○
渡辺(秀)
委員 私は、
自由民主党・新自由
国民連合を代表して、ただいま議題となっております
昭和六十年度補正予算両案に対し、賛成の討論を行うものであります。
我が国経済は、二度にわたる石油危機を初めとする幾多の試練により経済活動が低迷いたしてまいりましたが、
国民生活の安定と経済の持続的成長を確保するため、
政府は毎年多額の公債を発行するなど機動的な財政
施策を展開してこの試練を乗り越え、今や世界経済のほぼ一割を占めるまでの
発展を遂げたのであります。
しかし、その反面、
我が国の財政は公債残高の累積などにより、社会経済構造の変化に対応する新たな
施策を講ずる余力を徐々に失ってまいりましたので、早期に財政の対応力を回復することが緊急の
課題となり、
昭和六十年度当初予算も、経費の徹底した節減合理化を図りながら特例公債依存体質の改善に努めるよう編成されたのであります。
しかるに、当初予算成立後に
我が国を取り巻く世界の
情勢は大きく変化いたしました。すなわち、アメリカ経済の
拡大速度の鈍化、
我が国の五百億ドルにも及ぶ輸出黒字の発生、貿易摩擦の激化、内需
拡大圧力の増大など種々困難な問題が発生し、これら諸問題解決の一環として、為替レートについては、昨年九月に五カ国蔵相・中央銀行
総裁会議が開かれ、その
合意を契機として円高が急速に進んだのであります。
一方、
国内においては、円高基調の影響をまともに受けた経済の障りに対し内需の振興などを促進するための経済運営が強く望まれ、また災害による被災地の復旧事業も急がれているところであります。
今回の補正予算は、このような内外経済の
動向を勘案し、当初予算成立後に生じたやむを得ざる事由に基づいて特に緊要となった事項等について所要の措置を講じようとするもので、その規模は七千二百三十二億円となっております。
以下、本補正予算に賛同する理由を申し上げたいと存じます。
その第一は、災害復旧費の追加であります。
昨年は、自然災害が多く発生し、このため幾多のとうとい人命が失われたことはまことに痛ましい限りでありますと同時に、被災地の方々は日常生活にはかり知れない不便を感じておられることと存じ、心からお見舞いを申し上げる次第でありますが、今回の補正予算では災害復旧に特段の意を注ぎ、初年度復旧進度を従来よりさらに速めるなど万全を期することとし、三千五百三十四億円を計上いたしておるのであります。これにより被災地の方々が明るい希望を持って生活の再建に取り組むことができるものと高く評価いたすものであります。
賛同の第二は、公務員給与の改善であります。
公務員給与については、これまでも厳しい財政事情の中で適宜相当程度の改善を行ってきたところでありますが、
昭和六十年度は、人事院勧告
制度の本旨にのっとり、かつ公務員が生活の安定を通じて職務に専念することを期待して、七月からではありますが、勧告どおり五・七四%引き上げ、率においては完全実施を行ったということであります。
今回の措置により、公務員給与についてのいわゆる積み残しは解消されたことになるわけでありますので、公務員各位も、
政府の意図するところに沿って綱紀の粛正に努めるとともに
国民への奉仕に一層努力されんことを切に期待いたすものであります。
賛成の第三は、内需振興のための諸
施策についてであります。
近年、輸出入のアンバランスが
拡大し、アメリカを初め欧州諸国等が、
我が国に対し収支の不
均衡是正を強く求めていることは御承知のとおりであります。
貿易立国である
我が国としては、自由貿易体制の維持強化を図るため、経済摩擦の解消に真剣に取り組んでいかなければならないのは当然のことであります。これにこたえて
政府・
自由民主党は、率先して各種の
対策を決定し、その推進に努めてまいりました。すなわち、昨年四月の対外経済
対策の決定、七月の「市場開放のためのアクション・プログラムの骨格」の策定、十月及び十二月末の内需
拡大に関する
対策の決定と、切れ目なくあらゆる努力を傾注してまいったのであります。
今回の補正予算におかれても、一般会計及び特別会計に内需
拡大に関する
対策の一環として、一般公共事業に係る国庫債務負担行為約四千億円を追加計上し、これにより事業費として六千億円を確保いたしております。この措置は、経済の
拡大均衡を通じて経済摩擦の解消を図るため内需の
拡大等に努めるという従来の
基本方針に沿うものでありますから、貿易収支不
均衡是正への積極的取り組みとして、補正予算の一日も早い成立を切望するものであります。
以上、私は、本補正予算に賛同する主な理由を申し上げてまいりましたが、
我が国はこれから急速に高齢化社会を迎えることになり、また、対外経済摩擦も
我が国の経済構造からいまだ続くものと見なければなりません。このようなときに当たり、
政府におかれては、引き続き行財政
改革を推進するとともに、財政の根本的健全化を図るよう十分留意し、また一方、
拡大均衡の下での新しい成長を促進するためには、
基礎的、先端的分野における創造的
技術開発を推進して付加価値の高い
産業への転換を図るなど、将来の
我が国産業のあり方に万全を期せられんことを特に
要望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)