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矢山委員 今いろいろ御
説明がありましたが、恐らく、今度の
地方自治法の改正案をもとにしながらいろいろお話しになったのだろうと思うのです。しかし、現行
制度から比べるとこれは極めて簡略化されておるのです。現行
制度というのは、
地方自治体の長の自主独立性を尊重する上に立って、国の指揮監督権との調和を図るということで、その判断権を司法に任せて、そしてその判断に基づいてやろうという、極めて慎重な体制をとっておったわけですよ。
ところが
見直しの中で、
行革審の
答申それ自体だけを見ると、かなり大幅に改正されたわけです。そして、裁判に訴える場合というのが今度の改正案でも一部出ております。しかしながら、その裁判に訴えたのが果たして実効性があるかどうかということについては、あの条文を解釈していくとほとんど実効性はありません。これは骨抜きです。その点を私は意識しておったから言っているわけですけれども、この
議論は
地方自治法の改正の場でやるべき
議論でありますから、そのことはこれ以上言いませんが、そういう認識です。
そして、職務執行命令訴訟
制度というものが現行法により非常に弱められてきて、ほとんど私は意味をなさぬと思いますが、そういう
制度に改善をされて、一方では
地方六
団体の
意見書の
提出も認めない。これはやはり
中央省庁の独善じゃないかというふうに私は思うのです。
罷免
制度については、これは
自治体の長というのは公選で出てきたのですから、これを罷免するというのはそもそも問題なので、これが改められたことは当然のことであります。
それから、
地方議会や監査
委員の権限がある程度拡大されてまいりましたが、これも、
機関委任事務について、
事務は
委任しておいて金は全部は出さない。一部出して
地方自治体に負担をかけておいて、そして
地方自治体が実際に仕事をやる。こうなっているわけですから、その問題について、
地方の住民に
関係のある
委任事務であるだけに、その執行がどうかこうかということを監査する。議会が関与する、これは私は当たり前のことだろうと思います。
これ以上踏み込みませんけれども、今度の改正というのは、
地方自治の立場からいうと重大な自治権の侵害という要素を含んでおるというふうに私は考えておるということを最後に申し上げておきまして、次に移りたいと思います。
地方制度調査会というのは、御
案内のように最近はやりの私的懇談会などじゃございません。
地方制度調査会法という
法律によって設置をされました八条
機関であります。そこに正式に
諮問して
答申を受けておきながら、結局
政府は
地方六
団体の
意見提案権を無視してしまった。まさに、都合の悪いところは取り上げない、そして都合のいいところは取り上げよう、こういう
考え方がどうも露骨に出ておると思います。こういう姿勢というものは改めていただかなければならぬというふうに私は思います。
そして、もう
一つ申し上げたいのですが、
地方自治体に対する職務執行命令を裁判所の判断にゆだねておるのは、たびたび言っておりますように、
地方自治体の長本来の自主独立性を尊重し、国民の民主的な運営を保障するための
制度であります。ところが、六十年七月二十二日の
行革審の
答申は、国と
地方自治体が対立した場合に、司法権による判断を排除し、国に一方的な執行の権限を与えようとするものであって、
地方公共
団体の自主性を否定し、憲法の精神にも反するものであります。
行革審答申が言うように
地方自治体が
機関委任事務を執行しないことが起こるとしても、先ほどお話しになっておりますように、それは過去の例を見ればわかりますように、軍事基地拡張のための土地収用の手続とか、あるいは自衛官の募集の
事務とか、外国人登録のための指紋押捺といった、憲法上疑義のある
行政事務を国が
自治体にやらせようとすることから起こるのであります。つまり根本の問題というのは、そのような憲法の精神に反する
行政をやっておる国の姿勢にあるのでありまして、それを
自治体に強制するために国の権限を強めようなどというのは、まさに本末転倒の
考え方です。
そもそも、
地方自治というものは憲法で保障されたものでありますから、それについて何の権限もない
行革審などが口をはさむというのは、重大な越権行為だと私は思う。また
政府も、
行革審を隠れみのにして、戦後日本の民主政治の
基本を否定、清算するような
法律改正はやるべきではない。このことを私は強く要求をいたしておきまして、この問題に対する質疑は終わらしていただきたいと思います。