○藤田スミ君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表して、
国立病院等の再
編成に伴う
特別措置に関する
法律案について、
総理並びに関係閣僚に質問いたします。
中曽根内閣は、「戦後政治の総決算」を目指し、歴史の進歩に逆らい、軍備拡大、臨調路線の強行によって、健康保険の抜本改悪、老人保健
医療のたび重なる改悪をねらい、今回、
国立病院・
療養所の三割縮小、
地域医療からの撤退という再編
計画を打ち出しました。
この
厚生省計画が発表された一月九日、日本列島に言い知れない不安と激しい怒りが突き抜け、今この無謀な
計画に
反対する
国民の運動は、潮のように広がっているのであります。なぜなら、これらの
医療施設は、
地域住民の命を守る上でかけがえのない存在であるからであります。だからこそ、
全国自治体も、実に八九%が
反対の
決議を上げ、
政府に
計画の撤回を求めているのであります。
総理、あなたは一体、
国民の命を守る国の責務についてどのように受けとめておられるのか、
国民の声に謙虚にこたえることこそ民主政治の基本ではありませんか、明確な御答弁を求めます。(
拍手)
今回の
国立病院・
療養所の
統廃合は、昨年の
医療法の改悪による、日本の総べッド数を百六十五万床から百万床に減らすという恐るべき
計画の一環であり、本来、
国民に
医療を保障する責任を果たすべき国が、逆に
医療切り捨て、患者追い出しの先頭に立とうとしていることに、多くの
国民は慄然とせざるを得ないわけであります。
群馬県吾妻町にある
国立療養所長寿園は、この
地域の唯一の
医療施設として、
療養中の六十二名のお年寄りはもとより、住民の命を守るという点からもなくてはならない存在でありました。そしてそれは、
国立であるがゆえに、今日まで存在してきたし、
過疎地住民の期待にこたえてきたのであります。だからこそ、
政府が長寿園の廃止を打ち出したとき、これまであなたを、あるいは自民党を支持してこられた皆さんも含めて、命を守る必死の
反対運動に立ち上がらざるを得なかったのではないでしょうか。今回の
統廃合再編
計画が意味するものは、まさに
全国無数の長寿園問題を引き起こすことにほかなりません。切り捨ての
対象になっている壱岐、対馬、佐渡など、離島、
過疎地の住民に底知れぬ不安と苦しみを与えることが、果たして政治と呼び得るものなのかどうか、
総理の御認識をぜひ伺っておきたいと思います。(
拍手)
許しがたいことは、
地域医療の切り捨てを
合理化するために、
政府、
厚生省がさまざまな欺瞞と虚偽を弄していることであります。
まず、
地域的偏在を正すためといいますが、それならば、
医療機関が圧倒的に大都市に集中し、
地方、とりわけ
過疎地、離島にほとんどないという我が国
医療の根本的偏在を正すことこそ、
総理、国のなすべき責任ではないでしょうか。
自治体などに
移譲するから大丈夫だと
政府は宣伝しています。ところが、内閣
委員会における我が党三浦議員の追及に対して、
厚生省は、
国立泉北
病院などの
移譲対象に引き受け手がなければ
統廃合すると答え、つまりつぶすと言っているではありませんか。現に
自治体病院は、多くのところで構造的
赤字に苦しんでおり、だからこそ、昨年六月自治省は、
全国自治体に対し、
経営移譲の問題については慎重に対処することとわざわざ事務次官通知を出しているのであります。
自治大臣、この
方針は今でも変わりはありませんね。
そして
厚生大臣、
自治体が引き受けるところはほとんどない、
移譲といっても実際には
統廃合せざるを得ない、これが本音でしょう。どうか正直にお答えください。
政府のうたい文句である高度先駆的
医療の推進なるものも、その多くを首都圏や大都市に集中し、高度先駆的
医療の偏在を一層推し進めるものにすぎません。今、
国民が切実に求めているのは、身近にある
国立医療機関が基本的、
一般的医療と同時に、特殊、専門
医療をともに担う総合的
医療機能を持つことであります。
総理の御見解を求めます。
さらに、
赤字経営、経営効率の名による
国立病院切り捨て論についてであります。
国立医療機関が
民間ではとても引き受けられない不
採算医療や特殊
医療を受け持つ以上、そこに経営上の困難が生じることは当然であります。にもかかわらず、
国立病院の経営状況は、そこに働く職員の並み並みならない努力によって、あの臨調でさえ、収支は他と比較しても遜色はないと言わざるを得なかったではありませんか。これでなぜ
国立病院切り捨てに経営効率を
理由にされるのか、納得のいく御答弁を求めるものであります。
以上、お尋ねしましたように、全く
理由にもならない
理由を並べて
地域医療の切り捨てを強行しようとする真のねらいは何でしょうか。
第一は、言うまでもなく、
医療に対する国の支出を減らし、軍備拡張の
財源を生み出すことでありましょう。
第二は、
国民の命、
医療を年間二十兆円に上る
医療市場としか見ない財界や大企業に、この
国立医療施設を提供しようとしていることであります。現に伊藤忠、丸紅などの大手商社は、近い将来有力な
事業として
医療ビジネスを位置づけております。今回の
計画をめぐっても、せいれい会
福祉事業団なる
民間法人が、
全国チェーンの展開を目指して、三十カ所にも上る
国立病院・
療養所の
譲渡を既に
厚生省に申し入れていると言われています。それでも
政府はなお、
国立病院・
療養所をもうけの道具にはさせないと明言できますか、明確に御答弁願います。(
拍手)
第三は、
国民の共有
財産を巨額の利権づくりの場にしようとしていることであります。東京都北区の王子
病院の土地四万平米は、
時価で百数十億円は下らないと言われています。これを西戸山公務員住宅でやったように、
時価より格段に安く、さらに随意契約で、
民間に自由に売り渡すことになるのではないでしょうか。
さらに、
全国で十五の温泉
病院のうち、実に十三、その九割までを再
編成の
対象としていることも、重大な問題と言わなければなりません。例えば、
厚生省国立病院課みずからがまとめた「
国立病院・
療養所要覧」を見ても、伊東温泉
病院の場合は「その診療圏は
全国に及んでいる。今後、リューマチ
病院、温泉
病院として、さらに
発展が予想される」と評価していますが、もちろん、これは当温泉
病院に限らないのであります。なぜこのようなところまで手放して
民間に引き渡してしまわなければならないのでしょうか。
総理、
国民の病床を利権の温床につくりかえることは断じて認めるわけにはまいりません。
総理の明快な御答弁を求めます。(
拍手)
第三に、公務員労働者の基本的権利のじゅうりんであります。
移譲対象三十四
施設に働く職員は、三千八百四十三名にも上りますが、本
法律案では、これらの職員の身分保障について、何ら触れておりません。
政府は、生首は切らないと言っているようですが、公務員としての身分を事実上強制的に剥奪すること自体、かつての定員法による大量首切りの再現と言わなければなりません。臨調が現在の公務員を二つに区分し、政策決定や権力行使に携わる者だけを公務員とし、現業部門などは非公務員とする方向を既に打ち出しているもとで、これは単に
病院職員のみならず、全公務員労働者にかかわる重大な問題と言わなければならないわけであります。(
拍手)
再編
対象施設に働く職員の身分と権利を守る一体どのような法的保障があるとおっしゃるのか、
総理並びに
厚生大臣の明確な御答弁を求めます。
第四に、防災
病院についてであります。
本来、すべての
国立病院に救急及び災害に備えて
機能を持たせることは当然であります。ところが、
政府の
計画は、
一つは関西新国際空港の建設に伴い大阪に、また関東では、自衛隊立川基地に隣接して設置するということです。関西新空港でどのような大
規模災害を予想されておられるのか、また、自衛隊基地に隣接されたことについて、有事即応のための軍事的色彩の強い防災
病院構想だと受けとめざるを得ませんが、明確な御答弁を求めます。
最後に、文部大臣にお尋ねいたします。
今回の
対象七十四
施設のうち、四十五の
施設に、重度
障害児や病弱児などの養護学校が併設あるいは隣接されています。今広々とした敷地で学び、遊ぶ子供たちを、
統廃合によって家族から一層遠く引き離した上に、狭い
病院、
施設に閉じ込めていくこの
計画は、一体子供たちのために許されていいことなのでしょうか、お答えをいただきたいのであります。
以上、本
法案は、
医療供給の格差を著しく拡大し、医学の進歩を
国民が等しく受ける権利を奪い、
医療労働者の暮らしと権利をじゅうりんし、
国民の貴重な
財産を
医療産業や利権のえじきとし、
国民の生存権を根底から脅かすものであり、
国民はみずからの命を守るために、このような悪法を断じて許すわけにはいかないわけであります。
日本共産党・
革新共同は、
政府に対し、この
法案を潔く撤回することを重ねて強く要求し、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣中曽根康弘君
登壇〕