○上坂昇君 上坂昇であります。
日本社会党・
護憲共同を代表し、ただいま
趣旨説明のありました
特定商品等の
預託等取引契約に関する
法律案とそれに関連する事項について質問いたします。
まず第一は、希代の悪徳商法である豊田商事の現物詐欺まがい商法についてでありますが、
昭和五十六年四月会社が設立され、会長永野一男が刺殺されてその幕を閉じた
昭和六十年七月十七日までわずか四年間、その間に老人、婦人が大半を占める被害者数実に四万人、集めた金額二千二十億円に達し、中途解約分を差し引きましても実額一千四百七十億円に達するのであります。
豊田商事の金の詐欺まがい商法の苦情は、既に五十六年後半から通産省、公正取引
委員会、警察等に持ち込まれまして、資料によれば、五十六
年度百九十六件、五十七
年度三百八十四件、五十八
年度に九百三十四件と、相談、苦情、問い合わせは増加の一途を続けているのであります。この
状況を踏まえ、五十八年五月十八日の衆議院
商工委員会では、我が党の議員が初めて豊田商事問題を取り上げ、警告を発し、さらに同年十月四日の
商工委員会では、当時一千億円とも推定される集金が行われ、全国的に猛威を振るっておりました豊田商事商法を詳細に分析、
報告して、早急に対処する必要があることを
政府に求めているのであります。
この警告、要請に耳をかさず、三年近くも何らの手を打とうとしなかった通産省、公正取引
委員会、警察庁、つまり
政府の
責任は実に重大であり、世人の批判を浴びているのは当然のことであります。(
拍手)このような悪質な商法をばっこさせないために、
行政指導を強く行うとか、出資法や独禁法の違反あるいは詐欺罪等で摘発できたと考えるのが、私どもの考えるところでありますが、どうしてこれができなかったのか、また放置してきたことに対して何らの反省もしていないのか、それらの点について、通産大臣、公正取引
委員長に答弁を求めます。
次に、訪問販売に係る悪徳商法対策についてでありますが、五十七年から関東
地方知事会、東京都知事あるいはまた各都道府県の消費生活センター所長
会議等から、訪販法の強化
改正により対処することを
政府に要請が提出されています。特に五十八年に入っては、総理、寝ないでくださいよ。あなたの大好きな諮問機関である
国民生活審議会が、店舗外における消費者取引の適正化を求める
報告書の中で、特に訪販法第二条における
指定商品
制度の
見直し、クーリングオフの現金販売への適用等について
改正すべきであるとの答申を行っているはずでありますが、それが全く無視されてきたのは実に不可解であります。これらに対する総理の見解を求めます。
次に、私は、その日の生活にも困り、損害賠償の訴訟費用にも事欠き、苦しんでいる全国の豊田商事
関係被害者の皆さんの救済のために、豊田商事の従業者の源泉所得税及び
社会保険料等に見合う金額を、豊田商事の管財人に対して何らかの形でこれを引き渡すような
措置が至当であると考えるのでありますが、あなたは、高度の
政治判断により、こうした私が申し上げましたような
措置をおとりになる意思があるかどうか、お伺いをいたします。また、ことしの三月三十一日、都内の六十歳から八十歳代に及ぶ被害者四十七人によって、国及び元豊田商事のセールスマン百十一人を相手取り、総額四億二千万円の損害賠償請求訴訟が東京地裁に起こされており、さらに大阪地裁には、豊田商事社員のうち、高額所得者の上位二十名を
対象とする不当利得返還請求訴訟が管財人から出されています。これらに対して国が示すべき配慮はどうあるべきか、この点についても総理の見解を求めます。
いよいよ首題の
預託等取引契約法案でございますが、豊田商事は既に崩壊し、豊田式不正商法のばっこする余地は当分遠のいていると考えられるのに、あえてこの
法案を提出してきたのは、
行政の今までの長い間の怠慢に対する世論の非難や厳しい批判をかわそうとしてとられた、まさにこそくな手段のあらわれであると断ぜざるを得ません。
預託等取引契約に係る預託者の利益を守るものとしていますが、望まれる禁止法ではなくて、単なる行為
規制法にとどまっており、顧客に対する書面の交付、不当な行為の禁止事項あるいは書類の閲覧を義務づける、その程度で、手をかえ品をかえて脱法行為をねらう不正取引から、どうして預託者を守ることができるでありましょうか、豊田式悪質不正の商法を駆逐できるでありましょうか、甚だ疑問であり、私は到底不可能であろうと思うのであります。
通産省が頼りとする産業
構造審議会流通部会、消費経済部会の答申では、豊田式商法は一般的には健全な
運営を行い、顧客に安全に高収益を提供することは極めて困難だなどと指摘しているのでありますが、実に実情を見きわめない、なまはんかな分析にすぎません。豊田式不正商法というのは、わらにもすがりたい孤独な老人や世事に疎い婦人を
対象にして、最初からそのあり金をすべて巻き上げてしまうことを
目的に考え出され、そして実行に移された、まさに詐欺行為なのであります。したがって、豊田商事は、五十八年に入ってから、かつてネズミ講で摘発されました天下一家の会をまねまして、宗教
法人による資産隠匿方法まで
計画した恐るべき会社であり、世の中に存在を許すことのできない商法だったのであります。
提案されている程度の法
規制で、一体この恐るべき豊田式不正商法を駆逐することができると考えておられるのか、通産大臣の真意を伺いたいし、公正取引
委員長にも見解を求めたいのであります。
金の預託ペーパー商法、ニューマルチと言われるベルギーダイヤモンドの媒介取引及び鹿島商事のゴルフ会員権
利用商法に要約できるところのこの豊田商事事件は、いずれも訪問販売の手口を使い、訪販法や関連法の網の目をくぐることによって起きたものであることを認識しなければならないのであります。この不正悪質な商法の跳梁によって、今日、健全な商取引を行っている各種の訪販業者がそのとばっちりを受け、訪販業界そのものの
社会的評価は著しく低下をいたしているのであります。去る四月六日福島県会津若松市で、芳賀幸那という小学校三年の女の子が誘拐をされ、一千万円の身の代金を要求されるという事件が起きたのであります。幸い四十六時間後、無事救出され、世間を安堵させましたが、この事件の三人の犯人のうち、主犯大江一美二十三歳は、マルチまがい商法の寝具販売でつまずいたのが原因で、このような犯罪に走るようになったのであります。
マルチやまがい商法は、通産省の
行政をあざ笑うかのように後を絶たないのでありますが、また、訪販業界の頭痛の種になっているのであります。今、必要なのはまさに訪販法の
改正であるのに、通産省は何を一体ぼやぼやしているのかというのが、私の偽りのない見解であります。なぜ訪販法
改正を渋るのか、通産大臣にその
理由を明らかにしてもらいたいのであります。
不正商法撲滅に熱意を示さない
政府及び通産省の態度に業を煮やしまして、我が党は、去る四月三日、現行訪販法のスタイルを踏襲しつつ、
内容では基本的な
改正法案を提出をいたしたのであります。
その骨子は、第一に、名称を訪問取引法とし、ゴルフ会員権、
施設利用権、財産権等、役務・サービスに関するものをこの
規制の
対象に加えたこと。第二に、金地金や宝石を
指定商品にできない現行法第二条三項に、庶民の小口の財産形成、保存に供される物品、こういう字句を挿入いたしまして、商品
指定追加の道を開いたのであります。第三に、
預託等取引契約に係る取引で、預託者の預託物件の完全返還を担保するため、預託等取引業者に対して、金融機関または保険会社との支払保証委託契約の締結を義務づけ、健全な営業
内容あるいは資産、これらを有し、
社会的信用のある企業でなければこの種の取引はできないこととして、豊田流悪質業者の排除を図ったこと。第四には、連鎖販売業にベルギーダイヤモンドや鹿島商事商法に見られる取り次ぎ、媒介などの委託業務を取り込み、マルチまがい商法における紛争や被害等の防止を図ったこと等々であります。
消費者保護の立場を貫いた
法案ではありますが、決して私は万全であると思ってはおりません。しかしながら、
地方公共団体や消費者団体の要望、
意見を十分に取り入れたものであり、訪問取引における悪質不正の商法、取引を排除するために相当な効果を上げ得る
法案であると自負している次第であります。よって、
政府案と我が党提出の訪問取引
法案を比較検討しつつ、よりよい
法律を制定することが
国民の期待にこたえる道であると私は信じるのでありますけれども、我が党の
法案に対していかなる見解を持つか、また、私が今申し上げたことに対してどういう考えを持っておられるか、通産大臣の見解を求めるものであります。(
拍手)
最後に、通産大臣は、現物まがい商法という言葉を使いましたが、これは全くの誤りであります。取引の基本は現物の取引であります。したがって、現物まがいなどというのはありません。現物の詐欺商法まがい取引でなければなりません。こういうこともわからないでこんな
提案をするということに、私は腹が立つのでありますけれども、そうばかりは言っておれませんから、誠意ある答弁を総理、通産大臣、公正取引
委員長に求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕