○
第一證券経済研究所長(
山本秀之君) 第一
護券経済研究所におります
山本と申します。座らせて御報告させていただきます。
私、つい最近まで日本長期信用銀行というところにおりまして、
素材関係では、通産省その他の
委員会で、隣におります
柳田先生に御指導していただきながら
一緒に作業してきた者でございます。きょうは
先生の御
発言を踏まえまして、若干補足させていただくという形、それから特に
経済的な
意味づけといいますか、そういったものを中心にして御報告させていただきたいと思います。
お手元に資料が御提出してあると思いますけれ
ども、それをごらんいただければと思います。
先ほど先生から、
材料、いわゆる新
素材と旧
素材というのは全然違うと、こういう
お話がございました。それで、我々の目から見ますと、旧
素材と新
素材の
一つの大きな差というのは、昔の旧
素材ですというと、物をつくるというときにどんな
素材が使われるかという形で使ったものなんです。例えば眼鏡をつくるという場合に、じゃこのフレームは何にしたらいいだろうかという形で、鉄がいいだろうか、
プラスチックがいいだろうかと、こういう形で
既存の
素材を引いてくるといいますか、探索していくと、こういうステップで使ったものでございます。ところが、新
素材になり
ますというと、こういう何か物をつくりたいとき、こういう
機能の
素材が欲しいとなりますと、そういう
素材をつくり出していく、それはいろいろな
技術的な操作を加えながらつくり出していく、こういうものになるわけなんでございます。したがって、今まである
既存の
素材を使うというのから、新しい
素材をつくって、それで新しい物をつくっていくという
意味で、
先生がおっしゃったように非常に
革命的な意義といいますか、全く
産業的に異なるものだと、こういうふうに考えていただいていいかと思うんです。
じゃ、今どのくらいそれが発達しているのかということなんでございますけれ
ども、ここに
本当に私の印象を図にしたわけですけれ
ども、例えばバイオについては、まだ朝も迎えない、夜も暗いと、こういう
状態にあるとしたら、
セラミックスについては、もうそろそろ夜明けを迎えようとしている、あるいは一部は朝に入ってきていると、こんな
状態にあるんじゃないか。これに比べると、例えば半導体とか
大型コンピューターというのは、もう日が十分高く上ったと、先の
展望もよく見えると、こういう状況にあるんじゃないかと、こんな感じがしております。その
意味でもって、ようやく明け方を迎えようとする、これから新しい
展望が出ようとしていると、こういうものであるというふうに申し上げていいと思います。ですから、悲観論者は、
素材というのはブームになっているけれ
ども、果たして伸びるかなと、こういうふうに悲観する人もいますし、また、将来はというふうに期待している方もおられます。そんなふうに考えていただければいいんじゃないかなという感じがします。
これが社会
経済に大きな影響を与えるという点は
先生もおっしゃいました。ちょっと、この一ページ目の下の方でもって若干例が書いてあります。
エネルギーから、あるいは一番
最後にあります医療
技術に至るまで、例えば人工腎臓をつくるとか、あるいは人工血管をつくるとか、そういうふうな福祉の面にまで非常に大きな、広範な影響を今後は持っていくだろうというふうに考えております。
さらに、三ページ目には、
先ほどこの新
素材というものがいろいろなハイテクを支える基礎になるんだというふうに
先生がおっしゃいました。その例がここに書いてございます。例えば、エレクトロニクスあるいはコンピューターで見ますと、IC基板というのは
セラミックスでございますし、さらにそれを包むパッケージも
セラミックスあるいは複合
材料でございます。さらに、ICそれ自体につきましても、基板につきましても現在のシリコンからあるいはカリウム砒素というふうに変わろうとしている。それもまた新
素材でございます。こういうふうに、新
素材の
発展なしには半導体の
発展というのもないわけでございます。そういう
意味で、新
素材はほかの
先端技術の
発展を支えていく大きな基礎になると同時に、現在では例えばエレクトロニクスはすごく
発展しました。これ以上
発展する場合には、新しい形で新
素材の
発展がないと一種の壁にぶつかる、そういうところまで
発展してきているというふうに言っても過言じゃないかなという感じがしております。そういう
意味で、エレクトロニクスの
発展について、新
素材はそれを支えていくためにも、あるいは他の
先端技術の
発展をこれ以上進めるためにも、現在どうしても
開発を急がなければならない、
発展を急がなければならない、そういう
材料になっている、こういうふうに申し上げていいと思います。
四ページ目に移らしていただきますと、そういう
意味で新
素材というのはすごい興味を持っています。特に、いわゆるオイルショック以後、つい最近まで企業というのは減量経営という形で体質改善を行ってきたんですけれ
ども、その体質改善、ようやく五十五年ごろに完了したと考えられますけれ
ども、五十五年ぐらいから企業の経営戦略で見てみますというと、例えば
技術戦略で新
製品の
開発体制の強化というのを経営の何といいますか、最高の緊急な目標に掲げる企業が多くなってきているわけなんです。五十五年ぐらいまでは、減量合理化というのが経営の第一の眼目でございましたけれ
ども、もう最近では新
製品の
開発というものが経営の眼目になってきている。そのときに選ばれているのは何かといいますというと、つい最近まで、一、二年前まではエレクトロニクス
関係というのを掲げる企業が多かったわけでございます。ところが、五ページに、一番上を見ていただきますとおわかりのとおり、現在では新
素材というのを掲げる企業が一番多くなっております。
情報通信というのを去年から抜きまして、製造業では新
素材の
開発というのを
研究開発の
テーマに掲げる企業数が一番多くなってきている、こういうふうに申し上げていいかと思います。
ただ、こういう
研究開発に、そのためにさまざまな企業が進出してきております。しかしながら、これがまだ夜明けの
状態にあるというのは、まだ幾つか突破しなければならない壁というのがあるわけなんです。その壁の
一つとしましては、
生産規模の問題、あるいはコストの問題があるかと思います。これは
機能に合わせて
素材をつくると申し上げました。ところが、世の中
製品の数が多いと同時に、欲せられる
素材というのは非常に数多くあるわけなんです。そのために、どうしても
生産規模が小さい。これは
先生の御
発言にもございました、
生産規模が小さい。ただ質で勝負すると、こういうのが新
素材の本質だと思うわけなんです。ただ質だけでは
経済的に成り立たないので、どうしてもそれを安くつくってくれないと困るという問題がございます。
例えば新
素材の代表的な銘柄で取り上げます炭素繊維なんて見てみますというと、つくり始められた当初ではキログラム当たり七一年をとってみますというと二十万円の価格でございました。それが
生産になれるに従って、過去の
生産量というのがどんどん大きくなってくるにつれて、あるいは
生産規模が大きくなるにつれてコストがどんどん下がってきます。現在では大体キログラム当たり一万円というふうに考えられています。八千円から一万二千円の間というふうに考えられております。ところが、この炭素繊維を使って例えば自動車だとかあるいは飛行機をつくっていくと、こういう形になりますというと、この値段は五千円ぐらいでないと割が合わないというふうに言われています。これはこういうふうに価格が低下する場合、
生産規模が大きくなりますとどうしても量産のエフェクトというのがこういう新
素材のようなものにでもきいてまいります。そうしますというと値段が落ちてくる、値段が落ちないと使えない、こういう循環があるわけなんでございます。そういったものにどうしてもはまってしまう。現在ではどんなものも
経済単位で
生産できるほど大きな需要を持った新
素材はないし、少ないし、ほとんどないしと言ってもいいかもしれません。したがって、なかなかそれが一般用として
開発していけない、こういう問題がございます。炭素繊維に戻って言いますというと、現在ですと鉄なんというのは例えば年三百万トンが
経済単位だと言われていますけれ
ども、炭素繊維の場合には年で四百二十トンつくれればこれは十分
経済単位になる。ところが四百二十トンで、じゃ
経済単位一工場は四百二十トンだとしますと、総
生産需要といいますか、総需要がどのくらいかといいますというと、大体二千トンから三千トンぐらい。したがって、数社もあれば十分にできちゃう。そういう規模、世界的に見ましてそのくらいの規模なんです。それに対しまして現在は十数社あるいは二十社近くが
生産に入っていると、そういうことが言えます。したがって、
生産規模というものが小さい上に非常に過当な競争
状態というものが出現しやすい
形態になっている。御存じのとおり、
生産規模がそういう過当競争のもとでは
開発あるいは
生産を促進していくような利潤というのがなかなか出てこない。これが二番目の問題がなという感じがいたします。
さらに、次にそういった
機能を欲するといういわゆるニーズのサイドと、それから個別の
研究者
が
開発してくる、何といいますか、
素材と、そういったものがうまくかみ合っていかないという問題がございます。これは
機能に合わせてつくるんだと言いましたけれ
ども、これをつくるためにはいろんな実験をしていろんな
製品をつくって、それを実験データとして持っている必要があるわけなんです。それで、お客様からあるいは
ユーザーからこういった
機能の
素材をつくってくれといった場合には、それをリファーしながらそれで
製品をつくっていくと、こういう形になるわけなんです。そういうふうなデータというものが十分にあってそれで対応していくと、こういう形がなければならないわけなんです。現在は、私が見ている限りは
メーカーのところでいろいろなものをつくっていろいろに実験してそのデータを蓄積している段階と、まだ十分ニーズにこたえて対応して
素材をつくっていくことができる
状態にはないと、こういうふうな
状態にあると言っていいかと思います。
新
素材の場合、
素材の場合には、大体アメリカあたりですというと、例えばNASAあたりですと
製品開発に三年、それを応用
開発するのに四年かかる、こういうふうに言います。日本の例ですと、
一つの
素材をつくるのには十年から十五年かかる、
本当に使えるようになるまでは
製品開発の段階から十年から十五年かかると、こういうふうに言われています。そういう長い
開発過程の中間にあると、こういうふうに申し上げていいかと思います。
ただ、それができただけではこれまた使いものにならないわけなんです。
先ほど先生が新
素材というのは非常にかたいけれ
ども落とせば割れる、こういう性格を持っていると、こういうふうにおっしゃいました。かたくて熱には強い、そういう性格を持っているけれ
ども、壊れやすいあるいは割れやすいという、そういうもろさを持っていると、こういうふうに言われました。これが例えば自動車のエンジン部門でもって
セラミックスを使っていくと非常に高温にも耐えられる、冷却する必要もない、そのために熱効率が非常にいいと、こういう利点を持っているわけなんですけれ
ども、さてこれが壊れやすい、割れやすいとなりますと使えないわけなんです。そのためにさまざまな実験をしてそれを改良していくあるいはニーズに合わせていくと、こういう作業になるわけなんです。ところが、自動車の場合でいいますというと、ある部品に要求される精度というのは、精度といいますか、不良率といいますか、それは十万分の一以下でないと使えない。特にエンジンとかそういうふうに命に
関係するような、あるいは飛行機の機体というふうな命に
関係するようなものになりますというと、これはほとんどあってはならない、壊れてはならない、そういう確率で要求されるわけなんです。その信頼性のテストにすごい時間がかかる。こういうふうに申し上げていいかと思うんです。まだそういった信頼性のデータ、そういったものを突破するところまで来ていない、そういうふうな信頼性のデータを集積する段階にまで来ていない、こういうふうに申し上げていいと思います。したがいまして、
先端技術の
発展にとって新
素材の
開発が急務だと、こういうふうに一方では催促されるんですけれ
ども、一方では学者のもとで、あるいは
研究者のもとで出てきたシーズのデータ、ニーズのデータあるいは信頼性のデータ、そういったものが全部集まって相互に使えるという体制になっていない。そのために各所で、方々でやっているんですけれ
ども、なかなか大きな
エネルギーになってそれで新
素材産業を
発展させる、そういうところに来ていない。ちょうどその前の段階にある。こんなふうな状況に現在あるんだというふうに考えていただければいいかと思います。
ただ、六ページにありますように、ファイン
セラミックスでも幾つかのものがRアンドDの段階を突破して企業化、
製品化、それから
ユーザーの手元にと、こういうふうにわたっております。その例を若干六ページのところに書いておきました。こういうふうにRアンドDから企業化され、
製品化されるに従って例えば関連
産業あるいは評価設備あるいは装置
産業、そういったいわゆる周辺
産業とか関連
産業というものを大きく育てていくわけでございます。現在
製品になっているものを幾つかここに書いてございますけれ
ども、そういったものもそれなりの関連
産業というものを持って
産業として
発展してきているものもあるわけなんです。ただ、見ていただければおわかりになるように、いずれにつきましても非常に現在のところ規模が小さいマーケットしかできない。例えば炭素繊維で言いますというと、まだ飛行機とか自動車に使われるのはほんの一部で、専ら使われて目につくというのは皆様御存じのとおりゴルフのスチールの部分だとか釣り道具だとかそういうものじゃないかと思うんです。そういったことで、まだ関連
産業を育てそれから本格的な用途への実験の足踏みじゃないか、こういうふうに申し上げていいんじゃないかと思います。
それから、七ページ目にちょっと入らせていただきます。こういうふうにいろいろな形で新
素材というものは出ておりますし、いろいろな
産業が、非常に数多くの
産業が進出してきております。それは例えば七ページ目の下の表を見ていただきますと、窯業部門とかあるいは化学工業、繊維工業からこの
セラミックス、いわゆる
素材部門から
セラミックスに進出していった企業、これが
セラミックス協会に加入した企業数でもおのおの四十六、三十七というふうにございます。鉄鋼業につきましても、ほとんどの鉄鋼
産業が
セラミックスあるいは複合
材料の
研究を残らずと言っていいと思います、
研究しております。一方では、その新
素材をつくって
製品化していく、例えば電気機器とか
輸送機械、そういう
ユーザーサイドからも
セラミックスの
研究というのは進められているわけでございます。これは新しい
製品をつくるときにどうしても
素材のところから変わらないと
本当に新しい
製品ができないという
意味で、
ユーザーも新
素材というものをつくっていかなきゃいけない。それから
素材メーカーからしますというと、御存じのとおり鉄にしましてもあるいは石油化学にしましても繊維にしましても、現在のところ将来の成長性というのは期待できないという状況にございます。そういった状況でもって何か企業の成長を続けていかなきゃいけない、こういうふうになりますというと、新しい
素材を
開発さしてそして
製品を乗りかえていくと同時に旧
素材をそれに結びつけて生かしていく、こういうことをしなければいけないという
意味でもってこれは企業の存続、存命をかけた形でもって
素材メーカーがこの新
素材に進出してきているわけなんです。そういうふうに
素材メーカーあるいは
ユーザー、こういったものが一体になって両方から
セラミックスの
研究を行っている、こういうのが現在の現状じゃないかという感じがします。そういうふうな、これは専ら大企業でございますが、そういう大企業が
ユーザーサイドから、
メーカーサイドからこの市場に進出してきて
産業として育ててきていると同時に幾つかの中小企業についてもかなり積極的な
開発をやっているところが見られるわけなんです。
八ページ目をちょっと見ていただきたいと思うんですけれ
ども、例えば鳴海製陶、これはもうかなり大きい
メーカーでございますが、真ん中ぐらいにありますアキタとかアルス刃物とかそういうふうなのはどっちかといったら非常に小さい企業というふうに申し上げていいと思います。
新
素材の用途としまして
最初に申し上げました。途に合わして
製品をつくるんだと、そうしますというと
素材に着目すると非常に新しい用途の
製品というのも当然出てくるわけなんです。そういう形でもってある
製品、ある新
素材につきましては非常に個人でもって新しい
素材をつくって新しい
製品をつくる、こういうアイデアを出せばそれを
製品化していくということも可能になるわけなんでございます。例えばここにありますアルス刃物というのがございます。刃物の
メーカーですけれ
ども、これが東レでつくっておりますジルコニアという新
素材に目をつけまして、それを例えば
はさみに応用したらどうだろうかと、こういうふうに考えまして、それでアルス刃物製造という形で新
素材のはさみをつくっている
メーカーでございます。新
素材で刃物をつくりますというと、欠けにくい、切れ味がよい、しかも電流を通さない、磁気を帯びない。こういう形で新しい用途というものを
開発していくし、それから繊維の裁断工程までも変えていく、こういうふうな形になります。そういうベンチャー企業というのが、いわゆる中小企業というものが新
素材に進出してきているというのが非常に数多く見られるようになってきました。これに着目したということ、それだけではございません。さらに新
素材というものは、
先ほどオールド
素材というふうに区別なさいましたけれ
ども、オールド
素材である例えば陶器、それから磁器、こういったものの
技術を極限まで突き詰めていくという形でもってニュー
セラミックスというのが出てくるんで、質は違いますけれ
ども、そこに一種の連続性があるわけなんです。そのために日本全国でもって陶器とか磁器というのは
生産されています。そういった
メーカーさんが
自分の
技術をどんどん
開発しながら新
素材に出ていく、こういう例もかなり見られるわけでございます。この上の表で見ますと、例えば香蘭社、これは有田焼で有名なところでございます。あるいは北陸の方でもって陶器をつくっているところとか、それから名古屋の瀬戸、多治見地区とか、そういった地区では陶器、磁器の
技術を極限まで推し進めてそれで
セラミックスに出ているというところがございます。
通産省で今テクノポリスというのを推進しておりますけれ
ども、皆様のところにもありますテクノポリスの多くのもの、例えば秋田とか富山、宇都宮、広島、宇部、国分隼人、それからここにはちょっと印をつけておきませんでしたけれ
ども、国東、宮崎といったところにつきましても新
素材というものがこれの中心になっている、こういうふうに申し上げていいかと思います。こういうふうに新
素材は中小企業からあるいは全国にまで広がった形でもって新
素材の追求が行われている。
じゃ、将来はどういうことになるんだろうかというのを示しましたのが九ページでございます。これも通産省の
委員会での
研究の成果でございますけれ
ども、新
素材の市場は、新
素材そのものとしては五・四兆円ぐらいの規模というふうに真ん中のところに書いてございます。五・四兆円ぐらいの規模というふうに二〇〇〇年ぐらいでもって考えられております。ところが新
素材をつくってつくり出された新
製品の
生産規模というのは左の下にありますように大体二十兆円ぐらい。それから
既存の
製品ではあるけれ
ども、ここに新
素材を取り入れて一部を代替していった、こういった市場というのは二十一兆円、合わせて大体五十兆円といいますか、そのくらいの市場が何らかの形で新
素材にダイレクトに、イシダイレクトに
関係している、こういう市場だということが二〇〇〇年に予想されております。これは現在で言いますと、エレクトロニクス
関係というのは全部合わせて十数兆になっています。十数兆の規模でございます。これは八一年の規模で計算していますが、八一年度の、何といいますか、日本全体の
生産額は四百兆でございます。したがって四分の一あるいは五分の一ぐらいの
製品が何らかの形で新
素材と結びついている、こういうふうに申し上げていいかと思います。
このくらい大きな規模に将来は成長していくわけでございますけれ
ども、今後の成長に当たって私は
課題として二つばかりつけ加えさせていただきたいという感じがしております。
一つは国際協調でございます。新
素材でもって国際協調と言った場合、幾つかの形がございます。例えば炭素繊維というのがございますが、ここの十ページに書いてありますのが炭素繊維における国際協調でございます。これは詳しくは申し上げませんけれ
ども、矢印が日本から出発して、例えば東レを例にしますというと、
技術をユニオンカーバイドに供給するほかエルファキテーヌというフランスと合弁をつくり、という形でもって、さまざまな形でもって
技術の提携あるいは原料の供給、そういったものが行われている、非常に国際協調がうまくいっている例でございます。
炭素繊維というのは、これは一部日本で発明された
製品でございます。商品化する段階でもって糸にしなければいけないのですけれ
ども、それは日本で東レが行いましたし、それを焼き固めるというところではアメリカが
開発いたしました。今、日本では、これをアメリカに輸出する、OEMで供給するということと同時に現地でもって
生産していく、こういう形でもって、アメリカでつくっていくという形でもって協力しております。こういうふうに
技術あるいは原料の供給というのが双方向で向かって、しかも相手方のところでもって
技術も
開発しさらに
製品化していく、こういう形で協調が行われている例でございます。
それから次の二ページ目に書いてありますのがエンジニアリング
プラスチックの
技術の例、
産業の例でございます。矢印を見ていただきますというと、フォーリンファームス、外国企業から全部日本企業の方に矢印がついております。エンジニアリング
プラスチックでは日本はかなりまだ
技術的に
研究開発で世界ではおくれているのではないかと思います。そのためにすべてが
技術導入あるいは原料の供給という形で日本に流れてきているわけなんです。これは外国の
技術を日本に持ってきて日本で
生産する。これは日本でできたら、日本がつくる方は外国よりうまいですから逆に輸出していくと、こういう形に将来なりかねないものなんです。そうしますとまた再び新しい形で貿易摩擦の
可能性を持ってきているものなんです。
この形にやや近くて、しかも
技術の提携
関係が比較的薄いもの、これに
セラミックスがあります。
セラミックスについては、日立とルーカスで本格的な国際的な
技術提携を行ったというのもございますけれ
ども、大体がばらばらでもって各国でもってやっている、こういう
技術でございます。これにつきましては、かなりアメリカが日本の
発展につきまして何といいますか脅威を持ってきているというのが十二ページの図で書いてございます。これはアメリカのテクノロジーアセスメントのオフィスでもってつくった図でございますけれ
ども、ユナイテッドステートの
技術的優位に対しまして日本が最近時点になって急速に追い上げている、こういう図でございます。これは殊さらこれによってアメリカでもって危機を
意識させてそれで
研究費を増加させようと、こういう意図もあったのではないかと言われるくらい、まだアメリカと日本に差があるのに極端に縮めた形で書いてあると、こういう図ではございますけれ
ども、かなり日本に対して警戒的になってきている、そういうふうなものでございます。
こういう
産業、新
素材の
発展につきまして、エンジニアリング
プラスチックではもう先方の
技術に依存しなければならない、
セラミックスにつきましてもお互いにもうちょっと協調し合って協力して
発展させていく余地が大きいものでございますけれ
ども、このままで国際協調についてよく努力いたしませんというと何か水があいていくような、そんな危惧というものを私は持っております。通産その他ここにおられる
柳田先生を初めとして
皆さん国際協調について努力しておりますけれ
ども、何かいま
一つ進展が見られない、こういうことが言えるかと思います。
それから二番目の
課題として申し上げたいのは、
先ほど申しました
セラミックスをつくるときには、いわゆるシーズにつきましてもニーズにつきましても、あるいは信頼性テストにつきましてもいろいろなデータを全部集めなければならない。そういう
意味で産官学で協力して、それでデータをお互いに企業秘密に関しない限りは提供してそれでまとめていかなければいけない。つまりデータベースをつくっていかなければならない。そういうふうな協力体制というものがなければならない、しかもそれが国際的になるのが望ましい、こういうことが言えるわけなんです。
アメリカの例をとってみますというと、十二ページにありますように、新
素材につきまして十一
億ドル、これは八一年度ですけれ
ども、十一億ドルの
研究資金が政府から
大学とかその他の機関にばらまかれております。日本の場合には数十億円という単位でございます。
しかも、そういうふうな
研究資金が流れると同時に、例えばセンター・フォー・マテリアルサイエンスという形でそういう局をつくりまして標準化を進め、コミッティーマテリアルスということで各省庁間に連絡する
委員会をつくって、さらにコンピューター科学
技術研究所、そういったところでデータベースをつくっていく、そしてナショナル・スタンダード・リファレンス・データ
システム、こういう機関でもってオンラインでもってそのデータを供給していく、こういう体制をつくっております。日本につきましてもようやくこういったものの
研究が始まったばかりでございますが、こういったものをしっかり国内でつくって、そして国際的な協調にまで持っていく、これが二番目に大事な
課題ではないかなと、こんなふうに考えております。
以上によりまして私の御報告を終わらせていただきたいと思います。