○安倍(基)
委員 茂串
長官は役所の先輩でございまして、余りぎしぎし言いたくないのですけれ
ども、ただ私は、この問題は非常に重大な問題である。今まで答弁はすべて政治が重大な局面に立ち至ったときと言いますが、だれがそれを判断するんだ、判断権、決定権はだれにあるんだという問題が根本にあるわけです。
かつての
日本国憲法においては、天皇は統治権を総撹しました。したがって、国会がそれをある程度制約する。天皇は統治権を持っていたわけです。統治権は、そういった判断権があったわけです。それは国務大臣の輔弼によって実行されるという
状況ですね。イギリスの場合にも、キングが機能を持っておる。国会がそれを制限している。ところが
日本国憲法、今の新しい憲法は、国会を国権の最高機関としたのです。天皇は象徴になったんです。そうすると、総理大臣が何でその決定権と判断権を持っているか。七条に書いてあるといったって、七条は全くの国事行為です。形式行為です。
特に、私はこの前も
お話ししましたけれ
ども、非常に似た
ケースが西独です。西独の場合には、大統領が象徴大統領です。そのときに解散権はいつ与えられているかというと、不信任案が成立したときだけしか与えられていないのです。不信任案が成立するということは、行
政府と立法府が決定的に対立するときです。そのときこそ初めて政治が重大な局面に立ち至って国民の意思を問うべきときです。それ以外のときは、総理大臣が勝手に政治が重大な局面だ、だから国民の意思を問うという権利がどこに与えられているか。単に七条に書いてあると言いますけれ
ども、七条は全く国事行為ですね。全く形式行為です。となると、まさに六十九条が西独と非常に似た、国家構造論的に言っても同じ、文理的に言っても同じなんです。
私はここに書きましたけれ
ども、六十九条にはこう書いてあるのです。「アンレス ザ ハウス オブ レプリゼンタティプズ イズ ディゾルブドウイズイン テン デーズ」私は六年間海外におりました。この英語的な感覚からいけば、解散するか総辞職するか、そのいずれかなんですよ。まさに
要件そのものを定めた。それが国家構造論的に言っても文理的に言っても全く正しいのです。七条は単に国事行為を書いた。国事行為であるからこそ何ら制約なく助言と承認によりできると書いてあるのですよ。
私はこの論議は、ある憲法学者が海外に行きまして、ケーディスという昔書いた男に聞いたら、私の本意は六十九条だけだったんだ。それであるからこそ、憲法制定後最初の解散のときには、不信任案が可決されたときにそれを
要件に解散しているのです。それがたまたま吉田内閣が鳩山派をやっつけようと思って突然解散した、七条解散したわけです。そのときの法制
局長官は佐藤達夫さんです。彼の汚名は必ず残りますよ。もし茂串
長官が中曽根さんのいろいろ言うことにつられてそれを是認していけば、必ずや汚名が残りますよ。私はそれを言っているのです。
たまたま唐沢さんが来られましたから、唐沢さんとも私は昔からの、ちょうど同期でございますので余り強く言いたくないけれ
ども、私は今までちょっとこの前の後藤田発言をとらえて言っているわけです。法務大臣と法制
局長官にいろいろお聞きいたしましたから、またあれでございますけれ
ども、私が今問題としていますのは、後藤田さんがこの間、定数是正できない場合はそれを大義名分にして解散できるということを言っている、これはまさに不謹慎な言葉であるということをとらえて言っているわけです。
後藤田さんが来られたらもう一遍そのことを確かめようと思ったんですけれ
ども、
本人じゃないから余り言ってもあれでございますが、ちょっと話をずらしまして、むしろ個人的な意見として聞きたいのですけれ
ども、私はこの前の総理に対する
質問で、ダブル選挙をやると必ずそれは繰り返されるだろう、三年ごとに繰り返される可能性がある、これは非常に悪例を残すということを言いました。たまたま後藤田さんのときもそう言ったのですけれ
ども、後藤田さんは、総理が解散しないと言っていますからとかいって逃げちゃったわけですよ。だけれ
ども一考えてみればうまく逃げられちゃったと思って後で残念だったわけですが、これは本当にダブル選挙を一遍やりますと非常に悪い先例になる。前回のダブル選挙は不信任案が通過した。不信任案が通過したというのは、さっき
お話が出ましたように、行
政府と立法府が決定的に対立したときです。そのときこそ政治が重要な局面に達していると言うべきなんですね。そのときにダブルが結果的に行われた。今度は意図的に行おうとしているわけです。これが一遍行われたら繰り返される可能性がある。これは憲政史上いい例であるのか悪い例であるのか、それについての御見解を承りたい。