関する件  (新素材産業展望及び研究開発課題につい  て)     —————————————
  2. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) ただいまから国民生活経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業雇用構造検討小委員打合会を開会いたします。  本日は、技術革新に伴う産業雇用構造等に関する件のうち、新素材産業展望及び研究開発課題について、東京大学工学部教授柳田博明君及び株式会社第一證券経済研究所所長山本秀之君に御出席いただき、御両名から御意見を聴取いたしたいと存じます。  この際、御両名に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員打合会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  本日は、新素材産業展望及び研究開発課題につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査に資することといたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず柳田君に、次いで山本君にそれぞれ三十分程度意見をお述べいただき、その後一時間程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、まず柳田博明君にお願いいたしたいと存じます。柳田君。
  3. 柳田博明

    東京大学工学部教授柳田博明君) ただいま御紹介いただきました東京大学柳田でございます。  新素材というものの中で、いろいろあるわけですが、私は片仮名で言うとセラミックスあるいはファインセラミックスというものを研究している者でございます。  まず、新素材というものはどういう背景で起こってきたかということを幾つかお話を申し上げたいと思うんですが、一つには先端技術を支えるそのかぎとして新素材が登場してきた。新しいすぐれた材料開発しない限り、先端材料はこれから伸びないだろうと。それで先端技術というのは、例えばどういうものかといいますと、これは情報通信関係のエレクトロニクスに関係する、それからエネルギーとか、エネルギーを延長しますと輸送関係にもなるわけですが、エネルギー開発とか輸送関係したもの、それからバイオテクノロジーとかライフサイエンス関係したもの、先端技術は大きく分けまして私は三つあるかと思っているんですが、それらの先端技術をこれ以上進歩させるためには、実はそのかぎとなるのは新しい材料であって、すぐれた材料がない限りそれらの技術は進まないだろうというそこまで来たわけですので、新素材開発しなければいけないということになってきたわけであります。  しかし一方、新素材自身先端技術の中に入れる方もおられますし、私はまた入れる必要があると思っているんですが、これはどうしてかといいますと、従来の素材というのはただ素材と言われているのが、今度は新というのがついたということは、その新しいものをつくること自身がまだ難しいわけです。その新素材をつくること自身がまた先端技術である。そうしますと、新素材は単に先端技術を支えるためだけにあるのではなくて、それ自身開発することも先端技術であって、ですから、それは最初の三つの位置づけと新素材位置づけはちょっと違うわけでありますけれども、やはり先端技術の中の一つのものであるということであります。  ところが、後でだんだんちょっとお話ししてみたいと思うんですが、実は新素材というものがそれが先端技術であるという意味が、単にそれをつくったり使ったりするということだけで先端技術なわけではありませんで、実はそれに伴う、本委員会でもお話がありましたように、実は物の考え方でありますとか産業構造が変わるとか、それらすべていろんな非常に大きいいわばソフトの面の影響もあるし、またそのソフトの面の技術も進まないと実は新素材というものがよくつくれませんし、使えないし、またつくっても意味がないということになるわけであります。それが、ですから新素材先端技術を支え、しかもその新素材自身先端技術であるということが、まず新素材先端技術の関連になるかと思います。  それで、新素材と、じゃ旧来素材と一体何が違うだろうかということでありますが、今、新素材は非常にすぐれた性能のある材料だということをお話ししましたが、これは後で山本さんの方からお話があるかと思いますが、実は産業構造的に新素材素材は全く違っている様相がございます。これはどういうことかといいますと、素材といいますのは従来の鉄鋼とかそれからプラスチックであるとかいう、そういうものが一番わかりやすい素材になるわけでありますが、これはいずれも大量生産方式でつくられる。これはどちらかといいますと、割合技術的にいいますとつくることが易しいので、それを大量につくることでコストダウンをしてそれで産業を伸ばしていくというスタイルをとってきたものが旧来素材でありますけれども、新素材は実はそういうつくりやすいから大量につくってコストで勝負するというようなことではありませんで、何のために使われるかといいますと、先ほどお話ししましたように、先端技術を支えるのに大事だということになりますので、実は今まで新素材ができなかったのは、実はつくることが難しかったから、これは大量生産に向かないからということで避けていたものが、先端技術を支えるためにどうしても必要だということでつくらなければいけないということになりますと、実はそのつくること自身が非常に難しい。だからこそそれ自身先端技術だということをお話ししたわけなんですけれども、そのつくることが難しいということは、実はそれは極論しますと大量生産に向かないということになるわけでございますね。これはどういうつくり方をするかというと、本当に必要なところに必要なつくり方というか、必要な仕様を持ったものを、本当にぴったり合うものをそこでつくるという、いわば 個別生産になってくる。いっぱいあるものの中から選んでくださいではありませんで、一人一人に一個一個個性に合わせたものをつくるというような産業形態になってまいります。  それから新素材産業と従来の素材産業の違い、あるいは素材と新素材の違いはもう一つありまして、これは、従来の素材素材メーカーがつくってそれをユーザーに売るという格好で、そういう産業形態になっています。ですから、ユーザーメーカーというのは非常にわかりやすいという関係になっているわけですが、新素材になりますと、実はユーザーメーカーの区別が非常にしにくくなってきている。これはどういうことかといいますと、例えば、具体的な例をちょっとお話ししますと、新素材を使ってつくったディバイスの一つセンサーというのがあるんですけれども、これも、この間のホテルの火災事件なんかありましたけれども、あそこのセンサーがちゃんともし機能していたらあの事故は防げた可能性が非常に大きいということでございますが、あそこのセンサーに使われている高度のセンサーを使おうとしますと、新素材を使わなければいけない。そのときにそこに一番使われている、核になって使われているのが新素材なわけでありますけれども、その核になっている新素材をあるメーカーがつくってそれをユーザーに売るという形態をとりますと、実はそのセンサー素子は大した値段にならないんです。ですからこれは、従来の素材産業から例えばどのぐらい規模が大きくなるかというような話になりますと、その素子自身では産業を実は余り形成しないほど小さい。ところが、それを使ったためにいいセンサーができる、いいセンサーがもしできればそれで防災システムができるというように、あるシステムのいわばかぎとなっているものになりますから、そのセンサー素子をつくるところは、チップで売るんではなくて、なるべくセンサーまでつくって売ろう、あるいはセンサーを組み込んだシステムとして売ろうという、いわば産業的にいいますと、これは我々ダウンストリームといいますか、そういう方向に行きます。  それからもう一つ、今度は例えば自動車メーカーなんというのは、あそこにもいろいろセンサーが組み込まれてあるわけですけれども、今まではそれをそのセンサーをつくっているところから買って、下請から買ってということをやっていたわけなんですけれども、それがどうも一番ある新しいいい車をつくろうとするキーポイントになっているのが実はセンサーというようなことになってくる。新素材開発だということになってきますと、それをなるべく自分のところで一番キーポイントのところは研究しようあるいはつくろうという動きになってきますと、これがいわば素材あるいは新素材アップストリームということになってきますと、いわば、後で山本さんの方からお話があると思いますけれどもダウンストリームアップストリーム混然一体となりかけている。その一つ技術の中でその新素材位置づけるという格好に実はどんどんなってまいります。ですから、これは大量生産をしてマスで売るということでなくて、あるシステムの中でかぎとなる材料をどちらの側からもつくるという格好になってきますので、これはどうも今までの素材をまとめて売るというスタイルとは違うものになってきたんではないかと思います。  そうしますと、実はそういう新素材開発できる人間はどういう人間であるか、あるいは研究開発体制がどういうふうでなければいけないかということになってくるわけでありますけれども、これは実は産業的に装置産業的でないということになります。どういう産業がというと、知識集約的産業ということになりますので、その知識集約型の産業に、いわばそれに適合した、適応できる人間人材を育成しなきゃいけないということになりますと、これは実は先ほど申しましたように使い道がいわば個別的なものである。そうしますと、いわば画一化を避けた個性を認識できる人間といいますか、あるいはそれぞれの状況に応じて一番必要な材料とか新素材を見きわめてそれを開発できる人間、そういう教育が必要になってまいります。これは私ども大学におりますと、先生が教えるということは生徒が五十人とか百人とかという中で一つのことを教えるわけでありますけれども、これだけが実は教育だとみんなが同じことを考えてしまうということになりますので、大学工学部系ですと、最終学年のときに研究室に配属されまして卒業論文を書くことになります。そこになりますと、一つ一つテーマをいわば責任を持って追求するというようなことですか、そういうスタイル研究を、みんなで一緒に同じことをするんではなくて、一人一人が違う責任を持ってやるという種類の教育体系をもうちょっと充実する必要がどうも出てくるんじゃないかというような感じを持っております。  それからもう一つは、知識集約ということになりますと実は進歩が非常に速い、ですから大きい装置を買って大きいお金をかけてある産業をつくったというそれで実は安泰ではなくて、その技術は非常に進歩が速いものですから次々に新しいものを学んでいかなければいけませんし、それを生かしていかなければいけませんので、これは大学教育が終わったのではなくて、実は生涯教育というものが必要になってくる。その生涯教育をどこでやるかということになりますと、私がここで主張いたしたいのは、例えば企業にしばらく勤めたときにもう一度大学に入り直すとか、あるいは大学院に入り直すという制度をもうちょっとフレキシブルにやる必要があるんじゃないか、これは生涯教育ということでそれを位置づけたいと思っております。  それで、そういうことになりますと、ここの委員会の目的の一つになります国民生活意識がどう変わるだろうかということになりますと、実は新素材開発することによりまして国民生活意識というのは非常に私は変わってくるんじゃないかと思っております。これはどういうことかといいますと、例えば先ほどアップストリームダウンストリームの融合ということがございましたけれども、例えば新しいいい発見を研究所の人がいたしたとします。今までは、ある程度研究が進むと、それを、いわば研究所から開発部へ移っていく、その開発部から営業部へ移っていく、それでそれを売るということをやっていたわけなんですが、現在の新素材の一番最初の芽が出たというようなときになりますと、実はその開発した本人しかわからないところがあるわけですね。そうすると、その人が実は最後の使ってくれる本当ユーザーのところまでつくった製品を持っていって、そこでどういうところが悪いかということを聞いてまた戻って研究をしてと、こうフィードバックを何回も繰り返して実は一つのものに仕上がるということになります。そうしますと、今までは私は研究に向いているから研究をやります、私はセールスに向いているからセールスをやりますということが通用していたんですけれども、事新素材に関しましてはそれがどうもできないんですね。途中で、例えば研究はおもしろいけれども開発のところの担当の人が実はそのテーマはおもしろくないと判断すると、そこでぶつんと切れちゃうようなおそれがあるわけなんですが、もしその研究開発をした人が自分最後セールスまでやってみて、実際にユーザーから、それを使ってくれる人からどこが問題かということを聞いて戻ってくることを繰り返せば一つ技術として成立する、成り立つというようになりますと、これはひところ人間一つの才能ですぐれていればいい、スペシャリストがすごく大事だということが叫ばれたことがあるんですけれども、私はそれも正しいとは思うんですが、今スペシャリストではまた逆に済まない時代が来た。スペシャリストであって、しかもすべての研究開発からセールスまで一人でできるというそういう総合的人格が必要になってくるという、非常にある意味ではおもしろい時代にもなりましたし、勉強する立場からするとつらい時代にもなったということなんですけれども、やはり総合的人格がどうも必要になってくるということが一つであります。それは分業からいわば総 合されたといいますか、インテグレートされた業務につく人材が必要になってくるということであります。  それから、実は新素材といいますのは、先ほどお話ししましたように、割合づくりにくいものだということなんですね、つくるのにお金がかかる。ということになりますと、使い方がちょっと変わってくる。卑近な例を申しますと、私どもセラミックスをやっております。そのセラミックスをやっているときに皆さんが、最近は余り皆さんおっしゃらなくなったんですが、ちょっと前まで何をおっしゃっていたかといいますと、いい材料なことはわかっているけれども、落とせば割れるじゃないかということをおっしゃるんですね。それは実は、落とせば割れるから悪いというふうにもちろんおっしゃっているんですけれども、それはどうしてそういう意識になったかといいますと、例えばプラスチックとか金属というのは、落としても割れないということがもちろんあるわけなんですが、あれは実はつくりやすいものですから、かわりがすぐできる。ところがセラミックは、どうも壊れちゃうとかわりが余りない。かわりがないから悪いという意識皆さんどこかにあったわけです。これはどちらかといいますと、いわば使い捨て意識なんですけれども。今度は、できたものが機能がすぐれている、しかしどこかに欠点がある、例えば落とせば割れるという、実はそれは落とさないように使えばいいということになるわけです。一言で言ってみれば、そういうことなんですけれども。要するに、何といいましょうか、使い捨てのいわば生活意識から物を非常に大事にするという意識、これは大事だから使うんだという意識に変わらざるを得ない。ですから、国民意識がまずそれで一つ変わる。物を使うという面で、それが非常に変わるということになります。  それからもう一つ先ほどお話ししたんですが、自分で見つけたものを自分で売るというようなことになってきますと、一番重要なものは、実は自分でつくるというところにある。最初自分で発見するところになりますと、これが昨今非常にあちこちで議論されています、要するに創造性のある人間で、その創造性もまず創造性のある人間を育てなきゃいけない。しかし、創造性というのはちょっと誤解されやすいわけなんですけれども創造性のある人というのは、よく言われますけれども、非常にある点だけ飛び立ってすぐれた人という人が創造性があるというふうに皆さんお思いなんですけれども、今の新素材開発に関しては、ある面ですぐれたところもあるけれども、それだけでは実は産業として製品にならないわけですから、セールスまでできるような、飛び立ったところもあるし、しかも幅も広いという、こういう物の考え方ができるような人が必要になってきますし、また実際に生活をするときにもそういう観点が必要になってくるんではないかと思います。  それと、やはりもう一つは、先ほど産業界に出た人がもう一度大学へ入って戻るということで、生涯教育をするということを申しましたけれども、実際にこれは、その生産に従事している人でなくても、技術がどんどん進歩しまして、それ自身はいいことなんですけれども、逆に言いますと、技術進歩と実際の生活とのギャップが余り離れることは、余り幸せなことではないんですね。そのために、一般の生活の方も先端技術にいつも余り離さないという、その意味の生涯教育が私は必要になってくるんじゃないかと思っています。これがもしありませんと、先ほどお話ししたように、ある開発した人が、その実際のユーザーのところに行っていろいろ議論をするというときに反応をしてくれなくなるんです。そうすると技術が独走するおそれも出てきますし、独走いたしますと、逆にその技術本当に進まなくなるという矛盾になりますので、日本国民全部、ほとんどの方がその先端技術を理解している、本当の全部を理解する必要はないかもしれませんが、本質を理解しているという、こういう、何というんですか、生産に携わる、研究に携わる人も生涯教育が必要ですし、それから実際の人も生涯教育が私は必要だというふうに考えております。これは、進歩が非常に速いということだけではありませんで、先ほども申しましたように、画一的なものをどかっとまとめてつくってそれを売るというスタイル産業から、個別にいいものを使い分けて使うというようなことになりますと、学ぶべきことも非常に多くなるし、それから学んだだけで埋もれた知識ではなくて、それを実際のところに応用するという、いわばフレキシビリティーのある知識を身につけていかなければいけませんので、長い意味で言いますと、そういう意味意識革命あるいは生涯教育というようなことを国民生活の面では必要なんではないかと思います。  あと、それで研究開発課題ということがございますが、これは一言に申しまして、新素材が旧素材と違うということをしっかり認識した上で研究開発課題をつかんでいかなければいけないと思うわけでありますけれども、例えば先ほどお話ししましたように、セラミックスは落とせば割れるというようなことに対して、落とさないように使うというような、そういう意味ソフト意識観点を見た上で、いいところを伸ばし、悪いところはシステムの中でカバーするというような、そういう意味での研究開発、要するに悪いところを矯めるという、つっつくというんじゃなくて、その材料の持っている個性を伸ばすというような、そういう研究開発課題をやっていくべきだというふうに思っております。これはですから、実際の国民生活意識にも関係ございますし、それから産業構造の転換にも関係ございますし、人材育成にも関係ございますので、私は、新素材というものがどういう意味を持っているかといいますと、これは単に今までの素材産業がおかしくなったから新素材に乗りかわるんではなくて、これはある意味では産業革命の核になっておりますし、あるいはもう極端なことを言いますと、文化といいますか、教養といいますか、そういうものの革命にもこれはつながっているんじゃないかと思います。  それで、我が国にとってみますと、我が国は非常に教育程度の高い、それから情報、コミュニケーションも非常によい国でございますので、もう新素材開発するという、あるいは研究をするということは、非常に国情に合ったものでありますので、ぜひ、これは今後の我が国発展を期すために、もっと重要性を認識して、研究開発あるいは産業発展のために努力すべきであるというふうに思っております。  私の発言は一応これで終わりたいと思います。
  4. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、山本秀之君にお願いいたします。山本君。
  5. 山本秀之

    第一證券経済研究所長山本秀之君) 第一護券経済研究所におります山本と申します。座らせて御報告させていただきます。  私、つい最近まで日本長期信用銀行というところにおりまして、素材関係では、通産省その他の委員会で、隣におります柳田先生に御指導していただきながら一緒に作業してきた者でございます。きょうは先生の御発言を踏まえまして、若干補足させていただくという形、それから特に経済的な意味づけといいますか、そういったものを中心にして御報告させていただきたいと思います。  お手元に資料が御提出してあると思いますけれども、それをごらんいただければと思います。  先ほど先生から、材料、いわゆる新素材と旧素材というのは全然違うと、こういうお話がございました。それで、我々の目から見ますと、旧素材と新素材一つの大きな差というのは、昔の旧素材ですというと、物をつくるというときにどんな素材が使われるかという形で使ったものなんです。例えば眼鏡をつくるという場合に、じゃこのフレームは何にしたらいいだろうかという形で、鉄がいいだろうか、プラスチックがいいだろうかと、こういう形で既存素材を引いてくるといいますか、探索していくと、こういうステップで使ったものでございます。ところが、新素材になり ますというと、こういう何か物をつくりたいとき、こういう機能素材が欲しいとなりますと、そういう素材をつくり出していく、それはいろいろな技術的な操作を加えながらつくり出していく、こういうものになるわけなんでございます。したがって、今まである既存素材を使うというのから、新しい素材をつくって、それで新しい物をつくっていくという意味で、先生がおっしゃったように非常に革命的な意義といいますか、全く産業的に異なるものだと、こういうふうに考えていただいていいかと思うんです。  じゃ、今どのくらいそれが発達しているのかということなんでございますけれども、ここに本当に私の印象を図にしたわけですけれども、例えばバイオについては、まだ朝も迎えない、夜も暗いと、こういう状態にあるとしたら、セラミックスについては、もうそろそろ夜明けを迎えようとしている、あるいは一部は朝に入ってきていると、こんな状態にあるんじゃないか。これに比べると、例えば半導体とか大型コンピューターというのは、もう日が十分高く上ったと、先の展望もよく見えると、こういう状況にあるんじゃないかと、こんな感じがしております。その意味でもって、ようやく明け方を迎えようとする、これから新しい展望が出ようとしていると、こういうものであるというふうに申し上げていいと思います。ですから、悲観論者は、素材というのはブームになっているけれども、果たして伸びるかなと、こういうふうに悲観する人もいますし、また、将来はというふうに期待している方もおられます。そんなふうに考えていただければいいんじゃないかなという感じがします。  これが社会経済に大きな影響を与えるという点は先生もおっしゃいました。ちょっと、この一ページ目の下の方でもって若干例が書いてあります。エネルギーから、あるいは一番最後にあります医療技術に至るまで、例えば人工腎臓をつくるとか、あるいは人工血管をつくるとか、そういうふうな福祉の面にまで非常に大きな、広範な影響を今後は持っていくだろうというふうに考えております。  さらに、三ページ目には、先ほどこの新素材というものがいろいろなハイテクを支える基礎になるんだというふうに先生がおっしゃいました。その例がここに書いてございます。例えば、エレクトロニクスあるいはコンピューターで見ますと、IC基板というのはセラミックスでございますし、さらにそれを包むパッケージもセラミックスあるいは複合材料でございます。さらに、ICそれ自体につきましても、基板につきましても現在のシリコンからあるいはカリウム砒素というふうに変わろうとしている。それもまた新素材でございます。こういうふうに、新素材発展なしには半導体の発展というのもないわけでございます。そういう意味で、新素材はほかの先端技術発展を支えていく大きな基礎になると同時に、現在では例えばエレクトロニクスはすごく発展しました。これ以上発展する場合には、新しい形で新素材発展がないと一種の壁にぶつかる、そういうところまで発展してきているというふうに言っても過言じゃないかなという感じがしております。そういう意味で、エレクトロニクスの発展について、新素材はそれを支えていくためにも、あるいは他の先端技術発展をこれ以上進めるためにも、現在どうしても開発を急がなければならない、発展を急がなければならない、そういう材料になっている、こういうふうに申し上げていいと思います。  四ページ目に移らしていただきますと、そういう意味で新素材というのはすごい興味を持っています。特に、いわゆるオイルショック以後、つい最近まで企業というのは減量経営という形で体質改善を行ってきたんですけれども、その体質改善、ようやく五十五年ごろに完了したと考えられますけれども、五十五年ぐらいから企業の経営戦略で見てみますというと、例えば技術戦略で新製品開発体制の強化というのを経営の何といいますか、最高の緊急な目標に掲げる企業が多くなってきているわけなんです。五十五年ぐらいまでは、減量合理化というのが経営の第一の眼目でございましたけれども、もう最近では新製品開発というものが経営の眼目になってきている。そのときに選ばれているのは何かといいますというと、つい最近まで、一、二年前まではエレクトロニクス関係というのを掲げる企業が多かったわけでございます。ところが、五ページに、一番上を見ていただきますとおわかりのとおり、現在では新素材というのを掲げる企業が一番多くなっております。情報通信というのを去年から抜きまして、製造業では新素材開発というのを研究開発テーマに掲げる企業数が一番多くなってきている、こういうふうに申し上げていいかと思います。  ただ、こういう研究開発に、そのためにさまざまな企業が進出してきております。しかしながら、これがまだ夜明けの状態にあるというのは、まだ幾つか突破しなければならない壁というのがあるわけなんです。その壁の一つとしましては、生産規模の問題、あるいはコストの問題があるかと思います。これは機能に合わせて素材をつくると申し上げました。ところが、世の中製品の数が多いと同時に、欲せられる素材というのは非常に数多くあるわけなんです。そのために、どうしても生産規模が小さい。これは先生の御発言にもございました、生産規模が小さい。ただ質で勝負すると、こういうのが新素材の本質だと思うわけなんです。ただ質だけでは経済的に成り立たないので、どうしてもそれを安くつくってくれないと困るという問題がございます。  例えば新素材の代表的な銘柄で取り上げます炭素繊維なんて見てみますというと、つくり始められた当初ではキログラム当たり七一年をとってみますというと二十万円の価格でございました。それが生産になれるに従って、過去の生産量というのがどんどん大きくなってくるにつれて、あるいは生産規模が大きくなるにつれてコストがどんどん下がってきます。現在では大体キログラム当たり一万円というふうに考えられています。八千円から一万二千円の間というふうに考えられております。ところが、この炭素繊維を使って例えば自動車だとかあるいは飛行機をつくっていくと、こういう形になりますというと、この値段は五千円ぐらいでないと割が合わないというふうに言われています。これはこういうふうに価格が低下する場合、生産規模が大きくなりますとどうしても量産のエフェクトというのがこういう新素材のようなものにでもきいてまいります。そうしますというと値段が落ちてくる、値段が落ちないと使えない、こういう循環があるわけなんでございます。そういったものにどうしてもはまってしまう。現在ではどんなものも経済単位で生産できるほど大きな需要を持った新素材はないし、少ないし、ほとんどないしと言ってもいいかもしれません。したがって、なかなかそれが一般用として開発していけない、こういう問題がございます。炭素繊維に戻って言いますというと、現在ですと鉄なんというのは例えば年三百万トンが経済単位だと言われていますけれども、炭素繊維の場合には年で四百二十トンつくれればこれは十分経済単位になる。ところが四百二十トンで、じゃ経済単位一工場は四百二十トンだとしますと、総生産需要といいますか、総需要がどのくらいかといいますというと、大体二千トンから三千トンぐらい。したがって、数社もあれば十分にできちゃう。そういう規模、世界的に見ましてそのくらいの規模なんです。それに対しまして現在は十数社あるいは二十社近くが生産に入っていると、そういうことが言えます。したがって、生産規模というものが小さい上に非常に過当な競争状態というものが出現しやすい形態になっている。御存じのとおり、生産規模がそういう過当競争のもとでは開発あるいは生産を促進していくような利潤というのがなかなか出てこない。これが二番目の問題がなという感じがいたします。  さらに、次にそういった機能を欲するといういわゆるニーズのサイドと、それから個別の研究者 が開発してくる、何といいますか、素材と、そういったものがうまくかみ合っていかないという問題がございます。これは機能に合わせてつくるんだと言いましたけれども、これをつくるためにはいろんな実験をしていろんな製品をつくって、それを実験データとして持っている必要があるわけなんです。それで、お客様からあるいはユーザーからこういった機能素材をつくってくれといった場合には、それをリファーしながらそれで製品をつくっていくと、こういう形になるわけなんです。そういうふうなデータというものが十分にあってそれで対応していくと、こういう形がなければならないわけなんです。現在は、私が見ている限りはメーカーのところでいろいろなものをつくっていろいろに実験してそのデータを蓄積している段階と、まだ十分ニーズにこたえて対応して素材をつくっていくことができる状態にはないと、こういうふうな状態にあると言っていいかと思います。  新素材の場合、素材の場合には、大体アメリカあたりですというと、例えばNASAあたりですと製品開発に三年、それを応用開発するのに四年かかる、こういうふうに言います。日本の例ですと、一つ素材をつくるのには十年から十五年かかる、本当に使えるようになるまでは製品開発の段階から十年から十五年かかると、こういうふうに言われています。そういう長い開発過程の中間にあると、こういうふうに申し上げていいかと思います。  ただ、それができただけではこれまた使いものにならないわけなんです。先ほど先生が新素材というのは非常にかたいけれども落とせば割れる、こういう性格を持っていると、こういうふうにおっしゃいました。かたくて熱には強い、そういう性格を持っているけれども、壊れやすいあるいは割れやすいという、そういうもろさを持っていると、こういうふうに言われました。これが例えば自動車のエンジン部門でもってセラミックスを使っていくと非常に高温にも耐えられる、冷却する必要もない、そのために熱効率が非常にいいと、こういう利点を持っているわけなんですけれども、さてこれが壊れやすい、割れやすいとなりますと使えないわけなんです。そのためにさまざまな実験をしてそれを改良していくあるいはニーズに合わせていくと、こういう作業になるわけなんです。ところが、自動車の場合でいいますというと、ある部品に要求される精度というのは、精度といいますか、不良率といいますか、それは十万分の一以下でないと使えない。特にエンジンとかそういうふうに命に関係するような、あるいは飛行機の機体というふうな命に関係するようなものになりますというと、これはほとんどあってはならない、壊れてはならない、そういう確率で要求されるわけなんです。その信頼性のテストにすごい時間がかかる。こういうふうに申し上げていいかと思うんです。まだそういった信頼性のデータ、そういったものを突破するところまで来ていない、そういうふうな信頼性のデータを集積する段階にまで来ていない、こういうふうに申し上げていいと思います。したがいまして、先端技術発展にとって新素材開発が急務だと、こういうふうに一方では催促されるんですけれども、一方では学者のもとで、あるいは研究者のもとで出てきたシーズのデータ、ニーズのデータあるいは信頼性のデータ、そういったものが全部集まって相互に使えるという体制になっていない。そのために各所で、方々でやっているんですけれども、なかなか大きなエネルギーになってそれで新素材産業発展させる、そういうところに来ていない。ちょうどその前の段階にある。こんなふうな状況に現在あるんだというふうに考えていただければいいかと思います。  ただ、六ページにありますように、ファインセラミックスでも幾つかのものがRアンドDの段階を突破して企業化、製品化、それからユーザーの手元にと、こういうふうにわたっております。その例を若干六ページのところに書いておきました。こういうふうにRアンドDから企業化され、製品化されるに従って例えば関連産業あるいは評価設備あるいは装置産業、そういったいわゆる周辺産業とか関連産業というものを大きく育てていくわけでございます。現在製品になっているものを幾つかここに書いてございますけれども、そういったものもそれなりの関連産業というものを持って産業として発展してきているものもあるわけなんです。ただ、見ていただければおわかりになるように、いずれにつきましても非常に現在のところ規模が小さいマーケットしかできない。例えば炭素繊維で言いますというと、まだ飛行機とか自動車に使われるのはほんの一部で、専ら使われて目につくというのは皆様御存じのとおりゴルフのスチールの部分だとか釣り道具だとかそういうものじゃないかと思うんです。そういったことで、まだ関連産業を育てそれから本格的な用途への実験の足踏みじゃないか、こういうふうに申し上げていいんじゃないかと思います。  それから、七ページ目にちょっと入らせていただきます。こういうふうにいろいろな形で新素材というものは出ておりますし、いろいろな産業が、非常に数多くの産業が進出してきております。それは例えば七ページ目の下の表を見ていただきますと、窯業部門とかあるいは化学工業、繊維工業からこのセラミックス、いわゆる素材部門からセラミックスに進出していった企業、これがセラミックス協会に加入した企業数でもおのおの四十六、三十七というふうにございます。鉄鋼業につきましても、ほとんどの鉄鋼産業セラミックスあるいは複合材料研究を残らずと言っていいと思います、研究しております。一方では、その新素材をつくって製品化していく、例えば電気機器とか輸送機械、そういうユーザーサイドからもセラミックス研究というのは進められているわけでございます。これは新しい製品をつくるときにどうしても素材のところから変わらないと本当に新しい製品ができないという意味で、ユーザーも新素材というものをつくっていかなきゃいけない。それから素材メーカーからしますというと、御存じのとおり鉄にしましてもあるいは石油化学にしましても繊維にしましても、現在のところ将来の成長性というのは期待できないという状況にございます。そういった状況でもって何か企業の成長を続けていかなきゃいけない、こういうふうになりますというと、新しい素材開発さしてそして製品を乗りかえていくと同時に旧素材をそれに結びつけて生かしていく、こういうことをしなければいけないという意味でもってこれは企業の存続、存命をかけた形でもって素材メーカーがこの新素材に進出してきているわけなんです。そういうふうに素材メーカーあるいはユーザー、こういったものが一体になって両方からセラミックス研究を行っている、こういうのが現在の現状じゃないかという感じがします。そういうふうな、これは専ら大企業でございますが、そういう大企業がユーザーサイドから、メーカーサイドからこの市場に進出してきて産業として育ててきていると同時に幾つかの中小企業についてもかなり積極的な開発をやっているところが見られるわけなんです。  八ページ目をちょっと見ていただきたいと思うんですけれども、例えば鳴海製陶、これはもうかなり大きいメーカーでございますが、真ん中ぐらいにありますアキタとかアルス刃物とかそういうふうなのはどっちかといったら非常に小さい企業というふうに申し上げていいと思います。  新素材の用途としまして最初に申し上げました。途に合わして製品をつくるんだと、そうしますというと素材に着目すると非常に新しい用途の製品というのも当然出てくるわけなんです。そういう形でもってある製品、ある新素材につきましては非常に個人でもって新しい素材をつくって新しい製品をつくる、こういうアイデアを出せばそれを製品化していくということも可能になるわけなんでございます。例えばここにありますアルス刃物というのがございます。刃物のメーカーですけれども、これが東レでつくっておりますジルコニアという新素材に目をつけまして、それを例えば はさみに応用したらどうだろうかと、こういうふうに考えまして、それでアルス刃物製造という形で新素材のはさみをつくっているメーカーでございます。新素材で刃物をつくりますというと、欠けにくい、切れ味がよい、しかも電流を通さない、磁気を帯びない。こういう形で新しい用途というものを開発していくし、それから繊維の裁断工程までも変えていく、こういうふうな形になります。そういうベンチャー企業というのが、いわゆる中小企業というものが新素材に進出してきているというのが非常に数多く見られるようになってきました。これに着目したということ、それだけではございません。さらに新素材というものは、先ほどオールド素材というふうに区別なさいましたけれども、オールド素材である例えば陶器、それから磁器、こういったものの技術を極限まで突き詰めていくという形でもってニューセラミックスというのが出てくるんで、質は違いますけれども、そこに一種の連続性があるわけなんです。そのために日本全国でもって陶器とか磁器というのは生産されています。そういったメーカーさんが自分技術をどんどん開発しながら新素材に出ていく、こういう例もかなり見られるわけでございます。この上の表で見ますと、例えば香蘭社、これは有田焼で有名なところでございます。あるいは北陸の方でもって陶器をつくっているところとか、それから名古屋の瀬戸、多治見地区とか、そういった地区では陶器、磁器の技術を極限まで推し進めてそれでセラミックスに出ているというところがございます。  通産省で今テクノポリスというのを推進しておりますけれども、皆様のところにもありますテクノポリスの多くのもの、例えば秋田とか富山、宇都宮、広島、宇部、国分隼人、それからここにはちょっと印をつけておきませんでしたけれども、国東、宮崎といったところにつきましても新素材というものがこれの中心になっている、こういうふうに申し上げていいかと思います。こういうふうに新素材は中小企業からあるいは全国にまで広がった形でもって新素材の追求が行われている。  じゃ、将来はどういうことになるんだろうかというのを示しましたのが九ページでございます。これも通産省の委員会での研究の成果でございますけれども、新素材の市場は、新素材そのものとしては五・四兆円ぐらいの規模というふうに真ん中のところに書いてございます。五・四兆円ぐらいの規模というふうに二〇〇〇年ぐらいでもって考えられております。ところが新素材をつくってつくり出された新製品生産規模というのは左の下にありますように大体二十兆円ぐらい。それから既存製品ではあるけれども、ここに新素材を取り入れて一部を代替していった、こういった市場というのは二十一兆円、合わせて大体五十兆円といいますか、そのくらいの市場が何らかの形で新素材にダイレクトに、イシダイレクトに関係している、こういう市場だということが二〇〇〇年に予想されております。これは現在で言いますと、エレクトロニクス関係というのは全部合わせて十数兆になっています。十数兆の規模でございます。これは八一年の規模で計算していますが、八一年度の、何といいますか、日本全体の生産額は四百兆でございます。したがって四分の一あるいは五分の一ぐらいの製品が何らかの形で新素材と結びついている、こういうふうに申し上げていいかと思います。  このくらい大きな規模に将来は成長していくわけでございますけれども、今後の成長に当たって私は課題として二つばかりつけ加えさせていただきたいという感じがしております。  一つは国際協調でございます。新素材でもって国際協調と言った場合、幾つかの形がございます。例えば炭素繊維というのがございますが、ここの十ページに書いてありますのが炭素繊維における国際協調でございます。これは詳しくは申し上げませんけれども、矢印が日本から出発して、例えば東レを例にしますというと、技術をユニオンカーバイドに供給するほかエルファキテーヌというフランスと合弁をつくり、という形でもって、さまざまな形でもって技術の提携あるいは原料の供給、そういったものが行われている、非常に国際協調がうまくいっている例でございます。  炭素繊維というのは、これは一部日本で発明された製品でございます。商品化する段階でもって糸にしなければいけないのですけれども、それは日本で東レが行いましたし、それを焼き固めるというところではアメリカが開発いたしました。今、日本では、これをアメリカに輸出する、OEMで供給するということと同時に現地でもって生産していく、こういう形でもって、アメリカでつくっていくという形でもって協力しております。こういうふうに技術あるいは原料の供給というのが双方向で向かって、しかも相手方のところでもって技術開発しさらに製品化していく、こういう形で協調が行われている例でございます。  それから次の二ページ目に書いてありますのがエンジニアリングプラスチック技術の例、産業の例でございます。矢印を見ていただきますというと、フォーリンファームス、外国企業から全部日本企業の方に矢印がついております。エンジニアリングプラスチックでは日本はかなりまだ技術的に研究開発で世界ではおくれているのではないかと思います。そのためにすべてが技術導入あるいは原料の供給という形で日本に流れてきているわけなんです。これは外国の技術を日本に持ってきて日本で生産する。これは日本でできたら、日本がつくる方は外国よりうまいですから逆に輸出していくと、こういう形に将来なりかねないものなんです。そうしますとまた再び新しい形で貿易摩擦の可能性を持ってきているものなんです。  この形にやや近くて、しかも技術の提携関係が比較的薄いもの、これにセラミックスがあります。セラミックスについては、日立とルーカスで本格的な国際的な技術提携を行ったというのもございますけれども、大体がばらばらでもって各国でもってやっている、こういう技術でございます。これにつきましては、かなりアメリカが日本の発展につきまして何といいますか脅威を持ってきているというのが十二ページの図で書いてございます。これはアメリカのテクノロジーアセスメントのオフィスでもってつくった図でございますけれども、ユナイテッドステートの技術的優位に対しまして日本が最近時点になって急速に追い上げている、こういう図でございます。これは殊さらこれによってアメリカでもって危機を意識させてそれで研究費を増加させようと、こういう意図もあったのではないかと言われるくらい、まだアメリカと日本に差があるのに極端に縮めた形で書いてあると、こういう図ではございますけれども、かなり日本に対して警戒的になってきている、そういうふうなものでございます。  こういう産業、新素材発展につきまして、エンジニアリングプラスチックではもう先方の技術に依存しなければならない、セラミックスにつきましてもお互いにもうちょっと協調し合って協力して発展させていく余地が大きいものでございますけれども、このままで国際協調についてよく努力いたしませんというと何か水があいていくような、そんな危惧というものを私は持っております。通産その他ここにおられる柳田先生を初めとして皆さん国際協調について努力しておりますけれども、何かいま一つ進展が見られない、こういうことが言えるかと思います。  それから二番目の課題として申し上げたいのは、先ほど申しましたセラミックスをつくるときには、いわゆるシーズにつきましてもニーズにつきましても、あるいは信頼性テストにつきましてもいろいろなデータを全部集めなければならない。そういう意味で産官学で協力して、それでデータをお互いに企業秘密に関しない限りは提供してそれでまとめていかなければいけない。つまりデータベースをつくっていかなければならない。そういうふうな協力体制というものがなければならない、しかもそれが国際的になるのが望ましい、こういうことが言えるわけなんです。  アメリカの例をとってみますというと、十二ページにありますように、新素材につきまして十一 億ドル、これは八一年度ですけれども、十一億ドルの研究資金が政府から大学とかその他の機関にばらまかれております。日本の場合には数十億円という単位でございます。  しかも、そういうふうな研究資金が流れると同時に、例えばセンター・フォー・マテリアルサイエンスという形でそういう局をつくりまして標準化を進め、コミッティーマテリアルスということで各省庁間に連絡する委員会をつくって、さらにコンピューター科学技術研究所、そういったところでデータベースをつくっていく、そしてナショナル・スタンダード・リファレンス・データシステム、こういう機関でもってオンラインでもってそのデータを供給していく、こういう体制をつくっております。日本につきましてもようやくこういったものの研究が始まったばかりでございますが、こういったものをしっかり国内でつくって、そして国際的な協調にまで持っていく、これが二番目に大事な課題ではないかなと、こんなふうに考えております。  以上によりまして私の御報告を終わらせていただきたいと思います。
  6. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で御両名からの意見聴取は終わりました。  これより御両名に対する質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て、順次御発言願います。
  7. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 柳田先生にちょっとお願いいたしますけれども、よく簡単明瞭に私たちにわかりやすいようにお話をしていただきましてありがとうございました。  具体的な例でございますけれども、先般のスペースシャトルですね、これもやはり新素材開発というものの効用が非常にあるわけなんですけれども、これは端的に事故との関連性とかそういう面について、先生は権威者としてどういうふうな面を今後注意していかなくてはいけないのかということがまず一つ。  それからこれは山本先生柳田先生と共通のものがあると思うのですが、国内の産官学の協力体制ということに関連して、これだけ将来非常に重要なものに対して、我々政治家としての立場から見れば、やはり研究開発の補助金というものが日本はアメリカに比べてまだ初期のような感じがして、やはり国としてももっと研究開発の補助金というものを出すべきではないかと思うわけですが、そういう点について御希望がございましたらお願いいたします。  山本先生には、一つは、同じことでございますけれども研究開発の政府の補助金に対しての問題が一つと、もう一つは、非常に私も山本先生の新素材技術発展段階を時間で明示していただきましてよくわかったのでございますけれども柳田先生先生専門の、これちょうど六時ぐらいになっているわけでございますが、山本先生から見てどういうふうなスピードでこれが発展されていくのか。もうちょっと具体的にお話を伺いたいと思います。  じゃ、柳田先生、先にお願いしたいと思います。
  8. 柳田博明

    東京大学工学部教授柳田博明君) 最初の御質問のスペースシャトルの事故の件に関しましては、私は事故原因については全くわからないんでございますけれども、ただ一般的に言いまして、日米の新素材開発開発体制というのが大分違っておりまして、結論的に言いますと私は日本の方が目下はいいんではないかと思っておるのでありますが、アメリカでの新素材開発の一番の目的が、例えば宇宙開発でありますとか軍事技術だとかでありますとか、そういうところに使うための新素材開発をしているものでございますから、知識割合限られた人たちしか持っていないんですね。ところが我が国はどちらかといいますと、先ほど山本さんがお話ししましたようにエレクトロニクスを中心としたところから新素材開発が起こっている、あるいはライフサイエンスというところに起こっておりますので知識が局在化していない。だから、多分あそこでいろいろな方がチェックされたと思うんですけれども、チェック機構が日本だったらあんなに厳重じゃなくても見つかったんではないかというような気がするんです。だから私先ほど申しましたように、我が国にとっても生涯教育が必要だという意味はそういう意味なんです。すべての人がある程度わからないと、ある程度レベルアップしてないと本当技術は進まないんじゃないか。アメリカの場合はちょっと局在化し過ぎているんではないかということでございます。  それから二番目の御質問の産官学の協力とかそれから研究費の問題でございますが、これは大分今度は日本が悪いんじゃないかと思っているんですが、一つには我が国は極論しますと産業が豊かで学が貧乏だという典型的な研究体制になっていると思うんですけれども、これにはいろいろな制約がございまして、私も大学教授をしておりまして問題になりますのは、まず基礎研究の費用が全く足りないということなんですね。どのくらい足りないかということを具体的に申し上げてもよろしいんですけれども、要するに、経常研究費と申しまして文部省から私どもの場合いただくわけですが、これで養えるのは何かといいますと、例えばコピー代であるとか電気代とかなんとかというようなことで全部終わってしまって、それ以上実際の研究をしようとしますと何らかの方法で研究費を稼がなきゃいけない。それはもちろん申請などをしてもらってくるわけでございますけれども、これが有名な教授になりますとよく研究費が通るんですけれども、無名のこれから本当にやりたいという人の場合はまだ知られてないものですからほとんど来ないという、非常に資金的に不足な状態で一番大事な若手の人が基礎研究をやらざるを得ないという状況にございます。  ですから私の一つの要望は、若い人にももうちょっと研究費のベースアップをぜひしていただきたい。基礎研究費をベースアップしていただきたい。それは申請書によってもらえる研究費ではなくて、まあ、もらっても何もしない人がいるから申請をしなきゃいけないという世の中になってしまっているんですけれども、ある程度自由にこれだけは使っていただきたいというそのベースを上げていただきたいのがまず一つでございます。ここに呼ばれるような私程度になりますと申請を書けばもらえるようになるんでございますけれども、もうちょっと若い人のところがちょっと問題があるということです。  それからもう一つは、民活という言葉が非常に言われておりますけれども大学研究に関しまして民活というのが非常に今できにくい事情になってございます。例えば基礎研究に企業から援助なり寄附をいただこうというときに、企業の方も出される意思がある、我々も更け取る意思がある、しかし制度上受け取れないということが間々ございまして、それで企業の方はどうされるかといいますと、実はこれも具体的な数字を出した方がわかりやすいと思うんですけれども、例えば東京大学あたりに、私ども受け取る金は多くて二百万とか三百万程度でございますが、その企業が例えばアメリカの私と同じことを仕事にしている先生のところにやっぱり研究費を出しておられます。これは日米のさっきの国際関係の円滑化にも役に立っているわけですけれども、向こうはそのお金を受け入れやすい体制になっていまして、どのぐらいかといいますと、大体一単位が三億円なんです。我々はだからその百分の一ぐらい。これで例えば日本において基礎研究が大事だからもうちょっと一生懸命やってくれ、大学が頑張ってくれと言われましても、やっぱり百対一だと幾ら日本人が優秀でも、これは長いことそういうことを繰り返しているとちょっとまずいんではないだろうか。これほど基礎研究が大事だというときに、そして皆さんが理解されているんですけれども、特に企業の方が理解されているのに、その基礎研究の一番大事なお金がアメリカに行ってしまっている。アメリカに出しているお金が応用研究だったら私はまだわかるんですけれども、基礎研究お金が出ていってしまう。まあ、制度だけの問題 だけではないと思いますが。  それで、その基礎研究のときに余り実はひもつきでないんですね。これこれのことをやってくださいという基礎研究じゃなくて、何に使っても結構ですと。それで例えば、その三億円の中で教授の方を一人雇っていただいて、その方がテーマを決めていただいて結構ですというような種類の非常にやっぱりたちのいいお金が日本では受け取れない。それは特にアメリカに行ってしまっているということで、ちょっとこれはゆゆしき問題ではないか。だから日本ももうちょっと大学に余り目的的研究ではない、お金が自由に受け取れて本当の基礎をやれるように、またそれもなるべく実は若い意欲的な人のところへお金が配れるようなシステムをぜひお考えいただきたいと思うんです。
  9. 山本秀之

    第一證券経済研究所長山本秀之君) 御質問にありますまず最初教育開発の補助金、助成といいますか、それの措置については、今柳田先生からお答えがございまして、私もそれにつけ加えることはほんのわずかしかございません。  つけ加えたいのは、先ほど地域の活性化のところで触れましたように、現在、セラミックスを中心にして新素材研究というのが各地域の活性化の中心テーマになっております。各地域でその他の大学と結びついてそれで新素材研究開発をやっていく、こういう形になっているわけなんでございます。ところが日本の大学で見てみますというと、セラミックス、それだけ地域で取り上げてあるんですけれどもセラミックスを専門学科として持っておられる大学が三つしかないというふうに聞いています、アメリカで十近くあるというふうに聞くんですけれども。そういう意味で、何といいますか、むしろ大学教育、それからそういったものについても十分目をつけていただければいいんじゃないかなと、こんな感じがしております。  もちろん金額については先生がおっしゃったように問題にならない。ただ、これはアメリカの場合には軍事とかあるいは希金属対策というんですか、希金属だけはアメリカでとれないんでそれを代替していくと。そういう意味で、非常に軍事的な意味もあって多額な金になっているんですけれども、それにしてもちょっと金額が少ないということが言えるんじゃないか。また基礎研究だけじゃなくて応用研究につきましてもそれが言えるんじゃないかという感じがします。  例えば今自動車でセラミックスエンジンというのがございますけれども、アメリカでの研究費が七一年から八五年で二億六千七百万ドル、こういうふうに聞いています。日本では次世代のファインセラミックス計画でやってますけれども、その金額は三百五十万ドル、そういうふうな金額だというふうに言われております。そういう意味でもってちょっと金額が小さ過ぎるということは言えるんじゃないかと思います。  次に、新素材産業が現在夜明けの段階だけれども、これが今後の進展というものをどういうふうに見たらいいかということでございました。夜明けの段階にあるというのは、先がうっすら見えたけれどもまだ本当に見えてないという段階にあるということでございまして、各方面でいろいろ研究されて、今後考えられる新素材につきましてはすべて一応手がかりが見つけられるところまで研究は行った。だけれどもこれを企業化し製品化していくという段階ではお互いに情報を持ち寄るなり、あるいは研究をさらに、テストデータというのを交換するなり、そういうふうな何か集積体制といいますか、研究の集積というものがないとちょっと難しい形になってきている、ちょうどそこに来ているような感じがするわけなんです。もちろん各企業間の技術提携とかあるいはジョイントベンチャーの設立というので企業間でも行われていますし、さらに地域開発については地方の大学と企業、それから国と企業、そういういろいろな形での提携によって技術進歩というのは加速化する方向にはございます。そういったものがようやく加速化する方向に向かったというのが現状じゃないかと思います。これはうまくそれを持っていきますというと、日本各地で、それから国と企業との間でもって、これを加速していけばかなり速い速度でもって、産業としてかなりの規模を持った産業として、そして他の技術を育てるような産業として成長していくことは十分可能だというふうに私は考えております。
  10. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうもありがとうございました。
  11. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 大変私どもにとっては初めての勉強みたいな感じでまだまだよくわからない点がたくさんあるわけですが、ちょっと柳田先生にお伺いしたいと思うのは、先生が考えられておる生涯教育のこういう関係の理想的な姿というものはどういうものを描いておられるのか、そこをもう少し説明していただきたいのが一つと、それからさっきお話がございましたように、アメリカの場合にはどっちかというと軍事とか航空、宇宙の方面が発達して、巨大過ぎて、そして日本の場合と対比してみると、日本の場合の方がそういう意味では発展性、条件を持っておる、こういうお話ですから、しかしこういう国際交流でやるシステム、仕組みで研究開発する中では日本もやっぱり軍事優先という方向になりがちな体制を持っておる、こういうことも言えるのじゃないかというふうに思うんですけれども、そこらの関係がいかがだろうかということが一つ。  それから山本先生の中に、ここに産業関係がずっと出ておりますが、農林業の関係で新素材が生かされるというようなものがあるのかないのか、農業とか林業とかいう関係で。エンジンの関係等は水産関係出てくるのじゃないかと思うのですが、そこら辺の発展方向、これからの中で展望が出てくるのかどうか、ここら辺がちょっと私もわからないものですから教えていただきたいと思います。
  12. 柳田博明

    東京大学工学部教授柳田博明君) 最初の生涯教育の理想的なあり方というのはまだそれほど突っ込んで考えておるわけじゃありませんけれども、これも実は二種類ありまして、一つはいわば専門家の再教育という種類の生涯教育、これは先ほどもちょっとお話ししましたが、大学を出ましてあるいは専門学校を出まして企業に勤めている、それでしばらくたって、数年たったときにあるいはもっとたったときでも結構ですけれども、本人がもう一度勉強したいという意思があったときに、大学院、主として大学院ですけれども大学院に入り直す。そのときに今までの制度ですと大学を出た人がそのまま受けるのが有利なような制度になっておりますけれども、一遍産業でまたは実社会で働いた経験があれば、それを点数にして大学院に入りやすいような教育改革をちょっと私どもは考えておりますけれども、そういう意味での生涯教育、それをぜひ、ですから産業界の方でもそういう希望のある人をエンカレッジしていただきたいということでございます。  それから一般の人の生涯教育に関しましては、これはどうしたらいいかというのは非常にわからないんですけれども、幸いなことに今日本は全体の教育レベルが非常に高いので、どの方も大体もう本当に専門家でもびっくりするような本をかみついて読んでおられますので、これはぜひその雰囲気を今後とも続けていただきたいと思うわけですが、そういう意味で、一般の方の生涯教育に関しては今のところ割合順調に私はいっているんじゃないかと思うんですけれども産業人の再教育についてはまだほとんど制度がない。これはもうひとつ少し考えなきゃいけないんじゃないかと思うんです。  それから二番目の御質問でございますけれども、これは実は非常に難しい論理がございまして、先端技術を進めるのには本当に宇宙とか軍事とかということをやらなければ先端技術は進まない、あるいはそれにかかわった新素材開発をしないと技術は進まないという考え方もあるわけなんですけれども、私は実はその論をとらないんです。これは先ほど言いましたように本当の新しいものは早く皆さんに使ってもらって、どこが悪いかどこがいいかを判断して、それをまた次の開発に続けるべきだというこれは私の持論なんでござ いますけれども、そのためにはなるべく多くの人がやっぱり知っている必要がある。だからいいものを発明したり発見したらすぐそれをみんなに公開してほしい、どんどんどんどん。それでこれはどういうものであるかということをいわば一緒に考えるということですね、発明者とそれからユーザーとが一緒に考えるというシステムこそが一番新素材とか先端技術を進めるのに私は健全だというよりもそれが一番いい道だということなんです、効率の面から考えたときに。  それで軍事になりがちではないかという御質問、私も非常にそれを心配しているんですが、必ず我々は専門家集団で集まったときに何人かの方は軍事をやらないから日本は進まないということをおっしゃる方がいるんですね。これは私に言わせれば、軍事が優先でなかったから進んできたんだということを言っているんですけれども、もちろんある種の意味での技術は蓄積することが必要なんですけれども我が国は非常に不思議なことに民生の技術を蓄えている間にその技術がアメリカに、特に大事だと思うんですけれども、それでアメリカの軍事に使える技術ができちゃったんですね、実は。それで今問題になっていると思うんです。だから軍事研究のためのをしなければ新技術は進まないという論は私はマイナスだと思います。しないから進んでいるんだという、極論しますと、これはちょっとそれ反対する方ももちろんおられますけれども
  13. 山本秀之

    第一證券経済研究所長山本秀之君) ただいま御質問にございました農業、林業についての新素材の適用はどうだという点でございますけれども、現在のところまだ農林業に新素材というものが積極的に使われているということは私寡聞にして聞いておりませんし、またそういう研究が農林業について進んでいるかといわれると、ないんじゃないかなという感じがしております。といいますのは、新素材は非常に高い。それを代替するとなりますというと、例えば木を切るのこぎりにしましても鉄の方が安いんで、これをセラミックスでつくることは可能ですけれども、そうやったら高くてしょうがないと、こういうふうなものであります。ですから新素材発展してきてコストが下がってくるというといろんな形で適用できてくるんじゃないかと、こんな感じします。一つの夢としましては、例えば農業につきましては工場みたいなものでつくるとか、そういうのがあります。例えば室内に光を入れるときにプラスチックのファイバー、ガラス繊維にかわってプラスチックの繊維を使って光を屋内に入れる。そうすると、暗いところでも陽光というのがほとんど何といいますか、吸収されないでそのままの形でもって入ってくる、こういう形で工場農場とかあるいは園芸とかそういったものが出てくるとか、そういうふうなのがございます。さらにもっと間接的な形で言いますというと、例えばバイオの容器なりリアクターなり、そういったものもこの新素材が支えなきゃなりませんから、そういったものを通じて、例えば種の産業発展というものを支えていると、こういうふうな言い方もできるかと思うんです。いろんな形で今後の発展によって農林業にダイレクトな形で影響してくるというふうに考えていいんじゃないかと思っております。  以上でございます。
  14. 山内一郎

    ○山内一郎君 ちょっとよくわからないんですけれどもセラミックスはどういう材料からつくるのか、材料はありふれたものでも製法が違うのか、そういう点の御説明をまずお願いをするのと、材料が新しい材料とすれば有限性とか無限性ですね、そういう点をまずお聞かせをいただきたいと思います。  それから、これからの方向ですけれども、ちょっと山本さんが眼鏡の縁がなんとかかんとかおっしゃいましたけれども、今の縁の欠陥と、新しいものを使えばどういう方向に、できていろんならどういうものができているのか、あるいはどういう方向に研究をしようとしているのか。  自動車のエンジンのお話は一番よくわかったんです、耐熱性があるから非常に冷却水が要らないとか。しかし、壊れやすいのでこれは今は利用していない。じゃ、壊れにくくするような研究開発をされているのかどうか。  それから、何かゴルフのシャフトをちょっとおっしゃったんですけれども、あれはどういう意味なのか。要するに、これからどういう方向に、どういう方面にこれが向いつつあるかという。  それから、センサーは成功されたそうですけれども、旧素材ではどうして成功しなかったのかとか、そういうような方向性の問題をお二人からお聞きをしたいと思います。
  15. 柳田博明

    東京大学工学部教授柳田博明君) 最初の、どのような物質が使われているかということでございますが、これはもう実は非常に多くございまして、旧素材である鉄は化学式で言えばFe、それからプラスチック、やっぱり旧素材であるものはCとHですね。それに対して、新素材と言われでいるものはほとんど周期律表の全部にばらまかれている。あるものは、例えば自動車のエンジンに使われているものは窒化珪素という材料ですし、それからICの基板材料で今使われているものは例えばこれは酸化アルミニウムであるとか、それから例えば先ほどのガスのセンサーですと、これは酸化すずであるとか酸化亜鉛であるとか、物質の数が非常にふえている。ですから、先ほども言いましたように、知識がある局在化した知識ではもうだめなんですね。化学の非常に広い知識が必要になってくる。  それで、そういう意味になりますと、実は一つの成分を大量に使いませんものですから、資源的な問題はこれは余り問題にならない。どこが問題になりますかというと、それを精製していいものにするとか、その目的のものにつくるとか、工程の方が問題である。  それから、先ほど山本さんもお話しになりましたけれども、信頼性の保証というところなんかが技術がまだ進んでないものですから、そういうところにお金がかかってしまうんですね。だから、掘ってきて、掘るときにすごくお金がかかってというような感覚ではなくて、ただし後へ行くほどだんだんお金がかかるという感覚になりますので、それから使い方もそれほど多くはない、旧素材に比べて。  だから、一応資源的には問題は私はないという断言をしてもよろしいのじゃないかと思うんです。もちろん非常にごくわずかしかない資源を、ごくわずかだけれども使うことが問題になるものもございますけれども、一般的に言えば問題にはならないだろうと。  しかし、どういう物質がというのは周期律表全部にまたがると申しましたけれども、性質としましては、今までだと簡単につくれた鉄とかプラスチックだったのが、もうちょっとつくりにくいかたいものとか、もっと高い温度になるものとか、あるいは焼き固めようとしてもなかなか固まらないものとか、そういうつくるのに難しかったものということになりますので、周期律表全部に広がると言いましたけれども、それが本当に全部に広がっているわけではなくて、その中のまだまだごく一部しか実は使っていないわけなんですけれども、将来の発展としては、そういうものの技術が進んできますとより多くの物質が扱えるようになる。そうすると、より新しい性質が出てきて、新しい使い方ができるというようなことになるのじゃないかと思います。  それから、もう一つ御質問になりましたセンサーはある程度できたということでございますけれども、これは従来の素材はどちらかといいますといわば力持ちといいますか入れ物といいますか、何か支えるための材料だったんですけれども、新素材といいますのは、もちろん、もっと大事なところを支えるという機能もあるものもあるわけですけれども、もう一つ機能材料と我々は言っているわけなんですが、例えばある情報とか信号をほかの形に変えるという変換機能というもの、例えばガスの、危険なガスが出てきたということをチェックして、それを例えば電気信号にするというのがこれはセンサーなわけなんですけれども、 そのときに、その物自身がひ弱な材料だったらガスでやられてしまうわけです。丈夫でしかもそういう変換機能がある、そういう材料、物質が見つかったということです、ごく最近。そういうものはどんどんこれからふえると私は思っています。
  16. 山本秀之

    第一證券経済研究所長山本秀之君) 先ほど眼鏡の例を申し上げました。眼鏡の縁というのは実は余りいい例でなくて、これはセラミックスとは、新素材とは余り関係ないんですけれども、例えば眼鏡でいいますというとコンタクトレンズがございます。あれが新素材でございます。  ですから、例えば近視の場合には、レンズを中に入れてそれで調節すればいいんですけれども、じゃガラスの玉とか普通のプラスチックを入れますというと、ぴったりと密着しちゃいまして空気も出ないとこういう形になって、目に悪いわけでございます。したがって、プラスチックでレンズの役目をしながら空気を通す、しかも当たったときにけがをしないようにやわらかい、こういうものでなきゃならない。そういう形で新素材開発が行われた。東レさんが開発しております。そういうふうな形でもって新素材というものは使われていると、こういうふうに申し上げていいかと思います。  それから、二番目に御質問ございました、ゴルフの例というのはどういう意味だということでございますけれども、新素材というのは非常に高いために、どっちかといったらお金に糸目をつけなくてもよければやるというもの、例えばオーディオ製品だとか、それから釣りだとかそういった製品については、割合アプライしやすい。例えばオリムピックの釣り具の釣りざおなんというのは、竹にかえて今度炭素繊維にしますと、非常にしなりとかそういったものがいいとか、ゴルフの場合は飛距離が伸びるとか、オーディオの場合は振動を吸収するとか、そんな形でもって入っていく。それが徐々に高度な利用にたえていくと、こういうことだと思います。  第三番目に、例えば自動車につきまして今の研究段階どうかということなんですけれども、確かにいろいろな形で研究しています。  研究の形としましては、一つは個々の部品を新素材で置きかえていく。部品を、例えば鉄から新素材に、信号器に置きかえていく、こういう形でもって部品から直していくのと、それからもう一つは、エンジンでもやりやすい、つまり新素材が適用しやすいもの、したがって、例えば我々人体に対する危険というのが比較的少ないようなもの、例えばスターリング・エンジンというふうなものにまず適用してみる。これは産業用のものですから比較的人命に影響してこない。そういったものから、それから入りやすいという意味でディーゼルエンジン。ちょうどディーゼルエンジンまでセラミックスの置きかえができてきている。一番大事なガソリンエンジン、つまり乗用車に載せるやつ、これについてはまだ正直なところ突破口がそんなに見えていない。こんな状態にあると、こういうふうに申し上げていいと思います。
  17. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、五つの点について伺います。  まず最初に、私も先端技術を平和利用に役立つものにしてほしいという希望を持っているんですけれども、さっき指摘されたように、日本では軍事技術として使うというおそれがあるんですけれども、その使用目的に歯どめをかける方法とか平和目的に限るような方法があるのかどうかという点を第一点として伺います。  それから第二点は、人材育成の件で生涯学習を強調されましたけれども、今臨教審でも生涯学習その他について提言をしております。臨教審の方向を見ていると、個性主義ということで、創造性のある少数のエリートを一方で育てていきたいということが強く出てきているわけですが、先ほど先生お話ですと、これはもうすべての国民が技術の基本的なことについては理解しなくてはならないという方向であるというふうに私は感じました。それで、そういう場合に初等中等教育の段階でどういうような教育というのがやはり必要なのか、その点を第二点目として伺いたいと思いますし、また、創造性ある人間に育てる教育というのが先端技術を担う少数の人でなくてやっぱりすべての人に必要なのかどうか、その点も伺いたいと思います。  それから三番目は、新素材の医療分野への進出の今後の見通しについて、まあ人工骨ということが載ってましたけれども、それ以外どういう分野に今後可能性が開かれているのかという点を伺います。  それから第四点は中小企業と新素材あるいは技術革新関係なんですけれども、陶器産業を地場産業としているところが結構あるのですが、そういうところでセラミックスに切りかえていったり、研究所をつくったりしていも自治体もあるのですが、将来的に考えて、こういう今不況に陥っている陶器産業セラミックスで再生する可能性といいますか、そういう方向について教えていただきたいと思うのです。  それから、非常に高度の技術をこういう中小企業が実際に自分でもつくり、応用していくということについてはなかなか困難な問題があると思うのですけれども、そういう障害はどうやって突破していったらよろしいのかという点についても伺いたいと思います。  最後は産官学共同の問題ですが、先ほど柳田参考人が、企業からたくさんお金を入れたい、くれると言っているのに日本ではなかなかもらえないんだという指摘があり、また山本参考人の方からも産官学の必要が言われたわけですが、一つは企業秘密ということが非常に大きな障害になっていて、この企業秘密という枠を突破しないとデータベースなんかできないし、それをやっぱり有効に活用するということもできないと思いますけれども、データベースの必要性ということとその企業秘密との矛盾、そういうものをどうやって突破していくのかというのが第一点です。  それから基礎研究に企業がお金を出すという場合ですが、この基礎研究の概念というものを教えていただきたいと思うのです。やはりその応用分野に必要な限度においての基礎研究なのではないか、私はそういう考えなのですけれども、そういうものを一切外して、将来役に立つか、役に立たないか全く関係なく、とにかく学問的に必要だという点でその基礎研究にまで企業は大変お金を出すものなのかどうか。それから、今の制度がかなり不自由だという点はあるとして、これを将来直していく上で、じゃ逆に何でも企業から来るお金を全部受け入れでいいのかどうか、その辺の歯どめはないのかどうか。  以上の点についてそれぞれお答えいただきたいと思います。
  18. 柳田博明

    東京大学工学部教授柳田博明君) 先端技術の平和利用ということは私も賛成なんですけれども、ただこれは非常に歯どめというのは難しいんですね。  これはどうしたらいいかということは、ずっと過去の技術の流れを見てみましても、やはりこれは結局歯どめというのは法律でも何でも私はだめだと思います。結局は、先ほどから何遍も繰り返しますけれども、これは国民のレベルが上がっていて、国民の意識が歯どめになる、それしかないと思います。幾ら政府が法律をつくっても何しても、これはもうそれが何か有効になるというのは余り幸せなことでは実はないので、私は歯どめは国民の意識だと思います。  それから二番目の生涯教育の話のときに、これも私はやはり今と全く同じ論理でありますけれども、全体のレベルが上がらなければ先端技術はそう私は進まないと思っていますので、少数のエリートだけを再教育するということについては私は賛成いたしません。再教育自分が受けたくないのにされるというのは余り幸せなことではないと思うんですけれども、希望がある人をなるべく受け入れ、もう一回再教育をするような体制にすべきだという、そっちの方がいいと思います。  それから、これ先ほどもちょっと申し上げましたんですけれども創造性のある人が必要だと。 これは確かにそうなんです。創造性のある人はかたわでいい、かたわの人だという論理がどこかにもう一面あるわけなんですけれども、これは絶対間違いです。創造性のある人ほど全人格的にすぐれた人でないとその技術は非常に危険になる。だから創造性の豊かな人ほど全人格的に立派な人になっていただきたい。そういう教育を私はしなきゃいけないと思います。  それからもう一つお話があった、すべての人に必要かということになりますと、私はすべての人に本人が希望する限りは創造性があった方がいいと思います。これはその方が人生楽しいような気がするんですね。要するに人に言われたやり方だけで生きているんだとおもしろくないわけですけれども、もちろん社会生活を乱すようなことはいけないわけですが、その中で各個人ができる限りの創造性を生かして生きるということは非常に人生が楽しくなるんじゃないかというふうに思っていますので、なるべく多くの方が創造性を持っていただきたいと思います。  それから三番目の御質問の医療分野への応用ですが、これは現在は、先ほど山本さんもお話しになった人工骨とか、それから人工歯根とかという、いわばどちらかというとインプラントといいますか、体の中に埋め込むということが重点に研究をされておりますけれども、これはもっとまた別の面の実は応用がございまして、健康のいわばチェック、診断とか医療診断とかその他のところに使われる、あるいは手術とか、そういうところに使われる技術もどんどん新素材を使ってできるようになってまいりますので、いわば何といいましょうか、新素材ができたことによって医療技術がまた進むという観点もございます。もう非常に広い範囲に進むというふうに私は見ております。  それから中小企業と新素材関係のところ、これも非常に重要な議論のところなんですが、私は新素材開発あるいは新素材を使った新技術開発には実は中小企業の方がすぐれていると、立場上有利だというふうに考えております。これはどうしてかといいますと、先ほどお話ししましたように、新素材自身はまだ売り上げが小さいものですから大企業はやりたがらないんですよね、中小企業ほどのレベルでちょうどいい今売り上げなものですから。中小企業の方はどんどん実際に、過去新素材開発の流れを見てみますと、そちらの方がどうも成功率が高いですね。あるいはその産業がある程度行き詰まって、どうしても何かをやらなきゃいけないと、売り上げは小さいけれども新しい技術の芽があるからやらざるを得ないというところが実際いいものをつくっているということがありますので、そういう意味ですと中小企業の方が向いているという要素があると。それじゃ大企業はどうしたらいいかということなんですけれども、大企業はですからある意味では非常につらい、量産効果を追い続けたあげくに非常に今苦しい立場に立っているんじゃないかと思うんです。ですから大企業の方に私がお話しするのは、企業には企業のブランドを背中にしょった中小企業の経営主がいっぱい集まって、一人だと売りに行けないけれども大きい企業のかばんをしょっていると相手が相手にしてくれる、要するに名刺だと思いなさいという、企業の側はそのぐらいのつもりでやった方がいいんじゃないですかということをお話しします。そのときに、じゃ中小企業に人材がいないじゃないかという御質問があります。だからこそみんながレベル高くないとだめなんです。どこにも必ずわかる人がいる、あるいはみんながわかるということがないと本当技術は進まないんじゃないかと思うんです。  それから地場産業の不況、今後セラミックス産業はどうだろうかということですが、これについては多分山本さんの方がよく御存じだと思いますけれども、私はその産業が、今ちょっと不況の産業が今後伸びてくる可能性は十分あるというふうに信じております。  それから産官学の企業秘密の問題ですけれども、データベースに関しましては企業秘密の質が非常に問題になることがあるわけでございますけれども、その以前の問題で、例えば大学等への寄附のお話がございましたが、これに関しては今のところ私は余り問題にならないんじゃないかと思うんです。例えば私どもが受け入れるときにまず言いますのは、この研究をどこどこの企業の金でやったということはわからないでいいですねということをまず申します。要するに、一社からもらうんじゃなく、何社かからもらってプールしてしまう。それは研究室にプールしましてもいいですし、大学の学科でプールしてもいいんですですけれども、要するに、どの金、どこの会社の研究費でこの研究をしたという主体を一切つけないようにする、まずそれがキーポイントです。  それからもう一つは、公表の自由権を必ずとらなきゃいけない。これは要するに、大学側の意思で、これこれの新しい研究が完成したというときに、大学責任において発表いたしますと。ただし、了解はもちろんとることがございます、これについて発表いたしますと。了解はとることがございますけれども、それはその主導権を大学が持っていなければ絶対だめです。それで、今のところ、企業の秘密のために公表を抑えられて、それで研究がおくれたという事実は少なくとも私の研究についてはございません。これはやっぱり受け取る側の意識の問題だと思うんですけれども、そこのところだけは念を押さないと、これはさっきちょっと御心配になっていた歯どめの問題なんですけれども、これこれの研究をしてくださいというんで受けますとそういうことが起こりかねない。  それから、本当の基礎か、応用につながる基礎かということになりますと、やはり長い目で見れば応用につながるところにしかお金は出てこないと思います。これはやはり企業の論理が成立しますので、ある程度私はやむを得ないと思っています。本当意味の基礎研究は、企業からの寄附ではなくて、やっぱりこれは文部省が用意すべきお金なんですね。我々のところは、今先端技術というのはそれだけでは足りない。だから、もうちょっと加速するために産業からの寄附を受け入れてやりましょうと、ただしそれはいきなり応用研究ではないわけです。将来応用につながるかもしれない、オリジナリティー、創造的な発展につながるかもしれない、そこにお金が出ているんだというふうに我々理解しています。  ですから、この歯どめの問題は、先ほど三億円の方がいかにもよくて、三百万が少ないというようなことをお話ししましたけれども、幸いなことに、三百万だから今自由度が保てているので、三億円もらっちゃうとちょっと縛られる気もしないでもないんですけれども、そのときに、歯どめというのは、一人の個人が受け取っちゃ私いけないと思うんですね、そんな大きい金は。だから、大学が受け取って、その大学大学の自主性を持ってある新しいプロフェッサーを採用して、そのプロフェッサーに研究の自由を与える、しかし、それが本当の基礎になるか、多少応用につながる基礎になるかについては、やっぱりお金を出す方の論理と受け取って研究しやすい方の論理がありますから、これは非常に区別しにくくなると思います。だから、本当意味の基礎研究、役にもつながらないことがはっきりわかっているような基礎研究というのは、逆に言いますと余りお金を出さない方がオリジナリティーが出てくるんですね。だから、先ほど億と百万の単位を示しましたけれども、その中間ぐらいが一番理想的なんじゃないか、一単位の研究のあれで申しまして、というふうに思っています。
  19. 山本秀之

    第一證券経済研究所長山本秀之君) それでは若干補足させていただきたいと思います。  最初に、平和利用の問題、ちょっと私もコメントさせていただきたいと思うんですけれども、かつて私もアメリカの技術の方とそれから日本の企業の技術の方の間に立ちまして、複合材の技術提携の話し合いに出席したことがございました。そのときに、たしかアラミド系の繊維という複合材が問題だったと思うんですけれども、日本の方は衣服への適用を考えて話されていた。それに対し てアメリカの技術の方が、ああ、あれは水素爆弾のパラシュートのひもにすると、こういう発言がありました。それで、日本の技術の方はぽかんとなっちゃったんです。自然に出てくる発想というんでしょうか、そういったものがかなり日本の場合違うんじゃないかという感じがします。  一つ申し上げられるのは、そういう大抵の先端技術は、何らかの形で軍事技術から出発したり、軍事技術に関連するわけなんですけれども、軍事技術を目的にして例えばある製品開発するのに到達する、軍事技術から出発して民間製品、民需製品といいますか、ある製品開発するのに成功する場合の生産コストと、それから平和的利用を考えて、そこから出発してある製品開発する場合の生産コストでは全然格差があるんです。ですから、人によっては、権威のある方は、四倍も差がつきますと言うんです。平和利用にする場合には、最初からコストを意識して、どうやったらコストが削減されるか、どうやったらいい製品ができるかというのでやってきます。ですから、軍事目的とそれから平和目的というのは、研究開発から製品化の段階で全然違ったプロセスを通るんじゃないかなというふうな感じを私は持っております。  それから二番目は、人材育成につきましては先生のお答えどおりなんで、三番目の医療品分野のところでちょっとコメントさせていただきますというと、確かに現在は、例にお挙げになりました号とか菌とか、そういうもののほかに、例えば鼓膜に入れるコラーゲンの薄膜とか、あるいは人工血管、これはビニール管のもうちょっといいものに、いい素材にかえていこうと。それから人工の赤血球、それから人工透析用の膜、そういったものが具体的なものとして製品化が急がれております。幾つかはもう製品化されております。  それから、中小企業が新素材に出る場合に、非常に技術として高度になるんで、かなり難しい問題を持つんじゃないか、その場合どうするのかという御質問がございました。  確かに、中小企業が新素材に出る場合に、先生がおっしゃったように大胆に出られる、発想の豊かさ、それから経営資源というものを集中してできるという、何といいますか大胆さといいますか、素早さ、そういった利点はありますけれども、確かに人材が不足している、あるいはデータが不足している、そういうふうな問題もあるわけなんです。  どうやって突破しているかといいますというと、例えば広島にあります戸田工業さん、磁性粉ですごく有名なところでございますが、これも磁性粉自体じゃないんですけれども、例えば京都大学と共同研究して開発していったといったふうな例がございます。そういうふうに、中小企業の人が大学と共同して、あるいは大学に委託して、そういう形で開発してやっていくという例は非常に多うございます。そういう形で人材を使っていく。  それからもう一つは、国の試験所、それを使っていくというやり方もございます。自分のところでは実験設備が持てないんで、県の試験所に行きまして実験してもらう、それで製品開発をやっていく、そういったところが中小企業では、私が回ったところでもかなりございました。  そのほか、大企業と提携して開発に当たっていく、そういうところもございます。これは、中小企業の場合には、やる意思とそれからやるだけの見識といいますか、そういったものがありますというと、大学、試験所、大企業、そういったものと相互に協調しながら、かなりな程度まではやれる体制になっております。もうちょっと政策的にそれをバックアップする体制というのを考えていただければ一番ありがたいんじゃないかなと、そんなふうに考えております。  それから、基礎研究につきまして、企業の態度なんですけれども本当に理論的な研究というのは、企業でやれと言われましても大変難しい、利益に結びつきませんので。ほとんどこれは手が出せない分野だということだけつけ加えさせていただきたいと思います。  以上でございます。
  20. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 一つだけ。被膜ですね、被膜がどのようなポジションにあるか。一つは、おっしゃったダイアライザーみたいなものもあるし、逆浸透膜の海水淡水化という問題もあるわけだけど、ここでお話しになったのはどちらかというとセラミックスプラスチックなんかのお話だったんですが、膜の新素材といいますか、被膜の研究というのの進みぐあいがどういうことになっておるか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  21. 山本秀之

    第一證券経済研究所長山本秀之君) 技術のレベルについて正確には存じあげないんですけれども、一番生産量が多い、例えば逆浸透膜について見ますというと、現在日本のメーカーのシェアが世界で見まして九割ぐらいを占めております。それで、これは半導体用の超純水をつくるために使う場合が多いんですけれども、それから海水の、何といいますか、淡水化に使うのが多いんですけれども、これにつきましては日本はトップレベルにありますし、ほとんど世界のマーケットを抑えているといいますか、世界に供給している、こんなレベルにあると思います。  それから、人工透析の膜、そういったものにつきましてのレベルにつきましてはほとんど同じか、あるいは若干落ちるか、そんなレベルに今あるんじゃないかなと思います。正確なところは、ちょっとそちらの方はよく存じません。
  22. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 他に御提言もなければ御両名に対する質疑はこれで終わります。  御両名にはお忙しい中を長時間にわたり本小委員打合会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査に資することといたしたいと存じます。  小委員一同を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十二分散会