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1986-04-10 第104回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十日(木曜日)    午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 志賀  節君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       内海 英男君    尾身 幸次君       菊池福治郎君    塩川正十郎君       田澤 吉郎君    中島源太郎君       二階 俊博君    野上  徹君       堀内 光雄君    村岡 兼造君       上原 康助君    小澤 克介君       新村 勝雄君    矢山 有作君       山中 末治君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    滝沢 幸助君       柴田 睦夫君    三浦  久君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     的場 順三君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         宮内庁次長   山本  悟君         皇室経済主管  勝山  亮君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君  委員外出席者         経済企画庁調整         局経済協力第一         課長      小川 修司君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     小埜寺直巳君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     野上  徹君   月原 茂皓君     尾身 幸次君   中村喜四郎君     村岡 兼造君   井上 一成君     小澤 克介君   嶋崎  譲君     山中 末治君 同日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     月原 茂皓君   野上  徹君     塩川正十郎君   村岡 兼造君     中村喜四郎君   小澤 克介君     井上 一成君   山中 末治君     嶋崎  譲君     ――――――――――――― 四月九日  シベリア抑留者恩給加算改定に関する請願  (稻葉修紹介)(第二八〇八号)  同(沢田広紹介)(第二八〇九号)  同(稻葉修紹介)(第二九三七号)  同(高橋辰夫紹介)(第二九三八号)  同(稻葉修紹介)(第二九五〇号)  同(加藤卓二紹介)(第二九五一号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第二九五二  号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願  (大久保直彦紹介)(第二八一〇号)  同(稻村佐近四郎君紹介)(第二九三九号)  同外三件(高村正彦紹介)(第二九四〇号)  同(田中龍夫紹介)(第二九五三号)  同(山本幸雄紹介)(第二九五四号)  国家機密法制定反対に関する請願岡崎万寿秀  君紹介)(第二八一一号)  同(柴田睦夫紹介)(第二八一二号)  同(津川武一紹介)(第二八一三号)  同(中川利三郎紹介)(第二八一四号)  同(林百郎君紹介)(第二八一五号)  同(経塚幸夫紹介)(第二九五五号)  同(林百郎君紹介)(第二九五六号)  同(東中光雄紹介)(第二九五七号)  同(藤田スミ紹介)(第二九五八号)  同(正森成二君紹介)(第二九五九号)  同(三浦久紹介)(第二九六〇号)  スパイ防止法制定に関する請願片岡清一君紹  介)(第二八一六号)  同(北口博紹介)(第二八一七号)  同(片岡清一紹介)(第二九四一号)  同(北口博紹介)(第二九四二号)  同(北口博紹介)(第二九六一号)  同(住栄作紹介)(第二九六二号)  旧軍人恩給欠格者に対する特別法制定に関す  る請願梅田勝紹介)(第二八一八号)  同(藤田スミ紹介)(第二九六三号)  安全保障会議設置法制定反対に関する請願(中  林佳子紹介)(第二八一九号)  新防衛五カ年計画中止等に関する請願正森成  二君紹介)(第二八二〇号)  石川県の寒冷地手当改善に関する請願外四件  (嶋崎譲紹介)(第二八二一号)  長野県富士見町の寒冷地手当改善に関する請願  (林百郎君紹介)(第二八二二号)  同外六件(串原義直紹介)(第二九六四号)  同(林百郎君紹介)(第二九六五号)  長野県原村の寒冷地手当改善に関する請願外一  件(串原義直紹介)(第二九四七号)  新潟県下田村の寒冷地手当改善に関する請願  (小林進紹介)(第二九四八号)  兵庫県千種町の寒冷地手当引き上げに関する請  願(後藤茂紹介)(第二九四九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一四号)      ――――◇―――――
  2. 志賀節

    志賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 在外公館設置に関する一部改正案ですが、この法案につきましては私どもも賛成をしておりますし、また、既に同僚議員の方からいろいろお尋ねもありましたので、一応時間があれば後ほど法案に関しては一、二点要望を含めてお尋ねをするとして、せっかく安倍外務大臣出席ですから、少し古くて新しい課題かと思うのですが、安保の問題についていろいろお尋ねをさせていただきたいと思います。  本論に入る前に、何か安倍大臣無理してたばこをおやめになったというのですが、体調はどうですか。     〔委員長退席戸塚委員長代理着席
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おかげさまで大変快調です。
  5. 上原康助

    上原委員 やめた理由は何ですか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや別に、時々やめているから――この前もやめまして、また吸いまして、今度も、ちょうど外国にも行きますしいろいろと日程が込んでいますから、やめた方がいいだろうと思ってやめたのです。
  7. 上原康助

    上原委員 別にプライバシーのことをお尋ねしようとは思わないのですが、いろいろ日程が込んでいるからというところが気になるところなんだが、仄聞しますと、官房長官と何か競争しているというのだが、どちらが勝ちそうですか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どちらもやめれると思いますね。官房長官の方が相当ヘビースモーカーでしたけれども、頑張っているようですから、両方とも何とか勝てそうな感じです。
  9. 上原康助

    上原委員 なぜこういうちょっと変わった質問を冒頭したかといいますと、委員会雰囲気を見ても、どうも相当だかが緩みつつあって、これだけ内閣委員会にいろいろな重要法案提出をしていながら、もうそれどころではないという雰囲気が出つつあるのは、私たちは極めて遺憾だと思うのですね。たばこをやめたのも、もう解散が近いからのどを大事にしなければいかないという、それが本音かもしらぬですね。しかし、まあそれはそれなりに私たちも結果をよく気をつけておきましよう。  そこできょうは、冒頭言いましたように、古くて新しい課題というか質問になるかもしれませんが、最近の防衛論争安保論争を聞いておっても、本当にこれでいいのかなという疑問を持たざるを得ない面が多いわけです。そこでまず、入り口として、日米防衛協力小委員会設置を見て、たしか一九七八年でしたね、十一月にガイドラインが、いろいろその後作業が進められていると思うのですが、この日米共同作戦計画研究に対して外務省はどういうかかわり方をしておるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  10. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 日米共同作戦計画研究につきましては、日米安保条約の運用と密接に関連する面を有しておりますので、外務省としては防衛庁から緊密に連絡説明等を受けております。
  11. 上原康助

    上原委員 ですから、私がお尋ねしているのは、もちろんそれは安保条約に基づいてというか、それを皆さんが言う友好かつ円滑に運営をしていくために日米共同作戦計画研究していく、そういう目的設置をされたものだと一応理解をするわけですね。ですから、外務省かかわり方というものは、ただ緊密に連携をとってやるということだけじゃないわけでしよう。外務省の持ち分、分担というものはどのようにかかわっているかということを私はお尋ねしているわけです。
  12. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 この日米防衛協力の指針に基づきます研究は、委員御存じのとおり、いわゆる五条研究というものがございます。それからいわゆる六条研究というのがあるわけでございますが、五条研究につきましては防衛庁、これが先ほど申しました共同作戦計画でございます。これはあくまで防衛庁が主体になりましていろいろ研究をしておるわけでございまして、この点については、先ほど御答弁申し上げましたように、外務省は通報、連絡説明を受けておるということでございます。他方、いわゆる六条研究につきましては外務省がいろいろ研究をしておるということでございます。
  13. 上原康助

    上原委員 そこで、五条研究は主として防衛庁がやっている、六条研究については外務省がいろいろやっている。いろいろやっている中身はどんなものですか。
  14. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 いわゆる六条研究でございますけれども、これは極東におきまして我が国の安全に重大なかかわりがある事態が生じました際に、我が国がいかなる便宜供与が可能であるかということについての研究でございますが、これにつきましては昭和五十七年に第一回の会合が開かれまして、これは審議官レベルでございますけれども、その後審議官レベルでは二回会合が開かれたのみでございまして、研究はまだ極めて初期の段階にあるということでございます。
  15. 上原康助

    上原委員 要するに、六条は極東有事研究だということでしょう。私がこれを聞いているのは、後ほど極東範囲の問題とかいろいろなかかわりがあるから、この日米防衛協力という面で。そうしますと、きょうは防衛局長も来ておられると思うのですが、安保条約五条については言うまでもございませんが日本有事の場合の研究ですよね、これは日米共同対処研究。たしかこれについては既に日米間でそのシナリオについては合意を見たと、そして八四年十二月、一昨年ですね、一応まとめられているわけですが、中身を明らかにしてもらいたいと言っても、これはいろいろ言うでしょうから、大体の流れとして、そのシナリオはどういう取り決めになっているのか。これは安保条約の問題であると同時に、自衛隊防衛出動なり自衛隊の展開する行動範囲、そういうものとも密接にかかわっているわけですね。したがって、国民としても一定限度のこと、一定範囲については知る権利があると私は思う。御説明をいただきたいと思います。
  16. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  五条研究と申しますか、我が国有事の際の共同作戦計画に関する研究と申しますのは、いろいろな日本に対する侵略の様相というのはあると思いますけれども、そのうちの一つシナリオといいますか、それについての研究が一段落して、現在はその補備、修正をやっているということでございますけれども、この作戦研究そのもの目的が、一つシナリオを設定をして、その際に自衛隊はどうそれに対応するか、米側にはそれに対してどのような支援をしていただくかといったようなことをシナリオに応じて詰めていくわけであります。これが将来どういうことになるかといいますと、私どもとしては、御承知のように防衛庁年度防衛計画ということで、各年度、その年に何か不測事態があったらどうするかという計画をつくっております。そういったものに、その研究の成果というもので取り入れるものがあれば取り入れていくし、さらに研究を続けるものは続けていくということでありまして、現在の研究そのものはあくまで研究であって、日米共同計画をつくっているという代物ではないわけであります。  いずれにしましても、日本に対する不測事態のときにどう対応するかという計画でございますので、内容については御勘弁をいただきたいと思っております。
  17. 上原康助

    上原委員 内容について御勘弁をいただきたいと言っても、はい、そうですかと言うわけにはいきませんが、きょうは防衛論争じゃないので、これはいずれまた、もう少しお尋ねをしなければいけないことになると思うのです。  要するに五条研究の場合、日本有事の場合、ひとつ確認をしていただきたいことは、安保条約適用にしても防衛出動にしても、あくまでも日本が急迫不正な状況にあって我が国攻撃を受けた場合にのみ、この五条発動というのは、あるいは自衛隊出動行動というのは一応法律上起こり得ると思うのですね。それを前提としたものなのかどうかということが一つですね。  それともう一点は、後はどのお尋ねと関連をするわけですが、第五条で言う場合も、いわゆる海峡封鎖であるとか通峡確保というか、シーレーンという概念と若干違いますけれども、そういったシーレーン防衛研究ということもこの第五条の場合においても含まれているのかどうか。  この二点は明らかにできると思うのですが、いかがですか。
  18. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の趣旨、必ずしも正確にとらえているかどうかわかりませんが、御承知のように、ガイドラインに基づく共同作戦計画研究なりあるいはシーレーン研究も、やはりガイドラインというものに基づいて行われておるわけでありますが、いずれにしましてもそれらは、日本に対して武力攻撃がなされており、日本をいかに防衛するかというための研究であるということでございますので、それが私どもとしては五条事態通常の場合五条事態であろうと思いますし、そう特殊な場合、五条事態でないような場合というものを想定して研究するということではなくて、一般的な防衛出動下令事態であり、かつ、五条による日米共同対処行動が行われておる事態というものを研究いたしております。
  19. 上原康助

    上原委員 じゃ外務省お尋ねしますが、五条発動というのはあくまでも我が国攻撃を受けた場合に限るわけでしょう。
  20. 小和田恒

    小和田政府委員 日米安保条約五条は、日本国施政権下にある地域に対する武力攻撃について規定しておるわけでございます。
  21. 上原康助

    上原委員 そうしますと、さっき五条研究については防衛庁がやっているということですが、安保条約適用はあくまでも我が国がそういった武力攻撃を受けた場合に限るということであるなら、当然それはそういうことを前提とした研究である。もちろん軍事戦略とか軍事研究ですから、いろいろなことを想定をしてやるということは私もわかりますよ。わかりますが、防衛局長、厳格にそれを運用していくという場合、あくまでも今言う侵略を受けた場合に対処するシナリオであるというふうに理解していいのですか。それを踏み越えたものですか。
  22. 西廣整輝

    西廣政府委員 こちらが対処行動をとっておる状況でございますので、もう既に現実に日本に対する武力攻撃が発生をしておる事態というようにお考えいただいて結構でございます。
  23. 上原康助

    上原委員 それともう一点は、これとのかかわりもあることになると思うのですが、自衛権発動の三要件、このことについての防衛庁見解も変わっておりませんね、どうですか。これが一つと、もう一つは、この日米防衛協力研究自衛権発動要件という面とのかかわりはどうなるのか。この二点について。
  24. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問に答える前にちょっと補足しておきたいのですが、先ほどの共同作戦計画なりの研究の中には、いわゆるおそれのある事態というのが入っておりますので、その点は御了解いただきたいと思います。  それから、今御質問自衛権行使の三要件といいますか、今先生発動の三要件と言われましたが、私は、三つございますうちの一つは、発動の際だけではなく、それ以後も引き続いて要件になっておるのじゃないかと思いますので、あえて自衛権行使の三要件と申し上げますが、これについては全く従来の考え方と変わっておりません。  それと、ちょっと私、正確にとらえてないのですが、(上原委員有事研究との関係」と呼ぶ)有事研究と申しますか、米側との研究でございますね。(上原委員「そうです」と呼ぶ)その関係でございますが、私どもの方は、そういったぎりぎりのどういうときに発動されるかといったような面の研究というよりも、もう既に侵略が行われておる、あるいは行われるおそれがあるという段階で、軍事的にどういう対応をとるかという方を中心にしまして考えておりますので、いわゆる法解釈的な面については従来の解釈の枠内で考えていくということで、あえてそれを米側とやる意味は特にございませんので、そういう点についてはすべて従来の物の考え方の枠内でやっておるということでございます。
  25. 上原康助

    上原委員 おそれのある場合の対処ですが、この判断は非常に微妙な面があるわけですよ。おそれがあるということをだれが判断するのか。もちろんそれを確定的な答弁をしなさいと言っても、それはケース・バイ・ケースとかまたいろいろおっしゃるかもしれませんが、おそれがあるからといって、例えばおそれがあるということで先制行動できるのですか。例えば津軽とか対馬とかそういう海峡封鎖、まだ我が国が実際に安保五条適用もない、防衛出動態勢にもないときに、どうもおそれがある、自衛隊はそういう行動ができるのですか。あるいはまたそれを想定をして、さっきいろんなことを想定をして研究をやっている。研究をやるのはいいのだが、やるのはいいというよりもそれは当然皆さんのことだからやっているとは思うのですが、おそれがあるからということでむしろ軍事行動をしかける、あるいは軍事展開をこっちの方から、まだ攻撃を受けていないにもかかわらずしかける、そういうものが日米有事研究じゃないですか。そこらの点についてはどういうふうにお考えなのか、またどの範囲でやっておられるのか、もう少し詳しく答弁してください。
  26. 西廣整輝

    西廣政府委員 今御質問のおそれのある場合というのは、私、自衛隊法七十六条の法令にある「おそれのある場合」というふうに理解してお答えいたしますが、御承知のように防衛出動下令は「おそれのある場合」、この判断は総合的に判断しなくてはいけないので具体的な状況に即して考えざるを得ませんが、下令できるようになっております。しかし、先ほど来申し上げているように、実際の自衛行動自衛力行使武力行使というものは自衛権行便の三要件に合致しなければ行使し得ないわけでありまして、繰り返すようになりますが、現に急迫不正の侵害、つまり武力攻撃が発生しているということ、それから他にかわるべきこれを排除すべき手段がないということ、そして自衛権の必要な範囲にとどまるべきことという三要件を満たさない限り武力行使そのものはできないわけでございますので、その点、防衛出動下令ができるかできないかということと自衛権行使をするかしないかということは分けてお考えをいただきたいと思います。
  27. 上原康助

    上原委員 ですから、その点は私も一応理解をしてお尋ねしているつもりですよ。三要件というのは変わっていない。その枠内の五条適用あるいは日米共同対処とならなければいかないわけですね、実際問題として。そのことを念を押しているわけです。  そこでさっきの話に戻すわけですが、五条については今言うようにまだいろいろお尋ねしたい点もありますが、きょうはこの程度にとどめておきます。  今進めているというこの六条を発動する場合の研究、これが極東有事の場合だと思うのですが、この極東有事という場合のいわゆる極東範囲ですね。これはもうこれまでも何回かいろんな議論をされて、私も古い議事録も若干目を通したのですが、防衛論争の半分以上は、極東の問題と後でお尋ねする事前協議の問題と言っても過言ではないですね。しかしその都度、外務省なりあるいは歴代の総理答弁も変わってきている。極東範囲という場合に非常に矛盾点があるわけですね。したがって、極東有事という場合は一体何を意味するのか、どういうことを想定するのか。朝鮮半島の有事なのかあるいは極東、いわゆる一般的に言われているフィリピン以北日本周辺諸国、また日米共通関心下にある地域、こうなると宇宙規模にもなりかねないわけだ。あくまで極東という場合、この日米安保ができる段階においては日米間でその行動範囲ということについては明確にして線引きをしておかなければいけなかったことだったと思うのですが、改めて、極東範囲に対してはどうお考えなのか、このガイドラインで言う極東有事の際の共同対処研究というものはどういうようなことを想定をしてやっているのか、明らかにしてください。
  28. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先生の御質問の中には幾つかの要素があるように思われます。  一つは、そもそも安保条約上に言う極東範囲とは何かということが一つでございます。それから、先ほどから議論が出ておりますいわゆる五条研究範囲安保条約極東範囲とは一体どういう関係になるのかということでございます。それから、先ほど申し述べましたいわゆる六条研究通常極東有事と言っておりますけれども、その研究における極東範囲と、一体極東をどの辺を考えているのかというふうに、三つあるかと存じます。それの三つにつきましてそれぞれお答え申し上げることでよろしゅうございましょうか。  それでは、まず極東範囲そのものにつきましては、もう先生よく御存じのとおり昭和三十五年二月二十六日の統一見解がございまして、それは、「一般的な用語としてつかわれる「極東」は、別に地理学上正確に画定されたものではない。しかし日米両国が、条約にいうとおり、共通関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通関心の的となる極東区域は、この条約に関する限り、在日米軍日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。かかる区域は大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれている。安保条約の基本的な考え方は、右のとおりであるが、この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するために執ることのある行動範囲は、その攻撃又は脅威の性格いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」これが、昭和三十五年以来政府が一貫して答弁しております安保条約上に言うそもそも極東範囲は何かということでございます。  それから第二点の、いわゆる五条研究におきまして極東範囲は何かと申しますか、この極東の定義とどういう関係があるかということでございますけれども、その点につきましては、先生御存じのとおり昨年岡田春夫委員の御質問がございまして、二月二十一日衆議院予算委員会におきまして政府見解を出しておりますが、その要旨は、「我が国自衛権行使として我が国防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではないことについては、政府が従来から一貫して明らかにしているところであるが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので一概には言えない。」ということでございます。  それから、六条研究でございますけれども、これは、日本以外の極東における事態我が国の安全に重要な影響を与える場合に、我が国が米軍に対して便宜供与を行う、その内容についての研究でございます。この場合の極東と申します考え方といわゆる安保条約に言います極東範囲というのは、そもそもこれは我が国我が国において行う便宜供与でございまして、我が国自衛権とか自衛隊関係しておる問題でございませんで、我が国内での便宜供与でございますので、ここに言う極東といいますのは法的概念ではございませんで、地理的な概念として一般的な考え方から極東というふうに考えておるわけでございます。
  29. 上原康助

    上原委員 最初に指摘しましたように、相変わらず三十五年二月二十六日の統一見解、また今引用されました岡田先生お尋ねに対する安倍外務大臣の、まあ三十五年のものを追認したような統一見解ですが、私はそれを言っているわけではないのですよ。あなたがおっしゃるように、確かに五条というのは我が国防衛というか安全に寄与する範囲、それは必ずしも領空、領海だけではなくして公海にも及ぶという前提はありますね。     〔戸塚委員長代理退席、石川委員長代理     着席〕  では防衛庁、今の外務省の後段の答弁は、第六条の極東有事研究という場合は地理的概念を言っているものであって、必ずしも防衛を対象にしたものではないという答弁だったような気がするのですが、本当にそういうふうに理解していいのですか。そうでないのでしょう。僕は、五条適用ということと六条をごっちゃにしているわけではない。五条と六条を切り離していいのですよ。極東有事の際の研究という場合、日米共同対処するというのがガイドラインの基本でしょう。そうすると、地理的範囲だけではないということで片づけられる問題じゃないのです。シナリオ中身は、明らかに自衛隊行動ということにもかかわってくる。それはどのように区別をして、どういう範囲まで及ぶ有事想定した研究をしているのかということを明らかにしてもらいたいのであって、この段階においては、フィリピン以北とか地理的に画定されたものではないということで片づけられる代物ではないのだ。
  30. 小和田恒

    小和田政府委員 防衛庁に対する御質問でございますが、その前に一点だけ補足して御答弁申し上げたいと思います。  ただいま北米局長が申し上げましたのは、第六条関連、いわゆる極東有事の場合における共同研究と申しますものは、主として我が国我が国における米軍に対する便宜供与という面に着目して、そこに力点を置く形で考えられておるということを申し上げました。その関連におきまして今のような答弁を申し上げたわけであります。  他方、ガイドラインとの関係について申し上げますと、委員承知のとおり、このガイドラインの中では「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」という問題と、「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」、こういう分け方がなされているわけでございまして、ここで三番目と書いてありますケース、つまり「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力」という問題は、もちろん日米安保条約の枠内において行われることでございますので、安保条約の条文との関連で申し上げますれば、安保条約第六条のもとにおける事態において、日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与えるというケースがあったときに、日米間でどういう協力を行うかということが対象になっているわけでございます。その意味におきまして安保条約第六条の問題を想定しておるということでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 それじゃ逆に、具体例としてお尋ねしますが、六条というのは確かに条約上は、極東の平和と安全に寄与し、我が国とのかかわりにおいて米軍が行動する場合の日本の国内にある米軍の施設、区域便宜供与を与えるものだ。そうしますと、今のような条約解釈上だけで論議をすると問題が残るということは、例えば横田でもいいし、岩国でもいいし、青森でもいいし、沖縄の嘉手納基地でもいいです、極東有事だということで米軍の戦闘機が飛び立っていった。これは艦船でもいいですよ。横須賀でもいいし、佐世保でも、ホワイト・ビーチでもどこでも、日本の港から米軍の艦船が出航していった。領海、領空内は別として、我が国の領海、領空を離れていって、それが軍事行動として出動していくといった場合に、これは極東有事だということで、その戦闘機なり軍艦に対して自衛隊との共同行動ができますか。そういうこともシナリオとしては研究されているわけでしょう。どうなんですか。まだ日本攻撃を受けてないのですよ、アメリカの判断で、極東のあるいはフィリピンのあるいは朝鮮半島の有事だというような想定出動していった場合に、その米軍機、米軍艦船が途中で公海上で攻撃を受けた、それに対して自衛隊なり我が方に共同行動を求めてきた場合にはどうなるのですか。
  32. 西廣整輝

    西廣政府委員 極東有事と申しますのはあくまで極東有事でございまして、我が国に対する武力行為が現に発生していないという状況でございますから、当然のことながら自衛隊自衛行動に出るわけにはまいりませんので、米軍との間に共同対処行動が行われることはあり得ないわけでございます。
  33. 上原康助

    上原委員 そうすると、この極東有事の場合の共同研究というのは、米側への便宜供与前提にしたものというだけじゃないわけでしょう。といいますのは、この一月の日米安保協議でいろいろなことが日米間で討議されたのじゃないですか。例えばシーレーン防衛共同研究、もちろん極東有事という場合とシーレーンは直接的にはつながらない面もありますが、極東範囲の中にはシーレーンも含まれますね。後で会議録も引用しますが、「シーレーン防衛共同研究について、現在、具体的な作戦能力の分析作業が精力的に進められていること、この作業の過程において、作戦構想等に関する日米相互の理解を深めることができたこと等を日米共同説明した。その際、この研究については、できる限り早い時期に実りある成果が得られるよう努める必要があるということで日米双方の意見の一致をみた。」となっているわけです。日本有事の場合のシナリオはでき上がって、既に第六条の研究シーレーン研究に入っている。確かに法律上は、法律上というかあるいは私が言ったようにこれはできないでしょう。さっきの質問に対してあなたができると言ったらこれは大ごとなんです。さすがにそこまでは言わなかった。前提はあくまでも、我が国攻撃を受けた場合にしか安保発動というのも自衛権発動ということもないはずなんです、今の一つの枠としては。その点は共通認識がまだできている。だが、これまでのいろいろなことを考えると、公海上でもアメリカの護衛ができるとかできないとか、あなたの今のような答弁とこの間の予算委員会でのあれとは若干また矛盾しますよ。我が方がまだ攻撃を受けていない、しかしアメリカとしては極東のどこかで有事があって便宜供与が必要だといって飛び立ったことに対して、それが、艦船なりが攻撃を受けた場合は護衛できるとかできないとか言ってみたり、今はできないと防衛局長は言いましたが、それは別として、このシーレーンとのかかわりにおいては、では極東有事の場合の共同対処のあり方というのはどういう関係があるのですか。別の角度から聞いてみましょう。
  34. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来北米局長防衛庁防衛局長がお答えしていることに尽きるわけでございますけれども、誤解があるといけませんので、もう一度その点について申し上げたいと思います。  委員が御指摘になりましたように、我が国が個別的な自衛権発動し得るケースというのは、我が国に対する武力攻撃があった場合でございます。ただ、従来から国会において政府側から答弁申し上げておりますように、我が国に対する攻撃があった場合というのは、我が国施政権下にある領域に対する武力攻撃があった場合はもちろんでございますけれども、それ以外にも、我が国の艦船等が計画的、多発的、組織的、意図的に攻撃を受けるというようなケースがあります場合も我が国に対する攻撃があるケースでございまして、一般国際法上も我が国がそれに対して個別的な自衛権行使し得るケースであるわけでございます。したがいまして、その前者の場合は安保条約との関係について申し上げますと第五条の問題になりますけれども、後者の場合は第五条の問題ではない、こういうことになるわけでございます。
  35. 上原康助

    上原委員 それでは、条約解釈上はそうなるでしょうが、いずれにしても我が国攻撃を受けた場合に限られる、自衛権発動というのは。それで、これとの関係で、私が今引用した日米安保事務レベル協議でこのシーレーン防衛について研究がなされておるという問題とのかかわりにおいてお尋ねをしますが、海上防衛力整備の前提となるいわゆる海上作戦の地理的範囲極東有事関係はあるのかないのか。それと、シーレーン防衛という場合には海上交通安全確保という解釈もしておるし、また一方においては航路帯だということですが、シーレーン防衛あるいは海上交通安全確保ということでもいいかと思うのですが、従来は極東範囲、先ごろは極東範囲じゃなくして海上交通の安全確保という場合には要するに我が国周辺数百海里、あるいは航路帯を設定する場合は南西南東一千海里、おおよそ一千海里だ、このことは今も間違いないですか。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合は一千海里と申します場合は、防衛力整備の対象として考えるというようにお考えいただきたいと思います。実際の防衛行動につきましては、そのときどきの状況によって一概に言えない。しかしながら、能力からいい、かつ、自衛権行使し得る範囲ということでおのずから限度がありますというように、従来からお答えを申し上げております。
  37. 上原康助

    上原委員 そこは少し違いますよ。この一千海里というのは、鈴木前総理がアメリカに行ったときに、一千海里までは庭先だなんと言って、本当にそうなのか。防衛力整備対象が数百海里であって、あるいは航路帯を設ける場合一千海里であって、そうすると能力さえあればどこまでいくのですか。
  38. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず防衛力整備の対象として周辺海域数百海里と申します場合は、いわば面としてこのくらいのものを考えておるということでありますし、航路帯を設ける場合の一千海里ということになりますと、言いかえますと、線として一千マイルぐらいまで護衛できるような能力を持つということを目標に防衛力整備をいたしておるわけでございますが、具体的な海上防衛の態様ということになりますと、そういった面的な哨戒をやるという場合もありますし護衛をやる場合もある、場合によっては点としてやるということにもなりますので、能力が一定であってもいろいろな行動態様によってその地理的範囲が異なりますし、それは必要性の有無、それから憲法の言う自衛の範囲内にとどまるかどうかといったようなこと等の中で、一に状況によるというように申し上げる以外にないと思います。
  39. 上原康助

    上原委員 いつでもそういうことで全部拡大していくわけですね。専守防衛の概念、必要最小限度の防衛力整備という枠、態法の基本方針からしても、今のあなたのような答弁では納得しかねますね。だから、私が極東範囲ということをなぜ問題にしているかといいますと、結局は、この安保六条で言う極東の範四の軍事行動をできるところまでは将来自衛隊共同対処していこうという下心があるのじゃないですか。だから、OTHというのも必要だ、AEGIS艦も必要だ、空中給油も欲しいのだ、こうなってくるわけでしょう。  あなた、今防衛力整備対象が数百海里、一千海里だというようなことを言っていましたが、「地理的範囲について」という、参議院の予算委員会でいろいろ議論をされて答弁が出ていますが、こういう見解をお出しになっているわけでしょう。  「「周辺海域」という用語については、その後昭和五十三年に決定された「日米防衛協力のための指針」(五十三年十一月二十八日国防会議及び閣議において報告、了承)において、「周辺海域」の範囲を、日米共同して作戦を行う海域という観点から、」、いいですか「日米共同して作戦を行う海域という観点から、」というふうに言っていますよ。「航路帯を設ける場合のおおむね千海里程度の海域をも含むより広い概念で使用しているが、」と、ここでも拡大解釈が有権的にされている。「これは運用上の観点に立ったものである。」したがって、従来数百海里あるいは一千海里の航路帯と言ってきたけれども、それは周辺海域の範囲日米共同して作戦を行う海域という観点から決められたものだというふうに理解できるんじゃないですか。ここで答弁していること、この意味はどういうものか、もう一度明確にしてもらいたい。
  40. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生、今三つの点の話だと思うのですが、一つは、周辺防衛力整備の対象として、我が国周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域と申すものは、かねがね防衛力整備の対象として考えておるものでございますということで政府答弁をいたしております。  それからもう一つ、海上交通保護のための武力行使の地理的範囲ということにつきましては、海上防衛力整備の目標から見て能力的におのずから限度はございますが、また憲法上からも無制限に遠方まで行動してよいというものではありませんけれども、具体的な範囲というものは侵略の様相等により異なりますので、あらかじめ答えられる性格のものではないということも、これも非常に古くから繰り返し御答弁しているところであります。  そして、今御質問のありました周辺海域という点につきましては、これはガイドラインに書かれておる周辺海域という意味防衛力整備の対象としている周辺海域数百海里という関係がどうなっておるかということで御質問がありまして、その際、ガイドラインで、例えば日本周辺海域における海上交通保護作戦については日本が主体となって行うとか、そういう点の周辺海域というのは、ガイドライン日米対処行動について述べておりますので行動の範域として考えておりますので、防衛力整備で言っておる周辺海域というものとは違う性格のものでございますという政府答弁といいますか、答弁書を出しておるというように理解をいたしております。
  41. 上原康助

    上原委員 そうしますと、ガイドラインで言う日米共同対処する範囲、それは自衛隊の場合は数百海里であり、航路帯を設ける場合は南西南東の場合一千海里までだ、その枠内だということは一応あるわけですか、共同対処する場合でも。アメリカはそれを超えるかもしらない。もちろん超えるでしょうね。そこはどうですか。
  42. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますように、周辺海域数百海里と航路帯一千マイルというふうに分けて数字まで入れて申しておるのは、防衛力整備の対象として言う場合でありまして、ガイドラインは運用行動について申しておりますので、ガイドラインをごらんになればおわかりのように、周辺海域とか航路帯というような分け方をいたしておりません。  ただ、海上交通保護等の作戦を行うについて、日本周辺海域、これは文字どおり言葉としての周辺の海域という意味でございまして、特段に何百海里とかあるいは航路帯が一千マイルとかいうように厳密に区分しているわけではございませんが、日本周辺の海域については日本が主体となって作戦を行うというような表現になっておるわけでございます。
  43. 上原康助

    上原委員 防衛局長、いつまでもそういうお答えじゃいけませんよ。私だってある程度勉強してやっているんだよ。問題は、極東有事とかそういった日米共同対処をする場合の我が自衛隊行動範囲というものがどうなんであろうかということが問題なんだよ。  あなたの答弁は、防衛力整備計画の目標が数百海里であり、一千海里であるということを言ってきた。しかも今はまだその水準に達してないわけでしょう。防衛力整備計画は、中期防はことしからしかスタートしてないじゃないですか。その水準に達して初めて能力があるのだということをさっき言ったのだ。にもかかわらず、ガイドラインに言う日米共同対処範囲がどうなるかというと、これはあくまでも自衛隊行動範囲を数量的に言ったものであって、共同対処する場合はその枠ではないのだ。矛盾するじゃないですか。ここで、海上交通の対処をする場合の行動範囲というのは一体どうなんですか、自衛隊行動範囲というのは。
  44. 西廣整輝

    西廣政府委員 御理解いただけないのは残念なんですが、まず、あらかじめお断り申し上げておきますが、我が自衛隊行動するということは、先ほど来何度も申し上げておりますように、極東有事の際には日米間で共同対処するというようなことはあり得ないわけでありますから、いずれの場合にしても、我が国に対する武力攻撃が行われている状況においての話ということにまず限定されていることを御理解いただきたいと思います。  そこで、その際に、我が国が海上交通保護のために行うシーレーン防衛のための行動範囲ということになりますと、これまた先ほど来何度も申し上げているように、その具体的な範囲というものは一概にあらかじめ言えないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、日本の能力、それから我々が規定されております憲法の範囲内の行動ということになりますから、日本が主体的に行動する範囲というものは日本の近間である周辺海域が対象になるということを先ほど来申し上げておるわけてあります。
  45. 上原康助

    上原委員 極東有事の場合は自衛隊行動というのはあり得ない、その点は確認できますね。
  46. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊行動というのは非常に広うございますけれども先生の御質問自衛隊武力行使あるいは日米共同対処行動ということであれば、そういうものはあり得ないということでございます。
  47. 上原康助

    上原委員 これはまた次の機会に進めるとして、極東範囲ということでもう一遍確かめておきたいわけですが、「フィリピン以北」と言う場合に、フィリピンを含めるのかどうか。
  48. 小和田恒

    小和田政府委員 従来からたびたびお答えしておりますように、極東範囲というのは明確に地理的に区切られた概念ということではございませんので、要するにこの安保条約との関連におきまして日米両国がその平和及び安全の維持に共通関心を有する区域、こういう性格でとらえるべきものであるということでございます。したがいまして、一々の地域についてどこが入るとか入らないとかいうようなことを明確に、厳格に申し上げるのは必ずしも適当ではないと思いますけれども、先ほど北米局長が申し上げました統一見解にありますように、「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域である」、こういうふうに申し上げておるわけでございます。そこで言っております「フィリピン以北」ということは、当然のことながらフィリピンが入っておる、こういうことでございます。
  49. 上原康助

    上原委員 フィリピン全域が入るわけですか。
  50. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど申し上げましたようにこれは地理的な概念ではございませんので、フィリピンが入る、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  51. 上原康助

    上原委員 では一応フィリピンは入ると言うのなら、外務大臣もそういう答弁をずっとやってきて、強いて言えばフィリピンは含まれるということなんだが、フィリピンの島の数とか面積とか、そういうものを想定をし、その周辺海域ということになると、これはもう膨大なあれなんだよな。  しかし、インド洋は入らないでしょう。どうなのですか。
  52. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来申し上げておりますように地理的な概念ではございませんので、一々どこが入るとか入らないとかいうことについてお答えすることは適当ではございませんけれども、先ほど申し上げました一般的な定義から考えて、入らないというふうにお考えいただいて結構でございます。
  53. 上原康助

    上原委員 そうしますと、基地の便宜供与というものは、あくまでも極東範囲は地理的に画定されたものではない。またその周辺と言うかもしれないのだが、ヨーロッパから見てファーイーストなんですよ、極東というのは遠い東のことなんだよ。この極東範囲について、あなた方は絶えず、問題が起きても、これはその周辺であるとかあるいは強いて言えばとか、こういう御答弁でやってきているわけなんだが、まあごまかすという言い方はしないでおきましょう。  そこで、これはこれまで、日米間で本当に安保条約適用するというか運用していくということで動いていって、極東ということについての米軍の行動をする範囲として話し合ったことがあるのですか。日米間の理解というか認識というのは確定しているのですか。もしあれば明らかにしていただきたいと思うのです。
  54. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 極東範囲につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、昭和三十五年以来国会においてもいろいろ議論されまして、それについて政府の公式の見解を出しております。それについて米側は、これを一々詳しく存じておるわけでございます。米側との間に何ら意見の相違はないということでございます。
  55. 上原康助

    上原委員 そうじゃないよ、あなた。そうしますと、米軍が我が国の施設、区域を利用できる範囲というのは極東範囲でしょう。それも違うのですか。
  56. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど北米局長が、昭和三十五年の政府統一見解をお読みいたしましたが、その中にも明確に述べられておりますように、極東範囲の問題と、それから米軍が、この極東において武力攻撃が行われ、あるいはこの地域の安全が周辺地域に起こった事態のために脅威されるような場合に、これに対処するためにとることのある行動範囲というものは、その攻撃または脅威の性質いかんにかかわるのであって、必ずしも前記の区域、すなわち極東範囲に局限されるわけではないということは、従来から政府の申し上げていることでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 そうなると宇宙規模になるのじゃないですか。私はきょうはこの議論はしませんが、前もこの委員会でしたか沖特かで取り上げたのですが、例えば今の沖縄の那覇軍港は、完全にインド洋にあるジエゴガルシア島のアメリカの事前集積船の母港になっているじゃありませんか。安保条約を結ぶ場合に、恐らくそこまで想定した安保条約適用じゃなかったはずなんだよ。ペルシャ湾に至るインド洋でもいいし、大西洋でもいいし、オホーツク海でもいいし、世界の至るところに、宇宙的規模で極東の安全に寄与する、あるいは周辺地域だということになれば、これはますます拡大解釈されていくわけでしょう。そんなばかげた条約解釈というものが一体どこにありますか。なぜ那覇軍港をああいう事前集積船の母港化させているのですか。インド洋のジエゴガルシア島の周辺にしかその基地はないのです。それが今三カ月ないし四、五カ月、ずっと八〇年ごろから航行しているわけでしょう。この事実は皆さんどういうふうに答弁なさるのか。  今一つの例を挙げましたが、余りにも勝手な解釈である。だから、日本はもう全土要塞化されているという言い方もできるわけだ。全くの自由使用じゃないですか。極東範囲といったって、ある程度の周辺はあるわけですよ。朝鮮半島なら南は含まれるが北の方は、共和国は入ってない。しかしそれは、周辺といえば、朝鮮半島のいろいろなことについてはある程度常識的に理解できる。だが、インド洋に至るまで極東範囲だから、日本の基地を勝手に使用してもいいのだ、そんな条約の解釈は成り立たぬですよ。そういう問題があるから、我々は、極東範囲ということをこれまでも、古くて新しい問題だが、歯どめはないのじゃないかと言っている。お答えください。
  58. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほどから累次御答弁申し上げておりますとおり、極東の平和と安全は安保条約目的でございまして、事前集積船につきましては、これは今第七艦隊に所属しておるわけでございますが、インド洋に前方展開することが非常に多くあるわけでございます。同時に、その展開は各所にまたがるということでございます。またその目的は、安保条約目的といたします極東の平和と安全に寄与する役割を果たしておるわけでございまして、その事前集積船が那覇軍港等日本の施設、区域を使うことについては、安保条約の趣旨に全くもとるものではないというふうに了解しております。
  59. 上原康助

    上原委員 もう一事が万事、そういうことで片づけられたら困るのだよ。条約にしても法律にしても前提があるので、ちゃんと枠があるのだ。極東の平和と安全に寄与する、そういう解釈に立てば、まさに宇宙規模じゃないですか。そういう安保論議やそういう解釈をやるから、いつまでたっても本当に踏み込んだというか、論議がかみ合わないのだ。これはどうしても納得できない。  それで、今のこととも関連するのですが、忘れたら困るので今一例を出したから言いますが、沖縄返還のときに、いわゆる五・一五メモというのがあったわけです。沖縄の返還時における、沖縄の米軍基地使用の態様というか使用目的等々についての日米の取り決め、これも沖縄国会なりその後のいろいろなところで相当議論がなされて、ようやく七八年の五月、復帰は七二年だから復帰五年後にやいやい国会で話したら、外務省と施設庁がこういうのをまとめて出した。大した中身でもないのだが、こういうものもないよりはましだ。あなた方がどういうことをしているか大体わかる。  そこで、このときもメモとしては、五十一施設のうち二十二施設しか基地の使用目的とか態様について出していないわけだ。しかも、今の那覇軍港であるとか伊江島の訓練場であるとかその他は十四、十五、十六の安保協で条件づき返還になっているはずなんだよ。しかしそれが果たされていない。基地の使用目的もその後みんな変わってきていると思うのです。陸軍使用だったところがマリーンになったり、あるいは空軍とマリーンの共同使用になってみたりしている。そういう意味で、これがどう変わって、その都度日米間で使用目的を精査し合意してやってきているのかというのが一つ。どうなっているのだ。まずそれからお答えください。
  60. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 日米合同委員会の協議の内容につきましては、委員御存じのとおり、アメリカ側との話し合い、了解によりまして、これは公表できないということでございます。  五・一五メモにつきましては、特殊のケースとしてその一部についてお示ししたわけでございます。したがいまして、一般論といたしまして、五・一五メモが五十三年五月でございますけれども、その後の沖縄の状況等につきまして、常に日米合同委員会でも話し合いはしておるわけでございます。
  61. 上原康助

    上原委員 だから、使用目的は何であるか、それは日米で合意できないから出せない。極東範囲はどうかというと、これはインド洋もどこだっても極東の平和と安全に寄与するから使って差し支えないんだ、国民には知らせぬ、存ぜぬで、あなた方だけがわかっている。そんな条約とか、そんな協定ってありますか。日本はまさか植民地じゃないんでしょう。全く従属機関じゃないか。  そこで、出せないということはこれまでももう百回以上も聞いてきた。だから、私が国会でいろいろ言ったからこれを出したのだ。ようやく何かそれらしきものをつくってきた。その後、どう運用が変更されてきたのか、どういうふうに日米間で取り決めされたのか、現時点においての沖縄の基地の態様、使用目的等について明らかにしてもらいたい。これは前には出して今は出せないというはずはないんだよ。意欲の問題だ。この点は大臣からもお答えいただきたいと思うのですが、さっきからの極東範囲の問題とか、余りにも皆さんおめでた過ぎますよ。もうアメリカが言うのはイエスサー、イエスサーじゃないの。ノーということがわかるかね。今の資料提供の問題と、明らかにしていただきたいということとを含めて、大臣の御見解も求めます。
  62. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 既に、五・一五メモにおきまして使用目的につきましても概要はお示ししたわけでございます。その後の状況の変化等につきまして、累次日米合同委員会でも話し合っておりますけれども、基本的には隊舎、事務所の設置、あるいは基礎的体力の訓練場のような米軍の運用、どの施設、区域にも基本的にあるような、施設につきましての使用形態の変更ということはあり得るわけでございますが、それは米軍の内部のことでございます。したがいまして、その後の基本的な変化というものは、米軍との間でいろいろ話しておりますけれども、それほど大きい変化はないというふうに承知しておりますし、そこの点につきましては、五・一五メモをお示ししたわけでございますので、特定の具体的な案件があれば、それについていろいろとまた、我々としても現地の状況などを踏まえて検討していくということは可能かと思いますけれども、五・一五メモのような形で全般的にお示しするということは困難かと存じます。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから政府委員答弁をいたしました極東範囲その他の、今御質問がありました政府条約の解釈につきましては、ずっと首尾一貫、昭和三十五年以来一貫してとってきた政府の解釈であって、私も聞いておりまして、御指摘のように決してこれは最近に至って拡大解釈等をしたものではない、一貫した政府見解であるということであります。
  64. 上原康助

    上原委員 大臣、何が首尾一貫した解釈ですか。あなたは安保条約のときに安保特におられたんでしょう。そこまでまじめにうそをついたら困りますよ。じゃ、そうじゃないということを事前協議の問題でこれからやりましょう。  まず、資料は出しますね、出せるものは。あなたは特定と言いますが、じゃ、特定もしましょう。例えば、那覇軍港はどう変わったの。どうして使用目的を変えたの。あるいは安波訓練場、ギンバル訓練場、金武レッド、ブルーの両ピーチ訓練場、特に読谷補助飛行場、この基地等についてその後どう変更され、使用目的はどう変わったの。施設庁も来ているでしょう。少なくともここにあるだけは相談して出しますね。その点をまずお答えください。
  65. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、五・一五メモから変わっておりませんので、この点につきましては資料の御提出は御容赦願いたいと思います。
  66. 上原康助

    上原委員 これは納得できませんね。変わっているんですよ。変わっているところを出しなさい。今のことについては留保しておきますが、ぜひ出すようにしてもらいたい。  次に、事前協議の問題で、ニュージャージー入港の問題についてお尋ねします。  外務大臣、首尾一貫した答弁をしてきたと言うけれども極東範囲の問題にしても事前協議のことにしても、くるくる変わってきたんじゃないですか。じゃ、事前協議について日本側の提案権はあるのですか。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点については私からもしばしば答弁をいたしておりますように、これも政府は一貫して答弁してきておりますが、日本側としては、事柄の性質上、提案をする立場にはないということであります。
  68. 上原康助

    上原委員 あなた、何が一貫していますか。もうこれは枚挙にいとまがないほど例がある。例えば昭和三十六年四月二十六日外務委員会、この中川さんというのはたしか条約局長をやった人なんだ。私が国会に最初に出たころ、この人は外務省のどこかにおった。もうえらい三百代言、まるで高辻法制局長官の子分みたいな答弁をいつもやっておった人だ。この人さえ、「事前協議の問題でございますが、これはもちろん双方からできるわけでございます。」と言っている。それから昭和三十八年志賀国務大臣、これは予算委員会ですが、「これは、双方で、両国で協議することでございまするから、相談ができるのであります。」何が一貫している。それから大平国務大臣、これは三十九年、予算の第二分科会ですね。「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」  もう、たくさんこういうようなことを言っているのですよ。しかし、ラロック証言とかライシャワー発言とかいろいろなことで、より事前協議問題がかまびすしくなったころからいつの間にか変わった。いつ変わったんですか。いつこの拡大解釈に変えたのか。はっきりさせてください。
  69. 小和田恒

    小和田政府委員 事前協議の制度の問題につきましては、実は既にたびたびこの国会で御質問がございまして、政府側の考え方について答弁をした経緯がございます。  一番詳細にこの問題について討議が行われましたのは、一昨年の八月、衆議院の外務委員会におきまして社会党の土井議員から御質問がございまして、私が従来の経緯について御説明をしたものでございます。  その議論の詳細については時間の関係もあって省略をいたしますが、二つのことを申し上げたいと思います。  一つは、安保条約のもとにおける事前協議という制度が置かれているその理由と申しますか、なぜそういう制度が設けられるに至ったかということから考えまして、これは米国側が本来ならば自由に行い得る種類の行動の中で、第六条の実施に関する交換公文に掲げられた三つの事項については、米側が自由にやることは困るということで制限が課せられておる、したがってこれは日本政府に事前に協議をしなければならない、こういう形で設けられたわけでございます。したがいまして、これは米側がそういうことをやりたいと思うときに、日本に対して協議を申し出てくる義務がある。したがって、そういう行動をとろうという側であるところのアメリカが、それをそのときに日本側に対して協議を申し出る義務があるという、本来これは義務の問題として取り上げるべき性格のものであって、いわゆる発議権と言われるような権利の問題ではないということでございます。  それから、経緯についてお尋ねがございますので一言申し上げますけれども昭和三十五年の国会で安保条約が審議されました特別委員会におきまして、既に岸総理大臣あるいは藤山外務大臣が、この問題につきましては、これはアメリカ側から提起してくるべき筋合いのものであるという趣旨の御答弁をなさっておるということは、従来から政府が申し上げているところでございまして、その途中におきまして、先ほど御指摘のありましたような二、三の答弁があるということは私ども承知しておりますけれども、大筋におきまして、昭和三十五年以来政府が一貫して申し上げておりますのは、今私が申し上げたような事柄の性質にかんがみて、これはアメリカ側から申し出てくるべき筋合いのものであり、申し出てくることが米国の義務である、こういう立場でございます。
  70. 上原康助

    上原委員 こういうふうに政府の責任ある、しかも総理が――あなた何を言いますか、岸さんはあると言っているんだ、当時この安保特で。これは外務大臣は一番わかるんでしょう、お父さんだから。お父さんが言ったことをあなたが否定するなんておかしいよ。今の議論は、本当に冗談じゃない。何が二、三ですか。それは枚挙にいとまのないほどあるんだ。そこで、アメリカが義務であると言って、そうすると非核三原則というものがいかに空虚なものであるかというのがはっきりするわけでしょう、もうこういうふうになると。  時間も迫ってまいりますのでもう言いませんが、私はそういうようなごまかしはいかぬと思うのよ。それは大平さんにしても福田さんにしても、外務大臣あるいは総理になってからも、双方にあるということをちゃんとおっしゃっているのですよ。そのことをあなた方役人の勝手な解釈によって、昭和四十三年から何だとか、確かにそれはそれらしき発言はあったかもしらぬよ。藤山外務大臣はそういう意味のことを言ったと、それを一生懸命その一行だけを探して有権解釈に結びつけようとする。そうはいかないのよ、この事前協議の問題は。実際に外務大臣も総理大臣もあると言ってきたのですよ。そんな逃げちゃ困りますよ。逃げるというよりは、勝手に解釈するのは困る。  そこで、じゃ近々ニュージャージー、私はこの問題については、五十八年にも、八三年三月二十四日にもこの委員会でやったが、あのときは、万々一入る場合は非核ならオーケーだとあなたが言った。これもあなたと論争したんだ。核の場合はすべて持ち込みはノーだと。核の持ち込みについては、前に話したようにいかなる有事の場合だってノーですか。まずそれからもう一遍確認しましょう。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、上原委員が御指摘のように、安保条約が国会で初めて審議されました安保特のメンバーですが、あのときの議論をいろいろと私自身も聞いておりまして、事前協議制度、随分激論になったわけですけれども、当時の私の認識からしましても、事前協議制度のあり方からして、建前からして、これはアメリカが当然申し込む筋合いのものだというような認識を持っておりまして、今日に至るまで、外務大臣になりましていろいろと記録等も調べてみましたが、多少二、三の国会での先ほどのお話のような答弁もありましたけれども、全体を流れておる政府答弁の一貫した考え方は、やはり事前協議につきましてはあくまでもアメリカが申し入れるべきものだ、こういうことになっていて、これは制度から見て私も理論的にそうだろう、変更するのはアメリカが求めるわけですから、日本はこれに対してイエスかノーかということになるわけでございますし、やはり変更を求めるのはアメリカでございますから、当然アメリカが申し出るものだ、こういうふうに思います。  なお、今ニュージャージーの話が出ましたが、これはまだ何も日本に対して、入るとか入らぬとか、公式にも非公式にもアメリカから通知、通告等も来ておらないわけでございます。  我々としましては、アメリカの艦船が日本に入ってくる、こういう場合におきましては、核を搭載している場合には当然事前協議の対象になる。これはアメリカが申し出なければならぬ義務があるわけでございますから、核を積んでおれば申し出なければならぬわけでございますし、その際には日本はこれを認めないということは、しばしば国会の答弁で、これこそ終始一貫して政府が申し述べているとおりでございます。核については、有事もあるいは平時も問わず、日本は非核三原則を守っていくというのが日本の基本的な考えであることは申すまでもありません。
  72. 上原康助

    上原委員 非核三原則を守られているというのですが、これは時間が少なくなりましたから詳しくは触れられませんが、五十八年も、あのときも来るか来ないかわからぬからという。しかし米側から防衛庁に、こういうのもなぜ防衛庁に打診をされるのかよくわからないのですが、打診があったというのでしょう。ニュージャージーの入港について打診があったのかどうかということと、これは核装備されているトマホーク、核トマホークを装備されていることはもうだれも否定できないですよね。これまでのように非核も核もあるなんというごまかしはいかないと思うよ、安倍大臣。  じゃ、今申し入れがあった場合には核の有無についてはどう確認をするのですか、我が方から申し出をしないという場合は。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだニュージャージーの入港について何ら申し入れはございません。これは先ほどから言っておりますように、全くアメリカからはそういう申し出はない、今現在何もないということであります。  なお、核については、先ほどから申し上げますように、核を搭載しておれば、この核積載能力と核を実際搭載しているという問題は別ですが、核を搭載しておるということになれば、これは日米安保条約、それからその関連規定に基づいて、核持ち込みということになるのですからアメリカは事前協議にかけなければならぬ義務があるわけで、日米間のかたい信頼関係で初めて安保条約というのはできているわけですから、これはアメリカは当然義務としてかけてくるわけでございます。こざるを得ないわけでございます。その際は、日本は核の持ち込みに対してノーだ、こういうことを言うということは国会でしばしば答弁しております。この筋は日本政府として貫くということであります。
  74. 上原康助

    上原委員 いつも、核を搭載する能力と現に実際に積んでいるかは別だということ、これもごまかしです。あなた、ニュージャージーが能力はあるけれども核は積んでいないというような、本当に防衛の防を少しでも理解をする人ならそういう御答弁はできないはずですよ、外務大臣。  防衛庁にはニュージャージーの入港については何か打診があったのですか、今外務大臣はないと言うけれども
  75. 西廣整輝

    西廣政府委員 その種の情報があれば当然外務省から私の方に御連絡があると思いますが、全くそういう御連絡はいただいておりません。
  76. 上原康助

    上原委員 そこでもう一度確認したいことは、いかなる有事の場合だって平時の場合だって核持ち込みはノーだ、これは今答弁なさいましたね。そうしますと、もし米側極東有事ということで、これはかつて嘉手納空軍基地にはB52が数年にわたって駐留したのだ。B52というのは核戦略の一つの柱であることは間違いないですね、現在グアムのアンダーソン基地にいるが。このB52が、極東有事だからといって、アメリカ側が、嘉手納基地なり横田なりどこでもいいです、日本の基地を使用したいという場合は拒否しますね。
  77. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 ただいまの質問の御趣旨が必ずしも明確でございませんが、核を搭載している場合には当然事前協議があり、これに対しては必ずノーと言うということでございます。  それから、いわゆる六条研究との関連でございますれば、六条研究につきましては、非核三原則、それから日本の憲法に触れるようなことは一切研究としてはいたさないということが、芯にあります大前提でございます。
  78. 上原康助

    上原委員 私が言っているのはそれではない。核については研究しないということではないんですよ、あなた。あのガイドラインの前文というのは、研究することについてはとやかく言わないということなんだ。これはいずれやりますが。私が聞いているのは、核については平時であろうが有事であろうが日本政府はノーと言うと今答弁なさったばかりでしょう、外務大臣。そうすると、核戦略爆撃機であるB52が嘉手納基地を仮に利用したいと言う、何らかの有事態勢が起きて、アメリカ側の都合によってそうしたいと言ってくる。そのときは、核を積んでいるかいないかわからぬというようなごまかしじゃなくて、アメリカの核戦略の一つの柱であるB52の駐留については、平時であろうが有事であろうが拒否しますねということを確認してくださいと言っているんです。これは外務大臣、答弁してください。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん、先ほどから答弁しているのは、航空機にしてもあるいはまた艦船にしても、まさに核を搭載して日本に入ってくる場合は、これは事前協議の対象になるわけです。安保条約、その関連規定が存在している以上は事前協議の対象になるわけですから、その際には日本はノーと言いますということをはっきり言っておるわけでございますから、今お話しのような御心配は全くないということです。
  80. 上原康助

    上原委員 心配はありますよ、それは。はっきり言わないんだから。  そこで、なぜそう言いますというと、核を積んでいるか積んでいないかなんて、そんなごまかしはいかぬというのです。B52は核を搭載するから意味があるんですよ、B52の存在価値があるんですよ。ニュージャージーもトマホークの核装備ができたから今余計に必要なんですよ。この事実に基づいて、これは非核三原則の問題であるとして、有事であろうが平時であろうが核持ち込みはノーだということを毅然としないといかぬじゃないですか。国民の前にはあたかも非核三原則が守られているかのような印象を与えておきながら、実態は変わっている。そうじゃないですか。だって、米艦船寄港については、ニュージーランドのロンギ政権も拒否したわけでしょう。最近の例としては、中国への米艦船寄港も延期になったわけでしょう。胡耀邦中国共産党総書記は積まないことで合意をしている。だから積んでいるおそれのある米艦船の寄港は認めない。あるいはアイスランド、オーストラリア、これは英空母のインビンシブルだ。そういう隣国や大洋州では核持ち込み艦、核に対する疑惑のものについては明らかに断っているんですよ、外務大臣。なぜそれが我が国はできないんですか、特にニュージャージーについても。改めて、ニュージャージーの入港について、核の搭載が我々はこれはもう間違いないと見ている。これはいろいろな文献を見ても明らかなんだよ、一々言わないでも。そのことを確認をしてもらいたいということが一つ。  もう一点は、米側から、このニュージャージーの入港を一つのきっかけとして、ミッドウェーは横須賀を母港化してしまいましたが、日本を母港にしたいとかあるいは準母港にしたいという申し入れがあった場合に日本側としてどうするのか、この二点について明確にお答えください。
  81. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 第一点につきましては、先ほどから大臣がるる御答弁なさっているとおりでございます。日本の場合には日米安保条約がありまして、その枠組みの中で事前協議制度があるわけでございまして、その事前協議制度に基づいて、核の持ち込みがあればアメリカが当然それに対して日本事前協議を求めてくる、それに対して日本は核の持ち込みがあれば常にノーと言うということでございます。  それから第二点につきましては、全くの仮定の質問でございますので、それに対しては現段階でとやかく言う筋合いではないと思います。そういうことは現在全く念頭にございません。
  82. 上原康助

    上原委員 これで終えますが、全く根拠のないとか仮定の話じゃないんだよ、あなた。五十八年においても私がこの委員会で取り上げて、それはいろいろ問題になって、きょうは引用しませんでしたが、中曽根総理も、ニュージャージーについてはどうも疑念があるので念を押しますと言っているわけでしょう。外務大臣、念は押しますね、ニュージャージーがもし具体的に入港を申し入れてきた場合に。それと、母港化ということについては拒否しますね。――この程度のことについてはこれは局長答弁じゃないですよ。そういった点は明確にお答えくださいよ。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ニュージャージーにつきましては、まだ入るとも入らないともアメリカは言っていないわけですけれども、しかし、全然完全にそれは入らないということも言えないと思います、これは日米関係ですから。しかし、日本の場合は、もちろんアメリカの艦船が入港する場合にはこれを認める、これは安保条約、その関連規定によって認めるということになっておるわけでございます。しかし、そういう中で事前協議制度というのがありますから、私はこれは非常に立派な制度だと思っております。これによって日本の非核三原則は守られておる。ですから、もし核を持ち込むということになればこれは日本事前協議の対象になりますし、当然アメリカはこれを義務として対象にしなければならぬ、そのときは日本はノーだと言うわけで、もし仮にニュージャージーが入ってくるという場合においても、核搭載能力は別にして、現実に核を持って入るというときは当然これは事前協議にかけなければならぬ、こういうことでございますが、しかし同時にまた、今上原さんもここで指摘されましたように、アメリカの艦船の入港については国民的にもいろいろと疑問も出ておるし、あるいはまた国会での論議もあるわけで、やはり日本政府としましても非核三原則を守っていくという姿勢ははっきりしておかなければなりません、また、アメリカに対しましてもそういう日本考え方はやはり十分知っておいてもらわなければならぬ、これはそういうふうに思います。  したがって、私も外務大臣になったときに早々にマンスフィールド大使を呼びまして、例えば三沢のF16の配備あるいはまたその他につきまして、日本としても非核三原則を守っていくんだ、日米安保条約、その関連規定をお互いにきちっと守りましょう、こういう一般的な日本の立場を説明をいたしまして、そしてアメリカ側からマンスフィールド大使が、アメリカとしても安保条約、その関連規定を守っていきましょう、お互いに信頼関係があって初めて日米関係が成り立つんだという回答を得ております。  そういうことも踏まえまして、今後またそうした事態、必要な事態というふうに私自身が判断をすれば、アメリカに対しても日本考え方を話さなければならない、そういうふうに考えております。それは安保条約第四条の協議といいますか、そういう形でこれが行われるものである、こういうふうに理解しております。
  84. 上原康助

    上原委員 もうこれで終えますが、外務大臣、少なくともニュージャージーの寄港に当たっては、今あなたが後段でおっしゃったように国民の不安というのがあるわけだ、だから、米側に非核であるのかということ、あるいは我が方は非核三原則を堅持しないといけませんからと、こういう念押しの協議は、具体的になった場合はいたしますね。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど、一番初め私がマンスフィールド大使を呼んだときの話でちょっと忘れておりましたが、エンタープライズも取り上げたわけでありますが、ニュージャ一ジーの場合につきましては、これは中曽根総理もここでといいますか、国会で答弁した経緯もあります。そういうことも踏まえまして、これは安保条約第四条に基づきまして日米間で一般的な形において話し合うといいますか、日本の立場、非核三原則の立場、そして日米安保条約をお互いに守っていくという日米間の信頼関係というものを確認をしたい、こういうふうに思います。
  86. 上原康助

    上原委員 施設庁も来ていただきましたが、時間が来ましたので、また後日いたします。ありがとうございました。
  87. 志賀節

    志賀委員長 滝沢幸助君。
  88. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さま。外務大臣、どうも御苦労さまです。  大臣はたしか、昭和五十七年十一月二十七日に御就任と承っております。ところがその三日前に、文部省が教科書検定の基準を改正いたしました。そのときに前外務大臣より、この教科書の検定等をめぐりないしは教科書の記述をめぐり、中国との数々の交渉の経過等を引き継ぎの中で承っていらっしゃいましょうか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としまして、前内閣の政策を踏襲をしてまいっておるわけでございます。鈴木内閣から中曽根内閣、そして中曽根内閣において私は外務大臣として、前外務大臣の政策、そして内閣の決定というものを踏襲しましてこれを進めてまいっておる、こういう立場はそのとおりでございます。
  90. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そうした中で、あの教科書の記述をめぐりまして、その年の七月二十六日に中国から、次の日には韓国から、教科書の記述、特に歴史的部分についての記述について厳重な抗議が参りました。以来数々の経過を経て、すなわち、大臣御就任の三日前に文部省は教科書検定の基準を改定しているわけでありますが、この経過をめぐりまして、これはいわばいわれなき中傷、内政干渉に対して、日本が主権たる教育の基本方針を決定する権利というものを外交のいわば手段として妥協した、言うなれば外交が教育の主権を乗り越えたというふうに理解をされませんでしたか。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話がございましたが、昭和五十七年十一月二十四日の教科用図書検定基準の改正につきましては、同年八月二十六日に発表されました歴史教科書についての官房長官談話の趣旨を受けまして、教科用図書検定調査審議会の答申に基づいて行ったものでありまして、我が国と近隣のアジア諸国との友好親善を一層進める上で、教科書の記述がより適切なものとなる道を開こうとしたものである、こういうふうに存じております。したがって、今御指摘がございましたが、このような措置につきましては我が国独自の判断でとられたものでございまして、決してお話のような外交的な配慮といいますか、外国からの強制によって行われたものではない、こういうことでございます。
  92. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そのような御理解ならばもはや何をか言わんやでありますが、私は、教育の方針を決定することは、あくまでも日本の国の子弟を教育するためにどうあることが正しいかということを、文部省が主体となり、そこが責任を負って判断さるべきものだと理解する。ところが、このたびのことを振り返りますと、おっしゃいますように、また先ほど申しましたように、七月二十七日に韓国から、前の二十六日に中国からそれぞれ抗議が参りました。ところが二十九日に、文部省の鈴木初等中等教育局長という方が、在日中国大使館王暁雲公使に対して、またその次の日には韓国の李相振公使に対して、いろいろと御注意は受けましたけれども、教科書の検定は従前から一貫した方針のもとに行われており、検定済み教科書には全体として日中共同声明の精神、日韓友好の精神にのっとった記述が行われている、御了承くださいと言っているわけであります。どうしてそれを貫かれなかったのです。  ところが、いろいろの経過がありましたが、大臣おっしゃいましたとおり、八月二十六日に宮澤官房長官が、これからは歴史教科書の記述については、我が国教科書の記述について韓国、中国等の批判に十分に耳を傾け、政府の責任においてこれを是正するという談話を発表されるわけであります。官房長官談話が発表された後で、発表される前には文部省の局長が、これはいい教科書なんだ、決して中国や韓国を侮辱してはいないんだということをちゃんと説明しているのにかかわらず、その後で文部大臣じゃない官房長官が、これを政府の責任において直す、こういった声明をしましたね。その後で、今大臣おっしゃったように九月十四日に、文部大臣が教科用図書検定調査審議会を招集されまして、その中で「歴史教科書の記述に関する検定の在り方」ということを諮問した。今申し上げているのは、文部省が五十七年十一月二十五日に発行されました「文部広報」でありますから、これは文部省が責任を持って出しているわけでありますから、決して一般の新聞を申し上げているわけではありません。ここの中で文部大臣は、諮問の提案理由の説明というものをなさっておりまして、この中で「このことについては、去る八月二十六日の「歴史教科書についての官房長官談話」に述べられているところであり、」こう言って、「何とぞ格別の御協力を賜りますようお願い申し上げます。」ということを繰り返し述べて、拝みます、頼みますということで、審議会が、これはもう政府の方で決まったんだからひとつ了承してくださいということで通っているのですよ。その結果、あの(15)といういわゆる近隣諸国の感情等を考慮するという一章が加えられるわけであります。  この経過を、次に総理大臣を目指されるというあなたが、これが正常なものだと本当に理解していらっしゃいますか。このような認識が今日の総理、また次に総理を目指す者のいわゆる資格要件として議論されてしかるべきものだと私は思うのですが、いかがですか。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あの当時は、教科書問題は大変注目をされましたことでありまして、政府部内におきましてもあるいはまた与野党を通じても、いろいろと議論が沸騰しました。また、国民サイドにおきましても新聞、テレビ等を通じまして大変大きな話題になったことは事実であります。そういう中で、私もその間の状況等につきましては非常に注目をしておったわけでございますが、最終的に宮澤官房長宮の談話の発表ということで、事態が収拾の方向に向かって進んでいきました。  そういう経緯の中で、あるいは中国が日本の教科書を大変問題にして外交ルートを通じまして抗議を申し込む、おるいはまた韓国がこれを問題にするという事態も起こった。あるいはさらに東南アジアにおいてもそういう声が出たことは事実でございます。これはやはり、日本政府としましては、近隣諸国との友好親善というものを考えてこうした問題に対しましても対応していかなければならないという政府の立場をとったことは、日本がアジアの一国であり、そしてまた、今日までの歴史の過程の中でそれは当然のことであろうと私は思っておるわけでございます。  しかし、教科書問題についてはおっしゃるように事これは日本自体の問題でありますし、日本自身が日本の主権のもとにみずから決めていかなければならない責任と国民に対する義務があると私も信じております。ですから、そうした対外的な非常な抗議とかあるいはまたいろいろと問題視の空気というものは踏まえながら、しかし同時に、あくまでも教科書問題については日本の主権を貫くという形で、宮澤さんの官房長官談話ということで政府全体の一つの集約がなされて、そのもとに自発的に、全く自律的に、自主的にこの問題が決められた、こういうふうに私は考えておるわけでございまして、こうした問題はあくまでも日本自身の主権のもとに今後とも貫かれていかなければならぬことは独立国家として当然のことであろう、私はそういうふうに考えております。
  94. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 文部省から見えていただいているわけであります。文部省がみずからの発想においてこの(15)項というのが加わりましたか、それとも官房長官、すなわち政府自体の判断が優先してこれができましたか、どちらですか。簡単で結構です。
  95. 小埜寺直巳

    ○小埜寺説明員 お答え申し上げます。  ただいまの検定基準改正の件につきましては、先ほどからお話がありましたとおりでございまして、確かに今お話が出ておるとおり、検定基準改正の契機といたしましては、五十六年度の高校の歴史教科書の検定に際しまして韓国、中国から意見が寄せられました。この寄せられたということが契機であることは事実でございますけれども、文部省といたしましては、従来から、教育のあり方といたしまして、先生御存じのとおり、我が国の教育というのは平和的な国家及び社会の形成者を育成するということを目的として、学校教育においても、国民としての自覚を深めるということと同時に、国際理解国際協調の精神を養うということを大変重要視してまいったわけでございます。しかしながら、こうした機会にこういう中国、韓国から意見を寄せられておりましたので、私どもの立場としましては、さらにこの検定基準を加えることによりまして、我が国と近隣アジア諸国との友好親善を一層進めるという、その教科書の記述をより適切なものにするという、前進するという形で、教科用図書検定調査審議会に諮問をいたしまして、その御答申をいただいて、文部省がみずからの責任と判断に基づいて基準の改正をした次第でございます。
  96. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 あなたのその説明は何十回も聞きましたけれども、そうならばどうして、さっき申し上げたとおり、鈴木局長は、韓国大使並びに中国の大使に対して日本の教科書はいいんですよということを言ったんですか。そう言ったけれどもなお聞き入れられなくて、仕方なしに官房長官が屈服してああいう談話を出しちゃったものですから、仕方なしに文部省はこれに追随した。そのとき審議会がこれをのまなければ大変なので、拝みます、頼みますということであれは通っていったというのが、もう紛れもない事実なんです。これは大臣も文部省も問題を糊塗しないで、反省は反省としてとらえていただかなければ、私は国民の多くの方は納得しないと思いますよ。  続けて一つ、主権にまつわる問題ですが、大臣にお伺いをいたします。  大臣は、昨年八月十五日に、総理大臣とともに靖国神社を参拝なさいましたか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 参拝をいたしました。
  98. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ところが、これはおはらいをしたとかしないとかいろいろと言われまして、参拝なのかおじぎなのかいろいろと言われておりました。しかしまた憲法上の議論もありました。それは私はしばらくおきまするが、その後で中国に参られたときですか、おしかりを受けたんでしょう。その後で秋の大祭には参拝をなさいません。しかし、今は春の大祭、そしてやがては八月十五日、そのころは選挙になっているかどうか知りませんけれども、ございますね。そのときに大臣は参拝をなさいますか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、八月十五日は毎年参っております。昨年は総理大臣とともに公式参拝という形で参拝をいたしたわけでございます。そうした気持ちは今日といえども変わっておりません。
  100. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 これはいろいろ議論がありますが、要するに、国民からいろいろな批判があっても余りこれに対して反省をしたり方向転回をしないのに、よその国から言われればべたべたと変わるというところに、国民としては、何と情けない、頼りない、こういう感情があるわけです。先ほども安保条約をめぐってアメリカとの関係がいろいろと議論されましたね。私はあの議論ももっともだと思うのです。右に対しても左に対しても、アメリカに対してもソビエトに対しても、中国に対しても韓国に対しても、武者小路実篤ではなくとも、「君は君なり、我は我なり、されど仲よし」、この態度が必要なのです。ところが「君は君なり、我は君なり、そして仲よく」ということなんでしょう。どうして主権国家たる日本の毅然とした一本の線が守れないのです。逆に、中国の教科書に対して日本は一度でもけちをつけたことがありますか。仮につけたならば、向こうでは、はい、わかりましたと言って、向こうは文部省というのか教育省というのか知りませんけれども、それよりも先んじて、鄧小平かだれかは知りませんけれどもこれが意思表示をして、直るということはありますか。こういうことはいかがなものでしょうか、感想をひとつ。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 当然これは、お互いに独立国家である以上は内政干渉は慎まなければならぬというのは、もう国際社会の中では国家がお互いにともに友好関係の中で発展をしていく上においては当然のことだ、こういうふうに思っております。我々はそういう中で、アジアにおいても、日本もそうですし、各国ともそういう立場を貫いておる、こういうふうに基本的には思っておるわけです。  靖国神社の参拝の問題については、これは官房長官の談話で尽きておりますが、政府が公式参拝に踏み切ったのは、一般的に、戦争でとうとい生命を落とされた犠牲者に対して追悼の誠をささげる、そして同時に、戦争を再びしないという平和への決意をあらわすという意味もあって参拝をいたしておるわけでございまして、そして、この戦争犠牲者が祭られておるその中心的な施設が靖国神社であるということで、官房長官談話に基づいて実は政府の公式参拝という道が開かれたわけであります。  確かに、これに対して中国からいろいろと問題が提起されまして、私はみずから中国へ参りまして、靖国神社公式参拝をめぐりまして、中国の外務大臣と率直な意見交換をいたしたわけでございます。我々は日中関係は大事にしなければならないと思います。我々の先輩が築き上げた戦後の日中の友好関係をさらに発展させていかなければならない、傷つけてはならない、そういう意味で、中国側の意見にも耳を傾けて聞くことは聞かなければならぬと思いますし、このような問題で日中関係を悪くすることは決して好むところではないわけでございます。  私たちは、靖国神社の公式参拝を始めた政府の真意というものを、審議会からの経過がずっとありますが、それに基づいて十分説明をいたしました。平和五原則であるとか日中平和友好条約共同宣言というものをないがしろにするとかという気持ちは全くないんだということを中国に対して十分説明して、日本の我々の立場というものを理解してほしい、あなた方はあなた方の立場があることは我々も理解する、我々はあなた方の問題についてはそれなりに尊敬し理解しているが、日本の立場もひとつ理解してほしいということで話し合ってまいった経緯があるわけでございます。  今度、日中外相会談も行われるわけでございますが、率直に話をいたしまして、いたずらに日中関係がここで損なわれないように我々は努力をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  102. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ちょっと変わりますが、実は皇太子殿下が五月にアメリカを訪問なさる御予定でありましたけれども、美智子妃殿下の御病状によりまして延期をされると伺っております。それはそれでありますが、韓国訪問をなされる御予定についても話し合われつつあるということで、これも延びるか延びないかということが言われております。  しかし、一面から言うならば、あの国が官民挙げて御歓迎申し上げるという雰囲気になっておるかといえば、なかなかこれは複雑なことであります。まして、全大統領の任期が切れるのを契機として与野党双方の攻勢が激しくなってくる、潜んでおりました反日感情なども吹き出てくるという状況のもと、極端に言わせていただくならば治安の状況も危ぶまれるというものであります。こういうときに、あえて皇太子殿下の韓国訪問をお進めになるのか、それともさるべきでないとお考えか、いかがでしょうか。どうなりますか。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 皇太子妃殿下の訪米につきましては、昨日政府が発表いたしましたように妃殿下の病気療養ということもありまして、中止のやむなきに至ったということでございます。この点については、アメリカ側としても、レーガン大統領を初め大変好意的な準備をしていただいておりましたので、アメリカ側にもその旨を十分説明いたしております。  なお、韓国の御訪問につきましては、既に日韓の政府間で、韓国御訪問ということを前提にいたしまして、外交ルートで話をするということで、ぼつぼつ話をしておるわけでございます。  今後につきましてはどういうことになりますか、何としても妃殿下の御病気療養が訪米の中止の大きな原因でございましたから、その辺もまた考えなければならぬことは当然でございますが、基本的には、今お話がございましたが、皇室の外国訪問、特に皇太子と妃殿下の外国訪問等につきましては、相手の国が国を挙げて歓迎をしていただくということでなければならない。あるいは、純粋な親善の御訪問でございますから、相手の国が朝野挙げて歓迎していただくことが私は最も大事なことであろうと思います。そういうことも踏まえまして、我々としまして今後とも両国間で十分話し合ってまいりたい、こういうふうに今も考えておるわけであります。
  104. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大臣、いっぱいおっしゃるものですから焦点がぼやけてきますけれども、アメリカのことはわかりましたよ。しかし韓国の場合、つまりあの国は御存じのように北と南に分かれていろいろと難しいところでございますし、そういう意味で、本当に皇室を尊敬している方々から言うなれば、軽々しく訪韓をいただくべきではないというのがいわば叫びであり祈りなんです。皇室外交という言葉もありますけれども、大臣、あなたのお力の足らざる点を皇室によってカバーするというようなお心はないと思いまするけれども、そのようなことでないようにひとつ要望しておきたい。簡単に一言おっしゃってください。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くおっしゃるとおりでございまして、皇室外交は、政治を離れた、全く純粋な国民的な立場に立った親善の訪問であるという自覚に立って対応していかなければならぬということは十分承知いたしております。
  106. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ユネスコでございますが、私は昨年の六月に本部を訪れました。これに対してはアメリカが二三%負担している。ところが、これが脱退しまして、続いて七・一%負担しているイギリスが脱退しました。日本は今のところ脱退しないで踏みとどまっておいでのようでありますが、これに幾らの金を負担しておりますか。そして、踏みとどまっている積極的理由は何ですか。また、ユネスコにおいて日本が果たすべき役割は何と心得ていらっしゃいますか。  時間がないから一緒に申し上げさせていただきますけれども、実は本部を訪ねまして我々一同の者驚愕いたしました。それは、日本国際復帰をする以前に、講和条約以前に国際会議に初めて参加したのがこのユネスコであります。それを記念してイサム・ノグチの設計になる日本庭園が寄贈されております。ところがこれはそばに行けないほど荒廃しておりまして、水は臭いわ、松の木は伸びておるわ、石は転んでおるという状況で、まさに日本状況をそっくり露呈したようなものでありまして、国辱ものであります。あんなものだったら撤去してしまった方がいいと思うのです。ひとつこれを整備して、日本のよさはこれだというようなものになされたらいかがなものですか。ひっくるめて申し上げさしていただきます。簡単で結構です。
  107. 中平立

    ○中平政府委員 お答え申し上げます。  まずユネスコに対する分担金でございますが、六十一年度に計上しておりますのは一千九百五十四万四千六百七十九ドルでございまして、分担率が一〇・七一%でございます。これは加盟国中第一位でございます。  先生御指摘のように、ユネスコにつきましてはいろいろ問題がございまして、昨年のソフィアにおける総会におきまして、やはりユネスコの将来を考えますときには何かしなければならないという意識が非常に強くございまして、日本といたしましても、同様の志を持っている国と協力いたしまして努力をしたわけでございます。その結果、先ほど御指摘のございましたことですけれども、アメリカが二五%の分担金を持っているわけでございますが、そのアメリカが脱退いたしましたので事業計画を二五%ダウンいたしました。そういう計画をつくりましたし、それから八六年、ことしでございますが、ことしと来年、二年にわたる予算につきましては実質ゼロ成長ということを達成いたしました。それから事業内容につきましても、一部芳しくない事業につきましては改善をいたしました。それから、今後事務局を初めといたしまして改革を行っていくわけでございますけれども、改革の内容をチェックするいわゆる監視委員会というものをつくることに成功したわけでございます。  このように若干の成功をおさめたわけでございますが、ユネスコが抱えている問題は非常に大きい問題がございますので、今後とも改革に努力してまいらねばならない、このように考えているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、我が国は今や、アメリカが脱退いたしました関係もございまして、ユネスコに対する第一位の分担金拠出国になったこともございますし、改革のためのチェックする特別委員会のメンバーとなりましたので、米英は脱退いたしましたけれども、今後は、同じような考えを持っている諸国と協力いたしましてユネスコの改革に努力してまいりたい、このように考えているわけでございます。  御指摘の日本庭園につきましては、昭和三十三年、ユネスコの新しい建物ができたときを記念して、官民の寄附によってできたものでございます。この維持管理につきましては、当然のことながらユネスコ事務局の責任でございます。かといって我々が責任を回避しているわけではございませんが、先生御指摘の点は非常にごもっともでございますので、御指摘の点を踏まえましてユネスコ事務局に強く申し入れまして、この庭園の維持管理を適切に行うようにしたい、このように考えておるわけでございます。
  108. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 御苦労さま。大臣御苦労さま。終わります。
  109. 志賀節

    志賀委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十九分開議
  110. 志賀節

    志賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三浦久君。
  111. 三浦久

    三浦(久)委員 まず、最初にマルコスの不正蓄財問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  本来、発展途上国の自主的な経済の発展、また国民生活の向上、さらにその国との友好親善、そういうものに使用されなければならない円借款プロジェクト、経済協力、そういうものが商社の悪徳商法、いわゆる暴利商法、それがまたマルコスの不正蓄財に使われたということは、日本とフィリピン両国の友好親善にとって極めて重大な問題だと私は思っております。この問題は一日も早く真相を解明し、そして再びこういうことが起きないような対策を講じなければならないというふうに思っておるのですが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いわゆるマルコス文書でマルコス前大統領へのリベート問題が出ておりまして、これに絡んで日本の援助あるいは日本の企業という問題が指摘されておるわけでございます。この点については政府としても重大な関心を持っております。  やはり援助は、相手国の国民の福祉あるいはまた経済の安定のために使用されることは当然であります。日本の援助は全体的にはそういう方向で来ていると私は思っておりますけれども、フィリピンに関してはリベートという問題が介在しているという点がございまして、その辺は明らかにする必要があるということはしばしば国会で申し上げたとおりでありますし、こうしたことを機会に、これからの援助のあり方等につきましてもいろいろと検討するところは検討して、そしてまた改善するところは改善をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  113. 三浦久

    三浦(久)委員 報道によりますと、来月の上旬ごろサロンガ委員会が調査団を日本に派遣するということが言われております。この調査団の調査に政府としては積極的に協力をするつもりなのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府のサイドではまだそういう話を聞いておりません。
  115. 三浦久

    三浦(久)委員 また、報道によりますと、きのう何か日本の報道陣とアキノ大統領が会見をしておりますね。それでサロンガ委員長をも派遣したいというようなことを言っておるようですが、もし来られた場合には積極的に協力をされるおつもりですか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピン政府から日本に対して協力要請があれば、それを踏まえて対応をしていかなければならぬと思います。
  117. 三浦久

    三浦(久)委員 私はやはり積極的な協力をすべきだと思っております。というのは、フィリピンの現在の政府はこの問題をあいまいにできない立場にありますね。なぜならば、フィリピンの国民というのは大変貧しい人々であります。それが、自分たちが職もなくて困っておるのに、マルコスが不正をやってあれだけ大きな蓄財をした、けしからぬ、絶対許さない、これはどこまでも真相解明しなければならぬという気持ちを強く持っておられるわけですね。そういう国民の要望を背景にしたアキノ政府ですから、これはあいまいにすることはできない。日本の商社も絡んでいる問題なので、積極的な協力を私からも要望しておきたいと思います。  私は、三月三十一日から四月七日まで、我が党の調査団の一員としてフィリピンに行って調査してまいりました。いろいろ調査したのですけれども、あのマルコス文書の問題についてカガヤンの電化計画の問題がございました。これはロドリゲスがかんでおる問題ですが、私はロドリゲスにも直接会いましてこの問題を質問いたしております。  そうしますと、このカガヤンの電化計画というのはどういうのかというと、このプロジェクトをめぐって伊藤忠が幹事会社になって、一五%の手数料を支払わなくてもよいようにいろいろ画策した、そのためにフィリピン政府がこのプロジェクトの凍結をしてしまったという問題なんですね。これについて質問いたしますと、ロドリゲスはこう言っておるのです。プロジェクトを凍結したのではなくて契約をキャンセルしたんだ。契約は何でキャンセルしたのかと言いますと、フィリピン政府が見積もったその見積もりよりも五九%も上乗せした価格で入札が行われたんだ、ほとんどの入札がもうこの価格で統一されておった、だからカルテルの可能性があったので問題だというので、マルコス大統領に契約をキャンセルするように進言したんだ、こういうことを言っておるわけであります。私もその話を聞いてびっくりしたのですね。あのマルコス文書を見ておりますと、伊藤忠が中心になって一五%の手数料を払わないように画策した、いかにも伊藤忠が善人、善玉みたいな書き方をされていましたけれども、しかし、ロドリゲス自身は、我々の見積もりよりも五九%も多かった、こういうことを言って、だからキャンセルしたんだ、こういうことなんですね。  ロドリゲスというのは、御承知のとおり円借款に関してはフィリピンを代表する日本側との窓口になっている人ですね。もう十五年間もこれを続けている人であります。この人のこういう発言、私は大変驚いたのですけれども日本商社というのは何と円借款を利用してぼろもうけをたくらんでいるんだろうということで篤いたのですが、外務大臣はどういう御所見ですか。
  118. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私どもが今まで承知しておりましたのは、今委員の御指摘になりましたいわゆるマルコス文書に出ております部分、これは承知しております。それから、今御紹介のございましたロドリゲス公共事業道路省次官の委員に対する説明、これは初めて私どもも伺った次第でございます。
  119. 三浦久

    三浦(久)委員 いや、感想を求めているんだ。今初めて聞いたから、私の言っているのはうそだと言うわけですか。コメントしてください。
  120. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 全くそういうことではございませんで、新しい事実を伺ったということで、そういう印象を持っただけでございます。
  121. 三浦久

    三浦(久)委員 これは五九%も見積もりよりも高いとしますと、あなたたちが入札価格を明らかにしないので幾らなのかわからないのですが、例えばこの前のサンデー毎日にも、一応限度額ということで出ておりましたね。あの中を見て、仮にこのカガヤンの電化プロジェクトが六十億円だとしますね。そうしますと、この一五%というとマルコスのリベートは九億円ということになるのです。それで、フィリピン側の予定価格は三十八億円ということになりますね。そして伊藤忠ら日本側の上乗せといいますかこれが十三億円。ですから、これだけ大きな利潤を計上しておきながら、マルコスのリベートの九億円は払わぬ、二十二億円は全部自分の方で取ってしまおう、こういうやり方が行われたということなんですね。ですから、日本の商社がこんなにぼろもうけしているんだから、一五%の手数料を払うのは当たり前じゃないか、それをいろいろ交渉した結果七%しか払わぬ、そんなことは許せないという争いだったと思うのですね。ですから私に言わせると、目くそと鼻くそのけんかみたいなものです。我々の税金を使った大きな円借款プロジェクト、こういうものを利用してマルコスももうける、そして商社ももうけるというような構造がこの中によくあらわれていると私は思うのです。  フィリピンの国民にすると、援助、援助といったってこれは返さなければいかぬわけです。そうすると、これはフィリピンの国民にとっては必要でなかった金を返さなければならぬわけで、日本の大企業やマルコスに搾り取られたというような関係になってくるわけですよ。これはもう、日比友好親善という目的に使われなければならない円借款、こういうものの本来の趣旨から全く外れてしまっていると言わざるを得ない。ですから、これはどうしても予防措置というものを講じなければいけないと思うのですよ。こういう契約の水増しというような問題は絶対に避けなければならぬと思うのです。どういう対策をお考えになっているのか、お尋ねをしたいと思います。
  122. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 委員も御承知のとおり、この借款の供与額でございますけれども、これは先方政府が当然のことながら行っております事業でございますので、先方政府が我が方に対しまして、今カガヤンバレーの例をお引きになりましたけれども、カガヤンバレー電化という事業を行うに際して、このような規模の協力を日本から要請したいという要請が参ります。その要請には企業化報告書と申しますか俗にフィージビリティースタディーと申しますけれども、FSというものを付しまして、その事業の規模及び円借に経済的にたえ得るかどうかということをきちんと計算したものでございます。それの提出を待ちまして見まして、関係四省庁で検討をし、通常政府レベルの調査団、それからそれに続きまして海外経済協力基金の調査団というものが先方に参り、先方関係者から事情を聴取し、かつ協議を行いまして、プロジェクトの実施に真に必要と考えられる所要額を供与限度額ということで日本側で定めまして、これを交換公文に記載しまして、先方政府と合意を見る、こういう形になっております。  それに続きまして、海外経済協力基金が先方と締結いたします貸付契約におきましても、同様の金額になっている次第でございます。この供与限度額が言うならば最高額と申しますか、一応そういう形になっておりまして、この枠内で、もう委員も御高承のとおり、借款によって調達される生産物または役務は国際入札を原則とする、こういう基金の調達ガイドラインが設けてございまして、その国際入札という制度をつくりまして、その中で一番経済的に効果のあるものを、かつ廉価で相手国政府が調達できるような制度をつくっていく、こういう形になっております。  したがいまして、このような制度のもとで行われた円借款の供与でございますが、このマルコス関係文書でいろいろと数字等が出ておりますし、今委員が提起されましたような疑惑等もいろいろ報道されている状況でございますので、大臣から先ほど御答弁申し上げましたように、我が国のこのような円借款の供与の制度とそれから今報道されておりますいろいろな点を突き合わせてみまして、改善するべき点があるのかないのか、あるとすればどういう点を改善していくのかということを現在関係省庁間で検討、協議をしているという状況にございます。
  123. 三浦久

    三浦(久)委員 私も手続きはもう知っているのですよ。しかし、今の手続で、円借款を行うに当たる一連の手続の中でこういう疑惑が出てきているわけでしょう。それは何もフィリピンに対する円借款についてだけこういう問題が出てきているというのではないのです。もうこういうわいろ商法が一般化しているわけです。そのわいろ商法というのはどうして起きるのかと言えば、その円借款事業からわいろをひねり出せるように不当な利益を得ているからなんですよ。それがなければ出せませんよね。そして、そのわいろ商法というのは当たり前だ、当然だということを日本の商社は言っていますね。それをあなたが知らないはずがない。  例えば、これは朝日新聞の一九七七年の一月二十三日、総合商社についての連載をやっています。この朝日新聞の三回目です。どういうことを言っているかといいますと、これは朝日新聞でA商社の会長さん、六十五歳。「とくに開発途上国ではワイロは当たり前だよ。相手が堂々と要求するんだ。それが商慣習だ。日本だけきれいごとをいっていたら、欧米の諸国に次々と敗退しちゃうよ。そうなったら日本の経済はどうなるのかね。書生論はやめてくれ」、こう言っているのですね。こう書いています。  それからB商社の社長さん、六十八歳。「ワイロは合法化すべきだね。」驚くべき発言ですね。「ワイロは合法化すべきだね。そのカネに見合う働きをさせれば支出の名目がたつんだから」、こう言っている。  C商社の会長さん、七十二歳。「われわれはあくまで取引の代理人に口銭として渡している。それが相手側にとってどういう意味があろうと、こちらの関知したことではない。東南アジアには、役人や軍人の給料が低く、ワイロをあてにして生活しているところもある。身内や仲間におおっぴらに分配しているくらいだ」、こういう発言がある。  もう一人、これは名前が出ておりますが、田部文一郎さん、当時三菱商事の社長さんですね。「ワイロの問題?」、こうクエスチョンマークがついていますが、「ワイロの問題?当該国のモラルに照らして、常識程度なのか、行き過ぎかということだろう。そういったことには一切手をふれないということでは、大きな範囲の市場から撤退せねばならないかもしれない。」こういうことを言っておるのですね。ですから、今の田部文一郎さんの発言というのは、わいろは当たり前だ、程度を超えたものか適当なわいろかどっちかだ、こういう言い方なんですよ。  ここで、これは朝日新聞の意見ですが、「商社にいわせると、開発途上国との取引でワイロを使うことができないのは、社会主義的な体制をとっている諸国以外は、東南アジアではシンガポール、南米ではブラジルなどごく一部の国に限られる。東南アジアでは、腐敗のひどかった南ベトナム政権が倒れたあとはフィリピン、インドネシアが目立つといい、中近東ではイランとサウジアラビアを名指しする。」これは記事ですけれども、こういうことが言われているんですね。  ですから、もう問題の所在は極めてはっきりしているんですよ。もうこんなに何年も前から指摘されていることでしょう。ですから、まだこれから改善策を協議しますとかなんとかというのは、私、何かちょっと対策がおくれているんじゃないかなという気がするんですね。今のこういう各商社の社長さん、会長さんの御発言を外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは商社の社長としての、自分もいろいろと経験しているでしょうから、経験を踏まえた発言かもしれませんけれども、私も初めて聞いたことも中にはありますね。やはり日本の援助というのは相手の国の事業になるわけですから、我々これから改善するにしても、その辺のところをどういうふうにするかというのはなかなか難しいところがあるわけですね。どこまで立ち入っていろいろと日本が注文をつけられるか、そういうところにもこれからいろいろと相手の国と話し合っていかなければならぬ、日本だけでやるというよりもお互いに語し合って改善していくという道もあるんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。
  125. 三浦久

    三浦(久)委員 わいろ商法というのは常識になっているんですね。  例えば、これは社団法人の日本経済調査協議会というのがあります。これは財界が運営しておるのです。これが一九八〇年の三月に「わが国安全保障に関する研究会報告」というのを出しております。これをちょっと読んでみましょう。  最初は、援助は大変いいことだと書いてあるわけです。「しかしながら、この援助も第二図の通り、紐つき援助や、バイアメリカン、バイ××等のため、先進国の企業の輸出や利益に貢献し、多国籍企業の進出に役立つところ大であったが、被援助国にとっては政府並びにそれを取り巻く若干の関係者の懐を肥やすだけで、一般国民大衆の所得の向上にまでは仲々結びつかない。それのみならず、政府当局と先進国の企業との間には汚職が公然と行なわれ、政治をスポイルし、国民の批判を招き、そして国民と政府関係者との所得格差が増大して、このことがまた国民の怨嗟の的となり、反政府活動を促す大きな原因となっている」、こう報告していますね。これは財界の運営している社団法人ですよ。その後に、これじゃ困るんだ、なぜならば我々は自由主義社会で自由開放経済体制というものを維持していかなければならないんだ、それを援助をやることによって、そしてこういう国民的な怨嗟の的になって政府が転覆していくというようなことがあったら、これは我が国の安全にとって大変重大な問題だということでこういう研究報告がなされているわけですね。ですから、財界は財界なりの立場で、ちゃんと安全保障という観点からも今の援助のやり方というのは見直していかなきゃならぬということを言っておるわけです。  だから、援助のやり方を見直さなきゃならぬというのは我々も同じ考えですね。ですけれども、今の局長さんのお話ですと、何かこれからゆっくり考えるみたいな話ですから、こんなことは、今私が読み上げたのはもう八〇年のことです。ですから、問題点というのはかなり以前から指摘をされていることなんですよね。ですから、この水増し契約というものをどうやってチェックしていくのかということを、やはり私は今の段階でお考えになっておることを率直に、こういう点が問題だから大体こういうふうにしようとしているんだというようなアバウトな問題でもいいからひとつお示しをいただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  126. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 先ほど申し上げました我が国のシステムでございますけれども、これは委員が十分よく知っているという御説明でございました。このシステム、援助を始めて二十五年しかたっておりませんけれども、やはりこの間にも、我が国我が国なりにいろいろとそのシステムの改善を図ってきたということが申せるんじゃないかと思います。  例えば、一九七八年以降は一般アンタイ化原則ということで、調達をアンタイ化の方向にかなり進めております。これも一つの改善の努力ということが言えるのではないかと私は思います。それから、過去三年来も、御高承のとおり事後評価、援助を行いました後に評価活動を行いまして、援助が真に効果的、効率的に行われているかどうか、動いているかどうかということをかなり厳しく自己採点をしまして、またその結果を公表いたしております。中にはいろいろと失敗例と申しますか、余りうまくいかなかった例なども公表しているものでございますから、逆に外務省がみずから援助の失敗例を認めているというようなことで報道されたりしておりますけれども、やはり悪い点も素直に公表していこうという、一応私どもとしてはまじめな態度のあらわれだということで御評価いただいてもいいのではないかと思います。  今後の検討と申しますか改善点、アバウトでも方向はどうだという御質問でございますが、まさに今検討過程ではございますけれども一つは評価活動の手法自体をもう少し改善することによって今後の援助活動自体をよりよくしていくことができるんではないかという点から、第三者的な手法を取り入れますとか、評価自体の質を高めていくということも一つの方向ということで、これは本年度から早速取りかかっていこうということで、昨年末、外務大臣の勉強会と申しますか、諮問機関のODA実施効率化研究会の一部会ということで、鎌田前会計検査院長に長になっていただきまして、この手法の改善作業に今取りかかっているということが一つの具体例として御説明できるのではないかと思います。
  127. 三浦久

    三浦(久)委員 皆さん方は、さっきお話がありましたけれども、入札評価報告書、これを承認する権利がありますね。それからまた、契約書ができ上がった後にもそれを承認する、そういう権利がありますね。この段階で水増し契約というものをチェックできないのですか、どうなんですか。
  128. 小川修司

    小川説明員 海外経済協力基金は、先生御指摘のように、入札の段階あるいはその入札評価、それから契約の承認ということを通じましてチェックを行っておりますが、入札の段階におきます書類の承認の段階で、能力を有する企業がすべて参加し得るようになっているか、公平な内容になっているか否かというような点をチェックいたしますし、また入札評価の段階では技術的な評価等を織り込んで、最低価格で応札した企業が落札企業に選定されているか否か、あるいは最低価格でない場合には、きちんとした理由によってしかるべき企業が選定されているか否かというような点をチェックいたしまして、承認を与えている次第でございます。  そのような過程でその価格の妥当性ということが出てくるわけでございますけれども、これはそういう形で本当の競争が行われた結果決まった価格であるということを認定するということでいたしておりまして、その価格に対しまして改めて原価計算的なチェックを行うというようなことはいたしていないということでございます。
  129. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、それが適正な価格だったか、いわゆる原価プラス適正な利潤というようなことで落札されているかどうかということは、いわゆる国際競争入札というものが正当に働いていれば適正な価格になるんだ、ですから、国際競争入札が行われているんだからもうそれでいいんだ、そういうお考えですか。  しかし、本当にそういう競争入札が行われているという形、形式上そういうのが行われているということだけでこの適正な価格というのをチェックできる、本当にそう思われているのでしょうかね。かなりの談合が行われているでしょう。これは日本だって行われていますよ。ましてや、この円借款の問題というのは日本の目の届かない、国民の目の届かないところ、あなたたち行政は知っているけれども、国会も知らなければ国民は何も知らない、そういうところで行われているわけですから、不当な水増しがどんどん行われているというのはもう常識になっているわけでしょう。われわれの税金を使ってそういうことが行われているのに、それを競争入札が行われているからその正当性が担保されているんだというようなことではなまぬるい。本当に競争入札でこの公正さが担保されているというふうに思っているのですか。どうでしょうか、そんなことを思っていたのならこんな事件は起きないはずなんですね。
  130. 小川修司

    小川説明員 これまでの基金の審査につきましては、ただいま御指摘のございましたように、正当な競争が行われている、それによって決まった価格をもって妥当な価格であるということで承認を与えているわけでございますけれども、なお、こういう問題がいろいろ起きておりますので、ただいま政府といたしましては、経済企画庁といたしましても四省庁の一員として、いろいろと真相の究明のための調査は基金とも一緒に進めておるわけでございます。したがいまして、実際こういう過程でどういうことが行われたのかということは、うわさはいろいろあるわけでございますけれども、なかなかわからないのが実情でございまして、今公表された文書もございますので、これをいろいろ分析するというようなことを通じまして真相の究明をしているということでございまして、その過程で、こういう手続上いろいろ改善すべき点が何か出てくるということであればそういうことを検討していきたいと思っておりますけれども、現在の段階は、とにかくどういうことが行われているかということを十分調査しているということでございます。
  131. 三浦久

    三浦(久)委員 真相の究明はもちろん大事なことであります。しかし、私が先ほど申し上げましたように、わいろ商法が行われるというのはこの契約自体に水増しが行われているということなんですよ。損をしてわいろまで贈るばかはいないのですから。問題ははっきりしているわけです。  ですから私が言うのは、いわゆる入札評価報告書を承認する、また契約を承認するという段階で実質的な審査をした上で承認をすべきではないか、そういう体制をとるおつもりはないかということをお聞きしたいのです。それでなければもう全くフリーパスになってしまう、ノーチェックになってしまうのですよ。  電力だって鉄道の運賃だって、みんな原価計算をしてそれに八%の利益を乗せてはじき出しているわけですから、我々の税金が使われていっているわけですから、やはり適正な契約価格なのかどうか。それは原価を積み上げて適正な利潤をそれにプラスして、それをうんと超えて二〇%、三〇%、四〇%、さっきみたいに五九%も利潤を上積みしておるというような契約はやはり承認しないということが私は必要だと思うのですね。  これは外国政府日本の企業との契約だと言ったって、我々が金を出しているのだから、あなたたちもそういうものについて承認を与えているわけだから、承認をするためのチェックをしているわけだから、だから私は、そこで実質的な価格の審査をすべきだ、それがないと全くノーチェックになってしまうということを言いたいのですよ。その点は考えておられますか。
  132. 小川修司

    小川説明員 ただいま先生の御指摘の電力、私鉄のような、ある程度市場の独占を法的にも認められた場合におけるいわゆる公共料金と言われている価格のチェックということと、今日の円借款の対象事業となる入札によって決まる価格のチェックというのは、おのずからちょっと性格が違ってくるものと考えております。したがいまして、これはあくまでも入札という手続を通じて、自由な競争が行われるということをもって適正な価格が形成されるはずであるということで考えておるわけでございます。そういうことで考えているわけではございますけれども、改めて、どういうことが行われたかということを実情を十分究明いたしまして、対策を立てたいということでございます。
  133. 三浦久

    三浦(久)委員 それは、競争入札が行われているから公正なはずでありますということでは問題が済まないのですよ。あっちこっちから問題が指摘されているでしょう。例えば石原慎太郎さん、前に大臣をやった人ですね。この人が、「国際開発ジャーナル」、そういう雑誌が出ているのを知っていますね、それの一九八五年、去年の一月号にこんなに大きく自分の考えを書いていますよ。「ノーチェックでまかり通る援助 経済協力国民評議会の設立を」という題です。そこでは彼は何と言っているかというと、「海外援助では、コンサルタント会社の役割が大きいんですよ。」「コンサルタントが全部の見積もりをするわけですが、その中でフィリピンの場合、商品借款を含めて全額約五百億円の円借款を一五から二〇パーセント水増ししろと言われてつくった人間が何人かいる。」と言っています。結局フィージビリティースタディーというのですか、実現可能性というのですか、それをつくる段階、要するにフィリピン政府にプロジェクトを持ち込む前の段階で、もう既に一五%から二〇%水増ししろと言われてつくった人間が何人もおる、こう言っておるのですよ。  それで、石原慎太郎氏はこの人間から聞いておるわけです。「その人間が、あまりにもひどいから、日本に来て、外務省がどのセクションでどんなチェックしてるか見にいったら、若いスタッフが、自分のつくった予算書」、自分のつくったというのはコンサルタントがつくったという意味ですよ、コンサルタントがつくった「予算書を見ていたというんだ。」こう彼は言っている。「それでこの後どうするのかと聞くと、大蔵省はノータッチ、中で通産省とか農水省とか関係あるものは技術的に問題があるかないか見るだけ。外務省には、これだけの規模のダムならダム、橋なら橋に対して、現地のコストその他からして、要するに労賃も含めて妥当か妥当じゃないかというチェック能力は全くないんですね。だから、私は援助については、やはり臨調と同じように、民間人を入れた形のオフィシャルな中央機関をつくって審査してやらないと、こんな問題は野放しですよ。」こう言っているんですよ。  そうすると、今のあなたたちのお話を聞いていますと、契約承認の段階でチェックしない、石原慎太郎さんのお話ですと、フィージビリティースタディーをやる段階、プロジェクトを持ち込む段階でもう一五%ないし二〇%の水増しが行われている。四省庁協議もそれを土台にしてやっているわけです。交換公文もそうだ。そして、ローンアグリーメントがまた個別プロジェクトについて結ばれていきますね、それもそれの範囲内でやっている。大体一五%から二〇%水増ししたものを基本にして、ずっと作業が流れていっているということを石原慎太郎さんは言っているんですよ。  じゃ、そのことをどこでチェックするか。四省協議でそんなことはチェックできないでしょう。そうすると、チェックするというのはもう本当に契約書を承認する段階でぴしっとチェックしなかったら、全然ノーチェックじゃないですか。そんな湯水のようにむだなお金をどんどん海外経済協力費に使っていいんですかね。これは私は大問題だと思うのですが、その点のチェックを何にもやろうとなさらないというのは、皆さん方が、どういうふうに税金が使われているのかということについて余り熱心じゃないということを示していると思うのですよ。国民の血を流すようなお金なんです。私は、一円でもむだにしちゃならないんだという立場でチェック体制をとるべきだと思う。それは多少は人間が要ると思いますよ。今の陣容ではできないでしょう。だけれども、こんなでたらめなことが行われるようなことでは私はだめだと思う。人間というのはやはり楽をしたいし、もうけたいし、ですからチェック機能がぴしっと働いていなければ、それはもう多かれ少なかれぼろもうけだって悪徳商法だってやりたくなるのですよ。それをぴしっとチェックするという体制を私はぜひとってほしいと思う。とれないですか、外務大臣どうですか。
  134. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私も、その「国際開発ジャーナル」の寄稿文は拝読をいたしました。読みました感想は、余り援助の現実の動き方を御存じなく書いておられるという印象を受けました。  委員のおっしゃいました、民間でプロジェクトをつくって持ち込んで、それが一〇%とか一五%とか水増しをされたまま全くノーチェックでまかり通っている、それが基礎になって四省庁協議も行われているのではないかという御疑念でございますけれども、御承知のとおりFS、フィージビリティースタディーはコンサルタント、もちろん第三国のコンサルタントがつくることもございますし、日本のコンサルタントがつくる場合もございますし、それから国際協力事業団が技術協力という形で作成する場合もございます。国際協力事業団の場合は当然のことながら政府ベースの技術協力でございますので、政府関係省、我が国の場合ですと建設省ですとか農水省の方が行ってつくってくださっているわけでして、ここには実は利益を上げるという要因は入ってまいりません。それからコンサルタントの場合、これは民ではございますけれども、コンサルタントはやはりコンサルタントとしての自分の名声というのがございますから、だれが見ても、一〇%とか何%とか、かなりサブスタンシャルなコストを積み上げたようなものを作成しますし、これは相手国に提出いたしまして実は相手国の我が国に対する要請についてくるものでございますから、コンサルタントの名誉ということに関連してまいりますので、そういう点から申しましても、かなり客観的、公正なFSレポートというものが作成されると考えます。いずれにせよ、そのようなFSレポートが参りました後に、今度は政府関係省庁の審査によって最高限度額を決めるわけでございますので、その点でもう一つのチェック機能がまた働いている。それに加えまして、先ほど経企庁の経協一課長から御説明申し上げましたように、国際入札という一つのシステムによって公正な競争、これによって価格が一番公正な形で決まるようなシステムがつくられているということで、システムとしては非常にきちんとしたシステムなんだろうという感じがいたします。
  135. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、あなたたちの話を聞いておると、もうそういうわいろ商法なんというのは行われる余地がないように私には聞こえるのですけれどもね。それなら、さっき商社の話もしましたね、それから社団法人の日本経済調査協議会の論文も私は言いましたね、もうフィリピンではわいろが当たり前になっているというのでしょう。では、そういうわいろはどこからひねり出しているのですか。赤字を覚悟でわいろを出しているのですか。そんなことにはなっていないと思うのですけれどもね。
  136. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 わいろと申しますかコミッションと申しますか、妥当な額以上のコミッション、口銭的なものが支払われて、それが先方の中で政府関係者等に渡っているのではないかというのが、まさに今のマルコス文書にあらわれているところでございますので、現在のこのシステムのいずれかに改善するところがあるのかどうか、それによって委員の御指摘の疑惑みたいなものを晴らすことがどういう形で可能かどうかということを、今まさに関係省庁で検討しているという状況でございます。
  137. 三浦久

    三浦(久)委員 昭和五十三年の四月五日に、衆議院の外務委員会で、この海外経済協力問題で決議していますね。これは、不正の疑惑を招くことがないように十分に配慮しろということと、もう一つは今私が言ったようなこと、一番最後に、援助の効率的な実施を確保するため体制の整備改善を行うことというのがありましたね。そうすると、水増し契約なんというのは援助にとって余り効率的じゃないですね。これは非効率ですね。ですから、そういう水増し契約というものが行われているわけですから、この国会決議にもあるとおり、私は、効率的な実施、水増し契約ができないようなそういう改善策をとるべきだ。それは国会の意思ですからね。ですから、いつごろまでをめどにしてそういう改善策を立てようとしていらっしゃるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  138. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 援助のシステムは、これは日本だけに限りません、国際的にも常に改善の過程にあるということが言えるんじゃないかと思います。汚職と申しますか腐敗と申しますか、この問題も我が国を含めまして援助国がみんな共通に実は持っている問題でございます。したがいまして、私ども援助国同士で集まります場合にも、国際金融機関も交えまして、先ほど委員が御指摘になりました開発途上国における非効率ないし腐敗の問題、これを制度としてどのような制度が一番抑止するのに有効であるかという議論も、援助国間でいろいろ行われております。したがいまして、いつどこまでで改善が終わるということではなしに、不断に実は改善の作業というものは続けていかなければいけないと思いますが、最近のまさにマルコス文書に関連する問題につきましては、これだけの重要な、大きな関心を浴びている問題でもございますので、できるだけ早期にいろいろな改善点を見出し、とるべき措置はできるだけ早急に改善の措置をとっていくということで、現在関係省庁で検討を進めている状況でございます。
  139. 三浦久

    三浦(久)委員 この経済協力の実態というのは、だれが知っているのかというと政府なんですよ。それからまたOECFですね。我々には何も知らされてないのですよ。この問題、一番熟知している行政側が、やらなければいかぬことがあるのならやりますみたいなそんな態度じゃ、いつまでたったって私はこういう水増し契約をチェックすることはできないのじゃないかと思うのですよ。もしかしでそうであれば、これは大変なことですからね。まず国民に知らせなさいよ、経済協力の実態というものを余すところなく国民に知らせなさいよ。そして、皆さんたちだけじゃなくて国会も国民も全体でもって、こんな経済協力の実態なのか、そんならこうしようじゃないか、そういう国民的な論議を私は起こす必要があると思うのですよ。もう何年も前から、十何年も前からこの不正というのは言われ続けてきたことなんですから、国会の決議にまで、こんなのはもう当たり前のことなんだけれども、不正の問題が入っているでしょう。不正の疑惑を招いちゃいけない、不正を輸出しちゃいけないということですね。このように不正が行われているということが前提になっているわけですから、私は、そういう意味では、今政府が公表する立場にはないんだというようなことを言って公表を拒み続けていますけれども、いわゆる各プロジェクトごとにどの企業が幾らで落札したんだということは公表すべきだというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  140. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 我が国政府のとっております措置、それから相手国政府との政府間の協定の内容等は、もう委員もよく御承知のとおりすべて公表いたし、かつ、事後評価の報告書も公表しているという状況でございます。  今御指摘の企業名でございますけれども、これは累次御答弁申し上げておりますように、相手国政府と当該企業との間の契約の内容にかかわるものでございますので、日本政府はその契約の当事者ではないということからこれを公表する立場にはないということでございます。
  141. 三浦久

    三浦(久)委員 あなたたちがいかに物を隠しているか。あなた、ローンアグリーメントを出さないでしょう。交換公文はそれは官報に載るけれども、その後の個別的なプロジェクトについてのローンアグリーメントも出さないのですよ。ローンアグリーメントを出さないだけではなくて、ローンアグリーメントの書式を見せてください、中身は要りません、書式を見せてくださいと言っても、それすら見せないのですよ。これは一体どういうことなんですか。そうでしょう。それですから、何かいかにもさもたくさん公表しているというようなことを言われるけれども、そうじゃないのですよ。我々国民の代表である国会議員が、国権の最高機関である国会が事前に何もこの問題を審議できないようになっている、そういう状態にあるということ。  それから、今あなたは、外国政府と企業との契約で、だから我々はノータッチみたいなことを言われましたが、ノータッチじゃないのです。金が出ているのですよ、だから契約の承認までしているのでしょう。それはローンアグリーメントに書いてあるからやっても構わないんだ、こう言っていますけれども、ローンアグリーメントに書いてあるかないかという問題ではなくて、契約を承認するということは、経済協力の実効が上がるかどうかという立場から日本政府が、OECFが契約の承認をしているんだろうと私は思うのです。そうでしょう。そうすれば、あなたたちは、いつも何か、それを勝手に公表すると相手国の主権に関係するからとか外交上の問題があるからとか言っているけれども、そんなことはないと思う。我々の金が出ている問題ですから、そして我々がその契約についてもぴちっと承認権を持っている問題でしょう。その問題を日本政府が発表するのに、何でそれが外国の主権の侵害になりますか。日本の主権の問題じゃないですか。どうですか。
  142. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 第一のローンアグリーメントの内容でございますけれども、ローンアグリーメントの主要点というのはほぼ交換公文に記載してございまして、交換公文に記載してあることを主とした内容としているというふうに御理解いただければよろしいかと存じます。  それから、第二の主権の問題というお話でございますけれども、相手国政府が、日本の企業である場合もあり落札した外国の第三国の企業である場合もあると思いますけれども、当該企業との間で契約を結んでいる、その事業の実施主体というのはあくまでも御高承のとおり相手国の行っている事業でございまして、我が国はそれを側面的に援助をしているという立場でございます。したがいまして、事業の実施主体たる相手国側が企業との間で行っている契約を、もちろん我が国も資金協力をしているという点から、入札の評価及び契約の二段階にわたりましてそれを見て審査、承認をしておりますけれども、あくまでも我が国は契約の当事者ではないという立場でございますので、相手国が公表してないのに我が国がこれを公表するという立場にはないと存じます。
  143. 三浦久

    三浦(久)委員 契約の当事者ではないけれども第三者でもないのですよ。第三者でもない。それで、我々日本としてはその契約の承認を拒否することだってできるのでしょう。拒否したこともあると言っていましたよ。私は現地でOECFの現地駐在員の小峰(みね)さんに聞いたら、拒否したことがあると言っていましたよ。ですから、それだけの強い権限を我々は持っているのだから、その問題については、何も相手側にやったからといってそれは第三者でも何でもないのですから、日本の主権に属する問題だというふうに私は思います。ですから、あなたたちがこういうように理不尽にも公表を拒否するというのは、私は本当に憤慨にたえない。  私はフィリピンに行きまして、サロンガ委員会、まだ委員長が帰ってきてませんでしたので、バウチスタという当時は日本担当の委員に会いましたよ。そのときに私は、日本政府が今言った資料を公表するということについてどう思うかと言いましたら、それは真相解明にとって極めて有益であり大いに歓迎したい、こう言っているのですよ。ですから、相手方のこのサロンガ委員会というのは正式な政府の機関ですから、今度サロンガ委員会が来ると言っていますけれども、じゃ、このサロンガ委員会と公表問題について協議する、そういうことすらできませんか。
  144. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私どもの立場からいたしますと、フィリピン側が公表されるということであるなら、これは発注者たるフィリピンの政府としてなさることだと存じております。
  145. 三浦久

    三浦(久)委員 いやいや、サロンガ委員会が来たときに――国会でこれだけ追及されているわけでしょう、もう委員会ごとに。きのうも幾つかの委員会で公表しろ、公表しろと言われているでしょう。それできょうの報道等を見ると、外務大臣も一時は公表してもいいと思ったとちゃんと述べていらっしゃるでしょう。これだけ大きな問題になっているのですから、サロンガ委員会が来たときに、どうだろうか、こっちは公表しようと思っておるけれどもどうだろうか、おたくの方は構わないか。それくらいの協議をしたらどうなんですか。
  146. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 まだ、サロンガ委員長日本へいらっしゃるかどうかということも、私どもも実は新聞をきょう見ましてニュースとして承知した程度でございますし、サロンガ委員長との間でどのようなことをお話しするかというのは、まだ私どもも別に考えてもおりませんけれども、先ほど申し上げましたように、公表問題にっきましては、公表をなさるとすれば、これはフィリピン側で公表されるべき問題だというのが私どもの立場でございます。
  147. 三浦久

    三浦(久)委員 そんなことはないですよ。我々の税金がむだに使われているということについて、我々が何もそれを知ることもできない、追及することもできない、そんなばかな話がありますか。我々日本の主権に関する問題なんですよ。冗談じゃないですよ。私はあなたたちの態度を見ていると、この問題、いわゆる個別企業の契約額、こういうものが出てくると国会でどんどん追及される、それを恐れて隠そう、隠そうとしているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  148. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 そのようなことで申し上げているのではございませんで、私どもが契約の当事者でないので公表する立場にはないという、その一事だけでございます。
  149. 三浦久

    三浦(久)委員 さっきあなたは、事後評価の問題についてお話しになりましたね。五十七年九月までは事後評価していなかった、しかしするようになったのだ、こうおっしゃいましたね。あなたたちは五十七年九月に初めてこういう事後評価報告書を出しましたけれども、それ以前は、事後評価をしろという要求がいろいろありましたね、論議がありましたね、そのときには、いや、相手国との関係がありますから、主権に関する問題ですから、ですからできないのですと言ってきたんじゃないですか、どうですか。
  150. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 この評価の問題も、委員もよく御高承のとおり、やっております仕事自体は、決して相手国の政府の公権力と申しますか、相手国の政府の内政に干渉するような形での評価活動は行っておりませんし、この評価報告書の公表に際しましても、かなりの程度相手国政府行動についての言及、予算措置を相手国政府がとらなかったとかいろいろ若干批判がましいことも記してございますので、その部分につきましては事前にきちんと相手国政府に見せまして、こういうような趣旨のものを公表するということで先方の了承をとって、それで公表している状況でございます。
  151. 三浦久

    三浦(久)委員 ですから、公表する以前は、あなたたちは、主権に関する問題だからと言って公表を差し控えてきた、しかし余りにも大きな批判が出る、ソウルの地下鉄の問題やら何やら出てくるので、こういうことに踏み切ったわけですね。  ところが、実際の実務をやっている人は何と言っておりますか。これは八〇年五月に有斐閣から出ました「国際開発論」というのがある。これは日本国際政治学会編です。ここに後藤一美さん、名前を聞いたことがあると思いますが、これは海外経済協力基金資金課課長代理です。この人が「我が国援助行政の実態分析」という論文をお書きになっていらっしゃる。そこで何と言っているかといいますと、いろいろなことを言っていますよ。しかし、今の問題に関連して言いますと、こう言っているのです。  「我が国の援助行政においては、一部に事後評価の実績はみられるものの、むしろ国会での対外援助に関する国政調査に対する防衛手段という配慮等から、行政府及び実施機関の双方で援助案件の事後評価を積極的に推進しようとする傾向は概して少ないように見受けられる。」だから、事後評価しろ、しろと言っても、皆さん方はやらなかった。いや、主権に関係するからと。しかし、この実務担当者が、いや、国会で追及されるのが嫌だ、国会追及から逃れるための防衛手段として事後評価はやらないんだ、そういうことを言っているのですよ。  ですから、こういうことを見ておりますと、あなたたちが資料を公開しない。これはやはり国会での追及というものを逃れるためにやっているんだなというふうにしか私どもは思わざるを得ないのです。外務大臣が一時は発表してもいいと思ったものが、何で急に発表できなくなるのかということですね。国会というのは国権の最高機関であります。ここが、例えば借款をやる場合の交換公文だってこの国会の承認すら要らないでしょう。予算はやっていると言うが、予算なんというのは大きなものですよ。その予算がどういうふうに使われるかということに対して国会は何ら関与ができない。そしてまた、資金がどう流れていっているのか、我々の税金がどう使われていっているのかという資金の流れについても、何ら資料も出さないから何にも審議ができないというそういう状況ですよ。こんなことで本当に、あなたたちは国会の真相解明に協力するなんて口では言うけれども、実際は妨害しているじゃありませんか。私は資料の公開を強く要求して、時間ですから質問を終わりたいと思います。
  152. 志賀節

    志賀委員長 小川仁一君。
  153. 小川仁一

    小川(仁)委員 マルコス疑惑問題、いろいろ御討議がありましたが、私はそのことに少しだけ触れさせてもらいたいと思います。  政府天下りの方々が大勢おられますが、マルコス疑惑でフィリピン円借款事業一覧表というのが週刊誌などに出ていますが、ここに出ている会社に政府の各省庁の元高官の方が大量に天下りしておられて、そして、その方々が政府借款を事前に情報を入手し会社の利益のために仕事をしておられるような疑惑があるんです。そういうために天下りの役員をそれぞれの会社が迎えるのかもしれませんが。調べてみましたらなかなか巧妙でして、二年ぐらいどこかで稼いでおいて、そして二年ぐらいたつと民間企業に行って重要な役割をしておられる。これはどこを探してもなかなか調べにくいのですが、今回出ている産業その他について、一体天下りの役員が何人ぐらい行っているかということをおわかりでございましょうか。もしわかっておりましたらお知らせ願いたい。ほかの省庁のがなかなかわかりにくいときは、外務省のOBの方で、ここに名前が出ている商社に――これはサンデー毎日ですね。サンデー毎日だけじゃなしにこれは朝日ジャーナルにもみんな出ていますから、そういう会社へ天下りしている人、これをお知らせ願いたいと思います。
  154. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 今委員がお挙げになりましたサンデー毎日でございますが、その企業全部については当たっておりませんが、私ども外務省のOBということでしたならばある程度の把握はできるかと思いますが、ほかの省についてはお答えする資料を持ち合わせておりません。
  155. 小川仁一

    小川(仁)委員 外務省でもいい。
  156. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 昨日、実は委員から御質問の事前通告をいただきました際には、委員が六つの商社名といいますか会社名をお挙げになりましたので、この六つのみについて調べましたが、外務省からは御指摘の企業に役員という資格で入っている者はおりません。顧問という資格ではうち二社に入っております。(小川(仁)委員「どことどこですか」と呼ぶ)丸紅及び住友商事でございます。
  157. 小川仁一

    小川(仁)委員 私が調べた範囲内で言いますと、例えばこのサンデー毎日に挙がっております第五次のところ、ここに五洋建設というのがあります。この五洋建設を調べてみましたら、十二名も運輸省の方から天下りしておられるんですね。それから日本港湾コンサルタントですか、ここにはこれまた運輸省。それから日本空港コンサルタンツ、こういったようなところに大勢の各省庁からの天下りがいるわけです。何かいろいろ、疑惑問題について真実を明らかにしない理由の中に、こういう天下りのOBを通しての政府部内に対する何らかの問題、皆さんがお話ししたくないような問題があるのではないか、こういう感じが率直にするわけです。大臣、こういう状態をどうお考えになりますかね。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 企業とか商社、今お挙げになったようなところには、外務省は確かに役員はなかなか採ってもらえないので、大使をやってやめた人なんかが顧問なんかで行っております。これは私も承知しておるわけでございますが、今のこの問題と絡んで何かいろいろと話があるとか、そういうことは一切聞いたことはありません。
  159. 小川仁一

    小川(仁)委員 外務省は丸紅の顧問だけ、このことはわかりました。私の方でも調査をいたしましたから。ところが今言った企業、例えば日本空港コンサルタンツなんというのは三十二名も政府のお役人が天下りをしているんです。それでこの前、これは公明党の日笠さんでしたかね、この資料をもとにしてですが。(ハ)の項ですから、基金承諾額というので見ますと、第七次で五十二億七千万円、こういうお金。こうなってきますと、各省庁をお呼びすればよかったのですが、何かこう日本のお役所OB、そして円借款、そして利益、リベート、こういう構図が浮かんでくる感じがするのです。これはやはり好ましくないことだと思いますが、外務大臣も閣僚のお一人、しかもこういう問題についてはかなり責任ある立場でございましょうから、こういう点ひとつ今後十分目を光らして監視なさるというお気持ちはございましょうか。
  160. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も通産大臣なんかやったことがありますけれども、やはり役人の場合も、やめてから企業なんかへ移る場合は一つの規則といいますか、そういうものがありまして、ストレートに移るということじゃなくて、次官なんかはやめたら一年とか二年とかは民間に直接関係のあるところには移れないとか、いろいろとそういう規律、規制的なものがあることも御承知のとおりでありますし、これはそういうことをやっぱり全体的に見ながら、だけれどもやめた人は何か食っていかなければなりませんから、そういうことで各企業等へそれは出ていくことはあると思います。そういうことまで一々、なかなかこれはそう抑えつけるということもできないんじゃないだろうか。これはやはり本人の問題でもあるだろうと思います。全体的には一つの規則というものが、全体を規制するという意味ではあるように私は承知しております。
  161. 小川仁一

    小川(仁)委員 もう一つ具体的なことをお聞きしますが、パシフィック・コンサルタンツというのとパシフィック・コンサルタント・インターナショナル、こういう非常に類似した会社がございますが、これは同一会社ですかどうかお調べをと前もってお話ししておきましたが、どうでしょうか。
  162. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 昨日委員より御照会がございましたので、このパシフィック・コンサルタント・インターナショナルとパシフィック通商、これについて通産省経由で調査をしていただきましたところ、パシフィック・コンサルタント・インターナショナルは、昭和四十四年にパシフィック・コンサルタンツ株式会社から海外事業を分離して別企業として設立されたもので、正式には株式会社パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル、こう称するものと承知いたしております。  なお、委員の御指摘はパシフィック通商という名前の商社かと思われますが、これにつきましては通産省を含めまして関係方面にいろいろ照会しましたが、現在のところ詳細は不明でございます。
  163. 小川仁一

    小川(仁)委員 パシフィック・コンサルタント・インターナショナルというのには、大蔵省から天下りがあるわけなんです。それで、ちょっと言ってみますと、五洋建設十二名、丸紅、これは先ほど外務省と言いましたが、ほかに通産省からも行っております。住友商事は中小企業庁長官であった人が行っており、国際協力事業団からも天下りをしている。日本港湾コンサルタントというのには三十二名も運輸省から行っている。パシフィック・コンサルタントは大蔵省から一人。伊藤忠、三菱商事、新日本技術コンサルタントなど、外務省とは言いませんよ、すべてがいわゆる日本の天下り役員によって占められているということ。このことは、円借款事業をどう持っていくか、あるいはこういう交渉が行われているとかいうことを事前に知るためには大変お役に立つ方々だろうと思いますが、こういう疑惑が出てきますと、こういう関係の天下りというものは政府としてもかなり厳重に見ておかなければいけないと思います。意外と、汚職とかリベートとか疑惑などという問題が出てきますと、撚糸工業の場合にしても他の場合にしても、全部OBが絡んでいるとさえ言っていい状況があるわけでございますから、外務大臣は直接の所管ではありません、OBの天下り先所管というのはどこにもないわけでございますけれども、綱紀粛正ということになりましょうか、あるいは再就職先の選定ということになりましょうかを含めて、政府令体で厳しく御注意あった方がいいのではないか、こう考えますが、このことについての御見解をいただきたいと思います。
  164. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 先ほど外務大臣からの御答弁がございましたけれども委員も御高承のとおり、円借款につきましても無償資金協力につきましても、事業の入札を行い、かつ、落札者を決定し契約をいたしますのは相手国の政府でございますので、相手国政府がどのような企業を公開入札しまして決定するかということでございますので、その点だけちょっと補足して申し上げておきます。
  165. 小川仁一

    小川(仁)委員 注意する気はないのですか。
  166. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはOBで、役所をやめるとかあるいは途中で、企業とか日本のその他の産業に随分出ていっておりますが、それはやはり有能な人材はどんどん民間でも採用するでしょうし、それなりに活躍をしているんじゃないか。ただ、いわゆる高級官僚の場合には一つの規制的なものがあるわけでございますし、それはちゃんと守られておる、こういうふうに思います。  それから、円借事業については、今の藤田局長の話のように、例えばマルコス文書に出ている一つの疑惑は、要するにフィリピン政府と落札といいますか受注する日本の企業との関係なんですね。ストレートに日本政府とかいうものではなくて、向こうの政府と落札する日本の企業との関係じゃないだろうか、そういうふうに思っておるわけでございますが、しかし、これは、日本の援助にかかわりがあるということになればいろいろと解明しなければならぬということで努力をしておるわけであります。
  167. 小川仁一

    小川(仁)委員 いずれ特別委員会が開かれますから、そちらでこの問題はいろいろな角度から討議されると思いますが、有能だという物の言い方だけで天下り問題を考えてはいけない。民間だってかなり有能な人が入っていますよ。天下りだから有能だというふうな物の言い方だけではないのですね。さっき言った円借款の仕事をしている五洋建設なんというのは十二人も行っているわけですよ。それほど、有能な方もおられるかもしれませんけれども、こういう状況の中で巧みな行動があることについての御注意を再度申し上げまして、この問題は終わります。  そこで、話は変わりますが、日ソ経済委員会というのがもう開かれましたかな。きょう、あす開かれることになりますが、日ソ経済委員会はどういうふうな構成になって、何を目的として、どういうことを期待しておられるか、おわかりでしたらお願いしたいと思います。
  168. 西山健彦

    ○西山政府委員 この日ソ経済協力合同委員会は、日本側の民間業界の代表の方々とそれからソ連側の外国貿易に携わる諸機関の代表が、その長といたしましては外国貿易省大臣でございますが、原則といたしまして年に一回相集いまして、日ソ間の貿易の諸問題を議論し、どういうふうな方途を講ずれば日ソ間の貿易が促進されるか、そういうことを検討することを目的といたしているものでございます。  ちなみに、今回の会合はこの十五日から十七日までモスコーで開催されることになっております。
  169. 小川仁一

    小川(仁)委員 実は、「日ソ経済委員会参加企業に対する公開質問状」というものが対ソ協力企業監視団というところから出ているんです。これを読んでみますと、「公開質問状」という形をとっておりますけれども、書いておりますことは非常に脅迫的と申し上げましょうか、脅迫自体はしておりませんけれども、きつい文章なんです。  例えば「我が国と赤帝ソ連邦との関係は」という表現を使っております。そしてどういうことを言っているかというと、「遂に永年に亘り、ソ連政府が要求していた政経分離方式に屈したものとなり、我が国の外交原則は大きく捩曲げられたのであります。このようなエコノミック・アニマル日本財界の原則を逸脱した独善的な単独先行は国民に対する重大な背信行為以外の何ものでもなく、我々は断じて容認で来ず、ここに強く反対を表明するものであります。」こう書いて、それぞれの団体の名前が幾つか挙がっている。愛国青年評議会以下、幾つかの通称右翼と言われるような団体の名前が書いてあります。これが全部の企業へ届けられているのです。これは経済会議に参加させないための一種の妨害行為、こんな感じがいたします。  そして、質問書がずっとありまして、「貴社は四月下句開催予定の「日ソ経済委員会」合同会議訪ソ団参加を中止する考えはないか?」といったような言葉もあり、「貴社はソ連邦を一方的に利する日ソ経済委員会の「解散」を提案する意思はないか?」こういったような質問書が所々に入っております。今までもこういうふうな日ソ経済会議みたいなものがあったわけでございますが、その都度こういう脅迫状的なものが出ていたのでしょうか、それとも今回の一つの特徴でございましょうか、おわかりでしたらお答え願いたいと思います。
  170. 西山健彦

    ○西山政府委員 実は私どもこういうものがあることを全く存じませんで、こういう御質問があるということを伺いまして、初めてこういう文書が存在することを承知したわけでございます。従来、関係企業からもそういうふうな報告は我々は全く受けたことはございませんでした。
  171. 小川仁一

    小川(仁)委員 こんなもの、一々外務省へ届ける企業もないと思います。しかし、もしこういうものによって参加しなかった企業などがあったりすると、やはり日ソ経済委員会目的が幾らかでも阻害されるでしょうし、またその効果があると思えばますますこういった活動が盛んになる、こういう状況もあると思います。したがって、いろいろこれを調べる過程の中で、実はここへ名前を出している後ろにこんな黒幕があるというふうな話をした人もございましたが、それは別として、何かしら日本とソビエトの経済交流を妨害しようという意図だけは明確でございます。日ソ経済というものに対して、これは警察庁にお願いすればいいのでしょうけれども、直接的ではないが、これからこういう妨害をやはり排除して一層発展させるためのお考えはございましょうか。何か安倍外務大臣も訪ソを考えておられるようでもございますから、こういった課題をきっちり整理するように、そしてまた、こういう脅迫的な言辞に余り企業が驚かないで日本の国益のためにあるいは日ソ友好のために参加するようにお話をし、お働きかけを願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 本件の公開質問状につきましては、それが脅迫状のようなものとみなされるか否かは、外交当局の判断し得るところではないわけでございます。また、この質問状の発出それ自体によって長い歴史を有しております日ソの経済関係が直ちに阻害をされる、こういうふうにも思えません。私も河合団長の表敬を受けましたけれども、今度ソ連に行かれる経済委員会日本側代表団というのは大変大がかりなもので、二百数十人の非常に有力な企業の責任者がみんな打ちそろって行かれるということで、これは近来にない大デレゲーションだと思っているわけでございます。  したがって、こういうことが何か影響があるとか、そういうことはないように私は思います。また、日ソの経済関係は先ほど申し上げましたようにやはり歴史を持っておりますし、こういうことでいろいろと動揺するものじゃない。ただ、日ソ関係については領土問題もありますし、経済問題も政治問題も、我々としては政経一体というとらえ方をしていることは、これはいつも答弁しているとおりであります。
  173. 小川仁一

    小川(仁)委員 私のような者にこういうのが入るということは、余り正常な状態じゃないことだろうと思いますので、特に今後は、外務省の方でも関係省庁に物を言いながら、やはり十分な配慮をお願い申し上げたいと思います。  続いて、ちょっと靖国問題について御質問を申し上げますが、前に靖国問題懇談会というのを総理府、官房長官の諮問機関としておつくりになった。この機会に、外務省は、海外の情勢というものについてこういう状況であったということを、その懇談会に意見をお出しになったことはございますか。
  174. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 懇談会の過程におきまして、そういうことを特に外務省から申し上げたというようなことはございません。
  175. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうするとその時点では、外務省は、これがアジア近隣諸国の非常に大きな問題になるというふうには御認識しておられなかったということですね。
  176. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 私どもは、懇談会の審議の一つ一つ細かいのを承知しておりませんけれども、基本的に、この種問題が検討される場合においては諸外国の関係に十分思いをいたしていただきたいということは、懇談会そのものではございませんけれども、内閣官房等には随時お話をしております。
  177. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうしますと、八月十五日の公式参拝、あの時点では、ああいうアジア諸国からの反撃があるということを十分に察知はしていなかったと考えていいわけですか。
  178. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 政府部内の問題といたしましては、先ほどもちょっと申し上げまして繰り返しになりますけれども国際的な問題あるいは反応というものが十分あり得るということは十分お伝えしてきております。
  179. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうなりますと、在外公館にいる人たちは一体何をしておったんだろうかという感じさえ持つ、後からの反響の大きさに驚くわけでありますけれども、今度の八月十五日の公式参拝というのはまことに珍無類な形式をとってされたわけでありますが、これは日本政府に対して、ひとりよがり的な解釈によってアジアの人たち侵略戦争の深い傷跡を思い出させる、民族感情を逆なでするものとして受けとめられた、こういう批判がずっとあるわけであります。  それで、主な国々の靖国神社公式参拝に対する批判、反応、これを公的な部分とあるいは新聞論調等で言っているものと――前もって資料をいただいておりましたが、公的な部分の資料が来ていないもので、新聞の資料だけなんですが、それぞれの国が、公的というといろいろな形をとると思いますが、意思表明をされたと思います。それで批判が出された国々はどこどこか、また逆によくやったといって賛意を表した国があったかどうか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  180. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 公的あるいは非公的と申しますか、あれでございますが、委員御案内のように、特に昨年この公式参拝が行われました後、アジアが主にいろいろな反応を示したことは事実でございますが、その中で、当然のことでございますけれども中国におきまして、今御指摘のように要人あるいは外交部のスポークスマン、マスメディア等がいろいろな形での反応をしておりますのは、あるいは先生のお手元にお届けしてあるとおりでございます。一言で申し上げますと、中国側の反応というものは、靖国神社を公式に参拝することは中国人民のみならずアジア諸国人民の感情を害するのではないかとの趣旨の懸念というのがその要点であろうかと思います。この点は、公的な要人にせよあるいは人民日報にせよ、これはある意味では公式的な反応を報道するわけでございますが、大体趣旨は一貫していると思います。それから、そのほかの国、アジアの国でございますけれども、一部の新聞等において批判的なトーンの報道がありましたけれども、その他については主として事実関係の報道が行われているということでございます。特に、韓国におきましては、たしか当時、昨年の秋、韓国を訪れました日本の新聞記者による質問に対しまして、李 源 京外務部長官が、やはりこの問題については私ども非常に関心を持っておるけれども、賢明なる日本政府において今後とも慎重に処理されていくべきものであろうというようなのが、いわば一つの公式的な見解であります。  賛意を表明したということにつきまして、特にそれは大変結構であったというような報道はございませんけれども、今申し上げましたように、中国を除いては、例えば日本の報道をそのまま報道するというような形での報道がなされているというのが、主なそのときの現状でございます。
  181. 小川仁一

    小川(仁)委員 いわゆる西側の国と言われるアメリカ、イギリス、フランス等の反応はどうでした。
  182. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 私の承知する限り、余りそういうものについての反応とか、あるいは公式的な見解というものは少なかったと思っております。
  183. 小川仁一

    小川(仁)委員 この前、安倍外務大臣がおいでになったときに「さざ波」というお話をなされたようですが、大臣、この問題については「さざ波」という程度の御認識でございますか。それともどういう御認識をお持ちになりましたか。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、実は呉学謙外相と話し合いをいたしました、時間をかけまして。日本の立場は官房長官談話が出ておりますから、この官房長官の趣旨を説明をいたしまして、中国でいろいろと言われておるように、これは軍国主義を謳歌するものである、あるいはまた日中共同宣言に反するとか、一部の人たちのためにこの参詣、参拝をしたことになるとか、そういうような立場では決してない、日本はあくまでも平和友好条約を守る、あるいは共同宣言の趣旨を貫いていく、日中関係は非常に大事にしていくという考え方は全く変わらない、同時にまた、言われているような軍国主義の道を歩むなんということはとんでもない話で、実際を見ていただけばわかるし、あくまでもこの趣旨は、どこの国でもやっているように、一般の戦没者に対して一般的に政府として追悼の意を表明して、そして戦争を再びしてはならない、こういう誓いを新たにするための参詣、参拝である、平和を祈るためのものである、ですから日中関係を傷つけるようなことにはならないし、中国側としてもその辺の日本の立場というものを、また日本政府見解というものを十分ひとつ理解してほしいということを私からも述べたわけでございます。  これに対しまして中国側は、日本説明はそれはわかるけれども、しかしやはり国民感情というものをお互いに傷つけるべきではない、こういうお話がございました。これでもって向こう側が、中国側が了解したとか理解したとかこういうことにはなったとは私は思わないわけでございますが、しかし、日本側の説明についてはこれは聞いていただいた、こういうふうに考えております。  いずれにいたしましても、こういう問題で日中関係を傷つけないように我々も注意してまいらなければならぬと思いますし、また、引き続いて十分理解をしていただくような努力は重ねてまいりたい、こういうふうに思っています。
  185. 小川仁一

    小川(仁)委員 中曽根総理は秋の例大祭はおやめになったようでございます。これはやはり海外の反響、海外の批判というものを受けとめでおやめになったものと考えておられますかどうか。
  186. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全体的な判断のもとに、あるいはまた中曽根総理自身のスケジュールの問題もあったようでございますが、そういう点も踏まえられてこれはおやめになったといいますか、取りやめられたというように聞いています。私はその具体的なことについては承知しておりませんが、いずれにしてもおやめになったことはこれはもうそのとおりであろうと思います。
  187. 小川仁一

    小川(仁)委員 ことしも、例大祭を初め、また八月十五日が回ってくるわけでございます。中曽根総理は御参拝をなさるかどうか我々知るよしもありませんが、そのときそのときの調子で、おいでになったりおいでにならなかったりでございます。ちょっと調べてみましたら、前に総理をなさった方は、総理のときには御参拝なさるけれども総理をおやめになるとおいでになる方は一人もいないのですね、御参拝になる方が。これはまことにおもしろい現象、おもしろいというか奇妙な現象だなと思っているのです。一体、靖国神社に参拝するというのは、総理だから参拝するので、総理を終わってしまえばこれは参拝しないという一つの流れみたいなものの中に、実は余りこの参拝というものを大事に考えていないのじゃないかという感じもするのです。自分自身の信念で行っているのじゃない。こういう状況なら、ことしは例大祭でも八月十五日でも総理はおやめになると思いますが、もし総理がまた公式参拝、こういったようなお考えをお持ちだとわかったら、外務省としては、これは国際的なマイナス影響、特にアジア諸国に対する非常にマイナスな影響があるからおやめになったらいかがですか、こうお話しすることはございませんか。あるいは、アジアの昨年のいろいろな状況というものをごらんになって、やめることが至当であるといったようなお話をなさるおつもりはございませんか。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現職の総理大臣の場合は、靖国神社、これまでも私的な参拝等が行われたわけですが、そういう点については非常に目立っておりますからニュース等にもなるわけですけれども、今お話しの、おやめになった総理とかその他政治家については、これは参られたか参られないかということは、新聞等にもそういつも出るわけじゃございませんし、その辺のところは我々は十分承知しておりませんが、例えば自民党の議員なんかは靖国神社に参拝する会を持っておりますし、そろって参るというケースは非常に多いと思っております。  政府としましては、御承知のように公式参拝の道は開いたわけでございますが、しかし、総理大臣も常に言っておりますように、今後公式にお参りするかどうかということはそのときのいろいろな状況等も判断をして決めたい、こういうことでございまして、これは総理大臣自身が判断をすべきことであろう、こういうように思います。
  189. 小川仁一

    小川(仁)委員 去年外務省は、八月十四日に在外公館に対して、相手国に中曽根総理の参拝の真意を説明理解を求めるように訓令を出しております。十四日であります。あす参拝するという前の日であります。やはりこれは、ある意味では海外からの批判、こういうことを予測してお出しになったと思います。結果としては十分な理解が得られなかったために、中国を含め韓国あるいはその他の国からも批判をされ、新聞論調でいいますと、アメリカでもイギリスでも実はこの状況に賛意を表しないような紙面が出ているわけであります。また総理が参拝をなさるというふうな、暴挙と言うと大変言葉として適当でないかもしれませんが、そういう種類の行動に出られるときには、やはりまた訓令をお出しになって事前説明をなさるおつもりでございますか。もう説明はこれで終わり、こういう格好でございますか。
  190. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに在外公館に、この問題について、各国に日本の真意を伝えて誤解のないようにしていただきたいということで、訓令を出しております。こういう在外公館としては、今後とも、そういう趣旨に基づいて説明をし、あるいは求められれば理解を得るように努力をすることは、これからもやっていかなきゃならぬと思っております。これからのことはまだ何も決まっておるわけではございません。決まった段階でとるべき措置はとっていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  191. 小川仁一

    小川(仁)委員 海外の批判を見ますというと、論点はおのずと決まっております。A級戦犯を合祀した靖国神社に対して日本総理が公式参拝をするということは、日本が今までの侵略戦争を普通の、普通の戦争と言うと語弊がありますが、通常な両国間相互の戦争みたいな形に直してしまうような問題があるということが、ずっと新聞を見ての論点のほとんどの点だと思います。それで、御説明をなさるとすれば、A級戦犯が合祀されていることに対する公式参拝、これに対してどのような真意を御説明なさるのですか。その点を、説明の点をお伺いしたいと思います。
  192. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 各国の説明日本国民に対する説明は、これは昭和六十年八月十四日の藤波内閣官房長官談話に尽きておると私は思っております。この談話をそのまま説明をしたわけでございます。  例えば、「靖国神社を我が国の戦没者追悼の中心的施設であるとし、同神社において公式参拝が実施されることを強く望んでいるという事情を踏まえたものであり、」これは国民や遺族の方々の多くが望んでおるわけでございまして、「その目的は、あくまでも、祖国や同胞等を守るために尊い一命を捧げられた戦没者の追悼を行うことにあり、それはまた、併せて我が国と世界の平和への決意を新たにすることでもある。」あるいはその他いろいろと説明してあります。「公式参拝に関しては、一部に、戦前の国家神道及び軍国主義の復活に結び付くのではないかとの意見があるが、政府としては、そのような懸念を招くことのないよう十分配慮してまいりたい」、あるいはまた、「国際関係の面では、我が国は、過去において、アジアの国々を中心とする多数の人々に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んで来ているが、今般の公式参拝の実施に際しても、その姿勢にはいささかの変化もなく、戦没者の追悼とともに国際平和を深く念ずるものである」、こういうふうな趣旨のことがその他ずっと書かれておることは御案内のとおりでありますし、また、A級戦犯が祭られておるということについても説明を求められたこともあります。私はこれに対しても官房長官談話に即して説明しておるわけで、そうしたA級戦犯にお参りするということではなくて、公式参拝はあくまでも一般の、書かれてあるように、戦没者に一般的に追悼の意を表するということであるのだ、その辺のところはひとつ十分理解をしていただきたいということを申し述べた経緯があるわけでございます。
  193. 小川仁一

    小川(仁)委員 問題点をもう一遍えぐってみますと、やはりA級戦犯が祭られているということが非常に大きな問題のようでございます。北京やASEANで学生がデモにまで発展したというところは、やはりA級戦犯の問題があります。  それから、先ほど賛成の国はなかったというふうに承りましたが、賛成の国がなかったということは、そのことと加えて靖国神社が宗教団体である、この点です。諸外国のいわゆる宗教というものを非常に厳格に考える国民性の中で、一宗教団体のお祭りに総理が公式に参拝した、この二つが非常に大きな問題だ、こういうふうに私は認識しております。  したがって、どう頑張ったってこの点はすっきり説明がつかないと思うのですよ、A級戦犯が祭られているのですから。政府がこのA級戦犯を外せというわけにはいきません。それから、靖国神社が依然として一神道という宗教団体である限り、やはり宗教観という立場からの批判は免れないと思います。したがって、今後いたずらに事を大きくしないように、政府は公式参拝をやめるべきだと思います。中曽根総理にじかに御質問を申し上げ、じかにお話をする機会がないものですから、一番反響が大きかった海外の問題を軸に、外務省の方からこういう問題についてきっちり御報告なり御意見なりを出すようにお願いを申し上げたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御意見として承っておきます。
  195. 小川仁一

    小川(仁)委員 意見として聞かれてもいいのですが、問題の本質はそこにあったという認識だけは同じだろうというふうに認識をして、この問題については終わらせていただきます。  続いて、官房長官もお見えになりましたのでお聞きいたしますが、天皇在位六十年の式典をおやりになるようであります。中曽根総理が三月八日の予算委員会で、天皇はあくまで平和主義の方であられ、戦争回避のために全面的に努力をされた、終戦は――これは敗戦だと思いますが、終戦は陛下の御英断によってもたらされた、陛下の六十年の御在位をお祝いするのは最も自然な感情であり、それに逆らうことは、私は不自然とかたく信じている、こう述べられています。  本当に六十年のお祝いというのは自然な形でございましょうか。一つの例でいいますと、例えば御在位という表現はまことに不自然な言い方でございまして、五十年のときは、即位の五十周年でございました。何で十一月十日なりあるいは十二月二十五日なりという日を選ばないで、最も内輪でお楽しみになる誕生日を選んで、無理無理天皇を式場にお招きしてやられるのですか。こんな不自然な姿はないと思うのですが、総理の言葉とちょっと違うようですけれども、どういう考え方なんですか。
  196. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、やはり総理のお気持ちが一番素直な国民としての気持ちではないかと、心底そう考えます。といいますのは、十二月の二十五日、これは践祚の日ですね、それから十一月の十日であれば即位の式典をやられた日ですが、そうでなくて何で四月二十九日か、こういう御質疑もあるわけですが、これは去年の十二月二十五日からことしの十二月二十四日までの間がちょうど御在位六十年の年に該当するわけでございます。ところが、御在世を考えますと、去年の七月十三日からことしの七月十二日までが、歴史上確認し得る歴代天皇の中で一番御在世の長い年に入ったわけでございます。後水尾天皇以来のようでございます。たまたま六十年がそういう年に該当するわけでございますので、ことしの四月二十九日に、国民とともに政府の主催で一番長い御在世をお祝いをし、そして同時に、一番長い御在位の陛下であるということでお祝いをするのは、私は、その方がはるかに自然の国民の感情だと思いますよ。(「思わない」と呼ぶ者あり)それはあんたが思わない話で、そういう人もおる。だから、それは私は何も百人全部とは言いませんけれども、こういうおめでたいことというのは、やはり国民の多くの方が望んでおるのを素直な受けとめ方でお祝いを申し上げるのが一番適当であろう、私はかように理解をするわけでございます。
  197. 小川仁一

    小川(仁)委員 私は、後藤田官房長官のお話を聞いて、やはり不自然だなという印象がするのです。というのは、お年が長い、こういうことはわかります。ただ、日本書紀なんかを読んで、紀元二千六百年なんという話の計算をしますというと、百二十年くらいおやりになった天皇がいないと計算が合わないのですね。だから天皇が、歴代のいろいろな天皇のことを含めながら、日本書紀等もお考えになって考えられると、一番長いとはお思いにならないだろう。明治からになりますと確かに長い。  ただ、今回のやり方を見ていまして非常に不自然さを感ずる二つ目は、何で天皇は、御誕生の日にお宅で――お宅でという言い方は失礼ですが、宮城の中でこれは誕生日ですから私的なお祝いをなさった方がよかったのじゃないか。お年もお年でございますから、そのお祝いがあって、参賀があって、そのほかにまた式場までという、こういう御無理な引き回し方というのは何か不自然です。こういう不自然さというものを感じます中に、私は天皇を政治的に利用し過ぎるのじゃないかという印象を強く持つわけであります。  かつて我々も、天皇を政治的に利用し、その結果起こった、国民が非常に無残な状態に置かれた事例を、つい四十年前までに経験をしているわけであります。このような天皇の政治的な利用の仕方、こういう問題は、現在の天皇制自体を、憲法上存在するとして認識したとしても、非常に危険なことだ、私はそう思うわけであります。  内閣の百年とか何とか言いながら、実は行き詰まった中曽根政治の中で、最後のとりでですか、最後の政治的な道を残すために天皇を必要以上に利用しているのじゃないか、こういう印象を免れないわけでございます。天皇を政治的に御利用なさるということは、日本の歴史の上で余りいい結果が一つも出ておりませんから、この際、せっかく御計画になったものをやめろ、こういうわけにもなかなかいかないと思いますけれども、もう今後は歴史的なり政治的な利用はしない、こういうふうな方向でお考えをいただけぬものでしょうか、どうでしょうか。
  198. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今お答えしましたように、国民の素直な気持ち、その素直な気持ちと一体となって政府もお祝いを申し上げよう、こういうことでございまして、現在の天皇は「国民統合の象徴」である、政治的にはもう全く何の関係もないのだ、こういう御存在になっていることを十分承知の上でお祝いを申し上げるのであって、御質問の方がかえって政治的に巻き込むような御議論ではないのか。私どもはあくまでも政治とは峻別をして、ともにお祝いを申し上げたい、こういうことでございますので、そういう御疑念はひとつないようにしていただきたい。  それから、内閣がそろそろ行き詰まってと言いますが、高い国民の支持率をおかげさんで得ておりますので、行き詰まっておるとはいささかも感じておりません。ただ、党には党則というものがございますから、党則に従って出処進退することはもう当然のことでございましょうけれども、政治のとり方それ自身が行き詰まっておるというふうには全く理解いたしておりません。
  199. 小川仁一

    小川(仁)委員 宮内庁の方に伺いますが、先ほどの中曽根総理の言葉に、天皇は平和主義の方であられ云々と言われております。ところが、この平和主義の方であればあるほど、天皇制を利用した当時の内閣が無謀な戦争を行って、我々兵隊は、上官の命は天皇の命と思え、こういう絶対服従を強いられて戦い、そして非常に多くの人、三百万にもなんなんとする人が亡くなっておられるわけです。天皇が平和的であればあるほど、この時期のことについて非常に深くお考えになっておられるのではないかと思うわけであります。したがって、天皇御自身、戦前の二十年と戦後の四十年に対してのお気持ちに変わりがあられると率直に思います。まあ、そう思わないとすればこれはまことに平和的な方であったかどうかということに疑念を持つわけでございますが、しかし、そういう天皇のお気持ちなどというのは直接お伺いするわけにもいかないし、また御表明もなさらない。したがってそういうことを後から、例えば侍従職であられた方とかいろいろな方々が談話の形で、あるいはこういうことでございましたという形で時々お話しになって、何年かたった後に当時の天皇のお気持ちが我々にわかる、こういう事例があるわけでございます。五十年の在位をやった後、今回は六十年で十年間ありますが、その間、天皇のお気持ちを侍従等からお聞きになっておられる機会が宮内庁には一番多いのですが、宮内庁は、今回のこの在位六十年に対して何か意見を申し上げるとか考え方を出したということはございますか。
  200. 山本悟

    山本(悟)政府委員 大変に難しい御質問でございますが、陛下のお考えは、常に憲法に従ってと、戦前におきましても立憲君主としてということは記者会見等でおっしゃったことがあるようにも承知いたしておりますが、その他につきましては一切おっしゃっていないと存じます。したがいまして、先ほどおっしゃいましたこの五十年から六十年の間に新たに何かおっしゃったかという御覧間でございますが、それは私どもとしましても特段に何も拝承をいたしていないところでございます。
  201. 小川仁一

    小川(仁)委員 今やられている行事が、天皇のお気持ちがこうであったという形で後から批判をされるという事例が今までもございました。開戦の場合でも敗戦の場合でも後から我々にわかりました。後からわかったのでは政治をやっておる者としては務まらないわけでございます。そればかりでなく、アメリカにおいでになった天皇も、どういうお言葉を出されたかというと、やはり大変不幸な期間があった、迷惑をかけたとおっしゃっている。全斗煥大統領が日本に来られたときも、同じようなお言葉で謝られておられる。中国の鄧小平氏がおいでになったときも、やはり不幸な長い時代ということを言われながらお話をしておられる。とすれば、天皇のお気持ちの中には、海外の首相あるいは大統領にお話しになった不幸な時代、日本が不幸な時代を招来したというお気持ちがあられると見るのが至当だと私は思います。とすれば、ただ区別なしに六十年だ、こういう形だけで、何かしら政治的に利用するようなお祝いをするということに対しては、むしろ天皇に対して失礼になるではないか、天皇のお気持ちをおもんぱかっていないのではないかとさえ私は感ずるわけでございますが、こういう私の言い方は間違っておりましょうか。
  202. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 せっかくの御意見でございますけれども、本件に関する限りは、大抵のことは小川さんと余り違った意見を申し上げることはありませんけれども、本件についてだけは残念ながら賛成いたしかねる、かようにお答えを申し上げたい。
  203. 小川仁一

    小川(仁)委員 新聞によれば、世論調査を見ましても一〇%ぐらいしか支持していないんですね。しかし、天皇自身が御自分のお口から、不幸な時代、こうおっしゃっているというお気持ち、ここを考えますならば、やはりのっぺらぼうの六十年という問題の式典というものは逆に天皇に負担をかける、こういう結果になることを考え、また私自身もそういった区切りのない式典というものに対しては行うべきでないという考え方を持ちますから、以上、私の考え方を申し上げます。そしてこういう課題は、政治体制の中における天皇制という問題について、改めでいろいろな角度で討論を巻き起こす種になるであろうということを申し上げておきます。  次に、同じ問題でございますが、皇太子の訪韓、訪中、訪米の問題が一時ずっと紙面等にあらわれておりました。まあ、皇太子御夫妻の健康上の御都合でこれが延期になったようでありますが、この前外務省からもらいました「中国外交部スポークスマン発言」というのを見ますと、中国では「日本の皇族訪中問題に関し、一九七五年てん皇へい下御自身がもし機会が有り訪中出来ればうれしい旨公けに表明された。しかし、日本側の理由により未だ実現していない。」こういうふうに発言をしておられるようですが、日本側で実現しなかったという理由は何でしょうか。これは外務大臣。
  204. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 ただいまの天皇陛下のあれは、アメリカに行かれたときの御発言なんかを含めると思いますが、いずれにしてもそれは非公式のあれでございまして、正式の御発言として、あるいは外務省として本作を考えたということはこれまでございません。
  205. 小川仁一

    小川(仁)委員 そうすると、あなたの方でよこした資料は、中国国内では一切報道されていないと言っているが、公に表明されたというのは、中国だけが受け取っておって、日本では関知しなかったということですか。
  206. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 ただいまのは中国の外交部のスポークスマンのコメントでございますね。たしかアメリカの雑誌か新聞にそういうコメントが出ておりますが、私どもの方としては、中国の方から正式にそういうようなコメントがあった、あるいは招請があったということは、今までございません。
  207. 小川仁一

    小川(仁)委員 私は、皇族をやはり政治的に利用して、訪韓、訪中、訪米という格好で、皇室が何かしら、政治の後始末があるいは先駆けかわかりませんが、御訪米なさる、あるいは御訪韓なさるということを余り好みません。できるだけ政治的にお使いなさらないでくださいということを申し上げ、同時に中国には、もしこのスポークスマンのお話が、何かの機会に天皇と中国の方との会話の中で出るか、あるいは中国からの要請があったとすれば、御健康が許すならば、天皇が御自身で出かけられることが、本当にこれからの日中友好のために非常に大事だと思う。皇太子では務まらない非常に大きな重要な意味があるというふうに考えますが、この点に関して外務省は、皇太子の場合も官邸の頭越しだったようで、余り考えておられないかもしれませんが、今申し上げたことについて御見解があれば伺いたいと思います。
  208. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 皇室の御外遊につきましては、皇太子もヨーロッパとかアフリカとかへしばしばお出かけになっておりますが、親善という実を上げておられまして、相手の国との親善関係がそれによって一層促進されるという大きな成果を上げておられることに対して、我々は大変喜んでおるわけであります。  なお、中国との間につきましては、こうした皇室の御訪問等についてはまだ何ら話し合いはしておらない、白紙の状況でございます。
  209. 小川仁一

    小川(仁)委員 いろいろ申し上げましたが、少し早いけれども、以上で私の質問を終わります。
  210. 志賀節

    志賀委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  211. 志賀節

    志賀委員長 この際、本案に対し、宮下創平君外一名から、修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。宮下創平君。     ―――――――――――――  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  212. 宮下創平

    ○宮下委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただき、その内容を申し上げます。  原案では、新設される総領事館に勤務する在外職員の在勤基本手当の基準額の設定に関する改正規定は「昭和六十一年四月一日」から施行することといたしておりますが、既にその日が経過しておりますので、これを「公布の日」から施行することに改めようとするものでございます。よろしくお願い申し上げます。  以上です。
  213. 志賀節

    志賀委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  214. 志賀節

    志賀委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、宮下創平君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  215. 志賀節

    志賀委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  216. 志賀節

    志賀委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  217. 志賀節

    志賀委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、宮下創平君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。元信堯君。
  218. 元信堯

    ○元信委員 ただいま議題となりました自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案に係る附帯決議案につきまして、提出者を代表しまして御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について引き続き検討の上、適切な措置を講ずべきである。  一 我が国が世界の平和と繁栄に積極的な外交をもって貢献していくため、外交実施体制、特に在外公館の基盤の整備・強化に努めること。  一 在外職員、特に自然環境等の厳しい地域に在勤する職員が、活発な外交・領事活動を展開しうるよう、勤務環境の整備・処遇の改善等に努めること。  一 在外公館の事務所及び公邸の国有化を推進するとともに、在外職員宿舎の整備に努めること。  一 在外公館における外交活動の能率促進のために通信施設・事務機器等の近代化に努めること。  一 治安状況の悪い地域に勤務する在外職員が、その職務と責任を十分果たせるよう、警備対策の強化に努めること。  一 緊急事態における邦人の救援等安全確保に努めること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため、在外日本人学校及び補習授業校の拡充強化、子女教育費の負担軽減、帰国子女教育の制度の改善及び施設の整備等の対策を総合的に推進すること。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の本委員会の質疑を通じまして明らかなことと存じます。よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
  219. 志賀節

    志賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  220. 志賀節

    志賀委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安倍外務大臣
  221. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。  また、本法案の御審議の過程におきましては、外交活動の基盤強化につき深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対し、厚く御礼を申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。まことにありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  222. 志賀節

    志賀委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 志賀節

    志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  224. 志賀節

    志賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会      ――――◇―――――