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1986-02-08 第104回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月八日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員  委員長 小渕 恵三君   理事 中島源太郎君  理事 浜田 幸一君   理事 林  義郎君  理事 原田昇左右君   理事 渡辺 秀央君  理事 稲葉 誠一君   理事 岡田 利春君  理事 二見 伸明君   理事 吉田 之久君      相沢 英之君     伊藤宗一郎君      石原健太郎君     石原慎太郎君      糸山英太郎君     臼井日出男君      衛藤征士郎君    小此木彦三郎君      大西 正男君     大村 襄治君      奥野 誠亮君     砂田 重民君      住  栄作君     田中 龍夫君      中村正三郎君     葉梨 信行君      橋本龍太郎君     林  大幹君      原田  憲君     武藤 嘉文君      村山 達雄君     山下 元利君      井上 一成君     上田  哲君      大出  俊君     川崎 寛治君      川俣健二郎君     小林 恒人君      新村 源雄君     多賀谷眞稔君      松浦 利尚君     渡辺 嘉藏君      池田 克也君     近江巳記夫君      神崎 武法君     正木 良明君      大内 啓伍君     木下敬之助君      小平  忠君     米沢  隆君      佐藤 祐弘君     瀬崎 博義君      松本 善明君     三浦  久君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 今井  勇君         農林水産大臣  羽田  孜君         通商産業大臣  渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 三塚  博君         郵 政 大 臣 佐藤 文生君         労 働 大 臣 林  ゆう君         建 設 大 臣 江藤 隆美君         自 治 大 臣          国家公安委員会         委員長     小沢 一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      古賀雷四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      河野 洋平君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 森  美秀君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 山崎平八郎君   出席政府委員         内閣審議官   中島 眞二君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    鹿兒島重治君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         内閣総理大臣官         房管理室長   橋本 哲曙君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    吉田 耕三君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 厚谷 襄児君         警察庁警備局長 三島健二郎君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      岩見 秀男君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         環境庁企画調整         局長      岡崎  洋君         環境庁自然保護         局長      加藤 陸美君         環境庁水質保全         局長      谷野  陽君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         国土庁長官官房         会計課長    斎藤  衛君         国土庁土地局長 末吉 興一君         公安調査庁次長 田村 達美君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  門田  實君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         国税庁次長         国税庁税部長         事務取扱    塚越 則男君         文部大臣官房長 西崎 清久君         厚生大臣官房審         議官      水戸  脩君         厚生大臣官房審         議官               兼内閣審議官  山内 豊徳君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省社会局長 小島 弘仲君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         食糧庁長官   石川  弘君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省基礎         産業局長    岩崎 八男君         通商産業省機械         情報産業局長  杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省運輸政策         局長      栗林 貞一君         運輸省貨物流通         局長      武石  章君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         労働省労政局長 加藤  孝君         労働省労働基準         局長      小粥 義朗君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省道路局長 萩原  浩君         自治大臣官房審         議官      石山  努君         自治大臣官房審         議官      小林  実君         自治省行政局公         務員部長    柳  克樹君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道経         理局長     前田喜代治君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社代表取         締役社長)   真藤  恒君         参  考  人         (日本国有鉄道         再建監理委員会         委員長)    亀井 正夫君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月八日  辞任        補欠選任   伊藤宗一郎君    臼井日出男君   上村千一郎君    林  大幹君   倉成  正君    中村正三郎君   三原 朝雄君    糸山英太郎君   井上 普方君    渡辺 嘉藏君   佐藤 観樹君    新村 源雄君   小平  忠君    米沢  隆君   野間 友一君    三浦 久君 同日  辞任        補欠選任   糸山英太郎君    三原 朝雄君   臼井日出男君    伊藤宗一郎君   中村正三郎君    倉成  正君   林  大幹君    衛藤征士郎君   新村 源雄君    佐藤 観樹君   渡辺 嘉藏君    小林 恒人君   米沢  隆君    小平  忠君   三浦  久君    佐藤 祐弘君 同日  辞任        補欠選任   衛藤征士郎君    上村千一郎君   小林 恒人君    井上 普方君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 米ソ核戦略のいわばある意味では谷間になる我が国ということになるのです。最近は、フェイントが欧州で、ストライクは極東だという言葉まで出てきております。非常に危険な、核のせめぎ合いの谷間に置かれている感じがひとしお強いのであります。  そこで、アメリカ原子力潜水艦が、私は選挙区が横浜でございまして、隣が横須賀でございますが、常時いろいろなことが入ってまいりますが、昨年は史上最高入港隻数でありました。外務省に承りたいのですが、一昨年、さらにその前の年、そして昨年、三年間の横須賀に入港した原潜の数をちょっと挙げていただけますか。
  4. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  一昨年、五十九年でございますが、横須賀に入港いたしました原子力潜水艦は二十三回、それから六十年は三十回、それから本年は三回でございます。
  5. 大出俊

    大出委員 五十八年の二十四隻、五十九年二十三隻、六十年三十隻、急激にふえまして、実は過去最高入港数になっている。昨年長洲知事が、非核宣言を出すと決めておりますが、自民党の皆さんだけ反対いたしましたが、出身国会議員との懇談の席で開口一番、過去最高史上最高原潜入港という事態、県民の非常に心配するところだという発言をしましたが、まさにそういう状況でございます。  さて、これは中曽根さんの言う抑止均衡という諭理がございます。そういう意味で、これは歓迎すべき状態だということになりますか、総理
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 極東におけるソ連海軍あるいは空軍の増強ぶりから見まして、自由世界の方は劣勢である、そういうところから訓練等もある意味においては強化しつつあるのではないか、こう想像いたします。
  7. 大出俊

    大出委員 そうすると、つまり歓迎すべき状況だ、こういうことですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やむを得ないことである、そう思います。
  9. 大出俊

    大出委員 さらに戦艦ニュージャージー、これは一昨年の予算委員会田邊書記長質問から始まりまして、随分長い議論予算委員会でいたしておりますが、これがまたこの夏ごろまでに特に横浜、そして横須賀、こういう一面トップの大変大きな記事新聞に報道されましたが、御存じでございますか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ニュージャージーですか。――戦艦ニュージャージー日本寄港につきましては、まだ何にも連絡を受けておりません、通告も受けておりません。
  11. 大出俊

    大出委員 こんな大きな記事が、ごらんになっていただけますか、まさに大新聞が一面トップに書いている。一月五日の新聞でございまして、ことしの一月ですよ。五日でございますから、意外に皆さん御存じないのですね。これは大変大きな記事ですよ。  これはこういうことなんですね。  米太平洋軍第三艦隊戦艦「ニュージャージ」が、核・非核両用巡航ミサイルトマホーク搭載後初めて、今夏にも、日本訪問する見通しとなった。防衛庁筋によると、ニュージャージー日本寄港は、米側のかねてからの希望で、訪問港は首都圏横浜横須賀になる可能性が大きい。寄港の目的は、親善訪問となるが、極東ソ連軍増強をにらみ、対ソ抑止力としてのアメリカ軍事プレゼンスを示す狙いもあるとみられる。しかし、「トマホーク」の日本持ち込みは、これまでたびたび指摘された核持ち込みの疑惑など、核論議を再燃させる云々。  しかも、この記事の中には、  わが国は、中期防衛力整備計画(六十一―六十五年度)で二隻のエイジス艦の導入を計画しており、米側がこの点を考慮して、エイジス艦を随伴させる可能性もある。  ニュージャージー日本を含めたアジア友好国訪問は、対ソ戦略の一環として将来の極東配備への布石ではないかとの観測も出ている。この場合、ソ連艦艇の往来が頻繁な対馬海峡を監視するうえで、絶好の位置にある長崎県・佐世保港が配備される母港として最有力というのが、軍事関係者の一致した見方だ。  こういうふうに、下にいろいろなことが書いてありますけれども、「防衛庁筋」、これは天下の大新聞が一面にお書きになっているわけでございますが、全くこれは根も葉もないところに煙は立たぬ道理でございまして、しかも、この記事の中身は非常に詳細でございます。少しコメントを願いたい、お知らせを願いたいと思いますが、いかがですか。一月五日の新聞でございます。何なら、ここにございますから、ごらんをいただきたい。
  12. 西廣整輝

    西廣政府委員 まだ私どもの方には、ニュージャージー寄港についてのお話は全くございません。
  13. 大出俊

    大出委員 つまり、前回のときも新聞がいろいろ書いておりましたが、我が方に連絡がない。だから、ここにはその一番下の方に、また防衛庁筋で、「「今のところ米政府からの打診はない」(防衛庁筋)」。しかしこの情報防衛庁が持っている情報、こういうふうになっているわけです。  そこで、ニュージャージーが入ってくる、これもまた抑止均衡からするとやむを得ない、こういうことですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ニュージャージーについては、まだ全く入ってくるというような希望も照会もございませんので、何とも申し上げかねるところです。
  15. 大出俊

    大出委員 外務省防衛庁両方に承りたいのでありますが、前にも長い議論がございましたから承っておきますが、戦艦ニュージャージーというのは核配備をしていると思っておられますか。あるいは核は配備していないと、もちろんこれは核のトマホークでございますが、あるいは核配備の疑いが幾らかはあると、どうお考えでございますかね。ちょっと答えていただきたいのです。
  16. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 戦艦ニュージャージーにつきましては、トマホーク初期運用能力を八三年三月に達成したいという話、これはアメリカにおいて公式の場で言われておることでございます。それは承知しておりますけれども、それは通常弾頭でございまして、核につきましては、アメリカの一般的な政策かと思いますが、すなわち核がどこにあるかということは明らかにできないという一般的政策に基づいておりますと思いますが、核につきましては何ら公表資料等で明確でございません。  いずれにいたしましても、トマホーク非核両用ということでございます。したがいまして、現在のところ我々が承知しておりますのは、今申し述べたような次第でございます。
  17. 大出俊

    大出委員 八三年の三月にトマホークをと、ただしこれは非核であると――非核両用のものだと称していると、公式には八三年三月のそれだけだというわけでありますね。  防衛庁はどうでございますか。
  18. 瀬木博基

    瀬木政府委員 防衛庁の得ておる情報も全く同じでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 じゃ、ついでに一つ聞かしていただきますが、ロサンゼルス型の原潜横須賀に最近非常に余計入っておりまして、第三艦隊、太平洋艦隊だけじゃなくて、大西洋側ロサンゼルス型の原潜も何隻もこれは姿を見せています、不思議なことでございますけれども。したがって、特にヒューストンなんというのは非常に話題になりました。あるいはラホヤなどもそうでございますけれども。  そこで、このロサンゼルス型の原潜、これは核トマホーク配備対象になっていると私は思うのでありますけれども、これまた核を積んでいると思いますか、あるいは積んでいないとお考えでございますか。これは皆さんの率直な意見を聞きたいと思いますが、いかがでございましょう。
  20. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 ロサンゼルス型原潜につきましては、御指摘のとおり、昨年昭和六十年に七隻、十四回入っております。このロサンゼルス級に対するトマホーク配備それ自体の計画でございますけれども、これにつきましてアメリカ公表の公式な――ジェーン年鑑等ございますけれども、公式の資料を分析しておりますけれども、これによりますと、どの程度核を積むということは必ずしも明確でございません。  いずれにしましても、それは核を積むと私、今平たく申し上げましたけれども、核搭載能力でございまして、実際に核を積むかということと搭載能力を持つということとは全く別個のものというふうに承知しております。
  21. 大出俊

    大出委員 ちょっとここで申し上げておきますが、今、核を積む能力搭載能力という、ニュークリアケーパブルですね、これは。これは後で議論をいたしますが、ニュークリアケーパブルなる言葉は、ここに一つまとまった物の考え方がございます。ニュークリアケーパブル核能力国防総省アメリカ軍事専門家の間では、ニュークリアケーパブルなる言葉は実際に核弾頭を積んでいる状態を指すのが常識である。もう一つ、デプロイメントという言葉が出てまいりますが、公聴会記録等にいろいろございますが、このデプロイメントという言葉の方も、つまり表面的に解釈をすれば、これは配備でございますから、核能力を持つ、こういうことなんであります。国防総省あるいは軍事専門家の見解は確かめておりますが、核を積んでいていつでも発射できる状態をいう、これが常識でございます。ないしは実戦展開中を指す、これが常識である、こうなっておりますね。  今お話を承りますというと、情報はない、こう言う。公式なものは、ニュージャージーにしても八三年の三月のものしかない。しかもそのときに、核能力を持つようにしたいという情報があった。これは、一九八三年の三月にニュージャージーは再就役をしたのであります。以来、随分年月がたっている。皆さんの方でもう少しお調べになっていただかなければいかぬのじゃないですか、その程度の御答弁では。  念のために申し上げますが、非核原則というものは、これは国会決議でございましょう。ここにおいでになります国会議員皆さん大臣総理も含めまして、三回にわたる衆議院決議がございます。私も含めて、三原則を守る、その大きな責任があると思っているわけでありまして、しかも非核原則国是なんでしょう。  ちょっとここで読み上げますが、中曽根さんはその当時、国是とも何ともおっしゃらぬで、私も後ろの方で聞いていて、驚きましてね。五十八年二月二十一日の予算委員会でございます。実は岩垂君から質問が始まりまして、楢崎さんまで行きまして、楢崎さんの質問最後は、あなたの意見に従いますという答弁で終わった。ついに国是総理はおっしゃらない。やむを得ず、私は国是と言っていただこうと思って質問をいたしまして、この三回にわたる国会決議から始まりまして、国連総会演説鈴木総理演説その他を全部引き合いに出しまして、いずれも、非核原則国是である、あるいは国是としての非核原則と言っているじゃないですかと詰めたら、中曽根さんの最後答弁はこうです。「先日はとっさにお聞かれしたものですから、私は勉強不足でありました。私の記憶にはたしか外務委員会で何とかという、かんがみという言葉があったのでいまのような答弁をしましたが、いまいろいろ御指摘をしていただきますれば、確かに国是であると私も認める次第でございます。」と、総理お答えになった。御記憶でございますか。大分紆余曲折ございましたが、今再確認をいただきたいのですが、国是をお認めになりますか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく記憶しております。そのとおりであります。
  23. 大出俊

    大出委員 最後総理答弁を読んでみると文章になっていないのですけれども、私もよくそんなことがありますからそれはいいのですけれども、これは再確認をいただかぬと困るのでありまして、御確認をいただきました。  そうすると、とれは国是でございますから、国是である非核原則、持ち込ませず、もうちょっとこれ――私、横浜におりますから、さっきから申し上げましたように、ニュージャージー寄港、こんな大きな記事が五日に出ると大騒ぎ。しかもこれはノースピアに入ってくるというのですよ。横浜港のど真ん中です。  これは、後藤田さんがおいでになりますが、ベトナム行きの戦車をよく神奈川でとめた、大騒ぎになった。後藤田さんは内閣官房長官でまだ衆議院議員におなりになってない。政府窓口後藤田さんとおっしゃる。神奈川窓口は私でございますから、あなたと十七、八回やりましたね、これ。すべてノースピア。最終的にはあなたと話をつけました、今だから申し上げますが。それで後ろを断たないでくれとおっしゃるから、後ろの方は車両制限令違反だけれどもよろしゅうございますと引き受けて相模原に戻ってきた。ノースピア、あそこに入ってこられるとなると天下の大騒動でございましてね。幾ら親善訪問でも傍若無人もいいところでございますから、世の中大騒ぎでございます。横須賀市長だって、真正面からこれは……。  だから、今そういう状況なんで、非核原則国是とするこの国なんですから、もうちょっと外務省防衛庁ニュージャージーについて、どんどん入ってきているロサンゼルス型の原潜について情報をお持ちになってもいいんじゃないですか。もう一遍聞きますから何か言ってください、何かないと寂しいから。何にもないというのじゃ話にも何もならぬ。
  24. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほどお答え申しましたように、アメリカが言っておりますことは、トマホーク搭載能力を付与する、したいということでございまして、現実にトマホーク搭載し、かつそれが、トマホークは核、非核両用でございますから、核であるかどうかということにつきましては、それはアメリカは一切公表しないというのがアメリカの基本的な立場でございます。  その立場がございます一方、委員御承知のとおり、日米の間には安保条約六条、またそれに基づきます口頭了解が存在いたしまして、核の持ち込みにつきましては、これは事前協議が行われる。その際には、こちらは必ずノーと言うということになっております。したがいまして、日米の信頼ということも踏まえまして、その安保条約の基本的な枠組みということで本件を処置しておるわけでございます。
  25. 大出俊

    大出委員 藤井さんははるかかなたからおいでになりましたから、少したどたどしいお話を承りましたが、まじめにお答えいただきまして、ありがとうございました。  そこで、これはどこかで立証いたしませんと、事前協議をやって向こうが言ってこないから持ち込んでないんだ、私は何回もそれではぐらかされて、これは私の能力の不足でございますけれどもね。ここまで来ていつまでもそういうわけにはいかない。はっきりさせていただこうと思っておりまして、皆さん情報をお持ちでないとおっしゃるんならいたし方ありませんから、私の方から差し上げて承りたいのであります。  まず、これを済みません、お配りをいただきたいのですが、時間がございますから焦っておりませんので、ひとつ。  今お配りをいたしましたのは、左側にあります一と書いてありますのは、このホステットラー海軍少将が、この方は後から次々に申し上げますけれども、核トマホークあるいはトマホーク計画全体の総責任者でございます。米海軍合同巡航ミサイル計画局長でございまして、S・J・ホステットラー海軍少将でございます。これは、左の方は、八四年三月十四日のここに書いてあります「米下院軍備委員会「調達・核兵群小委員会」におけるトマホークシステムに関する証言」でございまして、証言の原文を私ここに持っておりますが、二十五ページに及びます大変に長いものです。情報はないとおっしゃるけれどもこんなものがある。これはうっかり言っていいのかどうかわからぬ点も中にはあるのでありますが、消えておりますが、この判こはリリースですから許可であろうと思いますので、いいんだろうとは思うのでありますけれども、いろいろ微妙な内容ございますから、なるべくならば使わずに詰めたいのです。二十五ページです。全容が全部ここに書いてある。  そこで、抜粋と書いてありますように、これは抜粋であります。ここでちょっと御説明だけ申し上げておきますが、一番左の行、上から七行目くらいですね。地上発射型のGLCMであるとか、それからSLCM―N、Nは核ということです。  若干のトラブルがあったけれども、つまり、ミサイルシステムの導入計画、これはいささかも変化なく進められるものだ。若干のトラブルというのはどういうことかといいますと、その中心はTLAM-C、つまりランドアタック、陸上をたたくトマホークのC、非核のもの。非核のものはどうなっているかといいますと、勧告が出されまして、最後に申し上げますが、予算を凍結して三年間つくっておりません。今年の終わりになりませんと配備は全くできない、ここにそういうふうにも書いてあるのでありますけれども、つまりそれは、ハプーンなんていうミサイルございますけれども、最初飛び上がっておりてまいりまして水平に行って、ぶつかるときはまた上へ上がって落ちてくる。そうでないのもありますが、これが通常のハプーンの型であります。ところが、通常弾頭トマホークは水平にぶつかる。核ならば大変な威力を発揮しますが、通常弾頭だと水平にぶつかると威力がない。金をかけて生産しただけの予定の破壊力がない。だからモードを変更する。ぶつかる手前で一遍上に上がりまして、ハプーン流儀に上から落ちてくる、それで当たるというふうにモードを変更しようというので、予算を凍結いたしまして、したがって八三年、八四年つくっていない。八五年も十五発ずつつくりましたが、後から申し上げますが、試験用でございまして配置をされていない。さっきの藤井さんの御答弁は、核、非核わからぬとこうおっしゃいますが、非核は配置をされていない。配置されているのはニュージャージーに二基だけてあります、それは後から申し上げますが。そしてTLAM-N、つまり陸上攻撃用の核のトマホーク、これは「一九八四年六月に脱隊に導入される計画です。」このとおり導入されております、後の議事録を見ますと。それは一番右の行の上から七行目に、「TLAM-Nは一九八四年六月に艦隊に導入される計画です。」TLAM-C、非核の方ですね、これは「まだ開発中であります。」つまり、この議事録のできる一九八四年三月の十四日段階で開発中である。配備をされていない。明らかです。  三行目の一番下、ちょうど真ん中に線が入っていまして、文章を上と下に分けてありますが、この線の入っている三行目の一番下のところ、下から五行目くらいのところでございますが、もう一つ、トマホークには艦対艦のトマホークがございます。「対艦用TASMは」、船から船を撃つトマホークであります。「試験を完了し、一九八三年十一月をもって大西洋及び太平洋艦隊の潜水艦に配備されました。」一九八三年の段階で対艦用トマホーク、これは非核でございますが、これはフリーという言葉を使っておりますが、全般的に配備をした、こういう格好になっている。ですから、ジェーン年鑑なんかもスタージョン型その他いろいろ書きましたが、途中でその記述をやめてしまいました。つまり、全般的にどんどん対艦トマホーク、船を撃つ方は非核でございまして、これは次々にアメリカ側が公にしておりますのでだれもがわかっているわけでありますから、途中でもうやめて、記述がないというようなことになっています。だから、最近のジェーン年鑑は対艦トマホークが対象ではない、こうなっております。  そのことを頭にお入れいただいて、この「対地用核トマホークTLAM―Nは、飛行試験と潜水艦適応能力試験を成功裡に完了し、一九八四年六月艦隊配備の予定通りに進行しています。」つまりNですよ、核。核トマホークは予定どおりに進行しています、時期は「一九八四年六月艦隊配備」、こうです。配備されております、後から申し上げますが。  さて、それでは右の方、米下院歳出委員会軍事小委員会に回答した国防総省トマホーク配備計画、この計画日本新聞にも出されました。議事録を私は全部ここに持っておりますが、私、わざわざこれは別のところの所載のものを載せたのですけれども、なぜかというと、原文ですと戦艦とか駆逐艦とかこういうのが英語の頭で書いておりますから御理解いただきにくいので、解説のついているものを実は差し上げたわけであります。  これはこの小委員会のメンバーであるディックスさんという議員の方に、例のラロック核証言で騒ぎになりましたラロック将軍、研究所をおつくりでございますが、ここの所長さんをやっておられますウィリアム・アーキンさんが、恐らくラロックさんの情報だと思うのでありますが、核トマホーク――これは核でございます、核だけ。核トマホーク配備計画が国防省にあることをはっきり知りまして、ディックスさんに質問をしてもらったわけです。そうすると、わかっているわけでありますから後からお出ししますということになりまして、改めて回答したわけです。それがここにあります核トマホーク配備計画でございます。これは対艦でも対地の非核でもありません。核トマホーク配備計画です。  原文がここにありますけれども、皆さんお持ちなんだろうと思って原文は印刷しませんでしたが、先ほどのお話ではさっぱりそこにお触れにならぬ。だから念のために申し上げておきますが、ここにニュークリアケーパブルというふうな言葉があるのであります。このニュークリアケーパブルは、さっき申し上げましたように核弾頭を搭載している状態、ディプロイメント、配備というのは、発射できる状態あるいは実戦配備中、こういう状況でございまして、そこらはいろいろと議事録を読んでいきますと議論されております。そういう理解でございます。  そこで、この計画によりますと、八三年に戦艦一、この戦艦一とは何ですか。これは公の、提出されている資料でございます、アメリカの議会における、政府側が提出している。これは日本新聞に山たから御存じだと思うのですね。戦艦一、八三年、これは名前は何でございますか。
  26. 瀬木博基

    瀬木政府委員 先ほど北米局長からお答えいたしましたとおり、ニュージャージーでございます。
  27. 大出俊

    大出委員 つまり八三年の三月に再就役をいたしました。ニュージャージー一隻しかございませんから、八三年のトマホーク核トマホーク配備計画の初年度の八三年の戦艦一、下に解説がありますが、原文はBBとなっています。BBは戦艦です。ニュージャージーということです。  じゃ八四年の戦艦二は何と何ですか。
  28. 瀬木博基

    瀬木政府委員 アイオワでございます。
  29. 大出俊

    大出委員 四隻の再就役が計画されておりますが、八三年の三月にニュージャージーが就役をいたしまして、八四年の四月にアイオワが就役をいたしておりますから、八四年の二というのはニュージャージー・プラス・アイオワでございます。御紹介いただいたとおりであります。  それでは駆逐艦の八三年の一は何でございますか。――お答えが長いようでありますから私が申し上げますが、メリルでございます。駆逐艦の一はメリル。メリルというのは太平洋艦でございまして、横須賀に入ってきて一つも不思議のない艦でございます、まだ入ってきておりませんが。これは核配備をしている艦でございます。メリル。後から御説明いたします。  ロサンゼルス級の攻撃型原潜六、これはおわかりになりますか。――情報をお持ちでないのですから、これはしようがありませんから私が申し上げますが、この六は、次に差し上げました資料があるはずであります。この二番目に差し上げました資料、議事録を私ここに持っておりますが、これも簡単なものを差し上げました。議事録は全部私のところにございます。  この右の上の方に、これは英文の議事録のままでありますが、縮小したのでありますが、数字が載っております。この最初の計画を――これは十三日に出された別な委員会であります、これが最終的な計画でありますけれども。ロサンゼルス型原潜は六隻が四隻に減っています。最初の計画の六隻が四隻に減っています。この四隻が実はジェーン年鑑に載っている。ジェーン社とも人を介して話をいたしております。したがって、資料がお手元に行きますまでに――委員長、よろしゅうございますか。
  30. 小渕恵三

    小渕委員長 はい、どうぞ。
  31. 大出俊

    大出委員 一番上の一は、八三年計画一はニュージャージーでございます。下の駆逐艦はメリルでございます。その下の四、四に減りました四隻は、今お配りをいたしました資料ごらんいただきますとわかりますが、ボストン、バルチモア、アトランタ、ヒューストン、四隻であります。ジェーン年鑑には核、非核が書いてないというお話がひょっとさっきありましたが、確かに今お配りしている三という資料の一番上の記述はジェーン年鑑八三年から八四年のものでありますが、一番上の行に「ウイルビーフィッテッド」配備するであろう、トマホークミサイルを配備するであろう。そして次の段は、ジェーン年鑑の八四年から八五年のものでございますけれども、記述が変わりました。「トマホークミサイルズ フィッテッド」つまり配備をした。「イン SSN七〇三、七〇四、七一二アンド七一三」ここで点がございます。このSSNナンバー、これが「この間に変化」と右に日本文で書いてありますボストン、バルチモア、アトランタ、ヒューストン、四隻でございます。後からまた詳しく御説明をいたしますが、八五年―八六年、記述は変わっておりません。艦名をロサンゼルス型についてトマホーク配備として挙げたのはこれだけであります。そして冒頭に申し上げましたように、TLAM-C、ランドアタックの、つまり陸をたたくトマホークの通常の弾頭は生産をされておりません。  二十五ページにわたりますホステットラーさんのこのステートメント、委員会に出されて一人ずつ議員に一部ずつ配ったステートメント、このときは恐らくマル秘だったのでしょう。このステートメントに詳しく書かれている。したがいまして、この時点で搭載をされたというのは核しかない。情報をお持ちにならないというんだからいたし方ありませんからつけ加えますが、艦対艦のトマホークは一九八三年の十一月までに既に配備をいろいろされている。  一つだけ例を挙げておきますが、一九八三年に攻撃型原子力潜水艦四隻に艦対艦のトマホーク配備されておりますが、名前はもう明らかであります。アメリカ側が明らかにしたからであります。ギタロ。ギタロはロサンゼルス級じゃありませんでスタージョン級。ギタロそれからラホヤ、ボストン、アトランタ。ラホヤというのは横須賀等に入ってきておりますが、これは艦対艦の通常のトマホークであります。つまり、八三年時点で配備されてしまっている。そうすると、ここに書いてありますジェーン年鑑の記述は、ランドアタック、陸をたたくトマホークでありまして、非核の弾頭はございませんから、核しかない。両用だからこういう記述になっているという答えが、人を介していろいろ折衝いたしましたら返ってきました。そうすると、これは核しかない、こういうことになります。  そこで、次の点ちょっと御説明をいたしたいのでありますが、このジェーン年鑑の三行ずっと並んでおります、ここにワトキンズ海軍大将の答弁というのがあります。一九八六年の国防総省予算、米下院歳出委員国防総省委員会公聴会。時期は一九八五年三月五日であります。ノーマン・ディックス下院議員の質問に対してジェームズ・ワトキンズ海軍大将、これは海軍作戦部長でございますが、クエスチョン「長官の報告書の十二ページに、現在対地攻撃用核ミサイル・トマホーク(TLAM-N)が攻撃用潜水艦、駆逐艦、再就役した軍艦で作戦上搭載可能とあるが、TLAM-Nを配備された艦船は何隻か。八六会計年度には実際、何隻の艦船に搭載されるかこと質問しています。  ここで御指摘申し上げたいことがあります。攻撃用潜水艦、先ほど御説明いたしました核トマホーク配備計画配備計画にはスタージョン級もノーチラス級も何もありません。ロサンゼルス級だけてあります。だから、この攻撃用潜水艦はもちろんロサンゼルスクラスの攻撃用潜水艦でございます。駆逐艦、さっき申し上げましたように、後ほど議事録に出てまいりますが、メリルでございます。これも計画どおり一隻であります。再就役した軍艦、御答弁いただきましたように二隻であります。ないんだから、それしか。ニュージャージーとアイオワ。長官の報告書の十二ページに書いてある。英文をお読みになっても同じことであります。答弁、アンサー「今日、米艦船八隻に配備されている。」「配備されている。」と言い切っている。質問答弁両方あわせて考えていただければ、TLAM―N、Nを配備している。八隻であります。はっきりしているわけであります。最初の年のロサンゼルス型六艦を、攻撃型潜水艦でありますが、四艦に減らした。なぜか。調べたり、聞いたり、人を介して調べたりいたしましたら、アイオワが意外に早く就航できるとなりまして、ロサンゼルス型を四隻に減らしまして、一隻は戦艦に持っていった。そしてもう一隻、これは駆逐艦、スプルーアンス級の駆逐艦にという話になっておったわけでありますけれども、これはまた都合がありましてロサンゼルス型に返ってきております。私の今知る限りで言うとラホヤでありますが、これはまだ本当に確たる結論を私は出しておりません。したがって、申し上げれば先ほどジェーン年鑑にありますロサンゼルス型の四隻、そして戦艦ニュージャージーとアイオワ、メリル、駆逐艦、これで七隻になります。あと一隻残りますが、これがスプルーアンス級の駆逐艦にいくのかロサンゼルス級にいくのか、当初計画六でございますから。ということがありますが、今のところラホヤのように私は思っている。これがこの記述の中身であります。  実はアメリカというのはおもしろいところでありまして、「削除」というのがこうたくさん出てまいりますけれども、出席している議員はいるわけでありまして、表会場では削除だ。ところが、出席している人は説明聞いているわけですからわかっているから、話をしますというと、非公式にはしゃべる。しかし、それを表に出せば、それはノーと言う。だから、みんなわかっていることになる。そういうことでありまして、これお読みいただけばわかります。  「対地攻撃用核ミサイル・トマホーク(TLAM―N)が攻撃用潜水艦、駆逐艦、再就役した軍艦」これ二隻しかないのでありますが、「で作戦上搭載可能とあるが、TLAM-Nを配備した艦船は何隻」なのか。八隻だ。八隻配備されている。で、ここが重要なんでありますが、「八六会計年度末」八五年十月から八六年九月、ことしの九月ですよ、「までにトマホーク搭載可能なのは水上艦十四隻、潜水艦三十隻となる。このうち水上艦十一隻と潜水艦二十二隻は、核弾頭配備が承認され」ている。承認されている。核弾頭配備ですよ。ことしの九月になりますと二十二隻になってしまう、潜水艦だけで。横須賀にどんどんどんどん入ってくる。事前協議してこないんだから積んでおりません、それで済む世の中じゃなくなったんですよ。非核原則国是でございまして、衆議院決議でございますから、政府皆さんも私どもも守る責任がございます、対国民的に。御協力願わぬと困るんですよ。私は議員一人でございますけれども、皆さんは組織を持っておいでになるんだから、外務省は。ちょっとはこれをフォローしてくれぬと、議論のしようがないんですよ。先ほど私がちゃんと御質問申し上げたら、外務、防衛両省とも、情報はこれしかないとおっしゃる。念を押したら、ないとおっしゃる。なければいたし方ないから、かみ合わないが私が御説明申し上げるよりないんです。それは私は、国会決議というものを考えれば無責任だと思っている、立場が違って防衛に関する考え方が違っても、こう私は思うのでございますが、どうですかね。そこのところ、この辺でちょっとお答えおきをいただけませんでしょうか。
  32. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘、いろんな面にわたっておるわけでございますが、一つはニュークリアケーパブルということでございますけれども、この意味は、核兵器を搭載しているという意味では必ずしもなくて、核兵器搭載能力が付与されているということと了解しておりますし、アメリカ資料におきましても、トマホークについては、トマホークケーバブルというふうに言っておると了解しております。  それから、先生お配りになりました資料、下院軍事委員会におきますホステットラー海軍少将の証言それから付表、我々もそれを検討しております。先ほど私申し述べましたことは、この付表等を勘案いたしまして述べておるわけでございます。  それから、先ほど先生御指摘になりました六十年三月五日に米下院の歳出委員会国防小委員会のワトキンズ海軍作戦部長の証言、八隻云々ということも我々は把握しております。ただ、いろいろアメリカ資料には若干ございますけれども、それが第一に、今後のトマホークの積載能力付与の計画ということ、それから船級は言っておりますけれども、ニュージャージーを除いて事実上艦名は言っていないとか、また核につきましては、先生御存じのとおり、アメリカとしてはこれがどこにニュークリアケーパブルが付与されるかということにつきましても明確にしないという方針でございますので、冒頭に御答弁申しましたように、我々としてはこの詳しい状況を冒頭に申し述べた以上に申し述べる立場にないということを申し上げた次第でございます。
  33. 大出俊

    大出委員 つまり、アメリカがとおっしゃるのですが、日本国会が、何遍も申し上げますが、非核原則は守らなければならぬ国是だというので、鈴木善幸前総理の御答弁では、国民こぞって支持している国是という政策なんだと言っておいでになる。そうなると、やはり私どもが、アメリカがこう言っているからではなくて、主権国家である日本でございますから、この国是に従って調べるものは調べ、物を言うべきものは言わなければならない、あなた方も国会決議には責任と義務を負わなければならぬ、こう私は思うのです。  そこで、これは私だけ言っているのではないのですよ。ちょうど日本新聞に一番最初の計画が載りましたときに、ワシントンに特派されておられる佐藤さんという記者の方が国防総省といろいろやりとりをいたしております。ここにも出てまいりますが、「(ヌークリア・ケイパブル)というのは実際に核弾頭を積んでいる状態を指すのが常識。」国防総省筋、軍事専門家筋の間でこの点は一致している。ティプロイメントについてもそうでございまして、核を積んでいていつでも発射できる状態ないし実戦展開中の状態を指す、これも国防総省の高官がそういうふうに申し述べている、こう言っておりますね。私だけ言っているのじゃないのですよ。  私は昨年九月アメリカに参りまして、一緒に行かれた議員さん、ここにおいでになりますけれども、三日、四日使いまして実は資料も集め、人を介してお願いをしていたことも聞き、このニュースソースも全部今申し上げましたが、聞いておりまして、そこをアメリカはこうだからといって本当のことをおっしゃらぬというのは私は筋が通らぬと思っておりますが、もうちょっと進めてから申し上げます。  次に、二という資料を差し上げてございますが、これは下院の軍備委員会、まあ軍事委員会と訳しても結構でございますが、今お話が出ましたホステットラー海軍少将の証言なのでありまして、一九八五年三月十三日でございます。  潜水艦発射トマホーク計画は予定どおり進んでいる。「計画」というのは、先ほど既に御説明申し上げてあります計画であります。予定どおり進んでいる。現在十二隻のトマホーク能力をもつロサンゼルス級潜水艦をわれわれは有している。今年の末までにもう九隻増える。  リース議員 場所はどこであれ、水上艦および潜水艦に核弾頭つきトマホーク・ミサイルをどれ位の速さで記術しようとしているか知りたい。ニュークリアケーパブル、これは能力であるとおっしゃるが、この議事録をお読みになれば「核弾頭つきトマホーク・ミサイル」、明確にしているでしょう。核弾頭つきトマホークミサイルをどれくらいまで配備しようとしているか。  ホステットラー少将 それでしたら、十二隻が承認されている。十二隻のうち、「削除」デリーテッド、削除、除く。  ここで申し上げておきますが、アメリカの議会議事録をたくさん私は読んでみましたが、こうなっております。核弾頭のついているトマホークミサイルというような議論をするときには、艦名は全部削除です。逆に、艦名で議論をしていったときには、核が削除であります。全部そうであります。片っ端そうです。この「削除」は何を意味するかというと、艦名を述べているからです。八隻の艦名。十二隻のうちどれとどれとどれとどれが核承認済みだと言っているからです。  ところがこれ、一人だけ議員がいるのじゃないんでありまして、たくさん議員が出席しているのでありますから、この削除は何ですか。表会場では言えないから削除だ、非公式にはこれこれだ、わかるのは当たり前であります。日本だってそうでしょう。日本も秘密会一遍やったことがあったけれども、その日の晩にはみんなわかっちゃった。そうでしょう。聞いている人がたくさんいるんだからしようがないのです、これ。そのことはアメリカ政府も百も承知であります。そのことは核を誇示する意味では大事なんです、アメリカにとって。だからわかるのは当たり前。  ベーコン准将 昨年六月、これ、計画どおりです。先ほど申し上げたとおりの計画で進んでいるのです。二隻の潜水艦から出発した――これで速度の見当がつくと思う。現在までに八隻がすんでいる。いいですか。核弾頭つきトマホーク・ミサイルをとれ位の速さで配備しようとしているか知りたい。こう言っているのですよ。  現在までに八隻がすんでいる。核弾頭つきトマホークミサイルを八隻済ましているということであります。そうでしょう。  次に、日本文で訳してありますが、この方から話をさしていただきます。長い議事録でございますが、全部ここにございます。しかし、一部だけ、この部分だけ裏に英文がつけてあります。日にちは一九八五年三月十三日、米下院軍備委員会、ページ五百五、議事録の五百五であります。  ホステットラー海軍少将(合同巡航ミサイル計画部長)証言  ストラットン議員 提督、ベイルートで委員会が見たトマホークニュージャージーにのっていた。あれは何ですか。あれは対艦トマホークですか、或いは陸上目標をたたくものですか。陸上目標、ランドアタックであります。  ホステットラー 議長、ニュージャージーを見たときには私達は対艦と対地攻撃非核ミサイルの混合ミサイルでした。併し主としてのせていたのは対艦の種類でした。併しあのときわれわれは二基の対地攻撃、ミサイルをニュージャージーにのせていました。これが藤井さんが答えられた二基の非核のランドアタック、つまり陸をたたくトマホークであります。  説明がございます。  御記憶かも知れませんが、二年前に私がトマホーク計画全体を再構築したときにこれはホステットラーさんの長いステートメントにみんなございます。再構築したときに、必要な変更をいくつか加え、計画を秩序だてるために通常型対地攻撃ミサイルの初期作戦能力計画IOCといいますが、初期作戦能力計画を中止することを決めました。併し最初のあの二基の対地攻撃用のものをニュージャージーに係留運搬目的の為にのせることを許可されました。かくて、欠陥がある非核トマホークでございますけれども、許可を得て二基だけ載せたのです。二基だけなんだ、後にも先にも。  これはIOC以前のものでありましたつまり、初期作戦能力計画が終わっていない、その前のもの。だから正規のものではない。IOC以前のものでありましたが、充分発射は可能でした。発射できる、弾頭が載っているのですから。  さて、ここが問題なんですが、次、  核トマホークはついていませんでした。つまり、ベイルートで委員会の諸君が見たときには、ニュージャージーには核トマホークはついていませんでした。  現在はアイオワ、ニュージャージー戦艦とも「削除」トマホークをのせています。キャリングしてますというのですね。かつまた「削除」、デリーテッドであります。  核トマホークはついていませんでした。そのときにはついてない。  現在はアイオワ、ニュージャージー戦艦とも  「削除」トマホークこれは「「削除」トマホーク」、核トマホーク、核のトマホーク核トマホークの説明はまた「削除」。感触を全部取っている。  われわれはそれ等がつまり、新しく載っけた核トマホーク、それ。  われわれはそれ等が環境の圧力の下でどういう意味か聞いてみましたら、「環境の圧力」というのは、振動をする、揺れる、そういう環境、その  圧力の下でマガジンの中で機械の中で  どのように耐えられるかを知りたいのです。だから載せて動かしている。  併しこれらの船はこれ等の「削除」つまり核トマホークであります。  「削除」を必要とあらば発射する能力を充分にもっています。ちゃんと発射する能力を持っている。発射できる。そうでしょう。能力計画だけじゃないのですよ。発射できるのです。発射する能力を十分に持っている。  ストラットン議員 それ等は戦艦だけにのっているのですか。他の水上艦にはのっていませんか。「それ等」、つまり核トマホークでございます。  ホステットラー われわれはメリルに昨年六月、対艦ミサイルのIOCを行いました。その船はあらゆる種類のトマホークに対し完全に能力をもっています。「あらゆる種類の」、三つしかない。艦対艦のトマホーク、艦対地のトマホーク(c)、これは非核、艦対地のトマホーク(N)、これは核、三種類しかない。「あらゆる種類の」を持っている。アイオワ、ニュージャージーにあのときはなかったが、核トマホークはついていませんでした。現在は両戦艦とも「削除」トマホークをのせています「削除」。その載せている「削除」のトマホーク、核でありますが、これはほかの水上艦に載っていないのかと聞いた。そうしたら駆逐艦のメリル、メリルはあらゆる種類のトマホークに対して完全に能力を持っている。もう一隻メリルに積んであると、こう言っている。いろいろ調べてみましたが間違いありません。かくて、さっき申し上げましたように、戦艦ニュージャージー、アイオワ、駆逐艦はメリル、あらゆる種類のトマホーク能力を持っている。明らかでございます。英文の方をお読みになっても同様でございます。私がここまで申し上げて、単なるニュークリアケーパブル能力である、そんなことはありません、必要なら発射できると言っているのですから。しかも核弾頭つきと言っているのですから。それに対して八隻済んでいると言っているのですから。もう一遍答えてください。
  34. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  先ほど先生御配付になりました米下院軍術委員会のホステットラー海軍少将の証言、一九八五年三月十三日の分でございますが、確かにリース議員の質問は核弾頭つきトマホークミサイルをどれぐらい配備しておるかという質問をしております。英語ではニュークリアティップトという言葉を使っておりますが、ホステットラー少将の答えは英語ではニュークリアサーティファイドという言葉を使っております。ニュークリアサーティファイドと申しますのは、我々の了解では核を搭載し得る能力、これが立証されておるという、確認されておるということでございまして、先ほどから申し述べましておりますように核がついているということではございませんで、核能力が付与されているということでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 私どもの見解は先ほど来申し上げました。ケーパブルというものの解釈を申し上げましたが、今の御答弁でもなお足りない。発射できる。ホステットラーさんの証言は発射する能力を十分に持っている。能力という言葉であなたの方は逃げますけれども、能力があるだけで載ってないのなら発射できないのです。つまり、そこにあなた方の苦しい答弁と言えば答弁ですけれども、アメリカに行って聞いてみれば一番よくわかる。あなた方は在外公館を持っているんだからわかっているでしょう。そこで逃げるというのは、だから私さっきから申し上げているように、この国の国会の持ち込ませずという決議に忠実でなきゃならぬと私は思っているのです。きょうここにおいでになる皆さんに私はその意味で御協力を願いたいと思っているのです。あなた方が明らかになさらぬから、私の方から資料を差し上げて御説明している。そこはぜひひとつおくみ取りをいただきたい。  次の資料を差し上げます。  七という資料がお手元に行ったと思うのであります。この七という資料日本文の方をお読みいただきたいのでありますが、英文は後ろにつけてあります。英文は一番下の方に下に線を引っ張ってありますところでありますが、  一九八五年三月 アドミラル・S・ホステットラー証言  TASMは現在、潜水艦と水上艦に全面的に配備されている。フリーという言葉をこう訳していいのかどうかわかりませんけれども、それしか訳がないのでこういうふうにしておりますが、TLAM―N(対地攻撃―核)は一九八四年六月に所期の実戦配備状態を達成した。「スケジュールドオペレーショナルステータス」ですね。「ウィアテインド」と前に書いてあります。つまり、どう考えてもこれは所期の実戦配備状態を達成した、こういうことなんですね。一番冒頭に御説明申し上げました計画の中で「一九八四年六月」、こう言っているわけであります。ここでは核のトマホーク配備すると言っている。達成しているんですね、実戦記術を。  そうすると、今までずっと御説明してまいりましたものは、ここで実戦配備をされた。つまり、この最初の計画はそのとおり進んでいる。そうでなければこれはおかしいんですよ。アメリカトマホーク計画というものは、水上艦八十隻、潜水艦七十六隻、百五十六隻に配備するという発表がありまして、対ソ戦略のこれは中心なんですね、後から一番最後にこれは申し上げますが。だから単なる能力だけで積んでないというのじゃ、これは所期の目的の達成にならないのです。ここのところはどういうふうにお読みになりますか。また外務省流にいろいろおっしゃるんだろうと思うので、開いておきたいのです。いかがですか。
  36. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほどからの繰り返しになって恐縮でございますけれども、この証言におきましても、この対地の核については八四年六月に所期の実戦配備状態を達成したということを言っておりますけれども、それはどこにということは一切触れてないわけでございます。ニュージャージーにつきましては、ここにありますように非核の対地につきまして触れておるわけでございまして、アメリカの基本的な政策をここにも反映されているというふうに存じます。
  37. 大出俊

    大出委員 矛盾がございますね、今の御発言には。というのは、先ほどまで、私が一生懸命国防総省なりあるいはラロックさん初め軍事専門家なりにいろいろ聞いている限りの話をしている。だからニュークリアケーパブルというのは弾頭を積んでいるんだ、こう言っている。デプロイメントというのは実戦配備まで含むんだと言っている。ただあなたの方は能力だ、能力だと言う。だから必ずしも積んではない、こういう意味。ところがここに「実戦配備状態」こうなってきたら、今度は何をおっしゃるかと思ったら、どこに積んでいるかわからない。そうでしょう、どこに積んでいるかわからない、それしか言いようがなくなったでしょう。  そこで、後のをひとつ配布していただきたいのでありますが、大きな矛盾がございますね。  今差し上げました二つのものがございますが、八と書いてありますものの下の方、下のBGM109A1とかBGM109A2とかいうのがございます。「会計年度」と書いてあります括弧の升の中であります。これはアメリカの下院の軍備委員会に出されましたトマホークミサイルの購入計画でございます。ここで一番上から申し上げますと、BGM109のA1というのは、下に説明がございますように、水上艦発射対地攻撃用・核でございます。BGM109A1、これが一番上であります。109A2、これは水上艦でなくて潜水艦発射の核であります、核。これを見ていただきますと、八二年に二発ずつつくりました。八三年に十発と十八発つくりました。八四年に二十発と五十六発つくりました。八五年に三十五発と四十発つくっております。これは一番多いんであります。核が一番多い。核の潜水艦であります。水上艦の方は、八三年に十発、八四年二十発、八五年三十五発、八六年四十三発というふうに進んでいます。八七年には七十二発、八八年百六十発とふえていきます。ところが、BGM109Cの1、水上艦に載せる非核の対地攻撃用のトマホークでありますが、これは八三年ゼロ、八四年ゼロ、八五年十五。十五というのは、ほかのホステットラーさんの説明で試験用につくったものです。配備ではない。それから109Cの2、これは八三年ゼロ、八四年ゼロ、八五年が十五とありますが、十五も試験用であります。だからCは配備されていないのであります。だからその意味で言うと、両用だと言いながら、ジェーン年鑑が挙げておりますロサンゼルス型四隻、これはCはないのでありまして、Nしかない、こういうことになります。  一番最後に差し上げましたのは、一番下だけ見ていただければいいのでありますけれども、議会が勧告をいたしております。C、ランドアタック、対地攻撃用のCというのは「垂直降下の考え方が実証されるまで」、さっき私が説明いたしました。「垂直降下の考え方が実証されるまでTLAM―Cの生産資金は一切用いないことをつけ加えておきたい。」つまり予算凍結をいたしております。試験用のものは企業がつくるという説明までございます。だからCはないのでありまして、Nしかない。対艦用のものは、一九八三年時点で既にヒューストンその他には積まれております。だからジェーン年鑑のこの八四年、五年、六年の記述はNしか物理的にない、こういうことになります。  ここまで申し上げまして、ひとつもう一遍皆さんの方の、先ほど妙なことになりましたが、ひとつお答えを承っておきたいのであります。
  38. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほどの委員指摘資料七でございますけれども、私もよっと先生の御質問の趣旨がわかりかねまして、能力云々の点についてお答えできなかったのでございますが、たびたび英語を引用して恐縮でございますが、この中でもこの実戦配備状態ということにつきましては、「スケジュールドオペレーショナルステータス」ということでございまして、これもやはり能力の付与ということでございます。したがいまして、この話はすべて能力を付与するという話であるというふうに我々は了解しているわけでございます。
  39. 大出俊

    大出委員 あなた方の逃げ場というのはそこにしかなかろうというのは初めからわかっておるわけでありまして、だがしかし、私がこれだけ資料を出して申し上げましたのは、私の立場からするとさっき御説明申し上げたとおりであります。  そこで、これが能力だけで配備されないものだとすると、これは国会図書館の訳でございますけれども、一番最初に出しました核トマホーク配備計画、一九八四年の三月一日に出しました。ウィリアム・アーキンさんの働きかけによりまして議員さんが質問をした。あることがわかっておるから出したわけでありますが、ここに質問と応答がずっとございます。  「質問 現在、陸上攻撃用核トマホーク配備計画及び基数及び搭載艦艇の型について。現在の計画では、七百五十八基の陸上攻撃用核トマホークミサイル(TLAM―N)を取得する予定である。」載せないものを何で取得するのですか。ラロック証言でもあるいはライシャワー証言でも、ライシャワーさんは、核を積んだものは港へ入って、寄港というのは、イントロダクションになって、――いいことになっているとか、載せて通過は自由だとか、ラロックさんは議会の証言で明確に、核をおろすというのは母港に帰らなければおろすことはない、あとは載ったまま入っている、こう言っていますね。七百五十八基のこれを獲得すると言うんだから、取得する。  それから「TLAM-Nの任務の意図は何か。単一統合作戦計画の戦力と協力して行動するのか、それとも在来型紛争が拡大した際に使用されるのか。TLAM-Nは非戦略核兵力のための兵器である。米国は戦域の目標を支援し、抑止を強め、国家指揮権者に対しより広範な反撃能力を与えるためにTLAM-Nの資産を維持する。作戦地域の隅から隅までTLAM-N兵器体系を分散すれば」、日本にも分散してきているわけですね。分散するんですよ。「七百五十八基という核の弾頭を確保してこれを分散する。」書いてあるとおりであります。「米国及び同盟国の領土へ攻撃を抑止するかなりの破壊力を準備することになる。」だから隅から隅までTLAM-N兵器体系を分散する、こう言っている。目的が明確になっているのですね、対ソ戦略の一環としての。明らかであります。  たくさん書いてありますが、似たようなことはいっぱいあります。しかもこれはSALTⅡ、その附属議定書から外れるということまでつけ加えてたくさん書いてありますが、申し上げるまでもない。能力だけつくっておくのならばこの計画は初めからないのでありまして、つまりそういう意味で、国会決議を持っている我々でございますから何遍も申し上げますが、私は持ち込ませてはいけないと思っているのです。  どうして持ち込ませちゃいけないのか。そこで提案があるのでありますけれども、中曽根さんがニュージャージーが入ってくるという騒ぎのときの答弁で、核を載せているのかどうか確かめる、ないということで許可したい、こういうふうに答えているわけであります。ところが、ここを今度は何人かの方がつついたら、だんだんだんだん後退して、安倍外務大臣のごときは、一般的に外交ルートで日本非核原則というのがございますよと言うと、それでも入ってくればないということになる、こういう話ですね。これではどだい話にも何にもならぬ。  そこで、ひとつここまで来たら、安保条約を締結した三十五年、この時点に返って、原点に返っていただいて、岸総理がおっしゃっているように、提案権は双方にあるということでございますから、日本側からひとつ事前協議の申し入れをしていただきたい。  念のために申し上げますが、これは四十三年からぶれてきています、皆さんが。エンタープライズの寄港のときから変えてきた、高辻さん、出してきて。その後で三木さんがまた同じことを言っているのですけれども、これは三十五年四月六日、衆議院の安保特別委員会、岸総理答弁。「日本の平和と安全にも非常に重大な関係があることであります。従って、日本から協議を求めることもありましょうし、それはどっちから求めるということは、一方的に考えるべきものじゃない、かように思っております。」両方から提案ができる、こういうわけであります。岸さんはもう一つ言っているのです。形式はないと言っている。「六条の場合においての協議につきましては、」六条協議、事前協議でありますが、「これは形式というものは別に規定されておりません。」だから日本から申し入れてもいい。中川条約局長、岡田春夫さん。この間外務委員会で岡田さんは質問されておったようでありますが、僕に答えたんだよ、君と言っていましたがね、岡田さんが。「事前協議の問題でございますが、これはもちろん双方からできるわけでございます。」中川条約局長昭和三十六年四月二十六日、衆議院外務委員会、岡田春夫質問。提案権、日本側にもある。藤山外相も「ある部隊がこういうことを言っているが、そういうものを持っているのかということを聞くことを妨げるわけでは毛頭ございません。」と言っている。志賀防衛庁長官「これは、双方で、両国で協議することでございまするから、相談ができるのであります。」こっちからも相談ができる、申し入れられる。時の外務大臣、大平さんですが、三十九年二月十八日、横路節雄さんの質問。「大平国務大臣 事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」明確にこうある。これが三木さんのところまでそうなのですけれども、四十三年のエンプラの寄港のときに高辻さんが出てまいりまして、行動を起こすのは向こうだから、向こうに提案権があってこっちにないという趣旨のことを言い、後の方はちょっとぶれていますけれども、ぶれていて、あるようなことも言っていますけれども、小和田さんは、外務委員会等の議事録を見ますと、最初はどうも統一見解だと言った。土井委員その他に詰められてまいりましたら、いや統一的見解だ。「統一的」に変わったりしていますが、この後の方は政府の都合で変えたのだからそれはそれでいいが、原点に返って、締結した岸さんというのは一人しかいないのだから、岸さんがどっちからでもできると言っているのだから、それから歴代総理がずっとそう言ったのだから、ここまで来たら原点に返って、国会決議に従って、国民の疑心暗鬼を取り除く意味日本側から提起をしてしかるべきもの、そう私は考えます。  もう一つ、それがどうしてもできないというならまた考えなければいけませんけれども、まずそこのところを、これは総理にお伺いしたいのですが、いかがですか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから大出さんのお話を聞きまして、非常に深い軍事知識に大変敬服しておるわけでございますが、確かに今御指摘がございましたような資料のとおり、アメリカにおいていわゆる核搭載能力が向上しているといいますか、ニュージャージーを初めとして各艦ともそういう努力が重ねられておるということは、これはもう歴然たるものであろうと思うわけであります。  ただ、アメリカは御承知のように核の有無は原則的に言わないという根本的な姿勢をとっておりますし、また日本との関係におきましては、御承知のような事前協議があるわけでございます。日本に入ってくる軍艦で核搭載能力を持った軍艦が入ってくるかもしれません。しかし、核がこれに搭載されておるかどうかというのは、搭載能力とはまた別問題でございます。これはしばしば申し上げるとおりで、したがって核つきで入ってくる、搭載能力を持った軍艦が核を持って入ってくるという場合には、これは明らかに事前協議の対象になるわけでございます。これは安保条約上、儼乎とした約束事でございます。したがって、アメリカとしては事前協議にかけなければならない義務が発生するわけでございますし、そうした事前協議が行われない限りにおいては、アメリカ核搭載能力を持った軍艦が入ったとしても、核は搭載してないというのが、これはもう安保条約をお互いに守っていかなければなりませんから、お互いの条約あるいはその関連規定からいえば、事前協議にかけられない以上は、核が持ち込まれていないということは、これはもうはっきりしているわけでございます。したがって、我々は最近のアメリカ極東戦略の中で、そうしたニュージャージーのことについて何も聞いておりませんけれども、いろいろの原潜等も入港がふえておりますけれども、しかし事前協議が、制度というものが儼乎としてある以上は、核の持ち込みはあり得ないということで安心しておるわけでございます。  事前協議につきましては、今お話しのような経緯は確かにあるわけでございますが、私もしばしば国会でも答弁をいたしましたけれども、この事前協議の性格から見れば、我が国政府が米国政府に対しまして事前協議を行うことを要請することは、米国政府の義務不履行を前提とするのでなければあり得ないことでありまして、制度上は全く想定をされていないわけでございます。したがって、こうした要請をすることが我が国の条約上の権利として位置づけられておるということではない、こういうふうに考えております。  なお、いろいろとニュージャージー等が入ってくる。これはまだはっきりしておりませんけれども、その可能性が全くないと私は否定できないと思います。そのようなときにおいていろいろと国民的な疑問とかあるいはまた反対運動、疑惑が起こってくるということになって、日本のいわゆる非核原則に対する疑問というものが国民の中に生まれてくることは、我々としてはこれは避けなければならないと思っております。したがって、私は外務大臣として、この非核原則日本国是として守っていかなければならない。そのためにはやはりアメリカ政府に対しまして、日本非核原則が儼乎としてあるんだ、そして安保条約を守ることがお互いの国家の信頼性につながっていくという立場から、実は私も外務大臣になりまして早々マンスフィールド大使を呼びまして 日本の国民の核に対する感情、そしてまた非核原則国是としておる日本の基本的な政策というものを説明をして、アメリカ側に理解を求めたわけでございます。そうした意味での一般的な、アメリカに対して日本の立場を明確にしておくということは、そうした国民的あるいは国会の中でいろいろと問題が起こったときは必要になるのじゃないか、私はこういうふうにも思っております。そうした事態になれば一回、三年前にも行ったわけでございますが、これはさらに行わなければならないことではないか、これは外務大臣としての責任ではないか、こういうふうに思っております。
  41. 大出俊

    大出委員 聞き飽きた話を幾らされても意味がな。いのでありまして、私は随分皆さんに、悪い言葉で言えば逃げられた、私の能力の不足でございましょうが。これはそれで済む筋合いじゃないんですね。  実は皆さんは例の原潜が入港したときに、椎名さんが外務大臣で、愛知さんが科学技術庁長官でございますが、石橋さんと私でいろいろなやりとりをいたしましたところが何と言ったかといいますと、議事録をここに持ってきていますが、傑作なんですが、今になると子供みたいな話。アメリカといろいろ話したというのですね。最初に鈴木善幸さん官房長官で、サブロックを積んでいたら移させますと言うのです、入ってくるときは。海原さんが防衛局長で何と言ったかというと、横綱大鵬くらいで、サブロックというのはそんな重いものじゃない。六人くらい人がたかって持ち上げるものがあれば、通常の天候の状態ならば簡単におろせますと言う。だからみんなおろしできます。私に対する答弁だから、どこへおろすのですかと私が聞いたら、潜水艦には潜水母艦がありまして、弾薬艦もあります、だから潜水母艦や弾薬艦に移してくる。そうすると、潜水艦は入ってくるのだが、母艦や弾薬艦は、サブロック積んだら入れぬでしょうと言ったら、それは入れません。みんな補給と休養で横須賀に入っちゃっているのだけれども、弾薬艦と母艦というのは表にいるのですか、補給、休養はできないのですかと言ったら、つまりそうなります。子供だましもいいところで、後になって調べてみたらめちゃくちゃなんであります。これは国防総省が改めて発表した記事もここにあります。これまで申し上げてもしようがないが、そういう形で皆さんは一生懸命はぐらかした。熱心にはぐらかした。熱心に逃げた。あるいはそう思っていたのかもしらぬ、本当は。後になってみたら子供だまして、話にも何もならぬ。  また私は、アメリカの海軍軍艦事典がございまして、この軍艦事典にグラウラー、グレイバック、二つの船、片方グラウラーは四回ばかり演習をやって、レギュラスⅡという核ミサイルを搭載をして、ちゃんと「レギュラス」。と書いてある。そして横須賀で終わった。二回横須賀で終わった。グレイバックも似たようなものと書いてある。これを取り上げたらどうなったかというと、これは随分安倍さん苦しい答弁をされておられましたが、三回ばかり間を置いた質疑をずっと続けて、動いたりとまったりしていたわけでありますが、最後に何を言ったかというと、アメリカの海軍軍艦事典が間違っていました。これはアレイ・A・バークさん、当時大将でございましたかね、戦績ある軍艦でございますから、生きておられる艦長みんな集めて、戦績を長く後世に残すために航海日誌に基づいてこの海軍軍艦事典をつくった。そんなものが間違うことはない。近く誤りを直すと言って、あれから何年かたちましたが、どこかで誤り直しましたか。直さぬでしょう。これを仏の顔も三度と言うのです。  だからあなたもさっき岸さんがこちら側に提案権があると言っているのをお認めになった。締結されたときの責任者、総理は岸さんただ一人。ほかの方が何を言ったって、締結した本人がこっちに提案権があると言っている。それに尽きる。ほかの人には直せない。だから、事前協議を提案していただきたい。それができなければ、この種疑いのある1私は積んでいると言っているが、皆さん能力だと言うんだが、疑いだけは明確にある。世論調査をやったってそうでしょう。圧倒的にそうでしょう。八〇%近い方々が積んでいると言っているでしょう。それが一番いい方法だから積むのを黙って見ている、安保条約の運用だなんということは許しがたい。だから、それなら明確に拒否してくださいよ、ニュージャージー初めみんな。核トマホーク計画の一番艦なんだから、ニュージャージーというのは。そうでしょう。どっちかにしてください。そうでなければ私はとてもじゃないが、これだけ努力しても皆さんがそういう答弁をされるのではついていけない。どっちかにしてください。それ以上言うことはない。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、条約というのはお互い守っていかなければならぬ責任と義務があるわけでありまして、アメリカとの間の安保条約、これは最も大事な条約でありますし、日本の平和と安全のためにもこれは守っていかなければならない。日本も守らなければなりませんが、アメリカも守らなければならぬ義務があるわけでございます。その義務として事前協議制度があるわけでありますし、アメリカが何か事を起こそうというときにはやはり三種類の事前協議の前提条件がありますが、これは日本に対してこれを提示してその制約を外すように求めなければならぬわけでございます。これはアメリカが同意を求めなければならない義務でありますから、そしてその義務の一つとして核の持ち込みというのがあるわけでございまして、この核の持ち込みは明らかに事前協議の対象でございますから、事前協議を無視してアメリカが核の持ち込みということは到底あり得ない。これは安保条約上あり得ないというのが我々の確固たる解釈でございまして、いろいろと御心配は出ておりますし、あるいは疑問も出ておりますが、我々は安保条約が存在をし、そして両国がこれを忠実に守っている以上は核の持ち込みはあり得ないという確信の上に立っておるわけであります。
  43. 大出俊

    大出委員 これは確信じゃ済まないのでございまして、確信だ確信だといって、今まで原潜がこれだけ入ってきていて、これは三十九年以来今日まで大変な数でございますが、一遍も核を積んでいない、事前協議一遍もないんだから一遍も積んでいたことはない、そんなことをあなただれが信じますか。ラロックさんの証言もありライシャワーさんの証言もあり、もう次々にあるでしょう、そんなばかみたいなことを、そして非核原則国会決議国是である、いいところに出せぬですよ、この話は。だから明確にしていただきたい。岸さんの言うとおり、こちらから事前協議を明確に申し入れる。結果はお任せしますよ、日本の立場があるから。そうでなければ断ってください、ニュージーランドのロンギさんじゃないけれども。これも条約はある、ウクサ協定もある。対国民という意味国会の権威にかけて、国是たる非核原則決議しているのですから。皆さんにはそれを守る義務があるんだから、どっちかにしてください。あと言うことはない。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは極めて明確だと私は思っております。事前協議制度があるわけでありますから、核を持ち込む場合には事前協議にかけなければならぬということはアメリカの義務でありますから、その義務をアメリカが実行することが安保条約上当然のアメリカの責任である。ですから、核を持ち込む場合には事前協議にかける、事前協議がない以上は核は持ち込まれてないというのが、これは当然のことでありますし、それがまた条約上の義務であろうと思います。
  45. 大出俊

    大出委員 もう一遍言いましょう、時間がありますから。藤山さんだって、ある部隊がこういうことを言っている、何か持っていると。それに対してそれじゃあるのかと六条で言うことは一向差し支えない。そうでしょう。岸さんが、こちらにも提案権がある、形式はない。そうでしょう。志賀さんだって明確に、双方、協議するんだから相談できる、日本側から相談できる、当たり前だと。大平さんも、「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」とはっきり言っているんですよ。そうでしょう。歴代の総理がみんなそう言っているじゃないですか。四十三年のエンプラで、あなた方は高辻さんを出してきて別なことを言った。それまでは全部そうじゃない。だから、こちら側から申し入れなさい、疑いがかくのごとくあるんだから。当たり前じゃないですか、そんなことは。ちっとも不思議なことを言っているんじゃないんです。この六条、岸・ハーター交換公文をこしらえたのは岸さんでしょう。本人が言っているのだから間違いないんだから、やりなさいと言っているんだ。それだけのことだ。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 同じ回答になるわけですけれども、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文に基づく事前協議制度は、米国側は同交換公文に規定されておるところの三種類のケースのいずれかに該当する行動をとることを希望する場合には、我が国政府の事前の同意を得なければならないとの制約を決めたわけであります。したがって、事前協議とは、こうした制度の性質上、このような制約の解除を求めるべき立場にある米国政府が条約上の義務として我が国政府に対して提起してこなければならないものである。したがって、事前協議制度の性質から見れば、我が国政府が米国政府に対し事前協議を行うことを要請することは米国政府の義務不履行を前提とするものでなければあり得ないことでありまして、制度上全く想定されておりません。したがって、こうした要請をすることが我が国の条約上の権利として位置づけられているものと言うことはできないというのが、我々政府の基本的な見解でございます。
  47. 大出俊

    大出委員 もう一遍言いますが、締結をした岸さんが、形式はない、当方からもできる、双方からできると言っているんですから、そうしてください。それだけです。
  48. 小和田恒

    ○小和田政府委員 過去の答弁につきまして大出委員からいろいろ御指摘がございますので、整理のためにちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  この件につきましては一昨年の八月、外務委員会で詳細に御説明をいたしまして、先ほど大出委員からも御指摘があったわけでございますが、岸総理大臣が新安保条約の締結の際に安保条約第六条の実施に関する交換公文の趣旨について説明を行っておられます。その中で核の持ち込みの問題につきましてどうしてそういうことになったのかということの背景説明をしておられますが、その中におきまして、旧安保条約の場合にはそういう問題についていろいろ論議があった。そこで、そういう重要な事項をアメリカが一存で決めてそれを実現し得るということがないようにということでこの事前協議の制度が導入された。  その後、そういうことを申された後でこういうふうに述べておられます。「従ってその場合に、アメリカ側から相談があり協議があった場合において、日本日本の自主的な立場で、それをよろしいといって承認する場合と、日本の立場から、これは望ましくない、また日本の国民感情なり国民の要望をそのまま現わせば、これを拒否すべきものであるといった場合におきましては、これに対してノーと言う場合が出てくるわけでございます。」こういうふうに事前協議制度の趣旨を説明しておられるわけでございます。  第六条の事前協議制度というものは、この安保条約の中に組み込まれたきちっとした制度でございますので、その制度の趣旨、先ほど外務大臣から御答弁申し上げました制度の趣旨から申し上げて、政府が従来申し上げているようなことになるということでございます。
  49. 大出俊

    大出委員 もう言う必要はないんだがね。それは説明をした。全部読んでいる、そのときの議事録も。だが、それに対する質問が出て、今申し上げたように形式はない、双方から申し入れができる、こういうふうに答えている。これが岸さんの答弁です。それをあなた方はいろいろ理屈をつけるのも同じなんだから、締結した人が説明はしたが、質疑があってその中で明確にしているんだから、そうしてくださいと言っているだけのこと。歴代総理がみんなそう答えているんだから、それだけのこと。あとの説明は要りません。全部議事録を読んでいるのです。(発言する者あり)
  50. 小渕恵三

    小渕委員長 安倍外務大臣
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的な考え方を申し上げます。  これまでの経緯については大出委員百も承知の上で御質問なさっていらっしゃると思いますが、我が政府としては、日米安保条約上いかなる核兵器の我が国への持ち込みも事前協議の対象であり、核持ち込みについての事前協議が行われた場合には政府として常にこれを拒否するという所存であることは、これはもう何回も明らかにしているところであります。  核持ち込み問題に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府政策につきましては、これまで最高首脳レベルを含めまして累次にわたり詳細に米側に説明をしてきておりまして、米国は我が国の関心を十二分に理解をしておるところであります。  このことは、例えば一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明、一九七二年のロジャーズ書簡、一九七四年のラロックの発言に関連する米国政府の見解、一九八一年の園田・マンスフィールド会談の際に明らかにされた米国政府の見解に徴しても明らかであります。保さらに、一九八三年にはF16の三沢配備、エンタープライズの寄港等、北西太平洋地域において予定される米軍の活動との関連で、核持ち込みへの懸念が国会等で表明をされていたことにかんがみまして、同年三月十七日、私は、国民の中に存在するこのような懸念を今後に向かって一掃するため、マンスフィールド大使を招致いたしまして、核持ち込みについての事前協議制度の確認を行ったわけであります。その際私は、政府としては非核原則を引き続き堅持する旨を述べました。政府は、国会における答弁を含め多くの場において、米国政府が事前協議の枠組みの中で核兵器の持ち込みにつき許可を求めてきた場合には、政府としては非核原則に従って対処することを明確にしてきた旨を明らかにしてきたところであります。これに対してマンスフィールド大使は、米国政府は核兵器に反対する日本政府の特別の感情を十分理解していると述べ、また、核の存否について肯定も否定もしないというのが米国の一貫した政策であることを指摘しながら、米国政府としては安保条約及びその関連取り決めに基づく日本に対するその義務を誠実に履行してきており、今後とも引き続き履行する旨保障をいたしました経緯がございます。  以上の経緯にもかんがみまして、政府としては、核持ち込み問題については日米安保条約及びその関連取り決めに従って対処する、今後とも対処してまいるという考えてあります。
  52. 大出俊

    大出委員 持ち時間の範囲でございますからお聞きをいただきたいと思いますが、かつまた、理事会でのいろいろな後の質問者の、国鉄監理委員長その他の予定もあるようでありまして、そのことは了解をして質問をしているのでありますから、二つだけはっきりしていただきたいのであります。  実は、今の、先ほど来申し上げましたアメリカ核トマホーク配備計画、これをずっと調べてまいりますと、一九八四年の例の先ほど申し上げました議会証言によりますと、これは能力皆さんおっしゃっておりますけれども、口サンゼルス級の七一%がトマホーク能力を持つと。この時点でロサンゼルス級は三十五隻就航しているわけでありますからね。それから一九八六年、これは八六年の九月と言っておりますが、議会証言によりますと、水上艦十一隻、潜水艦二十二隻が核弾頭配備となる。先ほど御説明いたしました。そうすると、これはロサンゼルス級原潜の五三%になるのですね。ことしの九月ですね。今年の九月ということになりますと、横須賀には年じゅうロサンゼルス級が入ってきているわけでありますが、これは国民の疑惑というのは解けないですね。何とかしなければいかぬと私は思っている。  そういう意味で、先ほど幾つか申し上げましたが、一つは、締結をした岸さんが当時説明したのは、今皆さんがおっしゃるとおり。説明だけでは済まないから質疑が続いたわけでありまして、その質疑の中で、さっき安倍さんお認めになっていますが、岸総理は提案権はこちらにもある、形式はない、こう答えた。この事実はお認めになりますか。  また、中川条約局長が岡田春夫さんの質問等に対して、提案権は双方にあると答えていますね。また大平外務大臣、事前協議の申し出は双方からできると承知いたしておりますと明確に答えている、横路さんに対する答弁で。以下、私がさっき挙げたように明確に答えている。これは、締結当事者がこういう趣旨で締結して、六条、岸・ハーター交換公文というものはこういうものだと説明をした、そのことについて質疑が行われていったわけですね。そこで答えている。歴代総理があと同じように答えている。この事実をまずお認めになりますか。どうですか。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまでの経緯については、私も承知しております。
  54. 大出俊

    大出委員 だからお認めになるとすれば、今私が申し上げたこの状況をこのまま放置はできないじゃないか。相手方から事前協議の申し入れがないから、だから核は積んでいないと言い続けたわけですけれども、今日一体、何百回もの原潜寄港が行われていて、一遍もない。その間にはライシャワー発言もあればラロック発言もある。国民的な不安がある。それを今のお話だけで、今の答弁だけで事済ませておける段階かと私は思っているわけでありますから、そういう意味で歴代総理答弁をお認めになるのならば、原点に返ってこちら側から国民のいろいろな心配、不信感をなくすように何らかのあなた方は努力をしないというのは、これは筋が通らぬじゃないですか。いかがでございますか。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その経緯については承知しておるということを申し上げたのは、その後の政府の見解ということも含めて申し上げたわけでありまして、例えば昭和四十三年三月六日の衆議院外務委員会における穂積議員の質疑を初め、何回か同様の質問が提起された経緯があるわけでございますが、その際、政府側より事前協議は、事柄の性格上、米側が申し出るものであるとの政府の統一的な見解を明らかにいたしておりまして、その考え方はその後政府は一貫して示しておることである。いわゆる事前協議の性格上、これはあくまでも米側が申し出る筋合いのものであるというのが、政府のその後の統一した解釈であるし、また答弁になって今日に至っておるわけであります。
  56. 大出俊

    大出委員 途中で統一見解という話を統一的見解に直しておりますね。しかし、原点はあくまでもこれは双方にあるということなんで、今日、千六百五十二日、横須賀だけで二百七回寄港が行われている。さっき申し上げましたように、これが大変にふえる、こういう状況でございますから、今までどおり事前協議がないから持ち込まれていない、これで押し通そうとしても無理がある。戦艦ニュージャージー寄港についても、総理は一度核を積んでいないと確かめてから入港を許可すると答えている。そうすると、この二つの問題について今のままでと言われても納得いたしかねるから物を申し上げているんで、総理にもう一遍承りたいのですけれども、国民的なこの種の疑惑を何とか政府の責任において明確にする、晴らすという気持ちはないのですか。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話は、いわゆる第六条の事前協議、これについては先ほど申し上げましたように事前協議の性格上、これは日本から申し出るものじゃなくてアメリカから申し出るべきものである、これは制度のそういう仕組みであるというふうに我々は解釈しているし、政府はそういう統一見解を四十三年以来一貫してきているということを申しているわけですが、そうした一般的な国民の疑惑にこたえていくためには、やはり安保条約が信頼性がなければなりませんから、安保条約の信頼性、そしてまた事前協議の責任、義務というものを明らかにするために、これはいわゆる一般的な協議として、先ほどから申し上げましたように、私もやりましたし、前任者もこれを続けてきて、いわゆる安保条約の信頼性、そして非核原則というものの日本の立場をアメリカに理解をせしめるために努力を重ね、またアメリカも安保条約は必ず守るんだ、その関連規定を守るんだ、事前協議制度も守っていくんだ、また日本の国民感情も十分承知しておるということで我々の信頼性を確保して今日に至っておるわけでありまして、事前協議そのものでは行っておりませんが、一般的な協議という形で我々はアメリカとの間でこれまでしばしば協議をいたしておるということであります。
  58. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは総理、外務大臣いずれかお答えいただきたいんだが、今私が幾つか資料を差し上げて申し上げましたように、ここまでたくさんの原潜にNの、つまり核の配備計画が進められている。皆さん能力だとこう言うけれども、能力では済まない。だから、ここまで来たら今のようなことでなしに、しかも先々、ことしの九月までに二十二隻にもなるというんだから、そういう意味で今のままでは済まないので、この問題について核トマホーク配備計画が進行してきていて、所期の目的を達成している、この時点であなた方はどうしようということがなければならぬじゃないですか。そうでしょう。ニュージャージーについても、前回はどういうふうに――核積載と言われているけれども明確でない。ないが、議事録によって見ると、これは私からすれば、積んでいると断定せざるを得ないです。そこまでアメリカの議会における議論も進んできているでしょう。だから、先ほど五日の日の新聞だって、核トマホーク搭載後初めてニュージャージー寄港すると書いてある。そうでしょう。一九八四年の六月にニュージャージーは核を搭載されたというのは常識ですよ、アメリカへ行ってみれば。そうでしょう。そうだとすれば、ここでもう一歩踏み込まなければいかぬでしょう、この問題について。これは皆さんに明らかにする責任がありますよ。総理にこれは御答弁いただきたい。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 事前協議に関するいろんないきさつは、外務大臣から申し上げたとおりでございます。特に、佐藤内閣になって非核原則というものを設定して、これを明確にしております。そういういきさつもあって、元来事前協議というものは日本が制限を課したわけです。一個師団の配備であるとか、そのほか核を入れるとか、そういうような問題については事前協議であると日本が制限を課したのであって、その筋からすれば、日米関係のこの信頼関係で安保条約というのは運営されておるわけですから、向こうがもしこれを変えるという場合には相談すべきものなのであります。そういう性格のものであり、日本側としては安保条約を信頼の上に立って運用しているという基礎に立ってこれを今までも維持してきておるので、その立場は私も一貫してやっておる。  ニュージャージーの場合については、いろいろ国会でも御議論もありましたから、念のために非核原則というものがあって国民がこれだけ関心を持っているという、それを先方にお伝えをした。それでマンスフィールド大使を招致して、外務大臣が我が国はこういうことであることは念のために御承知でしょうね、くれぐれも我が国のそういう国民感情には注意してもらいたい、そういうことを言っておるのです。これはそのとおりやったわけでございます。  それで、今まで大出さんがいろいろな御資料をお読みになって、私も拝聴いたしましたが、その御努力には非常に敬意を表する次第です。あなたぐらい深く勉強していらっしゃる方はないし、我々も初めて見る資料もありました。しかし、例えばあなたが最初にお出しになったこの資料を読んでみましても、八四年の七月八日公表、これを見ましても、一番最後の表のところにこう書いてあるんですね。「海軍の計画では、次のようなTLAM-N装備可能な発射装置を持つことになっている。」と書いてある。つまり「発射装置を持つことになっている。」というのは、ケーパビリティーという意味であるのですね。装置はできておる。しかし、核弾頭が来ているか来てないか、装着しているかどうかというのは別のことなのであります。それを外務省の北米局長がその可能性能力という表現で言っているのであります。我々は安保条約を誠実に運用しておるし、また先方もしておると考えておりますから、そういう考えに立って対処しておるというわけでございます。
  60. 大出俊

    大出委員 時間が参りましたから。  しょせん、これは基本的には平行線になりますが、先ほど申し上げましたようにどんどんふえていくわけでありまして、したがってまたいろいろな議論がいろいろなところで出てくると思っておりますから、これからまだ先にいろいろな議論をしなければならぬと私は思います。したがって、考え方がはっきり違う、この点だけ申し上げまして、私の方は、非核原則を実質的に守る、形式で事前協議の申し入れがないから入っていないというようなことでなしに、本当に核の持ち込みが行われていないというところが明確になるまで、ひとつ私の方は私の方で努力をいたします。そのことだけ申し上げて、理事会の方向もありますので、きょうはこれでおしまいにいたします。ありがとうございました。
  61. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  62. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。二見伸明君。
  63. 二見伸明

    ○二見委員 真藤社長がお見えになられておりますので、今では民間人でございますし、お仕事もおありと聞いておりますので、最初にNTTの問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  私は、電電公社が昨年四月一日に民営化されてNTTとしてスタートしてこの二月でちょうど十カ月を経過いたしたわけでありますが、この民営化後のNTTに対する評価としては、職場に活気が出てきたとか、これまでの親方日の丸的な体質からシビアな経営感覚が生まれてきたと言って高い評価がございます。事実私は、真藤社長以下幹部職員が一丸となって発想の転換を図り民間会社として活発に活動されているということ、このことについては大変深く敬意を表しております。また、実はこの法案が一昨年国会にかかりましたとき、我が党内でもいろんな議論がございまして、ありていに言えば賛成派、反対派、慎重派いろいろあったわけであります。私は賛成派の方で旗振りをした一員でございますが、その後発足してこの一年間、約十カ月間、やはり慎重論、反対派の方々が提起した問題も出てきているように思います。したがいまして、率直な御意見を伺いながら二、三お尋ねをしたいと思います。  真藤さんは、記者会見か何か、ことしの一月だったと思いますけれども、三分間十円の市内回線というのは安過ぎるので料金の引き上げをしたいということを表明されたそうでありますけれども、いつから幾ら引き上げたいのか、御答弁をいただきたいと思います。
  64. 真藤恒

    ○真藤参考人 お答えいたします。  今のお答えをする前に、ちょっと私どもの今置かれている立場というものを御説明申し上げて、それからお答えさせていただきたいと思います。  御存じのように、現在私どもは法体系では民営の会社になっておりますが、実質はまだずっと独占体制で動いております。したがいまして、国営独占体制のときに設定された料金体系でそのまま今営業されておりますが、実質上独占体制で今運営されておりますので、これで一向差し支えはございませんが、いずれこれをあの法体系にございますように三年以内に電気通信事業法を見直すということになっておりますが、この三年以内にこの料金体系というものも全体の中で検討なされて考え方が根本的に変わるものだろうというふうに考えております。したがいまして、そういう御審議の途中、私ども実質上の大手の業者の一人としていろいろお求めに応じた資料も提出しなければならぬし、またそれについての御説明、また私ども業者としての御意見も申し上げなければならぬときが来るだろうと思います。したがいまして、今新聞紙上いろいろ、今御質問のようなことが出ておりますけれども、当分の間、そういう見直しのときの新しい料金体系のことを政府でお決めになるまでは、どういう新聞記事が出ましても私どもが今の料金体系を変えるということはあり得ないことでございまして、そこのところをそういうふうに考えておりますということを先に申し上げて今のお答えを申し上げますと、この引き上げの幅あるいは時期というものはずっと先のことでございまして、すぐどうのこうのということになるものではございませんし、また私の現在の立場でそういうことを自分たちの意思として発表するはずもございませんので、そこのところを御了承いただきたいと思います。
  65. 二見伸明

    ○二見委員 真藤さんそうおっしゃいますけれども、あなたの発言は一社だけが取り上げたのではなくて、各社が市内料金の引き上げについては報道しております。記事によっては、十円を二十五円にするという見出しをつけた記事もあります。市内料金だけではなくて一〇四も有料化にしたいという意向をあなたは示されております。NTTみたいな巨大な通信事業会社、まさに日本にとっては超マンモスの会社であります。民営化ということを意識し過ぎて、公共性であるとか公益性であるとかということの概念がだんだん希薄になってきたのじゃないか。ライオンをおりから解き放したようなことになってしまうのではないか。勝手に値上げの意向を示す、観測気球か何か知らないけれども、値上げをしなければならない。ローカルラインは、市内回線は赤字だから値上げをする必要があるのだ。私はこれは大変問題だと思っております。改めてその点について御答弁いただきたいと思いますし、さらに私は、あなたが赤字だ赤字だと言うけれども、それでは市内回線というのはどのくらい費用がかかってどのくらい赤字幅があるのですか、データを出してもらいたい。データも何も出しもしないで、十円が安いから高くするとか、それでは大変国民としてもわかりにくいし、納得できない発言だと私は思います。改めて資料を出してください。
  66. 真藤恒

    ○真藤参考人 ずっと前から、この法案を御審議いただくときにも、市内料金が赤字で市外料金が黒字で、市外からのあれで補てんしているということはお答えの中にも申しましたし、それからそのときにもいろいろの御質問もございましたが、そのときに私、御質問に対してこういうことをお答えしておったと思います。確かに市内料金は大赤字で市外料金は大黒字である、これは確かでございます。しかし、今まで独占体制であったために市内のコストが幾らで収入が幾らで、それから市外のコストが幾らで収入が幾らでということを計測するようなしっかりした装置がございませんで、いつも議論の基礎に私どもの方がしておりますのは、サンプルチェックあるいはスポットチェックというデータだけでしか申し上げられなかったのでございます。これではいかぬと思いましたので、私就任いたしましてすぐ、ATTがずっと昔から使っております、通話の動きをあらゆる時点でとらえてそれを自動的に記録する装置がございますので、それを買い入れまして、今整備を急いでおります。これがことしの十月ごろから稼働を始めますので、いろいろな予備行動も入れまして来年の五、六月までになりますと大体正確な数字が出てまいりまして、皆様方の御審議の材料として差し上げることができる資格があるものができると思います。  それともう一方、番号案内の有料化ということも新聞には出ますけれども、これとても、番号案内を有料化するためには料金計算のときにかなりの技術的な手を加えなければなりませんので、これも御方針が決まってから一年半ぐらいかからないと実際番号案内の有料化は実行できないのでございます。  そういう技術的な問題もございますし、さっき申しましたような政府の規制あるいは助成というふうな問題もございますので、例えば現在話題になっております市内料金あるいは第二電電が入ってきたときのアクセスチャージの問題その他市外料金というもののバランスというふうなことも、そういう資料がそろってそれからきちっとやらなければなりませんので、市内料金だけがどうのこうの、番案がどうのこうのというふうに一つずつ切り離してという問題ではないのではないかというふうに私ども考えております。  ごく大ざっぱに申し上げまして、現在の市内だけの計算をごく大ざっぱにやってみますと、設備の投資した、市内料金に関係のあるところの設備の償却費、それからそれに設備をするために払っております金利の負担、それから固定資産税その他の税金などを付加しまして考えますというと、私どもの人件費を全然抜きにいたしましてそういうもののコストだけを考えますと、今の大体想像される三分十円の範囲内の料金収入と、そういう資本償却のための支出というものがもう既にバランスいたしておりません。それが大体の数字でございまして、さっき申しましたような装置で正確に計測いたしますとこれは歴然と出てくるだろう、そういう状態でございます。
  67. 二見伸明

    ○二見委員 企業体というのは別に、例えばこの分野では赤字だけれどもこの分野では黒字だ、総体として赤か黒かということで経営というのは判断していくのだろうと思うのです。確かに市内料金十円、あなたの方では赤字だというお話だけれども、赤字なら赤字幅がどのくらいで、しかしそれは長距離との方でどういう見合いになっているか、経営全体の中ではどうなんだ、そういう具体的な我々が判断できる材料を出さなければ、我々だって判断できないと思うのです。また、一〇四を有料化するという、あなたのお話を聞いていると、三分間十円の話も別に今すぐやるわけではない、一〇四も有料化にするということも政府の方針が出て決めることであって私の方ではないと言う。しかし、あなたの記者会見では、一〇四は諸外国は全部有料化ではないか、日本ぐらいのものだとあなたはおっしゃっている。だから料金を取る。料金を取るばかりではなくて、あなたはこういうふうに言われているはずです。「有料化後は、問い合わせてきた利用者に番号だけでなく、各種の情報を付加して教えるサービスも考えている」と真藤社長は記者会見でお述べになられたと記事に出ております。ですから、あなたの頭の中には三分間十円の引き上げが前提としてあり、一〇四有料化がもう既定の事実として頭の中に入っているのだと思うのです。そのための世論操作、そのための観測気球を現在揚げているのじゃないかと思います。到底これは許すことができない。  郵政大臣、どうしますか、この問題は。本当に今三分間十円を三分間三十円とか、ただの一〇四をお金を取るとかということにするわけですか。
  68. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 昨年の四月に与野党の国会議員皆さんあるいは国民の大変な応援で自由化体制に入ったことは御承知のとおりでございます。その後、NTTは大変な努力をされまして、そして効率的な社内体制を確立しようということで寧日努力されておることは御承知のとおりでございます。  先般新聞紙上でそういうことがちょっと出ましたので、私実態をよく聞いてみましたところが、慎重な発言の中にもいろいろと見方があって、ああいうようなことが出たような内容でございますけれども、郵政省としては、電話料というのが法定料金から、民営化されていった時点において認可料金に移行するわけでございます。したがって、電話料のコストの問題とかあるいは報酬の問題とか、本当に企業というものが効率的な運営を始めただろうかといったような問題で新しい認可料金というものを考えねばならないという今準備体制に入っておるわけでございます。したがって、NTTの方も経営者としては当然、民営企業になったのですから、今後の電話料金はどうするべきか、どのようにすればいいのかということも考えることが経営者の責任であろうと思います。  しかし、郵政省としては利用者のことを十分に考えていかなくちゃならぬ。したがって、軽々に料金を上げるという建前のもとに料金の見直しをやるということは、相当準備期間が必要であろうし、私はそういうことは今してはなりませんというような基本的な考え方を持って今後真藤社長なり、関係の新しく生まれてくる第二電電あるいは日本テレコム、高速通信とか、自由競争体制に入っていく三つ、四つの企業が今お客さんをどんどんとっていく準備をしておるわけです。それが実際に自由競争の体制になっていく時点、そういう過程の中でこういう問題は考えていきたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  69. 二見伸明

    ○二見委員 真藤さん、もう少しお時間いただきますが、有料化の問題は今大臣答弁がございましたから、それはちょっと差しおきましょう。大臣からは、料金を引き上げるという方向では検討しないという意味合いの御発言がございました。それはそれで結構でございます。ただ、あなたのところでは「有料化後は、問い合わせてきた利用者に番号だけでなく、各種の情報を付加して教えるサービスも考えている」とお述べになられた。これはある面では非常に便利なんです。しかし、ある面では甚だ迷惑な場合がある。私のところの電話番号は二六五-五〇九八であります。利用者が一〇四かけて、二見伸明の電話番号は、交換手が出て二六五―五〇九八です、こう教えます。その限りにおいては心配ない。住所はどこですか、あるいは御職業は、そんな個人に関するあらゆるデータをこの中にほうり込んで、電話をかけてきた利用者に教えるというようなことがあったならば、まさにこれはプライバシーにかかわる問題であります。この膨大な電話帳がありますね。登録された人たちの個人個人のデータは、今持っているかどうかわからないけれども、集めようと思えばこれは集められる話だ。また逆に、今は二見伸明の電話番号はと言えば、二六五と答えてくれるけれども、二六五―五〇九八はどなたですかという問い合わせがあるかもしれないのです。それは二見伸明という人です、何丁目何番地です、そういう教え方も、今はできませんよ、これからやろうと思えば、技術開発が進めばそれもそんな難しくなく可能になるはずです。ですから、付加価値を与えて情報を提供するということは、個人のプライバシーという問題から重大なことが起こってくるんじゃないかというふうに思います。あなたは民営としていろんなサービスをしたいという善意の気持ち、私は全くよくわかるけれども、それがそういうマイナスの効果も出てくるということをあなたはどういうふうにお考えになっているか、プライバシーの問題についてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  70. 真藤恒

    ○真藤参考人 今のお尋ねのことでございますが、もしそういうことを始めるということになりますと、一人一人の加入者といろいろ御希望、御相談いたしまして、一つの加入者については、Aの加入者についてはこの範囲のこと、Bの加入者に対しては従来の番号案内の範囲だけというふうに、加入者の、お客様の御要望に応じてそういうことを返事する範囲を協定いたしまして、そしてお互いにそれをきちっと正式の協定にいたしまして、私どもの方で案内する原稿にもきちっと書いてお客様の承認をいただいてという手順を踏まないとできないことでございます。これは諸外国にもそういう例がございますし、きちっとそのプライバシーの問題は御本人の承諾のないこと以外は絶対にやらない、これは厳重に守らなきゃならぬと思います。ちょうど今の電話番号帳にいろんな広告をいただいて載せておりますが、あの形式が文字の上だけじゃなくて言葉の上に移っていく可能性があるというふうにお考えいただきたいと思います。
  71. 二見伸明

    ○二見委員 それからもう一点お尋ねしますけれども、NTTは昨年の十月に東京二十三区内の市内番号を四けたにしたい、六十二年度中に実施したいということを明らかにされました。例えば、今二六五とか五八一とか三けたの局番でございますけれども、もうこれがパンク状態なので四けたにしたいという意向を表明されたようでございます。  しかし、これは簡単に四けたにしていいものかどうか。一つは、利用者の立場からいけば、私のところの二六五が二六五じゃなくなって、二六五〇とか二六五一とかというふうになるわけでありますね。それは今まで電話を中心として商売をしてきた人にとっては、局番が変わるというのは大変なことであります。簡単にできるものではない。それだけではなくて、局番を四けたにするということは、シェアというか、NTTが押さえる電話番号が十倍とか二十倍に範囲が拡大されるのだそうであります。ということは、それはそのままとりもなおさず、これから新しく入ってこようとする電話事業者に対する何というか、阻害要因というのか、入ってきにくくなるようなバリアをつくるのじゃないかということも考えるわけでございます。  四けた化というのは、回線がなくなってしまえば三けたではもう賄い切れなくなる時代はそれはないわけじゃない。しかし、今の三けたをより有効に使うことによって、NTTが四けたになるというのはずっと先に延ばしてもいいんじゃないか。延ばす努力を私はしていくべきではないかと思います。この点については真藤社長と郵政大臣からお答えをいただきたいと思います。
  72. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 ただいまの電話番号の問題でございますが、東京都内の三けたの電話番号が、NTTの方の考えておることを私聞いてみますというと、この一年以内にどうももう不足しそうである、こういうような話は聞いております。しかし、この電話番号の三けたという、特に東京の三けたというものが四けたに変更するということはもう全国的に影響する、大変国民生活に影響する問題でございますから、これは慎重に指導していきたい、こう考えております。  そこで、現時点で果たして一年以内にパンクするのかどうかということもさらに検討しまして、ある程度私は余裕があるような気がいたします、私の方の調査でも。したがって、そういうところを十分配慮いたしまして、NTTとよく相談をして慎重にこの問題に対処するようにしていきたい、こう考えております。
  73. 二見伸明

    ○二見委員 私は、民営になってからのNTTが商売に対して非常に熱心だということについては敬意を表しておるのです。一つ持ってこようと思って持ってこなかったのですけれども、私のさる友人がホールインワンをされまして、私みたいな貧乏人がホールインワンをやると財産がなくなりますけれども、ホールインワンをされまして、この記念のテレホンカード、すばらしいアイデアで、その人に私は敬意を表したい。私もホールインワンをしたならばテレホンカードをつくろうかなと思っております。そのくらい非常に熱心であります。ただ、ちょっとこれについて文句を言いたいのだけれども、何万枚つくっても印刷料金は同じなんだそうですね。普通のはがきとかなんかは枚数がふえればふえるほど印刷料金、印刷のコストは安くなる。NTTのテレホンカードは全然安くならないそうでありますから、ここら辺はまだ親方日の丸的な感覚が残っているんじゃないかなというふうに思います。  それはそれといたしまして、いずれにいたしましても、NTTはまだ十カ月もたたないうちにたくさんの子会社をおつくりになった。一〇〇%出資の会社もあれば二五%出資の会社、九〇%、五〇%、いろんな子会社をおづくりになった。それぞれ経営者としての経営戦略からおつくりになったんだと思うし、そのこと自体すべてがすべて否定されるべきことではない。IBMと提携された日本情報通信、これはまたどういう影響を持ってくるのか私はよくわかりませんけれども、いずれにしても、いろんな子会社をつくってきて、NTTを真ん中にいろんな子会社、傍系会社ができてきた。しかしそれは姿として見れば、まさにNTTが日本全土に情報通信に関する一大ネットワークを利用した巨大な企業連合体をつくりつつあるんじゃないかなという感じがいたします。  これは近い将来、独禁法上も問題になってくることもあり得ると私は思います。独禁懇ではNTTのこうした動きに対して注目していくような報告が出されているそうでありますが、確かに、新規参入がある三年目くらい、この一、二年はNTTの独占体制が続きます、その独占体制が続く間に新規参入ができにくくなるような守備範囲をがっちり固めてしまうのじゃないか。こうなったらば私は何のための民営化だったのかなという感じもしてこないわけではありません。  公取がお見えになられておりますか。――公取にお尋ねいたしますけれども、そうしたNTTの企業戦略についてどういう目で見ているのか。
  74. 高橋元

    高橋(元)政府委員 今のお尋ねのありましたような状況につきましては、実態を把握して注視していく必要があるというのが答えでございます。なぜそうかと申しますと、今もだんだんお話のございましたように、民営に移行しましてから約一年でございますが、これから新しい第一種通信業者が参入をしてくる、全く何もないところへ参入してくるわけでございますから、その参入を円滑にやって参入後の事業活動を十分に営ましめるということが今の段階で競争政策として一番大事であろうというふうに思っております。  具体的なことは、現在、また学者その他学識経験者を中心として検討していただいておるわけでございますけれども、NTTが現在基本通信サービスを提供する唯一の事業体である、それから電気通信事業分野において巨大な力を有しておるというのは事実でございますから、私どもといたしましても、こういう活動が、NTTのさっきお話のありましたような活動が新規参入を阻害するなど、公正で自由な競争を制限することにならないようによく実態を把握してまいりたいというふうに申し上げるわけでございます。
  75. 二見伸明

    ○二見委員 真藤さん、これは最後で申しわけないのですけれども、一昨年の予算委員会で私、この問題で総裁の、当時真藤総裁の御意見を伺ったことがあります。新規参入ができないような巨大な企業体になった場合には分割する必要があるとあなたは明確に私に対してここで答弁されました。その考えは今でも変わりはございませんか。
  76. 真藤恒

    ○真藤参考人 今の御質問の巨大な子会社というふうな形になる可能性のありますものは、それをしょっぱなから、つくりますときから公取委員会の御指導をいただきながらほかの企業の姿に似た形で始めなければならぬというふうに思っております。例えば私のところの仮に、仮にでございますが、宅内機器の販売システムというふうなもの、端末機の販売システムというものは、あれを一本で切り出すとちょっと問題が出てこようかと思いますので、そういうものについては公取の御指導を得ながらやっていくつもりでございます。
  77. 二見伸明

    ○二見委員 真藤社長、ありがとうございました。  それでは、財政問題について伺いたいと思います。  大蔵大臣、私は、今ここに提案されておられます政府予算案というものは欠陥予算だというふうに思います。お怒りになるかもしれませんけれども。というのは、本来予算というのは、補正予算というのを全く予想しないでつくるのが本予算案であります。万やむを得ない事態が生じたときに補正を組む。ところが、今度提出された政府予算案というのは最初から、ことしの秋か来年の今ごろかわからないけれども補正予算は組まざるを得ない、逆に言えば組むことを前提として編成された欠陥予算ではないかというふうに私は考えております。  その第一点は何か。それは公務員の給与改善費というのが全く計上されていない。ゼロでしょう。過去ゼロだったことはない。去年も一%、その前も一%。その前、そのずっと以前には五%の給与改善費が予算案には計上されておりました。今度は計上されておりません。  人事院総裁、ことしの夏、人事院勧告はどうなりますか。
  78. 内海倫

    ○内海政府委員 御存じのように、公務員の給与というのは民間の賃金に準拠をいたしておるわけでございます。現に私どもは本年度の給与の問題として四月の時点で官民の給与比較をやるための作業に着手いたしております。これは一応在来から勧告を前提としながらの作業でございます。しかしながら、この調査の結果が官民間ではどういうふうな較差を生ずるか、これはまだ今直ちに予想はいたしかねますので、これが出てみないとどういうふうな結果になるのかは私どももまだ判断するには困難でございますけれども、しかしながら、御承知のように公務員の給与というものは人事院の調査あるいはその結果による勧告というふうなものによって改善が行われるわけでございますから、そういう意味からいいますと、私どもはいろいろな諸条作ももちろん検討しなければなりませんけれども、そしてまたそれに対する事柄は慎重にやらなければならないとは思いますけれども、私どもとしては公務員の給与の改善というものについては積極的な考え方で臨んでいきたい、こういうふうに思っております。
  79. 二見伸明

    ○二見委員 総裁、人事院の勧告というのは五%以下であっても出されたことは何度もあるわけですね。ことしの夏に五%を超えないで三とか四とかという数字であっても、それが〇・五とか一・一とかというのならともかくとして、いわゆる常識の範囲内であれば人事院勧告は出す方向というふうに理解してよろしいですか。
  80. 内海倫

    ○内海政府委員 御承知のように五%という問題がないわけじゃございませんが、在来も五%だからこれをやらなかったということではなくて勧告をいたしておりますから、先ほども申しましたように、調査を終えた時点で十分判断しまして、私どもとしては積極的に問題は考えていきたい、こういうふうに思っております。
  81. 二見伸明

    ○二見委員 公務員の給与は、あれは総務庁長官でしたですね。人勧が出れば当然完全実施に向けての努力はされるわけですね。
  82. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは当然人事院勧告を待って対処するわけですが、これは今までも何遍も官房長官談話がございます。給与は勤労条件の基本とするもので重要な事項である、来年度以降は人事院勧告の完全実施に向けて誠意を持って対処する所存であります。これは去年の十一月八日の内閣官房長官談話であります。したがって、財政事情が厳しいことはよくわかっておりますが、この問題については尊重してまいりたいと思っております。
  83. 二見伸明

    ○二見委員 とすると大蔵大臣、今度給与改善費がゼロというのはどういうわけですか、これは。
  84. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十一年度予算、これは極めて厳しい財政事情のもとに引き続き財政改革を推進していくために歳出、歳入両面にわたって最大限の努力を払って厳しい予算を編成した、こういうことがまず大義名分でございます。給与改善費というのは公務員の給与改定に備えるための言ってみれば財源措置でありまして、それによって給与改定の目安をつくるというものではない。その其外的な計上額につきましては、従来から毎年度の財政事情を勘案して決めてまいりました。今いみじくも御指摘がありましたように、昭和四十三年度前までは計上しておりませんが、四十四年から五十三年までは御指摘のあったとおり五%。五%以上積みますと、それこそ何か予見を与えることになりますからという議論を当時いたしましたことを記憶しております。それから五十四年から二・五、そして二%、それから、言ってみれば昨年まで、言葉の中で私自身も若干この問題についてひっかかりましたのは、あかしてございますと、こう言って一%ということにさしていただいておりましたが、結論から言いますと、やはり大変厳しい財政事情であるところから今回はこれは見送らざるを得なかった。ただ、これによって人事院勧告制度の尊重の基本姿勢は、これは今、江崎国務大臣からお話しがありましたようにいささかも変わるものではございません。来年度以降においても人事院勧告の完全実施に向けて誠意を持って対処するということは私どもは当然のことではなかろうかというふうに思っておるところでございます。  種々私もこれについては議論も部内でもいたしました。しかし、非常に厳しい財政事情の場合、やはり給与改善費というものは結局は、言ってみればそれに備える財源措置というものであったならば、今まで一%あるいはゼロの場合もありましたが、やはり今日の厳しさからいえば、その精神を生かし、去年までの表現で言うならば、あかしの方は、あかしとしての計上は見送らざるを得ないということで国会にも御理解を得ようという結諭に到達したわけであります。
  85. 二見伸明

    ○二見委員 要するに勧告が出れば完全実施への努力をして補正を組む。最初から補正を想定した予算案。予算案というのはその一年間の政府の施策の顔であると言われるけれども、この顔はまだ半分きりないということですね。片目がつぶれている顔だと言っても過言ではないような感じの予算案であります。  それでお尋ねしますけれども、こういうゼロということは今回限りなんでしょうか。それとも、財政再建の目標は昭和六十五年だそうですから、六十五年まではゼロという格好で続けるつもりなんでしょうか。その点いかがですか。
  86. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題はやはり来年度予算編成のぎりぎりの段階で、来年度じゃございません再来年度でございますか、だから常識で言えばことしの十二月のぎりぎりの段階で、その都度判断さしていただくということであろうかと思います。
  87. 二見伸明

    ○二見委員 総理、実は私は、この給与改善費一%をゼロにした問題は、財政上のつじつま合わせだけで欠陥予算だと申しておりますけれども、それだけではない問題というかねらいがあるんじゃないかという感じがいたします。というのは、まさに論議されている現在、現時点は春闘の前であります。経済界の方では今度の春闘のベアに対してはかなり厳しい見方をして抑制しようという方針を貫いております。実際にベアがどう決まるかは労使間の交渉で決まることでございまして、政府が介入をしたりなんかできる筋合いのものではありませんけれども、計上費がゼロということは、私は春闘のベアを低目に抑えたいとしている経済界に対する暗黙の援護射撃じゃないかなという、はしたない勘ぐりをするわけであります。  これは「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の昭和六十年度リボルビング報告では、「GNPの約六割を占める個人消費の拡大を図るため、技術革新など経済発展の成果を賃金と労働時間短縮に適切に配分すること等を通ずる可処分所得や自由時間の適度な増加、物価の安定等を図る。」要するに賃金のアップということは大事だというのが六十年度リボルビング報告での言葉でございますし、また実質賃金ギャップの動きについては、「第二次石油危機以降の実質賃金ギャップの動きをみると、実質賃金上昇率は中期的な労働生産性上昇率を下回って推移しており、むしろマイナスのギャップが拡大している。これは近年において家計所得の伸びが極めて緩やかなのに対して、企業収益が堅調に推移していることに対応している。マイナスのギャップの存在は、我が国経済がマクロ的にみると、生産性との関連で経済パフォーマンスを悪化させない範囲内で実質賃金の改善を図る余地のあることを示唆するものである。」実質賃金の改善を図る余地があるんだ、こう報告がある。  また私は、昭和六十一年度の経済を考えて、内需拡大、個人消費の伸びを期待するためには、一方は減税であり、一方はベアだと思います。ミクロで見ると企業によっては非常に厳しい状況かもしれないけれども、日本経済をマクロの面で見た場合に、実質賃金を伸ばすということは非常に大きな意義のあることだというふうに考えております。にもかかわらず財政のつじつま合わせというか、予算の格好、姿、形をよくするために給与の改善費を計上しなかったということは、私はあってしかるべきではないというふうに思います。この問題については改めて総理としてのお考えをお尋ねし、次の問題に移りたいと思うのです。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 近年、大体一%計上してまいりましたが、本年は財政事情が殊のほか厳しい状況にございまして、昨年と同じようなことをやることができなかったのでございます。しかし、人事院勧告を尊重していこうという考え方は変わったわけではございません。
  89. 二見伸明

    ○二見委員 六十一年度予算のもう一つの、これも最初から補正を想定しての予算だなと思うのは、税収の伸びを意外と高く見積もっているのではないか。と同時に、東京サミットがあることも意識されたのかどうかわからないけれども、六十一年度の日本経済の見方をかなり高日に見ているのではないかなという感じがいたします。六十一年度経済に対して、民間の予測では実質二、三%台が圧倒的に多い。名目でも三ないし四%というのが圧倒的に多い予測であります。予測でございますから当たるも八卦当たらぬも八卦というところもあるわけでございますけれども、民間の予測が非常に厳しい状況になっている。それに対して政府の方ではどうかというと、六十年度との対比で見ますと、六十年度冬日は当初は六二七あった。それが実績見込みで五・七%に下げた。六十一年度の見通しは名目で五・一です。個人消費は当初は六・九で六十年度は読んだ。しかし実績見通しては五・一になる。六十一年度の見通しては五・六にこれを上げております。住宅は名目が六十年度の当初は五・九だった。実績見通しては四・一にダウンした。それが六十一年度の見通しては六・三にアップ、高目に見ている。  日本経済の環境というのは去年の六月を境にして下降局面に入ったのじゃないかなというふうに思います。しかも円高というデフレ要因があり、六十年度と比べれば六十一年度の経済運営というのはそう楽なものではない。ところが政府の方では今申し上げたような、例えば個人消費は五・一が五・六とか高目に見積もってきている。見積もるだけの裏づけの施策があるのか。目新しいものはない。公共事業も据え置きだし、所得減税をやるわけではなし。そうすると、六十一年度が果たして政府の言うとおりになる、政府考えているような動きになるのかどうかということについては私は非常に疑問があります。ただ、ここで疑問があるけれどもどうだと言えば、政府の方はそのとおりになると思いますと言うに決まっています。ことしの見通しをここで訂正されれば、その瞬間に予算の土台が変わっちゃうわけですから言うわけない。言うわけないことは私も聞きません。  税収の伸びに限って今度は見ていきますと、五十六年度は税収の伸びが三・三%、五十七年が四・〇、五十八年が五・九、五十九年が七・四、六十年が五・六、平均で五・二四%ぐらいですね。ことし六十一年度は、六十年度の最終的な予算と比べてみると五・五%ぐらいの伸びになるだろうと私は思います。私は、ことしの日本の置かれている経済環境、政府の方は高目な経済見通しを持っておりますけれども、これもかなり狂ってくるんじゃないかと思う。ちょうどことしの六十年度補正で四千五十億円の歳入欠陥を生じたと同じような現象が六十一年度、来年の今ごろ同じ議論をしなければならないのじゃないかなというふうに考えております。このことについては大蔵大臣はどういうようにお考えになっていますか。
  90. 竹下登

    ○竹下国務大臣 税収の見積もりというのは、これはあくまでも見積もりでございますから、歳出と性格がそこは違うわけであります。したがって、よく私どもといたしましては、これはいささか個人的な意見、個人的な議論になりますが、一%は誤差のうちなんということを言ってまいりましたが、御指摘なさいましたように、今四千五十億円で減額補正をお願いしておるわけですから一%よりちょっと余計という感じで、平素一%は誤差のうちなんと言ったことを思い出しますとしまったなと思っておることは事実でございます。したがって、今度は六十一年度税収ということになりますと、その四千五十億を引いたものが土台になって、結局は課税実績、それから今おっしゃいました政府経済見通しの諸指標、それと同時に今度は個別税目もヒアリングをしたりして、そういうものを積み上げて適正に見積もったものでございますので、私は現状においてこの見積もりがやはり一番至当な見積もりではなかろうかというふうに思っております。  それで、ここのところ翻ってみましても、五十八、五十九といつも上の方へ誤差のうちが出て、そのときはありがたいと思っておりますが、今度は、今の補正の限りにおいては下の方へ誤差の外が出ておるわけでございますから、ちょうど三年で見ますと大体ちゃらになるなというような感じで見ておりますが、大変丁寧に積み上げたものでございますので、私は〔現時点においてはこの見通しというものが一番責任を持って提出する歳入としての見積もりではなかろうかというふうに考えております。
  91. 二見伸明

    ○二見委員 それは、ここで税収の見積もりは甘いかもしれませんという御答弁はされないのは当然だろうと思います。ただ私は、六十年度当初六二%の名目成長率を五・七%にダウンさせた、しかし現実にはさらに五・七も下回るのではないかなという予測もしているわけであります。そういう状況を踏まえて、大蔵大臣いみじくも一%は誤差のうちと言われましたけれども、誤差のうちが来年の今ごろここで議論される可能性は非常に強い。というよりも、むしろ最初から経済や税収を高目に見積もって、内外からの批判をかわさなければならないという意図のために高目に見積もっているのではないか。本音では来年の補正でもって後始末すればいいやという感じで編成したのではないかなという勘ぐりを持っているわけであります。  さらに、やはり私が補正を組まざるを得ないことになるのじゃないかなと思うのは、例えば景気の問題でも、大蔵省は公共事業費の七五%を前半に前倒してやるという方針を出されましたね。そうすると後半には残り二五きりないわけです。やはり後半にも公共事業を追加投資して景気の下支えをしなければならないようなことになり得るのじゃないかという予測もしているわけであります。したがって、私は今度の予算は、例えば公務員の給与改善費を計上しなかったことや、税収の伸びも間違いなく歳入欠陥という事態になるなどいう勘みたいな予想をしておりまして、欠陥予算だなという思いをしているわけでございます。  それで、さらにお尋ねをいたします。税の論議あるいは財政再建の議論がずっと毎回出ているわけでありますけれども、私はその中でちょっとお尋ねしたいのですが、「財政の中期展望」では名目成長率六・五%を想定して、歳出がゼロの場合は幾ら、三%の場合は幾らと、要調整額がこう出てきておりますですね。しかし、ことしの政府の名目成長率が、六十年が五・七、六十一年が五・一、六十二年以降急激にインフしか何かになれば別だけれども、そうでない、安定的に推移するとすれば、六・五%というこの仮定というのは、現時点ではかなり現実離れした仮定になっているのじゃないかなというふうに思います。その点は感覚としていかがでしょうか。
  92. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはあるいは経済企画庁からお答えあるべきかと思いますが、中期展望をつくったという意味で、私の方の勘と申しますかそういうお言葉もお使いになりましたが、申しますと、私自身も今度の中期展望で、従来の七と六の中間値の六・五ということについてもう一遍勉強してみようと思いました。  結局、先ほども御指摘のありましたリボルビング報告の中で「一九八〇年代経済社会の展望と指針」で盛り込まれている経済の姿につきましては、「対象期間中の平均的な姿としては、その数値を変更する必要はないと考えられる。」と、最終的に平均的な姿としてはそうではなかろうか。その前をちょっと読ませていただきますが、「「展望と指針」で掲げた経済成長率等の経済のフレームについては、今後、為替レート等の推移如何によっては、物価上昇率が想定以上に鈍化し、また、その結果、名目経済成長率が想定を下回る可能性もあるが、対象期間中の平均的な姿としては、その数値を変更する必要はないと考えられる。」これが出たものですから、それではやはり中期展望でも従来どおりこの数字を使わせていただこうということで機械的に計算してお出ししたということでございます。
  93. 二見伸明

    ○二見委員 六・五に政策的な意図があるとは私も思っておりません、一つの仮定計算の前提条件でございます。仮定計算の上での一つの条件でございますけれども、しかし六十五年というのは、六十一年からスタートして六十五年、五年後を展望した場合に六・五という名目成長率が妥当かどうかということになれば、それは過去へさかのぼって平均値でいくのと――これからなんです。もう過去とは関係ありませんですからね。これから未来の話なんです。その場合、六・五というのはかなり高目に見積もり過ぎた成長率だなと思います。実質的には昭和六十年が五・七、六十一年が五・一なんです。六十二年も五・一と五・七の間をそんなに飛びはねて高くなるということはちょっと想像しにくい。しかも、円高ですから、これは物価安定要因になりますね。インフレにはなりにくい。そうすると、私は六・五がどうのこうのという議論をするつもりではないのだけれども、六・五も無理だということになれば、あそこに書かれてきた仮定計算の要調整額というものより拡大するというふうに考えてもいいのじゃないでしょうか。現実は六・五が無理ということになれば要調整額がもっと拡大してくるのではないか。その点どうでしょうか。
  94. 竹下登

    ○竹下国務大臣 機械的な計算でその御指摘は僕は当たるというふうに思っております。それで、その六・五、実際は七ないし六の中間値でございますが、この四の実質成長率が例えば五十九年では五%台に上がったとか、物価の三が大体それよりも下でございますわね、今度なお下でございましょう。そのことはいわゆる円高メリット、円高のメリットが将来来る一番大きな要因じゃないかな。すなわち、それによって物価が安定し、ないし時には下落してそれが消費に回る、こういうことでございますので、いわゆる中小企業円高デフレのデメリットの問題の議論もございますが、また円高メリットというものが将来出てくるであろう。しかし、それは消費等が多くなりますので、今度は弾性値がどうなるかということになりますと、これも結局結果を見なければわからぬという感じがいたします、変動期でございますから。しかし、今二見さんがいろんな前提を置いての御心配とでも申しますか、それは我々も常日ごろ念頭に置いておかなければいかぬ課題だと思っております。
  95. 二見伸明

    ○二見委員 それで総理、お尋ねしますけれども、この要調整額をどうするのかという議論は、財政論議の中では毎回出てくる論議であります。きのうも我が党の正木政審会長が、もう六十五年赤字国債脱却だなんというのはできっこないんだから旗をおろせ、こう言われました。しかし、これはおろすわけにいかぬという政府の首尾一貫した答弁でございますが、私はこのことによって政府を免罪する気は全くないけれども、この要調整額、仮定計算で出てきた要調整額の埋め方というのは結局二つきりないのではないか。一つは、六十五年赤字国債発行ゼロという今までの既定方針を撤回をして赤字国債を増発する、今後も出すというふうに方針転換をする。もう一つは、要調整額分の増税を行う。実はきのうは、NTTの株の売却などで要調整額がずっと見えてきたというふうに大蔵大臣は微妙な答弁をされました。NTTの株を売却して要調整額を埋める。しかしそれは一回限りで、売ってしまった株はそれで終わりですから。その年はそれで要調整額は埋められる。翌年はまた要調整額が出てくればまたNTTの株を売る。最後にはなくなっちゃいます。できるものではない。要調整額を埋めるためにNTTの株を売却するというのは、その場限りの対症療法では通用するかもしれないけれども、財政再建という長い目で見ればそれは抜本策ではない。ここら辺について政府はどう考えているのか。  要するに、選択はこの二つのうちの一つきりないわけです。それ以外の第三の選択があるならば、私はこれこれの第三の選択がありますよと政府の御答弁を期待したいのです。むしろ政府の方は積極的に答弁をして、国民の判断に任せる、その方がフェアでよろしいと私は思います。御遠慮なくおっしゃっていただきたい。
  96. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昨日以来の議論でございますが、今二見さんの御議論というのは、一般歳出をこれ以上削減できないとすればという前提でございますが、まだ私は、削減がどうかも選択肢のうちの一つに入るだろうと思っております。事ほどさように、制度、施策の根源にさかのぼったまだ対応の仕方というものが必要だ。これ以上そういうことはできないといったときから、またこれは、今まで一貫して、毎年もうこれで終わりだろう、来年はできないだろうと言われながら、あるいはつじつま合わせだと言われながらも、とにかく一般歳出前年同額以下の当初予算を組み続けて四年間来たわけでございますから、ここでもう一般歳出はこれ以上削減できないということも言えない。やはりそれも、今選択肢が二つある、国債を増発するか、あるいは増税するか。いや、まだ削減するか。やはり、この選択肢三つの中で最終的には国民がどうこれを判断するか。結局その問いかけをここで四年もやっているわけですね。これは容易じゃないなと思いながらも、まだやらなければいかぬわけですから。したがって、その問いかけの中に、今一時的なものだとおっしゃいましたが、いわゆる税外収入の国有財産の処分の一つとしてNTTの株というようなものがことしからいわば中期展望にも入ってきたということをきのう以来申し上げておるわけでありますから、まだやはり各種制度、施策の根源にさかのぼって、最終的には、受益者も国民、負担するのも国民でありますから、その国民の選択にかかることでございますが、それを問いかけていくということが必要ではなかろうかというふうに思っております。だから、中期展望がその問いかけの素材ともなれば幸いであると思っております。
  97. 二見伸明

    ○二見委員 総理、そうすると、私は選択肢を二つ挙げたのですけれども、大蔵大臣はもう一つ選択肢、一般歳出をさらに削減するという選択肢も出されたわけです。確かにこの議論はもうずっと何年来行われておりまして、議論が平行線みたいなところもあるわけですけれども、総理としても、さらに一般歳出を削減する余地があるというふうに現時点でもお考えになっておられますか。もうかなり痛い声が聞こえてきたというふうな御判断に立っておられますか。どちらですか。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 かなり厳しい予算編成をずっとやってきたものですから、これ以上削減することはなかなか厳しいでしょうが、増加を抑制するという面は工夫の余地があるかもしれません。しかし、臨調答申の線に沿いまして、やはり一般歳出に至るまで厳しい態度で臨んでいかなければいけない、こう思います。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 総理は税制改革を今進められて、政府税調に諮問されているわけでありますけれども、先ほど私、選択肢の一つに要調整分の増税ということも申しました。要調整分全部というよりも、NTTの株の売却だとかいろいろなことがありますので、仮定計算より出てきた、あるいは予想される要調整額よりもちろんもっと圧縮された額になると思うけれども、その要調整額分を埋めるということはこの税制改革では考えておられますか。どうでしょう。
  100. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは総理の諮問も、いわゆるシャウプ以来のゆがみ、ひずみ、そして税に対する重圧感、この問題等を精力的に検討を進めていただいておる現状でございますので、いわゆる税収増を目的としたものではなく、また、現在の負担水準や財政状況等にかんがみれば、税収減をもたらすものであってもならぬ。その限りにおいてはニュートラルなものという前提において、抜本的にまずはゆがみ、ひずみ、重圧感、こういうところから御検討をいただいておるということでございますので、要調整額に対するいわゆる財源措置としての増収目的を持って税制調査会に諮問されたものではないということでございます。
  101. 二見伸明

    ○二見委員 そうしますと、これも随分議論されたことですけれども、いわゆる税制の抜本改正によって租税負担率はどうなるのか。考え方が三つあるわけですよ。ある程度は上昇せざるを得ない。もう一つは現状程度。現状より引き下げる。この三つのケースしか考えられないわけでありますけれども、この税制の抜本改正の結果、租税負担率はどんなことになるのでしょうか。
  102. 竹下登

    ○竹下国務大臣 結局、租税負担率というのは、五十九年のような減税があった場合は別といたしまして、刻みがある限りにおいてはある程度わずかながら上がってまいりましょう。したがって、根本的な議論としていつも行われるのは、いわゆる国民負担率の問題で議論が行われるわけであります。したがって、租税の範疇からいわば社会保障負担の範疇に出ていくものがあれば、それは租税負担そのものはあるいは減るかもしらぬ。だから、それらもまだ、そういうことを念頭に置いておるわけじゃございませんが、抜本的な改正をしてもらう――改正をしてもらうじゃありません、御答申をいただこうと思っておるわけでありますから、それが今度はどうなるかというのは、最終的には政策選択の問題になるんじゃなかろうかというふうな感じで受けとめておるところであります。ただ、臨時行政調査会等で言われておる、ある程度国民負担率として見たら上がることはやむを得ないとしても、ヨーロッパのそれよりもかなり下というような問題は、やはり政策選択の根底にはいつも持ち続けていなきゃならぬ課題ではないかいなというふうに考えております。
  103. 二見伸明

    ○二見委員 税制改正の中身の議論というのはよくわかりにくいわけです。政府としては、税調にお願いをしている段階で予断、予見等を与えてはいけないということで発言を差し控えられているということなんだけれども、なかなかどうして、十五段階の税率を簡素化した方がいいのじゃないかとか、頭は七〇%ほどのところを六〇%ぐらいでもいいのじゃないかとかという総理からの国会での答弁もあり、意外どこれは、その面では税調に一つの意見として反映してくるだろうと思うのです。  それで、政府の予定ではこの春に減税案の答申をいただくということなんですけれども、これは大体いつごろ、春といいましても三月から五月まであるわけでございまして、いつごろに大体中間答申案をいただきたいと思っているのか。  それから、その場合、私もうっかりしていたのだけれども、例えば三兆円とか四兆円とかという所得税の、例えば三兆円減税とか四兆円減税とかという具体的な数字の明記されたものが出てくるのか。あるいはそこまで作業がなかなか進まないで、所得減税はこういう方向でいくべきだとか、定性的というのですか、数字じゃなくて、法人税についてはこれをこういうふうに整理すべきであるとか、所得税については税率をこういうふうにいじるべきであるとかというような定性的な形での答申をいただいて、実際にそれを三兆円にするのか五兆円にするのかというのは後の議論になるのか。そこいら辺はどういうふうな見通しというかお考えを持っておるのでしょうか。
  104. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これも、税制調査会における税制改革の審議の取りまとめに当たっては、春ごろにこの方策について明らかにしていただきたい、こう言っておるわけですから、「スプリング ハズ カム」が何月なのかということになりますと、今のところ直ちに何月とは言えぬわけでございます。そして、それをどういう形で、中間的な取りまとめの具体的な時期、形式、内容については、やはり税調自身で判断してもらうのが妥当じゃないかなというふうに思っております。  私もいろいろな考えを持ってみました。例えば刻みの問題等についても、定性的と言えば、なお一層減すがよかろうというだけの答申でも定性的ですし、あるいはアバウト何段階というのなら少しそれが具体性が出てまいりますし、それからカーブの問題にいたしましても、最高税率というのが、現行の最高税率に対しては重圧感の中へ入っておると言えば極めて抽象的、定性的ですし、それに数字が入ってくればまた少し具体性が出てくる。その辺が勘どころがなかなかつかめませんで、この間もニューヨークでシャウプ先生とお会いして、あの人のときにはどんな考え方でおやりになっておったかというのをいろいろ確かめてみながら、これから、税制調査会の先生方も、シャウプ先生のいらっしゃるときにはまだ子供であった方ももう皆税調へ入っておられる今日でございますから、もう少し見定めてからでないと、二見さん、大体こういう形のものが出そうでございますということはお答えできないということであります。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 どうも私は、三兆とか四兆とかという具体的な数字が入った答申まではいかないのじゃないかな、かなり定性的な内容になるのじゃないかなというふうに思っておるのですけれども、そういうふうに答弁することが、例えば大蔵大臣がそういうふうにおっしゃることが税調に予見を与えるということになってはまずいのだけれども、予見を与えないということで、大蔵大臣、これは期待でもなければ何でもないのだけれども、定性的な方向にいくのじゃないですか、これは。どうでしょう。
  106. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も時に二見さんの考えていなさるようなことを考えることもないこともない、こういうことであります。
  107. 二見伸明

    ○二見委員 それで、総理にお尋ねいたしますけれども、こういう税制の中間答申が出ますですね。出たときに、総理としてはどういうふうに扱うのか。  というのは、去年の十一月十四日の参議院の大蔵委員会で、総理は公正、公平、簡素、選択、選択というお言葉を使われていますですね。この選択という言葉について小倉税調会長がこう言っているのですね。「その際の選択というのは、文字どおりに言いますれば、A、Bという両方の税制があって、AをとるかBをとるかどちらかはその納税者の選択に任すという税制もこれはあり得るかと思うんです、ちょっと難しいですけれども。」二つの税制があって、あなたが申告する場合、こっちでもいいですよ、こっちでもいいですよというのも選択としてはあり得るけれども、それはちょっと難しいんじゃないか。「もっと私どもが選択ということで考えますとすれば、税制改正なら税制改正について幾つかの選択の余地のあるような案を提示しまして世の中に諮って、その中で国民の意見も聞いて、いわば選択の上でどういう案に集約していくかというようなこともやっぱり一つの選択であって、どちらかといえば、後で申し上げましたようなことが選択というようなこと、言葉からいえばより適切なような気もいたします。」と答えているのですけれども、総理がおっしゃる選択というのはやはりこういう意味でしょうか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方の意味があります。  つまり、前の意味におきますと、例えば総合課税でそしてやるという場合。しかし、源泉でやるという場合でも、この場合は重く取るとかそういう形にして、どっちを選びますかというような、システムでもありますね、今でも。そういうような類似のものがほかの場合でもいろいろ考えられる。そういうような税制内部の問題の選択ということと、それからやり方に関して、対きるだけ国民の皆さんの前にA、B、C、D、Eというような案が出てきて、国民の皆さんがどれを選ぶであろうか、それをじいっと見で、いろいろな議論が起こるのを見つつ、大多数がこっちの方へ行きそうだなという点でそっちを選択して、国民合意のマジョリティーを選んでいく、そういうやり方もあり得るのですね。  だから、両方頭にあるということであります。
  109. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、総理は、やはり昨年十一月五日の参議院の予算委員会でこう言われていますね。「案を先行させる」、これは減税案のことですね。「案を先行させる、減税案をまず出しなさいと、そして国民の皆さんで大いに議論して、これがいい、これが悪い、こっちが間違っている、こっちをこういうふうに直せと、そういうふうに国民の皆さんにいろいろ議論していただく。しかる後に、じゃその財源措置をどうするか、これもまたいろいろ案が出てくるでしょう。これはいけない、これはいい、これはこうしようと、そういうところでおさまったところでこれは包括的一体として」「そういうふうに考えております。」と、こう答弁されております。議事録をそのとおりここへ私書いてきたわけですけれども、そういたしますと、まずことしの春どういう中身のものが出るのか、定性的なのか定量的なのかわからないけれども、答申が出てくる。その出てきた答申に対して国民がいろいろな議論をしてもらいたいというふうにお考えになっている。ということは、抽象的に国民と言うけれども、むしろその中間答申を国会でも議題にして、大蔵委員会とかその他関係の委員会でもって大いに議論もしてもらいたい、もちろん公聴会もやるだろう、政府としても世論調査とかいろいろなことをやるだろうし、いろいろな意見も聞くだろうけれども、そういう手順を踏みたいというお考えなんでしょうか。  さらに、そして財源措置についてもいろいろな形が出てくる。それも政府税調がA案、B案、C案とかいろいろな案を出してくる。答申の形としては三論併記とか五論併記とかという形になりますですね。その中からみんなで議論をして、これでいこうとかあれでいこうとかというふうな手法をお考えになっているのですか。その点についてお尋ねします。  と同時に、もう一つ私は選択という言葉でぴんときたのは、これは納税者に選択させるということになると、やはり間接税がな。そうですね、買わなければいいんだからね。これは買わないとかこれは買うとかという選択ができる、そういう意味で、間接税ということも選択の中に入っているのかなと思ったのですが、あわせて三つお答えをいただきたいと思います。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が先ほど御答弁申し上げたことで私の意図はおわかりいただけたと思うんです。  いずれにせよ、国民の皆さんにいろいろ議論していただき、また、中間案にせよできた場合には、当然国会でいろいろ御論議も願うことになるし、それをお出しになった税調の会長さんにおいでいただいていろいろ質問なさることもあり得ましょうし、できるだけ国民の目の前に触れて国民の意見が出される、そういう形で税というものは行われるべきである、私はそういう考えを前から持っておりまして、そういうふうにしていただきたいと思っておるわけであります。  それから、間接税を頭に置いてわざわざ選択という言葉を入れたということはございません。大蔵大臣がお答えしていますように、税調でいろいろ御審議なさる対象の中には間接税というものも入り得る余地はある、そう申し上げております。しかし、どういう結果が出てくるか、それを最終的にどういうふうに取り上げるかというような形は、我々が最終的に考え、また国会皆さんの御審議で決まる、そう思っておるわけです。
  111. 二見伸明

    ○二見委員 次に、これは農政のエース登場でございますので、素人の私が農政の専門家に胸をおかりしてお尋ねをしたいと思います。  最初に、総理、農政問題の基本的な考え方をお尋ねしたいのだけれども、私は、農業政策の目的というのは、国民に安定的に食糧を供給することと農業経営の健全な発展を図り営農意欲旺盛な後継者がいる農家を育成することにある、要するに農業で食っていけるぞというような農家をつくるということにあると思うのです。  しかしながら、この数年の農林水産省の予算を検討してみますと、果たして政府は本気になって農業を育成しようとしているのかどうか疑わしくなる。といいますのは、農林予算が最高だった昭和五十七年度の三兆七千億円から六十一年度には三兆一千億円に減っております。五十七年度と比較すると一五%減。非常に象徴的な言い方でございますけれども、六十年と六十一年度では防衛予算と農林水産予算が逆転をいたしました。まさに象徴的な六十年代の最初のスタートだという感じがいたします。  政府予算の一般歳出と対比いたしますと、五十七年度は農林水産予算は一一・三%だったのが、六十一年度は九・六%で一割を割りました。果たしてこういう農林水産予算を組んでいて総理は農業の将来をどのように考えているのか。農は国の基本とよくおっしゃいますけれども、どういうふうにお考えになっているのか、まず基本的な考え方をお示しいただきたいと思います。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農は国のもとであり、農業は生命産業である、そういうふうに私は一貫して考えております。  しかし、国政全般の上で非常に厳しい予算編成をせざるを得ないということでございますから、各省庁ともいろいろ我慢していただいて、できるだけ削減できるものは削減していただいた、農林の中でもそういうものに御協力をいただいた、そういうことでございます。しかし、重要な、またこれからの将来を考える大事な費目、発展性のあるものに目をつける、そういうような問題については十分配慮してやっておると思っております。
  113. 二見伸明

    ○二見委員 農林予算の減額のずっと減ってきた中身を調べてみますと、食管繰り入れの減額が非常に著しい。農林予算の削減というのは食管赤字の解消ということでもってかなり行われてきたというふうに思います。これ以上食管に手をつけるということが無理ということになると、しかも六十二年度以降もことしと同じような手法で予算を編成するということになりますと、基盤整備などの公共事業関係費だとか農業のハイテク化などのいわゆる一般事業費を削らなければ、今までは食管を削ることによって一般事業費や農業関係の公共関連事業費の方の減額を抑えられてきたんだが、食管もそうそう手をつけられないということになれば、やはり基盤整備であるとか農業のハイテク化であるとかいうそうした分野に予算を切り込んでこなければならない、削らなければならないと思います。そうなりますと、農は国の基本だとかいろいろおっしゃいますけれども、農業自体は衰退をしていく方向にあるのじゃないか、こういう心則を私は抱いているわけでございますけれども、その点についてはどうでしょうか。
  114. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答えいたします。  ただいま二見委員の方から御指摘がございましたように、確かに六十年度と比較しまして、あるいはその前の五十七年あたりと比べましても、農林水産予算というものが相当減額されておることは事実であります。ただ、御案内のとおり国債費、これが一般会計の中で五十九年一八・○八であったものが二〇・九三というふうに非常に大きく伸びてきてしまっているということで、農林水産関係だけでなくて、福祉関係も教育関係も全体に減額せざるを得なかったというのが現状であります。  しかし、今食管会計がずっと減らされたというお話であったわけでありますけれども、食管の方につきましても、例えば流通の経費ですとかあるいは人件費の問題ですとか、やはり今の時代の中にあって財政再建をしなければならない、これに対して農政もこたえていかなければいけないということで、いわゆる国民に安定して供給するそういったものを阻害しない範囲で食管経費というものを落としてきた。また、一部分は国民の消費者の皆様方に御負担していただいたという面があると思っております。  そういうことで、六十一年度の予算につきましても、今総理からお話がございましたように、厳しい財政事情であって残念ながら減額せざるを得なかったということでありますけれども、しかし、特定土地改良工事特別会計制度、こういったものの拡充を図りまして、いわゆる生産基盤の整備、こういったものは事業費なんかは伸ばすように工夫しております。それから生物系特定産業技術研究推進機構、こういったものも設立いたすことにいたしまして、いわゆるバイオテクノロジーと言われる先端技術、こんなものの開発に対しても私ども考えております。また、農業者の自主的な創意工夫、これを生かそうということで、農業経営基盤の強化を図るため農業改良資金制度、これの拡充を図ってまいったということでございまして、六十二年度の予算について、今六十一年度の予算を御審議いただいているところで予測したり何かすることはできないと思いますけれども、いずれにいたしましても、厳しい中にあってもいろいろと工夫をいたしましたり、また、どこに重点を置くのかということを主眼に置きまして予算編成を行ってきたことであって、厳しい中にあるけれどもやはり先行きというものは展望できるのだよというものはこの予算の中でも示されたのじゃないかなというふうに私は考えております。
  115. 二見伸明

    ○二見委員 大蔵大臣、先ほど一般歳出を削減するという選択肢もあるというお話がありました。私は一般歳出の削減を考えなくてもいいなんとは思っておりません。今後の予算編成もやはり一般歳出の削減もある分野では必要だと思いますし、その努力をしなければならない。しかし私は、ことしの農林予算に限定しても、相当無理をして厳しい中から新しいものを生み出そうとしている農林省の苦労というのはわかる感じがいたします。もちろん文部省、厚生省、当然増経費の多いところも同じように苦労している。私は農林予算を見ながら、こうした予算を圧縮するだけ圧縮する、そういう手法というのはもう限界に来ているのじゃないか、緊縮財政というのはもう相当厳しい段階に来ているのじゃないか、もうそろそろ財政政策考え直さなければならない時期に来ているのじゃないかなというふうに思うのですけれども、依然として今後とも緊縮財政でいくべきだというお考えを大蔵大臣はお持ちですか。
  116. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大変厳しい段階に来ておるという問題意識は共通しておると私も思います。しかし、さはさりながら、さらに節減あるいは合理化の方向があるではないかというような点は、やはり今後も所管される省のお方が、これは専門家でございますから、いろいろな工夫をお願いしなければならないではないかというふうに考えておるわけでございます。
  117. 二見伸明

    ○二見委員 私は、節減合理化の努力をしなくてもいいと言う気はない。それは当然一方ではやるべきだ。と同時に、締めつけるだけ締めつけてというここ数年の手法も、もう限界に来ているんじゃないか。節減合理化の旗をおろせというのじゃない、やりながらも、もう少し温かみのある財政政策というものに転換してもいいんじゃないかなというふうに思っているわけです。大体これも、六十一年度で緊縮財政はもう、少し手法を変えてもよろしいんじゃないでしょうか、どうです。相変わらず、ずっと続けなければいかぬと思っておるのですか。
  118. 竹下登

    ○竹下国務大臣 恐らく二見さんがお考えになっているのは、手法の問題として、まず一〇%と五%の概算要求基準を従前どおり設けていくことに対しておよそ限界があるんじゃないか、こういう御意見もあるいはあろうかと思います。が、この概算要求基準というのは、昭和三十六年でございましたが、あの当時は、五〇%増しまではいいんだよという概算要求基準でございます。それが昭和五十五年度予算で一〇%まで、それから五十六年で七・五、五十七年からゼロ、それから今度はゼロ以下、その中にいろいろな内なる改革が進んできたわけでございます。  だから、これは冷徹に一つの枠をはめて、血も涙も通わないということではなくして、冷厳な財政事情を考慮した中で、血も涙も通ったものを内なる改革の中から生み出すことをお願いしたい、こういう思想でお願いをしておるわけでございますので、概算要求基準をどうするかなんというのを今から言うべきことじゃないでございましょう。国会議論等を聞きながら、この概算要求基準というような手法の中でどのような数字でもって対応していくかというようなことは、これからの課題だというふうに考えております。
  119. 二見伸明

    ○二見委員 食管制度について二、三お尋ねしますけれども、食糧管理法はその第一条に、「本法ハ国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並ニ流通ノ規制ヲ行フコトヲ目的トス」と書いてあります。しかし、昨今の我が国における米をめぐる情勢というのは、食管法の目的規定から乖離したものになっているのではないかという意見も出ております。  例えば需給事情について言えば、米の生産調整を始めてから十五年も経ているものの、いまだに潜在的な過剰基調から脱却はしていない。あるいは価格政策にあっても、生産者価格については「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と規定され、消費者価格については「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と規定されているにもかかわらず、最近は、食管の論理というよりも財政の論理が優先して価格の設定が行われているというふうに思います。このことは、昭和六十一年度の農林予算の編成が、米の売買逆ざやを事実上解消することを前提として可能になったと私は思っておりますし、そうしたことによっても明確にあらわれているんだと思います。  さらに、流通管理にあっても、自由米、いわゆるやみ米が半ば横行している。もちろん食管制度は、去年の十一月にも流通面での改善も行われてまいりましたけれども、こうした現状の中で一体食管法は何のためにあるのか、こういう疑問があります。また一方では、だから食管法を維持、堅持をしなければならないという強い声もあります。まさに百家争鳴の感さえあるわけでございますが、残念なことに食管制度や米穀をめぐる情勢が極めて複雑な様相を呈している、そのためにこの食管をどうするかという論議については、必ずしもかみ合ったものとはなっていない。私は、食管をめぐる環境が変わってきたので、改めて今までの議論を整理する、そういう観点からも、きょうは食管制度についての論議を時間の範囲内でしてみたいと思っております。  私は、食管制度が果たしてきた役割というのは高く評価しております。つい数年前の米不足のときに、米の騰貴、米の買い占めという事態が起こらなかった。これはその前の昭和四十八、九年のころのオイルショックのときに、トイレットペーパーの買い占めに走ったという愚かな行動があり、それに対する反省もあったと思う。また、単年度で米は不足しているけれども、いわゆる古米の在庫がたくさんあるために、米総量としては不足をしていないという安心感もあった。そういうこともあるけれども、やはり食管制度というものがこの時期機能していたのではないかなと思います。したがって、食管制度そのものも高い評価をしているわけでありますけれども、農林大臣としては、この食管制度というのはどういうふうにお考えになっているのか。  また総理大臣、ちょっと古い話になって申しわけないのだけれども、昭和四十年代、当時の佐藤総理大臣が、食管制度の根幹は守るという見解を述べてきた。食管の根幹とは何かということで、私も予算委員会や農林水産委員会で議論したことがありますけれども、佐藤総理が食管の根幹は維持すると御発言になっておりますけれども、総理としては、この食管制度をどういうふうにお考えになっているのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  120. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答えをいたします。  今、食管をめぐるもろもろの情勢についてのお話がございました。私どもも、食管というものに対する議論、いろいろな議論があることを承知しております。ただ、その中で私どもが考えなければいけないのは、一体、国民生活の中で米というものがどんな位置を占めているのだろうかということ、これをまず考えてみたいと思うのです。  これは六十年に総理府が発表しました、お米は日本人の主食として最もふさわしいかという質問に対しまして、そう思うと答えたのが、五十三年のころには八七%だったのが、五十九年の九月には九一・八%ということで、ほとんどの国民の皆さん方が米というものに対して非常にあれを持っております。そして、これは二見さんもよく御案内のことでありますけれども、主食の中に占めます米の支出といいますか、食費の中に占める米の支出は八%近くあるというのが現状です。またカロリーなんかでも、三十数%ですか、今二四、五%ぐらいですかね、米がやはり占めているというような現状です。(二見委員「二八%」と呼ぶ)二八%。そういうことで、やはり米というものが国民生活の中に非常に大きなウエートを占めておるのじゃないか、こんなふうに思います。そういうことで、食管制度にいろいろな議論があります。そして、背景も確かに変わってきております。しかし、今御指摘がありましたように、かつて違う時代があった、そういう中から食管制度は生まれてきたということから見て、私は一つの役割を果たしておるというふうに思っております。  しかし、そういう中にあってもいろいろな背景が変わってくる、そのときどきに応じてやはりこたえていかなければいけないということで、消費者の米の品質に対する要請、こういったものにこたえるために、市場原理が働きやすい民間流通、これの長所を生かすための自主流通米制度、ちょうどこれは我々が国会に出てきたころに採用されました。その後、過剰あるいは不足、いかなる需給事情にも対応できるようにという食管法の改正、五十六年にやっております。また、改正食管のもとで小売業者をふやそうということで、ブランチなんかを一万軒ぐらいふやしております。また、昨年の秋の改正食管の趣旨を踏まえた、集荷から販売に至る各段階における各種活動の活性化、合理化を図るための流通改善措置というようなこともやってまいったところでございます。  いずれにいたしましても、食管制度の基本というものは私たちも維持しながら、そのときの事情の変化、こういったものに運営の面できちんと対応し、また改善なんかをするべきものは改善をしていかなければいけない。やはり食管制度というのは、私は必要な制度じゃないかなというふうに思っております。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 食管制度の根幹いかん、そういう御質問でございますが、私は食糧の、特にお米、食糧の安定的供給を消費者にも生産者にも保障し得る仕組み、そういうものであると解釈いたします。その場合に、消費者に対してもそうであるし生産者に対してもそうである、そういうような配慮が基幹にあるだろうと思うのです。しかし、やはりこれも制度でございますから、国民のためにあるのですから、できるだけ簡素にして合理化して、経費を余り要らないように、そういう形に持っていくことは政府の責任であり、両方の御協力を得てすべきものである、そう思っております。
  122. 二見伸明

    ○二見委員 私、食管制度を果たしてこれからも維持可能なのかどうかなと思うと、かなり疑問に感ずるわけであります。例えば、政府買い入れ価格と売り渡し価格との差、いわゆる売買逆ざやというのは、玄米六十キログラム当たりですと、昭和五十五年度が千七百八十三円、五十六年度千三百六十五円、五十七年度九百十八円、五十八年度五百九十三円、五十九年度三百四十一円の売買逆ざやがあったのですが、昭和六十年度には、政府買い入れ価格は一万八千六百六十八円、売り渡し価格は一万八千五百九十八円で、売買逆ざやはわずか七十円であります。これはいわば平均の値段でございまして、一類、二類という等級の上のお米に対しては売買逆ざやはなくて、一類は、政府買い入れ価格は一万九千九十九円に対し、売り渡し価格は一万九千五百八十円で、四百八十一円の順ざやであります。  二類は、一万八千九百四十九円の政府買い入れ価格に対して一万九千三十円、八十一円の順ざやであります。政府買い入れ価格よりも、政府売り渡し価格の方が高くなっている。これは、食管制度の持つ魅力というものが失われてきたのではないか。生産者からしてみたら、政府に売るよりも別のルートで売っても余り差はない。むしろ税金の方もよくわからないし、いいんじゃないかという、バイパスをつくったことになるんじゃないか。これは、ある面では食管制度の根幹にかかわる問題だと私は思います。と同時に、これは食管制度が新しい段階に入ることを示しているのではないか。まあ総理は、簡素合理化、国民のための制度だというお話もございましたけれども、やはり食管制度が新しい段階に入ったんじゃないかなという感じがいたします。  それで、そうした認識の上に、さらにお尋ねいたしますけれども、今まで財政上では売買逆ざやを縮小しろ、縮小しろとやってきた。もう売買逆ざやが事実上ゼロになってしまった。もし、財政上の立場から食管に手をつけるとするならば、コスト逆ざやの縮小という以外にはない。コスト逆ざやというと、政府買い入れ価格プラス管理経費です。保管料だとかあるいはいろいろな人件費だとかという管理経費に手をつけなければならない。当然、手数料だとか保管料だとか流通経費だとかというものは、これからも鋭意努力をしていかなければいけないけれども、この努力にも限界があると思います。ということになれば、私が最も恐れているのは、コスト逆ざやに手をつけて、国民の立場からいえば、より政府売り渡し価格が高くなるべきです。そういうことになれば、これは食管制度の持つ生産者にとっての魅力というものも、消費者にとっての魅力というものも、その瞬間にかなり薄れたものになってしまうのじゃないかというふうに思います。  羽田さん、申しわけない、時間が余りないので簡単にお願いしたいのですが、コスト逆ざやについてはどう考えますか、手をつけるべきだと思いますか、流通経費の削減なんかは当然ですよ。
  123. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答えいたします。  簡単に申し上げます。確かにコストについても、今お話がありました流通ですとか管理経費、これはまださらによく検討しながら、引き下げるものがあれば引き下げていかなければならないというふうに思っております。  ただ問題は、コスト逆ざやを縮小するということで、これを消費者の方に余り転嫁していくということになりますと、これはそれこそ食管て何なのだという議論になります。そういう意味で、私どもは今消費者の方にただ負担をさせるというようなことは難しいであろう、慎重に考えていかなければいけないというふうに思っております。
  124. 二見伸明

    ○二見委員 コスト逆ざやについて、私は羽田さんの答弁、非常に満足であります。確かに、消費者に転嫁をするという形でコスト逆ざやの解消を図ろうということになれば、食管が必要なのかどうかという根本の議論になってしまうと思います。したがって、その点を踏まえた上でコスト逆ざやに対する竹下大蔵大臣の御答弁をお願いしますが、時間もありませんので、もう一問追加の質問を、これは総理と農水大臣にお尋ねをしたいと思います。  実は私は、羽田さんが農林水産大臣に就任したときの弁で、大変ユニークでいいなと思ったのは、食管をタブー視してはいけないということです。正面から議論してもいいんじゃないか。ただ私は、それは羽田さんの言うのは、食管をなくせという意味合いでのタブー視ではなくて、十二分にわかった上でアンタッチャブルみたいなことはよくない、オープンに議論してもいいんじゃないかという、そういう意味で、私は非常に前向きの新しい型の大臣だなとあの発言を評価したわけであります。そして、現実的に食管制度の運用面ではいろんな改善がなされてきた、昔のような硬直した制度ではなくなりつつあることは事実であります。  しかしながら、現実には食管制度のほころびというのは、生産とか流通とか消費の各段階に広がってきていることも、私は率直に認めなければならぬというふうに思っております。例えば生産段階では、食管制度を守るという名目で減反政策が強行されているけれども、この減反政策は、そのことによって他の農産物の過剰問題というようなものが起こってくる、転作することによってほかの分野での過剰問題というのが起こってくる。あるいは農業の構造政策を阻害する、規模の拡大ができないとか、そういうものもある。あるいは品種の改良、労働生産性の向上という点にも、問題があるという指摘も現実にあることは事実です。また流通段階では、やみ米の横行が現行食管制度の矛盾というか、むしろ補完しているというか、潤滑油みたいなことがあるのも事実であります。  それから消費段階では、私は無農薬の米を欲しいといったって、無農薬の米なんかじかに農家から買うわけにいきません。果たして消費者のニーズに一〇〇%こたえているかどうかということになると、いろいろな改善はされてきたけれども、消費者の立場から見ればそういう不満はあると思います。もちろん生産者にしてみれば、減反に協力していながら生産者米価はさっぱり上がらぬじゃないか、何のための減反だ、協力したって意味ないじゃないか、こういう議論もあります。また、反当たりの収量を高く高くとれば、高くするような技術開発をすれば、それがさらに減反強化という形ではね上がってくるから、そういう努力をする必要はないんじゃないかという、農家の創意工夫を阻害するようなことも出てきている。  私は、ここで改めてお尋ねしたいのだけれども、かつて農業団体は、農協食管という構想を発表した。一方で経済界やマスコミの一部からは、間接統制という構想も現実に出されております。部分管理でいいじゃないかという話もある。私は、間接統制というのは、言われているほどいい制度だという感じはしないのです。戦前の経験から見て、間接統制をやったから米の流通がスムーズになって値段が安くなって、生産者の方もまた生産意欲がわいて所得がふえるというものじゃないんじゃないか。間接統制にしたから安定した価格で国民にお米が供給できるかと言えば、必ずしもそうではないんじゃないか。  また、財政の面から考えても、大豊作のときには、もちろん支持価格の価格の設定の仕方もあるけれども、政府がたくさん買い入れて価格の下支えをしなければならないということになれば、財政上の負担というのは今よりもひどいものになるんじゃないか。そういうふうに考えると、経済界やマスコミの一部から出ている間接統制という考え方には、私は非常に疑問であります。疑問であるけれども、私はとるべきではないという態度をとっているけれども、食管制度というものについて堅持、堅持という言葉に情緒的にぶら下がっている段階ではない。それは農家の方も、農協の大会に食管堅持、こうのぼりを立てて、そのことを叫んでいるだけで満足しているという時代ではもうなくなってきているのではないかという認識を持っているわけであります。  私は農林大臣に、間接統制についてはどう考えているのか。また、各界からいろいろな食管論が出ているけれども、むしろ今、農政審議会では、「八〇年代の農政の基本方向」のレビューをしておりますですね。それは水田転作の長期的な方向を考えているということなんだけれども、それだけではなくて、むしろいろいろな形での食管に対する議論をここでもしてもらいたい、農業団体も交えてオープンにしてもらいたい。そしてそれを明らかにして、農業者も生産者も消費者も、みんなで食管をどうしようか、食管を守っていく、食糧を安定供給するためにはどうしたらいいか、今のままでいくべきか、あるいはこういう面で改善していくべきか、いろいろな議論をしてもよろしいのじゃないかと私は思います。どうかその点についての御見解を大臣総理大臣にお尋ねをして、この問題の質疑を終わりたいと思います。
  125. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答えいたします。  間接統制につきましては、もう先ほどお話がありましたように、今日の食管法に移る前にもやはり同様のような時代がございました。また、よその国なんかでも、何か近い、これに似たような制度をやっているところがあります。ただその場合に、まさに今お話がありましたように非常に乱高下があるということ、そのために消費者なんかも非常にあれするし、生産者にも不安定であるということ、こういう問題がございます。そういうことを考えたときに、やはり食管法の適正な運用をしながら進めていくことが大事なんじゃないかな、そして乱高下だけじゃなくて、今お話しのように、非常に財政負担なんかを大きくしたときもあるということを考えたときに、間接統制というのはなかなか難しいなということを率直に私は思うところであります。  なお、この食管法について一番初めにお話があったように、いろいろなところで議論があることは私どももよく承知しております。ですから、そういった問題をタブー視するということはやはりよくない。むしろ、もし理解が深まっていないとしたら、理解を得るためにも議論をしていただくことが必要であろうというふうに思っております。そういう意味で、今お話しのとおり、農政審の方でもちょうど五十五年の答申、これのフォローアップを合いたしております。こういう中でももちろん議論されますでしょうし、これから生産者あるいは流通関係の皆さん方そして消費関係の方も含めまして、やはり幅広い論議というものは必要じゃないかな、そしてより適正なものにしていく必要はあるというふうに考えております。
  126. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私から簡単に。コスト逆ざや、これはまだ二〇%残っております。したがって財政制度審議会などでも、一層これが圧縮に努めること、こういう答申をいただいておりますが、食管制度への影響等々、これは最終的には農林水産大臣の権限にある米価決定等でございますけれども、種々相談をしてまいりたいというふうに思っております。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農水大臣と同じ考えております。
  128. 二見伸明

    ○二見委員 どうもありがとうございました。
  129. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  130. 米沢隆

    米沢委員 私は、今国会に課されました重要な課題であります国鉄改革につき、これ一本に絞りまして、総理並びに関係大臣の所見を伺ってみたいと思います。  御案内のとおり、去る五十八年の六月に発足をいたしました国鉄再建監理委員会は、その後、二年有半にわたる真剣な審議を行われまして、昨年の七月二十六日、民営・分割を柱とする国鉄改革に関する意見書を総理に提出されました。私は、この間の監理委員会の皆さんの御苦労に心から敬意を表するものであります。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  さて、この意見書を受けて政府は、国鉄改革に関する閣僚会議や国鉄余剰人員雇用対策本部を設置され、昨年の十月十一日には「国鉄改革のための基本的方針」、十二月十三日には「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針」を閣議決定されるなど、国鉄改革に関する国の方針を明確にされて、今関係各庁で法案作成作業も急ピッチで進むなど、国鉄改革もいよいよ端緒についたという段階にあります。  私ども民社党はこの数年来、真の国鉄再建を図ろうとするならば、もっともっと国鉄の経営責任が、あるいは政府の責任が、あるいは荒廃した労使関係の是正が厳しく問われねばならない、そういう観点から、たびごとに政府の見解をただし、その善処方を要請してまいりました。しかし、結果的には私どもの予測どおりといいましょうか、私どもの指摘した以上に国鉄の現状は最悪の状態となり、政府もついに民営一分割に踏み切らざるを得なくなったというのがこの間の事情ではなかろうかと思います。  私どもは、このたびの抜本的な国鉄改革が始まろうとするに当たりまして、これから問題になるでありましょう余剰人員対策、一長期債務処理問題、そして新会社は過去のしがらみから抜け出て、労使ともにさわやかに出発してもらわねばならない、そのための前提条件が満たされるかどうか、あるいは新会社には極力政府介入を排除して、国鉄が文字どおり民間会社として真の発展を期すことができるかどうか、それを保障する枠組みができるかどうか等々に政府が万全を期していただくならば、私どもは、言うべきことは言わしていただきますが、政府の国鉄改革の基本方針には基本的に賛成する立場であることを表明して、質問に移りたいと存じます。  まず第一に、基本的な問題からお伺いいたします。  御承知のとおり、国鉄が初めて単年度赤字を出しましたのが昭和三十九年、繰越欠損金が初めて発生したのが昭和四十一年、償却前の赤字となったのが昭和四十六年、この後も国鉄の経営状態はますます悪化の一途をたどって、五十一年、五十五年には債務棚上げが行われるなどして今日に至っております。このため、既に昭和四十四年から数次にわたり再建計画がつくられ、その実現のために努力がなされたにもかかわらず、すべて失敗に帰して、いずれも大きな成果を上げることができなかったのでありますが、いろいろとその理由はありましょうが、一体これは何ゆえだったのか、政府はこの責任をどう受けとめているのか、まず総理大臣にお聞かせいただきたい点でございます。  そして、ついにもはや従来の延長線上ではなく、現行制度の根底に横たわっている根本問題にメスを入れる抜本的な改革でなければならぬとして、民営・分割が提案されるに至ったわけであります。この点、監理委員会の説得力のある意見書も十分読ましていただきましたが、この際政府は、国鉄の経営破綻の根本的な原因をどのように認識されておるのか。それがまた、これから行われる国鉄改革にどのように生かされるのか。特にこの現状認識と過去の反省が、これからの改革の方向性や政府の腰の入れ方の決め手となりますから、明快にお答えをいただき、あわせて今後の国鉄改革に取り組む総理並びに運輸大臣の不退転の決意を示していただきたいと思います。
  131. 三塚博

    ○三塚国務大臣 かねがね民社党におかれては、塚本委員長を初め各位、国鉄の再建について多大の情熱と政策提言をいただいてまいりましたことに敬意を表するものであります。  ただいま御指摘の、何ゆえにということであります。それぞれ多くの問題点を抱えてきたと思います。御指摘のように、四十四年から数次にわたる改革、再建案を提示し、御承認をいただき、取り進めてまいったわけでございますが、総体的に見まして、改革を進める手順はよかったのでありますが、国会の承認を受けることに相当の論議の結果時間がかかり、対応が的確でなかったのではないかという御批判もございます。これは運賃の改定がさようなことであり、ついに五十二年、弾力化法ということで総裁に運賃の設定の権限を与えるということなどもしたわけでございますが、そういう点が一つ。もう一つは、国鉄が独占体制でありました時代から、航空機を初めモータリゼーション、さらにカーフェリーというような多様な交通手段が今日の経済、社会に実現をしたのでありますけれども、これに対応することがなかなか難しかったといいますよりも、一こまおくれの対応であったというふうに思います。  なぜ一こまおくれであったんだろうかということであります。これは、全く公社制というこれに原因をしておるということはっとに指摘をされておる点であります。それと同時に、全国画一的な経営でなければならないということでございまして、地域のニーズ、住民のニーズに十二分にこたえることができ得なかった、このことも国鉄離れを起こす原因に相なったというふう、に思います。わずか一分お待ちをいただきますれば列車の接続ができ得まして完全にリンクでき得たのにもかかわらず、それはそれで発車をして、一時間余待ちませんと乗りかえができない、こういう現実面もあり、昨今はそれは大いに直ったわけでありますけれども、そういう問題もあります。  さらに、労使の問題。これは、本来労使は労使の良識、自主的な判断で決められなければならないのでありますけれども、ややもいたしますと公労協に持ち出す、さらにそれが政治の場面に持ち出される、こういうことなどもあったやに思うわけであります。そういうことどもが複雑に錯綜をいたしまして今日の国鉄に相なった。一言で申し上げますならば親方日の丸。これは国鉄労使だけではございません、地域住民も親方日の丸であったというふうに思います。国鉄はつぶれるはずもない、つぶされるはずもない、公共性という名のもとにそのことがあったということが、深刻な実は再建への反省でなければならない。  国鉄が廃るということは、国民の足がアウトになることでありますから、この時点でやはり本改革は果敢に取り組み、取り進めてまいりますことが国鉄再生への道であり、さらに地域の住民のニーズにこたえ得る道であり、経済、社会の中におきまして十二分に国民の幸せに通ずることに相なるわけでございますから、今申し上げました数数の問題点を冷静に分析、分解をしながら、謙虚にこの改革に、そして、かつ結論をお出しいただきましたならば、そのことに取り進めていただかなければならぬのかな、こんなふうに考えておるところであります。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 運輸大臣が申し上げたとおりでございますが、一言で申し上げれば、従来の国鉄関係全般が親方日の丸で、そして甘えており過ぎた、こういうふうに民鉄、私鉄関係から比較すれば言わざるを得ない、そう思うのです。そういう背景には、一つは今のような時代のモータリゼーション云々に立ち向かうだけの機動的な、弾力的な経営方針が欠けていた。それも親方日の丸からもきているところもあります。あるいは、労使関係の不安定、不信感ということからきている面もあります。それから、マンモス国鉄になってしまいまして、このニーズの厳しい大衆の要望に合うだけの機動的、弾力的な経営ができなくなってきている、そういう意味でどんどん時代から取り残されてきておった、そういう面もあると思うのです。そういうような基本的な欠陥が出てきましたから、これは根本的に改革しなければ立ち向かうことはできないというので、監理委員会も抜本的なメスを入れた案を出してきて、我々はそれを妥当であると考えた次第であります。
  133. 米沢隆

    米沢委員 国鉄総裁、ここに私はある新聞のコピーを持っております。これに書いてある記事をリードの分だけ読ませていただきますと、これはことしの一月三十一日の新聞であますが、「二十八日未明、福岡市東区の国鉄鹿児島線馬出踏切(警手、遮断機付き)で、居眠りのため遮断機を下ろし忘れて死亡事故が発生した原因の一端は、交通保安係(警手)同士が、勤務交代を確認し合えないような〃ヤミダイヤ〃を作って、ルーズな勤務をしていたことにあることがわかった。しかも駅側がこの勤務交代時の連絡を確実にチェックしておらず、国鉄九州総局は、労使のたるみ勤務の疑いが強い、として、同種踏切六十一か所の再調査を始めた。」こういうような記事を読みました。果たしてここに書いてあることが事実かどうか、そのことをまず伺わねばなりませんが、国鉄は、御案内のとおり昭和五十七年春から今日まで八次にわたる総点検運動を実施されて、こうしたやみダイヤみたいなものは一掃されたというふうに聞いておうたのでありますが、総点検を始めてからもう四年間かかるのでございますが、いまだにこのようなやみダイヤみたいなものが蔓延しておるのでございましょうか、国鉄総裁の御答弁をいただきます。
  134. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  国鉄の職場の問題といたしまして私がねがね申し上げているところは、第一番には、職場規律の確立てございまして、およそ会社なり、あるいはどんな組織でありましても当然当たり前な、上司の指揮命令系統に従うというような職場規律は当然のことだと思いますが、残念ながら国鉄におきましてはそういう意味におきまして乱れがありました。これをまず第一番に是正する必要があるということで何遍も職員を叱咤激励しております。もう一つは、絶対に事故を起こさないという安全の確保でございまして、およそ交通事業に従事する者の最も重視すべきことは安全の確立てございます。この二点につきまして何遍も何遍も機会あるごとに私は各職員に力説をしてまいりました。  今先生御指摘の本年の一月二十八日の踏切の事故でございますが、今御指摘のとおり、踏切の警手が交代すべきそうした作業ダイヤであるにかかわらず、交代をしないでそのまま疲れのために仮眠をしたために、通行した人を死亡に至らしめた、こういう事故でございました。まことに今私が申し上げました二つの根本的な姿勢に欠ける、そういう事故でございまして、まことに遺憾であるというふうに思う次第でございます。  今まで八次にわたりまして総点検を実施しておりますが、こうしたことは今後二度と起こさないという姿勢で今後とも厳重に職員を指導してまいりたいというふうに思うところでございます。
  135. 米沢隆

    米沢委員 確かに当局の御努力によりましてこの種の職場規律等がかなり改善されておることは、私も認めるにやぶさかではありません。しかし、よくなりつつあるということと、あってはならぬことがいまだにあるということは別問題ではないか、そのように考えております。御承知のとおり、監理委員会の作業が始まりましてから、特に国民の国鉄改革に対する関心は日に日に高まっておりまして、同時にまた、国鉄労使の一挙手一投足に世間の耳目は集まっておると言っても過言ではないと思うのであります。こういうときにいまだにやみダイヤと言われるようないわゆるたるみによってこのような事件が発生することは遺憾のきわみだと言わねばなりません。  ところが、この一件だけではなくて、六十年の二月から六十一年の一月までの過去一年間の職員のミスによる事故件数という一覧表を国鉄の方からいただきましたけれども、これも大変なものでございます。運転事故、列車衝突が四件、列車脱線が九件、踏切事故七件、人身傷害三件、その他の事故二件、トータル二十五件。運転阻害、運転阻害といいますといろいろな条件がありますけれども、これは職員のミスによる運転阻害でありますが、車両脱線が三十六件、車両破損が二十九件、転轍機破損が四十五件、停車駅通過三十件、車両故障六十三件、設備故障三十四件、その他百六十八件、トータル四百五件。合わせて四百三十件。大きないわゆる事故が発生をしておるのでございます。  そこで、また昨年発表されました国鉄事故白書というのを読みますと、「寝すごしや飲酒など国鉄職員のミスによる衝突や遅延などは五十九年度五千百二十三件にも達したことが、」「「国鉄事故白書」で明らかになった。一日当たり十四件、しかも昨年の約四倍という異常な増加ぶり。国鉄は「ささいなミスまで報告するようになったためで、規律がゆるんでいるわけでない」と弁明しているが、再建途上のポカの多発ぶり、ちょっと気になる。」皮肉ってこう書いてあります。  そういう意味で、確かに当局の御努力によりまして職場規律も確立する方向にはありますが、依然としてこういうものが後を絶たない、こういう状態である限り国民の皆さん方の国鉄に対する信頼というものはかなり問題が起こってくるのではないかということを心配をするわけでございます。  長期債務の処理に関する方針を読ましていただきましても、最終的には今のところ十六兆七千億というものを国が処理する。これは何か国が処理しますから我々には関係ないという感じで受け取られる向きがあるかもしれませんが、最終的にはこれは国民の血税によって賄われる、こういうことでございますから、このような巨額なツケを国民に回しながらもいまだにこういう状況であるということは、まことにもって遺憾である、こう断ぜざるを得ないのであります。下手をしますと国民は国鉄を本当に見放してしまうのかもしれない、そういう危機感を持って、私は早急に国鉄当局は管理者も職員も、これは口幅ったい言い方ではございますが、職業人としての意識改革を急ぐべきだ、このように思います。  特に、新しく事業体が出発するに際しまして、このような職場規律が持ち込まれたのではかなわない、そういう意味で、本当に、六十二年の四月新しい会社が発足しますが、それまでに間に合うのだろうか、こういう危惧の念まで持たざるを得ないのでございまして、そういう意味でこれからどういうふうに国鉄は対処していくのか、六十二年四月までにはこんなのは一掃できるのか、どうか国鉄総裁の決意を聞かしていただきたい、こう思います。
  136. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今、先生、職業人としての意識という点を御指摘いただきました。全く私もそのとおりだと思います。これから改革に向かいまして新しい発想、新しい民間的な組織へ脱皮するという必要があるわけでございますが、その場合におきましても、そこに従事する個々の職員がいわば意識改革というものをする必要があるというふうに思うわけでございまして、そうした意味での職員の意識につきましては、私どもも毎日の点呼なり、あるいは学園の教育等なりいろいろな機会を通じまして職業人としての意識を十分に持たせるように今指導訓練をしておるところでございます。  その中におきます重点は、先ほど申し上げましたように、あくまで交通人としての最大の問題は事故防止であり、また当然職場の規律の確立てある。この二点に絞りまして今までもやってまいりましたが、今後とも一層努力をしてまいりたいというふうに思う次第でございます。
  137. 米沢隆

    米沢委員 もう一つ申し上げねばならぬことがございます。ここに「法律家のみた国鉄職場 危い!輸送の安全」というタイトルで、本年一月に総評弁護団、民主法律協会、自由法曹団などで構成されている国鉄職場実態調査団によって発行されたパンフレットがございます。これは国労大阪地方本部の協力のもとに延べ二百名の弁護士が国鉄の職場実態を調査し、その結果をまとめたものであるというふうに書かれております。  このパンフレットは、国鉄の分割・民営に反対することを目的につくられたもののようでありますが、その書いてある内容は、随分ひどいものです。いわく「人べらし、労働強化で乗客の安全に赤信号」「トイレにも行けない超過密勤務」「頭もボヤける連続勤務」「手抜き検査で、車両・レールが危い」「検査修繕業務の手抜きもひどい」、これでよく走っていると当局も感心、「人権無視の職場の専制支配」、その結果、「日航ジャンボ機事故のような事件さえ起りかねない」と書いてあるわけでありますが、これが事実だとするならば、これはまさにゆゆしき問題であります。  そして、このような環境のもとで余剰人員がつくられ、現在行われております出向、派遣は強要されたものだ、こう決めつけてあります。これは本当に事実なんでございましょうか。恐らく私は、事実を曲げておるか針小棒大に書いておるものだというふうに理解をしたいのでございますが、社会的に影響を持っていらっしゃる弁護士さんや大学の教授の皆さんがこういうことを言っているだけにこれは黙って見過ごすわけにはいきません。一言あってしかるべきだと思ってこれを取り上げておるのでございますが、今は民主社会でございますから、いろいろ理屈は何ぼでも言える世の中ではございます。しかし、こういうふうにまで書かれると、これは一体どういうことだろうか。本当に国民の皆さん方はこれを信じてしまって、分割・民営反対だという怒号の中に巻き込まれる可能性も十分あると思わなければなりません。これを読む限り、民営・分割になると国鉄の輸送が危険になってしまう、国民の皆さんは国鉄に乗りなさんな。こういうことが実際は書いてあるのでございまして、実際民営・分割、いわゆる私鉄の皆さん方にとっても失礼な言い方だと私は思うのでございます。こういう内容について国鉄総裁はどういう御感想をお持ちですか。  特に要員管理ですね。要員の設定等について私鉄に並んで国鉄も要員設定をされた結果、こういうことで要員等の余剰が出てくるというふうにつくられておるものと私は信じておるのでございますが、その点も踏まえてお答えいただきたい。
  138. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 これからの国鉄改革の最大のねらいは、いわば民鉄並みの効率ある業務体制にするということでございます。  そういう意味におきまして、各分野で徹底した合理化を今実施しているところでございますが、今御指摘の点のいわばポイントといたしましては、車両とか線路の保守の関係、あるいは電車運転手、機関士などの実際にハンドルを持って運転をされる方のそういう合理化によりまして安全性を阻害するのではないかというような心配、あるいはまた指摘というふうに受け取ることができると思います。  私どもは合理化の徹底はもう絶対必要ではございますが、先ほどから申し上げているとおり、その合理化の結果安全性に阻害があることはもう絶対許すことはできないというふうに考えておるところでございまして、いわば常に振り返り振り返りながら合理化の結果としましての経営効率の向上と同時に、安全性は大丈夫かということを確認をしながらこれを実施しておるところでございます。  一例を申し上げますれば、車両の保守等につきまして新しい検査体制を実施いたしました。これは検査の間合いといいますか、周期を延ばすことによる合理化でございますが、そうしたことにより車両の故障がふえているかといいますと、事実は決してそのようなことはありません。車両故障はかえって減少しているというのが実態でございまして、そうした心配なり御指摘は、現実我々としましては、十分に気をつけておる結果が事故に結びつくことはないというふうに確信を持って申し上げたい次第でございます。
  139. 米沢隆

    米沢委員 今回の国鉄改革の政府方針が、過去の再建策がうまくいかなかったということにかんがみまして、過去の延長線上の対症療法により改革を積み重ねていくということではなくて、公社制度や全国一元的運営に保伴う弊害といった問題にメスを入れて、結果として民営化と分割を一体として断行する、こういう方針に踏み切られたために、今日の国鉄改革についての論争の中心はまず民営・分割の是非にあると言ってもいいと思います。いわく、現行の公社制度は全国交通ネットワークの維持、全国一律運賃制の維持、シビルミニマムとしての輸送の確保という観点から、やはり民営化ではなく、公社制度の根幹は維持すべきだという論がある。また、特に百家争鳴の感がありますのは分割化の問題であります。いわく、分割によらず徹底した分権化で対応すれば足りる、いや、分割は是としても二つの分割がいい、三つの分割がいい、いや、監理委員会の言うような六つの分割が正論であろう。あるいはまた、いやなぜ六つに分割しなければならぬのか、果たして分割してやっていけるのか等々、種々の議論があることは御案内のとおりでございます。  社会党さんが出されました法案の中には、これは全国一社制で分権化という方針が述べられておりますけれども、全国一律的な組織で行ってきたことから生じる弊害を本当にこれで解消できるのかという、そういう意見も私は持っておりますが、しかし、既に政府としては国鉄改革の方針は分割・民営でいく、こう決めておられるわけでありますが、この際、監理委員会が分割・民営を言ったからそれを受けただけだという、そういう議論ではなくて、政府みずから分割・民営でなければならなかったということを確信を持って言える、確信を持ってこれからそのような方向で進めるんだという、その決意もこの際簡単に述べていただきたいな、こう思うのでございます。
  140. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは先ほども申し上げましたとおり、今日の国鉄の危機的状況をもたらしてまいりました原因を一つ一つ検討をいたしました結果、やはりこのままでは相ならぬだろう。と申しますのは、従前のパターンの中でまいりましたからこれだけの膨大な長期債務を抱えるように相なりました。いろいろ指摘されますような諸問題を提起をいたしてまいったわけであります。よって、ここで新しい装いの中で進まなければならぬというのは、政府も全力を尽くして実は検討をいたしてまいってきたところであり、監理委員会の答申が分割・民営化という基本方向を打ち出した。それを受けて尊重申し上げる。また政府・与党、これもそれぞれの論議の中で検討いたしました結果、現時点においてこれにまさるベターな再建策はなかろう、こういう結論に達した、こういうことであります。
  141. 米沢隆

    米沢委員 次は、地方交通線の問題であります。  国民の皆さんの心配のありかは、我々のこの地方交通線が分割・民営にされた場合一体どうなっていくだろうかという心配が私は大変大きいのではないかと拝察いたしております。  監理委員会の「意見」では、御案内のとおり特定地方交通線以外の地方交通線は幹線とともに旅客鉄道会社が引き継ぎ、地域の実情に即した運営による活性化、要員の徹底した合理化等に努めると指摘されておりますが、この考えに対しまして先ほど申しましたように、分割・民営化は地方交通線の廃止につながるという批判が出てきておることも事実である。同時にまた、確かに分割・民営になりますと利益優先になりそうだというのはみんなわかるわけでありますから、利益優先のためには地方交通線もかなり手厳しい処置を受けるのではないか、こう思うのは国民の立場からは当然のことのような感じがします。  しかし、現実は、現在の現行体制を国鉄が続けていく限り確実に、地方交通線はつぶれることは必至でございまして、そのあたりのはざまの中で国民はどう考えたらいいだろうか、こう心配されておるのが実情ではないかと思いますが、この点について運輸大臣の責任ある答弁をいただきたい。
  142. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えをいたします。  地方交通線第一次線、そして第二次、こういうことで協議を続けてまいりまして、第一次線につきましては、地域の協議の中で第三セクターあるいはバス転換ということでおおよそのめどが立ちました。第二次線区につきましては、ただいま協議が行われておるところでございます。  なぜ特定地方交通線がこのようなことに相なったかということは、御案内のように、五十五年、最後の改革案と言われました国鉄再建法の中で、地域の実態に合わない、いわゆる国鉄として機能することが難しいであろうという線区について、それぞれの基準を設けて地域協議に持ち込んだわけであります。このことが実はしがらみを絶って再建に向かう一つの方策であるということの提案であったわけでございますから、二次線、ただいま苦労をいたしておりますけれども、現状の分析と協議の中でこれの結論を得べく全力を尽くしていかなければならぬ問題である、このことが法律に明定をされました。そのことを推進する政府の立場である、かように思います。
  143. 米沢隆

    米沢委員 特に心配なのは、御案内のとおり北海道、四国、九州ですね。果たして分割・民営化が成ったときに、本当にうまくいくだろうか。特にそこが経営する地方ローカル線についてはまず最初に処分される可能性があるのではないか、そういうところが私は問題の焦点だろうと思います。いわゆる北海道、四国、九州の新しい事業体が、果たして地方ローカル線を抱えていけるかどうか、その点については運輸大臣はどういう御判断を持っておられますか。  同時にもう一つ。今、第三次線はまだ選定がなされておりません。今、法律の体系を見てみなければわかりませんが、新しい事業体は特定地方交通線を除く全線区、こうなっておりますね。したがって、第三次の選定されるであろう線については排除されておるわけです。しかし、第三次線そのものは、工夫の仕方によってはいわゆる地方交通線、特定でない地方交通線と同じようにやっていける可能性も私は秘めておると思うのですね。そういう部分については最初から除外するのではなくて、やはりくわえ込んでもいい、あるいは新事業体の自主的な判断で、是にするか非にするかを考えていく、それぐらいの余裕はあってしかるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  144. 三塚博

    ○三塚国務大臣 地方交通線というのは、生活路線であるという点で長い間地域と一体になって進んでまいりました。よって、この廃止を決めるということは大変血のにじむ思いをそれぞれの地域、また鉄道も、そういう意味で関係の議員各位、また政府もいたしてきたところでありますが、やはり不採算路線としてこれを廃止をしてまいりますことが国鉄健全財政への一つの道であろう。他に交通手段がないのでありますれば、それはそれとして維持してまいるわけでありますが、立派な道路が整備され、交通手段があります以上、そういうことに相なるということでございます。これから北海道、四国、九州というふうに、法律が成立をいたしますとスタートを切るわけでございますが、そういう中でそれぞれ三島が大変な心配をいたしておりますことも事実であります。  そういう意味で第三次線、保留線はただいま申し上げましたようなことで、協議の結果さようなことで結論を得られるよう全力を尽くさなければならぬわけでありますが、三次線の扱いについてはどうするのだ、こういうことであるわけでございますが、本件につきましては、既に選定、承認をいたしました特定地方交通線については、できるだけ早期にバス転換を完了するように推進をいたしておるところでありますけれども、仮に一部の線区におきまして分割時までに転換が完了しない場合には、別途必要な経過措置を設けることを現在検討いたしておるということでございます。第三次線のあり方、まさにそういうことで慎重に今後の具体的な検討を進めていかなければなりませんし、本件についても地域鉄道としてプラスになるのか果たしてマイナスになるのか、こういう点、委員指摘のことであろうと思うのでありますが、この点も再建法の中で三次線というあり方について明記をされておりますものでございますから、本作の今後の取り扱いをどうするのか慎重に検討をし、結論を得なければならぬ、かように考えておるところであります。
  145. 米沢隆

    米沢委員 同氏の心配のありかは、公社制度が外される、民間で利益優先になってしまったらかなり痛手をこうむるであろう、そのあたりが私は心配の大きな根源であると思います。そういう意味で、今後運輸省におかれましても公社の伝統を心に持ちつつも民間の手法で健全財政をつくっていく、そういう形で新しい事業体が発展されるように御指導いただきたいということをつけ加えておきたいと思います。  それから次は、国鉄事業再建に際して明確にしておくべき基本問題、また解決すべき問題という観点から具体的に政府の見解を承ってみたいと思います。  まず第一は、新事業体に対する政府規制、政府介入の問題であります。  政府の決めた方針によりますと、「旅客鉄道会社及び貨物鉄道会社については、できるだけ民間企業と同様の経営の自由・自主性を有することとなるよう、監督規制は必要最小限にとどめることとする。」こうなっております。今進行中の法案作業ではこれはどういうふうに具体化されていくのか大変関心のあるところでございますが、私は、今国を挙げて国鉄改革を断行しようとしていることの最大の目的は国鉄を解体することにあるものではない、鉄道事業を健全な活力ある企業体として再生させて、二十一世紀にわたって有用な国民財産として我々の子孫に手渡していくことにあると確信をいたします。  その観点からいいますと、鉄道事業を健全で活力ある企業体として再生させ、さらにその発展を可能ならしめるためには、何といいましても民営・分割後の鉄道事業に対する政府規制のあり方がどうなるか、これが最大のポイントでございまして、私は、政府規制は抜本的に撤廃するか、または撤廃に近い緩和をするか、必要最小限ではなくて必要最小小限にとどめる、こういうような法体系をつくっていかねばならない、そう思います。  例えば事業計画、収支計画、資金計画など経営の根幹にかかわるような基本計画を認可、規制するということになりますと、これは一体何のための民営・分割が、こういう疑問が出てまいりましょうし、また大事に対する政府介入におきましても、経営の自主性を与え、責任の明確化を図るとともに、民営化による活性化を図る観点からは、特殊会社に対する規制としては最小限にとどめるべきであると思います。つまり、例えば代表取締役を認可することに限るべきだ。ましてやこの国鉄改革の機に乗じて監督官庁の許認可権限の拡大を図ろうなどという考えはいささかもないというふうに判断をしていいのかどうか、この点について責任ある答弁をいただきたい。  同時に、やはりこのように政府介入を徹底的に小さくして、民営・分割化によって経営の自由、自主性を与えて、あわせてみずからの行動についてはみずから責任をとるという体制とすることが国鉄改革を成功させる大前提であるということを改めて確認をしておきたいと思います。  同様にまた、これまで極めて狭く制限されてきました国鉄の事業範囲につきましても、民営・分割化の趣旨からいたしまして、新会社の多様な事業展開が可能となるようにできる限り拡大、自由化をすべきだと考えますが、これは国鉄改革の中心であります総理大臣に私どもはぜひとも基本方針として明快な答弁を求めたいと思います。
  146. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 最初に、事務的な点からお答えを申し上げます。  先生おっしゃいますように、今回できます会社は、将来的には民営会社にするということで当面特殊会社として出発をするわけでございますから、それに対する政府規制というものは極力必要最小限度に抑えたいと私どもも考えております。そういう観点から、特殊会社でございますがゆえにございます種々の規制というのは、他の横並びの問題もございますが、その中では極力必要最小限度の規制にいたしたい、かように思っております。ただ、先生御指摘のような代表取締役の認可だけにするのかとか、そういう具体的内容につきましてはただいま準備をいたしております法案の中で明らかにいたしたい、かように思っております。  それから、新しい会社の事業範囲をできる限り自由にしろ、いろいろな事業が行えるようにしろという点につきましても、私どももこれからは幅広い経営を行って、その中で健全な会社として鉄道会社がやっていけるようにするということでございますので、そういう意味では極力幅の広い事業範囲を与えたいと思っておりますが、それにつきましても、例えて言えばNTTとかたばこ会社とか先例等もございますので、それらを参照といたしまして、ただいま法案の中で作業中でございます。
  147. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今総括審議官がお答えいたしましたとおり、完全民営化の方針のもとに法作業を急いでおるわけであります。よって、民営会社として行為能力が認められ、広範な判断ができる、そういうことでありますならば、できるだけ言われましたような介入を最小限にするということは当然であります。ただ、全額出資の特殊法人でありますので、国民の声を代表するという意味で最小限にこれもとどめるということで、御趣旨を体しながら、国民の声に耳を傾けながら、さらに監理委員会の答申を忠実に守りながら、尊重しながら本件の作業を今取り進めておる、こういうことであります。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の国鉄改革の基本的な部面は、これは臨調答申におきましてもそれから再建監理委員会の答申におきましても一致している点は、一つは経営の責任体制ということです。今までの親方日の丸主義から経営者が自己責任を持って経営を遂行していく、そのために民間的手法を大幅に入れなければいけないということ。  それから第二番目は、労使関係の同じく責任体制、労は労、使は使で、おのおの責任を持って相協議し得る体制をつくっていく、これがやはり眼目で、この両方をはっきり強く打ち出していけばかなり活力を回復するという考えが基本にある。  もう一つは、マンモス的な手の届かない管理体制、四十二万から三十六万となってまだ人間が多いと言われて、とても管理体制が及ばない、そういうような情勢をさらに地元に密着した小回りのきく分割体制に持っていこう、それが第三の眼目であります。  そういうような眼目は正しいやり方でありまして、その趣旨に沿ってできるだけ政府規制というようなものは減らして、民間の活力が十分に、民間の経営手法が思い切って発揮できるように事業計画、予算統制、人事面等において配慮すべきであると考えております。
  149. 米沢隆

    米沢委員 私は、問題は、当面国が一〇〇%出資する持ち株会社としてスタートするからという理由によって、役員の選任や定款の変更、事業計画などについて国が何らかの許認可権を持とうとするところに問題がある。電電、たばこ産業株式会社等々の議論を通じても考えますと、少なくとも今当局がお答えいただきましたが、横並びで考えるなどということは言語道断だ、横並びよりももっと政府介入を排除するという、そういう観点で法案作成に取り組んでもらいたいと思います。運輸大臣、ひとつお答えいただきたい。
  150. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま総理答弁されたのが最高基本方針であります。さように取り進めます。
  151. 米沢隆

    米沢委員 次は、長期債務の処理の問題であります。  御案内のとおり、監理委員会の「意見」によりますと、新経営形態移行に際して処理すべき総額三十七兆三千億にも上る長期債務のうち、清算法人、旧国鉄において二十五兆九千億円を処理することとし、用地売却等の自主財源を充ててもなお残る十六兆七千億については最終的に国民負担を求めざるを得ないとされております。この点に関しましては、去る一月二十八日の閣議決定におきましても政府の方針として確認されていることであります。この数字に「程度」という言葉がついたぐらいでございます。その閣議決定を読みますと、「長期債務等の処理のため、財政事情の許容する範囲内で必要な国庫助成を行う」とか「「旧国鉄」の資金繰りの円滑化を図るための所要の措置を講ずる」とか、そうしつつも「本格的な処理のために必要な「新たな財源・措置」については、雇用対策、用地売却等の見通しのおおよそつくと考えられる段階で、歳入・歳出の全般的見直しとあわせ、検討、決定する。」としか示されておりません。これは政府の決意表明という意味はあるにせよ、これでは監理委員意見の域を一歩も出ていないと言わざるを得ないと私は思います。今まさに国鉄改革に取り組もうとするときに当たり、最大の問題であるこの長期債務の処理に関してこのようなあいまいもことした、問題を先送りしようとする態度は断然許されるものではないと考えるのですが、運輸大臣の御意見を聞かしてもらいたい。特にもっと早く具体化すべきである。意見を交えて御答弁いただきたいと思います。
  152. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは大変大事なポイントであります。長期債務の問題、雇用対策がこの改革を進める大前提でありますことは委員御案内のとおりであります。よって、特に長期債務問題は国民の負担に帰する点、極めてこれも大きな問題であるわけでございますから、答申にもございましたとおり、自己努力において五兆八千億を上回る自己財産の処分によりましてまずそれを進めるというのが国民の理解を得る最大の道か、こういうことでありますから、この自主努力を見守るというのが一つございます。それと雇用対策、旧国鉄におきまして三カ年の計画の中でとり行うというふうにさせていただいておるわけであります。これももちろん法律が通りました上の話でございますけれども、そういう中でありますだけに、雇用対策、それと本件の処理のあり方、進行状況等を見てまいりまして財源措置を考えるということがぎりぎりいっぱいの形であります。そのことは漫然日を費やすということではございませんで、全力を尽くしながらこれに取り組むということでありますし、最小限雇用対策が三カ年という大きな枠組みの中でめどを立ててまいるわけでございますから、その時間的な範囲内において本方向が明快に相なっていくのではないだろうか、また、そのように取り組んでまいらなければならぬ。ただ、用地の処分というものは十カ年計画というふうにみなされておりますだけに、その最終結論は十カ年ということにも相なるわけでございますが、ここに明記されておりますのは、国の責任においてこのことをとり行うという明確な意思表明、これが行われておりますことで十二分にこれを御理解、御信頼をいただけると私は考えておるところであります。
  153. 米沢隆

    米沢委員 国鉄用地、今から売りに出されるわけでありますから、幾らになるか実際わからない。株式の売却も、これは時間がかかります。残りは国民負担の今のところ二八・七兆、こういうことがいわゆる処理の基本でございますから、雇用対策や用地売却等の見通しがつかないと最後の国の責任で処理する総額がわからない、こういう方程式になっていることはよく理解をするのでございますが、せめて具体化するめどぐらいは示すというのが責任ではないのかな、これが第一点です。  それから、これと関連して申し上げねばならぬことは売却可能用地についてでありますが、まず第一に、国鉄は最大限の努力をして早急に可能用地を生み出さねばならない。それは早くしなきゃならない。これは一体完了したのかどうか、これも聞かしてもらいたいのでございます。といいますのは、値段については、今からの売買ですから幾らになるかそれはわかりません。できれば五・八兆に上乗せするという方針が決まっておるだけでございます。しかし、問題は国鉄の売却見地がまだ後からぞろぞろぞろぞろ出てくるかもしれないぞ、けつのたたき方によっては。そういうことをいつまでもやっておると、これは問題だということをぜひ理解をしてもらいたいと思うのでございます。したがって、私は、国鉄には最大限売却用地を出してもらう、出してもらった以上はあとはまだ何かないかという議論はすべて一切切ってしまって、もう正確に政府としてそれを処理するという体制を早くつくってもらわなければ、この計画は一向にあいまいもことしていつもこれが紛争の種になるのではないのかなというそんな感じで申し上げていることを理解していただきながら御答弁をいただきたい。
  154. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御説ごもっともでございます。  この件につきましては、今国会に提出を予定しておりますところの国鉄改革法関連八法案に相なるわけでございます、地方税の分を入れますと九法案に相なりますわけでありますが、これらを含めまして審議が行われる。審議が行われます以上、その時点で御審議の重要なデータとして御検討賜る、こういうことが政府として大事な対応の仕方でございますものですから、それに間に合いますように今全力を尽くしておりますし、その時点で作業の結果に基づきまして、値段の点はお許しをいただきますといたしまして、今御指摘のような面積、箇所という問題について御提示を申し上げられますように全力を尽くしておる、こういうことであります。
  155. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今お話のありました国鉄用地が後から後から出てくるのでは困る、それはもうそのとおりだと思います。既にこれは総務庁においても行政監察局など国鉄と相談をしながら用地について判断をしてきたところでありますが、これは今後といえどもやはり国鉄と密接な関連性のもとにこういった余剰土地の発見、また供出に努めてまいりたい、かように考えております。
  156. 米沢隆

    米沢委員 みんなが興味を持っておるといいますか関心がありますのは、「新たな財源・措置」という解釈でございます。ここには「「新たな財源・措置」については、」「歳入・歳出の全般的見直しとあわせ、検討、決定する。」と書いてありますけれども、一体これはどういう意味なのか。例えば、歳出入の見直しの結果、国の一般会計から出せる場合は出しましょう、しかし、歳出歳入の見直しの結果それが出せないとすれば増税でございますよ、こういうことを意味するのかどうか、この際具体的な処理の方策を明確に国民の前に示す必要があるのではないかと思います。
  157. 三塚博

    ○三塚国務大臣 「新たな財源・措置」こういうことでございますが、これにつきましては、ただいま御指摘のように、雇用対策や用地の処分、それと一般会計、歳入歳出の状況を見ましてその時点で判断をする、こういうことでございます。  今御指摘のように、新税を考えておるのか、こういうことでございますが、昨日も御答弁申し上げましたとおり、現内閣におきまして、中曽根内閣におきましては、まさに「増税なき財政再建」というものに全力を尽くしておるわけでございまして、それによらない手法によってこのことを進めてまいらなければならぬ、こういうことであります。
  158. 米沢隆

    米沢委員 大蔵大臣、そういうことでよろしいですね。
  159. 竹下登

    ○竹下国務大臣 現内閣においては、いわゆる国鉄再建税などというような新税によることを現在検討しておるようなことはない、こういうふうな御趣旨に承っております。
  160. 米沢隆

    米沢委員 年間このところ六千億から七千億ぐらい国の方から国鉄に助成金が出されておりました。今最終的に国の責任で支払うという十六・七兆円、これは今から土地の上積みがあったり株が売れたりしたらぐっと圧縮されるわけでありますが、この十六・七兆円を大体二・三十年かけて払うとすれば、元利合計計算をしますと大体一兆三千か四千億ぐらいになるのだそうでございます。しかし、この十六・七兆円そのものが圧縮されますから、一兆三千億、四千億が実際は一兆円以下ぐらいの金で済むかもしれない、またそうなるようにしてもらいたい、こう我々は思っておるのでございますが、そういうことであるとすれば、例年大体六千から七千億払っておるのでございますから、このままずっと、一時新税だとか新しい財源だとかおどかすことなく、これからも国がこの分については国の責任で払っていけるよというようなことになる、その可能性の方が高いというふうに見ていいですね、大蔵大臣
  161. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これからのことでございますが、例えば前国会で御議論いただいた共済の問題もございますが、あの際も、いずれにせよ理屈のつくものは一般会計から出さなければいかぬだろう、こんな感じでありますが、それまではまたいろいろな工夫もしてみよう、そういう一環からいたしまして、今米沢委員のお言葉をかりれば、上乗せ分も期待が出てきたといたしましてぎりぎり詰めてみてどういうことになるかというのは、まさにあの閣議で議論をして決めましたとおりでございまして、この歳入歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定される課題であるということの一語に尽きるではなかろうかというふうに考えております。安易に、大体七千億ぐらいはずっと出しているから、あれはもともと出したものだからそのままで続ければいいわというようになっちゃいかぬなと思って心を引き締めておる、こういうことであります。
  162. 米沢隆

    米沢委員 参考までにお聞かせいただきたいのですが、監理委員会の方来ておられますね。――最終的に国民負担を認めざるを得ないとした「新たな財源・措置」については、大体どういう概念でこんな文章を書かれたのですか。
  163. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会といたしましては、先ほど来お話がありますように、最終的に十六・七兆というような巨額の長期債務を処理していかなくてはいけない。それにつきましては、今回の国鉄再建策を実効あるものとするために政府において責任を持って対策を講じてもらう必要があるというような認識に立って提言しておるものでございます。ただその内容を、具体的にどのような財源、措置を講ずるかというような点につきましては極めて専門的な事項でありますので、監理委員会といたしましては、今後政府において検討していただきたいというように提言したものでございます。
  164. 米沢隆

    米沢委員 できれば「増税なき財政再建」、言葉どおりにはいっておりませんが、増税に頼らないということを前提にして極力汗をかいていただきたいと注文をつけておきます。  それから、けさの新聞を読んでおりますと、営団地下鉄民営化の問題で運輸省首脳が語ったというふうに書いてありますが、この記事を読みましても、営団地下鉄を民営化しなければならぬ、「民営化する際には、国鉄の出資分に見合う株式を売却し、長期債務にあてる考えである。」こういうふうに書いてあります。ここに償還財源が一つふえたのでございますが、これは大体そういう方向だと思っていいのですか。
  165. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 御承知のように営団の株は国鉄の出資が過半でございます。したがいまして、それは国鉄の一つの資産といたしまして今回の改革の際に何らかの形でその処分を決めなければならないということでございます。その際、本日新聞にいろいろな記事が出ておりまして必ずしも一致をいたしておりませんが、何らかの形において今回の改革の際にその株をどうするかということを決めなければいけないことは事実でございますが、その内容につきましてまだ具体的な結論が出ておるという段階ではございません。営団の持ちます交通の中に占める性格というようなものなど、諸般の事情を判断しながら現在政府部内においてその処理について検討いたしておるところでございます。
  166. 米沢隆

    米沢委員 それから、次は用地売却に関する問題でございます。  さきに触れましたように、長期債務の処理方策の閣議決定におきましては、国鉄用地を旧国鉄に移して、その売却により債務償還財源に充てるために監理委員会試算値五兆八千億にできる限り上乗せを図ることとされております。国民負担軽減の観点からこれは当然なことであり、国鉄は最大限の努力を重ねて努力してもらいたいと思います。  しかしながら、売却用地をできるだけ取ってしまって、だから償還財源の方に取り上げてしまって、必要最小限の範囲で事業用地を保有すべきだ、新事業体はそういう運命を担わされておるのでございますが、一方においては新会社の経営の健全性の確保あるいは将来の発展の可能性の余地を残して経営の活性化を図るという観点から見ますと、ただ新事業体から取り上げればいいのではなくて、新事業体の将来に向けて発展できるような、そのために使う用地ぐらいは残してやらないとかわいそうではないか、そういう考え方は実際なかったのかどうか。  それから、同時に国鉄総裁にお聞かせいただきたいのでございますが、やはり将来のことを考えて、売却用地として提出したいのはやまやまだけれども、できるだけ将来のことを考えて、何かやるときにまた新しく土地を買わねばならぬということは大変おくれることにもなりますから、できるだけ新事業体の保有地は将来のことを考えて確保したいと思っておったというふうに理解をしていいのか。現に、数字については定かになっておるかどうか僕もわかりませんが、四百五十五ヘクタールが新事業体の保有地になっておりますが、この土地で新しい新事業体はこれから活躍していくということとなるのでございますが、それでいいのかどうか、そのあたりの議論は詰められて四百五十五だけが新事業体の保有ということになったのか、そのあたりの経緯について運輸大臣と総裁にお答えいただきたいと思います。
  167. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 今回の民営・分割に伴いまして、基本的には私ども、新しい会社というのは健全な経営ができる会社ということで、将来とも健全な経営ができる会社であるということが必要であるというふうに思っております。ただ、その反面、三十七兆三千億というふうに監理委員会から御指摘のございますような膨大な債務というものにつきましては、これを何らかの形で極力国民の負担が少ない形で処理をしなければならないという要請がございます。したがいまして、この新しい会社を健全にさせていくためには、先生御指摘のように若干ゆとりのある用地というようなものを持たせて、その範囲内においていろいろな事業が幅広く行えるようにするということも一つの要請でございますが、その反面、ただいま申し上げましたように、極力国民負担を少なくするためには、できる限り多くの用地を売却してその返済に充てなければならない、二つの相反する非常に難しい要素を調整しなければならないというふうに考えております。そのような観点から監理委員会の御意見では、事業用に必要な用地、必要最小限の用地というものを新しい会社に持たせる、その余のものは売却に充てる、こういう基本的な方針が示されておるわけでございますので、そのような形で処理をしていくということを基本にいたしております。  ただ、新しい会社がそれでは関連事業等の余地がないではないかということでございますが、事業用の用地として持ってまいりますものにつきましても、現在の国鉄はまだ完全に有効な利用がされておるということでもございませんので、その持っていきます資産の範囲内で関連事業その他については十分いろいろなことはやる余地はあろう、かように思っておるわけでございます。
  168. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今運輸省からお答え申し上げましたとおり、基本線といたしましては、新しい事業体が売れる土地がたくさんあればそれだけ経営は楽になると思いますけれども、しかし大命題といたしまして、売れる用地はできるだけ売却をし、それを債務償還に充てまして、国民の負担をできるだけ少なくするというのが基本原則でございます。したがいまして、我々は新会社に対しましてはもう必要最小限度のものにとどめるというふうにすることもやむを得ないというふうに考えておるところでございますが、ただ、今棚橋審議官から申し上げましたとおり、新会社におきましても、例えば駅、駅舎、駅ビル等、あるいは電車の基地の上空とかというような、いろんな創意工夫を凝らしますと、これからの関連事業で十分高度利用、活用が可能になるものがたくさんございます。そういう点に着眼いたしまして、大いに関連事業の活性化を図りたいというふうに思っておるところでございます。
  169. 米沢隆

    米沢委員 国鉄総裁はやはりそういう答弁をせざるを得ない心境はよくわかるのでございますが、果たして本当に新事業そのものがこれから発展していく場合に、根こそぎとられたという感覚を本当は持っていらっしゃるのじゃなかろうか、そういう感じが私はするのでございます。  この前、冒頭のこの予算委員会でもめましたときの朝日新聞なんかによりますと、「交渉記録によれば、国鉄は昨年一月の基本方策で、大規模用地七十七カ所を含めて千九百三十ヘクタールを売却可能とし、売却価格を三兆二千四百億円とした。監理委は「少なすぎる」と再検討を求め、国鉄は四月から六月の間に、基本方策分に加え、中央鉄道学園グラウンドなど百七十ヘクタール」(五百八十億円)を積み上げた。しかし、監理委はこれでも納得せず、さらに大量の用地をひねり出すよう指示。」こうした時期に総裁は交代された。そして国鉄は監理委員会に大きくその以後譲歩するようになった。「具体的に、本社、八重洲北口、南口、大阪管理局、総裁公邸、品川地区、武蔵野操車場、秋葉原など計四百五十六ヘクタールを新たに提示」して、最終的には大体二千六百ヘクタール、五兆八千億円で決着した。  この交渉記録は見たようなことが書いてありますから、事実かどうかわかりませんが、大体このような動きの後に、現在の新事業体にはわずか四百五十五ヘクタールしか残らないということになっておるわけですね。そういう意味で内心じくじたるものがあると思いますが、でき得る限り売却用地は出さねばなりませんが、しかし、新事業体が生きていくために、余り無残に取り上げることはやめてもらいたいということを、ぜひ注文をつけておきたいと思うのであります。  同時にまた、この株価がやはり償却財源になっておりますが、株だって、何にも資産がない、土地もない、鉄道が走っておるところだけしか資産でないというと、これは株価に反映しますね。あるいはまた、将来の発展性という意味でも、これは有力な土地があって、その土地を利用することによって新しい事業の展開ができると思ったときに初めて株は上がるのでございますから、単に土地を売ってそこで償還を何しろうまく達成するというのではなくて、株価の将来の含み資産みたいなものもあるわけでございますから、やはり新事業体としてはもっと発展性のある、有効利用できる土地もある程度与えておくことが、将来の株価のプレミアムがつく意味では大変大事なポイントではないかということを、ここで申し上げておきたいと思います。  それから、売却に当たりましては、国民負担軽減の観点からいたしましても、いやしくも疑惑を招く事態に陥ることのないようにするという意味で、公正かつ効率的な方法とすべきである。そのために公開競争入札等の方法によるべきだと運輸大臣は思っておられますが、私も賛成です。しかし、具体的には、売却の仕組みが一体どうなるかということが一つ心配であること。  もう一つは、問題の、よく指摘されておりますように、これだけの多くの用地が放出されるわけでありますから、土地の価格にどう反映するかというのは、やはり心配になるところでございます。特に売却可能地として出されておるところは、地方都市、地方自治体の感覚からいたしますと、それを中心にして、中核として都市開発ができるという大変魅力のあるものでございますから、自治体としては余り土地の価格が乱舞するようなことはやめてもらいたいという注文を持っておられると思います。その点、自治大臣に御見解を聞きたいと思いますが、同時に、公開入札であるとはいえ、余りにも高い価格で行ったり来たりいたしますと、これは国土全体の土地が上がっていくということにもなりかねません。そのあたりについて、国土庁長官としてはどういうふうな感覚でこの売却の動きを見ておられるのか、運輸大臣と自治大臣国土庁長官、三人に見解を求めます。
  170. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答えいたします。  国鉄百姓のため、収入の確保ということの必要性はよく理解できます。そこで、公正を確保するため、一般競争入札を基本とする適正な時価により売却されるものと理解いたしております。しかし、地価の著しく高騰している地域におきましては、売却がこの傾向に拍車をかけることを懸念もいたしております。このため、このような地域に所在する用地につきましては、あらかじめ地元の自治体等と協議をいたしまして、利用計画を定めた上での売却をするようにいたします。騰貴を招かないための用地の利用等について、まず条件をつけることでございます。それから次に、売却の時期について考慮いたす等、適切な配慮を強く希望いたしておる次第でございます。  以上でございます。
  171. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 御指摘のように、国鉄の処分対象となる土地は、特に地方都市におきましては、その都市の中心地に位置する場合が多いことが予想されます。したがいまして、都市の再開発等の関連の問題も多くなると思いますが、いずれにいたしましても、地方公共団体の土地利用の計画等、十分に協議をしながら、これが適正に処理されることを希望いたしております。
  172. 三塚博

    ○三塚国務大臣 国民の御負担を最小限にお願いを申し上げることは国鉄改革、再建の極めて重要な要素でございます。  三十七兆円という大変な債務を処理してまいらなければなりません。貴重な財産でございます。しかるがゆえにこの財産の適正な販売ということが要請されると思いますし、御指摘のように公開入札方式を申し上げてまいりましたのもさようなことでございます。  ただいま両大臣から言われました地価への配慮、公正な処分の方式、こういうことでございますが、それらをすべて勘案をするとは申しつつ、同時にこの長期債務の処理にできるだけこのことが資することのでき得ますように、この売却については適正価格で円滑に処理される必要があるということでございます。
  173. 米沢隆

    米沢委員 もう一つ言っておかねばならぬのは、これは大蔵大臣に御答弁いただきたいのでありますが、これは公明党の矢野書記長も先日質問の中で取り上げておられましたが、いわゆる法人が利益を土地やビルの資金に充てて結局赤字法人にして節税対策をする、これはやはり重要な問題だと思いますね。欧州、アメリカ等にもかなりの事業体がありますが、六割近くが赤字法人だというのは日本だけですね。その分だけ節税が進んでおると見なければなりません。特にこのように国鉄の財産である、国民の財産であったものを売ってこれから十六・七兆という金をつくる、補てんしていかねばならぬというときに、国鉄用地の売却、売買を利用して法人が利益をそこにほうり込んで節税をやっていくということだけは、これは許してはならない、こう思うのでございます。そういう意味で、大変難しいことではありますけれども、節税に名をかりてこの国鉄用地の売買を利用して法人が税を逃れるということだけは一切ない、また税務当局もかなり大きな目でそれを監視し続けるということをぜひ約束してもらいたい。
  174. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる赤字法人の税制の問題は六十一年度答申にも実は指摘されて、いささかの措置をとっておりますが、今の国鉄用地との具体的な問題、御趣旨はよく私どもも理解できることでございますが、若干技術的な問題もございますので、主税局長からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  175. 水野勝

    ○水野政府委員 赤字法人の問題につきましては、前々から問題意識を持って私ども検討をしておるということでございまして、今後とも税制調査会に抜本的検討の中で審議をお願いしておるところでございます。  具体的に、利益隠しのために土地を取得して、その利子の損金算入等を利用して赤字にしているというあたりを問題といたしまして対策を講ずる、これは先般総理からもそういった点の検討を指示しておるということで、私どもも勉強をいたしておるところでございます。  ただ、技術的には、そのときにも出ましたように、利益隠しのために土地を取得し、そのために利子を払い損金をふやして赤字にしておる、どういう場合がそれに該当するかどうか、これはなかなか難しい問題ではございます。そうした問題、難しい問題はございますが、なお私どもとしても鋭意勉強はいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。さらに具体的に、そうした場合におきましてどのような経理操作が行われ利益隠しになっているかどうか、これらの点につきましては執行面からも十分に留意をしてまいりたい、このように考えております。
  176. 米沢隆

    米沢委員 次は、新幹線保有機構の問題についてお伺いします。  まず最初に、これは事務的な問題でありますが、新幹線保有機構による収益格差是正の仕組みは一体どうなるか、リース料の計算の仕方はどうなるか、三つの会社への分配の仕方は一体どうなるか、それからこのリース料等は見直す場合があり得るのか、この四点について事務的にわかりやすく説明してください。
  177. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 新幹線保有機構は、監理委員会の御意見にございまして、新幹線を一括に保有いたしましてそれぞれの旅客会社に貸し付けるというものでございます。その際に、新幹線というのが大変収益が上がっておるというような観点から、通常の資産につきましては、新しい会社に原則事業用資産は簿価で引き継ぐということにいたしておりますが、この新幹線につきましてだけは再調達価格という一種の時価に近い価格というもので高く評価をいたしまして、これを貸し付ける、そしてその全体を貸付料の中で回収する、そういう仕組みでございます。  それから、貸付料の算定でございますけれども、貸付料の算定につきましては、これも監理委員会の御意見等を勘案いたしまして現在詳細検討中でございますけれども、基本的には新幹線の残存の価格というものを一定期間内で均等に償還していくというような考え方に立ちまして、それを各新幹線の利用度、それから各新幹線の持っております施設の整備程度、そういうようなものを勘案いたしまして一定の基準を設けて、それに従って各旅客会社から貸付料として徴収するということで現在検討中でございます。その基準につきましては極力これを明確に法定をいたしまして、技術的に計算をすれば貸付料が自動的に出てくるというような形でこれを算定いたしたいというふうに考えております。  またその貸付料というものは、先生御指摘のように、今申し上げましたような基準で算定をいたしますと、例えて言えば利用度というようなものにつきましても若干の変動がございます。そういうような要素もございますので、一定期間に定期的に見直しをいたしまして不公平のないように処置をいたしたい、かようなことで現在検討を進めておるところでございます。
  178. 米沢隆

    米沢委員 リース料の計算の仕方等々まだ具体的に数式を見ておりませんからわかりませんが、要するに心配なのは、新しい会社になってからそこで一生懸命生産性を上げて利益を上げたらそこが損をするようなリース料の設定の仕方だけはやめてもらいたいということをひとつ確認させていただきたいと思いますが、結構ですね。
  179. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、その貸付料は新幹線の残存の価値というものを一定期間内に均等に償還するという形で算出するものでございますから、新幹線がその後利益が上がったからといってその貸付料の総額というものが変わるというものではございません。そういう意味で、収益が上がったからすぐ高くなるというものではないと思います。ただ、利用度その他を勘案いたしましてこれを算定いたしますから、経営努力した結果利用度というものが上がりますと、見直しの際に若干その配分が変わるということはあり得ると思います。ただ、それは全体の中で利用度を案分いたしますから、若干高くなります部分というのが、その利用度が上がることによって得る収益と同じになったりそれを上回るというようなことはない、したがって、そういう意味で経営努力したものはそれなりに反映されるということであろうというふうに考えております。
  180. 米沢隆

    米沢委員 それからもう一つの問題は、この新幹線一括保有方式の趣旨は、利用者の負担の適正化を図るとともに旅客会社の収益を調整し、経営基盤の安定を図るものである、こういうふうに理解をいたしております。その趣旨からいたしますと、一括保有方式の対象となるのは現在営業中の四新幹線に限るべきである、これは確認できるかどうか。もし将来、現在工事認可申請中の整備新幹線がぞろぞろとまた動き始めておりますが、ここらが建設されるたびごとに整備新幹線の建設コストをリース料に振りかえてしまうと、これは新事業体にとってはたまったものではない。したがって、一括保有方式の対象になるのは最初から最後まで現在の営業中の四新幹線に限るべきだというふうに理解をしていいかどうか。同時にまた、それは条文化の隣どういうふうに明確にされるのか。また、旅客会社の収益調整のための機構であるとの趣旨に照らせば、当然のごとくこの新幹線保有機構には建設工事もできますよなんということが後からついていくことはないだろうなということを確認しておきたいと思います。
  181. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、この新幹線の一括保有方式と申しますのは、新幹線を一括して保有しこれを旅客会社に貸し付けるということでございまして、したがいまして現在検討しております対象として、整備新幹線というものはまだでき上がっておりませんので、そういうものが対象になるということは当然ないというふうに考えております。  それから、新幹線保有機構、新幹線保有のための組織というものがそういう意味で建設能力を持つというような点につきましては、先ほど申し上げましたような目的でこの組織をつくりますので、当然その中身というものはその新幹線を一括して貸し付けるということにふさわしい業務内容になるということが当然だというふうに考えております。その範囲内において現在立法化の作業を進めております。それが法制的にどのような形であらわれるかということにつきましては、法案の中身でございますので、ただいま審議中でございますので、法案の提出の時点において明らかにさせていただきたい、かように思っております。
  182. 米沢隆

    米沢委員 運輸大臣からも明快なお約束をしてもらいたい。
  183. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今、棚橋審議官が申しましたとおりでございます。
  184. 米沢隆

    米沢委員 新幹線の保有機椎が新しく整備される新幹線あたりで利用されたら、これは元も子もなくなりますから、信用も失いますし、新事業体そのものもやっていけない状態になるかもしれませんので、うるさいようでございますが、その点についてはぜひ分離するという発想で、将来、未来永劫にそういうことでやってもらいたいということを注文をさしていただきます。  その際、やっぱり心配になりますのは、自由民主党というのは大変大きな、柔軟性のある、何をするかわからない、そういう政党でございますから、そういうことを確認いただいた上でも何かやっぱり心配なんですね。御案内のとおり、整備新幹線がまたぞろぞろと動き始めておりますが、我我の心配を杞憂であるというふうにするためには、この新しい整備新幹線の運営がどこでなされるのか、建設がどこでなされるのか、結局新事業体とは全然関係ありませんよという形をつくってもらわないとこれはちょっと心配でたまりません。そういう意味から、今財源等についていろいろ検討がなされておる、こう聞いておりますが、一体それは、整備新幹線の財源はどういう方式で調達するようになりつつあるのか、あるいは建設、運営主体の問題は一体どうなっているのか、そのあたりをちょっと関連して御説明いただきたいと思います。  三塚運輸大臣は、財源の方は第三セクター方式でどうかというような話だそうでございますね。同時にこの建設、運営母体、これは御承知のとおり今まで鉄道建設を一手に引き受けました鉄建公団は六十二年の末、青函の工事が完了した時点で他と統合の対象になっておりますし、国鉄は分かれてしまいますから、そういう意味で建設の主体、それに関しまして運輸大臣はあるところで、新技術集団をつくって整備新幹線については対処したいというようなものを発表といいましょうか、コメントされたやに伺っておるのでございますが、この新技術集団の設置というのは一体何を目的にしてつくろうとされておるのか、鉄道建設公団の二の舞になるようなことはないと思うけれども、一体どうなのか、そのあたりについてあわせて総合的に御答弁いただきたい。
  185. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま新幹線保有機構のお話から新技術集団へとお話が展開に相なりました。棚橋審議官からもお話しのように保有機構は保有機構でございますから、これに整備新幹線の建設の機能を付与するということは今次改革路線から離れるものでありますので、さようなことはとるつもりはございません。よって整備新幹線、自由民主党の多様性、御指摘の中でお触れになられました。整備新幹線の問題は既にこれまた法律では決まった、手続も整備新幹線ということになったわけでございますが、臨調答申、「当面見合わせる。」ということでございました。しかし地域の切なる要望の中で、また国土総合開発の観点から、盛岡以北、北陸新幹線あるいは九州新幹線、非常に熱い、これは自由民主党というよりも地域を挙げての熱い要望が展開をされてまいりましたことも御案内のとおりであります。しかしながら過重な資本投資が国鉄再建の足を引っ張ってまいりましたことにかんがみまして、国鉄の負担に帰するような形では整備新幹線の建設はやるべきではない、これはまさに政府・与党の方針でございます。さようなことで本件に取り組んでまいったわけでございまして、御案内のように整備新幹線に関する検討委員会が設置をされ、財源のあり方あるいは事業主体、運行の主体、並行在来線のあり方等を含めて結論を得た上で、五十七年閣議了解を変更して行う、こういうことで取り決めをいたしておるわけでありまして、しからばその事業主体をどうするのか、こういう御指摘であります。  本件は、鉄建公団は青函が開業時化との統廃合を考える、こういう閣議決定もございますものでありますから、これとの関連で、そのままそれに機能を持たせるべきなのか、それとも国鉄の技術陣というのは百十三年、日本国有鉄道の今日を支えてきたすばらしい技術集団であります。リニアモーターをつくり上げた、新幹線をつくり上げた、まさに世界に冠たる技術集団でありますことも御案内のとおりであります。これが散逸をしてまいりますことは決して国民の利益にかないません。よって、この機能を持ち続けることも大事ではないだろうか。国鉄の負担に帰するべき形ではない形で国の意思が決定に相なりまするが、それを担当する技術集団が必要であるというこういう構想の中で実は御質問を受けたものでありますから申し上げたわけであります。  そういう点で六十二年四月の改革に向けて事柄が進んでおるわけでありますから、片や鉄建公団のあり方、片やこれだけの技術集団をどのように保持し、国益のために、また世界から新幹線、リニアモーターについての引き合いその他いろいろな御要望がございます。これに国際協力という観点でおこたえをする意味におきましても、これをどのように保有をするのかという点で、今後真剣に国鉄の意見、鉄建公団の意見、さらに各界の意見、また各党の御意見なども賜りながら方向づけをしてまいりたい、このように考えております。
  186. 米沢隆

    米沢委員 次は、労使関係の問題でございます。  特に、これは職員が現在の国鉄から新しい事業体へ移るときにどういう承継方式がとられるのか。御案内のとおり、新事業体が成功するか否かは、いろいろと条件はあるかもしれませんが、最大の成否を握るのは労使の安定という問題でございます。冒頭申し上げましたように、その意味では新事業体は過去のしがらみから抜け出て、労使ともにさわやかな気持ちで新しい事業体を担ってもらいたい。このごろよく「やめるも地獄、残るも地獄」なんてそういう鬼気迫る言葉がはやりつつありますが、私はこれは間違いだ。やめる人も残る人も次の新しい職場に向けて希望を持って出発する、そういう体制をつくっていただくことが労使の安定のための最大の条件ではないか、そういう気持ちから御質問をさしていただきますが、私はやはり、国鉄経営を悪化させてきた原因はいろいろありますが、国鉄の労使関係、そしてちょっと甘い労働条件が挙げられるのではないかと思います。  そういう意味で、先ほども申しましたように新しい事業体に生まれ変わるに際しましてこれらを刷新できなければ、新事業体は発足しても早晩失速するであろうということは明らかでございます。「新しい皮袋には新しい酒」と、こう言いますが、そういう意味で今の国鉄から新しい事業体に彩られる方は、ただそのまま人間が移ったというものだけではなくて、精神的に新しい雇用形態で雇われた、そして今度は新しい就業規則によって労働条件は決定されていく、そういう形に名実ともに私はそんなものにしていかなければならないだろう。そのあたりをどういうふうに運輸大臣考えられるのか。  同時に、特に労働条件等についてはやはりうるさい問題だろうと思います。既存の条件は少なくともできるだけ既得権として認めてやらねばなりませんが、しかし、新しい事業体がこれから発展していく場合に、地域の実情に応じた労働条件というものを考えていかないと、また画一的な賃金ということで経営にしわ寄せが来るという可能性も実際はあるわけでございます。そのあたりをどういうふうに運輸大臣考えておられるのか、この二点について御見解を求めたいと思います。
  187. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生御指摘のように、新しく発足いたします経営形態が今後効率的に経営をしていけるかどうかということは、その新しくできます労使間にどのような、労使間が将来どのような労働契約、労働条件のもとで会社を経営をしていくかということが大きな問題の要素の一つであるというふうに考えております。そういう意味で、スタートの時点においてこれをどうするかというのは大変重要な事項でございます。したがいまして、これにつきましてはただいま準備をいたしております法案の中で、職員の引き継ぎという形でそのあり方というものを明確にいたしたいというふうに考えておりますが、その内容につきましては現在検討中でございますので、いましばらくお時間をいただきたい、かように思っております。
  188. 米沢隆

    米沢委員 法律がどういうふうに書かれるかは別にしまして、精神論として、どういう気持ちでおられるかというのを大臣の口で僕は語ってもらいたいと思います。
  189. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  労働条件は労使の信頼関係の中で決められてまいるというのが近代労働法の基本であろう、このように思います。今回の新会社の発足の際のあり方についても、まさに今審議官が申しましたとおり、職員の引き継ぎに関する問題として改革法の中にどう盛り込むか、こういうことであります。新しい会社でありますから、新しい意欲の中でこれがスタートを切るという気迫の中でいかなければならないであろうというような流れも承知をいたしておるわけであります。労働関係の諸法規に照らし、さらに労使関係という新しい本来あるべき姿をきちっと進めさしていただく意味におきまして、今真剣に検討いたしておるというところであります。
  190. 米沢隆

    米沢委員 次は、余剰人員対策の問題について若干お聞かせいただきたいと思います。  これも国鉄改革を成功させる重要なかぎを握っておるわけでございまして、六万一千人の余剰人員について雇用の場をいかに確保し得るかというのが、これは政府、国鉄が一体となって取り組むことがぜひとも必要だろうと考えます。現に、国鉄の自主努力という意味では、関連企業で先般二万一千人の雇用を確保できたということでございますから、その努力を歩といたします。政府の方も、公的部門における国鉄職員の受け入れについては、昭和六十五年度首までに三万人を目標に進めるということを決められました。ことしは第一年度でございまして、六十一年度の国の採用数の一〇%を受け入れることになっておりますが、これはうまく進捗しておるでございましょうか。同時に、これも現在の進捗状況はわかりませんので言い過ぎかもしれませんが、地方自治体の協力というものがかなりおくれておるという意見がございます。そのあたりについてはどのように把握をされ、どういう御指導があるのか、自治大臣にもあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  191. 中島眞二

    中島(眞)政府委員 国鉄余剰人員雇用対策本部の事務局長でございます。  ただいま先生御指摘のとおり、余剰人員対策の問題は国鉄改革の成否のかぎを握る重大問題ということで、政府を挙げて取り組むということで、監理委員会の答申直後に総理大臣を本部長といたします国鉄余剰人員雇用対策本部を設けまして、政府が全力を挙げて取り組んでいるところでございます。  昨年、十二月十三日にこの「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針について」閣議決定をいたしておりまして、これに基づきまして各分野ごとの雇用の場の確保に鋭意取り組んでいるところでございますので、各分野別の状況について御報告を申し上げます。  まず、公的部門につきましては、この閣議決定の際に、ただいま御指摘のとおり採用目標数を三万人といたしまして、その達成に政府全体が一丸となって全力を挙げて取り組むということとしているところでございまして、六十一年度におきましては公的部門、国と特殊法人それから地方公共団体を合わせまして二千六百人程度を目指して採用手続を進めているところでございます。  このうち国家公務員につきましては、多くの省庁が具体的な採用手続に入っております。総務庁を中心といたしまして各省庁と鋭意詰めの作業を行っていただいておりますが、既に決まりましたものとしては、運輸省が六十年度と六十一年度の両年度におきまして二百二十八人、労働省が六十一年度におきまして五十七人以上、それから自治省が四十人の採用ということを決めておりまして、自治省におきましては既に採用が行われているところでございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕  また、特殊法人につきましても雇用促進事業団が、これは六十五年度首までの間でございますけれども、二百人の採用を行うということを決定しているところでございます。  この国と特殊法人を合わせましたこれまでの採用についての申し出数でございますが、数え方がいろいろございます。例えば帝都高速度交通営団、これは国鉄の関連企業でございますが、同時に特殊法人でもございます。それを入れたり、あるいは運輸省の六十年度分を入れるということにいたしますと、千七百人に近い数字となっております。  地方公共団体につきましては、閣議決定後、自治省の方で事務次官通知を出していただきまして、地方公共団体に対して要請を行っていただきました。またその後、ブロックごとに説明会を開くとかいう努力を積み重ねていただきまして、地方公共団体側でも積極的に取り組んでいただいております。そういうことで、既に公表されましたように、東京都の千四百五十人を初めといたしまして、北海道が三百八十人、宮城県が二百人というような数字が出てまいっておりますし、そのほかの地方公共団体につきましても、市とかあるいは町に至るまで、全国的にかなりの採用の決定が進められております。そういうことで、地方公共団体につきましては今鋭意作業が進められているところでございます。  次に、国鉄関連企業につきましては、ただいま先生御指摘のとおり二万一千人の受け入れを国鉄の方で確保したということになっております。そのほか、一般産業界につきましても一万人以上の受け入れをお願いしたいと考えているわけでございますが、各省庁において業界団体を指導していただくというようなことを進めていただいております。そのほかの施策も今後考えてまいりたいと思っておりますが、運輸業界等を中心にいたしまして具体的な受け入れ目標数の提示がなされておりまして、大手私鉄十六社関係でこの五年間に三千五百六十人を採用すると受け入れの表明があっているような状況でございます。  このようなことで、目下のところ余剰人員の受け入れのための雇用の場の確保につきましては順調に進んでいるということが言えると思いますが、何といっても緒についたばかりでございます。私どもさらにより多くの受け入れ先を確保するため、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。
  192. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 ただいまの答弁の中にもございましたけれども、国鉄の余剰人員対策は国鉄再建のかぎを握る大きな要素の一つであろうと思います。また、国鉄の再建、それが地方の交通体系あるいは住民の生活に大きなかかわりを持っておるものであると考えております。したがいまして、地方公共団体におきましても、その事情の許す限り積極的にこの問題に取り組んでいただきたい、その旨を協力の要請を行っておるところでございます。
  193. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 既に詳しい数字については、現況の報告がございました。そこで、我々総務庁としては、各省庁の協力を得て、定員削減という現況を踏まえながら、相互扶助の精神で愛情を持って新しく採用をしていこうということで、もう既に具体的な検討に入り、さっきの数字のように相当数、今千六百人というものも決まっておるわけでありますし、これができるかできないか、仰せのように問題解決の非常に重要なポイントでございますので、私ども総務庁としても責任を持って今後とも各省庁と協力しこの実現を図りたい。また、特に地方に居住する人はやはり地方に勤めたい、こういう点もありますから、そういう点などは今自治大臣の話のように十分地方の協力も得ていきたい。これは既に明るみがとれつつあるというふうに判断しております。
  194. 米沢隆

    米沢委員 余剰人員対策でもう一つ考えておかねばならぬことは、今度の余剰人員をどういうふうに雇用の確保をしてあげるかという観点からいいますと、広域配転という事態が起こってくるのではないかという気がします、やめる人とそこの地域で確保する数とは全然合いませんから。東京あたりは集中するかもしれませんが、地方の方では余り雇用する場がない。したがって、九州から出てくる、北海道から出てくる、その人なんかをそこで雇用の確保ができればいいですが、それができない。となりますと、民族大移動みたいなものがここで発生するわけでございます。従来国鉄というのは管内でも余り異動がないということで有名でございまして、そのあたりをどういうふうに組合員の皆さん方に納得していただくのか、あるいはまた広域配転という観点から何かいい施策があるのかどうか、そのあたりも十分に配意を願いたい、こう思っておりますが、何かアイデアでもありますか。
  195. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今先生御指摘のように、北海道、九州等におきましては、北海道は職員の二人に一人が余剰人員、九州は三人に一人というようなことになるわけでございます。一方、北海道、九州等におきましてなかなかそれを受け入れるだけの余地がないという問題があるわけでございます。したがいまして、そうした観点を今から私ども考慮いたしまして、実は現時点から検討を重ねながらできるだけ前広に地域間の職員の広域配転を行っていきたいというふうに思っておるところでございます。
  196. 米沢隆

    米沢委員 極力御配慮方をお願いしておきます。  それからもう一つ、余剰人員対策でお尋ねしたいのは、余剰人員対策がうまくいくかどうか、これは労働組合がどれだけ協力してくれるかどうかが必須条件だろうと思います。お聞きしますところ、鉄労とか勤労とか全施労等はうまく協力体制の中に入っていただいておるというふうに聞きますが、最大の組合である国労さんがどうも協調がうまくいっていない、こういうお話を聞きます。何が問題になっているのか、まずそれを明らかにしてもらいたい。  それから、よく最大組合の国労と協調ができなければ国鉄改革がうまくいかないとか、あるいはまた国労との雇用安定協約を結んでから国労さんの協力を得るのが筋ではないかとか、いろいろとちまたでは言われておるのでございますが、私は後で御意見を聞かせていただくにいたしましても、いろいろと国労という組合が余剰人員対策について妨害をしたりあるいは非協力的な態勢であるということは大変私は残念でなりません。しかし、最初から国労ありきじゃなくて、国労の組合員の中にも一人一人はいろいろと相談をすれば真剣に先行きを悩んでいらっしゃる方もおるわけでございますから、そのあたりを念頭に置いて緻密に余剰人員対策をやっていただくように、同時にまた、国労の協力が得られるための条件みたいなものは一体何なのか、そのあたりを国鉄総裁から明らかにしていただきたい。
  197. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 これからの国鉄改革を行い、特にまた余剰人員対策等の大変難しい問題をやる場合におきまして、労使が一致協力いたしまして事に当たるということがどうしても必要であり、労使間の信頼関係を樹立したいということで努力しておるところでございますが、ただいま御指摘のとおり組合がたくさんございますが、その中の大きな人数を抱えております組合との間におきましては必ずしもうまくいっておりません。過去におきまして、余剰人員対策の我々の提案に対しまして、いろいろな形でそれが御協力を得られないというような経緯がございます。こういうことでは国民に対しまして、私ども労使一体となって自助努力を最大限発揮するということをお示しをしまして初めでいろいろな国民サイドの御支援、御協力を得られるというふうに思うわけでございますので、ぜひともそうした観点から、今後とも国労に対しましては粘り強く何遍も話をいたすよう呼びかけをいたしまして、国労の理解を求めたいというふうに考えておるところでございます。また、先般そうした形で労使共同宣言というようなことを提案申し上げましたが、この点もまだ締結に至っておりません。この辺も十分に話し合いを進めていきたいというふうに思っておるところでございます。
  198. 米沢隆

    米沢委員 最後になりましたけれども、今お聞かせいただきましたところ、余剰人員対策の労働組合の協力という意味では、ややまだ難点が残っておるというふうにお聞きしました。やはり労働組合ですから、それぞれの組合員の労働条件等々について意見を持ち、いろいろな理屈はあろうと思います。しかしながら、ほかの労働組合をそんなのはナンセンスだと言ってののしっていらっしゃるそうでございますが、この国鉄改革の厳しい、今から船出をしなきゃならぬときに、あくまでも妨害をしたり、かたくなに拒否反応を示すということは、非常に私は将来の国鉄のためにもあるいは国鉄改革に対する国民の信頼を得るためにも重大な問題だと言わざるを得ません。そういう意味で、当局にもいろいろと努力をいただかねばなりませんが、少なくとも理屈の通らないことで私は妥協をしてもらいたくないということだけ一つ申し上げておきたいと思うのでございます。  過去の国鉄の歴史を見ますと、御案内のとおり、マル生運動の失敗というのがありました。それ相応に、そのときにいろいろな問題はあったのかもしれませんが、現場の管理者をたきつけておきながら結果的にははしごを外すという、そういうことが現実に行われて、結果的にはマル生が敗北をし、その結果国鉄のこういう悲惨な破産状態が出てきたというこの歴史にかんがみるとき、私は、今杉浦総裁一生懸命頑張っていただいています、運輸省も一生懸命頑張っていただいておりますが、中曽根総理、できるだけマル生の二の舞を踏むな、そういうことだけ一点にかけて、これから運輸省あるいは国鉄総裁を鞭撻してもらいたい、そのことについて決意を中曽根総理からお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全国民が注目し期待しておるところでございますから、過去の過ちを繰り返すことなく、米沢議員のおっしゃった趣旨に沿って断固やるつもりでおります。
  200. 米沢隆

    米沢委員 ちょっと質問を残しましたけれども、これで一応終わらせていただきます。ありがとうございました。
  201. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、多賀谷員稔君。
  202. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国鉄問題に関して、亀井委員長を初めといたしまして国有鉄道再建監理委員会皆さんが長い間かかりまして非常に検討を願いまして、私は感謝にたえません。何といいましても、明治四十年、西園寺内閣以来の大改革でありますから、これは大変な大きな作業であったと思います。  私は、本来運輸政策は全くの素人であります。しかし、今まで幾多の産業政策をやり、労働問題をやってきた私は、どうも今度の選択は大変な過ちの方向に行くんではないかという、これは取り返しがつかないんじゃないかということを憂慮の観点から質問をしてみたい、こういうふうに思うわけです。  まず第一に認識の問題でありますけれども、今日の国鉄の破綻の危機を招いた原因というのが、一つは公社制度、もう一つは全国一元的組織であると言われておる。果たしてそうだろうか。鉄道省から公社になった、その趣旨は一体何であったろうか。公社というのは、本来、ルーズベルトが言ったように、パブリックコーポレーションである。TVA方式である。それはなるほど政府権力の衣をまとってはいるが、しかし、私企業の弾力性と自発性を保有する法人である、こういうことで出発をしたわけですよね。ところが、この法案が出ましたとき、これは小沢さんのお父さんが大臣のときに提案をした。僕は速記録を見て懐かしく思ったのですが、できたものは残念ながら鉄道省時代と何ら変わらなかったというところに今日の悲劇があるんですよ。でありますから、公社制度とかいうものができたときに、その趣旨に沿ってやはり法律制度ができておらなければならぬ。だから、野党はこういう反対をしていますよ。何がこれがパブリックコーポレーションか、運賃も人事も、そうして予算もほとんど公社には権限がないじゃないか、皆政府国会が決めるんじゃないか、だからこれはコーポレーションじゃないというので反対討論をしておる。私は、これは当時の自由党が提案をされたんですけれども、その後のずっと経緯を見ても、これに対する何らの改革がなかったというところに第一に問題があると思います。ですから、公社制度と一概に言われておるけれども、日本の公社というのは本来の経営の弾力性を持つ公社でなかった。  そこで、私は随分御勉強をされた監理委員長にお聞きしたいのですけれども、英国も西ドイツもフランスも国有です。フランスは商法に言う株式会社でしたが、今や完全な国有になっておる。民間の株を政府が買い戻した。一体これらの国の運営は、国会とか政府の関係はどうなっておるのか、これをどういうようにお調べになったのか、まずお聞かせ願いたい。
  203. 亀井正夫

    ○亀井参考人 ただいま英国、ドイツ、フランスの国鉄というのは国有で、公社制度ではないという御質問でございますが、そのとおりでございます。  それから、二年前に、私は参りませんでしたが、加藤寛先生がチームリーダーとしてその三国につきまして調査に参りました。いろいろ伺いましたところ、その国鉄総裁、まあプレジデントといいますか、その方は国会に年に一遍も出ることがない、こういう状況だということを伺いました。
  204. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、政府は一体どう判断をしておるのか。今、監理委員長はそういうくらいの認識しかありませんでしたが、一体政府はどういう認識をしておるのか。この問題は、もう古い人と言えば江崎総務長官、それから総理大臣以外にいないのですが、この当時の代議士というのはいないのですが、一体どういうように認識をしておるのか。私は、この運営をがんじがらめにしたのは時の政府だと思いますよ。総理大臣はなかなか詳しいから、記憶もいいから、一体どうしてこういうようになったのか、お聞かせ願いたい。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大分昔のことで忘れておりました。しかし、あの当時はいわゆるパブリックコーポレーションというやり方で、非常に官僚統制から脱却させて、民間的手法を入れてやろう、そういううたい文句で出てまいりまして、青よりは大分前進したなど、そういうふうに感じたのでございますが、しかし考えてみると、やはり一つ大きな点は、経営の方に責任体制がなくなって親方日の丸主義、やはり国に追いすがるという惰性が流れている。それから労働組合の側においても、一生懸命やってはおられておりましたけれども、責任権限といいますか、労使間の自主的責任体制というものがないものですから、終局的には国にすがればいいというところで無責任体制が出てくる。そういうところへ、モータリゼーションに追いつけなくなって、例えばクロネコヤマトにやられてしまうとか、いろいろなそういう面が出てきて今日の状態になった、そう考えております。
  206. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いろいろな面から私は今から論及したいと思います。  ここに私は本を持ってきているのです。これは松崎芳伸さん、今の日経連の事務局長です。この人が書いておる本を見ると、大体公企体労働組合の協定とか仲裁の場合は、賀来才二郎さんという労政局長が、それが出たときには必ず政府はそれに伴う予算を出さなければならぬと書いてある。ところが、まず第一回の仲裁裁定からこれが破れたんですよ。加賀山総裁は四十七億のうち十八億は何とか国鉄から捻出てきます、こう言っている。ところが政府は、いやそんなことはない、政府というのは大蔵省ですね、これは十五億しか出ないのだ、こう言っている。そうして結局は十五億で国会はそれを決めた。そこでもう自主性がなくなった。これは訴訟になった。訴訟になったところが、時の大蔵大臣池田勇人さん、頭がいいものですから法律を改正して給与総額というのをつくって、予算総則の中に給与総額を入れて全然上げられぬようにしてしまった、こういう経緯がある。そうして松崎君はそれに対してどう言ったかといいますと、人称して、うまいことを言いますね、これによって公労法十六条は殺された、こういうように言っていますよ。こういうように最初から曲げられて運営をされてきたと言っています。  さらに、予算はどうかといいますと、今イギリスでもフランスでも西ドイツでも、これは国有産業ですよ。あるいは公社といい、あるいは株式会社というけれども、フランスのように現実は民間の株は今やなくなりました。でありますからこれらは皆大同小異でありますが、これは、一般会計からいわば公社とか国有産業に移す予算だけは議決の対象になるけれども、その他は附属資料で出るのです。そしてそれが後にほとんど運輸大臣の承認ということになるのですけれども、そういう軽い形式ですね。そういうことが行われないで、今までの制度の中において何だ自主性がないじゃないか、けしからぬじゃないかといったのは、これは我々残念ながら政権を取っておりませんでしたから、自由党と自由民主党の責任ですよ。どう思われますか、総理大臣は。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 歴史の変遷の中で、四十年の流れの中でいろいろな社会的な経済的な変化があり、旧鉄当局やあるいは労働組合の皆さんもその当時は一生懸命やってくださった面もありますが、終局的に見るとやはり時代に追いつけない古い体制であった、そう言わざるを得ません。
  208. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ところが予算の処置も、これは運輸省から聞きたいのですけれども、今申しました三つの国の累積債務はどのくらいありますか。各国とも皆、本当は国鉄の予算は悩んでおる。必ずしも順調にはいっておりません。ところが、どのくらい累積債務がありますか、各国。
  209. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先ほど亀井委員長からお話のございました、監理委員会で各国鉄道をお調べになりましたときの資料をいただいておりますが、各国ともいろいろ日本と事情が違いますので、累積債務というものの額がどれだけかというのはちょっと的確につかめないわけでございますけれども、基本的には従来は先生御指摘のこれらの国は大体単年度主義でございまして、単年度において欠損が生じますと、国において何らかの補てんがなされておったわけでございます。ただ、その後財政情勢等が逼迫いたしまして、ドイツにおきましてもフランスにおきましても、単年度でこれを埋めることができず、若干の累積債務が生じておるということでございます。現在におけるその正確な額は、後ほどちょっと算出いたしまして御報告を申し上げます。
  210. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 監理委員会は知らないかもしれませんが、あなたの方、監査委員会から出した報告書にちゃんと書いてある。役所は、もうささやかな抵抗をしているのです。すなわち、最後のところに、イギリスとかフランスとか西ドイツの予算書をざあっと出しておる。そして、毎年こういう支払いをしておりますよ、こう言っているのです。一言も前のことは、政府のことは批判してないけれども、いかにも批判するように毎年これは出ているのです。この前払がECの規則を聞いたでしょう、共済のときに。これはちゃんとあるのです。  運輸大臣、あなたは著書にちょっと書いていますね、本に。労作ですけれども。よその国は借金がない。全部、毎年整理しているのです。それは、例えば通学割引ですね。通学のような、社会保障的な身障者の割引をする問題、これは一般会計から出るのですね。それから、都市周辺に大変施設が要る、通勤ラッシュになる、これも出る。それから路盤の問題も補助金が出る。要するに観念が違うのです。私企業といかにして競争を国鉄ができるか、私企業と同じ条件のもとに競争ができるかという立場に立って助成しているかが書いてある。  そういう観念がないのですよ、日本には。国営であるから、あるいは公社であるから何でも――さっき甘えのお話がありましたね。みんな親方日の丸は労働者だけの話をしておるけれども、それは地域住民も国民も、一番あるのは政治家ですよ。私は、公社の問題ではなくて、日本政治の体質の問題、それは我々を含めてですよ、どうも今日のような赤字が出たのは日本の政治家の体質の問題じゃないか、そういうように思うのですが、総理大臣どうですか。とにかく票を余計取ればいい、こういうことで、どうもこういうものが集票の手段に使われておるのじゃないか、こういう感じがする。これはお互いのことですけれども、この新しい再建に当たっては、みんなぴしっとした態度で臨まないと総崩れになりますよ。先ほど来沢さんも質問しておりましたが、自民党には多様性があると、まあ上品にちょっと批判したのです。これは私は心すべきことではないかと思いますが、総理はどういうようにお考えですか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いろいろな原因があるので、政治の体質にも原因がないとは言えませんが、しかし、主たる問題は、私は国鉄内部の経営力、あるいは労使関係、そういうものがやはり大きな主たるものではないかと考えております。
  212. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さすが三塚さんは運輸行政の専門家ですよ。この本には国鉄は何度も意見具申をしてきた、こう言っているのです。意見具申をしてきたけれども、結局政治の場で通らなかったと。  ひとつお伺いしますけれども、二十五兆という赤字は一体どこから出たか、発生源的に教えていただきたい。むだな投資がどこから出たのか。
  213. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生ただいまおっしゃいました二十二兆というのは、五十九年度末国鉄の累積債務二十一兆八千億のことだろうと思います。  この二十一兆八千億を大まかに申し上げますと、運営資金の不足によります赤字、それに相当しますものが七・八兆円、それから工事費に、設備投資等に充当されたというふうに思われますものが十四兆円でございます。この十四兆円のうち四兆五千億、これが減価償却費相当額、取りかえ工事充当の借金でございます。したがいまして、これもある意味では運営資金不足による借金でございますので、そういうものを除きますと、残りの九・五兆円、九兆五千億が設備の増強・改良工事等のための借金である、かように考えております。
  214. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、それが幾らむだになったかと聞いておるのです。むだになったのはどのぐらいですか。
  215. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 国鉄の行いました設備投資というものは、大部分のものはそれはそれなりに国民生活に必要な輸送を提供するものになっておりまして、そういう意味で、純粋にこれがむだになったというものは余りないというふうに考えております。
  216. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 鉄建公団ができて投資をした新線が第一次、第二次の特定地方線として廃止の対象になったのはどのぐらいあるのですか。
  217. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先ほど先生御指摘のものは国鉄の累積債務ということでございましたのでお答え申し上げたのですが、ただいま鉄道建設公団、これは鉄道建設公団で建設して国鉄に貸し付けておるものでございます。これにつきましては、鉄道建設公団が建設いたしましたもののうち現在特定地方交通線に該当いたしておりますものは、第一次特定地方交通線にかかわるものが二百五十億、それから第二次特定地方交通線にかかわる投資額が二百億、工事休止線にかかわるものが千三百億でございます。
  218. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 このように、鉄建公団がつくって、そうして投資をする、そのつかの間にもう廃止線として廃止を決定しなければならぬ、こういうことをやっているのですよ。  それから、ヤードはどうですか。ヤードはどれだけあるのですか。
  219. 前田喜代治

    ○前田説明員 お答え申し上げます。  ヤードとして新しく、三十二年以降でございますが、つくりましたヤードでございますが、工事費といたしまして約七百三十億ばかりかかっております。
  220. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が、どうしても出さないという資料を、じゃヤードと新線だけに限ってお出しくださいと言ったら、きのう夜ようやく来た。ところが、けさ来た資料もまたふえている。全然別の資料が来たのですね。別の資料というか、追加して来た。いいことなんですが、残念ながら金額が書いてない。ああこれはいい資料が来たなと思いましたら、残念ながら金額がないのですよ。これは貨物ですが、「過去二十年間の投資内容と投資効果」、そのうちで「廃止されたもの ヤード等」と書いてあります。ヤード以外のものが大分書いてある。残念ながら、今度の資料には金額がない。  ですから、金額の算定ができないのですよ。次から次に少しずつ出してきて、そしていわく、これ以上は推計できませんとか。これではやはり、こんなに大きな改革をやるときに、審議ができませんよ。少なくとも監理委員会に出していただいた資料ぐらいは出していただかないと、これは大改革ですからね。ですから、我々は本当にそういうような状態の中で国民を納得させなければならぬのですから、それがあいまいであると、そのあいまいさが後に続くのです。ですからひとつ、これはだれの責任ですか、運輸大臣の責任ですか、資料を全部出してもらいたい、少なくとも監理委員会に出した資料は。
  221. 三塚博

    ○三塚国務大臣 資料の件は、先生からの御要求のものを全力を尽くしてそれぞれ取りまとめ、お手元にお届けを申し上げた、こういうことでありますが、ただいま金額が入っておらないという問題点もございました。  これは、監理委員会に出しましたのは五十八年度決算を原点として整理をしたものをお出しをいたしておりますし、五十九年、六十年という進行中のものについて、これをこれに加えるよう精査をさせていただいております。要すれば、法律を提出をいたしました際、御審議に十二分に間に合いますように、提出をする以上それだけの資料の並行した御提出をさせていただく、これが国会の審議の原点であるということを運輸省及び国鉄に申し上げ、その資料の取りまとめを急がせておるということでございまして、今回不足の分につきましてそれぞれ御不快の御表明がございましたが、全力を尽くして出せますもの、これを取りそろえる、こういうことでございますことを御理解をいただきたいと存じます。
  222. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この資料が確実に出ないと、これは単なる改革の論議だけで済まないのですよ。後にこれが問題になる。後から質問しますが、一体あのときの試算はどうして算定したのかわからない。一体新会社は、あの資本金はどうして資本金を算定したのか、これがわからない。」これでは何も――今度は民間が入ってくるのですから、それを前提に論議をしておかなければならぬですよ。これは私は重要な問題だと思うのです、同じ公社を分断するなら問題は少ないのですが。  そこで総理会議録の要点だけくらいは出してもらわないと、これはどこが問題になったのかという、これは審議できませんよ。どうですか、ひとつ決断をもって、法律も何もないのですから、それは一言一句と言いませんけれども、大体会議録をとっておるはずです、それを出していただきたいと思いますが、これは総理から御答弁願いたい。
  223. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  総理かねがね答弁を申し上げておりますように、この監理委員会、真実の論議をしていただきたい、こういうことで、オープンな形であらゆる観点から御論議をいただく、そのことの方がよろしい、そのことは公開をしない、こういうことで来たわけでございます。  ですから、終わったから今度は出せ、こういうことであろうかと思うのでありますが、これは真剣な議論会議録の取りまとめということだと思うのでありますが、お聞きをいたしますと、そういうオープン原則でやらさせていただいておりますものでございますから、もう会議録らしいものはないようであります。ざらのメモ程度でございまして、それはありますというのは、前総裁の時代に監理委員会と何回か協議をいたした。協議をいたしたのでありますが、そのときも、お互いが自由な論議の中で、これだけの大改革なものでありますから、お互いの主張、現実をぶつけ合いながらそこで到達するように努力をしようということで、まさにフリートーキングであったものですから、会議録はつくらないということでやられたわけでございます。  ところが、これは後から聞いたのでありますが、朝日がスクープしてああいうふうになったものですから、あれはどういうことだと聞いたわけです。そうしましたら、国鉄の皆さん、やはり担当の人が、ついていった方が、全部、お役所は大体そうでありますが、メモをずっととるのですね、課長とか課長補佐クラスの方が。それが整理されたのがどうも流れたようだ、こういうことでありまして、余り権威のあるものではないというふうに思います。そういうことで、オープンな論議でございますから、オープンな論議の結論としてこの答申が出ております。答申の前段、そして締めくくりという形の中で論議が紹介をされておるわけでありまして、この答申を読みますと、どういう論議が行われ、結論が導き出されたかということがおわかりいただける、私はあれを読んでそういうふうに理解をし、なるほどと、こういうふうに思ったわけでありますけれども、さようなことで御理解をいただきますればと存じます。
  224. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 我々は執拗にそれを公開を迫っていきます。  そこで、大臣、むだな投資というのをひとつ全部出してください。金額を後ほど出してもらいたい。ヤードと新線だけはわかりました。一体むだな投資はどのぐらいあったのか、これはその後項目がふえてきたのですから、ひとつ出してもらいたい。  続いて監理委員長にお聞かせ願いたいと思いますが、御苦労さんでしたけれども、この再建案というのは、本来国鉄の危機をどう救うかということで、そして、言うならば新会社が経営について全責任を持つのだ、こういう建前になっていますね。それには、国の政策上の投資の要請は本来好まない場合には断る、こういうように考えてよろしいですか。そこまでは、もう今再建するのがいっぱいでそんなことは考えられません、それは国が考えてください、こういう考え方ですか、どうですか。
  225. 亀井正夫

    ○亀井参考人 私どものプランは、現在もう危殆に瀕しております国鉄といいますか、国民の鉄道をどう再生させるかということに重点を置いており笠して、新しい会社は本当に経営責任というものを自主責任で経営をするという建前でやっておりますので、私どものあのいわゆる答申の中にも書いてございますが、新規の事業投資というのは新しい経営陣が考えるべきものである、そういうことを明確にしたつもりでございます。
  226. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、整備新幹線はつくっても動かないのですか。だれが動かすのですか。これはやはり新しい旅客会社が動かすのでしょう。新しい旅客会社が来年の四月から発足するというのに、その相談もなく、協議もなく、まあ今は相談できないのですね、会社がないのですから。経営の自主性を持たすといいながら、一体駅はつくるんだということが言えるのですか。百五十億あなたの方は予算を組んでいる。一体けじめというのがあるのだろうかと思うのです。労働者やその他の者にはけじめを要求しているでしょう。そうしていやしくも首まで切られるという。経営は大変だと言いながら、今度は何年かかって黒字になるかわからない、永久に黒字にならないかもしれない、その新幹線をつくるという。それは国の要請というならば要請として、財源を別にして、それから何と言っても運営をする新しい会社と協議しなければならぬ。それも何にもなくて百五十億の予算を組むとは何事ですか。  私は、この質問をするのには実は悩んだのです。同僚議員に迷惑をかけるのじゃないかといって本当は大変悩んだのです。しかし政治家はけじめをつけなければならぬでしょう。そのけじめをつけないでずるずるといったら同じことですよ。来年の四月から新しい会社ができるというのに、その新しい会社に協議をしないでおいて勝手につくって、そうして一体どうするのですか。どういうふうにお感じですか。
  227. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  本件につきましては、もう先生も御理解のように、ただいまどうすべきかという検討中であります。整備新幹線に関する検討委員会を設けまして、関係閣僚、これに党代表も入れまして審議をいたしております。予算化いたしました問題でありますが、この金を使うにつきましても、検討委員会の結論を得ませんければ新幹線としてスタートを切るわけにはまいりません。ただいま工事認可申請書が盛岡以北青森新幹線、それから北陸新幹線について提出をされておりますけれども、この認可を与えませんければ工事に入れないことは御案内のとおりであります。  でありますから、工事を認可するのかしないのかということにつきましてけじめが大事であります。言うなれば国鉄再建という至上命題のさなかにあるわけでございますから、国鉄の負担には帰しない、国鉄の経営を、新会社の経営を足を引っ張るというようなことはさせない、これが大前提であります。  よって、並行在来線のあり方を検討する、さらに財源の捻出の仕方をどうするのか、事業主体、そして今御指摘のように運行主体、どの会社にこれをやらせるのか、こういう問題があるわけであります。私見でありますけれども、これは私見というよりも党の意見でありますが、私が党におりました当時、財源としてこの種整備新幹線をつくるとするならばということで取り決めをさせていただきましたのは、党議決定でありますけれども、公共事業方式、こういうことを取り決めさせていただいたわけでありますが、政府・与党一体の中で政府の理解を得るに至っておりません。これは財政再建、行政改革という重要な課題を抱えた内閣のもとにおいて、総理・総裁のもとにおいてやるわけでございますから、政府・与党一体の中で一致をいたしませんければ前に進めないことは政党政治の基本であります。  よって、そういう基本的な問題の解決なくして工事認可の決定はしない、こういうことに相なっておるわけでございまして、けじめはそういう意味政府としてもいたしておるということであります。  同時に、本件は工事認可をするかしないか、するとすれば前段のすべての問題をクリアをいたしていかなければならぬ、こういうことでありますものですから、そういうふうに御理解をいただければと思います。
  228. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、こんなに金がないというときになぜ百五十億も出すのですか。どうして待てないのですか。運行会社は旅客会社じゃなければできぬでしょう。明らかでしょう。そうして、先ほど来沢さんが質問したように、僕は新幹線の保有会社が内部補助で、山陽新幹線や東海道新幹線のもうけを持っていくのかと思ったら、いや一切やりません、これは四線だけです。そうすると財源は出ないのです。そしてまた別会社をつくるのですか。  そうして、あなたの本を読むと、奇妙なことが書いてあるのです。在来線が落ち込むのはわかっておるから並行在来線を廃止してその路盤を使う。並行在来線を廃止してその路盤を使うという、なるほどこれは広軌だから。そして広軌を外に置いて、また中に在来線を入れるのかなとこう思った。しかし住民には徹底してないですよ、この在来線を廃止するということはいいですか。在来線を廃止するということになれば、この在来の駅には皆町が形成されておるのですよ、その町は在来線が廃止されればなくなるのですよ。活力のある近畿とか東海とか首都圏とは違うのですよ。在来線の駅がなくなればもう活力を失うのですよ、商店はできないのですよ、これらの地域は。そんなに経済の活力のあるところじゃないですよ、東北にしてもそれから九州にしても。そうでしょう。これは重大な問題なんですよ。それを予算を組む。鹿児島は駅前を周辺整備する、そして青森の方は石江というのに将来の新幹線の駅ができることにして連絡のなにをする、こういうことでしょう。こんなけじめのつかない話はないと思うのですよ。ぴしっとするならしなきゃいかぬですよ、この際。運輸大臣はあれだけ大演説をぶったらそのけじめをやらなければいけない。私は新幹線反対じゃないんですよ。労働組合だっておまえ首切るの待っておけ、やがて新幹線の職場ができるぞ、こういう問題もあるでしょう。なぜ我我、鹿児島や東北まで、差別をするんだ、それならおれのところにもつくってくれという住民の要求は当然ですよ。しかし、物にはけじめというものがあるでしょう。僕は、ある炭鉱の――今言ってもいい、北海道の南大夕張炭鉱、ここの炭鉱が掘ろうという決定をしたのが昭和三十三年だ。しかし筑豊は合理化のあらしの中で閉山が起こっておったのですよ。だから会社の方はそれを開坑しようとしなかった。僕らはもちろん開坑してもらいたかったですよ。開坑しようとしなかった。一回整理をしたい。そういうけじめというのが必要なんですよ。それは我々だってみんないい顔したいですよ。ここにあなた方の判が押しであるけれども、どう考えたって、並行在来線廃止の具体的内容が決まらなければとか、それから建設主体・運営主体のあり方がどうかとか財源がどうか、こういう条件がついておるならばやらぬ方がいいのですよ。ちょっと待ってください。いやしくも新しい旅客会社ができるのに何ら協議をしない、意見も変えない。何が経営の自主性ですか。総理、どう思いますか。どうお考えですか。
  229. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件につきましては、一つは並行在来線の問題の御指摘がございました。  鉄道の将来を考えます場合に、特に新幹線を並行して建設をし運行するという場合に、どうしてもよけて通れませんのが並行在来線のあり方であります。と申しますのは、東海道新幹線は大変収益を上げております線区であります。三千億円から三千二百億円に現在相なっておるのかな。並行東海道本線がありますものですから、これの経常経費にちょうどそっくりこれが埋め合わされるということで、プラス・マイナス・ゼロという状況に相なっております。なぜ在来線がそんなに赤字になるんだろうかということの論議は先生もおわかりですから、ここでこれ以上展開をするつもりはございません。  この並行在来線の問題がこのように検討項目の中に入りましたのは、盛岡以北、北陸にいたしましても、大変輸送密度の薄いところであります。本来鉄道として収支採算を考えて建設をするといたしますれば、建設に着手のできない線区であります。しかるがゆえに、これをやりますということでありますれば、将来どういう形でこれを取り進めるかということに相なりまして、在来線の路床を生かす方式、いわゆる広軌でありますが、狭軌のもので対応できないだろうか。あるいは広軌でありましても、在来線の上をそのまま走るということに相なりますれば、用地買収費その他の費用が節減をできるであろう、こういう発想が一つ有力な学者間からも出されておるわけであります。このことはなかなか、同時並行で工事を進めることに難点がございますものでありますから、いましばらく検討を進めなければならぬ問題であります。  同時にもう一つは、特定財源に支えられております道路の整備が、まさに一年たつごとに進んでおります。アメリカのモータリゼーション、道路整備に伴う鉄道の撤退はその歴史を現実のものとして我々に示したわけでございまして、さような意味で、東北といえども道路網の整備、アクセスの整備、第二バイパス、市町村道の整備、こういう形に相なってまいりますれば、モータリゼーションの時代の中でそのようになるであろう。だといたしますれば、整備新幹線の建設に着手をするということであれば、その辺の展望を考えなければならぬ。しかし政治でありますから、ここで論議の中で出されておりますのは、並行在来線で同新幹線でありますれば新駅をつくらせていただくことによりまして今の拠点を吸収することができ得ます。並行できない線区につきましては、これはまさに生活の鉄道でございますから、その部分については当分の間通勤通学であり地域の足でございますから、判定をその時点でしてまいらなければならぬ問題であろう、こういうことであります。  それから、なぜ百五十億予算をつけたのだ、こういうことでありますが、前段まで百億つけてまいりました、六十年度。しかし、この分の執行は皆無であります。言うなれば、行革下における政府方針の中で投資採算性その他今申し上げましたような諸項目の充足ができません限りスタートができないということで、見せ金であります。  そういう中で駅周辺環境整備事業、既存の駅舎の周辺整備事業でありますならばそのことは許される範囲である、こういうことで、許される範囲の事業似行に入らせていただきました。先生御指摘のように、九州にいたしましても東北にいたしましても、生き延びられる交通戦略としてのものは何かということでありますと、まさに新幹線だろうと思うのです。航空機と対応し、長距離であればだめでありますが、七百キロ前後のものでありますならば、まさに新幹線の特性分野でありまして、二十一世紀はおろか、二十二世紀にまでも生き延びられる交通手段である。そういう意味で真剣な検討がこれから行われていく。  しかし大前提は、改革下におけるこの作業でございますから、新しく生まれ出る新会社の、影響を与えることのないように、足を引っ張ることのないような措置だけは政府として講じてまいりますことが基本的に大事なことである。この辺の遮断は明確にしてまいる、こういうことであります。
  230. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 成田駅をつくったのですね。これはどれだけの投資をし、その後利子がどのくらいあって――全く成田線中止になった。どのくらい金がかかって、今利子を払っているのですか。
  231. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 成田新幹線に現在まで投下いたしました鉄道建設公団の資金は五百四十五億でございます。  なお、それに伴いまして発生しております利子が約五十億でございます。
  232. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは一年でしょう、五十億は。今までの累積どのくらいあるのですか。どうするのですか。ですから、路線を全然建設しないで駅だけつくるというのは、これはどういう難工事が出てくるかわからない、トンネルは八甲の下を掘るのですから。駅だけ先につくっておるというのは僕は本来順序が違っておるのじゃないかと思うのですね。どこだって骨格を先にやって、そうして周辺のところは最後にやるのですよ。それが、駅を先につくっておって、またいつ来るかわからぬ列車を後に。そういう物の考え方、順序が間違っておるんじゃないか。どうなんですか。
  233. 三塚博

    ○三塚国務大臣 順序といいますと、用地買収をして線路をつくって、こういうことになるわけです。しかしこれは工事認可をいただいた後でございませんければ作業のでき得ないことであります。よって、青森駅の建設ということでございますが、駅周辺環境整備事業、駅舎の改良、この解釈のぎりぎりのところでこれを取り組まさしていただいた。これは、議会政治、政党政治をやっておりますものですから、地域の切なる願いなどを勘案しつつ、法令の範囲で許される接点はどこか、こういうことで、大分時間をかけ論議をさしていただき、詰めさしていただき、このことでありますならば法令の執行上違反はない、法令の違反はない、こういうことでこのことの取り進めをいたした、こういうことであります。
  234. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三塚大臣が法学部を出たからといって、違反がないとかということ――経済論争をやっているのですから、何も法律違反があるとかなんとかそんな話をしているのじゃないのです。これはやはり心しなければならぬことなんですよ。  私は新幹線は賛成ですよ。二十一世紀に向かってどうしても新幹線は要るだろうと思うのです。しかし、これは採算がとれないぞ。一体どうするんだ。そうすると、じゃ今の東海道新幹線からの内部補助をやるのかといったら、あなたは絶対やらない。一体どうするんだろう、こういう問題になるんです。  公共事業でやるならやるで、これは国家政策です、経営とは別なんです、これなら筋が通るのです。それならフランスのように、国と国鉄が契約しなさい。フランスのは国鉄でやりますけれども、皆契約するのです。これは本来の国鉄の仕事ではないが国の政策としてぜひやらしたい、こういう場合には契約書を取り交わすわけです。これは景気変動上非常に必要なんだ、運賃は上げたいだろうけれども、今の物価の情勢から見ると運賃値上げは少し抑制してもらいたい、助成金を出すんです。契約するのですよ。それでおまえのところで負える分は幾らあるんだ、じゃ国が出す分は幾らなんだ、一つ一つ契約をしてこういう工事は進んでいくのですよ。  今あなたの方は内需の拡大と言う。内需の拡大と言うなら何かやはり公共投資をしなければならぬだろう。それなら国の責任ですから、国と、フランスならば国鉄が一々契約をして、国の政策の分は国が見る。そういうけじめがなくて、また、経営能力がないとか、それは自主性がなかったんだとか、権限がない。これは権限がないのと同じでしょう。新会社は権限がないのですよ。これを負わされているのです。出発時に一体どういうように考えているのか。ちゃんとフランスのような方式をとるのか。
  235. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、現段階において行い得るぎりぎりの鉄道工事という意味で新青森駅の駅周辺整備改良事業、こういうことでございます。よって、何回も申し上げるようでありますが、新幹線の工事はすべての諾条件を満足した中で工事認可がなされるわけであります。この認可の問題は、大変諸条件がございますから、その問題を詰めるという意味において非常に長い時間かかるかもしれません。そういう結論を得られた段階で、また得られるであろうという段階で、多賀谷先生言われますように、それがどう契約できるか、また国家事業としてどうやり得るのかという判断を内閣としてお願いをするということでありまして、ただいまアイ・エヌ・ジーの中でこの作業が進んでおります。趣旨を十二分に踏まえまして対応してまいるつもりであります。
  236. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはまだ追及したいのですが、とにかくけじめをつけてもらいたいということであります。この問題は、監理委員会の答申と逆をいっているのです。こういうことをあえて注意をしておきたい。  そこで亀井参考人、時間があるそうですから、大変失礼いたしましたが、私は次の問題に移らせていただきたい。それは、分割問題です。  監理委員長はかねがね電力の九分割を大変参考にしたとおっしゃる。そこで、電力のときも大変議論があったのですが、電力は本来民間事業だったのを、永井柳太郎逓信大臣昭和十三年に発送電だけ統合したわけです。そして、配電会社は九つあったのです。その上に日本発送電株式会社というのができたのですね。この発送電株式会社をどうして解体するかというのが大変な論議になった。私もその経過を知るために、ここに膨大な本があるのですが、これが電気事業再編成の歴史なんです。松永安左エ門とか小坂徳三郎さんのお父さんとか、これはもう大議論していますよ、そのときの速記録を見ると。  そして、結局分割をされた際の一番の大きい問題は、地域格差が大変出るのじゃないかというのが第一です。第二の問題は、果たして電力が一方においては足らない、一方の地域においては余っておるというのをどう調整をするかというのが第二ですね。何を言っても、GHQの方から分割を言われておるのですから、それはせざるを得ない。  そこで私は、鉄道の場合と電力の場合は非常に違うと思うのですよ。なぜ違うかといいますと、第一に言うと、飛躍的に伸びる電力です。鉄道の場合は残念ながら、このデータによっても、人キロにいたしましても大体横ばいですね。ここが一つ大きな違いがあるのですよ。  それから第二の問題は、融通できるということです。融通電力ができるということです。これは、今長崎の松島炭鉱からスイッチ一つ、ボタン一つ押せば北海道まで行くのですよ。そして非常に融通ができる。実際は融通している。  そして第三は、電源開発という会社があって、それが調整機能を果たしておるということですよ。  それから第四は、地域的独占であるということです。競争相手がそこにいないということですよ。どんなに仲よくしても脅かされることがない。そういう違いがあるのです。  それなのに鉄道の場合を見ると、残念ながらこのどれにも当たらない。ですから、ヨーロッパでどこの国も皆大変困っているのですけれども、国営から民営にしようという発想はないし、また分割という発想も全然起こってない。一体どういう点をお感じになったのか、これをお聞かせ願いたい。
  237. 亀井正夫

    ○亀井参考人 ただいま電力事業と鉄道事業が性格的にいろいろな点で違うのではないか、これはもう先生御指摘のとおり違うわけでございますが、また共通点があるという意味で、私どもは電力分割の事情を参考にいたしました。これは日本発送電という全国一本の会社を分割した方が効果が上がったというのが歴史的に証明がされているという問題がございます。  それから、大きな会社を分割をするというプロセスのどういう問題があるかというふうなことをその当時の経験の方からいろいろお伺いをいたしましたし、先生のようなそういう膨大な書物があるということは私存じませんでしたが、一つ参考には、朝日新聞の編集委員の大谷健さんという方が「興亡」ということで、あの電力の解体のときのいろいろな問題点というのを指摘しておりますので、そういうものをプロセスの上にどういうことに勘案をしたらいいかということを参考にさせていただきました。  それから、地域独占でそれがあっても、やはり九つの会社に分割されることによってそれぞれにおいて競争意識が出ておる。それは、私ども電力会社にいろいろ接する機会がございますけれども、やはり東電、中部電力、関電という中において技術開発であるとかあるいは営業活動であるとか、非常に真剣な勉強をされ、努力をしておる。ところが、残念ながら国鉄はまだ全国一本、そして競争意識といったってこれはなかなか耳に入らない状態にある。そういう意味で、私どもは電力分割の例を勉強した次第でございます。
  238. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 随分の努力をしていただいて地域格差もだんだん小さくなりました。しかし、最初は水火力調整金というのがあったわけです。ところが燃料費、一番コストの高い燃料費ががた落ちしたのですよ、石油ショックまで。大体九千円から一万円しておった石油が五千円台になったのです。石炭は千二百円下がったのです。それで石油ショックまで、若干東北電力とかあるいは北陸電力が値上げをしましたけれども、全体ここで経営基盤ができたのです、電力会社の基盤が。そういう情勢にあったのですよ。鉄道は全然違うのですよ。それで、地域独占ですから十分融通ができたのです。  一番典型的な例は、関西電力と北陸電力がある。そうして北陸電力がぜひ火力をつくりたい。しかし技術者もないし、油も北陸を回れば高くなる。で、これは関西電力につくってもらいたい。そこで、関西の大阪発電所の四号機をつくった、北陸用に。そして、今まで北陸地方から送っておったダムの水力を――今まで関西電力に送っておったのですが、これを北陸電力に渡したのです。送電費がむだですからね。それで、北陸用の関西の大阪の発電所の四号機の電力は関西電力が使います。問題はそれからですよ。しかし、その火力発電の値段は水力並みです。そのかわり、水力の値段は今度は北陸には火力並みに買うてもらいます。こういうように実に送電費のむだを省き、合理的にバランスよくできておるんですよ、電力は。  一体できますか、そういうことが鉄道は。鉄道は、それでなくてもダイヤで、おれのところのラッシュ時におれはこれを使いたい。後から質問しますが、おれのところの一番いい時間に幹線の、いや、それは幹線はだめだ、おれのところは通勤時になるんだ。これはもう皆衝突するんですよ、分割すれば明らかに。ですから、まるっきり電力と違うんですよ、残念ながら。これを一体どういうようにお考えですかね。
  239. 亀井正夫

    ○亀井参考人 私どもは、電力と鉄道が一緒であるというふうな議論をしたことは一度もございません。結局、ネットワークということを盛んにおっしゃるわけでございますけれども、現在既に実際上交通体系の中において、鉄道独占の時代においてはネットワークということが非常に物を言っております。しかし、航空機、モータリゼーションの発達ということで非常に変わってきたわけでございますね。でありますから、昔は隅田川の水はロンドンに通ずると言いましたが、近代人は恐らく成田の空はロンドンの空に通ずるというふうに感覚が変わってきてしまっておる。したがいまして、交通輸送体系というものは空路、鉄路、モータリゼーションという中で国民が一番便利なものを選んでいくということで、鉄道につきましては中距離間の都市間輸送、並びに地方都市及び主要都市における通勤通学、国民の足としての地域密着の特性を発揮できることが最も国民に対するサービスではないか。そういう意味におきまして、私どもは電力が分割をしたから鉄道を分割すべきだという議論は全然展開をしておりません。  ただ、先ほど申し上げましたように、電力の場合は分割をすることによってやはり競争意識があって相互の向上ができておるではないか、あるいはこの大きな全国的な会社を分割する場合の資産処理の問題とかいろいろなことは、かつてのそういういろいろ経理処理の方法とかそういうことは参考にできるということで勉強したということでございまして、決して電力と鉄道が一緒であるから鉄道は分割したらいいんだ、こういうふうな考え方は全然とっていないということをひとつ御理解をいただきたいと思います。
  240. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうは言われぬけれども、参考にしたと言って、これに電気事業のことを触れておるでしょう。このあなた方の意見書の中で電気事業がよくいっておると触れておるでしょう。  そこで、せっかく電力の話を聞いて通産大臣に全然聞かぬというわけにもいかぬ。今電力は私はそんなに問うまくいっておると言うけれども、実際は残念ながら地域差が出ていますね。一番高いところはどこですか。一番高いところ、その次のところ、その次のところはどこですか。
  241. 野々内隆

    ○野々内政府委員 一番高いのを電灯、電力合計でまいりますと、北海道電力が一番高くて、それから東北電力でございます。一番安いのが北陸電力でございます。
  242. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 お聞きのように、心配したように、地域が広い、電力需要が少ないというところはやはり北海道でしょう。それから東北でしょう。その次は九州です。今度は円高差益といういろいろ問題が起こっているけれども、北海道は一般的に円高の還元があっても全然これは恩恵に浴さない。それは、じゃひとつ北電は北電で外炭を使えと言うのならば、日本の炭鉱はつぶれる。非常にこれは難しいところへ来ておるんですよ。ですから、分割というのも必ずしもいい効果が多いのではなくて、電力のような特殊的なところでもうまくいかない、こういう問題が起こっておるんです。  そこで、順序が大変悪いのですけれども、いずれ運輸大臣に聞きますが、僕は一つ疑問なのは、七十六ページに新会社の資産、これはどうも私はきちっとした説明をしておかないと後に大変だ、こう思うのです。なぜ北海道が三千億、そうして東日本が三兆三千億、これに借金を加えますが、こういうようにずっと書いてありますね。この資産はどういうようにされたのか。  もうちょっと、時間がありませんから私が言いますと、今までいろいろな会社が合併したり統合したりしましょう。そのときに資産をどういうように判断をするかというと、第一に、これは日本製鉄株式会社のときもそうです。官営八幡を中心に各社が合併をしたとき、あるいはまた分断をしたとき、これらはまず従来の試算方法、財産のうち、減価償却とかいろいろ勘案して資産を算出します。これは財産の方です。それから収益を出す。これで今までどのくらい収益が上がったか、それを加重平均するんですよ。それが大体評価の方式なんですね。ところが、鉄道の場合はやりにくいと思うのですが、一方、収益の方はわかるのですね。ですから、これは一体どういうようにこれを計算されたのか、お聞かせ願いたい。
  243. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 ただいまの先生の御質問は、答申の七十六ページにあります各六つの旅客会社の資産額、これについてはどういうぐあいに算定したかということでございますが、この中には二種類の資産がございまして、一つは事業用資産でございます。鉄道の用に供する事業用資産。これにつきましては、これはあくまでも会社が保有していて事業の用に供するものでありますので、原則として簿価で算定して、それをそのまま引き継ぐという形にしております。それからもう一つは関連事業用資産等でございまして、これは本来譲渡可能なものであるというようなことから、時価で引き継ぐことといたしております。そういう二種類の資産が入っておるわけでございます。
  244. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはさらにお聞かせ願いたいと思うのです。監理委員長は所用があるそうですからやむを得ませんが、これは質問を後回しにしたい、こういうように思います。  それで、前の分割のところからもう一回振り返ってお話をしたいと思います。  そこで、鉄道の場合は、私は電力以上に大きな格差がつくんではないかということを非常に心配をし、憂慮をしておるのです。そこで、なぜこの分割をしたのか若干お話がありましたけれども、あなたの方は、監理委員会でもそうですが、政府も恐らくそういうお話をされるでしょうけれども、地域的完結度が非常に高い。北海道は九九%、それから東日本が九九%、東海が八三%、西日本が九八%、四国会社が九六%、九州会社が九五%である、こういうように言われておるのですね。  ところが、会社はもうけなければならぬわけでしょう。乗車人員だけの問題じゃないのです。人員だけの問題なら、むしろ国鉄よりも国の政策ですよ。ところが、もうけるということになると、収入はどうかということになるでしょう。ところが、収入は大体各社にまたがっていくんですね。例えば、予想される路線を言うと、何をいっても新幹線です。それから在来の急行と特急ですよ。これは各会社をまたがっていくわけでしょう。そういたしますと、輸送人員はなるほど新幹線は二・四%です。しかし、輸送人キロになるとこれが二六・二%、収入になると四〇・七%です。それから特急と急行は、人員で言うと二・○、しかし輸送人キロで言うと一六・八%ですね。収入で言うとこれは二三・九%です。合わせますと、またがっていくと予想されるのが、この人員の方は、これは四・四、そうして人キロの場合は四三、そうしてこの収入は六四・六ですよ。完結度の、人員の話をされるけれども、収入はまたがっていく方が六四・六%あるのですよ。ですから、この分割というのは非常に無理じゃないか。収入から見ると六四・六%が各社をまたがっていく収入である、こういうことになるのですね。それについてはどういうようにお考えですか。
  245. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会の答申にも述べておりますけれども、各旅客鉄道会社の旅客流動の完結度、これにつきましては人員ベースでやっております。その会社の中で動く人、あるいは外から入ってくる人、境界をまたがる人というようなものがおりますが、全体の旅客数でその中で完結するものだけの旅客数を割ったものが今先生がおっしゃいました完結度でございます。  それではなぜ人員の完結度だけ計算したのか、人キロ、足の長さも入れました人キロについての計算をなぜしなかったのかということでございますが、我々が持っておりますデータは。国鉄の全国の駅、五千ぐらいございますが、その五千駅相互間の人の動き、これがわかりませんと、人の足の長さ、人キロというのはわかりません。我々が持っております資料は、運輸省の「旅客地域流動調査」という資料で、県相互間の人の量だけしか持っていないわけでございます。したがいまして、鉄道につきまして人キロというようなものを出すすべがございませんので、我々としましてはそういう数字は持っていないということでございます。
  246. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは正確なのは、ぴしっとはまるような数字はつくればつくれるのだが、つくってないから。しかし私が言いましたように、特急とか急行というのは大体またがるんですよ。新幹線はもちろんそうですよ。ですから、これも大ざっぱな話ですが、この資料そのものは運輸省からもらったんですよ、国鉄から。ですから、六四・六%収入があるのを分断をするというのは、分割するというのは、どうも本来、これこそ民営・分割ありきですよ。先にそれがあって、それに合わしたのですよ。今地域完結度なんという計算をするところ、ありますか。それで分けるなんという考え方はおかしいのですよ、本来。大臣、どうですか、あなたは専門家だから。
  247. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  最初に分割・民営ありきではないのか、こういう御指摘でございますが、その前に監理委員会の御審議をお願いを申し上げるように相なりました経過は、国鉄の破局的な状況を何としても打開をしたい、鉄道としての再生を期したい、このことが国民の願いであり、また国益につながることであるということで、二年余にわたる御審議をちょうだいし、御答申をいただきました。  そこで私ども、この答申は答申でありますが、同時に政府及び党としても勉強させて、行き着くところまで実は行き着いておったわけであります。  逆説的な言い方で恐縮なのでございますが、毎年二兆円になんなんとする赤字を出しながら前に進んでいく。六十年現在で二十三兆円であります。これに二兆円ずつプラスをしていくことだけは間違いがございません。この利払いだけでまさに一兆八千億円程度ということになるわけでありまして、財政窮乏を告げる国家財政の中でなかなかこの調達も難しいわけでありまして、借入金総額がそのまま瞬間タッチで消えるという現況の中でどうして鉄道を守り抜いていこうか、ここがポイントでございました。  言うなれば、そういたしますと、借りられなくなりますれば、民間会社でありますれば不渡り、破産ということに相なります。それを何としても乗り切って給料を払い、ボーナスを払ってまいるということになりますと、保守管理それから工事費、言うなればレールを食い、砂利を食い、給料払いをしてまいらなければならぬ、こういう深刻な事態に相なるわけでありまして、何としてもこの深刻な事態は回避をして鉄道再生を図るということでありますれば、前段御審議の中で申し上げさせていただきましたとおり、公社制度ではなかなかこのことが達成できないな、全国一元的な運営の中ではなかなかこれも達成し切れないな、こういう数々の理由がございまして、民営的手法、御見も分割は反対であるが民営はやむなしという、こういう御提言をいただいたわけであります。  同時に、この巨大な企業体としての鉄道、果たして地域鉄道として地域住民のニーズにこたえることができ得たであろうか、また地域交通として他の交通手段との競争、競合の中で、優位を占めるとは言わぬまでも機能することができ得たであろうか、こういう点々を考えさせていただく中で、無理のない分割体の中でこれを取り進めることが大事がな、こういうことで当初四分割案、本州についてあったことを承知をいたしておるわけでありますが、新幹線を基軸とした旅客流動の完結度というものを起点として計算が行われてまいったというふうに承知をいたしておるわけであります。  この収支計算において展望がどうなるのか、こういうことであるわけでございますが、民間的な手法を駆使しながら、また地域のニーズに十二分にこたえていく、またみずからの鉄道であるというこの草創の観点に立って労使ともに地域交通としてこれに対応するということでありますならば必ず活路と展望は開けていくであろう、このように思い、今日の現況よりは、この手法を講じてまいりますことが鉄道の再生と発展につながる、こういう確信のもとに御提案を申し上げ、間もなく法律案を今国会に提出をさせていただく、こういう段取りに相なっておるわけであります。
  248. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 五分ほど答弁をいただきましたが、私の質問には何ら答えていない。全くはぐらかしたような答弁ですね。非常に残念に思うんですけれども、第一、むしろ私は、日本国有鉄道法というのはこれは改正した方がいい。やはりこれだけの負担を国民に負わすような場合には体質を変えていかなければならぬ、それは私は認めるのですよ。それはもう最大限民営的な手法を入れなきゃだめです。しかし公社であったからだめだったというのは言いわけにならぬです。これは公社であったらなおそういう借金の整理ができたはずなんです、逆に言うと、民間会社よりも。これは本当におかしいのだ。大体公社とか国有産業というのは余り利子の要る金を使わしたらだめなんですよ。そもそも利子の要らない金を使うから国有であるとか公社であるとか言うのですよ。民間会社なら自己留保分がなきゃ投資をしませんよ。ある程度あったら、今度は増資をしますよ。さらに借り入れをいたします。それは増資は配当しなきゃならぬけれども、これは利子の要らぬ金です、それは率直に言って。それで企業が経営されるわけでしょう。ところが、公社というくせに、八十九億の資本金を、借金をしながら四十五年まで増資をしてないでしょう。こんなことがありますか。無責任きわまるよ。二兆円以上の売り上げを持っておる会社が資本金の八十九億をそのままにしておるわけですよ。これは怠慢じゃないですか。会社経営になってませんよ。全然増資をしないで全部借金でやったんです。そうでしょう。総理はどう思われますか。あなた、経営者的感覚がどうかと思いますけれども、どうですか。
  249. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  公社の理論は先生御指摘のとおりであります。しかし、我が国の鉄道事業、独占体制のころは十二分な利益を上げながら走り続けてまいりました。先ほども御指摘のように三十九年、そして四十六年から赤字に転落をしてまいるわけでございますが、そういう中で対応がいかようにもできるという、実は労使にまだ過信がございました。私どももまだまだ十二分に対応するであろうと思いながら、しかしやはり現状に合うべき改革をやるべきであるという主張も国会の論議を通じ、また政府を通じて行われてきたことも事実であります。  そういう中で、先生の頭の中にありますヨーロッパ諸国の単年度主義の補助決済方式、なぜこれが取り入れられなかったのか、こういうことに相なるわけでありますが、これはもう過ぎ去ったことでありまして、今このことを論及をいたしておりましても基本的な解決に相なりません。現実の中でどう解決をするかということに相なりますと、公社制度のもたらす欠陥というものは、先生が冒頭御指摘されましたように、政治の介入等々いろいろな諸問題がございましたことによりましていろいろな試行錯誤もあったことも事実かと思います。こういうすべての反省の中で新しいスタートを切りますことが大事であり、このことが再生につながる、また、このことが一こまおくれに相なってはならぬ、ただいまの時点が極めて重要な時点である、こういうふうに認識をいたしておるわけでございます。
  250. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはり政治というのは過去の歩んだ道を検証しながら未来に向かって進まなきゃならぬです。そして、もう過去のことは言わないなんておっしゃるけれども、過去を分析しないとまた同じ轍を踏まれたら困るでしょう。さっき私は同じ轍を踏みつつあるんじゃないかと言って心配をした整備新幹線の問題もあるわけですよ。  それはさておき、労働者の数も、各国とも国鉄で十七万とか二十万台なんですよ。日本だけなぜ多い多いと言うか。しかも東日本は幾らですか。地域性というけれども、東京と青森は地域性がありますか。東京と青森は密着してますか。どうなんです、それは。この地域性は、密着してますか。そうとは思われぬね。
  251. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  東京と青森、東北本線、青森と上野の間を結んで今日まできました。そういう意味で東京と東北・青森、これは一体的な、まあ東北、関東、東京圏とこうなるわけでありまして、そういう鉄道、東北線という基幹幹線によって結ばれておりますという点で一体性がある。
  252. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 だから僕はやはり初めから分割ありきじゃないかと言っているんですよ。  そこで、先ほどちょっと監理委員会に質問いたしましたが、今度は資産額、債務額、これは本州の三社には債務額が入っておるのですが、これは将来大きな問題になる可能性がある。ですから、私はこのうち簿価のものは幾らであるのか、それから時価で見たものが幾らであるのか、その簿価のうち土地は幾らであるのか、これをひとつ各社別に出してもらいたい。
  253. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、会社が引き継ぐ資産としましては事業用資産と関連事業用資産との二種類がございます。  今旅客会社別にそれを出せということでございますが、ちょっと手元に資料がございませんで、旅客鉄道会社六社全体で申し上げますと、事業用資産が約四兆八千億円、この内訳といたしましては、土地が約四千億円、償却性資産が四兆四千億円、合計四兆八千億円でございます。  それから関連事業用資産といたしましては、これは時価で評価するわけでございますが、六十二年度見込み価額で約一兆二千億円、内訳といたしまして、駅ビル等の用地、これが約六千億円、それから子会社の株式、関連会社の株式、これも分けますけれども、これが約五百億円、それから現在、職員が住んでおります宿舎用等の土地でございますが、これについては要員数がどんどん減っておりまして空き地ができてきておるわけでございますけれども。現に人が住んでいるということで、そういうものは徐々に会社の方で整理をして売却した方がいいだろうということで、旧国鉄に置いていくんではなくて時価で評価して新会社の方に持っていくということにしておりますのが約五千億円、トータル一兆二千億円でございます。
  254. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと確認しますけれども、土地は全部で四千億ですか。もう一度確認しますが、そうおっしゃったのですか。
  255. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 事業用資産の中の土地は約四千億でございます。
  256. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は非常に心配をしておるのですが、これは将来民間会社にする、そうでしょう。これは民間会社にするんでしょう。間違いありませんか。
  257. 三塚博

    ○三塚国務大臣 当初、出資会社でございますが、逐次株を放出し、純粋民間会社に移ってまいります。
  258. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは大変大きな問題を包蔵しているのですよ。どういう問題を包蔵しておるかといいますと、これは民間会社なら、土地は四千億でしょう。簿価の百倍と言われていれば四十兆でしょう。土地は四十兆。いいですか。そうすると、なるべく路線を廃止すればもうかる。どんどん廃止してしまえばその土地は膨大な資産になるのですよ。こういう仕組みになっておるのです。それで私が心配しているのです。そういうことを言う人があるのです。鉄道を通しておるうちは収益が余りないからそれは資産としては大したことがない、鉄道を外せばもうかるような仕組みになるでしょう。だから私は、これは純然たる民間会社にするなんてとんでもないことだ。これはやはり政府が絶対にコントロールできる株を所有しておかないと、鉄道が廃止される。民間会社の発言力が大きくなって鉄道を廃止してやろうと言えば、時価か簿価の百倍だというなら、これは四十兆になるのです。こういうものを包蔵しているから私があえて聞いておるのです。鉄道が走っているうちは価値がないけれども鉄道を外したら価値があるなら、余り非難のないように鉄道を走らせて、もうあとはやめちまえ、こういうことすら考えられるから僕は言う。  それで今、日本の国民は、あるいは財界もなおそうですが、土地に異常な執念を持っておるところに問題があるのですよ、これは。ですから、純然たる民間会社にされたら絶対いかぬ。これはもうむしろこの新しい会社をどこまでも国が責任を持ってやるんだ、こういうようにしておかないと、これは大変なんですよ。ですから、新会社が発足するときには貸借対照表、資産表をつけるでしょうね。これは本当に各会社別のを出してください。出せるんだろう、これは。
  259. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 ただいまトータル額で申し上げましたけれども、六分割会社ごとの数字につきましてもお出しいたしたいと思います。(多賀谷委員「各会社別に出すと言うの」と呼ぶ)提出いたします。できる限り早く出します。
  260. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、これは簿価で出したというところに問題があるのですよ。これは収入がないのですから、鉄道が通っていれば価値は余りない、収入が赤字なら。しかし、今後は黒字になるのです。今から聞きますが、あなた方の経営見通しては黒字になるのです。そうすると資産が出てくる。ということで簡単に民営志向と言うけれども、それは限度がある。だからといって、私はこの新しい会社の経営の自主性を奪うようなことはすべきでない。これは前提条件ですよね。従来、やはり普通、収益とそれから資産とで大体評価していくんですよ。簿価のみの方式をやるのは珍しいですよ、これは。その点をぜひはっきりしてもらいたい、私はこういうように思います。  そこで、私は質問しますが、純然たる民間会社にはしないんでしょうね。コントロールする程度には政府は株を持っておくんでしょうね。
  261. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、最初全額政府持ちであります。それで、逐次事業の好転を待ち株を放出するという方針に相なっておるわけでございますが、ただいまの論議を踏まえまして法案提出時までに十二分にその辺のところも詰めてまいる、こういうことになろうかと思います。  一つ御理解をいただきたいのは、四千億円と申し上げましたが、それは事業用資産として残ったものであります。非事業用資産二千六百ヘクタールということで五兆八千億を上回る額で処分し、国民負担を軽減してまいるというのが方針に相なっておるわけでございますが、事業用資産でございますから、そこにプラットホームがありレールが走っておるということだけは間違いございませんし、中心都市交通、大都市圏交通というものは二十一世紀以降についても鉄道の特性分野であると言われております。この地域における鉄道が外れて他の事業に転換するという可能性は今のところないと見てよろしかろうと思います。言うなれば、過疎地に相なってまいって乗る人が大変少なくなってまいりました、収支採算上とてもこれを維持することが全体の収支の中で難しい、そういうことの中で経営者がどう判断をするかというのがそういう地帯の鉄道でございますから、そうでありますと先生御指摘のような御心配も出てこないわけでございまして、そういう点なども十二分に勘案をしながら分割・民営という基本的な理念を踏まえ、なおかつ、さような御心配の向きにも十二分にお答えのできるデータ提出、また法案審議の段階における御審議を煩わさせていただきながら御理解を得てまいる、こういうことにしてまいりたいと存じております。
  262. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 レアケースのように受けとめられておるようですけれども、やはり制度としてそうなる可能性がある。これは政治家として心配しなければならぬですよ。私はどこどこがそれをやるという話をしているのじゃないのです、制度としてこういうものを包蔵しておりますよと。できぬことはないのですから、違法でも何でもないのですから、それは。ですから、私が純然たる民営会社にはできないんでしょうねと言っているのはそこなんです。法案まで検討するということですから、私はひとつ、どういうような法案が出るのか。今の亀井さんの再建委員会ではそこまでお考えになっていない、みんな善人ばかりですから考えられていないのかもしれませんが、今の日本のどうも経済情勢、財界の情勢はそういうものが出てくるんじゃないか、こういう心配から私はあえて聞いておるわけですね。ですから、その点は十分私の言っておるところを酌んで法案作成をしてもらいたい。  そこで、私は具体的に三島についてひとつ経営収支の見通しを聞きたいと思います。  今まで三島は赤字であったのが急に六十二年には黒字になるというのは、何を言っても国民は解せないのですよ。当分努力をしてやりますということはわかるけれども、これが一遍に一挙に六十二年からみんな黒になっていくというのはちょっとわかりにくい。そこで具体的にお聞かせ願いたいと思います。時間も十分ありませんから、私の方もデータを少し持っておりますが、ひとつお答え願いたい。
  263. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 現在、例えば北海道などが非常に大きな赤字を出しているにもかかわらず、なぜこれが昭和六十二年度には黒字になるのかということでございますが、意見書にもつけてございますように、一つは、現在よりは少しは、運賃改定も若干やっていきますから収入が上がる。それよりも何よりも要員数の減少、私鉄並みに合理化していくということで、人件費あるいは追加費用、年金の追加費用でございますが、そういうものにつきましてはこれを旧国鉄の負担とする等々のことをやりますと、営業費用も当然に縮小いたします。しかし、それでもなおかつ赤字が出ます。で、その赤字につきまして、六十二年度スタート時において全国の六分割会社がほぼ均衡のとれた形の収益力があるという前提で六分割会社をスタートさせるべきであるという観点から、三島につきましては六十二年度に出るであろう赤字を消すために、三島合わせて約一兆円でございますが、一兆円の基金を設定して、その運用益で赤字を消し、均衡のとれた姿でスタートさせるという形になっております。
  264. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはなかなか旧来にない、計算の仕方を変えていますね。例えばこの動力費でも、人件費等は別のところへ、今まで物件費、動力費とか業務費とか修繕費に入っておったのを、今度は人件費は人件費に振りかえているからちょっと計算がなかなか難しいのです。これはなかなか我々はわかりにくい。そういうわからない中でも、我々が調べてみますると、四国、九州は御存じのようにもう古い列車ばかりです。この古い列車ばかりで、そしてもう耐用年数が過ぎておるような列車を使っておる。ところが、四国の場合、車両購入費を見ると、わずかに六億ぐらい。六十二年度に六億あるいは六十三年度は五億、六十四年度は三億、六十五年度が六億、あるいは六十六年度が六億円。ざっと言うと、このぐらいしか計上してないですよ。これは一体どういうようになるのですか。  そうして修繕費もそうですよ。動力費は、円高を見込んだといえば先見の明があるようですけれども、六十二年はわからぬですよ、これは。ですから、従来のベースでなぜやらなかったか。  こう一つ一つ当たってみますると、どうもこれはつくった、まさに黒字にするために無理をした収支見通してはないか、こういうふうに思うのですが、ひとつ四国なら四国で御答弁願いたい。
  265. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 資料をつくりましたのは監理委員会でございますから、続いて監理委員会からお答え申し上げますが、その前に車両のお話が出ましたので、車両につきまして、前提といたしまして、民営・分割新会社設立までに現在の三島の車両をどうするかということでございますけれども、先生御指摘のように、三島の車両というのは大変古い車両が多いわけでございまして、そういう意味で、これを民営に移行する前にかなり大規模な投資を行いまして現在の車両を更新したいということで、ただいま国会にお願いをいたしております予算の中でこの三島の車両を大幅に更新して当分の間車両更新が余り要らないような形にいたしたい、こういうことになっております。  以下、積算の基礎につきましては監理委員会からお答えを申し上げます。
  266. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会がつくりました資料で先般運輸委員会の方へ提出いたしました資料の中に、四国につきまして、六十二年度の数字でございますが、車両の更新とかあるいは地上設備の更新というようなものを合わせた維持更新投資額は四回で五十三億円、これのうち地上設備が四十七億円、車両が六億円というぐあいに計上してございます。こういう数字につきましては、過去の動向等を勘案して国鉄などとも十分相談してつくった数字でございます。  で、このような投資額につきましては、三島において長期債務を免除するにもかかわらず、一定のバランスシート上試算を立てまして、その試算から出てくる減価償却費で、つまり自己資金で今申し上げました投資ができるように仕組みを考えております。
  267. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、監理委員会の案では実行できなかったというので、六十一年度に急に車両の更新をやったわけですね。そうでしょう。そういうことになるでしょう。この案は大体事実上黒にならない、監理委員会の案は。だから、これじゃいかぬというので、六十一年に駆け込みで車両の方は更新をやった、こういうことしか言えぬじゃないですか。この案はおかしいということを示しているんでしょう。
  268. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生御指摘のように、監理委員会の案ではうまくいかないから六十一年度で車両更新投資をしたということではございません。一応同鉄の車両というのは一定期間で徐々に更新をしていきますから、そういう意味で、このままでまいりますと四国の車両もある程度の更新をしていくということでございますが、その額は、先ほど監理委員会のお話のように、一応減価償却費相当分として立ててあるわけでございます。  ただ、先生おっしゃるように、四国の車両というのは大変老朽車両が多いものでございますから、そのような車両では新しい民営会社においては快適なサービスを提供しないじゃないか、三島についてはもう少し現在の国鉄の間にできる限りの温かい措置をとっておいた方がいい、こういうような非常に強い御指摘がございますので、明年度予算におきましては極力新しい車両に更新をしたい、こう考えておるわけでございまして、その結果は、監理委員会の御計算については車両の更新費というものが当初見込んでいたよりは少なくて済むという格好になりますのでプラスには働くと思いますけれども、別に監理委員会の御答申のつじつまを合わせるためにやった、こういうことではございません。
  269. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 結論は同じじゃないですか。監理委員会は、これは六億円、五億円、三億円、六億円、六億円、こうなっておるでしょう。だから慌てて九十五億円を六十一年度に入れたわけです。しかし、これでも足らないのですよ。大体、五年間で更新をしなければならぬ車両は、現在もう年限が切れているのが二百四、五年後に経過するのが百十三ある。三百何ぼあるのです。これで幾ら九十五億円出しても、あと毎年五億円や三億円やっておったのでは間に合わない。大体無理なんですよ。  だから、九州でも、九経連は九州の国鉄問題調査会というのをつくっているのですが、答申はだめだ、十七年たたなければ黒にならぬぞというのを出しているのです。償却をほとんど見ていない、そして車両も何も見ていない、そして値上げたけ見ておる、経費の増大をほとんど見ていないじゃないかというのを出しておるのです。そんなにうまくいきませんよと。同じ経済の専門家ですよ、この人たちは。民間の専門家を集めて調査会を開いて検討しているのです。うまくいきませんよというのを公表したのです。これはもう一々議論しておると大変ですからやめますけれども、これを公表したのですよ。ですから経団連の方も、もうこれは当分赤字だ、こう言っておるのに、急に六十二年度から皆黒になるように計算が出ておるのですよ。もう初年度から行き詰まっできますよ、こんなものは。大臣、どうですか。あなたはめくら判を押したわけじゃないだろう、これだけ詳しいんだから。しかし、こんな細かいことはわからないかもしれぬけれどもね。
  270. 三塚博

    ○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  今監理委員会次長から基本的な考え方が申されました。一つは、私鉄並みの合理化、適正人員の中でこれをとり行ってまいる、こういうこと。地域交通として、地域民の信頼の中でこれを運行をさせていただく。しかしながら、三島につきましては、非常に厳しい旅客需要の落ちもありますものでございますから、経営が大変であるな、こういうことの中で長期債務を一切免除させていただく。同時に、今先生御指摘のように、赤字になります分を、一兆円の三島基金ということでこれを拠出をさせていただきまして、これを積み立て、その果実をもちまして赤字分を補てんをさせていただく。こういう計算で初年度から、わずかではございますが黒字に相なります、こういうことでスタートを切らさせていただく、こういうことに相なっております。
  271. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、修繕費についても動力費についてもいろいろあるのですが、要するに支出の方を物すごく削っておるのです、これで一体経営できるのですか、こう聞いておるのですよ。それは、基金から入っているのも収入になっているのですから、それは承知しています。それは物すごく無理をしていますよ。こんなことが土台で黒字になるなんというずさんなデータが出ると、我々は審議できない。この支出について子細に根拠を出してもらいたい、こういうように思います。これは、今までが幾らであったのか、幾らしなければならないのか、これを出してもらわないと、三島が黒字になりますよなんて勝手に言えないのです。我々がこんな審議をするのに、来年からは、六十二年からはもう黒に行くのですよなんて言って、初年度から赤になったらどうしますか。では運賃をぐっと上げればいいじゃないか、今度はいよいよ国鉄離れが起こる。ですから、無理をしてつくっているのですよ。六分割、それからさらに貨物は一本でしょう。私は、分割の技術的デメリットはもう言いません、もう時間がありませんからね。同じ時間帯をどうするのかというようなことは、別の機会に言いますけれども、非常に無理があるのです。きょうはこれだけ指摘しておきたい、こういうように思います。ですから、次の機会までに明細にこの根拠を出してもらいたい。  そこで私は、もう時間もございませんが、一、二点お聞かせ願いたいと思います。  総理、率直に言うと、今国鉄の職場というのはみんないらいらした不安がある。その一つは、みんな自分が選別されていると思っているのですよ。区長は区長、駅長は駅長、それは一般の職員を自分が選別するけれども、自分も選別されているのです。選別というのは何かということですが、おれは旅客会社に行けるのか、旧国鉄に残るのか、こういう不安が上から下まであるのですよ。そうして、この選別する人がまた自分が選別をされておるという空気がもう横隘しているのですよ。こんなことで私は国鉄再建はできないと思うのですよ。  これは、大臣、国鉄総裁、重要なことですよ。それはあなたの方は、軍隊式で何でも一律にざあっとやれと。サービスが悪いんじゃないか、こう言うけれども、サービスというのは何だ。国鉄は、定時に、正確に、安全に着くことが最大のサービスです。ずっとそういう教育をしてきたのでしょう。ですから、にこにこするとか愛きょうがいいというのは、それもサービスだけれども、今までの教育は、切符を切るのは、不正乗車はおらないか、そういうことばかりで教育してきておるのですよ。そういう体質になっているのです。それは、民間の活力、自発性とか創造性という分野は、むしろ鉄道じゃなくて関連事業にあるのです。ですから、企画とか宣伝とかあるいは販売のそういう分野にあって、レールを動かすところはそういう自発性、創造性をやってもらったんじゃ困るのですよ。そういう職場であるということを認識しなければならぬですね。そのことを私はぜひ言いたい。  そうして、口を開くとあなた方は、社会党――まあ社会党とは言わないが、野党が運賃値上げをやらさなかった、すなわち国鉄の弾力性を認めなかったと言うでしょう。私は長い間政策を担当して、次のように思います。例えば、これは値上げをするために制度を改正したらだめなんです。制度の改正というものは、それを目標にして制度を改正したらだめなんですよ。それは本来こうあるべきだといって制度改正をしておいて、そうして、運賃値上げとかあるいは値下げというのを弾力的にやらすというのです。今度出されたときの問題は、初めから運賃値上げを予定して弾力性を持たそうとしたから、抵抗するのは当たり前でしょう。政策というものは大体そういうものなんですよ。今、不況産業だから対策をやろうとしたってだめなんですよ。需要業界は反対するのですよ。ですから、経済には波があるわけですから、景気のいいときに振興政策をとっておかないと、不況のときに間に合わないのですよ、相手があるのですから。これは、我々として本当に心しなきゃならぬことです。現実には、もうそのときにやろうとするから抵抗があるのです。我々はそういう長い、苦い経験を持っておって、確かにだれが考えても、国鉄に運賃、料金の決定権を与えなかったというのはまずかった。しかし、値上げをするためにやるというから反対する、そういうことになるんだね。ですから私は、この点をぜひ御注意願いたいと思うのです。  それから、国鉄総裁、どうも私は最近気に食わぬのは、国会を無視しているのです、国鉄は。国鉄はポスターを出しているでしょう。「国鉄です。民営分割で元気になります。」こう書いてある、駅駅に。何だ、まだ国会も通過しないで、民営・分割を先にやられてたまるかと我々は思う。これはまさに国論を二分しているのですよ、率直に言うと。だから、三千五百万署名簿が出てくる。これは我々が冷静に考えて、労働組合の代表とかそういう意味じゃないですよ、冷静に考えて、ある程度の民営は、これは体質を変えなければいかぬから、国民に今までの借金を見てもらわなければならぬからやむを得ぬのだ、あるいは我々の長い祖先からの遺産を売らなければならぬからやむを得ぬだろう。しかし、果たして分割がいいのか、そして一元化がいいのかは、国論を二分しているのですよ、これは。それをもう「民営分割で元気になります。」なんてポスターを張られてはたまらぬ。私はひょっと見たら、これはけしからぬなんと言ったら、いや、多賀谷さん、よく見てください、あなたはちょっと目が悪くなったんじゃないですか、小さい字ですが、「国会のご承認を得てこと書いてありますよ。人をばかにしたような話ですね、これは。  それから、最近こういうことが行われておる。四国の国鉄を考える旅という名称で、レールに乗って四国の名跡を訪ねたり、国鉄の持つよさをかみしめようとして実行委員会をつくり、参加を募集した。ところが、これが民営・分割反対のグループだというので、一回は承認をしたけれども後に取り消してきました。そんなことをすれば、安保反対だったら政府は、学生が阪神からあるいは九州から上京したのをストップしますか。それは、公共の乗り物というのは乗車拒否はできないのです。四国をずっと見て国鉄を考えようじゃないか。殊に四国は、御存じのように、路線が分断をされたり、電化はゼロ、複線化が三%というところでしょう。それで途中で切れておるわけでしょう。それで我々が国鉄というのを一回見直そうじゃないかというそういう旅行を、それもオーケーをしたものですからみんな募集したのですよ。いよいよ行こうとなったら上からとめられたというのですよ。こんなことをすべきでないですよ。やはり法律が通過をして、また通過をしても、その目的によって乗せるとか乗せないとか、これは乗車拒否ですよ。国鉄総裁、一体どう考えているのですか。
  272. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 ポスターの件でございますが、私ども国会を軽視するつもりは全くありません。やはりこういう重大な問題でございますので、国民の方にあらかじめよくおわかりをいただきたいということを国鉄の気持ちといたしましてポスターに書いたわけでございます。いろいろな意味政府が既に方向を決められた、その準備をやっていかなければならないということでございますので、そういうつもりは全くないということを申し上げたいと思います。  また、今の乗車拒否の話は、ちょっと私よく聞いておりませんので十分に調べたいと思います。
  273. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういう思想、信条にわたるような問題で乗車拒否をすべきでない、こういうふうに思います。とにかくいじめの、あるいはまた自分が選別の対象になっておるという気持ちを抱かしておるということは非常な不幸です。これはやはり総理大臣に責任があるのですよ。総裁が首を切られるくらいだから、これは大変だと思っているのですよ、みんな。本当ですよ。おまえ、いろいろ言うけれども、だめだぞ、総裁が切られるくらいだからどんなことをされるかわからぬ。もう職場に行ってごらんなさい。資料でもそうですよ。我々が資料要求をしても、きのうぐらいから出だしたのですよ、その前は電話をかけても何を言っても、甚だしいのは、五十五歳、五十六歳と職員の年齢別を出せと言ったら、政府委員室は出せませんと言う。五歳区切りでないと資料は出ませんと。こんなばかなことないですよ。本当にみんなびりびりしておるよ。そういう職場にしてしまったらだめですよ、これは。再建できない。  そして私は言うのですよ。いろいろ処分するでしょう。そして、旧国鉄に入れるでしょう。これはやがて就職させなければならない。就職をさせなければならない者について、これは過去に処分をされましたよ、欠陥商品ですよと言ったらだれが買いますか。今こういうことが行われようとしているのですよ。そうでなくて、いや国鉄職員はよく働きますよ、技術も持っています、優秀です、こういうように就職を頼みに行かなければだれも雇わぬでしょう。まるきりやっていることが違うんですよ。過去に処分をちょっとされたといってすぐそれをリストに入れて、おまえだめだ。それは、三池闘争のように大きな闘争があったときに一番我々が困ったのは、三井から指名解雇を受けた人ですよ。この就職は、会社が世話しないのですから。そうして組合長の宮川さんは全国行脚、土下座するくらい頼んでやっと就職をさせたのですよ。そうして後から九州の高菜漬けを持って職場を激励に行ったのですよ。いわば欠陥商品だといって追い出されたわけですから容易に就職できない。そういう苦労がこういうときにはあるんですよ。  ですから私は、まさに国鉄がどうなるかという時期ですから、みんないたわり合って、肩を寄せ合ってやるような体制を早く大臣、国鉄総裁もつくってもらいたい、そのことを要望して、質問を一応終わります。
  274. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十七分散会