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1986-03-28 第104回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月二十八日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 青木 正久君    理事 臼井日出男君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 池田 克也君 理事 中野 寛成君       阿部 文男君    赤城 宗徳君       天野 光晴君    石橋 一弥君       榎本 和平君    大塚 雄司君       田川 誠一君    中村  靖君       森田  一君    渡辺 栄一君       木島喜兵衞君    田中 克彦君       中西 績介君    馬場  昇君       有島 重武君    伏屋 修治君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 海部 俊樹君  出席政府委員         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房総         務審議官    五十嵐耕一君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      大崎  仁君         文部省高等教育         局私学部長   國分 正明君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文化庁次長   加戸 守行君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第二課長   菅沼 清高君         大蔵省主税局税         制第一課長   小川  是君         自治省財政局調         整室長     鶴岡 啓一君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     山原健二郎君 同月二十七日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     山原健二郎君 三月五日  辞任         補欠選任   榎本 和平君     原田  憲君   二階 俊博君     村山 達雄君   森田  一君     三原 朝雄君 同月六日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     山原健二郎君 同月八日  辞任         補欠選任   原田  憲君     榎本 和平君   三原 朝雄君     森田  一君   村山 達雄君     二階 俊博君     ――――――――――――― 三月四日  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一一号)  プログラムの著作物に係る登録の特例に関する  法律案内閣提出第五八号) 同月十八日  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第  六二号) 二月二十七日  私学助成大幅増額等に関する請願春田重昭君  紹介)(第八二〇号)  私学助成等に関する請願(武田一夫君紹介)(  第八二一号)  同(古川雅司紹介)(第八二二号)  同(小山長規紹介)(第九〇二号)  同(自見庄三郎君紹介)(第九〇三号)  同(柴田睦夫紹介)(第九二四号)  同(堀之内久男紹介)(第九二五号)  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願春田重  昭君紹介)(第八二三号)  医学教育充実改善に関する請願有島重武  君紹介)(第九二六号)  外国人のための日本語教育指導講師制度の法制  化に関する請願嶋崎譲紹介)(第九三八号  ) 三月七日  私学助成大幅拡充に関する請願亀岡高夫君  紹介)(第九六五号)  過大規模学校分離促進に関する請願亀岡高  夫君紹介)(第九六六号)  学校事務職員及び学校栄養職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願亀岡高夫  君紹介)(第九六七号)  私学助成等に関する請願松浦利尚君紹介)(  第九六八号)  同(兒玉末男紹介)(第九九四号)  同(福岡康夫君紹介)(第九九五号)  同(古賀誠紹介)(第一〇三三号)  同外一件(上野建一紹介)(第一一四五号)  同(岸田文武紹介)(第一一四六号)  同(森田一紹介)(第一一四七号)  私学助成大幅増額等に関する請願新井彬之  君紹介)(第九九二号)  同(駒谷明紹介)(第九九三号)  私学助成に関する請願井上泉紹介)(第一  〇三二号)  同(池田克也紹介)(第一一一一号)  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願坂口力  君紹介)(第一一一二号) 同月十三日  私学助成等に関する請願村山富市紹介)(  第一二一六号)  同(矢山有作紹介)(第一二一七号)  同(藤本孝雄紹介)(第一二六二号)  同(柴田睦夫紹介)(第一三七一号)  同(森田景一君紹介)(第一三七二号)  私学助成に関する請願鈴切康雄紹介)(第  一三七〇号)  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願鈴切康  雄君紹介)(第一三七三号) 同月十八日  私学助成等に関する請願江田五月紹介)(  第一五三〇号) 同月二十日  私学助成等に関する請願米沢隆紹介)(第  一五八六号)  私学助成大幅増額等に関する請願中村正男君  紹介)(第一七〇二号)  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願佐藤徳  雄君紹介)(第一七〇三号) 同月二十六日  児童の学ぶ権利保障に関する請願津川武一君  紹介)(第一七九八号)  同(中川利三郎紹介)(第一七九九号)  医学教育充実改善に関する請願佐藤誼君  紹介)(第一八〇〇号)  教育条件の整備に関する請願藤田スミ紹介  )(第一九六〇号)  私学助成等に関する請願水田稔紹介)(第  一九六一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十四日  私学助成充実強化に関する陳情書外八件  (第三八号)  教育改革推進に関する陳情書外二件  (第三九号)  四十人学級の早期実現に関する陳情書外四件  (第  四一号)  義務教育費国庫負担制度改正反対に関する陳情  書外二十三件  (第四二号)  高等学校の新増設に対する国庫補助制度充実  に関する陳情書  (第四三号)  過疎県私立高等学校等に対する助成充実強  化に関する陳情書外一件  (第四四  号)  老朽危険校舎改築基準点引き上げに関する陳  情書  (第四五号)  現行学校給食制度の堅持に関する陳情書  (第四六号)  小中学校水泳プール建設費に対する財政措置の  改善に関する陳情書外一件  (第四  七号)  幼稚園教育充実に関する陳情書  (第四八号)  国指定史跡管理費に関する陳情書  (第四九  号)  首里城跡等戦災文化財の復元に関する陳情書外  三件  (第五〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 青木正久

    青木委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤徳雄君。
  3. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今国会始まって初の文教委員会でありますが、特に文部大臣は二度目の大臣につかれまして初めての答弁なり見解表明だろうと実は期待をしているところであります。  去る二十六日に行われ良した高校選抜野球始球式、見事にやられたそうでありまして、大変御苦労さまでありました。どうぞあの始球式のように、教育の問題もミツトにすとんとはまるような御答弁を期待するところであります。  さて、先般文教委員会で行われました大臣所信表明に対し、私は時間の範囲内で幾つかの質問を行いたいと思います。  大臣は、冒頭「二十一世紀の我が国を担うにふさわしい青少年の育成を目指し、教育改革推進することは、国政の最も重要な課題一つとなっております。」「教育基本法精神にのっとって、教育改革推進に全力を傾けてまいる決意であります。」と述べられました。そして、「主要な課題」といたしまして、基本的考え方を六点挙げておられます。  私は、最初に、主要な課題基本をなすであろう公教育の問題についてお尋ねをいたします。つまり、公教育についてどのようにお考えになっておられるのか、大臣所見を承りたいと存じます。
  4. 海部俊樹

    海部国務大臣 私が所信に述べました公教育基本と申しますのは、二十一世紀を目指す日本の国民の一人としてふさわしいいろいろな問題を児童生徒が身につけて、同時に、平和的な社会及び国家の形成者として、自主自律精神に富んで、要するに、教育基本法に示されておるような、そんな人格完成を目指して努力していく一過程でございますから、その学校教育、特に公教育の部面におきましても、その趣旨をしっかりと踏まえて教育をしていかなければならないと考えております。
  5. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 極めて基本的な重要な問題に対するお答えをいただいたわけでありますが、これから非常に困難な今日の教育を乗り切っていくためには、その基本を忘れてしまうととんでもない方向に走ってしまう危険性もあるわけでありますから、今のお答えを十分踏まえてこれからの文教行政に携わっていただくことを重ねてお願い申し上げる次第であります。  辞書によりますと、公教育というのは次のように載せられてあります。すなわち、公教育とは「公共性を持った教育」である、注釈がありまして、「宗教団体や私設の機関による教育に対して、国立学校及び公立学校教育を指したが、今では広く教育目的公共性を持つものを指していう。」こういうふうに辞書は説明をされているわけであります。  したがいまして、公立国立私立とあるわけでありますが、すべて公教育の一環の教育でありますから、そういう意味では私学の果たしてきた今日までの役割というのは大変重要なものがあることは私も承知しておりますけれども、いわば公教育というものを大事にして一つ一つ課題に取り組んでいかなければならないだろうと私も考えておるわけであります。  さて、所信の中では、主要な課題の第一といたしまして、初等中等教育改善充実について述べられております。「一人一人に行き届いた教育を行うことが大切であります。」という前置きをされながら、現在大きな問題になっておりますいじめの問題について、憂慮すべき状況とこの問題の原因、背景、解決策につきまして言及されていらっしゃいます。  このいじめ問題は、このことによって児童生徒自殺が残念ながら全国的に起きているだけに、深刻にしてかつ早急な対策が求められているわけであります。同時に、教師による体罰の激増もあわせて見過ごすことができない問題でありますし、教育荒廃まさにその極に達したという感じを深くせざるを得ません。  したがいまして、昨年から現時点に至るまで、つまり昨年と申しますのは、思い起こしてみますと、私の県で起きたわけでありますけれども、福島県いわき市立小川中学校いじめによる自殺事件をちょうど発端といたしまして、以後今日まで、新聞で取り上げられているような状況であります。したがいまして、昨年から現時点までにかけての児童生徒自殺件数とその主な原因を明らかにしていただきたいと存じます。
  6. 高石邦男

    高石政府委員 まず、子供自殺の全体の状況を申し上げます。昭和五十九年度の調査の数を申し上げますと、子供自殺者の数が百八十九人でございます。小学生十二、中学生六十六、高校生百十一でございます。この全体の自殺者の数は昭和五十四年が非常に多くて、昭和五十四年以降全体的な数字としては減少しております。昭和五十四年度で申し上げますと三百八十人でございますので半減しているわけでございますが、一つ一つ事件内容が詳細に伝えられるところから自殺件数全体がふえているのではないかという印象を与えておりますけれども、全体のトータルの数字は減少しているということが一つ言えると思います。  それから、いわきにおける報道以来の件数で申し上げますと、昨年いわき市で起きた事件が九月でございますが、それ以降十二月まで四件の自殺者が出たわけであります。また、ことしになって六件が報道されているわけであります。昨年の四件につきましてはいじめ原因であろうというふうに各県の教育委員会報告ではなされているわけでございます。ことしの六件につきましては、一件はいじめ原因であるという報告がございますが、二件はまだ原因が不明である、そして残りの三件は現在原因調査中というようなことでございまして、自殺者要因いじめ一つの大きな要因であるということだけは否定できない傾向であろうかと思います。
  7. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 関連してお尋ねいたしますが、過般新聞でも発表されましたいじめ実態調査、これは概要で結構ですからその件数をお知らせください。
  8. 高石邦男

    高石政府委員 まず、小中高別に概略を申し上げますと、小学校では発生した学校が全体の五二・三%、中学校では全体の六八・八%、高等学校では四二・五%の学校いじめ発生したということでございます。  それから、いじめ発生件数でございますが、これは小学校で九万六千四百五十七件、中学校で五万二千八百九十一件、高等学校で五千七百十八件、合わせて約十五万五千のいじめ件数として報告されたのが先回の実態調査の結果であります。  そのいじめ学年別に見てどういう学年に多いかということを分析しますと、小学校でいいますと五年、六年、中学では一年、二年が他の学年に比較して高い頻度でいじめ発生しているという状況でございます。
  9. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 実は私の県も実態調査を行った結果が発表されたわけでありますが、残念ながら文部省の平均よりも少し高いというので、新聞なども論評しているところであります。ただ、この調査の仕方について果たして適切であったかどうかについては私も多少疑問を持たざるを得ません。つまり、いじめ基準と申しますかそういう点が極めて不明確なまま実施されますと、とりわけ小学校の低学年等は、ちょっといたずらされてもすべていじめだという理解に走ってその件数に入れてしまうということもなきにしもあらずという感じを実は受けているわけであります。しかし、何はともあれ、全国的にもあるいは各県ともこのように大量の件数というものが出ているということ自体やはり重視しなければいけない大きな問題であろう、こんなふうにも私は考えるわけであります。いずれこの問題については後ほど具体的に触れてお尋ねをしたいと思っているわけであります。  次に、教師体罰の問題についてでありますが、私の手元に「学校生活子ども人権—校則体罰、警察への依存をめぐって—」といういわゆる日弁連の第一分科会が出しました基調報告書を持っているわけであります。これを読んでみますと、大変な事態が起きているなということを読んだ方はお感じになっているとは存じますけれども、非常に参考になる報告書であります。しかし今日、憲法で禁止をされているところのその体罰が、新聞でもしょっちゅう出されておりますように大変嘆かわしい状態が全国的にも続いておる。そして過半、岐阜高等学校先生子供体罰によって死に至らしめた、そして先般実刑の判決を受けたという極めてショッキングなことが社会的に提起をされているわけであります。この問題についても大臣からのお考えをお聞きしたいと思いますが、教師による体罰文部省が把握しているところの件数と、どういう体罰が特徴的になってきているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  10. 高石邦男

    高石政府委員 先回の調査報告を受けた内容を申し上げますと、まず、学校段階体罰ではないかということで問題になった件数が、昭和五十九年度で二千二百九十二件、そして六十年四月から十月までの約半年間で問題になったのが二千八百十九ということでございます。これは学校段階でいろいろな父兄の訴えだとかその他によって問題になった件数であろうと思うのです。それが具体的に市町村段階まで上がっていったというか、いわば市町村段階まで報告されてきた件数が、昭和五十九年度で八百四十六件、それから六十年四月から十月までで九百九十六件ということでございます。そして市町村委員会でいろいろ調査をし、県の段階までいわば懲戒処分に相当するような体罰として上がっていったと思われる件数が、五十九年度では百六十五件、そして六十年四月から十月までで百二十七件というような状況でございます。  体罰の中身はいろいろありますけれども、一つ学校における生徒指導上の関係でそれぞれの担当の教科の先生体罰を加えたという件、それから補導担当先生方補導という観点学校の場において体罰を加えたというような件、それからまた岐阜のように修学旅行等学校行事を展開する場合に体罰を加えたというような件、いろいろ発生の場所、形態も多種多様でございますので、一概に一般的な体罰についての傾向原因というものをまとめて申し上げるような形にはなっていなくて、多種多様な形態であるというふうに認定しているわけであります。
  11. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大臣体罰に対してどのようにお考えになっておりますか、見解をひとつお聞かせください。
  12. 海部俊樹

    海部国務大臣 基本的には体罰はいけないことだと考えております。ただ、このごろ私のところへいろいろな手紙が参りましたり電話がかかってきたりあるいは報道なんか見ておりますと、世の中でもっともっとこの問題についてきちっと意識を統一しないと難しいのではないかという気がいたします。そして、殴られたら殴り返せと教えろ、学校先生子供体罰を加えたら自分が乗り込んでいって殴り返すのだというようなことを新聞にお書きになった評論家もいらっしゃるし、また同じころ、殴られても殴り返してはいけない、耐えなければいけない、そして大きくなったら絶対人に迷惑をかけない、人に悪をしない、人の痛みのわかる人間になるべきだと教えなさいという指導もございます。また率直に言って、いろいろな世論調査の中にも、愛のむちまではいいのではないかというようなことをおっしゃる御意見もあるようですが、やはり感情的になって行う行為というのは、今先生の御質問にも出ておりましたように、一体どこまでが体罰でどこからが体罰じゃないのか、いろいろな問題等も含まれてまいります。教師が感情的になって行う体罰などには教育的効果は含まれておらぬと思いますから、やはり教師児童生徒の間でのいろいろな説諭、説得は体罰を用いてはいけないものだ、私は基本的にそう考え、多くのいろいろな立場の皆さんの一層のこの問題に対する御理解と御認識がいただきたい、基本的にこう考えております。
  13. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私も長年教育に携わってきた経験がありますだけに、いじめの問題や教師体罰の問題が新聞に出るたびに非常に胸が締めつけられるような思いを実はするわけであります。しかし、教師の側に立って考えてみますと、体罰教育効果をもたらしているなどというのは、私は大臣がおっしゃるとおりいただけません。本当に教育とはどういうものなのか、その教育の原点に立っていま一度考え直してみる必要があるだろう、こんなふうにも考えられるわけであります。  ここに雑誌世界」の四月号を持ってまいりました。これは「体罰いじめ —誰が子どもを救うのか—」という特集号でありますが、この中に海部文部大臣雑誌世界」の編集長との対談内容が掲載されておりまして、非常に関心を持って読ませていただきました。「—再び文部行政担当して—」「余裕ある教育をつくりたい」、こういう見出しで始まっているわけでありますが、前段は大臣は次のことを話されておるのです。つまり、「戦後にも大きな教育改革をやりましたね。それは、戦前の富国強兵という教育は間違いである、ということでの大改革でした。富国富民とでも言うんですか、あるいは質度の高い社会をつくろうということで教育基本法が出て、人格完成、個性の尊重、機会の均等という新しい教育目標を掲げて進んできた。一方欧米先進国の文明に追いつき追い越そうという明治以来の努力目標も、国民一体となってなし遂げられてきた。」こう述べられている部分があります。この点で教育が果たしてきた役割が大きかったと評価をされているわけでありますが、その点までの評価は私は大体間違っていないのじゃないかというふうにも感じ取れるわけであります。  それだけに、教育基本法というのは、公教育のところでもお答えをいただきましたけれども、その教育基本法教育すべての柱でなければならないと思います。しかし、あなたが評価した以後を実は問題にしなければならないし、そのことが今日の教育荒廃をもたらしている要因であることを私は残念ながら指摘をしなければなりません。  少し歴史的に解明をいたしますと、一九五四年に始まりました任命制教育委員会強行以来、五六年の教科書検定制度強化、そして同じ年の勤務評定強行、五八年の学習指導要領法的拘束性、それから道徳時間の特設、神話の復活、校長への管理職手当支給等、私から言わせれば自民党政府の極めて意図的な文教政策が進められてまいりましたし、そしてそこからは教育自主性創造性をむしろ摘み取ってきたという歴史的事実は、今歴史を振り返った場合に見逃してはならない重要な部分であると私は思うわけであります。  このような誤った教育政策から、大臣承知のとおり、六〇年には全国一斉学力テストが実施をされました。当時私は小学校の六年生の担任をしておりましたので、現場でこの事態を受けとめてきたわけであります。御承知のとおり、これまた国民世論の大きな反対を押し切ってきたことが今日の教育荒廃をより深刻にさせてきたのではないかと私は判断をするわけであります。  加えて、六一年の教頭への管理職手当支給、そして七四年の人材確保法の成立、管理職登用試験主任制度化手当支給等々、学校における管理体制強化の中で教育が進められてきたことが今日までその問題をより深くさせていると言わざるを得ません。  同時にまた、財界からの要請に基づく六六年の人づくり政策、いわゆる高校多様化、そこからあらわれました差別、選別、そしてテストの横行、偏差値による輪切り等が今日なお続けられていることは御承知のとおりであります。そしてそのことが校内暴力いじめ体罰等となってあらわれてきているのではないか、そんなふうにも側面的には考えられるところであります。  長年続けられてまいりました歴史的な文教政策反省なしには、総理がよく言う「戦後政治の総決算」などは明らかに誤りであると言わなければなりません。したがって、以下、次のことをお尋ねをいたします。  大臣は、今私が申し上げましたあなたが評価をした時点以降における長い文教政策に対してどのような反省をお持ちですか。そして、その反省があるとすれば、その反省の上に立ってあなたはこれからの文部行政をどのような観点担当されるおつもりなのか、御所見を承りたいと存じます。
  14. 海部俊樹

    海部国務大臣 先生、私の「世界」の対談を詳細お読みいただきましていろいろ御意見をいただきましたが、教育の長い間の歴史の中にはやはり光の部分もたくさんありますから、私は特に光の部分を申し上げましたし、今先生先生の立場でお考えになった影の部分をたくさんお話しになったわけです。  この問題をお聞きしまして私が思いますことは、反省点は何かとおっしゃれば、まさに最後のところで出てきた偏差値による輪切り教育というものが横行してきたがどうかとおっしゃる、この御指摘なんかは、私はやはり教育の影の部分だと思って、今偏差値が幅をきかせ過ぎる、偏差値のみによる点数教育というものはどこかの段階で何とか改善していかなければならぬと思っております。  ただ、教科書検定制度とか学習指導要領の問題なんかになりますと、これはやはり全国一律に一定の水準を保っていかなければならぬという教育目標からまいりまして、これは間違いであった、これがいろいろ教育をゆがめてきたとは私の立場ではどうしても思えないことでありますし、この間も高等裁判所の判決等も出ましたので、この制度は、文部省としてはより公正な、より正確な、事実に基づいたいい教科書が児童生徒の手に渡るように続けていかなければならない、こう思っております。また、その国の歴史や伝統というものはやはり身につけておいた方が、将来この国を支える一人一人の国民としてはいいのではないだろうか。歴史や文化や伝統というものを全然知らずに大きくなってもらっても困るし、同時に教育の場というのは、そういったことの中でいいことは繰り返していこう、よくないことは改めていこう、繰り返さないようにしようということをしっかり基礎、基本のうちに身につけてもらうのも教育の大切な役割一つだと思っておりますから、そういった意味でちょっと先生の御指摘と私の考えと違うところがあるなという気はいたします。  それから、もっと言わせていただきますと、今日教育荒廃しておるその原因、その責任も私どもはいろいろ反省もし考えてもみております。一番身近に思っておりますことは、最初にも申し上げましたように、学校教育の中でどうも個性というものが余り尊重されなかったのではないか、形式的な平等主義というものがずっときたのではないか。だから、もう少し一人一人の資質や個性を大切にする教育考えなければならない。進路指導に当たっても、点数だけで決めるからいろいろな問題が起こってくるんでしょう。そうすると、入学試験制度の改革だけでこの問題が片づくかといいますと、入学試験の改革も大切ですが、その上には、なぜそんな学校へ行きたいんだろうか、それはその学校へ行かなければ社会との接点の就職のときに極めて有利、不利の判定が下されるから、なるべく有利なところへ行きたいという、学歴主義の弊害というものがあるのじゃないだろうかというようなこと等にも思いをいたして、学歴が必要以上に幅をきかせる社会の是正もしなければならぬと思って、きょうも閣議で労働大臣や、あるいはその他の官庁の採用のときにも御協力願いたいといって、私は特に発言を求めて就職の場合のお願いなどもしてまいりましたし、また、先生角度がちょっと違うかもしれませんが、今日学校荒廃の別の方面からの理由を私なりに考えてみますと、これは「世界」の座談会のときにも述べましたが、人口構造の変化で、家庭の果たしてきた教育的な機能、社会の果たしてきた教育的な機能というものがだんだん質が変わってきたということがございます。ですから、兄弟同士の取っ組み合いとか兄弟げんかを通じて痛みを知るとか、人の立場を考えるとか、思いやりの心とか、そういったものも、次第に薄くなってきておるのではないか。だから、学校現場の給食のときに学校兄弟なんというのをつくると、大変教育的効果が上がるといって現場の先生からも喜んでいただけるような現象も出てくる。あるいは、マイコンとかパソコンが随分普及されましたので、機械と時間をつぶす子供が、いい悪いは別にして家庭でうんとふえてきた。人間関係というものがだんだん疎外されていくような状況になってきた。親の方はそういった経験なく育っていますから、どう注意していいか、どうやったらいいかわからぬという問題も現実に出てきておる社会の変化の一つでございます。  こういったことをいろいろ踏まえていきますと、学校教育の場において、同世代年齢の子供たちが初めて出会う場所ですから、例えばルールに従って汗を流す、スポーツをうんと推進して、ルールは守って汗を流さなければならぬという生活体験をするとか、自然教室や山野跋渉などでいろいろな生活体験をつけるとか、あるいは心の教育をもっと大切に、点数だけではいけないというならば道徳教育をひとつしっかりと教えていただくとか、いろいろな方法をずっと持ち寄って、心豊かな人格完成を目指していかなければならないんだ、私はこう考えておりますので、そういった方面に向かってこれからもいろいろと皆さんの御意見等もいただきながら教育改革を進めてまいりたい、このように考えております。
  15. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それぞれ所属しております政党が違いますから、見解の相違も出てくることは当然だと思いますけれども、しかし、私が前段述べましたような歴史的反省というものなしにはこれからの教育を創造していくのに大きな展望が開けないのではないか、こんな感じを持ったがゆえに申し上げたわけであります。  ただ、大臣、これだけはやはり一致していますね。偏差値が幅をきかせ過ぎるという表現を使いました。それはそうだと思います。それと同時に、その偏差値教育が生み出した輪切りや差別、選別が今日の教育の実態であるということもまた否定できません。臨教審でもこれ取り上げておるわけでありますが、最後に述べたいと思いますけれども、この問題についてもどうも国民やあるいは我々が納得できるような議論もされておらないし、そういう方向も出されておらない、こんな感じがしてならないわけであります。つまり、個性教育の問題やあるいは入学試験の改革だけで片づくだろうか、まさに私もそのとおりだと思います。しかし、今日、今求められているのは、偏差値教育をやめさせなければいけない、そして子供たちに生き生きとした教育をさせる必要がある、この点だけは党派を超えて一致するだろう、私はこう思うのであります。  問題は、それは言葉であってはだめなのであって、どう実践が伴うのかというところに大きな焦点が実はあるわけなの仁あります。偏差値教育に限ってでも結構でありますから、大臣所見と申しますか、文部大臣の責任としてこれだけはやってみたい、これだけは行うべきだというものがおありでしたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  16. 海部俊樹

    海部国務大臣 先生おっしゃるように、偏差値が必要以上に幅をきかせて、学校の輪切りというような嫌な言葉が出てきておりますことが、児童生徒の、まゆ毛から上に自信を持っておる人にはまだそれでいいかもしれませんが、人間の能力とか社会に対する貢献というものは、まゆ毛から上の悩み、その中へ知識を一生懸命詰め込んだ、その詰め込んだ知識を試験のときにうまく発揮したというだけではいかにも少な過ぎるわけでありますから、私は、当面の対策と中長期の対策とたくさんございますけれども、ずばり今どこから手をつけようとしているかとおっしゃれば、これは進路指導のときにまず現場で偏差値のみに頼らないようにしていただきたいし、同時にまた、きょうまでの教育改革、入学試験の変化の歴史を見ておりますと、これは先生百も御承知と思いますが、そういう点数だけに頼らない、人物評価にしようと思って、どうしても人物評価のところで壁にぶつかったりいろいろ足踏みが出てきたりして、また点数評価に戻っていったという過去の歴史もあるわけであります。私たちはそういったことを全部踏まえながら、それでもなお現状からは脱却していかないと、児童生徒のために人間的な教育になりません。  今私が当面取り組んでおりますことは、社会でも問題になっております、いろいろな入学試験の段階の中の特に大学の入学試験のレベルで、大学の入学試験までが、かつて先生方にも御理解をいただき、法案のときには賛成をいただきました共通一次試験、大学入試センターを使ってやるようになった問題についてすら偏差値による大学の輪切りという言葉が定着をして、甚だしきに至っては受験志望校の変更のために受験産業が介在をして、あそこにまた偏差値序列の悪い流れが出てきておりましたから、何とかこれは解決したいと思って、臨教審の答申の指摘もございましたので、ただいま大学入学試験制度の改革協議会にお願いをして、大学入学試験の場においてだけは少なくともまず偏差値による大学の序列化は何とかやめてもらいたい、そして、それは来年かもでも手につくことできることはおやり願いたい、国大協にお願いをして、今鋭意その作業を続けておっていただくわけでありますから、入学試験の前の段階学校生活というものを、点数だけじゃなくてもう少し、例えばボランティア活動とか部活動なんかに非常に足跡が立派に残っておるとか、あるいは、点数は余り得意じゃなかったが物をつくることとかあるいは人のためになることとかあるいはお掃除を率先してやることがよかったとか、いろいろな胸を張ることのできるような資質や適性も持っていらっしゃるはずですから、そういったものを評価して、そういったものが今度は上の学校へ進むときの判定に利用されるようになっていくとすれば、点数中心の偏差値が幅をきかせ過ぎるという形態はなくなっていくだろうと思いますので、私どもは協議会なんかにもお願いしておりますが、私自身も今そういったことをいろいろ勉強し、研究し、少なくとも偏差値が幅をきかせ過ぎて人間性を失わせていくような今の入学試験の段階だけは何とか解決の方向だけでもしっかりと定めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  17. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 時間が限定されておりますから、これだけでやりとりをすればそれで終わってしまいますので、いずれまた機会がありましたら、私の考えなども申し上げていろいろ大臣見解などもお聞きしたい、こう思っているところであります。  さて、先ほども申し上げましたが、所信表明の中で、児童生徒いじめの問題の原因、それから背景には、「学校、家庭、社会それぞれの要因が複雑に絡んでおりますが、その解決を図るためには、何よりもまず第一に、学校教育の専門機関として責任を持って真剣に取り組むことが肝要である」とおっしゃっております。学校、家庭、地域社会の緊密な連携協力、文部省としては指導の総点検と、対策を挙げられているわけであります。  しかし、一定の文章ですからそんなに長くは書けなかったとは思うのですけれども、私はこのことだけで国民はよくわからないのじゃないかと思うのです。雑誌世界」にも先ほど触れられました兄弟げんかの話も、大臣のお話が載っておりますけれども、雑誌世界」というのは、これは限られた人しか読んでないような傾向もありますので、必ずしも全国的に普及されているとは思いませんが、やはりもっと具体的に国民にわかりやすい説明を大臣の責任で行うべきじゃないか。特に、いじめ体罰の問題についてもそうなんでありますが、いじめ体罰についてはどこに問題があると思っていらっしゃいますか、ひとつ国民にわかりやすい説明をお願いをしたいと思います。
  18. 海部俊樹

    海部国務大臣 いじめの問題と体罰の問題はちょっと分けてお答えをさしていただきますけれども、私は、基本的にはいじめの問題は、正義感がきちっと行き渡れば、いじめということがいかに間違ったことであるかということがはっきり理解されると思うのです。そのことは、いじめたりいじめられたりしておるのが数においても多いのは主として中学校であり学校の現場でございますから、学校教育の中で相手の人に対する思いやり、自分自身にも権利とか自由とか欲望とかいろいろありますけれども、昔は人に迷惑をかけてはいけないということは教わってきましたが、人に迷惑さえかけなければいいかというと、もう一歩前進して人のために何かできるかということも考えますと、いじめられたりいじめたりしておるのを見て見ぬふりをすることはいけないことだ、そこに正義に反するものがあると思ったら、みんなで手を出したり声をかけたりしてやめさせるような正義感、連帯感といったようなものが学校に生まれてくる、生徒一人一人がそういったことを身につけてくれるということが非常に大切ではないでしょうか。あるいはまた、私はきのうの高校野球でも本当にそう思ったのですが、あのように生き生きしてみんながルールに従ってスポーツに励むということ、スポーツに励んで時間もエネルギーもそこで一生懸命健全な方にぶち込んでくれるようなことがもっともっと広がっていったら、結果としてエネルギーや時間がいい方に善導されていくんじゃないだろうか。いろんな施策がございます。そういったことをまずきちっとやることがいじめをなくするための問題ですから。  同時に、もう一つ、これは言いにくい話ですけれども、先ほど先生が御指摘になりました日米の中学校先生自身のいじめに対するアンケート調査のときに、私の記憶に誤りがなければ、やはり一番大きかった答えは、日米ともに九〇%超えておったのは、道徳心の欠如ということと、二番目はやはり家庭におけるしつけの問題であった、こう理解をしております。日米ともに現場の先生がそういうことを考えていらっしゃるということは、やはり第一に、道徳心というか正義感というか、人に対する思いやりの気持ちというか、そういったものをもっともっと身につけさせることが一番の原因で、二つ目は、私もいつも言っておりますが、人生最初に出会う教師学校先生じゃなくてお父様、お母様でありますから、お父さん、お母さんが家庭のしつけというものを学校へ行く前の教育段階としてしっかりと責任を持ってやっていただくことが、社会正義を行き渡らせるとか、あるいは道徳的な物の考え方を身につける基礎、基本を幼児のうちから身につけさせるとか、家庭教育の果たす役割も非常に大きいだろう、こう思っております。  体罰の方の問題につきましては、これは一昔前は、中学校は荒れる中学校、学生が先生に手を上げてぶん殴るというような非常によくない風潮がございました。私は、この前の文部大臣在任中には、間違ってもお父様やお母様や学校先生に学生が手を振り上げるということはいけないことだという人生の基礎、基本をしっかりと身につけさせることが教育の大切な役割だ、こうお答えして、一生懸命そういうことを考えておりましたが、今逆になって、教師の側からの体罰がいかに児童生徒に対して大きな恐怖心を与えておるのか、あるいはそれが今度は玉突き状態で周辺の弱そうな友達のところへ向かっていくいじめの発火点になっておるかというような報道も確かにあるわけでございますから、これはやはり、最初に申し上げたように、教師の皆さん方の自覚と責任をこちらは期待をする、同時に、教員の皆さん一人一人が体罰によって教育効果は上がらないんだということをやはり自覚していただいて、それによって教育専門家として児童生徒教育に当たっていただくことが最も大切なのではないだろうかと私は受けとめております。
  19. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 いろいろ見解を聞かせていただきました。私は、先ほど申し上げましたとおり、子供を差別したり選別をすれば、私の経験によりましても、その差別、選別が子供たちを決していい方向には向かわせないということを常々思っているわけであります。しかしながら、差別と選別を排除できない仕組み、今日の状況、こういうものがあることも私は十分分析をしなければいけないだろうと思うのです。同時にまた、それは単に学校教師子供たちの問題だけではなくて、おっしゃるとおり家庭の問題ももちろんあります。社会構造全体の問題もあることを見逃せません。  例えば、それはさまざまな原因があるわけでありますけれども、一つの事例でありますけれども、追跡をいたしますと、お父さんは働きに行っている。それで家を新しく建てた。しかし住宅ローンに追われでなかなか家庭生活が困難である。だから、結局手っ取り早いのは、夜飲み屋に働きに行くとか、あるいは小さなお店を出して夜中まで働くとか、そういう家庭が最近ふえているのであります。そうすると、いつでもお母さんがおうちへ帰ってくるのが深夜にわたる、学校から帰ってきてもお母さんと御飯も食べられないという状況がやはり子供の気持ちを逆なでするようなそういう家庭環境が知らず知らずの間につくられているという実態もたくさんあるわけであります。  中流階級という言葉がよく使われますけれども、果たして今日中流なのかどうかということに対して私も多くの疑問を持つわけでありますが、もっとやはり子供に豊かな気持ちを与える、そのためには家庭の問題、社会構造の問題も考えてみなければいけないのじゃないか、こんなふうにも考えるわけであります。この問題は一挙に片づく問題ではありませんから、ひとつ十分御検討いただいて本腰を入れていただきたい、こう思います。  さらに、関連してお尋ねいたしますのは、大臣もそうでありますが、臨教審なんかも特にそうであります。特に校長会関係の方や教育委員会関係の方とはよくお話を聞くようであります。それは結構であります。聞いて悪いとは申しません。ただ、私は、ここでひとつ大臣の決意をお聞かせいただきたいのですが、一番大事なのは、私は現場教師との意見の交換だと思うのであります。本当に現場で子供に接して苦労されている、そして悩みも持っている、いろいろな研究もされている、こういう現場の先生方と意見の交換をすることによって幾つかのことを引き出せるんじゃないか、こう思っているわけであります。管理体制の強化の問題もありますが、時間がありませんので触れられませんけれども、事のよしあしは別にいたしまして、いわゆる管理職の皆さんとだけのお話し合いではなくて、地方に出向くなりあるいは東京に来ていただくなりして、現場教師大臣との意見交換をぜひやっていただきたいな、私はこう思っているわけでありますが、決意のほどをお聞かせください。
  20. 海部俊樹

    海部国務大臣 私は、直接児童生徒に触れておっていただく現場教育関係者の皆さんの協力や理解がなければ教育改革は完全に行われない、基本的にこう受けとめておりますから、現場教職員の皆さんの意見をなるべく聞くようにしております。そして、先生がおっしゃいましたが、いつも校長先生教育委員会委員長さんのお話ばかり聞いておるんじゃ決してございませんで、お話を聞きますときは、例えば私が文部大臣になりましてからも、その同じときに、現場といいましてもいろいろございますから、管理職の皆さんの代表にも御意見を聞きましたし、教員組合では日教組、全日教連の代表の方々の御意見も聞きました。ただ残念ながら、新聞に写真が載ったり見出しが出ますのは日教組だけで、ほかの先生が、なぜ日教組に入っていない我々の意見も聞かないのかとおっしゃいますが、日教組に入っていない先生方は、全日教連なんかを組織されておればそこが窓口で、あるいは高教組の右派とか左派とかグループがあればそこから聞けますが、どこにも入っていらっしゃらない先生も何十%かいらっしゃるわけで、それらの先生は代表に話し合うから来なさいと言って呼びかけようがございませんので、そこだけは私も残念ながら聞いておりませんが、ただ、先生、夜中に電話がかかってきたり手紙が来たりいろいろします。私は手紙は現場の教師だとおっしゃる方のはいろいろ読んでおります。同時に、電話がかかってきても、建設的な御意見ならばよく聞いて、では改めてお尋ねしますが先生はどこの学校で教鞭をとっていらっしゃる何という先生ですかといってお聞き返しすると、まあよろしい、わかりましたと言ってお切りになっちゃう方が多いので、対話にならずに一方通行が多いのです。これは非常に残念なことだと思います。  また、臨時教育審議会のときは、これは私どもは党の文教制度調査会の立場で見守っておりましたが、ここもやはり現場の声は聞かなければならぬというので、必ずしも日教組の代表ということでお入り願ったわけではございませんし、またその先生も日教組の立場に立って御発言なさっておるわけではございませんが、現場の教師としての身分のままで臨教審の委員にも入っていただき、私も臨教審の総会を文部大臣になりましてから三回ほどずっと初めから終わりまでよくもこんなに御熱心に討議されるなど感心しながら拝聴しておりましたが、積極的に御意見等も述べていただいておりますので、いろいろなところでできるだけ私どもは現場の方のお声も聞きながら、それを参照しながら、どうしたら児童生徒のためのいい教育ができるだろうかということを常に考えていくつもりで、そういう姿勢でこれからも取り組んでいこうと思いますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  21. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 雑誌世界」の大臣の対談を時々引用させてもらって恐縮でありますが、その中でこう述べられておりますね。昭和五十二年当時文部大臣在任中に一生懸命取り組まなければならなかったことは、暴力の問題とか、塾の問題とか、入学試験の問題であったとおっしゃられております。そういう中でゆとりのある教育をと考えたと言っておられます。一週間三十三時間の授業を学習指導要領に合わせてびっちりやらなくてもいい、それは二十九時間ぐらいにして、余った四時間はゆとりの時間で現場の先生方に創意工夫で自由に使ってください、そしてそのことは通達にも出した、それがどう行われているかということを調べてみたんだが、意外に活用されていないんだなということをおっしゃっておられるわけであります。今でもそうお思いですか。
  22. 海部俊樹

    海部国務大臣 私は今でも率直にそう思っておるのです。といいますのは、あのとき、現場の教師の皆さんにもう少し創意工夫の幅を持ってもらったらどうか、学校で教えることは基礎、基本をしっかりと身につけてもらうことは大切だけれども、やはり全国一律に重箱の隅をつづくように決めてしまわないで、現場の教師の創意工夫というものを大切にした方がいいぞという意見が圧倒的であったことを私は今でも覚えております。  そして、同時に、その後でいろいろ起こりました問題の一つに、例えば学習指導要領を狭くして小さくして基礎、基本に限定したがために、音楽なんかでは歌の表示が基本が少なくなった、そうしたら、あんないい歌を文部大臣なぜ歌わないようにしたのか、けしからぬというような反論が来まして、私はそのときいろいろな人と相談したら、それこそいい歌だとお考えならば創意工夫で幾ら歌ってもらってもいいのです、教えていただいてもいいのです。それから、それぞれの地域の周辺をずっと、周辺だけに伝わる歴史や文化や民謡やそういったものを知って多かれるようなことに使ってもらってもいいし、あるいはスポーツのために使っていただいてもいいし、いろいろ使い方はあろうと思ったのですけれども、このことについては私はもう少し創意工夫をして本当に使っていただいたらいいのではないだろうか、こんな気持ちが今でも正直にしておりましたので、この間の座談会でも率直にその気持ちを表明させていただいたわけでございます。
  23. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 その気持ちには変わりがないということのお答えでありますが、ちょっと失礼なお尋ねかもしれませんけれども、活用されておらないと言いますけれども、活用されないのか活用できないのかあるいは活用しようとしないのか、いずれかだと思うのであります。その原因は一体何だとお思いですか。
  24. 海部俊樹

    海部国務大臣 その原因は、全国に学校の数が随分たくさんございますから、私は共通したものをここで理論的、学問的に申し上げるだけの調査もしておりませんし知識もございませんが、いろいろ思うのですけれども、それぞれのところで必要なものをそれぞれの地域に従ってやってもらったらどうか。これは「世界」じゃありませんけれども、ほかの座談会のときに、漁村を地域に持っていらっしゃる代表の先生のお話で、漁というのは小学校の高学年になったら身につけさせた方がうまくいくんだ、ところが小学校の伝統的なカリキュラムからいくと魚をとる漁のことを教えることはいけないことになっておる、こういうような御発言がございましたので、それなればそういうとき、漁の基礎知識とか郷土に伝わった漁というものはこういうものであったとか、海岸へ出ていって漁師の皆さんの実際を見るとかいうようなこと等にむしろこの時間は一時間くらいお使いになったらどうですかというようなことを私は返事したことを今でも覚えておりますけれども、いろいろなところでそれをお使い願ったらいい。あるいは、いろいろなこういう悲しい自殺事件なんかが出たときには、自分の学校で起こったらどうするかというような、学校を挙げての討議の時間にお使い願うのも一方法かなと思うし、また、生活体験の中で体ごとぶつかって汗を流すことが大事だというならば、部活動というのが今あるわけですけれども、それがなかなかいけないならば、もっと何か新しい児童生徒が興味を持って走るもの、例えば今の世の中で行われておるものできょうまで学校の部活やカリキュラムになかったものをひとつやってみるとか、いろいろなことがあるんじゃないでしょうか。それはその地域、その先生の創意工夫で、自分のクラスの興味とかみんなが必要だと思っていることは何だろうかというようなことなんかで御活用いただいたらありがたい、それはそういう気持ちであのときできた制度だ、私はこう理解しております。
  25. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 たしか森文部大臣がおやめになられた直後だったでしょうか、ゆとりの時間は失敗であったとどこかに行ってお話しされて新聞に出たことがありますが、既にそのときには大臣をおやめになっちゃったので委員会でやりとりをすることが実はできなかったわけであります。ただ、私は、全国幾つかの特徴がありますから必ずしも固定したような物の言い方はできないとしても、ゆとりの時間を設定されることは結構である、しかし、本当に活用いただきたいという気持ちは痛いほどわかりますけれども、活用できる現場の状況にあるのかどうかということについて私は非常に疑問を持っているわけであります。  例えば、二月二十日の朝日の朝刊に「テーマ談話室」というのがございます。これはしばらく続いておりました。その中で「新教育四十年の経験から一言」という、小学校の教員を経験された先輩の方が投稿されております。こういうことを言っているのですね。  八教科、道徳、特別活動、学校行事などに区分されている教育内容のうち、とくに特別活動の分野がネコの目のように変わるため、多くの教師が必要以上の精力を傾け、主要八教科の研究や指導が年々手薄になったきらいがあります。  また全教育課程の順序、統合性を総括的にチェックする機能が現場にあるでしょうか。専門分化のばらばら作業では、全人教育はとても不可能です。  次に授業に必要な教材研究、教具の準備や後始末、反省のための最低時間も保証されていない。とくに小学校は勤務時間内ではむずかしく、家に持ち帰るか、準備なしで授業に臨むのが現場教師の泣きどころです。こういう投稿を実はされておったのを読んだことがあります。  大臣は大変教育の専門家だと皆さん思っておられますし、大臣自身もそうだと思うのでありますが、専門家であるかどうかは別にいたしまして、私と大臣の違いは現場の経験があるかないかなんでありまして、私は、何年か前でありますけれども自分の経験を思い起こしながらいろいろ今日の教育問題を心配をしている一人なんであります。それだけに多くの仲間もおりますし、いろいろなお話も聞くわけであります。後ほど見解をいただきますが、こういうことが現場の声だということをぜひひとつお聞き取りいただきたい、こう思うのであります。  つまり、教材研究の時間がないということを訴えております。これは文部省の方御承知のとおり、授業を行うためには教材研究は必要欠くべからざるものであります。この教材研究が進む度合いによって授業のあり方についてもいろいろ工夫がされるでありましょうし、一々注釈を加えますと時間がありませんからそれだけきり申し上げることができませんけれども、教材研究の時間が少ない、こう訴えていることも確かであります。  それから、管理職が授業時間の年間時数確保のために授業をつぶさずに諸行事を持ち込んでしまうということも、ゆとりの時間が削られている要因というのはここにあると私も思います。  また、進路指導という名のテストが横行している、これは先ほど大臣お答えのとおりであります。  さらに、これは小規模学校だと思うのでありますが、会計の仕事を一般教諭にさせているために仕事が非常に煩雑であるという訴えもあります。  さらにまた、これは後ほど触れますが、地方教育委員会の研究指定校が多過ぎるという指摘もあります。  それから、小中教研の研究指定、研究題の押しつけ、あるいは研究会、各種会議が非常に多い。私、ある現場から、幾つかの学校からいただいてきたものを持っているのです。ずっと学校行事の一覧表ですね。これは私が現場にいたときと大差はないのでありますけれども、とにかく会議が非常に多いのです。特に中学校は専科指導、教科指導をやっておりますからいろいろなことがあるわけでありますが、小学校ですら非常に多い。  出張が多い。これは出張というのはいろいろ意味合いがありますから整理をしなければいけない点があると思うのですが、特に校長の出張が極端に多いということが述べられています。一度実態をお調べになった方がよろしいのじゃないでしょうか。そして教頭や各種主任の出張も多く、それが他の教職員に影響を及ぼしている、これも事実でしょう。子供をそのままにしておくわけにいきませんから、自習をさせたり隣のクラスを面倒見たりという事例は今でもたくさんあるわけであります。  それから、指導主事の学校訪問が多く正常な教育活動が阻害をされている傾向がある。  また、教育事務所や地方教育委員会調査が多過ぎるという指摘もあります。  さらに、受験体制——オリンピック体制という表現を使っていますね、手っ取り早い表現なんでしょう。受験体制、オリンピック体制に研究指定が加わって、現場を多忙化させ、子供の生気を奪っているという指摘もあります。  あるいは、平日の放課後に学年会、学年主任会、現職教育生徒指導、企画委員会、定例打ち合わせ、特設クラブ、ありますね。毎日とは言いませんが、あります。そうすると、勤務時間内に教材研究をする時間が一体あるのだろうか。出張が多いときには子供を一体どういうふうにしているのだろうか。この悩みというのは現場を経験された教師であればみんな考えていることなんであります。私は若いときによく先輩から、授業で勝負しろ、授業は真剣勝負なんだと教えられたことを実は今でも思い出しているわけであります。それだけに落ちついて授業をさせるような学校の経営なり教育体制というものができないのだろうか、もろもろの仕事の合間に授業をするということでは、極端な言い方かもしれませんが、まさに本末転倒なんであります。  たかる、各種コンクールへの義務参加の問題や、あるいは先ほど大臣お答えになりましたゆとりの時間でありますが、ゆとりの時間特設でゆとりがないという表現をしていらっしゃる先生もあるわけであります。  学校管理体制の強化がもたらしたものもこれまたたくさんあるわけであります。  挙げれば切りがないほど問題が指摘をされているのでありますが、全国的にはさらに多くの問題が内包されていると思います。私が今申し上げましたのは私の作り事ではなくて、実際に現場を歩いたり現場教師といろいろ話し合いをして出された問題の整理であります。ひとつ大臣なり、初中局長がいらっしゃいますから文部省考え方なりをぜひお聞かせいただきたい。私が言いたいのは、今教育の非常に大事な時期だけに教育に専念させるべきだ、専念させるためにそういう条件をつくってやるべきじゃないか、こういう主張なんであります。大臣、いかがでしょうか。
  26. 海部俊樹

    海部国務大臣 お話を承りまして、教師児童生徒教育をするのが主たる職務でありますから、ほかの仕事の合間に授業をやっておられるのでは困るわけでありまして、そういうことは我が方の責任で改革をしていかなければなりません。この点については初中局長にも後ほど答弁をしてもらいますが、実際にはそういった意味でいい授業をやってもらうための研修活動というのもどんどん行っていかなきゃならぬだろうと思います。また、現職の先生に教員大学の大学院に行ってみずからの指導力を高めていただくとか、あるいは現場の先生に何千人ということで海外に研修旅行に出ていただく、そういったことなんかも、全部児童生徒にいい教育をしていただくための制度ですから、私たちはこういったことはどんどん充実していきたいとも思ってきょうまでやってまいりました。  また、先生おっしゃるように、学校現場で学校事務職員のやらなきゃならぬようなことを学校教員がおやりになるということは、それだけその人の授業にはマイナスになるわけですから、できるだけそういったところに対する定数の改善はしなければならぬというので、これは計画を立てて鋭意努力しておるところでございます。  同時にまた、進路指導の問題なんかも、先生が一人一人の児童生徒の個性や資質を見抜いていい指導をしていただくためには、手づくりのテストとか手づくりの指導とか、随分手間のかかることかもしれぬけれどもぜひやっていただきたいという希望、お願い等も我々は持っておりますので、そういったようなことを踏まえて、いい授業に専念していただけるようにこれからも予算措置や教育環境の整備はしていかなければならないと私は受けとめております。  残余の具体的な細かい御指摘につきましては、初中局長から答弁を補足いたします。
  27. 高石邦男

    高石政府委員 基本的に、学校先生子供たちと触れ合う時間を重視して教育を展開しているということは極めて重要であると思っております。したがいまして、そういう観点でまず教職員の人の面では、学級編制基準改善していくとか、配当基準改善していくとか、事務職員、養護教諭そして学校栄養職員を配置する、そういう面での充実を戦後から今日までずっと続けてきたことは御承知のとおりだと思います。  それから、教材研究という研修の面で、一方において先生方の生命は子供にどういう教育を展開するかということで、研修は教師の生命でもあるわけでございます。したがいまして、そういう研修の機会をいろいろな形でふやしていく、これまた極めて重要な政策であろうと思います。ただ、研修をやるときに授業を犠牲にしてまで、子供の授業をカットしてまで研修をするということは適当でないと思います。したがいまして、あくまで子供教師との授業時間を確保しながら研修を充実していくということで、学校現場において、またそれぞれの県、市町村において十分工夫して研修の時間の持ち方は考えていかなければならないと思います。  それから、学校内部における運営の問題としては、いろいろと会議が多いとか事務に追われているという点については、これはもっと合理化、能率化していって、およそ事務のために教育そのものが犠牲になることのないような学校の運営を心がけていくことが必要であろうと思います。  また一方、いじめとかという問題が出てきますと、一人の子供も見捨てるわけにはいかないというので、先生方が飛び回らなければならないという社会状況の変化というのがありますので、そういう面で追われるということによって忙しくなっているということも否定できないと思います。  そういうことで、基本的な政策としては、生徒と先生が触れ合う時間を大切にして、それを重点に展開しながらも、なお人の問題、時間の問題、運営の問題については改善をしていかなければならない点があるという御指摘には同感するところがあるわけでございます。
  28. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 幾つか改善をしなければならない点があるというお答えでありますけれども、十分検討されて、そしてよりよい教育条件の整備ができますように、各都道府県なり学校現場に対しての御指導をぜひお願い申し上げたいと思います。  大臣も先ほど申されましたけれども、教師子供もゆとりのある生き生きとした学校づくりが先決だろうと私は思っているのであります。だから、この学校の多忙化から教師を解放してやる。そのためには幾つかの条件の整備も必要である。大臣から研修活動の問題が出ましたけれども、私もその限りでは全く同じであります。だが問題は、研修活動を保障するための条件の整備なしに研修活動だけで追いまくっていけば、どこにそのしわ寄せがくるかといえば子供にくるのでありまして、子供にそのしわ寄せがこないような研修活動の保障というものをやはり行政的にも十分配慮してやるべきだろうと思いますので、ひとつ十分御検討いただきたいと思います。  子供自主性を育成し、活力ある、ゆとりのある教育課程の編成が求められていることも事実であります。さらにまた、校内、校外の教職員の会議というのは、教職員の教材研究準備の時間を確保した上で行わせるということも私は大事だと思います。いわば児童生徒一人一人を観察する、教師自身が実態を把握する、そして子供の持っている可能性あるいは個性、特徴を生かしてやれるような教師でなければいけないし、そういう教育の場も必要でありましょう。それには、教師子供たちの輪の中に入っていく、そしてともに学んでともに遊んで、自分というものをあるいは子供というものを見詰める態度が必要なんじゃないか、こんなふうにも考えられるわけであります。教材研究、計画の立案、授業の実践、反省、そして再び研究実践の交流、こういう繰り返しが多くの連帯をつくり出すし、あるいはまた、そのことは教師だけの連帯ばかりでなくて子供たち同士の連帯も深めていく要因になるということを強調したいわけであります。  さて、先ほど触れました研究指定校の問題であります。私も何回か経験したことがありますが、最近とみに研究指定校というのはこんなに多いのかなと思ってびっくりしているわけであります。これは文部省には文部省の研究指定校がございますね。ところが、県段階に入れば県の教育委員会の指定校ができます。そのほかに市町村教育委員会の指定校ができます。そして、単に指定校だけでなくて、指定された学校に対する協力校がまた出るのであります。そうなりますと、そこに大変な力を注がざるを得ません。これが今日の現場の実態であります。  つまり、私は、研究指定校をもっと縮小整理すべきだ、そして落ちついた学校づくりを指導すべきだろうと思うわけでありますが、ひとつ実態を調査されて、文部省の研究指定校は文部省自身がやっておられますからおわかりなんでありましょうが、問題は、県の指定校なり市町村教育委員会の指定校、それに対する文部省も含めた研究協力校などがたくさんあって、ある意味では教育を妨げている実態があると私は思っておるわけであります。検討されるお考えがありますか。
  29. 高石邦男

    高石政府委員 文部省の研究指定校は、基本的に教育現場の持っているいろいろな問題を研究して、次の教育課程の改訂の際にはそれを十分活用して改訂をしていく、いわばデータを整備していくという観点で行っているのが大部分であるわけでございます。それともう一つは、いろいろな角度からの実践事例は全国の学校で参考になるものが多いということから、そういう事例集をつくるという意味で研究指定校をやっているのが多いわけであります。したがいまして、いたずらに量をふやすことは考えていないわけでございます。文部省の研究指定校は、基本的にそういう角度で必要な範囲内において実施していきたい。  ただ、都道府県、市町村段階にまいりますと、もうちょっとこれにつけ加えたいとか、県独自でやりたいということがありますので、それを文部省からやめさせるとか適当でないと言うことはできませんので、それぞれの都道府県、市町村で研究指定校をやる場合にも、一つの目的性を持った意味のある内容にしてもらいたいと思うのです。したがいまして、都道府県、市町村でどういう実態の研究指定校になっているかというのは今後十分調査をしていって、改善できるものは改善してまいりたいと思っております。
  30. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私も研究指定そのものを否定しているものではありません。しかし、私が調べた範囲によりますと、それがかなり拡大をされてきているところに問題を指摘したいのであります。だから、充実した教育研究実践例をつくり出すためにももっと整理する必要があるだろう。調査検討するということでありますから、期待をいたしますので、その結論が出ましたらひとつ御報告をお願いしたいと思います。  それから、多忙化の問題とも絡むのでありますが、今日学校の中の管理体制がかなり強化されていることは言われているとおりなのであります。大臣との対談の中でも編集長も幾つかそういうことを表現されている部分も、度合いは別にいたしましてあるわけであります。そこで、問題になるのは、教頭試験をこのままエスカレートしていったときに、管理体制はもちろんでありますが、教職員間の競争の激化とかここにだけ目がいってしまうという実態も否定できないのじゃないか、こう思っておるわけであります。教頭試験問題に対して、実態を調べた上で改善をする考えがあるかどうか。いかがですか。
  31. 阿部充夫

    阿部政府委員 教頭試験についてのお尋ねでございますけれども、学校におきまして校長とか教頭という職務は、学校の運営についての責任者あるいはそれを直接助ける立場ということで、単に教育内容について承知しているだけではなくて、それ以外に学校の運営についての必要な知識でございますとかあるいは指導力、統率力、いろいろな面での資質が要請されるわけでございます。こういった点から、校長、教頭の任用に当たりましては、各県ともそれにふさわしい人物を登用する、それに際してはできるだけ任用の客観性と公正性を確保しなければいけないという見地から、教頭について申し上げますと、五十七の県市のうち、現在四十六の県市におきまして教頭試験という形がとられておるわけでございます。それはそういう意味ではそれなりに有効適切なことではなかろうかと思っております。  なお、教頭の選考に当たりましては、単に試験の成績がどうこうということだけではなくて、やはり日ごろの教育実践とか学校における立場とか、そういったいろいろな要素を総合的に勘案していくということでございませんと、また、試験のための勉強だけにすべてを奪われてしまうということになってもいけないわけでございますので、全体として適切な試験選考が行われますよう、今後とも各都道府県等の教育委員会指導してまいりたい、かように思っております。
  32. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 お答えはわかりました。しかし、私は単に並列的に申し上げているのではなくて、現場の実態に立って申し上げているわけでありますから、いつかの機会に十分そういう点をお調べいただいて、改善の必要性があるときにはぜひ改善をしていただきたい。これは、つまり結果的には教職員間の競争の問題と子供にしわ寄せがいくということに帰るわけでありますから、ぜひお願い申し上げたいと思います。  残された時間が余りありません。ひとつ一、二の問題を簡単にお尋ねをいたします。  塾の問題についてお尋ねをいたします。これはいろいろなお考えを述べる方がいらっしゃるのでありますが、私は高輪に宿舎を持っております。時々夜の九時ごろ宿舎へ帰るときがあるわけでありますが、地下鉄へ行きますと、小学校子供たちがランドセルをしょってその電車に乗り合わせるときが時々あるわけであります。恐らく塾帰りだな、すぐにこう判断できるわけでありますが、夜の九時ないしは九時過ぎまで一生懸命塾でやられて、ただいまと言って帰っていくという今日の教育というのは本当にいいのだろうかということを、その子供たちを見ていつでも感じ取るわけであります。それだけに、偏差値教育というのは教育産業に弾みをつけてきたし、そしてその弊害もかなり大きいというふうに思うのであります。  先般、文部省調査をされましたことが発表されました。かなりの新聞にも出ておりまして、「小学生も受験過熱 塾費二六%増」などというのが出ているわけなんですね。  それで、これは大臣に後でお見せいたしますけれども、例えばこんなのがあるわけですよ、夏休みの特訓合宿というのが。ある父親が会館の私の事務所に参りまして訴えてきた方がいらっしゃいます。本当に参りました、こんなに金がかかってどうしようもありません。行かせなかったらいいでしょうと言ったら、そんなわけにいかないのだと言うのですね。やはり隣近所の子供の関係や一緒に塾へ行っている子供の心や気持ちを考えますと、どうしても親心で行かせざるを得ないのだと言うのであります。それで、パンフレットを持ってきたのであります。例えば夏休みの場合でありますけれども、中学校の三年生などは十五泊十六日なんですね。これは国立公園の苗場プリンスホテルに行くようであります。学費は、入学金が一万円、学費が二十四万円、宿泊費も入っておるのでしょうが。しかも、その中身を見ますと、起床が七時から始まりまして特訓やって、就寝が十一時ということなんであります。これをちょっと大臣に見せてください。あるいはまた小学校の六年生、五年生は、十一日間の特訓合宿というのがあるのですよ。これを見ますと、会費は十六万五千円、入会金が五千円、これまた起床が六時三十分から就寝が十一時になっておるわけであります。そして、中学校の一、二年生の林間特訓合宿というのが四泊五日であります。これも、実に会費が七万円、入会金が五千円、こんな状態でそのパンフレットは羅列をしているわけであります。これはもう大変なことだなと。  だから、文部省がお調べになって発表された、例えば公立中学校一年生の場合、年間二万三千五百円余、対前年比丘・二%減だとか、あるいは二年生が二万九千二百円余、五・九%増、三年生が四万円余であって六・二%の増、小学校の場合も出しておりますけれども、実はやはりこういう問題、教育費というか教育支出というものに家庭の中で相当ウエートを占められている。これが果たして正常なんだろうかどうかということを、私は疑問を持たざるを得ないわけであります。いろいろお考えがあるでしょうけれども、基本的な考え方として塾に対してどうお考えになっておられますのか、大臣所見を承りたいと思います。
  33. 海部俊樹

    海部国務大臣 塾というものが現実にあって、それを利用している児童生徒もたくさんある。これは一概にいいとか悪いとかの評価をするのは差し控えますけれども、先生から今お届けいただいたようなこういう塾になりますと、経費負担の面からいっても、あるいは本当にその人のおくれを取り戻すための補習的な塾というようなことからいっても、これはちょっと経済的にも御家庭の負担が多くなるなという印象を率直に受けますし、同時にまた、受験のための技術を身につけるような塾というのは、僕は、ある意味では公教育の方がしっかりと責任を果たしていただいて、同時に、私たちも入学試験の制度が、学校の授業だけに打ち込んでおるよりも塾へ行って技術を身につけた方が受かりやすいのだというような妙な風潮をつくってしまうということもよくないことですから、そういったことは絶えず調査、研究、反省をして改善をしていかなければならぬのは当然でありますけれども、公教育が一生懸命やることによって結果として、こういう塾の過熱状態とか、必要以上にデラックスになっていって家庭経済にも影響を及ぼすような塾の影響というものが、何とか少なくなっていくように努力をしていかなければならぬ、こう思うわけでございます。
  34. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 ごらんになっておわかりのとおり、私は決して誇張して物を言っているのではなくて、全く実際そのとおりなんであります、そういうものが最近横行しているのですね。だから、単に偏差値教育の是正であるとか、輪切りであるとか、差別、選別というような言葉で終わってはだめだということの裏づけだと私は思うのであります。したがいまして、冒頭に公教育に対する大臣考え方をお聞きしたのはそういうことなんでありまして、ある意味では公教育に対する批判であり警鐘であるかもしれません。ぜひ参考にしていただいてひとつ御指導をお願い申し上げたいと思います。  最後に、ちょっとお尋ねいたします。  三月十日の日にちでありますが、読売新聞で本社全国世論調査内容が発表されております。時間がありませんから、中身の説明を省略をさせていただきますが、まさに一新聞社の結果だとだけは申し上げません。端的に言いますと、国民の立場から見ますと、この世論調査を見る限り臨教審がひとり歩きをしているように国民には映っているのですね。それで、臨教審が国民の半数以上から期待をされていないという数字が実は出ているわけであります。関心を持たれていないという原因は、臨教審の委員ではありませんから適切なお答えになるかどうかわかりませんが、しかしこれはその担当大臣であるわけでありまして、関心を国民が持っていない、持たれていない原因は一体何だとお感じになっておられますか、大臣
  35. 海部俊樹

    海部国務大臣 教育改革には国民の皆さんは関心を持っていただいておるものと私どもは受けとめたいわけでありますし、同時にまた、なぜ関心が持たれておらないかということを……(佐藤(徳)委員「臨教審に対して」と呼ぶ)臨教審に対しても私は関心を持たれておると思うのです。といいますのは、世論調査なんか見ていただきましても、たまたま今先生が具体的にお示しになりました世論調査でも、国民の皆さんはいろいろなことを指摘していらっしゃる。臨教審はこの間まだ「審議経過の概要」を出しただけでありまして、その「概要」も先生承知のように二百三十二ページにわたって二十一万語もございますので、私なんかも丸二日かかって一生懸命読んだような大きなものですから、あの「経過の概要」だけでは、国民の皆さんもまだそれを全部お読みいただくわけにもいきませんでしょうし、答申が出ますと、その答申についてはまだある程度の反応も出てこようと思いますし、また、大学入試の問題とかあるいは教師の問題とか学校の現場の問題とか、いろいろなことについて臨教審の方でも審議が進んでおるわけでありますから、私は今度の答申が出ますときには国民の皆さんのこういったものがもっと高まっていくことを期待しておりますし、またそんな答申が出てくるだろうと待っておるわけでございます。
  36. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 最後にお尋ねをいたします。端的にお答えください。  国民が今、教育に対して何を一番期待をし、求めていらっしゃるとお感じになっておりますか。大臣、いかがですか。
  37. 海部俊樹

    海部国務大臣 お子さんを持つ親ならば、一人一人の児童生徒が心身ともに健全に育っていただきたい、こういったことを求めていらっしゃる。当面の急務としては、学校いじめとか非行という問題をなくしてもらいたい、こう願っていらっしゃいます。  中長期の長い目で見れば、やはり入学試験の制度も改革をし、先生の資質の向上にもうんと力を入れ、徳育教育にも力を入れて、平和な国家社会に役立つような子供教育をしてほしい、こう願っていらっしゃるだろうと私は受けとめております。
  38. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 これで終わります。ありがとうございました。
  39. 青木正久

    青木委員長 午後二時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  40. 青木正久

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中克彦君。
  41. 田中克彦

    ○田中(克)委員 私は、当選して一期生でありますから、海部文部大臣と議論できるのはこれが初めての機会であります。しかし、以前から自民党の中でも文教政策通の一人だ、こう伺っておりますし、二度目の文部大臣就任ということで、午前中の質疑の中で極めて明快な御答弁を拝聴いたしておりました。私もこれから質問を進めてまいりますが、ぜひひとつわかりやすい御答弁を期待いたしておきたい、こう思うわけであります。  午前中の佐藤委員質問で、非常に教育の専門家だけありまして、教育基本的な問題から議論がされておりまして、傾聴に使いたしましたが、私は教育に対しましてはずぶの素人でございますので、若干角度を変えて、これから伺ってまいりたいと思いますのは、いわゆる教育改革推進していく現政府の考え方、あるいは今持っている教育の問題点を解決していくための教育を進めていく上に、いわゆる行財政の角度から、文部省がどう対応しようとしているのかという点を中心に、特に予算問題を議論していきたい、こんなふうに思っているわけであります。  最初にお伺いをしたいのは、本年度の政府予算案、間もなく参議院の審議も議了するでありましょうけれども、この一般歳出は三十二兆五千八百四十二億、こういうことになっておりまして、昨年の予算から見ますと、一般歳出では十二億円の減、こういう数字になっているわけであります。ところが、この一般歳出の中のいわゆる文教予算、これを見ますと、四兆五千七百二十一億九千七百万ということになっておりまして、前年比十九億五百万円の減、こういうことで、本年のこの文教予算の特徴というのは、年々伸び率は下がってまいりましたけれども、実にことしは実質マイナス予算になったというのが特徴的な性格ではないかと私は思うわけであります。  そこで、いわゆる政府の全予算が持っている一般歳出が十二億円の減であるにもかかわらず、一番教育改革を掲げている現政府の文教予算が実質マイナス十九億五百万円になっているというこの予算編成に対する考え方、これは時の文教政策担当する文部大臣として私は大変な問題だ、こう思うわけでありますが、このことについてまず最初に文部大臣見解をお伺いしておきたい、こう思います。
  42. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘いただいておりますとおりの数字に相なっておりまして、私も昨年、党の文教制度調査会長をしておりますときに、この六十一年度予算の編成にも取り組んで、一生懸命に獲得のための努力もしてきたつもりでございましたけれども、先生承知のように、他の政策との整合性、その他いろいろな問題もございます。同時にまた、一般予算の中で経常的経費は一〇%マイナスのシーリング、投資的経費は五%マイナスのシーリングという各省ごとの枠もございますけれども、文部省文部省なりにでき得る限りの主張、努力等もいたしまして、何とか、聖域とまではいかないまでも、ODAの予算の考え方で獲得できる分はまずそれをやらなければならぬということで、一生懸命努力をしたつもりでございますが、結果としてこういう状況になっておりますことは、教育を大切に考えておる者の一人として心痛むことだと受けとめております。  同時に、文部省の省内では、そうではありましたけれども、全体の与えられました枠の中でマイナスにしてはならないもの、これは省内の政策の順位としては最優先だと思うものをお互いに省内で、ここで言うに言えない厳しい状況等もございますけれども、必要だと思うもの、例えば科学研究費の額であるとか、私学助成の額であるとか、国際的な時代に対応するための留学生のための予算であるとか、その中でも重点とされる項目にはそれなりの配慮もしながら努力をしてきたつもりでおりますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  43. 田中克彦

    ○田中(克)委員 大臣所信表明を伺いますと、その中には、二十一世紀を目指していく日本のこれからの教育考える上で極めて意欲的な前向きな姿勢というものが文章としてはうかがえるわけであります。しかし、今現実に予算に裏打ちされた教育行政を見る限りにおいては、数字の上では残念ながら、大臣自身もお認めになっておりますように、精いっぱい努力をしたけれども遺憾と言わなければならないという実態になっている。こういう姿を見ますと、私どもは、表に出ている言葉とは実際に行財政の上では裏腹な関係に今文教行政は立たされているのではないか。逆に言えば、政府が減額する全体の額よりもなお多い減額を文教予算が背負っているということは、言いかえれば、文教が持っているその教育行政が果たしていく役割、この重要性、こういうものが実際に行財政の上で政府として認められているのかどうかということに実は疑問を持たざるを得ない。残念ながら私もそういう感じでことしの予算は実は受けとめているわけであります。  そこで、大臣に伺うわけでありますが、ことしこれだけ実質減額になっております。ちなみに、五十六年からのあれを見ますと、昭和五十六年に前年比四・七三%増、五十七年は二・六〇、五十八年が、このときマイナスの一・一〇、五十九年が〇・八四、昨年は〇・〇五、こういうことで、ことしは実にマイナス〇・〇四、こういう数字になっているわけですね。ですから、ことし減額になった主な内容としての大きな事情というものは予算の中でどこにありますか。
  44. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生御指摘の、本年度予算における主な減額の事項でございます。御案内のとおり、給与改定の平年度化で必要な所要額が千六百億というふうな大きな額になります。この給与費のシェアが文教予算で非常に大きいということもございまして、私どもは予算編成のプロセスで大変苦慮をいたしたわけでございますが、結果としての数字で申し上げますと、義務教育費の国庫負担金の追加費用と恩給費の関係、補助率二分の一につきまして、これを三分の一に引き下げたことで約八百四十億というところが大きいところの第一点でございます。それから次に、公立学校施設整備費につきまして約三百二十億余のカットをいたしております。さらに、国立学校の特別会計の関係では、施設費関係で約百七十億というふうな金額の減をいたしております。それからなお、給与費の関係で申しますと、例年、一%の給与の昇給分を見込むわけでございますが、この関係の見込みを今回は行わないということにいたしましたので、一%分を六十年度に組んでおったものが必要でなくなったというのが三百億ございます。それらをひっくるめまして大体平年度化分には見合うような金額になるわけでございますが、そのほか昇給原資等で給与費が必要なものもかなりございますので、その関係につきましては、社会教育施設費とか体育施設費とか、若干いろいろと細々したところでのカットがございますので、大どころとして申し上げますと、以上のとおりでございます。
  45. 田中克彦

    ○田中(克)委員 内容はわかりました。  ただ、そこで、今の御答弁にもありましたように、文部省の予算というのは人件費の占める比率が非常に高いというのも一つの特徴だ、こう思っております。  それで、この比率というのは、とらえ方もいろいろあるでありましょうけれども、私の持っている数字で七四・六%を占める、こういうことであります。したがって、今給与関係で千六百億違う、こういう答弁に示されておりますように、給与費が占める比率が高くて、また、この給与費の減額が主要な要因になっている、こういうこともまた裏からいえば事実であります。  したがって、私がお伺いしたいのは、昨年の場合はあらかじめ一%のベースアップを見込んだ人件費の措置というのは当初予算であったわけですね。途中で七月実施、五・七四%というのが出まして、この追加が措置をされた、こういうことになっています。ことしは、この一%もない、ベースアップもまた見込んでいるわけでもない、こういうことでありますから、今の御答弁の中からも示されておりますように、人件費の占める比率が高い、この中から給与関係で千六百億違う、こういうことでありますけれども、いわばこの差額になっている分、昨年では当初に一%措置され、後追加で七月から五・七四%分を積んだ額というのは、実質からいえばさらにこれから上積みをされた形で、実際には実質マイナス要因として考えていかなければならない、要するに教育政策予算とすればそういうことになるのではないか。そうなると、私が指摘をした実質マイナス予算という性格は、給与費の関係を含めて考えれば一層大きなものになるということにはなりませんか。私はそういうとらえ方をしているのでありますけれども、これに対して大臣はどうお考えになりますか。
  46. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御案内のとおり、今国家財政の非常に厳しい状況で、財政再建という国家財政の路線が一つございます。そういう関係で、各省関係では、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、マイナスシーリングという形、あるいは査定におけるゼロで前年度同額的な抑え方をするという全体の姿というものがあるわけでございまして、その全体の国家財政の構造の中で文教予算を編成するというところで、御指摘のような給与費と政策経費、物件費との関係がやむを得ず起こるわけでございます。  そういう中で、私どもとしては、先ほど大臣からのお答えにありましたように、給与改善の中での問題は別といたしまして、四十人学級、これを実施するとか、教員の配置率の改善をするとか、私学、科研費、それぞれ政策的なもので芽を伸ばすべきものは伸ばす、その関係で若干また減をすべきものは減をする、そういう相対の関係にあるわけでございまして、現在置かれておる国家財政の現況では、六十一年度の関係の予算は精いっぱいの成果ではないかというふうに私ども思っておるわけでございます。また、今後の教育改革課題にどういうふうに対応するかという点については十分私どももこれから検討し、政策課題も財政上どういうふうに生かしていくかにつきまして十分検討しなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  47. 田中克彦

    ○田中(克)委員 概算要求の段階あるいはまた予算編成の段階で文部当局も努力をいろいろ払われたという事実については、私どももよく承知はしているつもりであります。しかし、現実にあらわれているこの予算の数字を見る限り、私が指摘するようなことは、これは当たっていないなどとは言えない、こう思うのですね。  それで、特に私はこういう点で大臣に伺いたいのですが、今のマイナスシーリング方式を財政再建期間中これからも——今政府の方は六十五年赤字国債脱却、こう言っております。したがって、この方式が繰り返されていくと、ことしと同じような現象が来年もその次の年も起こり得る可能性というものを、またその危険を私どもは感じざるを得ないわけですね。要するに、マイナスシーリングにして結果的に数字のつじつま合わせをして、この枠をはみ出さないようにどこかを切らなければならない、人件費が伸びてくるとどこかを詰めなければならない、そういう形で文教予算の中身にだんだん切り込まれてくるという性格の予算編成のあり方というものは、私は、教育改革なり教育問題というのを重要な柱に据えている中曽根内閣のもとでの予算編成としたら随分おかしなことだ、こう指摘せざるを得ないわけですね。  そこで、大臣はその閣僚の一人であり、文部大臣としてそれを担当されているわけでありますから、この方式についての考え方、また来年起こり得る可能性がある、そのことについての大臣としての心構え、これを私はぜひこの機会に伺っておきたい、こう思います。
  48. 海部俊樹

    海部国務大臣 大蔵大臣がこの場におりませんので、来年どういうことになっていくのかという見通しについてまで的確なお答えは差し控えなければならぬと思いますが、私どもは、今先生御指摘のように、大ざっぱな計算でも四分の三が人件費で、給与費が上がる公事業費の方に食い込んでくるということになりますと、来年、再来年どこれが続いていったら一体どうなるだろうかということは、考えるだけで非常につらい気持ちがいたします。  そこで、せめて私たちは、学校教育というのは国家百年の大計でありますから、最初にもちょっと触れましたようにODA的な発想で措置をしてもらえる分のシェアを広げていくとか、あるいは欲を言えば、これはまだ私の欲でありますからそうなる、ならないとは言い切れませんけれども、来年度予算編成のときにはシーリングの問題をどうするかという段階から教育の問題は議論しなければならぬ。特に、とりわけ、ただいま御承知のように臨時教育審議会なんかが行われて教育の抜本的な改革の問題が具体的に提起されようとしつつあるときでありますから、これを踏まえて、受けて、教育改革をやるためにも今までの惰性と違って新たな支出が必要になることも想定されるわけであります。これらの問題については、臨時教育審議会の方でも委員の皆さんの間で御議論がありまして、教育行財政のあり方は今のままでいいんだろうか、臨時行政調査会の厳しい方針があることもさることながら、不断の努力の積み重ねが必要だというこの教育改革にも財政措置は必要なものはつけてやらなければならぬのじゃないだろうか、こういう角度の御議論が今闘わされておることは先生も御承知と思いますし、過日出ました二百三十二ページに及ぶ大変大量な「審議経過の概要」の中にも、国政全般とのかね合いの中でという大前提はありますが、教育改革に必要な財政措置は講じられなければならないとも出ておるわけでありますから、今度の答申のときまでにそれらのことももう少し詰めたお話が進展しないものかなと私は心から願いながら答申を期待して待っており、そちらでもそういう議論ができ得るように、我々も、そういったこととはまた別に、文教行政をより一歩前進、二歩改革をやっていくためには、何らかの形で予算獲得をしていかなければならぬということも十分心得ておりますので、これからも一生懸命に努力を続けてまいりたい、こう決意をいたしております。
  49. 田中克彦

    ○田中(克)委員 臨時教育審議会の中で教育行財政問題についての検討も進められていて、それを待って対処する、こういう考え方でありますから、これはその際にまた議論をさしていただく、こういうことにいたしましても、ただ、私ども残念だと思いますのは、この第一次答申の場合もそれから「審議経過の概要(その3)」の場合も、この財政問題ということについては、この「概要」の3のときも「第一次答申で指摘した「国家財政全般との関連において、適切な財政措置が講じられなければならない」との観点に立って、教育財政の基本的在り方について引き続き審議を進めていくこととする。」ということで、問題の点がずっと先送りになっているということで、私はそういう点非常に遺憾だ、実はこう思っているわけであります。そういうことで、大臣のこれからの対応にぜひ期待をしていきたい、私はこう思っております。  そこで、今はしなくも四十人学級の話も出ましたが、いわゆる行き届いたゆとりのある教育ということがよく言われ、それから、今回の予算の中にも第一次答申の際に示された教育改革の問題について具体的な改革を急ぐべき課題について予算化されたものが若干出ております。これは、いいことはやるべきだ、私はこう思いますけれども、ただ制度的に手をつけていくというようなことについては非常に慎重に進めていく必要がある、こう実は思っているわけであります。ところが、そうでなくて、実際に行き届いたゆとりのある教育というものを目指してやる場合に、前から言われております四十人学級とか大規模校の解消だとかという具体的な課題があります。いろいろ今言われておりますけれども、いじめの問題、暴力の問題、体罰の問題、いろいろ議論されておりますけれども、そういう教育の上に出てきておりますいろいろな問題を具体的に解決していく手だてで最も急がなければならないものは、四十人学級と大規模校の解消、これは具体的には最も緊急に手がつけられる問題ではないかと私は思っているわけであります。  そこで、この四十人学級の問題は長いこと議論をしてきたわけでありますけれども、大臣は、この二つの課題、これは今の行き届いたゆとりのある教育を進めていく上で、あるいは今起こっているこの問題行動や何かそういうものを解決していく上で、極めて基本的な具体的な緊急の課題だということについてはやはり同じようにお考えになりますね。
  50. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘の二つの具体的なテーマ、これはもう臨教審の答申をまつまでもなく、既に文部省が具体的な政策として立案をし、着手し、実行しておるさなかのものでございます。先生がおっしゃいますように、私も、いろいろな対策はございますけれども、これも今の当面緊急にやらなければならぬ対策課題一つであることは全く同感でございます。
  51. 田中克彦

    ○田中(克)委員 これからこの四十人学級の問題の中身にも触れてお伺いをしていきますけれども、その前に、私は一つちょっと伺っておきたいのです。  前回六十年度の予算の際の議論で、いわば補助金削減一括法なるものがつくられて、旅費、教材費が一般財源化されたということでありまして、その際、教材費についても一般財源化したことによって、今までの国庫負担金制度の対象とされていたときと比べて、各自治体によってその影響が起こってこないだろうかということを心配をしながら質問をして、資料なども提供していただくようにお願いしておいたのですけれども、この文部省からいただきました調査によりますと、これは九月補正までの結果でありますが、これを見ましても、実際には昨年と比べて一〇〇%以上措置した県は十四県、一〇〇未満から九〇までが二十九県、九〇から八八までが四県、こういうことで四十七県のあれがあるのですが、これで見ましても、昨年の教材費に比べて実質増額になっている県は十二県、あとの県は全部マイナスになっているわけです、多い少いは別にいたしまして。実際には、これで見てもわかりますように、一般財源化したことによって現場の教材費には影響が出ているということは、数字の上でもはっきり出てきているわけであります。もう一つの旅費の問題につきましては、私まだ詳しい資料を持っておりませんけれども、そういうことで、一般財源化をされたことによってそういう影響は実際には起こってきているわけでありますが、私は、昨年のこの議論の際にも申し上げましたように、ことしは、さっき大臣おっしゃられますように、恩給費や追加費用の分の二分の一補助を三分の一に切り下げた、こういうことですりかえられておりますけれども、昨年議論になったことは、要するに、事務職や栄養士についてこれを対象から除外するという財政審の答申が出ているから検討をせねばなるまいというのが大蔵大臣お答えだったわけですね。それに対して文部大臣は食い違った答弁をされた。その食い違った答弁というのはどういうことかといえば、要するに、学校運営というものを考える場合に、教壇に立つ立たないということによって教職を区別するわけにはいかない。結局、管理職もあり教諭もあり養護も栄養士も事務職もあって、それが総合的に学校運営というもののそれぞれの任務を分担しながら教育的効果を高めるように回っている、その学校の実態というものを認めないなんということはできない、こういうのが文部大臣お答えだったわけです。  そこで、私はなお確認をしておきたいのですが、海部文部大臣もそのことについては、従前の文部大臣が認めてきました見解、こういうものといささかも食い違う点はないというように確認をしてもよろしゅうございますか。
  52. 海部俊樹

    海部国務大臣 この制度の根幹はぴちっと守っていきたい、こう考えておりますし、それから、従前の文部大臣とも私ども政府・与党の間柄でございますから、よく打ち合わせをして、学校栄養職員学校事務職員の対応の問題については全く同じ考えで行動をいたしましたので、そのとおりでございます。
  53. 田中克彦

    ○田中(克)委員 そこで、ことしの場合は形を変えた、いわば恩給と追加費用の切り下げの問題に移ってきてしまっているわけでありますけれども、私が文部大臣にお伺いしたいのは、義務教育費国庫負担法の精神といいますか目的、これをまず大臣にちょっと伺っておきたいと思います。
  54. 阿部充夫

    阿部政府委員 義務教育費の国庫負担制度でございますけれども、これは国庫負担法の第一条にその目的が明確に書かれてございます。義務教育の「妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担する」という考え方に立っているものでございまして、大正七年以来教職員の給与費を中心として国庫負担がなされてきたという経緯があるわけでございますので、そういった給与費を中心とした人件費というところに中心があるものと考えております。
  55. 田中克彦

    ○田中(克)委員 今、義務教育費国庫負担法の第一条の「目的」についてお答えいただきましたけれども、確かにこの第一条の「目的」の中には、この国庫負担金制度をとることによって「教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」こういうことでありまして、さっき私が教材費の例にも示しましたように、現に、二分の一の国庫負担金制度に支えられていたときとこれを外してしまったときで見ると、教材費の措置についても各都道府県間にこれだけアンパラが出てきているわけですね。教育の機会均等を果たす上にこの国庫負担金制度が果たしている役割は極めて大きいということが、こんな小さな教材費一つの具体的な例をとってみてもはっきり出てきていると私は思うわけです。  そこで、この義務教育費の国庫負担金制度を受けて、地方財政法との関連を考えてみますと、これは地方課の方でもお見えになっておりますから、同時にこの関連の上で、地方財政法の第二条第二項の法の規定との兼ね合いを自治省としてはどういう見解を持って認識をされておりますか。
  56. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 地方財政法の第十条では、国が進んで負担をすべきとされている経費としまして、義務教育の関係の経費についても規定をしているところでございます。  先生の御質問にありましたように、昭和六十年度の予算編成に当たりまして、旅費と教材費を国庫負担対象から除外をし、地方一般財源による財源措置に振りかえることにしておりましたが、これは昨年も国の予算編成が大変厳しい状況の中にありまして、補助金の整理合理化のあり方としまして、地方団体の考え方としまして、地方の事務として定着し、地方団体が地域の実情に応じて自主的、弾力的に対応することで十分対応できる、そういう経費については、地方の自主性や自律性の向上の観点からも、あるいは国、地方を通ずる行政の簡素化の観点からも、整理合理化といいますか、補助金を廃止して一般財源化してもいいのではないか、そういう観点に立ちまして、昨年は旅費と教材費を一般財源化し、あわせまして地方財政法の十条の改正も行ったところでございます。  ことしの、昭和六十一年度においてとられました恩給費と追加費用につきましては一率直に申し上げまして、昨年以上に非常に意見の対立はあったわけでございます。最後のぎりぎりの段階で、国の非常に厳しい財政事情の中で私どもとしてはやむを得ざる措置ということで二分の一を三分の一に引き下げることにしたわけでございます。  ただし、その際に、これだけではございませんで、六十一年度につきましては厚生省の予算等含めましてかなりの補助金の整理合理化が行われたわけですが、その際、全体として地方が負担増加になりますものにつきましては、地方たばこ消費税の税率の引き上げであるとか、地方交付税の増額であるとか、建設地方債の増発であるとか、地方財政の運営には支障の出ないような措置をあわせて講ずるということで、私どもとしては、こういう措置はやむを得ないことではありますが、三年間暫定的に引き下げられるということを了承したわけでございます。
  57. 田中克彦

    ○田中(克)委員 これは昨年もかなり議論はしたのですけれども、私は何回見直してみてもどうしても実は自分としては納得がいかないわけであります。というのは、今十条のお話がありましたが、財政法の二条二項では、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」こう規定をしておりますし、今仮に地方自治体に財源を一般財源化して移して、これが制度として定着をしてきているからということが理由になっておりますけれども、今の地方自治体の実態の中で、補助金削減一括法というようなもので昨年の場合でも五十九の法律、六十六項目というような大量のものが移されたわけですね。そのことによって地方自治体もあっぷあっぷしているわけですよ。そういう中で、いやそれは交付税で措置してあるといっても、交付税の全額が措置されたわけではないことはもう政府の方が十分御承知のはずなんですね。そういう状況の中で、いわば制度的に定着をしてきているということで、国庫負担金制度から外すものがことしもまた来年もというように逐次ふやされていくということについては、明らかにこの地方財政法の目的とする第二条第二項にも触れてくる、そういう性格を今度の措置は持っている、こう私は思わざるを得ないわけですね。私は率直に言ってそこをもう少し明快にお答えをいただきたいと思います。  特に、この条文の解釈の中でも、私どももいろいろ読んでみましたけれども、解説にもこうあるのですね。十条の場合、  本条は、第九条の規定による地方公共団体全額負担の原則に対する例外をなすものであり、地方公共団体又はその機関が実施する事務に要する経費のうち、国がその全部又は一部を負担すべきものについて規定したものである。  本条に規定する国が負担すべき経費の性格は、地方公共団体又はこの機関が「法令に基づいて実施しなければならない事務」であって、「国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務」に要する経費のうち、「その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要があるもの」である。というふうに解説もついているわけですね。  今まさに教育の問題というのは国と地方が相互に利害の共通している問題であるし、しかも地方自治体が制度的に定着してきていると言うけれども、じゃ、地方自治体の方に財源を移してもこれは十分にやり得るというような合意の上に政府と自治体との間でそういう了解が成り立っての措置がといえば、地方六団体は挙げて反対しているわけですね。こうなりますと、私はこの精神にも反しているじゃないか、こういうふうに言わざるを得ないわけですよ。  ですから、それはむしろ、財政の予算編成をする上での数字のつじつま合わせのために、あれも切らなければならない、これも切らなければならない、何が切れるかということを探して、探し当てたあげくにこれだというようにしか私どもには理解できない。それは予算編成のテクニックであって、テクニックに合わせた法令解釈だ、法改正だ、こういうことにしかなってきていないのじゃないかというふうに思えてならないわけです。私はそういう見解を持っておりますが、自治省としてはいかがですか。
  58. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 補助金の問題につきましては、先生おっしゃいますように、地方財政法の十条に書いてあるような事務につきまして国と地方が共同して責任を持ってやる、そういうものを負担、私どもの方はいわゆる負担金というふうに解しておりますが、そういう負担をしているわけでございます。  ただ、一方で、補助金につきましては、従来から地方団体から見まして、補助金を通じていわば地方団体の自主性、自律性を阻害する面もあるのではないかという意味では、補助金の整理合理化というのも地方団体からの長年の懸案事項にはなっているわけでございます。したがいまして、私どもは、昨年なりことしなりこういう国の厳しい財政事情の中で、国と地方のいわば車の両輪のようにやっております公経済の負担をどういうふうに考えていくかというときに、やはり地方団体の自主性や自律性が高まる形で補助金の整理合理化がやられるとするのであれば、それに見合う地方財政措置がとられることを前提にそういう措置もやむを得ないのではないかというのが、この数年の補助金の問題に対しての地方六団体あるいは自治省の取り組みでございます。  率直に言いまして、じゃことしの恩給、追加費用はどうかと言われますと、これはそういう観点では、ないと言わざるを得ないと思います。いわば国と地方のこういう厳しい財政事情の中で暫定的に三分の一の率の引き下げをやむを得ずのまざるを得なかったということだと考えております。
  59. 田中克彦

    ○田中(克)委員 これはいずれまた連合審査の機会があるでありましょうから、この補助金削減一括法の審議の際にさらに継続してお伺いをしていくようにしていきたいと思っております。  そこで、この問題と関連して、昨年の場合はいわゆる昭和五十七年、五十八年、五十九年、三カ年間行政改革特例法がございました。この特例法の措置というのが昨年の補助金一括法の中で一年間だけ延長されてきたわけですね。  それに文部大臣、ここから大臣の方に移りますが、さっきの四十人学級の話へ戻るのですが、今お聞きになっておりますように、昨年の補助金の一括削減法、このときに同時に行革特例法は一年延長する、こういう措置がとられたわけですね。ことしの場合はその措置はとられておりません。そうですね。
  60. 阿部充夫

    阿部政府委員 行革特例法の四十人学級関係の抑制規定の御質問かと思いますけれども、これを六十一年度に延長するという措置は講じておりません。
  61. 田中克彦

    ○田中(克)委員 そこで、さっき大臣も四十人学級の必要性というのは非常に重要だとお認めになっていたわけです。行革で三年足踏みをした、昨年は行革特例法が一年さらに延びたという形でもって足踏みしたけれども、小学校児童減少町村については一学年だけはことしはスタートを切った。ことしから学年進行で小学校は六十六年まで、中学校はことし生徒減少町村の一年から三年までをやり、他を六十四年から三年やって、六十六年には小中合わせて四十人学級はすべて完了する、これがかつて昭和五十五年に十二カ年の定数改善の計画を立てたときの計画の継承なんですね。御承知のように、行革特例法は昨年は延長されたから四十人学級も当然その措置に倣って抑制を受ける、私どもはこういう理解に立って、それはやむを得まいというふうには思ったわけなんでありますけれども、ことし文部省の概算要求の際の話から推しますと、実際にはあの当時文部省の当初要求というのは、中学校については九百八十三名、この要求が内示の際にはゼロ、復活折衝で予算決定の際に三百二十一人、こういう数字が出たわけでありますね。結局その分だけいわば抑制されているわけです。特例法は延長の措置がとってないのに、ことし中学校の生徒減少町村の一年について実施をするということについて、施設余裕校十八クラス以上の学校ということに限定をして三分の一に切ってしまった。これは要するに法律的根拠はないと思うのですよ。今言うように、抑制をする措置の裏打ちがなくなってしまっているわけですが、私どもは四十人学級は必要だからぜひ伸ばしてほしい。文部大臣は前から六十六年にはすべて完了するということを昨年の国会の中でも私どもに約束をしてくれたわけなんですね。これは文部大臣どうなんでしょう。
  62. 海部俊樹

    海部国務大臣 ただいま御承知の定数改善計画が六十六年度にその目標を達成しますように歴代全力を挙げて頑張りますという方針を貫いてやってきたと思いますし、私どもも今年度の予算の概算要求を決めますときも、当初、御指摘のように中学校がゼロでございますが、これではどうにもならないからとにかく芽を出して一歩でも二歩でも前進させなければならぬというところで努力をし頑張っておるところでありまして、何としても目標年次には達成すべく努力を続けていく決意でございます。
  63. 阿部充夫

    阿部政府委員 行革関連特例法におきましては、四十人学級問題につきましては、この前進の仕方について「特に国の財政事情を考慮する」、こういう規定での実質的な制約をかぶっていたわけでございます。昭和六十一年度の取り扱いにつきましては種々検討いたしたところでございますけれども、これまでの行革関連特例法に盛られておりました諸般の施策のほとんどが延長しないということになったということのバランスもございますし、また他方、教員の自然減が相当盛り込まれるといったようなことの中である程度の対応が可能であるという新しい事態も生じてきたというようなこともございまして、これを延長しないということにしたわけでございます。  ただ、特例法に書かれております「特に国の財政事情を考慮する」という「国の財政事情」という問題につきましては、やはり同じような事情が残っておるわけでございますので、これを一切考慮せずに計画が進むというわけのものでもないわけでございます。そういった中で、私どもといたしましては、概算要求をしたものが丸々は認められなかったけれども、ある程度の前進は図るべく最大限の努力をし、御指摘のような結果になっているということでひとつ御理解を賜りたいわけでございます。
  64. 田中克彦

    ○田中(克)委員 確かに「公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準について政令を定めるに当たっては、特に国の財政事情を考慮すること。」こういうことになっておりますから、強いて言えば今言うようなお答えになるだろうと予想はしておりましたけれども、しかし、もう何年も前に約束をされたことじゃないんですよ。去年の予算の審議の際にこの場で文部大臣文部省考え方として私どもに約束をしたことでありますから、そのことについてせめてことしの段階で、予算編成でもそういう約束が生きるようにならなければ、「財政事情」、そこへ逃げ込めばこれはどういうことにでもなると思うのです。私はそういう姿勢の問題を言っている。いわば根拠がないのだからへもっと頑張れなかったのか、こういうことを言いたかったわけなんであります。  ちょっとあれですからさらに進めますけれども、先ほど佐藤委員の方からいじめの問題の質問も出ました。実はこのいじめの問題というのも最近非常に深刻でありますけれども、確かに文部省調査を見ましても一番多いのは中学校なんですね、六八・八%。小学校の方が五二・三%、高等学校は四二・五%、こういう順序になっています。一校当たりの発生件数というのは小学校で三・九、中学校になれば五・一、高校になればずっと少ない、こういうことでありますから、何といっても中学校の問題というのが重要であるということがこの調査の中だってはっきり出ているわけですね。ですから、今申し上げましたように、四十人学級の問題もまず中学校の問題に焦点をもう少し当てて考えていいじゃないか、こう思うのですよ。私が実際学校を回った経験でも、要するに、人口急増で混住化が進んでいるところの地域の中学校それからマンモス中学校、実際にはこういうところに非常に問題行動が発生をしているわけなんです。ですから、そういう点からすれば大規模校の解消とか四十人学級ということは、小学校もさることながら中学校の問題こそ重視をしなければならない、こういうところに今あると思うのです。  先日の新聞で、文部省は来年度中学校の四十人学級について特に重点的に対応することを考えている、こういう報道がありましたけれども、今文部省としてはどうお考えになるのでしょうか。
  65. 阿部充夫

    阿部政府委員 四十人学級の問題が直接校内暴力あるいはいじめということと数字的に結びついているわけでは必ずしもないと思いますけれども、いろいろな意味において教員のスタッフを充実をしていく、学級編制の基準改善していくということは教育条件基本でございますし、先生御指摘のように、今中学校でその点に力を注ぐべきだという御意見も十分私どもも理解できるところでございます。  そういったような見地から、中学校につきましては、先生御案内のように昭和六十一年度はまだ急増が続いてピークに進んでいく時期でございます。そういう意味から、この時期に四十入学級に手をつけるのは難しいんじゃないかというような御意見も財政当局等にはあったわけでございますけれども、しかしながら、中学校のこういう現状からかんがみてできるだけ早くこれに着手をしていきたいんだということで、先ほどのお話にもございましたように、最終段階中学校に一部なりとも手をつけるというところまでまいったということになっております。  それからまた、配置率の改善ということを別途並行してやっておりますけれども、そういった面での教員の配置につきましても、できるだけ中学にウエートを置きながら考えていこうというようなこともあわせて考えておるところでございます。  今後の問題につきましては、新聞にたまたまああいう記事が出ましたけれども、私どもの方としては中学校の問題も大事に考えてという基本的な考え方は持っておりますが、具体的にどういうふうに対応していくかということについては、まさにこれから夏の概算要求に向けまして省内で十分議論をし詰めていくということでございまして、現段階で具体の何かの方針を持っているというところには至っておらないわけでございます。
  66. 田中克彦

    ○田中(克)委員 これは従前から文部省としても六十六年に完了するという計画を持っていたわけでありますし、私どもはことしの中学校のこの四十人学級の措置につきましても、これをやるとまたこのしわ寄せが後年に影響が出てくるということを憂慮しますので、いわばそのおくれた分を取り返していけるような前向きな取り組みをひとつぜひこの際期待をしておきたい、こう思うのです。  そこで、先ほどちょっと触れましたが、第五次の学級編制及び教職員定数改善計画というのが発表になりまして、自来いろいろ取り組みがされてまいっているわけでありますが、この六十一年の現段階における進捗率というのを見ますと、四十人学級で一七・五、定数改善で二一・七、こういう数字になっております。したがって、全体計画から見ますと、あと残っている五年間で改善増は六万三千八百六十人、こういうことであります。しかも、六十二年から小学校に加えて中学生も減少傾向をたどる、こういうことであります。結局その数字から推しますと、教職員数の自然減というのは毎年一万人以上にもなる、こういうことでありまして、七年間で自然減は七万六千三百人、こういうことになります。改善増が六万三千八百六十人で自然減が七万六千三百人、こういうことになるわけでありますから、ここで国会決議三年後見直しに基づいて、この際、この定数改善計画というものを、このいわば問題というのを解決をしながら四十人学級が前進できる、こういう形に見直していくべきだ、こう思うのですけれども、それについてはどうお考えでしょうか。
  67. 阿部充夫

    阿部政府委員 御指摘のように、目標年度である昭和六十六年度まで来年度以降の五年間というものを考えますと、自然減という見込み数の方が改善増の計画数を若干上回るという結果になっておるわけでございますので、この数の範囲内で着実に進めていけば六十六年度までに達成可能であろうという見通しを私ども持ち、それに合わせて対応していきたいと思っておるわけでございますが、具体的にそれぞれの年度でどういうふうに措置をしていくかということにつきましては、四十人学級の問題もございますし、さらには配置率の改善問題等もあわせて並行的にやっていく課題がございますので、そういったものを見合いながら検討し、具体の計画を考えていきたいというところで、現在の段階では、先ほども申し上げましたように、まだ特に毎年度毎年度の予算編成においてそれぞれの年度の数字を固めていくという必要もございます。そういった関係で、この夏の概算要求期に向けて検討しているという段階でございます。
  68. 田中克彦

    ○田中(克)委員 先ほど大臣お答えをいただきましたけれども、臨教審内部でも教育の財政問題については基本的な問題から議論を起こしている、こういうことでありますけれども、ただ、そういう中でいわば急がなければならない四十人学級とか大規模校解消とか、具体的に手のつくところからつけていく、あるいは第一次答申の中でも言われましたように、改革を手のつくところからやっていくということで、あのときも六項目にわたる改革案というのが具体的に出たわけですね。ですけれども、残念ながらこの四十人学級についてはどういう表現になっているか、私もちょっと関心を持っておりまして見たのですが、どうもその姿勢がない。  こうありますね。四十人学級については、「現行の教職員定数改善計画の円滑な実施に努める。」同計画の完成後、「小・中学校の教員配置について、欧米主要国における教員と児童・生徒数の比率等を目標としつつ、児童・生徒数の推移等を勘案しながら、さらに改善を図る。」こういう極めて平面的な触れ方にしかなっていない。  私は、そういう意味で、大臣はそのことの必要性を、重要であるし緊急性がある、こうお認めになっているわけでありますから、やはりそういう意気込みがこの中に反映されなければおかしいじゃないか、こう思うのですが、臨教審のことを文部大臣に詰めてもしようがないのですけれども、文部大臣としてはこれについてはどういうふうにお感じになりますか。
  69. 海部俊樹

    海部国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、いろいろ取り組まなければならぬ当面の緊急な改革の目標の一つとして、私どもは臨教審以前からこのことには着目をし、一人一人の児童生徒により行き届いた教育を行うための一つの方策である、こう考えて取り組んでおるわけでありますから、昭和六十六年度に目標を達成すべく大切に考えて、計画が実現するように努力を続けてまいりたい、こう私は思っております。
  70. 田中克彦

    ○田中(克)委員 ぜひ積極的な努力をお願いしたい、こう思うのですけれども、時間がありませんから話題を進めたい、こう思うのです。  実は、今主として義務教育の問題を取り上げましたが、私学助成の問題というのも文教予算の中では大きなウエートを占めておりますし、また大きな問題だというふうに私は思っているわけであります。大臣も早稲田の出身と伺っておりますので、私学振興には十分御理解をお持ちだ、こう思いますが、しかし、ことしも私学助成については、大学については昨年と全く同額、こういうことであります。  五十九年の私大財政白書というのが出されまして、「苦悩する私立大学財政」、これを見ますと、昭和四十五年から年々その増額をしてきて五十七年に同額据え置き、それから五十八年には二・三%削減、五十九年には一二%削減、昭和五十八年まで大学経営というのは黒字だったのですが、五十九年には二百億の赤字が出ている、借入金残高というのは二百八十億を超えた、こういうことであります。この五年間で学生の負担は五〇%ふえた。これは私学の経営だけが苦しくなったということならともかくですが、今度は学生の方の負担がやはりその影響で五〇%増になった。学生一人当たりの国費の負担率が国立との格差で十倍になってきている、こういうことがこの白書の中で言われているわけです。  私もこれは大変重要な問題だと思いますけれども、特にことしは十八歳人口がふえてくる年で、二十五万人ふえると言われています。六年後にも二十万人ふえる。ことしはこのために大学はその受入枠を四万四千人ふやさなければいけない。そのうち国立ては四千九百七十人の定員枠をふやした。ですからちょうど残りの九〇%はいわば私学が引き受けたということになっておりますから、高等教育の中で私立大学が受け持っている役割というのはこの数字から見ても非常に大きなものがあるわけですが、それが今言うようなこういう費用負担の上でも格差が生じている、大学経営は赤字に悩む、こういう状況になっているわけです。  これは新聞なんかの論調も、学生の急増期の後、急速に今度はまた逆に言えば減っていく時期への警戒というものも大学側にはあるであろう。それから、教育機関としての社会的責任、私立国立役割分担といいますか、そういう角度からの検討も必要だ。公的資金の配分の見直しや税制、奨学金や大学の設置基準等も含めて検討し直せというようなことについて、この私学振興にもう少し突っ込んだ配慮が必要なんだということを言っているわけですね。このことについて文部大臣見解をちょっと聞いておきたいと思います。
  71. 海部俊樹

    海部国務大臣 先生御指摘をいただきましたように、私学の果たしてきた役割というものは私は大変大きかったと思います。同時にまた、高等教育を見ましても約八割に近い人材を世に送り出してきたわけでありますし、また私立学校にはそれぞれの建学の精神とか学校の特色というものもあって、個性を尊重して、形式的な画一的な教育から百花擦乱のお花畑のようにそれぞれの人の持っておる特質や個性や適性をうんと伸ばしてあげようという大きな改革の方向にも即しておると思いますので、国会でも御理解をいただき、十一年前から私学振興助成法ができて法に基づいた助成の措置がとられてきておることは御承知のとおりでございます。私たちは、これについてでき得る限り法の目的に近いようなところまで、経常費の少なくとも半分以下というところを目標に持っておるわけでありますから、できるだけ増額していきたいという強い気持ちは持っておりますけれども、率直に申し上げて、この私学振興助成費も、国の予算編成時の扱いになりますと、ただいまの厳しい財政状況の中で、経常的経費でありますから対前年一〇%の減額というシーリングの制約を受ける項目になっております。けれども、私学の果たしておる役割とか教育の不断の努力の積み重ねという点からいきまして減らすわけにはいかぬというので、ことしも文部省の省内でもいろいろな努力もいたしましたし、また我々も側面的に大蔵省にもいろいろな折衝等もいたしまして、一応経常費としては対前年同額の横すべりでございましたけれども、やる気を持って研究助成を、研究装置をうんとつくって質の高い教育、研究に取り組んでいこうという私立大学には別の施設整備費等の補助等にも、わずかでございましたが、一〇%の増額で四十四億円という成果も出ておりますから、総計して合わせますと、前額より少しではあったが芽は出たなと我々は思っておるわけでございます。ただ、それで満足しておるわけでは決してございませんので、また来年度の予算編成のときなんかも重要に考えて、でき得る限りの折衝を続けていきたいと考えております。
  72. 田中克彦

    ○田中(克)委員 私学助成の問題をもう少し具体的に突っ込んで伺いたいと思ったのですが、時間の関係で少し質問を進めていきたいと思うのです。  実は、午前中の質問佐藤委員の方から塾問題というのが取り上げられております。それから、文部省が行いました保護者が支出した教育費の実態調査、実はこれも見せていただいております。ただ、その文部省調査というのは、指定された県を見ますと、全国的に方々にまたがっておりまして、いわば首都圏から離れた遠い府県などが今回の場合中心でありますから、これが全国的な傾向を必ずしもそのままあらわしているとは受けとめませんが、しかし、それにしても、この調査の実態というのはその金額が非常に低くて、私実は驚いているわけです。といいますのは、文部省とは別に公取が行いました、いわば経営サイドからこの調査をしたのがあるのです。  それを見ますと、中学生の場合に二人に一人塾へ通っているのが五〇・二%、小学生の場合四人に一人、二五・四%塾通いをしているというのですね。小学生の場合に数にして推計で二百八十万人、中学生の場合で三百万人を超えるであろう。この塾の月平均の授業料というのは九千三百円、家庭教師で週二回二教科で一万四千円、通信添削で五科目で四千四百円、こういうように出ているわけです。この塾のうち法人が五六・五%、個人が九・三%、法人はいずれもその規模拡大に努めているということであります。ところが、学習塾産業としての市場規模が推計で年間八千七百億、こうあります。それから、塾の規模についても、生徒は十二人で年商売り上げ百四十万円の個人から、同二万五千五百人で二十三億二千六百万円の法人まで大小さまざま、こうあります。法人の場合には一億から五億が三六・二%を占めている。大体一千人から二千五百人という規模のものが最も多いというふうに言われております。  授業料の方は、さっき平均を申し上げましたが、もっと高いところも当然ありまして、この数字から見る限り、いわば文部省の方の調査学校外家庭教育費はこういうものと比較にならないですね。その辺の関係について、これはどうしたことなのでしょうか。私は塾の実態というのは公取委なんかの経営サイドから見たものの方が正確なような気がするのですが……。
  73. 五十嵐耕一

    ○五十嵐政府委員 お答えを申し上げます。  まず、先生お尋ねの公正取引委員会の方の調査でございますが、これは消費者モニターという制度を持っておりまして、それを対象として行っている。その消費者モニターでございますが、これは県庁所在地まで九十分以内で来れるところに所在する者ということでございますので、そういう意味では非常に都会的志向が強いというものでございます。それについて調べられたということでございまして、通塾率その他につきましても、一般的にやはり大都会ほど塾の所在するところが多いものでございますから、また所在者も多いというようなことでございます。  それから、経費につきましては、先生のお話しの平均値で小学生で九千百円、中学生で一万二千三百円ということでございます。それから、私どもが実施しております保護者が支出した教育費の調査でございますが、これは先生がお話しのように、私ども毎年金国の都道府県から、地域分布とか一人当たりの県民所得を考慮いたしまして、その三分の一の都道府県を選びまして、そこから一定数の学校を選びまた一定数の子供を選んで調査をする、そういう意味で全国的なものであるということでございます。それで、この結果につきましては、当然のことながら都会地や農村などを含めた全国の平均値でございますし、また、それぞれの家庭におきます費目についての平均値を算出しておりますので、例えば学習塾とかけいこごと、月謝などの支出につきましては学習塾やけいこごとに子供を通わせていない家庭についても入っておるわけでございます。それで私どもは、小中学生の学習塾やけいこごとの実態につきましては、経費も含めまして昨年調査を実施し、現在取りまとめをしておるところでございます。
  74. 田中克彦

    ○田中(克)委員 文部省調査の中でも、特に幼稚園などの場合には、家庭の教育、いわば塾通い、けいこごと、習い事、そういうものに要している経費というのは非常に多い。小学校の場合でもそういう傾向が強いわけです。高校へ行くと若干少なくなりますけれども、中学校まではそういう傾向が非常に強いわけです。これは文部省調査の中でも出ておりますし、また、今の塾のはんらん、そういう傾向は、これは私が言うまでもなく、午前中の話にも出たことであります。  そこで、これは教育全体の問題でありますけれども、私は教育の素人でありますが、今いじめだとか非行だとか問題行動だとか、いろいろ言われております。しかし、今考えてみて、子供が授業とか習い事とかというものから解放されて遊ぶ時間、それから周りの人たちと交流する時間、自然と親しむ時間、こういうものが全然ないのですね。それで学校へ行くと学級の上下の関係もなくてクラスの中だけ、それでそこに閉じ込められてしまうという感じを私は非常に強く持っているわけです。  例えば、私は先日千葉県へ行ったのですが、あそこは非常に人口急増地域ですけれども、周りには恵まれた林がいっぱいあるわけですね。ところが、この林がもっと公益的に機能して一般の人たちに開放されると非常にいいと思うのですが、この林が残念なことに下刈りもしてなければ雑草とバラで埋め尽くされて埋もれている。森がそこにあるのにそれが利用できない。子供はそこで遊べないのですね。それで、子供は今度は家庭へ帰るとパソコンとテレビ、こうなってしまうのですね。今度の文部省の新しい予算の中でも自然学級授業というのがありますね。やはり自然に親しむことはいいことだと思うのです。しかし、わざわざそういうチャンス、そういうことに予算をつけなければやらないということではなくて、もっと日常的な生活の中にそれが取り入れられるような形にならなければ、今の子供の問題というのは私は解決しないように思うのです。  そこで、この塾のはんらんと今の塾にかかっている経費、こういうことを文部大臣としては今の教育の問題としてどうお考えになるのでしょうか。
  75. 海部俊樹

    海部国務大臣 御意見を二つに分けてお答えをさせていただきますけれども、塾のはんらんの問題につきましては、結果として家計を圧迫しておるような状況が出てきておる。同時にまた、児童生徒がそこへ行く、いろんな生活体験を身につけなければならぬのに塾がはんらんするのはどういうことなんだろうか。  私はこの前、文部大臣に在任中、塾調査をしたことがございます。そのときの正確な数字は忘れましたけれども、一番多いのはやはり子供が行きたいと言うから行かせるという親の意見が多かったのです。子供になぜ塾へ行くのかと言って聞いてみたら、みんなが行くから行きたいんだ。何か塾というところがお友達ができる場のような受けとめ方をされておる報告を聞いて、私はもっともっとこれはいろいろな面から考えなければならぬなと思ったことを今覚えております。  結果としましては、入学試験の制度とかあるいは学校の授業とかいろいろなものを通じて、塾へ行かなくても入学試験には努力によって向かっていくことのできるような制度、仕組みに変えてあげることの方がいいわけであって、塾の過熱状態は公教育や入学試験の制度を一生懸命改善することによって薄めていかなければならぬなというのが私の基本的な考え一つでございますし、もう一つは、先生御指摘の自然教室なんか、あれはいいことだからやれ、ただし予算をつけてさあやりなさいと提供しなければやらないようではいけない、まさにそうだと思います。  そのことについては私の考えを申し上げますと、何か入学試験の制度がそうなっておるからかもしれませんが、学校教育全体を覆っております風潮の中に点数中心主義、何か試験の点数をとることだけ一生懸命力を入れておればいいのではないかというようなことになっていきますと、どうしても汗を流してスポーツをやるとか近所の空き地へ行って友達同士で遊んでみるとかいうような体験ができなくなる。もうちょっと別な角度ですが、掘り下げた根本的な問題を見ますと、人口構造の変化で、御家庭が果たしてきた教育的な役割というのがこのごろ、いい悪いは別にしますが、果たせなくなっておる。兄弟げんかの適正規模もない。我々なんか六人兄弟で育っておりますから、まあいろんなことをやりました。そのうちに相手に対する思いやりとか、みずからつねって人の痛さを知れとか、人を投げるときは机や柱のないあいているところをねらって投げろとか、いろんなことを身につけて暴れてきたんですが、それがない。今日では、先生もおっしゃったように、御家庭には兄弟げんかどころかパソコンという大変おもしろい、一切の情緒から切り離されて興奮したり落ち込んだり悲しんだり喜んだりできるようなそんな一対一の機械と自分だけの世界というものが、いい悪いは別にしてどんどん出てきた。やはりそういうときこそ、人間のいろいろな発達段階先生おっしゃるようにもっと自然に親しむ、自然に畏敬の念を持つ、そういったこと等も毎日毎日の生活の中でもできるだけ体験してもらったらいいと私は思いますので、自然教室の施策もまさにその一つでありますが、もうちょっとほかにも、学校教育全体の中で初めて同世代年齢がぶつかり合う場があるわけですから、御家庭で失われていった、地域で失われていった教育的機能というものを、自然と接触し自然と親しみ、そして自分の体とエネルギーをずっとぶつけていくことができるような、そんな学校教育の一面が望ましいものである、何とかそういうふうに導いていきたい、私はこう考えております。
  76. 田中克彦

    ○田中(克)委員 与えられた時間がなくなってしまいまして、あと一つだけどうしても聞いておきたいことがありますので話題を進めていきたい、こう思うのですが、警察庁でお見えになっているでしょうか。——実はこれは新聞でも大きく報道されましたが、去る三月二十二日の午前十時過ぎに、兵庫県の宝塚市の宝塚小学校の卒業式に右翼が乱入して暴力を振るって、その卒業式を妨害すると同時に、父兄にけがを負わせて子供は泣き出して大混乱に陥れた事件がありました。教育の現場に右翼が殴り込むというような極めて残念なことでありますが、この事件の全容と警察庁のとった措置についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  77. 菅沼清高

    ○菅沼説明員 お答えいたします。  お尋ね事件は、三月二十二日の午前十時二十分ごろに、兵庫県宝塚市の市立宝塚小学校で、体育館で卒業式を行っていましたところ、兵庫県西宮市に所在する右翼団体の構成員十九人が会場に入りまして、会場内に国旗が掲示されていないということに腹を立てまして、数人が壇上に上がってあらかじめ所持していた日の丸を上げようとしたり、これをとめようとした父兄の一人を押しのけて演壇にありましたマイクを取り上げまして日の丸の掲示を迫るなど、式を数分間中断させた、こういうものであります。  警察といたしましては、直ちに現場に急行いたしまして被疑者十九人全員を検挙いたしまして、関係先を捜索するなど捜査を推進しております。現在、検挙した十九人のうちで五人につきましては引き続き身柄を拘束いたしまして取り調べを継続いたしております。送致罪名につきましては威力業務妨害罪と建造物侵入罪であります。
  78. 田中克彦

    ○田中(克)委員 現地の関係の議員に私も伺ったのでありますけれども、この卒業式以前からそういう脅迫とか予告とかいう事態も予測をされまして、その際に売布小学校の方に警察としては警備の重点を置かれていたということで、この宝塚小には私服の方が二人おられた、しかし十九名という大量の右翼であったためにそれが不可抗力的に乱入してしまったというように伺っているわけなんです。  そこで、考え方によれば、右翼の陽動作戦といいますか、それをまた予測する警察の警備態勢といいますか、そういうものに問題はなかったのかどうかという点も若干気になるところでありますけれども、その辺についてはいかがなんでしょう。
  79. 菅沼清高

    ○菅沼説明員 お答えいたします。  右翼団体が宝塚市内の小学校中学校等における国旗の掲示状況が悪いというようなことを言いまして、また、昨年一部の週刊誌に売布小学校のことが記事になったというようなこともありまして、大変関心を持っているということは警察の方も承知いたしておりました。この三月二十二日の宝塚市内の小学校の卒業式につきましても、いろいろな情勢、情報から売布小学校が一番批判の矢面に立っておるということから売布小学校を中心とした警戒態勢をとっておりました。それのほかのところにつきましては情勢、情報に応じて遊撃的に対応する、こういう措置をとっておったわけでございまして、宝塚小学校につきましては事前の動き等もございませんでしたし、また学校等からの特段の要請等も承知しておりませんでした。そういう点では売布小学校を中心にして警戒措置をとっていたところ、突発的に宝塚小学校の方に右翼が入っていったというような状態になったわけでございまして、これにつきましてもすぐに先ほど言いましたような処置をとったわけでございます。  警察といたしましては、宝塚市内に二十二校小学校があるというふうに聞いておりますけれども、学校小学校という場であるということを考えますと、あらかじめ全小学校に警察官を配置するというようなことは適当ではないとも考えられますので、やはり情勢、情報に応じて重点的な警戒措置を講ずるというような対応をしていたわけでございまして、その点につきましては、兵庫県警、宝塚警察署のとっていた措置、事前措置としては問題はないものではないかというふうに考えております。
  80. 田中克彦

    ○田中(克)委員 文部大臣事件は今お聞きになったような実態であります。そこで、文部省としてもこの事件には重大な関心をお持ちだ、こう思うのです。報告も受けていると思うのですが、私どもが非常に問題だと思うのは、いわば教育の現場の中に右翼の政治結社である人たちが一定の目的を持って暴力行為で殴り込みをかけるということでありまして、いわば卒業式という重大な教育の機会が乱される、しかも父兄は子供の見ている前でもつれ合いになってけがをするというような事態、しかも一生に一度の子供の最後の卒業式の機会が乱されて子供がそこで泣き出すというような状況考えてみたときに、これはもう許すべからざる行為である。よほどここで毅然とそういうものを規制していく、また教育サイドからの考え方もないと非常に危険だ、こう私は思うのです。これは文部省にとってももう見逃すことはできない問題だ、こう思うのです。この右翼がどういう目的を持って乱入したかは別にいたしまして、教育の現場の中にそういう教育と何のかかわりもない人たちが入り込んできて示威行為なり暴力行為を振るうということは排除しなければいかぬ、こう思うのですが、私は文部大臣としての決意をお伺いしておきたいと思うのです。
  81. 海部俊樹

    海部国務大臣 私は、大前提としての日の丸とか君が代の問題につきましては、先生から直接お尋ねがありませんので、この際ここで触れることは御遠慮申し上げますけれども、あるべき学校の卒業式の場に右翼が暴力でもって乱入したということは、その事実はよくないことでありますから、それは全く次元の違う問題として私どもは遺憾な問題だった、こう思います。
  82. 田中克彦

    ○田中(克)委員 遺憾であったということだけではなくて、今後こういう事件の再発それから他への影響、そういうものを食いとめていくための文部省としての考え方が示されなければおかしいじゃないですか。ただ大変遺憾だったということだけがこの事件に対する文部大臣見解なんでしょうか。私も文部大臣と同じように、日の丸、君が代の問題を今議論しようとは思いません、もう時間がありませんので。ただ、そういう教育行事の一環の中に、しかも卒業という大事な機会の中に、しかもいたいけな子供の重大なそういう機会にこれをめちゃくちゃにされたということが教育の上から許さるべきことでないということについて、もしそういうことをきちっとお考えなら今後の対処の仕方というものはここできちっと示されてしかるべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  83. 海部俊樹

    海部国務大臣 暴力事件というものを取り上げてみますと、先生おっしゃるように、卒業式に児童生徒の目の前でこのような暴力事件が行われたことは大変遺憾なことであって、これは教育上二度と繰り返されてはならぬことであり、警察もそれなりに厳正に対処をしておってもらうわけでありますから、この次元においてはそのようなことが再発しないように心から願います。
  84. 田中克彦

    ○田中(克)委員 各都道府県の県教委あるいはまた学校、そういうところへはそういうための文部省考え方なり指導なり対応なりというものをお示しになるわけですか。
  85. 高石邦男

    高石政府委員 こういう厳粛な卒業式の場でこうした暴力的な行為が発生するということは、これは大臣答弁申し上げているようにまことに遺憾なことであります。こういう事件のみならず、すべて学校の中が平静に、そして外部からの暴力的な形にならぬようにということは、これはもう学校教育を展開する基礎、基本でありますし、そういうことでやってほしいということは終始申し上げてきているわけでございます。この問題については警察が具体的な事件として取り扱っていらっしゃいますので、的確な処理を願いたいと思っております。
  86. 田中克彦

    ○田中(克)委員 教育の現場でありますから、警察のお力をかりるということはいわば最悪の事態、それ以外に方法がないという事態のときにこそ許さるべきことだと思いますが、この場合こそまさにその力でなければ問題の解決にならない、こういう事態だというふうに私ども思うわけです。先ほど警察の方からの見解も示されましたが、この種事件の再発防止についていわば警察当局としての決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  87. 菅沼清高

    ○菅沼説明員 お答えいたします。  言うまでもないことでありますけれども、警察は、いかなる立場からするものであれ、違法行為はこれを看過しないという基本方針で厳正な取り締まりをやっておるわけでございまして、今後ともこの方針のもとに取り締まりを徹底してまいりたいと考えております。入学シーズン等を前にしておりますので、同種事案の発生防止のための必要な指示につきましては既に行っております。
  88. 田中克彦

    ○田中(克)委員 終わります。
  89. 青木正久

    青木委員長 有島重武君。
  90. 有島重武

    有島委員 昭和六十一年度、第百四国会における文部大臣所信に対しまして、質疑と提言の機会を与えていただきまして、私は欣快に存じております。総括的に当面の諸問題に触れておきたいと思います。なるべく簡潔にいきたいし、お答えもなるべく簡潔にしていただきたい、お願いをいたします。  三つほど大きな問題があると思うのです。一つは、学歴社会の弊害の是正ということがございますね。これは入試の問題あるいは青田買いの問題、あるいはそれに関連して放送大学の問題も触れておきたいと思っております。第二番目には、いじめ、暴力、非行、登校拒否、こうした問題の解決ということについてです。三番目は、これは文化庁にかかわる問題ですけれども、国語の辞典の進捗状況あるいは文化財の税制の問題、そんなことできょうはやっていきたいと思っております。  初めに、学歴社会のことなのですけれども、去年の六月に臨教審の第一次答申がございましたね。これに対応して閣議で、最大限政府としてはこの答申を尊重する、速やかに所要の施策を実施に移す、こう決定されたということですね。これが七月二日だ。それから閣僚で構成する教育改革推進会議を設置された。これは七月五日だ。そして文部省におかれましては事務次官を本部長として教育改革推進本部を設置なすった。以上を承知しておるわけであります。その後の作業は四つが大きなものである。すなわち、一つには学歴社会の弊害の是正。第二番目が大学入学者選抜制度の改革。三番目の大学入試の資格拡大、これはなかなかよく進捗しているというふうに聞いております。四番目が六年制中学校というのですか、中学、高校の一貫、こういった四つのことであるというふうに承っています。  そこで、初めに入試の問題からいきます。  この入試については、去年入試に関する協議会をおつくりになった。大学入試改革協議会ですか、七月におつくりになってことしの七月に答申が出されるわけですね。ここでもっていろいろな議論が、今度の予算委員会でもなされた、そういった経過があったようでございますけれども、これは大臣、大きな原則が二つあると思うのです。それを確認しておきたい。  一つは、どんな入試選抜の手だてにする、あるいは改革するにいたしましても、初等中等教育を万一にもゆがめる方向であってはならない。むしろ基礎学力を保障していくといいますか、そういう方向に改革をしなければいけない、新しくできた制度はその方向に運用しなければならない、それが第一番の原則じゃないかと思うのですけれども、どうでしょうか。
  91. 海部俊樹

    海部国務大臣 御指摘のとおり、初等中等教育をゆがめてはならないとおっしゃることは当然のことでありまして、入学試験のために初等中等教育があるのじゃございませんので、児童生徒人格形成を目指す過程の一つとして初等中等教育はあるのですから、先生の御指摘のとおりだと思います。また、基礎学力を大切にしなければならぬ。これはアメリカやイギリスやソ連の教育改革もそうでありますが、皆基礎学力をもっと高めていかなければならぬという方向に教育改革は向けられておるように私は受けとめております。したがいまして、日本もこれから二十一世紀世界に貢献できる学問研究の峰を高くしようと思えば、初等中等教育における基礎学力というものは極めて大切なものでございますから、大学の入学試験の改革をするに当たっても、その妨げにならないように、むしろ積極的にそういった基礎学力をどのように身につけておるかという到達度を見るようなそんな角度からの入学試験になったらいいのではなかろうか、私も日ごろそう考えておるところでございます。
  92. 有島重武

    有島委員 第二番目の原則といたしまして、どんな改革であっても片隅だけ改革すると余りうまくいかない。入学試験というのは初等中等教育から高等教育への橋渡しのようなところですから、橋ばかり磨いても渡ったところが混乱をしておるのではだめなわけで、だからむしろ出口の方をしっかりさせる、これが原則だと思うのです。大学について言えば、入試があってそこに入学する、めでたく入学して学籍を得られた人もいれば、学籍は得られなかった、そして学籍を得られないから浪人してもう一度やろうということもあるでしょうけれども、これからの生涯学習社会といいますか、そういうことになると、学籍を持たないままでどんどんいろいろな聴講をしていってというようなこともあり得るのじゃないのだろうか。これは先の話ですけれども、入試、入学、そして大切なのは研究、修学ということ、それがある。それで、研究をした、修学をしたその成果を単位の認定をする、単位の認定の証明をしてもらう、そして資格を付与される、それで就職をする、こういうことを総合的に改革をするというか考えていかなければならない。  だから、入試改革についても、特に大学における資格の付与のあり方とにらみ合わせてといいますか、同時並行といいますか、あるいはむしろ出口のところをしっかりさせるということをしなければならないのじゃないか、出口の原則という原則が一つあるのじゃないだろうかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  93. 海部俊樹

    海部国務大臣 いつ、どこで学んだかということよりも、どれだけ、何を学んで身につけておるかということの方が大切だという御趣旨の先生の御質問と承っておりましたが、恐縮ですが、最後に何の原則とおっしゃったのですか。
  94. 有島重武

    有島委員 入り口だけにとらわれるのではなくて、出口の原則と言ったわけです。
  95. 海部俊樹

    海部国務大臣 出口の原則ですか、わかりました。  入り口というのは入学試験のことでありますから、今みんながそこヘエネルギーをぶつけて激しい競争を乗り越えて入ってきます。入ってきて、卒業のときにしっかりした学問を身につけて卒業をし、社会に出ていかなければならぬという角度の御意見だと思いますけれども、私もそれには同感でございます。
  96. 有島重武

    有島委員 次に、青田買いのことで伺っておきます。  「昭和六十一年度大学及び高等専門学校卒業予定者のための就職事務に関する申し合わせ」が三月二十日に出たと承っております。これは国立大学協会会長、公立大学協会会長、こうした名前で出ているのですね。  それから、去年度も就職協定というのがあった。去年度は十月一日が企業と学生の接触開始、十一月一日が採用選考開始、ことしはそれを八月二十日と十一月一日になさったということです。こういった申し合わせをする根拠、どうしてこういうことをしなければならぬのか、これを御説明いただいておきたいのです。
  97. 海部俊樹

    海部国務大臣 就職協定の申し合わせをしますことは、学生が就職することの機会の均等を図るとともに、もう一つ学校教育の正常な運営に資する、この二つの必要があって就職協定があるわけでございます。  しかし、正直に申し上げて、実情は必ずしも各界でこれが守られておるとは言い切れない状況でございましたので、協定をつくる以上はしっかりと守っていただきたいし、それによって学生側の安心感といいますか、このルールに従って自分は就職活動に参加するのだという安心感も出てこなければならぬと思いましたので、文部省といたしましても、いろいろな研究、検討もし、大学側とも話し合いをいたしました。それから企業のサイドでも、中央雇用対策協議会というのですか、おつくり願って熱心に御検討いただいたと思います。  そして昨日、私は文部省でその代表の方の御訪問もいただいて、企業側も守れるような就職協定という大前提から、八月二十日に接触を開始するというふうに日をちょっと早めよう、これは文部省も各大学と話をしておりました線と全く一致するわけでございますので、企業と文部省側との合意ができた。本日は、閣議の場で私から特に各省の大臣にも御協力方の発言をいたしまして、官庁の採用等についてもこの大学側と企業側との就職協定の線を尊重して守っていただきたいとお願いいたしました。労働大臣からも、総務庁長官からも、それにできるだけ呼応しようという御発言もいただいたところでございます。
  98. 有島重武

    有島委員 御努力、大変御苦労さまと思います。でも、これを守らなかったらどうするのか。といっても、別に罰則があるわけじゃないです。それから、この実害でございますけれども、先ほど機会均等と学校教育の正常化ということでございましたが、私はこの青田買いを望ましいと思っているわけじゃありませんけれども、卒業しない人をどんどん雇用者側が約束するというのは雇用者側が得だからそういうふうにするわけです。これは企業が企業の論理といいますか、それでもってやっておるわけです。それから、学生側も別に困らないわけです。それから、大学側はどうなんでしょうか、困るのでしょうか。だれも困らないから、だからどんな協定をつくっても結局守られない。守られない協定をそれでもつくらなければならない。何かちょっとアンデルセンの「裸の王様」じゃないが、一生懸命やっているのだけれども、意味が余りないのじゃないだろうか。そういうことを私は聞くわけです。だから、今この協定をつくらなければならない根拠は何なのか、そのことをもう一遍承っておきたい。
  99. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先ほどの大臣の御答弁のとおり、根拠と申しますか目的といたしましては、大学等の卒業予定者の就職活動がある一定の秩序ある姿で行われることが、大学内におけるいろいろな就職あっせんのための諸活動にとっても必要でございますし、同時に、企業側の求人活動を円滑に行う上でも好都合であるということが一つございます。それを通じまして、学生側にとっては、自分の一生の進路を決める上のチャレンジする機会をできるだけ公平に確保していただくということが期待されますし、大学側としても、正常の教育課程の中での就職活動でございますから、そういうものが一定の期間に集中的に行われることが望ましいというような要請があるわけでございます。そういう要請があるものでございますから、当事者でございます大学側は、就職問題懇談会という大学、高専その他八団体の就職担当の代表の方々のお集まりがあるわけでございますけれども、このお集まりではぜひそういうルールをつくってほしい、つくるべきであるといういわば自主的な御要請、御決定というものが強くあるわけでございます。文部省といたしましては、いわばその大学の就職担当の方々の意見を集約するお世話役をさせていただくということで、その御意向の取りまとめと、それから取りまとめた結果を企業側にお伝えして御相談をするということをいたしておるわけでございます。片や企業側といたしましても、やはり中央雇用対策協議会という各企業のその方面の団体のお集まりがいろいろと御議論をされ、何遍もアンケートをされるというようなプロセスも経まして、企業側としてもこういう取り決めというものが秩序のある採用活動を進める上でどうしても必要だということで、これまたぜひ存続をいたしたい。先生御指摘のように、就職活動というのは学生対企業の当事者同士の営みではあるわけでございますけれども、双方の当事者がこういうルールが欲しい、その方がうまくいくんだという強い要請を一つの背景といたしまして、私どもとしては、その意向を集約、取りまとめ、できた以上は遵守していただくようにできるだけ努力をする、こういうことで今日までも取り進めてまいったわけでございますが、明年度さらにこの際心を新たにして取り組もうということで、新しい就職協定に至った次第でございます。
  100. 有島重武

    有島委員 せっかくの御説明ですけれども、皆余りわからないのじゃないかと思うのですね。実害はどこにあるのだろうか、申し合わせの根拠は何なのだろうか。  では、次へいきます。  学歴社会の弊害、この是正ということでございますけれども、学歴という言葉の定義はどうなっていますか。
  101. 大崎仁

    ○大崎政府委員 使われる場でいろいろな使い方があろうかと存じますが、一つは、いわゆる学校段階、つまり大学卒であるか高校卒であるかというような意味での学歴ということもございましょうし、さらに、具体的に固有名詞のついた学校のどこの学部を出たんだというようなことまで申す場合もあろうかと思います。いずれにいたしましても、どういう学校教育を受けたか、終了したかということの経歴というようなことではなかろうかと思っております。
  102. 海部俊樹

    海部国務大臣 学問的に調べたことはございませんので、私の感じを率直に申し上げますが、学歴というのは、この人は人生の幾日に大学に学んだとか、どこの大学であったとか、あるいは高等学校であったとかいうようなことをその人の持っておる学歴、要するに形式的な意味なんです。だから、何をどれだけ学んで何ができるかという実質的な能力が余り反映されずに、形式的な肩書きあるいは経歴だけがえらい立派なごどのように幅をきかせ過ぎる、そういうような風潮が高まってきたことが学歴社会の弊害という点で指摘されるのだろう、私はこう受けとめております。
  103. 有島重武

    有島委員 辞書を見ますと、いろんな辞書があるんだろうから、大崎さんまた調べておいてくださいね。これは議論になっているのだから、言っている人によってみんな違うのじゃこれは議論にならぬ。二つございまして、「学問研究の経歴」とまず第一番に書いてありますよ。それから第二番のところに「学校における修学の経歴」、こんなふうに書いてあります。大体この辺でおしまいなんですよ。だから、今現実的には、三番目には「出身校の名前」、こうなるでしょうね。この出身校が最近では一流、二流、三流と、いい言葉ではないけれども、大体そういうようなランクづけがある。それからもっと大ざっぱには、今海部文部大臣がおっしゃったように、高卒であるとか大卒であるとか、そういう形式的なものでしょう。学歴という言葉そのものが余りよくなくなっちゃった。だけれども、これから生涯学習ということが教育の大きな柱になってきている。生涯学習あるいは生涯教育というところから学校も見ましょう、家庭も見ましょう、社会のいろいろな教育的、文化的な機構をその面から見ていかなければならないだろう、二十一世紀に向かってそういうことになるだろう、これが大体のコンセンサスになりつつあるわけですね。  そうなりますと、ここでもって改めてその人の学習歴といいますか、そういったものが正当に評価されるようになった方がいいんじゃなかろうか。今形式的になったというのは、百年間割合とのんきだったわけですよ。だから、どこどこ大学を出ましたというと、中身を問わなくても、まあまあこれは人柄は大体こんなものだろう、家庭の事情も大体このレベルだろう、それから交友関係も人脈なんかもああだろう、そういうようなものでいたわけです。それはこれからもあってよろしいかと思うのですよ、悪いこととも言えません。  私は、学歴というなら、やはりその学歴に対応する、学歴を尊重する手だてというものをつくろうと思えばつくれるのじゃないだろうか、これがきょうここの質問の結論になるわけでございますけれども、修学の経歴を大学でも高校でも責任を持って証明しなさい、こう言いたいのですよ。高校出たというのだけれども、共通一次やってみたらひどいというから、これは高校の校長さんよく証明してくれたな、こうなりますから、これは無責任ということだ。それから、大学を卒業して、これは法学部だ、こうだ。だけれども、それが余りひどかったら、そのときの大学の教授会、何々大学の何年度の教授会というのはちょっとなまくらなんじゃないだろうか、責任を問われなければいけないというふうになってもいいんじゃないか。  そこで、私は、今度は大学に限定して言いますけれども、修得単位の累積証明書を発行するようにした方がいいんじゃないだろうか、そういうことです。それで、青田買いの問題にいたしましても、三年生になった、四月からどんどん就職とかいうことで、そのときに大学は大学でもって彼の今までの修得してきた単位、これはちゃんとそれぞれの教授会を経てきた権威あるものだ、ここのところまでは積んである、こういったものを証明してくれれば何でもないんじゃないですか。それで、今も官庁なんかの場合では、そうやって中途退学のままでもって就職なさる方もいらっしゃるわけですね。そして、そこでもって上級試験をお受けになる。それは大学を卒業しているとかしないとかいうこと以上に、そちらの上級試験の方がちゃんと優先されて給与体系が変わってくる。こういうようなことはもう現実にあるわけですから、それをどうしても、三年のところでもって就職は決まったけれども、卒業をしなければいけない、卒業は四年いればどうにか卒業できるんだとか、そういうような行き方というのはもうそろそろ改めてもよろしい時期が来ているんじゃなかろうか、こういうふうに言いたいわけなんです。  そして、その資格の付与、これも、提言でございますけれども、大体三種に分けて、第一種は、学士、修士、博士、これは従来どおりでいいだろう。第二種は、大学や高等教育機関にとにかく在籍をして、入学試験でも入ったら入っただけでも大したものだ、そしてその上でもってどれだけの単位を積んでいるか、この単位の累積証明でもってどんどん通用さしていいんじゃないだろうか、これが第二種。第三番目としては、学歴を持ってないけれども、いろいろな聴講生をしたりあるいは放送大学でもって単位を取る、こういったものの証明書が通用するようにする、こういうようなことをしたらいいんじゃないか。  しかも、その証明の内容でございますけれども、どういった科目を受講したということと同時に、どういう受講環境であったか、これは放送でやっちゃった、通信でやった、そういうのもあるでしょう、あるいは大学でもって四十人教室でやった、あるいはトイメンでもって一対一でやった、あるいは五人ぐらい、十人ぐらいのゼミでやった、こういった受講環境というものをそこに、単位のところに明記してもらうべきだろう。というのは、私、少人数教育における師弟関係を結ぶ、人間関係を結んでくるということが今後ますます大切なことになるんじゃないだろうかということを思うから、特にこのことを言いたい。  その第二番目は、授業の場所ですね。大学構内でもってどのくらいの単位を取ったのか、あるいはよその大学でもって単位の互換でもってどのくらい取ったのか、こういうようなことはやはり明記すべきでしょう。  それから、さっき以来言っておる承認の責任ですね。何年度の何々教授会が承認した、こういうものですね。  それから、もう一つは保存です。今中途退学ということになりますと、大体五、六年でもって名簿がなくなってしまう。ですから、中途退学でもって就職した場合に、さらに継ぎ足しでもってやろうといたしましても、今度は名簿がなくなっちゃって、もうそれはだめだ、だから一年からやり直してくれ——一年からやり直すということは、事務に入ってもう一遍若い諸君と一緒にやるわけですから、それは面倒くさいということになりますね。これは人生八十の時代でございますから、八十年間ぐらいは保存をしておいてもらったらいいんでしょうね、八十の手習いというのがあるかもしれないから。  そういうことは、今申し上げたことは、僕は十数年前にも申し上げたのですけれども、そのころは今ほどコンピューターというものが余り一般化してないころでございました。そのとき僕はIBMに行って、こういうようなことをしたらどのくらいの値段がかかるか、こんなことをやった覚えがございますけれども、今はこんなことは非常に簡単なことなのですね。というようなこと。  こういうような提言をしたいわけなんだけれども、御理解をいただけるだろうか。御賛同をいただけるだろうか。
  104. 海部俊樹

    海部国務大臣 いろいろな角度からの先生の御提言を、私もメモをとりながら拝聴いたしまして、一つ私の個人的な体験で恐縮ですけれども、百二十四単位、単位を取ってしまって、三年生で就職が決まってしまって、現実に企業に行ったら、卒業証明書をもらってこいと言われた学生がおりまして、私がその学校へうかつにも交渉をいたしましたら、それはそういう規則になっておるからだめですと言われました。いろいろ調べてみましたら、例えば先生御指摘の国家公務員試験なんかも、国家公務員試験が受かりますと官庁は採用してくれるのですが、大学は途中では卒業になりませんので、中途退学というままで入るケースがある。受け入れてくれるところはまだ中途退学で入れますけれども、かたくなに考えて卒業生じか受け入れないという企業は、もう一年大学へ授業料を払ってその人は残ったわけでありますけれども、いろいろなことを考えますと、大学というのは単位制、今は百二十四単位、そして四年間ということになっておるのですけれども、単位が取れませんと五年間、六年間いる人もあるわけですから、逆に言うと、単位が取れてしまったら、そして先生おっしゃるように教授会がどんと判を押して間違いないと認定をすれば、それでも採用しますという企業があったら出ていかれるようにしてあげたらいいのになあということを、私も政治家として受けとめて考えたことがございました。  それで、今のお話を聞いておりまして、これはそう個人の思いつきばかりで物も言えませんので、今の制度、仕組みの中で、各大学と大学との単位の互換ということもある程度進んでおるようでありますし、それから、これからの教育は人生のいつ、社会に出る前の四年間だけ勉強したというのではなくて、生涯かけて勉強する必要もあるわけでありますから、そのうちにいろいろな生涯教育の場で単位を持ってきたらそれが加算されるとか、放送大学の利用の仕方なんかもそういうことになっていけばまた幅が広がるなあという感じも私は持っております。  そういった意味で、先生の御意見を今後研究し検討するための課題として、今メモをとりながら拝聴いたしましたので、よく勉強さしていただきたいと思います。
  105. 有島重武

    有島委員 ありがとうございました。御理解いただいて、あるいは検討の課題に加えてくだされば大変ありがたいと思っております。  そこで、今大臣もおっしゃいましたけれども、放送大学のことでございますけれども、これは僕はこれから非常に重要になると思います。ところが、これはまだ知らない人が多いのですよね。去年ロンドンに参りまして、自動車の運転手に、オープンユニバーシティーというのを知っているかと言ったら、彼は振り向いてとうとうと話しましたですよね。何でよく知っているんだと言ったら、うちの息子もそれにいるとか、それからうちのいとこがああだとか、いろいろ言うわけなんですよ。東京でもってそれを聞きますと、さあ、放送大学というのは何かアナウンサーか何か養成するのですかと、こう言っていましたね。その程度の認識ですね。向こうはもう十五年もやっている、こっちはまだ二年目やっとですからそれはしようがない。  ちなみに、大臣のお部屋にあるテレビは放送大学映りますか。ごらんになったことありますか。
  106. 海部俊樹

    海部国務大臣 放送大学のことにつきましては私も非常に興味を持っておる者の一人でありますし、また、前回在任中に放送大学の構想が出ましたときに、先生お尋ねになったイギリスのオープンユニバーシティーに行ったのですよ。そのときのやりとりをちょっとここで御披露しますと、向こうの放送大学の副学長と学長が私に、まあ元気づけるためかもしれませんが、この英国のオープンユニバーシティーは日本のNHKの教育テレビの番組というのにヒントを得て我々は立案したのです、あなたの国も同じような発想でいい国民教育番組やっておるじゃありませんかという激励の言葉ももらいまして、そして、帰ってきて早速そういったこと等あわせ考えながら、放送大学というものが一歩一歩進んでくるように努力をしたわけでございます。  それで、ことしなんかも、昨年の応募者数に比べてことしの応募者数がどうだとか、いろいろ問題になりましたときに、どんな内容のことが行われておるのかなというので、私もテレビで、正直言ってまだ数回でございますけれども、見たことはございます。見ながら同時に僕が非常に思うことは、この番組の中にひとつできれば時事英語の時間というようなものもつくってもらって、朝の時間に外国のいろいろな新聞なんかの簡単な解説をしながらそれを読んだり聞かせたりしてくれるような番組ができたら、私自身も学生になって、今一番残念だと思っておるのは英会話の力が弱いことでありますから、そういった勉強も十分取り組んでできるいい制度だな、こう思って見ておるところでありますので、なお一層これが充実し広がっていくように頑張ってやらせていただきたい、こう思います。
  107. 有島重武

    有島委員 海部文部大臣大臣室では映るようになっていると私は信じるけれども、地元の、御自宅の方では映らぬわけでありますね。これは関東一円でございます。早く全国放送にしてくれ、こういった要請がたくさんございます。  それで、これを受けまして、そういった声を受けて我が党の竹入委員長も中曽根総理大臣教育のことだけでもって申し入れをしたことがございました。その中の一つが放送大学の全国化ですね。これを早くやりなさい、こういうことだったのですね。  そこで、全国化もいいのだけれども、そのネックが一つある。これは放送衛星を打ち上げなければならぬ、これはお金がかかる、こういったこともあるでしょう。しかし、それは電話線なんかも非常に十年前と違ってまいりましたから、これから衛星を上げなくても全国津々浦々行くかもしれない。しかし、沖縄とか北海道あるいは長崎県の五島列島とか、本当に放送大学を欲しがっているようなところが、グラスファイバーが幾ら行っても届かぬようなところがあるわけですね。だから、早く放送衛星を上げてもらいたいと思います。  しかし、そういった通信手段よりももっと大切なことは、恐らくスクーリングの場所の確保でしょうね。今関東に五つですか、六つですか、ございますけれども、そこだって非常に手狭なところであります。そこで一生懸命やっている。しかし、スペインの放送大学でしたか、あそこなんかでは普通の田舎の高校の校舎をどんどん使っているのですね。本当に粗末な狭い校舎を使ってどんどんやっておるようでした。それから、イギリスなんかの場合でもそうですね。田舎でどんどんやっている。ちょっとした集会所みたいなところあるいは個人のうちでやっているということもございました。ということは、大学直属の校舎でなければいけないということではなくやっているのですね。それが一つ。  それから、場所の確保以上にもっと大変なのは人なんですね。今は放送大学は百五十人のスタッフでやっていらっしゃるのでしょうか、それに講師というのですか、非常勤の方々が倍の三百人ほどでやっていらっしゃるのじゃないかと思っておりますけれども、あいまいだったら後訂正してください、そんなものじゃないかと思う。その方々がフル回転でやっていらっしゃって、六カ所、相当大変だということなんです。  放送大学に参りましたのは、ここにいらっしゃる自由民主党の理事さんでいらっしゃる臼井先生も御一緒に行ったわけでございますけれども、イギリスのオープンユニバーシティーに参りまして、その時、そういったスクーリングの問題をどういうふうに解決したのですかと。私が十数年前にオープンユニバーシティーに一遍行ったときには、まさにスクーリングをしていくその人の問題で、向こうではチューターだとかカウンセラーだとか二通りのことをやっているようでした。それから、あとは何とかというちょっと別な名前でしたけれども、そういうような人たちを丸抱えにしてそのオープンユニバーシティーでやっていくんだ。これはもう本当に国が破産するほどの値段である、これをどう解決するかということが頭が痛いんだということを言っておられました。今度行ったときに、それが、全国津々浦々に呼びかけたら、大学卒業ないしはマスターを持っている人たちというのが各田舎にやはりいるんだ、そういう人たちが手を挙げて出てきて皆手伝いをしてくれた、これがボランティアとなって喜んで放送大学の電波を聞く小さな四、五人のクラスのヘッドになって一緒に見てくれる。どんな人たちがやろうと思っても、なかなか一人で聞いてこの授業はこうだと続くものではないのであって、そういったグループがあるということがいい、そういったグループにしっかりした人がつくということが非常に成功のもとであった、こういうようなことも言っておりました。  それは僕がこのつたないコミュニケーションでもって言うのであって、今文部大臣が、放送大学はこれから非常に重要だという御認識であるとすれば、そうした向こうの事情ですね、全国放送にするための一つの隘路というものをどう向こうが乗り切っていったのかということについて十分ひとつまた調査をしていただきたい、こうお願いしたいのですけれども、どうでしょうか。
  108. 海部俊樹

    海部国務大臣 お話しの御趣旨で、ひとつ全国に広げるときの隘路は、そういった広く在野の人材を活用するという方法も今具体的にお話があるわけですから、十分調査をさせていただきます。  それから、先ほどの全国に広げる計画その他のことにつきましては、御必要ならば局長から御答弁を申し上げます。
  109. 有島重武

    有島委員 ちょっと時間であれだから、また大崎局長さんから伺うことにして、とにかくそういった方向の調査をどんどん積極的に進めていただきたい、これをひとつこの場でもって確認さしてください。  それで、次の問題にいかしていただきたいんです。というのは、六年制といいますか、中学、高校の一貫ということを臨教審が言った。これに対して、文部省としてはこれを受けて実施するということなんですけれども、こういったことを既にやっている実例をひとつ収集していただきたい。私立てはもう実質的にやっているところがあるというふうに僕たちは認識しているわけです。それもどういう効果が上がっているのか、そこにはどういった問題があるのか、それを僕たちも調べます。調べますけれども、文部省の方でもそれを調べていただきたい。それから、公立の方でも中教審の四六答申以来御研究なさっている分が随分あると思うのですね。今までの先例を僕たちにも十分教えてもらいたい。それが一つ。  それから、もう一つは、これは本気でもって進めていこうということになりますと、中学校先生高校先生とは交流が起こるわけですね。画然と中学校三年、高校が三年じゃなく、そういう何か相互交流みたいなことが起こってきますね。そこで、給与体系の問題でございますね。給与体系が違うわけですね。それで、この中学校の教員の給与体系を高校の給与体系と同じにレベルアップするということをもししたらば、どのくらいお金がかかるのか。それほどかからないのじゃないかと思うのですけれども、この間そういうことを伺ってみたんだ、そしたら調べておきますみたいなことを文部省の事務方の方がおっしゃったと思うので、もしお教えいただければ……。今の二点。
  110. 高石邦男

    高石政府委員 前段の私立学校で実質上、小中、中高が一体的な一貫教育のようにやっている私学はかなりあると思います。ただ、第一次答申で述べているのは、それよりもう一つ踏み込んで、要するに六年制という就業年限の一貫教育の六年制中等学校というようなことになるわけでございます。したがいまして、そうなりますと、今一つの例示として御指摘のありました給与体系の問題、それから教職員の免許制度の問題、それから教育内容の問題、そういうものを抜本的に詰めて検討をした上で法整備をしないといけないということで、現在それぞれの面で鋭意検討を積み重ねているということでございます。
  111. 有島重武

    有島委員 そういった検討は進めておられるということですね。じゃ、今申し上げました給与、もし中学と高校を一緒にしてしまったら、予算はどのくらいかかるのだろうかということは、これは後でもって教えてください、どの程度という状態を。  それから、単位の互換のこと。これも大臣から言っていただいたけれども、僕のところにも昭和五十八年度までの「実施状況の推移」というのをいただいてありますけれども、これは五十九年、六十年の状況はどうでしょうか。私が見る限り、御報告を受けている限り、数は多いとは言えませんけれども、昭和五十三年が七百五十一、それから五十四年が九百五十三、それから五十五年が一千二百七十五、それから五十六年が一千二百九十六、それから五十七年が一千六百三十五、それから五十八年が一千七百七十四、これは大学院と学部でみんなまじった数字でございます。大ざっぱに言えば、まずまず後退はしないでじわじわと進んでいる、そんなふうに見えるわけだけれども、五十九年、六十年の傾向おわかりになれば。わからなかったらまたでいいのですけれども。
  112. 大崎仁

    ○大崎政府委員 現在五十九年の数字を集計中でございますが、ただいまお話しのような漸増傾向というのは続くのではないかというふうに見ております。
  113. 有島重武

    有島委員 これも無理やりに進めるということは別にあるわけじゃないけれども、やはり特徴のある大学が出てくるということが、まずそれぞれの大学が特徴ある研究を進めるということがきっと大切なのでしょうね。そういった傾向を要するに指導する。それから、あるいはさっきの放送大学の単位の互換というようなことが今後の問題じゃないかと思います。  以上でもって一つ終わりまして、では、次の問題にいきます。  第二番目の問題は、いわゆるいじめ、暴力、非行、登校拒否、これについていろいろ言われております、いろいろ報道されております。それで、私は、この解決策、これはやはり私たち政治家にとっても課せられた大きな問題だと認識をいたしております。  この対処の方向に二つあると思うのですね。その一つは、こうした問題行動があってはならない、だからそれを抑え込んでいきましょう。それで、早期発見してこれに対処しましょう。文部省の方でも大変御努力いただいて、去年の十一月に「いじめの問題関係資料集」、こういうものもお出しになって、この中にも本当によく整理をされていると思うのです。しかし、お見受けするところ、大体なくなそう、管理していこう——なくなそうに決まっているのだけれども、そういった方向が一つある。  それから、もう一つは、こうした若いというか幼いといいますか、青少年から思春期にかけての子供たち、これは大人にはちょっと考えられないようなエネルギーというものを内に秘めて持っているわけですね。このエネルギーが非行の方向に、あるいはいじめの方向に、あるいはいろいろな思わしくないところに行く、そういったエネルギーを転換していくという行き方、これが大切なのではなかろうか。抑圧するあるいはこのエネルギーを転換する、こういった二つの考え方がある。その両方が絡み合っていろいろ処置をしていること、これを拝見しても言えますけれども、エネルギーを転換していくということが一番根本に、基本にあっての処置にしようというところに、教育者も行政の方も家庭の方もみんなそこに一つのコンセンサスを持つべきじゃなかろうかと私は思うのだが、どうでしょう。
  114. 海部俊樹

    海部国務大臣 先生の御指摘の最初の方、今起こりますいじめ、暴力なんかを、余り大人がみんな物わかりよくなってしまって傍観者のような態度になっておるのもいかがかとは思いますけれども、あれは出てきた芽をつまむだけのその場限りのやり方であって、その根底にあるエネルギーの転換をしないとまた出てくるだけだとおっしゃることもよく私どももわかるわけであります。ですから、現に起こっているものには、当面対応として、現場で教職員の皆さんやお父さん、お母さん、それはいけないことだということを教えてくださいと言いますけれども、それのみならず、もう一歩奥深いところまで入り込みますと、私どもも、あの持っておるエネルギーと時間を健全な方向にぐっと引っ張り出してしまうことができれば、結果としていじめとか暴力もなくなっていくし、私はその意味で、例えば学校なら学校という組織の中で、ルールに従ったスポーツで一遍体ごとぶつかってみる、ルールを守ったがために敗れても、汗をかいた後のあの爽快感というものは、いじめたりいじめられたりしているときの暗い、嫌な、ルール違反とはまるっきり違うものだということを体験させれば、みんな児童生徒はいい方に向かってエネルギーや時間をぶっつけていくだろう、こう思います。何もスポーツだけに限らずに、そういったエネルギーを転換していく方法、目標、人生において燃えるものを与えるということ、これはいろいろあろうかと思いますから、先生の御提言は私も全く同感でございます。
  115. 有島重武

    有島委員 この水曜日でございましたか、甲子園でもって高校野球の始球式でしたね。いいお天気で、文部大臣はストライクを投げられて大変見事だった。そのストライク以上に見事だったのはあのときのスピーチ。僕は若い人からじかに聞いたのですけれども、あの大臣いいこと言うなと言うんですよね。何がいいことだと余りよくわかってないのだけれども、若い者に共感をばんと与えられるようなそういった発言をなさった。これは将来のために非常にうれしいことだなと僕は思ってひそかに喜んでおりました。  あそこでもって大臣が、力と技でもって力いっぱいやりなさい、その姿を全国の大勢の人たちがみんな見守っているんだ。特に君たちの同輩、後輩が見守っている。その中にスポーツ好きの人が出、野球好きな人が出、そして明るい反響、ずっと波紋をつくっていく、これは大変なことだ、そう言ってたたえられたところですね。僕もそれは同感です。  それから、短い時間だからおっしゃらなかったけれども、恐らく非常な責任感、あるいはチームワークにおける思いやり、そういったものを経て君たちは来たのだというようなことも、言わないけれどもおありになっただろう。  それから、二軍という人たちがいるんだ、あるいは学校でもってきょうは応援に来たいけれども来られない人もいるんだ、あるいはお父さんお母さんもいるんだ、みんな苦労しているんだ。そういったものの御恩みたいなものも何かかみしめているだろうし、そして一生そういったものが成長していってもらいたい、これもあるでしょう。  それから、本当に未来に伸びていってもらいたいし、そしてもう一つ、あの年代の子供たちが一つの方向性を与えればあんな立派なことをするんだ。これはたまたま野球だけれども、ほかのこと、演劇をやらせても、あるいは何か採集でも何でもいろいろさせれば、うまくリードすれば、責任を持たせれば本当にいい仕事をしていく。そうやって可能性を秘めている青年がまだたくさんいるんだなという気もいたしますね。  それから、もう一つ、今国際化時代といっておりますね。あそこに集まっているのは全国でもってそれぞれしのぎを削って集まってきているわけだ。これはいかにも明治百年らしい風景でありまして、各県でもってこうやってしのぎを削って一番を決めるわけだから。だが、それが二十一世紀に向かって国際化というようなことになりますと、今でも選抜メンバーはよその国へ派遣しているようだけれども、五十カ国、六十カ国、百カ国くらいにああいった青年たちを送ってやりたい。それで向こうでの若い人たちの友情もつくってきてもらいたい、そんな気も私はしました。  恐らく大臣は、言葉は非常に短くていたけれども、そういった思いを秘められていたんじゃないか、こう僕は思いたいわけなんだけれども、いかがですか。
  116. 海部俊樹

    海部国務大臣 大変すがすがしいさわやかな雰囲気でありましたので、私もついあの場ではそれらの人々に、根限り力の限り、すべての青少年のあこがれの的なんだから頑張ってほしいということを言いましたが、言外に込めておった願いの中には、やはりあれは国内の全国高校野球でしたから、あれが世界のオリンピックであったらなとか、あるいは世界じゅうにああいった輪が広がっていったら、いじめがなくなるどころか世界が平和になっていく非常にいい基盤になるな、スポーツを通じての相互交流とか、相手の立場を思うとか、思いやりとか、やはり世の中というものは国内も国際もルールをきちっとわきまえて守っていくことが大切なんだなとか、あるいはそれぞれのことを通じて今度はお互いに知らなかった地方を覚えたり、知らなかった歴史や知らなかった文化を知ったりしていったらなおすばらしいなと、私の夢も際限なく広がっておりました。先生の御想像のとおりでございます。
  117. 有島重武

    有島委員 それで、あの高校生の年代、あのころの年代に異文化交流といいますか、具体的に言えば外国人の友達を一人持つ。それでもって一生つき合っていきましょう、こういうようなことができたら、それこそ世界平和のためにもあるいはこれからの日本の存続ということについてもいいことなんじゃないだろうかな。高校生に対して、一人の外人の友人を持ちなさい。外人といっても東洋人もいる、西洋人もいる、アフリカの人もいる、いろいろですね。これは外国に行って友人を求めてこいと言わなくても、今、現に滞留している外国人だけでも数百万人いるわけですね。その中に青年が多いわけです。それは留学という形だけではなしに研修という形で随分来ているわけです。これは都会だけではなしに農村にも随分来ているわけです。そういった人たちがいるけれども、何となく横目で見て歩いているという風習がございます。一つ課題を与えれば、彼らは意欲を持つだろうし、そして家庭にも呼んであげる。向こうもそういったことを望んでいるんじゃないだろうか。そういうようなことを高校生の一つ課題に与えるということはどうかな。これを学習指導要領の中に書き込むところまでいけば大したものだけれども、そうしてはいけないということは書いてないわけだけれども、ここをひとつ踏み切ったらどうかと思うのですね。そういたしますと、高校生全部がそういってうまくいくかどうか知りませんけれども、高校先生は二十二万人ほどいらっしゃると聞いております。その方々は、やれやれと言って自分がやらないというわけにいかないですね。だから、みずからその心がけになるでしょう。その心がけになっていったら、世の中は英語ばかりじゃないんだ、向こうは英語が通じないというか日本語でしゃべりたがっているんだ。それから風習が随分違うんだ。いじめとかなんとか言っているのは、あいつは変わったやつだというけれども、外国人よりかは変わっちゃいないんだ、そういうようなことが高校先生方の中に入ってくると教え方も変わってくるのじゃなかろうか。高校生自体も変わってくるのではないか。その姿を見て中学も変わってくるのじゃなかろうか。そういうようなことを一歩踏み出されてはいかがか、こう思うのです。
  118. 海部俊樹

    海部国務大臣 国際化時代に入ってきまして、いろいろな見知らぬ国と交流を深めていく、私はこれはいいことだと思いますし、また現に、日本の九州地区の高校だったと思いますが、世論調査をしましたら、これは名前を言っていいかどうか知りませんが、嫌いな国のベストファイブの中にお隣りの国があった。これに心を痛めて、その高校が修学旅行のときにベストファイブに入ったお隣の国へその学校の生徒を連れていったわけです。修学旅行を終わって帰ってきてもう一回聞き直してみたらベストファイブから落ちておった。やはり食わず嫌いといいますか、いろいろな情報だけで固定観念で思っておったのが、現地へ行って一回見てきた、特に学校を訪ねて同世代の人々と交流をしてきたら、なかなかいいやつがおったとか、おもしろい話があったとか、日本とよく似たものがあったとか、いろいろなことでぐっとその国に対する理解度も親近感も深まったという報告を私は何かで読んだことがありまして、これは一つヒントを与えられたような感じでおりました。  今先生の話を聞いておると、それよりももっと身近なところで、決心さえすれば予算も使わないでもすぐに着手できるような、一人一人お友達を持って、まず知り合いになるように話しかけてみたらどうだ、あるいは手紙を出すように努力してみたらどうだというようなことなどについての御提言でありますし、また、高校先生自体もそういったことを本当に考えてくだされば、国際化時代に異文化に接触しながら異文化を恐れないでごく当たり前の日常の出来事として素直な気持ちで接触できるような教育環境もできていくということになりますと、これは大変将来にとってもいいことではないだろうか。学習指導要領に書き込むことができるかどうか、これはちょっと疑問でございますけれども、もうそれよりももっと基礎的に、すべての児童生徒先生方が心の中でこういったことがいいんだぞというふうに自覚をしながら枠を広げていただく。  今、留学生の問題も二十一世紀には十万人にふやそうという計画等を我々立てておりますけれども、今まで留学生問題で、ややもすると帰国された留学生が帰国の後において日本に対して余りいい感想を述べてくれぬとかよくないことを言われるとかいうようなことは、日本滞在中の人間関係、お友達関係が余りうまくいっていなかったんじゃないだろうか、こんなことすら私どもは思うのです。ですから、そういうときに何なら胸襟を開いて一杯飲むとか、話し合うとか、近所を連れて歩くとか、そういった日常的なおつき合いも人間関係を深めていく留学生対策の一つの大きなメリットでもあろうと思いますので、研修生なんかで来ておる人は特に短期間の滞在でありますから、そういう方々ともなるべく積極的に接触してお互いの、相互理解を深めるような方向に向いていったらいいなと私も考えております。
  119. 有島重武

    有島委員 先ほどの野球の問題なんかでも、大学に行ってから野球の選手になったと言ったけれども、やはり高校のときからスタートしているわけですね。恐らくそういった異文化交流のメーンになるのは大学生であっていいわけです。だけれども、それが高校のときからもうスタートしている。ませたのがそういうふうになる。それはやはり中学生からも尊敬される。そういうような方向を今からつくり出せば、十年か二十年か積んでいけば少しはよくなってくるんじゃないかな。そのストックも出てくるんじゃないか。今おっしゃった留学生が帰ってからどのくらい友情を保てるか、こういった問題にも本当につながって、そうなるとこれはもうナショナルディフェンスの問題になってくるわけですね。  それで、先ほどの抑圧するか転換するかということでございますけれども、文部省でもって進められております施策の中で、農村と都会の交流といいますか、自然教室推進事業、これは本当にすばらしいことだと私は思います。これは踏み切られるには大変な御決断もあったんだろうと思いますし、現にまだいろいろな困難がおありになるだろう。時間があれば詳しくやりたいのですけれども、ことしも五億二千九百万ですか、かなりの予算も組んでいらっしゃる。それで、文部大臣、これは約三十万人の子供たちが参加をしているということですね。よくもここまでやったと思います。これも一つ一つ検討していけば、これは三泊四日、四泊五日、五泊六日子供たちを連れていって世話を見て帰ってくる、それで勉強もさせてくる、大変な労力なんだけれども、その労力の中で成果も非常に大きいということも聞いております。これはぜひともやってもらいたい。  三十万人も大きいけれども、いじめ子供たちは十五万人いるのですか、いじめられているという報告がそれだけあるわけだから、大体それの五、六倍いじめている方もいるわけだ、エネルギーが余っているのが。それから、五、六倍だから、そのまた十倍ぐらいの人たちがとめないで見ている、何かそういうある比率がちゃんとあるらしいけれども、そういうことから考えますと、これは全部に実施をするところまでひとつ踏ん張ってもらいたい。これは過疎対策にもなるというふうにぜひとも進めてもらいたい。
  120. 海部俊樹

    海部国務大臣 自然教室推進事業に御理解とお褒めいただきましてまことにありがとうございます。おっしゃるように、これはエネルギーと時間を健全に育成していくための転換政策にとって私は非常にいいものだと思いますし、同時にまた、児童生徒が発達段階でいろいろな生活体験を身につけるということは、人格を形成していく上において非常に重要なことだと思います。これは世界各国のいろいろな教育問題の専門家の話を聞いてみましても、山野を威渉するとか自然の偉大さに触れてそこで自然に対する畏敬の念を持つ、自然の生命のいろいろな移り変わりを見ることによって生命に対する物の表れも感じることができる、人間にとって非常に大切な体験ができるんだと評価をされております。私ども、ますますこの成果を踏まえまして自信を持って進めていきたいと思っておりますので、どうぞ御理解とお見守りをいただきたいと思います。
  121. 有島重武

    有島委員 もう一つの問題といたしまして、いじめはいけないんだよ、親切にしてやりなさいと言って聞かせる、それでうんうん、こういうところまでになる。が、今度、言って聞かせて理解して行動を起こすというパターンは、教育の中のこれはもう一番のオーソドックスなんですね、これが正流なんですね。だけれども、そういったことが可能だというのが、これは学校教育法の中にもちゃんとあるように、「学校内外の社会生活の経験に基き、入間相互の関係について、正しい理解と協同、自主及び自律の精神」が養われているわけですね、昔は。それだから、言ったことを聞いて理解する。今申し上げていることは、理解をして行動をするというパターンはありますけれども、その奥には、実践をしていたから、生活の中に実践があったから理解もできるんだということもあるでしょう。特に低学年、幼児なんかの場合には、生活実感というものがもとであって、それをむしろ言葉で整理してあげる。だんだん大人になってまいりますと、そういうものもずっと積み重ねる、それで今度は理解の方が先になる。学校教育の中でも、学校先生方は皆さん御苦労していらっしゃるわけですけれども、おい、わかったか、わかったか、これが多いですね。家庭に帰ってもわかったか、こう言うのですね。そうすると、子供たちがわかっちゃいるけどと言いたいことがあるんですね。随分苦労もしているのですね。もう一つは長い目で見てもらいたいな、こういうのもあるわけですね。これは、子供の側からのいろいろなアンケートも最近は調査があるようでございますけれども、そういうことであります。  そこで、この点で提案申し上げたいのが、異年齢混成の教育効果もひとつここで見直して、これを幼稚園の段階あるいは保育所の段階学校教育の中、特に小学校中学校段階でもって重要視してもらいたいという提言であります。これが思いやり、責任感、そういった人間関係の一番基礎になる異年齢混成、これはきょうはもう時間がないから余り長いことは言えない。以前の文教委員会でも時間をかけて御提案申し上げてございますけれども、これもぜひとも進めていってもらいたい。いじめの対策、解決策、これは、今申しました自然教室をどんどん進めてもらいたい。あるいは高校生に大きな役目を与えてもらいたい。民族の生きていく道は君たちのこういった行動にあるんだ、勇気を持ってやってごらんなさい、それが自分の向上にも通じる。さっき言ったのはたった一つの提案でございますけれども、そういったところに着目して、大いにエネルギーを転換させてもらいたい。第三番目は異年齢の混成、これを重視してもらいたい。こういうことなんですね。
  122. 海部俊樹

    海部国務大臣 先ほど来いろいろな御意見を承り、また私も同感する点を率直に申し上げさせていただいたり、私の意見も述べさせていただきましたが、ただいま御提案になっておりますいじめ撲滅のお話の中で、特に最後に出てきておる異年齢の混成の教育は、家庭における兄弟の数が少なくなったがために家庭の教育機能がなくなって、今までは異年齢の者同士の中で切磋琢磨があったり、越えてはならないルールがあったり、いろいろなことを家庭で兄弟同士で身につけた。兄弟げんかは相手を思いやる実物教育であった。殴られれば痛いし、殴ったときも痛いだろうというぐらいのことはみんなが身につけて大きくなっていったわけですけれども、そういった状況が、いい悪いは別にしてだんだんなくなってきたことも事実でございます。  ただ、そのときに、私がこの前の在任中にはっと思ったのは、学校へ視察に参りますと、いろいろな試みをやっていらっしゃった。一番教育効果が上がったのは実はこれなんですと校長先生が言われたものの一つに、給食のときの学校兄弟というのがございました。一年生から六年生まで理屈抜きに兄弟をつくってしまって、それは学校給食のときだけの兄弟です。六年生は調理場から熱い重いものを運ばなければならぬ、一年生は茶わんとはしを並べるくらいでいい、二年生は後片づけとふき掃除だということをやらせますと、すごく喜んでやるんですって。調理場へ出入りする六年生は、清潔なお母さんのエプロンと帽子でも持っていらっしゃいというとちゃんとうちから持ってくる。脱線するようですが、午前中授業に来てなかったなと思うのが、給食のときはちゃんと来ておるんですって。給食が終わると、やはり僕はうちで寝でなければならぬ病人だといって帰ってしまうそうですけれども、それでも、少々風邪ぎみでも、自分は人に頼られているのだから、僕が行ってやらないとみんな困るだろうということで出てくるようになったその心境、心情が今の教育にとっては大切だと思うし、そうまでしてお兄ちゃん出てきてくれたかというので下級生たちは喜ぶ、ここに大変な教育効果があるということをその校長先生からじかに聞いたことを私は今先生の御質問を聞きながら思い出しておりました。  あるいは、学校でリレーをやるときに、クラス対抗のリレーをやらないで町内対抗のリレーにして、登校下校のときに通学区で一年生から六年生までグループをつくっておるわけですけれども、それを適正に集めて対抗リレーにするとか、いろいろ知恵を使って教育をしていらっしゃる現場の実例等はみんないい効果を上げているようでもございますので、家庭に教育的機能がだんだん希薄になってきておる今日、同世代年齢、異世代年齢がともにぶつかり合うことのできる人生最初の場が学校でありますから、そこの教育の中でできるだけこういったものの幅を広げて、異年齢と切磋琢磨し、教えを受けたり越えてはならないのりがあるんだということを自覚させていくような教育もまた実物教育として大切なものだな、私もそう思っております。
  123. 有島重武

    有島委員 それでは、これは重視をしていただきたい。具体的に申しますと、高校段階になったならば家庭科というのは、やるかやらぬかという議論もありますけれども、幼稚園なり保育所を手伝わせてもいいんじゃないかと思うのです。あるいは小学校の五、六年生は一、二年生の勉強を見てあげる。今までの給食、お掃除当番、遊び、こういったものも大変な教育効果を上げておるようでありますが、できれば複式学級みたいなことだってやっていった方がいいんじゃなかろうか、そういうふうに思っております。  あと、時間がありませんから、文化庁に対しての問題が二つございます。  それは国語辞典の編さんの問題です。大臣も御承知のように、公教育の一番中心は、いろいろあるけれども国語は大切だと思うのです。国語の研究の基礎になる大辞典を国としておつくりになっている、これは大変敬意を表すべきことであります。最近の進捗状況をいろいろ聞いておりますと、日本語を大体上代、中古、中世、近世、現代と分けて、現代のところから始めようということで、現代を一期、二期、三期に分けた。一期は嘉永四年から明治三十三年で、第二期がちょうど国定読本ができた。その国定読本の一番確実な資料があるところから始めましょう、こういうお心がけでやっている、これも一つの見識だと思います。結構です。  それで、そのために予算は幾らついているのかということです。
  124. 加戸守行

    ○加戸政府委員 国語辞典編さんの準備経費といたしまして、昭和五十二年度から計上されておりますが、昭和六十年度については六百二十三万円でございまして、そのほか成果刊行費で新たに計上された金額が三百万円、合わせて九百二十三万円でございます。
  125. 有島重武

    有島委員 九百億円と思いたいのだけれども、九百二十三万円だということです。これがお国でやっていること。額で決めるわけではないけれども、これはちょっと大臣考えいただきたい。  それで、同時に私は、各県の方言の調査をやってくださいということを申し上げました。これは昭和五十二年から六十年にかけてなさった。何億円かのお金をかけて成果が上がったそうであります。その上がった成果はどうなっておるのかということです。これは国語研究所のコンピューターの中に入っていくのか、まだ文化庁の方が所管をしていらっしゃって、物はどっちにあるか知りませんけれども、国語研究所の方はその作業に移れないのか。これは人が足りないということもあるかもしれません。それからまた、整理するためのソフトを今開発しているんだということを言われるかもわかりませんね。方言については既に方言地図もできておるわけでありまして、今度収集したのはもっと生々しい、物語や何かそのままのものがあったりするのじゃないかと思います。国語辞典、これは標準語、山の手言葉でも結構です、九百万円でいいけれども進めていただきたい。方言の方もお進めいただきたいと思っているのです。どうでしょうか。
  126. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生今おっしゃいましたように、五十二年から六十年にかけまして地方方言収集研究調査を実施したわけでございまして、その成果につきましては現在国語研究所の方におきまして保管をしておるわけでございますが、いろいろな形での利用あるいはその成果の研究、相当時間あるいは人手を要するわけでございますが、御指摘のとおり、この点についての対応も今申し上げました国語辞典編さんとの絡みも当然ございますので、対応を進めてまいりたいと思っております。
  127. 有島重武

    有島委員 国際化の対応ということはございますけれども、こっちが文化国家だとかなんとか言っているわけだから、ひとつ一番基礎になるのはしっかりとやってください。  それから、文化財の購入についても、個人所有の文化財の逸品を博物館でもって買い上げる場合には、国立博物館だと非課税になるのですね。それできょうは大蔵省の方も来てくださっているのだけれども、これは租税特別措置法ですか、第四十条の二というところにこういったことが出ております。この制度が六十二年十二月三十一日で期限が切れちゃうのですね。これはなお続けるべきじゃないのだろうかと思うのですよ。それが一つ。  それから、もう一つは、地方公共団体の持っている県立博物館だとか市でもってやっているところ、そういったところの重要文化財に準ずるものというのはそういった免税の特典がないのですね。だから、今度六十二年に改めるのならば、消極的にじゃなくて、むしろ積極的に購入できるように改めなければならないのじゃないだろうかと思うのです。と申しますのは、確かにその重要文化財あるいは準ずるものということになりますと、これはもう本当にどこにあるかわかっているようなすごいもの、これは国に集まってくるのもいいでしょう。しかし、それよりかもうちょっと落っこちたところで、鑑定すれば本当にすごいものだというようなものが、個人所有から持ち切れないでみすみす外国に流れていくというようなことが随分ある、そういうことを聞いております。絵画なんかの場合でも、室町時代の絵画の勉強をしようとする、そうすると、本当に飛び切り一級品は確かに東博にある、あるいは京都にある、そういうことがあるけれども、本当に研究しようとするとアメリカに行かなければならぬのですね。そういうようなことになっているそうです。  それから、もう一歩言っておくと、アメリカの場合なんかだと——僕たちが外国へ行くとすぐ博物館に案内されたりこっちも行ったりする。そうすると、行ってみるとまた変わっている、変わっている、どんどん新しいのがふえている、向こうでもこう言っています。東京博物館は僕はもう学生のときから随分行っている。年に何遍かは行っているのだけれども、懐かしい作品がまだたくさん並んでいますね。日本のは本当にまだまだちょっとお粗末だなというふうに私は悲しく思いますね。学究者もたくさん出ているはずなんだろうけれども、そういった方々も、もう少しどうにかならぬか、ではもっとお金をつけなさい、こう言いたいけれども——言いますよ、言いますけれども、こういった税制の問題ですね。税制の問題からやっていくことができるんじゃないだろうか。アメリカの場合だと、寄附なんかいたしますと、いいものを寄附すれば丸々控除になるんですね。だから、いいものを持っていた、息子たちがそれを理解しない、そうなるともう町の市のステーツのそういった博物館に寄贈していく、そういった流れができているのですね。日本の場合にはそうならないような流れになってしまうのですね。シャットアウトしているみたいな、外国に流れていってしまうみたいな、これは考え直さなくちゃいけないんじゃないだろうか、こう思います。その点だけ伺っておいておしまいにしましょう。
  128. 加戸守行

    ○加戸政府委員 重要文化財の免税措置につきましては、先生おっしゃいましたように、昭和六十二年十二月をもって一応期限がついているわけでございますが、文化庁といたしましても、六十二年度税制改正におきましてはなお継続方を強く要望してまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、地方公共団体が購入いたします国指定重要文化財に準ずる文化財の問題につきましては、五十七年度税制改正のときに期限切れがございまして、その延長を要望しました際に文化庁としても一応検討はさせていただいたわけでございますが、国が購入いたします国指定に準ずる文化財の場合につきましては、文部大臣と大蔵大臣が協議をして文化財保護審議会の意見も聞いてという慎重な判定手続等があるわけでございますが、地方公共団体の場合につきます手続問題等にもいろいろ難しい問題がございますし、さらに、現時点におきましては、地方公共団体の方からそのような要望等はまだ出ておらないわけでございますが、地方公共団体の方からそういったような御意見が参りますれば、文化庁としても十分検討させていただきたいと思っている段階でございます。
  129. 有島重武

    有島委員 大蔵省の方、時間がなくなってしまったから、こういった問答があったということを省に報告しておいてください。  最後に、文部大臣から何かおありになったら一言伺っておしまいにします。
  130. 海部俊樹

    海部国務大臣 日本の伝統文化、それを守っていかなければならぬのは当然のことでございますし、文化庁行政の中で今先生のお示しになりましたような御意見を十分参照しながらこれからも研究を続け、前向きに努力をいろいろしていかなければならぬ、こう思っております。
  131. 有島重武

    有島委員 終わります。      ————◇—————
  132. 青木正久

    青木委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  義務教育学校等における育児休業をめぐる諸問題について調査検討するため小委員十五名からなる義務教育学校等における育児休業に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 青木正久

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 青木正久

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、委員長が追って指名し、公報をもってお知らせいたします。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可及び補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 青木正久

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る四月二日午前十時二十分理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会