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稲村稔夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいままで
審議をしてまいりまして今採決が行われようとしている
研究交流促進法案について、反対の立場から討論を行うものであります。
まず、本
法案に反対をする主な理由について述べます。
その第一は、
防衛庁技術研究本部初めその傘下の
試験研究機関等、専ら軍事
技術の開発
研究を
目的としている
試験研究機関とその
研究者が本
法案の
対象に加えられているということであります。この点については、
政府がいかに本
法案は軍事
技術の
研究とは直接
関係がないと
説明をされようとも、それは奇弁であります。どうして
国家公務員であるという、身分上同じであるという理由だけで、何をするかという職種には
関係がないとして
一般職の
公務員と防衛という特殊な任務に当たる自衛隊員とを全く同じ
法律的扱いをしておけばいいということになるでありましょうか。納得ができません。各
省庁の試験
研究施設と
研究者とはその
研究目的において全く異質である軍事
技術の開発
研究を
目的とした
試験研究機関とその
研究者があえて本
法案の
対象に加えられているのであります。これでは試験
研究の
分野での産官軍共同の体制づくりへの布石ではないかと言われてもいたし方ありますまい。仮にもしそうだとすれば憲法上の重大な問題であります。
その第二は、外国との共同
研究についてであります。この点については、SDI
研究への参加について
政府は
検討中であると言っておりますが、さきの官民合同の調査団の報告書には参加への期待が込められていると思われますし、中曽根総理の姿勢にも参加を考えているのではないかとの疑惑をうかがわせるものがあるからであります。SDI
研究は明らかにアメリカが生き残るための軍事
目的の
研究であり、絶対にこれへの参加は容認できないものであります。
第三には、SDI
研究など軍産学官一体の方向を持っているアメリカなどとの共同
研究の場合は、当初の
研究目的が全く軍事
目的とは
関係がなかったものであっても、いつその
研究が軍事
目的に利用されることになるとも限らないのであります。もし不幸にしてこうした事態に至ったとき、
研究者の良心に従って軍事
目的の
研究に参加しない自由が国際的に担保されていなければ、その
研究から抜けることができなくなるおそれもあります。したがって、平和
目的であることを明記した取り決めを行うなど、その他各
省庁の設置
目的の
範囲を超えないという保障がなければその外国との共同
研究への参加ができないなど、危険な方向へ巻き込まれないための何らかの歯どめの措置が必要であります。にもかかわらずこれらの配慮はどこにも見当たらないのであります。それどころか逆に、配慮事項として国際的約束の誠実な履行、条約の遵守の方だけが明記されているという点でも納得ができないのであります。
第四には、この外国との共同
研究という面でも、
防衛庁と他の各
省庁とでは質的に全く異なっているという点であります。それは、
防衛庁のみはその設置法のもとで軍事
技術の
研究開発を現に行っているのでありますから、軍事
目的の共同
研究に加わってもその設置法の
範囲を超えるということにはならないでありましょう。前にも述べたとおり、外国との共同
研究には特に留意しなければならないものがあるはずでありますが、この面でもなぜ位の
省庁と全く同等に扱われているのか、これもどうしても納得がいきません。
第五に、本
法案によってどれだけ国立の
試験研究機関の
研究者と民間の
研究者あるいは外国との
研究交流が、さらには異
分野間の
研究交流が
促進されるか、その効果にいささかの疑問があるということであります。なるほど、休職して出向する場合の退職金計算期間に不利益をなくすこと、
学会等の集会に参加しやすくなること、
外国人の
研究者の採用できる
範囲を若干広げることなど評価されるものがありますが、
研究交流を阻害しているもっと大きな要因を取り除かなければその実効は上がりますまい。たとえ身分上のことは解決しても、国の
試験研究機関の定員が少ないことや、帰ってからのポストの問題などのために国の
研究者の参加がふえないという事実が
参考人の意見として明確に述べられているのであります。また、現在採用が認められている
範囲においても国立の
試験研究機関には
外国人の
研究者が一人もいないと答弁をしているではありませんか。そのほか本
法案に取り入れられているものよりも
研究交流の阻害要因としてもっと大きいものがあるにもかかわらず、本
法案をもって
研究交流促進というのはいささか竜頭蛇尾だとは思いませんか、
以上、反対する主な理由のうちから五点を挙げましたが、そのほか
特許権、実用新案権の問題、国の施設を民間に使用させる問題、企業秘密とのかかわりの問題、その他まだ多くの疑問が残るわけであります。
最後に、それは我々が国立、民間、外国を問わず、あるいは
分野の違いを問わず、
研究者の自由で活発な
交流が行われてこそ
科学技術の進歩を速め、そして人類の幸せに貢献するものとして偉大な前進を遂げるであろうことを確信しているからこそ本
法案に反対であることを強調しておきたいのであります。平和
目的のもと、自主、平等、
公開の
原則を貫き、それを阻害する要因を取り除いた
研究交流促進の
制度の確立こそ今緊急の課題になっていると確信しているからにほかならないことを申し添え、反対の討論を終わります。