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1986-04-15 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十五日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 近藤 元次君    理事 島村 宜伸君 理事 玉沢徳一郎君    理事 串原 義直君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       上草 義輝君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    片岡 清一君       菊池福治郎君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       林  大幹君    藤本 孝雄君       松田 九郎君    山岡 謙蔵君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    竹内  猛君       辻  一彦君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         農林水産技術会         議事務局研究総         務官      土屋 國夫君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      竹内 克伸君         労働省職業安定         局雇用政策課長 井上 文彦君         自治省財政局指         導課長     横田 光雄君         参  考  人         (筑波大学生物         科学系教授)  原田  宏君         参  考  人         (全国農業協同         組合連合会常務         理事)     鳴海 国輝君         参  考  人         (キッコーマン         株式会社常務取         締役研究開発本         部長)     吉田 文彦君         参  考  人         (農業機械化研         究所理事長)  馬場 道夫君         参  考  人         (野村総合研究         所技術調査部主         任研究員)   伊藤 敏雄君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ————————————— 委員の異動 四月十日  辞任       補欠選任   上草 義輝君   塩川正十郎君   太田 誠一君   中村喜四郎君 同日  辞任       補欠選任   塩川正十郎君   上草 義輝君   中村喜四郎君   太田 誠一君 同月十一日  辞任       補欠選任   上西 和郎君   小川 国彦君 同日  辞任       補欠選任   小川 国彦君   上西 和郎君 同月十四日  辞任       補欠選任   上草 義輝君   保岡 興治君   太田 誠一君   梶山 静六君   鍵田忠三郎君   岸田 文武君   菊池福治郎君   辻  英雄君   月原 茂皓君   水野  清君 同日  辞任       補欠選任   梶山 静六君   太田 誠一君   岸田 文武君   鍵田忠三郎君   辻  英雄君   菊池福治郎君   水野  清君   月原 茂皓君   保岡 興治君   上草 義輝君     ————————————— 四月十一日  主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する  法律案内閣提出第五〇号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  生物系特定産業技術研究推進機構法案内閣提  出第二七号)  農林水産業振興に関する件(日ソ漁業交渉問  題)  北洋漁業対策に関する件     —————————————
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、羽田農林水産大臣から、日ソ漁業交渉について発言を求められておりますので、これを許します。羽田農林水産大臣
  3. 羽田孜

    羽田国務大臣 私は、去る八日、昨年末から三度にわたり行われていた日ソ漁業委員会における協議に関し、閣僚レベル協議を行うため訪ソし、九日及び十日、カメンツェフソ連邦漁業大臣と二回にわたり会談を行うとともに、十日、ムラホフスキー国家農工委員会議長兼第一副首相とも会談し、去る十二日、帰国いたしました。  本件協議難航したことにより、日ソ双方漁船は、本年当初より相手国二百海里水域から総引き揚げの状態が続いておりましたが、今回、私が訪ソし、事態の打開に努めた結果、合意方向めどがついたところであります。  その結果については、日ソ双方漁獲割り当て量が十五万トンとなるとともに、ソ連水域における我が国漁船操業条件について、底刺し網禁止、一部水域における着底トロール禁止二つ操業水域の閉鎖が行われる等、厳しいものとなっております。  我が方にとっては、非常に厳しくつらい決断と言わざるを得ない結果でありますが、これ以上閣僚レベルでの協議を続けても状況が変わる見通しもないばかりか、協議が長引けば、漁業者への影響がますます深刻なものとなるとの判断から決断した次第であり、やむを得ざる結果であったと考えております。  今後、協議の結果に伴い、減船を余儀なくされる漁業者に対し講ずべき対策を早急に検討する必要があると考えております。  また、減船等に関連して必要となる漁業離職者雇用対策水産加工業等関連産業対策等についても、所要措置を検討する必要がございますので、関係省庁と密接な連絡をとってまいりたいと存じております。  以上であります。     —————————————
  4. 大石千八

    大石委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上草義輝君。
  5. 上草義輝

    上草委員 羽田農水大臣、このたびは大変御苦労さまでございました。大臣みずからが訪ソして折衝に当たられたわけでございますが、ただいまお伺いいたしましたとおり、大変厳しい選択であり、大臣としてもやむを得ざる決断をされたことと存じます。昨年末以来、操業中断という異常な中で難航を重ねてきた日ソ漁業交渉でありましたが、しかし、その解決のめどをつけられた大臣の御労苦に、まずもって心から敬意を表する次第でございます。  さて、この交渉大筋合意については今大臣の御報告を伺ったところでございますが、ソ連の二百海里水域における我が国北洋漁業は、世界的な二百海里体制定着の中で政府の粘り強い交渉によって今日まで継続されてきたわけであります。日ソ間の漁業関係は、日ソ両国間を結ぶ大事な大きなパイプとして今日あると思うわけでございます。しかし、今回の交渉のように、近年非常に厳しくなっているという点についてお伺いしたいのであります。  私自身が感ずるところは、もちろん資源保護という基本的な議論はあるわけでございますけれどもソ連経済体制生産体制そのものに、我々のうかがい知れない深部で何か大きな変化があるのではないかという感じもするわけでございます。ただいま大臣の御報告にありましたとおり、カメンツェフ漁業相とかムラホフスキー首相国家農工委員会議長と直接会って交渉されたそうでございますが、その辺の感触といいましょうか、大臣の率直な御感想をまず承りたいと思います。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の日ソ漁業委員会における協議において、ソ連側は、ソ連水域における底魚を対象とした我が国中心的北洋漁業が壊滅するような大幅な操業規制強化の提案について極めて厳しい姿勢を示したため、協議難航をきわめたところでございます。  今回のこのようなソ連側主張背景には、大きく分けて二つの点があると認識しております。  その一つは、ソ連水域における資源保護の問題であります。ソ連水域における資源保護、特に大陸棚資源保護を図ろうとするソ連側態度には非常にかたいものがございまして、カメンツェフ漁業大臣は第二十七回ソ連共産党大会をしばしば引用しながら、資源合理的利用の問題が取り上げられたのだということを強く述べられております。それから、ムラホフスキー国家農工委員会議長とは、交渉ということではありませんけれども、表敬し、同席されたのはカメンツェフ漁業大臣でございました。そういう中での話し合いで、漁業資源あるいは大陸棚資源を子孫に残していくことは今日に生きる我々の務めであろうということを非常に強く主張されまして、二十七回党大会においてこの点についてはっきりとされておるということであります。もう一つは、この漁業資源を有効に利用していかなければいけないということを言われております。  それからもう一点、今その背景で何か大きな変革が新しいゴルバチョフ体制の中であったのではないかという意味での御質問だったと思うのです。  それは、特別に漁業ということに関してでございませんけれども、ともかく我々としても食糧を安定して確保しなければいけない、そして現在の栄養というものをもう少し高めていく必要がある、そのためには、我々としては安定してそれを確保するためにその業に当たる人たちやる気を起こさせることであるということを非常に強調されております。そしてその中で、今のカロリーをもう少し高めること、肉については六十二キロから七十キロにこの五年間に上げていきたいということ、魚についても今十七キロ食べておるものを十九キロにしていきたいということ、そのためにはみんながやる気を起こすことであり、もう一つは、本気になってやると収入所得が大きくなるんだなということをみんなに知ってもらうような政策が必要であるということを言っておられまして、その点で、それぞれの業をやる人たちに対して刺激を与えると同時に、その人たちの責任といいますか、本気でやらなければいけないのだということを相当強く意識されておられることが私どもは話の中でかいま見ることができたわけでございます。そういう中で、資源を守るということと同時に、資源の合理的な利用ということが言えるのではないかと思います。  また二つ目は、日ソ間の漁業実績格差の問題であります。これは今ムラホフスキーさんの話の中で挙げたことなどもあるいは当てはまるのかもしれません。近年、日本水域におけるソ連漁船漁獲が低迷している一方で、ソ連食糧政策観点から水産物供給向上を図っておるということが今の話の中でもうかがえるわけであります。そしてこの交渉におきましては、日ソ間の漁獲実績格差解消に極めて厳しい態度を示したところでございます。  今回ソ連側主張背景には以上のような問題がございまして、基本的には二百海里水域内の漁業資源に対して沿岸国主権的権利を行使すること、これに帰結したということであると思います。我が国北洋漁業にとっては極めて厳しい結果でございますけれども、厳しいことを承知しながら、ほかの漁業をこれ以上おくらせてはならぬということで決断せざるを得なかったということを申し上げておきたいと思います。
  7. 上草義輝

    上草委員 その背景及び環境等についてはただいまの大臣お話でよくわかりました。いずれにしても今回の妥結の内容は非常に厳しいものであるわけでございます。  先ほどの大臣の御決意はひしひしと承ったわけでございますが、何といいましても、この妥結を受けて今後の国内対策、これにすべてがかかっていると思います。大臣が帰国されて早速御報告を兼ねて総理協議されたことも報道されております。私どもはこれに大きな信頼と期待を持っているわけでございますし、決意は十分伺ったのでありますが、今北洋漁業基地、特に私どもの北海道は街の灯が消えたようなという表現はもう当たらないぐらい、あるいは日曜日でもシャッターを閉めていると、要らぬ誤解を受けてしまう。もうシャッターを閉めるだけであそこはだめになったみたいなうわさを流される。  ということは、この三カ月間の長期にわたる難航した日ソ漁業交渉において、ここまでつないでくること自体が非常に大変だったわけです。いろいろな制度で何とかカバーしてこれたわけでありますが、実はこれがもう三月末で既に限界という感じでございます。そこで、漁業者はもとよりでございますが、大臣からお話がありましたように水産加工業者あるいは関連業界、前処理あるいはすり身、輸送、包装資材、調味、こういった関係関連業界もまた大変な状態になっております。基本的な大筋というのは少し時間をかけていろいろな調査結果を見てからでないとなかなか出していただけないと思うのでありますが、この三カ月、四カ月に及ぶ長期の、この手だてを早急にしていただきたいという問題については、やはりつなぎの融資といいましょうか、この救済対策をぜひ考えていただきたいとお願いをするわけでございます。  特に信用保証限度枠を何とか拡大していただきたい、これが最も地元にとって要求されている。これで当面今月なりあるいは来月上旬ぐらいまで何とかつないでいける。ここで何とかつないでいたたいて、今後の基本的な方向がしっかりされたときには、また減船とか統廃合の問題等も出てくると思いますが、ぜひひとつ当面は、この融資対策を緊急な救済対策として考慮していただきたいと思うのであります。この点について大臣、基本的な考え方をぜひお聞かせいただきたいと思います。
  8. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の交渉の結果に伴いまして減船を余儀なくされる漁業者その他に対し講ずべき対策について早期に検討してまいる、その考えております。  この点につきましては、私ども帰国いたしまして直ちに総理に御報告を申し上げました折にも、総理も、漁業によって成り立っている町の現況というものに対して大変憂慮されておりまして、こういったものについてでき得る限り厚く、しかもなるべく早い機会に対応するように努めてもらいたいという御指示もございました。こういうものを踏まえながら、私自身何とか、今、国会その他の関係もございますけれども、今週中にでも現地を訪れてお見舞いを申し上げ、また現況等についてお話をお聞きし、そしてそういうものをもとにしながら対策を進めていきたいと考えております。  いろいろな問題がこれからもございますけれども交渉の結果に対する漁業者水産加工業者対応、出漁の遅延、原料の不足等による経営への影響等といったものを見きわめながら、国際規制関連経営安定資金の発動、また水産加工経営改善強化資金の融通をまず行っていきたいと考えておるところであります。  減船等に関連して必要となる漁業離職者雇用対策ですとかあるいは中小企業対策、こういったものにつきましても、関係省庁連絡をとりながら所要措置をとっていきたいと思います。  今御指摘のございました問題等につきましても、私どもいろいろな角度から検討させていただきます。
  9. 上草義輝

    上草委員 大臣の非常に誠意あるお答え、特に現地を御視察いただけるというそんな御決意も今承りまして、非常に意を強くするわけでございます。  時間がありませんので、最後に、こういった厳しい状況の中で、今後の日本漁業のあり方について、これからもう二百海里体制定着ということも十分踏まえた上で中長期的な展望に立った漁業政策を展開していかなければならないと思うのであります。簡単で結構でございます、大臣の御決意を伺いたいと存じます。
  10. 羽田孜

    羽田国務大臣 このたびの日ソ漁業交渉、また先般行われました日米加漁業委員会の結論というものを踏まえましたときに、我が国を取り巻きます情勢というものは、まさに二百海里体制というものは定着したということで、この十年間の歩みというものを振り返ったときにも、やはりここで、私どもとしては今までもいろいろな対策をしてきておりますけれども、本格的に中長期展望を立てながら対策を進めていかなければいけないと思っております。  ソビエト等が相当厳しくなってきておりますのも、あの国の場合にも、やはり他の遠洋の地域からはみ出してくる、そういう中でみずからの二百海里内でということが強まってきておるということを考えたときに、我が国もやはりみずからの沿岸というものを整備し、そして我が国漁業というものの再編整備というものも図っていかなければいけないのではないかと考えております。  いずれにしましても、これからの二百海里水域内の漁業開発というものについては私どもも真剣に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  11. 上草義輝

    上草委員 ありがとうございました。  羽田農水大臣を初め水産庁長官関係者皆様方、大変な御苦労だったわけでございます。重ねておねぎらいを申し上げて、私の質問を終わります。
  12. 大石千八

  13. 島田琢郎

    島田委員 大臣、どうも御苦労さまでした。しかし、結果はまことに惨たんたるありさまでありまして、現地では非常にがっくり参っております。また同時に、なすすべもない状態に置かれているということを考えますと、この先が非常に憂慮されるわけでございますので、この際、緊急にやらなければならない国内対策中心にして若干の質問をいたしたいと思います。  まず、日ソ交渉を終えて、大臣感想といいますかお感じになりましたことを率直にお聞かせ願いたい、こう思います。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 先生も御案内のとおり、私ちょうど十年前に農林政務次官を務めておりましたときから、二百海里問題というのが起こってまいりました。そういう十年間の歩みというものを振り返りながら、今回の交渉に臨みまして感じましたことは、ソ連水域における底魚、これに対しましてソ連側が非常に厳しい姿勢を示してきたということで、今お話がありましたように、まさに我が国中心的な北洋漁業、これが壊滅するような大幅な操業規制、これの強化というものが提案されてきたということでございます。このことが今日まで非常に難航をきわめてきたということであります。  なお、今回かかるソ連側姿勢背景には、二つの点があると認識しております。  今も申し上げましたように、その一つ資源保護、この問題でありまして、大陸棚資源、それから底魚の中でも特にカレイですとか、あるいはギンダラというのですか、これですとかマダラ、こういったものに対しても相当厳しい対応をされようとしておることを感じました。特にカメンツェフ漁業大臣は、第二十七回ソ連大会、ここで資源の合理的な利用あるいは資源保護、こういった問題が特に取り上げられたということを述べておられまして、ムラホフスキー国家農工委員会議長、この方とお会いしたときにもこの問題を私ども強く感じたわけであります。  なお二つ目は、日ソ間の漁業実績格差、これが非常に大きいということをソ連側主張し、食糧政策観点からも水産物供給向上、これを目指しているというものを感じた次第であります。  今回の協議におきまして、ソ連側日ソ間の漁獲実績格差解消に極めて厳しい態度を示しておるということです。このような考え方は従来からソ連側から主張されていたところでございますけれども、このような考え方を断固貫徹するためにはいかなる長期操業中断、これも辞さないという姿勢は、ゴルバチョフ体制になってあらわれた新しい交渉態度であるのじゃないかということを感じました。私どもとの話し合いの中でも国としてこういう方向なんだということを何回も何回も話されるということでございまして、やはり二百海里時代というものが厳しくなったと思うと同時に、ソ連もやはりほかの水域において追い出されてくる、それをみずからの水域の中でというものが相当強くにじみ出ているのではないかということと、やはり食糧政策上どうしてもというものが私どもに強く感じられた次第であります。
  15. 島田琢郎

    島田委員 私も同じような情勢の見方をしている一人でありますが、しかし、それにしても二百海里時代を迎えて早くも十年になんなんとするわけでありますから、この間において我が国漁業のあるべき姿といいますか、そういうものはやはり国際環境をにらみながら方向を見定めておかなくてはいけなかったという反省が実はなければいけないと私は思っています。  それにしても、今のような資源保護立場とか、あるいは実績平等主義、クォータでいえば等量主義といいますか、相互主義といいますか、そういう形に持っていこうというソ連側交渉姿勢というのは何も今日に始まったわけではありませんで、ずっと長いことそういう姿勢が続いていたわけですから、あり得べからざることではなくてあり得べきことだというふうに認識をしてこの交渉を進めていかなければいけなかったわけであります。それにしても、何かこう一遍にそうではなくて、なだらかにといいますか、そしてまたそういう激変をもたらさないような措置というものがあわせて検討されてもよかったのではないかというふうに思っておりますが、どうもお話しされておりますように、かつてない非常に厳しい交渉の場面が続いておりましただけに、この対応には大変苦労されたということについては、私も同情を禁じ得ない一人でございます。  それと同時に、会議の席上持ち出されたのかどうかわかりませんけれども、確かに漁業者のいら立ちはわかるのでありますが、そしてまた商社の先を考えての動きなどが、それはともすれば出てくるのでありましょうけれども、例えば不法操業問題が指摘されたり、あるいはいち早く抜け駆けをやる商社が出てきたり、これではどうも交渉の後ろから弾を撃つような話じゃないかというように、私は実に不快の思いをいたしておりました。これがひいては日本漁業全体の信頼を損ねる、また日本に対する外交上の不信感にもつながるというようなことになるとすれば、私はこうした態度をとった連中は許せない、こんなふうにも思っております。それは厳罰すべきだと私は思っているぐらいでありまして、交渉の舞台をつくり上げていくというのは国民全体でやらなければいけないわけでありますから、そういう点の思わしくない報道が入ってくるということはまことに遺憾だ、私はこう思っております。  この交渉に当たりました立場でも、恐らく腹に据えかねるものを持って交渉に当たられたのだろう、まともにそれが指摘されればこれはやはり抜き差しならぬ話になりますからね。いかがですか、その御感想は。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 前段の問題につきまして、まさに島田委員からの御指摘のとおり、私どもとしても実績というもの、特に北洋における我が国の果たしてきた役割ということ、それから漁法というものも伝統的な漁法というものを一遍に変えることはできないんだということ、やはりいかなる場合でも我々の国のいろいろな手法というのは激変緩和ということを措置をしながら物事を進めてきておるということについて、ソ連に対して大変しつこく実はお話を申し上げたわけであります。  ただ、今先生が御指摘がありましたように、ソ側の方も、こういった問題について今おれの方も急に言うんじゃないんだということ、それから特に底刺し網漁法というのが大陸棚資源というものをどうしても荒らしてしまうんだ、そういうことで、自分たちの方としてはこれはただ日本にこれはいけませんよと言うだけではなくて、我が国漁業者に対してもそういった漁法についてはさせないということでやっておるんだ、いずれにしても大陸棚資源というものを守っていかなければいけない、このまま放置もできないんだということを強く言われたということでございまして、なかなか実績とかあるいは我々が開発したんだという過去の歴史を語るだけでは、もう話というのは相手の理解を求めることができないということを痛切に感じたわけであります。  それから、後段の部分につきましては、今お話がありましたように、確かにそれはもう長いこと操業ができないということで漁民の中にはやはりいら立ちがあり、そしてどうしても抜け駆けをしてしまうというのがあるいはあったのかもしれません。  ただ問題としては、これは抜け駆けだけじゃなくて、その以前の、昨年なんかの例も挙げておられましたけれども、これはとってはいけないという魚種のものが山積みされているのが写真に写されておりましたり、そのほか——これはやむを得ずやってしまったというものだったら、彼も言うのです、カメンツェフも言うのですが、ともかく海には線が引いてあるわけではないから、魚、魚群を追いかけている間につい禁漁区に入ってしまう、これは私たちだって認めざるを得ないと思います、ただ、これはどうも初めから事前に計画しておったんだなというものが大変多くあるのであって、これについては私の方としても、あなたがそこまで言われるんだったら我々の方としても指摘をせざるを得ませんというようなことで、相当強く指摘されておったということであります。  これは今島田委員から言われたように、日本漁業というものを全部がやはり守りそして育てていかなければいけないということ、そして交渉なんかをするときにも、やはり弱みがありますと、本当に冷や汗を、背中から冷水でもぶっかけられたようなことになりますと、どうしても本当に腹を据えての議論あるいは交渉というのはなかなかしにくいということもあります。  しかし、そういう中で私どもとしても、きちんとした規律のとれた行動というものをとって、これからもやはりお互いに苦しい中でも団結していかなければいけないのじゃないかというふうに考え、そういった面でこれからもいろいろな角度から指導していかなければいけない。またことしの場合にも、厳しくはありますけれども、いずれにしても一つ方向というものが定まるわけでありますから、その方向が定まったものについては、やはりその枠組みの中で秩序正しい操業というものが行われるように対応していかなければいけないというふうに思っております。  しかし、いずれにしましても、今度の交渉の結果、相当集中的に一つの地域に向かって大きな打撃を受けるわけでありまして、そのことに対しては本当に遺憾に思うと同時に、私どもとしても万全の対策をとっていきたいというふうに考えております。
  17. 島田琢郎

    島田委員 私は後段の部分で重ねてつけ加えておきますと、大方の漁業者は本当にまじめに、正直に事の成り行きをかたずをのんで見ておられる、それを逆なでするようなことをやってはいかぬ。私は、そういう人たちがおると、本当に正直な日本漁業者が全部色目で見られてしまうという点も考えますと、まことに遺憾である、こういうふうに思いますので、こういう席で指摘をするのはいかがかと思いますが、私も実はこういう点が、いわゆる日本人が油断のならない国民だなんというふうに思われていくという点で甚だ遺憾だと思いますから、これは厳重に警告をしておきたいと思っております。  さて、国内対策でございますが、今お話にありましたような点を考えますと、これはことしの漁業交渉ですべて決着ではなくて、むしろ大変厳しい情勢がさらに一層深まっていく、こういうふうに見ておかなくてはいけないだろうと思います。  五十二年の大型減船、それに始まりまして今日まで、ほとんど毎年のように国内の対策を緊急に講じていかなければならないという我が国漁業水産の状態というのは、これは大変憂慮すべきことでありますが、それにしても、恐らく百隻以上にわたるであろう大型な減船を余儀なくされる、また、それに伴います関連のいわゆる中小企業、あるいはそのほか地域の経済、また市町村の財政に及ぼす影響など、もろもろ考えますと、これは本当に大変なことでございますが、緊急にこれを講じていかなくてはならないという責任もまた政府にあると私は思うのです。特に昨年の半分、実績から見ましても半分以下でありますし、また割り当て量からいいますと四分の一という漁獲の割り当て量というのは、これは幾ら分け合ってみても、大変な減量でございますから、当然犠牲者が出てくるということは、これは想像を超えたものになるというふうに私は思います。  したがって、いろいろ対策を緊急に講じなければならぬというものがありますが、まず漁獲割り当て量、クォータの大幅削減に伴います補償といえば、一つは、今指摘をしました減船に対する補償でありましょう。これは一体何隻ぐらいを予想し、その補償額はどれぐらいになるか。おおよそ私も見当がつくわけでありますが、まずこれが一つ。  それから、水産加工業のいわゆる廃業を余儀なくされるということが今回は出てくるでありましょう。特に底刺し網の根室におきます被害は甚大でありまして、これらの補償というのは緊急にかつ大型に進めていかなければならないものではないか。そのほか、沖刺しあるいは北転船、いろいろありますが、それに伴います事業転換といいますか業種転換といいますか、そういうものも図っていかなくてはなりませんが、これにもいわゆる補償がついて回るだろう。  それから二番目には離職対策ということでありますが、漁船員の離職に伴いますいろいろな手当て、それからまた指導、こういうものがあると思いますし、それから、水産加工業に従事しておられます従業員、これも少なからざる数に上ります。こうした方々の転職対策、離職対策、これをしっかりと組んでいかなくてはならぬだろう、こう思います。  緊急には、直接かかわります部分でいえば以上の二つがあると思います。この点についての政府側のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  18. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず最初に減船の問題でございます。大臣間の協議で総漁獲割り当て量十五万トンということは意見の一致を見たわけでございますが、これを水域別、魚種別、漁法別にどういうふうに割りつけるかという作業が現在委員会で行われている段階でございます。したがいまして、それぞれの水域別、漁業種類別にどの程度の減船隻数になるかということは、漁獲割り当て量の魚種別、水域別の割りつけが決まった上でそれぞれの業界の内部で御相談があって決まっていくという過程でございますので、現在のところ正確にその規模を予測することは難しいわけでございますが、ただ、いずれにいたしましても、減船を余儀なくされる漁業者が出ることは間違いない、しかもそう少なくない数で出ることは間違いないと思いますので、これにつきまして講ずべき対策を、そういう決まっていく過程に合わせて早急に検討をいたしたいと考えております。  それから、水産の加工業者の関係でございますが、これは北洋関連の水産加工業は特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の対象になっておりますので、この仕組みを通じまして事業転換等の資金を融通を受けられることになっておりますので、それを使って対応をしていただくということを考えておるところでございます。  それから離職者対策につきましては、漁船の乗組員の離職につきましては、漁臨法の定めるところによりましてパッケージ的に決まっておりますから、それによって対処をすべく関係の各省と御相談をしてまいりたいというふうに思いますが、ただいま先生の御指摘のございましたように、漁船の乗組員以外にもいろいろ離職者が出るのではないかということが考えられますので、そういう点につきましては、一般的な雇用問題として、これも関係省庁と早速御相談をしなければならないというふうに考えておるところでございます。
  19. 島田琢郎

    島田委員 それにしてもやはり財源を十分確保するということが必要なのでありますが、確かに財政事情厳しい中でありますから困難は伴いましょうけれども、これは断固として確保してもらわなければならない、その御決意を承っておきたい。
  20. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 私どもといたしましては、先生ただいま御指摘のような事態でございますので、その重要性を十分肝に銘じて財政当局と協議をいたしたいと考えております。
  21. 島田琢郎

    島田委員 特に重ねて申し上げておきますが、雇用対策というのは大変大事でありまして、補償そのものももちろん大事でありますけれども、しかし補償金だけもらって、後仕事がないということになればこれは大変でありますから、この雇用対策につきましてはひとつ万全の対策を持って臨んでもらいたいと思っていますが、この際労働省からお考えを聞かせてもらいたいと思います。
  22. 井上文彦

    ○井上説明員 労働省といたしましては、従来より、北洋漁業の問題につきましては、漁臨法及び特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法などを適用いたしまして、減船による乗組員や水産加工業者等の関連業種や地域の離職者に対しまして、休業や教育訓練に対する助成や雇用保険の延長等の措置を講じてきたところでございますが、今回の問題につきましても、関係省庁と十分連絡をとり対処してまいりたいと考えております。
  23. 島田琢郎

    島田委員 佐野長官からも今同じことを聞いているので、僕は同じことを労働省から聞こうと思ったのでなくて、非常に小まめにいろいろ相談に乗ってあげるとか、それから、確かに五十二年当時の雇用対策というのがありまして、これは漁業の離職者対策ということになっておりますが、漁業の離職者ばかりではなくて、これに関連する中小企業、幅広く言いますと、今自動車の修理の工場まで影響しているわけですよ。こういう人たちを相手にして自動車の修理あるいは船の修理、そういう、一口に言いますとかじ屋さんとか床屋さんとかいったような、地域で北洋漁業を対象にして商売をなさっているところにまで影響しております。そういう人たちの離職も、あるいは転職も頭に置きながら、そこで働いている人たち雇用対策に万全を期してもらいたい、こういう意味であなたの方に特段のお尋ねをしたわけでありますから、そういう心構えでぜひ進めてもらいたい、そのことをひとつ要望しておきたいと思います。  それから、今お尋ねをしました全体の対策というのは、五十二年のときの対策に準じて行うべきだと私は考えているわけであります。確かに十年前の財政事情と比べますと厳しくなっているから、それはなかなか容易でない。ですから、先ほど佐野長官の決意を伺ったわけでありますが、その後も毎年いろいろな対策を講じなければならないような事態になっておりまして、その都度いろいろなやり方で、手法でこの対策に取り組んできておられますけれども、私は、今回の対策は五十二年の第一次北洋減船、この事態に匹敵するものという認識を持って政府対策が組まれていかなくてはならない、こう考えていますが、いかがですか。
  24. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  五十二年の場合には国連海洋法条約の作業がまだ中途の段階でありましたのを、先取り的に米ソ両国が二百海里の水域を設定をするという事態が起こりました。そういう意味では、二百海里水域の設定というのは、当時、言うなれば青天のへきれきのような事態であったわけであります。したがいまして、五十二年当時にとられました対策は、そういう青天のへきれきにも伺うべき事態に対する対策であるという性格が色濃くあったわけであります。  二百海里体制が既に定着をいたしまして、我が国ソ連もともに国連海洋法条約に署名をしておる、そういう状況のもとで直面をしております今日ただいまの事態というのは、そういう意味では、先ほど来先生からも御指摘がございましたように、ソ連側主張というのは、繰り返し繰り返し、かなり前から同じようなことが実は言われておったことでございます。そういう意味では二百海里時代として起こるべきことが起こっておるというふうに、少なくとも青天のへきれきというような事態ではないという意味で、五十二年当時とは性格を異にしている面があることは否定しがたいところであります。  それと、先生自身指摘ございましたように、当時と比べまして大変財政的に窮屈な状況にあるということも率直に申し上げて事実でございます。  したがいまして、私どもとしても関係漁業者の皆さん方のことを念頭に置いて精いっぱいの対策を講じたいとは存じますが、今申し上げましたような事態が影響を及ぼすということ自体はなかなか排除し得ないものがあろうというふうに思っておるところでございます。
  25. 島田琢郎

    島田委員 次に、基地を持っております市町村、この自治体におきます大きな経済的な影響は財政の上にも大きく重くのしかかっております。この対策も進めていかなくてはならぬと思っておりますが、自治省のお考えを聞かせてもらいたいと思います。
  26. 横田光雄

    ○横田説明員 日ソ漁業交渉妥結に伴いまして関係地域の産業経済に対して大きな影響があることが予想されるわけでございまして、したがいまして、地方団体として対応すべき問題があり、それによって財政上の問題が生じてくるような場合には、当該団体の財政状況等を勘案しながら、その財政運営に重大な支障が生ずることのないよう適切に対処してまいりたいと考えております。
  27. 島田琢郎

    島田委員 僕は都道府県のことを落としましたが、都道府県も含めてね。(横田説明員「はい」と呼ぶ)  それから、融資対策については、これまた補償と同じような過去のやりました一つの体系がございますから、それを正確に対策として組んでいく、こういうふうに理解していいですね。
  28. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  融資の面につきましては、国際規制関連経営安定資金、それから加工の関係につきましては水産加工経営改善強化資金がございまして、漁業者水産加工業者の今回の妥結結果に対する対応ぶりなりあるいは出漁遅延等による経営への影響等を見きわめながら、これらの資金を発動してまいりたいと考えております。
  29. 島田琢郎

    島田委員 最後に大臣、冒頭でもちょっとお話が出ましたけれども、大変な事態になったわけでありますが、過去のような交渉を繰り返すということはもはやだれが考えたってあり得ることではありません。今緊急に国内対策を講ずる、こういうものを一つクリアしながら、これからの我が国漁業のあり方を再検討しなければならないということはもう異論のないところでありましょう。そういう将来の我が国漁業政策、水産政策というものに対して大臣のお考えを最後にお聞かせいただいて、後ほどまた時を改めましてこの問題についてはもっと詰めたお話をさせていただくことにしたいと思いますが、とりあえず、これを契機にした教訓として、今後のあるべき姿についての大臣のお考えになっているものがお示しいただければありがたいと思います。
  30. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに二百海里というものがある意味でやはり定着したということ、そして特に遠洋漁業をめぐる国際環境というものは、それぞれの国が主権を主張するようになったということで非常に厳しいものというふうに私どもも受けとめ、まずみずからの二百海里の整備というものが私はやはり一番重要また緊急な問題であろうと思います。そういう中でやはり漁業再編整備ということもあわせてしていかなければいけない、かように思います。  なお、もちろん遠洋につきましても、私どもこれから新漁場の開発ですとか、また各国との話し合いというものをしていかなければいけないけれども、今御指摘がありましたことを私ども踏まえて、ともかくまずみずからの二百海里をきちんとしていく、その中で再編整備を進めていくということを、中長期展望一つ持ちながら進めてまいりたい、かように考えております。
  31. 島田琢郎

    島田委員 終わります。
  32. 大石千八

  33. 田中恒利

    田中(恒)委員 大変厳しい日ソ漁業交渉につきましては、大臣には就任以来大変御苦労でございました。  今、島田委員の方からいろいろ救済策について御提示や御質問がありましたが、ぜひ早急にこれは国内の漁業体制を転換をしなければいけない課題を相当抱えておると思いますので、当面の救済対策については、銭が少ないときですけれども、ひとつこの際こそ大臣に政治力を発揮してもらって、必要な財源を確保して当面のやはり救済対策を処理して、将来展望に立った、日本沿岸漁業中心とした漁業政策の確立に向かって御尽力をいただきたい、このことを冒頭にお願いいたします。  大臣がモスコーで交渉されておると時を同じゅうして、アメリカと日米農産物交渉が行われておりました。つまり今月の二十二日に期限切れになる十三品目、十二品目とも言われております日米農産物交渉状況がどういうふうになっておるのか、これは主管局長さんの方からで結構でございますから、現状の御報告をまずいただきたいと思います。
  34. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答えを申し上げます。  農産物十二品目につきましては、昨年の十二月に予備協議をやりました後、本年の三月十八日と先週の四月十日、ワシントンでことしに入りまして二回協議を行っております。先週の協議におきましても、アメリカ側からは輸入制限品目を完全自由化すべきであるという非常に強い主張がなされました。アメリカ側としては、前回の交渉の決着のときも完全自由化というアメリカの考え方を変えたわけではない、むしろあれは中間的な解決であって、二年後には十二品目の輸入制限が撤廃されるべきであるという立場を一貫して貫いているのだ、こういう主張がなされたわけでございます。  これに対しまして我が方は、自由化をコミットできる立場にないということを明らかにいたしまして、我が国農業の厳しい実情なり十二品目の重要性等完全自由化ができない事情を説明いたしますと同時に、前回の決着のような日米双方が受け入れ可能な現実的な解決策を見出すべく努力をする必要があるのではないかということを、アメリカ側に対して強く申しておるところでございます。  以上のようなことでございまして、現在までのところ日米の基本的なポジションにはなお相当隔たりがございます。しかし双方とも、この協議の結果、日米双方がさらにそれぞれ持ち帰って検討して話し合いを続けようということについては意見の一致を見ているところでございます。  今後につきましては、四月二十二日の期限、これは二年前に一定の枠の拡大なりあるいは部分自由化というものを合わせました一定のアレンジメントができまして、その間アメリカはガットの二十三条一項に基づきます協議の手続を中断をするということになっておるわけでございます。したがいまして、二十二日の期限と申しますのはアメリカがガットの手続を再開をする自由を獲得をする日ということでございますが、これに向けまして協議を続けるということにいたしております。我が方としては、我が国農業に悪影響を及ぼさないよう現実的な解決を目指しまして最大限の努力を払っていく考えでございます。
  35. 田中恒利

    田中(恒)委員 日米農産物交渉は、大変長く、いろいろな品目あるいは問題を中心に続けられておるわけでありますが、今回また制限品目であります十二品目について、アメリカ側は完全自由化を非常に大きく主張して引いていない、日本側は現実対応で処理をしたい、こういうところで、これまた両方がそれぞれの主張を述べておるということでありますが、この際、羽田農林大臣は御就任当時からタブーに挑戦するとか身ぎれい論とか、ちょっと私ども心配をした御発言も一、二あったわけでありますけれども、今回の日米農産物交渉に臨む我が方の基本的な考え方を、改めてこの席において大臣の方からお聞かせをいただきたい、こういうふうに考えます。
  36. 羽田孜

    羽田国務大臣 今現実的な問題、現実といいますか今日までの経過については局長の方からお話があったわけでございますけれども、今度の交渉に当たりまして、私どもといたしましては確かに国際的な関係立場というものを踏まえなければならないわけでございますけれども、他方、農業は国民生活にとりまして最も基礎的な物資である食糧の供給だけではなくて、いつも申し上げますように国土の保全あるいは自然環境の保全、こういう極めて重要な役割を果たしておるということでございます。  そういうことで、各国ともそれぞれみずからの農業を守るための保護措置といいますか、そういった国境措置とかいったものを実はとっておるわけでございまして、私ども、個々のものにつきましては現実的な対応ということでオープンにできるものがあればこれは進めていかなければならぬと思いますけれども、しかし基本は、私ども今申し上げたことを基本にしながら、各国と、特に今度の場合にはアメリカとも話し合っていきたいと思っております。
  37. 田中恒利

    田中(恒)委員 重ねてお尋ねをいたしますが、今のような大臣の御見解からすれば、今回の十二品日交渉においても、それぞれ品目あるわけでありますけれども、少なくともこれらの作物については自由化はできない、こういう視点でこの交渉に臨まれるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  38. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在協議中の事項でございますので、どの品目についてどういう対応をするというところまでアメリカ側との間でもまだ話はまいっておりませんし、また、私どもといたしましても、品目ごとの具体的な対応を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほど私、そしてまたただいま大臣からお話がございましたような考え方に基づいて対応してまいる考えでございます。
  39. 田中恒利

    田中(恒)委員 品目ごとの問題についてここでいろいろ御意見を承ることは確かに御無理だと思いますが、自由化は認めないという姿勢で臨まれておるわけでしょう。ですから、この方針は貫くのかどうかということであります。
  40. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的に今局長から申し上げたとおりでありまして、今交渉をしておるわけでありまして、相手の方は完全自由化という原則論を打ち出してきているわけでありますから、そういった中で私どもとしては現実的な対応をしましょうということを言いながら話し合いを進めておるということでありますので、どうこうしますということについて今ここで示唆するようなことは申し上げることはできない。我が国の農業におかしな影響を与えないという原則を持ちながら私たちは交渉に臨んでいくということでございます。
  41. 田中恒利

    田中(恒)委員 余りしつこく食い下がりもしませんけれども、これまで農畜産物の自由化交渉に当たっては、自由化はやらない、こういうことをそれぞれ大臣は国会でも言明されてきたと思っております。そして最大限の相手国との交渉が続けられ、土壇場になって枠の拡大というケースで処理されたのが大半であったと思うわけであります。そういう意味で私どもは、日本の農業が決して前進をしておるというか、自由化というか、どう見ても外国食糧の輸入の圧力が一番大きな問題であるだけに、政治の立場からいってもこれはもう引くべきときではない、どうしてもここらで踏みとどまらなければいけないと思っております。この際、私どもといたしましては、十二品目をめぐってアメリカの自由化の要請にはおこたえすることはできないという姿勢をとっていただきたいということを強く主張しておきたいと思います。  そこで、中曽根総理が今アメリカへ行っていらっしゃるわけでありますが、四月七日に国際協調のための経済構造調整研究会報告、前の日銀総裁の前川レポートと称される報告書が出されました。この報告書は五百億ドルの日米経済摩擦の処方せんであるということで、今回の中曽根訪米の日本側の主張の根拠になっておる。きょうの新聞を見ると、アメリカもこれを相当高く評価して、中曽根総理は、日本の経済を輸出型から輸入型の構造改善へ向けて脱皮していく、こういう転換も述べていらっしゃるわけであります。  この前川レポートの中には農業政策の推進について幾つかの重要な問題が提起されております。これまで農政審議会などでも議論をされてきた内容もあるわけでありますけれども、前川レポートの中に盛られておる事項はこれから関係閣僚を通して閣内にも一つの推進機関がつくられる、どうもこれも約束をせられておるようでありますが、この「農業政策の推進」を農水省の方はどういうふうに受けとめておるのか、この辺をお尋ねしておきたいと思うのです。
  42. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 いわゆる経構研で農政に関する部分としましては、今後育成すべき担い手に焦点を合わせた施策の集中、重点化、構造政策を促進、助長する方向での価格政策の見直し、それから内外価格差の縮小と市場アクセスの改善の三点でございますけれども、この提言内容につきましては、我々にとりまして今後の政策努力の基本的な方向としてはそれなりに理解ができるものと考えております。もちろん中身につきましてはいろいろと厳しい内容も含んでございますけれども、いずれにいたしましても、先般の関係閣僚会議で、政府としてはこの報告を参考として今後関係審議会等における調査審議を含め検討を行うという方向が出されているわけでございます。  たまたま、先生からも御指摘がございましたように、我々といたしまして去年の十二月から農政審議会を開催し、過去六回にわたりまして従来の農政の基本方向というものの総レビューを行ってきたわけでございます。そのレビューの結果、やはり現在のいろいろな長期政策なり長期見通しというものが策定後既に五年も経過しておるということで、現実との乖離もいろいろあるし、新しい前提条件なり将来の姿というものも出てきておるので、ここで将来のビジョンについて根本的に見直したらという御意見が先回あたりございまして、次回の審議会からいわば二十一世紀へ向けての日本農業のビジョンというものの策定作業に入ろうというような段階になってきておりますので、この農政審議会の場で経構研で出されました御意見も参考といたしまして、将来の農政のビジョンを今後全力を挙げてつくってまいりたいと考えております。
  43. 田中恒利

    田中(恒)委員 全体の農政のあるべき姿を農政審議会などで議論をしていらっしゃるようでありますが、そこにこういうものも参考として御検討するということのようであります。この報告書は、当面の経済摩擦の対応について、特に今私が提起しております十二品目の農産物交渉などの取り扱いに関して直接関係してくる要素が非常に強いと思いますから、長期的な計画というかビジョンというか、そういうものの前に、極めて現実的な問題との絡み合いでこのレポートの機能は非常に動く、私はこんな気がしてなりません。  そういう意味で、例えばこの中で「基幹的な農産物を除いて、内外価格差の著しい品目(農産加工品を含む)については、着実に輸入の拡大を図り、内外価格差の縮小と農業の合理化・効率化に努める」、こういう文章が入っておりますね、今、官房長申し述べられたように、「国際化時代にふさわしい農業政策の推進」、全体の考え方は、構造政策を基本に据えるということが一つの柱になっておる。それから、価格政策は市場メカニズムに対応させるということですね。それから、担い手に焦点を置く、この辺の議論は私どもは意見を異にしますけれども、今までしばしば政府内部から出てきておったわけであります。輸入自由化というか、国際対応をめぐって、貿易の問題で内外の価格差の非常にひどいものについては基幹作物を除いて輸入をふやしていく、こういう方向が明らかに文章としてここへ出てきておるわけであります。  この基幹作物というものは、これは前川委員会の議論もお聞きしたいけれども、農林水産省としてはどういうふうに受けとめていらっしゃるか、この点をお尋ねして明らかにしておきたいと思うわけです。
  44. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 この経済構造研究会の報告をまとめます際に、基幹的な農産物とは何かということについての具体的な御議論があったというふうには私ども聞いておらないところでございますが、私どもといたしましては、我が国の農業あるいは食生活上重要な意義を持っておる農産物という意味に理解をいたしております。  研究会の提言は、先ほど官房長からもお話ございましたように、政策展開の基本的な考え方を示したものと理解をしておりまして、我が省といたしましてはこの提言を参考にいたしまして、農政審議会等の御意見もよく承って検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  45. 田中恒利

    田中(恒)委員 農政審議会の意見を聞いてあなたのところが今から日米交渉を進められるような、そんなのんびりしたことじゃないと思いますよ。  ただ、この前川レポートというものがアメリカ側に対しても非常に大きな影響を与えているし、これからの日米間の農産物交渉においては、一つの大きな日本側の基本的な考え方ということで総理自体が説明しておるわけでありますから、はね返ってくると思うのです。  ですから、基幹的な農作物というものは、国家管理貿易をしておる米麦を中心としたものなのか、あるいは今回の十二品目の該当作物というのはいずれも国全体の立場からいえば基幹作物と言えるのかどうかという議論は当然起きてきます。しかし、地域の農業あるいはそれを営んでいる農家の立場からいえば、基幹作物というのはたくさんあるわけですね。そういう理解をこの際していないとやはり問題が残ってくると私は思うのです。そういう解釈は今のところまだお役所の方ではされていないのか、これは十二品目の交渉に当たって当然ぶつかってくる問題のように思いますから、私は念を押してお尋ねしておくわけであります。
  46. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 前川リポートの「国際化時代にふさわしい農業政策の推進」というところに三つのパラグラフがあるわけでございますが、私ども、第一の構造政策なり価格政策のパラグラフだけではございませんで、輸入の問題、あるいは輸入制限品目の問題につきましても、これは単に短期の問題あるいは当面の、今おっしゃいました十二品目交渉の問題というようなことと直に結びついて述べられた意見というふうには理解をいたしておらないところでございます。  十二品目について申しますれば、これは一番最後の「輸入制限品目」というところにまさに該当するわけでございますけれども、「市場アクセスの改善に努めるべきである」、その際「ガット新ラウンド等の交渉関係等を考慮しつつ、」ということで、今ガットで、農業貿易委員会で新しい農産物貿易の国際的なルールづくりをやろう、そういったルールづくりの議論が進行中であるわけでございますが、そういった議論を考慮しながら、国内市場の一層の開放に向けての将来展望のもとに市場アクセスの改善に努めるべきであるという中長期の方針を述べているもの、もちろん、そういった中長期の問題を考える中で当面の十二品目の問題にも対応をしていかなければならないわけでございますが、当面の十二品目の問題につきましては、私ども先ほど申し上げましたような対応で考えてまいるつもりでございます。
  47. 田中恒利

    田中(恒)委員 私どもは、日本の農政というものが現実的に非常に分化をしておりまして、地域性の非常に濃い農業というものがいや応なしに高まっていくと思いますし、従来の画一的な中央集権型の農業の形態はだんだん影を薄めていかざるを得ない、こういうように見ておりますから、やはりこの地域の主幹作物といったようなものを、それこそ日本の農政の基幹作物という位置づけのもとでこれから外国との対応などについても配慮すべきことは配慮しなければいけない、こういう立場からこの十二品目の交渉に当たっても強くこの点を主張していただく必要がある。特に巷間言われるように、十二品目全部完全自由化しても二億ドルになるかならないか、五百億ドルの貿易収支のアンバラにどれほどの影響があるのかという議論もおるし、日米に関しては完全に我が国は輸入超過である。二百五十億ドルの輸入超過という国はどこにもないわけであります。そういう点は従来から言っておるわけでありますが、それらを含ませて、特にこの十二品目の中に盛られておる酪農、乳製品関係であるとか雑豆あるいは沖縄のパイ缶など主要な地域農産物を守るために、今後とも全力を注いでアメリカ側に理解を得るような努力をしていただくように特に要望しておきたいと思います。  四月二十二日というのはもうすぐでありますが、これから後の交渉のスケジュールなどが決まっておるのかどうか、あるいはガット提訴という問題もアメリカ側は振りかざしておるというふうにも聞いておるわけであります。こういうガット提訴に対応するこちら側の腹決めの問題もあると思うのでありますけれども、ガットそのものもこの農産物についてはこれから十分あるべき姿を考えなければいけないのじゃないかという議論も出ておるというふうにも聞いておるわけでありますが、この辺の問題を含めて、今後のこの十二品目を中心にした貿易交渉の見通しについて御意見を承って、質問を終わりたいと思います。
  48. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 二十二日まで残されている期間は短いわけでございますが、今後の運びをどうするかということにつきましては外交ルートを通じて相談をするということに相なっております。  今お話もございましたように、貿易数字で申しますと昭和五十九年のアメリカからの農産物の輸入が七十七億ドルでございます。十二品目の輸入額というのは合計をいたしましてもそれの一%程度のものでございます。こういったウエートを持ったものとして現実的な解決を図るべきではないかということをアメリカ側にも申しておりますし、また金額としては小さくても、先ほどございましたように幾つかの品目は地域の農業という点から見れば非常に大きなウエートを持っておる、それに対しまして、アメリカはアメリカでまた、金額は小さいけれどもそれは輸入制限の制度があるせいである、あるいはまたその品目についてのアメリカの特定産地にとっては非常に大きな意味を持っているというようなことも言っておるわけでございます。  私ども、昭和五十八年の七月にアメリカがガットにこの問題を持ち出しましたときにも、たしか二回にわたりまして、品目ごとに詳細にこの輸入制限品目の必要性なりあるいはガット上の規定から見てもそれなりの正当性があるということについての説明もいたしておるところでございます。私ども、そういう意味で、前回もそういった議論をやりながら二国間の現実的な決着を図ったわけでございますが、今回も、完全に話が最後まで合わなければガットに行くという可能性も当然考えられるわけでございますけれども、ガットへ行く行かないということ自身をどうこう考えるよりも、先ほど来申し上げておりますような基本的な立場で、どこの場に出ていっても主張すべきは主張するということでこの問題を処理してまいりたいと思っておるところでございます。
  49. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣、この際大変素朴な提案でありますが、グレープフルーツの自由化からオレンジ、牛肉の自由化、そしてこういう地域特産物の自由化、ともかく農産物についても外国、特にアメリカとの関係は非常に厳しい、漁業は今お話しの日ソ、日米、漁業外交というものが大変重要視されておる、こういう国際化時代の中に好むと好まざるとにかかわらず日本農林水産業は入らされておるわけでありますが、これに対応する農林水産省の陣容も確かに考えていかなければいかぬ。  我々ちょいちょい外国へ行かしていただくわけでありますが、主要な国には農林水産省の係員が行っておりますけれども、まだまだ足らない面が非常に多いようにも聞いているわけであります。やはり役所のお役人自体がそういう嵐の中へ入らなければいけないし、それから、最近の役所へ入ってくる若い人というのは、昔の時代は農業をやろうがやるまいが農村、農業の息吹というのをよく承知しておったと思うのですが、今はもう地域農産物なんか、細かいいろいろな品目が出たら見たことも聞いたこともないような人がたくさんおると思うのです、今の若い人、入省せられる人には。ですからそういう意味では、外務省だけではどうにもならぬので、農林水産省が国際的に対応するだけの、海外への駐在も含めて、あるいは本省なり出先なりそういう対応についてはよっぽど考えていかなければ、我々の側の対応力も十分でないという面も出てくると思うのです。これは内部の問題ですが、十分お考えをいただいて、こういう時代対応する農政のあり方というものを確立していただくことを要望いたしまして、質問を終わります。
  50. 大石千八

    大石委員長 武田一夫君。
  51. 武田一夫

    ○武田委員 このたびは羽田大臣には大変御苦労さまでございます。私たちも非常な期待を持って成り行きを見ておりました。大臣の精力的な交渉にもかかわらず、今回の日ソ漁業交渉はまことに難航をきわめまして、我が国漁業操業の大幅な規制という厳しい結果を余儀なくされたということは非常に残念でございます。この操業規制関係漁業者あるいは漁船水産加工業者、そしてこれが地域経済に与える影響が殊のほかに大きいというわけで、特に東北、北海道はその渦の中に巻き込まれ、今関係者は非常な不安の中におののいているわけであります。そういう意味で、今後政府が万全を期するよう私は要望いたしまして、若干大臣と長官にお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、今回の妥結でいろいろと大変な事態が発生するわけでありますが、どういうところにどのような影響が出てくるのか、そしてまた、その影響の大きい地域はどの辺なのか、こういうところをひとつまず明確にお示しをいただきたいな、こういうふうに思います。
  52. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  現在までのところは、操業水域とか漁法とかそういうものが大臣レベルの協議大筋が決まった段階でございまして、漁獲割り当て量につきましては、水域別、魚種別のブレークダウンがまだ行われておりませんので、全貌を詳細に申し上げることは難しいわけでございますが、影響が集中的にあらわれる場所といたしましては、一つは沿海州の水域のベルギナ岬以北の禁漁、それから東樺太水域における着底トロール禁止、これの影響が稚内を中心とした洋底船についてあらわれてくる、これが影響の集中している一つの領域であろうというふうに思われます。いま一つは、底刺し網が全面禁漁になりましたので、底刺し網漁業者が集中をしております根室周辺というのは、もう一つ影響が集中的にあらわれてくる地域であろうと考えております。  そこから先のことになりますと、魚種別、水域別の割りつけを済ましてみませんと、ちょっと具体的には判断しにくい次第でございます。
  53. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、今回のこういう結果で北海道は非常に大変だということで、新聞によると、大臣救済対策のことで意見交換するために北海道に行くということであります。私はその地域も、例えば北転船の問題では、これからいろいろと御苦労をかける地域をずっと見てみると、北海道よりは宮城県が多いのです。これは前々回の場合にも、北転船にはかなり苦労した。宮城県などではもう鼻血も出ない。北転船の問題で補償の問題等が出た場合は我々業者だけではとてもだめだということで、相当深刻であります。この影響等々、今後を考えますと、青森県なんかも沖合底びき網の問題なども相当影響がある。  ですから、この際、北海道を中心とした特に地域経済に与える影響の大きいところをさらにまた調査されまして、第一、第二という段階の中でよくその状況を聞いて、地方自治体、関係業者への対応に対するいろいろな要望、意見を聞いていただいて、きめ細かい指導、対応をしてほしい、私はこう思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  54. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど長官からもお答え申し上げましたように、今度の合意に基づきまして減船等、あるいは相当大きく撤退しなければならない部門、それによりまして、今お話がありましたとおり、一部の地域においては非常に大きく打撃を受けるところがございます。そういった地域をお見舞い申し上げながら、みずから現状を見てその対応を図っていきたい、そんなつもりでおりますので、今お話がありましたことをよく踏まえながらこれから対処してまいりたい、かように考えております。
  55. 武田一夫

    ○武田委員 今後これと関係してくるのは寄港問題がございますね。それから、水域別、魚種別割り当てなどの実際面の交渉ということがあるのですが、これは、今後の推移はどういうふうになっていくのか。特に私は、我が宮城県で寄港問題ですごく苦労しただけに、寄港問題に対する国内の取り組みというのは非常に重要になってくるのではないか、こういうことについては今後どういう過程で、どういう推移でいくのか、この点の見通しをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  56. 羽田孜

    羽田国務大臣 この寄港問題につきましては、私どもカメンツェフ漁業大臣との話し合いの過程の中では、実はこの話は出てきておりません。それから、魚種別の組成あるいは水域別、こういった問題については実はまだ私どもの段階では出ておりませんで、特に寄港の問題については実はまだ話が出ておらなかったというのが現状でございまして、いずれにしましても、京谷部長を団長といたします日ソ漁業委員会が今開かれておりますので、その中で話し合いがいろいろな問題で出てくると思います。私ども、よく連絡をとりながら、指示をしながら話を詰めていきたいというふうに思っております。
  57. 武田一夫

    ○武田委員 この問題で先ほど来一番問題となっているのは、当面の緊急対策をどうするか、減船の問題、補償の問題あるいは雇用対策、それから漁業基地における地域経済対策、こういういろいろな問題がございます。大臣が北海道等の地域へ出向いていろいろな要望を聞いた上でのまた積極的な対策を講ぜられることを期待しているわけでありますが、当面この問題に対する基本的な対応というもののお考えをひとつお聞きしておきたい、こう思うのですが、いかがでございますか。
  58. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的な考え方としましては、やはり減船が一体どのようになるのかということ、これは魚の組成といいますか、これがはっきりしませんと、どの船がどうなるのかということがはっきりしません。それをつかんだ上で、またそのつかむ間につなぎの融資等によって救済しなければいけないということと同時に、これによって減船というものがある程度確実になってくるということになったらこれにどう対応するのか、あるいは加工流通関係の皆さん方にも相当影響が出ておるということがございますから、融資ですとかあるいは国際規制によるところの対応策の出動といいますか、これ等についても私ども考えていかなければいけないというふうに思っております。
  59. 武田一夫

    ○武田委員 これまで減船などがあった場合私たちも非常に苦慮をしている問題は、要するに漁船員の処遇なんです。いまだに再就職ができないというような方も実際におります。海で仕事をしたいという要望が非常に多いということがネックになっているわけでありますが、こういうことで、そういう方は年齢的に見ますともうかなりの、いわゆる子供さんも学校で一番金のかかるような方が周りに割と見られまして、家庭の中で非常に苦労しているケースが、私の塩釜の周辺では見受けられます。  これはなかなか思うようにいかないということでありますが、そういう漁船員の生活の安定という問題等考えて、この問題は、先ほど労働省の皆さん方も一生懸命なさっておるようでありますが、円滑な転職のための施策というのは非常に重要であります。この問題を、ひとつ農林水産省としましても各省庁との連携を密にしまして十分な対応をしてほしいなというふうにお願いします。  それからまた、かまぼことかそういうものの加工ですね、これがまた大変なんです。宮城県の例をとりますと、大体北道海から原料は買っている。これがもう来なくなるということによって、品不足。今は商社が高い値段で洋上買い付けしたものを買っているのですが、これはほんの、資産のある大きな会社だけであって、いわゆる一般の中小零細の加工屋さんはもう四苦八苦。こうなりますと、これは地域の経済の中心でございますから、地域経済は相当混乱する。こういうことになると、もう町全体の問題になってくるという地域があるわけであります。そういうところは、どちらかというとその風がもろに当たってもろに倒れやすいというところでありますから、こういうところの手当てをまずきちっとしておく、それが一番大事じゃないか、こういうふうに私は思うのであります。  私は、そういう点の取り組みを、これは時間を余り置いちゃいかぬと思うのです。やはり病気はもう早いうちに注射するなり薬を与えてちゃんと安静にするとかという対応をしておかぬと、死にそうになってから注意しても始まらぬ。こういう問題を私は非常に心配しておりますので、どうか大臣の方でこの点のきめ細かい対応をお願いしたい、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  60. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どももまさに先生から御指摘のありましたような考え方に至りました。ただ要請があったりなんかして出かけていくというよりは、まずこの状況がどんなふうに影響していくかということをいち早く見ること、そしてやはり見ることによってその姿勢を示しながら、今お話がありましたように減船によって離職しなければならない人の再就職の場あるいはそのための訓練の問題ですとか、あるいは今の加工業者に対するすり身の手当てですとか、そういったきめ細かい対策が必要であろうというふうに考えておりますので、今御指摘のとおり、関係省庁とも十分連絡をとって対応していきたいというふうに考えております。
  61. 武田一夫

    ○武田委員 さて、今回の交渉で、私は前から心配していたのですが、日本漁船の操業違反。これは大臣もさっき、かなり御苦労なさった。交渉に当たる人、当事者にとっては本当につらい問題だと思うのです。この際、さらにそういう不良者に対する取り組みをきちっとやらぬと、これはソ連だけの問題でなくなってきます。ソ連だけの関係でなく、アメリカもその他諸外国もこの問題は一つの切り札に持ってくるんじゃないか。これは必ず交渉の弱みとして持ってこられる。こういう意味でこの問題の対応はしっかりやっていかなければならぬと思う。  それからもう一つは、日本商社さんというのはもうけ上手ですね。これはそういう状況に非常に敏感ですから、水揚げの不足を見越しての買い占めというのか、そういう買い付けというのか、これを積極的にやっている。こういうことで、結局ソ連にしてみればそういうことによって、外貨をたくさん欲しい国ですから、どちらかというととらせるよりも売りつける方がいい、そういう思惑がここに働いてきているということもやはり見逃せない。こういう非常に重要なたんぱく源として国家的な問題として取り扱う問題の中に、そうした足並みの乱れといいますか、足元を見られるというのは、これは外交の中で一番の弱みだと思うのであります。ですから、そういう意味で、こういうものに対するきちっとした指導と取り締まりというか、そういうものは今後非常に重要な問題になってくるのではないか。これに対して今後どういうふうに対応されますか、お尋ねをしたいと思います。
  62. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  前段の違反問題につきましては、先生指摘のとおり私どもも大変困った事態であるというふうに認識をいたしておりまして、従来からそれなりに努力をしてきたつもりでございますが、今後とも指導の徹底と、見つかった場合の違反に対しては厳正な措置をとるようにいたしたいと考えております。  それから、後段のお話でございますが、現在、北洋関係で一番影響を受けておりますスケソウダラ、まあタラ全体がそうでございますが、これがIQ物資になっておりまして、勝手にいろいろなところから入れてくるということはできないような仕掛けになっております。私どもといたしましては、このIQ制度を適切に運営をいたしまして、今のような思惑的な動きが生じないように心がけてまいりたいと思っております。
  63. 武田一夫

    ○武田委員 次に、こういう事態、二百海里以降の一つの大きな課題は、日本漁業というもののあり方を考えなくちゃならない時代に来たのではないかということで、日本は自国の二百海里水域漁業振興というものをもう一度ここで改めて再検討しながら強固なる対応をしていかなければならないのじゃないかという問題が一つあるわけであります。と同時に、北洋漁業の再編対策というものについてもやはりここでもう一度再検討しながら今後の万全を期さなければならないという、二つの面が今後の日本の大きな漁業、水産業界の課題ではないかと思うのでありますが、当局としてはどのように今後こうした問題に取り組んでいくか、その辺の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  64. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  二百海里体制定着のもとで我が国の二百海里水域を高度に開発利用することがますます重要になっているという点につきましては、ただいま先生指摘のとおりであると思っております。従来から私どもといたしましては、沿岸漁場の整備開発でございますとか、あるいは栽培漁業振興、漁港の整備、沿岸漁業の構造改善、こういう各種の事業を講じてきたところでございますけれども、さらに新しい観点から我が国の二百海里内の開発を推進するために産官学連携のマリノフォーラム21という組織をつくりまして、先進的な技術開発を本格的に推進をしていこうということを考えております。また、沿岸域、沖合域の総合的な開発のためにマリノベーション構想の調査検討の拡充等をやっているところであります。私どもは、従来からの諸施策に加えて、これらの新しい観点からの施策を積極的に推進をして、二百海里内の漁業振興してまいりたいと考えております。  それから、北洋の問題につきましては、米ソ両国とも我が国北洋漁業に対する規制は今後ともますます厳しくしてくるものと考えられますので、こういう事態に対処をいたしまして、中長期的な展望に立った北洋漁業のあり方の見直しをしなければいけない段階に到達をしておるというふうに認識をいたしておるところでございます。
  65. 武田一夫

    ○武田委員 もちろん今、長官から答弁いただきましたように、二百海里内での水産資源の拡大のための最大限の努力をしなければいけない。と同時に、遠洋漁業などの縮小ということもある程度やむを得ない事態に至ったということでありますが、この漁場はまだ努力して確保して、その中での操業ができるような対応という努力も重要だ。そのために日本の果たす一つの役割というのは、相手国漁業を発展させるような協力関係をもっと密接にしていくことがより一層相手に利益を与える、そういう観点をもう少し強調して協力してやる。資源をふやすような漁業協力でありますとか、また操業方法の工夫などを通して、両国間のいろいろな食い違いがないような、そういうお互いの努力がもっともっとこれまで以上に必要である、こういうふうに思います。やはり日本側ばかりがいい思いをしているというような感じをしているようですね、いろいろな新聞のあれや話などを聞きますと。ですから、そうじゃなくて、日本との交渉において、我が国もそれなりにかなりの恩恵を受けているんだというようなことが国民感情としても政府としても受けとめられるような努力の点が日本としてはまだまだ足りないんじゃないかというような気がいたします。今後の漁業交渉の中の、これは半面からいえば大きな外交交渉だと思うのであります。そういう対応を農林省、外務省しっかり連携をとりながら大きく推進をしてほしいなというふうに私は要望し、その努力が実るような対応をお願いしたいと思うのですが、大臣の御決意をお尋ねして、私、質問を終わらしていただきます。
  66. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさにこの二百海里というものが定着してきたということで沿岸国主権的権利というものを強く前面に打ち出し、あるいはサケ・マスに関する母川国の主張、こういうものが強まっているということで、確かに遠洋の漁業というのは非常に厳しい状況にあるということはもう御案内のとおりであります。しかし、そういった漁業に水産加工業の皆さん方も多く依存して生計を立てているというような現実もありまして、私どもは厳しい中にあってもやはり我が国の実情を訴えると同時に、相手の理解も求めて、粘り強い外交というものをしていかなければいけないというふうに思っております。  今度の日ソ漁業交渉も相当厳しいものがあったわけでありますけれども、また裏にあっては安倍外務大臣初め外交当局の皆さん方も大変よく協力していただいたということで、厳しい中でもああいった結論を得ることができたわけでございます。そういう意味で、外交的な面でも大いにお力をいただくと同時に、また今御指摘がありましたように、相手の二百海里水域内における漁業資源、こういったものについても我々も配慮していく必要があるだろうと思います。  特に今度の場合にも、底魚の中でもカレイですとかあるいはマダラですとかギンダラ、こういったものについて、あるいはカニの資源等についてソ側の方が相当強く資源の枯渇ということを訴えておりました。こういうことを考えたときにも、我々がそういったものについて配慮すると同時に、我が国として協力できるものは協力しながら、そういう中でさらに我が国に対する理解というものを深める努力というものも、我が国の二百海里内の漁業振興することとあわせてやっていく必要があるということを私どもも痛感いたしております。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 そういう決意で一生懸命努力をしながら交渉対応していけば、その努力は、念ずれば花開くという言葉のとおり、必ずよき方向に向いていくことと私は確信をしておりますし、そのために、大臣、長官等には大変御苦労でありますが、政府を挙げてのしっかりした対応を重ねてお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  68. 大石千八

  69. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣質問申し上げますが、まずその前に、本当に御苦労さんでございました。本来なれば暦年妥結で努力されてきた日ソ漁業交渉、私たち一月一日から五日までの暫定操業の間にも例年のように何とか妥結するのかなと思っていたのが、延びるのも延びまして四月にもう入っている。大変な事態でございました。こういう中で大臣が行っても、何か窮地に大臣を送るような気がいたしまして大変だなと思っておりましたが、やはり大筋妥結の内容を見ますと、これは大変な後退でございます。前年度六十万トンの漁獲割り当て量が十五万トンになったというのは、漁民また関係業者にとりましても大変な痛手になる妥結でございますので、こういう点では全く今回の妥結内容は何か日本側の敗退のような気にさせられるわけでございます。  つきましては、この日ソ漁業交渉の概要と、こういう決断を迫られてしまった主たる要因を、大臣はどのようなそのときの状況でこれを決断したか、その点をお伺いする次第でございます。
  70. 羽田孜

    羽田国務大臣 今度の結果というのは、先ほど来お話ししておりますように、非常に私どもとしても厳しい決断をせざるを得なかったということであります。その内容といたしましてやはり一番問題であったのは、ソ側の方が資源というものに対して、今度の第二十七回の党大会の中でも資源保護することあるいはこれを活用していく、有効に利用していくということが物すごく強く打ち出されたということで、漁業省としてもこの枠組みから一歩も外に出ることはできないという非常に強いものであります。  その中で特に底魚といいますか大陸棚資源といったものについて、これを子孫に残していかなければいけないんだということ、あるいはカレイですとかギンダラですとかマダラですとか、こういった高価な魚種といったものの資源も非常に厳しくなってきておるので、こういったものを保全していかなければいけないということを非常に強く打ち出しております。それともう一つは、みずからの食糧としての確保ということ、例えばムラホフスキー国家農工委員会議長との話し合いの中でも、今まで魚は十七キロ食べておったのをこれからは十九キロまで上げていきたいんだということ、それから私たちが視察しましたオケアンにおける魚の売り方についても、非常に真剣な売り方で、私たちにも一つずつ缶詰なんかも味わえなんというぐらいでございまして、魚たんぱくに頼るものが非常に強くなってきておる、この二点が一番大きなものであったろうと思います。  私どもといたしましても、伝統的な漁法あるいは今日までの北洋に果たしてきた日本立場、そして激変というものはどうしても緩和してもらわぬと困るんだということ、それから、確かに底刺し網というものが海底の資源に対して影響を与えるということでありますけれども、これも今日までずっとやってきた漁法であるので何とかあれをしてほしいということを延々と話したのですけれども、先ほど申し上げたような理由からこれについては一歩も譲ることはできませんということであります。これはしかも三カ月有余にわたっての話し合いを踏まえた上での私ども話し合いでございますから、これ以上議論しておりますと、当然出漁できる例えばイカですとかサバですとかいったものにまで影響が出てきてしまうと思ったときに、厳しいながらも私として決断をせざるを得なかったというのが実情であります。
  71. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 非常にソ連態度の厳しさということ、それも資源保護党大会の決定もあっての強さというふうに理解をさせていただくわけですが、そうすると日本の底刺し鋼そのものは本当に資源を枯渇させる、漁法そのものがやはり私たちの方でも、このような漁場荒らしになる、そういう漁法と認めたのでは交渉も弱さが出るわけでございます。今までの交渉と比べてゴルバチョフ時代の新外交でもございます、そういう新しい強硬な態度というものはこのほかに感じられなかったのかどうか、この点について一応お伺いしてみたいと思います。
  72. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  従来の交渉に当たりましては、ソ連側は前から日ソ双方の間の漁獲実績の差が大幅にあるということを問題にいたしました。操業条件を平等にするという問題を従来からソ連側は提起をいたし、その際、ソ連側底魚を対象とする日本漁業というのを主体にして絞り込んでくるということを考えておったわけであります。  ただ、今回の交渉が従来と比べて大変異なっておりますのは、従来ですと、例えば一昨年の暮れの交渉の際には、交渉の終わりの局面で暫定操業の問題をソ連側から提起をいたしました。日本もそれに応じて暫定操業の取り決めをするということでありました。主張することは主張しますが、最後の段階になるとソ連操業中断という事態までに至ることは避けたいということで、いつも終わりになると案外弾力的になっておりてくるのが通例であったわけであります。  それに比較いたしますと、今回の場合は、十二月の終わりになりましてもソ連側が一向に暫定操業なんということを言い出しませんし、日本側から暫定操業の問題を提起いたしましても、ソ連側は非常にかたくなな態度で、ごく短期間の暫定操業しか合意できなかったという経緯がございます。それから後も何回も中断して、日ソ双方漁船がストップしておるという状態になっても全く意に介さず、延々といつまでも自分たち主張を頑張る、まずそういうソ連側主張を頑張る強靱さと申しますか、そういうのは従来と比べて全く画期的な変わりようであります。  なぜそんなに従来と比べて変わるのであるかということでございますが、やはりゴルバチョフ時代になりまして、六十万トンの漁獲割り当て量をもらってそのうち十五万トンしかとれないとか、ソ連側が十五万トンしかとれないのに日本側は三十万トン以上とっておるとか、そういう事態に対して我慢がならないと申しますか、断固としてそういう旧弊は打破しなければいけないという新しい決意を持って協議に臨んでおるというのが大変目新しいところであろうと思います。これは、いろいろな分野でのゴルバチョフ書記長の時代になってからのソ連のやり方というものを見てみますと、それが漁業の分野にもあらわれてきているのかなという感じで眺めておるわけであります。
  73. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣交渉に訪ソするに先立ちまして、どうもソ連の外交というのは国家全体の外交戦略の中で交渉しているようだよというようなことを漏らしております。となりますと、日本交渉は各省庁が一応ばらばら——ばらばらといったって大使館あるいは外務省からも一緒に随行が行っているわけなんですが、しかしやはり各所管ごとの交渉をしたのでは到底ソビエトの国家外交に太刀打ちできないのじゃないか。  六十万トンの割り当てのうちソビエトの方では十五万トンしかとってない、こういう不均衡に対して強い不満もあったのではないかという今の佐野長官の発言なんですが、六十万トンとか十五万トンというのは経済的な内容ですから、金銭的な問題でもある程度カバーできるはずだと思うのです。そういう六十万トンとか十五万トンの差の中で、日本漁獲経費というのは、国が支払えば当然高くなるだろうと思いますが、そういう余地がなかったのかどうか、この点もちょっとお伺いしたいと思います。
  74. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  今の点は、実は先ほど大臣から詳しくお答え申し上げました。資源保存に対するソ連側の並み並みならぬ関心と漁獲量不均衡の是正という問題が重なり合っておりますので、そこが実は大変困るところであります。単純な漁獲量不均衡だけが問題であればあるいはお金で解決することができるかもしれませんけれどもソ連側資源保存についても並み並みならぬ決意を持っておりますので、底刺し網禁止でございますとか、あるいは第二区の俗称三角水域と呼ばれております水域の禁漁とかベルギナ岬以北の禁漁、こういうことは金で譲り渡すわけにはいかない主張であるということで、ソ連側は最後まで断固貫徹するという態度をとったわけでございます。  そういう形で操業水域なり漁法なりの面で重大な制約を受けてしまいますと、その上で金を払えばクォータを多少余計やってもよいと言われても、金を払ってクォータを買うべき操業上の前提条件がそもそも欠けておるという事態になってしまっておりましたので、金でクオータを買うということがそろばんに合わなかった、そういう事態であったというふうに御理解いただきたいと思います。
  75. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 外務省の方にお伺いするのですが、今回の妥結を見ると全く敗退的な大幅後退でございます。外務省としてはこういうことが予想できなかったのかどうか。それから、日本のこういう外交交渉も、全面外交の一環として交渉できるような対応が今回なされたのかどうか、こういう点についてお伺いします。
  76. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  前段の件でございますが、こういうことが予想できなかったかという点でございますけれども、御承知のように、ゴルバチョフ体制になりましてから、ソ連の国内におきまして、経済運営において従来の旧弊を改め効率を上げるということを各行政官庁に厳しく求めていくという態度がかなり感知されました。そういう意味で、昨年の末に農工委員会という形で、漁業も含めた農業関係の改組があったわけでございます。その際、中央委員会が開かれまして、漁業省も経済効率を上げていないということで厳しく批判されたという前提がございました。そういうこともあって、本来十一月に始まるべき漁業交渉が十二月の終わりにずれ込むという事態がございましたので、私どもとしても、これはかなり厳しいことになるのじゃないかという感じがいたしておりました。そういう意味で、全般的なゴルバチョフ体制の経済問題への取り組み方が今回の厳しい結末の背後にあったと感じておる次第でございます。  それから、外交全体の中におきまして、漁業問題はもちろん従来から非常に大きな位置を占めていたわけでございますけれども、外交正面におきましては、十年ぶりのシェワルナゼ外務大臣の訪日ということにもあらわれておりますように、ソ連は対日重視政策をとっております。その中で私どもとしても漁業の重要性を訴えてきたわけでございますけれども、先ほどのようなことを背景として、ソ連側はこれを極力技術的、実務的なものであるということで処理しようとしてきました。そこで私どもは、日ソ関係全体への影響という政治的な配慮を求めて、大臣からあるいは大使から先方に働きかけ、今回大臣が行かれるに当たりましても、外務大臣からシェワルナゼ外務大臣に対して親書を託し、政治的な配慮を加えての解決を要請するという形で側面から努力をしてきたつもりでございます。  今後とも、漁業問題につきましては双方の面から政治的な配慮を加えての解決ということをも努力していく必要があるだろうというふうに感じております。
  77. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、前例ということがございまして、そこから五割以上も後退するというのは大変なことでございます。五割以内というのは、後退後退といっても後退という言葉で表現できるわけですが、こういう厳しい交渉、これからも予想されると思いますので、外務省も日本の全体的な立場で一丸となってソビエト外交に対応するという姿勢を望んでおく次第でございます。  次に、影響を受ける関係漁業者あるいは関連業者の対策について、決議も上げられるわけでございますが、これについては十分の対応をしていただきたい。所見もお伺いしたいところでございますが、時間が参りましたので、強くこの対応への要望をいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  78. 大石千八

    大石委員長 津川武一君。
  79. 津川武一

    ○津川委員 今度の日ソ漁業交渉、今佐野長官がはしなくも言ったように、ソ連が画期的な変化を起こした、それから底刺し網に至っては全面禁漁になる、これはだれも予想しなかった。外交にはルールがある。急激な変化などはそう簡単にあってたまるものでない。そういう意味において、今回のソ連のやり方に強い遺憾の意を表して、日本漁業振興のために当たっていきたいと思っているわけであります。  ところで大臣、大変強い向こうの態度に遭って苦労もされたので、御苦労さんですと言ってみたいと思いますが、私十二日からきのうにかけて北海道におったのです。北海道の漁民は何と言っているか。大臣に聞こえているか聞こえていないか、端的にこの声を伝えてみます。  一つは、羽田農水大臣は何をするためにモスクワに行ってきたのか。もう一つは、北洋漁業は私たちの先祖が長いことかかって育てた漁場、二百海里以来も苦労に苦労して維持してきた漁場が、羽田農水大臣になって崩壊の危機になってきた、羽田農水大臣の手によって葬式をされるのじゃないか。大臣、これが、妥当か妥当でないかわかりませんけれども、皆さんの声であるということを御承知おき願いたいのです。  私の時間が残念ながら十四分、この大きな問題をどう質問しようか苦労しているのです。そこで、全部言ってしまいますから、上手に全部答えていただきたいと思います。  一つは、当面の対策減船される漁船に補償があるのかどうか、この補償が二百海里時代と同じ補償であるのか、これが一つ。  二つ目は、漁業労働者、乗組員の生活の保障、いろいろなことを言われたけれども、漁師はおかに上がると全く役に立たない、これが彼らの常識です。そこで、長い職業訓練をやってもらわなければ、失業保険の期間だけなどと言っていては間に合わないかもしれない。彼らをおかで生活させる方策を講じてください、これが二つ目。  三つ目は、減船しないで残っている漁船がどんな漁業をすればよろしいのか。北洋で締め出されたので、近海、前浜、沿岸に戻ってくるより仕方がない、Uターンをせざるを得ないだろう。その際、現在、沿岸、近海漁業をやっておる漁業家、漁船とぶつかり合いをする、この調整を政府はどうしてやってくれるのか。道知事に頼んでもこれはできない。岩手や青森などといろいろやり合いがありますので、どうしても国でこの調整をしていただかなければならない、これが三つ目。  四つ目には、加工その他の関連業者に加工のことは話をしました。加工も労働者を使っている。この加工業者を守ることと労働者を使うこととあわせてやりますけれども、稚内は漁船の整備工場、ドックがあるところなんです。このドックがだめになる。稚内は加工をしている。釧路も根室も八戸も塩釜も、加工しているところの加工施設や附帯倉庫、こうしたものをどうしてくれるのかということが問題なわけです。これが四つ目です。  五つ目には、近海に戻ってきたときに、襟裳岬沖、それから最近開発したところの室蘭のもう少し沖あたりに韓国船がどえらくどかっと構えているが、これとのあつれきがどうなるか。この韓国船対策をどうするか。二百海里を韓国漁船にしかれないか。これが当面必要な五つの問題です。  次には日本政府態度についてです。  確かにソ連に抗議する、ソ連に問題がある、だが今はソ連を相手にしてもなかなか解決しない。そこで、日本でやらなければならぬ対策資源問題。私も十年前の日ソ二百海里のときにソ連に行ってソ連との交渉に参加しましたが、彼らがしきりに言うのは資源問題なんです。日本政府はこの資源を共同で調査して共同で開発する、育てる、守るということでやってきたのかどうか。これからはぜひそれをやらなければならない。この点で政府にサボがあったんじゃないか。  日本態度で第二の問題は、不法漁船です。私は二百海里のときにソ連に行って恥をかいたのです、おまえらの漁船は何なんだと。それを依然として続けておる。今回の漁業交渉が中断したときも続けておったのです。これをほったらかしておいたのです。ここのところにつけ込まれる。先ほど、はしなくも大臣もこっちに弱みがあると言った。逆に言うと、この弱みをある意味で育てたんじゃないか。  その次は、日本商社がこの三カ月間の交渉中断中もスケソウをかなりの程度買い込んで、日本の船をとめてソ連がとって売った方が得じゃないかという感じを向こうに抱かせたのがこの日本商社、これもほったらかしておいたんじゃないか。  その次は、ソ連の船が日本水域漁業するときに着底トロールを、五百メートル以内の浅いところではありますが、禁止しておって、ソ連日本水域でとるのに対してかなり大きく邪魔をしておったんじゃないか。  こういうことも出てくるし、この点で最後は、ソ連の寄港に対して十分な措置もしないであのとおりの嫌がらせをやった、ここいらの国内の体制を整えなければならない。これらのことについて日本政府はサボっておった、これを取り返さなければならないと思います。これが私の質問の大きな二つ目。  三つ目は、先ほども言ったように、ソ連態度にも問題があるが、こっちもやはり考えてみなければならぬ一つの問題は、先ほども話したけれども、韓国に対して二百海里をしいた方がいいんじゃないかという意見。  もう一つは、日米の軍事同盟を、ソ連敵視政策をやめなければならぬ。向こうにたくさん予想もしない多く並んだソ連の代表の顔から見ると、羽田さんはアメリカの顔と日本の顔の二つしておったんじゃないか。日米の軍事同盟を廃止して、平和な状態、友好状態をつくっていく。  三つ目には、最後にはやはり北方領土の問題が解決されると今度の問題は根本的に解決されるので……(「共産党が一番嫌いだ」と呼ぶ者あり)共産党が嫌いだかどうかわかりませんが、よく論議してみますが、この問題の解決に当たらなければならない。これが大きな三つ目でございます。  時間がないのでまとめて質問しましたが、できるだけ詳しく答えていただきたいと思います。
  80. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  まず第一の減船者に対する救済措置でございます。これについては減船者に対して講ずべき救済措置について早急に検討に取りかかるつもりでございますが、ただ二百海里時代が到来した昭和五十二年当時の前例が踏襲できるかどうかということにつきましては、私どもは、二百海里時代が到来をしたあの青天のへきれきの時期とは事情が違うというふうに考えております。  それから、離職者対策につきましては、これは漁臨法によって離職者対策というのは枠組みが決まっておりますので、漁臨法によって対処をするつもりでございますが、ただ今回は特定の地域に集中して離職者が出るという問題がございますから、その対策につきましては労働省にもよくお願いをしていきたいと考えております。  それから、減船をせずに残った漁業者が前浜にUターンしてきて沿岸との競合を起こすという問題でございますが、私どもとしてはこれはやはり沿岸漁業者との競合が起こらないように適切な規模の減船が行われる必要があるというふうに考えております。  それから水産加工業者に対する対策でございますが、これにつきましては水産加工の分野での国際規制関連の融資制度がございますから、当面の問題としてはそれで手当てをするということと、先の問題につきましては特定中小企業の事業転換資金を活用していただいて、先々の身の振り方の対処をしていただくということを考えております。  それから、水産庁の手の届かない分野で、例えば先生先ほどお話しなさいましたドックのような分野での離職者という問題もあり得るというふうに考えておりますが、こういう地域経済の問題につきましては、どうも私どもの直接の縄張りの中でうまく処理できませんので、関係省庁にこういう問題を御相談をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、韓国漁船の問題でございますが、これにつきましては、ちょうど北海道周辺水域での韓国漁船操業問題につきましての日韓間のアレンジメントがことしの十月末で切れるわけでございまして、それから後どうするかという問題について当然日韓間で協議をしなければいけないのがことしてございますので、その際には当然北海道周辺水域において日ソとの関係でこういう事態が起こっておるということも念頭に置いた対処の仕方で日韓の協議に当たりたいと考えております。  それから、資源問題について日ソの共同調査、共同開発というお話でございますが、これは日ソ漁業協力協定のもとで資源研究について日ソ間の協力が行われております。その枠組みの中でサバとかサンマとかスケソウダラとかについて日ソ間で研究者が協力をしていく場ができておるわけでございます。  ただ、今回のような交渉に絡んだ話になりますと、ソ連側は、ソ連の主権下にある漁業資源の許容漁獲量が幾らであるかという問題について日本政府協議するつもりなんかない、日本の科学者が知っていることがあって意見を申し述べたいというのであれば聞くにやぶさかでないけれども、基本漁獲量というようなことはソ連が主権的に決めることであって、別に協議するつもりはないというようなことを言っておりまして、共同研究の場はあるのでございますが、なかなか交渉の場にうまく反映するチャネルがないというのが現在の言うなれば泣きどころでございます。今後いろいろ工夫をしてまいりたいと思っておりますが、二百海里時代でございますから、沿岸国主権的権利という議論を振りかざしてやられるとそこはおのずと制約があるということは御理解を賜りたいと思っております。  それから違法操業問題につきましては、これは私どもも大変残念なことであると思っております。従来から見つかる都度私どもとしては厳正に措置をしてきたつもりでございますが、今後ともさらに取り締まりに努力してまいりたいと考えております。  それからスケソウダラの輸入問題でございますが、スケソウダラは御承知のようにIQ物資になっておりますので、こういう窮状に乗じて一部の商社が跳梁するというようなことにはならないように、適切にIQ制度を運用してまいりたいと思っております。  それからソ連漁船着底トロール禁止しておりますのは、これは沿岸漁業者の操業及び彼らの操業対象になっております漁業資源保護するためやむを得ざる措置でありまして、沿岸漁業者立場を考えれば着底トロール禁止というのは存続せざるを得ないのではないかと考えております。  それから寄港問題でございますが、寄港問題につきまして、残念ながら寄港に反対をなさる皆さん方のいろんな活動の事情もございまして、ソ連側に対して、必ずしもソ連側の満足するような寄港条件を提供し得ないのは私どもも気がかりな点でございます。ただその点は、昨年の場合寄港を認めるに当たりまして私の方からソ連側に、上陸しても自由に行動し得る範囲が制限されるのであるということは念を押しまして、その点はソ連側にも十分得心をしてもらった上で話を決めたつもりでございますので、その点ソ連は不満はあったと思いますが、それなりにわかった上でのことであったと思っております。  以上でございます。
  81. 津川武一

    ○津川委員 外交問題、北方領土の問題。
  82. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは日米問題については全然関係ございません。先方も、我々といろんな話し合いについても実は大変遠慮しながら話されておったということであります。  それから北方領土につきましては、これはまさにシェワルナゼ外相と安倍外務大臣が先回も話しましたように、日本立場というものをきちんとしていかないと漁業の問題にも相当影響が出てくる。その意味でも、一日も早い返還を求めなければいけないと考えております。
  83. 津川武一

    ○津川委員 時間が来たので終わります。
  84. 大石千八

    大石委員長 以上で質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  85. 大石千八

    大石委員長 この際、近藤元次君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による北洋漁業対策に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。串原義直君。
  86. 串原義直

    ○串原委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました北洋漁業対策に関する件の決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     北洋漁業対策に関する件(案)  今次の日ソ漁業交渉難航を極め、両国漁業の三カ月余にわたる中断の末、我が国漁業操業の大幅な規制という誠に厳しい結着を余儀なくされた。  また、米国水域の対日漁獲割当てについても、昨年に比べ大幅に削減されることが確実な状況となっている。  今後、この操業規制関係漁業者漁船員、水産加工業者ひいては地域経済等に及ぼす影響は計り知れないものがある。  よって政府は、関係者の生活・経営並びに国民への水産物の安定供給に不安を生じないよう左記事項の実現に万遺憾なきを期すべきである。     記  一 漁獲割当量の大幅削減等に伴い生ずる関係漁業減船、水産加工業の事業転換等に対しては、財源を含め諸対策を早急に講ずること。  二 減船等により離職を余儀なくされる漁船員等の生活の安定を確保するため、速やかに円滑な転職のための施策を実施すること。  三 漁業活動の縮減等に伴い影響を被る地方自治体に対しては、現行財政制度の運営上、十分配慮を加えること。  四 新たな段階を迎えた二百海里体制に即し、中長期的な展望の下、遠洋漁業の計画的再編整備によりその経営の安定を図るとともに、我が国漁業の秩序ある操業が確保し得るよう対策強化すること。  五 近日中に開催が見込まれる日ソ・サケマス漁業交渉に当たっては、我が国の要求が実現できるよう全力を尽くすこと。   右決議する。 以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  87. 大石千八

    大石委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  近藤元次君外四名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  88. 大石千八

    大石委員長 起立総員。よって、本動議のごとく決しました。  この際、ただいまの決議について、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。羽田農林水産大臣
  89. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまの決議につきましては、その御趣旨を尊重し、検討の上、最善の努力を払ってまいる所存でございます。
  90. 大石千八

    大石委員長 なお、ただいまの決議の議長に付する報告及び関係当局への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  92. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出生物系特定産業技術研究推進機構法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として筑波大学生物科学系教授原田宏君、全国農業協同組合連合会常務理事鳴海国輝君、キッコーマン株式会社常務取締役研究開発本部長吉田文彦君、農業機械化研究所理事長馬場道夫君、野村総合研究所技術調査部主任研究員伊藤敏雄君、以上五名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることとしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。原田参考人、鳴海参考人、吉田参考人、馬場参考人、伊藤参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、原田参考人にお願いいたします。
  93. 原田宏

    ○原田参考人 ただいま委員長から御紹介いただきました筑波大学生物科学系の原田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  最初に、私の現在やっております仕事を一言紹介させていただきまして、それから、本日審議の対象になっております法案につきまして、私なりの意見を述べさせていただきたいと考えております。  私が現在研究しております仕事は、主として高等植物を対象といたしまして、高等植物の特性の一つであります、例えば葉などから分離いたしました細胞の一つ一つから立派な一人前の植物個体を再生することができるわけでございますけれども、その基本的な機構を研究するとともに、もう一つは、将来の農業作物の品種改良のために、農業上非常に有用と思われる遺伝子を導入する方法について、その基礎的な研究をやっております。  植物の重要性につきましてはもちろん申し上げる必要もないところでございますが、我々が日常必要としております食用以外にも、例えば呼吸しております酸素も植物以外からは得られないものでございますし、また、毎日必要不可欠な石油も、すべて古代の植物から生まれたことは言うまでもないわけでございます。地球上でこれまで人類が繁栄し人類の文化が進んでまいりましたのも、恐らく一万年前ぐらいから、非常に原始的な形ではございますが、人間が農作物の栽培を始めたことによって、人間がそれまでの狩猟生活から定着する生活に変わってきたからだというふうに考えられております。  現在までにも農業技術は非常に進歩してまいりましたが、最初のころはいわゆる農耕技術、どういう肥料をいつごろやるとか、病虫害防除をどういうふうにやるとか、かんがい設備とか排水の設備とかいろいろな栽培上の技術がございますが、そういう技術の革新によって、例えば単位面積当たりの収量が非常にふえてきておったわけでございますが、最近はその傾向がやや変わってまいりまして、一定当たりの栽培面積に対する収量の増加は、栽培技術の改革よりは品種改良による貢献度合いが非常に高くなっているわけでございます。もちろん、いわゆる広い意味での品種改良は人類がここ数千年やっておりまして、最初のころは、周りの植物に比べて少しでも収量が多いとか、病気に強いとか寒さに強いとか、そういうのを選び出してやってきたわけでございまして、そういう選抜が大きな効果を上げておりました。それがさらに進んできまして、人間が交配、かけ合わせる技術で新しい品種をつくり出すことを学んでまいりましたし、さらには人工的に突然変異を起こさせまして、人間に有用な品種をつくり出すということをやってきたわけであります。  ただし、こういう技術には非常に制限がございまして、例えば突然変異を引き起こすことでも、どういう変異が起こってくるかということはなかなか予測できませんし、必ずしも我々が求めている変異が起こってくるわけではございません。それから、今までの交配技術にしましても、分類的に非常に近い植物の間でしか交配できないわけでありまして、さらに広い範囲の植物が持っております非常に重要な遺伝子、例えば寒さに強いとか暑さに強いとか、乾燥地帯でも生育するとかあるいは塩分の高い土地でも生育できるとか、そういう有用な遺伝子を有用な作物に導入するということになりますと、交配ではできないわけでございます。例外的に分類学的にかなり離れた植物同士交配ができたとしても、その子孫はそういう生殖能力を持っておりませんので、後代の植物をとることはなかなか不可能だったわけです。  そこで、最近バイオテクノロジーと言われておりますような技術の発達によって、さらに広い範囲で遺伝子の交換ができるようになってきたことが、今後非常に重要な意義を持ってくるのではないかと考えております。  その方法はいろいろございますが、ここで細かく御説明する時間もございませんし、特に必要もないかと思いますけれども、例えば新聞、雑誌などにもよく出ておりますような細胞融合とか遺伝子の導入の方法にしましても、いろいろ新しい技術が開発されております。そういう新しい例えば組みかえDNAをやるような技術、これは非常に将来性の高い、これからの品種改良とか育種に貢献する度合いが非常に高いものであるだけに、我が国でもほかの先進国と同じように実験指針、ガイドラインを設けまして、万が一にも安全上に問題があるようなことを防ぐ意味で実験指針をつくりまして、それにのっとってそういう実験が行われてきているわけでございます。  私は二十年以上欧米で研究生活を送る機会がございましたので、外国にも友人が多いので、そういう人たちの話を聞いておりますと、欧米では最近表に出てきている以上に、こういう新しい技術を用いまして有用農作物の品種改良に力を入れているようでございます。我が国においてももちろん国公立の研究機関では盛んに始めておりますけれども、欧米の例を見ますと、今後ますます民間にある企業のそういう能力も大いに活用すべきではないかと考えざるを得ない状況にございます。  育種の面に限って見ますと、欧米の例を見ましても企業の大小によってその力に差が出てくるということは余りないようでございます。それぞれのレベルにおいて、例えば大きな企業では大きな企業なりに、小さい企業では小さい企業なりにその特色を生かして、こちらの面での新しい技術を導入して研究を進めていく道が開けていると思います。ただ、民間の方の企業の状態を見ておりますと、こういう新しい技術を導入して品種改良をやっていくという場面になりますと、なかなか資金の獲得という面で問題があるように私には考えられます。  それともう一つは、やはり国公立の研究機関とそれから民間の方の研究機関では、こういう場面の技術開発あるいは研究開発におきましてそれぞれの特色を発揮できるということがあると思います。今までも農水省の試験研究機関では、例えば稲ですとコシヒカリとかササニシキとか、非常に優良な品種を出しておりますし、果樹の面でも例えばリンゴのふじみたいなすばらしい品種が出ておりますが、片や蔬菜とか花の面では民間の企業からかなり優秀な品種が出ているようなことが一例ではないかと思います。  それで、今回提出されております生物系特定産業技術研究推進機構法案でございますか、これを拝見いたしましたが、これがうまく運営されますと、現在資金の面とかあるいはアイデアの面とか、民間の企業がいろいろ困難な問題を抱えておりますわけですけれども、そのいろいろな困難な面をかなりうまくカバーして、今後の日本における新しいバイオテクノロジーの技術を用いました品種改良、育種ということに力が大いに注がれて、いい結果が出てくるのではないかというふうに考えております。  もちろん、今までの長年培われてまいりました育種技術というのも非常に重要であることは間違いございません。例えば細胞レベルで新しい遺伝子を導入いたしましても、それから植物個体にまで持っていきまして、個体レベルでいろいろその形質を調べまして、悪いものは除き、いいものは残していくというふうにすることは今までの育種技術と同じでございまして、最後の段階では非常に今までの育種技術が必要になってくるわけです。  今後とも国公立の研究機関それから民間の研究機関との協力も非常に大事になってまいりますし、また民間でのこういう技術開発、研究開発も非常に重要になってくると思いますので、今審議の対象となっておりますこの法案がうまく運営されて、今後、欧米先進国に比べますとややおくれがちであります日本のこの分野の研究開発がさらに一層進むことを私は願っておる次第でございます。  以上でございます。(拍手)
  94. 大石千八

    大石委員長 ありがとうございました。  次に、鳴海参考人にお願いいたします。
  95. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 全農の常務理事をやっております鳴海でございます。私が全農で担当しておりますのは、生産資材関係、営農関係、そちらの方を担当しておるわけでございます。  既に御高承のように、我が国の農業は大変困難な局面にあるわけでございます。一般的に申し上げまして、経営規模の零細あるいは生産性の向上の立ちおくれ、こういうことから由来をしておるわけでありますが、一層、構造改善、あわせまして技術の高度化を進める必要がある、それによりまして生産コストの低減が求められておるわけであります。  特に技術研究の担い手につきましては、従来国が主として御担当をいただきまして、県なりあるいはその他の試験研究機関が実施をしてまいったわけでございますが、近年特にバイオテクノロジー等の先端技術の進展が極めて著しいわけでございます。農業分野におきましても、この技術を利用いたしました生産性の向上の可能性が現実のものとして出てくるのではなかろうか、こういうふうに実は考えるわけであります。  御承知のように、いろいろマスコミ等にも報道されておりますように、民間でもこの農業分野におきます先端技術の開発につきまして大変な関心の高まりが見えてきておりますし、また欧米におきましても、日本をはるかに上回ります研究開発が進められてまいっております。「種子を制する者は世界を制する」という言葉がありますように、大変な世界的な競争の時代になってきておる、こういうふうに考えるわけであります。  これからの研究開発につきましては、従来のように官によります研究開発だけではなくて、座なり学なり官が一体となりました、機能の特色を生かした国全体の取り組みがどうしても必要であろう、こういうふうに考えるわけでございます。  特に農林水産業におきます先端技術の開発に当たりましては、生物が持っております多様な機能と関連をするわけでございますので、極めて広範かつ高度な試験研究が必要だ、こういうふうに考えておるわけであります。したがいまして、工業製品と比べますと、リスクにおきましてもあるいは時間におきましても大変困難な問題を抱えておりますのが現状でございます。これに民間がさらに積極的に取り組みを進めてまいりますためには、従来続けられております国の基礎研究の公開は従来どおり続けていただけるわけでございますが、さらに、本法案にございますような資金の援助なりあるいは共同研究なり、あるいは遺伝資源の提供なりあるいは情報の適時適確な提供なりが極めて重要な問題だ、こういうふうに考えておるわけでございます。  私ども系統農協といたしましても、この新しい技術に対して若干の挑戦を現在しておるわけでございます。既に県の段階では無病苦、ウイルスフリーの苗の生産増殖に取り組んでおりまして、主として野菜関係でございますが、相当数の経済連あるいは県と共同によります第三セクターで実施をしておるところでございます。特に最近の動向といたしまして、北海道あるいは長野あるいは鹿児島等におきまして組織培養によります地域特産物の新しい開発に着手をしておるところでございます。また、市町村の農協段階あるいは農協の中の生産組合の段階におきましても、花を中心にいたしましてイチゴあるいは長芋等のウイルスフリー苗の生産に現在努めておりまして、農家にそれぞれの寄与をしておるような状況でございます。  この法案が成立をいたしますと、地域の新しい技術が一層進められてまいる、こういうことが考えられるわけでございますが、私ども系統農協の機能なりあるいは技術の水準からいいまして、基礎的な研究が大変現在弱いわけでございます。これにつきましては、一層国なり県の試験研究機関の強化をお願いをする次第でございます。  次に、農業機械化の促進業務についてでございます。  今日まで農業機械化が進めてまいりました労働生産性の向上等が、我が国の農業の発展に極めて大きな貢献をしてきたことは御承知のとおりでございます。今後とも農業の生産性の向上を図りますためには、生産コストの低減が課題でございますが、このためには農業の機械化をさらに一層進めることが重要であると考えておるわけであります。  このようなもとで、農業機械化を一層促進いたしますために、従来農業機械化研究所が所管をしてまいりました農業機械の開発、改良研究、検査、鑑定等の業務の推進は、極めて基礎的な重要な事項と私どもは考えておるわけでございます。今回の機構の中でこの業務が引き継がれるわけでございますが、農業機械化促進法の趣旨に基づきまして、なお一層この機能の強化をお願いをいたしたい、こういうふうに考えるわけでございます。  最後に、新しい機構の運営についてでございます。この機構の運営が、本来の趣旨、目的に沿い適正になされますよう、特に重要事項の審議をいたします評議員会等の設置が法案にあるわけでございますが、こういう民間人の活用に当たりましては、農林漁業者の意向が十分配慮されるような人選を希望する次第でございます。  以上、極めて要点でございますが、終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  96. 大石千八

    大石委員長 ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。
  97. 吉田文彦

    ○吉田参考人 ただいま御紹介いただきました吉田でございます。  私は、現在の会社に入社以来、ずっと研究開発の業務に携わっておるものでございます。私の所属しております会社はしょうゆ製造業をしておりまして、大正六年に設立をされました。自来、しょうゆを初めとして、現在はトマト製品でございますとか酒類でございますとか、あるいは食品でございますとか、そういうものを製造販売しているわけでございますけれども、やはり現在においてもしょうゆが私どもの主力製品となっておりまして、私どもの生産量は全国の生産量の約三〇%ぐらいを占めるようなわけでございます。  翻りまして、現在、バイオテクノロジーという言葉がいろいろ使われていることはもう御承知のことでございますけれども、これは結局、生体の機能を利用して有用な生産物をつくって、これを用いて人類の福祉に貢献するのだ、そういうふうな定義がされております。  よく考えてみますと、農業はまさにこのバイオテクノロジーの基本でございます。それから、古来から日本の伝統食品と申しますかそういうもの、例えばみそでございますとかしょうゆでございますとか酒でございますとかあるいは納豆、そういったものはすべてこうじ菌とかあるいは特殊な細菌の機能を巧みに利用した伝統食品であることは皆様御承知のとおりでございます。  さらに、終戦後に至りまして、これは農業とは関係ございませんけれども、抗生物質とか、あるいは食品産業におけるアミノ酸発酵とか、そういうものはすべて微生物の機能を利用した産業でございまして、特にアミノ酸工業においては、この技術は日本は世界に冠たるものを持っておるわけでございます。  しかしながら、現在、この法案にも盛られておりますようなバイオテクノロジーと申しますのは、いわゆる新しいバイオテクノロジーと申しましょうか、そういう言葉でございまして、例えば遺伝子組みかえでございますとか——この遺伝子組みかえの中には、組みかえDNAの仕事もございますし、あるいは細胞融合、あるいは畜産においては核移植のような仕事もございます。それから細胞培養でございますが、これには、例えば植物でございますと約培養とか胚培養、あるいは茎頂点培養とか組織培養といった技術がございます。また、その微生物の酵素あるいは微生物の機能を利用していく一つの操作のメカニズムといたしまして、バイオリアクターというものがございます。これは結局、微生物の酵素とか微生物そのものをある状態で固定化させて、それで反応して物をつくるというふうなことでございます。  こういうことで現在は進んでおりまして、近年その成果も出ていることは皆様御承知のとおりでございまして、例えば医薬品で申しますと、インシュリンとか人の成長ホルモン、そういったものが開発されつつあるのでございます。また植物におきましては、今申しましたような技術を利用してウイルスフリーの植物とか、あるいは野菜におきましては新品種とか、そういうものが出ておりますし、あるいはバイオリアクターを利用いたしますと、バイオリアクターによってでん粉から異性化糖をつくる、そういう技術も進んでおるわけでございます。  しかしながら、もっとよく考えてみますと、今申しましたニューバイオテクノロジーという技術は、まだほんの緒についたばかりでございまして、まだまだ問題がたくさんあるわけでございます。例えて申しますと、組みかえDNAの操作でもっていろいろな生産物をつくるということでございますけれども、これにも大変問題がございます。何でもかんでもこの技術を使えばできるわけではございません。端的に言いますと、例えばたんぱくをつくるにしても、やはりそこにはイングルーディングボディーというような問題がございまして、菌体の中ではつくるけれどもなかなか外へ出してくれないとか、いろいろな技術がございます。  そういうことでございまして、我々が一生懸命やっても、あるいは実際の、いわゆるニューバイオテクノロジーというのが、自由にその技術をこなし、あるいはその技術自体が我々人間の幸福につながるには、やはりこれは二十一世紀ぐらいにかかるのではないか、そう考えているわけでございまして、その中におきましても、我々民間企業においては、やはりそれに対応して基本の技術というものをもっと確固としておかなければならない、そういうふうに感じるわけでございます。  最近、当社におきましては、農水省との共同研究によりましてかんきつ類の細胞融合に成功いたしまして、これを細胞融合をやり、それを培養し、あるいはそれを分化する、そういう基本的な技術を確立したわけでございます。これはまだ、このものはどういうものがとれて、どういう実がなってどういうものになるかということはもちろん全くわかりませんけれども、ただ、そういうミカンという、かんきつ類というものの細胞融合ができる、その基本技術ができたということは、私はやはりそれだけの意味があることだと思っております。将来、これにつきましては、一体どういうものをやろうかということを、さらに共同研究を重ねていくわけでございます。  ただ、この研究にいたしましても、我々といたしましては割合難しい技術が非常に短時間にできたわけでございますが、この研究過程におきましては、相当偶然性があったわけでございます。恐らく一般的に、いわゆる正統的にこの仕事をやるのなら、もっと時間がかかり、もっとお金がかかり、もっとリスクがあったろう、私はそういうふうに感じるわけでございます。  一般に、欧米におきましては基礎研究を重視し、基礎研究を中心とした政府主導の積極的な研究投資が行われておると聞いております。民間の知恵とか活力を生かして、政府と民間が一緒になってオリジナリティーの高いものを出そうという努力が欧米ではされているわけでございます。これに対しまして日本では、会社の規模も小さいわけでございますが、基礎研究にかけるお金が非常に少ない、あるいは、同じような研究を同じような会社でやっておる、そういうことが多々あるわけでございます。そういう意味で、各社がお互いに競争し合うということは、これは企業努力、企業姿勢というものが必要でございますけれども、この際、やはり共同研究とか共同開発という考え方がその研究のリスクを少なくすることでございますし、それからさらに開発のスピードが上がるということで、こういうことも重要なことではないかと思うわけでございます。  また、中小企業におきましては、非常にすぐれたアイデアを持ち、すぐれた活力のある会社がたくさんあると存じます。これらのアイデアを実行に移すためには、やはり他の会社と共同するなり、あるいは政府がそれを積極的に援助するということも大変大事なことであると思います。  農水省におきましては、さきに研究組合制度というものがつくられておりまして、これによりまして、例えば膜の技術でございますとか、食品工業におけるエクスクルーダーの技術の共同研究でございますとか、あるいはバイオリアクターの共同研究組合でございますとか、そういったような組合をつくって、異種の企業がある研究テーマを一緒になってやろうという制度ができておりまして、これは私は大変結構なことだと思いますけれども、今回ここに提出されております法案は、その趣旨にのっとって、さらにそれを拡大強化して積極的にやろうというふうな気持ちが出ているように私は解釈をいたしまして、この法案はまことに時宜を得た措置ではないかと思うわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、ここに一、二御要望といいますか、御意見を申し上げさせていただきますと、RアンドD、いわゆる研究開発というものはお金だけではございませんで、やはりそこには、何をやるかとか、そういうニーズとかシーズというものを把握できるような機会を持つということ、これがやはり非常に大事なことではないかと思います。もちろん、テーマの選定というものは企業の仕事ではございますけれども、さらにこれを能率よく成果を上げていくためには、何らかそのようなシステムがあればよいなというふうに感じるわけでございます。  それから、この新しいバイオの研究につきましては、非常にリスクとそれからコストがかかるものでございます。今申しましたとおり、非常に困難な仕事でございますが、これの成果を上げるのは、結局お金ではございません。人でございます。ですから、この点において、この研究はお金だけではなく、人材育成ということが非常に大切であると思います。そういう点も考慮に入れていただければ、なおさら結構ではないか、そういうふうに感じる次第でございます。  以上でございます。
  98. 大石千八

    大石委員長 ありがとうございました。  次に、馬場参考人にお願いいたします。
  99. 馬場道夫

    ○馬場参考人 農業機械化研究所の理事長の馬場でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  このたび、農業機械化研究所を改組いたしまして生物系特定産業技術研究推進機構を設立をするということで、法案が今国会に提出されておるわけでございますけれども、私は、農業機械化研究所の立場におきまして若干の意見を申し述べたいと思います。  農業機械化研究所は、農業機械化の促進に資するため、農業機械の開発、改良研究と検査、鑑定等の業務を総合的かつ効率的に行い、その成果の普及を図ることを目的としておりまして、農業機械化研究に関する我が国唯一の公的機関でございます。  当研究所は、設立以来、稲作用機械の開発、特に田植え機、収穫機等の開発研究に中心的な役割を果たしてまいったわけでございます。その結果、今日の稲作機械化一貫体系の基礎をつくったものと考えております。さらに、機械化のおくれております畜産、園芸、畑作部門等につきましても、我が国の農業に適合した機械の開発、改良に努めてまいっております。また、農業情勢の変化に対応いたしまして、水田の汎用的利用の促進に資するために、転換畑におきます畑作用機械の開発等も努力をいたしまして、その一例といたしまして、大豆作の機械化等につきましても幾つかの成果を得ておるわけでございます。  この間、農業機械化の進展とともに顕在化いたしました安全性の問題あるいは耐久性の問題に対処するための試験研究等も努力をしておるわけでございます。安全性の問題は、単にトラクターの転倒等によります人身事故だけではなくて、騒音や振動等による健康障害を含めました人間工学的な研究も行っておるわけでございます。その他、省エネルギーあるいは未利用資源の活用に関する研究等、個別企業ではなかなか対応しがたい基礎的な研究部門の充実に努めてまいっておるわけでございます。  このように、当研究所は、農業及び農政の動向に対応しながら、長期的視点に立ちまして研究を推進することによりまして、我が国農業の近代化、生産性の向上、農業生産の維持拡大、あるいは重労働からの解放なり就業機会の増大によります農家所得の増大等に一定の役割を果たしてまいったものと考えております。  我が国農業をめぐります内外の環境は、極めて厳しいものがございます。農業生産の再編成、生産性の一層の向上、特に低コスト化等が強く要請をされておるわけでございまして、農業経営におきます農業機械コストの低減等も大きな課題となっております。私どもの研究所におきましても、このような観点から、地方の保全のための機械の研究であるとか、あるいは高速田植え機、汎用コンバイン等の開発、あるいは傾斜地用の管理機械の開発、その他いろいろございますけれども、そのような機械の開発によりましてこのような課題に取り組んでおるわけでございます。  今後さらに、安全性、耐久性、汎用性にすぐれた高性能機械の開発研究を進めることによりまして、我が国農業の体質を強くするための合理的な機械化技術体系を創出するということが私どもの大きな課題ではなかろうかというように考えております。このために、バイオテクノロジー、作物栽培その他の農業技術の進展、あるいはメカトロニクス、新素材等の工学的な先端技術の導入等、将来の技術革新の動向に対応した試験研究の充実を図ることが必要であると考えております。  農業機械の開発は、申し上げるまでもなく作物、土壌、家畜等に関する農業技術と工業技術が結びついてできているものでございます。このため、長期にわたる広範囲の基礎的な研究の積み重ねが必要でございます。このような基礎的な研究を民間企業に期待をすることはなかなか困難でございまして、西欧先進諸国の例を見ましても公的な機関が担当をいたしておるわけでございます。もとより、この基礎的研究の成果は、民間企業によりまして商品化されて初めて農業者の利用に供されることでございます。したがいまして、民間企業との適切な協力、分担関係が不可欠なことは申し上げるまでもございません。  検査、鑑定の業務についてでございますが、型式検査は、農業機械化促進法に基づきまして、農林水産大臣の定める機種につきまして性能、構造、耐久性、操作の難易等について行うものでございまして、通常の商品検査とは異なりまして、いわば性能テストでございまして、その成績は農家の機種選定の際の指針となり、またメーカーの技術水準の向上に関する指導的な役割も果たしております。また、農用トラクターのOECDテスト実施機関としてアジアで唯一の指定機関となっております。このほか、安全鑑定その他の鑑定業務等を行うことによりまして、機械の安全性その他性能の向上に寄与しているわけでございます。これらの業務は、研究と一体的に行うことによりまして相互のレベルアップが可能となっておりまして、農業機械の改良、開発のため今後とも重要な役割を果たすものと考えております。  次に、御審議をいただいております本法案に関してでございますが、私といたしましては、新機構への移行が円滑に行われるようにするとともに、当研究所が行っております研究、検査等の業務が新機構発足後も適正かつ円滑に行われるようにしなければならないと考えているわけでございます。  法案によりますと、新機構は、従来農業機械化研究所が実施してまいりました業務を承継するということで、新機構の目的及び業務の中に、民間研究促進業務と並んで位置づけをされております。また、附則で農業機械化促進法の一部改正が行われることになっておりますが、この中でも新機構が従来どおりの位置づけをなされておるわけでございます。  また、新機構の財務、会計等につきましても、民間研究促進業務、農業機械化促進業務のそれぞれに勘定を設け、経理を区分することになっておりまして、農業機械化研究所に対する政府及び民間の出資は、そのまま新機構に引き継がれるというようなことになりまして、農業機械化促進業務の勘定で経理をされるということになっておるわけでございます。  このように、法人の形態は変更されるわけでございますが、農業機械化促進業務の性格には基本的な変化はないというように判断をいたしておるわけでございまして、農業機械化研究所の一切の権利義務を新機構が承継することにされておるわけでございます。  次に、職員についてでございますが、新機構に引き継がれまして、雇用が継続されることはもちろんでございますが、その承継に当たりましては、身分、処遇等に変化の生じないようにし、健全な労使関係のもとに、安心して業務に従事できるように配慮しなければならないというように考えておるわけでございます。  新機構におきます民間研究促進業務と農業機械化促進業務とでは、その対象とする範囲あるいは業務の性格等に差異はございますが、広い意味では農業機械化研究も生物系特定産業技術に含まれ得るものでございます。また、民間との連携という業務の進め方あるいは研究成果の相互利用等の面で、両業務は密接な関連を有するものでございますので、その円滑な運営によりまして、長期的にはメリットが大きいものと考えておるわけでございます。  最後に、我が国農業の振興のために、適切な農業機械化への誘導と、そのための機械化の研究業務は今後ともますます重要であると考えておるわけでございます。このために、新機構への移行後も、従来農業機械化研究所が果たしてまいりました機能が損なわれることなく、十分に発揮されるような適切な運営がなされることを希望するものでございます。  以上をもちまして、私の意見といたします。どうもありがとうございました。(拍手)
  100. 大石千八

    大石委員長 ありがとうございました。  最後に、伊藤参考人にお願いいたします。
  101. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 野村総合研究所の伊藤でございます。  私は、証券会社の子会社におりまして、主に株式市場の上場企業の先端技術分野でのそれぞれの技術の社会性とか経済性とか、それぞれの企業における技術の意義、経営的な意味を調べております。そういった立場で、私個人として、この法案を拝見しまして、これは非常に時宜を得た好ましい法案であろうと存じております。  御承知のように、先端技術の研究開発が一九七〇年代以降、日本だけではなくてアメリカ、ヨーロッパ各国で非常に活発化してきております。しかも研究開発の速度それ自体が非常に急速に進みつつあって、しかもそれぞれの先端技術のそれぞれの分野における研究開発のありようも、ただ個別分野ごとに進むというだけではなくて、例えばエレクトロニクスですとか新材料であるとかバイオテクノロジーであるとか、そういうそれぞれの違った分野の技術が枠を飛び越えるような形でそれぞれ影響し合いながら研究開発が進められておりまして、そういった動きは近年ますます激しくなっております。  例えば、日本でも今バイオテクノロジーの研究開発に従事しております企業は、業種で見てまいりますと、直接関係があってこれまで実績がありますような医薬品であるとか食品だけにとどまらなくて、例えば建築あるいはエンジニアリングであるとか紙パルプあるいは化学工業は言うに及ばず、エレクトロニクスに属する企業までバイオテクノロジーの研究開発に着手しております。言いかえれば、バイオテクノロジー一つとりましても、そういう研究開発体制の中でこれまでの常識を破るようなまるっきり新しい枠組みが必要だろうということを私自身痛感しております。  さらにまた、私どもの業務の範囲で先端技術のありようを世界各国と比較してまいりますと、とりわけ私自身が痛感しておりますことの一つに、米国とヨーロッパ諸国、イギリス、フランス、西ドイツあるいはその他の国と日本と今三つを横に並べて比較いたしますと、米国とヨーロッパとの間の研究開発の関係には、人ですとか共同研究の体制ですとか、あるいは研究の途中の段階の成果が別の場所に移されるとか、そういった密接さがありますが、日本は欧米の共同体制と比べていささかギャップがあるといいますか、言葉をあえてつけ加えれば格差があるような印象を非常に強く持っております。バイオテクノロジーに関して申しますと、日本の国内でかつて、八〇年代の初め以降、日本はバイオテクノロジーの研究におくれをとっているということが盛んに主張されましたが、その主張背景には例えば私の指摘したような事実が一つ大きくあるのだろうと私は思っております。  そういう意味で、今回提出されております法案はまさにそういう現状に即応した形で日本の産業と将来にとって非常に有効な役割を果たすだろうと期待しております。  以下、この法案の背景、いきさつについて、あるいは既にこの席で四人の参考人の方が申し述べられたことを繰り返すことになるかもしれませんが、四つの点を指摘させていただきたいと思います。  まず、いわゆる上場しております株式会社のみならず、中小企業あるいは農業協同組合のような法人も入ると思いますが、さらには個人経営の営農家までをも含めた民間セクター、そういうところの持っております研究開発の活力、フレキシビリティーと、一方では農水省を中心として過去百年にわたって営々と築いてこられた研究開発と普及の体制、研究の蓄積、そういった二つのものをこの法案が非常に適切な形でつなぎ合わせることができるのではないか。そうして、民間企業にとっては、これまでの政府、具体的には農水省あるいはその傘下の試験研究機関が持っておられます蓄積、あるいは最終的には国民の産業、福祉、食糧その他の安全保障につながるような場面での影響力、それを非常に効率よくつなげられるというふうに感じます。  二番目に、民間企業におきましては、これはバイオテクノロジーあるいは農林水産分野に限りませんけれども、本質的に営利機会を追求するのが使命でございます。そういった民間企業にとりまして、研究開発、とりわけ基礎にまでさかのぼったような長期の研究開発は、これまで非常に負担で、経営的にもそういった研究開発を取り上げることが経営を不安定にし、なかなか実施できなかった懸案のテーマであります。それがまた翻って、現状、日本のいわゆる意味でのバイオテクノロジーのおくれと言われ、評価されていることにもつながっているのだろうと思います。そういうわけで、そういった民間セクターの研究開発を、ここの法案の趣旨に盛られているような形で直接間接に支援を図り、それを最終的に産業につなげていくということは大変必要で、これまで民間産業側からは熱望されていたことだろうと考えます。  さらにまた、民間企業は、とりわけ農林水産関連の産業、例えば育種であるとか農薬であるとかそういった分野の技術開発には、最終的な市場性、製品に関して評価がともすれば困難であるというのが現状、実態であろうかと考えます。現にそういった評価あるいは市場性、普及といった面では、農水省傘下の各部局、試験研究機関が大きな役割を果たしておられます。そういう意味で、こういった法案に盛られているような新しい制度が、そういうこれまでの政府実績あるいは影響力と民間の意欲とをつなぐという意味でも大いに期待されるだろうと考えます。  三番目でございますが、一方、国の試験研究機関の中においては、これは公私さまざまな場面で言われていることでございますが、中堅研究者が非常に処遇あるいは研究体制の面で不自由を感じておられる、とりわけ民間の先端技術開発の場面と比べると、ある面で立ちおくれた条件、要素が多いことは否定できないという指摘が多々ございます。そういう意味で、国の試験研究機関傘下の研究者にとって、この法案によって民間との協力体制ができますことは、研究者にとって新しい機会を提供し、新しい活力といいますか、研究者のインセンティブ、動機を引き起こすことが期待できるという意味でも大いに期待されるだろうと考えます。  四番目でございますが、現在、大方の社会あるいは政治あるいは経済運営の考え方としまして、研究開発を通して技術力を高めるということは一つのコンセンサスになっておりますが、そういった場面で、当然のことですけれども、研究開発の資源を適正に効率よく使うということも必要不可欠な、考えなければならない側面だろうと思います。そういった意味でもこの制度は大いに有効に働いてくれるだろうと考えております。  以上でございます。(拍手)
  102. 大石千八

    大石委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  103. 大石千八

    大石委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  104. 太田誠一

    太田委員 参考人の皆様方におかれましては、まことに貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  順次お伺いをしてまいりますけれども、まず原田参考人とそれから伊藤参考人にお伺いいたします。  今お話しのように、欧米各国では官民挙げてバイオテクノロジーの開発が進められておりまして、世界的に技術開発競争が激化をしているというふうに聞くわけでありますけれども、今の欧米諸国における研究の実態と、それから我が国のバイオテクノロジー研究の現状について、どのように認識をしておられるか、今一通りのお話は伺いましたけれども、改めてお伺いしたいと思います。
  105. 原田宏

    ○原田参考人 お答え申し上げます。  私の経験あるいは個人的な感じから申しますと、特に今回の法案に関係の深い有用植物の分野でございますと、これはどの国でも、欧米先進国あるいは日本でも、微生物関係あるいは動物関係における新しいバイオテクノロジーの研究者に比べますと、かなり数が少ないのでございます。大体世界的に見ましても、どこで判断するか難しいのですけれども、恐らく微生物分野、動物分野の方に比べますと、植物分野の研究者というのは十分の一くらいだと思いますし、それが特に日本の場合はさらにその差が激しくて、恐らく五十対一くらいの数ではないかと私は思っております。  それで、大体こういうマンパワーから見ましても、この分野では日本はこのままではますます水をあけられていくのではないかと非常に心配しておりますので、先ほどほかの参考人からのお話もございましたが、これからの人材養成というのは非常に重要なことになってくるのではないかと思います。  それから、実際の研究でございますけれども、大体、分子生物学の進歩とともに、アメリカではスタートは日本に比べて少なくとも十年は早かったと私は思っております。それに続いてヨーロッパでも研究が活発に始まっておりまして、最近、全体的に見まして研究の差は縮まってきておるとは思いますけれども、初期にできました差を完全になくすまでにはまだまだ相当な努力が必要ではないかと考えております。これはやはり今までの日本の研究体制が、何か新しい問題が出てきたときに基礎の分野でそれにマッチできる柔軟性に欠けていたのではないかと思いますので、今後はそういう面に注意しつつ、何とか欧米との差を縮めていきたいというふうに考えている次第でございます。  以上です。
  106. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 私の承知しております限りで二つ指摘させていただきます。  一つは、いわゆる仕切りと申しますか境がない、フレキシビリティーがあるということでございます。これは例えばバイオテクノロジー、基礎に生物学という学問がございますけれども、ヨーロッパ、とりわけアメリカでは、そういった基礎の学問と応用技術開発との間に、例えば高等教育の教科書、カリキュラムから研究者の異動から研究テーマを実際に推進する場所、制度、人、そういった人のチームづくり、そういったところで非常に垣根が少のうございます。これが一点でございます。  それから、二番目でございますけれども、取り上げられる研究のテーマが非常に息の長い、一見奇妙とも考えられるような例えば飛躍した研究目標に的確な評価が与えられ、研究費、その他の支援がつけられて研究が進められ、そういったものが着実に成果を生んで実用技術として成功しつつあります。そういった面で日本はいささかおくれている、というよりは弱いという表現が当たっておると思いますけれども、そういった違いがあろうかと思います。  以上でございます。
  107. 太田誠一

    太田委員 これはおわかりになる範囲で、もしお答えになれなければ結構でございますけれども、今度の法案でできます研究推進機構ですけれども、ファンドが融資とか基本財産とか全部合わせても五十億ぐらいしかないわけでありますけれども、ほかのサイエンスの分野では非常に巨額の資金を投入してやらなければいけない分野が私は目につくわけでありますけれども、ファンドがこれで十分なんだろうか。今いろいろなことを期待しておられますけれども、それで対応できるのかなというふうな感じを私は実は持っておるわけでありますが、どなたか御感想をお持ちの方おられましたらば、ちょっとお答えをいただきたいのです。
  108. 原田宏

    ○原田参考人 では、私の私見をお答えさせていただきます。  もちろん全体的に眺めることは必要だと思いますけれども、この分野の重要性から考えますと、私としてはかなり遠慮をした額ではないかというふうに考えております。  それで、アメリカの民間会社なんかのこういう分野でのマンパワーあるいは資金の投入の程度を見ておりますと、わずかな会社でもこのぐらいの資金は使っているところがかなりございますので、この分野の重要性から見ましたら、私はもっと増額できればというふうな印象を受けております。
  109. 太田誠一

    太田委員 吉田参考人にお伺いをいたしますけれども我が国の農林漁業振興あるいは多様なニーズに応じた食糧の安定供給を図るための技術の高度化を図るためには、公的な機関のみではなくて、民間の研究活力に期待する面も多いと考えられるわけですけれども、その効果的な促進を図る上で、機構の業務運営などにおいてどのような配慮が必要とお考えでしょうか。
  110. 吉田文彦

    ○吉田参考人 もう一度御質問を反復いたしますと、今のようなファンドを出した場合に、民間として効率よく使うにはどういうことをやればいいか、こういうことでございますか。
  111. 太田誠一

    太田委員 そうです。
  112. 吉田文彦

    ○吉田参考人 前にもこの席でちょっと申しましたけれども、実はこれは私の会社でございますけれども、農水省のバイオリアクターの研究組合に入っております。そこには恐らく三十社ぐらいの企業が入っておりますけれども、それが十ぐらいのチームになりまして各テーマをやっておるわけでございます。例えば私どもでございますと、私どもが実際行った仕事を装置化をする場合に、我々と機械メーカーが組むとか、そういう形のシステムで今やっておるわけでございます。その場合に、私どもとしましては、例えば機械メーカーにいろいろな注文がつけられるわけでございます。また、機械メーカーの方もバイオの知識が相当得られるわけでございます。そういう点で、言葉は悪いですけれども、一緒のかまの飯を食ってそういう仕事をやるということは、ある程度は効率が上がるということが一つ。  それからもう一つ、研究の任務というのがお互いに決まっておるわけでございまして、お互いに切磋琢磨というのはちょっとオーバーな表現ですけれども、そういったお互いに刺激し合って仕事ができるということは、活力を生むのに非常に結構なことだ、そういうふうに私は感じております。
  113. 太田誠一

    太田委員 原田参考人と吉田参考人にまたお伺いをしたいのですが、バイオテクノロジーの研究開発について、これがいろいろな未知の分野を含むだけに、安全性の問題に留意する必要があるということが言われておるわけでありますけれども、具体的にはどのようなことを心配されるでしょうか。
  114. 原田宏

    ○原田参考人 お答え申し上げます。  先ほどもちょっと触れさせていただいたのでございますが、この分野で今問題になっています新しいバイオテクノロジーの技術、組みかえDNA技術は、特に今後の発展、それから利用の将来性というのが非常に大きいだけに、安全性について十分注意をしながらやっていく必要があると思います。  それで、今まで欧米先進国、それから我が国でもこの組みかえDNA実験の指針がちゃんとできてございまして、研究者はそれに従って実験を行っておりまして、組みかえDNA実験による事故というのは今までも一件も起こってございません。今後とも私はそういう事故が起こる心配はないと考えておりますが、何度も繰り返すようでございますけれども、今後この技術の利用性の大きさから考えまして、安全性には十分注意をしてやっていくべきだと思います。それで、その実験のデータが積み重ねられていけばいくほど安全性の判定がしやすくなってまいりまして、安全性の管理についての問題も少なくなっていくと思いますので、十分な実験結果、研究データが積み重ねられるまでは、今ございます実験指針に従って研究をやっていけば私は特に問題はないというふうに考えております。  以上です。
  115. 吉田文彦

    ○吉田参考人 ただいまの原田先生と私は大体同じでございますけれども、ただ、民間におきましては安全委員会等もつくりまして、その安全委員会に従ってこういうものをやるということをやるわけでございます。それはもちろん安全指針に基づいてやるわけでございまして、その安全の責任は社長が持っているわけでございます。  ですから、我々といたしましてもその点については十分注意してやらなければならないと思っておりますし、それから新しいものにつきましては科学技術庁の方の個別審査がございまして、個別審査によって学識経験者が安全であるというふうに認めたものを使うわけでございまして、民間といたしましてはそういうことについては十分過ぎるぐらい注意を払っておる、そういうことでございます。
  116. 太田誠一

    太田委員 鳴海参考人にお伺いしますけれども農林水産業振興を図る上で今後高度な技術の開発利用が重要であるわけですけれども、そのための試験研究に対する系統農協自身の取り組みの状況、そしてまた今後の方針といったものをお聞かせいただきたい。
  117. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 お答えいたします。  先ほどの意見開陳のときにも若干申し上げたわけでございますが、現在系統農協がやっておりますのは、野菜、果樹、花卉におきまして無病苦、ウイルスフリーの苗の増殖が主体でございます。  ただ、こういうふうに非常に技術革新の激しい時代でございますので、基礎研究等にどういうふうに取り組むかいろいろ問題があるわけでありますが、私どもの人的、技術的な力が必ずしも基礎技術まで進めないという事情もございます。この辺につきましては、国なり民間企業との共同研究あるいは委託研究等によりまして補完をしながらやってまいりたい。それからさらに、全国段階、県段階、農協段階、あるいは農家段階まで含めた作業の分担をしながら今後進めてまいりたい、こういうふうに考えてございます。この法案が成立をいたしました暁にはその辺の機運が一層高まってくるだろう、こういうふうに考えております。
  118. 太田誠一

    太田委員 馬場参考人にお伺いいたしますけれども、最近における農業機械化研究所の特筆すべき何か研究成果といったものがあったらばお聞かせをいただきたい。
  119. 馬場道夫

    ○馬場参考人 最近におきます研究成果でございますが、私どもが今非常に力を注いでおりますのは、農業機械の低コスト化と申しましょうか、そういう関係で力を注いでいるわけでございまして、これにはやはり丈夫な耐久性のある機械をつくるということ、それからもう一つは汎用的な機械をつくるということ、日本の場合、使用時間が非常に短いわけでございますので、いろいろな作物に適用できる、あるいはいろいろな作業に適用できる、そういう機械によりまして生産コストを下げていくということが大事であると思っておるわけでございます。  その一環といたしまして、一つは汎用のコンバインでございます。新しい機構によりまして、米、麦、大豆、ソバあるいはハト麦、そういう作物に汎用的にかなり高精度で適用できる機械を開発いたしまして、これは近くその機構が取り入れられて商品化されるはずでございます。  それからもう一つは田植え機もございます。これもやはり低コストにつながるものでございますけれども、非常に精度がよくて高能率で振動が少ない、これも開発のめどがつきまして、近く商品化される予定でございます。  それから、最近ではございませんけれども、まだ開発が済んでないわけでございますけれども、畑作物関係でキャベツ等の収穫労働が非常に大変でございます。これにつきましての収穫機の開発を現在行っておりまして、市場に出すためのキャベツの品質確保は九〇%ぐらいこれで何とかできるというめどをつけつつございます。  その他もう一つ、若干系統が違うわけでございますけれども、省エネ関係のものもかなりやっておりまして、実はライスセンターなりカントリーエレベーターに米が集まりまして、そこにもみ殻が大変たくさん出るわけでございます。それを原料といたしまして動力源なり熱源にして、そこのカントリーエレベーターなりライスセンターのエネルギーを賄うというような研究もやっておりまして、まだ実用化に若干時間がかかりますけれども、実験段階ではめどをつけつつございます。  その他各般の問題、あらゆる問題につきまして研究が進んでおるわけでございますが、いずれにいたしましても逐次世の中に発表してまいりたいと思っておるわけでございます。
  120. 太田誠一

    太田委員 鳴海参考人にお聞きをしたいのですけれども、今後の我が国の農業の発展を図るために農業機械化の促進業務に期待をされることは何かありますか。
  121. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 先ほど馬場参考人からいろいろ農業機械化研究所の業務につきましてあったわけでありますが、私が先ほど申し上げましたように、これからの水田並びに畑作を含めまして、農業機械の果たす生産コスト低減の役割は極めて大きいというふうに考えておるわけであります。馬場参考人から御説明のあったことに私は全く賛意を表し、一層御奮聞いただきたいと考えておるわけであります。
  122. 太田誠一

    太田委員 もう一つ、これは難しいテーマかもしれませんけれども、農業機械を多種多様なものを開発されておるわけですが、それを導入することによって節約される労働コストというものと新たにつけ加わるコストというものを比較してみて、さっきのキャベツの話なんかもそうですし、あるいは酪農なんかで飼料を攪拌する施設とか、従来人力でやっていたために経営全体としてはペイしていたものが機械を導入することによってペイしなくなるということがあるわけです。その辺のところも、機械そのものの経営上の評価というか総合的な観点もぜひお考えいただき、またシステムとして御研究をいただきますことが非常にいいのではないかと思っております。  以上で質問を終わらせていただきます。
  123. 大石千八

    大石委員長 次に、細谷昭雄君。
  124. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 本日は、法案審議の大変貴重な参考人の御意見ありがとうございました。私も若干皆さん方に順次質問をお願いしたいと思います。  第一に、生物系特定産業技術研究推進機構という大変長い法案が今回の我々の審議の対象になっているわけでありますが、いろいろな研究の中で特に安全性が問題になる分野というのは遺伝子組みかえの問題だけなのか、その点を原田参考人、吉田参考人、伊藤参考人のお三方から端的にお答え願いたいと思うわけであります。
  125. 原田宏

    ○原田参考人 お答えさせていただきます。  今御質問がございましたのを私が勘違いしていると申しわけございませんので、ちょっと繰り返させていただきますと、危険性が考えられるのは組みかえDNA実験だけかという御質問だったと思うのですが、私が先ほどから申し上げておりますように、組みかえDNA実験も、見通せるような危険性というのは全くないと考えております。組みかえDNA実験、これは先ほどから申し上げております実験指針の定義によりますと、試験管の中で酵素などを使ってDNAをいろいろ組みかえるのを言っておるわけでございますが、広い意味で言いますと、昔からやられている交配技術も遺伝子の組みかえでございますし、それから細胞融合なんかもそういうことになってくるわけでございます。恐らく交配などというのは何千年来やられてきておるわけでございますけれども、危険なものは一切出てきていないわけでございます。  それから、実際に植物細胞なり植物個体を扱っておりますと、何かいい遺伝子を入れようと思ってさんざん苦心して入れるのですけれども、なかなかそれを植物体の方が受け付けてくれないのが実情でございます。我々が今一番苦心しているところは、何とかしていい遺伝子を入れて、それを細胞の中で安定に維持させて、さらに種を通じて後代にまで遺伝するように何とかしたいと思って努力しているわけでございます。植物体の方はそういう異物を、これは生物全体の本能的なものだと思いますけれども、何とか排除するような機構が非常に巧みに働きますので、非常に苦心しているわけでございます。  結論的に申し上げますと、いろいろな実験データが積み重ねられてくればくるほど安全性の評価も容易になりますし、安全だということが認識されてくるのではないかと私は考えております。  以上でございます。
  126. 吉田文彦

    ○吉田参考人 原田参考人と大体同じでございますけれども、御承知のことだと思いますが、遺伝子組みかえをやる場合に、必ず宿主というもの、遺伝子を入れる側の微生物でございますが、これは現在、イー・コリ(大腸菌)とバチルス・ズプチュリス(枯草菌)、サッカロミセス・セレビシエ(酵母)と三つでございます。これはいずれも、例えばズブといいますのは納豆菌の一種でございますし、あるいはサッカロミセス・セレビシエというのはアルコール発酵に長年使われている、そういうような非常に安全なものを主体にしているわけでございます。そういうものを使おうということが文部省の実験指針に規定されております。  だから、我々はそれ以上のものを使うことはございません。あるいは特殊なものがあれば、これは前にも申しましたとおり、特別申請をやって、それで学識経験者の意見を聞いて使うというふうなシステムになっておるわけでございます。たしかけさの日経でございますけれども、さらに何か九つくらい宿主がふえているというようなことがございますが、いずれもそういうふうな形で十分検討をした上でやっているわけでございまして、特殊なものを使うということは全くございません。また、そういうものを使う医学的だとかそういういろいろな実験はございますけれども、これは御承知のとおり、そういう厳しい環境のもとに試験をするわけでございまして、そういう心配は全くないと思います。
  127. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私の質問がちょっと悪かったかもしれません。今回のこの機構で対象にする生物系の研究というのは、非常に広範なわけであります。決してDNAだけではございません。すべての科学分野、物理分野、化学分野、機械工学の部面まで含めまして、広範なわけであります。こういうふうに表題が「生物系」となっておりますので、極めて漠然としておるのですが、そういう点でたくさんの研究分野があるのだけれども、我々が心配するいわば危険なもの、危険という言い方は大変広く漠然としておりますけれども、とんでもない研究をされると困るという意味で、危険性のあるのはDNA遺伝子組みかえ研究だけなのかということを私はお聞きしているわけです。
  128. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 私の承知している限りでお答え申し上げます。私自身が危険性それ自体を評価したり判断する立場にはございませんが、承知しておる限りの範囲の知識で申し上げさせていただきます。  およそ技術には、在来の技術であろうとこれから実用化される先端技術であろうと、危険性も含めて、社会的に総合的にマイナスの効果があり得るということは避けられないことだろうと思います。  そういう枠組みの中で、バイオテクノロジー、特に組みかえDNA研究に関して申せば、むしろこれまでの常識、あるいは考えられるレベルでの危険性の議論をはるかにさかのぼったレベルの問題が検討されて議論され、それに対応するような制度が、現に日本でも、民間産業も含めて動いておると承知しております。そういう意味では、バイオテクノロジー全部を敷衍して、危険性も含めたマイナスのあり得る要因、これは私が承知しております民間産業の大企業を中心とした研究開発体制の中では、とりわけ最近、例えば過去十年間、非常に慎重になってきております。新しい製品とか新しい技術を実用化し市場化する前の段階で、単に商品の市場性とか収益性だけではなくて、それ以上にその商品の及ぼすマイナスの要因が徹底的に検討された上で発売なり市場化に踏み切られるのが常である、一般論ではこう申し上げられます。  以上でございます。
  129. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、これは私たち全く素人でありますのでそういう心配をするわけでありますが、例えば一般の雑誌その他で、クローンガエルだとか全く同じ生物が何千何百とすぐできそうだとかいうふうなことがよく伝えられるわけでございます。我々は専門家ではありませんので、そんなことを聞きますと非常に不安に思うわけであります。これはフランケンシュタイン・シンドロームだというふうに言われておるのですけれども、問題は、今伊藤先生からもお話がございましたとおり、いろいろな我々の未知の分野がどんどん開拓されていくと思います。  そこでお尋ねしたいことは、例えばこうした細胞融合とか遺伝子組みかえとかいうのは、現状では確かに危険がない、ガイドラインの中できちっとしておる、いわゆるガイドライン、大変立派なものができておるようであります。現状はそうでしょうが、実際の研究という展望からしますと、この分野の研究というのが一体どういう速度で進んでいくのか、専門家の皆さん方は現在どう予見されておるのか。確かにこの研究というものが、将来の食糧保障という点、いろいろな点ですばらしい発展をするだろうということはよく言われるのですが、具体的にはどういう分野でどこら辺までいくという予見というのは、私は余り聞いておらないわけであります。この機会に、専門家の立場から、原田先生と吉田先生と伊藤先生から、そういう予見を含めてで結構でありますので、お話し願いたい、こう思います。
  130. 原田宏

    ○原田参考人 それでは私の私見を申し上げさせていただきます。  ただいまの御質問の中で、私が考えまして今後生物学の進歩の中で一番問題となってくると思いますのは、今クローン植物とかクローン動物という御発言がございましたけれども、結局それは何を意味しているかといいますと、分化ということなんですね。分化と申しますのはいろいろなレベルで起こるのですけれども一つの細胞から葉も茎も花もつく植物ができてくるというようなことでございます。例えば動物の場合ですと、受精卵からカエルとか何かができてくるということでございますけれども、確かに現代の生物学で一番の問題点は、そういう分化のメカニズムを解明することだと思うわけです。それが本当に解明されますと、例えば今我々が一番苦労しております、一つの細胞から、考えるように容易に植物体をつくっていくようなことももっともっと容易になるわけであります。  一つだけ注意しなければならないと私が考えておりますのは、きょうのこの法案からは全く除外されている分野でありますけれども、人間にさわるということでございまして、今、雑誌とか新聞とかにいろいろ取り上げられている問題の多くは人間に関することでございます。これは私は別にしておきたいと思うのでございますけれども、植物分野に限りますと、この分化のメカニズムがわかっていろいろなことができるようになってきましても、例えばクローン植物ができても注意しなければならないことはあるわけですね。例えば非常に収量の高いよい品質の優良植物が一つできたといたしましても、そればかりふやしますと、今度は何か一つの病気がはやりましたときに全滅するおそれがありますので、そういうことには注意しなければなりませんけれども、とにかくその土地とか気候に適した植物を性質を変えないで大量にふやせるということは非常に有用なことですので、人間を除きましてこの分化の研究は大いに進めたいと思うのです。  私の感じとしましては、まだまだなかなか障壁が多くて、二十年かかるか三十年かかるか百年かかるか、ちょっとその見通しがきかないくらい難しい問題を含んでいるのではないかと考えております。  以上です。
  131. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 時間がございませんので、吉田先生と伊藤先生には大変申しわけございませんが、次の質問に入らせていただきたいと思います。  生物研究、特に遺伝子組みかえという観点からいたしますと、未知の世界であるがゆえに私たちは非常に不安を感ずるわけでありますが、そういう不安な研究でございますのでガイドラインを設けておる、ガイドラインが設けられておるので研究者はそれに従ってやるのだ、そこまではそうだろうなと思うのです。問題は、それを研究者が守るか守らないかという良心の問題、こういう問題が一つあるわけです。  そこで、この法律がやろうとしておりますのは、そういう民間研究に対していわば無利子の金を貸そうということなんです。これは絶対安全なんだという前提に立って貸すということでありますが、それならばそれらの民間の研究がどういう研究を具体的にやっておるのかということを常時把握しなければいけないという、この安全性のチェックの問題がございます。確かにガイドラインはあるけれども、チェックをどうするのか。この安全性のチェックという点で情報公開を私どもは要求しておるわけです。ところが、情報公開を要求しますと、恐らくこの法案で言うところの私も助成してもらいたいという民間団体、民間企業は出てこないだろう、希望しないだろうという大変問題を含んだことになってきたわけであります。  そこで、この安全性ということと情報を把握する、公開までいかなくても、どこまでどうするかという仕組み、これについてひとつ先生方から御意見をお伺いしたいと思います。特に伊藤先生、たくさんあるいろいろな民間の企業の実態を御存じだと思いますので、まず伊藤先生からお願いしたいと思います。
  132. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 御質問の趣旨に関して私直接当事者ではございませんものですから、あくまでも推測を含めて一つの個人的な考え方として意見を申し述べさせていただきます。  御指摘の側面に関しては、少なくとも組みかえDNA実験に関しては、現在の社会的コンセンサスの中で安全性をチェックするために必要な体制は十分機能していると考えております。具体的には、民間産業のその種の実験は経団連のライフサイエンス委員会というところが取りまとめまして、科学技術会議の下部機構に逐一その実験の必要なあらましを提出して、そこでの吟味を経て、さらにその吟味の結果を個々の申請にフィードバックされるという形になっておろうかと存じております。  現在、ガイドラインは緩和されつつあるというふうな表現がマスコミの一般的な書きおろしてございますけれども、私はそうは思っておりません。遺伝子組みかえに関する危険性に関して最も危険であるかもしれないと考えられておりますものは、依然として、当初八〇年初めごろに考えられていた危険性を担保する、安全性を確保するための枠組みがそのまま生きております。そういう意味では決して緩和されているのではなくて、むしろ危険なものと危険でないものとが徐々に実験的に明らかになり、明らかになった趣旨に従って振り分けられているというふうに理解しております。そういう意味で、今後あるいは新しい事情、事態が出てくればそれに対応できるような、そういう体制自体が既に日本の国内で動いている、私はそう信じております。  直接お答えになりませんかもしれませんけれども、以上、一例として申し述べさせていただきます。
  133. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 吉田先生にお願いしたいのですが、今と同様の趣旨でございます。例えばキッコーマンの先生の研究所の助成をしよう、それで助成をした。そして、現在の研究のいろいろな過程、その過程をこれはもう本当に安全を守っているのかどうかというような観点で、私なら私がどうしてもこれは明らかにしてもらいたい、こう言った場合、これは当然企業秘密とぶつかる、衝突するわけです。そういう点で、これはある程度情報公開をしてほしいという問題になった場合、民間企業としては、こういう機構に対してやはり助成なんかもうたくさんだ、御免だというふうにお断りするのか、そこら辺の企業としての考え方、これは私見で結構でございますので、その点どういうふうにお考えでしょうか。
  134. 吉田文彦

    ○吉田参考人 これはあくまで会社ではございませんで、私個人の考え方でございますが、私どもがとっておる方法は、例えば何をやるかということ、どういう仕組みでやるか、これは既に今決められた指針に基づいてやるわけでございます。ですから、例えば仮に非常に発育のいい菌があった、そこへある遺伝子をぶち込めば非常に発育もいいし早く生産が上がるだろう、だからこれをやろうじゃないか、そういうふうな観点は私どもとっておりません。私個人も、たとえ私どもの会社の研究員がそういうことをやろうということであっても、私はやはりそれはやるべきではない、はっきりしたものをやるべきだと思います。  それから、企業秘密とおっしゃいますけれども、多くのものは学会とかそういうところで発表する機会がございます、我々もそういう中で出せるものは出しておるわけでございまして、それから、もちろん共同研究のこともございますけれども、これも、企業秘密である、お互いに秘密を持ってやろうということもありますけれども、それにしても、今の例えば組みかえ実験の仕事をやるについて、先ほど申しましたようなそういう観点で新しいものをやろう、そういうものは私としては許せないんじゃないか、そういうふうに思います。やはり私どもの今指針としてある宿主を使ってそういうことをする、そういうふうなことが私は今大事なことじゃないかと思います。ですから、たとえ今申しました例にしましても、そういうことはやるべきではないと私は個人的には思います。
  135. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 最後に馬場参考人にお願いしたいと思います。  先ほど、馬場さんの農業機械化の今の研究業務というものを非常に大事にしていきたいという御希望がございましたが、具体的にこれは名称も変わりますし、新たな機能も加わるわけでありますが、それだけにかなり運営上はいろいろな問題が出てくるのじゃないか、こんなふうに思っておるわけであります。  特に私自身は、これは危惧でございますが、その危惧について馬場参考人はどういうふうにお考えなのか、ひとつ考え方を明らかにしていただきたいと思うのです。ともすれば、これは合理化という観点農業機械化研究というのが将来だんだんにしぼんでくるということになるのではないかという危惧を持っておるわけです。ひさしを貸して母屋をとられるというようなこともよくありますので、そんなことはないのかという問題、これは私の危惧でございますが、現在理事長として、先ほどはそうじゃないと強調されておりましたが、その点。  それから、当然これは新たな融資が加わるわけでありますし、人的な問題、これもあろうかと思うのです。それから本部ないしは支所みたいなそういったものもあろうかと思うのです。そういう面で、先ほどいろいろなことを継承する、今までの職員の身分、こういったものについても完全に保障する、継承するというふうなお話もございましたが、この運営について、本部を一体どこに置くという御希望なのか、そしてそういう二つの機能というものを全うするための組織運営というものをどういうふうに御希望なのか、その点を今後の審議の参考にしたい、こういうふうに思いますので、お知らせ願いたいと思うのです。
  136. 馬場道夫

    ○馬場参考人 先ほども意見で申し上げたわけでございますけれども、農業機械化の研究につきましては、私は今後の日本の農業の近代化なりあるいは基盤を強くするという面で一層大事なことではなかろうかというふうに思うわけでございます。そこで、今度新しい機構になるわけでございますけれども、そういうことで御審議をお願いしておるわけでございます。  そのことによって私どもの農業機械化の、今までやっております本来の機能が損なわれてはならない、また、そのための体制は確保していただかなければならないというように私どもは思っているわけでございまして、法案の制度の中でも、目的なり業務の中にちゃんとした位置づけをなされておりますし、また、農業機械化促進法におきましても、農業機械化政策の中で、新しい機構なりが私どもの今までの農業機械化研究所と同じような位置づけをなされております。そういう意味で、私どもこの新機構の中で制度的には保障されているんであろうというように思うわけでございまして、運用面で極力やはりこれから大事にしていただきたいというように思うわけでございます。そういう意味におきまして、私どもは、機械化研究に必要な要員はやはり確保していただくということが大事であろうと思うわけでございます。  それから、新業務なり、人員配置でございますけれども、新機構になるわけでございまして、双方、業務の性格等には差はございますが、管理部門と申しましょうか、総務部門あるいは企画部門等につきましてはかなり共通部面があるわけでございます。また、そういう面のメリットも、新しく一緒にするからには当然なければならないわけでございます。そういう面は、私どもの方といたしましても、若干の人員の調整といいますか、そういうものは必要ではなかろうかというように考えておるわけでございます。ただ、現在の研究なり検査等に従事しております職員につきましては、将来いろいろ技術の進歩等がございますので、その段階はその段階でまたいろいろなことが考えられるわけでございますけれども、少なくとも、私どもは基本的には現在の人間はやはり必要な数であろうと思うわけでございます。  それから、本部の問題でございますけれども、これはこの法案が成立をいたしますと、準備委員会の方で正式にはお決めになるわけでございますが、私どもは大宮で今機械化研究を行っておるわけでございますけれども、立派な施設なり土地なりあるいは人員なり、そういうものを擁しておるわけでございまして、私どもの希望といたしましては、大宮に本部を置いていただきたいという希望を持っておるわけでございます。ただ、新しい民間支援業務の方は、性格上、東京に全くなくてもいいかといいますと、これもやはり業務の運営上必要であろうかと思うわけでございますので、その辺も十分御配慮いただきながら御検討をいただきたいと思うわけでございます。
  137. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それから、馬場参考人にさらに内部のこれからの運営について、例えば先ほどから問題になっておりました安全性のチェックの問題、どこの企業に、どういう研究に対して、どう助成するか、これは理事会なり評議員会ということの手に余る問題じゃないか、こんなふうに思うわけですよ。そこで、当然内規で、法律には書いておりませんので、これは機構の内部で理事長のもとにそういう機構を設ける必要があるんじゃないかというふうに我々は考えているわけです。  そういう審査機関について、現在まだ法律が生まれておらない現状で大変答えにくいとは思うのですけれども、これは個人的に理事長として、もしそういう機構ができた場合に、今言った安全性についてどういうふうな審査をされた方がいいとお思いなのか、そこら辺、もしお考えがありましたら参考にお聞かせ願いたい、こんなふうに思います。
  138. 馬場道夫

    ○馬場参考人 私、現在の農業機械化研究所の理事長でございまして、新機構の新しい民間支援業務の方につきましてはお答えする立場にないわけでございますけれども、全く素人なりでございますが、いずれにいたしましても、融資、出資等につきましては何らかの審査機関が要るのであろうというふうに私は考えておりますけれども、これはまたいろいろお役所の方で御検討いただくことだと思います。
  139. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 わかりました。  終わります。ありがとうございました。
  140. 大石千八

    大石委員長 日野市朗君。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  141. 日野市朗

    ○日野委員 まず原田先生に伺いますが、先生の肩書を読ませていただきますと「筑波大学生物科学系教授」というふうに記載がございます。それで、用語の問題でまことに恐縮なんですが、生物科学系といった場合、これは大体生物科学の系統ということがよくわかるのですが、実は、今問題になっておりますこの法律のネーミングでございますね。これによりますと、非常にわかりにくいのでございます。「生物系特定産業技術」、こういうふうに書いてあるわけでございますね。これから先生はどんなイメージをお持ちになるかということをまずちょっと伺いたいのです。  といいますのは、この機構には、今問題になっておりましたように農業機械化研究所も入ってまいります。そっちの業務も含まれるわけですので、私なんか考えてみまして、こういう農業機械の系統が入るというのも、これも生物系特定産業技術と言えるのかな、かなり無理した解釈をしないと無理なのではなかろうかという感想なんか持つのですが、先生、生物科学系教授という肩書をお持ちになっておられますので、ついでと申してはあれでございますが、どういうイメージをお持ちになりますか、ちょっと伺いたいと思います。
  142. 原田宏

    ○原田参考人 お答えさせていただきます。  私は、確かに筑波大学の生物科学系の教授でございますので、筑波大学で言っております生物科学系ということについては、どういう範囲とか、どういうことをやっているとかということは幾らでも御説明できると思うのでございますが、この法案に、生物系でございますか、そういう名前がついておりますのは、私はこの法案の草案づくりとかなんかには全くタッチも何もいたしておりませんので何ともお答えしにくいわけでございます。けれども、想像する範囲では、生物に関係するところのものというふうに私は理解しておりますけれども、これはちょっと私にはお答えしかねる問題じゃないかと思います。
  143. 日野市朗

    ○日野委員 同じ質問になりますが、馬場参考人、こういう名前の機構で現在やっておられる業務が包括されるということについての違和感はお持ちになりませんでしょうか。
  144. 馬場道夫

    ○馬場参考人 名称の問題でございますけれども、私どもも役所の方からいろいろ御説明を受けておりまして、農業機械化研究もこの中に入るということでございますので安心をしているわけでございますが、違和感がないと言えばうそになるわけでございますけれども、ただ、大変いろいろ御苦労なさってつけられた名前であろうと思います。よく読めば、またよくわかることもあるわけでございますが、ただ、私の方も、農業機械化研究所なり、あるいはまた海外ではIAMという形で広く知れわたっております。したがいまして、国内はともかくといたしまして、海外に説明するのは大変難しい問題でございますので、正式の名称はともかくといたしまして、農業機械化部門につきましては何らかそういう略称なり、あるいは通常使う名称で、これは内部の運用上で結構だと思いますけれども、御検討いただければ幸いであるというふうに考えているわけでございます。
  145. 日野市朗

    ○日野委員 現在の農業機械化研究所、これは長い伝統をお持ちですし、国際的にもかなり認められた業績も大分上げておられる。学問的にもこれはかなり尊敬されるような仕事をしておられると思いますので、少なくとも同一性、つまり農業機械化研究所として、これは日本農業機械化研究所なんだなということがわかるような何かないとやはり困りますね。ぜひともそれは維持してもらうように、理事長にもこれは頑張ってもらわなければならぬと我々は思っておりますし、我々もそういう取り扱いを農水省の方にもするように要請をしたいと思っているところでございます。ネーミングのことで妙なところから入ってしまったのですが、私非常に気になったものですからちょっとお二人の御意見を伺わさせていただきました。  ところで、バイオテクノロジーという言葉はもう日本語としてもかなり熟しておりまして、もっと使いなれている人はバイオテクノロジーなんということは言わないでバイテクと言ってしまうわけですね。ですから、本来は横文字であっても日本の片仮名に置きかえられたというふうに私は思っているので、そういうところはもっとフランクに使ってもいいのだろうと思っております。  ところでそのバイオテクノロジーでございますが、バイオテクノロジーという場合に、その範囲は非常に広範なものに及ぶものであろうというふうに私考えております。そしてまた、非常に広範なものとしてとらえて、かなり学際的な研究も必要になってくるのだろうと思うのです。  この法案では、まず農林漁業、それから飲食料品製造業及びたばこ製造業、こういったものに関連する研究について支援をするということでございますね。それからあと政令でかなりのところまでその範囲を広げられるように読めるのですが、少なくとも農林漁業だとか食料品の製造だとかたばこの製造というようなことだけでバイオの範囲を限るというようなことは、バイオテクノロジーの生き生きとした研究ということにむしろ障害になるのではないか、もっと学際的な幅の広い研究というものが進められてしかるべきではないかというような考えを私持つわけでございます。それで原田参考人と吉田参考人に、私の今述べたことが当たっているかどうかということをひとつ御感想を伺いたいと思います。
  146. 原田宏

    ○原田参考人 では私見を述べさせていただきます。  私自身も、もちろんバイオテクノロジーという言葉がかなり広い範囲をカバーする言葉であって、かなり広い分野での研究推進が非常に重要であることは十分承知いたしておるつもりでございます。先ほどもほかの議員の先生から御質問がございましたが、この予定されております出資あるいは融資の金額から拝見いたしますと、かなり的を絞りませんと全く薄く広くということになりまして、民間の研究の発展の促進という効果が非常に薄くなってしまうのではないかと思いますので、あの金額から考えますとこういう範囲ということになるのではないかと私は感じた次第です。  以上です。
  147. 吉田文彦

    ○吉田参考人 先生の御意見はまことにもっともだと思いますけれども、先ほど私申しましたとおり、いわゆるバイオテクノロジーというのは生体の機能を利用してやるんだということになりますと、現在の農業あるいは現在の食品工業、これはすべて微生物とかそういうものを使えば皆なってくるわけでございまして、ただ法案に書いてある中で私が特に強調するのは、いわゆる新しいバイオテクノロジーについてであろう、その中で考えていけばいいんではないか、そういうふうに私は理解しております。
  148. 日野市朗

    ○日野委員 新しいバイオテクノロジーという概念は先ほど吉田参考人がお話しいただきましてよくわかったのですが、バイオテクノロジーで、例えば細胞を融合させる、オレタチというような植物新品種もできるということになりますね。そうすると、ある一定の限度まではこれは実験室内部で可能であろうというふうに思いますね。オレタチというのはどの程度まで実用性があるかということはわかりませんけれども、少なくとも橋渡しの植物としては非常に有用なものだろうと私理解して拝見させていただいたわけですが、ではあれがどのような土壌状況、どのような気象状況、こういうもので実用化されるかということになれば、これは当然土壌学であるとか気象学であるとか、そういった学問の分野にも及ぶわけでございまして、そういった、ハードにそこのところでとらえるのじゃなくて、その周辺のソフト部分というものがどうしても必要になってくるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  149. 吉田文彦

    ○吉田参考人 まことにごもっともでございます。私どもが今回やりましたのはいわゆるカラタチというかんきつ類とオレンジというかんきつ類、これはカラタチは御承知のように耐寒性でございます。ですから何かそういうものをくっつけてみて何とかならないか。それからもう一つは、かんきつ類の中でいわゆる細胞融合の実験が割合しやすい植物でございまして、そういうことであの技術を選んだ、あの技術を習得したわけでございます。  前にも申しましたとおり、これから農水省の方の果樹試験場の方と組みまして、これをいかに育てていくかとか、そういうことについては果樹試験場の方がずっと専門家でございますので、私どもはああいう苗をつくった、これからそれをどういうふうに育ててどういうふうに実をならせるか、あるいはまだ実がなるか花が咲くかわかりませんけれども、どういうような条件でやればあれが育つかということは農水省の方へお願いしてあるわけでございます。  ただ、私どもがやらなければならないのは、そういう技術を使っていわゆる先生のおっしゃったような今後有用な果物、そういう有用な果物の作成にあの手法、ああいう技術が使えるか、使おう、そういう研究をやっておるわけでございまして、それが成功するにはまだ相当時間がかかるわけでございますけれども、ただ、そういう世界でも初めてかんきつ類でああいうことができたということは私ども大変自負しているわけでございます。
  150. 日野市朗

    ○日野委員 ちょっと伊藤参考人の御意見も伺いたいのでございますが、いわゆるバイオテクノロジー関係のベンチャービジネスというものがございますね。これはお互いに共通のベンチャービジネスに対する理解はあろうかと思いますけれども、ベンチャービジネスというのはまさにハイテクノロジーを開発しようということで、それをビジネスの世界に持ち込んでいるわけですが、私見ているところで、ベンチャービジネスそのものがそう多くの成功を上げているというふうにはちょっと言いにくい状況ではないかと思うのです。この法案が考えているところ、先ほど吉田参考人もおっしゃいましたが、かなりハイテクノロジーのところで物事を進めようとしている。しかしそれだけではこのバイオテクノロジーの健全な進展というか発展、そういうことには一つの壁が出てくるのではなかろうか。私がさっき言いましたソフトの部分をもっとちゃんとやっておかなければいけないのではなかろうかという感想を持つのでございますが、いかがでございましょうか。
  151. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 承知している限りでお答え申し上げます。  ベンチャービジネスに関しまして巷間言われておりますことあるいはまたベンチャービジネスに関する現状、日本の施策と、世界を広く見渡して例えばアメリカにおける典型的なベンチャービジネス、バイオテクノロジー分野でのベンチャービジネスと多少風土的な違いがあろうかと存じます。  その議論はさておきまして、今私の理解しております。あるいはまた御質問の趣旨に沿った形でのベンチャービジネスを敷衍しますと、そういった技術を一つの柱にしまして、小企業あるいは全く基盤のないところから一つの企業を起こして、それが将来大きく育っていく可能性を秘めている、そういうものは何も昨今だけではございませんで、例えば明治維新以降幾つも輩出いたしております。ただ、昨今、たまたま先端技術の脚光を浴びる社会的な、世界的な風潮の中で、ベンチャービジネスも広く関心を呼び、政策的にも取り上げられているのだろうと思います。その中で、御質問の趣旨に沿ってお答え申し上げますと、ベンチャービジネスの条件というものには次のようなことがあろうかと思います。  研究開発それ自体が非常に大きくなってまいります。制度的にも充実し、基礎の研究から実用的な商品、製品の成熟、市場化まで、さまざまなセクター、産業が入り組んでまいります。従来であれば、特定の一つだけの企業がそういう基礎研究から最終商品の市場化までを一貫して受け持つことができたようなイメージが、研究開発が広がってまいりますと、そういった全体の過程の中にいろいろな企業が組み合わさって一つの産業を形成するようになってまいります。そういう場面でベンチャービジネスが役割を果たすことが期待されている。その意味では、まさに基礎研究のシーズと言われておりますアイデアないしは基本的な原理をある程度産業化技術につなげていくという場面でハイテクのベンチャービジネスの役割があろうかと思います。そういう企業が順調に発展していって、将来は大量生産も市場化も分担するようになるのか、あるいはまたベンチャービジネスが単に研究開発だけを受け持って、次から次から新しい基礎研究のシーズを実用化技術として生産する企業に渡していくようなことそれ自体をビジネスにするようになるのか。これは日本の風土の中において、日本政策とか、日本経営考え方、そのほかもろもろの社会環境の中で、さらに技術それぞれの分野で違ってまいるのだろうと考えております。  以上でございます。
  152. 日野市朗

    ○日野委員 要は、どのようなニーズをつかみ上げていくか、どのようなシーズをきちんと把握するかということが非常に大事なのだと思うのです。ハイテクノロジーでも同じことだと思いますが、特にバイオテクノロジーの場合、自分の求めていたもの以外のいろいろな、例えば変異を見つけ、それがどういうふうに利用できるかということを広範な目で見ていかなければならないものだろうと思います。  それで、原田参考人と吉田参考人に伺いたいのですが、バイオテクノロジーの場合、一つの目標をねらって研究開発を進めてきた、しかし思いがけないところにぽんと物事が出てくる、それを敏感にとらえていくようにするためには、かなり広範な研究体制、システムづくりができていなければならないのではなかろうかという感じがするのですが、いかがでございましょう。
  153. 原田宏

    ○原田参考人 お答えいたします。  ただいまの御質問で私が感じますことは、非常にユニークなアイデアが出てくる場合というのは、それまでに積み上げられましたいろいろな実験データ、試行錯誤の結果によって出てくるということが確かによくありますので、そういう場合にはある程度の研究者グループのマスが必要かとも思いますけれども、この法案で対象になっております分野では、かなり計画的と申しますか、はっきりした目標を持って実験を行えるという分野も多いと思いますので、先ほど申し上げましたように、大企業の研究所、中企業の研究所、小企業レベルにおいてそれぞれ特色を発揮したことができるのではないかと思います。  それで、この機構がよくファンクションすれば、いろいろ要請が出てきた場合に、複数の方が審査に当たることと思いますので、その辺のところは、これは具体性があるから選ぼう、これは将来性はもう一つはっきりしないけれども非常にユニークなのでというようなことで選択が行われると思いますので、必ずしもかなり大きい研究者のマスが必要な場合だけとは限らないと思っております。  以上です。
  154. 吉田文彦

    ○吉田参考人 私は、新発見というのは、マスよりもこういう新しい技術に取り組む人の資質だと思います。確かにおっしゃるとおりいろいろな現象がございますけれども、ある本を読みますとこれはこうなってこうなるよ、ずっといけば自明の理である、そういう一つの道がありますけれども、そういう道をずっと伝わっていくだけでは新しい発見はできないわけでございます。そこにいろいろな答えが出てくるわけでございまして、その答えをいろいろ考えながらやっていく、あるいはこういう植物ですとその状態を必ず観察するとか、研究に取り組むその人の考え方、これが非常に大事なことだと思います。
  155. 日野市朗

    ○日野委員 私もそれには賛成なのです。よく偶然性ということでペニシリンの発見などということが言われておりますね。別にフレミングのシャーレの中でペニシリンがおれはペニシリンだと叫んだわけでも何でもない。しかし、ちゃんと物を見る目を持っている人がそれを見れば、その菌の持っている特性がきちんとわかるというようなことでございますが、ある程度の層の広がりというものは必要なのではなかろうかと思います。  それで、小さな企業の特性というようなこともいろいろ先ほどから出ておりますけれども、例えばそういう小さな企業に融資をすることになって、小さな企業でやられた仕事に対する評価が全体のものにならないということがあるのではなかろうかと思うのです。先ほど企業秘密との関係なんかも出ておりましたけれども、そういう仕事が全体に広まって評価をされるというようなことは実際上可能であろうかどうかという点について、私もかなり疑問を持つのでございますけれども、この点いかがでございましょうか。企業人としての吉田参考人に伺いたいと思います。
  156. 吉田文彦

    ○吉田参考人 これはあくまで私の個人的な意見ですが、企業秘密ということは、確かに研究の場合はこういうものをやるのだというふうにやる場合もございます。それから、例えばあるシーズを検索するときにそれが一体どうなるかというので私どものところでもテーマとして挙げるもの、それからこういうことはおもしろいから少しやろうかというふうなことがあるわけでございますね。もちろん、それはコンペティターがありまして、コンペティターとの場合にはあるいはそういうことがあるかもしれませんけれども、今はそれよりも、どこの企業にいたしましても、そんな秘密を守らないでどんどん学会で発表したり、いろいろなケースがあるわけでございます。  ですから、例えば今、こういうベンチャーで小さいところで、企業秘密ということでなくて、逆にそういう小さい企業があって、非常にアイデアも豊富だし、活発に仕事をしているところであれば、当然そういうお金をこういうところへ出して政府がバックアップするか、あるいは共同開発者を見つけてさらにその技術を伸ばす、そういう方向がいいのじゃないか、私は個人的にはそう思っているわけでございます。
  157. 日野市朗

    ○日野委員 これは原田参考人に、特にバイオの範囲に限って伺いたいと思いますが、一つの研究が成功したとか失敗したとか、そういうことの評価というものはできるものでございますか。
  158. 原田宏

    ○原田参考人 かなり難しい御質問だと思いますけれども、私はできると思います。ただ、長い目で見なければわからないという場合もかなりあることは事実です。  今の法案で対象となっておりますこれは、どちらかといいますと本当の基礎研究のところはカバーせずに、それより先のところということになっておりますので、そういう面ではかなり評価はしやすいのではないかというふうに考えております。
  159. 日野市朗

    ○日野委員 その評価というのは、一応製品化されたという場合に成功と評価するのでしょうか。
  160. 原田宏

    ○原田参考人 私はどうしても自分の仕事の分野の方に目が行ってしまいますので、商品化という言葉は私の仕事のあれからいいますとなじまないのですけれども、例えば育種の場合ですと、優秀な品種ができた、いい系統ができたという場合には、それを商品化と申せばそういうことで評価できると思います。
  161. 日野市朗

    ○日野委員 農水省のなさった調査だと思いますが、バイオテクノロジーのいろいろな技術開発の項目、これを二十七項目挙げまして、それで大体八〇年代に実用化できるだろうというめどが立ったといいますか、そういうものについて十二点を挙げておられる。それから、これは九〇年代だろうという点については九点を挙げておられまして、あとの六点については、これはもう二十一世紀の問題というふうにずっと挙げておられるわけなんですが、こういうバイオのハイテクノロジーということになりますと、大体今までの技術とそれが実用化される技術とでもいいますか、大体二十年、三十年という長いタームが必要になってきていると思います。  バイオというのは、微生物を除けばある程度交配に時間がかかりますから、かなりの時間を要するのではないかと思いますが、この法案で挙げられている五年据え置きの十五年でしたか、そんな金の貸し方でこれを促進するのに十分どお考えかどうか、これは原田参考人、鳴海参考人、吉田参考人それから伊藤参考人、ちょっと一言ずつお答えをいただきたいと思います。
  162. 原田宏

    ○原田参考人 資金が十分かどうかという御質問、先ほどもございまして、私としてはできればもっとふやしていただければ、これは自分の関係する分野でもございますので、非常に我田引水かとも思いますが、いろいろな事情もあることだろうとは判断しております。  そこで、これで何かできるかということになりますれば、今おっしゃられた額は大体毎年度支出される額だろうと思いますので、それだけの額があれば、例えば細胞融合なんかですと原子力の方の核融合とは比べ物にならないほど少額で高い効果が上がりますので、私は十分やっていけるというふうに考えております。
  163. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 額が大きくて期間が長ければそれにこしたことはないわけでありますが、現在の状況から見て、小さく産んで大きく育てるという言葉もございますので、それでやむを得ないんじゃないかと思っております。
  164. 吉田文彦

    ○吉田参考人 技術予測でございますけれども、かつてたしか「日経バイオテク」だと思いますが、「日経バイオテク」で八五年にはこうなるであろうという予想が三、四年前出ておりましたけれども、それは見事に外れているわけでございます。そのくらいこのバイオテクノロジーという技術は難しい技術だろうと思うわけでございまして、植物にいたしましても、例えばウイルスフリーでいろいろなものが出ておりますけれども、仮にこの細胞融合を用いて、それじゃいつどういうものができるかというのは、私は大変難しいことだと思います。やはり生命の仕組みというのは人間が考える以上の仕組みを持っているものであって、そうお金と人で解決する問題ではないのじゃないかと私は思っております。その点で、これだけの、かつて農水省がバイオリアクター研究組合に出した出資に比べでははるかに多い額でございますので、私はこの額で十分ではないかなという感じがいたします。
  165. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 八〇年代の初めに先端技術の政策が吟味されたときに、バイオテクノロジーに関連した研究開発は、ほかの技術と比べて研究開発費が少なくて済むという意見がございました。私はそうは考えません。今考えられておりますバイオテクノロジーの出資をバイオテクノロジーの木として育てて収穫を刈り取る、言いかえればバイオテクノロジーの研究開発の成果を可能な限り大きく収穫するためには、この法案も含めてもっともっとさまざまな試みが必要だと思います。  しかし、研究開発の制約条件として予算あるいは費用が大きな条件になっていることは否定できないと思います。そういう意味では、当初の費用もさることながら、とりわけバイオテクノロジーの研究開発には長期、継続的な予算の支出あるいは費用の確保ということが必要だろうと考えております。  御質問の趣旨を多少逸脱いたしましたが、私の意見を申し述べさせていただきました。
  166. 日野市朗

    ○日野委員 では、終わります。どうもありがとうございました。
  167. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 武田一夫君。
  168. 武田一夫

    ○武田委員 きょうは大変お疲れのところ、我々の法案審議に貴重な御意見をちょうだいいたしました五人の参考人の皆様には大変感謝申し上げます。  先ほどいろいろと貴重な御意見をちょうだいいたしましたこの法案、さらに充実したものにしたく、皆様方の御意見も踏まえて若干お尋ねを申し上げますので、よろしくお願いいたします。  最初に、まず五人の参考人の皆さん方にお尋ねをしたいのですが、バイオテクノロジーというものは今後の日本農業の窮状を救済する救世主になれるものかどうか。とすれば、それはいつごろ期待できるか。大変な問題だと思うのでありますが、五人の御所見、お考えをお聞かせいただきたいと思うのであります。
  169. 原田宏

    ○原田参考人 私の考えを簡単に申し上げさせていただきます。  随分広い御質問なんですけれども、私がいつも考えておりますのは、例えばイギリスですと、第二次世界大戦中の食糧難の問題を参考にしまして、戦後イギリスでの食糧の自給率をかなり真剣になって高めてきたわけです。数字のとり方も難しいのですけれども、終戦直後三〇%くらいだった自給率を今では七〇%前後にまで持ち上げてきているわけであります。残念なことに、日本の方はその逆になってきているわけであります。今後いろいろ問題は多いと思いますが、日本では限られた耕地面積の中でどうやっていくかということになりますと、単位面積当たりの収量をふやし、かつ非常に高品質の有用作物をつくる以外には活路は見出せないんだと私は思います。  そういう意味からいたしますと、新しいバイオテクノロジーの技術はその活路を見出すための一番強い武器となるものでありまして、今後とも最大限の努力をして、発展させていくべき分野だと私は考えております。
  170. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 私ども、農家の方々からは、新聞等でいろいろ書いてあるけれどもいつこれが実用化できるんだということで実は詰め寄られております。先ほど救世主になり得るかというお話があったわけでありますが、私どもはそういう願望を実は心に秘めておるわけであります。また時期につきまして、私ども、組織に対しましては、これは大変息の長い仕事である、金もかかり、人手もかかり、リスクも大きい、したがってこれは二十一世紀に実用化をする仕事だというふうに実は申し上げておるわけでありますが、私自身もそういうふうに感じております。
  171. 吉田文彦

    ○吉田参考人 冒頭にも申し上げましたけれども、全くこれは私個人的に考えますと、バイオテクノロジーの技術は緒についたばかりでございまして、果たしてこの技術が日本の農業を救えるかどうかという御質問には現在のところ全くお答えはできないのでございますけれども、そのくらい私は、特に植物とかいうものに対してのハイテクは難しいと思います。  例えば稲一つにいたしましても、最近やっと稲のプロトプラストから分化ができたということは新聞に出ておりますけれども、果たしてこれを細胞融合でやって本当にいいものができるかどうかはなかなか先のことでございますし、そういう点、確かに救世主にならなければならないのですけれども、そのためにはまだわからないブラックボックスがたくさんある、そう考えていいのではないかと思います。
  172. 馬場道夫

    ○馬場参考人 私、農業機械化研究所の理事長でございまして、農業機械化関係で本日出席いたしましたので、ハイテク懐係につきましては答弁を遠慮させていただきます。
  173. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 私は、日本の経済が国際的な経済社会の枠組みの中で今後とも健全に発展していくために、日本の農業が活力を取り戻して、産業としてもっと力強くなっていただかなければならないと考えております。そうしてそのために、バイオテクノロジーだけではなくて、この法案には素材とかメカトロニクスとかもあわせ並べて盛り込まれております。そういったものを一緒に含めて、ぜひともそうしていただきたいと思いますし、またそうするための一番確実な手がかりであると考えております。
  174. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、鳴海参考人に特にお尋ねをします。  ハイテクなどの高度先端技術が農業経営とか、あるいは農業、農村のあり方に将来どのような影響を及ぼすかということは皆さん方の仲間ではいろいろとお考えではないか。常務さんとしてもそういうことは特に感慨をお持ちじゃないかと思うのであります。これがもし期待するように、二十一世紀の初頭でもいいです、実用化された段階において、場合によっては一部の民間の事業者によって農業者が従属させられるような心配はないのかということを私はちらと考えるときがあるわけであります。農業や農村が新しい技術によってさらにレベルがアップして、農業者自体、農村自体、農業自体がよくなっていくということであれば結構ですが、私のそういう危惧はないものかどうかという点について、ひとつ特に鳴海さんから御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  175. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 新しい技術を農業者が取り入れる場合には、農業者自体のいろいろな選択の基準もあるわけでありますが、現在日本におきましては県の農試あるいは普及所、農協、これらの一連の営農をめぐります指導との関連一また実際には作物をつくります場合の消費者のニーズ等も見て普及を進めておるのが現状でございます。したがいまして、新しい技術が将来出てまいりましても、やはり農家の経営を守る立場からはそういう選択を私ども農業団体としてはしてまいる必要があると思っておりますし、企業によってこれが農業の支配につながるということはまさにあり得ないだろうと考えておるわけであります。  また、新しい品種等、あるいは新しい技術が出てまいりましても、例えば肥料だとか農薬だとかその他のものもそうでありますが、国の公的なテストを得た上での普及が図られるわけでありますので、その辺との関連を見てまいりますと、防御策は十分にあるだろうと実は考えるわけであります。農業団体といたしましては従来にも増して、将来こういう新しい技術に対しましての選択力を十分強化しながら、農家を守る立場から進めてまいりたい、こういうふうに認識をしておるわけであります。
  176. 武田一夫

    ○武田委員 二番目にお尋ねをいたします。原田、吉田、伊藤の三人の方にお願い申し上げます。  未知の問題が非常に多い遺伝子操作技術でございますが、さまざまなバラ色の夢だけがはるかに先行しているように思います。そこで、バイオテクノロジーブームヘの警告とセキュリティー、安全性の問題について指摘されているわけでありますが、遺伝子操作の潜在的危険性についてどういう認識をお持ちでございますか、その点についてお三人から御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  177. 原田宏

    ○原田参考人 お答えいたします。  先ほども同趣旨のような質問がございましたので、私の意見は既に申し上げたと存じますが、もう一度要点を繰り返させていただきますと、御指摘のように、この技術は非常に将来性に富んだ、また発展性に富んだ技術であるだけに、注意には注意を重ねて進むべきものだとは思っております。ただ、みだりに不安をかき立てる必要は全くございませんので、先ほども申し上げましたように、今まで世界の先進国で非常に多くの実験データが積み重ねられてきておりまして、組みかえDNA実験による事故は何も起こってないわけでございます。今後の安全評価もますます合理的に、科学的に行われるようになってまいりますし、それから、実際に扱っている研究者の理解も一層深まってきますので、私としては根本的な危険性というのはまずないというふうに考えております。
  178. 吉田文彦

    ○吉田参考人 前にもお答えいたしましたけれども、遺伝子組みかえの実験というのは、一つのルールと申しますか、実験の指針に基づいて我々は実験しているわけでございます。ですから、その対象になる微生物ももちろん限られておりますし、それから、それに使ういろいろな、プラスミドにいたしましてもベクターにいたしましても、これも決まっております。そういう中で実験を進めるわけでございますので、原田参考人のおっしゃったように、現在の状態においては全く私は危険がない、そういうふうに思っております。
  179. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 組みかえDNA実験に関する危険性に関しては、議論の段階でさまざまな可能性が議論し尽くされているというふうに理解しております。その中で、とりわけ考えられなければならないことの一つとして、というよりも、むしろ主なこととして、個人の恣意による意図的な、あるいはまた錯乱による危険な実験を組み立て上げて実行するという可能性が、とりわけ市民の中から指摘されております。  その点に関しまして私が申し上げられますことは、最近のこの分野の研究開発は特定の研究者が一人だけで研究を完遂することが困難になりつつある。チームワークを必要として、その前後にさまざまな支援を必要としているという意味から、そういった個人的な恣意とか錯乱による研究は非常に取り上げることが難しくなってきているということは事実として申し上げられます。  それから、もう一つ全く別の側面を指摘したいと思います。現在、バイオテクノロジーを中心とした技術の可能性に関しては、確かに研究開発の側からさまざまな夢といいますか、可能性が指摘されております。今この法案が対象にしております農業関連の技術の分野、これは、確かに遺伝学を基礎とする技術の流れはございますけれども、もう一つ、農業関係の技術で基礎生物学に照らしますと大きなテーマがあろうかと思います。それは、生態学、英語でエコロジーと言われますけれども、そういった分野の研究が、あわせて同時にお互いに裏打ちするような形で進まなければならないと思っております。こういった指摘はこれまで国内ではとりわけ少ない。少なくとも私は余り耳にすることがございませんけれども、このことは個人的に非常に強調したいと考えております。そうした遺伝学と生態学と両方が基礎学問として進む中で、バイオテクノロジーの技術的な可能性というのは、例えば農業に具体的な成果をもたらすだろうと私は考えております。  以上です。
  180. 武田一夫

    ○武田委員 同じく三人にお尋ねします。  組みかえDNAは現在ガイドラインのもとに実験が行われている現状でございますが、これがいわゆる実用化、まあ産業化と言ってもいいと思うのでございますが、その段階を迎えた場合には、実用化段階における安全性確保というものについての方策が確立しなければならない、こういうふうに思うのであります。この点についての御意見をお三人からお尋ねをしたいと思います。
  181. 原田宏

    ○原田参考人 お答え申し上げます。  全くの私見でございますけれども、ただいま御指摘のございましたように、本当の意味での実用段階になってまいりますと、それ相応のまたガイドラインが私は必要になってくるのではないかと考えております。そこで、これも日本国内における混乱を防ぐ意味で、例えば各省庁間で解釈が異なるようになりますと非常に混乱が起こる危険性もございますので、今後恐らく検討されていくのではないかと思いますけれども、そういう問題のないような実用段階でのいいガイドラインができることを個人的には願っております。
  182. 吉田文彦

    ○吉田参考人 現在、組みかえ技術によりまして実用化されんとしておるのは、医薬品にいたしましたらインシュリンあるいは成長ホルモン、そういうものがございますが、これは何といいますか、向こうの技術を持ってきて、それからこちらの——もちろん、こちらでその組みかえ体の安全性とか、そういうものを十分検討した上でやっておるわけでございまして、もちろん、これから新しいものが出てくる場合にも、やはり規制といいますか、そういうものに従ってやるわけでございまして、それは実験室でやっていることを、それをさらにそういう観念で工業化していくわけでございますので、そういう手だてをきちんと踏めば間違いないと私は思います。
  183. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 最近の、例えば新製品の開発であるとか、例えばこれまでの生産工程をより効率化するとか、そういった技術開発には、単に経済的な効用にとどまらず、危険性も含めた社会的なマイナスの効果をも同時に配慮しながら研究開発に着手され、それが進められるというウエート、言いかえれば、そういったネガティブな間接的な効用、非効用を検討する比重が一般的な傾向として高まりつつあるというふうに痛切に感じております。そういう意味では、バイオテクノロジー関連の新しい技術、新しい製品に関しましては、そういった新しい効用と同時に、新しい効用の裏にある危険性あるいはマイナスの効果も同時にはかりながら、検討しながら開発が現に進められておりますし、これからももっともっとそういった点に留意されるべきですし、また、そういった動きにあろう。現にそうなっていると存じております。  以上でございます。
  184. 武田一夫

    ○武田委員 次に、五人の参考人の皆さん方にお尋ねします。  今後、産学官の、いわゆる三者連携強化による総合的なバイオテクノロジーの先端技術の開発、この問題は非常に重要な課題だと思うわけでありますが、この産学官の連携の中で今後研究開発を進める上で、研究を実りあるようにするために何が大事な要素であるか、その点、皆さん方、御所見がありましたらお尋ねをしたいのでございます。
  185. 原田宏

    ○原田参考人 お答えいたします。  ニューバイオテクノロジーと言われている分野では、今までの伝統的な研究開発と一つ違うところがあると思いますのは、いわゆる基礎研究と応用研究あるいは開発研究の間にはっきりした線がなかなか引きにくいところがございます。基礎研究がもう直ちに実際に役に立つようなことを生み出しますし、また、応用研究の中から基礎研究のいいアイデアが生まれるということがしばしばございまして、非常にその辺のところは一体となっているものでございまして、そういう意味から、大学では主として基礎研究を行い、民間の研究所では開発研究が盛んになるのは当然だと思いますけれども、前にも申し上げましたような意味で連係プレーが非常に重要になってまいります。その点は今までは我が国では余りスムーズにいってなかった点もございますので、例えば法律的な面でもそういうことを促進できるようになってくればいいなと思うのが私の実感でございます。
  186. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 産官学が現在得意の分野をそれぞれ持っておるわけでございますが、この新しい機構がコーディネーターとしての役割を十分果たしていただけるように切望する次第であります。
  187. 吉田文彦

    ○吉田参考人 具体的な例を挙げますと、私どもが農水省の果樹試験場と一緒にやっております植物体の開発でございますが、私どもでは細胞融合の技術というものはできているけれども、果たしてこれを地に植え、あるいは栽培して実がなるかどうか、そういうことについては私ども全く素人でございますので、そういう一緒の面でお互いの役割分担を決めてやるということは大変結構なことだ、私はそういうふうに思っております。
  188. 馬場道夫

    ○馬場参考人 先端技術等の技術が向上してまいりますと、やはり産学官の連携が非常に大事でございます。その際に、人の交流ということが大事なわけでございます。幸い、国の方におきましては研究交流の促進のための法律が検討されておるわけでございますし、そういう面で大いに促進されるというふうに考えるわけでございますが、特殊法人なり認可法人等の例をとってまいりますと民間との交流にいろいろなネックがございまして、なかなか難しい事情がございます。したがいまして、時間がかかるかと思いますけれども、そういう問題を徐々に解決しながら自主的に研究交流ができるようなことが必要であろうと思うわけでございます。
  189. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 一般的な産官学の研究交流に関しては既に成案になったものもございますし、現在審議中の法案もあるやに存じております。  農業あるいはこの法案に関連したことで、既にこれまでに四人の参考人の方から披瀝されたことにつけ加えて申し上げるとすれば、多少さかのぼるのでございますが、やはり大学の学部の中で、具体的には農学部でありますとか工学部、理学部、ひいては医学部、薬学部、そういったところの制度的な壁が低くなるような形で、人の動きをもっともっと活発にする形で施策推進を図っていただきたい、それがひいては産官学の連携をよりスムーズにするかぎでもあろうかと考えます。  以上です。
  190. 武田一夫

    ○武田委員 大変ありがとうございました。以上で私の質問を終わります。
  191. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 菅原喜重郎君。
  192. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 参考人の方々には、私たちの法案審議のために貴重な御意見を述べていただきましてどうもありがとうございます。  今回、生物系特定産業技術研究推進機構法案、非常に長ったらしい名前の法案でございますが提出されたわけでございます。この新法人の業務を見ますと、融資事業と出資事業が中心になっておるわけでございます。私たちは、この名前からすると、もっと技術的な基礎研究、民間がなかなか手の回りかねる分野も手厚く促進されるようになっているのかと思いましたら、予算面から見ましても内容についてはいささかがっかりしているわけでございます。しかし、バイオテクノロジーの研究促進というのは時代の要請でございますので、私たちはできるだけ前向きにこの法案の活用を回らせるようにしなければならぬというふうに感じておるわけでございます。  そこで、まず第一番に問題になるのは、先ほどからの御質問の中でもいろいろ問題になっているのですが、融資あるいは出資事業を行う場合に、採択、認定をどうするのかという審査機関の問題でございます。この審査機関について、参考人の皆さん方から、技術的な立場の方あるいは事業に関係している方々もおいででございますので、どのようにあったらいいのかという御意見がございますなら、それぞれお聞きしたいと思うわけでございます。
  193. 原田宏

    ○原田参考人 ただいま御質問の件、私はどちらかというと全くの素人で、適切な返答ができないかと思いますけれども一つだけ言えることは、理事会とか評議員会とかが予定されておるようでございますので、そのメンバーの構成を、例えば民間企業を代表される方、国公立の試験研究機関を代表される方、経済界を代表される方、それに学識経験者、そういうようなこともたしか書かれていたと思いますけれども、そういう人員の構成が適切であれば非常にうまくファンクションするのではないかと考えておりますが、この問題については、その方の御専門の方々の意見を聞いていただければよろしいのではないかと思っております。  以上です。
  194. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 冒頭にも申し上げましたけれども、原田参考人と同意見でございまして、特に農林漁業者の参加についてぜひお願いしたいというのが私ども考え方でございます。
  195. 吉田文彦

    ○吉田参考人 基本的には原田参考人と全く同じ意見でございます。  やはり国の大事なお金を使うわけでございますから、そのテーマとかについてはしかるべきメンバーで十分検討されて進められるということが一番いいのではないかと思います。
  196. 馬場道夫

    ○馬場参考人 私の立場から特に申し上げることもないわけでございますけれども委員が申されましたように、出資なり融資をするわけでございますのでしかるべき審査の場というものは必要であろうかと思いますが、十分御検討いただければと思います。
  197. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 この法案が実現して機構が生まれたときに、実際に研究開発することそれ自体とあわせて、むしろそれ以上に評価、判断が大事な仕事になるだろうということは十分想像できます。手前どもは、世間からシンクタンクと呼ばれて、個別の技術の直接の利益から離れて第三者的に個々の技術を相互に比較検討していささかの実績を持っております。そういった立場から申し上げられることは、個々の技術の特定の利益から離れた第三者的な立場から評価をするということは一つの条件だろうと考えます。  さらに、それぞれの技術に関して、学識経験あるいは造詣も必要だろうと思いますが、新たに評価、検討のための作業を独自にするということも必要だろうと考えております。その二点が私の指摘できることでございます。
  198. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、原田、吉田、伊藤、三参考人にお伺いします。  私もこの遺伝子組みかえということには素人でございますが、しかし、一本の植物におおよそ百万種類からの遺伝子があって、これら遺伝子のうちDNAレベルで明らかになっているのはごくわずかなものだ。さらに性質を改良するに重要な役割を演ずる遺伝子は十数個から数十個セットになっている、そういうセットを探すこともこれまた大変なことだというわけです。そしてまた、その性質が発揮される過程について、生体内での一連の生化学反応の解明ということになりますと、基礎研究というのが大変すそ野が広くないと発展がなし得られないんだというふうに聞いているわけでございます。こうなりますと、やはりこういう基礎研究的な面、参考人のどなたかがこのことにも触れられていたんですが、やはりこういう点は国立の研究機関に与えられている大きな課題ではないか、こう思うわけでございます。  こういう点について、今申し上げましたような観点から、現状の日本におけるこういう分野はどのようになっているのか、また皆さんがどのように認識されているのか、また、この分野に対してどのような御要望を持たれているのか、端的な御意見をお伺いしたいと思うわけでございます。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 原田宏

    ○原田参考人 お答えいたします。  ただたいま御指摘のありました基礎研究の重要性は全くそのとおりでございまして、特にこの分野では、先ほどもちょっと申し上げましたように、基礎研究の発展なしには応用研究の方も進まないという事態が明らかとなっております。  きょうの法案には直接は関係ないと思いますが、ただいま御指摘がございましたので私見を申し述べさせていただきますと、我が国では昔から伝統的に発酵学の方は非常に進んできておりますので、そちらの方の分野の研究者は優秀な研究者がかなり大勢おると思います。ただ、この法案の中でいろいろな分野がございますが、その一つの重要な分野でございます植物の育種とか品種改良ということになってまいりますと、今までの伝統的な育種技術も非常に重要なんでございますが、そちらの方の数は十分ございますが、新しい実験的手法、研究的手法を取り入れてやっていく研究者の層は非常に少ないのです。それで、この育成が非常に重要でございまして、これは文部省の学術審議会の建議にもはっきり書かれておりますけれども、何も文部省関係の大学とか研究機関だけではなくて、こちらの方の若手の研究者の養成が非常に重要ですので、そちらの方も十分に行えるような体制ができることを私は強く希望している次第です。  以上です。
  200. 吉田文彦

    ○吉田参考人 微生物の場合の組みかえの実験におきましても、いわゆる微生物を利用して遺伝子を入れて物を生産する、これは現在二、三成功例はございますけれども、まだまだ問題がたくさんあるわけでございます。例えば、遺伝子を微生物に入れても、せっかくその菌体の中でたんぱくが合成されているけれども、それは外へ出てこない、そういうこともございます。それは細胞の中の膜の構造とかそういうことでございまして、そういうことでなかなかできない。そういうふうなことで、そういうものを何とか分泌させていこうというような研究、これはまだほんの緒についたばかりでございまして、実際には応用されていない。  まして植物の場合には、今先生がおっしゃったようにいろんな遺伝子が入っておるわけです。ですから、それを植物体に入れ込んで物をつくらせるということはまだ本当に第一歩といいますか、第一歩も行ってないような状態でございまして、これからそういう面を大いにやっていかなければならないと思いますが、私どもが直接やっておりますのは、前にも申しました細胞融合とかあるいは限られた微生物を使って遺伝子組みかえを行う、そういうことでございまして、それにしても実用化するにはまだ相当な時間がかかる、そういうふうに私は思っております。
  201. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 個別具体的な事情は私直接には存じませんが、ただ一般論として申し上げられることは、産業それ自体の消長と、その分野の技術開発と、ひいては基礎研究とは相互に連動せざるを得ないというふうに思っております。そういう意味で、日本の農業関連の産業あるいはバイオテクノロジー延長上の産業が今、例えば基幹産業であるとかあるいは機械産業と比べて相対的に縮小しつつあるという現状は、技術開発の将来にとっても非常に危機的な条件の一つだろうと感じております。そういう意味では、現在社会的にバイオテクノロジーを促進しようという期待が高まっているという条件は、そういった日本の産業があるひずみを持っている、そのひずみを正すのに非常にいい機会であると考えております。  以上です。
  202. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の法案では、共同研究のあっせんという中で、いろいろな遺伝資源の提供その他人材の交流、そういうこともこの新法人がなし得るわけでございます。先ほど申し上げましたように、こういう気の遠くなるような、十数個とか複数個の組み合わせのセットを探すとなると、この研究開発は非常に偶然性が幸いするとも言われているわけなんですが、そういう偶然性にしろ緻密な計画的な追求にしろ、人材育成という面が大事だと思うわけです。吉田参考人は人材育成ということを盛んに話されているようですが、この人材育成という面について、皆さん方の今の教育にこういう別な方法があったらいいとか、何か新しい御意見がございますなら、原田、吉田両参考人の方からお伺いしたい、こう思うわけでございます。
  203. 原田宏

    ○原田参考人 お答えいたします。  私自身も人材養成の重要性を先ほど申し上げた次第ですけれども、これにはもちろん、私もその一員であります大学の教員の責任というのは非常に強いと思います。  大学の面ではいろいろ機構の問題もございますが、一つだけ私として大学の問題以外に提言させていただきたいのは、高校レベルの教育でございまして、最近、各県立の農業高校あたりに、例えば生物工学専攻とかというのもぼつぼつ出てきておりますが、例えば県レベルの研究機関にしろ民間の研究機関にしろ、どの辺から人材の養成をしたらいいかということになりますと、私の考えではやはり高校レベルからやるにこしたことはないというふうに考えておりますので、その辺、各県立の高校あたりでも大分考え出してはいるようですけれども、今後新しい方向にますます進んでいったらいいなというふうに考えております。  以上です。
  204. 吉田文彦

    ○吉田参考人 大変難しい御質問であれでございますが、私ども民間企業といたしまして、何とかバイオテクノロジーの技術のレベルを上げていこう、そういうことの場合に、一つ考え方としてやはり国内留学あるいは国外留学、そういう考え方がございます。国外に行って勉強してその基礎技術をつけてくるということがやはりその人自身の刺激になりますし、あるいはその会社としての研究チームの刺激にもなる、そういうことで、それは一つの大事なことだと思います。  ただ、将来恐らくこのバイオテクノロジーの技術というのが一般に使われてくるというふうになりますと、やはりこれは、実際、物を生産したりあるいは実験したり、そういうことにもう少しいわゆるバイオの基礎知識が必要であろう。それは会社に入って教わるよりも、今原田参考人が言われたように、高校時代から、あるいは専門学校ですか、そういうところでもっと基礎技術をつけてくる、やはり本だけでなくて自分の手でそういうことを覚えてくる、それが非常に大事なことじゃないか、私はそういうふうに思うわけでございます。
  205. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 バイオテクノロジーと遺伝資源とは、これは相即不離のものとして進めていかないとだめなものだ、こう思っているわけですが、こういう遺伝資源の収集、探索、そういう点では、これはグローバルな分野になるわけでございます。こういう点での国際的関連性とか情報交換性とか協力性とか、そういうことはぜひ必要であり、また遺伝資源そのものは世界共有の財産にしなければならぬのではないかと思うわけでございます。今回の法案の中にそういう機能が大いに発揮できるようにもさせていきたい、こう思っているのですが、こういうグローバルな観点での交換あるいは協力ということに対する御意見がございますならば、ひとつこれも、どうも原田、吉田、伊藤、三参考人にお聞きして申しわけございませんが、お願いしたいと思います。
  206. 原田宏

    ○原田参考人 お答えいたします。  ただいまの御指摘のように、遺伝資源遺伝資源と申しましても、これは小さい方はDNAレベルから、種子とか個体の植物まで含まれるわけですけれども、そういうものの収集、保存というのは非常に重要なことは言うまでもなくて、それを国際的に交換できるうまい方法ができれば一番いいわけでございます。  そうなりますと、経済大国と言われております日本の使命は非常に重要でございまして、自分の方から何も出さずにほかの国からもらうだけでは面目が立ちませんので、日本におけるそういう収集の努力というのを一層していただきたいと私は思っているわけです。特に米国とかソ連に比べますと、けた違いに日本は集まっているものが少ない現状でございまして、今後そちらの方のレベルをますます高めていっていただきたいと思います。  特に個体レベルで集めることも重要でございまして、例えば今コーヒーとかなんかに病気が出て、その病気に強い品種をつくろうと思いましても、そういう抵抗性の遺伝子を持っているのは大体野生種でございまして、その野生種がない限りそういう遺伝子を取り出すことができないわけでございますので、必ずしもDNAレベル、細胞レベル、種子のレベルだけではなくて、個体レベルでも保存できるようになればというふうに考えております。  以上です。
  207. 吉田文彦

    ○吉田参考人 私、実は民間企業におりましてこの方面については余り知識はございませんのですが、ただ申し上げられることは、今原田参考人がおっしゃったとおり、日本の遺伝資源というのは余りにも少な過ぎる。近年、農業生物資源研究所でございますか、農水省の方で相当力を入れられて予算をつけておやりになっておるようでございますけれども、ぜひそういう面をもっと充実していただきたい、そういうふうに思うわけでございます。
  208. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 遺伝資源とかジーンライブラリーがバイオテクノロジーの技術の推進の一つの基盤であることは間違いないわけですが、翻って、西欧でそういったジーンバンクであるとかジーンライブラリーであるとかがこれまで歴史をかけてつくられてきた背景には、やはりもっと深い根拠があったのだろうと言われております。  一つは、非常に純粋な一人一人の好奇心とでも呼べるような動機、それが最初に一番大きくあったのだろうと思います。それから、皆様方も御承知のように、西欧の科学の思想に進化論という非常に影響の大きい哲学がございますけれども、そういう哲学が生まれる背景と遺伝資源が収集されて整備されたいきさつとはまさに両輪であったわけです。そういう意味では、日本でこれから遺伝子銀行が整備される、それが単に技術の一つの基盤にとどまることなくて、もっと大きな文化遺産として受け継がれ、もっと積極的な何かを生み出す、そういった方向で努力していただきたいと考えるわけです。  以上です。
  209. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、鳴海参考人にお伺いしますが、今回の法案の中には民間等の出資条項もありまして設立されるわけでございますが、この新法人に全国農業協同組合連合会はどういう協力をなそうとなされているのかお伺いしたい、こう思うわけでございます。
  210. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 まだ全農なり組織の内部で議論をしておりませんので、明確に申し上げるわけにはいかないわけでありますが、農業機械化研究所には応分の出資を全農といたしまして既にしてございます。それが今度の新しい機構に引き継がれる、こういうふうに聞いております。もう一方のハイテクに関連をいたしますものにつきましても多分協力方の要請があるだろうと思っておりますので、農業団体全体としてどういう御協力をするか、これから議論をしてまいりたいと思いますが、応分の協力をさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  211. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、馬場参考人にお伺いします。  農業機械化研究所の促進業務と生物系特定産業技術研究推進機構を一緒にしたということに私は何か不自然さを感じているわけでございますが、一応今までの研究所の業務その他を維持継続していくということで馬場参考人も納得はされているようでございますが、ただ、今、研究所を改組するに当たって、専門的研究検査機関としても位置づけていただきたいという要望が出ております。この点に対して参考人はどのような御意見をお持ちなのか、お伺いいたします。
  212. 馬場道夫

    ○馬場参考人 今度私どもの研究所が改組いたしまして新しい機構になるわけでございますが、その際に、私どもの行っております研究部門と検査部門が双方入るわけでございます。  私どもの行っております検査は、型式検査が中心でございますけれども、一般の商品検査とは性格を異にしております。一般の商品検査でございますと、一定の基準に合格しないような粗悪品なり欠陥品を不合格にするというようなことが目的でございますけれども、私どもの方の検査業務はいわば研究的な試験でございまして、一定の性能なり構造なりそういうものを試験をいたしまして、その結果を農家の方の農業機械を選定する際の指標にし、あるいはまたメーカーがより以上技術の向上をするためのデータを提供するということが中心でございます。その結果がまた研究に反映いたしまして、新しい研究テーマなり研究の中身に非常にプラスになるというようなことでございまして、まさに研究と検査一体的に行っておるわけでございます。  そういう意味で新しい機構に研究と検査が両方入るということは矛盾はないのではなかろうかと考えているわけでございます。
  213. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 以上をもって終わります。
  214. 大石千八

    大石委員長 中林佳子君。
  215. 中林佳子

    ○中林委員 参考人の皆様、どうも御苦労さまでございます。  まず初めに吉田参考人と伊藤参考人にお伺いしたいと思います。  今回出されました法案は、別名ハイテク民活センター設立法案と言われるくらい、民間活力がハイテクの研究開発に大いに寄与してほしいという願いを込めたことを目的としているということは御承知のとおりでございます。そこで、バイオテクノロジーの現状についてお伺いしたいと思うのです。  我が国のハイテク研究の現状では民間が先行している、こういうふうに言われております。特に遺伝子操作だとか細胞融合などの先端的な技術開発にまで民間の企業が、みずから研究所までつくって取り組んでいるということになっているわけですけれども、この研究というのは一方では企業リスクがかなりあるのではないかというふうに思っております。そういうリスク覚悟で企業がこうしたハイテク研究に取り組んでおられるねらいはどこにあるのか、背景ですね。その点についてお聞きしたいと思います。
  216. 吉田文彦

    ○吉田参考人 私、冒頭に申しましたとおり、いわゆるバイオテクノロジーは微生物の機能を有効に利用して物をつくる、そういうことでございまして、日本では微生物を使ったりそういう生体を使ってやるいわゆる発酵工業と申しますか、そういう産業は世界に冠たるものがあったわけでございます。しかし、現在そういうことだけではやはりいけない。  というのは、御承知のとおりコーエンとボイヤーによって、一九七三年にいわゆる組みかえDNA技術というものが出てきたわけでございます。それは、そういうことをやることによってやはり物の生産性が上がるということになるわけでございますけれども、一方、問題点はたくさんあるわけでございます。いわゆるアシュロマ会議から始まって、安全性の問題がずっと絡んでくるわけでございます。ですけれども、そういうものをクリアして、なおかつ国としてやはり一応世界に負けないような技術をつくらなければならない。急には役に立たないけれども、将来の技術を持つこととして、やはりそういう研究を進めていく、これは企業としては当然考えなければならないことではないかと思うわけでございます。  先生が現在民間の方が進んでおるということをおっしゃっておりましたけれども、私は必ずしもそうも思わない。大学でも基礎研究は相当進んでおる。ですから、その面でやはりこのバイオテクノロジーというのは民間も大学も、あるいはそういうものが一緒になって進めていかなければ、将来、日本のいわゆるハイテク産業というのは世界におくれをとるのじゃないか、そういう面で民間もひとつ大いにやろうじゃないかというふうな考えで現在進めておるわけでございます。それでお答えになったでしょうか。
  217. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 マスコミその他に取り上げられて、一般市民を含めた社会から評価される、あるいは注目されるという意味では、あるいはそういう場面に関して言えば、確かに民間企業あるいは民間企業を主体とする産業の進捗が非常に活発だと言えると思います。  御質問の後半、民間企業も含めてなぜバイオテクノロジーを積極的に推進しているか、あるいはせざるを得ないかということですが、思いつきまするのに三つあるだろうと思います。  まず、企業は本質、常に技術のレベルを新しく、より高いところに更新し、成長する努力をし続けなければならないという宿命がございます。これは古今東西、独立の経営体としての一つの原則だろうと思います。  二番目に、七〇年代のいわゆるオイルショックを契機として、日本の産業が原油を中心とする合成化学から敷衍するような製品、商品から新しく転換せざるを得ないという事態に当面させられております。そういう努力は現在さまざまな分野で模索されておりますけれども、その典型的、代表的なターゲットと申しますか目標がバイオテクノロジーであると言えると思います。そういう意味では、さまざまな業種がバイオテクノロジーに注目しているということは、翻って言えば、それだけ石油化学を中心としたこれまでの産業全体の影響力が大きかったことの反映だろうと思います。  三番目に、日本の経済がますます国際的な連係とか連動とか、言いかえれば、国際化を深め、高めつつある条件の中で、いや応なしに欧米企業との競争が厳しくなってきております。しかも、そういった欧米の企業では、バイオテクノロジーと言われるような技術の周辺でこれまでに非常に長い大きな実績がございます。それと比べて我が国のそれに対応する産業では、実績がどちらかといえば非常に貧しいと言ってもいいぐらい少のうございます。そういったギャップを埋めるためにもバイオテクノロジーが積極的に民間企業各社で取り上げられている、そういうことだろうと思います。
  218. 中林佳子

    ○中林委員 次に、筑波大学の原田参考人にお伺いしたいと思います。  最近、一般の新聞紙上にもバイオとかハイテクとか、こういう文字が非常に盛んに登場するようになったわけです。どの記事もバイオテクノロジーを駆使して先駆的な研究開発が進められていることが紹介されているわけです。その中身を見ますと、人類の発展に大きく貢献する、こういう面がかなり強調されているというふうに思いますが、一方で、バイオテクノロジーはまだまだ解明されていない問題も多く持っておりまして、未知なる危険を含んでいるのではないかというふうに思うわけです。アメリカなどではバイオハザードの問題なども提起されているということも聞いております。特に、遺伝子組みかえなどは生命倫理の問題、あるいは細菌研究は軍事利用の問題など、いろいろ不安な面につながるというふうに思うわけです。  そういう点では、原子力の研究の問題では平和利用三原則が確立されているわけですね。バイオ研究にも、自主、民主、公開というのが適切かどうかはわからないのですが、何かそういう基本的な原則が必要なのではないかというふうに思うのですけれども、どのようにお考えになっていますか。
  219. 原田宏

    ○原田参考人 大変難しい御質問で、短時間でお答えするのも困難かと思いますけれども、先ほどからほかの委員先生方からもある程度同じような趣旨の御質問がございまして、私の考えの一端をお答えしてきたわけですが、今の御質問の全体にわたりましてお答えしてまいりますと、一つは、まだまだ緒についたばかりだという点では私も全く同意見でございます。生物というのは本当に神秘に満ちたものでございまして、我々が今知っているのは、恐らく、全体を地球に例えてみますと、その上の一つまみの砂ぐらいではないかというふうに考えております。ですから、研究して明確になってくることがまだまだ山のようにあることは事実でございます。  ただ、新聞、雑誌などで言われておりますいわゆる危険性につきましては、今までもお答えしてまいりましたように、今ございます実験指針を守っていけば、私は世に言われているような危険はないというふうに確信いたしております。先ほど伊藤参考人からも御説明がありましたように、例えば気の狂った者が何かするというようなことも全くないとは言えないと思いますけれども、それも今の実験は、全くチームワークでやらなければできないようになっておりますので、そういう危険性もかなり少ないのではないかと思います。  それから、今、たしか細菌兵器などに利用される可能性もあるのではないかというお話でございましたけれども、これはもう人間としてのモラルの問題で、根本的な問題でありますので、そういうことを考えるのは全く研究者としての資質はゼロということになると思いますので、私はそういうことは考えておりません。  そういうわけで、先ほどから申し上げておりますように、この十年間あるいは十年以上、多くの国においてこういう実験がガイドラインをもとに進められてきておりまして、組みかえDNAによる実験事故はございませんでしたし、それからまた私の知る限りでは、それが悪用されている話も耳にしておりませんので、私としては、自分もその一人なのですけれども、研究者の良心を重視してやっていきたいというふうに考えております。  以上です。
  220. 中林佳子

    ○中林委員 次に、鳴海参考人にお伺いしたいと思いますが、ハイテク研究が結果として農業に役立っているということは私も承知しているわけですけれども、一方大企業が、その利益追求の余り、農民支配を強めていることも現実だというふうに思うのです。  私は詳しいことを知っているわけではないのですけれども、北海道のトウモロコシのハイブリッド種子などは、その大半がアメリカの大企業が一手に握っていると言われておりますし、野菜の種子についても一部の企業が独占しているという状況にもなっているわけです。ところが、今回の法案では、民間の大企業の研究に国が援助しようということで、研究成果の公表義務とかあるいは公的な規制はほとんど取り入れられておりません。果たして、こうした体制でハイテク研究が進められて、本当に農民のためになるんだろうか、そういうことを大変心配するわけなんですけれども、その農民の立場から見て、そういう心配は抱いていらっしゃらないでしょうか。
  221. 鳴海国輝

    ○鳴海参考人 特にトウモロコシのF1種子におきましてアメリカが大変先発的な仕事をしてきておりまして、日本にもそれが上陸をしてきていることは事実でございます。ただ、その場合に、企業支配という表現で言えるのかどうか、その辺はいろいろ議論のあるところだろうと思います。確かにアメリカから持ってまいりますF1種子は、品質、収量ともすぐれたものでございます。種子代との関連が果たして企業支配という格好に理解できるのかどうか、その辺、議論があるところだろうと思うわけであります。  ただ、日本の場合に、全国的に見ますとこれだけの長い国でありますので、気象条件なり土地条件がいろいろ違ってまいります。例えば、F1種子を現在いろいろなところで手がけておりますけれども、これとても各県で、現在の水稲につきましても、奨励品種は県ごとに実は定められてございます。それぞれの気象条件、土地に合いました品種を国並びに県がそれぞれ関与いたしましてやっておるわけでございまして、この部分において一つの企業が日本の稲作全体の種子を支配ができる、こういうことは実はあり得ないことじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。  そのほか、地域によって野菜のF1種子が種苗業者によって現在流通をしておるわけでありますが、これとても在来の育種法によります種子でありまして、ハイテクを使いました新しい手法による育種までは現在まだいっておりません。将来こういうものは予想されるわけでありますが、野菜を見てまいりましても、これが全国を一つの品種で制覇するということは、現在の野菜の需給、消費者の好み、市場の差別化、これから見てあり得ないことだろう、私はこういうふうに実は考えるわけであります。  先ほど申し上げましたように、この新しい機構によりまして、私どもといたしましては、それぞれ地域に第三セクターをつくりながら自前の開発をやっていくことも実は可能なわけでございますので、その辺も利用いたしまして、農民のために、地域のためになるような開発研究、普及、営農指導を一貫してやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  222. 中林佳子

    ○中林委員 次に、伊藤参考人に今回の法案の中身についてちょっとお尋ねしたいと思うのです。  私ども共産党は、バイオテクノロジーの研究開発は大いに人類に役立ててもらいたい、こういうふうに積極的に進めていくべきだというふうに考えております。民間企業においても、蓄積された研究成果はさらに発展させて社会に役立てていただくことを願っております。しかし、今回の法案では、民間活力ということを強調する余り、国の責任が、放棄とまでは言いませんけれども、非常にあいまいにされているように思えてならないわけです。特にバイオなどの基礎的研究というものはもっと国公立の機関できちっとやるべきではないかというふうに私は思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  223. 伊藤敏雄

    ○伊藤参考人 私の意見を率直に申し上げます。  この法案の対象としておる分野というのは、産業化のための試験研究あるいは技術開発だというふうに承知いたしております。バイオテクノロジーと一口で言われますけれども、いわゆる生物学に基づいた基礎的研究から、実際の技術あるいは製品、商品が市場に出回って、それを保守し、あるいはそれの安全性をチェックするといった非常に長い一連のプロセスがございます。その中で、この法案の対象としておりますのはある一定部分だ、言いかえれば、民間の活力とこれまでの政府あるいは試験研究機関の蓄積とを持ち寄ることによって積極的な効果が発揮できると考えられている部分だけを取り上げられているというふうに承知いたしております。
  224. 中林佳子

    ○中林委員 同じような質問なんですけれども、次に原田参考人にお伺いしたいと思うのです。  法案を見ますと、融資は産業投資特別会計から公的資金を使って、その条件は低利で長期返済となっている上に、成功しなかった場合は無利子という、民間企業にとっては大変有利な条件になっているわけです。しかも、国のジーンバンクの資源のあっせんだとか、受託研究による国の研究員の民間出向、それから情報の提供など、国側がかなり至れり尽くせりの体制になっているわけです。民間を中心としたこうした機構ができて、しかも国の研究成果や公的資源も大いに提供するようになりますと、従来の国の試験研究分野がどんどんこの新機構の研究に食い込まれて、本来公的試験研究で果たさなければならないそういう役割が後退するのではないかということを少し心配するわけなんですけれども、そういう御心配はされておりませんでしょうか。
  225. 原田宏

    ○原田参考人 ただいまの御指摘でございますけれども、私、決して十分だとは申しませんが、文部省とかあるいは農水省の方のこの分野の予算を拝見してみますと、今審議の対象になっております新しい機構とは、数字の面では余りにも隔たりがございまして、それだけ見ましても、国の方の研究体制あるいは研究成果に陰りが出てくるのではないかという御心配は、私自身、全く皆無ではないかと思っております。  それで、国の方の予算はこの予算に比べますと比較にならないほど多いこともございますし、それはどこから出てくるかといいますと、結局は税金から支払われているわけでして、その成果をまた国民に返すということも、これもまた当然だと思いますので、私は、国の方の研究が衰えていくという心配もないと思いますし、それからこの程度の援助は少な過ぎるぐらいの援助ではないかというふうに考えております。
  226. 中林佳子

    ○中林委員 最後に、農業機械化研究所の馬場参考人にお伺いしたいと思います。  一つは、今回の法案でこの研究所を廃止して、その業務を新たな機構でやろうということなんですが、研究所の廃止についてどのように受けとめておられるのか。さらに、研究体制は、区分するとはいえ全く性格の異なるハイテク研究などの組織に吸収されることでの不都合はないのか、それが一つです。  それから二つ目に、今回の法案で、役員の秘密保持条項が従来の機械化促進法に入っていたために取り込まれております。農機具の型式検査をやることを考えれば、各メーカーの特許などを守るという面でこういう秘密保持ということは理解できるわけなんですけれども、このハイテクなどの基礎的研究分野にまで適用することについて適切だとお考えになっているのかどうか、この二点についてお尋ねいたします。
  227. 馬場道夫

    ○馬場参考人 私どもの研究所が新しく新機構に変わるわけでございますけれども、確かに法案の法律的な手続といたしましては廃止になるわけでございます。廃止をして新しい法人になるわけでございますが、私どもは、むしろ発展的な改組であるというふうに考えておるわけでございまして、新しいものに吸収されるというふうには考えておりません。両者は、法案の中でも並列的に同じようなウエートで位置づけられておるというように私どもは考えておるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたけれども、私ども農業機械化研究所なり、あるいは海外ではIAMという名称でかなり知れ渡っております、そういう面で、その名称が消えるということについては大変寂しさはあるわけでございますが、何らか運用上の措置として、そういう名称が何とかして残らないだろうかというようなことが一つあるわけでございます。  それから秘密保持条項でございますけれども、今御指摘のように、私ども型式検査等をやっておるわけでございますので、当然秘密保持条項があるわけでございますが、ただ、新しく加わります民間支援業務につきましても、やはりいろいろな面でその融資をする機関なりあるいは出資をする機関等が、その企業の持っておるいろいろな問題をすべて公開していいというふうにはまだなかなか考えづらいわけでございまして、どこまでを秘密にするかどうかという問題はいろいろ御検討いただかなければならぬかと思いますけれども、このような秘密保持条項というものは、一種のこういう機関としてはやはり必要ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  228. 中林佳子

    ○中林委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  229. 大石千八

    大石委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、明十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時七分散会