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清水参考人 私は、
社団法人日本パーソナル
コンピューターソフトウエア協会の
清水洋三でございます。よろしくお願いいたします。
私ども日本パーソナル
コンピューターソフトウエア協会は、パソコン用のパッケージソフトウェアの制作と販売をいたしております企業の団体でございます。協会は、
昭和五十七年パソコンソフトウエアの法的
保護と権利の確立を主要な目的として結成設立、スタートいたしました。このような同じ企業は日本に約三百社ございまして、うち私どもの会員が百五十社、会員の販売の合計は全体の約八〇%を占めております。
我が国のパソコンは、
昭和五十三年に約一万台を皮切りにいたしまして、昨年度
昭和六十年度には推定二百十五万台に達しておりまして、合計何と六百万台を超える普及をいたしております。
コンピューターが我が国に導入されました
昭和三十年代の後半から五万台普及するのに約二十年かかっておりますが、パソコンの方は八年間で六百万台も普及するというような勢いでございまして、今後はパソコンが
コンピューターの主力となるだろう、こういうふうに言われております。例えば自動車が、初めはバス、トラックを大企業あるいは軍隊が使うとか、そういう大組織が使っておりましたものが、今自動車といいますとすぐマイカーを
意味するように、既にパーソナル
コンピューターがそういうような
役割を占めてくるだろうと言われております。
アメリカでは、さらにこの傾向は強く、昨年度ではパソコンのいわゆるハードの売り上げが三兆円に達しまして、大型
コンピューターの売り上げを追い抜いているわけでございます。
コンピューターの価格は同じ機能のものが十年間で百分の一に下がり、さらに二十年間で一万分の一にも下がっているということで、この普及にさらに拍車をかけているわけでございます。しかし、
コンピューターを動かす
プログラムの方は、御
承知のように人件費が二十年間で約十倍、この間いろいろ技術的な発展などございまして、制作の効率を上げる技術の方は三倍くらい向上しておりますが、それにしてもやはり制作費の方は人件費を合わせて三倍以上になっているわけでございます。
そのため、
コンピューターのハードの普及に対しては非常に要員不足という問題が出ておりまして、また
コンピューターの普及が非常に目覚ましいということから供給のギャップがますます広がっているわけでございます。
昭和六十五年には約六十万人の要員不足が生ずるというふうに通産省は予想しております。
現在のこのソフトウエアの需給のギャップを解消するため、
政府は
プログラム開発の効率を飛躍的に増大させるシグマ計画を推進しておりますが、それだけではまだ十分ではございません。また、これと同時に
政府が推進しております
プログラムの汎用化の促進、つまり
プログラムを一対一のサービス、いわゆる技術として提供するのではなくて、商品として広く流通させるということを政策として行っておりますけれども、これが絶対に必要なことでございます。
大型
コンピューターの場合には、
一つの
プログラムはユーザーに大体使われるというケースがほとんどでございまして、御
承知のように
プログラムの価格は数百万円から、あるいは一億円以上のもの、数十億円のものもあるようなわけでございます。パソコンも同じような
プログラムの使い方をすれば、
プログラムは、
コンピューターのハードの価格は先ほど申しましたように非常に下がっておりますので、いわゆる
コンピューター自体の百倍あるいは千倍というようなことになってしまう。
そこで、パソコンの普及にとっては、アメリカでもそうでございましたけれども、スタートの時点からこのような
プログラムを汎用化し、商品として流通させるということが必要でございまして、事実そのように推移いたしました。これが私どもが現在制作、販売しておりますパソコン用のパッケージソフトウェアでございます。これまでのいわゆるオーダーメードの
プログラムに対しましてレディーメードの
プログラムとでも申しましょうか、初めてパソコンをさわる方でも、マニュアルとテレビ画面に誘導されましてパソコンを動かしますと、自分の望む仕事を
コンピューターにやらせるということができる、これは皆さん御
承知のとおりでございます。このパッケージソフトウエアは、パソコンが爆発的に日本に普及しました
昭和五十六年から同時に大量に登場いたしまして、パソコンの普及を助けるということになっております。
ゲーム用のソフトウェアから始まって、学習ソフト、科学技術計算のソフト、ワープロソフトなど、現在ではあらゆる分野におけるビジネス用のソフトまで、約二万五千種類が流通しておりまして、金額も千円くらいのものから百万円程度のものまでいろいろ売られております。現在、年間四百万本から五百万本以上の
プログラムが販売されて、金額も五百億円に達しております。アメリカでは、同じに比べますと三千七百万本、四十九億ドル、大体一兆円の市場になっているという
状況で、市場としては日本の約二十倍でございます。
ユーザーは、これまでの
プログラムに比べますといわゆる何十分の一、何百分の一の価格でパソコンの
プログラムを
利用することができまして、大変便利になりました。しかし、私どもソフトウエアをつくっているメーカーとユーザーとの
関係は、間に幾つも流通の段階がありますことも含めまして、一対一の
関係から一対数千、数万というような
関係になりまして、ここに生ずる法的
関係も非常に難しいものになっております。
これまで大型のソフトでは、ソフトメーカーがユーザーのために
プログラムを受注した場合には、ほとんど一対一の
関係で契約が成立しておりまして、この法的な
関係はある程度保障されておりますけれども、パソコンの場合は、今申しましたように、何段階かの流通を経て間接的にユーザーに渡るものでございますから、双方の法的
関係は大変難しい。アメリカでもこの辺は非常に悩んでいるところでございます。
また、このように何百万本もの
プログラムが自由に、また自由に流通されないと困るわけでございますが、自由に流通されておりますので、権利侵害の発生も非常に激しく、組織的にまた営業的に違法行為をしているものも多数ございます。
私どもパソコンソフトの権利侵害の被害は、違法のレンタルにおきまして約六百億円、違法コピー販売において四百億円、違法企業内コピーにおきまして七百五十億から一千億。皆さん驚かれると思うのですが、実は二千億円の被害を受けている。つまり、実体販売が五百億円に対して、被害額は推定二千億円にも達しているというようなことでございます。時間もあれでございますので、御質問があればこの
内容については後ほど申し上げさせていただきたいと思います。
このような違法なものを、違法レンタル、それからコピー製品の販売、それから企業内コピーを侵害の三大悪ということで、私ども協会としても対決してまいりましたけれども、そのほかにも、複製、それから改変、貸与、頒布、盗用など、いろんな違法のケースが続出しておりまして、私どもの協会の
事務局には、週に二、三回そういった違法についての御相談や会員からのリポートがございます。
私どもパソコンソフトウェアのメーカーは、メーカーと申しましても、数社の例外を除きまして、ほとんど三十人以下の極めて規模の小さい企業でございまして、ベンチャービジネスの集団とでも申しましょうか、その小さな企業が新しい産業を目指して、人、物、資金、時間を投入して非常に苦労した末、商品として世の中に出した
プログラムが、申し上げましたような権利侵害の被害を受けておりまして、資金の回収はおろか、企業成立の基盤も危うくなるような心配もございます。ただ、現状では非常に市場が伸びておりますので、その点はまだ幾らか時間がございますけれども、これが
一つ状況が変わりますとそういう心配も非常にふえてくると思います。
私どもは、このようなことから、生まれたての企業を集めて協会がスタートしたときから法的
保護活動を中心として
活動を展開をしております。現在では、パソコンソフトウエア法的
保護監視機構というものをつくりまして、協会内外にも呼びかけて、権利の確立と侵害の対策、社会に対するソフトウエアの
著作権の
保護の
重要性を訴えるという
活動をいたしております。
しかし、おかげさまで昨年の
著作権法の
改正によりまして、
プログラムの法的
保護が
著作権によるということが決まりました。若干我々の
実態とはかけ離れた、例えば五十年間の権利期間の問題とか、あるいは法の適用についてはさらに明確にしていただきたいというようなこともございますけれども、まず基本的に、今回の
著作権法の
改正は、我々が権利侵害からソフトを守るという点で基本的に対応できる基礎ができたということで大変喜んでおります。
さて、今回の御
審議の
プログラム著作物に係る
登録の
特例に関する
法案でございますけれども、私ども日本パーソナル
コンピューターソフトウエア協会はこの
法案に基本的に賛成するものでございます。これまで法的
保護の及ばなかった
コンピューターを
利用する全く新しい技術でございます
プログラムという無体財産を
著作権法で
保護するために、御
承知のように一連の
改正が行われましたが、この
登録法によりまして権利確立が目に見える保障制度としてでき上がり、
改正が
一つの完結を見るというふうに考えております。
これまでの
プログラムに関する私どもの法的トラブルのケースで共通して見られることは、社会
一般に
プログラムに対する権利意識が極めて薄いということでございます。他人が人、物、資金と時間を投入して苦心の上制作いたしました
著作物である
プログラムを、違法に複製し、盗用し、改変するというようなことに関して非常に抵抗感が少なくて、法に違反するという感覚が乏しいのが残念ながら現状ではございます。
同時に、
プログラムを制作する我々権利者自身の中にも権利意識が薄弱で、侵害を受けてから慌てて法的対策を講ずるというのが通常のようでございまして、トラブルを増大させる原因ともなっております。
今回の
法改正で、
プログラムの
登録はまず権利の確認ということの第一歩でございまして、
登録された
プログラムの
著作物は、御
承知のように公示されまして、
政府指定機関に
登録されたことによりまして信頼性も増大し、同時に、不正な
登録が行われた場合には真の権利者がそれをチェックすることができるという利点もございます。数々の権利侵害の被害を受けております私どもパソコンソフトウエアの制作者たる企業は、この
登録制度に大変期待しております。特にこの制度が権利侵害に対する迅速な判断につながることを期待しております。
登録しやすい費用でございましたらば、我々ソフトウエアのメーカーだけではなく、すぐれた個人の
プログラムが世に知られ、権利を確立すると同時に、現在、パソコンのユーザーは数百万人おりまして、その中にも優秀なソフトをつくれる能力を持った若者たちがございますが、その人たちの知的な生産物を社会的に知らせ、活用する機会を提供する制度ともなるということでございまして、ぜひその点を進めていただきたいと思います。
今度の
法案は、私どもの業界の
意見も十分反映していただきまして
法案がつくられていると考えております。私ども協会は、
プログラム登録法が発足すれば積極的にこの
登録を促進するように内外に働きかけるつもりでございますし、現にその準備もいたしております。
よろしく御
審議の上ぜひ実現方をお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)