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政府委員(辻栄一君) いろいろ御
質問ございましたが、まず第一番に放射能の測定の現状と動向について御説明申し上げます。
これにつきましては、お配りした資料の十五ページにこれまでの観測結果が載せられているわけでございます。なかなか一枚の紙に経過等を収録することはできませんので、この資料は五月六日の十七時現在、放射能
対策本部におきまして取りまとめた値のうち、これまでに検出した最も大きな数字を示しているわけでございます。雨が降ったり風が吹いたりで各地いろいろデータについては変動がございまして、なかなか一定の傾向をとるということはできないわけでございますけれども、五月三日以降、主として関東あるいは北陸方面に見られました沃素の検出が漸次北の方あるいは西南の方に拡大をいたしてまいりまして、現
段階ではほぼ全国的に各地においてデータが出ているわけでございます。これも雨が降ると雨水に対して大きな数字が出る、天気が晴れておれば余りその
影響は出ないというような因果
関係がございます。
そういうことで、必ずしも動向は明らかではございませんが、現在のところのデータでは、やはり関東地方に大きい数字が出ているわけでございます。短期的にはかなりの量を示しております。なお、ここに書いてあります数字はピコキュリーという数字でございまして、ピコは一兆分の一でございます。こういうものから換算いたしますと、一体その数値が高いだけで安全か不安全か決めるわけにはまいりませんで、やっぱり一定期間の間どの程度体に摂取されたか、その総体の量で物事を判断していかなければなりません。今後の動向を見きわめながら、この点については
専門家の意見も取り入れながら
検討してまいりたいと存じております。現在の
段階では特に危険な数字になっていないということだけ申し上げさせていただきたいと存じます。
今後の動向でございますが、これは
ソ連の
原子力発電所の
事故がいつ終息するかということに一にかかっているわけでございまして、引き続き
事故が継続して放射能が出されるということであれば、ある程度
日本における
影響も長続きするかもしれないということではございます。最近の
ソ連の発表では、漸次
事故は終息に向かいつつあるというようなことも報道されておりますので、これが完全に終息することを大変期待しているわけでございますが、一方、
日本の方に参りますのは、何といってもいろいろな放射性核種のうち沃素その他の放射性の希ガス、これが多いのだろうというのは一般常識的に
考えられるわけでございまして、こういったものは比較的早期に出るということから
考えますと、私どもとしては多分これは減っていくのではないかなということを今
考えているところでございます。
次に、観測
体制についてでございます。
日本海側、大変御心配のようでございましたが、ごらんいただきますように、確かに気象庁につきましては裏
日本方面余りないのでございますけれども、ごらんいただきますように、新潟県、石川県、福井県、ずっとそれぞれ各県の衛生
研究所等におきまして観測が日夜続けられております。
そのほか、
原子力発電所等におきましても同様な観測が続けられているわけでございまして、検出
体制については
日本の国は多分ほかの国よりははるかに整備されているということは申し上げてよろしいのではないかというふうに
考えております。三十二の都道府県におきまして、私どもの予算の放射能調査
研究費の中から毎年拠出をいたしましてこれらの調査を進めているところでございまして、この調査網が今回のような場合に欠きに役立っておるということでございます。したがいまして、これはもともとかつて原爆の空中実験が行われておる際にできました観測
体制網でございます。非常に長い期間かけて行われておりまして、設備も更新し、私どもとしてはかなりのものをやっておる、国際的にもレベルが高いと思っております。そこに従事する職員につきましても、もう二十年からの経験を有するベテランがおると思います。レベルについても、私十分に信頼するに足るものを持っておるのではないかというふうに思っております。
岡山の問題の御
指摘がございましたけれども、これは何回かの発表がございます。現在、ここの数字で岡山についても何がしかの数字が出ておるわけでございますが、御
指摘の点につきましては、実はここに記載されておる時点より前の時点のデータのことであったかと思いますが、これは出てきたデータが非常に小さい数字でございまして、絶対値が非常に小さいということで、誤差範囲を
考えますと果たして有意の数字を出していいのかどうかわからぬということが岡山の衛生
研究所の方から申し出がありまして、これはデータとしては採用するまでもないということでございます。途中の過程におきまして、新聞社がこの途中データを抜くというようなことがあって新聞に報道されたのかと思いますけれども、そういったことでございまして、現在はこういった数字できちっとしたものが出ておりますので、御心配は要らないというふうに思うわけでございます。
現場労働者の定期検査、定検につきましては、これは所管が
通産省でございますし、本日
通産省も参っておりますので、
答弁は
通産省の方にお願いしたいと思いますので、これは後ほどお願いすることにして、第四点目の
ソ連に対してどういうデータを要求しているかという点でございます。
これは、私ども
事故直後から、モスクワには当庁から出向の
科学アタッシェ、これも出向前には原子力安全局におった職員でございまして、大使館を通じまして再三、まず第一に
事故の
状況は一体どうなんだということについて資料要求をしたわけでございますけれども、ナシのつぶてというのが実態でございます。その後、
日本の大使館に対しまして総理あるいは外務大臣からも資料公開を要求していたところでございますけれども、さらに最近に至りましては、
ソ連もIAEA国際原子力機関のブリクッス事務
局長が
ソ連を訪問することを受け入れる、ブリックス事務
局長が二名の
専門家を伴って
ソ連を訪問いたしております。そういったようなことで徐々に
ソ連も情報の、資料の公開に移ってきているようでございます。
サミットにおきましても、先ほど伏見
先生からお話しございましたように、先進国一致して
ソ連に対して情報の公開を求めるというようなことが決められた、こういうことで、今後はこういった国際活動の中で漸次情報の公開が図られていくのではないかと思っております。もしもIAEA等を通じての
専門家チームの派遣というような話でもなりますれば、この点につきましては私どもも積極的に
専門家を送ってデータの収集に努めてまいりたい、かように
考えているところでございます。
最後の中岡さんの論文の問題でございます。
巨大科学と
人間との
関係、この点について深い考察をなされた一論文として拝聴に値する御意見であるとは存じますけれども、原子力の
開発利用という面において物事を
考えていきます場合に、やはり今日この原子力というものが、昨年においては既に全体の四分の一の発電を
日本の
経済が原子力に頼っている、こういう現状を
考えますと、原子力につきましては、安全の上にも安全ということを注意しつつその
開発利用を図っていくということが
日本の政策としては避け得られない
基本政策であろう、かように
考えておるところでございます。したがいまして、こういったことの上によってそのために大きな犠牲を払わねばならないということがもし将来起こるとすれば、これは大変なことでございます。私ども、そういうことが決して起こらないことを願いまして日夜努力をしているところでございます。