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山田分科員 要するに、簡裁の担う役割とかあるいは本質、理念というようなものを変えるつもりはない、このような
局長の御
答弁でございます。
そこで私は、このパンフレットあるいはもう
一つ時期をずらして適正配置についてのパンフレットを子細に読ませていただいたわけでございますが、全体のトーンとしてはいわゆる効率性ということで貫かれておるような気がいたします。統廃合する理由というのは効率性を追い求めておる。例えばそれは、
事件数の少ない小規模庁を多数存在させることの非効率性とか、大都市簡裁への集約による効率性というようなことにあらわれております。いわゆる
裁判所というのは
国民の
人権だとかあるいは民主主義のとりでなどというふうに言われているわけでございまして、その
裁判所の配置をこの効率性という観点からのみとらえるというようなことであっては断じてならないと私は思うわけでございます。そしてまた、同じ国の機関でありますけれ
ども、
裁判所というのは、他の
行政官庁とは基本的に異なる性格あるいは任務を持っておるという点も、これはしっかりと踏まえて対応していかなければ大きな過ちを犯すことになるということを私は申し上げておきたいと思います。そしてまた、そこから導き出されてまいりますが、採算ということとあるいは
住民の、
国民の裁判を受ける権利というものが一方においてあるわけでございまして、これを何か引きかえにするというようなベースであるいは考え方でこれをとらえていくということになれば、これまた言語道断のことでございまして、その点は最高裁におかれてもひとつしっかり踏まえた——適正配置で結構でございます。我々は統廃合といっておりますけれ
ども、どういう言い方でも結構でございますが、それらを踏まえた慎重な、そしてまた
国民の各界各層の
意見をしっかりと踏まえて、日弁連、
法務省そして最高裁の法曹三者
会議だけで大体大まかな合意ができたからこれでいくんだというようなことがないようにひとつこれは対応していただきたい、強く要望をいたしておきたいと思います。
それから、あともう時間が七分ぐらいしかありませんので、一々に御
答弁いただくことはできませんけれ
ども、例えばこの「総表」ですね。
昭和五十五年から五十九年までの
事件数と隣接庁との時間で、その中のどの部分を統廃合の対象にしようかという部分の
事件数のところでございますが、これは特に最高裁の方では、大都市部と町村部といいますか小都市部との
事件の偏在化をこれで明らかにしようとされておるわけでございます。ただ、この
事件数の中身は、ここに注釈がございますように、独立簡裁の民事訴訟、調停、刑事訴訟、この三点の
事件数なんですね。しかし簡裁の役割、性格というようなことからすれば、口頭で受理をする、あるいは
相談という
業務もある。いわゆる窓口事務というものも踏まえなければなりません。そしてまた潜在的な
事件の存在というものもやはりしっかりと踏まえた統廃合の計画でなければならないというふうに私は思います。
それからさらに、民事の督促
事件あるいは刑事の略式
事件などはこの
事件数の中には入ってないわけです。それらいずれも、サラリーマン金融等にかかわる
事件だとかあるいはまたクレジット問題にかかわる
事件とかの激増、これが都市部に集中をしておるんだと、
局長は先ほどそういう
意味のことを御
答弁なすっておられますけれ
ども、いずれにしてもこういうその他の、簡易
裁判所本来のといいますか、その最も
中心的に取り扱うべき
事件数がこの「総表」という資料の中には
事件数として検討されていないということ、これは
指摘をしておきたいと思います。
それから、小都市、町村地域で年間の受け付け量が極めて少ない、年間十二件とか、そういうような簡裁につきましては配置の見直しは必要かもしれないと私は思っております。しかしその場合でも簡易
裁判所設置の理念とか性格、役割というものを最大限踏まえるべきだと思います。加えて人口動態も見直しの根拠としてしばしば挙げられておりますけれ
ども、例えばUターン現象であるとか、あるいは
政府が言っておられる、これからは地方の時代だ、地域の時代だというような、そういう方向性からも、あるいはまた将来のその地域の開発計画などというものもしっかりと踏まえていかないと、これは単に
事件数だけで判断をしていく——それだけとは言いません、先ほど御
答弁がありましたように、いろいろな
状況も踏まえてということでありますから、そういうことだけではないと思いますけれ
ども、それらも踏まえてもらいたい。あるいはまた交通事情が非常によくなってきているといいますけれ
ども、例えば赤字ローカル線の廃止問題
一つとってみても必ずしも交通事情が従来と比べてよくなってきていると一〇〇%言える地域だけではないわけでございまして、これらも十分踏まえなければならないというふうに感じております。
それで、私は最後になってしまいますけれ
ども、弁護士が不在の独立簡裁が百八十六庁あると言われております。全体の六五・七%。検事、判事、弁護士の
関係者の移動に費やす、そういう時間的ロスがいろいろ多いとおっしゃっておられます。しかし、元来簡易
裁判所というのは
本人訴訟あるいは調停、督促、略式ということで弁護士を必要としない
事件が
中心ではないのかという観点もあるわけです。
それから、このパンフレットには全然触れられておりませんけれ
ども、五十六年の統計でありますが、簡裁の民事通常訴訟等を見てみますと既済、既に済んだ
事件が八万五千件からあるわけです。その中で弁護士が一方について争った
事件の数というのは一万四千九百八十一件で一七%強しかないわけです。双方に弁護士を立てたのが四千九百九十二件、約五千件でわずか五・八%です。残りの
本人訴訟が七万二百十七件ということで八二・四%、こういう
状況があるわけです。ですから弁護士が不在だからということを根拠の
一つに据えて簡裁は統廃合していくんだという姿勢は、私はおかしいのではないかというふうに思っております。今五十六年度の資料で申し上げましたけれ
ども、今日に至るまでその基本的な傾向は変わっていないだろう、変わっていたとしてもさほど大きな変化はないはずだ、
本人訴訟が非常に
中心的な簡裁であるという性格には変わりはない、このように私は
指摘をしておきたいと思います。
それで、最後に御
答弁いただきますけれ
ども、簡裁の統廃合を小都市、町村部と大都市を同一の考え方、同一の視点からとらえて適正配置だ、統廃合だと言うのは間違いだと私は思います。要するにこの資料を見ても明らかなことは、中小規模の簡裁配置の問題点として、
事件数が少ないから統廃合するのだ。しかし、大都市における簡裁の集約というのは、今度は
事件数が激増しているのに集約する、こういう立場にすぐ立たれるわけです。これはおかしいのです。
それからまた、裁判官を常駐させられない独立簡裁が二分の一もある、百四十庁もある。だから統廃合するのだと言っておきながら、大都市部の一千二百万人の都民が住む、そこにわずか十二、三カ所でしょう、先ほどの御
答弁で明らかですけれ
ども。しかし、簡裁の取り扱い
事件がそこに激増している。それも集約をする、こう来るわけですね。これはおかしいです。
それから、裁判官の非常駐のうち百三十庁は、管内に弁護士がいない。だから統廃合するのだ。じゃ、
東京には弁護士ばっかりいるじゃないですか。それも集約をするのだ、こうなるわけですね。おかしいと思います。
それで、
事件数の少ない多数の独立簡裁について、庁舎の新営、維持
管理、人員配置等において困難と非効率性が大きいから統廃合する、こうなっているわけですね。ところが、
東京や大阪や名古屋、北九州にある、この大都市部における千何百万人、何百万人という大都市にある十二や四つや三つや二つのこの庁舎さえも集約をしようとする。それは確かに
裁判所の事務処理においては、あるいは弁護士が動くという
意味においては、これは非常に有利、便利かもしれませんけれ
ども、利用する
国民の立場に対する配慮がなされていない。私はこのことをきょうは明確に
指摘をさせていただきたいと思っております。したがって、大都市部と小都市部といいますか、そういうところと一緒に統廃合を進めていくということについては、法曹三者
会議あるいは法制審、それからまた
鈴木大臣おいででございますが、
法務省においてもこの点はぜひしっかりと念頭に置いて、そうして統廃合の問題を考えて進めていただきたいというか対応していただきたい、このように私は思います。
最後に、せっかく
鈴木大臣がおいでの
分科会で質問をさせていただいておりますので、
主査、まことに申しわけございませんが、
大臣から一言ただいまの件につきましてお話を賜り、終わりたいと思います。