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赤羽政府委員 六十一年度の
経済見通しにつきまして、いわゆる民低政高、こうなったその事情の背景について御
説明せよということでございますので、若干申し上げたいと思います。
確かに、御
指摘のように民間機関は二%台の
見通しが多いことは事実であります。三十幾つかの民間機関の
見通しを単純
平均いたしますと三%ということになります。低いのは御
指摘の二%から三・九%まで分布しておりますけれ
ども、三十幾つかのうちの半分よりちょっと多い二十近いところが三%を下回る
見通しになっております。
それで、先ほ
ども申し上げたところでありますけれ
ども、どうしてこんなに低いのだろうか。政府の四%という
見通しとの
関連で見てみますと、民間の
見通しはやや慎重に過ぎる、あるいは悲観的に過ぎるという面がその当時考えられました。まず、二%台の
見通しと申しますのは、あるいは三%を下回る
見通しといいますのは、実は過去三十年間において一回だけしかございません。このときは昭和四十九年度でありまして、第一次
石油ショック後の狂乱
物価、この狂乱インフレをおさめるために、非常に厳しい財政金融面での引き締め政策、こういうことでマイナス
成長、マイナス〇・四%の
成長ということになりました。戦後最大の不況であったわけでありますけれ
ども、それ以外の年で一番低い年は、二番目に低いということになりますけれ
ども、昭和五十七年度の三・二%ということであります。私
どもは、今回の
円高によりまして戦後二番目の低い
成長率が実現する、こういったようなことはないもの、そう考えました。というよりは、戦後二番目の低い
成長率になる、これは余りにも悲観的に過ぎる、こう考えたわけであります。
どうしてそうなんだろうかということで見ますと、いろいろ御
説明は違いますけれ
ども、
円高のマイナスの
効果というのを非常に強調されている反面で、
プラスの
効果というものを考えていただいていないという点があろうかと思います。それからさらに、ことしの
世界経済の
見通し、これについてやはり慎重論が支配的であったと思います。
アメリカの
経済見通しでありますけれ
ども、その当時
アメリカの専門家は大体三%近いあるいは三%を若干上回る
見通しというのが多数説でありましたけれ
ども、置かれております環境としての
アメリカ経済、これは、
日本の民間の
見通しにおきましては大体二%台の下の方か、あるいは一%台ということであります。このあたりのところが悲観的に過ぎたのではないかと思います。
私
ども政府の
見通しにおきましては、その当時から
アメリカの
成長率は三%を前提にしておりました。ちなみにヨーロッパの
見通しでありますけれ
ども、昨年一九八五年は主要国を
平均をいたしますと大体二%の半ばくらい。それが二%台の上半分に若干ながら
成長率が高まる。これに対しまして、特に一次産品
発展途上国、これは一次産品
価格の低落といったようなことで、
平均いたしますと去年よりは若干
成長率が
低下をする。こういうふうな
見通しでございまして、
世界経済全体として見ると、去年よりはことしの方が若干の
プラス、こう見ておりました。これに対して、先ほど
アメリカ経済について申し上げましたように、民間の方は
見通しが悲観的に過ぎた、こういうふうに考えます。
それからもう
一つの点といたしましては、政府が四%の
成長ということを六十一年度について掲げておるわけでありますけれ
ども、これは
経済の拡大均衡、特に内需の振興を通じましての
経済の拡大均衡、これによって
経済摩擦を解消するあるいは軽減をする、このためには、やはりできるだけの内需拡大の工夫をすることを通じて高めの
成長、実現可能でなければいけませんけれ
ども、高めの
成長を目指すべきである、こういう基本認識は当然あったわけでございますけれ
ども、そうした
見通しに沿って、昨年の秋及び暮れの予算編成の過程で、六十一年度の予算あるいは税制改正の中でいろいろな工夫をした。
一つ申しますと、一般会計の公共事業費は前年度比二・三%のマイナスにならざるを得ませんでしたけれ
ども、財投やそれから地方な
ども含めました公共事業費の事業量の伸びは前年比四・三%。このほか住宅減税とかそういったようなことを織り込みまして、政府の内需拡大の
効果、これを、六十一年度につきましては名目
成長率ベースではありますけれ
ども〇・六%の
プラス、こういうふうに考えました。このあたりのところを民間の御評価は非常に低かった、こういったような点が違うのではないかと思っております。
いろいろ経緯なり事情なりを申し上げましたけれ
ども、その後二、三カ月もう既に時間がたっております。作業をした時点から比べまして三カ月足らず時間がたっておりますけれ
ども、その後の展開で申しますと、確かに
円高は一層進みました。六十一年度の
経済見通しの前提としての
円高の想定、円レートの想定は二百四円でございましたから、さらに円が一割高くなっているわけであります。その面からいいますと、
円高のマイナスの
効果、これは当時予想したよりも大きくなっていると思います。しかし、
プラスの
効果もまた大きくなっているということだと思いますし、さらに
原油の
価格、これは二十七ドル余りの
価格を前提にして予想しておりましたけれ
ども、これがその後急速に下がるということでありました。こうした
原油の
値下がりの
プラス効果がさらに加わることで、前提以上の
円高のマイナスの
効果は十分に相殺される、こういう
状況ではないかと考えております。
アメリカ経済、ヨーロッパ
経済などにつきましては、最近ますます外国の専門家の
見通しは明るくなってきている、こういうことでございまして、その当時、政府の
見通しは外国
経済、
世界経済の
見方がちょっと強いのではないかと言われましたけれ
ども、今の時点で見ればむしろ慎重ながらも楽観説ぐらいの
程度になっている、こういうことでございまして、その当時考えました基本線というのはますます確かになっている。少なくとも現時点でこれを改めて下方修正するような必要はないというふうに考えております。