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1986-04-18 第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十八日(金曜日)    午前十時十一分開議 出席委員   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君       大島 理森君    加藤 六月君       金子原二郎君    自見庄三郎君       田中 秀征君    高鳥  修君       中川 昭一君    額賀福志郎君       林  大幹君    東   力君       藤井 勝志君    宮下 創平君       村上 茂利君    山崎武三郎君       山本 幸雄君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    沢田  広君       戸田 菊雄君    中村 正男君       堀  昌雄君    柴田  弘君       矢追 秀彦君    薮仲 義彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         警察庁刑事局保         安部長     新田  勇君         宮内庁次長   山本  悟君         皇室経済主管  勝山  亮君         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵大臣官房審         議官      亀井 敬之君         大蔵省理財局長 窪田  弘君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任        補欠選任   柴田  弘君    小谷 輝二君 同日  辞任        補欠選任   小谷 輝二君    柴田  弘君 同月十八日  辞任        補欠選任   越智 伊平君    林  大幹君   中川 昭一君    額賀福志郎君 同日  辞任        補欠選任   額賀福志郎君    中川 昭一君   林  大幹君    越智 伊平君     ————————————— 四月十八日  国民本位税制改革に関する請願小沢和秋君  紹介)(第三三五二号)  同(野間友一紹介)(第三四五二号)  同(野間友一紹介)(第三四九七号)  国庫負担削減反対等に関する請願外一件(堀昌  雄君紹介)(第三三五三号)  所得税減税等に関する請願新村勝雄紹介)  (第三四二九号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願上田卓三紹介)(第三四五三号)  寒冷地手当の非課税に関する請願斎藤実君紹  介)(第三四九六号)  国庫負担金補助金削減反対に関する請願(石  田幸四郎紹介)(第三四九八号)  同(田中美智子紹介)(第三四九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  天皇陛下在位六十年記念のための十万円及び  一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案  (内閣提出第七三号)      ————◇—————
  2. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより会議を開きます。  内閣提出天皇陛下在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。竹下大蔵大臣。     —————————————  天皇陛下在位六十年記念のための十万円及び   一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました天皇陛下在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、天皇陛下の御在位六十年を記念するため、十万円、一万円及び五百円の臨時補助貨幣を特別に発行することといたしておりますが、現在、臨時通貨法によっては五百円を超える高額の貨幣発行することができないため、十万円及び一万円の臨時補助貨幣発行につき、オリンピック東京大会記念のための千円の臨時補助貨幣の例に倣い、本法律案を提出した次第であります。  この法律案は、政府が、現在、臨時通貨法によって発行を認められております五百円以下の臨時補助貨幣のほかに、天皇陛下の御在位六十年を記念して、特別に十万円及び一万円の臨時補助貨幣発行できることとし、他の臨時補助貨幣の例に倣い、その法貨としての通用限度をそれぞれ二百万円及び二十万円とするとともに、十万円及び一万円の臨時補助貨幣の素材は、それぞれ金及び銀、量目は、それぞれ二十グラムとし、品位及び形式は、政令で定めることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  6. 堀昌雄

    堀委員 ただいま提案になりました天皇陛下在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案について質疑を行います。  まず最初に、貨幣の問題について非常に現状にそぐわない法律がある。明治三十年三月二十九日、法律第十六号ということで、貨幣法という法律が実は現存しておるわけであります。前回私はこの問題について、この貨幣法と現在の貨幣制度は一体どうなっておるのかということで、速やかに改めるべきである、こういう問題提起をしておきましたけれども、まだ今日に至るまでこれがそのままになっております。  そこで理財局長に伺いますけれども、この貨幣法の中で現状も必要である部分というのを、第何条何々ということで、ちょっとあなたの方で読み上げてほしいと思います。
  7. 窪田弘

    窪田政府委員 貨幣法本則は十四条でございますが、そのうち今なお実効性を持っておりますのは、まず第一条の「貨幣製造及発行権ハ政府属ス」。この原則は、貨幣という通貨補助貨については効力を持っているわけでございます。  それから第二条の「純金量目七百五十ミリグラムヲ以テ価格単位ト為シ之ヲ円ト称ス」。この「七百五十ミリグラムヲ以テ価格単位」というところは実効性を失っておりますが、円という通貨単位法律上出ておりますのは貨幣法の二条だけでございますので、ここは現在なお効果を持っていると思います。  第四条でございますが、「貨幣算則ハ総テ十進一位ノ法ヲ用ヰ一円以下ハ一円ノ百分ノ一ヲ銭ト称シ銭ノ十分ノ一ヲ厘ト称ス」とありますが、この「算則ハ総テ十進一位ノ法ヲ用ヰ」というところはなお生きていると思いますが、後段は実効性を失っておるわけでございます。  その後十二条、磨損したもの、流通不便の貨幣は無手数料にて政府においてこれを引きかえるとか、十三条の模様の認識しがたいものは効力がないものとする。この十二条、十三条は効果を持っている。  貨幣法のうち実効性を持っているものは以上かと存じております。
  8. 堀昌雄

    堀委員 大臣明治三十年、明治三十年というのは一八九七年ですから、大方もう百年近くも前にできた法律、そして今お聞きになったように、完全に法律として今日も通用するのは、第一条「貨幣製造及発行権ハ政府属ス」、この第一条ですね。第二条の「純金量目七百五十ミリグラムヲ以テ価格単位ト為シ之ヲ円ト称ス」、このように事実が違うことを法律が規定しているというのはおかしいじゃないか、こういうことで私は前回問題にしたわけですが、ここでは字がずっと書いてある中で、「単位ト為シ之ヲ円ト称ス」という、一番最後のここだけが有効なんであって、前段の言っていることは全然無効になっているわけですね。その次も、第四条で「貨幣算則ハ総テ十進一位ノ法ヲ用ヰ」というところまでであって、今一円以下の単位はない、こうなっていますから、一番肝心なところは実は現在とはもうほとんどそぐわない形になっておる。そうして十二条、十三条というのは、著しく破損したり貨幣として効用のないものはこうする、これは当たり前の話である。そうやって見ますと、もうどう考えてもこの貨幣法という法律は少なくとも現状に即するように改められなければならない、私はこう考えますが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 そもそも貨幣法金本位制を前提として立法されたものでありますが、必ずしもいわゆる管理通貨制度現状にそぐわないということは御指摘のとおりでありますが、これまで臨時通貨法それから小額通貨整理法等によってしかるべく法令上の工夫がされておるようでございます。国民日常生活または経済取引の上で特に支障を来しているとは必ずしも考えておりませんが、貨幣制度国民生活の根幹にかかわるものでありますし、貨幣法はその基本法でありますから、この改正には十分慎重な検討を加える必要があると思われます。  しかし、貨幣制度全般について根本的な見直しを行って、現実に即した法体系を整えることは望ましいと考えております。貨幣法改正についても、長期的な視野に立ちながら速やかに検討を始める——本当は金貨、今度この法律をお願いするときにも理財局長初め議論した問題でございますが、やはり速やかに検討を進めてまいりたいというのが最大公約数のお答えになろうかと思います。実際問題として一八九七年でございます。だから十九世紀の法律だ、こういうことであります。
  10. 堀昌雄

    堀委員 前向きの御答弁をいただいたのですが、これは確かに基本的な貨幣制度にかかわる問題でありますから、十分に検討を進めてやってもらいたいと思います。  実は私、この国会でいろいろ問題を提起して、いろいろな新しいことをかなりやっていただいております。昨年、永年勤続二十五年の表彰をいただきまして、この二十五年間を振り返って「国会二十五年」という本の作業を今やっておるのでありますけれども、そのときどきにおいて問題提起をいたしましたことが、長ければ二十年かかっておりますが、短いものは四、五年で実は現実法律なり制度として議論しておることになっておるわけでありますので、理財局長、慎重に検討していただくことは賛成でありますが、慎重ということと時間がかかるということは別の話でございまして、まだ当分、私、大蔵委員会でこの席で働かせていただくつもりでおりますので、私の在職中にひとつ貨幣法改正をやるという方向理財局長ひとつ努力をしてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  11. 窪田弘

    窪田政府委員 確かに、この法律をそのまま放置しておくというのは私どもとしてはいかがかと思っておりますので、その方向努力をさせていただきます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 そこで大蔵大臣、少し政治的な問題に関係があるのですけれども、今のこの貨幣法の中で、理財局長がさっき読み上げた第四条、「貨幣算則ハ総テ十進一位ノ法ヲ用ヰ一円以下ハ一円ノ百分ノ一ヲ銭ト称シ銭ノ十分ノ一ヲ厘ト称ス」。私は一九一六年生まれでありますから、実は生活の中で厘という単位の経験はありません。私の父は一八八〇年生まれ明治十三年の生まれでありますから、父の話を聞いておりますと、同志社中学に行っているころにあんパンを食べたら一つが二厘だったという話をおやじがしておるのでありますが、確かにおやじ時代は厘というものが貨幣単位として通用した時代だと思うのであります。  そこで、私ども時代というのは銭が一番下の単位だ、こういうことだったのですが、戦後のインフレによって、今日単位は円になりました。よくデノミ論ということが言われるのですけれども、今の国民は、もう十進単位という問題、関係ないんですよ、ベースは円ですから。それから下ないのですから。千円、万円、億円、確かにだんだんけた数が多くなって問題があるかもしれないけれども、これは計算上の単位としては非常にいいと私は思うのです。外国の通貨では十進法になっていない通貨もあったりすると、我々はこれは一体どれだけなのかということで大変迷う場合もあるわけでありまして、経済システムというのは要するに、税じゃないけれども簡素単一というか、システムの基準が複雑な計算を必要としないようなものがいいというのが実は私の通貨に関する判断なんです。  私の子供のころは、一ドル二円、こう言っていたと思いますけれども、確かにそれは今変わってきましたが、今まさに一ドル百八十円ということは、子供のときの一円というのがちょうど百倍になったという感じですから、それはそれなりシステムとしてはいいシステムだ。  だから、よくデノミの話がいろいろと政治的な問題を含めて流されておりまして、ドルに対して大きな差があるというのはおかしいとか、いろいろ言っていますけれども、そんなことを考える必要はなくて、向こうはドル、クォーター、セントというふうにいろいろな段階があるわけですが、我々の方は円で全部割り切れるという意味では、経済という問題のベースになる通貨単位が円であることは大変望ましい、私はこう考えておりまして、デノミネーションという問題は、政治的な意味を考えれば別かもしれませんが、経済の立場から見ればその必要はないというのが私の基本的な見解ですが、これについての、やる、やらないの話を言っているんじゃないのです、デノミネーションという問題と円と今の十進制という問題との関連を大臣にお聞きしたいと思います。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 デノミネーションは単なる呼称単位変更である、こう言えば、まさに経済中立性ということについてはそれなりの論理は成り立つ。  もう一つ、心情的な問題におきまして、我々は確かに——福田元総理が、ちょうど一九七一年、昭和四十六年にいわゆるドル兌換制停止が行われたとき、私、官房長官でして、質問があってどういう答弁しようかと思って福田さんに聞いたら、ほっほっほっと言いながら、おれがロンドンにおったときには一ドル二円だったというお話をなさいまして、だからある意味においては堀先生と私は同じゼネレーションとしても、やはり我々にも若干は、いわゆる国威発揚みたいな形からいえば、三けたの呼称というのは何だかみずからの国威を落とせしめておるような印象も世代によってはあると思うのです。がしかし、若い人から見れば、もう三けたが完全に頭の中に入って、今さら問題じゃないじゃないか。  それからもう一つは、これはとっぴな議論でございますが、ポンドだけは昔基軸通貨でございましたから、対ドルレートのときに、一ポンド何ぼや、こう言う。やがて日本が、基軸通貨に円がなるころは、円は何ぼや、こう言ったら、はい〇・〇〇五ドルでございます、これじゃやはり悪いから、〇・五ドルぐらいまでは信認を回復したらいいじゃないか、こんな人もそれはございますが、私自身先進国のものをずっとこの間調べてみますと、概して先進国呼称変更します場合には、それによってやはり多少というか、かなり心理的に緊縮ムードをつくるとか、あるいは平価切り下げの時期に合わすとか、やはり政治的意図があって、純粋に経済中立性の単なる呼称変更というのはどうも先進国の歴史の中にはない。  そういうことと、それからもう一方は、いわば内需振興になるじゃないか、こういう議論をよくなさいますが、それは確かにコンピューターの組みかえをしたり印刷をし直したりすれば、その面は内需振興になりますが、今度はそれだけの企業負担は要りますから、これは差し引きマイナスの方が大きいじゃないか。まさにこんな議論を、やるとかやらぬとかということではなく、デノミネーションというものの議論の中でそういうことを勉強させていただいた。だから、よく福田大蔵大臣のときにおっしゃった、物価は整っているじゃないか、経常収支はいいじゃないか、こういう条件からいえば、それは物価も安定しておりますし、その点からいえばやって悪い状態じゃないかもしれぬ。便乗値上げ等がそれによって行われるという状態ではないじゃないか、こんなことでございますが、やはり基本的には経済取引に対しては中立であるということでありますので、一部需要創出があって、それを目当てにやるとかいう問題じゃなかろうというふうに私も考えておるところであります。  したがって、もっと私見を交えて言いますと、ある人が、おまえ、大蔵大臣になったら一遍デノミをやってみたいという心境になるものだよなんて先輩から聞きまして、本当はその話を聞いたときに必ずしもぴんときませんでした。ただ、それと私感じますのは、我々の時代にはまだ金利を三銭五厘とかいう計算の仕方をしましたが、今何%とかいうようなことになっておりますので、今の人は、我々の三銭五厘とか二銭六厘とか、あの感覚もなくなっているなという感じは持っております。余り私見を述べて申しわけありません。
  14. 堀昌雄

    堀委員 いえ、私が私見を聞いたわけでありますから結構なんですが、ちょっとさっきの国家の権威とかなんとかというやつは、もう権威が少し上がり過ぎて皆さん少し戸惑っておるという現状ではないかと思うぐらいでありまして、さっきの話のようにデノミネーション需要がふえるのは、これは全然生産的じゃないんですよ。国民生活に生産的なことが起こるのなら、それは考慮に値すると思うのだけれども、ともかくいろいろなものを印刷し変えなければいかぬとか表示を変えなければいかぬというだけのことで、むだなコストです、率直に言えば。だから、そういうふうに国民生活にとって大変プラスになって、生産的なプラスが残ることなら別だけれども、しばしばそういうことを言われるわけです。今の、最後のところで、これは四年も大蔵大臣をしている竹下大蔵大臣が、大臣になったらそういうことを考えるというのはぴんとこないということは、私は大変率直な御答弁で結構だと思っています。  そこでもう一つ、ちょっと今度の貨幣の問題というものには少しドレッシングがあるという感じがしてならない。理財局長、これは四千三百九十億だったかな、何か金貨を売ることによって財政収入がふえる、こういうことになっていますね。ちょっとお答えください。
  15. 窪田弘

    窪田政府委員 金貨によりまして、一千万枚、十万円でございますから一兆円になります。そのうち原材料費その他を差し引きまして、結局一般会計に繰り入れる額は約二千七百億円程度になろうという計算になっております。
  16. 堀昌雄

    堀委員 二千七百億円が一般会計に繰り入れられるということのようでありますが、けさの日経新聞を見てみますと、この金二百トン、約二十億ドルなるものをどこかで買いましょう。私はそれは大変結構だと思うのです。結局、今の一般会計に入れる分と、特別会計原材料で支出をしますね。そこらのところは、これは一般会計特別会計は別個に独立しているわけだから——今二千七百億と言われましたか。実際はほかの通貨もあるから、一兆円という中にはちょっとほかの分も入っているんだろうと思うのですけれども金貨だけですか。
  17. 窪田弘

    窪田政府委員 金貨だけで申しますと引きかえ総額が一兆円でございます。それは造幣特会原材料を買います。その買うのは、去年の秋に計算いたしました額で六千七百億円程度原材料費になっておりますが、それからコストを要し、また補助貨回収準備資金に積む、留保いたす額が一千億ございますので、それを差し引きました残りを一般会計に繰り入れる額が二千七百億円ということでございます。銀貨、銅貨まで含めた全体の一般会計繰り入れ額は三千七百億円と今の予算上では計算をいたしております。
  18. 堀昌雄

    堀委員 今のは、私はちょっと差し引きになっているというふうには考えていなかったものですから、しかし、そうするとこれは会計上は特別会計でつくって、特別会計コストを抜いて、それから売るときは日本銀行が売るわけでしょう。ですから、日本銀行に行って、歳入に立ったのはまたもう一遍特別会計に戻って、それからそれの差額分だけを一般会計に入れる、こういう仕組みですか。
  19. 窪田弘

    窪田政府委員 補助貨は全体にそうでございますが、造幣局でつくりますと、その額面で日本銀行に引き渡します。そのとき日本銀行で別段預金をつくってくださいます。その別段預金から流通したものは政府当座預金になり、流通しないものは別段預金のまま残っております。そこで造幣局としては、コスト六千億円かけたものを一兆円で引き渡すわけですから四千億円の差益が出ます。そのうち貨幣回収準備資金に積むべき額、流通額の一〇%、今千億と見ております。それを差し引いた額は造幣局特別会計で余剰になりますので、それは一般会計に繰り入れる、こういう仕組みでございます。
  20. 堀昌雄

    堀委員 ちょっとドレッシングがあると思ったのですが、今の点を聞きましたからそれはないということで訂正をいたします。  そこで、この二百トンという金貨を買うというと金の市場に影響するんじゃないか、こういうことが新聞に出ているのですが、日本銀行が七百五十トン持っているわけですから、何も一遍に買うことはないので、金というものは利子がつくわけじゃありません。だから日本銀行のものをこちらでちょっと少し先に借りて使って、そうしてまたぼつぼつと買って、要するに世界の金市場に影響のないような対応が望ましい。それでなくても日本というのは今非常に注目されている国でありますからね。また、日本が金をどんどん買ったために金が上がった、金が上がって得をする人もいるでしょうけれども損をする人もいるわけです。だから、そこらのところは、さっきのデノミ中立性じゃないけれども、金を買うのも経済的に中立的にやってほしいな、私はこう思うのですが、理財局長、どうでしょうか。
  21. 窪田弘

    窪田政府委員 今まで金貨を出せというお話がいろいろございましたが、大蔵省が非常にためらっておりましたのは、要するに金を買うのが大変だということが最大の問題でございました。去年私どもが踏み切りましたのは、いよいよとなれば日本銀行にも相当の金がある、それを使えばいいじゃないかということで踏み切らしていただきましたが、昨今のような金の価格が安くて安定している状況では、買うことも十分考えるべきではないかということで今考えておりますが、確かに御指摘のようにこれがまた、日本が買いまくったということは非常に問題になりますので、そこは弊害のないようにやらしていただきたい、慎重にやりたいと思っておりますが、こういうふうに一々法律を出してお願いして、法律が通ってからでないと買えないというところに金市場を攪乱する要因がありますので、さっきお話しのように貨幣法でも直して、それでやれればそういう問題はかなり解消するのかなとは思っておりますが、御指摘のようなことは十分念頭に置いてやりたいと思っております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 それから、この前実は週刊朝日取材がありまして、この金貨について天皇肖像を入れたらどうかという意見が出て、私はその取材に答えて天皇肖像を入れたらいいじゃないですか、こういう意見を述べました。その週刊朝日を読んでみると、奥野先生もいいじゃないかというお考えのようであります。ですから、私と奥野さんが賛成しているということは、そういう意味では割に国会の平均的な意見を代表した意見だなという感じで見ていたのですが、どうやら天皇肖像は入らないようですね。  最近、世論調査その他いろいろ出ているのを見まして、天皇に対する親しみを感じるとかそういう意味調査結果というのは実は相当高いのですよ。これは大蔵省の問題もあるけれども宮内庁の問題もありましょうから宮内庁にもお尋ねをするのですが、この間何か太平洋の国で天皇肖像切手にするということで何かやっているという話が出て、どうもそれは実際はその国の政府は必ずしも十分承知してないというようなことだったようですが、その切手の写真が新聞に出たのを見まして、天皇をうまく、感じの出た天皇というとおかしいかもしれませんが、我々がふだんにお目にかかっておる天皇と同じ感じの大変いい写真が切手になっている。そういうのを見ますと、今の日本国民の中にある天皇に対する親近感というものとこれを別のものにするということとが、どうも何か国民天皇の間に物を挟みたいという、これはどこが考えていることか知らないけれども、どうも私たちが考えている方向と違うものがある。しかし、どうも世論調査を見ますと、半数以上は天皇に親しみを持っているということになると、要するにその人たちの気持ちにこたえるような対応を宮内庁もあるいは大蔵省検討すべきではないのか、こう思うのですけれども、問題のあれだから宮内庁から先に答えていただきましょうか。
  23. 山本悟

    山本(悟)政府委員 金貨の図案をどうするかというような御検討大蔵省でいろいろとなさったと存じておるわけでございますが、はっきり申し上げまして、大蔵省からも宮内庁にこういうものを出したいがどうだというような意味でのいろいろな内々のお話はあったわけでございます。その際、御肖像に関しましても、大蔵省の方からもどうなんだろうかという意味のことはございましたけれども、これに対しまして宮内庁といたしましては、御肖像に関しましては新しいことでもあり、大蔵省の御判断で慎重に御対処いただきたい、こういうような御意見は申し上げたところでございます。  ただいま先生おっしゃいましたように、いろいろな御意見があっておりますし、また大蔵省におかれましても各界の方をお集めになった懇談会をおつくりになっておるようでございますので、そういったところで御議論を賜った上で適切な御判断を賜れるのではないかというような意味で申し上げた次第でございます。
  24. 堀昌雄

    堀委員 日本語というのは大変難しい言葉でして、さっきも貨幣法改正するのに慎重にということが入りましたね。物事はいいかげんにやっていいということではなくて常に慎重にやるのはいいのですが、これまた慎重にという言葉のニュアンスの中には、できればやめてほしいという意味の慎重にという表現が日本語の中にあるように思うのです。大蔵大臣、どう思いますか、今の慎重にという言葉の持つ感触といいますか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 慎重にという言葉のフィーリング、それは二色あると私も思います。貨幣法の場合なんかは、やりたいという前向きの姿勢であるが、いろいろ複雑な要素があるから落ち度がないように慎重にという場合と、慎重に検討しますと言った場合に、長い時間をかけて必ずしも目的を念頭に置かないでやる場合と二面性がある。天野前予算委員長が適当に始末しますと言われますと、何か本当に適当に、だが天野さんは、あれは福島では適切に処置するということが適当に始末するという言葉だ、こうおっしゃいましたから、日本語によく二面性があるように、慎重という意味においてはフィーリングとして私も同じように感じております。
  26. 堀昌雄

    堀委員 宮内庁、大変答えにくいことを伺って恐縮ですが、今の慎重にという次長の御答弁はそのどちらでしょうか。前向きの方の慎重が、後ろ向きの方の慎重が、ちょっとお答えをいただきたい。
  27. 山本悟

    山本(悟)政府委員 本当に大変難しい御質問でございますが、週刊誌等におきましても私ども読ませていただいたのでございますが、各方面にいろいろな御意見がある。大蔵省でおつくりになりましたこのための懇談会もやはり各界の方を集めていらっしゃる。そこにも、これは週刊誌情報で恐縮でございますけれども、いろいろな御意見が両方あった、こういうようなことを拝見いたしたわけでございますが、その辺の中身につきましては私どもよりは大蔵省が御判断される際にいろいろお考えになるだろうから、それはよく考えていただきたい、こういうような感じで申し上げた次第でございます。
  28. 堀昌雄

    堀委員 そうすると私は、大臣も二つと言ったのだけれども、真ん中に一つある、前向きと後ろ向きと中間といいますか、ニュートラルに慎重に、こういうふうな意味と今あなたの御答弁は理解しますが、そうですか。もう一回。
  29. 山本悟

    山本(悟)政府委員 率直な気持ちを申し上げればそのとおりでございます。
  30. 堀昌雄

    堀委員 この図柄の問題は現在どうなっていますか。
  31. 窪田弘

    窪田政府委員 今造幣局におきましていろいろな案を検討いたしておりまして、この法律を参議院も審議をしていただきまして成立をさせていただきましたら、できれば、この二十九日のお祝いの会がございますので、それまでの間に発表させていただきたいと思って準備をさせていただいております。
  32. 堀昌雄

    堀委員 その中には天皇肖像というのは入っているのですか、入っていないのですか。
  33. 窪田弘

    窪田政府委員 案としてはたくさんつくっておりますので、その中には入っております。
  34. 堀昌雄

    堀委員 あそこの中で扱いが問題がある。扱いというのは、金貨になったものの先の扱いが問題があるよとか、いろいろな意見があるようです。一部の人は旧憲法の天皇支持みたいなことを考えている人もあるようですが、これは論外ですね。それにしても私は、金貨天皇肖像を使わないというのが今の全体の国民が持っておる流れに逆らっているという気がして仕方がないのです。  私は、さっき話しましたように一九一六年、大正五年の生まれですから、要するに摂政殿下としての天皇状態、皇太子殿下のときの状態を知っております。たしか満五歳ぐらいのときに、現在の天皇はイギリスへお出かけになったことがあるようです。そのイギリスに行かれた映画が、私の父は海軍の軍人だったものですから、当時呉におりましたが、水交社の広い芝生の上で映画が上映されたのを、私は五歳ぐらいでしたでしょうか、四歳か五歳か、父母に連れられて映画というものを初めて見たのが皇太子殿下がたしかイギリスへお出かけになったんだと思うのですが、だから一九二〇年ぐらいの話だと思うのですけれどもね。天皇は今度八十五歳ですか、私は今六十九歳ですから、天皇との間には十六年の違いがありますので、私が四、五歳のころというのは現在の天皇はちょうど二十歳ぐらいで、たしかそういう記憶があるわけですね。  ずっと長いことを見て、私どもの党とすれば今度の六十周年の記念式典には反対なのですが、私は記念式典のような仰々しいことはやる必要はないと思うのですが、式典そのものは、やりたい人がやるのはそれを特にどうこう言うことはないと思うのです。戦争の前と後の話があるのですが、戦争の前でも、美濃部さんの天皇機関説じゃないけれども、我々は当時学生でしたが、天皇というものは神でもなければそういう統治権を持っているとも思ってないわけですから、美濃部さんの天皇機関説というのはいみじくも現在の天皇を非常に客観的に言われたなと思うのです、これは問題になったわけですけれども。ですから、天皇の戦争責任とかなんとかというのは、私個人の立場から言いますと、あの立場に置かれていたらどんな天皇でも、あのときの軍部の状態から見てこれはだめだなんておっしゃられるような情勢にはなかったと思うので、そういう意味で、一体どこまで天皇に責任があるのかな。  後で宮内庁にも伺いますけれども、武田龍夫さんという人が「新宮中物語」というのを書いておられるのを読んでみまして、私はこの人の意見と全く同じなんですね。それで年代は私の方が大分年が上ですからあれですけれども、この人は、天皇が北海道へ来られて最敬礼と言っているけれども、ちょっと頭を下げるのを遅くして天皇を見たと言うのです。私も子供のときからへそ曲がりだったから、京都の小学校にいたころに天皇がおいでになって、最敬礼と言っても、何のためにここへ来ているんだ、天皇が来た以上天皇を見るのは当たり前だと思っているから、みんなが下げているけれども、私はぴょっと頭を上げて、ははあ天皇というのはこういう人だな、こういう認識をしたことがあるので、この人も同じようなことで、ちょっとへそ曲がりの点はここに書いておられる点も含めて非常に共通のところがあるのです。  私は今、これはどこに原因があるのかどうもよくわからないんだけれども、戦後に天皇が三万六千キロかな、全国を人間天皇の宣言のもとに歩かれた。当時、私は戦争に行って帰ってきた人間ですから、天皇が歩いておられたころは恐らく診療に従事していた時代だと思いますが、九州の炭鉱でヘッドランプを頭につけて炭鉱夫の諸君と一緒に中を歩いておられるのを見て、戦争の結果皇室というのはよくなったな、これなら我々の象徴天皇として日本でうまくいくなと感じた非常に強い印象を持っているわけです。だからそういう意味で、そのころの天皇からすると、天皇というか皇室に対する対応というか、何だか国民からだんだん遠ざけてきているような感じがして仕方がない。それが一体、日本の将来の皇室のためにプラスかマイナスかといえば、これはマイナスだと私どもは思っているんだ。  恐らく今この話を聞いていただいている多数の良識ある皆さんは同感だろうと思うのです。だから、皇室に対する対応というものについて、宮内庁は基本的にどういう考え方で、今日はともかく今後やっていこうとするのか、どうやって国民の中の皇室、皇族ということにするのか。隔てれば必ずマイナスが起こってくるのですよ。そこのところが世論調査で見てもよくわかるのです。年齢層の高いところ、五十代が親近感が強いというのは、今の五十代というと私より約十五年から二十年若いのですけれども、その人たちが巡幸を目の当たりに見た感激というものは今日も続いておる。遠くなればなるほどだんだん無関心になって、その下の世代がどんどん広がることが果たして皇室の将来にプラスかマイナスか、これはゆゆしき問題だと思うのですね。宮内庁側の答弁を聞きたいと思います。
  35. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいまの先生の御指摘は、まことに胸を打つものがあるわけでございます。  朝日新聞の行いました世論調査を拝見いたしますと、本当に親しみを持つ、あるいは今の制度がいいという数字が相当高くなっております。また、この数年を比べてみると高くなりつつあるという傾向も見えるわけでございまして、その点は本当にうれしく思っておるわけでございます。今の憲法に基づく天皇、これは国民の総意に基づくものでございますから、それから離れて皇室がよくなる、日本の国としてよくなるということはないはずでございまして、そういう方向で物を考えなければいけないと思うわけでございます。  また、あの戦後の御巡幸の際と対比して、だんだん世の中が落ちついて整理されてくると簡単にいかなくなる点もあるのじゃないかという御指摘もたびたび私どもは耳にするわけでございまして、地方行幸のときにも、そういう点について本当にあのままでやっていただきたいということも、私どもの気持ちとしてはよく言うわけでございます。そういう受け取り方をされてよかったと思うときもございますし、形式的にきちんとしたという格好になって、あんなことまでしてということが言われる場合もありまして、後になってそういう話を聞かされますと残念に思うわけでございます。気持ちとしては、ただいま御指摘された点を肝に銘ずるわけでございますが、受けとめていただく方々の気持ちということもあって変わってきているような感じもいたしますので、そういうことのないよう努力したいと思っております。
  36. 堀昌雄

    堀委員 私は、前式部官武田さんの書かれたこれを読んでみまして、この方は北欧でずっと外交官をやった。北欧の王室は世界で一番開けていますが、どうも一番開かれていないのが日本の皇室だと私も思うのです。中間にイギリスがあるとこの方は認識をしており、私もそういう認識なのですが、その中間のところに実はこの前、浩宮さんが二年間留学された。これは外務省が決めたのか内閣官房が決めたのか知りませんけれども新聞の資料を見ていると、宮内庁は「留学」ではなくてあれは「修学」だと新しい言葉が出ているようであります。言葉のしりをとらえる必要はないのですけれども、   二年間の英国留学から帰国されたばかりの浩宮さまは五日、東宮御所で帰国後初めて宮内記者会と会見され、「一学生だった英国の時とは立場も環境も違うが、オックスフォードの留学で得た、自分でモノを考え、決め、行動に移す態度は今後も続けていきたい。結婚相手としては、自分と価値観が同じで、質素な女性が望ましい」などと率直に語られた。 そして、   研究と同時に、留学中、欧州の王室と親交を深められたが「王室の一人ひとりがそれぞれ国民とともに歩もうとする姿勢が言葉の端々にも表れていた。日本の皇室もこれから先、国民の中に入っていく姿勢が必要。それにはいろいろな場を通じていろいろな人びとに接したい」と抱負を述べられた。   それに関連して、日本の皇室の警備に触れ、「国民感情や環境の違いはあるが」と前置きし「英国ではアスコット競馬場などに行っても、目立たず、要所要所に警察官が配置されていた。警備は国民と王室を隔てるものではなかった。日本では警備が過剰なのではないでしょうか」とずばり。その解決法としては「(皇室と警察が)お互いにそれぞれの立場を理解し、話し合って解決することに尽きると思う」と、まず自分で考え、行動に移す姿勢を示された。   お妃(きさき)問題で、記者団から身長、学歴、家柄など突っ込んだ質問が出されたが、「そういうことには、それほどこだわっていません。ただ結婚する相手としては、自分と価値観が同じ人が望ましい。例えば、美しいものを美しいと評価でき、大切なものを大切と認識して大切に扱う人。また、ぜいたくを避ける意味で金銭感覚が自分と同じ人であってほしい。ニューヨークのティファニーであれやこれや物を買う人では、ちょっと困る。二番目に、だれとでも気軽に話ができ、人と会う場合でも、その人と話そうという環境をつくり出せる女性。話す時も控えめではあるが、必要な時にはしっかり自分の意見を言える人。外国語もできた方がいい。最後に、自分と趣味や関心を分かち合える人」と理想像を  明確に示された。こういうふうに新聞は報道しているのですね。  私は、浩宮さんが、この二年間英国に留学をされて、いろいろな生活体験を通じて大変すばらしい皇族の一人として御成長になったということを大変喜んでおるわけです。  そこで、この問題の中で、日本も民主主義というのがかなり定着していろいろしているのですけれども、私に言わせると、日本では個人としての自立性、自己責任というかそういう式の感覚が、子供の教育その他を通じて見ても何しろ親が介入して、小さい子供を塾にやったりなんかやって、言うなれば日本の今の子供に対する家庭のあり方というのは過保護に過ぎるというのが私の考えですが、浩宮さんのお話の中に、自立性を大変強調しておられる「自分でモノを考え、決め、行動に移す態度は今後も続けていきたい。」大変すばらしいことだ、これは民主主義の原点だと私は思うのです。  ここでいろいろおっしゃっている中で、私も、この間、宮内庁の方が来られたからお話をしたのですが、今私どもが一番気になるのは警備の問題なのです。確かに日本もいろいろ問題がありますから警備が必要でないとは言わないですけれども、大変目立った警備で、ちょうど我々が子供のときに、天皇が来られると行列をつくって迎える。そして、天皇が通るときは最敬礼して、見せないようになっているわけです。私みたいなへそ曲がりは見るけれども、大多数は見せないようにする警備、そして三メートルか五メートルぐらいにお巡りさんが立っていて、戦前は大変な警備であった。戦後の御巡幸になったころはそんなに徹底した警備じゃなかったので、天皇と民衆が接触することが可能だった。しかし、今それがどんどん逆戻りしている。ですから、この問題についてまず宮内庁の見解を聞いて、警察庁の見解を聞きたいと思うのです。宮内庁からどうぞ。
  37. 山本悟

    山本(悟)政府委員 天皇陛下を初め皇族方の警備はなかなか難しい問題でございます。確かに、警備という観点は、目立たないようにうまくやってもらうということが極めて重要だと私どもも思います。宮様が使われた言葉でスマートという言葉がありますけれども、これは本当に考えていただかなければならない。同時にしかし、警備対象となられる方というのは、万一のことがあっても困るわけであります。それはやはりないように万全を期してやっていただきたい。なかなか両立することが難しい二つの命題を抱えて、その辺の難しさというものの調和を警察、警備当局にお願いをしていることでございます。  ただ、実際問題といたしまして、現在の情勢下において警備当局も本当に御苦心をいただいている、このことは間違いなかろうと思います。その上で、しかしできるだけ知恵を絞ってスマートな警備をお願いしたい、これが気持ちでございます。
  38. 新田勇

    ○新田政府委員 警衛を担当いたしておりますのは保安部でございますので、私から御答弁を申し上げます。  警衛の本旨は、天皇陛下初め皇族の方々の御身辺の安全と、雑踏等による事故の防止ということにあるわけでございます。しかし、あわせまして、その警衛の実施に当たりましては、そのときどきの治安情勢を総合的に判断いたし、形式にとらわれることのない、そして皇室と国民との間の親和を妨げることのないようにということで心がけてきたつもりでございます。  最近の情勢は必ずしも楽観を許さないものがございますので、特にサミットを迎え、セキュリティーがタイトになっているわけでございますが、そのときどきの情勢を踏まえ、各界の要望も聞くなどいたしまして、周到にしてスマートな護警というものができたならばということで、創意工夫を凝らしてまいりたい、さように考えておるところでございます。
  39. 堀昌雄

    堀委員 立場立場がありますから、急になかなか処理ができないと思うのですけれども、まず天皇の場合はもう八十五歳におなりですからそうお出かけのこともないし、私は天皇関係はいいと思うのですけれども宮内庁の方にお話をしておきたいのは、皇太子とか今の皇太子の子供さんたちというのは、これから日本国民との接触の中で将来の皇室を担っていかれる方ですね。そういう方たちがこういう気持ちを持っておられるのを宮内庁は最大限に尊重しなければいけないんじゃないか。要するに、私ども宮内庁のために皇室があるような気がしてならないのですよ。そうじゃなくて、皇室のために宮内庁があるようにしてもらわなければならないんじゃないかということが率直な私の気持ちです。  これは大蔵委員長、この前、浩宮さんは衆議院本会議をごらんになりましたね。この国会会期中に一遍大蔵委員会に浩宮さんをお招きして、この委員会で、委員会というのはどんなふうにやっているのか、出席はどういうぐあいか、出席が整わないから十三分も開議がおくれるなんということもぜひひとつ浩宮さんに見ていただきたい。そうすると、ははあ、国会というのは、我々が聞いているのとはえらい違いだな。国会は国権の最高機関で、ここで決まるのは法律です。法律というのは国民を拘束するわけですから、それが定足数もなしで委員会が開かれるなんという現実の姿を浩宮さんに見ていただくのは大変いいことじゃないか。本会議というのはセレモニーでありまして、これはごらんになっていても余り参考にならないと思うのですよ。ここで私ども大蔵大臣との間で一問一答をやっているのをごらんになれば、国会というのはこんなものかなということが本当におわかりになるので、これはひとつ委員長、一遍大蔵委員長として浩宮さんを委員会に御招待をするということを検討してもらいたいと思うが、大蔵大臣はその件についてどうですか。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 これは勢い公式な答弁にならざるを得ない。それは国会自身の判断で御要請なさることではないか、こういうことに尽きるかなと思います。
  41. 堀昌雄

    堀委員 それじゃ国会の方の、これは委員長の見解をちょっと承っておきます。
  42. 小泉純一郎

    小泉委員長 相手のあることですし、意見として承っておくということしか言えないと思います。
  43. 堀昌雄

    堀委員 これは一回理事会の課題にしてもらって、ひとつみんなで、理事会で検討してください。  そのときには、自民党は当然賛成するでしょうな。(「皇室を利用しちゃいけないので……」と呼ぶ者あり)いや、何も皇室を利用してないのだから。要するに、いろいろなことを見たいと言っておられるので、ごらんいただくことは大変結構だ、こういうことであります。  そこで、この「新宮中物語」という本の中で、私読んでいて、ああ、これはぜひそうした方がいいなと思うのは、園遊会に現在招かれている人たちというのは非常にエリートみたいな人が主として選ばれているわけですね。しかし最近いろいろな勲章やなんかを差し上げるときには、昔のあれではなくて、ボランタリーで地域や社会のために本当に尽くされた方、そういういろいろな方が勲章をもらわれるようになってきた。私は、私自身もらう気もないし、勲章の制度をそんなに評価をするわけではないが、同じ一つ制度があるのなら、要するに庶民の中からもそういうものをもらえるように、ボランタリーやその他いろいろなことで一生懸命やられた方に差し上げるべきじゃないか。私の親しい方で、社会福祉協会の会長だとか民生委員の仕事とか、本当にいろいろなボランタリーで地域の人々に尽くしておられる方がこの前勲五等をおもらいになったのですね。私はその会合の席上で言ったのは、国会議員は二十五年在職議員になると、どれだけの仕事があろうとなかろうと勲一等がもらえるというふうに聞いています、しかし、この勲一等に比べてあなたの勲五等は値打ちがある、七十数年間本当に一生懸命その地域や人のために尽くされて、勲章というのはそういう中身の話であって、勲何等がどうだということじゃないですよというあいさつをしたのですが、これは私の切実な感じなんですね。園遊会に今二千人くらいを招いておられるようですが、急にどうとは言いませんが、この二千人の中に少なくとも五百人くらいは、私が今申し上げたような、社会の中で庶民として暮らしながら、本当に人のため、世のために尽くされている方をぜひこの次の園遊会から選んでほしい。これは私は、この本の中で大変いいことを言っておられると感じたわけです。  この本については、新聞では、二、三年いでいろいろなことを言うのはおかしいと、何か宮内庁の方から外務省の官房にクレームがあったなんて書いているけれども、皆さんもそんなつまらぬことをなさるとは思ってないので、私はその新聞記事を信用しているわけじゃないのだけれども、この中に書かれておることは、この人も私と同じように、日本における象徴天皇というものが、少なくとも国民から愛される象徴天皇国民の総意によって親しまれる皇室になるということが非常に重要で、そのためには、はっきり物を言う人が式部官になったということは宮内庁のためにも本当によかった、そしてこういう本が出て本当によかったと思うのですが、この本は皇室の皆さんはお読みになっているでしょうか。
  44. 山本悟

    山本(悟)政府委員 残念ながら、ちょっとその辺はつまびらかにいたしません。  なお、この席をおかりしましてちょっと恐縮でございますが、先ほどの園遊会の関係、あのやり方でございますが、大部分の方々は、内閣を通じまして各省に推薦をお願いいたしておりまして、その際には、叙勲された方とかいろいろなそういった各界の方とか、ひとつ御配慮をいただきたいということは常に申しているわけでございます。  また実際にも、園遊会の際に陛下がお言葉をおかけになります際には、そういった意味での社会のためにお尽くしになった方にも特にお言葉もおかけいただいておるというようなことをいたしておるところでございまして、ただいまの御趣旨は、さらに各省の方にも話しますときに申してみたいと思います。
  45. 堀昌雄

    堀委員 そうするとこれは、各省にということは官房長官がその気になればいいのかな、今の話は。どうです、大臣
  46. 竹下登

    竹下国務大臣 総理府総務長官がかつては宮内庁の連絡でありましたが、先般の内閣法改正によって、今はまさに官房長官です。
  47. 堀昌雄

    堀委員 大蔵大臣、今の問題は、ここで私が取り上げましたことは、本当はきょうは私は官房長官を呼びたかったんだけれども、観桜会があったりいろいろするからお気の毒だと思って呼ばなかったのですけれども、公式にこの委員会でこういう発言があった、それは考慮してもらいたいということを、適当な時期に大蔵大臣から官房長官にお伝えをいただきたいと思うのです。  それでもう一つ、これで終わりますから。要するに、私どもはここでこういう議論をしたという会議録を、ひとつ皇族の皆さんに読んでほしいと思うのですよ。要するに、国民を代表する国権の最高機関である国会において、皇室に対して私どもがどういう考えを持っておるか、そして浩宮さんがいろいろおっしゃったことを私どもは高く受けとめ、評価して、ぜひそういう方向で積極的に民衆の中に入っていただきたい。しかし、それは入っていただくためには、今の警備の問題も一つありますが、受け入れる側も私はやはりそういう気持ちで受け入れるようにしてほしい。それで私さっき大蔵委員長に申したように、一遍浩宮さんにこの大蔵委員会で私どもが真剣に議論しておることをごらんいただくということも浩宮さんにとっても大変勉強になるのではないか、広く民衆の中に入って、今おっしゃっているような自立した精神で物をお考えになる、さらに私どもがそれを手助けをして我々が望むような皇位継承者になられることは、私は護憲の党である日本社会党の党員として、象徴天皇として国民の総意に基づくということを具体的に実践する非常に重要な手だてではないかと考えておるわけです。ちょっと宮内庁の御答弁をいただきたいと思います。
  48. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいまの御指摘、まことにごもっともと存ずるところが多いわけでございまして、こういった御議論があるということを、必要なら宮家の方にも通ずるというような措置も考えてみたいと思います。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 正確に官房長官にお伝えいたします。
  50. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  51. 小泉純一郎

    小泉委員長 沢田広君。
  52. 沢田広

    ○沢田委員 今回、陛下御在位六十周年、こう法律用語で使われておるわけでありますが、おいでをいただいております宮内庁の方にもお伺いをしておきたいと思うのです。  いろいろなケースがあると思うのでありますが、皇室典範はいろいろな場合を考えてつくられているんだろうと思うのですが、近代国家日本の象徴として天皇の国事を行使なされるという場合に、やはり皇室典範について、万一の場合に備えてある程度見直しをしておくということは不敬になるからということには通じないのではないか。率直にそれはお伺いしてみたらどうだろうか。また、皆さんもその点はお考えいただいたのかどうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。  突然の質問ですからお答えにくい点はあるかと思うのでありますが、皇位の継承等々について御考慮されるというか、考えていかれるかどうか、その点、お答えいただけないかと思います。
  53. 山本悟

    山本(悟)政府委員 現在の皇室典範は、やはり一つの皇室の皇位継承その他に関します制度といたしまして完結をいたしていると思います。  ただいま委員の先生の御質問の部分で、どういう点で改正を要するかという点について明確にお触れいただかなかったのかと思うのでございますが、やはりいかなることが起こりましても現在の典範によりましても対応はできる、かように存じておるわけでございまして、今直ちに皇室典範の改正を何らかの意味でしなければならない事項があるかという御質問でございますれば、必ずしもそうは思っていないというぐあいに申し上げます。
  54. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ、それは詰める話ではございませんから、人為的なものではなく、あるいは自発的なものといいますか、そういうものも当然伴ってくるだろうと思います。  次に、元号法なんでありますが、今日、世界の中の日本というふうになってきて、元号と西暦とが混合して使われていっているという現状、極めて地球が小さく、世界の日本ということになってきているわけであります。  大臣もそうでありますが、あっちに行ったら何年生まれと言われたときに、さて計算し直すと六百六十なんというふうにしなければちょっと今度は出てこない、そういう不便さを考えると、これも元号法というものを考えてみる時期に来たのではなかろうかと思いますが、その点はどうお考えになっておられるんでしょうか。
  55. 山本悟

    山本(悟)政府委員 大変申しわけございませんが、元号法の所管は宮内庁は一切関与いたしておりませんので、元号法はあくまで政令で元号を決めるという紀年法の問題でございまして、五十四年でございましたか、制定されましたときの経緯も、これは内閣が純粋に、当時で申しますれば総理府でございましたが、その所管として扱われたものでございまして、宮内庁といたしましてはそういった政務には一切関与いたしてない、かようでございますので、何ともお答えのしようがない次第でございます。
  56. 沢田広

    ○沢田委員 まあ政府は、これは総理大臣に聞かなければならないのですが、これも極めて微妙な発言をしなくちゃならなくなるものですから、やはり発言の仕方が難しいわけですよね。ですから、その意味においては、政令で決めるんだから、じゃその次からやめたらいいでしょうというわけにもいきませんし、だからその点は、実質的にもうこういう時代だから、今の堀先生の質問じゃありませんが、ある程度自発的にこれはこうだろう、世界を見て皇室みずからが御発議なされる、できればこういうぐらいな方が政府もやりやすいんじゃないかという気がしたものですからお伺いをした、こういうことなんでありまして、きょうはもう結構ですが、何らかの機会にそういう問題を——やはり世界の日本として位置づけていく場合に、昭和六十年になったわけですが、この次がどういう年号になるか別として、これもまたややこしいことになっていくのじゃないか、この辺を、世界の日本を担った段階である程度転換をしていくことも一つの道筋ではないだろうかというような気がしましたので、これは何かの機会にお話し願えれば幸いだと思います。  それから大臣、きょうは観桜会があって、それぞれ担当者がなかなか出られないらしい。率直に言うと、恩赦とか感謝状とかこういうものは、今までの発言の中ではこの金貨発行する以外には、まあ式典は別として、特に何か考えてはいないというふうに聞いているのでありますが、できたならばその点は、国会答弁の中では、恩赦はしませんということは総理大臣の発言であったというふうに記憶しております。いわゆる恩赦法を適用しないという意味ですから、その他の細かいものも皆入るわけですが、その他の行事はあるのかないのか、あるいはその点はどういうふうに考えているのか。——これは大臣も、所管じゃないですからちょっとわかりにくいのでしょうね、宮内庁関係でもわかりにくいでしょうね。観桜会の方で葉桜ばかり見られちゃっているものだから、ではこれはわからないことにしましょう。しかし願わくはそういうことで、今までの答弁以上には出ないようにひとつしていただきたい。  それから、特にこれは言いにくいことでありますが、我々の中にもやはり戦争に占めた役割というものは極めて謙虚に受けとめなければならぬことだというふうに思います。ですから、この二十年までの支那事変及び大東亜戦争の国事を行ったというものを契機として、皇室みずからが、平和憲法を守りながら、平和宣言といいますかそういうものを発表していくというようなことはやはり必要な時期に来ているのではないかと思われるわけでありますが、いわゆる六十年を記念すると同時に、また一方多くの国民がその戦争によって犠牲を受けたというその面に向けて、これからはより一層平和を維持するために努力をしていくことが必要だということをやはり何らかの機会に、これは式典の中であるかどうかは別としましても、ぜひひとつその点は意思表示をしていただくような周りの人の配慮が望ましい、こういうふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  57. 山本悟

    山本(悟)政府委員 陛下が世界の平和と国民の幸福をお願いになっている、これはあらゆる機会を通じまして陛下のお言葉の中に言われていることでございます。八月十五日のときのお言葉といったようなものにつきましても、常にそのことが触れられているわけでございまして、お考えにお変わりのないこと、これは明らかであろうと存じます。ただいまのおっしゃいましたこと、よく承知をいたしましてまいりたい、かように存じます。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほどのものについてでございますが、「天皇陛下在位六十年慶祝事業一覧」というのがこの間我々の方へも配られまして、記念貨幣発行大蔵省、それから記念国鉄切符、記念オレンジカードが運輸省、それから郵政省で記念郵便切手記念定額郵便貯金証書、記念簡易生命保険及び郵便年金証書、建設省で国営公園の記念入場券、それから首都高速道路公団、阪神高速道路公団の記念通行券等々、あるいは美術名宝展でございますとか、天皇在位六十年記念造林でございますとか、それから健康運動公園というような記念行事は割合とたくさんございます。
  59. 沢田広

    ○沢田委員 時間の関係で、補助貨幣損傷等取締法というのがあるのでありますが、今度できる十万円、一万円、五百円、これ以外にまだ五万円ぐらいのをつくってほしいという希望も出されましたけれども、こういうのは損傷のうちに入るのかどうか、これをひとつごらんください。——これは議事録に載せるのには極めて難しいのでありますが、いわゆる損傷とは何を言うかということなのであります。  これは、オリンピックの場合もそうでありますけれども国民の人も、買われた場合にその保存は大変苦労なさっているわけです。そういうような何かの形にすれば身につけることも可能だし、保存も非常に可能である。しかもまだ生活の上にも生かされるということでありますから、この損傷の取締法というものを少し外国並みに広げて、どういう模様のものができるかわかりませんけれども、そういう形で国民の中に使われることがある意味においては必要なんじゃないか。ただ赤字国債が減ればいいという式だけに考えないで、まさかそれを使う人はいないでしょうけれども、それでまたかえって値打ちが、十万円が二十万円になってしまう場合もあり得るかもわかりませんが、それなりの道があるということで、古い法律でありますから、余りこの補助貨幣損傷という文字を真っ正面に考えることはないのではなかろうか、私はこういうふうな気がいたしますが、いかがでしょうか。
  60. 窪田弘

    窪田政府委員 従来のこの法律の解釈といたしましては、補助貨幣を損傷または鋳つぶすこと及びそれらの目的で収集することということになっております。単純な損傷、例えばライターや家庭電気器具のねじ回しに十円を使用して損傷するということもこれに違反するという取り扱いになっておりますが、今事例としてお示しいただいた例では、周りにカバーをつけておりましたり、あるいはつめでとめておりましたりいたしますので、こういう場合は損傷ということにはならないのじゃないか。いろいろな金貨をペンダントなんかにしている例がございますが、これも周りにカバーをつけたりして損傷にならないようにはいたしております。そういう場合は差し支えないと考えております。ただ、穴をあけたり何かするのはやはり問題じゃなかろうかな、貨幣としてつくったものでございますから、そこまでおやりいただくことは、通貨当局としてはどうも余り感心しないなという感じでございます。
  61. 沢田広

    ○沢田委員 穴をあけるという言葉、これは極めて微妙なのでありますが、あけるというのは向こう側に通り抜けること、そういう意味に解釈して、少しへこんだり何かするのはあけるという言葉ではない。それがどうだと言うんじゃないんですよ、あけるというのは、いわゆる裏面まで到達をするということであって、へこむのはあけるという言葉ではない、これは日本語の解釈だけを今言っているのですが、そう解釈していいですか。
  62. 窪田弘

    窪田政府委員 それもやはりあけるというか、損傷ではないかと思います。横からあけるばかりじゃなくて、縦にしまして、横の薄い面にねじの穴を切って、そのねじをやるなんという例もございますが、こういうのも、向こうには通っておりませんけれども、やはり穴をあけたということになって損傷であると考えます。
  63. 沢田広

    ○沢田委員 以上で終わりますが、せっかくこういうものが出るのでありますから、私の経験では、大掃除のたびにどこかに行ってなくなってしまう、こういうのが実際私の経験です。そういうようなことで、せっかくできるならば、保存ができる形というものを我々は考えていかなければ、かえってまた国民にも迷惑をかける、こういうことにもなるわけで、その辺は今度の場合は若干でも——今あける範囲もいろいろ微妙なものがあるようでありますが、この場合はあけるのも到達することなんで、こっちの場合はそうじゃないんだろうと思いますが、そのようなことぐらいの、これで商売される人も出てくるわけでありますが、その辺のことは、ひとつ記念式典に照らして意味のあるものにしていただくようお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  64. 小泉純一郎

    小泉委員長 午後四時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十分休憩      ————◇—————     午後四時三十分開議
  65. 小泉純一郎

    小泉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢追秀彦君。
  66. 矢追秀彦

    ○矢追委員 簡単な法案ですから、恐らく議論はかなり出て、あるいはダブった質問になるかもわかりませんが、最初に最近の記念貨幣発行とその枚数についてお伺いしたいと思います。
  67. 窪田弘

    窪田政府委員 記念貨幣は、戦後オリンピック東京大会の記念貨幣以後七回、八種類発行させていただいております。オリンピック東京大会の千円銀貨千五百万枚、同じく百円銀貨八千万枚、万国博覧会百円の白銅貨でございますが、四千万枚、札幌オリンピックの冬季大会三千万枚、沖縄海洋博百円白銅貨が一億二千万枚、天皇陛下在位五十年の記念の百円白銅貨が七千万枚、国際科学技術博覧会記念の五百円白銅貨が七千万枚、内閣制度創始百周年記念の五百円白銅貨が七千万枚でございまして、オリンピックが二回、国際博覧会が三回、あとは天皇陛下在位五十年と内閣制度百年、この七回でございます。
  68. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今回は十万円が一千万枚、一万円が一千万枚、五百円が五千万枚、こうなっておりますが、我が国で初めての記念貨幣発行になるわけでありまして、非常に人気が高まる可能性がございます。一千万枚というのは果たしてこれでいいのかどうか、まず一千万枚にされた理由、それから、これが非常に人気がある場合、果たして一千万枚でどうなるのか、その辺をお答えいただきたいと思います。
  69. 窪田弘

    窪田政府委員 前回の天皇陛下在位五十周年のときが七千万枚発行いたしておりますが、今回も金、銀、白銅合わせて合計七千万枚ということになっております。そのうち金貨につきましては、普通の白銅貨に比べまして製造に非常に手間がかかるということから製造能力いっぱいを見込みまして一千万枚といたしたものでございます。これに要する金の量も二百トンということで、日本が一年間に輸入する金の量に匹敵する大きな量でございます。こういう製造能力及び金の使用量を勘案いたしまして一千万枚ということにさせていただきました。  ただ、これにつきましては一千万枚では足りないではないかという声が、特に永田町かいわいでは圧倒的でございます。しかし、この間の新聞を見ますと、買いたいという人はアンケートで一七%ということになっております。日本の世帯数に約二割くらい掛けたところで一千万枚に若干足りないところでございますから、この辺でいいところかな、貨幣業者に言わせますと、こんなにたくさん出した例は世界の金貨史上も例がないので若干つくり過ぎではないかという意見も片やございますが、要望の多いことも確かでございます。ただ、限度いっぱいであるということで、これでやらしていただきたいと思っております。
  70. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この金の二百トンはどこから調達をされますか。
  71. 窪田弘

    窪田政府委員 従来、金貨を出したらどうかという声はいろいろございましたが、やはり金の調達が難しいということで二の足を踏んでまいりました。ただ、天皇陛下の御在位六十周年ということで金貨を考えますについては、日本銀行にも七百トン余りの金がございますし、いざとなればその御協力をお願いしようということで踏み切ったわけでございますが、その後市況が非常に安定、むしろ安くなっておりますし、日本が輸入をふやすという面から見ましても、海外市場から広く購入するのも一つの有力な方法と考えておりまして、現在、この法律を御成立させていただきましたら直ちに具体的な購入に入りたいということで検討をいたしております。
  72. 矢追秀彦

    ○矢追委員 この法案が通ってから手を打つと言われておりますが、今言われた日本銀行の分は分としておいて、新たにかなりの調達をされるのか。新聞によりますと、全部欧米で調達をして、二十億ドル黒字減らしであって、日銀の手持ち分は取り崩さない、こういう報道が出ておりますが、そういう検討もされておるのですか。
  73. 窪田弘

    窪田政府委員 もし市場からの購入が許せば、そういうことも検討したいと思っております。
  74. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最近の金相場の動き、私もつまびらかでございませんのでわかりませんが、現在はどうですか。きょう、法案が仮に委員会で可決されて来週の本会議で通過をした場合、その後もしずっと仮に上がってくれば、日本が買いに入ったから上がるということになるわけですけれども、現在の金相場の動きから見て、日本が二百トンも買いに入った場合は相場にどういう影響を与えるとお考えになっておりますか。
  75. 窪田弘

    窪田政府委員 昨年の秋、金貨をつくるということを発表させていただきましたときは一グラム二千八百円、あるいはもうちょっと下のものもあったかと思います。そのくらいはいたしておりましたが、その後、石油の値下がり、あるいは円高、いろいろな要素で現在は一グラム二千円くらいに下がってきております。これはしばらくこのくらいの水準で続いておるわけでございます。けさの新聞に出ましてからほんのわずか上がっておりますが、ほとんど影響がないという程度かと存じます。もちろん日本が大量の金を買うことが市況を混乱させてはいけないわけでありますから、その辺はよく事情を見きわめまして慎重にやりたいと考えております。
  76. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大体いつまでにこの手当てをすればつくるのに間に合うのか。もし今の日銀の手持ち分を崩さないでやるとすれば、今言われたように短期間、恐らく六月くらいと言われておりますね。そうなりますとあと二月ですから、その辺がどうなるのか、その辺はいかがですか。
  77. 窪田弘

    窪田政府委員 おっしゃいましたように、実際六月くらいから製造に取りかかりまして、十月いっぱいくらいまで製造にかけまして、十一月の初めに配布をいたしたいと思っております。ですから、その期間に順次購入すればいいと考えております。
  78. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大体一日の製造可能量というのはどれくらいで、それで今言われた十月いっぱいくらいになるのですか。
  79. 窪田弘

    窪田政府委員 一日大体十五万枚くらいが限度ではないかというふうに今見られておりますが、工程、段取りを勘案いたしまして、金はそれに合わせてといいましても、やはりなるべく早く手当てをしておいた方が安心でございます。ただ、日銀の金もございますし、いよいよとなればそれを使う道もございますので、そこはそれほど心配はしていないわけでございます。
  80. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは次に、非常に人気が出てきておりますので、これをどう販売をしていくのか、その辺の問題点に入りますけれども、今までの記念貨幣発行時にはその交換を金融機関にすべて任せてきたわけでございますが、今回もし大変な人気になると、相当行列ができる可能性があります。今まで金融機関に任せておりますと、やはり金融機関の得意先とか、そういうふうなところに優先的に配分をしていたということも聞いております。そうなりますと公平という面が欠けてまいりますので、その辺をどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  81. 窪田弘

    窪田政府委員 従来の記念硬貨の配布方法は、日銀から金融機関、郵便局に配布をいたします。それは、大体府県ごとには人口割で配布いたしまして、県内は各金融機関の預金高を目安に割り当てまして、窓口で配布するというのが今までの慣行でございます。ただ、初回のオリンピックの記念銀貨のときは大変窓口が混乱いたしまして、行列ができたりいたしました。今回もそういう懸念がございますので、現在日本銀行、郵便局、それから全銀協、その他各業界の団体にお集まりをいただいて、その配布をどうしたものか御相談を始めているところでございます。あるいは、例えば抽せんのようなこともやらなければならないかとも思っておりますが、具体的には、これから実際に配布する秋までにかけまして、その方法を詰めてまいりたいと思っております。
  82. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大蔵大臣は、率直に言ってどういう方法がいいと思われますか。宝くじ方式というのもありますし、今までの方法もありますし、いかがですか。
  83. 竹下登

    竹下国務大臣 理財局で随分勉強しておりまして、一つの方法として、今おっしゃるような、仮に大変な人気が出たといいますか、そういう場合には抽せんもしなければならぬのかな。抽せんといっても容易ではございませんし、それから、抽せん券を発行する予算は実は計上していないわけですから、そうしますと、銀行は銀行、郵便局は郵便局で、それ自身が広告になるならば自主的に発行してもらう方法もあるのかな、こんなようなことも折々相談をしておるところでございますが、いずれにせよ公平な引きかえが行われるようにということで、国会の問答なんかを聞きながら、きちんと詰めた対応をしなければならぬというふうに思っております。
  84. 矢追秀彦

    ○矢追委員 なぜ私がこんなことを言うかといいますと、今日本の国は国家財政は非常に赤字ですけれども、民間にお金がたくさんある。また、個人の貯蓄も諸外国に比べて多い。最近、いわゆるマネーゲームというものに走っておる傾向が非常に強いわけです。雑誌を見ましても、「日経マネー」とか「マネー」という雑誌とか、そういうのが大変多いわけですね。私ちょっと今取り寄せただけでも、「コイン、小判の値上がりベスト四十」、こういうのを書いたすごい記事が出ております。そういうようなことで、お金のある人はやはりこれをこの際うんと買って、これはうわさですけれども、ちょっとしばらく置いておくと十数万円くらいの価値が出る、すぐ売ったって二、三万もうかるんだという、そういうふうなうわさも今流れておることはもう事実でございますので、そういう点で、私は公開あるいは公正を期したものにしないと、昔は小判がありましたけれども国民には、最近ではせっかくの金貨ですから。そういう意味である程度これは抽せんがいいのかなと私は個人的には思っておりますけれども、その辺は、やはり本当に国民の納得のいく方法でしなければならぬと思いますので、重ねて大蔵大臣、どうですか。
  85. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、素朴な考え方として抽せんというようなことが先ほど申し上げたように私の念頭にあることも事実でございます。今まで記念硬貨というのは出した経験はございますが、といっても学識経験者というふうな人は必ずしも余りいないじゃないかという感じがいたしますので、先ほど来申しておりますように、日本銀行、郵便局その他の方々の、いわば識者の意見を十分聞いて、そういうようなことも考えられるのじゃないかなと思っております。
  86. 矢追秀彦

    ○矢追委員 世界的にもことしは金貨発行ブームだと言われておりますが、今どの国が予定をしておりますか。
  87. 窪田弘

    窪田政府委員 これは公式な統計というものはございませんが、一九八四年の例では、世界の六十カ国で約百六十種類の金貨発行されたと言われております。最近では、アメリカで自由の女神を修理というか再建をするために金貨発行しておりますし、ロサンゼルス・オリンピックも記念貨幣で経費をかなり賄った。あるいはイギリスではエリザベス女王の肖像を新しくするための金貨を昨年出しております。そういうことで事例は非常に多うございます。
  88. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今諸外国は一つの目的を持って、全部がどうか、私もよく勉強しておりませんけれども、今言われたようなある程度の目的を持ってやられておるわけですね。今回の金貨発行の目的はただ六十年の在位をお祝いするというだけのものなのか、あるいは財政再建というもとで少しでも銭を稼ごうという意図なのか、その点はいかがですか。
  89. 窪田弘

    窪田政府委員 これはもう純然たる、天皇陛下の六十年の御在位をお祝いするために金貨を出したらどうかという御提案にこたえて、これを記念するために出すということでございますが、ただ、結果として財政収入が生ずることは確かでございます。大蔵省の部内で検討いたしましたときにもいろいろ賛否両論ございまして、天皇陛下の御在位ということを理由にして財政収入を上げることはいかがかというふうな疑問もかなりあったことは事実でございますが、記念するということを主たる眼目として出させていただくということでお願いしておるわけでございます。
  90. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大蔵大臣、これは総理に聞く質問かもわかりませんけれども、その陛下の在位六十年というのは結構おめでたいことであります。私は決して反対する立場ではございませんが、余り政治的に利用するのはまずいと思うのです。特に四月二十九日の、この問題とは違いますが、式典を国技館でやられますね。これはちょっとおかしいと私は思っておるのですよ。やるなら十二月二十五日の即位された日にちにすべきだと思うのですよ。それを四月二十九日の誕生日に持ってこられた。これはうがった見方で恐縮ですよ。これは総理がおられたら聞きたいのですが、総理の今の内閣のときにやりたい。十二月になったらどうかわかりませんからね、三選があるかないか。そんなことで、ひょっとしたら政治的利用であるのではないか、こういうふうな気もするわけです。践祚されたのは十二月二十五日ですね。即位式はたしかちょっと後のはずですよ。そういうことで、私は、金貨の方は大分先ですからちょうどいいなと思っておりますが、お祝いは結構ですけれども、余り利用してはいかぬ、こう私は思うわけです。  そういう意味金貨を出す出さない——それは金貨も結構です。人気があるならいいですが、今大蔵省内でも議論があったように、その点はもう少し慎重にやって、金貨でなくてもよかったのではないか、もっと国民に広く銀貨でも銅貨でもたくさん出すのも一つの考えではなかったか、こう思うのです。その問題も含めまして大臣の率直な御感想をお伺いしておきます。
  91. 竹下登

    竹下国務大臣 これは当時の藤波内閣官房長官の、   天皇陛下には、昭和元年十二月二十五日に践祚(即位)されたので、本年(昭和六十年)十二月二十四日の満了をもって御在位満五十九年に達せられ、同月二十五日以降は、御在位六十年目となる。また、陛下には、本年七月十三日をもって御在世日数が確認できる歴代天皇中の最長寿を迎えられた。   政府としては、このような事情を踏まえて、明年四月二十九日(火)(天皇誕生日)に内閣が主催する記念式典を挙行することとし、総理府が関係省庁の協力を得て、必要な諸準備を進めることといたしたい。   なお、記念式典挙行の要綱については、成案を得次第、閣議決定を求めることといたしたい。 こういう十二月二十七日の閣議での発言がございまして、これに基づいてそういうことが決まったということであります。  いろいろな意味において、素朴なお祝いをするというような行事がないだろうかとかいろいろな議論があったことは私も承知しております。  それから、やはり銀貨も白銅貨も出すということで、金貨というのは本当に久しぶりのことでございますが、製造能力からいって一千万枚。トータルで従来よく出します七千万枚、大体そういうことになれば国民の皆さん方におおよそ行き渡るのではなかろうかということで大筋を決定した。  これを発行するかしないか、発行するとしたらどんなことにしたらいいかというので、これこそ学識経験者というのはおりませんで、いわゆる識者というような人、絵かきさんやいろいろな人に集まってもらって、労働組合の方にも集まってもらって、御相談をしてこのような式典のほかに記念行事として貨幣発行するということにしたわけでございます。私どもも直観的に、在世というものについて何かお祝いを、変な言葉で言えば利用して稼ぐというような感じを受けるのは幾らか心の中に抵抗があったことは事実でございます。
  92. 矢追秀彦

    ○矢追委員 現在、通貨の最高額は一万円ですね。これを十万円とされた理由はどういうことなのか。それから、そういうことが、今の状況ですからそうインフレにはつながらないと私は思いますが、十万円札の発行というようなことに道を開くようなことも、勘ぐりかもしれませんけれどもあるわけです。そういう点で、まず十万円にされた理由、それから、今後十万円札というものは全然考えていないのか、その点いかがですか。
  93. 窪田弘

    窪田政府委員 金貨の額面を十万円といたしましたのは材質からの理由でございまして、先ほど大臣からも申し上げました学識者の御意見を伺いましたときに、やはり立派なものとすべきであるという御意見をいただきました。立派なものといたしますと、従来のオリンピックの銀貨のように直径三センチ程度のものといたしますと金貨の重さが二十グラムになります。そういたしますと、金の素材原価からいたしましても五万円前後となるわけでございますから、貨幣の製造コストその他も入れますとどうしても額面は十万円ということになるわけでございまして、十万円の紙幣をつくる地ならしという意味は全くございませんで、材質と大きさから決めたわけでございます。
  94. 矢追秀彦

    ○矢追委員 十万円札……。
  95. 窪田弘

    窪田政府委員 従来、一番高額紙幣の価格のウエートが九割弱、一万円札の場合は八七%に達しましたときにその次の高額紙幣を出しております。現在一万円の構成割合は八五%でございまして、まだ一万円のときまで達しておりません。それから、カード時代になりまして高額紙幣の需要というのも若干変化しているのではないか、若干見きわめたいということもございまして、今後の検討課題ではあると思いますが、現在具体的に考えているわけではございません。
  96. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それから、十万円金貨というのは、今の高額紙幣と逆な話になるのですけれども、またひとつ違った見方をするとデノミ問題にちょっと絡む可能性は出てこないのかどうか。そういう疑いも持ちたくなるのですけれども、それは今やらぬとおっしゃると思いますが、これは大蔵大臣、いかがですか。
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり私なりに、私的諮問機関でもありませんが、部内のそういう識者を集めて部内で議論をいたしてみましたが、戦後のデノミの主要例を見ましても、通常、平価の切り下げとか物価抑制等とか、他のいわば政策的措置とともに行われておりまして、デノミのみを単独で実施した例は先進国の中でない、こういうことが一つございます。  それから、デノミ国民各層にわたって幅広い影響を与えますので、その実施に当たっては、国民の受けとめ方とか経済社会環境の適否とか、実施に伴う技術的諸問題等を総合的に判断すべき問題であるな。現在のところ、もちろんこれを実施する考えはございません。  ただ、かつて国会議論されたときに、いわば物価が安定し、経常収支のぐあいがよくておおむね経済状態が安定しておるときが一つの出す要件だというような議論をされたことがあることは十分承知しながら、やるとかやらぬとかということではなく、デノミとはということでいろいろ勉強いたしてみました。今の場合、今度の記念硬貨との関係は全く考えていないということでございます。
  98. 矢追秀彦

    ○矢追委員 このデザインはもう決まったのですか。
  99. 窪田弘

    窪田政府委員 これは造幣局で今いろいろ勉強しておりまして、法案を成立させていただきましたら直ちに一つに決めまして発表させていただきたいということで検討をしております。
  100. 矢追秀彦

    ○矢追委員 記念行事の委員の方、これは六十年の十二月九日に大蔵省で会合をやられていますね。そのときにイラストレーターとかデザイナーも入られておりますが、こういうふうな方にお願いをされるのか、造幣局内でやられるのか。今造幣局内とおっしゃいましたけれども、せっかく記念行事でやるならこれは公募してもよかったではないか。国会議事堂だって最初は公募して、そしてあのデザインを決めて大体似たものになりましたね。本当に国民的行事とするならそういうことも一つの知恵かと思ったのですが、その点はいかがですか。
  101. 窪田弘

    窪田政府委員 公募することも望ましい方法だと思いますが、ただ法律をお通しいただいてから公募してつくるというのは時間的にちょっと間に合いませんので、この間の懇談会に御参加された中で、例えば平山郁夫先生のように世界のコインを集めておられていろいろ研究しておられる方もございますので、そういう方々の御指導をいただきながら今造幣局検討させていただいております。
  102. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今の問題、大蔵大臣どうですか。
  103. 竹下登

    竹下国務大臣 私もその識者の会に出て終始お話を聞いておりました。やはり今理財局長がお答えしたとおり私はあのとき平山郁夫さんにしても、経験者とかいうようなことではなくこのお願いをしたわけですが、シルクロードの関係で御自分で何か非常に研究していらっしゃるというのは、私は実はそのとき初めて聞きました。千七百何十年における金貨はなんという話が出まして、私が思っておりましたよりもそういう深い知識のある人もいらっしゃるものだなということを感じたわけですが、いろいろ御指導をいただくにしても、造幣局相当な技術者がいらっしゃるわけですから、この方々がそういう先生方のいろいろな意見を聞きながら最終的にはおやりになった方が一番よかろう。それから、造幣局の技術者の方々にとっては、やはり自分の恐らく生涯の仕事という仕事に対するプライドも意欲もあったろうというふうに考えております。
  104. 矢追秀彦

    ○矢追委員 仮に大変な人気が出た場合、六十年というのは先ほどのお話のように来年一年あるわけですから、追加発行というようなことは全然ないのか、検討に値するのか、その点はいかがですか。
  105. 竹下登

    竹下国務大臣 記念硬貨でございますから、昭和六十一年発行と書くわけですから、そうすると能力からいって六十一年中に発行される限度額というものはある。それをさらに、仮に大変な人気が出て六十二年になってもなお六十一年と書いたもので発行を続けるというような、先生のような御意見も実は私も聞いたことがあります。それらは国会議論等を通じての今後の検討課題だなというふうに思っておるわけでございます。
  106. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最後に、先ほどもちょっと触れました、マネーゲームと言うと言葉が悪いかもわかりませんが、今金融商品、株、それからこういったコインに大変な興味が持たれて、そういう関係の雑誌がたくさん出ております。しかもすぐ売り切れるのですよ。家庭の主婦にまでそういったことが非常に興味が——それは、一面においては皆さん非常に賢くなったとも言えると思うのですよ。どういうものが利息が高いか安いか、どうしたら節税になるかならぬか、非常に研究されておるし、雑誌を読んでも猛烈な表が出ておりまして、中国ファンドが一番いいとか一時払いの養老保険がいいとか、すごいんですよ。そういうことで、この金貨発行には私は賛成ですけれども、そういう金融商品とか株というようなものに走っていくことは余りよくないのじゃないか。ある程度お金のある人がそういうことに興味があるわけでして、お金の余りない人は、そういうことに手を出したくても出せない。十万円の金貨だって買えない人は買えないわけですね。ですから、金融政策あるいは財政政策、経済の運営というものをやはりきちっとしていかないと大変な混乱が起こるし、そこで投資ジャーナルや豊田商事のようなことも出てくるわけです。そういう点は、今後の経済運営、財政運営というものをきちんとしていただきたい。このことについて大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  107. 竹下登

    竹下国務大臣 私も全く同感であります。それぞれの投資家がある種の利潤を追求するということは自由であるにいたしましても、おのずから節度があるべきものである。よく言われますいわゆるマネーゲームとかそういうようなものでまた不測の被害を受ける方があってもいけない。投資顧問業法なんというのを今度国会でお願いしようということに踏み切ったのも、実はそういうところからでございますので、これからも御指摘の点については十分配意していかなければならぬ課題だ。問題意識は全く等しくいたしております。
  108. 矢追秀彦

    ○矢追委員 終わります。
  109. 小泉純一郎

    小泉委員長 玉置一弥君。
  110. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回、大変な高額の金貨発行されるということでございます。天皇陛下在位六十周年記念、非常におめでたいことではございますが、我々の方から見ますと、非常に価値あるものを発行するということとともに、片方では財源確保の感じがするわけでございます。  従来から補助貨幣というのは記念貨幣がございますけれども、それでも高価でないために流通の方に大分出てきているのもございます。そういう観点から例えば今回の十万円の金貨を見てみますと、まずめったに流通しないだろう、流通する場合にはいわゆる商品としての流通というような形になるのではないか、こういうふうに思うわけでございまして、国としては幾ら出してもインフレにならない、こういうものではないかというふうな考え方でいるわけでございますが、果たして目的は額面どおり単なる記念補助貨幣という形でいいのか、この辺についてお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  111. 窪田弘

    窪田政府委員 目的はあくまでも御在位の六十年を記念するということでお出しをするわけでございます。  おっしゃったように、これは恐らく流通はめったにしないものだと思いまして、貯金がこの金貨に振りかわるという、経済的には中立的なものではないかと思います。目的は記念のために金貨をつくるということでございます。
  112. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回発行される金貨のために、欧米で金を二百トン調達されるというお話がございます。現在は円高ということもございますし、また需要が非常に低迷をしておるという中で金の価値が非常に低下しておる、こういうことでございますが、この新しい通貨をつくるという法案が出た途端に金市場が非常に高騰してきたということを伺います。  そこでまず、二つの方向からお聞きをしたいのでございますが、年間二百トンの金を購入するということになりますと、海外市場に出回っている金のおよそ四分の一というふうに言われておりますけれども、買い付けの度合いによってはかなり金の価格が激変することになるわけでございまして、ほかに与える影響が大きいわけですね。装飾品などはまだいい方でございますけれども、例えば工業製品の材料には当然白金もありますし金もあるわけです。そういうものに使われているわけですから、及ぼす影響がかなり出てくるというふうに思うわけでございます。そういう意味で、どういうふうな形でその相場を維持していくのか。要するに余り乱さないように、上がるのはある程度しようがないとは思いますけれども、この辺をまずお伺いしたいと思います。
  113. 窪田弘

    窪田政府委員 初めから海外から買うということを決めていたわけではございませんが、最近の、あるいは昨年の暮れ以降あたりの金の価格の落ちつきを見まして、やはりそれも一つの有力な方法ではないかということで、内々準備というか調査をさせていただいておりましたら、たまたま新聞にああいう記事が出まして、これが悪影響を及ぼさなければいいがと心配をしておりますが、きょうの動きを見ますとほとんど影響がないというか余り動きがないので、その辺は大した影響はないのかなと思っております。  いずれにしても、今御指摘のように大きな変動を与えてはいけませんので、よく市場の状況も見て適切に対処してまいりたいと思っております。
  114. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今時点、まだ買い付けの一回の量がわからないということもあるわけでございます。それから、現在の黒字減らしという話がありますね。世界の通貨金本位制にして一番弱いのは日本じゃないかと思うぐらいに今の通貨発行量に対しての金の保有高というのは非常に少ないわけですが、我々としても、できるだけいろいろな機会に海外からの金を日本国内に蓄積をする、こういうことが必要ではないかと思います。  そういう面で考えていきますと、今度金貨として材料で購入される、そして日銀の今保有しております金には手をつけない、こういうことなんですけれども記念通貨となって、先ほどの議論の中で出たように、非常に価値が上がってきた場合に、海外に流出をするということも考えられるわけですね。そういう面で考えていきますと、せっかく二百トンもの金を国内に買い入れるわけでございますから、これはある程度海外流出を防ぐということも考えていかなければいけないと思いますが、この点。  それから、これからの金本位ですね。これも、それに変わるということはまだ全く論議されてないわけですけれども、一応今のところ機運もあるわけですから、そういう面から金の海外流出についてどういうふうにお考えになっているか、もしある程度わかればお伺いしたいと思います。
  115. 窪田弘

    窪田政府委員 流出ということは余り考えられないのじゃないかなと思っておりますのは、日本は今まで、クルーガーランドの金貨でございますとかカナダのメープルリーフ、中国の金貨、その他海外からの金貨相当購入いたしております。むしろ国内の需要が非常に強い。それから今回の金貨補助貨として出しますので、額面は十万円でございますが、その素材価値は、これは実際やってみないとわかりませんが、六万円とか五万円とか、その辺のところになろうかと思います。地金型の南アのクルーガーランドのように金の地金そのもので売るというよりも、額面の半分ぐらいの素材価値ということでございますから、そういうふうに流出をするというふうなことはちょっと考えられないのではないかと思っておりますが、その辺も一つ検討課題として勉強していきたいと思います。
  116. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 六万円ぐらいを十万円で売るというのはかなりあくどい商売のような感じがするわけですけれども、少なくとも記念ということであればほぼ同等の価値を持たなくてはいけないと思います。そういう意味で、要するに需要と供給の関係で価値が上がるというよりも、その物のいわゆる金属的な材料に関しての価値というものが本当は必要じゃないか、こういうふうに思うわけで、今さら比率を変えるというのは非常に難しいと思いますけれども、できるだけそういう意味——それでも、六万円で出ていってもそれだけの金が減るわけですから、ある程度規制をしてはどうか、こういうふうに思うわけですが、これも規制をするのはなかなか難しいですね。私自身そう思います。というわけで、質問はしません。  そこで、例えば今回二百トンの金を購入される、こういうことで計画をされましたけれども、その計画段階と今と、ベース価格、金の場合はグラム当たりどのくらい変化しているか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  117. 窪田弘

    窪田政府委員 造幣局特会の予算をこの間御議決いただきましたが、その予算ベースではグラム二千八百円で計算をいたしてございますが、現在の市場価値で買えれば二千円ぐらいで買えるということで、それだけの開差は既にあるわけでございます。
  118. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 非常に難しいのはこの買い付け量と生産能力とのバランスだと思うのですけれども、定期的に毎月、月初めと半ばにどのくらい買うとか、あるいは一番相場の安いころを見計らって買うとか、いろいろな買い方があると思います。安定させようと思うと、時期を決めて明確に数量を指示するという方が安定すると思うのです。安く買おうといたしますと、六万円の原価を四万円ぐらいで上げたいということであれば、スポット買いで時期を見て買うというのもあるわけで、これは金額が大きいだけに非常に重要な問題だと思うのです。だから、どういうふうに買うということは余り公表できないと思うのですけれども、もし公表できれば、方法が決まっているのかどうか。言えないですかね。
  119. 窪田弘

    窪田政府委員 金の取引というのはどこの国でも余り大っぴらでなくて、難しい面がいろいろあるようでございますが、世界の金の三大市場はスイスとニューヨーク、ロンドン、この三つでございまして、それぞれ有力な業者が数軒ずつございます。これにどういうふうにアプローチしていくかははっきり申しかねる問題でございますが、いずれにしても、一番変動を与えないようにうまく購入をしていくように検討いたしたいと思っております。
  120. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。  従来から、財源がない、財源がないということで予算編成に大分苦慮されてまいりまして、そのときに、我が党の方から、補助貨幣回収準備金の取り崩しを行ったらどうか、こういう提言を毎年、何回も申し上げたわけでございますが、政府の方としては、硬貨と引きかえる資金の準備が十分でないと、場合によっては日銀がお札を増発して引きかえに応じざるを得なくなり、インフレ助長につながる、こういうことで、できないということを言明されておりました。ところが、急に態度が変わりまして、ここ二、三年になりますか、取り崩しを急遽行う、こういうことで、政府が態度を変えるというのは非常に珍しいですね。それで何とか食いつなぎをやっておられるのですけれども、もうその時点から三年ぐらいたつんですかね。政府が最初に言っておられましたのはインフレ助長につながる、こういうお話でございましたけれども、現段階から見ますと全然インフレにはなってない、こういう感じを受けるわけでございますが、この点についてどのように政府は評価をされているか、この辺についてお伺いします。
  121. 窪田弘

    窪田政府委員 五十八年度に繰り入れましたが、実は私はそのとき主計局の次長で、この問題を担当してこの法律をここでお願いをいたしたことがございます。そのころまでの財政の状況と今の状況とはかなり違っておりまして、国が持っているストックを取り崩すということについて非常に心配があったわけでございますが、五十八年度ごろからいよいよせっぱ詰まりまして、貨幣回収準備資金を硬貨の流通高と同じだけ、そんなにたくさん持っている必要はないじゃないか、こういう財政事情でございますからその一部は使わせていただきたい、こういうことで、心配しながらお願いをいたしたわけでございます。実際は、インフレになるとかそういうことはございませんで、その後は流通高の一〇%は準備資金に残すということで平準化をいたしておりますので、初めに心配していたほどのことがないことは事実でございます。
  122. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 そういうように考えていきますと、今まで大蔵省が、我々で提言した内容についていろいろ譲らない部分がたくさんあるわけですけれども、やはり今の経済状態の中でいろいろ見直していかなくてはいけない部分がたくさんあるのではないかというように思います。  今回の関連の中で造幣局特会がございますけれども、これなんかも本来であれば影響を受けてやむを得ない部分でございますが、その影響を受けたという話も全然ないわけですね。そういうふうに考えていきますと、大蔵内部だけでもまだ大分財源があるのじゃないか、こんな気がするわけでございますが、大臣の方で、自省内といいますか、大蔵省内の例えば印刷局でありますとかあるいは造幣局とかそれから国税とかいろいろあると思いますけれども、そういう中でのいろんな制度の中の準備金あるいは特会、こういうものをもっとふるいにかけて見直すべきではないか、こういうふうに私思いますけれども、いかがでございますか。
  123. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私が大蔵大臣のときでございましたが、五十八年度予算編成に関する建議というのを財政制度審議会からもらって、それで補助貨幣の現在額に見合う準備資金を保有し、現在に至った、しかし、現在の厳しい財政状態のもとにおきまして、「一般会計の財源として使用することとし、これに伴い所要の措置を講ずべきである。」という意見も財政審でちょうだいして、そういう措置をとりました。そのときにも私言ったことがありますが、野党の皆さん方のおっしゃったことを大体三年後くらいにやるとちょうどいいなんて、まあこれはジョークに近い話でございますが、そういうことを申したことがございます。  これはあるいは少し本論から外れるかもしれませんが、この間よその国の大蔵大臣が、年金積立金がおまえのところにはあるじゃないか、こんないい財源はないじゃないか。いや、あれはかくかくしかじかで、まだ我が国の年金は成熟していないがいずれ二十一世紀に向けて成熟する。大事な大事な国民のお金を預かっておるのだから、それを一般財源化することはできない。そんな二十五年も四十年も先のことを考えなくてもいいじゃないか。こんなお話がありましたが、なるほど日本はそこまではまだいってないなと思っておりました。  今までいろいろ御指摘の中で出たものは、外為特会等も活用させていただいたことがありますが、現在の仕組みの中で、積立金とか準備金とかいわゆる大蔵省部内の財政の中でそういうものをこれ以上吐き出すという余裕はない、後年何かの話ができれば別でございますけれども、そういうふうに思っております。
  124. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 それでは、先ほどから出ておりますデノミの問題についてちょっとお伺いをしたいと思います。いろいろ論議がされてまいりましたので、一応考え方だけお聞きをして終わりたいと思います。  竹下大蔵大臣は、ことしの一月ぐらいは非常に積極的に前向きにといいますか、デノミを考えているような発言をされてまいりまして、その後、中曽根総理が打ち消しをする、こういうことで来たようでございます。そこで、現在の機運はどうかという前に、デノミについて、実施条件といいますか、どの程度研究されているのか、要領よく要点だけをお答えいただきたいと思います。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 デノミについて現在政府部内において具体的な調査研究は行っておりません。  実施の条件として、デノミ国民各層にわたって幅広い影響を与えるものであるだけに、その実施に当たっては、一つ国民の受けとめ方、二つ、経済社会環境の適否、三つ、実施に伴う技術的諸問題、それらを総合的に判断すべきであって、現在実施する考えは持っておりません。  それから、デノミというのは通貨単位呼称変更にすぎず、基本的には経済取引には全く中立的なものである。一時的現象として端数切り上げ等による物価の影響が懸念される。なお、デノミの実施に伴う実需の喚起によって景気刺激効果が期待できるという見解があるが、他方においてまた、企業等におけるデノミ関連経費が増大して景気刺激効果はチャラになってしまう、こういうような疑問がある。  この問題で試算したのがありまして、五十三年当時でございますけれども、社団法人日本経済調査協議会で試算したコスト負担額が五千九百億円、名目GNPの伸び率等で機械的に計算し直せばおおむね一兆一千億程度に見積もることもできるのではないか、こういうのがあります。福田総理大臣が、前提条件というのは経済の安定だ、具体的に言えば物価安定、国際収支安定、景気情勢が正常、こういうことを言われたことがある。したがって、勉強してみたらどうだと言われましたが、実施するとかしないとかということじゃなく、今申し上げたようなことを勉強はさせていただいたということでございます。ただもう一つ、他の先進国でやった例を見ると、平価の切り下げを行うとか、必ず何か政策的目標があったときにやっておる。そういう点からして、単なる呼称変更というのはなかなか難しいものだな、こんな感じで勉強をさせていただいた。これは大蔵省として勉強したのか、我々省内の識者が集まって勉強したのか、まだその程度でございます。
  126. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今の勉強によりますと、単なる通貨の称号変更といいますかそういう意味でのデノミはない、そして政策的に諸外国との関連で通貨の切り下げとか切り上げとかこういうものに付随をしてのみデノミが行われる、こういう解釈でよろしゅうございますか。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 たまたま調べてみたら戦後のデノミは大体そういうことであったということでございます。
  128. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今円高基調がまだ続いておりますけれども、当時二百四十五円くらいだったのがもう百八十円か百七十円という間をうろうろしている、こういう状況で安定しているように見えるわけですけれども、毎回この委員会で論議が出てまいりますように、サミットが終わったら変わるんじゃないか、こういう感じもあるわけです。円高が必ずしも経済摩擦の解消にはならないという話もよく出ておりますし、こういう状況から安定したとは見てないわけでございますが、少なくとも一度こういうことでなれてしまえばしばらく安定していく、こういうようにも思うわけです。例えば円の価値との関係で、現在のところ対外的な通貨関係については何ら政策的には計画がされていないのか、その辺についてはどうでございますか。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょうどきょうの終わり値が百七十五円八十五銭、いささか円高基調でございますが、目下のところ、そういういわゆるエクスチェンジレートから来るデノミ論というようなものは聞いておりません。ただ、よく議論する中で、円が基軸通貨になったら一体どうするか、そうすると一円が〇・〇〇五ドルでは悪いじゃないか、一円は〇・五ドルとか一ドルとか、そういうような呼称がしかるべきだというような議論をされる方はございますけれども、今、国際的なエクスチェンジレートの問題でそのことが議論されておることはございません。日本とイタリアが三けたでありますけれども、それはないということであります。
  130. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 まだ少しあるのですけれども、何かきょうはお急ぎの方が多いようでございますから、これで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  131. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 正森成二君。
  132. 正森成二

    ○正森委員 竹下大蔵大臣はたしかお心にとめていただいたかとも思いますが、三月八日に私は予算委員会天皇在位六十年の問題について質問させていただきました。本日はそれに引き続きまして、法案に関係がございますので、若干の質問をさせていただきたいと思います。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕  日本共産党は、そもそも天皇在位の初めの二十年と新憲法成立以来の四十年とは、憲法上の地位も全く異なるものであるということをこれまで主張してまいりました。  戦前の二十年というのは主権在民というような原則は全くありませんでした。天皇が元首で統治権を総攬するという姿勢でございましたし、陸海軍の統帥権、宣戦、講和の人権、そして議会は協賛する機関にすぎませんでした。それに対して、戦後の四十年というのは主権在民の原則に立つ憲法ができまして、憲法はこの原則に反する旧憲法を排除することを憲法前文でも明確に言っているわけであります。また、天皇昭和六年に始まりました中国に対する侵略戦争以来の日本の戦争について明確に戦争責任があると私どもは考えております。そういう点から見ますと、戦前の二十年と戦後の四十年を一緒にして在位六十年を祝うなどということは、新憲法のもとでは絶対にあってはならないことであるというのが私どもの見解であります。  そこで伺いたいのですが、三月八日の中曽根総理の答弁の中で、私ども天皇在位六十年祝賀行事について、「国民の自然の感情である、自然の感情を持たない人は不自然である、疑う方が不自然である」と言うのは、これは国民の本当の気持ちを言っているのではないのではないかというのに対して、総理は反撃をされているわけであります。  けれども、その後朝日新聞世論調査をいたしました。八六年の四月七日付に出ておりますが、それを見ますと「政府は四月二十九日の天皇誕生日に、ご在位六十年を記念する式典を行います。あなたは、このことをどう思いますか。」という質問に対して「おめでたいことなので、政府の式典は当然だ」というものは四一%にしか達しません。それに対して「おめでたいことだが、政府の式典は必要ない」というもの二七%、「自分には関係ない」こう答えるものが二一%、「戦時中のことを思うと、好ましくない」こう答えたものが六%、合わせて天皇在位六十周年に消極的なものは五四%、国民の過半数に達しております。これは朝日新聞世論調査では冷厳たる事実であります。  それに対して中曽根総理は私の質問に対して「大多数の、もう九九%の国民、九九%に近い国民は、やはり二千年近いこの伝統と文化を持っておる日本、及び天皇を中心に生きてきた日本のこの歴史とそれから我々の生活を守っていこうと考えておる。」こういうように述べまして「そういう国民の大多数の考えを無視して、あえて異を立てるというものは、国家を転覆するという気持ちを持っておる人でないと出てこないのではないか」とまで言っております。こういう言い方は、現在の民主主義の世の中からいって、こういう五四%の国民の意思を全く無視するものではないかと言わざるを得ませんが、どうお考えですか。
  133. 竹下登

    竹下国務大臣 去る三月八日、予算委員会において正森質問に対する総理答弁の要旨は、陛下は一貫して平和主義者であられた、陛下は立憲君主制のもとにおいて君臨すれども統治せずという考えを貫かれた、陛下の御在位六十年とあわせ御長寿をお祝いするのは国民の自然な感情であると。私もこのお答えに何ら不自然さを感じておりません。
  134. 正森成二

    ○正森委員 私は、天皇が平和主義者であるという点については、そうではないということを当時の「近衛日記」や書記官長であった富田健治氏の著書を引用して申しました。きょうは時間がございませんから、それをここで繰り返そうとは思いません。しかし私がその点について予算委員会で論及したことは御記憶にあると思います。今の答弁は、私が予算委員会で申しました指摘にはお答えになっておりませんが、その後出てきた朝日新聞などの世論調査を事実上無視される答弁ではなかろうか、こう思います。  そこで、宮内庁がおいでになっておりますのでお伺いしたいと思いますが、四月十五日の毎日新聞、読売新聞、あるいはその後朝日新聞他の新聞にも出ておりましたが、天皇が終戦前後に皇太子にあてた手紙が新聞に大きく報道されました。これは発売されている週刊誌にも載っておる状況であります。  これを見ますと、宮内庁山本次長、あなたですか、「もしその手紙が本物ならば、あきれた話だ。第一に陛下の私信を書き写すという行為。人の机の引き出しから手紙を盗むようなもので、おそばに仕える者がそういうことをするのでは、陛下はだれを信用すればよいのか。それをご本人の承諾なく、公表するとは全く驚きだ」と話したと毎日新聞には報道されております。ところが、この手紙を公表しました本人は、安嶋東宮大夫ですか、それには事前に手紙を渡しておいた、こういうことを言っているのです。そして安嶋東宮大夫は「私は手紙が本物かどうかわからないし、確認する立場にもない。(傅育官が手紙の写しを私に手渡したと話している点については)答えられない。」こう言っているだけで、否定しておりません。  そこで私は思うのですけれども、人の手紙を勝手に書き写すというような行為は信書開披罪に当たる刑法上の問題も起こります。これは仮に皇太子がごらんになった後書き写したとしたら、封緘されておりませんから刑法上の問題は起こらないかもしれませんが、少なくとも公務員法百条、公務員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならない、その職を退いた後も同じであるというぐあいになっておりますが、そういう点には非常に問題があるんじゃないかと思うのですね。ところがそういう点については何ら問題にされずこういうぐあいに大きく報道されておるという点から見ますと、私ども宮内庁の首脳部が、こうして新聞に報道されることを十分に承知の上こういう手紙を公表させたものではなかろうか。しかもこの傅育官は「ご在位六十年の式典を迎えたいま、これらの手紙が持つ意味を考えたかった」ということで、明らかに御在位六十年を意識したキャンペーンの一環としてこういうものを公表し、しかも各新聞がこれを大きく報道して、ほぼその目的を達したと客観的に認められる状況になっております。そうすると、宮内庁はこういうキャンペーンを了承した上でこういうことをやっているのかどうか伺いたいと思います。
  135. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいまの御質問の件でございますが、私の談ということで各紙にいろいろなコメントが出ていると思います。一貫して申し上げられますことは、そのことについて、そのもの自体についての確認の方法はない、これがまず一点でございます。というのは、もとのものは焼けてなくなったと各紙は書いているわけでございまして、事実そういうものが宮内庁の管理下に全然ございません。したがいまして、そのものが本物であるかどうかの確認の方法はございませんということが一点と、もしも報ぜられたようなことでそういうものが公表されたとすれば、まさに私どもも、側近者というものがやったとすればなおさら極めておかしなことである。この二点は明らかに申し上げていることでございまして、もちろん公表すること、あるいは公表する以前に、あるいはその効果というようなことについては一切関与しておりません。
  136. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、ますます問題になってくると思うのですね。元傅育官というものが、確認することのできない手紙を天皇の手紙であると言ってマスコミに報道させる、そしてそれが本当であるかどうかわからない。それなのに、宮内庁はこれに対してそれを事実上認めるという態度をとるのですか。これは陛下の手紙ということで、新聞ではもう既定の事実のようにどんどんと報道されているのですよ。それは宮内庁がこういうぐあいに報道されることを容認する姿勢であると言われても仕方がないのじゃないかと思うのですね。しかし、それについてはあなたは今のお答えしかしないでしょうから、深くは申しませんが、仮にこの手紙が本当に天皇の書いた手紙だとしますと、我々として黙視できない内容も含まれております。  例えば、こう言っております。   敗因について言いはしてくれ   我が国人が あまりに皇国を信じ過ぎて 英米をあなどつたことである   我が軍人は 精神に重きをおきすぎて 科学を 忘れたことである こう手紙を書き送ったことになっております。しかし、我が国人が皇国を信じ過ぎたことである、こう言っておりますが、そういうように歴史的にも政治的にもさせた者は一体だれなんですか。  治安維持法では、国体を変革し私有財産を否認する者を当初懲役十年にし、昭和三年にはこれを死刑法に改悪いたしました。これによって国体、すなわち我が国のいうところの国柄あるいは皇国史観、こういうものを批判することができなくなったのじゃないですか。そして、その原因をつくったのは一九二三年、当時の帝国議会ですら否定した治安維持令というものを勅令で出し、昭和三年には議会は通らなかったのに治安維持法の一部改正の勅令案で死刑に変更した。これは天皇の権限によって行ったものじゃないですか。そういうことをやった人が、敗戦の原因として我が国人が余りに皇国を信じ過ぎたなどと言うことは、自分の責任を全く顧みないものにほかなりません。  あるいは、「我が軍人は 精神に重きをおきすぎて 科学を忘れたことである」とは何事ですか。あの戦争は中国人民に対する侵略戦争、そしてそれが解決しないからといって北部仏印、南部仏印に次々に進駐し、アメリカの撤兵要求にこたえないというところから、日本が先制的にハワイを空襲したことで起こったんじゃないですか。それに対して、私はここであえて宣戦の大詔をもう一遍宙で言い返そうとは思わないけれども、宣戦を布告したのは天皇じゃないですか。そして軍人のことをとやかく言いますけれども明治十五年に軍人勅諭を出して、「我が国の軍隊は世々天皇の統率し給ふ所にそある。」「されは朕は汝等を股肱と頼み汝等は朕を頭首と仰ぎてそ其親は特に深かるへき。」こう言って、「上官の命を承ること実は直に朕が命を承る義なりと心得よ。」こういう詔勅を出したのは天皇じゃないですか。そういう自分の命までの言動を棚に上げて、こういう手紙、しかもそれが本物であるかどうかわからないものを公表させていくなどということはもってのほかのことではないですか。そう思いませんか、大臣。国務大臣として聞いております。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 考えを著しく異にしておるという印象を受けました。
  138. 正森成二

    ○正森委員 中曽根総理がよくそれに近い答弁をしますが、さすがに後継者をねらっておるだけあって、答弁もだんだん似てきたことを甚だ遺憾に思います。(「ふざけるな」と呼ぶ者あり)ふざけるなじゃないです。大蔵大臣自身がそういう答弁をしておるから私が言っておるのです。これはまじめな質問であります。  私どもはこういうことを極めて遺憾に思いますが、さらに、天皇が、新憲法が制定されてから以後も、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する機能を有しない。」という憲法の規定に著しく反することを行っているということは事実であります。  ここに「世界」の一九七九年四月号があります。これは筑波大学の助教授でありました進藤栄一氏が「分割された領土」ということで書いておられる論文であります。これはアメリカの公文書館から発表された資料に基づいて、天皇が沖縄を事実上アメリカに長期占領させる、こういう提言をしたことを論じた論文であります。この中でこう言っております。   その意味では、それより一週間程遅れ、総司令部と皇室とのリエゾンとして宮内庁御用掛をつとめる寺崎英成からジョージ・アチソン亡きあとのシーボルトを通じて国務省に伝達されたメッセージのほうが、はるかにワシントンの動向と波長の合うものであった。   すでにその年五月六日、天皇はマッカーサーに三度目の訪問をし、対日講和成立後「アメリカが撤退した場合誰が日本を守ることになるのか」と直接元帥に問い、自ら講和後の日本防衛問題への関心を見せていた。 このくだりはニューヨーク・タイムズの五月七日、九日、十日付に載ったものであります。  それに関連して九月中旬、寺崎は、「沖縄の将来に関する天皇の考えを伝えるため」としてシーボルトを訪ね、次のような談話を行なっていた。  「寺崎が述べるに天皇は、アメリカが沖縄を始め琉球の他の諸島を軍事占領し続けることを希望している。天皇意見によるとその占領は、アメリカの利益になるし、日本を守ることにもなる。天皇が思うにそうした政策は、日本国民が、ロシアの脅威を恐れているばかりでなく、左右両翼の集団が台頭しロシアが“事件”を惹起し、それを口実に日本内政に干渉してくる事態をも恐れているが故に、国民の広範な承認をから得ることができるだろう。  天皇がさらに思うに、アメリカによる沖縄(と要請があり次第他の諸島嶼)の軍事占領は、日本に主権を残存させた形で、長期の——二五年から五十年ないしそれ以上の——貸与をするという擬制の上になされるべきである。天皇によればこの占領方式は、アメリカが琉球列島に恒久的意図を持たないことを日本国民に納得させることになるだろうし、それによって他の諸国、特にソヴェト・ロシアと中国が同様の権利を要求するのを差  止めることになるだろう。」 こう言っています。そして、同じ論文は、   九月二〇日、シーボルトはこのメッセージをまずメモランダムによってマッカーサーに伝え、さらに二日後、メモランダムの写しを同封した上その要旨をマーシャル長官に送付した。 中略   国務長官マーシャルは、この文書をシーボルトから受けたあとただちにケナンに回送し、ケナンは、当時作成中の対日講和構想の附属文書として、沖縄に関する特別勧告書をしたためる。そしてその中でメッセージの重要性を次のように強調した。   「政策企画部は、南琉球をアメリカが統治する原則を承認する。……企画部が注目しているのは、日本天皇が、アメリカは、沖縄を始め〔アメリカ側の〕要請する他の島嶼を、日本に主権を残存させた形で、長期——二五年から五十年ないしそれ以上にわたって軍事占領し続けるべきだという示唆を伝達してきていることである。企画部は、この方式を戦略的信託統治の代案として十分検討すべきものと考える。」   翌四八年三月初旬、ケナン訪日と差し違いに国務省は、再度、寺崎——シーボルトのラインを通じ、アメリカが「ソ連の侵略と、さらに浸透とから守るため」東アジアの防衛前線を確認し、新たに「南鮮、日本、琉球、フィリッピン、それに可能なら台湾を、アメリカの〔防衛〕前線として」画定するよう要請したメッセージを受ける。 云々、こうなっております。  大蔵大臣宮内庁、どちらでもいいですが、憲法によれば、天皇は、限定された「国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する機能を有しない。」となっております。しかるに我が国の外務省が講和問題についていろいろ苦労しているときに、この論文によれば芦田さんの意見天皇意見は違っておったと書いてあります。こういう重大な問題についてアメリカに事実上提言するなどということは、みずから憲法の条項に真っ向から違反するものではないですか。そして、これがアメリカの公文書から出てきておるということになれば、日本側にも何らかそれに関連する文書があるはずですから、これを公表させるべきであります。これに対して政府宮内庁が何らかの方策をとったということは、私どもは寡聞にして聞いておりません。それは憲法の建前から見て極めて遺憾なことではないかと思います。  そういう点を考えますときに、天皇在位六十年などといって、戦前の二十年と戦後の四十年を一緒にしてお祝いするなどということは、私は断じてあってはならないと思いますが、いかがですか。
  139. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいまの急な御質問でございましたが、思い出してみますと、その論文が発表されました当時やはり国会で問題になりまして、調べるべきではないか、いろいろ御議論がございました。宮内庁にそういったメッセージの写しというものはないかという御質問もございまして、十分調査をいたしましたが、全くございませんでした。 以上、お答えいたします。
  140. 正森成二

    ○正森委員 全くそういう事実はございませんと言いますが、これはアメリカ側の公文書に出ていることであります。その当時これに関連する日本側の公文書あるいはそういう事実は全くないという証明はできないのですけれども天皇と寺崎英成という人のいろいろな行動について、十分その点は国民に納得させるように説明しなければ、これは憲法の建前からいいましてもあるいは沖縄県民に対する感情からいいましても決して納得されるものではないというように考えております。  そこで、竹下大蔵大臣に伺います。  先ほども私が引用いたしましたが、中曽根総理は「九九%の国民、九九%に近い国民は、やはり二千年近いこの伝統と文化を持っておる日本、及び天皇を中心に生きてきた日本のこの歴史とそれから我々の生活を守っていこうと考えておる。」ということを言われましたし、あるいは国民全体と天皇との関係について言われました。  しかし、私どもがこの日本列島の歴史というものを考えてみますときに、日本列島で、学者の言うところでは、縄文時代が一万二千年前から二千五百年前まで続きました。これは土器文明で、その土器は極めてすぐれた文明であったと言われております。これは紀元前三世紀末までであります。その後に弥生期というのが六百年ありました。その後古墳期というものが四ないし六世紀の間約三百年続いたと言われております。我々が知っておる書かれた歴史時代というのはせいぜいのところ千四百年前後にしかすぎません。したがって、私の記憶しております全斗換大統領が来られたときの天皇のお言葉には、千数百年というような言葉が使われたと思っております。  また、歴史をひもといてみますと、近畿を中心にする天皇が権力を持っておられる王朝だけでなしに、それ以前に九州王朝がありましたし、また、竹下大蔵大臣の御出身に近い出雲にも、オオクニヌシノミコトを初めとして出雲王朝がありました。また、歴史の示すところでは、大和の天皇王朝の成立する前に多数の銅鐸が見られましたが、天皇家が成立いたしましてから大和では銅鐸が消滅しております。これは、多くの歴史家は、天皇家の成立以前に近畿一円にも銅鐸国家があったというように見ておるわけであります。  そういう点を考えますと、竹下大蔵大臣はかつて別のことでワン・オブ・ゼムという言葉をよく使われましたが、天皇家といえども日本歴史全体から見れば出雲王朝、九州王朝あるいは銅鐸国家等々の古代においてはワン・オブ・セムであって、しかもそれ以前に縄文時代、弥生時代、古墳時代という、日本民族には悠久の歴史があります。そういうものをあたかも無視するような発言というのは、歴史の真実をあらわすものではないのではありませんか。  また、多くの歴史学者の示すところでは、天皇の大和朝廷がまだ年号を持っていなかった時代に九州王朝は律令を持ち、そして元号を持っておった。善記、こういう元号が五二二年に善記元年ということで出ておりますが、その後大長三年、紀元後七〇〇年まで百七十九年にわたり三十二個の元号を使っていた九州王朝の存在がすべての歴史書で表明されております。  また、播磨の国に明要寺というお寺があります。現在の神戸市ですが、この明要は九州王朝の元号であります。  こういう点を考えてみますと、中曽根総理の言うところの皇国史観というのは、日本の科学的な歴史から見ても必ずしも正統性をから得ないという面があるのではないでしょうか。歴史を学ぶという科学に対して、内閣総理大臣があたかも一つの説だけを正しいとして、それに異を唱える者は国家を転覆する気持ちがあるととられる発言をしたり、九九%の国民は自分と同じ考えであるような説を立てるということはよろしくないのではないかと思いますが、いかがですか。
  141. 竹下登

    竹下国務大臣 民主主義の時代において正森さんの指摘される意見をここで一つ一つ反駁しようなどという考え方を私は毛頭持っておりません。しかし、本日御例示になりました沖縄問題につきましても、私はたまたま一九七二年五月十五日に内閣官房長官でありまして、復帰の記念式典の司会者でありましたが、そのときの天皇のお姿なりお言葉なり、私にとっては忘れ得ない天皇尊崇の念として永遠に持ち続けたいものだというふうに私は考えております。
  142. 正森成二

    ○正森委員 私は自分の所属政党の立場から見て、あの戦前の二十年の絶対主義的天皇制を断じて認めるわけにはいきません、政治的に。また、現在の象徴制については、私どもは今それをとやかく言おうとは思っておりませんが、しかし、長い政治の将来においては、国民はこれも含めて自分の政体を自由に選ぶ権利があるというように考えております。 しかし、いずれにせよ、日本の歴史を公正に考えるなら、大和王朝が成立してから以後でも、藤原時代は摂関政治で天皇が実際の武力を含む権力は持っておりませんでした。鎌倉時代、足利時代、徳川幕府時代はもちろんのことであります。そういう天皇のあり方を変えたのが明治維新であります。しかし、あの明治憲法下のような天皇あるいは天皇制の姿が本当に日本国民の歴史と合致するものであるかどうかということは、歴史の上でも政治の上でも十分考えてみる必要がある、私どもはこう考えております。もちろん、私のこの意見を、大蔵大臣が言われましたように、他の多くの人に押しつけようとかそんな気持ちは毛頭ございません。  時間が参りましたので、これで終わりますけれども天皇在位六十年を祝うという今度の政府の行為は、その長い長い日本の歴史から見て極めて特異なものである。それが、みずからが意図するところとは違って、いわゆる天皇御一家に対しても果たして本当にいいことかどうかは後世の史家にまたなければならないということをあえて付言して、私の質問を終わります。
  143. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  144. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  天皇陛下在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 小泉純一郎

    小泉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 小泉純一郎

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  147. 小泉純一郎

    小泉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時二分散会      ————◇—————