○奥山
政府委員 日米間の電気通信をめぐる経済摩擦につきましては、去る一月十日の共同声明にもありましたとおり、提起されたすべての問題が成功裏に解決を見たということで、
日米双方とも満足すべき結論を得たわけでございます。しかしながら、ただいま
先生御
指摘のとおり、依然として米国議会を中心に
日米の貿易摩擦をめぐるいわゆる保護主義法案が上程されていることも事実でございます。これに対しましては前回にも御
指摘があったところでございますが、
日本政府として手をこまねいているわけではございませんで、あらゆる方途を通じてその対策を実施しております。
一つは、米国の議会要人あるいは
政府要人が来日された等の機会をとらえまして、
大臣以下我々あらゆる機会に電気通信における理解を深めることをやっております。また、電気通信
分野における
日本の開放の状況をパンフレットにいたしまして、在日の大公使館初め議会
関係筋、
政府関係者等にも広く配布をいたしておりますし、昨年十二月にジェトロのミッションに参加して開放の現状をPRいたしました。さらに先月にも、ジャパンウイークというものがサクラメントで行われました際、
郵政省の職員を派遣してシンポジウムにも参加したりしております。
こういうあらゆる可能な手段をとっているつもりでございますが、対日貿易赤字が五百億ドルに上るということで、議会筋の意向は依然として完全にほぐれてはおりません。いわゆるダンフォース法案が昨年九月に上院で可決されました後、むしろ上院におきましては、ことしの一月以降電気通信の保護主義法案の審議は一切行われておりません。ただ、逆に下院の方が動きが活発でございまして、昨年十一月にエネルギー・商業
委員会で可決されましたワース・フロリオ法案と歳入
委員会に出されておりましたマツイ法案を一本化することで、歳入
委員会の貿易小
委員会がことしに入って取り上げたところでございまして、つい先般、その
二つの法案を一本化して、修正した上で可決しております。
一つの
委員会で可決したものをまた別の
委員会が取り上げるというのは、私
どもには非常に理解できないのですが、
アメリカの下院ではそのような動きが出ております。
ただ、その過程で注目されますのは、
日本政府の努力が多少実りつつあるのではないかなという兆しがほの見えるところでございまして、去る三月二十日にヤイター通商代表が公聴会で謹言した際にも、このまま電気通信保護主義法案が可決されるならば、
政府としては、大統領としては拒否権を行使せざるを得ないというようなことを明確に申しておりますし、また、先月来日いたしましたスマート商務次官や私あるいは電気通信
局長も一緒に会談したわけですが、その際、
日本の電気通信市場は完全に開放されたので、むしろこれからはカナダ、西ドイツ、フランス等を標的にしていきたいというようなことも言っております。あるいはまた、電気通信保護主義法案がこれまで米国議会で最大の懸案事項として取り上げられていたわけですが、今後、イースターサンデー明けの来週あたりからは、電気通信
分野をも織り込んだ包括的通商法案に一本化していきたいという動きも出ておりますので、もっと幅広い通商法案の形で一本化されあるいは修正されていくような状況も出ております。
いずれにいたしましても、こういった一連の動きは、昨年以来
日本政府がとってまいりました努力が若干でも実りつつあるのではないかなというふうに思っております。しかしながら、予断を許さない状況であることはもちろんでございますし、油断ができませんので、今後ともあらゆる機会、あらゆる手段を通じて、米国議会の動きがおさまるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。