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1986-04-08 第104回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月八日(火曜日)    午前十時十七分開議 出席委員   委員長 志賀  節君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       内海 英男君    塩川正十郎君       月原 茂皓君    中村喜四郎君       堀内 光雄君    井上 一成君       上原 康助君    新村 勝雄君       矢山 有作君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    滝沢 幸助君       柴田 睦夫君    三浦  久君  出席国務大臣        外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員        外務大臣官房長 北村  汎君        外務大臣官房外        務報道官    波多野敬雄君        外務大臣官房領        事移住部長   妹尾 正毅君        外務省アジア局        長       後藤 利雄君        外務省北米局長 藤井 宏昭君        外務省中南米局        長       山口 達男君        外務省欧亜局長 西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長   三宅 和助君        外務省経済協力        局長      藤田 公郎君        外務省条約局長 小和田 恒君        外務省国際連合        局長      中平  立君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部長      神戸  勉君  委員外出席者        経済企画庁調整        局経済協力第一        課長      小川 修司君        環境庁大気保全        局大気規制課長 片山  徹君        大蔵省国際金融        局投資第二課長 三浦 正顕君        厚生省保健医療        局老人保健部老        人保健課長   小野 昭雄君        通商産業省通商        政策局経済協力        部経済協力課長 高島  章君        通商産業省生活        産業局窯業建材        課長      新村  明君        資源エネルギー        庁長官官房総務        課長      山本 貞一君        労働省労働基準        局安全衛生部化        学物質調査課長 冨田 達夫君        会計検査院事務        総局第一局審議        官       疋田 周朗君        参  考  人        (海外経済協力        基金副総裁)  青木 慎三君        内閣委員会調査        室長      石川 健一君     ――――――――――――― 四月七日  地方公共団体執行機関が国の機関として行う  事務の整理及び合理化に関する法律案内閣提  出第七八号) 同月八日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一〇号) 同月七日  シベリア抑留者恩給加算改定に関する請願外  一件(川俣健二郎紹介)(第二六一四号)  同(沢田広紹介)(第二六一五号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願  (斉藤滋与史君紹介)(第二六一六号)  同(森田一君外一名紹介)(第二六一七号)  国家機密法制定反対に関する請願梅田勝君紹  介)(第二六一八号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二六一九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二六二〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第二六二一号)  同(中島武敏紹介)(第二六二二号)  同(不破哲三紹介)(第二六二三号)  同(簑輪幸代紹介)(第二六二四号)  同(梅田勝紹介)(第二七四四号)  同(浦井洋紹介)(第二七四五号)  同(小沢和秋紹介)(第二七四六号)  同(瀬崎博義紹介)(第二七四七号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第二七四八号)  同(辻第一君紹介)(第二七四九号)  同(中林佳子紹介)(第二七五〇号)  同(野間友一紹介)(第二七五一号)  同(林百郎君紹介)(第二七五二号)  同(藤木洋子紹介)(第二七五三号)  同(三浦久紹介)(第二七五四号)  同(山原健二郎紹介)(第二七五五号)  スパイ防止法制定に関する請願片岡清一君紹  介)(第二六二五号)  同(斉藤滋与史君紹介)(第二六二六号)  同(畑英次郎紹介)(第二六二七号)  同(片岡清一紹介)(第二七五六号)  安全保障会議設置法制反対に関する請願(小  沢和秋紹介)(第二六二八号)  同(工藤晃紹介)(第二六二九号)  同(柴田睦夫紹介)(第二六三〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第二六三一号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第二六三二号)  同(津川武一紹介)(第二六三三号)  同(中川利三郎紹介)(第二六三四号)  同(中島武敏紹介)(第二六三五号)  同(不破哲三紹介)(第二六三六号)  同(松本善明紹介)(第二六三七号)  同(三浦久紹介)(第二六三八号)  同(津川武一紹介)(第二七五七号)  石川県の寒冷地手当改善に関する請願嶋崎譲  君紹介)(第二六三九号)  同外三件(嶋崎譲紹介)(第二七五八号)  長野県富士見町の寒冷地手当改善に関する請願  (林百郎君紹介)(第二七四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一四号)      ――――◇―――――
  2. 志賀節

    志賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 まず法案に関連してですが、在外公館勤務する外務公務員在勤基本手当基準額につきましては、前年度に引き続きまして今回も見直しがなされておりません。昨年の十月十五日に在勤手当改定に関する外務人事審議会勧告が出されておりまして、その中で、六十一年度においては「手当額実質的価値維持を図る」ということと、「中堅以下の在外職員については、その職務生活状況及び士気に配慮しつつ、手当額改定に努める。」こういう勧告が出ております。  以上の二点に関する勧告について大臣はどういうお考えを持っておられますか、お伺いします。
  4. 北村汎

    北村(汎)政府委員 お答え申し上げます。  在勤基本手当支給額につきましては、委員指摘のとおり、法律基準額というものは五十八年の四月に改正されて以後改正されておりませんが、この法律の定めておる基準額の上下二五%の範囲内においては政令でこれを改正するということが決められておりまして、五十八年以後三回以上、今回も改正をいたしておるわけでございます。したがいまして、為替変動を含め、物価変動あるいは勤務地生活条件勤務条件等を勘案いたしまして今回も改正をいたしました。  それからもう一つの点の、中堅以下の在外職員手当額改善ということにつきましては、これは私どももいろいろ配慮いたしておりまして、財政当局ともいろいろ協議をいたしておりますが、今後とも長期的な観点から在勤手当制度の体系の合理化を含めて適正な手当額を設定していきたいと考えております。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、外務人事審議会勧告の「手当額実質的価値維持を図る」という問題については、これはもう間に合っていて、勧告に従う必要はない、考慮する必要はない、こういう考えでいらっしゃるのですか。
  6. 北村汎

    北村(汎)政府委員 例えば、今回相当な円高になりましたのでその円高の分、それからその地域円高になりますと割合物価が上昇してくる国が多うございますので、そういうところでの物価変動、そういうものを全部勘案いたしまして、現地における在勤俸の実質的な価値というものは絶対下げてはいけないわけでございますから、むしろそれを少しでも上げるという方向で今回も改正をいたした次第でございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 当委員会附帯決議でもたびたび指摘されるところでありますが、今の勧告の中でも、子女教育手当改善、いわゆる「瘴癘地の最近の実情に応じた瘴癘地格付けの全面的な見直しを」行い、改定に努めることが必要だという勧告内容になっておりますが、この子女教育手当改善検討、それから瘴癘地格付見直しについての検討進行状況はどうなっておりますか。
  8. 北村汎

    北村(汎)政府委員 子女教育手当につきましては、昨年度、昭和六十年度におきまして大幅な制度改善を行ったことは委員承知のとおりでございまして、この場合、従来に比べまして相当子女教育手当をふやしたわけでございます。また、その手当を受けられる範囲も広げたわけでございます。  それから瘴癘地、今年からは特定勤務地という言葉を使わせていただいておりますが、この瘴癘地格付見直しにつきましては、これは各在外公館所在地勤務環境を十分に調査いたしまして、実績に即したものといたしまして、五年ぶりに全面的な見直しを今回行いました。それによりますと、特定勤務地格付を引き上げた、すなわち厳しさを増した公館は十九の公館フィリピン、メキシコ、イランなどもその中に含まれております。それから、逆に厳しさが多少弱まったという意味で、特定勤務地格付を引き下げた公館は九つございます。中国、キューバなどもその中に入っております。それからまた、新しく格付をいたしましたものにペルー、ユーゴなどを入れまして四つの公館が含まれております。  私ども、こういう勤務地の厳しさについてはできるだけ現実に合ったものに格付を直すように努力をいたしております。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 官房長もおっしゃられましたように、在勤基本手当は七五%から一二五%の範囲内で政令によって改定できるわけですが、最近、今言われました急激な円高が起こってそのために在勤基本手当が四月からまた減額されると、きのう閣議決定された、こういうように聞きますが、その中身についてまずお伺いしたいと思います。
  10. 北村汎

    北村(汎)政府委員 六十一年四月から適用されます在勤基本手当額につきましては、先ほども申し上げましたように、いろいろな要素を勘案いたしまして、最近の円高を反映いたしまして昨年十二月に改定をいたしたわけでございますが、それにさらに円高による改定を加えまして、全部の存外公館百六十九のうち百六十七の公館に対して減額ということ、それから二つの公館は増額という結果になりました。減額率は、ワシントンに在勤する在外職員の場合に一七・三%減額ということになっております。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昨年の十二月に減額されて、そしてまた今度減額だということになる。それは円高関係でそういう措置がとられるのも理由はあると思いますけれども在外公館で働く職員の実際上の生活影響が出てきはしないか、ここが問題になると思います。日本での円建てローン返済がありますし、あるいは家族日本におればそこに送金をしなければならない、これに直接響いてくると思われます。返済現地通貨建てですから支出はふえます。ところが給与支払い円建てで手取りは変わらない。こういう場合、在外公館職員が安心して職務を遂行していけるようにするために何らかの救済措置が必要ではないかと思うのですが、この問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  12. 北村汎

    北村(汎)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、円高による調整は行いましたけれども、これは現地における実質的な価値というものを絶対減らすことのないように考慮をいたしておりますし、むしろそれは少しでもふえていくような配慮をいたしたわけでございますが、確かに委員指摘のように、円で借金をしている人あるいは家族本邦に残しておる人につきましては、これは円高要素というものはないわけでございます。私どもといたしましては、こういう人たちを特に救済するという措置は、こういう在勤俸制度そのものからこれを行うことは難しいと思いますが、もともと、在外職員が受け取る給与の一部を算定いたしますときには、大体全体の二割程度は、御指摘のような事情やあるいは本邦で物資を調達するというようなことも考慮をいたしまして、為替変動影響を受けないように一部はとってあるわけでございます。  それからもう一つ委員承知のように、本俸というのは、これは本俸在外に持っていって使うわけでございますが、本俸は当然のことながら円高影響を受けないわけでございます。むしろこれはふえておるわけでございますから、そういうことを考えまして、確かに委員指摘のようなケースもあると思いますけれども、全体として見ますとそういうことも一部手当てをしておるということでございます。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 官房長はいろいろ言われますが、そういう実際上、一般の職員とすれば全部家族を連れていくわけではないし、大体家を建てる場合に日本ローンを組んである、そういう人も結構多いと思うのですけれども、そういう人たちだけの特別待遇というのはあるいはできないのかもしれないけれども、そういう面での配慮というものが何かなくてはならないのではないかというように思うのですが、この点どうでしょうか。
  14. 北村汎

    北村(汎)政府委員 在外に出ました場合に、円で借金をしておりますと円高要素で苦しい要素も出てくるわけでございますが、逆にドル借金をしておりますとこれはむしろ有利になるということもございます。  先ほど申し上げましたように、家族本邦に残しておく場合には本俸はこちらで使うわけでございます。これは決して円高によって変動されるものではございません。そういうこともありまして、さっきも申し上げましたように、そういうケースに特に特別の個別的な対策をとるということはできないのでございますけれども在勤俸の算定に当たって、そのうちの二割は為替変動を受けないという要素、それを十分勘案しておりますので、そういうところで、職員も、これから借金するときにはドル借金するとか、いろいろなそういうことも配慮いたしておるというふうに思います。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、ちょっと角度を変えまして、マニラ在外公館、すなわちフィリピン大使館、それからマニラの総領事館、今問題になっておりますフィリピン借款にまつわる問題、このマルコス大統領リベート取得疑惑問題について、今まではこういう在外公館情報をキャッチしていたのかどうか、お伺いします。
  16. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 委員の御質問が、今般いわゆるマルコス文書として出ておりますものについての御質問であるということでございますならば、これは同文書で御承知のとおり、あそこに出ておりますものは、我が国民間企業フィリピンにございますフィリピン企業との間の私契約コミッションを支払うという形で出てきているものでございますので、私どもは、その内容について、フィリピンにおきましても、マニラにあります私ども大使館もそれを存じておりませんでしたし、知り得る立場にはなかったと思います。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大使館などがそういうことを知らないというお答えですが、在外公館というのは外国において外務省所掌事務を行うわけで、当然国際締済協力事情調査並びにこれに関する統計の作成及び資料の収集、こうした仕事をするわけですが、このマルコスリベート問題についてフィリピン大使館が全くそういう情報を把握していない、そういうことでありますか。
  18. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 フィリピンにございます我が方の大使館一つ職務は、当然のことながら経済技術協力の円滑な推進に従事することでございますので、フィリピン側との折衝、それから当該関係プロジェクト実施にまつわる諸問題等々の職務に従事いたしております。その過程において、いろいろ情報収集等を当然のことながら行っております。  特定して今委員が御指摘になりました問題は、先ほど私がお答え申し上げましたように、我が国民間企業相手国民間企業との間にそういう契約があったというようなことは、私どもとしては知悉する立場にはございませんでした。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では在外公館フィリピン大使館の問題でなくて、外務省全体も、マルコス借款から私腹を肥やしている、リベートを取っている、こういうことについて今まで全然知らなかったということでありますか。
  20. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 今度米国で明らかになりましたいわゆるマルコス文書に出てまいりますものは、我が国企業からフィリピンにございます企業コミッションという形で何%かの支払いが行われたことを示唆するような文書が存在するということでございまして、これが前大統領を含みますフィリピン政府高官の方に渡ったということをはっきり書いてあるものはないように私は承知しております。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 開発援助資金リベート問題といえば、外務省は知らなかったと言うのですけれども、この問題については国会でも何回か過去に取り上げられております。また、フィリピン借款問題の研究をしている人はいろいろと論文も書いているわけです。  一つ例を出しますと、八四年の四月十三日号の朝日ジャーナル、ここでは、フィリピン政界の長老であるタニャーダ氏の発言として、「マルコス大統領の身内や親戚のために使われるのか、あるいは国民の利益のためか、(日本として)使い道をハッキリして欲しい」、こういう発言が出ております。さらに、「使い道にヒモがつかない商品借款売上金の行き先は、マルコス政権の意のままになる」、こう言っておりますし、「実際に援助する商品価格に八―一五%上積みして正式の援助額とする。」、こういうことが書かれているわけです。  こうした今までの過去から見ますと、外務省が、国民の税金の行方について、まさに独裁政権大統領私腹を肥やす、その方に一部回っているというような問題は半ば公然の事実であったと思うのですけれども、そういう問題についているいう言われていることを、さっきの外務省所掌事務関係から見ても、調べようとしなかったということはどういうことなんですか。
  22. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま御指摘の雑誌の記事に報道されておりますフィリピン側の方の御発言、その他いろいろ我が国協力についての御注意、御批判等発言があることは私ども承知いたしておりますし、その都度そのような御発言注意を払いつつ仕事を進めてまいった次第でございます。  我が国援助の手続は、どちらかと申しますとかなり煩雑だという批判があるくらい厳しいものではないかと、諸外国との比較において申せるかと存じます。  今般のいわゆるマルコス関係文書に出てまいりましたコミッション支払い云々の件も、もちろん私どもも今のところまだ確認をいたしてはおりませんけれども、この根拠になっておりますものは、先ほど来申し上げておりますように我が国の私企業フィリピンでいろいろな活動をするに際しまして、フィリピン側代理店契約をして、フィリピンの中におけるいろいろな役務に対しましてFOB価格の一〇%ですとか一五%を支払うという形の契約になっております。この契約自体は全くの私契約でございまして、その中に言及されております事業中円借款関係のものが含まれているというのは事実でございますし、そういう点からも私どもも非常にこれに強い衝撃を受けまして、関係省庁集まりまして精査し、どのような対応策をとるべきかを検討しておるというのが今の状況でございます。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは借款援助資金といっても、結局は日本政府日本国民から集めた金であるわけです。それをフィリピン国民のためではなくて、その一部がマルコス大統領私腹を肥やすために使われてきた、これは重大な問題だと思うのです。それで今まで何回か指摘されてきたことでありますし、それを見逃してきた、私的な関係だと言ってもその金は国民から集めて政府が出した金であるということを考えてみた場合に、外務省としても、そういう使われ方を長い間してきたということについては重大な責任があると思いますが、この点大臣いかがでしょうか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 マルコス文書が明らかになりまして、今お話がありましたように、政府援助の一部がマルコス大統領にいわゆるリベートという形で渡っておるのじゃないかというふうなことも言われる、疑惑が持たれる、こういう状況でありまして、我々としてはこの点については解明をしなければならぬということを言って、いろいろと情報も集めておるわけでございます。  全体的には、私はフィリピンに対する日本援助はきちっとやっておった、こういうふうに思っておりますし、マルコス政権維持するために援助を行っているわけじゃなくて、フィリピン国民の民生の安定、経済の安定のためにこれは使われるという形のものであります。そのために事前にフィージビリティースタディーもやりますし、調査もやりますし、あるいはまた事後においては評価もやってきておるわけでございます。  全体的にはそういうことですが、ただ、フィリピン政府企業との間の契約関係、いわゆる入札の問題になるわけですから、その点については日本政府としても介入できない、フィリピン政府独自の立場で行うわけでございまして、その中で入札をめぐって手数料というものがどういう形で行われたか、これは商慣習のもとに行われたということもあり得ると思います。しかし、それ以上のものであったかどうかという点が問題として我々としても注目しておるわけでありますし、これがフィリピン法律に違反するということになればもちろん今日のフィリピン政府のもとに糾弾されるであろうと私たち考えておるわけでございますが、日本政府との関係で言えば、これはやはりフィリピン政府企業との関係の問題でございますから、その辺についてはいろいろと情報を集めておりますけれども、法的その他の問題についてなかなかまだ明らかになったという状況には至っていないわけです。  いずれにいたしましても、問題の解明を図って、問題はやはり今後の援助フィリピン国民のために本当に寄与できる、そういう形のものになっていかなければならないことは当然でございますから、そういう面で借款あり方等について改善すべき点があれば改善していかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大臣は今後の問題について言及されましたので、疑惑解明の問題についてお尋ねしたいと思います。  三月二十五日の新聞ですが、外務省はこの四月にも、エネルギー、農業、運輸・通信、社会福祉、この四分野について四チームの調査団フィリピンに派遣すると言われておりますが、この目的、その構成、それから調査の対象、それから従来の評価のための調査との関連、その進捗状態について、具体的にひとつお答え願いたいと思います。
  26. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 昨年、外務大臣諮問機関でございますODA実施効率化研究会が約一年間にわたっていろいろ援助体制について御検討をいただいたわけですが、その中に、援助評価についても第三者的視点導入等手法改善を図っていくようにという御提言がございました。それを受けまして、昨年末、鎌田前会計検査院長の御出馬をお願いいたしまして、ODA実施効率化研究会の一部会ということで評価検討部会というものを設けていただきまして、評価全体につきまして、手法改善を含みましていろいろ御検討いただいている状況にございます。  今般、フィリピンのこのような問題が起こってまいりまして、大臣の御指示で、本年度の評価の重点をフィリピンにおいて評価を行うようにということで、同評価部会にお諮りをいたしまして、今委員指摘の四分野、エネルギー(工業)が一つ、運輸・通信、それから農業、最後に社会福祉、この四つの分野につきまして、有識者、それから関係省庁及び実施機関等より成る調査団フィリピンに派遣いたしまして、先方の御協力を得ながら、我が国フィリピンとの協力プロジェクトにつきまして、その現状、効果的かつ効率的に機能しているかどうかを把握し、評価する作業をやっていただこうということで現在計画中でございます。フィリピン側の受け入れ態勢の問題もございますので、時期等は、現在のところ、私どもとしましては四月末にも最初のグループを派遣したいということで準備を進めている状況にございます。  なお、この件につきましては、一般論としましてフィリピン側にこの趣旨を伝えまして、フィリピン側からもこの評価調査に参加をいただきまして、我が国経済協力フィリピン経済社会の開発に貢献しているという実情をやはりフィリピンの官民にも実際に知っていただきたいということで参加をお願いし、フィリピン側からも快諾を得ているという状況でございます。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その報道によりますと、「マルコス前政権に対する日本企業リベートコミッション支払い入札など商慣行の実態は調査しない方針。」というように書いてありますが、これはどういうことでしょうか。援助の適正、効果的実施という面から見るならば、成果は上がっているがこれは金の使い過ぎがあるんじゃないか、あるいは金は出しているけれども手抜きがあるんじゃないか、こういうことも当然評価の対象にしなくてはならない、特に今はそうだというように思うのですが、この点はいかがですか。
  28. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 援助評価でございますので、援助プロジェクトが当初の目的に合致して機能しているか否か、効果的、効率的に機能しているか否かを評価することを目的にいたしております。委員の御指摘のうち、例えば手抜き工事云々ということにつきましては当然評価の対象になると考えますし、我が国の供与しました資金がきちんと有効に使われてそのプロジェクトが機能しているかどうかという観点から、手抜き工事の有無でございますとか、きちんと目的に従ったものが供与されているかどうかということは、評価の対象として当然、従来までも行っておりましたし、今回も対象にいたすべきものと考えます。  それから、第一の御質問リベート云々の点でございますが、これは委員も御指摘になりましたように、援助実施していきます過程で、企業が先方で事業を行いますその際に、その企業としてはどのくらいの例えば利益を上げているのか、その原材料と申しますかメーカーからの納付はどのくらいで、どのくらいの利益だったのか、口銭はどのくらいだったのか、これは実はその企業が私契約として行っているものの内容でございまして、どのくらいの口銭であれば適当であり、どのくらいの利益だったらば許されるというようなことは経済協力評価の対象にはならないのではないかということから、今回の評価活動の対象にはしないという結論に達した次第でございます。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと結局は、今まで外務省経済協力評価委員会評価をしてこられたこの活動の一環だ、そういうものとして特にフィリピンの問題を評価したいということのようでありますが、そうであればちょっと具体的にお尋ねします。  今公表されておりますマルコス文書の中にあります洪水予報・警報システム、このプロジェクトの内容をちょっと説明していただきたいと思います。
  30. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 洪水関係というものが若干それらしいものが出てまいりますが、まとまった形で洪水予報・警報システムということで出ておりますのは、我が国が第六次の円借款で供与いたしました洪水予報・警報システム計画のことを指しているものと考えられます。  同プロジェクトは、ルソン島の主要河川でございますアグノ川、ビゴール川及びカガヤン川に洪水予警報システムを導入いたしまして、洪水による被害の軽減を図ることを目的にいたしております。同計画に関します円借款取り決めは昭和五十二年十二月二十一日に締結をされておりまして、供与限度額は十七億七千四百万円ということになっております。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この問題について、去年の三月に「経済協力評価報告書」三回目が出されて、このプロジェクトの評価が出されておりますが、評価の結論はどういうことでありますか。
  32. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 評価の結論といたしましては、本警報システムの設置の結果、一九八二年及び八三年の洪水時におきまして、ビゴール川流域におきましては、水位ピーク時の二日及び一日前に洪水警報が出され住民の安全が確保されたということと、及びアグノ川及びカガヤン川流域につきましては、システムが完成しましてから調査時点までの間が三年ぐらいありましたが、雨量が特に多いことがございませんでしたので予警報を出す段階にまではまいりませんでしたが、雨量、流量等の基礎的データの収集、予測モデルの開発改良に貢献したという結論になっております。  ただ若干の問題点の指摘は行われておりまして、維持管理の点で、例えばそのステーションの窓ガラスが破壊されておりますとか部品が若干不足しているものがあるとか、地域住民に対する施設の重要性の啓蒙が不可欠であるというような指摘が行われておりまして、この調査を行いました直後に、現地関係当局に対してこの注意喚起を行った次第でございます。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今のプロジェクトの問題に関連して今度のマルコス文書では触れているところがあると思いますが、それはどういう点をどういうように触れておりますか。
  34. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 このマルコス文書におきましては、小竹氏の書簡におきまして、すべての関係機械の船積みを完了した。翌月から据えつけ工事を開始する。現在までに当社はFOB価格の七〇%を受領しており、これはピー・アンド・エヌを通じアンヘニト社へ十二月中に送金する。金額は一億二千五百五十二万四千七百八十一円で、七〇%分の一五%に相当する。残額は八〇年四月に期限が到来する云々と記されてございます。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういうように、我が国経済協力局の評価では、基本的に役に立っているという評価が出ているわけですけれども、その中身から見ますと、こういう金を使ってその中の一五%が別なところに、まあマルコス大統領の方に行ってしまった、このことがここから裏づけられているわけですけれども、そうしますと、やっぱり評価をする場合に、これは何か、これだけの金を使ってこれしかできていないという問題が出てくると思いますし、当然そういう問題についても評価をしなくちゃならないというように考えるわけであります。  昭和五十九年に外務大臣の私的諮問機関として設置されました政府開発援助実施効率化研究会、ODA研究会ですが、昨年八回の会合を開いて十二月に報告書を出しております。報告書は、効果的、効率的援助実施が不可欠の前提という上に立って、「援助実施機関在外公館実施機関在外事務所等のあり方については種々の問題提起がなされている。」と指摘がなされております。また「円借款のあり方」について、「十分な供与量、適切な条件、公正な調達条件の確保を基本としつつ、円借款を活用していくことが望ましい。」としておりますし、「適切な条件、公正な調達条件」というところには傍線まで引いているわけですが、円借款をめぐって、今回のマルコス疑惑のような問題点を研究会は何らか指摘をしておるかどうか、お伺いします。
  36. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 一般的に申しますと、同研究会におきましては、援助の最も効率的、効果的な実施を図るようにということで検討の時間をすべて使われた次第でございますし、報告書も種々の改善策等を提言しておられます。しかしながら、このマルコス文書云々で明らかになりました点については、報告書の御提示が昨年の十二月の中旬でもございましたし、特に話題として取り上げられたことはないように記憶しております。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 海外援助が効果的、効率的に実施されることは重要ですけれども、その大前提に、援助資金が公正明瞭に使われるという点があると思うのです。この点がODA研究会にしろ外務省評価にしろ欠落していると言わなければならないと思うのです。  理由はいろいろ言われますけれども、このODA研究会は、評価体制の充実が重要である点は指摘しておりますし、今後の必要な措置について幾つかの提案もしているところであります。マルコス疑惑の教訓から、この提案に加えまして、海外援助実施に絡む不正防止のチェックを評価体制の重要な課題とするように何らかの措置を講ずる必要があると思うのですけれども、この点大臣の決意を伺いたいと思います。
  38. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、今回の一連の文書の公表及び報道等によりまして、いやしくも我が国援助が適正でない使われ方をしているという。ことがあったり、ないしはそういう印象を与えたりすることは非常にゆゆしいことでございますので、公表されました文書検討等を経まして、関係省庁が現在連日協議を続けている状況にございます。その過程におきまして、ただいま委員の御指摘になりました問題点も含めて、我が国援助実施面における改善策の検討を進めていきたいと考えている状況でございます。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一昨日の報道で見たのですが、外務、通産、大蔵、経済企画、この四省庁がマルコス疑惑について本格的に調査に乗り出す方針を決定したと出ておりました。これから何をしようとなさるのか。報道によりますといろいろ出ておりますが、マルコス文書に名前が挙がった企業の代表を順次呼ぶと言っておりますが、マルコス文書に挙がっている企業の名前は、マルコス文書という既に公表されているものですから、そこに挙がっている企業は幾つありますか。
  40. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 マルコス文書二千ページ余のうち我が国関係しておりますものが百三十ページぐらいございますが、その中では非常に種種雑多なものが入っておりまして、名前だけを触れているものということで申しますと、領収書とか保険の証書とかいろいろなものがございます。私どもが今考えておりますのは、当然のことながら、経済協力関係の特に円借款関係の四省庁の実務者が集まりまして、円借款に関連して名前の出てきております関係企業のうち、どの程度の方のお話を聞くかということも含めて検討いたしておるという状況でございます。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その円借款に関連するとしてあらわれている企業は、どことどこですか。
  42. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 今まで私どもがこれは明らかに円借款であると確認をいたしましたものが、十四プロジェクトぐらいございます。ただ、円借款であるかないしは商業的なプロジェクトであるのか判然としないものも若干ございますものですから、現在関係企業数を正確に何社と申し上げる状況ではございません。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、現在はまだ確認をしていない、言えない、こういうことですか。
  44. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この調査というのは、マルコス大統領に一五%と言われるリベートが出されている、そういう問題について踏み込んだ調査をするわけですか。
  46. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私ども借款関係しております四省庁は、別に特別の捜査等の権限を持っているわけでもございませんし、経済協力の適正かつ効果的な実施という観点から、公表されました資料に関連して、事実関係等を任意に自発的なベースでお伺いするということを考えている状況でございます。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 アキノ政権の労働雇用大臣は、疑惑企業がわかればフィリピンのプロジェクトから締め出すと言っております。フィリピンから見れば、贈賄という犯罪を行った者ですからこれは当然だと思うのです。我が国としても、そういう企業がわかってくれば海外経済協力基金の金は使わせないようにすべきであると考えます。  それで、さきの四省庁の会議でも行政指導ということが言われておりますが、フィリピンで犯罪行為になるようなことをした企業、そうしたものは今後は海外協力基金を使わせない、こういうことにすべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  48. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 サンチェス労働雇用大臣が訪日をなさいました際にそのような御発言のあったことが報道されておりますが、私どもその御発言を正確に照会いたしましたところでは、非常に慎重な応答ぶりをしておられまして、うわさを根拠に話し合うことはできない、仮説をもとに話し合うことは何の役にも立たない、もし将来日本企業がかかわっていることがはっきりしたら、それは日本政府考えることであり、その企業フィリピン政府のプロジェクトからは締め出される、こういう御発言でございます。  委員の御質問の第一の、フィリピン側入札企業から締め出す云々のことにつきまして、これはもっぱらフィリピン政府がお決めになることかと思います。  それから、後段で委員がお述べになりました点に関連しまして、もし円借款関係において我が国の国内法令に触れるようなことがあるということがはっきりしました場合には、その法令を主管しておられる関係省庁が適切な措置をおとりになるものと考えております。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今日、マルコスリベートを取ったりいろんなことをしながら財産をつくった、そしてまた、海外に自分の財産あるいは自分の家族系統のそういう財産を保存しているということがもう常識化しているわけです。これに対してスイス政府は、マルコス一家のスイスに有する全資産を凍結しました。またカナダの外務大臣も、マルコス資産をフィリピン政府が奪回することについては政府協力を惜しまないということを議会で言明されているわけです。  そこで我が国はどうするのかという問題ですが、今日まだ真相が明らかでないという前提なんですけれども、これはもう今日の国際的な見方などからすれば、我が国としてもやはり、そういうスイスやカナダ、また各国もこれに倣うでありましょうが、そういう方向でやらなければ、むしろ我が政府は不正に加担しているということになると言われても仕方がないと思うのですが、こういう問題についてはどのようなお考えですか。
  50. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 ただいまの御質問でございますが、日本政府といたしましては、御質問の資産というものが日本の国内にあるかどうかという点について、ただいま格段の情報は有しておりません。また先方よりも具体的な申し出はなされているわけではございませんので、先生の御指摘が今ありましたけれども、私どもとしては、仮定の事態を前提としてあれこれ諭ずる現状ではないだろうというように考えます。  なお、ちなみに、綱紀改善大統領委員会のサロンガ委員長が、今月の初めに米国から帰ってまいりましたときの記者会見におきまして、日本にもマルコス関係資産があるのではないかという記者の質問がありましたけれども、これについてのサロンガ委員長の答弁は、日本にあるという証拠はまだつかんでおらない、現在あると判明しているのは米国、イギリス、豪州、カナダ、スイスであるという答弁をしております。
  51. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 フィリピン経済計画省兼経済開発庁長官は、リベートによる水増し分から生じた海外債務の支払いを拒否することの可能性を検討している、こう言っております。水増し分の返済を拒絶するということですが、我が政府はこの考え方についてどういう見解をお持ちですか。
  52. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 本件発言の事実関係につきましてフィリピン側に照会いたしましたところ、フィリピン政府としては今後とも対外債務の支払いは予定どおり行っていく考えてあるという回答を得ております。
  53. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が迫りましたが、我が党の代表もフィリピンに行って現地調査をしてまいりました。各党もいろいろと現地に向かって調査をされております。また、今日の状況の中でこのマルコス疑惑問題は大きな世界的な問題になっているわけです。国会においてもこれから各関係委員会でいろいろ審議が進められると思います。  私が今強調したいのは、海外援助にまつわる不正・疑惑、これはフィリピンだけには限らない、ほかにもいろいろと言われております。そういう点で、やはり本格的に洗い直して本当にその目的に従った援助が行われるようにしなければならない、そしてこんな不正行為が行われることをなくさなければならない、そのための対策を講じなければならないと思いますが、最後に大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピンの問題につきましては、国会でも調査委員会もできましてこれからいろいろと解明されるわけですが、政府としても情報を集めてこの問題についての解明を行って、今後の援助が、国民の期待にこたえ、なお相手国の信頼、特に国民の福祉の向上あるいは経済の安定に直接効果を持つものでなければならぬ、こういうふうに思います。  そういう見地から、これまでのいろいろな援助あり方等についても改善する点は改善していかなければならぬ、そういうことを踏まえながら総合的にいろいろと解明、そして検討研究をしていきたい、こういうふうに思っております。
  55. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。
  56. 志賀節

    志賀委員長 この際、外務省当局から発言を求められておりますので、これを許します。後藤アジア局長
  57. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 前々回の本委員会におきまして、井上委員より、日本にありますフィリピン政府の所有地の売却にかかわりまして、タカフジ産業関係者が書類を我が方のフィリピン大使館に提出した由であるが、我が大使館がそのような書類を持っているか否かについて調査をせよというお話がございまして、私ども調査いたしました。その事実をまず御報告させていただきたいと思います。  我が方のフィリピン大使館におきまして、一月の初旬にタカフジ産業関係者が大使館に参りまして、館員に本件に関する合意覚書、英語で言いますとメモランダム・オブ・アグリーメントなる文書のコピーをエンドース、確認してほしいという要請があった事実がございます。右要請に対しまして、応接いたしました大使館員より、そのような文書をエンドースすることはできない旨先方に明確に述べましたところ、先方は同コピーを置き去った事実がございます。なお、その際館員より、我が国にあるフィリピン国有財産の売買問題についてはいろいろうわさがあるから、ひとつ東京で、外務省に参って外務省担当官から話を聞くようにという示唆をしたことも事実でございます。その後、この示唆に基づきまして、東京において、当時タカフジ産業から我が国の本省に相談に来たという事実はございません。  ところで、井上先生の御指摘もございましたので、私どもの方はこの調査をしたわけでございますが、最近そのコピーが本省に届けられました。フィリピン大使館におきましてなぜその当時送らなかったかということでございますけれども、本件合意覚書へのエンドース、確認を断わりまして、また本省に相談せよというようなことを示唆いたしましたこともありまして、とりあえず現地においては所要の措置を下したと判断したと理解しております。  これが事実でございますが、ただ、あえてつけ加えさせていただきますと、このフィリピン大使館の土地の問題についてはいろいろな先ほど申し上げましたような問題がございますし、また一般論として申し上げますと、土地が非常に投機性の高い性格のものでございますので、その当時正式の報告がなされておらなかったという点について、もし報告があればより完結的な措置であったろうと私ども考えます。したがいまして、今後、我が方のフィリピン大使館に対しましては、以上を踏まえまして、今後の報告についてはしかるべく注意するよう指摘をしたいと考えております。  以上、報告でございます。
  58. 志賀節

    志賀委員長 質疑を続行いたします。井上一成君。
  59. 井上一成

    ○井上(一)委員 今の報告でも明らかになったように、在マニラ日本大使館では既にタカフジ産業の六本木における土地売買契約が入手されていた。これはまず我が国が賠償でフィリピン政府に提供したものでありまして、いわば今大使館の対応のまずさを大変反省されたわけでありますけれどもフィリピン国民の財産を処分するというようなそういう大事な文書契約書ですね。合意文書です。そういうことをほってあったというのは、これは外務省としては職務の上において批判を受けるべきである、大変よろしくない、私はこういうふうに思っています。これは今後の問題としても、即刻事情を明らかにして、外交ルートをもってフィリピン政府との折衝あるいはそういうことに対する事実関係を明確にすべきである、こういうふうに思うわけであります。そのことについての見解は、後で大臣から聞きます。  さらに、まだ報告がなされておりませんが、タカフジ産業なり鹿島建設から事情聴取された、こう思っているわけなのです。それで事情聴取されてどのようなことが明らかになったのか、そのことについてはここで報告をしてもらうことになっているわけです。私が指摘したのは、東京都に鹿島建設が建築確認、建築届け出を申請したというのは、フィリピン政府の代理人として申請したのだというようなお答えがあったわけでありますけれども、このことについてはいかがなのですか。
  60. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  もう既に離任しましたけれども、在京のフィリピン、当時のバルデス大使が、六木木の在京フィリピン大使館跡地に建物を建設する計画について、都庁に対する手続を鹿島建設に委任していた由であるが、フィリピン政府は在京フィリピン大使にかかる委任を行うことを一体承認していたのかという御質問がございました。それについてお答えいたします。  御質問の点につきましては、在京大使とフィリピン政府の内部の問題でありますので、私どもとしてはこれを確認する立場にはないわけでございますが、いずれにいたしましても、建築の全体契約につきましてフィリピン政府現地の大使に承認を与えたというような事実はなかったというのが私どもの理解でございます。  建築の確認につきまして大使館が鹿島に依頼した経緯、理由というものは、遺憾ながら私どもとしては理由はわかりません。  いずれにしましても、鹿島といたしましても、本国のフィリピン政府から許可が出ていなかったということは承知しておったわけでございますので、したがって、具体的な契約には至らないままに新政権になったということでございまして、先日にも御答弁いたしましたように、新政権において明示的にこれをサスペゾドするようにという指示がございまして、現状もそのとおりでございます。  私どもとしては、今後とも、この土地の問題は、今まさに井上委員から御指摘がございましたように問題が非常に重要でございますので、この利用につきましては十分外務省に事前に連絡協議をするように、新しい大使が着任いたしましたら十分注意を喚起いたしたいと考えております。  なお、タカフジ産業を招致して事情聴取しましたけれども、たまたまこの場合、タカフジ産業の社長が何か個人的にこれをしておったということで、参りました者が社長でないものでございますので、先日委員からお話があった以上の話は聞けませんでした。
  61. 井上一成

    ○井上(一)委員 先にそれを報告しなければいけないのですが、私の質問のときには、前回は代理人として届け出をした、その後の調査で、本国政府の承認を得ていない、そういう状況の中で東京都に鹿島逮設は届け出をした、こういうことですね、念のために。
  62. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 そのとおりであると理解しておりますが、何か建築基準法に基づきますと、当該工事に着工する前にそのような、条例に適合しているかどうかということを都庁または区役所に聞くということは可能であるというように承知しております。
  63. 井上一成

    ○井上(一)委員 建築確認の届け出をバルデス前駐日大使と鹿島建設とだけの間で進められた、こういうことなんですね。そう私は理解するわけなんです。本国政府の認知がないのに、許可がないのに在京の大使と鹿島建設との間でこれが進められた、そういうふうに私は理解するのですが、外務省もそのように理解をされますか。
  64. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 率直に言いまして、確認する立場にはございませんけれども、私個人的には、推測いたしますと、井上委員のような御推測に遠からないと思います。
  65. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は前回も、鹿島建設とバルデス前駐日大使との深いかかわりというものを強く指摘をしたわけです。そして、私の知る範囲では、タカフジ産業の関係者の側からの話によると、バルデス前駐日フィリピン大使に対して鹿島建設が三千万円の金を立てかえ払いをしておった、私はそういうことを聞き及んでいるわけなんですけれども、タカフジあるいは鹿島からの事情聴取で、そういうことについては触れられたのかあるいはそういうにおいを何か受けとめられたのか、その点はいかがですか。
  66. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 そのような事実は聞いておりません。
  67. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに鹿島建設は、フィリピンにあるところのあるコンサルタントの会社を利用してそこを代理店として、円借款フィリピンへの大型プロジェクトについてより優位に立ちたいというような運動をしていたという事実を私は承知しているわけなんです。これは、一連の六本木大使館跡地の処分の問題あるいはその他のかかわりから推測して、フィリピンにおける円クレのそういう大型プロジェクトを優位にするために、マニラのコンサルタント会社を代理店としてマルコスに働きかけていた、こういうことを私は承知するわけなんですけれども、さきの点といわゆるバルデス前駐日大使への金銭の授受、さらに今指摘をしたこの件について、鹿島建設から事情聴取して外務省は正しい把握をすべきだと私は思うのですが、外務省はこの問題についていかが対応されるのか、この点について聞いておきたいと思います。
  68. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 委員の御質問の後半の部分の、円借款に関連しまして現地代理店を通じて運動をしていた云々ということは私は承知しておりません。  三千万円のお話はアジア局長から……。
  69. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 先ほど申し上げましたように、三千万円のお話は承知しておりません。
  70. 井上一成

    ○井上(一)委員 経済協力局長承知をしておったら大変なことなんですけれども、私は、鹿島がバルデス前駐日大使を通して、駐日大使に働きかけて、みずからの立場を有利な状況に置くための一つの運動というのでしょうか、そういう取り組みをしていた、これは事実だという私にはかたい信ずべきものがあるわけなんです。だから、あえてここで、このことについて改めて鹿島建設から事情聴取をする用意があるか、こういうことなんです。これは今までに知っていたと言ったら大変なことですが、きょう新たにそういう問題が出てきたということですから、ひとつ事情聴取をすべきではないかということです。
  71. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私は現在のところ存じませんが、部内でいろいろ情報等に通じております者もおりますので、部内及び関係省にそのような事実があるのかどうか確かめてみます。
  72. 井上一成

    ○井上(一)委員 アジア局長、三千万の問題についても私は事情聴取していただける、こう思うのですが、念のためにお答えをいただいておきましよう。
  73. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 それ自体伺ってもなかなか答えは出てこないと思いますけれども先ほど経済協力局長の答弁の中との一環において、それが可能ならばだと思いますが、事柄の性格上なかなか難しいんだろうという気がいたします、したがいまして、経済協力局長の申し上げました事情聴取の一環の中で努力してみたいと思います。
  74. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣、大変この問題は、真相究明にすべて政府も努力をするという前向きな姿勢をお示しをなさっているわけなんです。それで、四省庁が連携をとりながら対応していきたいということが報道されていたわけなんです。それで、どこが中心になり、そしてその責任者はだれなのか、私は、そういう点も外務大臣から聞かせていただき、外務省が中心になろうと思いますけれども、その点も念のために聞いておきたい。  そして、さっき申し上げたように、一つは、大使館跡地の売買に絡んで私が指摘した契約文書現地大使館にあるのにそのまま軽く放置をしていた、私はそういう意識、認識は全く間違いだと思うのですよ。全くもってけしからぬというそういう言葉が妥当ではないかと思うくらい、フィリピン政府フィリピン国民にとっては大変大きな共通の国有財産である、それが一民間人あるいは何らかの形での売買というそういうエンドースがあった場合には、いち早く本省に連絡をし、タカフジが本省に来ないから今日までこの問題が明らかにならなかったと言うが、もっと早い時点で問題の解決に取り組めたと私は思うわけです。そういう点での今後の出先機関、領事館、大使館に対する厳しい教育、そういう通達、そういうことにも正しい理解ある対応をすべきであるということへの取り組みと、今申し上げた、だれが責任者で、どこがどうするんだ、そういう意味もひとつ外務大臣から聞いておきたいと思うのです。私の提起したこの問題に限ってでも外務大臣としては何か真相究明への決意を述べていただきたい、こう思います。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 援助全体についてはこれは四省庁でやっておるわけですから、四省庁で相協力しながらいろいろと聞くべきことは聞かなければならぬと思っておりますが、そういう中で、外務省は対外的な窓口でありますから積極的にその役割は果たしていかなければならぬ、こういうふうに心得ておるわけです。  それから、いろいろと海外の情報を、大使館で集めた情報を本省に送る、これは海外の在外公館の非常に大きな責任であろうと思っております。今お話があった問題について、私も具体的にはよく承知しておりませんが、おくれたとするならば、この点については、今後その辺の実態も明らかにしながら、そうした問題については遅滞なしに本省に連絡するように、在外公館等にも指示をしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  76. 井上一成

    ○井上(一)委員 四省庁の責任の窓口は当然外務省でしょうね。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 対外的にはもちろん外務省がやらなければならぬと思っております。
  78. 井上一成

    ○井上(一)委員 いや、対外的にも対内的にも、やはり内閣としてこの問題の真相究明に向けての四省庁合同のそういうプロジェクトがつくられるわけですけれども、私はやはり外務省が中心であり、とりわけ経済協力局長がその責任者というか責任のあるポジションだ、そういうふうに理解するのですが、大臣はどう理解されますか。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、法律的な問題と別にして、外務省が実質的に責任といいますかそういう役割は果たしていかなければならぬ、そういうふうに心得ています。
  80. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務省が芯になって、経済協力局長が一番の中心になって、やはり全職員あるいは内閣企体が努力していかなければならないし、そのためにも、今申し上げた、指摘をしたことについては十分な調査をしてほしい。むしろ、あなた方の調査がおくれて私の方がまた問題を提起するようなことで、後からまた調べますでは、これは外務省在外公館が何をしているのか、あるいは外務省としての仕事の役割というものに疑問を持たざるを得ないような状況になりますので、そういう点は十分注意をしてほしい。  余り時間がありませんが、私はもう一点南アの問題について少し指摘をしたいと思うのです。  私自身はアンチアパルトヘイト、いわゆるアパルトヘイト政策に対しては強い反対を今までもとり続けておりますし、これからもこれはもう世界人類の最大の敵である。その南アから石綿、アスベスト、これは発がん性有害物質です、これを大量に輸入しているわけなんです。通産省の報告によれば我が国の輸入量の二二・一%、五分の一以上を南アから輸入している。もちろんこれは南アだけではないわけですけれども、アスベストについてはアメリカでも大変大きな問題になっておりますし、アメリカの環境保護庁では、今後十年の間に石綿の輸入あるいは加工使用を全面禁止するという強い方針を打ち立てられて、今後公聴会等を通してこの問題の全面禁止へ向けての強い規制がかかっていくわけなんです。こういう問題を提起すれば、需要業界は特に中小企業が多いわけでありますから、そういうような立場に立つ通産の部局、これは生活産業局ですか、さらに南アからの輸入、南ア以外の国からのも含めてですけれども、そういう輸入に対する取り組みのエネ庁、どちらも意見が相反するというかいろいろ異見があるでしょう。通産には後で見解を聞きますけれども、まず、そういう発がん性有害物質を南アフリカから輸入をしている実態を外務省が知っていたのかどうか、あるいはそのことに対して現地総領事館ではどういうふうに対応してきたのか、この一点だけ簡単に聞いておきたいと思うのです。
  81. 三宅和助

    ○三宅政府委員 井上委員の、石綿の発がん性問題につきましては私は承知しておりませんでしたけれども、ただ実際問題としまして、南アからの石綿の輸入実績につきましては八五年に五万七千トン以上輸入しております。また、南ア政府は石綿の輸出先を明らかにしておりませんけれども現地総領事館から、我が国のほかアメリカなどに輸出されているという報告を受けております。
  82. 井上一成

    ○井上(一)委員 いわゆる在外公館我が国の出先の機関でも、その国との貿易状況だとかあるいはどういう影響を与えているかということはやはり十分把握しておく必要があろうと思うのです。  そこで、がん撲滅運動を片っ方では中曽根総理は大きな予算をとって提起をしているわけなんです。それに対して水を差すようなことではいけない。産業界がどういう状況であるか、そのことはやはり別な行き方をその産業界に指導していくべきであって、発がん性物質であるこのアスベストに対する取り組み、あるいは今まで取り組んでこられた状況、さらに今後どう取り組もうとしておるのか、この辺はひとつまとめて労働省から見解を聞きたい、こう思うのですのそして、今後どういうふうに対応しようとしているのか、そのこともあわせて聞いておきたい。
  83. 冨田達夫

    ○冨田説明員 石綿につきましては、昭和四十年代末にWHOの国際がん研究機関、すなわちIARCにより発がん性があるという評価が出されるなど、国際的に権威ある機関からの情報等を踏まえまして、昭和五十年に特定化学物質等障害予防規則を改正して、石綿を特別管理物質として規制しているところでございます。  その石綿の規制内容でございますけれども、作業環境を良好に保つため原則として石綿の粉じんの暴露を防止する設備を設置するなどの義務づけをし、さらに、適正な作業が行われるように所定の資格を有する特定化学物質等作業主任者を選任させて、その者に、石綿により汚染され、またはこれらを吸入しないように、作業の方法を決定して、労働者を指揮するなどの規定を設けているところでございます。また、石綿を吹きつける作業については原則的にそれを禁止するとともに、石綿を塗布したりあるいは注入し、または張りつけた物の破砕、解体等の作業については石綿を湿潤な状態とさせるなどの措置を義務づけて、関係業界並びに関係事業者に対しその徹底を指導しているところでございます。  また、国際的にはILOにおいて石綿の安全使用について検討が行われておりまして、昭和六十年のILO総会において石綿の安全取り扱いに関する第一次討議が行われたところでございます。また本年の総会において第二次討議が行われることとなっておりまして、労働省といたしましては、国際動向等を踏まえまして、石綿による労働者の健康障害の防止に努めてまいる考えであり、今後ともさらに一層の徹底を図ってまいる考えでございます。
  84. 井上一成

    ○井上(一)委員 労働省は今後さらに徹底した行政指導に踏み切る、今までも部分的には、沖縄における県庁の取り壊し作業だとか嘉手納での基地の取り壊し作業等については労働基準局からも出向いて立ち会っている、そういう非常にきめ細かい対応をなさっていらっしゃるのです。今後もさらにそういう対応をより強く進めていくというお考えであると理解してよろしいでしょうか。
  85. 冨田達夫

    ○冨田説明員 今後とも、さらにその徹底を進めてまいりたいと考えております。
  86. 井上一成

    ○井上(一)委員 厚生省にお聞きしますが、国民の健康を守る立場に立つ厚生省、これは私がいただたいものですけれども、国立がんセンターが監修して厚生省が非常にいいパンフレットを、「簡単なことです がんを防ぐための12カ条」そういう国民に対するがん予防の啓蒙をなさっているわけなんです。こういうこともあわせて、アスベストの発がん性についてのPR、アピールですね、国民への啓蒙、今労働省の見解を聞いて厚生省はどういうふうに対応していこうとなさるのか、このことについても聞いておきたい、こう思います。
  87. 小野昭雄

    ○小野説明員 がん予防につきましては、厚生省といたしましても最重点課題として取り組んでおるところでございまして、先生御指摘のようなパンフレット等を通じまして、国民の方々が日常生活でどういう点を注意すべきかというふうな点について、知識の普及啓蒙を図ってきたところでございます。  御指摘のように、石綿につきましては肺がんとの関係指摘されているところでございまして、今後、これにつきまして国民の方々に知識の普及啓蒙を図るという観点から、国立がんセンターの専門家の方々等とも十分御相談をいたしまして、先生御指摘の「がんを防ぐための12カ条」へ盛り込む等の方策によりまして、その普及啓蒙を図ってまいりたいと考えております。
  88. 井上一成

    ○井上(一)委員 それはいいことですから、やはりがん撲滅への取り組みは、もう厚生省あるいは労働省だけに限らず各省庁がすべてそこに力を入れなければいかぬと思うのです。  環境庁にも聞いておきたいのですけれども、これは今の大気の中にはそうすぐに発がんという数値まではいってないと思うのですけれども、現在は低レベルであるけれども長期に蓄積をしていく危険が非常に予想されるわけであって、そういう意味では将来も含めてできるだけ早い時期において全面規制という、そういうアメリカ並みの問題が生まれてこようと思いますけれども、そういうことについての環境庁の認識もここで聞いておきたいと思います。
  89. 片山徹

    ○片山説明員 環境庁におきましては、このアスベストによります大気汚染を未然に防止するという観点から、昭和五十六年度から検討会を設置いたしました。その検討会におきまして、住宅地域、商業地域等の立地特性別の環境濃度の測定を行いまして、あわせまして各種発生源におきます排出実態、その対策、このようなことにつきまして調査検討を行いまして、昨年二月にその結果を取りまとめたということでございます。  その結果でございますが、現在の一般の環境大気中におきますアスベスト濃度は直ちに問題となるレベルにはなかったわけでございます。しかしながら、このアスベストは環境蓄積性の高い物質でございますし、広範に使用されているという観点から、環境大気中のアスベスト濃度の推移を的確に把握するということが極めて重要である、このような趣旨で検討会の報告書をいただいたわけでございます。このために、環境庁におきましては、この検討結果を踏まえまして、昭和六十年度から、地方公共団体協力いたしましてアスベストの一般環境大気中におきます濃度の長期的なモニタリング、常時監視ということを行っているところでございます。
  90. 井上一成

    ○井上(一)委員 まだまだ環境庁も、地方公共団体への協力は要請されておりますけれども、もっと積極的にこの問題に取り組まなければ大変なことになると思うのです。  それで運輸省も、あらゆる分野にアスベストが使用されているということについては、これは各省庁とも、特に通産省に、代替物質の開発、今まさに先端技術の時代に入っているんだから、そういうことについては、需要業界を救うためにも代替製品の開発にうんと力を入れていかなければいけない。ユーザー業界の状況を現状のままでとらえると、通産は大変なことになりますよ。もう時間がありませんから、通産には警告を発しておきます。誤った認識の中で、この業界への現状時点での視点でこのアスベストの問題をとらえていると大変なことになる。むしろ発がん性物質であるという、がん撲滅に対する健康を保持する、健康な社会をつくっていくという意味からも、労働省や厚生省の見解に十分耳を傾け、協力をしていくという強い決意を私はいただきたいわけです。そういう決意があれば回答してもらって結構だし、なければ次回に送ります、私の持ち時間がありませんから。何か答えるということであれば答弁してください。
  91. 山本貞一

    ○山本説明員 先生、今決意とおっしゃいましたが、まず御説明を申し上げたいと思います。  需要業界のことにつきましては先ほど先生も御指摘されましたので省略いたしまして、石綿の使用につきまして人体に悪影響があるということで、そういう観点から政府として使用を制限するというようなことになりました場合には、当省としても、関係業界に対しまして、それに沿って使用の規制あるいは代替品の開発といったような指導をしてまいりたいと思います。
  92. 井上一成

    ○井上(一)委員 終わります。     ―――――――――――――
  93. 志賀節

    志賀委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として海外経済協力基金副総裁青木慎三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 志賀節

    志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時三分開議
  95. 志賀節

    志賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢山有作君。
  96. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、マルコス文書が公表されて以来この問題の論議が続けられておりますので、まずこの問題を幾つかお聞きしたいと思います。  まず、最初に安倍外務大臣にお伺いしたいのは、我が国フィリピンに対する経済援助、これは六十年度までに十三回に及ぶ有償資金協力、無償資金協力、技術協力が行われておりまして、総額五千五百九十五億円余に達しておるわけです。これだけの援助をやられたのですが、その結果、フィリピン経済の再建なり民生の安定なり福祉の向上に果たして効果があったのかどうか、ここのところの認識がまず一番大事だと思いますので、御所見を伺いたいと思います。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピンに対しましては、インドネシア、タイ、中国という国々と大体同じあるいはそれ以下というところで、大体同額程度に実施してきておるわけです。基本的にはこの日本援助は円借、無償供与、技術協力、この三本立てでございますが、これまでのフィリピンのインフラの整備とか国民生活の向上、あるいはまた生活の安定等についてはそれなりの役割を果たしてきたと、全体的には評価をいたしております。
  98. 矢山有作

    ○矢山委員 なるほど、インフラの整備なんかができておることは私ども承知しております。しかし、問題は、それが国民生活全体に及ぼしておる効果の問題から判定しなければならぬと思うのです。社会的にも経済的にもどういう影響を本当に及ぼしているのか。  それで見ると、こういうことでしょう。経済成長率を見ると、八四年はマイナス五・五、八五年はマイナス三・三、むしろ経済逆成長です。消費者物価の上昇率は五〇%に達すると先般まで言われている。失業率は八一年の四・五から八四年の六・二に拡大しておりますが、これは表で見た数値であって、実質的には状況はもっと厳しいのではないかと私は思っております。それからまた、フィリピンでは最低生活費が一日で八十ペソですか、これが最低生活費だというのを八一年ごろに例のイメルダ夫人が言ったらしいのですが、これが現在一日百ペソぐらいと見ても、人口の七〇%以上が貧困ライン以下のところにおるのじゃないか、最低賃金を見ると五十九ペソほどのようですからね。それで、ほとんどの労働者は最低賃金すら受け取っておらないのが実情であります。そこへもってきて、対外累積債務は二百六十億ドルを超えると言われております。一方で、マルコス大統領があの独裁政治の舞台裏でいろいろと不正蓄財をやったと言われておるのですが、その額はまだはっきりしませんけれども、百億ドルから多い人は三百億ドルと言う。まことに法外な不正蓄財だと言わなければなりません。もしこれが三百億ドルの不正蓄財をしているというなら、対外累積債務はこれでパーになるわけであります。  こういう状況が結果として起きておって、それなりの効果があったという認識は私はいかがかと思います。こういうふうに甘い認識があるところに、今度のマルコス疑惑に伴う問題について日本政府が毅然とした態度がとれない一つの原因ではないかと私は思うわけです。  そこで、三月二十四日の朝日新聞をごらんになったと思いますが、これには「円借款めぐり企業暗躍」という見出しで、マルコス文書とほぼ同時期に三年余フィリピン日本大使を務められた田中秀穂さんの話が紹介されております。それからマルコス文書それ自体に、一九七七年十月十四日の東陽通商の小竹喜雄氏のアンヘニット投資会社あての文書の中に、NPCのカガヤン電化計画については伊藤忠がコミッションなしの契約締結をしようと大使館協力を求めたという事の次第が明記されております。それからもっとさかのぼって、私はかつて東南アジアの賠償問題などを参議院で取り上げましたが、その際、フィリピン経済協力調査団の報告書の中にも、その当時から既にフィリピン経済援助については問題があるといった指摘をしておったのを、私は今にして思い出すわけであります。  これらを総合したら、このフィリピンマルコス疑惑の問題は今さら事改めて起こった問題じゃない、その当時から予想されておった問題であります。  我が国は、フィリピンには大使館を持っておるはずであります。現地大使館においてもこういった実情は正確に把握されておらなかったのか、また外務省自体もこういったものを把握していなかったのか、把握しようとする努力をしなかったのか、一体どういうことなんでしょう。私は今日までの怠慢の責任は免れないと思っておりますが、御見解を大臣から承りたいと思います。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 マルコス大統領がどれだけの資産を持っておるか、そしてこれに日本の関連がどれだけあるのか、これはこれから明らかになるかもしれませんが、今お話しのような数字は、我我は常識的には考えられないわけなんです。しかし、これは今後次第に明らかになってくるだろうと思いますし、また明らかにしなければならぬ、こういうふうに思います。  しかし同時に、お話しのように、何か日本援助が非常に効果を上げずに、これがストレートにマルコスさんにつながっているような、そういうことを言われる人もありますし、そういう疑惑を持って見られる人もありますが、これは私は間違いだと思いますね。私、先ほど申し上げましたように、これは評価もいろいろしているわけですよ。全体的には、これまでの長い間の日本援助というのはそれなりに、フィリピンの道路だとか港湾だとかそういうインフラの整備には相当貢献をしておる。これは後の評価で明らかになっておるわけです。あるいはまた技術援助等を見ましても、フィリピンは随分島が多いのですが、青年海外協力隊なんかの努力というのは大変なものでありますし、また、いろいろと農業の技術だとかそういう技術関係その他の技術援助は随分フィリピン経済の安定のためには生きて使われておることも事実。また、無償協力等もそのままストレートにフィリピンのいろいろの生活あるいはまた経済の安定のために具体的に行われているわけで、大体事前に十分フィージビリティーの調査をやって、そしてフィリピン政府の責任において業者を決めてそれで実行するわけですが、実施の後については、日本政府としてもその前に交換公文をやっていますから、交換公文に基づいた適正な援助が行われているかどうか、援助が実行されているかどうかについては評価もしておるわけでございます。  ですから、私は全体的には、先ほど申し上げましたようにフィリピン経済には相当これまで裨益してきた。ただ、日本援助そのものがフィリピン経済の全体を左右するほどの力を持っているわけじゃありませんし、フィリピン政府経済政策の問題もあるでしょうし、あるいはまた世界的な一次産品の低迷といったような問題もあるでしょうし、最終最後の段階ではやはりマルコス政府に問題があったことも事実だろう、こういうふうに私は思っております。そういうふうなことは確かにそのとおりだろうと思いますが、フィリピン経済は最後の段階で悪くなったから日本援助というのは何の役にも立たなかったのじゃないかというふうな御批判は非常に短絡的じゃないか、私はそういうふうに思います。全体的にはそれなりの相当な成果を上げてきている、こういうふうに私は考えておるわけです。  しかし、今後の課題としては、今いろいろと御指摘もありますし、それからまたいろいろな疑惑もあるわけですから、そういうものを明らかにしながらいろいろと改善をしていかなければならぬ点はあると私は思います。それは率直に反省して、今後の援助というものがもっと的確に、そして適正に、効率的に行われるように今後とも取り組んでいかなければならぬ、それはそれなりに反省はしなければならぬとは思っています。しかし、やっていることがおっしゃるように間違っていたんだとは、私はそういうふうには思っておりません。日本援助というのは、フィリピンだけじゃなくてその他の国でもそうですが、割合きちょうめんにやっている方ではないだろうか、そういうふうに思っております。
  100. 矢山有作

    ○矢山委員 フィリピン援助が余り役に立っていないということを言いましたら、いや、それは短絡的なんじゃないかとおっしゃるのですが、私も実は昨年ほとんど一年間かけて、日本経済協力の実態はどうなんだろうということで、私ども、アジア経済研究所からあるいはこの援助問題に取り組んでおる民間の専門家の方たちに集まっていただきまして、たびたび勉強会をやりました。そして、我々の仲間からもフィリピン現地調査にも行かしたわけです。そういう実態を踏まえて私は言っておるので、なるほど援助をすればそこに漁港はできた、道路はできた、それはそれなりに、道路はできておるのは事実だし、漁港はできておる、しかしその道路が周辺の住民にどういう効果を及ぼしておるのか、漁港がそこにおったかつての漁民にどういう影響を与えておるのか、こういった問題を見ていくと、日本経済援助には非常に問題点があるということが指摘されておるわけです。そういうようなことがフィリピンにおける貧富の格差を縮小するのでなしに拡大をし、独裁政権がますます強化されというようなことになって、あの今日見るような状況にまで至った、こういうことを私は言っておるんで、私が言っているのが短絡的ではないんで、あなたの見方が余りにも楽観的なんだ。大体外務大臣はなかなか楽観的なような御人相の方でありますが、私は少し楽観的だと思うのです。  それはその程度にしておきまして、今まで、このマルコス疑惑の追及の問題に関連をいたしまして、経済援助見直しをやらなきゃならぬとかあり方を考え直さなきゃならぬとかたびたび御答弁をいただいてきたのです。そこで私は事務当局に聞きたいのですが、一体どこのところをどういうふうに具体的に見直ししよう、改善しようというのか、それをおっしゃっていただきたい。今までのやりとりを見てみますと、言葉だけが出ちゃって、見直しだ、やれ改善だとこう言っているだけで、援助の発掘から援助をやって工事を施行してそして評価に至る段階の、どこのところが問題があるからどういうふうに見直しをする、それが、もうマルコス文書が公表されて大分になりますから、おっとりの考え方くらいはまとまっているんじゃないかと思うので、それをひとつおっしゃっていただきたい。
  101. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 現在、関係四省庁でいわゆるマルコス文書の問題点等の分析、解明を行っておりますので、まだ最終的、結論的なことを四省庁の合意したものとして申し上げる段階ではございませんけれども、まず第一に申し上げられることは、午前中の御質疑でも御答弁申し上げましたが、何よりも援助の事後評価手法改善、それから第三者的視点の導入ということによりまして、過去の教訓からよいもの、欠陥のあるものそれぞれについて教訓を得ていく、それを次の援助に生かしていくということがまず最大の改善点と申せるのではないかと思います。  委員もよく御承知のとおり、援助自体二十五年の歴史しかございませんし、評価作業も国際的に非常に手法等が整備してまいりましたのもごく最近のことでございますので、これは我が国も含めまして国際的にもいろいろ、開発援助委員会の場でございますとか世界銀行等の会合ですとかで事後評価のあり方については議論が重ねられ、それなりの改善も見ていると思います。こういう点での改善を図るということが第一かと思います。  それから第二は、委員が冒頭おっしゃいました案件の発掘でございますけれども、これはフィリピンでございますとかASEANの諸国は御承知のとおり割と行政機構も整備しておりますし、先方の要望、要請案件というものもかなりきちんとした形で整えられております。したがいまして、ASEANの諸国についてはそれほどの問題ではないと思いますけれども、もっとおくれた諸国につきましては、やはり案件を見出す、ないしは援助案件として確定するという仕事が、なかなか被援助国の方では行政機構の未整備等によりましてままならないところがございます。そういう点を、俗にプロファィと申しますけれども、そういう点のお手助けをするという面での改善というものも今後やはり図っていかなければいかぬと思いますし、これはフィリピンはそれほどの必要性はないにしてもある程度は部分的には対象になるのではないかと考えております。
  102. 矢山有作

    ○矢山委員 一、二点改善の具体案が出されたわけでありますが、これからの質疑で、私は、私自身が考えておる改善点等も指摘をしながら質疑を続けていきたいと思います。  まず、我が国のは援助については要請主義をとっていると言われますね。ところで、この要請主義が問題を含んでおるのじゃないかと私は思っておるのです。先ほどあなたは、ASEAN諸国はその国の行政機構等もかなり整備をされておるから案件発掘のみずからの能力がある、こういう意味のことをおっしゃったと思うのですが、私は、例えばフィリピン調査をした実態からいうと、これは相手国が案件をみずから発掘したというよりも、今までの例では、マルコス文書にも一部出ておりますように、企業の側が、商社なりあるいはコンサルタント会社の方が積極的に案件を発掘をして、これはどうだといって相手に持っていって、そこでその案件が固まってきておるというのが実際は割合数多くみられる例なんじゃないですか。この辺はどう考えておるのですか。
  103. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 コンサルタント、まあ商社もコンサルタント的な業務を行うわけでございますけれども、コンサルタントとして相手国政府経済協力の案件選定と申しますか、案件を形成するお手伝いをする例というのは、フィリピンに限らずあることだと思いますし、問題は、お手伝いをしても、その被援助政府、今の場合はフィリピンでございますけれどもフィリピン政府が主体的に決定権を持って、そのコンサルタント等の知恵を利用して、なかなかこれはいいアイデアだからそれは援助案件として考えていこうという決定権を持たれ、そして要請をされるということでございますならば、その過程において、これは日本に限りませんけれども、いろいろな国のコンサルタントが案件の形成のお手伝いをしているというのは事実だと思います。
  104. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、必要になってくるのは、企業側が積極的に案件を発掘してそれを相手政府に持ち込む、そこで相手政府がそれをもとにして要請をしてくるというところに私はやはり一番最初の問題はあるんじゃないかと思うのですよ。だから、ここのところで、一体どういう、その案件がその国の経済的、社会的、文化的な状況に照らして最も適切な案件がということを検討することに相当力を注がれぬと、私は出だしからつまずくんじゃないか、こういうふうに思います。  現実に例のJICA等が案件発掘なんかやりますね。こういうときのやっておるのを見ても、最近JICAが、いわゆる公社、公団、事業団、社団、財団、いろいろ公益法人がありますね、こういったものと一緒になって案件発掘に行くという例もあるわけですよ。そうなるとどういうことが起こるかというと、企業の場合はもう言うもさらなり、財団、社団あるいは事業団の中でもお互いに今は行政改革でだんだんちょっと危なくなってきたわけだ、そこで何とかして事業の拡大を考えようというので、それぞれの官庁につながっちゃって一生懸命そのとり合いをやるわけだ。そういうところに、相手の民生安定だとかあるいは福祉の向上だとかいうのはすっ飛んじゃって、とにかくこの案件を、たまたま見つけたこの案件を成功させなきゃならぬということの方が先に立っちゃう。こういうところが私は、JICAがやる案件発掘の場合でも出てくる。ましていわんや、一般私企業が案件発掘をやって持ち込んでやる場合には、私は、よっぽどその段階で適切な案件がどうかの審査というものを厳重にやらなければいかぬ。この体制をどうするかということを考えていませんか。
  105. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 案件の要請が行われました際には、まず日本の国内で関係省庁が集まりまして、四省庁に加えまして例えば農水関係案件でございましたら農水省、建設関係でしたら建設省等の知恵を拝借して審査をし、御承知のとおりフィリピンのような大口被援助国でございますと、政府調査団を派遣しまして案件を精査しまして、相手国とも協議をいたします。それからその後で、今度は海外経済協力基金の調査団が参ります。そういうような形で、要請主義と申しましても単に先方の要請をそのままうのみにするということではございませんで、あくまでも先方の自主性を尊重するということでございまして、我が国には我が国の優先度と申しますかそういうものがあるわけでございますから、それに応じた対応をしているということが申せるのではないかと思います。  それから第二番目に、そもそも企業が発掘をして先方政府に持ち込んで要請をさせて実現に至る、そこに問題があるというお話でございましたけれども、確かに、企業なりコンサルタントなりが、将来の企業化と申しますか実現に向けていろいろと案件を発掘されて、先方に知恵をおかしするという例はあると思います。しかしながら、それが必ずしもそのまま決定するとは限りませんし、ましてや、御承知のとおり、最終的に資金協力に至ります場合には、有償資金協力の場合も無償資金協力の場合も競争入札になりますので、その当該発掘をした企業にそれが落札されるという保証はございません。したがいまして、一生懸命ブロファィをしてみたけれども結局はほかの企業にさらわれちゃった、何とかこれをもうちょっと公平にしてもらえないかというような座談会では企業の方の御発言などがよく見られますけれども、むしろそういう意味では非常に公平にやっているということが申せるのではないかと思います。  それから第三点でございますが、JICAが公社、公団、社団等の行革等でいろいろ縮小を図られつつある方々と組んでという御質問でございましたけれども、行革で縮小云々ということは別にいたしまして、例えば鉄道案件ですとJARTS、それから港湾でございますと臨海開発研究センター、農用地開発ですと農用地開発公団という非常にノーハウの強い団体があるものですから、その団体の知識経験をおかりして進めているという実態はございます。
  106. 矢山有作

    ○矢山委員 私企業あたりは、案件を発掘しても必ずしも入札でとれるものじゃないとあなたはおっしゃるけれども、そんな素人みたいなことをおっしゃらぬ方がいいですよ。現実問題として、商社やコンサルタント会社が組んで、そして案件を発掘して持ち込んだら、大体そこが落札するというのが大方の線なんで、それの方がまれなんじゃないのです。話は逆なんですから。その辺はあなたが一番よく知っておるのですよ。そういうようないいかげんな答弁はなさらぬ方がいいですよ。  それから、私が案件発掘段階から十分な対応をしなければいけないと言ったのは、これはあなたの方でやったでしょう、ODAの実施効率化研究会というの。この答申の中にも具体的に書いてあるでしょう。こういうことがなぜ答申に出てきたかというと、案件発掘段階に問題があるからこれは指摘しているのでしょう。何にも問題がなくてうまくいっているのなら、こんなこと何も言う必要ないのですから。したがって、案件発掘段階に問題があるからこういう答申が出ておる。そうすれば、こういうものを踏まえて、一体どう案件の発掘について誤りのないようにするかということをやはり積極的に、前向きに考えなければいけませんよ、こういう問題が起こっておるのだから。問題が幾ら起こっても幾ら起こっても、性懲りもなしに今までどおりのことをやっているのじゃしようがないじゃないですか。フィリピン援助問題なんというのは、昭和でいうと四十五、六年、七、八年の段階でもう論議になっている問題なんですからね。だから、少し前向きのとらえ方をしていただきたいのです。  そこで、時間の関係もありますから次に進みますが、例の外国首脳が、いわゆる開発途上国の首脳の方が日本に来られる、あるいは日本の首相が外国へ行く、そのときに、手土産と言ったら言葉は悪いかもしれませんが、よく手土産のような形で援助、円借款をやったり贈与をやったりしますね。あの円借款なんかをやるときはちゃんと事前調査を十分にやってからやっておるのですか、それともつまみでぽっと持っていっておるのですか、これは一体どっちなんですか。
  107. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 つまみで云々なんということは全くございませんで、私どもの通常行っておりますのは、援助をあるA国ならA国に行います際に、できるだけA国に対する援助というのをPRしたいという観点から、例えばその国からの首脳の来日が予定されておりますとか、それから我が方の政府首脳が当地を訪問される予定等があります際には、そのタイミングをとらえて約束をしていただくとか調印をしていただくとかいうふうに準備をいたしまして、広報効果を考えて、それにタイミングを合わせるということでございまして、突如としてその御訪問のときに事前準備もなくお約束をするなんということはございません。例えば数カ月後に何か機会があるとしますと、むしろ準備をしていたものを延ばして行っている、こういうのが実態でございます。
  108. 矢山有作

    ○矢山委員 時期のいいときにやろうということで事前に調査しておるということだから、それはそれで聞いておきます。  そこで、案件発掘の段階でひとつお考えを願いたいということで、私ども検討したことで申し上げますと、こういう提案もなされておるのです。開発援助協議体というものをつくって、そして開発援助の基本的な問題の検討をやったらどうか、それにはいろいろな政党、学界あるいは民間の援助団体の英知を結集する、こういうものをつくったらどうか、そしてその下に国際開発に関する調査を任務とした常設研究機関を置いたらどうだろうか、こういうことによってなるべくこの案件の発掘の適正を図っていくということができるんじゃなかろうかということを私どもいろいろな勉強の結果考えておりますので、これは今後円借款を実行する上においてひとつ御検討いただきたいというふうに思います。  そこで、問題を次に移しますが、四月一日にフィリピンのラウレル副大統領と朝日新聞の高野特派員が会見しておりますね。そこで、日本経済援助の適切な運用のために両国政府当局者、それから援助受益者を含めた協議会を設置したらどうかという考え方が述べられております。この考え方も今後の援助考えていく場合の一つの有効な方法なんじゃなかろうか。幸いにして、援助を受ける相手国の方の政府首脳からこういう問題が提起されたということは絶好の機会だと私は思う。そういったものがつくれるならぜひそれをつくって、案件発掘の段階から評価に至る段階まで機能させることはできないだろうか。そして、しかもこれはフィリピンに限ったことではありません。私どももかつて経済援助の問題ではインドネシアの賠償あるいは台湾賠償等々手がけてまいりましたが、似たり寄ったりのことが割合ありますので、これは円借の被援助国全体にそういったものを広めていくということについてはいかがお考えでしょう。これはひとつ外務大臣の方から。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、おっしゃることはいろいろと私は一理あると思っております。日本も今までの行き方をいろいろの面から検討しながら改善をしていく必要があるということは、私も痛感をしておるわけです。ただ、今度の疑惑を見てみますと、その制度そのものじゃないように思うのですね。要するにマルコス政権契約する指名競争入札、その段階における問題、これはあくまでもフィリピン政府の問題で日本としては何ともしようのない、その辺のところに相当問題があるように思っておりますし、しかし、そういう点は交換公文等で、相手の国との間でどういうふうにやれるかというようなことも、これはどの程度まで相手を縛れるか、援助する側として介入できるか、援助といっても相手の主権もあるわけですから、その辺の問題もあると思いますけれども、そういう点等も、これは相手もあることですが、今後のあり方としていろいろと勉強する必要もあるんじゃないか。  そういう中で、今お話しのラウレルさんがそうした提案を新聞記者を通じてされたということですが、私はまだ政府として公式に話し合いをしてそのことを聞いておりませんけれども、いずれは援助問題についてはフィリピン政府と話をしなければならぬと思っておりますし、我々も今後の援助を積極的に行おうという姿勢を打ち出しておりますから早くかかわりたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、我々の方とそれからフィリピン政府との間に援助問題をめぐってのしっかりした協議を行わなければならぬことは事実でありますし、それはやらなければならぬと思っております。  そこで、そういう中でラウレルさんかどういう形のものを言おうとしておられるのか、これは私も援助の協議をするという段階でフィリピン政府との間でひとつ十分話し合ってみたい。援助が適正に効果的に行われていくということが一番いいことですから、それに対して両国が協力関係で話し合いをするということが一番いいことだと思っておりますし、果たしてその辺についてどういう具体的な案を考えておられるのか、これは外交ベースで少しいろいろと相談してみたい、こういうふうに思っております。     〔宮下委員長代理退席、戸塚委員長代理     着席〕
  110. 矢山有作

    ○矢山委員 これまでのマルコス問題をめぐってのやりとりを聞いておりますと、企業の秘密であるとか相手の主権の尊重であるとか外交秘密であるとか、いろいろなことを言われるのです。そういう主権の尊重だ、外交上の問題があるということで、資料の提出についてもなかなか、よろしゅうございます、出しましょうということにならない。ところが、たまたま向こうのラウレル副大統領が、自分の方と一緒にやりましょう、こう言っているわけでしょう。それで、それには両国の政府当局者に援助受益者も含めよう。これは画期的な考え方だと私は思うのですね。そして今後の援助の適正を期していこう、こう言っているわけですから、向こうの方が乗り出してきたというのは、相手国フィリピンにおいても今深い反省があると私は思うのです。  というのは、円借でしょう。円借だから結局利子をつけて返さなければならぬのです。それで、利子をつけて返すその金はどうかといったらフィリピン国民が負担するのですから、やはりフィリピン国民立場から見ても、援助が適正、効率的に行われるということは願ってもないことなんで、心から願うことなんで、日本国民にすれば、今行革だ何だといって、福祉は切り捨てだ何だかんだといって、国民生活に肝心な国の支出が削られておる最中に、援助というものはこれからどんどん膨れていくわけでしょう。これは国民の負担なんですよ。両国民にとって援助の適正化、効率化ということは何としたってもう心からの願いだと思うのです。それを背後にされて、ラウレル副大統領はこういう積極的な提案をしたのだと私は思うのです。  だから、むしろこちらの方から、あなたの国のためにも国民のためにもこれを一緒にやりましょうということを積極的に持ちかけて、フィリピンでまずそれをやってみる、そしてそれをその他の円借款相手国に広げていく、こういうことはやはり積極的に考えた方がいいと私は思いますよ。これは実務担当者が進めていくのでしょうが、藤田さん、あなたはどうですか。
  111. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 協議体の件は、今外務大臣の御答弁がございましたが、ただいまの委員の御示唆に関連して申し上げますと、フィリピンを本会計年度の評価の重点国ということで、これから四つのグループを出そうと思っておりますが、この評価グループ各グループにフィリピン側から参加者を得まして、フィリピン援助担当、経済計画を担当しておられる方に、日本援助の実態を見ていただくということを計画いたしまして先方に申し出まして、先方も非常に快諾をされたということで、四月の末ぐらいからそれを実施していこうと思っておりますので、これも今の御示唆と非常に密接に関連する行動ではないかと考えております。
  112. 矢山有作

    ○矢山委員 そういう形で評価をやろうというのは結構なことです。しかし、事後評価よりも事前の評価を誤りなしにやるということの方が援助の場合には基本的に大切なことですから、したがって私は、今回のラウレル副大統領の提案を積極的に受けとめて、案件の発掘段階、そして決定の段階から工事施行に至る段階においても、これが有機的な機能を果たせるように相手国との関係ではぜひこれは検討してもらいたい。外務大臣、あなたは近く行かれるのでしょうから、これはぜひひとつ積極的に相談してくださいね。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん私が行く場合もあると思いますが、まず政府レベルでよく話し合って、ラウレルさんの真意といいますかそういう構想もお聞きして、両国にとってそれが非常にいいということになれば、我々何もこだわることはありませんし、援助が適切に効果的に行われることが一番いいと思っていますから、これは、お話を聞いてもし検討する必要があるとするならば十分検討したいと思います。
  114. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、ちょっと細かい問題になるのですが、一つお聞きしておきたいのです。  この前、四月一日の参議院予算委員会で経企庁の赤羽調整局長がおっしゃっておるのに、入札に当たっての契約価格面の審査は、事業実行に適切か否か審査をするけれども、個々の項目については詳細な原価計算をしていない、こういう御答弁があったように思います。そこで、この審査の対象になっておる書類は原価計算ができないような書類なんですか。それとも対象プロジェクトによって調達する原材料がずっと明細があって、それの数量があって、単価があって、そして原価計算ができるような書類になっているのか。一体これはどういう意味なんですか。この意味のとり方で大分違ってくるので。
  115. 小川修司

    小川説明員 相手国政府から要請がございますと、政府検討するのとほぼ並行いたしまして、経済協力基金といたしましても、その事業につきまして、事業計画の基本計画が妥当であるかどうかとか……(矢山委員「それは知っておる」と呼ぶ)そういうことを検討いたしまして、事業費の審査につきましては、借入国政府から提出されました事業計画あるいは事前のフィージビリティーレポートというのがございまして、それをベースに、そのプロジェクトの経済性、収支見通し、資金計画等を検討する上で、事業費全体が妥当なものであるかとの観点から実施いたしておりまして、事業費の積算はフィージビリティーレポートによって行われておりまして、基金におきましては、事業規模の変更でございますとか、あるいはレポートを作成したとき以降、時間的経過で、その後インフレが起こったというようなことで事業費に変更があったというようなことを勘案いたしまして、調整するというような審査は実施しているわけでございます。
  116. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた、回りくどいことを言わぬでいい。私の言ったことに単刀直入に答えてください。入札をしたときの価格について審査するというのでしょう。ところが、その価格の審査をするのに原価計算までやっていないと、こう言っているわけでしょう。だから、その書式自体が原価計算のできないような抽象的な書き方の書類になっておるのか、それとも先ほど私が言ったように、この対象事業については原材料は数量が何ぼで、単価が何ぼでというように、ずっと細かく品目ごとに並べられておるのか、どっちなんですかと言っておるわけです。もしそうなっておるのなら原価計算をやろうと思えばできないことはない。そうでなしに抽象的な書き方になっておればできないわけですから、そこのところはどうなんだと聞いておるわけです。
  117. 小川修司

    小川説明員 二つございまして、一つは、基金と相手国政府との間で借款契約を結ぶときに、円借供与額の限度額を決めます。そのときの審査と、それから実際に借款契約をした後の向こうの政府が調達する段階がございます。その段階は、先ほど来お話が出ておりますように競争入札ということで、入札価格ということで出てまいるわけでございます。その後者の入札価格の審査につきましては、基金で適正な競争入札が行われたかどうかという手続的なチェックをいたしますが、最終的に向こうの政府と受注企業との間に契約が結ばれますけれども、その契約につきましては入札のトータルで報告が来ておりまして、それについては細かい積算はございません。
  118. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、契約書が来て価格面の審査をやるんだけれども、それにはもう原価計算ができないような書類になっておるということですね。なるほど、それじゃ当然こういう問題が起こってくるわ。入札をするときの入札価格をはじき出すのには細かに見積もりをやるはずです。その見積もりをやるときの状況が細かく全部、先ほど来言っておるような形で出てきておる。その書類がそのまま回ってくるのならそれを見れば原価計算ができる。それをやってみて、その価格が適正なのかどうかというのは判断がつくわけですよ。そういうものが書面審査でやられてないということになれば、それはなかなかわからぬわ。やはりそういうところに問題があるんだ。  一体、どういう書類をやりとりしておるのか。日本で、案件発掘のときの調査から、あるいはその入札に出すときから、見積もりをやるときから、いろいろな書類のやりとりをやる、そのときの書式をちょっと一遍全部そろえて見せてくれませんか。中に書き込みのあるのを見せてくれということになると、あなた方はまた相手国のあることだからと、こうおっしゃるだろうと思う。しかしながら、書き込みのないこういう書類で全部やっておるんですということになれば、これは外交上の問題はないのですよ。そうすれば、私どもがそれを見せてもらえば、なるほどこの書類では適切な審査はできぬわい、そうすると書類自体から考え直さなければいかぬ点もあるな、こういうことも我々の方にわかるわけだ。だから、あれこれの抽象的な論議でなしに――あなた方は、資料を出せと言ったってなかなか出さぬのだ。この間、四月一日の参議院の予算委員会で我が方の和田委員が、OECFの審査調書とか入札書類の承認調書、あるいは入札評価承認調書、その他契約承認調書などなど、こういう書類を出してくれと言ったら、あなたの方では、外国政府から資料提供を受けて審査しており、発表されると資料に問題点が率直に記載されなくなるおそれがある、公表を前提にしない形での提供文書だからと、提供を断わっておるわけだ。それだったら、何も書き込みのない書類なら提出できるはずです。これはぜひやってもらいたい。  大体、問題点が率直に記載されなくなるおそれがあるなんて言って、それで出せぬなんというのは、これもおかしい話なんだよ。これ自体もおかしいんだよ。それなら、問題点がいつもこの中にあるのかなというふうに我々の方は思いますよ。だから、あなた方はそれを出さぬとおっしゃるから、ここでそのやりとりをしても時間の関係もありますから、やりとりはやりません。この和田委員が要求した提出書類についてはまだ後ほど触れますけれども、私が今言った一切の書式は一応出してもらえますか。これは外交上の問題は起こらぬはずだ。
  119. 小川修司

    小川説明員 一つ、その前に、先生が前半で御指摘になりました価格の件でございますけれども、積算の内訳がないという点につきまして一言御説明させていただきますと、基金といたしましては、競争入札で自由な競争の結果決まった価格をもって妥当な価格であるというふうなことで認定いたしておる関係上、その価格に対しまして改めて積算とかそういうことをやらないという趣旨でございます。よろしく御了解いただきたいと思います。  それから、ただいまの書式の件でございますけれども、これはあくまでも、今回の場合ですと、フィリピン政府が行う入札の書式でございますので、書類といいましてもフィリピン政府の書類でございます。入札の書式といってもフィリピン政府の書式でございまして、その辺は、そういう書式そのものがあるかどうかということも、そもそもそういう定型的な書式であるかどうかということもはっきりいたしておりませんので、この辺は必ずしも、出せるかどうか今この席ではっきりしたことは申し上げられません。
  120. 矢山有作

    ○矢山委員 そんないいかげんなことをおっしゃるな。それが定型的なものかどうか、それはもうよろしい。だから、いずれにしても、一つ、二つの対象事業を抜いて、そしてフィリピン政府のものだからここにはないとおっしゃるのなら、その書き込みのところを表に出ぬように、押さえてでもよろしいから、書式というものを見せてもらいたい。一体どんな書類でどんな審査をやっているのか私ども知りたいのですよ。  大体、今おっしゃるような書類だけでやっておるのだったら、これは問題点がどこにあるのやら何やらさっぱりわかりゃせぬですよ。原価計算一つもできないような書類を見て、この事業に対してこれだけの経費が適切だろうか適切でないだろうか、そんな判断をしておって、それが審査になりますか。例えばこの建物を建てる、事業費がこれだけだ、これだけで、この事業費でこのくらいのことをやれるかな、ああ、やれそうだ、よかよか。これじゃ審査にも何もならぬですよ、ちゃんとした明細がつかなきゃ。そういうようなずさんなことをやっているから、つけ込まれて一〇%も一五%も手数料を上乗せされて取られるのですよ。それで今まで気がつかない。もう十四、五年前から問題になっておる。そんなだらしのないことでどうしますか。これは出してくださいよ。後でまとめてやります。  そこで、この対比援助の今後の問題でありますが、第十二次円借款も未消化でありますね。それから十三次は凍結中。そこで、これらを含めて今後のフィリッピンの経済援助についてどう対応していくのか。いろいろ新聞では拝見しておりますが、政府の態度をお聞かせいただきたい。
  121. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 事実関係だけお答えいたします。  第十二次円借款は、委員御高承のとおり四百二十五億円でございますが、うち三百五十二億円の商品借款が約五〇%程度消化をされている状況でございます。したがいまして、三百五十二億円のうちの約半分の商品借款が未消化ということになっております。残余の部分はプロジェクト借款でございまして、これは、コンサルタントの選定に至っているもの、事業の開始に至っているもの等ございまして、御承知のとおり、プロジェクトの場合は平均いたしますと大体五年くらいで完工いたしますので、通常より若干遅いぺースかとも思いますけれども、普通のペースで進められております。  十三次の円借款につきましては昨年十二月末に交換公文を締結いたしましたが、その後の事態の推移にもよりまして、海外経済協力基金によります貸付契約は暫時、先方の出方待ちという状況になっております。  第十三次四百九十五億円のうち百六十五億円が商品借款でございますが、この商品借款につきましては、前回の第十二次の商品借款三百五十二億円分が、九〇%以上ディスバースをされました段階で貸付契約を結ぶということで、先方と合意をいたしております。残余の三百三十億円は十一プロジェクトに供されることになっております。現在、新しいフィリピン政府がその十一プロジェクトの検討を行っているというふうに承知をしております。ほぼ大部分のプロジェクトについては先方も合意をしてくるという感触を得ておりますけれども、最終的な態度の表明にはまだ至っていないという状況でございます。
  122. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、ちょっとまたこれは細かい話になるのですけれども、こういうことを聞いておきませんと、なかなか皆さん、大ざっぱなことだけでこの委員会は済むと割合思っておられるようだから聞いておきたいのですが、第十二次の円借款には、商品借款についてその見返り資金の使用につき日本フィリピン政府の間で取り決めが行われておりますね。その取り決めは、もう申し上げぬでもおわかりのように、見返り資金の使途について協議を行うということ、それから何らかの報告をするという取り決めなんですね。見返り資金の使途について何らか協議が行われましたかということと、何らかの報告を受けておるかということです。
  123. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 フィリピンの場合には、見返り資金の使途は、我が国フィリピンとの間の円借款実施されております事業の内貨部分に充当するという合意を見まして、昨年の中葉だったかと思いますが、我が方より、先方が提示越しました日比間の協力プロジェクトの内貨分に充当することに合意をいたしまして……(矢山委員商品援助だよ」と呼ぶ)はい、商品援助の見返り資金の使途でございます。昨年の十二月末に第一回の使用報告書が先方から到着いたしております。ちなみにフィリピンの場合には、この見返り資金の使用報告書は十二次の前には若干の期間ございませんでしたけれども、極めてきちょうめんな報告を提供してきております。
  124. 矢山有作

    ○矢山委員 そのきちょうめんな報告をこちらへ見せていただけますかということが一つ。それからもう一つは、第十二次の円借款には今言ったような取り決めがなされておる。ところが十三次にはなされておりませんね。こういう取り決めはされていない。こういう十二次の円借款の場合の商品借款について行われたような取り決めというのは異常な取り決めなんですか。それともこれが常態なんですか。常態だとするなら、十三次の円借款に伴う商品借款にはなぜこれが記載されていないのか。
  125. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 商品借款にはすべて見返り資金の使途については同様の規定がございまして、ほかの国の場合には、フィリピンと同様の日本との協力プロジェクトに使うということになる例、ないしは開発目的に使うという例、いろいろございますが、フィリピンの場合には従来より日本フィリピンとの協力プロジェクトに用いるということになっております。十三次につきましては御承知のとおりまだ貸付契約が結ばれておりませんものですから、その点を委員が御指摘になっておられるのかと思いますけれども、私どもとしては同様のつもりでおります。
  126. 矢山有作

    ○矢山委員 それはあなた、おかしいんじゃないのですか。私が言っているのは、これはあなたのところから出ているのでしょう、記事資料というのがあるんだ。記事資料に基づいて言っているのですよ。この記事資料によると、第十三次の円借款に伴う商品借款には何の制限も書いてないのですよ。条件も付されていない。商品借款として四行ほど書いてある。ところが十二次の円借款に伴う商品借款には、これは相当細かい今言ったような条件がちゃんと書き込んでありますよ。ごらんください。
  127. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 後ほど委員のお手元に交換公文の全文テキストをお届けいたしますが、十二次も十三次も全く同文で「見返り資金勘定については云々」、云々というのが入っております。記事資料は恐らく要約をいたしましてつくっておりますものですから、その点で十三次の方にそれを入れないでちょっと誤解をお与えしたのではないかと思っております。
  128. 矢山有作

    ○矢山委員 私は交換公文を見ておらぬので、この点は私の方の手落ちかもしれませんが、私は記事資料に基づいて、おかしいな、どうしてこの十三次にはこのような厳しい条件が抜けておるのかなと、疑問に思ったから今お伺いしたわけでありますが、それじゃ後でその交換公文なるものと両方をひとつお届けいただきたいと思います。  そこで、資料をひとつ御提出願いたいのですが、第十一次の円借款以降第十二次の円借款までの商品借款、これは全体で九百二十五億円ぐらいですね。これについて、調達品目、数量、単価、それから調達先の明細、これをお出し願いたい。これは、かつて我が党の土井議員が請求されたときに、あなたの方で、明細な資料をお届けしますと言って届けてもらった資料が、何かぺらぺら紙一枚で、委員の要求には沿ってなかったようです。それをもらっていらっしゃるかと思ったが、どうももらっていらっしゃらないようなので、これはぜひお届け願いたいと思います。
  129. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま御提起の商品借款の内訳の資料でございますけれども、外務委員会におきまして土井先生から御要望がございまして、私どもとしましてでき得る限りのものは御提出申し上げる旨をお話しいたしまして、早速基金において作業をいたしました。御承知のとおり極めて多くの契約に分かれておりまして、ちょっと概数も記憶しておりませんが、それを品目別に分類して提出をいだすという作業で、かなり時間がかかった次第でございます。  今の委員がおっしゃいました十二次につきましては、現在土井先生に御提出申し上げた資料が一番詳細なものかと考えております。  それから、第一次から第七次まで、古い資料になりますが、これは基金の方にも内々打診をしてみましたけれども、ちょっと作成不可能ということでございます。御承知のとおりかなり古いことと、契約自体が非常に多岐にわたっているということで、恐らくはもう焼却処分になっているのではないかと思われます。
  130. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、このマルコス文書にかかわって問題になる時期、この時期の商品借款の今言ったような明細は出せないということですね。これは、今まで一次から七次までの商品借款の今言ったような明細が本当にないのなら仕方がないが、十二次はあるとおっしゃったんだから、ある分はひとつぜひ御提出願いたい。
  131. 小川修司

    小川説明員 第十二次につきましては、商品借款につきましては、御承知のとおりフィリピンの輸入資金が足らないという場合に輸入資金を貸すということでございまして、実際やりますのは、普通の輸出入契約がその借款の対象になるということを認定いたしまして、この借款の対象にいたしておるということでございます。  したがいまして、三百五十二億という枠内で輸出入が行われる、それに対して、その書類が全部普通の輸出入の契約の書類と同じように回ってくるわけでございまして、その資料自体が大変膨大なものでございますものですから、今外務省からも御説明ありましたように作業に大変な時間がかかる。普通の通関統計と違いまして、コンピューターに入っているとかそういうことでもございませんものですから、その作業に大変時間がかかるということでございます。
  132. 矢山有作

    ○矢山委員 要するに、商品借款について調達品目なり数量なり単価というのがわからぬはずはないというのが、大体今のお話で私もわかります。あるはずなんです。ただ、膨大だから困るというだけの話です。それだったら、十二次のは先ほど経済協力局長が土井委員に出したと言うんだから、それを私のところに出してください。  それでもう一つは、一次から七次まで全部とは言わぬから、それだったら五、六、七次、ここら辺なら出せますか。膨大だろうが何だろうが、これは、これからいろいろな審議をやるときに、特別委員会がこれから発足するのだから、要るのだから出してもらわなければ困る。
  133. 小川修司

    小川説明員 これは基金の分掌規定上、古い書類を、大変膨大なものですから、場所の関係等で廃棄するということがございまして、古い、今先生がおっしゃいましたそういう古い五、六、七次の商品借款の書類があるかどうかにつきまして、つまびらかにいたしておりません。今伺いましたところでは、多分ないんではないかということでございます。その辺につきましてはなお調べてお答えいたします。
  134. 矢山有作

    ○矢山委員 資料を要求すれば、これは外交上だから出せないと言う。今度要求すれば、膨大だから時間がかかると言う。そうして、今度は廃棄したかもしれぬと言う。わけがわからぬ。今言った商品借款に伴う資料は、改めてちゃんと調べて、あるものについては出してもらう。これは膨大でも仕方がありません、これからいろいろ審議しなければならぬのだから。いいですね。
  135. 小川修司

    小川説明員 調べた上で、お答えさせていただきたいと思います。
  136. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは出してもらいますよ。出していただかぬとこちらは困るのだから。  そこで、次に質疑を移しますが、DAC諸国の援助行政の体制、これはどういうふうになっていますか。
  137. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 援助行政上申しますと、援助の官庁でございますか。(矢山委員「行政体制」と呼ぶ)行政体制は、十七カ国ございますが、一カ国ずつ表がございますので、それを差し上げましょうか。
  138. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは後でいただきますが、質疑をやらなければなりませんので、それを見る前に私の方から、一応のことを承知しておりますので、それに基づいて質問いたします。  DAC諸国では、援助行政の体制が大体一元化されておるのが通例になっておるようですね。西ドイツ、イギリス、これはたしか援助専門の省があるはずです。それから、その他ではたしか外務省の外局が一元的に援助行政を担当しておる、こういう形になっておると思うのです。  私は、この問題で昭和四十三年ですか参議院の決算委員会で、これからの経済援助というものを効率的にやっていくためには、日本のように七つも八つもの省が分かれて予算を持ったり、あるいは公益法人に対する補助金を加えれば七つ、八つどころではない、十を超すと思うのですが、そういうような各省庁にまたがっておるというやり方ではだめだ、だからぜひ一元化したらいいのじゃないかと言って質問をしたことがあるのですが、その当時の椎名外務大臣が、関係省庁間の有機的な組織をつくるということなどを研究してみたい、こう言っているわけですよ。あれから大分なるので、私は、今度のマルコス問題等をも見て、やはり援助行政の体制の一元化ということをこの際国内の体制の一つとしてはやるべきではないかというふうに思いますが、まだそういう方向には動いていませんか。
  139. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 各国の援助体制の態様は委員がおっしゃったとおりの姿かと思います。非常に分かれておりますのはフランス、あとは省としてございますのがドイツ、それから英、米が外務省の外局という形になっております。  第二点の統一化でございますが、援助体制がどうあるべきかということについては、委員の御質疑もございましたし、累次にわたる臨調でもいろいろ議論がございました。現在のところ、確かに御指摘のとおり技術協力までを含めますと十四省庁が関係はしておりますけれども、一般会計の事業予算で見ましても、外務、大蔵の両省で約九割を掌握しておりまして、ほぼこの二省が予算面では大宗を占めておるということが申せるかと思います。円借款では四省庁、それから無償技術協力外務省と事業団という姿になっておりますので、累次にわたりまして外務大臣の御答弁がございますように、実際問題としては外務省調整の任に当たっているということが申せるかと存じます。
  140. 矢山有作

    ○矢山委員 外務省がそれは表では中心になっておるんでしょうけれども、この間の参議院の予算委員会の後の状況、まだ会議録ができていませんから新聞等で読んでみると、たしか通産大臣の答弁だったと思いますが、なかなか四省庁の中だっていろいろとあってうまく回っていないという意味のことをしゃべっておったような気がします。やはり、この経済援助というのはこれから膨れていく一方でしょう。今だってもう一兆円を超えている。これから七年間で今までの五年間の倍増だ、こういうのですから、これは膨大な金になっていくわけですよ。そうすれば、この経済援助というものを効率的に、効果的にやろうと思うなら、やはり一元的な体制というものをつくるということが必要なんじゃないか。省まで設置というところへは行かぬでも、今の経済協力局を外局にして、そして担当の国務大臣を置くというようなところまで考えぬといかぬのじゃないか、私はこう思っているのですが、外務大臣、その点いかがですか。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今局長も答弁しましたように、今円借なんか四省庁でやっておりますし、基金の方はその中で経済企画庁が責任を持ってその運営を図っておりますが、同時にまた、無償供与とか技術協力等については主として外務省。ですから、全体的に対外的には外務省が窓口になっておりますし、調整にいたしましても、外務省が対外関係ですから、経済企画庁等とも一緒になりましてまとめをしております。それで事実上、援助をする上において何か大きなぎくしゃくとかそれが非常に効率を悪くするとかそういう面は、私、三年数カ月外務大臣をやってみまして随分この援助問題は取り扱ってきましたが、何かぶつかったとか調整困難であったとかいう経験はそうないわけですが、これから援助をもっと拡大していくわけですし、今度のフィリピンの事件がいい反省の機会ですから、これからも特別委員会でいろいろと検討していただきまして、そうした議会での御意見も踏まえながら、なお、四省庁等でもこの事件をいろいろと解明する中でまたそれなりの意見も出てくると思いますし、そうした全体的な総合的な意見、さらにいろいろとまた学識経験者等の御意見等もあると思いますが、そういうものを総合しながら、これからどういうふうなやり方がいいのか、検討といいますか研究する必要はある、援助の問題については日本もこれを倍増していこうというわけですから、絶えず前進をする、そういう形で取り組んでいくということが必要じゃないか、これはそういうふうに思っております。
  142. 矢山有作

    ○矢山委員 もう一つお伺いしたいのです。  ODAというのは、御承知のように相手国政府を対象に供与するわけですね。ところが、開発途上国というのは往々にして、フィリピンマルコス政権に見られたような独裁的な政権というのが多いわけですね。したがって、せっかく援助をやったのが民衆レベルまでおりないというような弊害というのがあるわけです。私どももこの援助問題をいろいろとこれまで調べてもきましたが、これはどうもそういう点がある。そこを克服するのにどうするかということで、DAC諸国ではNGOの活動というものを非常に高く評価しておるようです。そして、政府のODAをNGOに交付してNGO自身の協力活動の財源にする、あるいは途上国のNGOの融資に使わしたりする、それから政府とNGOが共同して現地のNGOに贈与や貸し付けをする、こういうことをかなりやっておるようです。その点でどういうような状況がなと思って見ると、ODA中のNGO援助率というのが日本は〇・九%なんです。しかも、〇・九%といいましても日本の場合は公益法人に。対する援助という形が多いですから純粋のNGOとは言えぬと思うのです。しかし、いずれにしてもNGOに対する援助率というのはODA中〇・九%となっている。それからアメリカなんかは一二・四%、西ドイツが一一・七%、カナダが八・七%、スイスなんかになると二一・四%、それからスウェーデン、オランダというような北欧が、スウェーデンが六%、オランダが五・八%、かなり高いのです。  そこで、日本の場合も今後NGOの活動を重視して、これをやはり海外援助に活用していくということを考えたらどうかなと思うのですが、この点どうですか。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 NGOにつきましては、日本以外の先進国と日本を比較いたしますと、その成り立ちといいますか歴史が随分違うように私は思います。それだけに他の国の援助活動というのは非常に活発であるように思います。日本はそういう点では歴史の面でも少しおくれているのじゃないかと思いますが、しかし、最近では活動が相当活発に行われるようになりまして、特にアフリカの援助活動なんかでNGOの活動が非常に活発化してきておることは我々も大変喜んでおりますし、NGOと政府との関係をどういうふうにしていくのか、これはNGOの主体的な関係活動というものが中心になるわけですから、政府としては、これに対して側面的な支援といいますか協力ということになっていくのじゃないかと思うわけですが、最近の日本におけるNGOは活動範囲が相当広がり活発になってきておりますから、これはやはり今後ともそうした活動に対して側面的な支援というものを強化していかなければならぬ、そういう気持ちは私も十分持っているわけですが、これは今後の課題としていろいろな面で検討を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  144. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、今までの質疑を一まとめにしまして、先ほど申し上げましたように、私どもも海外援助の現状についてはかなり勉強なり調査を続けてまいったわけです。そういうことに立って今後の経済協力体制をどうするかということで、私ども実は一つの提言を出しております。これはたしか外務省の方にも差し上げておると思うのですが、ぜひお読みいただいて、採用できるものは積極的に採用していただきたいと私は思うのです。  項目だけを言いますと、  一つは、ODAの決定過程を公開するということが極めて重要だ、そういう立場から、プロジェクトの発掘から入札完了までの援助の全過程、これを国民の目に明らかにされる必要があるということで、国会に経済協力特別委員会、これは仮称ですがそれを設ける、そして経済援助について個別に承認案件とする、こういうことをやるべきじゃないかと思っています。  それからもう一つは、先ほど言った援助行政の体制です。経済協力庁といったようなものをつくる。  それからもう一つは、先ほど来出ました事後評価体制を強化する。これは実施主体が評価しておったのではしようがありませんので、先ほど来も話が出ておりましたように第三者を加える、特にその場合に、NGOの代表だとかこういったものも積極的に加えて独立した評価委員会をつくったらどうか、こういうことも考えておりますし、あるいは会計検査院の機能の強化ということもやったらどうか。これは今度の行革審の特殊法人問題等小委員会ですか、あの報告の中にも入っておるようですが。  それからもう一つはNGO、これを活用することを考える。  それからもう一つは、やはり開発教育の機関を創設していく、こういったことも私はこれから重視すべきじゃないか。  それからもう一つは、協力活動を強化していくためには、税制上の措置も要るだろうし、ボランティアの身分や再就業の保障といったことも要るだろう、こういったこと。  これらのことをやるとすれば、私は経済協力基本法、これも仮称でありますが、そういうものをつくる必要があると思います。ところが、この経済協力基本法をつくるということにつきましては、先般も参議院の方で議論になったと思いますが、そのときに中曽根総理は、外交の弾力性を失うからこれはだめだ、経済基本法をつくれないのだ、こうおっしゃっておるのですが、これは私はちょっとおかしいと思うのです、その発想は。弾力性を失うというのは、結局これは何か勝手気ままにやりたいんだ、こういうことになっちゃう。勝手気ままに自分のつまみ金のような形で援助考えてもらっては困るので、やはり援助というものの体制を整えて、フィリピンに起こったような問題がないように将来はしていく、そして効率的な援助をやっていく、国民の貴重な金を使うわけですからね。そういう立場に立てば、先ほど言いましたようなものを含んだ経済協力基本法の制定を提案をしたいと思いますが、所感を外務大臣に伺いたいと思います。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の御提言につきましては、政府としても検討さしていただきたいと思います。いずれにいたしましても、今回のフィリピンの問題を契機にいたしまして、日本援助のあり方につきましては、全体的にひとつ改善するという考えのもとに再検討すべき点は再検討しなければならぬ、こういうふうに考えております。  なお、基本法については、総理が言われたのは、やはり余りはっきり援助プランその他を決めて国会でかけるというようなことになると、援助の機動性といいますかそういうものが失われるというような意味ではないだろうか、こういうふうに思うわけでありますが、今の四省庁体制というもので、これから拡大する援助を確実に、適切に実施する上において、これで乗り切っていけるかということ等も十分検討しながら、法制的な面、やはり問題点として何があるかといった点もいろいろと研究はしてみたいと思いますけれども、今すぐここで、援助基本法というものをひとつ考えます、そういうものをひとつ頭の中に置いて検討するというところまではまだ至っていないわけでございます。  いずれにしましても、あらゆる問題を総ざらえして勉強する必要はある、こういうふうに思っています。
  146. 矢山有作

    ○矢山委員 ぜひ総ざらえして勉強して、アメリカ等にも海外援助法というのもあるようですし、諸外国の例等も検討する中で対処していただきたいと思います。  それから、もう一つお伺いいたします。  これは私は新聞で拝見したのですが、先般ECとアメリカが、厳しい内容政府直接借款の規制強化を求めてきておるというような報道があります。どういうような内容が提案されておるのか。また、それが行われた場合には我が国の円借款に対してどういう影響があるのか、そしてまた第三点は、我が国の対応はどうするのか。それをお伺いしたいと思います。
  147. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいまの御質問の案件は、過去二年有余にわたりましてOECDの場で議論されております混合借款規制ということでございまして、これは本来は輸出信用とODAをまぜ合わせまして輸出促進効果、その結果として、貿易とか援助を歪曲する効果があるものを規制しようという考えでございましたが、そのうちに、我が国の供与しておりますODA、円借款でございますけれども、円借款のうちでも条件の厳しいものが規制対象になる、特にそのうちのタイド性の強いものが規制対象になるということになってきた次第でございます。  昨年のOECD閣僚理事会におきまして、グラントエレメント二五%以下の混合借款及びタイドの借款は禁止をされるということと、それから五〇%以下のものは事前通報を行うという規制がかかりました。これをより厳しくしようということで、現在、米国、EC、それから我が方、それぞれいろいろな考え方を披露し合っておりますけれども委員の御指摘の案は、EC側が先般の大蔵大臣会議におきまして、ECとしては第一年度三〇%まで禁止、第二年度三五%まで禁止する、それに合わせまして、グラントエレメントの計算方法を市場金利を導入することによって変えていく、こういう案を決めたということだと了解しております。  この案が、もちろん一つの案としてでございますので、今後、各米国、EC、日本等の協議の結果結論が出ることになりますが、市場金利制の導入ということになりますと、御承知のとおり我が国は非常に市場金利が低い国でございますので、低金利国には厳しい内容になる。日本、ドイツ、スイス等は厳しい内容になるということが申せるかと思います。  我が国も、基本的には貿易歪曲、援助歪曲の効果を持つような借款の供与は反対であるという立場を持しておりますけれども、どの程度までの規制を行っていくかということについては、今後各国と協議の上決定していこうという考え方で対処しております。
  148. 矢山有作

    ○矢山委員 特に国内の市場金利を基準にしてやるということになった場合の影響がかなりあるのじゃないかな、こう理解していいのですね。その場合、私は国内の今の財政状況からいえばいろいろ問題はあると思います。しかしながら、我が国援助の中で、ODAですね、非常に量はふえてきたと言われておりますけれども、しかし質の面ではかなり問題を持っているわけですからね。御存じのようにODAのGNP比は〇・三五ですか、十一位ですね。DAC平均では〇・三六でしょう。それから贈与比率は四三・八%、これは十七位ですね。DACの平均は七六・八ですから。それからグラントエレメントが七三・七ですか、これも十七位。DAC平均は九〇%ですね。それから技術協力は我が方は一〇・一%、DAC中十五位ですね。これはDACの平均でいうと二〇%ということですからね、かなり悪いわけです。  私は、財政的な非常な厳しさもあると思いますが、やはりこうした質の改善を図るということを基本的に踏まえながら、最大限対応していくということをなされるべきではないか。もちろん、これからODAを拡大していく以上は、マルコス問題で示されたようなことが起こったのでは国民はたまったものじゃないので、そういう点は、このマルコス問題を十分な経験として、この反省の上に立って、再びこういう事態が起こらないというような体制なり措置なりをきちっととって、その上で積極的に質の改善という立場から対応をするということを私は希望しておきたいと思いますが、これは外務大臣、いかがでしょう。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も今の御意見には同感であります。日本援助は確かに量はアメリカに次いで第二位になったわけでございますが、質の面で見ますと、今おっしゃるようにいろいろとやはり他の先進国と比べるとおくれておる点があるわけで、これは量的に拡大をしようという、そしてアジアだけではなくて世界の開発途上国に広く援助を行いたいということで、質の面に多少問題が出てきた。財政的な制約もあるわけでございますが、これは今後、日本が世界で胸を張って本当に国際的な責任を果たしている、日本は開発途上国に対する最も大きな援助の役割を果たしていると言おうと思えば、もっと質を充実しなければいかぬことは当然でありまして、この点につきましては、倍増計画はつくりましたが、今後ともさらに、その中で質を高めるような努力はこれからも絶え間なく続けていきたい、こういうふうに思っております。これをやらないと本物の援助国にはなれない、こういう感じは率直に持っております。最大の努力を重ねるつもりであります。  同時に、この今のフィリピンの問題というものを契機にいたしまして、ちょうど、これまでやってきた日本援助あり方等も、質の面もそうですが、同時に、援助あり方等につきましてもいろいろな点でやはり改善をしていかなければならない、評価体制も強化しなければならないし、あるいはまた相手国との間の約束、例えば交換公文といったような問題についてももっと相手国に対して注文をつけられるといいますか、これも相手国との間のいろいろな問題もありますけれども、もっと注文をつける必要があるようにも私は思うわけで、そういう点等もこれからいろいろと改善のための検討研究をしなければならぬと思いますが、フィリピンなんかにつきましても、これまでの受ける方のフィリピン側としても相当いろいろと問題意識はあると思います。ですからちょうどいい機会ですから、新しいフィリピン政府との間で、これからのフィリピンに対する日本援助のあり方を全く理想的な形で、むしろそういう理想を追うという形でひとつお互いに研究し合って、そういう方向に進めてまいりたいものだ、こういうふうに考えております。
  150. 矢山有作

    ○矢山委員 ぜひそういう方向で、全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。  そこで、時間が参りましたので、先ほど中途半端になっております資料の問題について御要求を申し上げておきます。  先ほど言いました円借款に伴う、どういう書式でなされておるのか。中身は外交上の問題というなら、記載事項はよろしいから書式というもの、これはぜひ御提出を願いたい。それによって我々も何がしかの判断をしていくための参考になると思います。  それから、第十二次円借款の使用報告が来ておるということでありますから、これは円借款といいましても商品借款です。この使用報告書を御提出いただけるかどうか。  それからもう一つ先ほど申し上げましたこの商品借款に対する資料については、そちらでもってあるかないか検討して出す、こういうことですから、あるはずだと思うのでぜひ出していただきたい。  この三点、いかがでしょう。
  151. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 第二に御提起なさいました第十二次円借款のうちの見返り資金の使用報告、それから第三番目の十二次の円借款の品目でございます、これは御提出申し上げます。  それから第一の書式の点は、経済企画庁から御答弁申し上げます。
  152. 小川修司

    小川説明員 基金とよく調査の上、提出できるかどうかお答えいたしたいと思います。(矢山委員「よくわからぬ、語尾が」と呼ぶ)書式、それから古い商品借款の実績につきましては、調査の上、お答えいたします。
  153. 矢山有作

    ○矢山委員 調査の上、調査の上と言って出さぬ方向じゃ困るので、今後の審議もあるわけだから、国会の審議の全体を進めていくためには、私どもが要求している資料は、私も大分譲歩して要求しているわけだから、ぜひ出していただくよう委員長、そのようにお取り計らい願いますよ。  そういうことで、あとニカラグア問題の質問なりSDIの質問考えておりましたが、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  154. 戸塚進也

    ○戸塚委員長代理 ただいまの矢山君の委員長に対する御要求は、後刻理事会で協議させていただきます。  日笠勝之君。
  155. 日笠勝之

    ○日笠委員 安倍外務大臣、久方ぶりの内閣委員会でございまして、なかなか御質問する時間がありませんので、在勤法の一部改正の前に何点かお伺いをしておきたいと思います。  去る六日に、東北とかまた埼玉とか地方遊説が精力的に行われておるようでございます。東北も秋田の方では、記者会見でいわゆる解散問題について御発言をされております。新聞論調を見ますと、「解散反対考え重ねて強調」という見出しのある新聞もありますれば、「同日選あるかもしれぬ」という見出しの新聞もあります。「五分五分」という新聞もあります。全然わかりません。真偽のほどをお聞かせ願いたいと思います、解散問題について。
  156. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 解散問題について確かに触れたわけでありますが、私がしょっちゅう言っている私の考えは、今何も解散を急ぐことはないじゃないか、名分のない解散はすべきではないということをいつも強調しておるわけであります。これは変わらないわけです。解散というのは同時選挙ということですね。しかし、そういうことは私の意見としては言っているわけですが、客観的な情勢ではなかなか走っておる。走っておるというか、そういう動きが……(発言する者あり)いや、走っている動きが出ている。これは確かにあるので、そういう動きがあることは事実で、常在戦場の気持ちは忘れてはならないけれども、しかし、解散・同時選挙、そういうものは何もする必要はないじゃないか。そういう状況にはないし、また名分のない解散はすべきじゃない。今は国会もありますし、サミットもありますし、いろいろと重要な問題を抱えておる、こういうことを強調しているわけです。
  157. 日笠勝之

    ○日笠委員 今同僚議員からも、結局走らせているからだれもいない。我々であれば土曜日、日曜日に帰って田の草取りと称するものをやりますよ。しかしながら、そういう解散風をどなたかが吹かすがゆえに――慎重に審議しなければいけないものがこの内閣委員会にいっぱいあるわけですよ、そういうことから見まして、私は、閣僚の一員としてこれは解散風を吹かすような発言を慎んだ方がいいのではないか、かように思いますが、どうでしょう。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理大臣も解散はないと言っていますし、我々閣僚も総理大臣のその考えをそのとおりだと思っていますし、私も、何も解散はする必要はないじゃないか、名分のない解散はやるべきじゃない、こういうことを言っているわけであります。
  159. 日笠勝之

    ○日笠委員 そういうことで、衆議院というのは任期四年あるわけです。私もまだ一年生議員ですから二年三カ月少々、もうこの二年三カ月の間に何回地元に帰らなければいけないか。参議院みたいに六年間あれば、しっかり国民の御委託で勉強もできて、大臣にも鋭い質問もできるんじゃないかと思うのですけれども、そういうことでございますので、いわゆる落ちつかない。いつも解散が頭にある。内閣総理大臣の専権事項と言われることでございますけれども日本の現在置かれた立場、こういうものを考えれば、四年間負託を受けているわけですから、慎重にいろいろな法案を審議し、行政を督励して、いわゆる日本国のために頑張るというのが私たちの使命だと思うのです。そういう意味におきましては、私は、閣僚の一員として余り解散風を吹かすような不謹慎なことがないようにお願いしたい。記者会見で、もしそういう質問が出たらば、不謹慎と言われているからノーコメント、このくらいのつもりで慎重な審議を国会にお願いするという立場でいっていただきたい、かようにまずお願いを申し上げておきます。  こういう解散風が吹いておりますけれども外務省におかれましては、ここのところマルコス疑惑問題と称するもので暗雲が立ち込めておるわけでございます。藤田局長以下皆さん、連日の作業でもう大変お疲れだと思いますけれども、たまには明るいニュースも、暗雲を取り除くものとして、新年度予算も決まったわけでございますし、ぜひ発表していただきたいと思いますのは、大変好評でございます一日外務省とかミニ外務省、こういうものは今年度開催する予定はありますでしょうか。
  160. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 最近外務省が力を入れております問題として、国民とともに歩む外交ということで、「内政即外交、外交即内政」という大臣が常々言っておられます言葉のとおりに、我々のやっておりますことを国民によく理解していただく、そして国民の声をじかに聞いた上で外交にいそしむ、こういう体制を整える上で一日外務省、ミニ外務省をぜひことしもやっていきたいと思っております。  一日外務省は去年は二度開催いたしまして、大臣の出席及び局長クラス数名が同行しております。ミニ外務省は三度程度、課長数名が各地へ赴いてひざを交えて懇談する、地元の人と語り合うという姿勢でミニ外務省を進めております。
  161. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も三年六カ月外務大臣をやっておりまして、やはり外交が内政と深く重なり合っている、こういう時代に入っておる。やはり国民の中にも国際的な情勢に対する知識欲も非常に強くなっておりますし、いろいろと国際交流が地方にまで非常に関心を持たれてまた行われておる、こういうことで一日外務省、ミニ外務省等が大変地方でも評判がいいし、要請も強いし、積極的にやってきております。それなりの大きな成果を上げてきていると私は思うわけでございます。  ことしもいろいろと計画しておりますが、今また私が出ていきますと、おっしゃるように解散風をあおるとかいろいろそういうことを言われますから、ちょっと今少し控え目にしておるわけでございますが、落ちつけば大いにやりたいと思っております。そういうものを離れて本当にやらなければならぬ。  またミニ外務省、役所の連中がどんどん出ていくのもまた各県で非常に喜ばれておりますから、これはこれなりに積極的にやっていったらどうか、こういうふうに考えております。
  162. 日笠勝之

    ○日笠委員 ぜひひとつ、特にミニ外務省は、課長さんクラスが地方へ行きまして地方の行政ということを知ることもまた大きな勉強になりまして、将来の役に立つ、こういうふうに言われておるわけでございますから、積極的にひとつお願いをしたいと思います。  SDIについて若干触れておきたいと思います。  現在、第三次の調査団が三月二十九日から民間企業二十一社とともにアメリカヘ行っておるわけでございますが、これは外務省が実際のイニシアチブはとっているわけですね。中曽根総理は研究に理解を示す、こういうふうにきょうも本会議で御答弁をされておられました。そこで、何点かこのことをお聞きしたいわけでございます。  いわゆる参加のパターンは四種類あるわけです。一つは全く参加しない、オーストラリア方式ですね。それから反対にイギリス方式は、官民挙げて参加をする。西ドイツの場合は、科学技術協力協定を取り決めてその枠内での民間の参加。フランス、カナダは民間のみ。いろいろな四種類ぐらいパターンがあるようでございますが、日本がもし参加する、こうなると仮定をした場合、外務大臣はどのパターンが望ましいとお考えでしょうか。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、SDIについては、研究を理解するということですが、これに参加するかどうかということは非常に慎重に考えなければならぬ、慎重の上にも慎重に考えて、そして日本の自主的な判断で決めるべきであろうという考えを持っておりますし、そのために期限をつけてここまでで決めてしまうということは非常に危険なことであろう、その前に十分調査もしなければならぬし、政府の中で研究もしなければならぬ、それは時間がかかってもやむを得ない、こういう考えでございます。  そういう中で調査研究が進んできておりまして、今、第三次の調査団、これは民間の代表も含めて第三次の調査団が出て、アメリカで三班に分かれて相当綿密に調査をしております。何か新聞報道等によると理解が進んだというようなことを言っておるようでありますが、相当突っ込んだ調査をしておると思います。これが近く帰ってきますから、一次、二次、三次の調査を含め、さらに各国等のいろいろの、今お話しのような研究参加への態様がそれぞれ各国によって違っておりまして、そういうこと等も研究しておりますので、そういう問題の検討の結果等も踏まえて十分ここで論議を尽くしたい、こういうふうに考えておりますが、まだ研究については理解するという今の政府立場ですから、参加するとかしないとか、そういうことを今決めるということではありませんし、まだそういう段階に達しておりませんので、ここで参加の態様まで申し上げるという状況にはないわけであります。
  164. 日笠勝之

    ○日笠委員 いろいろなパターンがあるし、研究を今しておるわけでございますが、例えば三月十二日の参議院の予算委員会で中曽根総理は、いわゆるSDIの参加は、昭和四十四年五月の宇宙の平和利用に関する国会決議、これに反するかどうか、政府の態度を決めてから法制局に勉強してもらう、こういう答弁をされておりますね。そういうことから外務大臣、これは決めてから法制局に勉強してもらう、こういう順番でよろしいのでしょうか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは言葉の問題で、どういうふうに言われたのか私もよく覚えておりませんが、しかし、日本のそういう方向を決める、まだ参加すると決めているわけじゃないのですが、日本としての何か結論を出すという場合においては、いろいろと法的な問題、日本法律制度、そういうものを十分踏まえた上で結論を出さなければならぬ、これは当然のことでありまして、それを超えるというふうなことは今の段階でもちろん考えておるわけではありません。
  166. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、四十四年五月の宇宙の平和利用に関する国会決議案に外務大臣も賛同されたお一人だと思うのですが、SDIはこの決議に反しない、反する、どちらですか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国会の決議は、我々は国会議員でもありますし、政府としても尊重するということを申しておるわけですから、これは守っていかなければならない、こういうふうに思います。尊重しなければならぬと思います。ただ、SDIがこの決議とどういう関連になるかというのは、まさにこれから広範ないろいろの検討の中で勉強していく課題だろう、こういうふうに思います。
  168. 日笠勝之

    ○日笠委員 だれが見てもこれは宇宙の平和利用に反する、こう思うわけですけれども研究参加に態度を決める前には、ぜひこういう決議も最重要視してお考えいただかなければいけないだろう、かように思います。  それから非核三原則でございます。エックス線レーザー光線の場合は核爆発を利用するわけなんですけれども、これも非核三原則に違反しない、かようにお思いでしょうか。
  169. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 この点につきましては、既に累次国会で政府側から御答弁申し上げておるわけでございますけれども、非核三原則は、我が国が主体的に、我が国の領域内に核兵器を置かない、持たない、つくらないということでございまして、その非核三原則、それからSDI、仮に参加ということがありますればその参加を仮定いたしましてでございますけれども、それとは直接の関連はないというふうに考えておるわけでございます。
  170. 日笠勝之

    ○日笠委員 続いて、昨年の六月四日にこの委員会で、私は中曽根総理に、SDI参加の場合は国会の承認は要るのではないか、こう質問したら、要らない、不要なんだ、こういう答弁がございました。この手続論なんですけれども、第三次調査団が行って帰ってきて、いろいろと協議をされるわけでしょうけれども、例えば今は国防会議、七月からは安全保障会議にしようということらしいのですけれども、その国防会議に語るというふうな手続を踏むのか、または総合安全保障関係閣僚会議にかけて一応論議をするのか、最終的には閣議決定だと思うのですけれども、そういう手続はどういうふうにお考えですか。外務省がイニシアチブを持ってSDIを参加か不参加かを決めようかというのですから。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだその手続までも考えてないんですよ。何か結論を出すということになれば、これはその結論に従って、順序を経て手続は経なければならぬと思います。けれども、どういう手続を経なければならぬかということについては、まだそこまで検討を進めておりません。しかし、いずれにいたしましても、このSDIの参加問題についてはこれは政府の判断で、政府の決定によって決めるべきものであろう、こういうふうに考えております。
  172. 日笠勝之

    ○日笠委員 例えば条約とか、先ほどの西ドイツのように協定を結んだ場合、これは国会では全然承認も審議もしてもらわないということですか。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん条約あるいは協定という二国間の批准を要するということになれば、当然これは国会の承認がなければ効果は出ないということであります。
  174. 日笠勝之

    ○日笠委員 サミット前に決めるとか決めないというお話もございましたし、国民は、SDIを決めるのに、どういう手続で、どういう場を踏まえて最終的に政府は決定するんだろうか、こういうことに大変関心を持っておるわけでございますから、ひとつイニシアチブを握る外務大臣、その辺のところも既におさおさ怠りなく考えておかなければいけないんじゃないかと思いますので、また機会があればお聞かせ願いたいと思います。  それから北方領土問題でございますけれども、時間がありませんので二つほど聞きます。  一つは、先日ワインバーガー長官が来られまして、北方領土に核ミサイル、旧樺太、サハリンに原子砲がある、こういうふうな発言がありましたけれども、これについて外務省独自で確認をされておりましたか。
  175. 西山健彦

    ○西山政府委員 ワインバーガー国防長官が、四月五日でございますか、日本記者クラブでの講演で、お話しのような内容発言を行ったことは承知いたしております。  我々といたしましては、ソ連が北方領土に巡航ミサイルを配備しているという事実を確認しているわけではございません。ただ、一般的に、ソ連は自国の沿岸部に核または非核両用のミサイルを配備しているものと見られておりますので、こういうふうな事情に照らしてみれば、北方領土にさようなものが配備されている可能性はあり得るものではないかというふうに見ております。
  176. 日笠勝之

    ○日笠委員 具体的にサハリンに核りゅう弾砲、百五十二ミリ砲で射程距離三十キロ、いわゆる原子砲、こういうものがあるということが具体的に出ているのですけれども、これは別に百五十二ミリのりゅう弾砲であれば核、非核両方使えるからということで、確認はしてないということでしょうか。可能性はあるということだけですか。
  177. 西山健彦

    ○西山政府委員 我々が、我々の独自の調査なり何なりによってそれを確認しているということはございません。そういう可能性はあろうかと存じます。
  178. 日笠勝之

    ○日笠委員 こういう重大なことが、アメリカの国防長官の記者会見で初めて知るという外務省情報網というのは、一体どうなっているんだろうか。これから在勤法をやりますけれども、ある人に言わすと、外務省無用論、無能論、いろんなことがあります。七つの大罪とも言われております。こういう重大なことが外務省独自でつかめないような情報網であれば、これはまた大変心配でございますし、後ほどまたやりますけれども、いずれにいたしましても、こういう認識を我々も持っておかなければいけないということでございましょうが、今後日ソ外相定期会議があるやに、これも秋田の方で外務大臣は記者会見されて言っておりますけれども、その見通しはどうなんでしょうか。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 せっかくことしの一月に再開をして、そして共同声明にも、今度はモスクワで引き続いてやる、私が行くということを合意しておりますから、やはり約束は守りたい、こういうふうに思っております。いろいろと両国外相間で協議した問題もありますし、まだ協議したい問題もございますし、今ソ連政府に対しまして、両方が都合のいい時期ということで外交ルートを通じて訪ソの時期を煮詰めておる、話し合っておる、こういう段階でございます。まだ結論は出ておりません。
  180. 日笠勝之

    ○日笠委員 新聞報道ですと、もう五月下旬の線で準備を進めている、これでよろしいんでしょうか。
  181. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうことを私が言ったわけではございませんが、記者団等で、全体的に総合してその辺のところが日本としては都合がいいんじゃないか。ただ、これは相手のあることでございますから、ソ連政府との間でソ連の意向もいろいろと聞いてみなければならぬ、こういうふうに思います。
  182. 日笠勝之

    ○日笠委員 北方領土問題が最大懸案事項でございますが、外務省の六十年版の「わが外交の近況 外交青書」でございますね。これを見ますと、いわゆる「報道協力・広報活動の現状」という項目のところに、 「外国教科書・地図等の調査・是正」という項目がございまして、「外国教科書、百科事典、地図などを調査我が国につき誤った紹介をしているものの是正に努めている。」こういうところがございます。  実は昨年でございましたか、池袋のサンシャインで世界の教科書展というのがございました。どなたか行かれたですか、行かれませんでしたか。――行かれてないということでございますが、実はこれには世界各国の地理の地図がほとんど出ておりました。私、つまびらかに一つずつ見ました。そうしますと、タイとかブラジルは、北方領土は日本領に、地図ではっきり色がわかるわけです。ところがフランスとかアメリカ、西ドイツなんかは、教科書もいろいろあるからどの教科書かということでは今ちょっと発表できませんけれども、そこに出ていた教科書では、フランスとかアメリカ、西ドイツ、今度いわゆるサミットに来られるような国々の教科書に、これは日本領じゃない、こういうふうに地図の色分けでは出ておるわけですね。これにつきましてどのように在外公館等含めて外国の地図等のこの北方領土に関しての是正を粘り強く求めているか、お答えを願いたいと思います。
  183. 西山健彦

    ○西山政府委員 御指摘のとおり、北方領土に関します各国の地図上の扱いということは、我々の最大関心事の一つでございます。したがいまして外務省といたしましては、随時、在外公館を通じまして状況把握に努めております。  特にそれを最も総合的に行いましたのは、昭和五十四年の十二月でございますが、このときに世界各国の地図における記載ぶりについていわば総点検を行ったわけでございます。その調査結果に基づきまして、翌年、昭和五十五年の四月には、誤った記載のある地図についてはすべて訂正を行うようにとの申し入れをするよう指示いだした次第でございます。この在外交館に対します指示は以後ずっと生きているわけでございまして、そういう事例が生じますたびに、我が方の公館からは正しい記載にするようにという申し入れを行っているわけでございます。  しかしながら、先ほどお話もございましたように、各国の地図は必ずしも各国政府がつくっているわけでもないし、また、民間の出版社は何年に一度しか地図を改訂しないということもございます。それにまた、何を基準に地図をつくっているかということもございまして、事実上どこが占拠しているかということが基準である、そういうことから地図をつくっているところもあるわけでございまして、なかなか我々が申しておるような姿で改訂を進めていくというわけにはいかない事情もあるわけでございます。  しかしながら、このような努力の結果といたしまして、幾つかの国ではその後地図の記載ぶりが変わりました。特に米国では、今後は、一九四五年以来ソ連が占領しており、それを日本が返還を、領有権を主張しているという記載をはっきりと付記する、政府の刊行物でそうするということになりましたし、いわゆる地名辞書でもそれを採用するということになっておりますので、やがてこれが広く使われていくことを期待しているわけでございます。その他にも、例えばトルコあるいはインドネシアというような国が我が方の申し入れに賛成してくれているケースもございます。  以上が我々のやっております努力の概要でございます。
  184. 日笠勝之

    ○日笠委員 粘り強い対応をされているということは重々知っております。今後もひとつ、トルコの例のように粘り強い、在外公館一つの大きな使命でもあると思いますので、御努力を要請をしておきたいと思います。  それから、続いて国際救援隊でございますけれども、時間がありませんから一つだけ、要請を兼ねて、御答弁をお願いしたいと思います。  昨年、コロンビアのネバドデルルイス火山の噴火で大惨事がございました。日赤医療班の看護婦さん等も医療チームということで大変評価をされておるわけでございますが、その日赤医療班の看護婦さんの御意見にこういうのがございます。救援物資の医療品でございますが、箱の説明書は英語だ、ところがコロンビアはスペイン語だ、こういうことで、使い方がわからないから倉庫に積まれたままだ、こういうふうな証言がございます。せっかく救援物資を送ってくださるならば、その国の言葉の説明書があるいわゆる心のこもった援助、これはこれから言いますODAのこともそうでございますけれども、そういう配慮の必要があると思われますが、今後はいかがでしょうか。
  185. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま御指摘のとおり、昨年コロンビアに派遣いたしました緊急医療チームが、約二千万円相当の毛布、テント、発電機器、血清、抗生物質、注射器等々を携行いたしました。このうち医薬品につきましては、WHOの作成しております災害時用の基礎医薬品リストを参考にしながら、コロンビアの要請に基づきました品目を選定し供与したわけでございますが、これら医薬品は英語及び日本語で書かれたラベル及び説明書が付されたものでございましたので、行かれましたお医者様、看護婦さん等が、先方への手交に当たっていろいろ御説明を口頭でされたということがございました。一般的に、医薬品の場合には使用される方がお医者様でございますので、英語でかなりの程度は利用が可能というのが今までの状況でございましたけれども、今般の中南米の経験では、スペイン語地域というのでかなり特殊であるということで、スペイン語での説明書ないしラベルの必要性というものを痛感したということで、今後その方向で検討していきたいと考えております。  それから、先生御心配の英語であったために倉庫で積まれているということはちょっとございませんで、救援物資がわっと来たものでございますから一時的に倉庫に積まれたということはございましたけれども、十分有効に利用されたということでございますので、申し添えます。
  186. 日笠勝之

    ○日笠委員 わかりました。要はその国に応じた心のこもった説明書も今後は配慮する、こういうふうに理解してよろしいですね。  続きまして、先般我が党の竹入委員長が訪米をいたしましたが、シュルツ国務長官に対しまして会談のときに、国連憲章の敵国条項の削除への協力を要請したわけでございます。これは新聞、ニュースで外務大臣も既に御承知のことと思いますが、国務長官は非常に前向きの答弁をなされた。難しい問題であるとは思うのですけれども、もうほとんど死文化されておるわけでもございますし、このまま放置しておくというのも私どももどうも理解できません。そういうことで、今度外務大臣はアメリカヘ外遊されるわけでありますが、敵国条項につきまして何かアクションを起こそう、こういうようなお考えはございますか。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 竹入委員長がシュルツ長官にこの問題を提起されたということは私も承知しております。日本も今国連では第二の拠出国にもなっておりますし、国際連合の中で大きな役割をしておるわけで、あのときの敵国条項は条文としては国連憲章に残っておりますが、実際上は死文化しているという状況にある、こういうふうに思います。しかし、何分にしても明文として残っている以上は極めて残念なことでございます。日本もこれだけ国際的に貢献しておる、国連の有力な一員である以上は、これをやはり削除してもらいたいという気持ちは当然持っております。したがって、国連憲章の改正問題等起こってくるたびに、日本としてその削除についての要請、要求等もしておるわけでございますが、何分にもまだ反対の勢力もあります。これは安全保障理事会にかけて、そして総会では三分の二の多数がないと憲章の改正ができないという点もあるわけで、事実上は具体的には非常に難しい点があるわけでございます。しかし、これは我々としても今後とも削除を目指して努力は辛抱強く続けてまいりたい、こういうふうに思っております。  アメリカがそういうふうな理解を示しておるということは大変ありがたいことだと思います。おいおいそうした理解を世界的に広げていくという努力も日本としてしなければならぬ。私もそういう意味においては、常に頭の中に置きながら、各国の代表とも、外務大臣等とも折に触れてひとつ話をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  188. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、本題の在勤法の一部改正でございますが、今回はスペインのバルセロナに総領事館を置くということでございます。私ども「バルセロナ物語」というスペイン映画を見て非常に感銘を受けたわけでございますが、外務大臣も若かりしころ見られたのじゃないかと思いますけれども、相対立する二つのジプシーの家の間の恋の物語。ロミオ・アンド・ジュリエットの物語のスペイン版でありますけれども、そういうところに総領事館ができる、これは大変結構なことでございます。  在外公館全体のことでございますが、昨年も当委員会附帯決議が出ましたが、アッパーヴオルタの件でございましたけれども、そのときに何点か附帯決議で出た中でちょっとお聞きをしておきたいと思うのですけれども、いわゆる「在外公館事務所及び公邸の国有化を推進するとともに、在外職員宿舎の整備に努めること。」いわゆる事務所、公邸の国有化を推進する、こういう附帯決議を行いました。その後、この国有化についてはどのようになっておるか。私、いただいた推進状況の資料を見ますと、昭和五十八年からほとんど変わっておりませんですね、事務所も公邸も。これは今後どういうふうにしていくおつもりでしょうか。
  189. 北村汎

    北村(汎)政府委員 公邸及び事務所の国有化の問題でございますが、昭和六十年度末における国有化の数は、事務所が四十七、全体の二八%に当たりますが、それから公邸が百四で、これは全体の六二%に当たります。  今委員指摘のように、五十八年度以降国有化がふえたのは、事務所が一つ、それから公邸が一つということで、おっしゃるとおり国有化の推進がここのところ少しおくれておりますが、これは一つは、ワシントンの我が方の大使館事務所を今大いに拡大をしておりまして、そういうような大きな案件、あるいはサウジアラビアの公館をつくるとかそういうようなことで、財政事情が非常に厳しいときに国有化を進めるということになかなか困難がございましたけれども、しかし、私どもとしては、やはり在外公館というのは警備の点からいいましても秘密保持の点からいいましても国有化というものは必要でございますので、今後ともできるだけ国有化を推進してまいりたいというふうに考えております。
  190. 日笠勝之

    ○日笠委員 同時に、在外公館の大きな使命であります日本の文化、現状というもののPRがあると思いますね。特にこれは、具体的にロンドンにあります日本広報文化センター図書室、私は行ったことがないのですけれども、新聞報道によりますと、十畳ほどの部屋に六人分のいす、机、それに五段の書架が八つあるだけ。これが一般のイギリス人に開かれた日本紹介の窓口だというのですね。反対に、東京のブリティッシュカウンシル図書館は一万五千冊の図書、二百種類の雑誌、三百五十本のビデオ、千四百本のテープ、代表紙「タイムズ」のマイクロフィルム三十五年分。えらい違いがあるわけですね。  今の貿易摩擦も文化摩擦と言われておるわけでございますが、特にこういう点に力を入れなければいけないのじゃないかと思うのですね。いわゆる日本文化の紹介、現状の紹介、例えばこういう図書一つを見ましても大変貧弱など言った方がいいかと思うのですが、その辺の予算措置、今後どのようにお考えでしょうか。
  191. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 国際社会におきまして我が国が積極的な役割を果たしていく上で、我が国の真意と実情を外国に正しく理解してもらうことは極めて必要だと考えておりまして、この意味で我が国の海外広報活動、文化交流活動には今後とも一層力を入れていきたいと思っております。  諸外国と比べまして我が国の予算が必ずしも十分でないことは事実でございますけれども、これに関連いたしまして二、三の点を申し述べておきたいと思います。  まず第一に、確かに絶対額としては諸外国に若干のおくれをとっておりますけれども、伸び率においては近年相当高い伸び率を示しております。  第二に、最近民間の諸機関で海外広報及び文化交流を行うものが非常にふえておりまして、予算額の上からいってもこの面での民間の努力が非常に高く評価されるところでございます。外務省といたしましても、こういう民間の動きと我々の動きをうまく調整して最大限の効果を上げていきたいと思っております。  そして第三に、確かに予算的には不十分でありましても、我々が持っているハイテクの技術とか視聴覚の技術とかいうものを駆使いたしまして、最大限の効果を上げたいと思っております。ちなみに、六十年度から、パリにあります広報文化センターと東京とをオンラインで結びまして、パリの広報センターでボタン一つ押すと東京の情報がリアルタイムで出るという仕掛けも開始しております。
  192. 日笠勝之

    ○日笠委員 では次に、いわゆるフィリピンの円借款問題と称するものにつきまして御質問を続けたいと思います。  非常に細かいことで恐縮でございますけれども、いわゆる外国から国賓、公賓等が来られた場合、これは特に外務大臣なんか一番にお会いする立場にあるわけですけれども、儀礼的にも寄贈品というのでしょうかプレゼント、お土産ですね、こういうものが当然あると思うのです。こういうものはどのように掌握し、どのように処分されておられますか。
  193. 北村汎

    北村(汎)政府委員 外務省関係について申し上げますが、国賓等のお客様が参られて、そして外務省員に対して寄贈品がなされる場合、この場合は外交儀礼上受け取ることがやむを得ない場合が通常でございますが、しかし、その贈答品が常識的に考えて軽少なもの、余り高価なものでない、そういう場合はその省員が受け取るということでございますけれども、そういうもの以外、すなわち軽少なものでないような場合は、これは個人に対する贈答としては受領しないということにいたしまして、その場合は、外務省の中に官房課長などを中心とした審査委員会みたいなものを設けまして、そこで審査をしまして、そしてその結果、外務省の備品として、個人では受け取らない、これは受け取ることは外交儀礼上やむを得ないという場合受け取るけれども、これは外務省の備品とする、こういうような措置をとっております。
  194. 日笠勝之

    ○日笠委員 マルコス氏は大統領になられて二回ですか、イメルダ夫人は公式には七回来ておられますね。また、日本からもフィリピンに総理及び外務大臣もたびたび足を運んでおられます。そういうことから、今外務省の手持ちの資料の中で、マルコス、イメルダ夫人からの贈り物のリスト、どういうものがあるか、わかったら教えてください。
  195. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 今御指摘のように、マルコス大統領、それからイメルダ夫人が参りましたときに、今外務大臣に関してのみお答えさしていただきますけれども、民芸品等の記念品が数回贈られていることは事実でございます。常識的に見まして非常に軽少なものと判断されましたので、当該外務大臣がそれぞれ贈呈品としてこれを受領しております。  今そのリストを出せという御指摘でございますけれども、外交儀礼の問題もありますので、受領した寄贈品をリストとして提出するのは差し控えさしていただきたい、かように考えます。
  196. 日笠勝之

    ○日笠委員 そういうようになってくるとだんだん、儀礼的なものだから礼儀としてわかるのですが、アメリカなんか非常にオープンですね。レーガン夫人なんか百万か百二十万の毛皮をもらって、ちゃんとそれをホワイトハウスにとっておる。きちんとした受付簿もある。宮内庁も何か明治十八年から外国人献品一覧というのをずっととっているそうですね。内閣官房に聞きましたら、内閣官房は何もないそうです。  こういう細かいことですけれども、私はいろいろなものが来ると思います。マルコス、イメルダ夫人が一九七七年に来られたときにはメダルと貝製の灰皿ですか、それから一九八〇年に来られたときにはガイドブックと造花の鉢ですね。一九八五年に来られたときには貝細工と葉巻ですか。これは確かに儀礼的民芸品ですからそれぞれ処分していいと思いますが、こういうものしか来なかったかなというような気もするのです。これだけ円借款で、プロジェクトで大変応援をしてあげているのに、葉巻だとか貝の灰皿だとか貝細工ぐらいで、もっと高価なものが来ているのじゃないかなという気がするのですけれども大臣、これで間違いないですか。
  197. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、外務大臣になりまして随分いろいろと贈答がありますね。儀礼的な面が随分大きいわけでありまして、外国のお客さんからも随分もらっておるわけですが、これは外務省は非常にきちっとしておりまして、委員会で調べてこれは非常に軽少なものだということになれば私が持って帰ることになるわけですけれども、メダルとか貝細工なんかそうです。葉巻なんというのは外務省に置いてお客さんに出すとか、そんなことです。しかし、ある程度の値打ちのものをもらうこともあります。それは外務省で取り上げて、外務省においでになれはわかると思いますが、応接室等へずっと飾っております。これは櫻内さんのときにだれからもらったとか、園田さんのときにだれからもらったとか、そういうので飾っておりまして、その辺は非常にきちょうめんにしております。何も、円借を随分やっておるからといって大層なものをもらっているわけでは決してございません。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 日笠勝之

    ○日笠委員 このお土産問題というのは、ひとつきちっと公的立場として、寄贈品受付簿だとかこういうものはやはりするべきだ。内閣官房、総理の方には、官邸の方にはないそうですから、安倍外務大臣が将来総理になられたときにはきちっと今の経験を生かされてやるように、ひとつお願いしたいと思います。細かい話で恐縮でございました。  続きまして、このフィリピンの円借款プロジェクトの受注企業、その金額、こういうものは一応内政干渉といいますかフィリピン政府のことを考えて発表しない、公表しない、こういう立場は今でも変わらないのですか。
  199. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 変わりません。
  200. 日笠勝之

    ○日笠委員 それにしてはそういう敷居が非常に高いわけで、いわゆるODA研究会の「ODAの効果的・効率的実施についての報告書」、これを見ましても非常にわかりやすく書いていますよ。援助の積極的な推進に対する国民の理解と支持を得るためにも大きな重要性をODAは有しておる、しかしながら国民の理解と支持がなければだめだということですね。そこをかたくなに、政府は発表しない、こういうふうにおっしゃるわけですね。今は外務省のお考えですが、きょうは通産省、経企庁、OECF来られていますが、それぞれどうでしょうか。皆さんの立場も、これは統一見解か何か出ているといううわさでございますけれども、まず経企庁はどうですか、発表は。
  201. 小川修司

    小川説明員 ただいま外務省から答弁をいたしましたのと同じでございまして、相手国政府の行為でございますので政府として発表する立場にないということでございます。
  202. 日笠勝之

    ○日笠委員 では順番に大蔵省、通産省。
  203. 三浦正顕

    三浦説明員 御説明いたします。  ただいま外務省及び経済企画庁から御答弁のあったとおりでございます。
  204. 高島章

    ○高島説明員 ただいま御答弁のありました二省一庁と全く同じでございます。
  205. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、きょうは参考人で青木副総裁にお出ましいただいておりますが、OECFは政府じゃないわけですね、きょうは参考人で来られているように。OECFではどうですか、この受注企業と金額について公表するお考えは。
  206. 青木慎三

    ○青木参考人 政府考えと全く同一でございます。
  207. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、ますます四省庁一基金が足並みをそろえて公表しない、こういうことですね。では、公表しないならこちらから聞きますからそれが合っているかどうか、イエスかノーかお答えいただければと思うのですね。  まず、我が党がフィリピン調査団を送りまして手に入れてきました資料であります。これはまだ分析中でございますけれども、一応新聞報道はされましたね、上位十社の受注金額。これはもう新聞報道されているから御承知と思いますが、一番がトーヨー・コーポレーション三百十五億九千三百万余り、二番目が酒井重工業百十五億五千五百万余り等々ずっと続いてきますね。まずトーヨー・コーポレーション、酒井重工業の金額だけは合っているのですか合ってないのですか、藤田局長
  208. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 何ゆえに政府で公表できないかというのはよく御存じだと思いますけれども契約の当事者でないということでございますので、そういう立場から私どもとして発言する立場にないということでございます。したがいまして、ただいま御質問契約企業、それから受注金額等につきましても公に確認するという立場にはないということでございます。
  209. 日笠勝之

    ○日笠委員 では局長、受注企業と金額は外務省としてはつかんでいるわけですね。
  210. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 落札者、それから契約者は、契約の際に海外経済協力基金に契約の承認を求めるわけでございますので、日本政府としては承知しております。
  211. 日笠勝之

    ○日笠委員 金額はどうですか。
  212. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 同様でございます。
  213. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、公表しない、公表しないと言いながら、実はきょうはサンデー毎日、週刊誌にはっと出ておりますね、極秘資料というので。一番に買いました。持っておられるでしょう。委員長、ゼロックスしてきましたので今ちょっとお渡しいただけませんか。まだ読んでおりませんとかまだ見てませんと逃げられたらいけませんので。お手元にございますね。  では、それが本当かどうか、一つ二つ聞きましょう。まず第五次借款昭和五十一年六月、プロジェクト借款百八十三億とありますでしょう。カガヤン農業総合開発、工期が五十三年十二月から六十年十二月までで所要資金が百十六億四百万円、基金の承認額は六十一億六千万円、金利が三・二五%で期間が七年据え置きの二十五年払い。  これはどういう事業内容であるかというと、カガヤン州の三地域にポンプ場三カ所、用水路九百三十キロメートル、排水路四百十四キロメートル、道路七百五十九キロメートル、配電網七十キロを建設。コンサルタント企業は三祐コンサルタンツで、日本側の関連企業は太平オーバーシーズ、東陽通商ほか。まず、これはこのとおりなのかこのとおりでないのか、これだけ。
  214. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 第五次の円借款で、カガヤン農業総合開発計画に対しまして六十一億六千万円を限度といたします円借款を供与いたしております。条件はこのとおりでございます。それから総所要資金、(ロ)でございますね。これはフィリピン側の負担をいたします資金まで入っておりますので、ちょっと資料を確認してみなければわかりません。それからプロジェクトの概要でございますけれども、ここに書いてありますとおりの概要でございます。それから企業名及びコンサル名は、先ほど来お答え申し上げているように公の場で確認する立場にはございませんということでございます。
  215. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると受注金額はいい。今発表されましたね、基金承認金額ですけれども企業名はだめだ。こういうふうなことでいいんですか。局長、もう一遍。金額はいいけれども受注企業についてはだめなんだ、こういうことですか。両方ともだめだということですか。
  216. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ここに記載しておりますのは、六十一億六千万円というのは交換公文に記載しております最高限度額でございますが、これは公表いたしております。受注金額というのは企業名同様公表いたしておりません。
  217. 日笠勝之

    ○日笠委員 そういうふうに非常に敷居が高い、高いからいろいろな新聞社なりマスコミの皆さんが必死でいろいろ探されるわけですね。四月一日には朝日新聞にも「これが日本の受注企業」、第五次借款以降、どっと出ておりますね。これは受注金額が出ておりませんね。限度額だけです。それから第二弾は同じく朝日ジャーナルが出しておりますね。こういうふうに、マスコミの皆さんは一生懸命、政府の敷居が高いから何とか――先ほど申し上げましたように国民の理解と支持がなければこのODAの経済援助はだめなわけなんです。ガラス張りでいくというところが大事なわけですね。そういう意味では、向こうの方からも協力しましょうかというふうに言われているわけですね、フィリピンの方からも。協力要請くらいしますか。向こう側が発表してもいいというような話も出ておりますね。いろいろな方がいろいろな人とお会いして新聞報道で入ってきている情報でございますけれども、こちらからまず要請をするのかどうか、要請しなくても向こうの許可を得て発表するかどうか、どうでしょうか。
  218. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 委員指摘のとおり、いろいろ報道機関の方等が取材をされまして報道されているということは承知しております。しかしながら、政府が発表すると申しますのは一つ法律的な意味のある行為でございますので、それなりに十分に詰めた立場に立って考えなければならないことかと存じます。そういう点から政府としては公表する立場にないということを申し上げております。  それから、フィリピン側が公表しているものであればもちろんそれをお伝えするということは可能でございます。フィリピン側に対して求めるかということでございますけれどもフィリピン側に対して政府のベースで何らかの要望をする場合には、何ゆえにそういう要請をするのかという根拠、何のために使うかという目的等をきちんと詰めました上で何らかの行動をとるというのが適当かと存じておりますので、現在のところそのような行動をとることは考えておりません。
  219. 日笠勝之

    ○日笠委員 国政調査権の絡みからでもだめですかね。国会でこれだけ大きな問題になっている、特別委員会もつくられるのだ。そういうことで外務大臣、どんなですかね。フィリピンに公表してもいいかどうか要請をするということですね。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題は、局長が答弁をいたしましたようにフィリピン政府も公表してないわけですから、フィリピン政府自身の問題を日本政府が先んじて公表するということはできないというのが我が方の立場です。
  221. 日笠勝之

    ○日笠委員 これはもう一つ資料が行っていますね。これは八二年度版と八六年度版の「経済・技術協力便覧」ですね、情報企画研究所から出ております。これは全体のフレームはわかりません。五十三年―五十六年と、それから五十八年から六十年までの個別の細切れしかわかりません。というのは大分探したのです。国会図書館へも行きました。でも途中がないのですね。八二年度、八六年度しかないのです。国会図書館にもないのです。そういうことで細切れでございますけれども、せめてこの二つの便覧から一覧表をつくっています。各商社別のフィリピンの円借款の一覧表でございます。これは政府刊行物センターに五千五百円で売っているのです。こういうのをつなぎ合わせていくと、この円借款の受注企業、金額も出てくるかと思うのですね。  まず、情報企画研究所で出しております「経済・技術協力便覧」、これにつきましてこの内容を掌握しているかどうか。全然知りませんでしたか、今までこういう便覧が出ていることは。
  222. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 同出版物は先般参議院の予算委員会でも御提示がございまして、政府刊行物センターで売られているということでございました。私どもも調べてみましたところ、民間の研究機関であるというふうに承知しております。この出版物に限らず、同種のいろいろ企業名等取材されて刊行されておられる出版物は、ほかにもあるというふうに承知しております。
  223. 日笠勝之

    ○日笠委員 いずれにしましても、それぞれがいろんな独自の入手ルートで一生懸命調べて、何とか国民の皆さんの前にガラス張りの経済援助を示していこう、こういう中にあって、かたくなに受注企業名と金額を公表しない、このことについては本当に遺憾だと思いますね。  先ほどフィリピン政府協力するかどうかということでございますが、公明党の調査団が行きましたね。極秘資料と称するものは確かに持って帰っているようでございます。特別委員会でやるということでまだ我々は見せてもらっておりませんけれども、相当詳しい内容だそうでございますね。これは政府高官からもらったそうですよ。向こうで新聞記事を集めたとか民間人からもらってきたんじゃなくて、政府高官、皆さん方がよく知っている方からいただいたばっちりとした資料だそうですね。そういうふうなことを考えれば、向こうに要請さえすれば発表してもいいんじゃないかと思うのですが、これでもだめですか。
  224. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 公明党の調査団がそのような資料を入手されたということは伺っておりますが、その資料はフィリピン国内でまだ公表されたものではないというふうに承知しております。
  225. 日笠勝之

    ○日笠委員 それは公表されていないから極秘資料なんです。  いずれにいたしましても、先ほどから具体的に一つ一つ聞きましたけれども、プロジェクトの内容は合っておる、上限の金額も合っておる、しかし企業と受注額は公表できない、こういうお立場をずっととっておるわけでございます。  それでは、事情聴取でございます。各省庁ばらばらに今までお聞きしておったそうでございますが、今回足並みをそろえて四省庁合同でやる、こういうふれ込みでございますけれども、いつからどういうふうにどういう内容でやるおつもりなのか。これは外務省が中心になってやられるでしょうから、藤田局長でしょうね。
  226. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 いろいろ報道されておりますが、まず最初に、俗称マルコス文書と言われておりますアメリカで発表されたものの精査、検討関係四省庁で行いまして、その結果に基づきまして、四省庁でばらばらに関係の方々のお話を伺うのもその関係者の方に御迷惑と思われますし、やはり四省が力を合わせて、かつ、極めて能率的にお話を伺うのがよろしいかと存じまして、先週末、今週に入りましてからも、四省庁で、どのような方々からどのような形でお話を伺うかというのを今詰めている状況でございまして、できるだけ早くお話を伺う作業を始めたいと思っております。まだ伺っておりません。
  227. 日笠勝之

    ○日笠委員 これについてはマスコミ等に公表する、どういうふうなところにどういうことを聞いたか、結果はどうだったかを発表する用意はあるのでしょうか。
  228. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 その点も含めまして今検討しております。
  229. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、いわゆる援助をした後の評価の問題ですね。  まず会計検査院、きょうは来ていただいておりますけれども、五十三年、五十五年と二回フィリピンに行かれて検査をした、こういうふうに言われておりますが、何人で行かれて、また行かれた方はどういう部門の専門家であって、何を現実に検査してきたのか、これをお答えいただけますか。
  230. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  昭和五十三年度、五十五年度、両年度におきますフィリピンに対します援助効果の調査につきましては、東南アジア諸国におきます在外公館等の実地検査、それから当該各国に対します海外援助実施状況現地で確認するための調査の一環といたしまして、両年度とも、それぞれ検査に堪能な者二名で二日間にわたって実施いたしております。  現地調査に当たりましては、援助の効果が発現されているかどうか、こういったような観点から、援助に係ります事業が計画どおり実施されているか、それから完成した施設等が有効に活用されているか、こういった点について調査いたしました。その結果、検査報告に掲記して指摘するような問題は見当たりませんでした。
  231. 日笠勝之

    ○日笠委員 どことどこを検査されましたか。バターンの輸出加工区だとか人づくりセンターだとか、いろいろ問題点を後で述べますけれども、どことどこを検査されたのですか。当然、全部じゃないでしょう。
  232. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 まず、五十三年度におきましては、マニラ地区洪水制御排水事業ほか三カ所の検査を実施いたしました。それから五十五年度につきましては、バターン輸出加工区ほか一カ所の検査を実施いたしております。
  233. 日笠勝之

    ○日笠委員 何人で行かれたと言いましたかね。五十三年は何名、五十五年は何名。
  234. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 五十三年度、五十五年度、ともに二名でございます。
  235. 日笠勝之

    ○日笠委員 二名で、これは一回の滞在日数が四、五日だと聞いていますが、五十三年が三カ所、五十五年が二カ所ですか、よほどの専門家でないと、これだけの検査をするというのは非常に難しいのじゃないかと思うのですけれども、これは工事の専門家に聞きますと、まず図面があって、建築資材の単価、数量、こういうものがわかれば、大体幾らぐらいでできておるかというのはわかるのだそうですね。百億でできているか八十億でできているか、その一割五分とか二割というのはわかるのだそうですよ。もちろん長期にわたる工事ですから、追加工事だとか、砂のつもりが岩盤だったとかはあるでしょうけれども、そういういわゆる専門家が行かれたんでしょうか。先ほど専門家が行ったと言われましたね。工事のそういう手抜きもわかるぐらいの専門家の方が行かれたのでしょうか。滞在日数は今言ったように何日だったのですか。
  236. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 人員は先ほど申し上げましたようにそれぞれ二名でございまして、こういった現地調査につきましては二日間ずつ実施いたしております。検査に従事いたしました者はいずれも相当年数、検査の経験を積んでいる者でございます。
  237. 日笠勝之

    ○日笠委員 OECFの会計検査、これはやっておられるのですか。
  238. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 実施いたしております。
  239. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、今回のいろいろな疑惑が云々されているわけですけれども、会計検査院とすれば、OECF、在外公館等々の協力も得たりして、このフィリピン問題については何らかのアクションを起こそう、何らかの方向で疑惑解明していく一助となるような資料をつくろう、こういうようなお考えはあるのでしょうか。
  240. 疋田周朗

    ○疋田会計検査院説明員 今回の問題につきましては、私ども会計検査院といたしましても深い関心を持っておりまして、先般も官房あるいは局間の応援体制を整備いたしまして、海外援助に対する検査スタッフの充実強化を図ったところでございます。このスタッフを十二分に活用いたしまして、フィリピンに対する援助見直し検査を行っていくつもりでございますが、そのために現在、手持ち資料の整理再検討あるいは各種情報収集解析、検査手法の考究など、こういったことに努めているところでございます。
  241. 日笠勝之

    ○日笠委員 続いて副総裁にお伺いしますが、マニラに駐在員さんが何名いらっしゃって、どういう専門家の方でございますか。
  242. 青木慎三

    ○青木参考人 マニラには現在二名が駐在員として駐在しておりまして、専門といいますか、基金の仕事の経験のあるものが二人駐在しております。
  243. 日笠勝之

    ○日笠委員 それは基金の経験ということなので、具体的な工事の中身までわかる人ではないわけですね。
  244. 青木慎三

    ○青木参考人 特に技術的な知識を持っておる者ではございません。一般の事務に通暁しておる者ということでございます。
  245. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうしますと、次はいわゆる評価の問題ですね。  外務省の方も、経済協力評価委員会で報告書をつくっておられます。去年の三月で三回目ですね。それから通産省は、五十七年に「経済協力効果研究」というのを出されていますね。それから会計検査院さんは、会計検査院さんの立場でまた行かれておられますね。あとは、外務省はJICA、経企庁はOECF、通産省はアジア経済研究所、こういうように各省庁それぞれ評価についてはやっておられるようですけれども、この評価について外務大臣、どうですか。――何か四時五十分に退席されるそうですから、最後に外務大臣にお聞きしておきますが、四省庁、またOECF含めてばらばらで評価をしておるわけですね。先ほど委員会委員の方もおっしゃったように、第三者を入れて評価、これについてはがっちりやっていく、国民の皆さんの理解を得るためにもやっていかなければいけないことだと思いますが、今後、経済援助評価についてリーダーシップをとっていかれるのは外務省だと思いますけれども、どのような方向で取り組むお考えか、最後にお聞きしておきたいと思います。
  246. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 評価というのは非常に大事だと思います。こういう問題が起こっただけに、ますますその重要性を我々も強く認識をしております。  評価につきましては、これまでも外務省独自でやっている面もありますし、それは各省庁協力してやっている評価もあるわけですが、これはさらに今後の課題として、学識経験者というような方も入ってもらって、第三者も入ってもらって評価の適正化を期するということで、今フィリピンに対しても対応しようということで、例えば前会計検査院長等もお迎えをして評価を行っていただいておるということでございます。  今後とも、援助を的確に効率的に行う上においても、この評価の体制というのは充実をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  247. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、どうぞ外務大臣、御退席して結構です。  続いて経企庁の方にお聞きをしたいと思いますが、経企庁とすれば、海外経済協力基金法第三十四条によりまして報告及び検査ができるようになっております。これは「経済企画庁長官は、必要があると認めるときは、基金に対して報告をさせ、」云々ということでございますが、今回のこのフィリピンの円借款の問題で、経企庁とすれば、この三十四条の適用でOECFに報告を求めたり検査をするというふうなことはお考えなんでしょうか。
  248. 小川修司

    小川説明員 経済企画庁の海外経済協力基金に対する権限についてはただいま先生御指摘のとおりでございまして、三十四条に基づいてそういう権限を有しております。こういう権限を背景といたしまして、全く日常的な業務として、基金に対して報告を求め、また必要に応じてはこちらから出向いていっていろいろ話を聞いたりということはいたしておりまして、今回の件につきましても、基金に対しては必要な調査その他を行うように命じてある次第でございます。
  249. 日笠勝之

    ○日笠委員 ほかの委員会で、今回の円借款の問題は、同じく海外経済協力基金法二十条、二十一条違反の疑いがあるというふうな話が出ましたでしょう。その認識には変わりないのですか。
  250. 小川修司

    小川説明員 海外経済協力基金は、開発事業に対して資金を貸し付けするということでございまして、今回の世上いろいろ問題にされておりますような、仮にその資金が事業の目的外に使われていたというようなことがありますれば、法二十条違反でございます。
  251. 日笠勝之

    ○日笠委員 続きまして、交換公文の件でございます。  これは昭和六十年十二月二十三日のフィリピンとの円借款に関する交換公文でございますが、交換公文は国会の承認を得よというふうなことも他の委員会で言われておりますけれども、国会の承認は必要ないということでございます。どういう根拠に基づいて国会の承認は必要ないとおっしゃるのですか。
  252. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 これは、国会で御承認を得ました予算の範囲内において行政府として行っている事務という認識から、交換公文ということで閣議の御決定を得て、先方政府との間で、言うなれば行政取り決めのカテゴリーに属するかと思いますが、そういう形で行っている次第でございます。
  253. 日笠勝之

    ○日笠委員 この交換公文の中に一項目、「義務違反がある場合は協議を提起できる。」という条文があります。過去、義務違反だということで協議を提起したことがあるのでしょうか。交換公文の適正使用条項、これを発動したことがあるのでしょうか。
  254. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 御覧間がもし、適正使用条項の違反等に関連して相手国との間で協議をしたことがあるかということでございますならば、これは相手国との協議の内容に関しますもので、特別な理由がない限りは公表することは差し控えるのが適当かと存じます。
  255. 日笠勝之

    ○日笠委員 いや、内容はいいのです。今までこういうふうな協議をされたことがあるかどうか。どこの国とは言いません。別にフィリピンでなくてもいい。全体的にです。
  256. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 協議自体は、ほとんどの援助国との間で常時行っております。その際に、適正使用条項違反ということで正面からやったことがあるかどうかという御覧間でございますけれども、それに対しては、お答えするのはちょっと適当でないのじゃないかという気がいたしますが。
  257. 日笠勝之

    ○日笠委員 ちょっと冷たいですね。要は今回のような問題が、風説でございますが仄聞するところによりますと、インドネシアににも過去にはあったし、あるのではないか。韓国も過去にあったような疑いも云々されておるわけでございます。そういうことで、交換公文にこういう一項目を入れましてチェックできるような方式はどうか、これが一つ。  それから、アメリカ、世銀等はチェック方式を非常に厳重にやっておるということでございますが、それを受けて、日本にもこういう方式を取り入れて、交換公文に一項目、適正使用条項をもっと厳しく明確に記入する、入れる、こういう方向は考えられないのでしょうか。
  258. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 この適正使用条項自体、国会での御質疑等を経まして、たしか五十七年だったと思いますけれども、五十七年度ごろから挿入することにいたしました。現在におきましても、新しく交換公文を締結する国の中には「適正に使用すること」という言葉に対して極めて強い反発を示しまして、両国間の協力であって、適正に使用することの義務を一方的に負うということには承服できない、そういうことであるなら交換公文を結ばないというようなことを言って、反発する国もあるというのが現在の状況でございます。ほとんどの国との間では、この条文の意味をるる説明して入っておりますけれども、適正使用ということについても、極めて両国間の平等の関係に反するという反発をする空気が、開発途上国の中にはかなりあるということだけ御説明のために申し上げたいと思います。  それからアメリカの例でございますが、アメリカは確かに非常に特異な形をとっておりまして、唯一の援助国であった時代が長かったということとアメリカの独得の考え方というのがございまして、交換公文上に特記して「検査する」という法制をとっておりますけれども、ほかの先進国援助国はそういう方式をとっていない。我が国もほかの国と同様の立場で、援助に対しては両国間の平等の立場での協力であるという哲学を立場として、交換公文上の表現等にも具現しているということが御説明になるかと存じます。
  259. 日笠勝之

    ○日笠委員 ODA研究会の報告によりますと、十四省庁にわたっている援助予算を一本化することは屋上屋を架することである、一元化は望まないような報告です。しかしながら、「我が国独自の援助基本政策を確立していくことが望まれる。」と明確にあるわけですけれども、これは基本法をつくれという示唆ではないかと思うのですが、そういうふうにとらえていいものでしょうか。
  260. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 基本法につきましては、先ほど外務大臣からの御答弁もございましたが、いわゆる基本法と申しますのにもいろいろカテゴリーがございまして、委員御高承のとおり、アメリカのように予算、いわゆる毎年の予算案が対外援助法という名前になっている国から、ほかのヨーロッパの国ではむしろ我が国で申します各省設置法、基金法のごときものを援助法と呼んでいる国、それから免税措置等を決めている国と、いろいろございます。したがいまして、一概に基本法の問題というのは論ぜられないと思いますが、政府としての基本法についての考え方は、先ほど外務大臣が御説明したとおりだと思います。  ODA実施効率化研究会の御提言の中にございますただいま委員指摘の文言は、基本法のことをおっしゃったものではない、むしろ基本理念をはっきりさせたらどうだということであったと配慮しております。
  261. 日笠勝之

    ○日笠委員 最後に、いわゆる円借款を行った、いずれは返していただく日本人の血税でございますが、これは断片的な資料をまとめますとこうなってしまうのですけれども、サロンガ委員長は、リベート分は差し引いて返済したい、こういうふうに言っているという報道もあります。それからアキノ大統領も、我が党の調査団には、今後の返済については緩和をしてもらいたい、このような発言もございました。それから同じくサロンガ委員長は、一〇%から一五%のコミッションは法に反する、これはキックバック、違法リベートだと思う、その分差し引いてもらう、こういうふうな、断片的なニュースをまとめるとこうなるのですけれども、具体的にフィリピンの国は内政的に、財政的に返済が非常に難しくなっておりますね。向こうはリベート分をはっきりさして差し引いて返させてくれ。こういうふうなことは、交換公文が一応あるのですけれども、可能なんですかね。また、緩和してくれと言われたら、それについて応ずるのですか。
  262. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 リベート分を差し引いて云云という報道がございましたので、私どもも早速フィリピン政府にその真意を照会いたしましたところ、フィリピン政府としては、当然のことながら前政権の債務は継承する、確実に継承するのがフィリピン政府の公式の態度であるという御返事でございましたので、私どもも当然そうあるべきものだと思っていたので、それを再確認されたということでございます。  それから第二点の、債務の返済について緩和をというアキノ大統領の御発言を引用なさいましたが、フィリピンは、委員も御高承のとおり現在経済的に非常に苦しい状況にございますので、関係国が国際的な協調のもとで債務の繰り延べ措置をとっております。恐らくはアキノ新大統領も、そのような繰り延べ措置、これが現在のものが本年の六月末までを一応対象にしておりますので、そのことを念頭に置かれての御発言ではないかと推察いたしております。
  263. 日笠勝之

    ○日笠委員 これは「援助途上国ニッポン」という本の中に出てくる一節でありますが、「政府開発援助のカネは機密費みたいなもんだ。どの国へいくらと国会できめるわけじゃなし、どう使われているか国民にはほとんど知らされていない。おまけに、もっと増やせ、増やせだ。政治資金というタマゴを産むニワトリとしては、とびきり上等だよ」、自民党のある閣僚経験者が言っている。これは本に出ていることです。  こういうふうなことで、今非常に疑惑を持って見られているわけなんですね。そういう意味でひとつ大臣も、もう退席されましたけれども、このフィリピン援助を含めてODAの経済援助というものにつきましては、もう国民の理解と支持がなければできないことであります。そういう意味で、全力を挙げて究明をしていくという立場は、これは大臣いなくなったから局長に、最後にその決意と、それから、きょうせっかく来ていただいております副総裁にも、OECFとして、当事者として、非常に人数も少ない、予算も少ない、赤字問題も抱えて大変だと思うのですけれども、こういう疑惑を招かないように、その当事者としての御決意をお聞きして、終わりたいと思います。
  264. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私どもも、現場で経済協力をやっております者といたしまして、まさに委員がおっしゃいましたように、国民の理解と御支援がなければ果たしていけない経済協力について、いささかでも疑惑と申しますか不安感を生じさせるような状況にあるというのは、非常に心外かつ残念なことだと思っております。第一線で、フィリピンでも現在四百名の日本人が僻地で、山村で苦労してやっておりますが、恐らく彼らも同様の心情かと思います。したがいまして、大臣からも先ほど御説明申し上げましたように、私どもとしても全力を挙げて、そのような不満と申しますか疑惑等が起こらないように努力をいたしたいと思います。
  265. 青木慎三

    ○青木参考人 私どもも、現実に実務に携わっている者といたしまして、今回のようなことができましたことは極めて残念に思っております。私どもの手続の中からこれを完全に防止するということは非常に難しいと思いますけれども、いろいろ研究いたしまして、できるだけの改善が図れるものなら図ってまいりたいというように考えております。
  266. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  267. 志賀節

    志賀委員長 次回は、来る十日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時六分散会