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政府委員(
仲田豊一郎君) 初めの御
質問、
海運不況の長期化しているその要因いかんということでございます。これは、
昭和五十九年におきまして
世界の
海上荷動き量は五十四年以来五年ぶりに回復をした、回復というよりその年には若干増加したというような一時的な現象は見られたわけでございますが、この十年余りの間、一般的に申し上げますと、
運賃市況の低迷、特に
油送船部門、
不定期船部門におきましては
船腹の過剰
状況、それからまた
発展途上国の
外航海運企業の参入、こういうことによる競争の激化、
定期船部門では
アメリカの新
海運法の
影響、こういうようなものが重なりまして、通常、
海運が
不況だと申しましてもどこかの
部門はまあまあとか非常にいいとかいうことで相補っていたわけでございますが、この三
部門が同時に
不況ということに直面いたしまして
海運企業は非常に困難な
状態を迎えているわけでございます。
それぞれの部分につきまして細かくいろいろ御
説明もできますが、一般的に申し上げて
世界経済全体、特に典型的なのは油の
分野でございますが、油の消費が大幅に伸びかつ輸送の距離も伸びるであろうということを
昭和五十年あたりの専門家は予想していたわけでございます。それに応じてどんどん
船腹量も整備したわけでございますが、ところが
反対にそれをピークとして
石油の消費量は低迷し、かつ輸送の距離は短くなる、両方が相乗効果で結局半分以下に
トンマイルベースではなってしまった、こういうこと。
一つは、
世界経済の読み間違いであったかもしれませんが、そういう
需要と供給とのアンバランスというものがやはりこのような長期化する
海運不況の
原因であったというふうに申し上げられるかと思います。
二番目に、特に今例に申し上げました
タンカー等の過剰
船腹についてさらに申し上げますと、まず、見通しと全然逆の方向で、
石油の消費ベースでほぼ三割近くの減少、
世界的な
石油消費の減少があったということが
一つでございます。もう
一つは、これは
石油の供給地の
変化ということでございます。
日本はほとんど六割余りを中近東に依存しておりまして、現在におきましてもその割合はそう変わっておりませんが、ヨーロッパ特に北欧と
アメリカでございます。これの中近東の依存の度合いが五十二年当時と現在と比べますと非常に変わってきております。すなわちそれは、
一つは
北海油田が開発されたということ、もう
一つはラテン
アメリカにおける
石油供給を
アメリカがふやしたということによりまして、中近東から北欧に行きまた中近東から
アメリカに行くという
石油が非常に減りまして、これが
世界的に
石油の
輸送量の平均輸送距離というものをほぼ三割近く減らしてしまった。この二つが相乗効果を持ちまして、五十九年の
荷動き量は五十二年の
荷動き量に比べまして
トンマイルベースで四七%に下落をしているということでございます。
それで、この過剰の傾向が将来どういうふうになるかということでございますが、
石油の消費量に関してはいろいろな見通しがございますが、現在の
状況でそのまま
推移するのではないかということが大体大方の見方ではないかと思います。これ以上急激にふえるということもなければ、また減ることもないであろうということでございます。輸送距離に関しましては、これからの新規の油田の開発、
世界各地でいろいろな試みが行われておりますが、そういうものとの関連でございますのでなかなか難しゅうございますが、一応現在の
状態で考えるしかない。とにかく、将来を見通して、そうふえるような要因は
需要面では見当たらないということでございます。
そういうことで現在、
船腹、
タンカーをつくる建造意欲というのは非常に衰えておりまして、特にVLCCなんかになりますとリプレース以外にはほとんどつくられていない。VLCC自体が、大体
世界のVLCCのうち半分は要らなくなるのではないかというような認識がされているわけでございまして、ただこれらの大量建造が行われましたのが
昭和五十年近辺が多うございます。そういたしますと、大体十年を経過いたしてまいります。十年を経過いたしますと、通常オペレーターはこれを
スクラップするべきか否かということについて検討を始めますので、この辺の大きなこぶを十年が経過いたしますので、この辺の大きなこぶが早く
スクラップされればこれは
海運の
マーケットの回復に対して大きく貢献するのではないかというような見通しがございますが、何しろその
需要面が、先ほど申し上げましたようなせいぜい
横ばいではないかということでございますの
で、決して現在の
海運業界、
外航海運業界の方は、積極的に
タンカーの建造に走ろうというような機運には全くございません。したがいまして、しばらくの間この過剰の
状態がまだ続くのではないか。同じようなことが大体
不定期船、一般の
ばら積み船についても言えるかと思いますが、今の見方でございますと、
ばら積み船の方がもう少し過剰の
状況が長く続くのではないかというような見方が一般的ではないかと思います。
簡単に申し上げると以上のとおりではないかと思います。