○春田重昭君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
議題となりました
昭和五十九年度決算に関して、現在の政治
状況に深くかかわる諸問題を踏まえつつ、
総理並びに
関係大臣に
質問するものであります。
当面する我が国
経済は、急激かつ大幅な円高によって、輸出関連中小
企業はもとより、景気の先行き不安も加わり、産業全体が厳しい局面にさらされております。振り返ってみると、現在の円高の背景となっている巨額な経常
黒字は、実は
昭和五十九年度予算編成に大きくかかわりを持っているのであります。
昭和五十九年度の我が国
経済の実質成長率は、当初見通しの四・一%を上回り、五・〇%を達成したのであります。この実質
経済成長率は、対米輸出の増加を中心とした外需によるものであり、外需寄与度は、当初見通しの〇・五%から一・二%へ、経常
黒字は、同じく二百三十億ドルから三百七十億ドルの巨額に達したのであります。
私どもは、五十九年度予算編成に当たり、五十八年度に急増した経常
黒字を縮小するために、大幅所得税減税を軸とした内需の拡大を訴えたことは言うまでもありません。しかし、
政府は、所得税減税は
実施したものの、その見返りに酒税、物品税等の大衆増税を中心に大増税を
実施し、公共料金の引き上げ、福祉
施策の後退とあわせ、
国民生活を著しく圧迫する予算を編成したのであります。その結果、個人消費は大幅に後退し、内需主導の
経済成長を推し進めることができなかったのであります。
このように、
昭和五十九年度予算編成は、今日の円高の淵源であるとも言うことができ、私は、外需依存の
経済を野放しにした
政府の
責任は、まことに重大であると断ぜざるを得ないのであります。
東京サミットを経てもなお、円高は騰勢を続け、いわゆる円高不況の猛威を日々濃くしている現状でありますが、
中曽根総理は、
昭和五十九年度
経済を現時点でどう総括され、また評価されようとしているのか、まずお尋ねをいたします。
ここで、過日開催された
東京サミットについて、若干触れておかねばなりません。
言うまでもなく、サミットの
性格から見て、先進主要国の首脳が一堂に会し、当面する世界
経済、国際情勢など幅広い諸問題に対し、率直な意見交換が図られたこと自体、評価するにやぶさかではありません。しかしながら、
会議の成果をまとめたとされる
経済宣言、政治三文書において見る限り、我が国の意見がどの程度反映されたかについては極めて疑問であります。すなわち、今回のサミットでは、急激な円高を防ぐための先進諸国、特に米国、西ドイツからの
協力を得ることができなかったのであります。
総理、今や
国民は、とどまることを知らぬ円高の進行に恐怖し、先行きに深い不安を抱いているのであります。
期待をつないだサミットにおいて、何ゆえに
国民が強く求める円高是正について、有益であれば介入するとのウィリアムズバーグ宣言を再確認したにとどまり、逆介入等を含む協調
体制についての合意を取りつけることができなかったのか、
総理並びに大蔵大臣の御
所見を賜りたい。
さらに、円高をこのまま放置すれば、今後の我が国
経済は重大な局面を迎えることは必至であります。現在、
政府は、こうした騰勢にいかなる有効な歯どめ策を講じようとされるのか、また私は、現在の円レートは明らかに行き過ぎであると
考えるものでありますが、
政府はどのように認識されておられるのか、あわせて具体的な
答弁を求めるものであります。また、このような急激な円高に、我が国産業、とりわけ輸出産業、関連中小
企業は自信を喪失し、国内産業全般にわたっても競争力が失われつつある深刻な事態に遭遇しており、救済
措置は一刻の猶予も許されません。速やかな対応が強く望まれている今日、
政府はいかなる
対策を講じようとされているのか、
総理並びに通産大臣にお尋ねいたします。
あえて多言を要するまでもなく、我が国
経済が取り組むべき緊急かつ最大の
課題は、これまでの外需依存型体質から内需依存型へ脱却を図ることであり、そのプロセスの中で経常収支の
黒字減少を図るべきであることは、衆目の一致して認めるところであります。そのためには、今こそ思い切った内需拡大策を講ずるべきであります。所得税、住民税の大幅減税及び住宅減税等の政策減税の断行や公共投資の追加など、財政の裏づけのある景気
対策を早急に行うべきであると
考えるのでありますが、
総理並びに大蔵大臣の御見解を賜りたいのであります。
さらに
総理は、必要なら公共
事業などを中心とした補正予算を組みたいと表明されておりますが、どの程度の規模を想定されているのか、時期はいつごろをめどとされているのか、またその財源には、かねて我が党が主張する建設国債を念頭に置いておられるのか、明確な御
答弁を求めるものであります。また、この円高基調が続けば、
経済成長率は大きく左右されることは必定であります。
民間研究機関では、本年度の成長率は一ないし二%台の予測値が示されているのでありますが、
総理が訪米時に約束された四%成長は、現時点でも可能と
考えておられるのか、可能とすれば何を根拠とされるのか、あわせて
総理の御
所見をお尋ねいたします。
次にお尋ねするのは、
経済運営と密接なかかわりを持つ財政問題であります。
昭和五十九年度は、どのように言い繕うとも、大衆課税の
実態から見れば、「増税なき財政再建」が事実上放棄された年と言わざるを得ないのであります。
政府は、六十年度、六十一年度においても増税を繰り返しながら、依然として「増税なき財政再建」を掲げておりますが、もはやその公約は、全くの実体のないものに成り下がっていることは、あえて言うまでもないのであります。今もって
政府は、この公約を堅持されるというのか、そうであれば、大型間接税等の導入は絶対に行わないと確約できるのかどうか、しかと承りたいのであります。
次に、海外
経済協力についてお尋ねいたします。
言うまでもなく、海外
経済協力は、有償、無償にかかわらず、先進国たる我が国が負う当然の責務であり、その拡大を図ることに異論を差し挟むものではありません。しかしながら、遺憾なことに、これまでの
経済援助に対し、とかくの風評がまつわりついていたことは事実でありました。その象徴と言えるのが、今回のフィリピン
経済援助問題であります。
政変後に誕生したアキノ政権を支持し、対フィリピン援助を拡大することに異論はないものの、いわゆるマルコス疑惑を放置したままであれば、
国民の理解が得られるとは到底思えません。これまでのマルコス疑惑をめぐる
質疑の経過から見ても、現段階ではフィリピン
政府に対し、関連の資料を要求していないなど、
政府の消極的姿勢が目立ち、
国民は激しいいら立ちを抑えかねているのであります。
政府には、このマルコス疑惑を徹底的に糾明する決意があるのかどうか、確認しておきたい。また、早期解明に向けて、フィリピン
政府に対し、積極的に資料要求をする用意があるのか、
総理並びに外務大臣にお伺いするものであります。
さらに、我が国の
経済援助全般にわたり、適正かつ効果的、効率的に使われているかを検証するシステムを確立すべきであると
考えるのでありますが、御
所見を賜りたいのであります。また、こうした問題の再発を防止するため、いかなる
対策を講じようとされるのか、明快な
答弁を求めるものであります。
さて、
昭和五十九年度決算検査
報告を見ると、会計検査院からの指摘
事項、批難
事項は依然として後を絶たず、事態は改善されないばかりか、むしろ恒常化、悪質化の傾向をたどっているのであります。こうした事実は、
国民の血税を預かる
政府として強く反省し、襟を正すとともに、予算の適正執行に深く心しなければなりません。したがって、行政上の
責任をより明確にすべきは、当然の努力と
考えられるのであります。
五十九年度決算の会計検査院指摘
事項は百八十件、税金のむだ遣いは何と二百二十五億円にも達しており、この顔は、前年度に比べ三二%の増加となり、過去三年間では最高の数値を示しているのであります。検査院の検査
実施率が九%であることを
考えれば、不正、不当の指摘はまさに氷山の一角にすぎず、水面下を
考えれば、途方もつかぬ巨額となることは明らかであります。極めて厳しい財政
状況にある現在、こうした巨額の税金のむだ遣いが存在することは、
政府の歳出削減の方向性を問い直さなければならず、同時に、予算編成に当たっての
政府の決算軽視の姿が浮き彫りにされていると言えるのであります。
政府は、こうした検査院の数多くの指摘をどう受けとめているのか、また、再発防止にはいかなる努力をされているのか、お伺いしたいのであります。
以上、
昭和五十九年度決算にかかわる諸問題につき、
政府の
考え方をただしてまいりましたが、
政府の誠意ある御
答弁を要求するものであります。
最後に、私は、当面する未曾有の難局を乗り切るために、財政の出動によって、思い切った内需拡大策を
実施するよう強く要求し、
総理の決意を承り、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕