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小林(進)
分科員 大臣のおっしゃること、総括的に私も
賛成でございますが、ただしかし、どうも進み方が少し遅過ぎるのだ。そのうちに
世界に置いていかれるのではないかという心配があるわけです。
そこで、この問題でいま
一つ申し上げますけれども、
日本の
農業の
現状、
現実ということを
大臣おっしゃったが、そのとおりです。
現状だけを認識してみれば、一ヘクタール以下の
農家というものは
農業収入にはちっとも依存をしていないのですよ。この一ヘクタール以下の
農家を私は小
零細農と位置づけているが、この小
零細農というものは、今の
日本の
農家四百五十万戸と仮に言って、その中で一体何割を占めているか。七割でしょう。七割以上を占めているこの一ヘクタール以下の
農家というものは、何も
生活が
農業に依存していないのです。だから私は、これを
土地持ち労働者という新しい
言葉で呼んでいるのだ。
この
人たちの、一ヘクタール以下の
農家の一年間の
所得がここに細かく書いてありまするけれども、大ざっぱに言って五百万円といたしますると、その五百万円の一家の
家計費の中で占めている
農業所得は一〇%も行ってませんよ、一割も行っていない。あと九〇%は皆
農業以外の
収入、
勤労所得収入であったりあるいは商人として商業の
収入であったり、特にしかも
農村においては〇・五ヘクタール、一ヘクタールの半分ですから〇・五ヘクタール、アールにすると五十アールだ、五十アール以下の
零細農家が今
日本の
農村では一番
富農なんです。
主査もよく聞いてくださいよ、あなたは
農業のこと知らないでしょうから。これが
富農なんですよ。一番
収入が多くて、これが一番
生活が豊かだ。自家用車を持っているのは一番
零細農家なんだ。その
零細農家の中で、役場へ勤めたとか銀行へ勤めたとかあるいは県庁の役人をやっているとか農協の職員だとかいう、いわゆる一定の定着した
職業についている
人たち、これが一番
富農なんだ。こういうことを、
現実に即してこれに
解決のメスを入れなければ
日本農業の将来なんかあり得ない。
私は言っているのです、これだから
農業者という位置づけを
農水大臣、やめてくれと言っている。これを
土地持ち労働者というふうに位置づけて、これは私は、今やめました
山口労働大臣にも言った。これを全部
調査して労働省の
所管にむしろ入れろ、そしてこの
農業を統制してやりたまえと言って、一度
調査を依頼したことがありますけれども、その
調査をやってくれたかどうかわかりませんが、こういう
諸君が今の
日本の
農業の発展を阻害していると言っては
一つ言葉が言い過ぎでおしかりを受けるかもしれませんが、何でこの
諸君は一割も占めないのにもかかわらず
農業を放さないかというと、
資産として
土地を放したくない。この
土地は税金が安いのです、
農地だから。
固定資産税は安いし、そして
農業者といって農林省からあらゆる
恩典を受けられるのです。
農業者としての
恩典を受けられる、そしていられるものでありますから放さぬ。
放さないが、今また我が
日本において、
大臣、限られた
農地だとおっしゃったが、この限られた
農地を、一番粗末にしているのはこの
諸君なんです。これくらい
農地を粗末にしている者はない。なぜかといえば、ほんの申しわけ的に稲を植える、稲を植えるだけなんです、植えれば
農家という
資格がそこで生まれるから。後は
管理もやらなければ、投げっ放しなんですよ。ましてこの耕地から
生産を高めようとか、
収入を高めて
生活の糧にしようという頭がないのですから。ただおれは
農家だという
資格を保持するために日曜日か土曜日か、朝か晩かにぱっと
穀物を栽培をして、そして秋の収穫にはちゃんと収穫するといいますから、だから草は生えている、
管理はやらない。だから
学者はみんな言っています。
農村に行ってみても歩いてわかる、これは
土地持ち労働者の家だな、これはまじめにやっている
専業農家、
中核農家だというのはあぜ一本でわかる。こっちは草も生えているし育ちも悪いし手入れもしないし、こっちの方はちゃんと伸び伸びと
水稲が伸びている、このくらい画然としている。こういうような
人たちを
農政の対象にしてやったって成功するわけじゃありません。そこに現在の
農水省の
農政の
あり方に非常に私は疑問を持っていますよ。
先ほど
大臣もおっしゃったけれども、やはり
土地の
集約です。そして
規模を大きくしてその
諸君をひとつ育成をしていく。私は、今四百五十万戸ある
農家のうち、せんじ詰めれば五十万戸でいいと言っているのですよ。ところが、
大臣、五十万戸にすると
農村に
失業者ができる、全然ありませんよ。今も言いましたように、第二種
兼業農家はみんな安定したところに
職業を持っているのですから。そしてその中から、
自分たちの
収入の九割はそっちの方から得ているのですから。だからその第二種
兼業の一ヘクタール以下の
農家から
土地を仮に取り上げたとしても、
失業者なんというものは決して
農村から出てこないというのが今の
農村の
構造です。けれども私は取り上げるとは言いませんよ。言いませんが、そこを新しい
農水大臣がひとつ知恵を絞っていただいて、いわゆる
賃貸契約でもよければ
請負契約でもいい、
実情に即したやり方で
農地の
集約をひとつやって、
基盤を
整備をして、そこへどっと近代的な
技術や
アイデアを入れるような
農政に転換をしてもらいたいということなんですよ。ところが、今も言うように、
農地を
資産として持っている
諸君はなかなか放したがらない。そこに
農政のネックがあると私は思う。これは
大臣の
アイデアですよ。あなたの
後ろにいるような
官僚なんかは頭がかたくてそういう
アイデアを持ち得ないのだ。それをひとつ大いにやって、そのかわり
農政の
基盤整備だとか
技術の革新だとか、
農水大臣、そういう方向へひとつうんと
予算を出していただきたい。ことしの
予算は、あなたはもうできた後に来たから無理だけれども、来年の
予算はひとつそっちの方へ大きく力を入れて、
農業の
近代化を大きく進めていく、私はこれを第二の
農地改革と言っているのですよ。第二の
農地改革だから、第一の
方式で行けと言うのじゃないですけれども、
方式をひとつ
近代化してやっていただく、これはあなたにお願いして、私はあなたに期待しているのですよ。
大臣、これは期待しておりますから、ぜひひとつお願いしたい。
第二番目は、今の
食糧管理なんです。私は、実は
食糧管理法を廃止せよという論者ではないのですよ、ちょっと
言葉は過ぎましたけれども。第一番は
食糧管理制度を保持しながらも徹底的にそれを
改革をしてもらいたい。第二番目に言いたいことは、
農業基本法を
農水省はやったのですよ。
基本法は私は絶対支持しているのです。できたのは三十七年かな(「三十六年です」と呼ぶ者あり)三十六年にできて、あれは実にいいし、
農業の
基本法でよろしいと思うけれども、それが今日、二十五、六年の歳月が経過したが、
農業基本法は
一つも実施されていません。
農業と他
産業との比較で言えば、調整を保つとかあるいは
農業従事者を他の
職業の
従事者と
水準を
一つにするとか、何もできておりません。むしろ
格差は開くだけだ。
農業だけに専従している者は実に他
産業に従事している者の、今三五%とか、この中に書いてありますけれども、もう三分の一くらいしか
収入がない。そこで、余りひどいからあなたのところの部下を呼んで聞いてみたら、いや、
農業の
収入も他
産業の
収入も
水準はやや近づいています。何を、言うか。それは
農家の
収入であって、
農家にいても、
農業と呼びながらほかの
職業から得ている、
総合収入においては他の
職業と変わりがないだけの話であって、純粋の
農業だけの
収入を見れば三分の一も行っていません。
格差はだんだん大きくなってきている。ですから、
農業基本法がある以上は、
大臣がこれも
実情に即していないから廃止するとおっしゃるなら別だけれども、私は、これを存置しながら、やはり
農業基本法の精神に近づくような、
現実にこれができ上がるような
農政をひとつやっていただきたいと思います。これはお願いしておきます。
それから
食糧管理制度、実際はどこまで一体実施されているのか。私なんか家で食べている米を買ってきますけれども、全部これはやみ米です。この中で一体
食糧管理法に基づく配給米を食っている人がどれだけいますか。そういう
実情に即していない
食糧管理制度、これも時間がありませんが、これを言うと
皆さん方、うそだとおっしゃるだろうけれども、これはNHKのテレビが言っているんだ。一年間で約一千万トンできる米の中で、二百万十トンから三百万トンはやみに流れているだろう——いや、さっきから言うように、あなた、うそだとおっしゃるだろうと前ぶれしたけれども、流れている、そういうわけなんだ。それはどうですか、
食糧管理法は今のままでよろしゅうざいますか、このままで。どうですか。