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1986-04-07 第104回国会 衆議院 大蔵委員会内閣委員会地方行政委員会文教委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月七日(月曜日)     午前十時一分開講 出席委員  大蔵委員会   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 上田 卓三君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       越智 伊平君    大島 理森君       自見庄三郎君    高鳥  修君       山中 貞則君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    沢田  広君       戸田 菊雄君    中村 正男君       堀  昌雄君    柴田  弘君       正森 成二君    簑輪 幸代君  内閣委員会   委員長 志賀  節君    理事 戸塚 進也君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       塩川正十郎君    二階 俊博君       井上 一成君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    柴田 睦夫君  地方行政委員会   委員長 福島 譲二君    理事 小澤  潔君 理事 西田  司君    理事 加藤 万吉君 理事 安田 修三君    理事 宮地 正介君       宇野 宗佑君    臼井日出男君       小川 省吾君    山下八洲夫君       小谷 輝二君  文教委員会    理事 臼井日出男君 理事 佐藤 徳雄君       天野 光晴君    田川 誠一君       二階 俊博君    中西 績介君  社会労働委員会   委員長 山崎  拓君    理事 稲垣 実男君 理事 村山 富市君       愛知 和男君    自見庄三郎君       西山敬次郎君    伊藤 昌弘君       浦井  洋君    小沢 和秋君       阿部 昭吾君  農林水産委員会   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 串原 義直君       片岡 清一君    鈴木 宗男君       島田 琢郎君    竹内  猛君       津川 武一君  運輸委員会    理事 鹿野 道彦君 理事 清水  勇君       柿澤 弘治君    近岡理一郎君       梅田  勝君    辻  第一君  建設委員会   委員長 瓦   力君    理事 谷  洋一君 理事 平沼 赳夫君       池田 行彦君    山花 貞夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大蔵大臣    竹下  登君         文部大臣    海部 俊樹君         厚生大臣    今井  勇君         農林水産大臣  羽田  孜君         建設大臣    江藤 隆美君         自治大臣    小沢 一郎君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         警察庁刑事局長 仁平 圀雄君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      入江 敏行君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局次         長       足立 和基君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁調査査察         部長      日向  隆君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文部省体育局長 古村 澄一君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省社会局長 小島 弘仲君         厚生児童家庭         局長      坂本 龍彦君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         食糧庁長官   石川  弘君         通商産業大臣官         房総務審議官  鎌田 吉郎君         総称産業大臣官         房審議官    松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省航空局長 山田 隆英君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 牧野  徹君         建設省道路局長 萩原  浩君         自治大臣官房審         議官      持永 堯民君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      石川 健一君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君         文教委員会調査         室長      高木 高明君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君         建設委員会調査         室長      佐藤 毅三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の補助金等臨時特例等に関する法律案内閣提出第四号)      ――――◇―――――
  2. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより大蔵委員会内閣委員会地方行政委員会文教委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出、国の補助金等臨時特例等に関する法律案議題といたします。  本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承願います。  これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  3. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ただいま議題となりました国の補助金等臨時特例等に関する法律案略称補助率一律削減案でありますが、この審議の前提といたしまして、昨年も、補助率の確定が出ないために、箇所づけを初め対象とされない事業等についての延期問題が大変議論になりました。先般新聞報道によりますと、建設省では四日、予算案の成立と同時に、箇所づけ配分についてそれぞれ内示を行ったという報道がなされております。新聞報道では全体の三八・一%ということであります。  これに対する建設大臣の御答弁も聞きたいのですが、時間の関係がありますので、昨年この問題に対する政府統一見解が出されました。そこでその内容と、六十一年度についても同様に執行についての変わりがないのかどうか。これは昨年の例に倣いまして、大蔵大臣にひとつ御答弁をいただきたい、こう思います。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 昨年度の補助金法案に係ります国会の御審議の経緯と現下の諸情勢を勘案いたしまして、昨年度講じました措置と同様の措置を講ずることとさせていただきたい。今例示としておっしゃいました補助率引き下げ対象外につきましては、四月末から担当各省において箇所別内示を行ったものは事業実施額で計約二兆六百億円、こういうことでございました。ことしは、今金額は建設省の分は大体先生おっしゃったとおりでございますが、昨年と同様のことをやらせていただきたいということに尽きます。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 建設大臣、何か御答弁ありますか。よろしいですか。
  6. 江藤隆美

    江藤国務大臣 建設省にかかわります配分対象額総額六兆九百億でございまして、その中の二兆三千百九十八億だけ、すなわち補助金調整対象外事業だけを今回実は箇所づけで発表させていただいた。それは、四日に予算が通りましたから、五日にやらせていただきました。ちなみに昨年は四月二十六日でございまして、それからいたしますとことしは二十日ほど作業が早く進んだ、こういうことが言えると思います。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)委員 わかりました。六十一年度も昨年と同様な処置を講ずるということを改めて確認しておきたいというふうに思います。  さて、最初に総理に御質問いたしますが、今回の法改正で問われている問題は、単に補助率引き下げ、いわば福祉教育環境整備のそれぞれの後退という課題だけではありませんで、それ自身も大変重要な問題ですが、この法律案の中に占められている問題は、戦後、シャウプ勧告以来曲がりなりにも国と地方財政秩序というものが今日まで維持をされてまいりましたけれども、この財政秩序の根幹にかかわる問題がこの内容に実は含まれているというように私は理解をするのであります。  交付税の問題あるいは固有財源等の問題については後ほど論議をしたいというふうに思いますが、財源的な裏づけをきちっとした中で地方自治というものが今日まで守られてきましたし、多少の凹凸はあったにしても、いわば車の両輪のような形で国全体の経済的な効果、そういうものを実は求めてきたのでありますが、今回の改正法案負担率の変更は、国の財政赤字の中から実は生まれている、しかもそれは地方団体にはいわば責任のないところで財源不足額を国から地方負担転嫁をするという、極めて重要な内容であります。今までこのような処置は実はなかったのであります。地方財源不足、いわば地方財政需要額の積み上げの中から財源不足額が出まして、それに対する措置というものはございましたけれども、国の財政再建責任地方団体負担転嫁をさせる、こういう問題は今回この法案が初めてであります。もちろん昨年、六十年度もありましたけれども、これはいわば一年限りの暫定ということで、それぞれの考え方、受けとめ方があったわけでありますが、去年に引き続いて今度は三年ということになりますと、相当長期な地方と国との財政構造の変化、こう見なければなりません。  さらに加えて、今回の財源不足額を充足する、補てんする措置として、たばこの消費税の導入という問題が急速とられてまいりました。こういうこの法案に絡まる内容は、いわば従来の地方と国との財政秩序というものが基本的に破綻をするないしは抜本的な改革を行う、そういう内容がどうも秘められていると私は理解をするのであります。  さて、この論議は後で個別の問題を含めて議論をさせていただきますが、総理地方交付税というのがございます。この地方交付税性格について総理はどういう御認識をお持ちでしょうか、まず総理に御質問申し上げます。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回、国と地方との関係におきまして、補助率問題等地方にいろいろ御迷惑をおかけし、また御協力もいただきまして大変恐縮に存じておる次第でございます。  国と地方とは国民の繁栄を目的にして共通の公務を分担し合っているわけでございますが、法律の認める範囲内におきましてお互い協力し合う、そういうことが将来とも必要であると思います。地方が困っているときは国の方で面倒を見させていただく、国が困っているときは地方の方で面倒を見させていただく、ある時間的な経過を経て、そうしてバランスがとれるようにお互い協力し合うということが国民福祉に沿うゆえんではないかと思いまして、その点で甘えさせていただいた点もあるのでございます。  交付税の問題につきましては、これは法律で明定されている税率というものがございまして、政府が恣意的に国会協力、御賛成なくして変更できるものではございません。そういう意味におきまして、いわば地方固有財源として受け取っていいのではないかと私は考えております。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣も同様でしょうか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 いつもの御議論でございますが、この交付税は、その総額国税三税の三二%と法律によってきちんと決められているものであるという性格からいたしまして、国税三税の一定割合法律により地方公共団体に帰属する、いわば地方の権利のある財源であるという意味において地方固有財源であると言って差し支えなし、こう考えております。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今、総理大蔵大臣も、地方固有財源だと。私ども改めて地方交付税の問題をここで論議をいたします最大のゆえんは、実は地方交付税現実の問題として地方団体固有財源なのか、大変大きな疑問を持たざるを得ないのであります。固有財源でありますから、多少財政上の指導はあったにしても、これに対して国が条件をつけたりあるいは使途制限をするなどということは一切禁止をされている、こう私ども理解をしますし、従来の政府側答弁もそういう内容でありました。  どうでしょうか、五十年代の地方交付税に対する内容を検討してみますと、五十九年度末で地方債の残高は約四十一兆一千億円であります。このうちで財源対策債が六兆九千億円、減収補てん債が約一兆円、そのほか財政対策債がありますが、これらを含めますと八兆一千億円です。いわば地方団体起債として求めた四十一兆円のうちの二〇%は国の政策からくる地方起債額であります。昭和五十一年度でありますと、この起債額比率は八・一%でありました。五十九年度では減収補てん債を加えますと、一般単独事業債の二五・七%の次に一九・七%、すなわち二〇%。これは、減収補てん債にいたしましてもあるいは財源対策債にいたしましても、いずれも地方財源不足に対する措置としてとられたものであります。いわば地方交付税といいながら、固有の財産といいながら、国の公共投資あるいは国の財政計画全体の中でこれだけの額を地方団体負担転嫁をする、こういう状況が生まれたのであります。  大蔵大臣、この二〇%に近い公債負担比率の問題、どうお考えでございましょうか。固有財源というものに対する政府介入、介在、こう私は理解をいたしますが、いかがでしょうか。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 数多くあります、地方団体財源調整のため国が地方に交付する使途制限のない一般財源であり、そして先ほど申し上げましたような性格を持っておるものである。で、これが法定されておる率があります。したがって、毎年毎年の、大蔵省サイドから申しますならばマクロ地方財政計画地財計画に影響のないことだけは、まあ出口ベースではきちんとしていかなければならぬ。その際とられたもろもろ財源対策というものが、今まさに加藤さん御指摘なすったもろもろの事象であろうというふうに考えております。したがって、毎年毎年の予算編成に当たってのいわば財政調整措置であるというふうに御理解をいただきたいと考えております。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)委員 財政調整措置といいながら、現実には二割、いわばその地方財源不足額に対する起債の発行で埋めているわけですよ。しかも、いずれもが交付税の算入という措置でしょう。いわば交付税独自財源といいながら、実は交付税に算入することによって事実上の拘束を受けるんじゃないですか。私は、財政調整措置としてこの問題をとらえるには、余りにも地方財政に対する硬直化の比重が高い、こう言わざるを得ないのです。今、結果はどうですか。地方団体公債費負担比率が大変高くなっています。自治省がいろいろ指導をしておりますけれども公債費負担比率が一五%以上になった場合、すなわち地方団体財政計画のうちの、いわば予算のうちの一五%以上に公債費がなったときには警戒ラインだ、こう言われているのですね。今、五十九年度末で、府県団体で二十二、その比率は四六・八%ですよ。市町村ですと千九百五十六団体、六〇%、約六割が歳出の部分のうちの公債費比率が一五%。二〇%台になりますと警戒信号より赤信号、こう言われているのですが、府県団体で六団体地方団体で千二十七団体地方に参りますと三一・六%、約三二%ですね。三割以上が公債費にいわゆる借金を返済せざるを得ない。そういう予算措置を講ぜざるを得ないということは、交付税に対する財源対策債減収補てん債を算入するといった結果としてこの状況があらわれたわけでしょう。もう調整じゃないですよ。国の政策上、例えば公共事業事業費の拡大をしなさい、裏負担はこうします、財源不足が出ます、それに対しては起債で充当しなさい、それは常に交付税で見ましょう。この結果がこういう状況じゃないですか。いわば交付税の持つ本来独自の財源固有財源、あるいは国の政策上の介入その他条件等を一切禁止をするという交付税法上規定されている条件とは全く異なる現象が生まれているんじゃないですか。この財政硬直化について、大蔵大臣どうお考えですか。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 いつも申し上げておりますように、使途制限のない一般財源である。それを、合併を一つしましたから三千三百一でございますか、の市町村へ、これは自治省あるいは都道府県等を通じてそれぞれ交付される場合の一つ基準が存在し、その基準の中にいわば起債償還等をカウントしていただく。マクロベースで見ますと、私どもはその中に基準として入れることによって、なお、それぞれマクロで見ました場合に使途制限のない一般財源としての性格維持をしておる。しかし、個々の町村に渡った場合、私も若干仄聞する程度の立場にございますが、かなり硬直化要因をもたらしておるところもあるであろう。それが今加藤さんの示されたそれぞれの数字であろうと私も思っております。  いずれにせよ、車の両輪たる国と地方とのそれぞれの果たすべき役割というようなものを、毎年毎年この予算編成に当たって、あるいは費用負担のあり方あるいは仕事の分野調整等において、両方が行財政改革ということを念頭に置きながら対応していって御協力をいただいておるというのが偽らざる私どもの心境であります。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そういう地方財源不足、これは本来国が負担すべきものですね、交付税法六条をお読みになるまでもなく。しかし、五十三年度に、そういう財源不足が大変長く続きますから、またそういう見通しがありましたから、法に基づく制度上の改正を行いました。そして、本来は率を引き上げて財源不足額全額国負担をする、そういう方向をとるべきだという主張を私どもはしたのですが、御案内のように、二分の一を国が負担をするという、その結果としてこれだけのいわば公債費負担比率を高めた、私はそう思うのです。  さてそこで、一体交付税法上、著しく地方財源積立額交付税額との差が生じたときには、制度上の改正あるいは税率改正を行うという法の六条の三の二項、「著しく」という理解大臣はどう思いますか、どういう条件を指して「著しく」と理解されますか、大蔵大臣
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、昨年もこのことについてお答えをいたしたわけでございますが、おっしゃるとおり、第六条において「引き続き」「著しく異なることとなった場合」とは、地方財政対策を講ずる前において地方財源過不足額普通交付税総額のおおむね一割程度以上になる状態が二年連続し、三年目以降も続くものと見込まれる状況をいうものというふうに定義づけをいたさせていただいております。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そうですね。一割以上交付税総額の額よりも上回る、しかも二年以上といいますから、三年目あたりはそのめど。そういう中で、五十三年度に制度上の改正を行って二分の一の国庫負担が生まれたわけです。しかし、今お話をしましたように、その改正によっても、なお今言ったような地方団体大変財政硬直化をもたらしておるのですね。  大蔵大臣は、よく当委員会でもことわざを引き出してあるいは私どもになじみの深い言葉お話をされるのですが、国は握りきんたまだから、こうおっしゃいましたね、あるいはこれでチョンだとか。私はその言葉にとらわれるわけじゃありませんけれども交付税の中に財政需要額をどんどん算入してまいりました。ちょうどカエルのおしりに麦わら棒を突っ込んだような形なんですね。交付税で算入します、その結果カエルのおなかが破裂寸前にある、私はそんな気持ちでいるのですよ。よく田舎でやりますね。  五十九年度に、この二分の一負担ないしは財源不足額特会借り入れるという措置をおやめになりました。当分の間この会計閉鎖するという条文改正を行いましたが、五十九年度にこの特別会計閉鎖を行ったその理由は何でしょう。
  18. 持永堯民

    持永政府委員 ただいま御指摘のように、従来は財源不足の一部を特金借り入れで賄っておりまして、いわゆる二分の一負担ルールがあったわけでございますが、これが余りかさみますと、利子負担を初めとして将来の特会での償還負担が大変なことになるということで、これをいわば財政の長期的な健全化という観点から、借り入れという措置廃止をいたしまして、それにかえまして、毎年度の交付税総額特例措置を設けていこうというような法律条文に書きかえをいたしたような次第でございます。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、今の特会廃止は、今自治省から答弁がありましたように、当面借り入れ措置をなるべくやめて、そして特例措置加算でその財源不足額措置しよう、同時に、六十年度を展望しまして地方財政上のバランスがとれる、したがって、五十九年度以降は特別会計廃止をしても、先ほど私は二つの問題の指摘をしたわけですが、交付税率制度改正を行わないでも地方財政は大体バランスがとれる、さらに、それに対する二分の一の措置は国も必要がなくなってきた、こういう背景があったのですね。そして、仮にその不足額が出てもその額はわずかだろうから、したがって特例措置加算でこれを措置する、そういう中で閉鎖になったのです。  さて、六十年度はどうなったでしょう。六十年度は、地方財政バランスはつじつまが合ったのです、とれたのです。ところが御案内のように、六十年度は五千八百億円の国の政策から来る財源不足額が生まれたのですよ。私はここでも議論させていただきましたけれども、六十年度一年限りだというお話でした。なお、補助金その他の見直しは、これから関係各省間で検討委員会をつくって、そこで検討するというお話でございました。  出た結論はどういうことですか。六十一年度その補助率のカットの幅は広くなりましたけれども内容的に補助金の全体の制度というか、そういうものの見直しをしようという内容一つも出ていないじゃないですか。結果的には、今度は六十一年度一兆一千七百億円の財源不足、そうですね。地方団体にしてみれば、六十年度は五千八百億円、しかも単年度だから何とかしのいでいこう、こういう気持ちだったろうと思うのですね。ふたをあけてみたら、何のことはない、六十一年度から向こう三年間一兆一千七百億円の財政負担転嫁。これは三年で済むのですかね。  総理がおっしゃっている財政再建計画からいけば、毎年度一兆三千億円ずつ赤字国債を減らさなければいかぬのでしょう。これだけ減らしても今年度、六十一年度は七千三百四十億円ですよ。昭和六十五年度に赤字国債の脱却をするには、とてもじゃないけれどもこれではお金は足りませんね。したがって、昭和六十一年から向こう三年間という暫定期間も、今の見通していけば、さらに延長どころか内容的には拡大をせざるを得ない、そういう状況下にあるんじゃないですか。  いま一つ、私はこの際申し上げておきたいのですが、実は大変重要なことが含まれているのです。先ほど当初にちょっと申し上げましたけれども財政秩序の変化ですよ。今までは、地方団体財政需要額で、その積み上げた額の不足額を国と地方で二分の一ずつ負担をしましょう、特別交付税会計からは国が借り入れてそれを払いましょう、あとの二分の一は地方団体が持ってください、起債の発行で。今度はどうですか。今度は、地方団体財政需要額が不足をして積み立てたんじゃないのでしょう。国の補助率引き下げによって地方団体が赤字になったんだ。国の補助率を今度どんどん引き下げてまいりますれば、地方団体がいかなる努力をしてもこれは財源不足額が生まれるのですね。今までシャウプ勧告以来あったというのも、私はここで申し上げたいのですけれども地方団体と国とは車の両輪だ、総理は、地方が困ったときは国が助けます、国が困ったときは地方が助けます、こうおっしゃいました。しかし、これはもうそこを飛び越えているのじゃないですか。私は去年、六十年度の削減が起きたときにはこう言ったのです。車の両輪論ではなくして、今やエンジン部門が前輪についている、後輪部門の地方自治団体はこれに引きずられている。ところが、今度のこの補助金削減の法案はそれからさらに次元を変えたところで、すなわち国と地方の支配、被支配の関係財源的な問題を裏づけにして変わってきた。全く異質な財源不足類、同時に財政秩序も異質なものに変えようとされているのじゃないですか。  最初に、この新しい財政構造の違いといいましょうか、私は異質だと思うのですが、そういう方向をこれからもとられようとしているのかどうか、これはひとつ総理にお聞きしましょうか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の措置は、三年という期間を区切りましてこういう特例措置を講じたわけでございます。これは今までも、お互いが困ったときは助け合うということでお願いしてまいりましたが、今回は、これらの補助金問題の検討委員会の議を経まして、皆さんのいろいろなお考えもお聞きした上で、やむを得ずこういう措置をとった次第でございます。  では四年以降はどういうことになるかということになりますが、このときは、やはり国及び地方財源状況あるいはそのほか諸般の情勢を勘案してお互いで相談し合う、そういうことになると思いますが、いずれにせよ、地方財政に対して迷惑をおかけしないように国としてもいろいろおもんぱかりをした措置をやるべきことであろう、そう考えております。     〔小泉委員長退席、福島委員長着席〕
  21. 加藤万吉

    加藤(万)委員 総理の御答弁ですから信用しないなどという言葉は少し越権だと思いますけれども、六十年度の補助率の切り下げの際にも、この問題は一年限りです、さらに補助金検討委員会等を設けて検討します、この結果がこれなんですよ、昭和六十一年度なんです。向こう三年間ですから、三年後にはさらに検討を加えます、検討の内容は、先ほど申し上げましたように一兆一千七百億円ではもう財政再建ができません、したがって六十五年度、六十六年度以降赤字国債の発行をゼロにするためにはより切り込まなければならぬという結論が出るのじゃないですか。  大蔵大臣、私はこれは大変な実は従来の財政秩序との違いだと思いますよ。地方団体は事情の変化がのみ込めないのですよ。なぜおれのところはバランスシートをとったにもかかわらず、しかもそのバランスシートの中には三割以上の従来の起債額を、いわば財政硬直化と言われる三割以上も借金の返済を織り込みながら、ようやく六十年度から地方団体自身の財政再建やその展望を見出そう、そういう状況に対して、六十一年度から国の財源不足額が覆いかぶさざるを得ない、かぶさってきたわけですね。一体どこまで行くのだろうか。六十一年度の一兆一千七百億円、向こう三年間、こう言っています。後で自治大臣にお聞きしますけれども、基本的な変更を加えないという大蔵大臣自治大臣、覚書を結ばれましたけれども、この基本的な変更をどうお考えなんですか。いわば今までの両輪論や、国が困ったときは、地方が困ったときはという話じゃないのですよ。交付税の中で三割、起債額を充当したことも、私はややもすればそれは前輪駆動型じゃないか、こう言ったのですけれども、今度は国の財政再建のために地方はこうしなさいという、いわば支配と被支配の関係ですよ。  しかも、後で議論しますが、そのほとんどが交付税の算入でしょう。交付税の算入だけならまだしも、二分の一については将来国が返しますとはいえ、なおその後に覚書条項では、この問題についてもさらにその年度でまた考えましょう。後で二分の一負担するかどうかわからないでしょう、昭和六十六年度から。この覚書で見る限りわからないですよ、確定がどうか、法律条項になっていないわけですから。私はその議論は後でしますけれども。  いずれにしましても、地方団体はこういう事情の変化がのみ込めないのです。全くあれよあれよと言っている状況ですよ。六十年度はまあ地方団体も、国が苦しいんだから、少し手の方へ傷つけられたが、足の方へ傷つけられたが我慢しなければならぬ。今度、この六十一年度から向こう三年間さらに将来的な展望がわからないということになれば、地方団体は支配と被支配の上下関係、いわば地方自治というものに対する息の根をとめようという処置じゃないですか。私は、この基本的な財政構造の変化、秩序の変化に対して政府側もこれからはそうするんですよというなら、その建前じゃなくて本音を言ってもらいたいと思うのです。地方団体はまさに右往左往していますよ。一体どこまで切り込まれてくるのか、政策目標が立たないですね。去年は五千八百億、今度は一兆一千七百億円。おれのところでは、交付税の方に借金で相当払わなければならぬけれども、それは六十年度限りだから、六十一年度からは保有財源その他を含めてこういう自主的な政策を遂行しようと思っても、さて六十一年度とういう見通しになるのかわからない、六十四年度以降についてはなお皆目見当がつかない、こうなってきますと政策目標が立たないですね。  大蔵大臣、どうなんでしょうか。総理は先ほど、三年以降については改めて検討、こういうことですが、財政秩序に大きな変化があった、こう見るべきですか。本音をちょっと言ってもらいたいと思うのです。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる大変な変化があって、二年一割以上が続き、三年以後もそういう傾向にあるという断定をする――ことしはもちろん確かに一割を超しておりますが、将来の地財の、地方税のあるべき姿とかいろいろな見通しを考えてみまして、ことしと同じような形のものが不足するという状態にはならぬであろうという期待感を私は持っております。  しかし、いずれにせよこの年々の地財計画を決める際には、出口ベースではきちんとしたことを決めなければならぬということはしっかり守っていこうということでございますので、今加藤さんのお話を聞いておると地方財政、国の財政もそうでございますが、ある種の中長期的展望の中にあって毎年のいろいろな問題、政策選択をやっていく、それが確かに今日、中長期的な見通しというのが従来とは違って見通しにくくなっておることは事実であると思っております。しかし、それは国の財政、といいましてもいわゆる国家予算という意味だけではなく国、地方を通じての行政のあるべき姿というのを、やはり全体としての見直しもしなければいかぬ時期ではなかろうかという感じを私も持ちながら、毎日そういう考えを持ちながら過ごしておるというのが私の偽らざる実感でございます。だから、確かに中長期的な展望というものが今の財源の将来の見通しを考えた場合に非常に見通しにくくなっておるというのは、私もそれを否定するものではございません。
  23. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今の大臣答弁、大変重要なことですね。将来的な見通し等を見ると、今の地方と国との財源配分のあり方を含め全体の見直しをしなければならぬという、これは大変なことですよ。大蔵大臣、将来の見通し、今年度は確かに私の言っているとおりだけれども、将来はどうなるかわかりません、まあここ二、三年の間は、こういうお話ですが、昭和六十二年度、たばこ消費税をお続けになるのですか。ないとすれば二千四百億円ありませんよ、地方何体は。交付税がそれだけ多くなりますか。  さらに私は、六十一年度予算でも多少検討させていただきました。例えば昭和六十年度法人会社が赤字の場合に、昭和六十一年度にその赤字は繰り越してはならないという法律改正がありました。これによって昭和六十一年度国税で法人税が二千六百億円増加をするという予算案であります。平年度から差し引けば、昭和六十一年度分は法人税の赤字繰り入れ禁止措置でこのぐらいふえるのかなと思っていた額が大体二千億です、これは推定ですから。仮にそれの三二%といいますと、これが交付税です、六百億円ちょっとですね。さらに今度は地方団体は、法人制税のそれぞれが県税あるいは市町村税に入ってまいります。昭和六十年度に赤字の企業が、円高あるいは今日の状況から見て昭和六十二年度はそれをとめたことによって二千六百億円法人税がふえますか。主としてこれは中小企業でしょう。もちろん大企業も含まれている部面を否定はしませんよ。主として中小企業と見ていいでしょう。ないじゃないですか。  そうすると昭和六十二年度は、少なくとも地方財政の税収の面では、たばこの消費税が抜けただけでも二千四百億円の自前のお金、いわゆる現ナマはなしですよ。交付税はそれだけ削減されますよ。六十二年度、仮に一兆一千七百億円またそのまま転嫁された、これは私ふえると思いますね、対象がふえるのですから。生活保護費にしたって児童援護費にしたってふえるのですから、間違いなく一割以上になるでしょう。そうして先ほど交付税のところで私言いました、二年以上引き続いて一〇%以上地方税が減収の場合には税率改正制度改正をやる、こうなっておるのですよ。昭和六十三年、見通しはどうですか。六十二年度までは、少なくともそこまでは見通しができますよ。六十三年度、交付税が大幅に上がりますか。  今、政府側では税調を通して税制の改革の検討をされておる。そして昭和六十二年度までには減税をしたい、こう言っていらっしゃいますね。所得税減税をやる、法人税減税をやる。六十三年度、交付税の基礎になるべきその部分が減収になったときに、一方大衆消費税をやるならこれは別ですよ。交付税の基礎になるのは所得税、酒税そして法人税ですから、この面を減税するという方向をとったときに、どうですか、交付税はふえますか。ふえませんよ。地方財政需要額は一〇%を超えます。三年連続の赤字ですよ。制度改正をやられますか、税率改正をおやりになりますか、どうでしょう。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに御審議いただいておる六十一年度問題は御指摘のとおりのことであります。  それで私どもも、今度の予算編成に際して実際問題財源対策として一番苦労いたしましたのは、いわゆる昨年赤字法人の直近一年間のものを今年度黒字法人に対して繰越控除するという、これは言ってみれば単年度の財源措置に結果としてはなるわけです。それでなお、ぎりぎりやってどうしても足りなくなって、これは手続上の問題を私は十分承知しながらやったのがたばこでございます。  そうすると、来年仮にそれがなくなった場合にどうなるか。もとより税収がどうなっていくかということ、弾性値は地方税の方が国税よりは幾らか高いかもしらぬ、しかしそれは気持ち程度のものでございましょう。そういうことを考えてみると、ただ、たばこの問題というのは、これも税調で将来の問題をどう議論されるかまだ未知数でございますけれども、そういうことが六十二年度の予算のときには生じてくるなという気持ちは私も問題意識としては十分持っております。そこで税制調査会で今御議論いただいておる。そうすると、今のところ出てまいります中間的な考え方というのは、いわゆるひずみ、ゆがみ、痛みはどこにあるかというようなところから出していただいて、後半において秋までに総合的な抜本答申をちょうだいできる。そういう中でいわば地方税と国税というような問題がどう位置づけられていくのかなということは、今にわかに判断するわけにはまいりません。  単純に私ども議論いたしました。法人税あるいは所得税の減税をやるとすれば、それだけ元親が少なくなるから、そうすると交付税率を上げなければいかぬという論理になるじゃないか、いや税源配分が別途に行われるということもあるいは議論になるかもしらぬ。いずれにせよそういう問題を含めてやはり税調でこの問題はやっていただいて、初めて六十二年度の地方財政計画の中身になります地方税、税源配分というようなものが定かになっていくのだなという感じを持っておるわけであります。  したがって単純な現状の制度、施策をそのままに置いて計算しますと、経済成長の見通しをどう計算するかで相違はございますものの、先生のおっしゃるような懸念がだれしもあることであろうと思っております。それをないように仕組んでいかなければならぬというのが六十二年度予算のまた大きな課題になるのではなかろうかというふうに考えます。
  25. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私が指摘したような懸念があるのですね。これは大臣もお認めになりました。そうしますと、六十二年度の税調の答申を受けて税の改正その他を含めて検討しなければならない。  どうですか、自治大臣、今のお話の中で、せざるを得ない、こう言うのです。今度の自治大臣大蔵大臣の覚書、基本的な変更は加えない、こうあります。基本的な変更は加えないという大蔵大臣自治大臣の覚書と、今大蔵大臣は六十二年度から税調の答申を受けて税制の改革について、変えなければならぬ、こう言っております。どうですか。
  26. 小沢一郎

    小沢国務大臣 今大蔵大臣答弁なさいましたのは、いわゆる税調の答申後の前提についての話でございますが、例えば先生も御指摘のような法人税や所得税等の減税が行われることになれば、それは必然的に国税三税の額が現状の仕組みの中では少なくなる。そうすればその意味におきましていわゆる地方交付税全体が減ってくるではないか、そういう中で、具体的な手段を今どうこう言えるものではございませんが、税率を上げるとか、あるいはその他のいろいろな地方税源等の施策を講ずることによりまして地方財政全体の運営に支障を来さないようなあり方というものが六十二年度以降の予算において考えられなければならないのではないか、そういう意味であろうと私は解釈いたしております。  また、覚書のいわゆる国と地方負担率は変えないということでございますけれども、このいわゆる補助負担率につきましては、私ども従来から、単純に財政が窮迫している、困っておる、したがって負担率を下げさせてくれ、一律にそれを地方に転嫁するということになるのではこれはいけませんよ、やはり国と地方の役割の分担、事務事業見直し等、そういう議論の中から初めて地財法で定めておる国の負担の割合等が決まっていくべきものである、そのように私は考えておりまして、この三年間の暫定期間内においても積極的にその事務事業見直し、役割分担等あるいは権限移譲、そういった問題を本当に真剣に考えていく中でこの負担率というのは決められていくべきであろう、そのように考えております。したがって個々の中では、例えばこれはもう地方へ権限も事務も任せた方がいいというものについては国の負担率は減るということになるであろうと思いますし、また、これはやはり本来的に国が多くの負担を負っていくべきであるというもの等につきましては、従来の負担率云々の議論にとらわれることなくその中からは国がより一層負担していく、そういうことも考えられるのが本当の議論ではないか、私はそのように考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、国と地方の役割分担、そしてまた地方自治の本旨にのっとった形の中でより自主的に地方が行政を行っていけるように、そういう意味での国の仕組みを考えていく、そのように私は解釈をいたしております。
  27. 加藤万吉

    加藤(万)委員 自治大臣、向こう三年間負担割合の変更はしませんという、基本的な変更をしないというのはその部分に限って今御答弁なのです。しかし、私の議論を聞いていただいてわかりますように、負担割合の問題は、いわば全体の中からいえばある部分ですよ。地方財政全体のあり方を六十二年度から検討せざるを得ない、こう言っているのです。これは負担割合も当然入ってきますよ。その中の負担割合は当面三年間は凍結しますという問題はあったにしても、これは六十年度の補助金のときにも実はそういう覚書はあったのです。六十年度限り、六十一年度以降については云々という覚書がありました。今度だってそういう懸念があるのです。  大蔵大臣、先ほど六十二年度以降の見通しについては大変懸念されるというお話でした。ここで私は、六十二年度以降十割の交付税財源不足額との著しい差、これが起きたときには制度改正あるいは税率改正を行うべきだと提言をいたしました。もし、その問題がない、そのことをしないということになりますと、その相対として六十二年度以降は交付税法六条の三の二項に相当するような条件は起こさせないような地方税の改正ないしは地方財政計画をつくります、こういうことになるのですが、そういうふうに理解してよろしいのですか。
  28. 竹下登

    竹下国務大臣 この覚書は補助率引き下げ措置に関連して結んだものでありまして、これは地方交付税率についてまで両大臣の間で合意したというわけではございません。  それから、やはりあのとき一番今おっしゃったような議論が当然のこととしてございまして、今税調で抜本策というものが議論をされておる、それを、あらかじめその方向を予見して話し合うということではなかろう、したがって、この補助率引き下げ措置に関連して結んだものだよというところに限定をしたわけであります。  事実問題として、地方交付税率の変更というのは国と地方の間の基本的財源配分に関する問題でございますし、地方税それから地方譲与税、国と地方との機能分担、費用負担のあり方等を総合的に勘案して慎重に検討すべき課題でありますから、今回の措置の中にそこまで議論をしたものではない。一方、税調というものでおよそこういうことの方向が出るではないかとかいう議論はできないという環境の中に結んだ合意文書でございます。だから、暫定措置の期間中に税制の抜本改革が仮に具体化して税源配分等もうんと変わっていくというようなこと、そこまで想定してはいないものだというふうに御理解をいただきたいと思っております。  だから、仮に単純にこの税収の伸びを見た場合に、弾性値に多少の違いはあったにしても、今加藤さんのおっしゃいましたような議論もしながら、しかし税源配分の問題はそれは外に置いた中で、補助率の問題だけについてやろうということでできた申し合わせが今回の申し合わせの基本でございます。
  29. 加藤万吉

    加藤(万)委員 申し合わせの内容を極めて限定的にとらえるという御意見は、ではそれなりに私は受けとめましょう。  しかし、六十二年度は財源不足額が全体として起きるということは、先ほどのたばこ消費税が一年限りという問題等も含めて間違いないですね、仮に現状のままで移行していけば。財政需要額だって、生活保護費だって対象人員は六十二年度はふえるわけですからね。そうすると六十二年度は、交付税額の税制改革という問題はこっちに置きまして、結果的に財源不足が起きることは間違いない。そうすると、二年続いて一割以上の財源不足ですよ。交付税法の求める何らかの措置をしなければなりませんよ。六十三年度、これは先の見通しだからちょっとわからない、こう言われればそれまでですが、これは恐らく税制改正内容には盛り込まれて六十三年度財政計画はつくられる。これも、今世上言われているようにもし法人税、所得税の減税ということをやるとすれば、当然それの基礎の上に成り立つ交付税ですから、地方財源不足額との差は一割以上超えますよ。  大臣、この覚書の問題は私はここへ置きます。少なくとも今の財源不足が三年以上続くということに対しては、私の見通しでは大体間違いはない。その場合には、大臣の先ほどからの答弁をずっとお聞きしておりますと、地方財政計画に支障のないようにします、こういうわけですから、これは三年以上続くことのないような措置をこの間に講ぜられる、こういうように理解していいわけですか。
  30. 竹下登

    竹下国務大臣 六十二年度税制改正というのがありますが、それも横に置いた議論をいたしました。そして、税制改正というのは恐らくそれが平年度化するのにはタイムラグがあるでございましょう、すべてが四月一日実施とか一月一日実施とかいうことにはならぬかもしらぬ。すると、六十三年度にほぼ平年度化するかなというような感じがないわけでもございませんけれども、その議論はさておこうということで、今加藤さんおっしゃいましたように、今年と同じ状態が続いて同じ制度、施策でもっていった場合に、ことし無理してやったたばことか直近一年の繰越控除をやめるとかいうような対策だけでも歳入減になるではないか。  この議論もいたしましたが、ただ、税収のそれは、やはり毎年毎年そのときに応じてやらなければならぬのは、一体どれだけの国税三税が本当に見込めるのか、それからその際の景気の環境がどうなっておるかということをその時点で経済諸指標等を勘案しながら積み上げて計算するわけでございますから、ことしの現状そのものを固定した考え議論するわけにもまいらぬだろうと思っております。しかし、いずれにせよ地方財政計画に支障を起こさしめてはならぬということは、私どもが基本的に今考えておるところであります。ただそれは、さようしからばおまえは、現行の制度、施策、税制をそのままに置いたらその際は交付税率しかないじゃないかという御議論にまで、交付税議論ということになりますと、それは地方税から譲与税からみんな総括して議論しなければならぬ問題でありますので、そこまで踏み込んで、その際はその措置をとりましょうというお答えをする環境には今日ないというふうに思っております。
  31. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そうですね、交付税はその他の説もあるわけですから。ただ、当然のこととして起き得る六十二年度、ないしはこの法案が三年間ですから、その後も一兆一千七百億円削られること、これは間違いない。そしてその上に立って、今大臣がおっしゃいましたようにその間に税制改革をやるし、景気の伸びがどうなるかわからないし、交付税がどうなるのか、譲与税がどうなるのか等々を含めて見ても、そういう要素を入れて見ても向こう三年間は少なくとも交付税額の一〇%を超える、私はそういう見解を持つのです。したがって、先ほどおっしゃいましたように地方財政計画に対する支障がないということは、いわば交付税法六条三の二項には該当させないような状況をつくります――いろいろなことがありますよ、制度改正とか、そういう答えが出てこなければいかぬのです。もし出てこないとするならば、六十二年度ないしは六十三年度に至りましては、この補助金の三年間というそのものについても踏み込む要素を残したことになるのですよ。今自治大臣との覚書ではそうなっておりますけれども、しかし、それも踏み込む要素を実は内包した議論にならざるを得ない、こう思うのですね。  総理、今お聞きのとおりです。地方財政計画交付税とのいわゆる比が一〇%以上になった場合には、これはもう先ほどの総理言葉をそのままかりて言えば、日本の経済全体を国と地方で分担をしているというその役割の上から見ても、交付税額が落ち込んだ場合の措置はとって地方財政計画に何ら支障のないような状況をつくる、こういうことになるわけですが、総理の御見解をここでお聞きしておきたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは法律に従いまして、その事態に従ったことをやらなければいかぬと思います。たしか二年続いて三年目もそういう状況が出た場合に措置をする、そういうことであったと記憶しております。この点については大蔵省も、今御答弁聞いておりまして異存のないところであろうと思います。要するに、国と地方との関係お互いに車の両輪あるいは唇歯輔車という関係に立って、今後もお互いに善意を持って協力し合う、そういう関係を堅持していかなければいけないと考えておる次第であります。
  33. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、いま一つ聞きますが、従来、財源不足額に対する特別交付税、国と地方が大体二分の一ずつ負担をする、こういうことでやってまいりました。五十七年度は六七%ぐらいになっていますが、これは例の減収補てん債問題等がありますから。大体四割から五割の間。今度の財源不足が一兆一千七百億円です。地方債の発行は九千三百億円、八割ですよ。国の財源不足から地方に転嫁をされた。  財政需要額を積み上げて財源不足額が出た、その二分の一といったらまあまあ合理性はないにしても容認でき得る条件だと地方団体は受けとめたわけですね。今度のは国の責任ですよ。その財源不足額の現ナマでの補てん率は二〇%、地方は八割。一体どうなんです、これは。財源不足額に対する充当率はもっと国が高めるべきじゃないですか、その責任、いわゆる財源不足額が生まれたその原因から見ても。今までは、五十年代は五割、五割、今度は地方が八割、国は二千四百億円プラス四百億円のお金、一兆一千七百億円のうちの九千三百億円は地方債の発行、おかしいじゃないですか。本来国の責任で生まれたものは国で措置する、この措置は五十年代とは変わった財源補てん方法があってよろしいのじゃないですか。どうですか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 結局、そこがいわゆる業務分担、費用負担のあり方で双方が詰めて、現状においてはそのような妥結策を講ずるということにやむを得ず合意しなければならなかったということだと思います。私も加藤さんと御議論いたしておりますと、この問題については連合審査でいつも私も何か加害者と被害者が一緒に質問を受けているような気がしまして、それで両方の立場に立ってお答えするというのは非常に難しい問題でございますが、いずれにせよ最終的には政府一体の責任において合意し、御審議をいただいておるわけでございますから、私も、加害者意識を持っておってもならぬし被害者意識を持っておってもならぬという立場で、言葉を選びながらお答えをしておるというのが現実の心境でございます。
  35. 加藤万吉

    加藤(万)委員 人情論で財政計画がつくれるものじゃないですよ。だめですよ、大臣。いわゆる国の責任と私が先ほど言ったでしょう。これは明らかに財政秩序の新しい変化なんですよ。先ほど言いましたように、地方団体は三割以上起債負担率をとっているのですよ、今まで五割、五割の負担の中でも。今度、向こう三年間二割八割なんですよ。なお財政硬直化を招くじゃありませんか。本来は別の負担方法がなければいかぬですよ。  現ナマつくりました、二千四百億円、たばこ消費税。何のことはない、税調にも何にも語らずに決めたわけでしょう。後で事後承認を受けた、こう言いますけれどもね。六十二年度以降はそれに対してのめどが立たない、こうなってまいりますと、今、加害者、被害者と、こうおっしゃいましたけれども言葉をかえて言えば、支配と被支配の関係がより強まるということなんですよ。地方自治の本旨、両輪論や日本の経済の分担をするという本旨がまさに六十一年度を契機にしてがらっと変わる。だから地方団体は戸惑っているんですよ。だから地方団体は右往左往しているんですよ。あるいは、今後の政策的な、監督的な事業に対するめどが立たないのです。  私は、このことを明確に、先ほども言いましたけれども、建前ではなくして、あるいは三年間というようなごまかしの言葉ではなくて、赤字国債の発行を六十五年までにゼロにしようということまで含めて、こういう体系にしなければだめなんですよと――それが本音なんでしょう。そこまで言い切ってもらわなければ、あるいは言い切られたら地方団体がどう反発するかわからないから言い切れない、その要素を隠して本法案審議というのは、まさに国民に欺瞞性をもたらすものですよ。政治に対する不信が起きますよ。  この財源については、少なくとも五十年代までベースを戻して、二分の一ずつの特会の復活もありましょう、あるいは特例措置加算を別に考えるという方法もあるでしょう。今度のこの臨時財政特例債、あるいは建設地方債の二千四百四十億円の六十六年度以降の加算額についても、まさに暫定でしょう。二分の一負担するかしないかということも、これは現実には不確定でしょう。結局、地方財政の中でうまくやりなさい、国の方はそれだけ赤字ですからよろしく頼むよという話でしょう。いわば財政秩序の全く基本的な変更じゃあ力ませんか。私はこの法案をそういう立場から見ても容認することはできませんね。どうなんでしょう、本音のところをいま一遍ひとつ示していただきたい、こう思うのです。
  36. 竹下登

    竹下国務大臣 実際問題、立場立場によっていわば被害者意識とか加害者意識とかそういうものを持ってはならない、まず政治の衝に当たる者はその意識を捨てなきゃならぬということを前提に私も本問題にも対応してまいりました。落ちつくところ、このいわば費用負担のあり方について、現状においてはこれが双方やむを得ざるところとしての妥結点を見出したという結論になるのではなかろうか。  それで、支配者とか被支配者というようなことは、一番政治家として気をつけなければならない課題であります。まさに総理からもたびたびお話がありますように、いわば車の両輪としての役割を果たしておるときに、そのときどきの財政事情あるいは業務分担というようなところから妥結点を見出していくというのが、ひっきょうするところ現実的な対応ではなかろうかというふうに考えております。
  37. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私どもの見解を謙虚にひとつ受けとめておいていただきたいと思うのです。  留保財源についてちょっとお聞きします。  都道府県が二〇%、市町村財政収入のうちの二五%をそれぞれ留保財源、自主財源で持っています。この留保財源という財源性格はどういうものでしょうか。私は、地方の単独事業あるいは自主的な運営、これに対して地方団体が保有する財源、いわばそういう制度として、国は国の機能、地方地方の特殊なニーズ、その地域によってニーズに沿った財源として制度上配置をされている、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  38. 持永堯民

    持永政府委員 留保財源の問題でございますけれども、留保財源が設けられております趣旨は、地方交付税基準財政需要額の算定におきまして、すべての地方団体のいろいろな財政需要というものを全部算入することはとても不可能に近いということがございますし、同時にまた、各地方団体がそれなりに独自性、自主性があるという面もございまして、それぞれの地域あるいは市町村によりまして特性のある財政需要というものが必要であるという観点から今御指摘がございましたような趣旨でこの留保財源というものが県が二〇%、市町村が二五%ということで設けられておるわけでございます。
  39. 加藤万吉

    加藤(万)委員 制度上制定をされているものだというように私は理解しますが、これは大臣、ひとつ答弁してください。そう思いますか。
  40. 小沢一郎

    小沢国務大臣 基本的に、今政府委員から答弁されましたように、地方の自主的な判断に基づいていろいろな政策を実行する余地をその中において残しておくというのが一つの大きな留保財源意味であろうと思います。したがいまして、そういう意味において地方の仕組みとして認められておるものであろうと考えております。
  41. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最近税調で、この留保財源の保有率を変えて国の交付税総額を落とそう、そういう議論があるやに聞いています。  さて、これは自治省にお聞きをしますが、留保財源を仮に二〇%を一五%に切り下げる、あるいは二五%を二〇%に切り下げる。地方税は大体二十四兆円前後の収入ですから、五%留保財源といいますと一兆二千億前後、留保財源で残っているわけですが、これを切り下げて地方財政計画に切り込まれてくると、地方財政計画そのものに変更が起きますか、どうですか。
  42. 持永堯民

    持永政府委員 留保財源をどういうふうに決めるかという問題は基準財政需要額の算定方法に絡む問題でございまして、仮に留保財源を縮めるということになりますと、それに対応するだけの基準財政需要額を増額する必要があるわけでございます。したがいまして、留保財源をどう決めるかという問題と、地方交付税総額はどうあるべきかという問題とは全く別個の問題でございまして、今税調という御指摘がございましたけれども、臨調なり行革審で一部そういう御意見があるということでございます。
  43. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そうですね、臨調のところは私の方のあれですから訂正しますが、留保財源を切り下げて、そして基準財政収入額に入れる。そうしますと、大蔵大臣、仮に交付税を支給する場合には財政力指数が一以下のものですね。〇・九九くらいのところは、留保財源基準財政収入額に繰り入れますと不交付団体になる。不交付団体になるから、結果的に地方交付税が減額してもよろしい、こういう議論がないわけではないのです。  しかし、今おっしゃいましたように、自治省から答弁がありましたように、全体の財政需要額、これそのものは変わらないわけですからね。基準財政収入額に加えますとこれに対する補助事業が今度は出てきます。結果的に補助金はふえますよ、基準財政収入額が多くなるわけですから。それによって補助事業を受け入れるという要素は今度ふえてきます。ふえてきますと、結果的に補助金総額はふえざるを得ない、こういう現象になります。  今、臨調やその他であるいは大蔵省の内部でも多少この議論があるというように聞いていますが、この留保財源に対する大蔵大臣の見解、どうお持ちでしょうか、お聞きしておきます。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに五十七年の臨時行政調査会の基本答申の中にこの問題が指摘されております。また、おっしゃいますとおり、税収の一〇〇%を基準財政収入額に算入するとすれば、地方団体の税収増がそのまま交付税の減となって税源涵養という意欲を失ってしまうとか、あるいは地方団体の独自の施策のための財源を確保する等が、そもそも留保財源を残す理由として存在しておるわけでございます。  したがって、この問題につきましては、大蔵省がどう考えるか、こういうことになりますと、地方団体間の財源の一層の均てん化を図ることは必要であって、留保財源のあり方についても慎重に検討すべき課題であるというところが大蔵省としてお答えする一応の限界ではないかなと思っております。
  45. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今大蔵大臣おっしゃったプラスの不交付団体は、留保財源が多ければ単独事業が非常に多いのです、あるいは自主的運営の幅が非常に広い。しかし、後で質問しますが、地方税収のアンバランスが最近ひどいのです。したがって、均てん化をするという意味では、これはあり得ることなんです。ただし、だからといって全体の地方財政財政需要額そのものは減らないのですよ。したがって、何か保留財源に切り込むことによって交付税額を総体として小さくして、そして国の財政再建の方向にその財源を振り向けよう、この発想はぜひやめていただきたいと思うのです。結果的には小さくならないです。基準財政需要額がふえればふえるだけ公共事業はふえるわけですから、補助金がふえるのは当たり前です。むしろそれは補助金関係で言えば、補助率が下げられることは別にしまして、補助金総額としては拡大をするという方向に、先ほどの自治省持永審議官答弁にもありますように、それをそのまま引き継いでいけばそうなるのです。私は、交付税総額を少なくするために留保財源に手をつけるというその方向性は、ぜひとも大蔵省もそうあってはならないという方向でこれからの論議をしていただきたいと思うのです。  最後に、地方税収入のアンバランス公共事業関係について建設大臣にお聞きをいたします。  こういう大変な不況の状況等も踏まえて公共事業を前倒ししよう、こういうことであります。固定社会資本の形成、今年度経済見通しの中では一・一%したがって、六十一年度予算ではそれぞれの単独事業あるいは公共事業を含めて大幅にこの部分を仲はしました。私は、そのことは正しいと思うのです。そのこと自身は否定はしません。むしろ歓迎すべき状況だろうというふうに思うのです。  さて、これをこなし得る地方財政能力はあるでしょうか。これは一つの事例を申し上げますが、今年度各地方団体予算を組んでいますから、これまでは実は検討はできなかったのでありますけれども、昨年度の十二月現在の税収の伸びは、国が求めた平均の都道府県に比べて、国が一〇〇、地方財政の伸びが一〇六か七%ですが、それに対して青森県は一〇〇です、青森、秋田、大分。さらに一〇一%が佐賀、宮崎です。一〇二%しか地方財政の伸びがないのは富山、鳥取、北海道。これで八団体です。公共事業の伸びを見ますと、地方税収入が少ないものですから、結果的に北海道は十二月現在ではマイナス〇・五です。青森は〇・四%しか伸びていません。国が想定した六十年度の公共事業費に対してマイナスないしは〇・四しか伸びていないのですよ。  今、地方財政の伸びがこうあるだろうからこのくらいの公共事業をやっても大丈夫だ、裏負担もできる、こういうように見込まれて公共事業を先ほど冒頭に御答弁いただきましたように箇所づけもし、あるいは前倒しも言われておりますが、財政が追いついていかないですよ。建設大臣どうですか。今この状況下で政府が想定する公共事業の遂行は可能とお考えでしょうか。
  46. 江藤隆美

    江藤国務大臣 御承知のように、建設省にかかわります公共事業は対前年度化五・七%の伸び、こういうことになっております。それから、地方単独事業が三・七%の伸び、地方における一般的な投資的経費が二・五%、こういうことになっておりますわけで、私どもも、公共事業が税収に頼るところはそのとおりでございますから、今後の税収の伸びということについては非常に関心を持っております。  しかしながら、先生も御承知のように、今回の補助率引き下げに伴いまして浮いてくる財源が三千九百八十億、約四千億、これを財源にしまして事業を伸ばしますのが五千八百三十億伸びる、こういうことになりますわけで、そのうちの四千億は一〇〇%起債をもって、そして将来、今御意見のありました地方税で一〇〇%見てやりますよ、残りの千八百五十億につきましては一〇〇%起債をもって大部分をまた将来起債で返してやります、こういうふうなことで、六十一年度の公共事業起債に頼るところが非常に大きい。  こういうことでありますから、起債を一二・一%前年度比伸ばして財源調整に充てた、こういうことでございますから、今年は予算執行の段階においてこれらの財源対策あるいは財源調整のためのそうした起債等について弾力的に慎重にやっていけば、苦しいながらも公共事業の執行はできるものである、こういうふうに私は考えておるところでございます。
  47. 加藤万吉

    加藤(万)委員 起債を充当する、こうおっしゃいましたけれども、先ほど言いましたように、今度、起債は五割じゃないのですね、二対八ですよ。現ナマの部分は二千四百億円と四百億円しかありませんからね。そうしますと地方団体は、五十年代は経常経費分の投資的経費を起債に追い出した。今度は投資的部分の本来必要な起債部分に加えて、今度の補助金のカットによる財源を当てにしながら、その上さらに追い出したのですね、地方債を。先ほど言いましたように、市町村では三割以上この起債がおなかいっぱいに入っちゃったわけです。さらに起債を増発して、一〇〇%それは交付税に算入しますから、こう言われても、交付税そのものの中身にもいろいろなものが入ってきているわけですから、とてもじゃないけれども、それをやったのでは地方の行政は責任を持てませんよ。  こういう要素も含め、いま一つは、起債と国の補助金等で全部が賄えるかというと、そうはいかないのです。今度の建設地方債調整分の充当率、先ほど一〇〇%とおっしゃいましたけれども、これは八割ですよ。その発行額に対して八割は交付税で見ましょう、あと二割は現ナマなんですよ。現ナマで地方財源から出しなさい、こういうことなんですよ。現金がないのですよ。先ほど言いましたように、地方税収の伸びが、経済見通しまでやれば予算委員会の問題になりますから私は言いませんけれども、どう見ても六十一年度の地方税収入の見込みは、五十七年度と同じように、事によるとこれは減収補てん債を出さなければいかぬのかなというくらいに私は見ているのです。なりませんよ。地方債で全部見ます、やがて交付税に一〇〇%繰り入れる、こう言いますけれども、少なくとも千四百億円の調整債部分の二〇%は地方一般財源で補てんするのです。これができないのですよ。できないから、公共事業は全体として手をつけることができない、ないしは制約をせざるを得ない、こういう状況なんですね。  ですから、おっしゃられるように、公共事業は柔軟な構えでうまくやれば可能だという説は、この財政計画、いわゆる今度の補助率のカットによる財政の補てん措置だけでは始末がつかない。それは建設地方債に対する、いわゆる地方債に対する何らかの特別な措置を講じない限り、経済政策全体でいけば一・一%の社会資本投資の伸び、これは不可能だ、こう私は思うのです。今基幹道路その他の問題について建設省でいろいろおやりになっているという話を先ほどちょっと大臣に聞きました。どうなんですか。その辺の計画も含めて、この財政状況で可能かどうか、お聞きしたいと思うのです。
  48. 江藤隆美

    江藤国務大臣 私も十一年ほど地方議会で財政問題ばかりやってきまして、その中で一番問題になるのは財源構成でありますから、大変示唆に富む御意見だと思って、先ほど来承っておりました。  最近の地方財政状況に容易ならざるものがあるということは、私どももよく存じております。それだけに、公共事業の執行については、執行残をなくするためには財源対策が大事でありますから、慎重に検討しながら各都道府県に予算の振り分け等をいたしておるわけであります。今後の税収その他につきましては、大蔵省、自治省にかかわることでございますから私がこれ以上どうこう言うことはいかがと思いますけれども、今日公共事業が内需拡大の担い手だと言われておる以上は何としてもこれを実行していかなければならない、こういうふうに考えております。  それから、道路の件につきましては、第九次道路整備五カ年計画の中でいわゆる高速の自動車道路を一万キロ余にするという計画でございますが、第九次が六十二年度で終わりますので、ことしの秋の四全総の成立を待って、来年の夏ごろまで、予算要求の時期までには俗に言われる高規格幹線自動車道路の指定をやらなければならない、それが来年六月ぐらいで、それをもって昭和六十三年度から第十次道路整備五カ年計画に入っていく、こういうことですから、地方において相当腰を据えてやらないと、ひとり地方道だけということではなくて、高速自動車道路、国県道全部のこれからの社会資本の充実を考えたときは容易ならざる時期に入ってくる。金がたくさん要る。私どもも、財源が一番ですから、これから大蔵省、自治省の御意向をよく承りながら対処してまいりたいと思っております。
  49. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最後に、総理、今お聞きになったように、補助金一括削減法案は単に補助率を下げるという問題だけじゃないのです。国と地方財源分担割合を変えだというだけの問題じゃないのです。地方と国の財政秩序上の変化、これが第一です。率直に申し上げて、地方財源の裏づけがないために六十一年度の公共事業の伸びが可能かどうか極めて不安です。税収の見込みをどう見るかにもよりますけれども、六十一年度は五十七年度と同じように減収補てん債まで出していかなければ内需の確保、公共事業の確保はできないのではないかと私は思います。そういう内客を持った本法案であるだけに極めて重視すると同時に、この問題の処理の仕方いかんによっては六十一年の国の経済、国民への政治姿勢のあり方が問われる課題を内包している、こう思うのです。  今までの私のいろいろな質疑のやりとりをお聞きになって、どういう御感想と、地方財源の確保のためにどういう努力をお払いになるか、その決意のほどを最後にお聞かせ願いたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、中央地方財政構造上の大変化をもたらすものではないかという御質問でございますが、今までの制度の基幹には変化はない、我々といたしましては、両方対等の立場に立って今後ともお互いに助け合う、そういう制度あるいは仕組みを堅持してまいりたいと思っております。  それから、景気に対する影響等につきましては、地方団体にもいろいろ御迷惑をおかけしているところでございますが、自治省あるいは大蔵省等ともよく連絡をとりまして、円滑な実施ができるように今後とも努力していきたいと考えておる次第でございます。
  51. 加藤万吉

    加藤(万)委員 終わります。
  52. 福島譲二

    ○福島委員長 村山富市君。
  53. 村山富市

    ○村山(富)委員 去る四日に参議院で予算が上がりまして、恐らく総理以下ほっとされていると思うのです。  きょうは、明けた週の八つの委員会の連合審査ですが、最近の各委員会の審査状況を見ておりますと、重要な法案審議されるにもかかわらず議員の出席率が極めて悪い。これは意識的に解散風を吹かされる。特に先般も、総理の側近と言われる渡辺通産大臣は五月二十日に解散じゃないかというようなことを言っておりますし、それから六月二十二日ダブル選挙は間違いない、あなたの側近があちこちで言っていますよ。そういう解散風に乗せられて、議員も大分浮き足立っておって委員会の出席が悪いのじゃないか。これから重要法案審議されるわけです。一方で法案を提出して審議をしてくれと言いながら一方で解散風を吹かされる、私は実に不見識だと思うのです。  予算成立後の今日段階における解散に絡む総理の心境をお聞きしたいと思うのです。     〔福島委員長退席、大石委員長着席〕
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、解散は考えておりません。いろいろな御発言があるようですが、何か夏の遠い花火を見ているような感じで見ております。
  55. 村山富市

    ○村山(富)委員 続いて総理にお尋ねしておきたいと思うのですが、最近の政治の流れを見ておりますと、社会福祉、社会保障関係だけを見ましても、次から次へと負担国民に転嫁されて、仕組み全体としては後退の傾向にある。例えば医療がそうですし、年金もそうです。この国会に老人保健法の改正案が出ておりますけれども、老人に一カ月千円ぐらいの負担はやむを得ないのじゃないか、当然ではないか、こういう意見もあるようです。これは払う側の条件によって違うと思いますけれども、千円がいいか悪いかというのはなかなか言えない。しかし、もともと老人保健というのは無料から出発したわけですよ。それが一部負担になった、その一部負担が今度また増額されて全体として後退の流れにある。今度の補助率引き下げ問題につきましても、さっきも議論がありましたけれども地方財政に相当な負担転嫁になる。地方自治体は財源に困りますから、受益者負担に転嫁していくということになるでしょう。同時に、国の基準以上に上乗せして福祉をやっている地方自治体もある。それぞれの事情において独自に創意と工夫をこらして住民福祉をやっておるところもあると思うのです。そういう上乗せがどんどんはぎ取られていく、やれなくなる。  こういう全体の傾向から考えますと、社会保障や福祉というのは、あなたの政治になってから次から次に後退を余儀なくされている。こういうことに対してお年寄りや障害者は大変な不安を持っていると思うのですが、そういう状況を見て恐らくあなたの心が痛んでおるのではないかというふうにも私は思うのですけれども、偽らないお気持ちをお聞かせください。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政環境が非常に厳しい状況になってまいっておりまして、国の方も地方の方もそれぞれ非常に御苦心をして運営している状況でございます。その中におきましても、いわゆる長寿社会が非常に近く迫ってまいりまして、これらの年金あるいは医療に対しましても、長期的な安定、それから揺るぎのない制度としてこれを維持していく、そういうような観点から若干の調整措置をやらなければ、今いろいろ保険料、年金の掛金等を払っている若い世代の人たちに不安を与えるという状況にもなりかねない。そういうような考えから、多少いろいろ御迷惑をおかけする面もあって恐縮ではございますが、この制度自体をあくまで維持していく、そして負担の公平、負担と給付の公平、こういうような関係維持していきたいという念願からいろいろな改革を行っておる次第でございます。
  57. 村山富市

    ○村山(富)委員 若干具体的な中身に入ってこれから質疑をしたいと思うのですけれども、昨年の国会からの引き続きでありますが、まず、厚生年金保険の国庫負担の繰り延べ措置についてお尋ねしたいと思うのです。  これは御案内のように、五十七年から三カ年間行革特例法で繰り延べをいたしました。昨年は、補助率一括一〇%引き下げに伴って、一年間繰り延べされたわけです。これからまた三カ年間繰り延べをするということになるわけですが、昨年の国会で私が質問をしたときに、大蔵大臣はこういうふうに答弁をしているわけです。「事実二〇%が今度は基礎年金の三分の一でございましたか、そういう制度改正をお願いしておる。そういう前提がありますだけに、やはり一年ということにすべきだという判断を下したわけであります。そうして、一年ということになればやはり従来申し上げておりますいわゆる特例適用が一年延びるわけでございますから、特例期間経過後において本則に戻るという政府統一見解というのはそれなりに私どもは守っておる。例えば当分の間とかあるいは財政再建期間中とか、いろいろな議論もいたしましたが、なかんずく一連した暫定措置としてお願いしたということもありましたが、いわば法律改正をお願いしておるのでございますから、したがって、これはそういうことを念頭に置いて一年ということでお願いをした。特例期間が過ぎたら本則に戻るということもそのとおりであります。」こう大蔵大臣答弁しているわけであります。  六十年のこの特例措置が終わるわけです。当然本則に戻るべきであるというように思うのですが、どうですか。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 特例法の適用期間が過ぎまして、それを延長した、一方、社会保障あるいは公共事業も含め、いわばおおむね一割というような法律を一括して御審議をお願いした。それで、一年間というものは、補助率の問題につきまして申しますならば、まさに一年かけて本格的なあるべき姿を模索しますから、一年間は暫定で御猶予をいただきたい。それで検討委員会をやったりいろいろな形でもって答えを出して、選択いたしましたのは、社会保障が両論併記みたいな形でございましたけれども、これを選択させていただいてお願いをしておる。  そこで一方、厚生年金特会国庫負担繰り延べの問題ということも、その限りにおいては行革特例法の一年延長の期間はそれで終わるが、その中でいま二度基本的な考え方で、それはほっておけば戻るわけでございますから、勉強してみようというので種々勉強いたしまして、結局総合的に申しますと、引き続きお借りしなければならぬ、こういうお願いをしなければならぬという結論に達して、これを今法律としてお願いをしておるということでございます。  決して寝覚めのいい気持ちでお願いしておるというわけではございません。これは素直に申し上げます。
  59. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは寝覚めがいいとか悪いとか、そんな問題じゃないですよ。  ちょっとお尋ねしますけれども、六十年度は、繰り延べ率は四分の一だったわけですね。その額は三千五十億円。今度は二分の一にして、その額は三千四十億円。四分の一を二分の一にしたのはどういう理由なのか。たまたま三千四十億円という額を想定して計算をしてみて二分の一にしたのか、その理由は一体何ですか。
  60. 保田博

    ○保田政府委員 先生御指摘のとおり、六十一年度予算編成に際しましては、厚生年金の国庫負担金の繰り入れ額につきまして特別の調整をお願いすることといたしました。今回の法案でそのお願いをさせていただいておるわけでございます。  その金額は、御質問の中にありましたように三千四十億円でございまして、我々といたしましては、できるだけこれがふえていくような方向にいかないようにということで、多少襟を正したといいますか、そういう姿勢を示す必要もあろうかということから、できるだけこの金額を少なくしたいということが一つでございます。  それから、御承知おきのように年金制度の大改正が行われまして、新たに導入される基礎年金部分の国庫負担については、これに手を触れることはいかがかということから、これは国庫負担額の調整対象外とするといったような工夫をさせていただいたわけであります。それらを総合いたしました結果が先ほどの三千四十億円という数字になったわけでございます。  なお、今回御提出申し上げております法案におきましては、今回の調整対象となりました経過的な国庫負担の二分の一以内にするということで、将来のこういう調整措置の歯どめをかけた上で法案の御審議をお願いしておる、こういうことでございます。
  61. 村山富市

    ○村山(富)委員 いろいろ説明は要らぬけれども、端的に、四分の一を二分の一にした理由は何か、一年を三年にした根拠は何か、それだけ答えてくれればいい。
  62. 保田博

    ○保田政府委員 金額につきましては、国の財政事情等を勘案し、かつ調整対象となります国庫負担額との関係考えました上で三千四十億円という数字を決めさせていただいたわけでございます。  それから、三年間という期間につきましては、将来この措置をいって打ち切るかということにつきまして財政当局として確たる見通しを持つに至らなかったわけでございますが、今回御提出を申し上げました法案の中で、補助率負担率等についての調整も三年間ということでお願いをいたしておりますから、これとのバランス考えながら、とりあえず三年間ということでお願いをいたしておるということでございます。
  63. 村山富市

    ○村山(富)委員 それはそういう説明では納得できませんけれども、言うたってしょうがありませんから次をお尋ねします。  五十七年から現在までの累積はどういうふうになっていますか。それから、六十三年まで仮に繰り延べをされた場合にはどうなるか、ちょっと御説明を願います。
  64. 保田博

    ○保田政府委員 繰り延べの金額でございますが、現在までのところ約一兆三千億円程度に上っております。  先ほどの答弁で申し上げましたが、六十二年度以降についてどういうふうな調整をお願いするかということにつきましては、その天井について、経過的国庫負担額の各年度の金額の二分の一以内にするということでございます。金額は確定しておるわけではございませんで、各年度の予算編成におきまして、この二分の一の額の範囲内でできるだけその圧縮に努めたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  65. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、五十七年から行革特例法で三カ年間、それからまた一年間やってきたわけですね。この四カ年間の累積額はどうなっているかというのはわかるでしょう。  それから、六十一年からまた三カ年繰り延べされるわけだけれども、この三カ年間、二分の一ずつ繰り延べされた場合に、運用収入まで含めてどうなるだろうかという、これは見通しで結構ですから、わかるように言ってください。
  66. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えを申し上げます。  従来の実績でございますが、五十七年度から六十一年度まで、まず六十年度までのものをお答えいたしますと、運用収入を合計いたしまして一兆七百七十五億円でございます。六十一年度、三千四十億ということでお願いをいたしておりますが、これに運用収入相当額を加えますと、一兆四千六百八十二億円でございます。  今後の見通しという御質問でございますが、今後の見通しは、具体的には減額分、また運用収入の利率等不確定な要素がございますので、一応こういう仮定を置いて試算をさせていただきます。すなわち、六十二年度、六十三年度におきまして、本年度と同じ三千四十億円の減額があったということといたしまして、運用収入が現在の利率のままということで計算をさせていただきますと、運用収入と減額分、合計いたしましたものが、六十三年度におきまして二兆三千二百四十七億というふうに考えております。
  67. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは確認しておきますけれども、三年後にはまた本則に戻りますか、大蔵大臣
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 今、計算しておりまして、ちょっと心そこになかったものですから……。
  69. 村山富市

    ○村山(富)委員 三年後にはまた本則に戻りますか。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 減額分を経過的国庫負担の二分の一以内にとどめることとして、今後は財政改革を推進することにより減額分を極力圧縮するように努めるということでございます。したがって、この法律そのものからいえば、期限が来ればそれは本則に戻るということになりますが、今後の問題につきましては、やはり安易に延長するということを考えてはならないというふうに思っております。したがって、慎重に対応すべき問題であるという問題意識だけは持っております。
  71. 村山富市

    ○村山(富)委員 それは去年の大蔵大臣の回答と全然違うんで、今度はずるずるいく可能性もありますよということを意味しているわけですね。  私は、あなたが前国会で私の質問に対してこういう答弁をされていることを記憶していると思うのです。これは統一見解で述べていただいたんですけれども、もう前段は略しますけれども「特例適用期間経過後において積立金運用収入の減額分を含む年金国庫負担金の減額分のできる限り速やかな繰り入れに着手する所存であります。」これは昨年のあなたの答弁ですね。減額分については、運用収入も含めて速やかに繰り入れに戻す、繰り入れに着手する、こういうふうに言っているわけですけれども、速やかに繰り入れに着手するどころか、三年間また延長したんです。  今、年金問題は、御案内のように四月一日から改正されまして、これから厚生年金は基礎年金部分に国民年金財源として繰り出しをするわけです。拠出するわけですね。したがって、厚生年金の財源がどういう見通しになるか、その見通しに立って、年金の給付はどうすべきかとか、あるいは掛金はどうすべきかとかということを真剣に議論しているわけです。真剣に議論しているときに、こういう国の負担の金が将来どうなっていくのかさっぱりわからぬ、こんなことではこれは審議のしようがないわけです。  人から金を借りるのに、返還計画も示さないままで借りっ放し、そんなことはないでしょう、常識的に。私はこの際、三カ年間延長するんですから返還計画を示してもらいたいと思うのです。
  72. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに昨年来、昨年は行革特例法の延長という状態でありまして、ことしの場合は年金改革が四月一日から発足するということで、大きな変化があるということで私も将来の問題について申し上げることに一応の限界を感じておったわけでございます。  昨年も御議論がありましたように、大体銀行へ金を借りに行けば、例えば何年間は据え置きで、何年間はこういうふうにしてこの金利を幾らつけて返しますという返還計画があるから金を貸すんじゃないか、おまえの言っているのは、返すという意思表示だけをして、返還計画は後ではないか、こういう御質問でございますよね。確かにその御質問は、私はそれなりに謹んでちょうだいしなければならぬ御質問だと今でも思っております。一番つらいところでございます。  要するに、年金財政の安定が損なわれることのないように、特例期間経過後において、まさに国の財政状況を勘案して、積立金運用収入の減額分を含む年金国庫負担金の減額分を繰り入れるものとするということは規定をいたしておりまして、法律の中でその考え方は明らかにしておるということが今日のお答えの限度でございます。  確かに、この具体的内容については現時点で明らかにできないところでございますが、精いっぱい私どもとしては、一般会計が特例公債依存体質から脱却した後において、行革関係特例法及び今回の措置による年金国庫負担金の減額分について、積立金運用収入を含め、できる限り速やかな繰り入れに着手する所存であります、という意思表示を法律の上で明定してお願いするということを引き続き行わなければならなかったということでございます。
  73. 村山富市

    ○村山(富)委員 その部分については、前回の答弁とちっとも変わっていないわけですね。これは、去年は一年限りの措置でしたからね。あなたの答弁でも、さっき申しましたけれども、できる限り速やかな繰り入れに着手します、こういう答弁がございましたから、それで了解したわけですけれどもね。今度は三年延びるのですよ、三年。前回とは全然違うのですよ。  しかも、先ほど申しましたように、年金制度そのものについては、改正されてどうなっていくかといういろいろな角度から議論していますよ。その場合、年金の財源がどうなっていくのかということは、全然その見通しが立たないことには議論にならぬわけですよ。私はこの際、できる範囲のことで結構ですから、この繰り延べされたものについてどういう方法で返還をしますということをある程度納得できるような答弁ができなければ、これは審議できませんよ。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに六十一年度において、厚生年金保険事業に係る国庫負担金の繰り入れの特例を行うことに際しての覚書がございます。  1 今回及び昭和五十七年度から昭和六十年度までの特例措置による国庫負担金の減額分については、積立金運用収入の減額分を含め、一般会計が特例公債依存体質から脱却した後、出来る限り速やかな繰入れに着手することとする。その際、両大臣間で協議の上、年金財政の運営に支障をきたすことのないよう計画的に繰戻しを行うものとする。  2 今回の特例措置による国庫負担金の減額分は、経過的国庫負担国民年金法等改正法附則第七十九条の規定による国庫負担)の二分の一以内で極力圧縮するよう努めるものとする。その覚書の一項というものが、まさに今日お示しする限界ではなかろうかというふうに考えております。     〔大石委員長退席、小泉委員長着席〕
  75. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、その返還をする見通しといいますか、それがなければこれは年金の方の審議をする場合も、聞けば、いやそれは返す約束になっておりますというだけの話で、どういうふうに返ってくるのか、六十四年度はどうなるのか、六十五年度はどうなるのか、いや、それはわかりません、こんなことでは審議できませんよ。少なくとも昨年を踏まえて、三カ年間延ばすのですから、したがって、延ばすかわりにこの処理についてはこういう方法で返還をしますというようなことがあってしかるべきじゃないですか。そうでなければやはりこれは納得できませんよ。
  76. 竹下登

    竹下国務大臣 だから昨年、「その際、両大臣間で協議の上、年金財政の運営に支障をきたすことのないよう計画的に繰戻しを行うものとする。」そのいわゆる「計画的」というものと、「年金財政の運営に支障をきたすことのないよう」といういわば非常に抽象的な言葉でございますが、これにもっと具体性を持たした計画書が出ないまでも考え方を示せとかいうような御議論は、私どももあろうかと思っておりました。しかし現在の時点におきまして、この問題につきましては、両相協議の上やはり「計画的に繰戻しを行う」という両大臣の覚書というものがお答えする精いっぱいと申しますか、非常に抽象的でございますが、これでもって誠意を披瀝するということに尽きるではなかろうかと思っております。
  77. 村山富市

    ○村山(富)委員 これだけに時間をとるわけにいきませんけれども、私は、これは道理が通らぬと思うんですよ。なるほど、今は厚生年金は積立金がありますよ。ありますから、厚生年金の制度運用には支障を来さないかもしれません。しかし、将来の展望を考えた場合に、掛金をどうするかとか、あるいは年金の給付額をどうするかとか、あるいは基礎年金との関連をどうするかとか、いろいろな議論をしておるわけですよ。議論をしておる場合に、その年金の積立金の財源がどうなっていくのか、国庫負担は一体どうなっていくのか、そういうことに対する見当が全然つかないようなことでは議論のしようがないんですよ。大変支障を来していますよ。そのことも踏まえて、何らかの形でもっと納得のできる返答を、この連合審査が終わる段階で結構ですから出していただきたいということを私はお願いしておきます。いいですか。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、いわゆる村山先生の御意見にどこまで沿えるかということについては必ずしも私は明確な自信を持っておりませんが、やはりその要求に対しては、我々のぎりぎりのお答えの限界については申し上げるべきであろうと思っておりますから、いま一度政府部内で検討させていただきます。
  79. 村山富市

    ○村山(富)委員 それでは次に移りますが、これはどなたからお答えいただけばいいのかわかりませんけれども法案の提出の仕方についてこの際意見を述べて、お尋ねしておきたいと思います。  百二国会には児童扶養手当法の改正案が出ました。この改正案の中の、いろいろありましたけれども改正された中の一つに、この給付費の負担の割合について、今までは十割全部国が負担しておったわけですが、それが百二国会で国が十分の八、地方が十分の二というふうに改正されたわけです。それは社会労働委員会審議されたのです。  そして今度は、この十分の八が十分の七に改正をされるわけです。その改正される案件は大蔵委員会にかけられた。しかもその児童扶養手当法の改正案が、この国会に出ていなければいいですが、この国会には出ているわけですよ。同じ法律が一方では社会労働委員会審議をされる、一方では大蔵委員会審議をされる、こういう法案の処理の仕方、扱い方については問題があるのではないかと思う。  これは単に十分の八を十分の七にするという補助率引き下げだけの問題ではなくて、一体この児童扶養手当というのは、国がもっとウエートを持った責任を感ずべきか、あるいは地方自治体がもっと責任を感ずべきか、その負担割合はどうすればいいかというようなこともやはりその理念とかかわり合いがあるんですよ。それをこれだけ切り離して、大蔵委員会で別個に審議をしてもらうというような扱い方については若干問題があるような気がするのですけれども、どうでしょうか。
  80. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 児童扶養手当の改正問題の御質問でございますが、昨年、児童扶養手当制度につきましては大幅な制度改正をいたしまして、当時、国が十割負担をしておりました給付に要する費用の一部、具体的には昨年の段階では二割、これを都道府県に負担していただく、こういうことも含めた内容になっておったわけでございます。この改正は、児童扶養手当制度そのものを、従来年金の補完的制度ということに位置づけられておりましたのを純粋の福祉制度に改めまして、費用の面でも新たに都道府県の負担を導入するという児童扶養手当制度独自の改正内容としたものでございます。したがいまして、これは当然全体を一つ法律案として社会労働委員会で御審議いただいたわけでございます。  今回のことしの改正でございますが、給付額の引き上げについては、これは児童扶養手当制度独自の問題でございまして、さきに社会労働委員会で御審議をいただいたわけでございますが、この給付に要する費用の国の補助率の問題につきましては、昨年から検討委員会でも他の補助率と一体的に御検討いただき、また政府といたしましても、補助率についての全体的な総合的な見直しという観点に立って他の制度措置と一体として特例措置を講じよう、その一環でございますので、このいわゆる一括法に掲上をいたしたものでございまして、児童扶養手当だけの補助率を特別に変えるというものではございませんので、こういう整理を行ったわけでございます。
  81. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、これは厚生省の局長答弁するという性格のものでなくて、やはり国会全体の問題ですから、政府法案を提出する場合の扱い方についてきちっとしてもらう必要があると思うんですね。同じ法律改正案が、一方は社労委員会、一方は大蔵委員会、ばらばらで審議される。これが社労委員会の方に出ていなければいいですよ。だけれども、同じ法律改正案が出ているわけですから、一緒に審議したらいいじゃないですか。それをこっちの方に一括にくくって別個に審議するということについては問題があると思いますから、もうここでは言いませんけれども、今後十分検討してもらいたいと思うのです。  それから次に、補助金等の定義について若干聞いておきたいと思うのです。これは前回も聞きましたし、また予算委員会でも議論があったようですけれども、ここに厚生省がつくった資料がありますけれども、この資料によりますと、「補助金等とは、国が、国以外の者に対して交付する次に掲げるものをいう。」「一 補助金」これは狭い意味補助金ですね。それから「二 負担金」「三 利子補給金」「四 その他相当の反対給付を受けない給付金であって政令で定めるもの」こうなっているわけです。  狭い意味補助金負担金とはどう違うのか、これを調べてみますと、狭い意味補助金は「相手方が行う事務又は事業に対して、これを助成するために、あるいは奨励するために財政的な援助として交付する給付金」これを狭い意味補助金という。それから負担金とは、「相手方が行う事務又は事業につき、交付側も一定の義務あるいは責任があるので、その義務あるいは責任程度に応じて相手方に対して交付する給付金」、こういうふうに意味を分けているわけですけれども、これはそのとおりでいいですか。
  82. 保田博

    ○保田政府委員 厳密な意味での差、いろいろあろうかと思いますが、先生の御質問の中にあったとおりと我々も理解をいたしております。
  83. 村山富市

    ○村山(富)委員 それで、私もこの補助金負担金の中身をいろいろと調べてみたのですけれども、必ずしもこういう意味合いでもって区分けをされておらない。例えば生活保護なんかの問題は、法律では負担金となっていますけれども、しかし名称は補助金になっている。私はこの際、補助金負担金の使い分けをきちっと意味合いに応じて整理したらどうかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  84. 保田博

    ○保田政府委員 正確には法制局の担当する事務であろうと思いますけれども、この問題につきましては過去何度か御議論がございまして、地方財政法が、地方財政の基本を定めるという観点から国と地方費用負担のあり方の基本原則を定めておるわけであります。これに対して各実定法でまた負担金とか補助金とかいろいろ書いておりますが、これらは個別、具体の実態面からとらえました事柄の性格に即して書き分けているといったものもございます。しかしこれにつきましても、たしか五十一年でございましたか、かなりの程度におきまして地方財政法並びに個別の補助、負担の基本となっております実定法について整理がなされてきておるわけであります。ただ、御指摘のように、地方財政法上の負担として掲げられている経費でありましても、実定法におきましては、厳密な意味での負担以外の経費、先ほど先生がおっしゃいましたような補助的な経費ですね、奨励的といいますか助長的な経費、そういうものも含めたものとして補助という言葉を使っているという場合も確かにあるわけでございます。  しかし、いずれにせよ、そういう実定法上の相違はございますけれども地方財政法の第十一条に規定がございますように、経費の種目でございますとか算定基準あるいは負担割合は法律または政令で定められておりますので、そういう意味で、多少補助、負担という言葉の使い方について食い違いがあったとしましても、地方が事務の経費について過重な負担を課せられることのないようにという地方財政法第十一条の趣旨は守られているのではないかと考えております。
  85. 村山富市

    ○村山(富)委員 趣旨が守られているとか守られてないとかいう意味ではなくて、私は、やはり整理する必要があると思うのです。  昨年の十一月二十七日に出された地方制度調査会の答申を見ましても、国と地方公共団体の「共同責任という観点から国が義務的に支出すべき国庫負担金と、奨励的ないし財政援助的意図に基づいて国から支出される国庫補助金との性格の相違を十分踏まえて、整理合理化を行うべきである。」こういう指摘もあるわけですね。これは、都合のいい答申はすぐ採用して、都合の悪いものはなかなか採用しないというくせがありますね。こういう答申に対して、自治大臣、どうですか。考えを聞かせてください。
  86. 小沢一郎

    小沢国務大臣 地方制度調査会であれ何であれ、そういういろいろな見識のある方の議論は尊重されるべきものと心がけております。  それからまた補助金負担金の問題でございますが、これは地財法に正確に規定されておりまして、先生御指摘のように、用語の使い方等も含めましてできるだけきちんと分けられる方が望ましいであろうと考えております。
  87. 村山富市

    ○村山(富)委員 それからまた国会審議のあり方についてちょっとお聞きしたいのですけれども内閣委員会地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律案というのが出ていますね。この内閣委員会に出ておりまする整理合理化法案とこの大蔵委員会審議されておりまする補助金等の臨時特例法とは関連がありますか、どうですか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょっとつけ加えまして、補助金負担金問題につきましては、昨年も御指摘の、実定法上の文言と予算科目の名称との関連を整理すべきではないかという問題について、これまでの沿革等をさらに研究し、御指摘の趣旨を踏まえ、今後幅広い勉強をしてまいりたいというのが、昨年の細谷議員の古屋自治大臣に対する御質問で一つ残っておりましたので、つけ加えさせていただきます。  それから、今の問題でございますが、両法案の間には、社会保障関係補助率引き下げに際し、機関委任事務を団体委任事務に改める等の事務事業見直しを行ったことを一つの契機としているものがあって、関係はあるものの、各法案はそれぞれが共通の趣旨、目的により体系づけられていることから、別途一括化し審議いただくことが適切と判断をしたということで整理をさせていただいておるわけでございます。
  89. 村山富市

    ○村山(富)委員 「補助金問題関係閣僚会議決定について」という文書がありますけれども、その中にある文言かどうかわかりませんが、こういうことが書かれております。「非公共事業の分野については、政策分野の特性に配慮しつつ、社会保障を中心に事務事業見直しを行いながら、補助負担率バランスにも留意して、見直しが行われた。」「社会保障関係等で、施設への入所措置に係る事務を国の機関委任事務から団体事務化する等国と地方の機能分担のあり方を見直すことに伴い、補助負担率引き下げられた」。これは、この種の仕事について機関委任事務から団体委任事務に移行されたことによって、どちらかといえば地方公共団体の方に責任のウエートがかかっていった、したがって補助率は二分の一でよろしい、これは明らかに連動しているわけですね。  私は、ここで審議されております補助率引き下げと、内閣委員会審議されることになっております整理合理化法案とは密接不可分の関係があると思うのです。どちらかといえば、この事務事業性格から考えて、これは国が当然行うべき機関委任事務とすべきだ、あるいは団体委任事務とすべきだということが前段に議論されて、その結果補助率が下げられた、こういう順序で議論されるのが本当ではないかと思うのだけれども、全然別個に切り離されて議論されているというやり方についてはやはり問題があるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり行政改革意味、事務事業の整理というような面、それは内閣委員会の方に行って、集約されている、こちらは補助金問題等、つまり財政改革的重点、そういう意味において総括した、そういう性格の差があるのではないかと思います。
  91. 村山富市

    ○村山(富)委員 今私がここで読み上げましたように、機関委任事務から団体委任事務に変えた。したがって、今までは仮に十分の八の補助率だつたけれども、移行することによって補助率は二分の一でよかろう、こういう関係があるわけですね。これは皆さんうなずいておられるとおりです。仮に内閣委員会でその整理合理化法案がこの国会では成立しなかった場合に、補助率を下げられる分だけ先に行って、そして制度の変更はなかった、こうなった場合には、これはどうなりますか。
  92. 保田博

    ○保田政府委員 多少技術的にわたる部分がございますので、私の方から答弁をさせていただきたいと思います。  御指摘のように、今回御提案申し上げております補助金の一括特例法案におきまして、公共事業以外のいわゆる非公共事業の分野では、社会保障の補助率見直しの主要な部分を占めておるわけでございます。そしてまた、その社会保障の補助率見直しのまた非常に大きな部分につきましては、先生御指摘のように、従来からの機関委任事務として法律上観念されておりましたものを、その実態等に即しましてこれを団体委任事務というふうに見直しをする、事務の性格もそのようなものとして考えることにしたわけでございます。しかしながら、法的に申し上げますと、このような事務の性格というものと補助率というものは必ずしも連動ということとは限らないというふうに実は考えておるわけであります。  御承知のように、事務事業見直しということにつきましては、かねてから行革審の答申等にもございまして、地方の自主性あるいは自律性の強化といったような広範な行政改革提言の一つとして問題が提起をされておりましたので、それらの関連する指摘事項を一括して措置をするということで、総務庁の方から提出を予定しております機関委任事務整理法案に一括して盛り込むということにさせていただいた。そういう措置をいわば横目ににらみながら、一方では老人ホームへの入所措置でございますとか保育所に対する入所措置といったものの性格づけを変更する措置をとりながら、それをいわば横にらみといった格好で補助率見直しをさせていただく。したがって、この補助率負担率見直しといったものは、そのほかの補助率負担率と同じような趣旨、目的に出るものでございますので、一つのまとまった体系としてこれを法案におまとめし、御審議をいただいておる、こういうことでございます。
  93. 村山富市

    ○村山(富)委員 大変無理な答弁をしているようだけれども、僕は、それはやはり理屈としてはおかしいと思うのですよ。国の役割分担、地方公共団体の役割分担、財政の流れ、負担の仕方、補助の出し方等々を総合的に検討して、そして今度の改正案が出された、平たく言えば。そうすれば、この仕事はやはりもう地方自治体の方にうんと定着してむしろ地方自治体が責任を持ってやった方がいい、こういうことについては機関委任事務から団体委任事務に変えようとかということがやはり議論されてなっておるのでしょう。そうしますと、従来どおり機関委任事務でやるとすれば補助率は変更する必要がない、しかしたまたま団体委任事務に変わったから補助率は下げてもいいのではないか、こういう理屈になるのであって、何かそれは全然別のような答弁をされたって、これは通りませんよね。これは自治大臣、そうでしょう。あなた、うなずいておられる。
  94. 小沢一郎

    小沢国務大臣 機関委任事務やいろいろないわゆるそれらの法案については、直接に補助、負担率と絡まないものもあるかもしれません。しかし、先生御指摘のように基本的にはそういう密接な関連を持っております。したがいまして、その意味で、先生のおっしゃるような論議の仕方として、例えば保育所の問題は本体の法案と一緒にして論議すべきだという御意見も、それは一つの御意見であると私も理解いたします。  ただ、今回の場合につきましては、一番問題になっておりますのがとにかく国と地方の事務事業見直し、権限の問題、省で言えば各省あるいは各委員会、そういういろいろな問題を含んでおりまして、そういう意味におきましては、今回二つの見方に分けまして、事務事業、権限移譲等々の問題はそういった基本的な理念の中で一括して議論をしていただく。それもまた審議の仕方とも関連はしてきますけれども、それはそれで、それぞれの目的等に照らし合わせまして必ずしも不当な議論の仕方ではない、私はそのように考えております。
  95. 村山富市

    ○村山(富)委員 これもまたこれ以上議論しても仕方がないので、もうこんな審議の仕方をすれば、極端に言えば、国会大蔵委員会内閣委員会だけあればいいのですよ。私はやはり今後の問題としてまた議論したいと思うのです。これは十分ひとつ検討しておいてもらいたいと思うのです。  それから、今度の暫定措置は三カ年間になっておるわけですけれども、昨年の高率補助の一律引き下げ、あるいは行革関連特例法の延長等については、衆参両院で、一年間の暫定措置とするということがそれぞれ議決されたわけですね。この国会の議決、附帯決議が完全に無視されておるというふうに思うのですが、これはどうなりますか、この三年間を経過したらもとに戻るのか、あるいは三年後もこのままでいくのか、さらに見直しが加えられていくのか、これはどういう扱いになるのですか。
  96. 保田博

    ○保田政府委員 今回御提案申し上げた補助金の特例は、おっしゃるとおり三カ年でございます。この三カ年の補助率等の暫定措置を講ずるに当たりましては、先ほど来先生の御指摘のように、事務事業見直しその他いろいろな勉強をし、各方面からの御意見も聴取いたしました。地方公共団体の代表者にも参加していただいております補助金問題検討会等々で十二回にわたる御審議をいただいた結果をこのような法案でお取りまとめをしたわけでございます。そういう意味で、六十年度におきます国の財政事情からとにかく地方公共団体に御無理をお願いして補助率を下げたものとは、性格がかなり違うのでございます。  したがいまして、この三カ年の特例期間が経過した後、じゃこの補助率負担率の特例というものをどうするかということでございますけれども、社会経済情勢の推移でございますとか、事務事業性格がそれによって相当変わってくることもあり得るわけでありますし、それからまた、補助金負担金というものは、一つには国と地方との間の財政調整の一環をなすものでもございますので、三カ年を経過いたしました時点で、国と地方財政状況といったようなものも考慮に置きながら総合的な判断をさせていただきたいと思っております。現時点で、四年後の補助率負担率をどうするかという確たる方針を持っているわけではございません。
  97. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは大蔵大臣のような答弁だな。  重ねてお尋ねしますけれども補助金問題関係閣僚会議の大蔵大臣厚生大臣自治大臣、内閣官房長官が協議をした中で「昭和六十一年度以降の補助率のあり方について」という文書がございますが、この第二項に「生活保護に係る補助率については、昭和六十一年度から六十三年度の三年間は十分の七とし、その後のあり方については、改めて、大蔵・厚生・自治の三大臣が協議して定めること。」こうなっているわけですが、この「生活保護に係る」部分だけ特別にこういう項目を挙げだというのは何か理由があるのですか。これは厚生大臣に。
  98. 今井勇

    ○今井国務大臣 生活保護の補助率につきましては、検討会で最終的な結論が得られなかったわけであります。そんなことで、予算の最後のときにの取り扱いを別に示したものでございまして、今後の検討によろうということになったわけでございます。しかしながら、生活保護という問題は、憲法二十五条の理念に基づきまして、最終的には国の責任国民の最低生活を保障するものということでございますので、今後議論をしていこうじゃないかということになったわけでございます。
  99. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは報告書を見ましても、三分の二にすべきだという意見と十分の八にすべきだという意見とがあった。生活保護制度そのものの憲法上の解釈からいっても当然そういう意見があったと思うのですりこれが十分の七になったというのはどういう経緯ですか。
  100. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、社会保障関係は二分の一にしよう、しかし特に国の責任にあるのを三分の二にしよう、こういう意見が一方あると同時に、一方はやはり従来の十分の八であるべきだ、そこでいろいろ議論をして、これだけが両論併記になった。何分、今村山さんおっしゃいますとおり、これは昭和二十一年以来のたび重なる議論が行われております。私もこれは読ましていただいて、当時から驚くべきほど熱心な議論が行われておるということを承知いたしたわけであります。  そこで、今申しました両論併記となった経緯は、国の財政事情と事務事業性格とを総合勘案して、まあ六十年度における補助率を、とりあえずという言葉はまた引っかかりますから、それを維持しておこうやということで結論が出た。六六・六六六と八の中をとったとか、そういうことではなく、六十年度の分をとった、結論からいうとそういうことであったというふうに思っております。それだから、最終的に三年後にはまた三大臣で協議しなさいよということが決定をされたという経過でございます。
  101. 村山富市

    ○村山(富)委員 後で総括的に私は要求したいと思うのですが、総理、あなたは一九八五年の九月五日の政府主催による全国知事会議に出られましてこういうあいさつをされていますね。これはなかなかいいあいさつですけれども、「この問題につきましては、われわれも実は恐縮しているところでございまして、昨年は必ずしも連絡が十分でなかった。そういう意味におきましていろいろご迷惑をお掛けしたことも反省をいたしております。」「一番大事な点は、地方の公共団体の皆様方とよく連絡を密にして、ご意見を十分承り、十分ご理解を得たうえで、両方が納得しつつ行う。そういう進め方が非常に大事であり、反省すべき点があったと思うのでございます。」こういうあいさつをしているわけですけれども、このお考えは今も変わりませんか。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 変わっておりません。昨年の場合は、特に地方の六団体との話し合いが必ずしも円満に事前にいっているとは限らない点がありまして、ぎくしゃくした点があって非常に恐縮に存じたところでございます。それを反省して、六十一年度の場合には、十二月のころから大蔵省も自治省もよく話し合い、また六団体の皆さんとも関係省庁でよく話し合って御理解を得るように努力するように、そういうことを指示しまして、去年の十二月の場合にはそういう点ではかなり積極的に努力したつもりでございます。
  103. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは私の手元にも各議員の手元にも来ていると思うのですけれども、各地方議会の国庫補助負担率一律引き下げ反対に関する意見書というのがどんどん出ています。これは全国的に出ています。こういう地方自治体の意向から見ますと、あなたが言われていることは必ずしも実践をされておらない。本当に理解と納得した上で協力し合ってやるという姿になっておらないと思うのですけれども、そうした地方公共団体の意見がこの問題の結論を出すまでに反映された、そういう経緯はあるのですか。この結論が出るまでの経緯はどうですか。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょっと経過を私から申し上げます。  昨年の国会でそれの御指摘を受けて、それで総理からもお答えがございましたような感覚に私どもも立ちましたので、去年予算が通りました後、五月二十七日に補助金問題関係閣僚会議というものを決定する。そうして、その検討をするために補助金問題関係閣僚会議が有識者を集めていわゆる検討会をつくったという経過に立つわけであります。  それでメンバーも、これは自治団体関係の先生方を初めからこの検討会にはお願いしまして、それから今度は自治団体の意見聴取を随分それぞれの立場において行って、したがって五月三十一日から、総理のごあいさつがあれはたしか六月でございましたか、ずっと引き続いてやって十二回、十二月二十日に報告案の審議で、それで今度閣僚会議で決定した。去年のことがございますから、総理からもお答えがありましたように五月以来これに精力的に取り組んだ、こういうことでございます。
  105. 小沢一郎

    小沢国務大臣 基本的に、自治省といたしましてはそういう地方団体の実情あるいは意見、要望等々を踏まえまして、できるだけそれを国政の中に反映させるように従来とも努力をいたしてきたところでございます。特に今御議論いただいております補助、負担率等の問題につきましては、これはただ単に国の財政事情だけでそういう負担率の変更というのはよろしくない。したがって、先ほどの議論とも関連いたしますけれども、国と地方の事務事業と役割の分担、そういう本当に真剣な議論の中から負担率、そのあり方というものは決定されていくべきものである、そのように私ども考えておるわけであります。  特に補助金問題等につきましても、地方団体から後で、いわゆるその政策目的を既に達したもの、あるいは重複するもの、あるいはその補助金を受ける点についての事務の煩瑣な複雑な問題等々、そういった意見等を十分お聞きいたしておりまして、まさに今後それらの問題について真剣に考えていかなければならない、そういうことであると理解いたしております。
  106. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは手順からいえば、関係閣僚会議があって、その関係閣僚会議の決定によって検討会が設置されて、その検討会を中心にして議論をされてきて、そしてその報告を最大限に尊重して今度の予算編成をされた、この法案をつくられた、こういう経過になっているわけでしょう。この報告書がどういう審議経過を経てどういう意見が反映されてこういう結論になったのかということがわからないと、ちょっと審議のしようがないですよ、本当言いますと。総理大臣があいさつされたように、車の両輪で全く緊密な連携をとって納得の上で結論を出してきた、こういう経過があればこんな意見書が出るはずがない。  私はちょっと申し上げますけれども厚生大臣、例えばこの福祉水準なんかは、どういう観点からどの程度の水準に維持すべきか。この水準が設定される場合には、例えば福祉を行う対象の範囲とかあるいはサービスの内容とか負担の均等とか、こういう問題が議論をされて、どの程度の水準に維持すればいいということが全国的になされて、それを維持するために国が補助を行う、こうなると思うのですね。ところが、実際にこの報告書を見ますと、できるだけ地方独自の機能を発揮できるようなものにすべきだという意見がありますね。そうしますと、今だって、例えば保育所の料金なんかはばらばらでしょう。そういう地方公共団体が持っておる財政力の格差というものが福祉の水準を全国的にばらばらにしていくのじゃないか、こういうことが心配されるのです。そういう点についてはどう考えますか。
  107. 今井勇

    ○今井国務大臣 お説のように、社会福祉の分野につきましては、まず地方の自主性を尊重するという意味から、事務事業見直しを行いまして、それに伴って国と地方負担区分を変更するというのが当然だろうと私は思うわけです。今回の負担区分の変更に伴いまして確かに地方負担は増加しますが、そのための所要額につきましては地方財政の対策で手当てが講じられているわけでありますから、全体から見れば、給付水準の低下を招いたりあるいは事務事業の実施に支障を生ずるというようなことはないのじゃないかなと私は思います。
  108. 村山富市

    ○村山(富)委員 よくわからぬけれどもね。これは報告書全体に関連する問題ですから、一つの問題を私は指摘しておきたいと思うのですが、これはこの報告書を作成した検討会から解釈を聞かなければならぬ点もあると思うのです。  例えば、補助率を決定する要素として三つ挙げているわけです。「国として当該行政に係る関与の度合やその実施を確保しようとする関心の強さ」、二つ目は「地方の住民に与える利益の程度」、それから三番目が「国及び地方財政状況等の諸要素」、この三つの要素を「総合的に勘案の上、決定される」としているが、この三つ以外に「等の諸要素」というのがあるのかないのか。この三つの要素は一体どういうことを意味しておるのか、これをちょっと解説してくれませんか。しかし、これは検討会の方に聞かなければわからぬのだろう。  そこで、もう時間もございませんから申し上げますけれども、さっき申しましたように、今度のこの法案というのは、予算編成も含めてそうですけれども、検討会の結論を最大限に尊重して措置された、こういうことがはっきり言われているわけですね。したがって、今まで議論をされたような問題についてさらに深めていくためには、検討会でどのような議論がされてきたのか、どのような意見が出されたのか、それから、総理大臣が言われるように地方公共団体の意見がどの程度反映をされて組み込まれておるのか、こういう問題を理解するためには検討会の中身がわからないと報告書だけでは理解できない。したがって、審議はしにくいというように思いますから、その議事録を提出することを要求します。
  109. 保田博

    ○保田政府委員 補助金問題検討会の議事録を提出せよという御要求でございますけれども、この検討会におきましては、いろいろな立場の方々から率直に自由な御発言をいただきたいということから、実は速記録等はとっていなかったと思うのです。我々のメモ程度のものはございますけれども、いずれにいたしましても、非公開という前提でいろいろな御発言をなさっておられます先生方のお立場も考えなければいけないのではないか、そういう意味で議事録の提出は差し控えさせていただきたいと思います。どうか御容赦をいただきます。
  110. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、検討会そのものは、いろいろな意見が出しやすいから非公開でやったのかもしれません。したがって、だれがどういうことを言ったなんということまで求めるのは無理かもしれませんけれども、例えば生活保護費の問題について十分の八でいくべきだ、三分の二にすべきだという意見があったのですね。こういう議論をする場合に、生活保護の問題について一体国はどういう責任を持つべきだとかというようなことが議論をされた上でそういう緒論になったのかどうかという経過がわからないと、本当言いましてこれは議論のしようがないのです。  もっと申し上げますと、最後に私は申しましたけれども補助率を決める要素というものは、一体どういう考え方でそういう要素がつくられたのか、その議論の経過というものがわからないと私どもはこれでいいのか悪いのかという判断はつきませんよ。それから、国と地方自治体との役割分担等々についてどんな議論がされたのか。もしその議事録が出なければ、生活保護費が何で十分の七になったのか、一つずつ項目について全部聞かなければいけませんよ。これだけ重要な問題ですから、やはり慎重な審議をして結論を出すために、あなた方も検討会の結論の経過、報告を最大限に尊重してつくったと言っているわけですから、その最大隈に尊重された検討会の審議の経過というものがわからなければ我々は審議のしようがないのですよ。出してください。
  111. 保田博

    ○保田政府委員 議事録につきましては先ほど申し上げましたような理由によりまして御容赦をいただきたいと思うのでございますが、先生方の御意見を総合的にまとめましたのがごらんをいただきますような検討会の報告でございます。その中にはいろいろな考え方があったということもお読み取りをいただけるのではないかと思いますので、それでお許しをいただきたいと思います。
  112. 村山富市

    ○村山(富)委員 議事録がなければ、メモを整理したのでもいいですよ。この問題についてはこういう意見がそれぞれ出ました、そしてこういうまとめになりました、その経過だけでもわからないと、これは本当審議のしようがないのですよ。これは大臣が答えた方がいいのではないですか。
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 十二回やっておりまして、もちろん議事録はございません。そうして、その十二回やったのを集約したものが報告として出ておるということでございますが、その十二回やったときの、あるいは御審議の手がかりとなるようなポイント、ポイントぐらいは書けるかもしれませんので、これは少し時間をちょうだいしたいと思います。
  114. 村山富市

    ○村山(富)委員 具体的には申しませんけれども、例えばこの報告書の中にこういうことも書かれているわけです。「ややもすれば地方行政の自主性を損なったり、財政資金の効率的使用を阻害する要因となる等の問題点があり、従来から既得権化、惰性的運用、補助金待ち行政あるいは陳情の招来などの種々の指摘がなされているところであり、常にその見直しを行っていく必要がある。」こういうふうに述べられていますね。これは一体奨励的意味における補助金対象にして言っているのか、あるいは生活保護等を含めた、さっきの分類でいえば機関委任事務も含めてこういう傾向にあると言われておるのか、私どもにはわからぬわけです。こういう理屈づけといいますか理論づけというものがはっきりつかめないと、何でこんな結論になったのだろうかとか、なぜ補助率を下げたのだろうかということが実際問題としてわからないわけです。  それからさらに言いますと、さっきちょっと私は補助率を決める要素について申し上げましたけれども、「国として当該行政に係る関与の度合やその実施を確保しようとする関心の強さ」、ちょっとわからぬですね。「地方の住民に与える利益の程度」、これはどういう利益を意味するのですか。「国及び地方財政状況等の諸要素」、こうなっていますね。そうしますと、国の財政状況によってはもう文句なしにどんどん負担転嫁されていくということになっていくのか、いや、そんなことじゃないということになるのか。こういう要素は何でつくられたのか、何を物差しにされたのかということがやはり理解できないと、これは議論になりませんよ。ぜひ私はやはり出していただきたいと思う。それてなければ審議になりません。
  115. 竹下登

    竹下国務大臣 議事録は正確なものをとっておりませんので、可能な限りどんなものができるか、検討させていただきます。
  116. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、内閣が予算を編成するためにも、制度を変えるためにも最大限尊重して行うというような、こういう重要な検討会の審議の中身について何もないのですか。議事録をとらないのですか、こんなものを。しかも、国会審議するのに必要である、こう言っておるのに、そんなことで済まされますか。
  117. 竹下登

    竹下国務大臣 これは議事録を整理しておくべき性格の会合ではないと、私も初めからそう思っておりました。先ほど御意見にもあったように、だれがどう言ったとかこう言ったとか――しかし、ポイント、ポイントというのは大体私どもにもわかっておりますが、それらを総合して報告書になって、そうして閣僚会議がその報告書を尊重して取り上げたわけでございますから、やはりそれぞれについては政府部内の者が責任を持ってお答えをすべき責任が私どもにあるではないか。ただ、ポイント、ポイントについては私でも幾ばくかわかるぐらいでございますから、その程度のものは、それこそ早急に相談をさせていただきたいと思っております。
  118. 村山富市

    ○村山(富)委員 何ですか、これはちょっと聞きますけれども、そういう会合の場合には、発言をした発言の中身というのはもう言いっ放しですか。
  119. 保田博

    ○保田政府委員 テーマを大体定めまして、その問題点等について格別の識者から御意見の開陳がございまして、それに対してほかの先生方からはまた同じような立場あるいは逆のような立場からそれぞれ御議論がございました。言いっ放しで議論がないということではもちろんございません。
  120. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、言いっ放しかという意味は、発言されたことが議事録、速記をとって議事録にするということは別にして、こういう意見があった、こういう意見があった、こういう意見が述べられたというようなことについては全然何もないのですか。そしてこの報告書をまとめられたのですか。
  121. 保田博

    ○保田政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますような事情でございまして、速記録を整理して発言者に送付するといったようなことも差し控えさせていただいております。
  122. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、だからそれは、検討会の議論の仕方として、これは外部に出しません、これは秘密ですから自由に発言してくださいと言って発言されるかもしれませんよ。私は、どなたがどんなことを言ったというようなことまでわからなくて結構だ。しかし具体的な個々の問題について、この補助率は何ぼでよろしい、これはこうすべきだというような結論が出るまでには、それぞれの立場からいろいろな議論があっているはずですよ。そしてそういう議論の経過が大事なんですね。それがわからなくてはこれはちょっと審議のしようがないわけですよ。  委員長、これは何とかしてくれませんかね。
  123. 小泉純一郎

    小泉委員長 ただいまの村山委員の質問の件につきましては、理事会で検討いたします。
  124. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間が参りましたからあれしますけれども、さっき最後に言いました補助率を決定する要素ですね、これは三つの要素が言われているわけですけれども、ちょっと解説できますか。これは大臣に聞いておる、大臣に。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的にどのようなことを意味するかということ。一つ、事務事業地方への同化定着状況、それから二番目が国と地方との間の機能分担と財政状況、それから三番目が公共事業における社会資本の整備状況、それから四番目が財政状況の良好な地方公共団体向けの補助金等の抑制措置等々を総合的に勘案することを意味しておるというふうに整理しております。
  126. 村山富市

    ○村山(富)委員 いや、今私が申しましたこの三つの要素は、この「実施を確保しようとする関心の強さ」、この「関心の強さ」というのはどういう物差しではかるのか。それから「地方の住民に与える利益の程度」の「利益の程度」というのは、どういう利益を指すのか。それから「総合的に勘案の上」、こうある。「財政状況等の諸要素を総合的に勘案の上」、この「等」という言葉の中にはまだ何かほかの意味があるのか、わからぬでしょう、こんなことは。どうですか、これは。
  127. 保田博

    ○保田政府委員 御指摘のまず第一点の「国として当該行政に係る関与の度合やその実施を確保しようとする関心の強さ」というのは、国が国民全体の立場から例えば生活保護などについて全国一定レベルでとにかく確保しなければならないといったようなものがあるとすれば、それは国がその社会保障に対してあるいは国民の最低限の生活を保障するという面において関心が強い、そういうことであろうと思います。  それから次に「地方の住民に与える利益の程度」でございますが、これらにつきましては、この報告書にもございますように、比較的地方公共団体の住民に身近な行政についてはできるだけその身近な行政をすべき地方公共団体の御負担割合が高くてもいいのではないか、こういったようなこと。  第三は「国及び地方財政状況」でございますが、これにつきましては先ほど来御答弁しておりますようなことでございます。「等」につきましては、また先ほど大臣から御答弁ございましたようないろいろな補助率考えるについての諸要素があります。そういうものを総合的に勘案させていただきます、こういうことでございます。
  128. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間が参りましたからこれでやめますけれども、冒頭に申し上げましたように、やはりこういう措置というのは地方自治体の財政に大変大きな負担になっていく。これは税収がどんどん伸びていく傾向にあるときならいいのですけれども、五十九年度の地方財政の決算を見ましても、相当やはり厳しいものがあるわけですよ。借金はふえていく、そして国からまた負担がどんどん転嫁されていく。したがってどこに持っていくかといえば、これはやはりいろいろな名目をつけて受益者負担をふやしていくかあるいは水準を下げていくかしかないわけですよ。そういう全体の冒頭に申しました社会保障や社会福祉が後退していく政治の流れに対して、お年寄りや身体障害者は大変不安に思っておる。これは新聞の投書なんかも、最近そういう投書が多いですよ。  そういう問題について私は、やはりこういう補助金の問題を議論する際に、国が国民の生活に対して、とりわけ社会保障や社会福祉に対して一体どういう責任を持つべきか、国はどうあるべきかということが自治体との行政の関係の中で十分議論されて、そして国民が安心できるような措置をとられるということが大事ではないかと思うのですけれども、最後にひとつ総理の見解を聞いて、終わりたいと思います。
  129. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の皆さんの生活の実態をよくわきまえまして、それから国と地方との仕事の分担、協調の割合というものをよく見定めまして、そして両方で協力し合う円満な協調関係をつくり出していくということが望ましいと思います。
  130. 村山富市

    ○村山(富)委員 終わります。
  131. 小泉純一郎

    小泉委員長 午後二時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ――――◇―――――     午後二時開講
  132. 小泉純一郎

    小泉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田弘君。
  133. 柴田弘

    柴田(弘)委員 きょうは、せっかく総理も御出席をいただいておりますので、本題の補助金カット法案に入る前に、私は、地元のことで恐縮でございますが、今民活、民活と言われておりますが、伊勢湾岸道路の民活の問題について御見解を伺いたいと思います。  既に、建設省の方から愛知県に対して、海上部の五キロ、つまり中央大橋と東大橋について、二つの案、公団案と公社案が示されました。総事業費千三百四十億円と承知をいたしております。今、愛知県の方も名古屋市と検討いたしまして、あす、県、市がそろって地元の経済界に協力を要請をする。私ども仄聞するところによりますと、恐らく公団案で話がまとまって早急に建設省の方に御返事があるのではないか、建設省の方も公団案ということを建設大臣等が記者会見でちょっと漏らされたということがありますね。まずその点。  それから今後のスケジュール。地元の方から返事が来た場合、一体どのように六十二年度に向けて建設省としては対応されていかれるのか。まずこの辺からお伺いをしたいと思います。
  134. 江藤隆美

    江藤国務大臣 伊勢湾岸道路につきましては、大変熱心に御推進、御協力をいただいてありがとうございます。御意向のように、前々から約束をいたしておりまして、三月じゅうに建設省としての素案を持ちまして地元の愛知県と名古屋市に御相談に伺います、こういうことでございましたから、先般来中部地建の局長を使いといたしまして、知事さんと市長さんに御協力をお願いに参ったわけであります。  内容は、もう御承知のように、この道路は豊田市から四日市市、いわゆる東名の豊田から東名阪の四日市まで約五十キロでありまして、全部やりますと総工事費約六千億かかります大プロジェクトでございます。  そのうちの中央部の橋を二橋、千三百四十億で建設をしよう、こういうことでございまして、何せ採算が悪いということが予測されるものですから、道路公団でやる方法、愛知県の道路公社でやる方法、それから名古屋市が持っております名古屋市高速自動車公社でやる方法、その場合のメリット、デメリット、それからおのおのの資金計画、民間資金の調達方法、金利その他もろもろのことを検討いたしまして、案としてこの三つを実は提示をいたして、今月の中ごろに御返事をいただく、こういうことだったわけでございまして、ただいまお話のように地元の経済界と御相談をいただくものと思います。  返事が中ごろに参りましたならば、伊勢湾岸道路を一体どういうふうに建設をするか、それから建設の主体はどうするか、建設の手法その他についてはどうするかという基本方針を今月じゅうには決めたい、こういうことで、今取り進めておる状況にございます。
  135. 柴田弘

    柴田(弘)委員 建設主体ですが、先ほども申しましたように、どうも地元といたしましては公団方式。技術的な問題、あるいはまた通過交通量の問題、あるいはまた公団が明石海峡横断大橋ですか、明石大橋をやった経緯もありまして、いろいろな面からいって、私の見解ではとても公社というのは無理だと思うのです。恐らく公団方式でくると思います。  それは今後決めるということでありますが、先方から言ってきた場合に、公団方式で決まった場合にそうされるのかどうかという問題と、六十二年度に向けて概算要求というのは建設省としてはどう考えるか、つまり六十二年度の事業化、この辺の推進についてはどう考えているのか、これをもうちょっとはっきり言ってください。第一問はそれだったのです。
  136. 江藤隆美

    江藤国務大臣 この道路は東名高速道路のバイパス、国道二十三号線のバイパス、それから名古屋のいわゆる環状二号線の海岸部門という、言うならば非常に大きな、いろいろな意味でのバイパスを意味するわけであります。そういうことが一つ。それから、既に西大橋ができておりまして、これは道路公団がやりました。四日市市側は今年度、六十一年度じゅうに都市計画決定をいたします。それから豊田市側の方は一年おくれて都市計画設定になるでありましょう。一部は六十一年度から直轄で始める。こういうことでございますから、全体的に見ますと道路公団がやることが一番いいのではないかという御意向があるかとも思いますが、せっかく三つの案を地元に提示しておるわけでありますから、いずれの方法をとっても、答えが参りましたならば私どもはそれに対応して昭和六十二年度の予算要求に向けて準備を進めていきたい。そうでありませんと、東京湾は横断道路をやる、湾岸道路をやる、あるいは大阪は国際空港をやる、明石海峡大橋、湾岸道路をやるとなると、一番大事な、一番真ん中の伊勢湾というものが全く抜けるものですから、バランスの上からも、均衡ある発展という立場からも、何としても名古屋地区の開発ということを考えよう、こう言っておりますから、私どもはこの道路については積極的に進めていく、こういうつもりでおります。
  137. 柴田弘

    柴田(弘)委員 重ねてお伺いしていきますが、今大臣から御答弁がありました。整理いたしますと、つまり海上部分の五キロについては、愛知県の地元の方から御返事が来た段階で事業化に向けて六十二年度の予算要求をしていく、これはいいですね。  二つ目は、もう大臣が御答弁になってしまったものですからなにですが、つまり海上部の既に今開通をしている西大橋の二・六キロに今度の五キロの七・六キロ、これだけやっても一つの前進には違いないですが、完璧なものじゃない。東名の豊田へ、これが二十キロあります。それから東名阪四日市―西大橋の十九キロ、この五十キロが全部開通して本当の伊勢湾岸道路としての実体というものが伴ってくるであろう。でありますと、豊田の方への二十キロは先ほどの御答弁では六十一年度に都市計画決定をする、こちらの東名阪の四日市の方は六十二年度に都市計画決定をする、そして一部事業化に踏み切っていく、こういう理解でよろしゅうございますね。それをちょっとはっきり言ってください。これは大事なことなんです。
  138. 江藤隆美

    江藤国務大臣 何か言い間違いしているそうですが、四日市の方の都市計画決定が昭和六十一年、豊田の方が一年おくれまして昭和六十二年、こういうふうに(柴田(弘)委員「二年おくれるのでしょう」と呼ぶ)一年おくれます。こっちの四日市の方は昭和六十一年度に都市計画の決定、それから一年おくれましてこの豊田の方が都市計画の決定、こういうふうになります。(柴田(弘)委員「六十三年ということですね」と呼ぶ)六十二年です。それから一部六十一年から直轄で着工する部分があります、こういうことです。
  139. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それでいいですよ。だから、こうでしょう。いわゆる四日市側の方が六十一年度、それから東名阪の四日市側が六十二年度(江藤国務大臣「東名の豊田の方が六十二年」と呼ぶ)それはおかしいですよ。今そのとおりに答弁したじゃないですか。
  140. 江藤隆美

    江藤国務大臣 東名の豊田の方が一年おくれの六十二年、それから東名阪四日市側の方が、いわゆる西大橋の方が六十一年度の都市計画の決定、こういうことです。
  141. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それで結構でございます。よくわかりました。  それで、総理、あなたも民活民活とおっしゃいまして、片や東京湾横断道路、片や明石大橋、三大都市圏の中のこの伊勢湾岸道路は、中部圏の一つの目玉だと私は思っております。御案内のように、中部圏というのは最近関西あるいはまた首都圏に比べまして非常に地盤沈下が激しい、やはり何らかの対応をしていかなければならない、こういうことで考えておるのですが、この伊勢湾岸道路についての御見解を聞かしていただきたい。
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 しかし、中部圏は非常に熱気をはらんだ、そしてなかなかバイタリティーに富んだ地域に今なりつつあると思います。そういうことにしていく弾みをつけるためにも国際空港であるとか湾岸道路のことが今急速に出てきておる次第で、今建設大臣が御答弁申し上げたようなスケジュールに沿って政府は進めるようにいたします。  ただ、その場合、これは関西国際空港も東京湾横断道路もそうですが、民間の金を大いに使ってもらいたい。大体七割、八割民間の金を使っておりますが、民間の資金と民間の経営的手法というものを大いに活用していただくようにしていってもらいたいと思っております。
  143. 柴田弘

    柴田(弘)委員 続きましてもう一点、建設大臣にお伺いしておきたいのです。  笹島地区のいわゆる国鉄跡地、これは端的に言いまして市が随契で払い下げてくれ、こう言っているのですね。これは市街地再開発ということで活性化という問題が言われている。そこで、まず建設省としてこれを新都市拠点整備事業に指定されるお考えはあるかどうか、これをお伺いしておきたい。
  144. 江藤隆美

    江藤国務大臣 この笹島地区は土地が約二十ヘクタールございまして、私も、対象の地域ですから、この前新幹線から目を凝らして実は見てきました。この中に国鉄所有地が十一ヘクタールあるわけでございます。もう既に区画整理事業も終わったことでありますし、本当は昭和六十一年度にそれをやろうということだったが、地元でA案、B案二つございまして、先生御存じだと思いますが、国際的な大型の展示場やらホテルやら事務所を中心にやるかというのと、中日球場をここに移すかという二つの案がございまして、意見がまとまりませんでしたから、一年延ばしになったわけです。今いろいろと地元の総合的な調整、計画がなされておるようでありますから、地元の意向が固まりましたら、新都市拠点整備事業として昭和六十二年度の新規事業予算要求をして大蔵省にお願いをしたい、こう考えておるところでございます。
  145. 柴田弘

    柴田(弘)委員 総理、きょうは運輸大臣お見えになりませんが、先般私もこの問題で運輸大臣に質問いたしました。日本国有鉄道清算事業法案というのがありまして、その三十条に「運輸省令で定める」というのがある。市への払い下げという問題、いわゆる地方自治体への払い下げというのは今後の問題であります。その辺のところは私もよく理解をいたしておりますが、少なくとも建設省が新都市拠点整備事業で指定をする、そういったところについては、国土庁が申しておりますようにその地域地域の形態にふさわしい形で国鉄の跡地が払い下げられるべきであろう、私はこう思います。でありますから、名古屋市が何とかこれを払い下げていただいて、今建設大臣がおっしゃっておりましたように、ドームの球場をつくるかあるいは国際会議場をつくるか、こういうことを今非常に真剣に検討しておるわけでありますが、この市への払い下げ、いわゆる随契についての総理としてのお考え、私は地方自治体というものが一つ基準にあるべきものだというふうな考え方をいたしておりますが、その辺のところの御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄所有地の払い下げにつきましては、検討委員会をつくりまして第三者機関がこれを行うことになっております。第三者機関の判断にゆだねたいと思いますが、地方公共団体が優先されるということは今までの筋から見ても原則的に肯定されることであろうかと思います。そういう場合には割合に随意契約というような形が今までもとられてきたケースもあります。そういういろいろな前例等も考えて、第三者機関においていろいろ判定されることと考えております。
  147. 柴田弘

    柴田(弘)委員 もう一つ総理にお聞かせをいただいてこの問題を終わりますが、私は名古屋に住んでおりまして、笹島の跡地の利用というので一番考えるのは、全天候のドーム球場をつくったら物すごく活性化するのではないか。四万人収容ということになれば、これは名古屋駅のすぐ近くでありますから、国鉄、近鉄あるいは名鉄の駅が集中いたしておりますので、人と物と金が相当動いて、これを拠点としての名古屋市の大きな活性化につながるのではないか、このような考え方を私個人ではいたしております。その辺、もし御見解がありましたらお聞かせをいただきたい。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 なかなか壮大な、活気のあるアイデアであると思います。
  149. 柴田弘

    柴田(弘)委員 では、以上で終わりまして、本題に入らせていただきます。建設大臣、どうぞ。  今回の補助率カット法案、午前中の質疑を聞いておりましたら、総理は、本当に地方自治体の意見を聞いてやっているのだと言われた。昨年九月五日の全国知事会議におきましても、総理は、きちっと地方自治体の意見を聞いてやるのだ、六十年度の補助率一律カットは反省をいたしております、このようにおっしゃっていたわけでありますが、今回のこのカットがそういった地方自治体の意見を果たして本当によく聞いてなされたものであるかどうかを考えてまいりますと、私はそうではない、こういうふうに思っております。どうなんでしょうか、総理
  150. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 検討委員会をつくりましてかなりの回数検討していただきましたが、その検討委員会委員の中には、知事さんあるいは市長さんあるいは村長さん等も入っておりまして、そういう方々の御意見も十分承って論議された結果であると思っております。  なおまた、今後成案を処理していく上につきましては、自治省、大蔵省あるいは各大臣方におかれて、地方公共団体の六団体の皆さんにもいろいろ御説明を申し上げて御理解をいただくように努力したところでございます。
  151. 柴田弘

    柴田(弘)委員 自治大臣にお尋ねします。  今総理からいろいろ御答弁がありました。検討委員会といいますか、これは補助金問題の関係閣僚会議の決定に基づいて検討会ができまして、昨年五月から十二回いろいろと会議を重ねられた。本当に。この検討会の報告どおりの補助金の整理合理化がなされた、そういうふうにあなたは確信してみえますか、正直にひとつ。
  152. 小沢一郎

    小沢国務大臣 総理からも御答弁ございましたように、検討委員会の検討結果を踏まえながら六十一年度予算の編成も行われたと思っております。もちろん検討委員会におきましても、事務事業見直しや国と地方の役割分担あるいは補助金の整理合理化、そういう点も含めまして今後ともさらに検討していくということであろうと思います。  今回、いわゆる保育所を中心とした社会保障関係の事務事業見直し、権限の移譲等が実現できたわけであります。今申し上げましたようにこれで十分とは考えておりませんけれども検討委員会の経過を踏まえながら、そういう補助負担率というものは国と地方の役割分担、事務事業見直し等々の議論の中で考えられるべきである、そういう基本的な考え方に立ってこの六十一年度も予算編成が行われた。私どもとしては、今後とも進めるものではございますけれども、基本的にこの予算を、補助率のカットにつきましてもお互いに了承をしながら御審議をお願いしたところでございます。
  153. 柴田弘

    柴田(弘)委員 自治大臣の立場で非常に苦しい御答弁をなさっているということはよくわかります。しかし、今回の措置は六十年度の措置と余り変わらない。一つには、国の責任放棄による地方への負担転嫁。二つ目には、行財政改革の基本理念に反する。つまり行財政の簡素合理化にはならない。三つ目には、国、地方間の財政秩序を乱している。四つ目には、地方単独事業の削減を余儀なくされる。五つ目には、地方交付税の実質的な削減になる。交付税総額はこれを理由にふえません。六つ目には、地方財政は厳しい状況にある。七つ目には、補助金の整理合理化は簡素合理化、地方の自主性、自律性の強化の方向で進められるべきである。答申にもちゃんとそのように言われておるわけです。私どもはこのように考えております。  自治大臣は、検討会の意向に沿って今回の補助率カットがなされた、こうおっしゃるのですが、今回の経常経費六千百億円、投資的経費五千六百億円、合計一兆一千七百億円。これは昭和五十九年度に対してでありますが、六十年度のカットの五千八百億に比べて二倍以上であります。  そこで、いろいろお聞きしていきたいと思うのですが、個々の補助率についてすべて触れられているかといえばそうではないのです。総論と各論とあって、要するに各論をずっと見ましても、この補助については何分の一にするのが本当だ、これについては何分の一にするのが本当だというそこまでの煮詰まった議論はなされていないと思いますよ。  午前中にも議論がありましたが、例えば生活保護です。なぜ十分の七にしたのか、これは両論併記ではなかったか、両論併記であり、結論が出ていないならば、十分の八に戻すという意見は私は妥当性があると思うのです。  それから義務教育国庫負担金の恩給費、共済費追加費用、これについては検討会の報告はちょっとも触れられておりませんよ。ところが、これは二分の一から三分の一に引き下げられているわけです。  その他、ここで一々羅列はいたしませんが、経常系統の補助については個別に何ら言及されていないのに一段の引き下げがなされている。時間がありませんからその答弁は私は求めませんが、それはあなたもよく知っていらっしゃる。  それから公共事業についても、社会資本の計画的整備や内需拡大の要請にこたえ、事業費確保のための財源対策として見直しを行うことはやむを得ない、この程度のことを言っておるだけであって、個別に見直す場合の基準あるいはあるべき補助率の方向性等については何ら触れられておりません。ところが、一段と引き下げられておりますね。だから、検討会の報告を最大限に尊重すると口ではおっしゃっておるわけでありますが、検討会の報告というものがきちっと守られていないということですね。  それから、検討会の報告の末尾に、これはしばしば御答弁でもおっしゃっておりますように、暫定的な措置だとなっているのですよ。つまり、本当にきちっとした議論がなされてきちっと個別のものが出されたものではない。いわゆる暫定的な措置だ。だから三年間にしたのだとおっしゃるかもしれませんが……。私は、申しわけない言い方をして済まぬと思いますけれども、やはり検討会の議論というのは、いい議論をしていただいたかもしれませんが、まだまだ完璧なものではなかった、未成熟なものであったというふうに考えておるわけであります。どうなんですか。
  154. 小沢一郎

    小沢国務大臣 検討会におきましてもいろいろな角度から種々論議がなされたものと思いますけれども、結論といたしましては、事務事業見直しやら補助金問題等々につきまして今後も鋭意議論を進めていかなければならない、そういうようなことになっておりますので、先生御指摘のように、例えば一つ一つの費目につきまして、これが果たして何分の一がいいのか、何%がいいのかというような個々の問題にまで結論を出すに至らなかったであろうことは事実でございますけれども、今後この暫定期間内に、本当にそういった意味での議論の積み重ねによりまして国庫補助負担率というものは決められていかなければならない、そのように痛感しているものであります。
  155. 柴田弘

    柴田(弘)委員 自治大臣にばかりで申しわけないのですけれども、私は大蔵委員ですからまた後で大蔵大臣にはお伺いさせていただきますので、まずあなたのお考え方をお伺いしたい。  正直に答えていただけばいいのですよ、ここで言うと総理の前だからちょっとあれだと思いますけれども。苦しいんですよね、自治省は。  生活保護はどうなんですか。検討会で両論併記であった。三分の二にしろと言う人もあれば、十分の八に戻せと言う人もあった。先ほど総理から三人の自治体関係者が入っていると御答弁があった。私は少なくともその三人の自治体関係の人からは、会議録を出しなさいとかそんなことは申しませんが、やはり地方の立場でこれは十分の八に戻すべきだという意見が出たと思いますよ。恐らく自治省もその考えに沿って、この予算編成の段階においては最後まで大蔵省に抵抗したと思う。どうですか。
  156. 小沢一郎

    小沢国務大臣 御指摘のように、その検討会でも生活保護については十分の八にすべきであるという強い意見が出されたことも事実であると聞いておりますし、予算編成の経過といたしましては、自治省といたしましてもそういうような基本的な考え方に立っていろいろと議論をしたわけでございます。しかし、この点につきましては、実際の予算編成現実の問題といたしまして結果は十分の七ということになったわけでございますが、この問題につきましても、そもそも憲法という議論をしなくても社会保障の基本的な制度であろうと思います。したがいまして、こういったものも含めましてその議論をさらに煮詰めて、これはやはり国がもっと負担すべきであるという結論に達すれば、それは十分の八が適当かどうか、あるいはもっと上なのか下なのか、そういうような結論を本当に出していくべきであろう。また、物によっては、これはもう地方に全部任しちゃった方がいい、国が一々負担する必要はない、そういうものもあるであろうと思います。したがいまして、この生活保護の問題についても、御指摘のような両論併記の形になったわけではございますが、こういった真剣な議論を今後煮詰めていかなくてはならない、そのように理解いたしております。
  157. 柴田弘

    柴田(弘)委員 総理にお伺いしますけれども、私は、ここで一つ生活保護の問題を問題にしているわけであります。これは、もう午前中の論議の中で厚生大臣が、これは国の責任で行うんだ、こうはっきりと明言された。やはり憲法二十五条の精神からいって、生活保護法の第一条にはそういった理念が貫かれておると私は思いますね。しかも、この問題については、地方は、絶対十分の八に戻してくれ、こう言っているわけであります。しかも、これは自治大臣のいわゆる諮問機関である地方財政審議会においても、「とくに、生活保護行政については、今後とも国の責務として実施されるべきものと考えられるので、国と地方との負担割合は変更すべきでない。」こういうふうに国の責務を明確に言っている。この意味は、十分の八に戻せとは書いてないんだがこれはもう十分の八にすべきだ、私はこういう理解だと思いますよ。どうです、あなたのこの諮問機関。
  158. 小沢一郎

    小沢国務大臣 ただいまも申し上げましたように、生活保護は社会保障の根幹的な制度でありますから、国の負担責任がより強く求められておるものであるという趣旨でその審議会の御意見が出されておるのではないかと思います。現実に、来年度以降また詰めていくわけでございますけれども、そういった基本的な議論も踏まえながら七の問題は結論を出していかなければならない、そのように思っております。
  159. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今、自治大臣の御答弁がありました。総理、どうお考えになりますか。この生活保護は、当然国の責任において行うべきだ、これを十分の七にしてずっとこのままいくというのはおかしいと私は思いますよね。国の責務ということを考えれば、当然五十九年度並みの十分の八に将来戻していくべきである、こういうふうに私は考えるわけでありますが、どうなんですか。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 生活保護のような社会保障関係費は、事の性質上国が責任を持ってやることが適当であると考えております。ただ、この補助比率等につきましては、そのときの財政事情等々の関係もありまして地方に御迷惑をおかけすることもございました。これらは財政状況等の推移を見て考えるところでありますが、今回は七〇%ということでぜひ御寛容のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  161. 柴田弘

    柴田(弘)委員 私どもは撤回を求めていますから了承できませんが、財政事情ということであれば、総理、あなたの諮問機関である地方制度調査会はきちっと答申している。要するに、「国の財政上の都合によって一律に国庫負担率を引き下げるような措置」はとっちゃいかぬ、こう言っているじゃありませんか。では、この地方制度調査会の答申、報告をあなたはどうやって受けとめて今回の補助率の一段下げを行われたのですか。その答申を無視されたのですか。どうなんですか、総理地方制度調査会はあなたの諮問機関ですよ。
  162. 小沢一郎

    小沢国務大臣 基本的に地方制度調査会におきましても、御指摘のように、単なる財政事情だけではいけませんよ、国と地方の役割分担等々の中から結論を出してください、簡単に言えばそういう趣旨であろうと思います。したがいまして、この点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、生活保護の問題につきましても本当に真剣な議論がなされたと思いますし、また、保育所等の一部見直しも行われた。そういう基本的な考え方に立って今後の補助、負担率のあり方もさらにこの暫定期間中にも鋭意詰めて結論を得よう、そういうことであろうと私は理解をいたしておりまして、今後ともそのような、基本的に地方制度調査会で打ち出されたような考え方の中に、財政事情厳しい折ではありますけれども、結論、方向を見出していくようにいたしたい、そのように考えておるわけであります。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自治大臣と同じでございます。  先ほど来申し上げましたように、この仕事の性格からして国が大きな関心を持って関与もし、また面倒も見さしていただく仕事であると思いますが、やはりそのときどきの財政事情等とも関係いたします。先ほど、補助金の三つの基準を申し上げました。一つは、国の関与度合い、関心度合い、もう一つは地元の利益の関係、それからもう一つ財政状況、こういうようなことを申し上げましたが、まさにこういうことが考えられまして、今回はこういうことでぜひ御了解をいただきたいと願っているわけでございます。
  164. 柴田弘

    柴田(弘)委員 総理は、とにかく地方の意見はよく聞きます、六十年度は反省いたしております、よく連絡を密にしてやってまいります。ところが、その検討会の意見も、両論併記であったとはいいながら、私は、地方自治関係者というのは十分の八に戻せという議論が必ずあったと思う。後でまたこの理事会でも相談ということだから私はそれを期待いたしております。自治省も初めそういう考え方だった。  それから、先ほど申しましたように、地方制度調査会においても、国の財政上の都合によって一律に国庫負担引き下げてはいけませんよ、とにかく生活保護についてはこれは引き下げてはいけませんよと答申されている。  そういった一つの意見を聞かないで、これは何のための検討会であり調査会、諮問機関であるかと私は言いたいわけなんです。都合のいいところはそこを採用する、都合の悪いところは無視する、そして国の財政事情がこういうことだからひとつ勘弁してください、御了解してください、こういうことになって、じわじわじわじわと国の財政の、言葉は悪いわけでありますが、いわゆる帳じり合わせのために今回もまた補助率のカットもされた、そして負担転嫁が行われた。そして今は自治省地方に、地方行革を一生懸命やりなさい、こう言っている。本来、地方行革をやればその地方自治体はその余った金を住民の福祉増進のために使うべきなんですよ。つまり、地方地方行革の犠牲の中で国の財政再建が進められてきている、こう申しても決して過言ではない、こういうように私は指摘をしたいわけであります。どうですか、総理
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 地方行革の関係も大事でございますが、中央地方ともども財政関係等において今後とも協調していきたいと思うわけでございます。片方が苦しいときは片方が助ける、そういう関係を堅持して、お互い国民全体のために協力し合うという体制を持続してまいりたいと思う次第でございます。
  166. 柴田弘

    柴田(弘)委員 時間もあと五分になってまいりましたが、自治大臣、検討会の報告は暫定措置であった、私はこう思うのですよね。毎年の予算編成において、三年間の暫定措置であったかもしれませんが、その間に地方の意見もよく聞いて、六十二年度予算あるいは六十三年度予算補助金の整理合理化というものは進められなくてはならない、私はそう思います。  それからもう一つは、三年間の暫定措置ということであれば、検討会を改組して、抽象論ではなくて、本当に地方自治体も納得できる、そしてまた国民の共感を得られるような整理合理化というものをこの三年間かけてしっかり、きちっとやっていくべきじゃないか、このような考え方を今持っておるわけでありますが、どうなんでしょうか。
  167. 小沢一郎

    小沢国務大臣 ただいまの御意見につきましては基本的に全く私も同感でございます。したがいまして、今後そういうような考え方に立って、この三年間の暫定期間の間に真剣な議論をしていかなければならないと考えております。特に、今御指摘になりました補助金の整理合理化、これは例えば各省重複したような補助金とかあるいは既に政策国的を達したような補助金がある。あるいはまた、手続におきましても、百万円補助金をもらうのに二百万円の費用がかかる、こういったような現実も間々見受けられる面もあるわけでございまして、そういう点につきましても各省庁と真剣に議論をいたしまして、本当に地域の住民が、また国民が納得のいけるようにしていかなければならない、そのように考えております。
  168. 柴田弘

    柴田(弘)委員 あとわずかですが、最後に私、総理に経済問題で一問お聞きしたい。  いよいよあす総合経済対策が打ち出されます。マスコミの報道等によりますと、公共事業の上半期における大幅な繰り上げ、それから公定歩合の引き下げを含む金融政策の弾力的な運用、三点目は円高、原油値下がり益の還元、それから四点目は規制緩和による都市再開発、五点目が中小企業対策、六点目が住宅建設の促進と設備投資の追加、大体こういうふうになっているのです。我々、こんなところだと思いますが、経企庁なんかの試算によりますと三兆五千億の円高メリットが出る。これは交易条件効果ということで三兆五千億。そのほかに、ちょっとまだわかりませんが、油が下がった、これが相当出るだろう。私は、今後の経済政策のかじ取りというものは、こうした円高メリットを一つ大きく生かしていくということにあると思います。それには内需拡大というものをこういった円高のときにしっかりとやっていく。それからもう一つは、円高のデメリットというものもあると思います。そのデメリットをこの内需拡大によってどう吸収していくかという問題が一つ大きな今後の課題であろうかと私は思います。  それで、そのためにも公共投資の上半期の大幅な前倒し、これが必要だと思います。七七・二%を上回るそれが必要だと思います。それから公定歩合の第三次引き下げ考えていかなければならぬ、弾力的な金融政策を運営していかなくてはならぬ。それからもう一つは円高差益の還元ということです。これは一兆円ということが懇談会の方から報告されておりますが、この還元率が五十三年のときは七〇%弱であったわけであります。この還元率も、国民経済、国民生活を守っていく立場から、五十三年のとき以下ではだめだ、それと同等あるいはそれ以上をやっていかなくてはならない。こんなような考え方をいたしておりますが、いよいよあす打ち出される総合対策に関連をいたしまして、総理の今後の経済運営に取り組まれる基本姿勢をお伺いをしたい。それをお聞きしまして私の質問を終わりたいと思います。いかがでしょうか。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あした、予算成立に伴う予算執行を踏まえた内需拡大策等を発表する予定であります。政府・与党の正式の会議を経る前に内容は申し上げるわけにまいりませんので、この際は差し控えさせていただきますが、やはり各方面に目を配って、そしてかなり思い切った措置をやる必要はある。特に円高差益の還元等についてはかなり思い切った措置をやって、これが大減税に見合う性格を持たせよう、そういう感覚をもって対処していきたい、そう考えておる次第でございます。そのほか内需の喚起についてはあらゆる可能な手段を駆使いたしましてやってまいりたいと考えております。
  170. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今の内需拡大、あらゆることを駆使されるということですね。公定歩合の第三次引き下げを含む金融の弾力的運営、それからもう一つ公共事業の大幅な前倒し、七七・二%、これはちょうど五十七年のときにはそうやった。それから状況によっては将来も、総理もおっしゃっておりますように建設国債はフリーハンドが与えられる、まあ打ち消されたかもしれませんが、そういった大型の補正というものも経済の動向ということについて考えていけば考えられるかもしれない。私はそういうことを円高差益還元とあわせて考えているわけでございますが、もう一遍突っ込んでひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  171. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御趣旨を体しましてできるだけ努力してまいるつもりで、かなり思い切った措置をやりたいと思っております。
  172. 柴田弘

    柴田(弘)委員 では、時間が参りましたので、これで終わります。
  173. 小泉純一郎

    小泉委員長 宮地正介君。
  174. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは国の補助金等臨時特例等に関する法律案総理に対する質疑でございますが、きょうは総理と久しぶりの質疑でございますので、当面する緊急的な重要な事項を中心にいたしましてこの問題に入ってまいりたい、このように思う次第でございます。  私は最初に、今国民の皆さんの間で大変に大きな関心を呼んでおりますマルコスの疑惑解明の問題、それに伴いますところの政府開発援助のあり方の問題等につきまして総理にお伺いをしてまいりたいと思います。  この問題は、率直に申し上げまして、国民の貴重な税金、国費が発展途上国の経済援助という形で出されておりながら、フィリピンにおいてはマルコス前大統領のいわゆる私的資産の蓄積という形で実際にあらわれておる。それがまた、日本の企業を通じまして、商取引の上におきましてもリベートという形で何らかの形でそれが盛り込まれて事業が行われていた、こういうゆゆしき問題がございまして、血税である税金がそのような形で発展途上国の経済協力の援助に資金的に出されていくということに、国民的立場に立ちますと大変大きな疑念が出てくるわけでございます。そうした疑念を解いていくためには、まず政府がその解明に積極的に努力をしていかなくてはならない、このように思うわけでございますが、まずこの点について政府責任者であります中曽根総理はどのような決意を持って現在対処されておるのか、その点からお伺いをしてまいりたいと思います。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 不正事件があるとすれば、それの究明につきまして政府としても引き続いて全努力を傾けてまいりたいと思っております。
  176. 宮地正介

    ○宮地委員 特にこの問題につきましては、我が党におきましても黒柳参議院議員を団長といたしまして党の調査団を派遣いたしまして、その資料の収集等に当たってまいりました。現地に参りますと、日本の企業のいわゆるリベートの問題等についての文書などがいろいろ発見をされてきているわけでございます。そういう中で、最近特にフィリピンのアキノ内閣の中におきましても、いわゆるダザ委員長代理の発言が四月三日にも行われまして、日本の国会の参考人としての招請があれば、現内閣の閣僚たりとも派遣をする用意がある、こういう発言も承っている状況に現在あるわけでございます。こういう点につきまして、国会が参考人として招請することについては当然何ら意見を挟むことはないと思いますが、現フィリピン内閣がこの問題に対し大変関心を持ち、日本に対しても協力をする、こういう用意があるという発言も出てきております。こうした点、大変に大事な問題ではないか、この点について総理としてはどういうようなお考えを持っておるか伺いたいと思います。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは国会がお決めになることで、いずれ国会委員会その他で各党が相談をしてお決めになることであるだろうと思います。ただ、国際関係の処理につきましては慎重に行う必要があると考えております。
  178. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、特に外務、大蔵、経企、通産四省庁は、このマルコスの経済協力に関連しておる日本企業につきましていろいろ事情の調査に踏み切る、こういうことで、本日から行うようでございますが、この点については総理としてはどういうお考えのもとにこの問題に取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 真相究明のために必要であり、かつ適切であれば、どんどんやって結構である、そう思います。そして、真相究明に協力すべきであると思います。
  180. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう点で一番大事なのは、政府の手元に入ってくるマルコスの関係する文書、こういうものについても当然日本とフィリピンの政府間の話し合いのもとに慎重に対処しなくてはならないと思います。ここまでフィリピン政府が踏み込んで協力をする用意がある、こういう段階におきまして、今後こうした事情聴取の中で出てきた重要な事柄あるいは公式文書等につきましても国会の場で明らかにして、その究明のポイントというものに政府みずからが踏み込んでいく必要がある、このように私は考えておりますが、そのお考えがございますでしょうか。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もし犯罪事実があり、刑事事件あるいは脱税事件、そういうものに該当するようなことがあれば、政府としては積極的に事態の解明に努力すべきであると思います。あるいはまた、フィリピン現地におきまして、経済協力から見て必ずしも適切でないというようなことがもしあるとすれば、その点はまた慎重に検討しなければならぬ、経済援助のあり方その他についても大いに検討を加えなければいかぬ、そう思います。
  182. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、そうした公式な資料というものは、どちらかというと我々野党よりもやはり政府の方が資料としては収集可能であろうかと思います。そうした状況の中で、政府みずからが総理のおっしゃるように徹底して究明に努力するということであれば、国会の場でそうした貴重な資料というものは国民の前に明らかにして、その対策を講じていくべきである、このように思います。  そこでもう一点総理に伺っておきたいのですが、既に警察庁におきましても重大な関心を持ってこの問題の捜査に着手しているようであります。また国税庁におきましても、国税の立場から既に調査査察部を中心にいたしまして資料の収集等に対応しているようであります。国税庁あるいは警察庁が国内的なそうした捜査、調査というものをやっていくのは当然でございますが、今回の問題は国際的な事件でございますので、そうした政府の調査機関あるいは捜査機関が海外に積極的に踏み込んで捜査なりあるいは調査なりを行っていく機会に、政府としては積極的に取り組んでいくべきではないか、当面、フィリピン政府あるいはアメリカ政府などにそうした捜査官、調査官を派遣いたしまして、貴重な資料の収集、調査、捜査というものをもっとやっていくべきではないか、こう私は考えているわけでございますが、総理としてはこの問題をどういうふうにお考えでございましょうか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本における刑事事件あるいは脱税事件等に該当することがあれば、検察庁やあるいは国税庁は厳正なる対処を行う、調査も行いますし、厳正なる処置も行うであろうと確信いたしております。外国におけるいろいろな問題については外国政府の意向あるいは事態そのものの真相がどうであるかというようなことをよく検討して考える必要があると考えております。
  184. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは国税庁並びに警察庁もお見えでございますので、現段階において、このマルコス疑惑解明につきまして警察庁はどのような対応をされておるのか、また国税庁はどのように現在調査を進めておられるのか、仁平刑事局長並びに日向調査査察部長から御説明を伺いたいと思います。
  185. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 関係機関との連携を密にするなどしまして必要な情報収集に努めているところでございます。その具体的な内容につきましては、捜査機関としての立場上答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  186. 日向隆

    ○日向政府委員 米下院外交委員会のいわゆるソラーズ委員会によって公表されましたマルコス関係文書に記載されております事柄は、時点の古さを別にいたしまして、いわゆるリベート等に関する記述を中心に課税上貴重な資料と受けとめております。これら資料や各種の報道等、課税上必要な資料、情報の収集に私ども今全力を挙げているところでございまして、これら資料、情報に基づき、必要な場合には随時調査を実施して、適正な処理に努めてまいっておるところでございます。
  187. 宮地正介

    ○宮地委員 国民が大変に関心を持っている重要な問題でございますので警察庁、国税庁もぜひしっかりと頑張っていただきたい、そして速やかに国民の前に明らかにしていただくよう、強く要望しておきたいと思います。  さらに、もう一つ重大な問題の一つといたしまして、円借款事業に介在したいわゆる日本の商社あるいは企業、こういう中に、昭和五十年代前半あたりから、特にフィリピンの反政府ゲリラに対する武器供与の問題に関連しまして、武器輸出禁止に大変抵触するような商行為というものが行われておった、こういうことも報道されているわけでございますが、もしこのようなことがありますと、これは日本の国では武器輸出三原則で禁止をされているわけでございまして、これは大変ゆゆしき問題でございます。  今までも何かと発展途上国に対するところの経済援助の中におきまして、直接的には武器としての輸出ではない、あるいは例えばトラクターのようなもの、フォークリフトのようなもの、こういうものが輸出されて、向こうでいろいろ改造され戦車に変わっていくというようなことがあって、そういうようないろいろな経済協力のあり方には過去においても問題があったわけでございますが、今回はダイレクトにどうも武器らしいものがこの円借款事業の中で輸出をされておった、こういう大変重大な問題も提起されてきているわけでございまして、この点についても今後解明をしていかなくてはならないわけでございますが、総理としてこうした状況にどのようなお考えを持っておられるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  188. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 経済協力に関しましては、二回にわたりまして本院の外務委員会に決議がございまして、軍事的用途に資するごとき経済協力ないしは紛争を助長するごとき経済協力は行わないことという決議をいただいております。経済協力の推進に際しましては、この決議を体して私ども事務を進めている次第でございます。
  189. 宮地正介

    ○宮地委員 そうした大変にきな臭いお話もいろいろ出てきているわけでございまして、ともあれ私は、今回のフィリピンに対するところの経済協力一つのあり方というものはぜひ見直しをしていかなくてはならない、このように考えているわけでございます。  もう総理はそういう点については十分に御存じかと思いますけれども、過日、これは読売新聞が四月の五日に、公然の秘密、二一%リベートということで、東鉄工業の社内報のリポートをすっぱ抜きまして、そのリポートの内容が一部写真で掲載もされておりまして、その中に「価格には、公然の秘密である要人への謝礼金二一%が含まれる」という注書きの中身が明らかにされているわけでございまして、一五%とか二一%とか、こうしたリベートが何らかの形で公然のように価格の中に入って経済協力がされておる、こういう事実が、今後恐らく各党の調査あるいは政府の資料の中でも明らかになっていくと思います。  こんなことが我々の貴重な税金によって行われていたのでは、国民の納税に対する義務、責任というものも大変形骸化していくおそれがあるわけでございまして、そういう点において、こうした一つの事件というものを契機に、災いを転じて福となすためには、再発防止がやはり一番大事なことであり、解明は解明として積極的に進めていくと同時に、このような経済協力のあり方はやはり是正していかなくてはならない。この再発防止に対する政府の取り組みが最も国民の期待するところであり、また政府に大変その点の努力を願っていると私は思うわけでございますが、総理といたしまして、今後のこうしたフィリピンを初め発展途上国へのODA、経済援助のあり方、見直し、こういうものにどういう重大な決意を持って取り組んでいかれるのか、その見直しについての御見解を伺っておきたいと思います。
  190. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今度の事件の真相を究明いたしまして、その結果もし必要あるという場合には、再発防止等について関係各省等網羅して徹底的に改善策を講じなければならぬと思いますし、また、先方の政府とも協力してそういう不祥事件を防止するための措置も協議しなければいけないと思っております。
  191. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、私は、もう一つ国民的な重要な課題の一つの、先ほども少しお話が出ておりましたが、いわゆる円高差益の消費者還元の問題、あるいは原油価格の低落に伴うところのいわゆる消費価格の引き下げ問題、この問題について少し総理のお考えをお伺いをしてまいりたいと考えております。  率直に言いまして、欧米各国と日本の関係の中で、これだけ日本の円高が――昨年の九月、たしか一ドル二百四十円程度でありました。私もその二百四十円レートでカナダ、アメリカを回ってまいりました。現在は百八十円を切りまして、三〇%強の円高になっております。さらにその上に原油の大変な価格の引き下げになっております。たしか、あの石油ショックでトイレットペーパー等の大変な騒ぎのあったころは、一バレル当たりスポットで四十ドルぐらいの時期もございました。現在ではそれが十ドルを切り、きょうあたりの情報ですと、どうも五ドルぐらいまでという話も出ているわけでございまして、そういうような状況で、消費者の間では、そうしたものがなぜ我々の生活必需品にはね返ってこないのだろうか、もっとスピーディにそうした小売価格にはね返るような仕組みというものを考えるべきではないかという率直な声が出ている。例えばガソリンの問題にいたしましても、当時はヨーロッパでは、フランスなどたしかリッター当たり二百円ぐらいの時代がありました。日本では百五十円ぐらいで、高いなと言われた。しかし、今もう既にフランスはヨーロッパの中でもなかなか価格が下がらないといっても、百二十円ぐらいまでに下がってきております。西ドイツとかスイスとか、そうしたヨーロッパの国では原油価格の引き下げ、そういうものがストレートに小売価格に反映して、消費者に安くはね返るような仕組みになっているわけでございます。日本においては、そうした原油価格の低落そして円高という二つの大変な消費者にとってはメリットの経済環境にありながら、なかなかこの価格が消費者に落ちてこない。消費者のメリットがない。そういうことで、政府としてもいろいろ、先ほど総理もおっしゃっておりましたが、大幅な所得税減税に見合うような思い切った措置をあした発表すると大変自信のあるお話をされておりまして、私も期待をしているわけでございますが、やはりこうしたものはもっとスピーディーに還元をしていくべきではないか。特に電力とかガスの問題については、何かごの六月一日から家庭用の料金を平均四百円とか五百円値下げをするというようなことをちらほら漏れ承っております。しかし、もっとスピーディにそうした消費者への還元に対する努力というものをする、また、欧米各国と日本とは流通機構の仕組みが違うんだというのであれば、その仕組みも十分に変えていく、そうした勇断というものもこの際やっていってこそ中曽根内閣のリーダーシップが発揮されるのではないか、私はこう思うわけでございます。特に、主婦を中心とした、家計を預かっている、台所を守っているお母様方にとっては、大変深刻な問題であり、また、期待でございます。この点について総理、先ほども少しお話を伺いましたが、もう少し国民にわかりやすく総理の御決意をお伺いしておきたいと思います。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 消費者還元については、積極的に、大胆に行いたいと考えております。これが減税に当たるものであると考えております。  ただ、今入ってきておる油は、昔の高いものが今入ってきておるわけでありまして、先月の分が多分バレル二十七ドルぐらいで、今入っておる分が二十二ドルぐらいになっているのではないか、来月入る分が二十ドルを割るぐらいになるかならないかということで、まだ下がったわけではないわけなんですね。契約はしておるけれども、その品物は半年後に入ってくるわけでありますから、したがいまして、大体これぐらい下がるであろうという見通しのもとに、大体これぐらい浮くはずだ、そういう見通しであした発表するのも基礎計算をやって、そしてこういう条件のもとならばこれだけ出るはずだからこれだけ還元する、そういうことをどっちかといえば先付てやろうという考えでおるわけであります。  ただ、石油のようなものについては、円高の効果もあり、また、いろいろな面でもございますから、そこで、日石あたりはもう一月ぐらい前にリッター十円下げておりまして、それに引きずられてほかの社もガソリンについてはみんなおのおの下げつつある。こういうふうにして、順次この円高あるいは石油の値崩れというものは消費者に及びつつある状態なのでございます。  私は、輸入品の円高割引、思い切ってバザールをやらせたいと思って、大体三千カ所ぐらいでやる計画が今進んでおりますが、適当なときに、どれぐらい下がったかその報告をさせよう、そう思っておるのであります。
  193. 宮地正介

    ○宮地委員 総理は今、時期的に前のやつがずれて入ってきているというお話をされました。しかし、今の電力料金やガス料金を設定したときのドルの価格というのがあるわけですね。私の記憶ですと、たしか一バレル三十四ドルぐらい、このくらいの価格で設定をして、消費者の価格を全部計算してはじいているわけです。それでもなお安い原油が入ってきているわけです、その料金価格設定のときのように。ですから、総理のそういう論法は私はわからないこともありませんが、しかし、ヨーロッパなんかは、御存じのように、卸売のそういう価格が下がったりあるいはマルクとドルの関係のそうした相場が変化したときには、自動的にガソリンスタンドの価格がそれにスライドして下がって消費者に還元されていくという仕組みになっているわけですね。     〔小泉委員長退席、中村(正三郎)委員長     代理着席〕 そういうところは、やはり日本の政府がこういう機会に思い切ってそういう仕組みというものまで踏み込んで検討しませんと――せっかく総理が対米貿易摩擦解消のために国民一人百ドルぐらい購入をして何とか日本の努力というものをアメリカ政府に示すとか、いろいろなことをおっしゃって努力していることは私は敬意を表しておりますけれども、やはりこういうときに根本的な仕組みも変えていくということをしていきませんと、今、欧米各国から日本に物をいろいろ持っていってもなかなか日本の消費者に届かない。日本の流通機構というものに対する不信感といいますか、そうした対応に対する欧米各国の業者の日本に対しての不満というものは強いわけですね。ガソリン問題などにしても、こういうときに対策というものをいろいろつくるのは結構ですが、やはりもう一歩踏み込んでそうした流通機構の仕組みの改革ということにも取り組んでいくべきではないか、こう思っているのですが、総理としてはこの点はどういうふうにお考えでございましょうか。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 流通機構にいたしましても、故意に、あるいは無意識のうちに、国際的な商慣習や基準から見て著しく離れているというような阻害要因があれば、これは直さなければならぬと思っております。また、そういう努力もしつつあるところで、独禁法の適用等も検討しなければならぬと思っております。  ただ、外国側も売る努力をしてもらわなければいけないので、同じ外国でもどんどん売れているものはあるわけです。ケンタッキーフライドチキンとかマクドナルドのハンバーガーとかあるいはコカコーラにしたって、ともかく日本で相当な占有率を持っているわけです。あるいは自動車にいたしましても、ドイツのBMW、これらはどんどんふえて入ってきておりますね。アメリカ車が入らない、これはまあ道路の広さも関係しましょうが、やはりドイツほどの努力をしていないのじゃないか。ドイツの場合には今、ハンドルを右、左に自由に変えられるようなものまでつくろうという、そういうことを新聞で読んだことがあります。  そういう面から見ますと、これはあながち流通問題については日本だけを責めるべきではないので、相手の努力も両々相まってやってもらわなければいけない、そう思う次第であります。
  195. 宮地正介

    ○宮地委員 総理の十八番の貿易摩擦に対する考え方、それは私も理解します。しかし、古くからの伝統のある、小売までの多くの段階を踏んでくる日本の流通機構というものもやはりそろそろ変えていかなくてはならない。自動車なんかはメーカーからディーラー、小売と三段階で、アメリカ的ですから非常にいいのですけれども、いろいろなウイスキーだとかお酒のたぐいだとか、チョコレートのお菓子のたぐいだとか、これは大変流通段階が多いわけですね。そこで全部いわゆるマージンを取られていきますから、どうしても小売で高くなってしまう。  私は、一つの提起をしておきたいときょうのところは考えております。ぜひ、円高あるいは原油の値下がり、そういうもののメリット面ができるだけ国民の皆さんの生活の中に大いに価格として反映できるよう、明日の対策を期待するとともに、それを中心にさらに詰めをして、努力をし、反映のために頑張っていただきたいと御期待を申し上げる次第でございます。  時間が余りございませんが、本題でございますところの問題について句点がお伺いをしておきたいと思います。  最近、補助金のカットの問題と裏表の関係で大変大きな問題に、地方財政富裕論という問題が出ているわけでございます。総理、この地方財政富裕論というものについて、総理として率直にどういうふうにお考えでございましょうか。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一概に富裕とは言えないと思います。これは、県あるいは市町村、おのおのがみんなばらばら、まちまちの財政状況を持っておりますから、ですから一概に言うことは危険であると思いますが、中にはやはり富裕なものもなきにしもあらず、それは、大都市圏あるいはその周辺にある都市でラスパイレス指数が一三〇に近いというようなところもかなりあるわけであります。そういう面から見れば、富裕だからそういうことができるのだろうというふうにも考えられます。そういういろいろな都市、市町村によってみんな状況が違うと思うのでありますが、しかし概して言うと、国は大体国債発行額というのは二〇%ぐらいですが、地方団体はたしかまだ八%ぐらいでしょう。それから国債の保有額を見ると、国が百四十兆ですが、地方団体はたしか四十兆台だろうと思います。ですから、そういうような表へ出てきた数字を見ますと、これは国の方が今日の状況ではぎしぎししているなという印象を持ちますが、しかし市町村や府県の中では非常に困っているものもまたあるわけでありまして、一概には申されないと思います。
  197. 宮地正介

    ○宮地委員 今、総理お話しになった数字、ちょっとずれがあるのですけれども、私はいいところをついていると思うのですね。ただ、借金の累計は、国が六十一年度末で百四十四兆円近くなりますけれども地方の場合は六十兆円ぐらいになっているのですよ。正確には五十八兆八千億、約六十兆なんです。これも最近非常にスピードアップしてくるわけですね。それから今お話しの公債費比率につきましても、総理は全体を見て八%ぐらいとおっしゃっておりますけれども、既に国と同じように二〇%を超えている地方団体は、五十八年度決算ベースでも全体の四分の一になっているのです、総理。四分の一、二五%。今こういう状況にございまして、地方財政は、今そういうばらつきはあるにせよ、平均的に見ても、国よりもむしろ非常に悪化がスピードアップしている、これが現状であろう。  そういう中で、大蔵大臣、ちょっと眠そうですから一言お伺いしておきたいのですが、大蔵大臣は何か予算委員会で、地方交付税率三二%を下げるような下げないような話をちょっとしたようなことを耳にしているのですが、私はやはりこうした地方財政状況を見て、現在の地方交付税率三二%というものは今後上げることは考えても下げるべきなんという状況にはないと思っておりますけれども大蔵大臣、この点についてのあなたの真意をきょうはお聞かせいただきたいと思います。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 現段階で交付税率引き下げ考え方は持っておりません。私が一般論として申し上げましたのは、交付税率というものに仮に手を入れるということになれば、まず地方税、それから地方譲与税、さらには補助金、そういうものを総合的に判断して地方交付税の位置づけというものが考えられるので、地方交付税率だけを取り出して議論する性格のものではない。それに対して、もし仮に、例えば所得税、法人税、酒税等々が大変な減税というようなことになれば、今度は逆に他の税源がなかったら交付税の三二%そのものが減っていきますからむしろ上げる場合もあるのではないか、こんなような趣旨の御発言がありまして、ことほどさように税率だけを初めから抜き出して議論するものではなく、それこそ税源配分から補助金から地方税から譲与税からみんな一緒にして検討しなければならぬ課題だというふうな一般論を申し上げただけでございます。
  199. 宮地正介

    ○宮地委員 私もそこの点は大変同感なんです。地方交付税率の三二%だけに今後の財源のあり方を考えるときに、今、大蔵大臣がおっしゃったように、補助金あるいは地方譲与税、言葉が悪いですけれどもこういったひもつき的なものは、そろそろ一般交付税のような形に移行していくという一つの流れをつくるということも大事ではないか。  譲与税の場合は、大体道路財源が目的に何分の一とかいって回しております。これもそろそろ一般交付税並みの自由な財源の方に考えていくべきではないか。あるいは補助金についても、言葉を汚く言いますと、選挙の集票マシン的なものと言われてもしようがないようなものがあるわけですけれども、そういうようなものも一般交付税のような形で、できるだけ地方団体が自由にその地域社会の福祉あるいは社会の構築のために回せるような財源措置、これは今後二十一世紀を迎える地方の時代をつくっていく中で、権限の委譲とともに費用負担の問題あるいは地方財源の問題として大変重要だと思うのです。大蔵大臣、今おっしゃったこと、私、大変敬意に値する考え方だと思うのですが、そうした流れをつくっていくという御決意はございますでしょうか。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 地方自治体三千三百といたしますと、それぞれがいわゆる基礎的な財政状況が大変違う、個々によって違うわけでございます。どうしても大蔵省で見ますと、自治省といわばマクロ地方財政対策お話をしがちな立場にあります。マクロで見ましたときに、本当は、可能な限り非常に身近なものの範囲をどんどん広くして地方に自主性がいって、それこそ国の仕事というのは例えば防衛、治安、外交、教育というようなところへ集約されていくというのがあるいは理想かもしれぬと私も思っております。ただ問題は、個々の自治体になりますと財政事情を非常に異にいたしますので、その自主性の発揮できるところと非常に制約されるところと、そういうものの調和というものでなかなか難しい問題はあろうかと思いますが、基本的に私は、地方自治というものを原点において尊重した方が、いわゆる住民の民主主義の基礎はそこにあるのじゃないかとはかねがね思っております。
  201. 宮地正介

    ○宮地委員 時間も迫ってまいりましたので、総理にあと一、二点。  六十二年度にこれから大変思い切った税制改正をしていくということでございますが、そういう税制改正の中で、地方財源というものに対する措置というものについてお考えがあるのかどうか、この点についてまずお伺いしておきたいと思います。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、現在、税調におきまして国税及び地方税についていろいろお話を願っておる最中で、その報告を見ましてから我々はいろいろ検討してみたいと思いますので、今差し出がましい答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  203. 宮地正介

    ○宮地委員 六十二年度税制改正につきましては国民も大変期待をしております。特に所得税、法人税あるいは住民税。そうした国民の期待に沿うように中曽根総理としてもぜひ御努力をいただきたいと強く要望いたしまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。ありがとうございました。
  204. 中村正三郎

    中村(正三郎)委員長代理 米沢隆君。
  205. 米沢隆

    ○米沢委員 私も国の補助金等臨時特例等に関する法律案についてこれから質疑をいたしますが、その質疑をする前に、御案内のとおり今度この連合審査を五日間連続して組んで審議の促進に協力をしておるつもりでございますが、中日に大蔵大臣がワシントンに飛ばれるということで、御承知のとお力臨時大蔵大臣がつくられる、こういうことになっておるのでございます。いわゆる十カ国蔵相会議に行かれる目的、そこでどういうものが課題になるのか、討議されるのか、その点について少しく説明をいただきたいと思います。
  206. 竹下登

    竹下国務大臣 当初から予定をされておったとはいいながら、できるだけ国会審議に参画したいと思っておりまして、行かないで済むことならばなといろいろ苦悩しておりましたが、IMFの暫定委員会の前日に平素から十カ国蔵相会議をやることになっております。私が先日まで議長でございましたので、オランダの大蔵大臣に新たなる議長を引き継ぐ使命もございますので、いろいろなことを考えて行かざるを得ないと思ってきょう出発をさせていただくわけでございます。お許しをいただいて行くことにしていただいたわけであります。  したがって、IMF暫定委員会というものに臨むいわば先進国側のいろいろな意見調整をするというのが一つの大きな目的でございます。それは債務累積問題であり、そして援助等のあり方であり、あるいは最近の通貨事情というものが開発途上国、また、先進国側にどういう影響を与えておるか、こういうような問題につきまして先進十カ国大蔵大臣会議で会合を持つ、こういうことになるわけであります。それが済んだらすぐ引き返して帰りまして、連合審査の四日目の午後にはちゃんとここへ参ります、こういうつもりでございます。
  207. 米沢隆

    ○米沢委員 新聞情報等によりますと、「国際通貨の安定に向け多角的なサーベイランス(政策の相互監視)を強化することで合意する」のが目的だ、こういうふうに書いてありますから、今大臣の御答弁は当たらずとも遠からず、このことを言っていらっしゃるのだと思いますが、御承知のとおり今回の円高に対する共同介入、その成果がきき過ぎまして、余りにも急激に、余りにも切り上げ過ぎたという感じが私はしてなりません。そういう意味で、こういう会合において、日本の立場として余りにも円高が急激に進み、そして余りにも切り上げ方が多かったがゆえに、逆に国内の産業との関係ではぎくしゃくしたものが残って困っておるのだ、したがって、できればこの円高の急激なというのをもっとマイルドに、安定的な推移が図られるように先進国首脳も協力してもらいたいというような話はなされないのですか。
  208. 竹下登

    竹下国務大臣 一つは、正確に申し上げますと、ウィリアムズバーグ・サミットのときに、国際通貨問題について大蔵大臣同士話をしなさい。その場所を十カ国大蔵大臣会議にしまして、それで一応の中間まとめができて、それをIMF暫定委員会に持ち込むわけでございますから、その前に当然先進国同士の話し合いをいたします。そのときに、表現の仕方は別といたしまして、今、米沢さんおっしゃったような、私なりの最近の通貨の動きの日本経済に与えておる影響というようなお話はしようと思って準備をしております。円は上がって私の評判は下がった、こういうことも言おうかなと思って、英語でどう訳していいか今苦労しております。
  209. 米沢隆

    ○米沢委員 今度の十カ国蔵相会議で円高是正について日本の側からの立場を主張されることは、決して竹下大臣の評価を下げることではなくて高めることである。ぜひ御健闘いただきたいと思います。  さて、本題の法案の問題点について議論を進めたいと思いますが、補助金等の整理合理化は行政改革あるいは財政再建の途上にある我が国にとりましては緊急の課題であり、その必要性は今や国民共通の認識に高まっていると言ってもいいと私は考えます。  近時、各省庁におかれましても、補助事業廃止縮小、地方公共団体の事務事業として同化定着しているものの一般財源措置への移行、統合メニュー化の推進など各種見直しが行われまして、いろいろと特段の汗をかいていただいていることに敬意を表しますが、整理合理化が進めば進むほど、今度は新しい補助金等の整理合理化というものが困難を伴う傾向が顕著になっておる、このこともまた事実でございまして、これからまさに補助金等の整理合理化は本番であり、正念場だと私たちは考えておるわけでございます。  ところが、昨年、御承知のとおり本来の補助金等の整理合理化の積み上げという方式ではなくて、単に国の財政事情が逼迫しておるというゆえをもちまして、一挙に補助率の二分の一を超える高率補助についてはおおむね率にしまして一〇%程度引き下げをするという、我々から言わせたら蛮行が実施されたわけであります。その際、御承知のとおり一挙にこのような話が詰まってきたというせいもありましょうが、この措置は六十年度における暫定措置とすること、第二に、六十一年度以降の補助率のあり方については国と地方の間の役割分担、費用負担見直し筆とともに政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする、こういう条件が付されてこのような高率補助金のカットというものが法案として出てきたと記憶をいたしております。また政府もこの委員会等におきましてその趣旨を確認する答弁をたびたびなされましたし、大蔵大臣もまさに暫定措置であるということをはっきりおっしゃっておりますし、これから一年かけていろいろな検討を行うのだという御答弁をなさっておることは忘れておられないと私は思います。  同時に、国会の方も、衆議院におきましても大蔵委員会におきまして、あるいは参議院の補助金等に関する特別委員会におきまして、それぞれわざわざ附帯決議をつけまして、政府に対しまして、この措置は完全に暫定措置なんだぞと、このことを強く念を押して、約束不履行にならぬように注文をつけたことも事実でございます。にもかかわりませず、一年間いろいろと御検討なさった経緯はよくわかっておりますし、検討委員会の報告あたりも読ませていただきましたが、結局国と地方の役割分担、費用負担見直しにつき確たる結論を得ないままに、またぞろことしの予算編成におきましては、今提案されておりますような内容の、それもカットの対象補助金全体に拡大し、しかも三年間の暫定措置という形で提案されておることは、まことに遺憾だと言わねばなりません。これは、言うならば国会国民に対する約束不履行ではないのか。総理に御答弁いただきたいと思いますが、このごろまた、行政のけじめをつけずにといいましょうか、財政不如意のゆえにいろいろと御都合もあるのでございましょうが、暫定措置が恒常化していくとか、約束したものがすぐ守られないとか、そういう傾向が非常に顕著になっておることを私は大変危惧しておるのでございます。こういう行政のあり方等について御反省はないのかどうか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  210. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、今御意見を交えての御質問でございますが、確かに六十年度予算というものにおきましては、それまでは、御案内のように、先ほど来御意見のありましたように、各種補助金というものの整理合理化ということについていろいろな工夫をして努力をしてまいりました。さて、ここで補助率に手をつけよう、こういうことになりましたが、結論から申しまして、一つ一つ事業に対する補助率のあり方というところまでにっきましては合意に達することができなかった。したがって、財政対策上の観点もこれあり、おおむね一割カット、こういうことでお願いをせざるを得なかった。さようなことになるならばやはり本格的な閣僚協議会、そして検討委員会等を用いて一年間にはそれ相応の結論を出すことにいたしますから、その緒論を出すまでの間、一年間の暫定措置として御理解を賜りたい、こういうことで、まさに国会にお願いをしてこの法律を成立させていただいたわけであります。  したがって今回は、五月に補助金問題の閣僚協議会ができまして、そして検討委員会を設けてそこで精力的ないわゆる補助率の総合的見直しということから御検討をいただいて、そしていわば基本的な問題としての結論をそれぞれ出していただいたわけであります。  したがいまして、いわば事務事業見直しに伴って補助率を二分の一に引き上げたものもございますし、個々の事務の性格から当面六十年度の補助率を据え置いたもの、あるいは地域かさ上げ補助率のようにかさ上げ措置を残しつつ補助率とのバランスに留意して補助率引き下げを行ったもの等、昨年お願いいたしましたいわゆるおおむね一割削減、こういうものではない。ただ、御案内のとおり社会保障、なかんずく生活保護の問題につきましては両論併記されましたので、三分の二と十分の八、したがって、まずはどれを選択するかということが議論が煮詰まりませんでしたので、三年間では去年どおりの十分の七を選択してお願いをしよう、このようなことにいたしたわけでございます。
  211. 米沢隆

    ○米沢委員 補助金問題関係閣僚会議というのが設置されて、その下に設けられた補助金問題検討会というのですか、これが検討を重ねられて答申を出されましたが、結局この一年間政府が検討を約束されました種々の国と地方の役割分担とか費用負担のあり方等は結論を得たというふうに理解をされておるのですか。
  212. 竹下登

    竹下国務大臣 公共事業補助率ということになりますと、どちらかといえば国と地方とのその都度の財政事情というものに左右されるから、当面これはこれで結論を得たというふうに考えております。  社会保障になりますと、いろいろ基本的な議論がございまして、私どもの方で申しますならば、いずれにせよ基本的には国と地方とが二分の一ずつ負担するのが適当ではなかろうか。しかし、特別なものについては、それが二分の一といえば普通の数字の使い方としては三分の二というようなものが存在してもいいではないか、こういうような主張を申し上げたり、いや、やはりこれは十分の八であるべきだというような御主張もございましたが、大筋、いわゆる費用負担のあり方についての結論的なお答えをいただけたものだというふうに私は思っております。ただ、これからもまだいわゆる分野調整あるいは権限委譲とかいう問題は引き続き行われるでございましょうから、それら個々の問題についてすべてコンクリートになったとは思っておりません。
  213. 米沢隆

    ○米沢委員 御承知のとおりに、総理の諮問機関であります地方制度調査会が十一月二十七日、国庫補助事業見直しに基づく国庫補助金の整理合理化を求める答申を出しておることは御承知のとおりです。この地方制度調査会の物の考え方は、私ども考え方にかなり似ておるといいましょうが、同感するところが多いのでございます。しかし、結果的には、今回講ぜられた措置大蔵大臣の諮問機関である財政制度審議会の答申の線に沿ったものである生言ってもいいぐらいに、地方制度調査会の答申は、まあいろいろと御検討なさって御参考にはなさったとは思いますが、何か棚上げされて、結局財政事情が厳しいからという理由によってかどうか知りませんが、財政制度審議会の答申だとか検討会の答申あたりがほとんど今回の補助金カット法案には盛り込まれておるという感じがしてなりません。この地方制度調査会は、いつもかなりいいことを述べておられるのでございますが、政府としてはこの地方制度調査会の答申は余り参考にされていないという気がしてなりません。総理の諮問機関の地方制度調査会、大蔵大臣の諮問機関である財政制度審議会、どうも財政不如意のゆえに大蔵大臣の諮問機関のおっしゃるとおりの答申に力点を置いてすべてがなされておる。ちょっと問題があるのではないかな、こう思うのです。このあたりは大蔵大臣はどう思いますか。  同時に、自治大臣地方制度調査会等の答申をもっと生かすように予算編成のときなんかでももっと議論を高めてもらいたかった、私はそう思っておるのでございます。その点について御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  214. 小沢一郎

    小沢国務大臣 地方制度調査会の答申の御意見等にっきましては、私どももそれを十分尊重し、いろいろな施策の中に生かすべく努力をいたしてきておるところでございますし、もちろん今後ともそのように努めなければならないと思っております。六十年の予算編成以来六十一年の予算編成まで、先ほど大蔵大臣からもお話がございました検討会の報告に基づきまして、いわゆる社会保障の保育所を中心にする事務事業、権限の問題等見直しを進めながら予算編成がなされたわけであります。もちろん個々のその他のいろいろな問題一々について全部結論を得たということではないわけでございますが、その意味におきまして、今後特に補助金の整理合理化とともに補助負担率につきましては、こういった国と地方の役割分担等の議論の中で、これからこの暫定期間中にも本当に真剣な議論をしながら詰めていかなければならない、また、そういう考え方、姿勢、それが地方制度調査会の答申にこたえるゆえんでもある、そのように考えておる次第であります。
  215. 竹下登

    竹下国務大臣 この補助率見直しに当たって、例えばいわゆる地方制度調査会の御答申の中で取り上げさせていただいたとでも申しましょうか、まず社会保障を中心に地方の自主性を尊重する観点から国と地方の間の役割分担の見直しを行っている、それから一般財源化を推進していること、あるいは所要の地方財政対策だけは地方財政の運営に支障の生じないよう対処しておるところなど、これらの点は地方制度調査会等の御意見にも沿ったものではないかというふうに選んで整理してまいりました。
  216. 米沢隆

    ○米沢委員 昨年のときもそうでございましたが、結局地方制度調査会等が言わんとするところは、本当に国と地方の役割分担を見直し、また負担のあり方等を見直して、その上に立って補助率等に変更を加えるのは是とするが、ただ補助金負担率あたりをまず引き下げることが先行して後からそのあたりを議論していくというやり方はおかしい、そういうことでは容易に地方負担をただ転嫁するだけにすぎないではないかというのが地方制度調査会の趣旨だろうと私は思うのですね。いろいろなことをおっしゃっておられますが、今大蔵大臣がおっしゃったようなことも確かにおっしゃっておられましてその部分はしんしゃくされたと認めていいと私も思いますが、本筋のところはまさにそういうところに議論の焦点がある。ところが、財政制度審議会あるいは検討会の結論は、結局、国の財政が厳しい、地方にも少々は協力を求めていいのではないかというそのあたりから補助率引き下げが出てきて、そしていろいろな理由づけがしてある。こういうところでニュアンスは全然違うのだと私は思うんですね。そういう意味で、筋としてはやはり見直しが先行して、その結果合意を得たならば補助率は下げてもいい、あるいは上げることもあり得るかもしれない、そういうのが正攻法ではないかということをもっと大蔵省も真正面に見据えてこの補助金議論はやってもらいたいということを注文したいと私は思うのでございます。その点についてまずお答えいただきたい。
  217. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、初めに補助率削減ありき、この考え方ではいけない。やはり事務分担からきて、費用負担のあり方についての議論から結論が出ていくべきである。それこそ昨年あえて暫定でその猶予期間を一年間いただいたことがそれなりには生かせたではなかろうか、このように今思っておるところでございます。今後とも、これは絶えず見直していくことを考えていなきゃいかぬ理屈でございますが、したがって、最後の申し合わせで大きな変化はこの三年間生じさせることはないようにしようということも覚書として交換をいたしておるというところでございます。
  218. 米沢隆

    ○米沢委員 今回、この暫定措置に三年間という時限が付してありますが、この三年間というのはどういう意味ですか。なぜ三年間ですか。
  219. 竹下登

    竹下国務大臣 これは三年というものが絶対であるという考え方が初めからあったわけではございません。私ども一つ考え方としては、それは本当は六十一、六十二、六十三、六十四、六十五と、いわゆる俗に言うところの財政再建期間というものも予測をしてみたことも事実であります。それから去年一年限り、去年はそれは一年かかって検討しますという約束でありますから一年限りでございますが、毎年一年限りで持って歩くのも定見がない。そうすると、大体その真ん中あたりということになると三年というのは非常に感覚的な妥当性があるではないかという感じが一つございます。それと、全然なかったわけではございませんが、そのときにそれを前提として議論したわけじゃございませんが、いずれは税制改正というものが行われるであろう。あるいは六十二年に行われても、それがある程度平年度化して定着するのは六十三年ということにもなるのかなというようなことも考えながら、三年というのは、これは神様のお告げというようなものではなく、まさに人間の考え方の中で五年は長過ぎる、一年はこれはいかにも暫定の連続だ、そうするとちょうど三年、こういうことでございますので、コンピューター的理論的根拠は余りございません。
  220. 米沢隆

    ○米沢委員 結局事務事業見直したとか、地方と国の役割分担だとか、あるいは負担の割合のあり方とかというものについて今から議論を進めていくけれども、それは三年ぐらいかかるだろうという趣旨で三年になったのか、それとも、抜本改正等をやって国や地方の税制のあり方あるいは税の分担のあり方等も踏まえて、大体六十三年ぐらいには結論が出るであろうからここらをめどにしてこの三年間が決まったのか、どういうことなんでしょうか。
  221. 竹下登

    竹下国務大臣 今後三年かけてさらに抜本対策を議論しようということではございません。一応それなりの大筋の結論は現状においては出たではないか。したがって、三年間は少なくともいじらない方がいいではないか。しかし一方、やはり不断に検討しなければならないのはいわゆる分野調整であり、費用負担のあり方というものもあるし、なかんずく生活保護問題がいわば両論併記の中で政策選択として十分の七というものをとらしていただいたというようなことを考えれば、やはり三年というようなところが妥当ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。三年間にまたきちんとした、もう一遍検討委員会をつくってその結論を出すという性格のものではございません。
  222. 米沢隆

    ○米沢委員 それでは、検討会の答申で、これらの補助率等を決める場合には議論としては大体けじめがついた、だから、三年ぐらい一回やってみる。そして今度は、三年過ぎたらどうなるんですか。やはり検討会で一応理論づけられたものについてはそのままいく、それで、今度は社会保障の関係でまだ残された部分について三年の間に議論がなされて、三年後にそこで結論を得て、それからまたそのまま先にいく、こういうことですか。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、中西(啓)     委員長代理着席〕
  223. 竹下登

    竹下国務大臣 三年間というもので暫定措置としてお願いをしておる。確かに念頭にあることは、生活保護の問題がいわば両論併記であったものの中間的措置を選択させていただいた。だから、これらの問題は深めた議論がなされなければいかぬであろう。それは今度六十四年度予算編成までに三大臣で協議して決めよう。こういうことになっておるわけであります。だから、大筋は三年間で、一応現状認識においては答えが出たものを取り上げさせていただいたということになるのではなかろうかと思います。
  224. 米沢隆

    ○米沢委員 後でその最後の部分、これからの補助金等の整理合理化の方針等について聞かせてもらいますが、その前に、厚生年金の繰り入れの特例ですね。これは第十一条関係として、厚生保険特別会計法の一部改正として出されておりますが、ちょっと説明してください。意味がわかりません。結局繰り入れは一体どうなったのか。早く繰り入れてもらうように求めるというのが厚生省の見解でありました。それは一体どうなっていったのか、どこでどうあきらめたのか、それから、今度出される特例はどういう意味なのか、説明してください。
  225. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答え申し上げます。先生御指摘のとおり五十七年、五十八年、五十九年、六十年の四カ年にわたりまして行政改革関連特例法によりまして厚生年金の国庫負担についての繰り延べを実施いたしたわけでございますが、六十一年度におきましても、国の財政事情が大変厳しい中で社会保障予算の実質的な内客を確保いたすために、新たに今回の特別会計法の繰り入れ特例措置という形で繰り入れをお願いしているわけでございます。  それで、六十一年度の制度内容をまず御説明させていただきますが、六十一年度は御承知のように年金法が全部改正になりまして、国庫負担のあり方が変わっておるわけでございます。基礎年金部分に原則として国庫負担がつくという形になっておるわけでございますけれども、この部分につきましては繰り延べをしないということでございます。それで、厚生年金の経過的な部分、昭和三十六年四月一日前の期間に相当する部分の国庫負担があるわけでございますが、その国庫負担について、その二分の一を超えない範囲で繰り延べをするという形になっておるわけでございます。これらの繰り延べの額につきましては、国の財政状況を勘案しつつ返済をしていただくということで政府内の意見の統一ができておるわけでございます。
  226. 米沢隆

    ○米沢委員 この二、三年ずっと貸しておられたのはどうなったのですか。
  227. 長尾立子

    ○長尾政府委員 行革関連特例法におきましては、この繰り延べた額につきまして、国の財政事情が許す場合においてはそれを繰り戻すということが明確になっておりますし、私どもといたしましては、今回の措置は、ごらんいただきましたように必ず返済するということが法律上明確になっておりますし、返還されるということで対処いたしております。
  228. 米沢隆

    ○米沢委員 だから、いつになったら返還されるような措置がなされるのですか。時期を明確にしてほしい。
  229. 長尾立子

    ○長尾政府委員 今回の繰り延べ分の決定をいたしました際に厚生省、大蔵省両省で協議をいたしまして、返済の時期につきましては、一般会計が特例公債依存体質から脱却した後においてできる限り速やかに繰り戻しを行うということについて両省が合意をいたしております。
  230. 米沢隆

    ○米沢委員 財政再建が成ってからということだろうと思いますが、これはもう各種委員会議論になっておりますように、六十五年の赤字国債からの脱却みたいなものはてんで絵にならないものであるというのは実証済みでございまして、これではいつまでたっても返してもらえないものになってしまうのではないかということを大変懸念しておることを申し添えておきたいと思います。  それから、補助金等の整理合理化のこれからのあり方でございますが、「昭和六十一年度以降の補助率のあり方については、補助金問題関係閣僚会議の決定に基づき、補助金問題検討会の報告を最大限尊重することとし、その趣旨を踏まえて、補助率の総合的見直しを行うこととしたものである」、こういうふうに記してありますが、今後検討機関みたいなものは置かない、ほぼ検討は既に済んだというのか、一体これから補助金等の整理合理化はどういう方針でやっていかれるのか、政府の方針が皆目明らかでないのでございますが、この際、大蔵大臣に明らかにしていただきたい。
  231. 竹下登

    竹下国務大臣 今のところ、補助金等の整理合理化の推進に当たり新たに何らかの機関あるいは場を設けるということは考えておりません。  基本的には、今日の厳しい財政状況のもとで国、地方を通ずる行財政改革を推進するためにも、補助金等の整理合理化は今後とも推進していかなければならない重要課題である。これは補助率というよりも整理合理化等今日までやってきた問題でございます。したがって、今後とも毎年毎年の予算編成過程で補助金等の整理合理化には努めていかなければならぬ。これは行革審から、財政審から、いろいろ指摘されておるものが数々ございまして、それを一つ一つ手をつけてまいっておりますが、なお不断の努力を要する課題であるというふうに考えております。
  232. 米沢隆

    ○米沢委員 今後も補助金等の整理合理化については重要な課題として取り組んでいくということを今おっしゃいましたが、これからの課題のチェックポイントみたいなものは何ですか。補助金等の整理合理化に際しまして、今後の課題はどういうものがありますか。
  233. 竹下登

    竹下国務大臣 一般論として申し上げます。  臨調答申、行革審意見、財政審報告等で指摘されております補助事業廃止縮小、地方へ同化定着した事務事業一般財源措置への移行、こういうようなことを一般的に抽象的には申し上げられるのではなかろうかというふうに考えております。たくさん指摘を受けたものの中で不断の見直しに努めていく必要は私はまだあると思っております。
  234. 米沢隆

    ○米沢委員 私が特にこれに加えてほしいのは、補助金行政に関連する問題で補助金申請の手続ですね。それから国の自治体に対する関与のあり方あるいは陳情行政の問題点です。どうもそのあたりをかなりの力でメスを入れてもらいたいということを申し上げたいと思うのです。  従来もいろいろと議論になってまいりましたから、手続の簡素化等について各省庁とも汗を流していただいてはおりますが、地方自治団体から国の補助金という関連で物を言っていただくといつも出てくるのは、依然として余りにも手続が繁雑で複雑で、陳情行政に金が要り過ぎる、エネルギーが要り過ぎるという答えではないか、私はそう思っております。そういう意味で、これから先のこの補助金の整理合理化、先ほどおっしゃいました一般論としてのチェックする課題は従来どおりありましょうけれども、同時に、これから先は、この補助金行政にまつわる問題においてもっと簡素化を図るというあたりを最重点課題にするべきではないか、私はこう思っておるのですが、大蔵大臣、そういうものは今までもやっておるからこれからも同じ調子だというのではなくて、もっと腰を据えて、簡素化のためにプロジェクトチームでもつくるぐらいの気概を持ってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  235. 竹下登

    竹下国務大臣 地方自治体の部局によってもいろいろ異なることがございましょうけれども、申請手続に時間がかかり過ぎるという声は依然として存在しておることを承知いたしております。また、閣僚会議、補助金問題検討会の報告、これを見ましても、交付手続の簡素合理化の実施を推進すべきである旨の指摘がなされてあります。したがって、これまでは補助金等適正化連絡会議等を通じてその推進に努めておるところでございますが、今後もなお簡素化、合理化には力をいたしていかなければいかぬ。  具体的には、提出部数の削減、提出書類の一部廃止、ヒアリング回数の減、さらに、大蔵省としての簡素合理化について執行面でさらに工夫を凝らすように、補助金等適正化連絡会議等を開催して、そしてそれらを通じて各省庁にも要請をしておる。これは確かに相当大事な問題であるということは十分承知をいたしておるところでございます。
  236. 米沢隆

    ○米沢委員 皆さんのお手元にも大体渡っておると思いますが、先般、地方自治経営学会というところが国の補助金行政等についてもっと地方自治団体の本音のところを聞こうということでアンケート調査をなされておりまして、その要約したものが私の手元にもあるのでございます。これはあくまでもアンケート調査でございますから、いろいろな分析の仕方、物の見方はあると思います。あるいはまた、書かれる内容そのものも、一般的にはうまくいっておるけれども個別的に書かざるを得ないような問題としてアンケートに答えたというようなところもあるかもしれませんが、総体的に言いまして、このアンケート調査等を見ますと、最も地方を縛りつけているもの、その束縛から最も逃れたいと思っているものは何かという問いに対しては、やはり依然として国庫補助金による国の統制、関与、国の各省の縦割りによる重複統制、これが合わせて大体六七%ぐらいありますね。だから、補助金をもらうのはありがたいけれども、もらうに際しましてはいろいろ言われて本当に嫌だというのが本音だろうと思うのです。皆さんの国の立場からもおのおの言い方はあるかもしれませんが、地方自治団体に言わすと、もらうのはありがたいけれどもまあうるさくてかなわぬというのがこの第一項目に挙がっておるわけですね。  それから、国庫補助金改革で最も望むものは何かという問いに対して、手続、手間、事務の大幅簡素化をお願いしますというのが五三%ぐらいありますね。同時に、もっと総合化、枠配分化、ひもなし補助金にしてもらいたいというのが約一九%ぐらいありますから、合わせてこれも七二、三%が国庫補助金に際しましてもっと手続をうまくやってくれという声なんですね。国としては物の言いようはあるかもしれませんが、地方自治団体の立場からしたら、このあたりをしんしゃくして国がもっと腰を入れて手続等の簡素化に努力をする、あるいはまた関与のあり方等についてももっと勉強してもらうということが必要だということだけはこのアンケートから物が言えるのではないかな、こう私は思っておるのですね。  ところで、地方自治体の日常業務の中で国庫補助金関係の業務、例えば申請業務などにどれぐらいの時間が割かれておるか、大蔵大臣、どう思われますか、総理大臣、あなたはどう思われますか。国庫補助の申請等にどれくらいの時間が費やされているか、わかりますか。
  237. 小沢一郎

    小沢国務大臣 現実のいろいろな業務、事務の中でございますから正確な数字ではないと思いますけれども、県、市町村、両方大体半分、五割前後の手間がかかっておると言われております。
  238. 米沢隆

    ○米沢委員 大体当たらずといえども遠からずというところでございます。これもアンケート調査しか私はありませんので、はっきり調べたことではありませんが、五十九年十月に同じ地方自治経営学会が出したアンケート調査の要約したものを読みますと、大体都道府県では「国庫補助金関係事務(申請書類づくり、陳情、監査書類づくり等)」で大体仕事の四四・六%、「国等からの調査依頼」これもやはり補助金等にかかわる問題に関連するのだと思いますが、これが一九・三%でございますから、今自治大臣がおっしゃったように半分強ぐらいはどうも国庫補助をもらうための仕事というものに割かれておる、こういうことが言えると思うのですね。  そういう意味では、地方の住民サービスに直接つながらない、国と地方との間の内部事務処理だけでこんなに多くの公務員が張りついて、多額の税金がそこで浪費されておるというのはやはり問題ではないかと思うのですが、総理どうですか、眠いでしょうが答えてください。
  239. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 かねてからその点は指摘されたところでありまして、中央政府としても各省の連絡会議を開いてそれをできるだけ簡素化すべく努力してきておるところでございますが、いまだになかなか根を断つまでに至っておりません。今後とも大いに努力いたします。
  240. 米沢隆

    ○米沢委員 具体例としてこのアンケート調査の中で特異なものだけちょっと取り上げて各大臣にお答えいただきたいと思うのであります。  まず文部大臣にお答えいただきます。例えば、公立学校施設整備費国庫負担金、これがかなり時間がかかるものの典型的なものとしてここに取り上げられておりますが、大体事業計画書の提出から精算払いの請求書の提出まで一年一カ月、これはある市の例でございますが、大体九回県庁へ出向かねばならない。資料枚数は各回とも五十枚から百枚、これを二、三部作成していかねばならない。作成に要する日数は一回に三日から七日間、二人の職員がつきっきりだ。このほかに県の実績確認及び会計検査院の検査がある。年に数回、これらの事務の説山会に出席する必要がある。こういうことがある市からアンケートの答えとして出ておるわけでございます。物の見方によってはこれでも簡単過ぎるとおっしゃる人もおるかもしれませんが、私どもが見ていかにもこれは時間がかかるものだなという気がしないではありません。文部大臣はこういうような実態をどのように考えておられるのか。もっと簡素化できないのか。     〔中西(啓)委員長代理退席、笹山委員長     代理着席〕
  241. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘の公立学校の施設整備費補助金につきましては、まず事業の認定をすることと交付の決定をすることと補助、補正等の必要な一連の手続については文部省が直接関与いたしております。その以前の段階については、都道府県の教育委員会にそれぞれの市町村教育委員会から話を上げていただいております。余り簡素化、簡素化と言ってほうっておいて、全国的な基準とか秩序とかレベルが乱れてもいけませんので、これくらいのことは適正にしなければならないと思ってやっておりますが、それでも御指摘のように各方面からの御指示がございましたので、昭和六十年度においては、提出書類の簡素合理化は行いました。同時に、昭和六十一年度においては義務教育諸学校の国庫負担法施行規則を改正をいたしまして、従来、新増築事業において三種類の申請書を必要としておりましたのを、一種類提出すればいいように改めることにいたしました。  なお、今後ともでき得る限り簡素化に向かって努力は続けさせていただこうと思っております。
  242. 米沢隆

    ○米沢委員 さらに、零細補助金の中には、補助金の交付額よりもそれをもらうために要する事務費の方が高いというような例がたくさん挙げられておるわけであります。  例えば、老人クラブ運営費補助金補助金額がその市では、これは町ですかね、二十二万七千円に対し、申請事務等に要する経費はその三倍の六十九万二千円要る。あるいはまた、福祉関係事務費補助金、児童扶養手当支給事務費補助金、特別児童扶養手当支給事務費補助金、これはそれぞれ三万八千円もらうのに四万五千円かかるとか、十六万四千円もらうのに七十一万二千円かかるとか、四万七千円もらうのに二十三万八千円かかるとかというような事例が出されておる。これはやはり非常に問題だなと思うのですね。  あるいは文部省の社会教育集団学習奨励金。この補助金が、三十万円に対して申請費用はその三倍の百一万円要る。実際は申請事務費にかかる金をこっちの方に回した方がまだずっともうかるというものは、逆に零細補助金はもう地方自治団体の出費にしていくというような思い切った方法もとられるべきではないかな、こう思うのでございます。一々地方を縛っていくのではなくて、その運営を地方に任せることによってこれを廃止する、地方一般財源化に振りかえるべきだ、こういうふうに思うのですが、厚生省、それなりの何か理由があるのでしょうか。文部省、それなりの何か理由があるのでしょうか。
  243. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 社会教育にはいろいろ重要な面がありますので、公民館等を中心として市町村が主催されるそれぞれの学級とか講座等に補助金を出しましてさらにそれを促進し、また、波及効果を期待して制度的には行っておるところであります。  ただ、先生御指摘のこの資料を私も先ほどから読ましていただいて、文部省の集団学習奨励金三十万円のために百万八千円要ると書いてあります。これがもし事実としたら、私は著しく正義に反すると思います。三十万円の補助金のために百一万円使っておるといったら、むだ醸成補助金を出しておるようなことで、これはどこに原因があるのかと思っていろいろ調べてみました。しかし、どう考えてもそのために百万円以上かかっておるとは思われない状況も出てきております。というのは、この種の事業のヒアリングは、年に一回都道府県の代表を通じてすべての市町村の分を聞いておりますので、すべての市町村は都道府県にそれを一回進達してもらえばいいわけですし、また、書類でも一括郵送していただいていいようにしておりますから、私どもの実感ではどうしてもそんなにかかっておるとは思えませんけれども、なお調査をいたしまして、むだ醸成のための補助金ならば徹底的に考えていかなければならぬ、こう考えております。御理解をいただきたいと思います。
  244. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 厚生関係補助金でも、老人クラブ運営費補助金二十二万七千円に対して六十九万二千円の経費がかかった、こういうようなアンケート結果が出ておるわけでございます。ほかにも幾つか例がございます。私どもの方もこれほどかかるというふうには思っておらないわけでございますが、町村によりましては特別な事情でこういうこともあるいはあるのかも存じません。  それから、補助金の整理合理化につきましては、従来からいろいろやっておるのでございますが、例えば六十一年度予算におきましても補助金廃止あるいは統合、それから零細補助金の解消、こういったことをいたしておるわけでございまして、今後とも引き続き努力をいたしてまいる考えでございます。
  245. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど来文部大臣厚生省の方から御答弁いただきましたが、確かにこれはアンケートですから例外の部分があるかもしれませんし、あるいはまた、物の考え方等が統一されて議論をした結果出てくるというものではないから、そこを来しておる部分があると思います。しかし、地方自治団体のこれを書いた人は、大体助役とか少なくとも中枢におる方が答弁なさっておられるわけでありますから、そう皆さんがばかにしたような感じで物を見るということは当たらないのではないか、こう思うのでございます。  例えば社会教育の奨励金だって、やはりいい先生を呼べば三十万なんというのは完全に吹っ飛んでしまうわけで、いい先生をといえばかなりの金を出して呼ばねばならないとか、そのためにはいろいろと準備もしなければならぬとか等々で、逆にこの奨励金があるために何かしら出費を強いられる、そんな感じで見ておるのじゃないかな、こう思うのですね。  また、厚生省の問題にいたしましても、確かに補助金は本当に小さいですね。もらう人にとっては本当に重要な資金かもしれませんけれども、これは申請事務をする際にいろいろ人件費あたりも計算されておるのだと思いますが、相当な出費が要るというものはもっとまとめてやるとか、あるいは地方自治団体一般財源化にするなどという方法に切りかえてやることの方が――こういうことで補助金がいかにもむだなことをやっておるというふうに見られること自体の方が弊害が大きいのではないか、こういうような感じがすることを感想として申し上げておきたいと思います。  それから、これも昨年の補助金のときにも私やりましたが、各省の縦割り補助金で相互に重複、むだではないかと言われる象徴的なものに、各省ばらばらの箱物というのがあるのですね。箱物補助金。文部省の公民館、青年の家、文化庁の文化センター、国土庁のコミュニティーセンター、山村開発センター、離島開発総合センター、農林水産省の生産改善センター、農村婦人の家、労働省の勤労青少年ホーム、働く婦人の家、厚生省の児童館、老人福祉センター。使う人にとってはこんな名前をいろいろ書かれても、結局会合の場があればいいのですね。これを一々各省庁が縦割りの補助金をもってそれなりに運営せよという注文をつけておられるのですな。利用者を制限、いわゆる他の使用を認めない運用をしておるとか、何となくこういうものはそれぞれ思いつかれてやられたことではありましょうけれども、使う立場からすればこんな線引きなんか要らない話でして、これは一挙に箱物として補助金を出すなら出すというふうに一元化してもらった方が、自治体の方としては完全にエネルギーは少なくて済む。このあたりはもう一回検討してほしいのです。今回の補助金の箱物の率はちょっと下げられておりますけれども、率を下げるのじゃありません。こんなのは一元化してもらいたい。あるいは箱物は一挙に地方自治団体一般財源にする、そういう英断がないと、この前笑い話になりましたが、入り口が三つあったりするというそういうばかげたことはいいかげんにやめてもらいたいと思うのです。これは、その後善処をなさっておられるのでしょうか。
  246. 保田博

    ○保田政府委員 零細補助金の整理とか統合メニュー化、さらには箱物の整理といった今後の補助金負担金の整理合理化の方向についていろいろ御提言をいただきまして、大変ありがたい御指摘だと思っております。  最後の会館等の補助金でございますが、御指摘のように六十一年度予算におきまして補助率引き下げを行いますと同時に、各省庁ごとに計上されております各種の予算額につきましても、大蔵省で横並びを見ながら毎年毎年予算を相当削減いたしておりますので、なかなか事情がございまして一挙にゼロとまではいきませんが、今後とも極力その圧縮に努めてまいりたいと思っております。
  247. 米沢隆

    ○米沢委員 補助率の圧縮じゃなくて、箱物ぐらいは一元化してくれと言うのですね。各省庁の縦割りの弊害というのがここにシンボリックにあらわれておる、こう言いたいということをぜひ御理解いただきたい。  もう時間がありませんが、残余の分については、また質問の機会があろうと思います。農林省の皆さんにはたくさん来ていただいておりますからえらい済みませんが、またよろしく。  最後に、補助金の手続等の簡素化等について、先ほどプロジェクトぐらいつくって、各省庁ごとではなくて、横並びに一回手続の簡素化の勉強をしてもらいたいということを申しましたが、私はやはり二つあると思うのですね。  一つは、補助金を実際実務で担当されておる方、この方がやはり何とか簡略化してやらねばならないという気持ちを持たない限り幾ら上から言うてもだめだということです。担当官その方が、もっと手続を簡素化する工夫は今でもされておると思いますが、もっともっと簡素化する方法はないのか、こんな書類は要るのか要らぬのかとか、一部で済まないのかとかいう、そういう謙虚な気持ちで、原点に立ち返って議論をしていただくということが本当に大事だろう。そういうことをやっていただくことを約束してもらいたい。やっておられると言うのならやっておられるで結構。しかし、新たに何かしようと思っていただくならば、そのような方向で御答弁をいただきたい。  それからもう一つ。手続等が大変複雑で、慎重に慎重になされる理由の一つに、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律というこの法律が災いしておる点があるのじゃないのかな、こう思います。確かに国民の血税を使うのでございますから、いいかげんに交付されたりいいかげんに使われることは断じて許してはなりません。しかし、昭和三十年につくられた法律なのでございますが、その後、地方の公共団体もそれなりに行政能力は著しく向上しておりますし、昭和三十年から数えますともう三十年たっておるわけでございますから、もういいかげんに適正化の法律も一回見直して、現時点でこんなことまでする必要があるのだろうかというような目で一回総ざらいをしてもらうことが必要ではないのかな、こう思うのです。この法律はどこの管轄かわかりませんが、その点についてぜひ御答弁を賜りたい。  特に少なくとも、「状況報告」の項ですね。「補助事業者等は、各省各庁の長の定めるところにより、補助事業等の遂行の状況に関し、各省各庁の長に報告しなければならない。」このあたりはずっと簡素化できるはずですね。あるいはまた、「補助金等の交付の条件」として、「補助事業等に要する経費の配分の変更をする場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと。」等々、経費の配分の変更の際の条件とか、見方によっては、これは余りにも厳格過ぎるのではないかという気がしてなりませんので、この法律をもう一回現代風に洗い直して、抜くところは抜く、任すところは任す、地方自治団体をもっと信用してあげてもいいのじゃないかと私は思うのですが、そのあたりの御検討をぜひお願い申し上げたいということを御意見として申し上げ、答弁をいただきたいと思うわけでございます。大蔵大臣ですか、総理大臣ですか。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 まず簡素化。手続が複雑である、したがって、これら簡素化のためには今の適正化会議等をさらに活用して、それも今おっしゃったようなことを一つ一つ羅列してそれをおろしてみましょう。恐らくそれに対して何らかの反応があろうと思います。  それから、二番目の適化法の問題でございますが、あれは御案内のように、法律を読んでみますと、適正化を図ることを目的とし「効率的に使用されるように努めなければならない。」とか「誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならない。」こういうふうな書き方になっております。本当は、一律に規制するようなことはせずに、基本的事項だけを定めて、個々の補助制度の実情に合わせて各省各庁の長が弾力的に行うことができるというふうにされているわけであります。したがって、むしろ運用に問題があるのじゃないかな。法律を読んでみますと訓示規定が割にあるという印象を受けましたので、今の御意見をよく体して、むしろ運用の面で検討を加えるべきではなかろうかというふうに考えたわけでございます。
  249. 米沢隆

    ○米沢委員 最後になりますが、総理、いいですか。  先般、日米経済摩擦の問題で我々がアメリカへ行ったとき、中曽根さんは大変人気があるのです。中曽根は対外経済摩擦を何とか解消しようと努力しておる、しかし末端の役人が非関税障壁の最たるものだという言い方をするのです。国庫補助金の問題につきましても、それは運用の問題だとは思いますけれども、やはり末端の担当官が余りにも優秀で、まじめで、この法律にのっとって一生懸命やろうとするがゆえに必要以上に自治団体に重荷を負わせたり、何となく圧迫された気持ちを起こさせたり、変なエネルギーが要るように思っているのじゃないかと私は思うのです。そういう意味で、公務員の皆さん方に逆に申しわけない、このあたりは、法律改正するまでにはいかないにせよ、もっと統一的に、そこまでまじめにやらなくてもいいよとふまじめの勧めをやることが、一面では補助金に対するいろいろな不満を解消する最大の道だ、こういうふうに思うのですが、最後に総理に御答弁をいただいて、質側をやめたいと思います。
  250. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 補助金問題は前から何回も質問を受け、我々も努力すると約束してきた問題で、またこういう御質問をいただいて非常に恐縮に存じておるところでございます。きょうの御質問を機にもう一回引き締めまして、再点検をして、信頼関係を醸成する、扱う者が悪いことをしない、その二つが非常に大事だと思いますので、その辺を引き締めてやってみたいと思います。
  251. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  252. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 小沢和秋君。
  253. 小沢和秋

    小沢(和)委員 まず初めに、河田か総理にお尋ねをしたいと思います。  最近、産業構造審議会が「二十一世紀産業社会の基本構想」というものを発表いたしました。その六ページに、日本の貯蓄率が異常に高いのは「単に循環的なものとして考えることはできない。」「不時又は病気あるいは老後の不安に備える必要があること等が、貯蓄を高める構造的な要因として指摘される。」と述べておるくだりがあります。総理も御承知だと思いますが、この指摘について総理はどうお考えでしょうか。     〔笹山委員長代理退席、中村(正三郎)委員     長代理着席〕
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう要素も日本の場合はあり得ると思います。
  255. 小沢和秋

    小沢(和)委員 これは言葉をかえて言えば、我が国の社会保障や福祉政策が極めて貧困だということの指摘ではありませんか。特に高齢化が猛烈な勢いで進行しつつある今日、人生八十年の時代にふさわしい高い水準の社会保障を我が国の総力を結集して確立することが緊急の任務になっているということをこの産構審の指摘から受けとめるべきではないでしょうか。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう老後の問題もありますけれども、また一面において住宅ローンとか――特に住宅ローンが多いようですね。そういうものに対する配慮からもやっているというもの、なきにしもあらずです。私が最近見た統計では、平均貯蓄が六百九十万ぐらいで借金が二百五十万ぐらいで、そのうち二百三十万ぐらいが住宅の借金、そういうものがたしかあったように思います。そういう面から見ましても住宅の圧力というものはかなりあるのではないかと思います。
  257. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それはそういう面もあるかもしれませんけれども、やはり何といっても老後あるいは不時に対する不安というのが貯蓄などをこれだけ高める決定的な要因になっているのじゃないですか。
  258. 竹下登

    竹下国務大臣 貯蓄関係でございますから、私からお答えをいたします。  元来日本はいわゆる貯蓄率が高いというのを、およそ六つぐらいでいつもお話ししております。  一つは、質素、倹約をとうとぶ国民性。これはなかなか英訳できませんけれども、基本はここにあるのじゃないかという感じがします。  二番目が今おっしゃった問題でございます。老後とか疾病ということに対する不安。これはそれが慣習づけられておって、他の国に比較してそれが低い状態にはないが、一つの慣習づけられておる要素であろうというのが二つ目であります。  三番目が、これは恐らく先生の質問とちょっと離れた角度かもしれませんが、ボーナス比率が非常に高いということ……(小沢(和)委員「いや、六つ全部言ってくださらなくてもいいです」と呼ぶ)それから貯蓄優遇税制というものがある。それから公的負担率が欧米諸国よりも低い。これらのことがいつも議論対象になっておるところであります。
  259. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今、老後に対する不安というのも認めていただいたから、それはそれでいいと思います。ただ、それが慣習的なものだと言われたのですけれども、最近の政府が年金もあるいは医療制度も改悪する、さらに、補助金カット法案では最低の生活保障や各種の福祉政策まで後退させる。こういうことがますますその不安に拍車をかけて、貯蓄を一層増強させる傾向になっているのではないかと思うのです。  総理は、社会保障や福祉などに対する国の責任というものを一体どうお考えでしょうか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 社会保障制度は、日本は大体西欧の水準に追いついてきておりまして、遜色はないと思っております。ですから、老後の不安というものは、社会保障制度が整っているという面においては外国と同じような程度のものである。したがって、貯蓄率がいいということは、勤勉、貯蓄という日本の伝統的な、何か精神的な土壌に根差しているものもかなりあるのではないか、そう思っております。
  261. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、私は、総理は社会保障や福祉に対する国の責任というのを一体どうお考えでしょうかと伺っているのです。
  262. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国としては、国民の皆さんの最低生活について意を用い、かつ健康にして文化的な生活が行われるように配慮すべきものと考えております。
  263. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、その国の責任については憲法二十五条で明確に定められていると思うのです。  ここで内閣法制局にお尋ねしたいと思うのですが、この二十五条については憲法制定議会で政府の原案が大幅に修正されて今日のような条文になったと伺っているのですが、その経緯、内容をごく簡単で結構ですからお示しください。
  264. 大出峻郎

    ○大出政府委員 御指摘のとおり、現行日本国憲法第二十五条第一項の規定は、政府の原案にはなかったわけであります。当時の衆議院の修正で追加されたものであるというふうに承知をいたしております。  当時の政府の原案では、これは憲法第二十三条という位置づけがなされておりましたが、その条文は、「法律は、すべての生活部面について、社会の福祉、生活の保障及び公衆衛生の向上及び増進のために立案されなければならない。」というものであったわけであります。これに対しまして、当時の衆議院において修正がなされたわけでありますが、この原案の第二十三条に、第一項といたしまして、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という規定が追加をされ、原案を若干修正をいたしまして、第二項といたしました。そして現行の第二十五条の規定となった、こういう経緯があるわけであります。  この第二十五条の修正理由につきましては、当時の衆議院本会議におきます芦田委員長委員長報告によりますというと、「第二十三條ノ」これは現行の第二十五条でありますけれども、「字句ニハ、多少意ヲ盡サナイ憾ミガアル如ク考ヘラレマスルノデ、委員會ニ於テハ、一層明白ニ個人ノ生活權ヲ認メル趣旨ヲ以テ、」ちょっと飛ばしますが、「修正シタ次第デアリマス、」と述べているところであります。  以上でございます。
  265. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今総理もお聞きのとおり、政府の原案は、法律というのは社会の福祉、生活の保障などのためにつくらなければならないということになっておりましたのを、わざわざ第一項として、国民の生活保障をされる権利というのをまずうたい、そして第二項についても、「法律は、」でなく「国は、」努めなければならぬというふうに明確にしておるわけであります。こういう二十五条の立法の経緯といったようなものを考えてみますというと、今政府がやっております社会保障をどんどん後退させていくというようなことは、憲法のこの考え方、立場から見て、全くそれに反していると言わざるを得ないと思うのですが、総理はどうお考えでしょうか。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の社会保障制度は欧米に比して遜色のないところまできていると先ほど申し上げましたが、そのとおりで、体系としても整っていると思います。  ただ、そのときそのときの中身につきましては、財政事情等もあり、国民負担との関係もありまして、余り年金の掛金やあるいはいわゆる社会保障税と称するようなものによって国民生活が圧迫を受けるというようなこともまた考え物で、また、よくヨーロッパに見られるような何とか病と言われるようなことで風の活力が衰えても困るものでありまして、その辺は政府の裁量及び国会のいろいろな御意見によって水準が決められていくのが正しいと思っております。
  267. 小沢和秋

    小沢(和)委員 既に西欧に比べて遜色のない域に達しておるというような総理の認識は全く間違っているということについては、私はきょうここで論争しようとは思いませんけれども、例えば年金などについて一言だけ言いますと、よく比較される西欧並みの水準になっているというのは、厚生年金などの例を挙げて言われるわけですよ。しかし、実際には、国民年金などは、今度基礎年金というように名前が変わりますけれども、諸外国と比べたら全くお話にならない水準でしょう。現実には多くの国民、七割ですか、大部分が二、三万円という水準でしょう。年金の例を一つ挙げてみたってそういう状況です。それをさらに今、後退させようとかかっているということについては、私は一言だけ御指摘をしておきたいと思います。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、小泉委員     長着席〕  ところで総理は、今年三月十四日の参議院の予算委員会で、「日本は、日本型社会福祉をやろう、そういう考えに立ちまして、必要最小限のものは国家が関係して面倒を見させていただく、」というふうに述べておられるわけであります。今も、最小限というような言葉を先ほどの答弁の中で触れられたように思いますが、この「必要最小限」というのは、具体的には何のことを言っているのか。また「国家が関係して面倒を見させていただく、」とはどういうことか。国家が面倒を見るというのと同じなのかどうか。これはちょっと確かめる意味でお尋ねしたいと思います。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、国民皆保険とかあるいは国民皆年金とか、そういう方向を目指して努力をし、そして国家という公的機関が関与をして、できるだけ最低部分を維持していこうと努力している、そういう面にあらわれていると思います。
  269. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、私が聞いていることに正確にお答え願いたいのです。  この「必要最小限」というのは何のことか。そして「関係して」という言葉が、国が面倒を見させていただくという間に入っているのですが、「関係して」という言葉があるけれども、これは国が直接面倒を見るというふうに読んでいいのでしょうかということをお尋ねしたわけです。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国が関与しているということで、国がまるっきり手を出さないでこれは民間のものだと言っておっぽり出しているということではない。やはり国も大きな関心を持って、そして皆さんの掛金とか拠出金とか、そういうようないろいろなものとの組み合わせにおいて国もお金を出し、そういうかげんで国民の大多数の方々の面倒を見させていただくようにしている、そういう意味で、公的年金制度あるいは公的医療制度というようなものを頭に置いて申し上げているわけです。
  271. 小沢和秋

    小沢(和)委員 生活保護は、今お言葉の中に出なかったようですけれども、これももちろんそれに入るわけでしょう。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 生活保護も入ります。
  273. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、最も重要な社会保障や福祉の土台になる制度というのは、先ほどから同僚議員も何人か生活保護のことを論じられましたけれども、生活保護ではないかと思います。そこで若干の時間、生活保護の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この生活保護を規定しております生活保護法は、総理も御存じのとおり、直接憲法二十五条を受けて、国が責任を持って健康で文化的な最低生活を保障するということになっておるわけであります。私は、その点でほかの制度と決定的に違うと思いますし、だから、本来だったら国が十割負担をすべきだ、してもちっともおかしくない制度だと思うのです。しかし、現実には、自治体がそうするというと無責任に乱給をしたりすると困るので、その歯どめとして二割程度は持たせた方がよいというようなこともあって、自治体の二割負担ということが行われるようになったというようなことも私聞いておるわけであります。  先ほど竹下大蔵大臣は、今までもこの負担率についてはいろいろ議論があったというふうにも申されましたけれども財政的にも非常に困難な時期があり、いろいろな議論があったけれども、八割ということが三十数年間守り抜かれ定着をしてきた。ところが今度、実際上七割に去年から切り下げるというのは、憲法二十五条に直接基づいて国の責任としてやられるという生活保護法の内容から見てこれは許されないことじゃなかろうかというふうに考えますが、総理、いかがでしょう。
  274. 竹下登

    竹下国務大臣 国の責任という意味は私も理解をいたしますが、八割が適切があるいは七割が適切があるいは十割あるいは五分五分――歴史的に見ましても五分五分の時代もありました。それから、昭和二十二年度予算でございましたか、ちょっと正確ではございませんが、この当時の占領軍が裁定して最終的なものを決めたとか、いろいろな経過がありますので、私はこれが絶対だというもの、憲法に保障されるものは八割だ、こういう議論は妥当であるということを言えるものではなかろうというふうに考えております。責任の所在が大事であるという意味で申し上げたわけであります。
  275. 小沢和秋

    小沢(和)委員 責任の所在ということを言われたのですが、国が直接責任を持つということになれば、私は、国が十割持つということと結びついてもちっともおかしくないどころか、それが当然だと思うのです。現に戦後、ごく短期間ですけれども、そういう時期もあっているんですね。今あなたが五割という時期があったと言われたのは、これは私の記憶ではたしか戦前でしょう。どんな困難な時期にでも、戦後はずっと八割で来ているのです。私は、それが一つ国民的な合意である、だからこれを崩すべきでないということから、強くこの点についてはもとに戻すべきだということを改めて主張しておきます。  ところで、政府補助率を八割から七割に切り込むということになってまいりますと、自治体の方はそれに対応して出さなければならない金額が大きくふえてまいります。特に保護者数などが多いようなところではその負担が非常に大きくなる、だから、自治体はついつい保護者を減らそうという方向にこれがどうしても作用していっていると思うのです。  これは、何も思うのではなくて、事実がそうなっているわけです。私は厚生大臣にお尋ねしたいと思いますが、最近一年間で保護者数が大幅に減っているのではありませんか、数字をお示し願いたいと思います。
  276. 小島弘仲

    ○小島政府委員 お答えいたします。  六十年に入りまして、四月を基準といたしますとそれ以降逐次減ってまいっておりまして、六十年の四月で百四十五万八千人、それが五月には百四十四万八千人、六月には百四十三万九千人、それから七月、百四十三万八千人、八月、百四十三万二千人、九月、百四十二万六千人、十月、百四十二万七千人、十一月、百四十二万四千人というような形で逐次減少の傾向にあります。
  277. 小沢和秋

    小沢(和)委員 重ねてお尋ねしますけれども、ここ十年くらいの間はずっとふえておったんじゃないですか。なぜそれが減るようになったかお尋ねします。
  278. 小島弘仲

    ○小島政府委員 一貫してどうかということではございませんで、上がったり下がったりという傾向がございます。  主として保護率の増減というのは、景気の動向、雇用率と申しますか、完全失業率の動向と極めて密接な関係があるやに考えております。最近の傾向を見ましても、完全失業率の改善の傾向とほぼ歩調を合わせておることでございましで、就労状況の改善というものが主たる原因ではなかろうかと考えております。  もちろん我々としては、生活保護と申しますのは社会保障の基底であり根幹であると考えておりますので、この制度を適切に運用し、国民の信頼を得ることも大切だと考えております。そのために、いろいろ新聞紙上には御批判も出ておりますけれども、この制度が適正に運用されるような適正化の努力もあわせて講じているところでございます。
  279. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今、増も減もあると言われましたけれども、あなたの方からいただいている年度ごとの平均数というので見ますと、五十五年度にほんのちょっと減った、全国を通じて四千人足らず減った。これがずっとふえているのですよ。これは事実の問題ですから、別にあなたに答弁は求めません。それがごく最近になって減るようになってきている。これは景気の動向、失業動向などと結びついているんじゃないかというお話ですけれども、完全失業率というようなものを見てみますと、五十五年ごろから見れば、これも若干の変動はありますけれども、概して言えばずっと高くなってきているわけでしょう。五十五年が二・〇。それが六十年には二・六。それで六十年一年間ずっと変動はありますけれども、六十一年の一月も二・八。だから景気が若干どうこうあっても、失業率というのは、全体として見ているとじりじりだけれどもふえているのです。そして、ことしの一月は二・八。今まで史上最高三・〇というのがありますけれども、しかし大体史上最高に近い状態なんですよ。そんなことで説明できないのじゃないですか。     〔小泉委員長退席、山崎委員長着席〕
  280. 小島弘仲

    ○小島政府委員 完全失業率の状況でございますが、確かに五十九年の七月から九月期には大体二・八ぐらいでございましたが、五十九年の十月から十二月期につきましては二・七程度。六十年の一月から三月が二・五、四月-六月も二・五というような形で、わずかでございますが、この辺のわずかな数字が生活保護の動向にも極めて影響しているやに見受けられます。
  281. 小沢和秋

    小沢(和)委員 最近になって減り始めてきたということを解く本当のかぎというのは、あなたがさっき最後に一言触れられた、いわゆる法の適正な運用というのですか、そちらの方にあることはもうはっきりしておるんじゃないですか。  ここに六十一年度の全国都道府県民生部長会議に厚生省が出しました資料というのを持ってまいっておりますけれども、この中に、生活保護については、例えば保護の相談、申請があった段階で「十分な審査と指導援助が最も重要である」ということで、福祉事務所の取り組みを強化するように指示しております。  これは、それだけ聞くと、ああそれはそこにお見えになったときに親切にやれということだろうなというふうに聞こえると思うのです。それで、私もぜひそうあってほしいと思いますが、これは私がおととしにも社会労働委員会で問題にしたのですけれども、私の地元の北九州市などでは、福祉事務所に申請に行っても窓口に用紙さえ置いてない。用紙をくれないわけですね。どんなに困って行ってもその申請もさせない、こういう状況があったのです。それで、私がそのことを指摘してから、用紙は確かに置かれるようになったのです。  ところが、最近どうかといったら、今度は、そういう困ってお見えになる人たちをまず受け付けるのは係長クラスのいわゆる役付の職員ですね。そして、いや、それはあなた来るところが違いますよ、安定所に行って相談してごらんなさいとかいろいろ言って、一回や二回で簡単に申請の手続ができないということで私どものところなどに泣きついてみえるというようなケースがしばしばあるんですね。  時間もありませんから、もう一、二だけ言っておきますと、これは北九州には限りませんけれども、申請していくと、親族関係などをいろいろ聞いて、めい、おいというのは普通扶養の直接的な義務者ではないと思いますけれども、そういうような人たちを聞き出して、遠隔地にいるめいやおいにもはがきなどで、あなたは扶養義務者ですよといってこの人をぜひ扶養してくださいというようなはがきを出したりする。これなども私は行き過ぎじゃないかと思うのですね。  それかと思うと、離婚した女性に対しても、別れた前の夫から養育費をもらいなさいといって追い返す。だけれども、実際には別れた夫とそんなことで話がつくぐらいだったら、私は恐らく別れないだろうと思うのですね。  だから本当に今困るということで駆け込んできても、こういうようなことで実際には非常にひどい状況があるのです。これは私がおととしも指摘をしたけれども、残念ながら余り改まっておらない。そして、この資料を見ると、大体そういう方向でやれというふうに指示してあるんですね。私は、こういう弱い者いじめになるようなやり方というのは決して適正な運営でも何でもないと思うのです。これをぜひ改めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  282. 小島弘仲

    ○小島政府委員 生活保護につきましては、自分の持っているあらゆる能力、資産のほかに民法上の扶養義務も最大限度に活用してというのが条件になっております。いわゆる私的扶養が生活保護に優先するという建前になっておりますので、その義務の履行をできるだけ求めるというのは、やはりこの法の運用上正しい措置だと考えております。  ただそこで、それのやり方によりまして非常に受けにくくなる、あるいは緊急時に間に合わないというような事態があってはいけませんので、運用については、毎回適正化につきまして、本当に必要な人が受けやすいような措置ということでは同様に十分指導しておりますし、また、いろいろの調査におきまして、どうしてもプライバシーということで御批判を受けることもありますが、私的扶養の義務ができるかできないかというのはやむを得ない調査でございますが、その中身、やり方等についてはできるだけの改善を図ってまいりたいと考えております。
  283. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今私が挙げた中で、めいやおいにはがきを出したりするということは、一般的にはおいやおいなどというのは直接の扶養義務者ではないでしょう。扶養義務が発生することはあり得ると思うのですが、一般的にはないでしょう。だから、こういうようなことはやめさせるべきだという点、もう一遍確認しておきます。  それから、時間も迫ってきたような感じですから、もう一つこれに関係してお尋ねしておきます。  この資料を見て私びっくりしたのは、「暴力団関係ケースに対する対応」というのがあるのです。昭和五十六年でしたでしょうか、生活保護費を暴力団員などが不正受給しているということが大きな社会問題になりまして、これは絶対に徹底的に摘発をしなければいけないということでやっていただいていると私は思っておったわけですが、そういうのはもう済んでおるのかと思ったら、これを見ると「遺憾ながら一部の限られた事例ではあるが依然としてあとを絶たない。」と書いてあるんですね。これは私はどういうことだろうかと思うのです。実際に今まで三年も四年もこのことに取り組んできたら、もうこういうようなことはけりがついていなければいけないのじゃないでしょうか。それがいまだにけりがつかない。その一方で、さっき申し上げたような本当に困っている人たちが行ったときには門前払い。これでは余りにも社会的な不公正というか、片手落ちの状況ではないかと私は思うのですが、この点いかがですか。
  284. 小島弘仲

    ○小島政府委員 いわゆる三親等の親族と申しますか、めいやおいまでいく場合は、一般的には親子という関係や兄弟という状態と違いましてそこまでの扶養義務は追及しないことにしておりますが、現にいろいろな事情でその保護申請者と同一の世帯に属する者を扶養しているというような実態がありましたり、さらには、かつてそのおいやめいが当該保護申請者から非常にお世話になった、生活費の面倒を見てもらったというような相対的な人間関係がある場合に絞った運用に努めているところでございます。  それから暴力団につきましては、おっしゃるように適正化をしなければなりません。特に、暴力団といっても、病気とか何かで生活が困りますればそれは生活保護としてやらなければなりませんが、単に暴力団がいろいろなことを偽りまして、健康なのに仕事も探さないで生活保護を受けるというようなことはあってはならぬことでございますので、その適正化について特段の努力をしているわけでございますが、後から後からという問題もありますし、なかなか根絶を期しがたいという事情もありますけれども地方と力を合わせまして、さらに根絶を期してまいりたいと考えております。
  285. 小沢和秋

    小沢(和)委員 では、その点はひとつぜひ改善していただきたいと思います。  補助金をカットすると、今、生活保護の締めつけの方向に行くということを申し上げたのですけれども、生活保護と並んで大きな問題は、老人ホームとかあるいは保育所などの補助金ではないかと私は思います。これは一昨年の十分の八が去年十分の七になり、ことしは一気に十分の五、半分になってしまうわけですね。そうすると、各地でどういうことが起こっているかといえば、老人からの費用徴収額の大幅な引き上げとかあるいは保育料の値上げ、こういうような状況が生まれてきている。私は、これは国の財政の危機を地方財政に寄せ、それがそのまま地域の住民に寄っていくということの一つの典型だと思うのですが、こういうようなことは許されないのじゃないかと思うのです。  この機会ですからさらに申し上げますけれども、それだけじゃなしに、地元の自治体関係者の方に聞いてみると、やはり今回の補助金カットで何とか住民にしわ寄せをしたくないというので、土地の売り払いとか、あるいはスポーツ施設の基金を積み立てておったけれどもこれを取り崩したとか、危険校舎の改築の延期をしたとか、単独事業の大幅圧縮とか、いろいろなことをこの一年やってきたというんですね。ところが、今度またさらに大幅な、倍にも達するような補助金のカットが今後三年もやられる。いよいよいわゆる地方行革ということをやらなければどうにもならぬかというので、保育料や市営住宅家賃などの値上げとか、それから職員の人減らし、それから定期昇給などを三年ストップするとか、そんなことがもうどこでもここでもやられているわけですね。だからあなた方は、結局のところ、そういうような国の財政危機のしわ寄せというものを地方にそんな形で押しつけるということがねらいだったんだなというように感ぜざるを得ないのですけれども、やはりこの補助金カットというのはその辺がねらいなんじゃないですか。
  286. 竹下登

    竹下国務大臣 補助金カットという問題は、末端に対する給付は変わらないわけでございますから、いわば費用負担のあり方という角度から御理解をいただきたいことだというふうに考えます。
  287. 小沢和秋

    小沢(和)委員 あなた方はいつもそうおっしゃるのです。しかし、実際にこういうようなことを苦し紛れにあちこちの自治体がやってきているということも間違いないんですよ。それでもあなた方はそうおっしゃるのですか。
  288. 竹下登

    竹下国務大臣 これは行政の個々を完全に熟知しておるというように、あえてそういう立場をとるわけではございませんが、基本的にはこれはあくまでも費用負担のあり方ということでございますので、末端の給付がそれによってこのサービスが低下されるという性格のものではないということをやはり行政府にある者もそれぞれよく知っておって対応すべきであると考えます。
  289. 小沢和秋

    小沢(和)委員 今、自治体への影響ということを申し上げた中でもちょっと述べたと思いますが、地方自治体は、とにかく去年一年間の措置だということで一生懸命頑張ってきたら、またこれから三年、しかも二倍も切り込んでこういう補助金カットをやるということで、いよいよ政府にだまされた、信用できぬと言って憤慨している人が多いのです。この三年間ということは先ほどからも議論にはなっておるのですけれども、三年たったらもとに戻すというふうに理解していいのでしょうか。
  290. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる六十四年度予算に当たっては、生活保護費の問題等につきましては三大臣で協議をするということになっております。
  291. 小沢和秋

    小沢(和)委員 だから、十分の八に戻すべきだということがこれだけ問題になっている生活保護費でも、三年たったらもう一遍相談しようということだ。そうすると残りの部分というのは、いよいよもって三年たったらもとに戻るどころかさらに切り込んでいくことになる。いわばもう一段切り込む方向で見直すための期間が三年間だというふうにも聞こえてくるのですけれども、一体三年たったその先のことについてはどう考えたらいいのですか。
  292. 竹下登

    竹下国務大臣 検討委員会の議を経て、閣僚会議で決定して、当面私どもは基本的な結論は出ておると思っております。ただ、絶えず見直しは行っていかなければならぬ課題でありますし、また、地方へのいわゆる職務分担の問題等の変化も絶えず見直していかなければならぬという基本的考え方でございますので、単純に、三年間の暫定措置であってそうなればすべてもとへ戻りますとか、あるいはその先はさらに切り込みますとかいう性格のものではございません。
  293. 小沢和秋

    小沢(和)委員 自治大臣が三月十二日の参議院の予算委員会答弁の中で、三年間補助金については検討していく、そして、「やはり国がもっと負担すべきではないだろうか、そういうことも出てくるのではないか」というようなことを述べられているのです。三年たったら国がもともとの補助率よりもさらにもっと高い補助率を出すべきだという結論が見直しをしてみたら出るというようなものは、何か具体的に考えられてこういうことをおっしゃったのでしょうか。
  294. 小沢一郎

    小沢国務大臣 ただいま大蔵大臣答弁の中にもありました、例えば生活保護、これは、法の適用、運用の問題は別といたしまして、社会保障、社会福祉の基本的な制度である。したがいまして、今後の議論の中で国の責任も多く求められる結論になるかもしれないし、また八割がいいのか、あるいは全額支出すべきとなるのか、そういう問題も、私、個々の具体的な問題について全部承知しているわけでありませんが、本来の補助負担率のあり方の問題としてはそういう議論の中から出てこなければならない。したがいまして、この三年間の暫定期間の間に、国が負担すべきか地方負担すべきか、そういう本当の真剣な議論の中で考えていけば、国がもっと負担すべきと結論づけられるものもあるであろうし、またこれは地方に任せてしまえ、国は負担する必要はないではないかというのも出てくるのではないか、そういう意味合いで申し上げたわけであります。
  295. 小沢和秋

    小沢(和)委員 重ねて自治大臣にお尋ねをしますが、先ほどから同僚議員への答弁の中で、自治省が生活保護などについては八割に戻すべきだということを主張なさったようにも聞こえたのですけれども、そうだったのか。そして、そうだとすれば、今後も所あるごとにその主張を堅持していかれるとその点理解していいかどうか、重ねてお尋ねしておきます。
  296. 小沢一郎

    小沢国務大臣 現実予算編成の過程の中で、検討会でも両論併記になっておりましたが、いろいろな議論がなされたことは御案内のとおりでありまして、自治省といたしましても、この生活保護の負担率につきましてはより国の負担が求められておるという考え方のもとにいろいろ議論をしてきたことは事実であると聞いております。私ども、そういった問題も含め、先ほど答弁したような考え方で今後も対処してまいりたいと考えております。
  297. 小沢和秋

    小沢(和)委員 時間が来たようですから終わりますけれども、結局、私、今回の補助金カット法というのをいろいろ勉強してみれば勉強してみるほど、これは国が軍備や大企業サービスなどで引き起こした財政危機のしわ寄せを補助金カットという形で地方に押しつける、それがそのまま住民に押しつけられる、こういう仕組みのものだと考えざるを得ないわけであります。ですから私は、こういうような国の引き起こした財政危機のしわ寄せを自治体、さらに国民に押しつけるような法案は到底認めることができないということを最後に申し上げて、終わりたいと思います。
  298. 山崎拓

    ○山崎委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会      ――――◇―――――