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1986-04-15 第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十五日(火曜日)    午前十時四分開議 出席委員   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       大島 理森君    加藤 六月君       金子原二郎君    自見庄三郎君       田中 秀征君    高鳥  修君       中川 昭一君    藤井 勝志君       宮下 創平君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    沢田  広君       戸田 菊雄君    中村 正男君       堀  昌雄君    柴田  弘君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      尾崎  護君         大蔵大臣官房審         議官      亀井 敬之君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省関税局長 佐藤 光夫君         大蔵省国際金融         局次長     橋本 貞夫君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         厚生大臣官房総          務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房会         計課長     末次  彬君         厚生省社会局長 小島 弘仲君         厚生省児童家庭         局長      坂本 龍彦君         自治大臣官房審         議官      持永 堯民君  委員外出席者         総務庁長官官房         地域改善対策室         長       熊代 昭彦君         科学技術庁研究         調整局生活科学         技術課長    高多 康次君         国土庁防災局震         災対策課長   定道 成美君         法務省人権擁護         局調査課長   落合 紹之君         文部省初等中等         教育局教科書管         理課長     伊田 和身君         文部省高等教育         局学生課長   佐藤 孝安君         文部省高等教育         局私学部私学助         成課長     泊  龍雄君         文部省体育局学         校給食課長   小西  亘君         厚生省保険局国          民健康保険課長 近藤純五郎君         気象庁地震火山         部地震予知情報          課長      津村建四朗君         自治省行政局行          政課長     濱田 一成君         自治省税務局企          画課長     前川 尚美君         大蔵委員会調査          室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十日  辞任        補欠選任   古川 雅司君    森田 景一君 同日  辞任        補欠選任   森田 景一君    古川 雅司君 同月十一日  辞任        補欠選任   薮仲 義彦君    坂井 弘一君 同日  辞任        補欠選任   坂井 弘一君    薮仲 義彦君     ――――――――――――― 四月九日  国庫負担削減反対等に関する請願梅田勝君紹  介)(第二八二五号)  同(正森成二君紹介)(第二八二六号)  同(梅田勝紹介)(第二九六八号)  同(浦井洋紹介)(第二九六九号)  同(小沢和秋紹介)(第二九七〇号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二九七一号)  同(経塚幸夫紹介)(第二九七二号)  同(工藤晃紹介)(第二九七三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二九七四号)  同(柴田睦夫紹介)(第二九七五号)  同(瀬崎博義紹介)(第二九七六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二九七七号)  同(田中美智子紹介)(第二九七八号)  同(津川武一紹介)(第二九七九号)  同(辻第一君紹介)(第二九八〇号)  同(中川利三郎紹介)(第二九八一号)  同(中島武敏紹介)(第二九八二号)  同(中林佳子紹介)(第二九八三号)  同(野間友一紹介)(第二九八四号)  同(林百郎君紹介)(第二九八五号)  同(東中光雄紹介)(第二九八六号)  同(不破哲三紹介)(第二九八七号)  同(藤木洋子紹介)(第二九八八号)  同(藤田スミ紹介)(第二九八九号)  同(正森成二君紹介)(第二九九〇号)  同(松本善明紹介)(第二九九一号)  同(三浦久紹介)(第二九九二号)  同(簑輪幸代紹介)(第二九九三号)  同(山原健二郎紹介)(第二九九四号)  大型間接税導入反対等に関する請願大久保直  彦君紹介)(第二八二七号)  同(大野潔紹介)(第二八二八号)  税制改革減税に関する請願外五件(大野潔君  紹介)(第二八二九号)  所得税減税等に関する請願鈴木強紹介)(  第二八三〇号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願上田哲紹介)(第二八三一号)  同(武藤山治紹介)(第二八三二号)  税制改悪反対等に関する請願正森成二君紹介  )(第二八三三号)  国民本位税制改革に関する請願柴田睦夫君  紹介)(第二九六七号) 同月十一日  大型間接税導入反対税制改革に関する請願  (林百郎君紹介)(第三〇四三号)  国民本位税制改革に関する請願梅田勝君紹  介)(第三〇四四号)  同(浦井洋紹介)(第三〇四五号)  同(小沢和秋紹介)(第三〇四六号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三〇四七号)  同(経塚幸夫紹介)(第三〇四八号)  同(工藤晃紹介)(第三〇四九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三〇五〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第三〇五一号)  同(瀬崎博義紹介)(第三〇五二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三〇五三号)  同(田中美智子紹介)(第三〇五四号)  同(津川武一紹介)(第三〇五五号)  同(辻第一君紹介)(第三〇五六号)  同(中川利三郎紹介)(第三〇五七号)  同(中島武敏紹介)(第三〇五八号)  同(中林佳子紹介)(第三〇五九号)  同(野間友一紹介)(第三〇六〇号)  同(林百郎君紹介)(第三〇六一号)  同(東中光雄紹介)(第三〇六二号)  同(不破哲三紹介)(第三〇六三号)  同(藤木洋子紹介)(第三〇六四号)  同(藤田スミ紹介)(第三〇六五号)  同(正森成二君紹介)(第三〇六六号)  同(松本善明紹介)(第三〇六七号)  同(三浦久紹介)(第三〇六八号)  同(簑輪幸代紹介)(第三〇六九号)  同(山原健二郎紹介)(第三〇七〇号)  同(堀昌雄紹介)(第三〇七一号)  税制改革減税に関する請願河野正紹介)  (第三〇七二号)  同(城地豊司紹介)(第三〇七三号)  同(野口幸一紹介)(第三〇七四号)  大型間接税導入反対等に関する請願堀昌雄  君紹介)(第三〇七五号)  所得税減税等に関する請願新村勝雄紹介)  (第三〇七六号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願五十嵐広三紹介)(第三〇七七号)  同(島田琢郎紹介)(第三〇七八号)  同(安田修三紹介)(第三〇七九号)  税制改悪反対等に関する請願中林佳子紹介  )(第三〇八〇号)  国庫負担金削減反対等に関する請願経塚幸  夫君紹介)(第三〇八一号)  同(東中光雄紹介)(第三〇八二号)  同(藤田スミ紹介)(第三〇八三号)  同(正森成二君紹介)(第三〇八四号)  国庫負担削減反対等に関する請願兒玉末男君  紹介)(第三〇八五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三〇八六号)  同(堀昌雄紹介)(第三〇八七号) 同月十四日  国庫負担金補助金削減反対に関する請願(田  中美智子紹介)(第三一八七号)  大型間接税導入反対等に関する請願山原健  二郎紹介)(第三一八八号)  国庫負担削減反対等に関する請願正森成二君  紹介)(第三一八九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の補助金等臨時特例等に関する法律案(内  閣提出第四号)      ――――◇―――――
  2. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、国の補助金等臨時特例等に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。
  3. 中村正男

    中村正男委員 今ちょうど中曽根総理日米首脳会談を終えられましてこちらの方に向かっておられるところだと思いますが、サミットを直前にいたしましていよいよ日本内需拡大がどう実行されていくのか、世界じゅうの注目を集めておるわけですが、本題に入ります前に、二つばかり関連してお尋ねをしておきたいと思います。  大蔵大臣も先般四月八日にG5に出席をされたわけですが、ここではいわゆる為替レートの是正から安定、さらには協調利下げ、こういったことが話し合われたわけでございますが、ずばり、サミットの前にこの公定歩合第三次引き下げを断行されるのかどうか、もう日限的にもそうございませんので、大臣の御見解をひとつ最初にお伺いしたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 先般、G10の方が主体の正式な会議でございましたが、今おっしゃいますような為替の問題、世界経済の問題あるいは利下げ問題等が話し合われたことは御指摘のとおりであります。ただ、元来中央銀行というのは政治の恣意に左右されないというプライドと申しましょうか、ございますので、いわば経済政策協調の中で結果として協調的な利下げが行われるということで、各国の独自性というものを主軸に置いていらっしゃいますから、いわゆる協調利下げということは特に中央銀行のお方は言葉に出すことを控えられます。  それからもう一つは、サミット前とか後とか、これも政治課題でございますから、心でどう思っていらっしゃるかは別として、その点は発言は非常に慎重でございます。しかし、ロンドンのG5で確認しましたように、お互いが、インフレ率日本、西ドイツみたいに大変低いという状態でないにしても、他の国も今までよりはインフレ率が随分下がってきておる、したがって、利下げ環境は整っておるというのは、依然としてロンドンG5以来持ち越してきておる共通認識でございます。したがって、あくまでも中央銀行同士がいろいろ連絡されて、権限が日本銀行にございますのでおやりになることでございますから、私から余り予見めいたことを申し上げるわけにもまいらないと思います。  ただ、一月三十日、その次が三月十日からさらに〇・五%の引き下げが行われたところでございますし、そうして預貯金金利及び短期プライムレートにつきましても三月三十一日から同幅引き下げられたということ、それから、政策金融でございます中小企業対策と住宅金融公庫とは先日の八日からそれが引き下げられたということでございます。そういう状態でございますので、きょうとかという状態では必ずしもなかろうと思いますが、それらの推移を見ながら引き続き景気、物価、為替相場内外金融情勢等を総合的に勘案して機動的に対処していかれるのではなかろうかと思っておるところでございます。  ただ、その後また御議論いただかなければいかぬ問題は、例えば普通預金は〇・五になっております。仮に将来いろいろ連動した場合に、いわば預け賃を出さなければいかぬような、そんなことも勉強課題としてはいろいろ勉強しておく必要があるのかな、こういうような気持ちでございます。
  5. 中村正男

    中村正男委員 まだかなり慎重な御発言なんですけれども、十日、お帰りになったその日の連合審査でのお答えに比べますと、ちょうど日米首脳会談も終わった直後でありますし、かなり今の内容は、ほぼサミット前に何らかのといいますか具体的に実施がされる、我々としてはこういうふうな感触としてお聞きをしたというふうに申し上げておきたいと思います。  そこでいま一つ、これは素朴な疑問なんですが、今回のG10あるいはG5の会議で、ここまで、もう百七十円台まできている、むしろ日本側としては安定を希望するのに、しかし、まだまだイギリスを初めさらに円高に向かうべきだというふうな意見が強いような、そんな感じを受けているわけですね。これは一体、まだこれでも日本国際競争力は強過ぎるのか。もうそろそろこの辺で余り厳しいハンディをつけなくてもいいんじゃないかというふうに思うのですが、大臣のお考えをお聞きをしたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 きょうの寄りつきが百七十八円六十五銭で、ちょうど今が百七十九円十五銭、こういうようなことになっております。これは御参考のためにでございます。  私どもお互いが、いわゆる一つのターゲットを発表するということは差し控えるというのが共通認識になっております。何しろ為替相場の安定は重要であって、しかもその変化もなだらかでなくちゃいかぬ。先般まで、私もなだらかだとは思っておりません。したがって、この為替相場の安定ということが重要であることは共通認識としてあるわけでございますが、G10会議の席上でイギリスのローソンさんが、別にもっと円は高くてしかるべきだと申したわけじゃございませんが、伝えられる報道によれば、その後そんなことも言っていらっしゃるという話は私も聞いております。  ただ、この問題は、いろんな角度からおっしゃる方があって、例えば購買力平価でいえばどれぐらいだとか、それから、いわばこれだけで貿易収支を補おうと思えばこれぐらいになるとか、そういうような議論はよく学者さんや研究所でもなさる議論でございますけれども、あくまでもこの問題は市場が決めるべきものであって、したがって主要国は、市場が適正なファンダメンタルズを反映するような政策調整を行って、そして相互監視を行って、なお必要と認める場合は介入をしていく、こういう原則は変わらないと私は思っております。  ただ、私どもも気をつけなければならぬと思いますのは、確かにイギリスのポンドは、日本の円に比べますと、ここのところ対ドルは日本ほどはもちろん強くなっておりません。これは石油の出る国になっておりますから、それの価格が下落したというのはやはりそれは響くでございましょう。が、総体的に安定が望ましいことだ。  私も偶然な機会に、この日曜日に岐阜県の多治見、陶磁器の産地、全国の二〇%ぐらいでございましょうか、それから関、関係六さんの出たあの刃物の、あそこは全国の八〇%ぐらいでございますか、参りましたら、それは実際円高のデメリットを一番早くもろに受けていらっしゃるという実情は肌で感じさせていただきました。そういう背景から見ますと、もちろん急速なものであってはならぬし、私どもにも、政治的配慮からすると実際問題いろいろな思いが浮かびます。  ところが、ベーカーさんに言わせれば、あなた、そういう点で批判を受けるかもしらぬが、我々は自国の通貨の価値を落としたじゃないか、この方がもっと大きな批判を受ける対象だよ、こういうふうな意見交換は、茶飲み話も含めていたしておりますけれども、私も、現状においてという言葉を使いますとまた相場感が出ますものですから、一般論として、やはり安定していくことが好ましいということでお答えのおおむね限界とさせていただいておるということでございます。
  7. 中村正男

    中村正男委員 ぜひひとつ、もう本当に安定という図式に持っていっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  いま一つの問題は、この春の賃金交渉の問題について、もちろん大蔵大臣主務大臣ではないと思いますけれども財政当局責任者でもありますし、一、二お尋ねをしておきたいと思います。  一つは、昨年と比較をいたしまして、今日現在ほぼ民間は収束の方向にあるわけですし、その大手数字も出ておりますが、鉄鋼の二・六六%、昨年は三・八七%ですが、軒並み前年を下回っております。率にいたしまして約一%前後下がっておるというのが実情でございます。  そこで、これから内需拡大というのが大変至上命題になってくるわけです。政府もかなりこの援護射撃をしておられたように思うわけですけれども、こういった数字民間大手決着をしますと、大体まあ相場は固まってしまうわけですが、現在のこの数字について、内需拡大との関連で、とりわけ税収に及ぼす影響、そのあたりをどういうふうに見ておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 申し上げる原則からいいますと、経済発展の成果を踏まえて賃金等に適切に反映させることは大変重要なことである。したがって、具体的な賃金交渉はあくまでも労使間の自主的な話し合いで決定すべきものであるということが原則でございます。したがって、俗に言う春闘相場等政府が言及するということについては差し控えさせていただきたいということを平素から申し上げておるわけでありますが、だんだん出そろってまいりまして、恐らく中小もこの数日で大体出ていくのかなというふうな感じを持っております。おっしゃいますように、昨年に比べますと一%程度下回るような感じ、現在の段階で私もそのように見さしていただいております。  そこで、それが税収に対してどうなるか、こういうことになりますと、今までいろいろ積み上げてきたわけでございますが、この春闘動向と最も密接に関連を持つと考えられますのは給与所得に係る源泉所得税でございます。その税収動向を左右する要因は、春闘で決定された定期給与水準はもちろん、しかしそれのみでなく、その上に今後の景気動向の中で所定外の労働時間、ボーナスがどうなっていくか、あるいは雇用情勢等動向もあると考えられますので、春闘の結果の税収に対する影響ということを具体的に申し上げることは非常に困難な問題だというふうに私も承知いたしておるところでございます。  が、いずれにせよ、このいろいろな動きの中に、各業界も今までと違いまして、トップバッターがかつては重厚長大から出ていってというようなことが若干変化して、場合によっては第三次産業とかいろいろなところから、従来の春闘のスケジュールという言葉があるかどうかは別といたしまして、若干変化しながら今動きつつあるのではないかというふうに見ております。
  9. 中村正男

    中村正男委員 所定外の収入あるいはボーナス動向がこれから定まってくるので今何とも言えないということですけれども、春の賃金交渉がこの水準決着を見るということはこの一年間勤労者所得というのは大幅に減る、これはもうはっきりしておるわけでして、そうなれば当然これは税収にも大きな影響が出てくると思います。そういうことと、さらにまた内需拡大に向けての個人消費の持つウエート、個人消費春闘の結果一体どうなっていくのか、かなり冷え込んでくると私は思うのですが、そうなると、いよいよ減税という問題が大きな選択肢としてどうしても避けられないと私は思うのです。日米首脳会談でも、レーガン大統領減税のアメリカの経済に及ぼした影響というのを中曽根総理にお話しになった。暗に日本減税に踏み切れというふうな指摘だと私は思うのですね。  そこで、与野党が今協議を続けておりますけれども、これはまだ一向にらちが明かないわけです。この委員会でもしばしば出されておりますが、こうした状況から戻し税という方式もあるじゃないか、そういった点で、これは大臣として踏み込んだお考えをぜひひとつお聞きをしたいと思うのです。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一つ、私ども政府としての背景あるいはどういう縛りがかかっておるか、こういうことになりますと、政府税調昭和六十一年度税制のあり方については、いわゆる抜本改革が今税調で諮問され作業が行われておるときだから、根幹には触れない範囲内において対応すべきだ、この税調答申に基づいて先般来税法等の御審議をいただいた。そこで、もう一方ございますのが、幹事長書記長会談におきまして、政策減税二つに分けてではございますが、年末までに結論を得る、こういう申し合わせがある。これはいろいろな見方がございますが、さすが税調審議というのも横目でにらみながらお考えになっているのかなと思ってみたり、そしてそれに対しては、どういう作業が行われるにいたしましてもお手伝いはさせてもらわなければいかぬのだという立場にあるわけでございますが、政府としての現在の縛りの中において、今その根幹を動かさないという限りにおいて、戻し税というものを考え環境には政府としてはないとお答えをせざるを得ません。  それからもう一つは、これは私もよく話を聞いたわけではございませんけれども、いわゆるレーガノミックスに対する評価、これもまたいろいろあるところだろうと思います。ある種の景気浮揚に役立ちましたが、それが膨大な財政赤字を生んだという面から、評価する人もおるでございましょうし、あるいは、あの段階におけるレーガノミックスというのは確かに効果があって、それによってまた日本の輸出がますます伸びてというような結果にもなっておりますが、これはいろいろ評価があるところであろう。私の方からレーガノミックスに対する批判を含めた評価はまだそれほど勉強してない、こういうことでございます。
  11. 中村正男

    中村正男委員 春闘の問題、あとは公企体労働者賃金の改定ということになるわけですが、内閣でもってぜひひとつ十八日に有額回答をできるような早急な結論をお出しをいただきたいということを要望いたしまして、この質問は終わっておきたいと思います。  本題補助金の問題に入るわけですが、実は二、三日前、私の地元の市議会から意見書が参っております。大蔵大臣にお読みを申し上げますので、ぜひお聞きをいただきたいと思うのです。   地方自治体に対する一律補助金カット反対に関する意見書  政府は、昭和六十年度政府予算において、国庫補助金等補助率一律削減等を行い、地方財政危機は一層深刻化した。  さらに、昭和六十一年度予算編成に当たり、引き続き削減の意向を打ち出したため、本市議会は昨年十二月十七日に「国庫補助金削減による地方負担転嫁反対地方財政危機打開に関する要望決議」を満場一致可決し、関係行政庁に送付したところである。  しかるに、政府は「一年限り」と確認されてきた地方自治体に対する一律補助金カット昭和六十一年度以降も引き続き三年間強行しようとしている。  よって、本市議会は国の財政赤字負担地方自治体に転嫁する一律補助金カットに反対し、速やかに撤回されるよう強く要望する。  以上、地方自治法第九十九条第二項の規定により意見書を提出する。   昭和六十一年三月二十八日            枚方市議会議長                漆原 一義こういう意見書でございます。  自治省お尋ねをいたしますが、三月市議会あるいは町村議会、もうほぼ終わっておると思うのですが、この補助金一律削減に反対する意見書、今日現在どの程度の数の市町村で決議をされておるのか、ちょっと数字ないですか。
  12. 持永堯民

    ○持永政府委員 そういう決議が行われていることは承知いたしておりますけれども、具体的にどの程度の数ということについては、突然のお尋ねでもございますので、今掌握いたしておりません。
  13. 中村正男

    中村正男委員 これはきのうちょっと自治省に質問の内容をお話ししたときには申し上げてなかったのですが、これは簡単に数字が出ると思うのですね。今現在自治省に来ておるこういった意見書の数だけでも結構ですから、できましたら私の質問時間中にちょっとお調べをいただきたい、こう思います。  そこで、まず、こんな言葉があるわけです。厚生省にお尋ねをしたいわけですけれども、防衛費をふやすと子供たちの死亡率が高くなる、これはハーバード大学の医学者たちが百四十一カ国の統計的な分析から主張をされておるわけです。これはどうしてかといいますと、当然のことながら医療費あるいは福祉費、教育費に回すべき予算がその分削られるからである、平たく言いますとこんなことになるわけですが、日本の乳児の死亡率、五十八年度で世界一になっております。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  日本の防衛予算が急速に伸びてきた、そのことと相まってこの統計を裏づけておるのではないかというふうに私は思うのです。  そこで、厚生省の六十一年度の予算編成過程を少し振り返ってみますと、当初当然増経費が一兆五千億円ぐらいと言われておったわけですけれども、最終的には二千六百九十三億円の増にとどまったわけであります。そこで、この間一兆五千億円から二千六百九十三億円に減らされた内容を見てみますと、第一には老人保健法見直しによる補助金削減が千九百億円、高率補助金負担率カットで二千三百億円、政管健保への国庫負担削減で一千三百億円、医療費の適正化等で一千三百億円。しかし、この一兆五千億円当然増経費というのは六十年度に対しての額でありまして、いわゆる負担率のカットされる前の五十九年度と対比をして見てみますと、これはさらに大きな削減幅になるわけです。児童保護措置は六十一年度の最終予算が三千五百八億円になったわけですが、十分の八の負担率からすればさらに削減幅はふえて二千百五億円の削減になっています。  この形で生活保護費を見てみますと千五百八十三億円の削減、老人福祉保護費で一千四十億円の削減、児童家庭局、社会局、合計で約五千四百億円の削減になります。また、国保の助成金、療養給付等の補助金、財政調整交付金をもとの四五%の補助率で見てみますと、これまた三千四百億円の削減。社会保障あるいは社会福祉にかかわる予算が極めて大幅に削減をされております。こうしたことに対して、厚生省は基本的にどう受けとめておられるのか、これが第一点。  それからいま一つは、ことし、六十一年度でももうこれだけの削減がされた。さらに六十二年度は、私はもう予算の組みようがないと思うのですね。一体どう考えておられるのか。この二つお答えをいただきたいと思います。
  14. 末次彬

    ○末次政府委員 六十一年度の厚生省予算につきましては、委員指摘のとおり概算要求段階で一兆五千億程度というふうに当然増を見込んだわけでございますが、最終的には二千七百億程度の増加となったわけでございます。これは本格的な高齢化社会の到来に加えまして、制度の長期的安定を図るという見地から老人保健制度の改革などに取り組みます一方、大変厳しい財政事情のもとでございますので、厚生年金国庫負担の繰り延べなど、事業運営に支障を生じない範囲でいろいろ財政上の工夫をした結果でございまして、その結果として社会保障の実質的水準は何とか維持することができたというふうに考えておる次第でございます。  また、六十二年度につきましては、厳しい財政事情がまだ続くというふうに考えておりますが、この数年間ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングといった大変厳しい概算要求基準が設定されまして、厚生省予算につきましても大変困難な予算編成を続けてきたことは事実でございます。また、来年度につきましても現段階では大変不確定要素が多いわけでございまして、今の段階でまだ何とも申し上げられないわけですが、今後の人口の高齢化等を考えますと、相当規模の当然増が生ずるということは考えられておりまして、従来のような方式で予算編成を行うことはさらに一層困難になるのではないかというふうに考えております。  しかしながら、社会保障水準は今後とも維持していかなければならないというふうに考えておりまして、そのための具体的方策につきましては、予算編成のあり方も含めまして関係当局とも十分相談しながら、幅広い観点から今後検討を慎重に進めていきたいというふうに考えております。
  15. 中村正男

    中村正男委員 社会福祉の水準は絶対落としてはならない。しかし、極めて厳しい六十二年度の予算編成になるだろう。幅広い観点から、こういう答えなんですが、幅広い観点と言うのには、厚生省の考えておられる何らかの案というものが今現在あるのですか。
  16. 末次彬

    ○末次政府委員 六十一年度予算が成立したばかりでございまして、これから六十二年度の予算編成についての検討をする段階になったばかりでございまして、現在のところはまだ確たる案というものを持っているわけではございませんが、こういう情勢でございますので、従来のやり方にとらわれないようないろいろなやり方をこれから検討していきたいというふうに考えております。
  17. 中村正男

    中村正男委員 大蔵大臣に基本的な点でお尋ねをしたいと思うのですが、昨年突然として一律一割カットをやった。大変な混乱と、地方自治体から国に対する不信がわき上がったわけでありますが、とにもかくにもそれを承知で去年は断行された。そして、さらにことしから三年間続けよう、こういうことなんですが、このことは国の財政事情が悪化をしたから、連合審査でもずっとそういう論議が続いてきたわけですね。ということは、「増税なき財政再建」、これを遂行していくためには国のやらなければならぬ負担を地方に転嫁するのはもうやむを得ない、そういうことからこれをやるということなのか。その辺のひとつ基本的なお考えをお聞きをしたいと思うのです。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 国と地方は、いずれにせよ公経済の車の両輪である。したがって、両輪が巧みに回っていかなければならぬ。したがって、私ども気をつけなければいかぬのは、公債の発行額でございますとかあるいはそれの残高が幾らあるかとか、あるいは建設国債は国も地方もともにあるとしても地方には赤字公債はないではないかとか、そういう比較をしたいわゆる地方富裕論というものにくみしてはならぬと私は思っております。これはまさに車の両輪で、これはよく冗談話で申しますが、貧乏度合い率というものでもあれば比較になるかもしれませんが、富裕論にくみするというような考えに基本的に立ってはならぬというふうにまず思っております。  そこで、年々やってきましたことを考えてみますと、もう一般財源化した方がいいではないかとか、これは補助対象から外して一般財源の中へ入れるとか、いろいろなことを工夫し、苦心してやってまいりました。六十年というのは、なかなかもう予算が大変だが、ちょうど全部が一割ではございませんでしたけれどもアバウト一割カットということでお願いし、そのかわり個々の事業分担、費用負担のあり方は一年かかって基本的な勉強をさせてくださいということで、まさに一年限りの措置としてお願いをした。  それから第二段階の今回の問題というのは、もとより国と地方の財政事情を度外視して議論するものではございませんけれども、身近な問題からは可能な限り地方の自主性が生かされるようにしていこう。それで、やはりこれだけは国の責任でやるべきものである、例えば生活保護について掘り下げた議論をしていただいた。それで、昨年と違いますのは、補助金問題の閣僚会議を設け、村長さんも市長さんも知事さんも一緒にお集まりいただいて検討会を設けて、それぞれを深く掘り下げていただいた。したがって、これは事業の見直しと、権限委譲等ももちろん含めてでございますが、費用負担のあり方ということで一応論理性のある掘り下げ方を検討会でしていただいた。それを受けまして閣僚会議で決めたわけでございます。  ただ、御案内のとおり、社会保障なかんずく生活保護の点については、刻みを大体二分の一から三分の一のもの、三分の二のものとし、十分の何ぼというのは皆やめて簡素化された税率という中へいろいろはめ込んでいこうという考え方の三分の二、それから五十九年以前の十分の八であってしかるべきだという、これだけはいわば両論併記という形で報告をちょうだいいたしましたので、政策選択の過程において議論いたしまして、中を取ったという意味ではありませんが、されば六十年度に行わせていただいた十分の七というのでそれじゃお願いしようじゃないかという結果になったわけでございます。  財政事情を全く念頭に置かないで議論したものではございませんが、あくまでも事務事業のあり方と費用負担のあり方についての掘り下げた議論の中で出していただいた報告に基づいたものであるということにおきましては、昨年の措置とはかなり基本的に違ったものではなかろうかというふうにお願い申し上げているところでございます。
  19. 中村正男

    中村正男委員 大臣がいかようにお述べになっても、国の財政事情、何としても財政再建をやらなければいかぬ、そういう観点で見てみると補助率に手をつけるしかない、こういう受けとめ方ではないのかということを率直に申し上げておきたいと思います。  基本的なことでいろいろお答えをいただきたいところがあるのですが、時間も制約されますから、おいおい具体的なことに入っていきたいと思います。  そこで、今回の補助金ですが、関係閣僚会議、検討会ということで、精査してこの結論になった。三年間の暫定とはいえ、今の補助金全般について一応十分見直した、こういうことになっているのですが、果たしてそうなのか。連合審査でも、整理統合化を図れだとかメニュー化の問題だとか、要らない補助金がまだあるじゃないか、さらには一般財源化を進めるべきだというふうな具体的な指摘がたくさんあったのですけれども、そうした論議から、一応整理する意味で全部の補助金をここで見直したということなのか、それから今後どういう形でこの補助金全体について検討していくのか、その場合国と地方が対等の立場で協議していかなければならぬと思うのですが、そういった方策、今後の補助金についての検討のやり方について、大蔵当局としてはどういうことをお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  20. 保田博

    ○保田政府委員 お答え申し上げます。  今回御提案申し上げております補助率一括法の中身としまして、社会保障を中心として事務事業の見直しをしながら、それを踏まえて補助率の総合的な引き下げを行ったわけでございます。それが今回の法案の主体でございますが、六十年度予算編成及び六十一年度予算編成におきましては、御指摘のように今回の法案の中身となったもの以外のいわゆる補助金負担金等につきまして、いわば徹底的な見直しを行ったわけでございます。予算編成の事務量のうちの非常に大きな部分をこれに充てたと言って間違いないと思うわけでございます。その結果が今回御提案申し上げたような法案になったわけでありますけれども、この法案の中身にならなかった補助金負担金の見直しも行ったわけでございます。  その結果としまして定型的に補助率引き下げ対象の除外となったものを若干申し上げてみたいと思いますが、一つは国庫債務負担行為の歳出化等で既に国の負担が確定されているもの、これは変えるわけにいかないじゃないかというのが除外の類型の第一であります。第二に、負担率、補助率みたいな感じで十分の十などというような数字で書いてあるわけでございますけれども、そもそも負担割合あるいは補助割合といったような概念がないのじゃないかというようなもの、例えば国有提供施設等所在市町村助成交付金といったようないわば定額補助のようなもの、これについては第二の類型として補助率引き下げの対象とはしなかった。それから、地方財政法の第十条の四に相当するいわば専ら国の利害に関係のある事務班業、例えば国民健康保険事務費補助金といったようなものは除外の第三類型でございます。それから、諸般の事情を考慮しまして引き下げの対象外としましたものに、例えば同和とかウタリといった地域改善関係のものがございました。その次に、災害あるいは災害関連事業といったようなものは、今回の対象から除外させていただいたわけであります。  今後の補助率あるいは補助金の見直し、その方針はどうかという第二点の御質問でございますけれども、御承知のように、補助金負担金というのは、国の施策を全国的に一定のレベルに保つあるいは奨励、助長といったような観点からしましても非常に大きな政策手段ではございます。しかしながら、同時に各方面からいろいろな弊害も指摘されておりますので負担の見直しは続けていかなければならない。その際、地方公共団体等から一般財源化あるいは主として事務手続の簡素合理化といったような観点から指摘を受けております零細補助金の廃止、統合メニュー化といったようなことは、今後とも徹底的に実現しなければならぬ。補助金の整理合理化というのは、我々としては今回をもって終わりとすることではなくて、将来とも、いわば永遠の課題であるというふうな心構えでおるわけであります。  されば、今回の補助金検討会にかわる新たな審議会等を設けるのかどうかというのが第三の御質問かと思いますけれども、今回の検討会の御勉強の結果、いわば今後の補助金負担金についての大きな検討の方向はこれを御指摘いただいたと思っておりますし、その方向に沿って我々は今後ともその努力をしたいと思っておりますので、現在のところ、改めて新しい審議会等を設けるということまでは考えておりません。
  21. 中村正男

    中村正男委員 三月五日の朝日新聞の社説にいわゆるこの問題が取り上げられておるわけです。表題は、渡辺通産大臣の例のも針発言をタイトルにいたしまして「釣りばりのエサを考える」、こういうことなのですが、要は、今回の補助金削減というのは、いわゆる社会保障、社会福祉、教育関係、言ってみれば選挙の票田にならないそういうものに集中しているのじゃないか。もっともっと不要不急、さらにはもう必要のない補助金がたくさんある。しかし、それをいろいろつけた背景には、とりわけ政治絡みの補助金がたくさんあるじゃないか、こんな指摘なのです。  これはいささか古い資料でございますが、実は三年前に今の全民労協、これは民間労働組合でつくっております中央組織でありますが、この組織が、いわゆるこの組織内部の各都府県などの議員、約六百名おられるのですが、それぞれの都府県単位あるいは市区町村で、この補助金行政についてどういう見方をしておるのかアンケートをとられたわけですね。  それを見てみますと、廃止すべきものの事例として実にたくさん、議員自身が挙げておるわけです。きょうは中身のそれぞれについて申し上げませんけれども、例えば農水関係では、十三ばかりの項目は今すぐ廃止をしても何らそれぞれの市町村にとって悪い影響は出ない、むしろ、あることによってのみ手続の問題あるいはその申請にかかわる経費、大変な労力が要るのだ、こういう指摘なんですね。  したがって、切りやすいところから切るということではなしに、本当の意味の行革を進めていくというのであれば、むしろそうした政治絡みの補助金をぜひひとつ徹底的にやってもらいたい、またやっていくべきだ。票田と目されるそういった補助金には手をつけないというのじゃなしに、大胆に踏み込んでいただきたいということを私は指摘をしておきたいと思います。  次に、今度はこの取り扱いであります。四十八本一括して出されてきたわけですが、いささか乱暴ではないかというのが連合審査を通じての指摘であったと思うのです。河川法、砂防法と老人福祉法、児童福祉法を一緒くたにする、そこには明日香村も入っているというふうなことで、この福祉と公共投資というのは全く性格と条件が違うわけですよ。それをなぜ一緒くたにされたのか。しかも、福祉というのはやめるわけにいかぬわけですね。なぜそういう一本でもってやってこられたのか。せめてこの福祉関係だけでも大きく区分けをして出さなかったのか。そうしたことをすればより福祉切り捨てが特化する、あるいは鮮明になってくる、それをカモフラージュするためにこうしたごちゃまぜの四十八本一括法案というふうな取り扱いにされたのではないか、こういうやっかみまで出てくるわけですね。そのあたり整理をしてちょっとお答えいただきたいと思うのです。
  22. 保田博

    ○保田政府委員 幾つかの法律をまとめて一本の法律で国会に法案を提出し、御審議をいただくということにつきましては、過去いろいろ御批判もございましたし、昨年の補助金一括法のときに附帯決議がつけられたということも我々よく承知をいたしておるわけでございます。  それで、法制局の見解によりますと、幾つかの法律を一本の法案に一括するに当たっては、二つの基準があると言われております。その第一は、法律案に盛られた政策が統一的なものである、共通の性格を有しておる、その結果としてその趣旨、目的が一つであるということ、それから第二の基準は、各条項が相互に関連して一つの体系を形づくっている、その二つの基準のうちのいずれかを満たす場合にはこれを一本の法案とするということは許されるのではないかというふうに考えられておるようであります。  その例は過去においてもしばしばございましたし、むしろ一本の法律にする方が立法の趣旨、目的がかえって明らかになる、措置の全体を総合的に把握することも可能になるのではないかといったようなことでございます。その結果としまして、国会の御審議にもむしろプラスではないかというふうな見解があるようでございます。  今回の補助金特例法において措置されておる事項は、先生御指摘のように社会保障の関係が非常に大きいわけであります。それからもう一つのグループは公共事業の関係でございます。しかし、いずれにいたしましても、これらの事項は、まず第一に、最近における財政事情及び累次の臨調答申等の趣旨を踏まえて行われる財政上の措置でございます。それから、国の補助金負担金等について行われる措置である。それから第三に、財政資金の効率的使用を図るために行われる措置でございまして、財政収支の改善に資するものであるという意味で共通の性格を持つ。その趣旨、目的が一つであり、一体をなしているということから、一本の法案として御提案を申し上げたわけでございます。
  23. 中村正男

    中村正男委員 しかし、お聞きをしておりますと、やはりかなり苦しい、余り説得性のないお話じゃないか、こう私は思うのです。  そこで、財政上の措置という言葉があったのですが、以下、具体的な幾つかの問題点を指摘をしてまいりたいと思います。  この財政上の措置ということで見てみますと、検討会で補助率のあり方の考え方が提起をされた。しかし基本的には、私が先ほど来申し上げておりますように、今回の措置というのは国の財政事情というものをベースにして見直しが行われたというふうに私は思うわけですね。国と地方の事務配分といわゆる税の再配分というものを完全に明確にしないまま、財政事情から国の自由裁量で補助率の変更が行われたということは、基本的には国と地方の財政秩序そのものを崩壊さすことになるのじゃないか、こういうふうに私は思うわけですが、どうでしょう。
  24. 保田博

    ○保田政府委員 今回の補助率の総合的な見直しといいますか補助金の総合的な見直しは、そのきっかけがもちろん国の財政事情にあるということについて否定するつもりは毛頭ございません。  しかしながら、補助金につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、かねてからいろいろな面での御指摘もございまして、その補助金が設定されて以後総体としていろいろな社会経済情勢も変化をしておる、それから国と地方の間のいろいろな意味での役割分担についても見直していい時期ではないか、それから国と地方との間の財政事情も非常に大きく変化しておるのではないか、そういうことを一方で幅広く検討をするという要請が非常にございまして、それらの見地からの補助金についての総合的な見直しを行いながら個々の事務事業について執行の仕方あるいは性格づけ等を総合的に検討させていただいたのが今回の御提案申し上げております法案の内容をなしておる、こういうことでございます。
  25. 中村正男

    中村正男委員 そこで、この事務事業の見直しをやった上でそれぞれの補助率の具体的な考え方を出したんだ、こういうことなんですが、果たして今回の検討会の作業でそれぞれの事務事業の行政責任が一体明確になったというふうにお考えなのか。国と地方のいずれがそれぞれの問題について最終的に責任を負うのか、国民の側からしますとそのことが明確になったというふうにお思いなのか。自治省でしょうか、お尋ねをしたいと思います。
  26. 持永堯民

    ○持永政府委員 事務事業の見直しの内容が明確にされたかどうかというお尋ねでございますが、検討会の報告にございますように、例えば児童福祉等につきましては入所措置は団体委任事務に変更する、あるいは施設の最低基準なり費用微収基準も簡素合理化を図るというような指摘がされておりまして、これを受けまして具体的には厚生省の方で御検討いただきまして、必要な手続を踏んで制度の改正をするということになろうかと思います。  そういうことで、現在団体委任事務にする点につきましては、別途権限移譲なり機関委任事務の整理のいわゆる一括法で御審議をお願い申し上げておるところでございますし、またいろいろな基準等については省令等で決まる問題もございますから、そういったものはこの法律が成立した後に恐らく政省令も必要な改正をする、その上で地方団体に対しましても当然制度の改正の内容を所管省から十分徹底いただき、かつ広く国民にも周知徹底を図るというようなことになるのではなかろうかと思っております。
  27. 中村正男

    中村正男委員 二つ目の問題は、最終報告書でも両論併記になりました生活保護費の問題ですね。今後、大蔵、自治、厚生それぞれの間で引き続き協議をしていくということで、当面十分の七がそのまま据え置かれたということなんですが、私は、この所得保障的な社会保障というものは一〇〇%国が負担すべきものだ、これがもう大原則だと思うのです。そのことについて厚生省と自治省お尋ねをするわけです。  そこで、基本の考え方が当初から本則でも十分の八になっておった。本来一〇〇%保障すべきものをなぜそういう形にしているのか。これは私の見方では、一〇〇%国が保障するということにいたしますと、執行する側の自治体側に厳しさが欠ける、したがって自治体にも負担をさせる、これが背景にある考え方だと私は思うのですが、それは合理的な根拠とは言えないのじゃないか。だから、今回の補助率引き下げ以前の問題、基本的な問題として厚生省、自治省はどういう見解をお持ちなのか、お尋ねをしたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、笹山委員     長代理着席〕
  28. 持永堯民

    ○持永政府委員 従来から生活保護については御案内のように地方団体も二割を負担し、現在は三割、こういうことになっておるわけでございます。  なぜ地方が負担するかということでございますが、仕事の性格としては、御指摘ございましたように国がやはり責任を持って行うべき事務であろうというふうに考えておりますが、一方で、地方団体としても、その管内の住民の問題でございますから、管内の住民の保護、あるいは生活を守るということについてはそれなりの責任なり関心を持ってもしかるべきであろう、そういう観点から生活保護の事務を地方団体の長に機関委任事務という形で委任をし、かつ経費の一部を地方団体が負担をする、こういうことに相なっておると理解をいたしております。  今お話ございましたような点でございますけれども、私どもはそういう考え方は持っておりませんが、仮に万が一そういうことだとしても、それはあくまで付随的な問題でございまして、基本的にはやはり地方団体としての責任を、所管の住民でございますからそういう責任を全うする、国と地方の責任を分かち合うという観点からこの負担が決まっておるものというふうに理解をいたしております。
  29. 小島弘仲

    ○小島政府委員 大筋自治省からお答え申し上げたとおりでございますが、生活保護は国民の生存の基本権ということで最も重要なことだと考えております。したがって、それが適正に、円滑に行われるように国が本当に責任を持たなければならぬのは御指摘のとおりだと考えております。  法制定当初から、議論としては国が十割持つべきだとかいう議論も確かにございました。ただ、これにつきましては、今自治省から申し上げましたように国が最終的に責任を持つにいたしましても、地方公共団体も地域住民の生活保護ということについての責任も当然ある問題だと考えております。これは福祉も同じでございます。また、地方財政法の十条の規定におきましても、国と地方公共団体の相互の利益に関する施策というものの中に挙げられていることでございます。したがいまして、それにつきましては、そういう観点から地方も応分の負担を持ってもらうという形が一つあってもそれはしかるべきであろう。  先生御指摘のように、適正化の努力を担保するために持たせるか。そういう見地がないではありませんが、自治省から申し上げましたように、それはあくまでも付随的であって、やはり基本は国と地方がどう責任を持ち合うかということが一つの大きな目安になろうと考えております。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 中村正男

    中村正男委員 その分かち合うということを拡大解釈していけば、十分の八に戻るどころか、十分の七がさらに二分の一にまでいってしまうのじゃないか。だから、やはりこの所得保障的なものは国がきちっと責任を負うという原則は外してはならないと私は思うのです。分かち合うというのは、自治体の側は、それこそみずからの住民でありますから、十分手当てをし、面倒は見ていかなければいかぬわけですけれども、財政的な裏づけはあくまでも国だ、このことだけはきちっとしていただきたい。そうしなければ、受給者にとっても、国と自治体両方から財政面で二重の規制を受けていくことになるのではないか。受給者の側からは、自治体に対しては面倒を見てもらっているな、こういう気持ちの面での接点といいますか、財政的にはあくまでも大きな意味の国という形で私らの生活は保障されているのだ、そういう区分けというものを踏み外してはならぬということだけを申し上げておきたいと思います。  三点目は、社会福祉関係の運営費の問題。この運営費が十分の八から二分の一になった。これこそ分かち合うためにということで機関委任事務から団体委任事務になったわけですが、しかしこの問題は、私はそれぞれの地方自治体の具体的な財政に大変大きな影響を及ぼしていくと思うのです。それは今日、それぞれの社会福祉関係の運営費については、いわゆる措置基準があって措置費が決められている。しかし実態という面では、なかなかこれでは十分なといいますか、地域住民からのニーズにこたえることはできない。当然超過負担というのが恒常化している。これが私は実態だと思うのです。  その問題について、超過負担というものはやむを得ないというふうな判断に立っておられるのか。なぜそういったものが生じるのか。本来それはもう必要ないんだ、国の基準で十分なんだというふうなお考えなのか。まず厚生省の方からお尋ねをしましょうか。
  31. 小島弘仲

    ○小島政府委員 先生御指摘の超過負担というものの内容は、二つあろうかと考えております。  一つは、厚生省が考えております社会福祉施設の運営といたしまして、これだけの設備があってこういう資格の人をこれだけ置かなければ適正な運用ができませんという意味でその基準を定めておりますが、それらの設備をつくり、しかもそれだけの人を置いておくにはとても措置費では足りないという場合に出てくる超過負担一つあろうかと思います。第二点は、国が示しました運営基準を上回った職員を配置している、そういったものを超過負担、これは超過負担と言っていいのかどうか、問題はありますが、この二つがあろうかと考えております。  前者については、これが超過負担を生じないようにしていくのが国の当然の責務だと考えておりますし、これは実態を見ながら常にそれに超過負担が出ないような配慮をしているところでございます。  第二点につきましては、これは地方公共団体独自の御判断でおやりになることであって、決してそれはやってはいけないということを申し上げる筋合いのものでないと考えますが、それについてまで見るということにはちょっと問題があろうかと考えております。国の基準としては、本当に福祉として適正な水準が保たれるものであるような基準をつくり、それを担保するような措置費を確保していくということが第一義的な国の責務だと考えております。
  32. 中村正男

    中村正男委員 私は、後の方も、結局国の基準では十分な福祉行政ができないということからやむなくそれぞれの団体がおやりになっていることであって、決して余計なことではないというふうに思うのです。  具体的な事例で申し上げますと、例えば保育所に例をとりますと、ゼロ歳児から二歳児、こういった保育の関係では、たしかいま六、一の配置基準になっていると思うのですね。しかし実態は、私の住んでいるところでは三、一の実態でやっている。保母さんの勤務時間にいたしましても二時間はどうしても前倒しで出てきてもらわないことには十分な保育ができない、こういう実態になっているわけです。これは何もぜいたくないわゆるあり余る福祉ということではなしに、それでもなおかつまだ十分でない、そういうところがあるわけですね。ですから、前の方の超過負担についてはこれはなくすようにしなければいかぬ。しかし、地方自治体がおやりになっている余分な福祉は、それはもうというふうなことでは私はどうかなというふうに申し上げておきたいと思うのです。  この補助率の変更というのは、そうした超過負担問題ということが国と地方との間で十分話し合われて、それが解消された後この補助率の変更に入っていくのが筋じゃないかと思うのですが、その辺の、去年強行してそのままことしずっとこれをやろうとしているわけですから、そこらあたり自治体側は何が何でも押し切られたという印象なんですね。どうなんでしょう。
  33. 小島弘仲

    ○小島政府委員 施設の基準につきましても、これは将来にわたって不動のものではございませんし、先生御指摘のようにそのときの社会情勢あるいは処遇技術の進歩というようなものとかみ合わせて、それは常に見直しを必要とするものだと考えております。国の基準といたしましては、やはり全国一律の制度として基準は考えていくべきだと思っておりますので、そこは常に問題が生じないような見直しをしていくべきだと考えております。したがって、これは常に課題である、一回見直せばいいというものではないと考えておりますし、今度の事務委譲、それから補助率の三年間の暫定措置による変更についても、これが済まないうちはという性質のものではなかろう。やはり基準というものは常に検討しながら適正化を保っていくという努力は我々に課された任務だと考えております。
  34. 中村正男

    中村正男委員 引き続いて社会福祉施設の問題なんです。  国と地方双方の責任二分の一ということになったのですが、要は私は、日本の社会福祉施設の水準というものがどうなのかという原点が極めて重要だと思うのですね。特別養護老人ホームなり保育所、さらに施設ではありませんけれどもホームヘルパーといった社会福祉にかかわる水準は、今日本の場合、先進諸国と比べてどういう水準にあるというふうに厚生省は思っておられるのか、その辺をまずお聞きをしたいと思うのです。
  35. 小島弘仲

    ○小島政府委員 これは社会福祉施設全般という形で申し上げますと、施設の種類によって大分違いがあろうかと思っております。  保育所の問題につきましては、数としては全国的に見ますともう十分な数に達している。ただ、新興住宅地というようなところでは常に不足の問題が出ますが、全体で見ますと数の問題ではまず足りている。それから身体障害者関係、子供の精神薄弱児の関係の収容施設の面では、ほぼ必要数を満たしているのではなかろうか。  それから、足りない収容施設としては特別養護老人ホーム、それから大人の精薄者の施設というものが足りないものの代表であろうと理解しております。  ただ、諸外国と比べましてまだまだ非常に不十分だというのは在宅者の関係の施策、これは身障、老人を通じまして不十分ではなかろうか。これは絶対数も足りません、また中身についても充実していかなければならない問題があろうと考えておりますので、今後は在宅対策ということにも重点を置いて施設援護と有機的な連携を持つような形で、特に在宅に大きな力を注ぎながら均衡ある施設体系をつくってまいりたいと考えております。
  36. 中村正男

    中村正男委員 それぞれについてお答えがあったのですが、例えば身体障害者の施設、とりわけ精神薄弱者の収容施設といったことについては、今私の知っているところでは一部屋に六人収容されている、こういう事例を聞いているわけなんですが、担当されておるお医者さんなんかの意見を聞きますと、それを半分に減らせば十分治癒が可能あるいは治癒の速度が非常に加速される、こういうことを常々おっしゃっておられるわけです。したがって、私は日本水準はまだまだそんな威張れた水準ではないと思います。  そこで、そういう一定の水準に達していない場合には、この種の補助率はいわゆる社会保障分野の補助率に準ずるべきではないか。それを何でもかんでも国と地方の相互の責任だからということではっさり二分の一にしてしまうのは、これは低い水準のまま、さらに低くなっていくといいますか改善されないというふうに私は思うのですが、なぜ社会保障の分野の補助率に準じた扱いがされないのか、この込もう一度お尋ねをしたいと思うのですが。
  37. 小島弘仲

    ○小島政府委員 福祉関係補助率も、従前は、先生御指摘のように所得保障的なと申しますか、そういうものである生活保護と歩みを一にしてきたことは事実でございます。  今回臨調の御審議、さらには補助金問題検討会の御審議を踏まえまして、やはり生活保護とその他の社会福祉と少し性格を異にするんじゃなかろうか。基本的には、社会福祉関係は国と地方公共団体が財政的には半々の責任を持つというような形で運営されてしかるべきものではなかろうか。また、その実施のやり方につきましても、従前のように地方公共団体がいわば国の手足のごとき形で実施する機関委任事務ではなくて、地方公共団体が主体性を持つような形で、もっと責任を持つ形で実施するのが適当であろうという考えが示されました。  したがいまして、これを受けましていわゆる機関委任事務の関係の整備法の中で、社会福祉関係の施設援護を中心といたします福祉の措置は、従来の国の機関委任事務から地方公共団体の団体委任事務というような形で整理をいたしまして、それを見ながら、それとの関連において補助率につきましても、先ほど申し上げましたように二分の一補助と二分の一負担という形の体系をつくることにして御提案申し上げているところでございます。
  38. 中村正男

    中村正男委員 私は、やはり水準という面からすると、この二分の一というのは釈然としない。何でもかんでもばっさり、双方の責任なんだから、事務事業の見直しをやったんだからこれはもう二分の一でいいんだ、こういうことについては納得し得ないということを申し上げておきたいと思うのです。  こういう形でどんどん進められていきますと、現実には、自治体側で起こり得る行政の需要、福祉の需要というのは決して少なくなっていかない、むしろこれから高齢化社会等進んでいく中で一層需要が増大をしていくと私は思うのですが、基本的にはこの税の再配分の構造も変更があるようにも思いませんし、あるいはまた交付税の三二%もそのまま据え置いたまま、とりあえず補助率引き下げた分はトータル的にはつじつまを合わしたということになっていますけれども、現実の面で、自治体ごとの社会福祉サービス、これが今日現在でもかなり格差はあるんではないか。個々それぞれの具体的なケースを挙げて申し上げることができませんけれども、実態として厚生省は、この社会福祉サービスの自治体ごとの格差をどういうふうに受けとめておられますか。
  39. 小島弘仲

    ○小島政府委員 社会福祉関係につきましても、自治体がそれぞれ単独事業というような形で、今までいろいろな国の施策に上積みというような形のものであったり国の施策とはまた別個の施策として実施されている実態があるのは、先生御指摘のとおりでございます。  それに対する国の考え方といたしましては、やはり全国岡一の福祉水準といいますか、基本的には一定の福祉水準を保つためにはこれだけはぜひ実施していただきたいというものにつきましては、法律で機関委任事務とするなり地方公共団体に対する団体委任事務とするなり、そういうような形で、全国的な福祉レベルの維持という見地から確保すべき施策については国も責任を持ちながら実施していく必要があるのは当然なことでございます。  それに加えまして、地方公共団体がそれぞれの地域の特性あるいは事情を反映しながらいろいろおやりいただくことにつきましては、これは極めて結構なことだと考えております。
  40. 中村正男

    中村正男委員 私は、実態としてこの社会福祉サービスの格差というのはかなりあると思うわけですし、現に一生懸命そういうところに力点を置いて行政を進めてこられた自治体も、今日現在かなりあると私は思うのですね。したがって、その上乗せ福祉といいますかそういうことについて、それはむだなことだというふうなお考えにぜひ立たないように、むしろ全部そこに合わしていくような行政指導が本来国のあり方ではないかと私は思うのです。  今回の補助率引き下げによる財政的な収支は確かにトータル的には合わされていますけれども、今までのずっと続いてきたサービスの格差の問題、逆に言いますと、そういう努力を一生懸命やってきた、より福祉を充実ということでやってきた自治体は、全体的な地方財政の硬直化が進む中で非常に負担がふえていくと私は思うのです。一方では、この行政に対するニーズから、そういったいわゆる高福祉の自治体に非常に担税力の弱い世帯というのが移動していくことも当然考えられると私は思うのですね。そうなれば余計に、より充実した福祉ということで考えてやってきたこの自治体の財政負担、財政事情というのはさらに厳しくなっていくわけでしょう。そういうこの福祉の現状水準を落とさないでやっていこうとする、そのことに携わって今後の自治体間の財政事情に格差が相当さらに広がっていくというふうに私は思うわけなんですが、大蔵当局はそういったことについてどういうふうな認識をお持ちでしょうか。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  41. 保田博

    ○保田政府委員 団体によりまして財政力に非常に大きな差があるわけでございます。それらについては、交付税制度あるいはその他の財源調整制度によって相当程度平均化されておるのだと思います。  ただしかし、現実には社会福祉の分野でも、厚生省が全国的なレベルから考えてこの程度はという水準まで非常にきゅうきゅうとしてようやく到達している団体がある、一方で、さらにそれを非常に上回る部分があるということもまた事実なのであります。同じく日本国民でありながら、みずからが住む地域の団体が異なることによって福祉のレベルに非常に大きな差があるということについては、私は、いささかどうかなという気が実はいたしておりまして、その辺についての是正というものはやはり将来とも厚生省当局あるいは自治省当局ともどもよく勉強していかなければならぬ問題ではないか、こういうふうに考えております。
  42. 中村正男

    中村正男委員 それぞれのお役所でお考えになっていることとは思いますが、現実には私はそんなものじゃないと思う。やはり地域で生活をする場合、生活環境すべてについてよりいいところに求めていくというのは、これは当然人間生活の中で第一の基本の問題だと思うのです。現に進んだ自治体では、産休明けの保育だとかあるいはゼロ歳児の保育、こういったことを非常に厳しい財政事情の中からみずから超過負担をかなり持ちながら進めてきた実態がある。これはやはりそういう水準は落とすわけにいかぬ。そうすれば、そういったところに住民の移転というのが当然起こってくると私は思うのです。  そこで次の問題なんですが、そういう中で今回事務事業の見直しが行われた。確かに、措置の要件あるいは費用の徴収、民間委託等々、自治体の裁量権そのものは増大はいたしましたけれども、前段申し上げたようなことを想定するならば、これが福祉サービスの充実の方向に行けば言うことはないのですが、こういった自主裁量権そのものが拡大することによってむしろ現在の福祉水準を落とさざるを得ない、そっちの方に行く危険性が非常に大きいのじゃないだろうか。検討会の報告でも、社会福祉の職場の職員配置基準そのものを緩和すべきではないか、こういう方向も出てきておるわけでして、今回の補助金補助率引き下げ、とりわけ福祉に集中してやられてきておる国の基本的な考え方というのは、福祉にはもうこれ以上余りお金をつぎ込むことはもったいない、むだな金になるのじゃないか、こんな思想がどうも根底にあるように私は思います。そういったことを総合的に考えるならば、自由裁量権そのものを拡大したことが、福祉を充実していく方向よりもむしろ福祉水準を下げていく、そういう方向に行く危険性が極めて高い、そう思うのですけれども、厚生省、自治省、どのようにお考えになっているのかお聞きをしたいと思います。
  43. 小島弘仲

    ○小島政府委員 今回の団体委任事務化にいたしましても、国はそれにあわせまして補助率本則十分の八から二分の一にいたしましたが、それと同時に地方のそれによる負担増分については、先生御承知のとおり、地方財政計画によります必要な措置もとられているわけでございます。したがいまして、これによって福祉の水準が低下するという問題は財政面からもないのじゃないか。  もう一つ、施設の設備、運営の基準は、福祉に必要な、具体的に入所者の適正な処遇に必要な事項は、従前どおり基本的に今後とも国が適正に定めてまいるという考えをしております。また、いろいろな措置基準につきましても国が基本的な事項を定め、それぞれの地方公共団体が地域の特性を反映してある程度バリエーションを持てるような姿に持っていこうということでございますので、基準面からもそれが低下するという問題はないのではなかろうか。  もう一つ、福祉につきましてはほとんど地方自治体に定着しておりますし、地域住民の関心も極めて高い分野でございますので、そういう環境からしましてもこれが低下をするというおそれはないものと考えて、団体委任事務化に踏み切ったところでございます。
  44. 持永堯民

    ○持永政府委員 基本的にはただいま厚生省の方から御答弁があったとおりに考えております。老人ホームなり保育所なりの基本的な運営のあり方は、国の方で一定の基準をお示しになるわけでございますが、ただ細かいと申しましょうか、具体的に保育所なり老人ホームをどうやって運営するかという点については、地方団体によって若干差異が出てくるだろうと思います。しかし、その点は各地域の住民なりあるいは地方の議会の判断を待って対応すべき問題であろうというふうに考えておる次第でございまして、いずれにいたしましても地方団体の福祉に対する責務がこれによって変わるという性格でもございませんし、具体的には今厚生省から御答弁があったようなことでございまして、水準が下がるというような受けとめ方はしていないところでございます。  なお、先ほど御質問がございました地方団体からの意見書でございますけれども、調査いたしました結果、昭和六十一年度の予算に関連して自治省の方に届いておりますものが千百六十一件。御参考までに、昭和六十年度の場合は二千百二十四件あったわけでございます。
  45. 中村正男

    中村正男委員 時間が来たようでございますから、なおまた具体的な点について質問したかったわけですが、一応終わりまして、最後に総括的に、私の指摘を申し上げておきたいと思います。  冒頭申し上げたように、今回の措置というのは、やはりどう言おうとこれはもう国の財政再建が既に破綻をした、その中で、辛うじて何とか財政事情を軽くするために無理やりにやられた施策だというふうに私は思うわけです。したがって、この状況で三年限りというわけにはいかないんじゃないか、そういうふうに見ている人はほとんどいないんじゃないか。このままではさらにこの補助率が切り下げられる、地方の負担が増大することは必至だというふうに私は思います。したがって、基本的には国の財政政策そのものを根本的に改めていく、もうこうした緊縮型の財政政策では勢い福祉のところだけが集中的にやられてしまう、これに尽きると思います。したがって、ぜひ財政政策の基本的な転換をやらないことには解決し得ない問題だということを私は指摘をいたしまして、その点について大臣お答えをいただいて終わりたいと思います。
  46. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な問題についてそれぞれ御指摘をいただき、私も勉強になりました。が、財政政策そのものにつきましては、今日いわゆる臨調路線、そういういわば枠の中で、それを政府の方針として行ってきておる、こういうことであります。これのにわかな転換というのは、よほど容易なことではないと私どもも思っております。やはり後世代の負担等を考えてみますときに、社会保障に限らずすべての施策に、それこそ負担するも国民、また受益者も国民でありますので、その合意が那辺にあるかを見定めながら、今後とも財政政策をそれぞれの政策に対応して運営していかなければならないではなかろうか、このように考えておるところであります。
  47. 中村正男

    中村正男委員 終わります。
  48. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 伊藤忠治君。
  49. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 実は、補助金の問題とは直接関係のない問題から入らせていただくのですが、三月二十五日付の毎日新聞の記事で、東海地震の問題が非常に詳しく報道されております。これを一読しますと、東海地震の発生が非常に近い、その前兆現象が既に起こっておりまして、これに対する予知連絡会ももちろん持たれるわけですが、茂木教授の見解が報道されているわけでして、「二つの大地震との類似性からみて、十分注意する必要がある」、このように指摘をされまして、これの対策を怠りないようにやらなければいかぬ、こういう指摘になっているわけです。そうして、たしか今月の二日から東京で地震学会が開かれまして、そこで権威の茂木教授の方からも東海大地震問題について発表がある、このようにこの記事は言っているわけですが、私の理解でよろしゅうございますか。
  50. 津村建四朗

    ○津村説明員 先生御指摘の茂木先生の学説は、地震予知の上で貴重な御意見であると私どもも承っております。  東海地域につきましては、以前からいわゆる東海地震と呼ばれる大規模地震がいつ起こってもおかしくないと考えられておりまして、既に気象庁を中心とした常時監視の体制が続けられているわけでございます。東海地域につきましては、全国的な地震観測データに加えまして、埋め込み式体積ひずみ計や御前崎沖の海底地震計による観測データ、さらに大学及び関係機関による地震地殻変動や地下水についての観測データなど多数のデータを気象庁に伝送いたしまして、二十四時間の常時監視を行っているところでございます。また、気象庁に集中的に伝送されておりますこれらのデータを瞬時に総合的に処理する地震活動等総合監視システムの整備を昭和六十年度から二年計画で進めているところでございまして、本システムの整備によりまして東海地震の短期直前予知のための監視強化がさらに図られるものと考えているわけでございます。  今後とも、大学等と協力いたしまして東海地域の地震活動の監視に、遺漏のないように努めてまいりたいと考えております。
  51. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 新聞記事で、茂木教授がこのように非常に確信を持って前兆現象が起こっていると。恐らく東海大地震が起これば、東京を含めまして首都圏全体が大きな影響を受けると思うのです。そういう重大な問題についてこういう見解が出される。しかもそれは確信を持って言われているのその資料が集まってくるというのは、予知観測ネットワークが張られているから言えるのか。学者先生といいますのはそれ以外にまたいろいろな発表をするための要素というのが多く加わっていて、言われているのか。私はこの予知観測網のデータ収集ですか、これが非常に大きなウエートを占めてこういう発言になっているのだろうと思っているのですが、そのあたりはどのようにお考えですか。
  52. 津村建四朗

    ○津村説明員 茂木先生の御発表は、主として気象庁の地震観測データに基づいて解析されたものでございます。茂木先生の御発表は長期的ないし中期的予知と言われる分野でございまして、長期的には東海地震というのはいつ起こってもおかしくないということが前から申されておりまして、現在私どもが取り組んでおりますのは短期直前の予知でございます。短期直前予知はやはり観測データが集中されて監視されているということが一番大事でございますので、その強化に努めているところでございます。
  53. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そうしますと、東海大地震を想定して張られています予知観測網といいますのは、おたくからいただいた資料がございますけれども、東は房総半島、銚子から西は知多半島、これに至る沿岸をずっと張りめぐらしているわけですね。そういうことだと思うのです。それによるデータ収集が基礎になって短期の予知、予測ですか、そういうものをやると思うのです。これに対してどれくらいのお金がかかっているのですか。アバウトでも結構です。
  54. 高多康次

    ○高多説明員 地震の予知研究につきましては、政府といたしまして地震予知推進本部を設けておるわけでございますが、推進本部として六十一年度予算の地震予知関係の総額は約五十三億でございます。地域別に予算を立てているわけではございませんので、東海地震のために幾らかということは正確には計上できないわけでございますけれども、大体そのうちの四割ぐらいが南関東の東海地域のための体制の整備等に使われているのではないかと考えております。
  55. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 これは何年ぐらいかかって今日のネットワークが完成したわけですか。
  56. 津村建四朗

    ○津村説明員 東海地震に関して特に社会的関心が強まりましたのは昭和五十一年でございまして、それ以来約十年、それ以前からも東海地域については他の地域に比べて観測が強化されておりましたが、特に強化されてまいりましたのは約十年ぐらいでございます。
  57. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 例えば、予知観測網の建設は当然ですが、運用の問題、これはかなり分業体制になっていると思うのです。この予知観測網を非常に駆使をして、一元的に情報を伝達していけるためにどの省庁がかかわってやっているのか、ひとつそれを聞かしてください。
  58. 津村建四朗

    ○津村説明員 現在、東海監視に関しまして気象庁に直接テレメーターで各種データを送っておられる関係機関は、気象庁以外には、国立大学でございます。それから建設省の国土地理院、通産省の地質調査所、科学技術庁の国立防災科学技術センター、そういう機関からデータを直接テレメーターで送っていただいております。
  59. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今もお聞きしまして、これだけ多くの省庁、しかも大学を含めているわけですね。私もこの問題には関心を持っているわけですが、大学の果たしている役割というのも結構大きいわけですね。  そうすると、地震に関する情報をとにかく日ごろから絶えず恒常的に集めていまして、しかも分析は相当正確でなければいけない。でないと、予知連絡会議を開いて、とりわけ学者先生方を交えまして、国家的な防災対策を立てる一番の基礎データでありますから非常に重要だと思うのですね。だから、これだけの関係省庁がそれぞれ役割分担、分業体制で、これを一つにまとめて誤りなくやっていくというのは非常に神わざ的だ、そういうふうに私は感じるわけですが、その辺は問題はないでしょうか。一番心配しておりますが、どうでしょう。
  60. 津村建四朗

    ○津村説明員 地震予知というのは、現在まだ学問的に非常に難しい面もございます。ですからこれは現在、判定を含めて、完全に業務化するというところまではまいっておりません。ですから、判定の部分は、地震防災対策強化地域判定会というものが気象庁に置かれておりまして、在京の地震の専門家六名の方にいざという場合には気象庁にお集まりいただきまして、観測データを子細に検討して判定を下していただくという体制になっております。
  61. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大規模地震対策特別措置法というのがありますが、これは東海大地震を予期して、そこに重点を置いてつくられたものですか。
  62. 定道成美

    ○定道説明員 直前予知が可能になった地震を前提にして、大規模地震対策特別措置法ができております。現在東海地震が直前予知が可能になっておりますので、それが現在の強化地域の対象になっております。
  63. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 この特別措置法に基づいて防災対策を強化されているわけですが、これを取り仕切っている主務官庁はどこになりますか。
  64. 定道成美

    ○定道説明員 全体の総合調整を取り仕切っておりますのは国土庁でございます。
  65. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 それに伴う予算の関係は、まとめて最終的には大蔵省の方で調整されるのでしょうけれども、この部分も含めておたくがやられているわけですか。
  66. 定道成美

    ○定道説明員 現在、先生が御指摘の特に地震予知関係につきましては、気象庁が直前予知の可能な体制をとっておるわけでございます。
  67. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 予知観測体制に関する限りは気象庁が責任を持ってやられている。東海大地震対策のネットワークとしては、このパンフレットに出ていますようなところに今張られていて、大体これで予知の観測はまず大丈夫、このように判断をされているわけですか。
  68. 津村建四朗

    ○津村説明員 さよう考えております。
  69. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そうすると、茂木教授が前兆現象について指摘をされておりますように、今のネットワークが張られていて、それの資料に基づいて最終的な予知をやられる。いろいろな手続を踏みまして、この予知体制でいきますと、たしか三時間ぐらいで内閣総理大臣が警戒宣言を出す、そういうスピードで万全が期せる、こういう判断ですか。
  70. 津村建四朗

    ○津村説明員 さようでございます。
  71. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そうすると、この東海地震が起こって影響を受ける、とりわけ大東京の場合、住民の皆さんは、今の体制に乗っかっておれば三時間前には警戒宣言が出まして防災体制に入るということでうまくいく、御心配なく、こういうふうに安心してお任せしておいていいわけですね。
  72. 定道成美

    ○定道説明員 大規模地震対策特別措置法に基づきまして内閣総理大臣は警戒宣言を発します。直ちにそれは報道機関を通じて国民に周知することになっておりますし、それから関係の指定公共機関あるいは都道府県知事に対しましては国土庁と消防庁が通知いたします。それから、これを受けまして都道府県知事は市町村長に通知をし、とともに市町村長は住民に広報車、同報無線等で通知する。  私たちは、あらかじめ地震防災強化計画というものをつくっておりまして、これは国はもちろん、都道府県それから市町村、すべてが、そういう警戒宣言が発せられたときには事前の防災措置をとるという体制が整っております。先生御指摘のように、このような体制は、いつ起こっても不思議でないという東海地震に備えて日ごろより防災訓練を実施しておりまして、万全を期しているというところでございます。
  73. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 東海大地震の予知観測体制あるいは防災体制、二次災害が起こらないようにさまざまな体制確立の努力が政府としてもされている。私もその点はそうでなければいけないし、そこまで任せておけと言われれば、これはお任せしましょう、安心してということなんでしょうが、それ以外の、例えば東海大地震に匹敵するといいますか、関東大地震を上回るようなマグニチュードで経験をしておりますのが東南海、南海地震ですよね。紀伊半島、つまり関西、大阪ですね。中京経済圏、大阪経済圏に影響を及ぼすような大地震が起こった場合には、この予知観測ネットワークは機能できない、したいと思ってもそのネットワークが張ってございませんが、そういう場合にはどうされますか。
  74. 高多康次

    ○高多説明員 地震予知の観測研究につきましては、先ほど気象庁の方からも御答弁がございましたが、長期的な予知の研究、短期的な予知の研究というようなことでやっているわけでございますが、そういう研究の推進体制といたしまして、科学技術庁が本部になっております地震予知推進本部がございます。それで、政府関係機関とか大学等との連携協力のもとに研究を推進しているわけでございますが、このような観測研究を効果的に進めるために、日本を地域に分けまして、地震予知連絡会が二つの観測強化地域と八つの特定観測地域を定めているわけでございます。先ほどの東海地域及び南関東につきましては、特に重点的に地震予知観測研究体制の整備を図るということで観測強化地域というぐあいになっておりますが、そのほかの地域につきましてもそういう体制を拡充強化すべしという所で指定されているわけでございまして、先生から先ほど御指摘がございました名古屋、京都、大阪、神戸地区というのがございまして、こういう地域についても研究を進めているということになっております。
  75. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 具体的なネットワークの建設計画はあるのですか。
  76. 津村建四朗

    ○津村説明員 東南海地震あるいは南海地震が発生いたしました地域につきましては、昭和十九年と二十一年に現在の東海地震に匹敵する大きな地震が起こっておりまして、この地域では大体百年に一回の周期で発生しておりますので、当面東海地震のような差し迫った危険性は少ないわけでございますけれども全国基本観測あるいはそれぞれの地域の観測が地震予知計画に沿って進められております。ですから、そういうレベルで地震予知に対する研究観測が進められているということでございます。
  77. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今のお話、私こう理解するのですよ。東海大地震というのはもういつ起こるかもわからないような前兆現象もあるというのですね。それがネットワークに情報として入ってきているから大変だ。ほかの地域はまだそういうふうな前兆現象がないし、地震の周期説ですね、一周期が大体六十年から八十年――関東大地震が起こってから八十年近いのですか、何かそんな格好で、だからまだまだ先のことなんだから、それに対するネットワークを建設していく必要は否定できないけれども、必要があるとは思うけれども、それはまだ先のことなんだから、当面この東海大地震対策に重点を置いておるんだ、ほかの地域は御心配なく、こういうことなんですか。
  78. 津村建四朗

    ○津村説明員 基本的に、地震予知計画は文部省に置かれております測地学審議会が建議という形で提案、計画をまとめて、それに沿って推進されているわけでございまして、それぞれの地域の特性に応じた観測体制を張っているということは事実でございます。ですから、当面発生しない地域につきましても平常どういうことが起こっているかということは、地震が近づいた場合にそれとどう変わってくるかということを知る上で非常に重要でございますから、基本的な観測は十分続けているつもりでございます。
  79. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 結局こういうことじゃないですか。東海大地震が近々起こるということは警戒を持たなければいかぬし、体制も強めなければいかぬ、ほかのところは当面心配がないというふうにおっしゃっているわけですけれども、私も東南海と南海地震は経験していますけれども、事前にそんな微震があったり前兆現象で小さな地震がどっとありながらどおんと大きいやつが来たという記憶はないのですよ。あの地震というのは、ある日突然どおんと来まして大変な被害を受けているのですよ。これは歴史的には一千名を超える死者なんかを出しているわけですね。私は学者、専門家じゃありませんので、東海大地震と同じような前兆現象がずっと起こりながら大きいやつがやってくるという形なんだ、紀伊半島や大阪の方もだから御心配なくというふうに考えられても、あ、そうでございますかとはなかなかいかぬと思うのです。つまり自然のやることでありまして、なかなか人間が考えているようには来てくれないわけでありまして、ある日突然どおんと来たら、私は中京圏だって大阪の工業地帯だってもう大変なことになると思うのですよ。そこのところが一番心配なわけです。  それに対する対策が今後どうやられるかということをお聞きしたのですが、必要性のあることはわかっているけれども当面は東海大地震対策なんだ、そちらの方は予算の関係もいろいろな国の体制もあって次の課題として検討していこうというような程度では、起こった場合に私は打つ手がないように思うのですが、その辺は私が心配し過ぎなのでしょうか。どうお考えでしょうか。
  80. 高多康次

    ○高多説明員 先生の御心配の向きは私どもよくわかりますけれども、先ほど気象庁の方からも御答弁がございましたが、地震学の方の権威が集まりまして、それぞれの前兆現象等を慎重に審議した結果の文部省の測地学審議会の建議でございまして、これに基づきまして先ほどのような当面は特に緊急の監視体制というようなものまでは要らないということでございますので、私どもはそうしているわけでございます。もしもそういうことが必要であるということになりますれば当然それに対する体制もとっていくということに相なろうかと思いますが、当面はそういうことはないということに考えております。
  81. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そうすると、この予知連絡会議に参加をされている学者先生、頭脳の皆さんが、これは危ないよ、この地域にも広げた方がいいよ、その時期が近づいていますよという具体的な示唆がなければ、政府としては具体的な体制の確立に向けて踏み出さないということですか。そこのところはどうなんですか。
  82. 定道成美

    ○定道説明員 大規模地震対策特別措置法は、先ほど申し上げましたように直前予知の可能なことを前提とした法律でございます。今先生御指摘の東南海地震とか南海地震につきましては、現在直前予知がまだ可能であるということにはなっておりません。そうかといって、何の防災体制もしていないということではなくて、各省あるいは建設省であれば避難地、避難路を整備するとともに、県におきましては地域防災計画を定めまして地震編を定めておりまして、万が一不幸にしてそういう地震が起こったときにはそういう体制をとるように現在つくっております。我々はいわゆる災害対策基本法に基づく体制をとり、そして進めているものでございます。
  83. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私がこの資料を読ませていただきまして一番気にしますのは、当面東海大地震だけで、あとは心配ないということです。こういう考え方が底辺に座っているということがどう考えても私は納得ができないわけです。  それは、ネットワークの中でもひずみ計だとかそういうものをしっかり置いてやっているからいろいろなものが判断できる、そういう情報も上がってくると思うのです。そういうネットが張っていない地域では、実際そういう観測体制を持っていないわけですから、いろいろなことがわからないと思うのです。ですから事前に、こういうスタイルで来るんだ、どんな地震だって間違いなく日本周辺で起こる地震は皆同じA型だ、B型というのはないんだというふうに決めてかかるというのは問題だと私は思うし、周期説に立っても、何年までは絶対来ないから大丈夫だというのは言い切れぬと思うのです。ですから今張っているネット以外に、ほかの地域に対しても万全を期すためにはそういうものをやっていかなければいかぬ、こういうことが何としてでも必要だと私は思っているわけです。そのために国としてもこれまでも一連の対策をとられてきたと思うのです。しかし今のネットの伸び方を見てみましても、そういうふうには判断できないと思うのです。  ですから、私申し上げますが、例えば中京圏の場合は、どちらで起こったってはざまなんです。東海大地震が起こっても五ぐらいの震度で迫ってくるというケースは十分想定されるわけです。そこに中京のコンビナート群がありますね。これは震度五、あるいは五を超えれば当然ですが、そういう状態になればコンビナートのパイプラインはどういう状態になるのか。これは二次災害という大変な問題を起こすと思うのです。例えば何千となく通っているパイプラインは、震度五程度の地震が起これば破裂したりボルトなんか吹っ飛びますよ。私調べてみましたけれども、例えば私の地元の四日市のコンビナートというのは、規模でいいますとそう大きい方ではございませんが、しかし石油コンビナートでも、タンクなど全部合わせますと五百に上ります。それに対して、何千となくパイプラインが通っています。現地へ行けばわかりますよ。これが京浜だとか阪神あたりの日本を代表するコンビナートだったら、もう大変な規模なんです。そのときに震度五あるいはそれ以上の地震が起こったら、これはばあっと破裂しますよ。なぜ予知観測、事前に知るということが必要なのか。それは事前にそういう状態を起こさないために、わかっておればバルブだって締めることができますね。そうしたら二次災害を最小限に防ぐことができる。一たんあんなものが爆発したら、郊外にあって町とは距離を置いているといいますけれども、一キロやそこらではとてもじゃないがすぐ町の方に災害がだあっと広がっていくと思います。そういうことを考えますと、特に中京圏なんというのは、地理的条件としてどちらで大きな地震があっても震度五あるいはそれ以上の災害をこうむる可能性というのは非常に大きいわけです。  ですから、私は口を酸っぱくして言うのですが、東海大地震でも外れの方だから心配ありませんよ、震度五以下におさまるから絶対に心配ございませんということは言い切れぬと思うのです。そういう場合、どちらで大きな地震があっても対応できるような予知観測ネットワークをきちっとしておかないことには、その地域の人はとにかく防災体制の組みようがない、安心して生活することができない、あるいは工業生産に励むこともできないということですから、ここのところを私は一番問題にしたいわけです。その点についてはどうですか。  大丈夫です、御心配要りませんと言われるのだったら結構です、議事録に載りますからね。政府は大丈夫だとおっしゃっている、皆さん安心してお暮らしくださいと言えますからね。そうではなくて、その地域はどちらから来ても真ん中なものですから、当面東海大地震の対策には間に合わぬかもしれないけれども、次にどこで起こってもいいようにネットワークを早急に建設していく方針だ、私はそう考えて当然だと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  84. 津村建四朗

    ○津村説明員 日本は地震国でございまして、東海地震だけが被害を起こす地震でないということは重々承知しているわけでございます。  日本全国で見ますと、東海地震のようないわゆるマグニチュード八クラスの大地震が起こりますと、数県以上にまたがって非常に大きな被害を起こすわけでございますけれども、多いのはむしろ、直下型地震と一般に言われておりますようなもう少し小さい地震でございます。東海地震のような海洋性あるいは海溝性と呼ばれております地震の場合はその発生機構が最近学問的にほぼ解明されておりまして、予知の手法がほぼわかっておるわけでございますけれども、直下型地震につきましては残念ながらまだ学問的に不明の点の方が多うございまして、鋭意研究をやっているレベルでございます。  直下型地震を対象とした予知研究というのは、全国的に一生懸命やっております。例えば気象庁におきましても、最近気象研究所に直下型地震の実用化に向けての研究室を発足させまして、研究に取り組んでおるところでございます。
  85. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 御答弁を聞いておっても、どうもポイントを外れているように思うのです。  中京経済圏というのは、東海大地震が起これば――津波の関係なんというのは沿岸をずっと来るわけですから、陸地よりも海岸べり、港なんですよ。そういうところへ迫ってくる。地震というのは、距離によって近ければきつい、遠ければ緩いんだというふうに計算どおりには思い切れぬでしょう。一つの筋があって、特定の地域は距離が離れていても非常に被害が大きかったという場合があるじゃないですか。そういう点を考えますと、やはり私が言っておりますように、どちらで起こっても震度五くらいの影響は受けるんだという地域の対策というのは怠りなくやらなければいかぬ。そのために予知観測ネットというのは極めて重要なんですよ。  ですから、そのことの必要性というのをわかっておみえになれば、当然ネットワークを広げていく。予知観測網というのは何も知多半島でとめなければいかぬという理由はないと思うのですよ。そうでしょう。もちろん気象庁の拠点は張られていますよ、私も知っています。最低限度張られておりますけれども、東海大地震を想定したようなネットは張られてないわけですよ。だから、それをこれから順次広げていくということがあってもいいじゃないですか。そこのところを聞いているのですが、どうですか。やる気は全然ありません、それはこの知多半島のネットでいいのです、十分ですということなんですか。
  86. 津村建四朗

    ○津村説明員 お手元のパンフレットにあります観測体制というのは、東海地震の常時監視のための観測網を示したものでございまして、観測点はそのほか全国的に多数ございます。  気象庁の場合は、地震観測に関しましてはいつ地震が発生しても直ちに掌握できるような体制にございまして、そういう点で、全国的にある規模以上の地震については常時見張っている状態にございます。それから、先ほど申しましたが、研究レベルではございますが、各大学等あるいは関係機関におかれまして各地に地震、地殻変動、地下水等各種の観測点を持っておられます。そういうものに異状が認められました場合には、いわゆる予知連絡会に情報が報告されまして、そこで検討されることになっております。  ですから、東海地域だけが予知体制ができていて、その他は全くゼロということではもちろんございません。それなりに努力していると私ども考えております。
  87. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 時間の関係もありますからこの問題だけというわけにいきませんので、最後にお聞きしますけれども、そうは言いましても、こういう万全のネットを張るために十年間かかっているわけでしょう。ほかの地域はそういう体制になっていないわけですよ。本格的に張っていこうと思ったら相当な年月がかかると思うのです。財政措置も必要だと思うのです。その体制をつくるためには相当時間がかかるわけですから、東海大地震に続いて次の大地震に備えるというのだったら――いつ起こるかわからないものなんです。けれども、おたくの主張どおりにいくとしても、今からそういう積極的な姿勢がなければいかぬと思うのです。その点はいいのでしょう、考え方はあるのでしょう。
  88. 高多康次

    ○高多説明員 先ほどから申し上げているように、強化観測地域と特別観測地域というものを設けて、それなりの重要性に基づきました観測体制でやっておるわけでございまして、その体制の中で前兆現象らしいものが出てくるというようなことがありましたら、急遽そういう体制をしいていくということで現在は努めているということでございます。
  89. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今の御答弁を聞きましても、起こってから後追いという格好では間に合わぬわけですよ。だから事前にどう体制を組むかということでこのネットワークというのは機能しているわけですから、その視点を外した議論というのはどうしたってすれ違うと思うのです。いずれにしても、万全の体制を関係省庁に強く要請申し上げたいと思います。  次の問題に移ります。  地対法絡みの補助金については、保田次長の方も答弁をなさっておりまして、ほかの補助金は削ってきたけれども、この地対法関連事業に対する補助金というのはその範囲外に置いてきたというような理解を私はしていたわけであります。もちろん生活保護の場合は十分の八を十分の七にずっと削り込んできているわけですが、この部分の補助率引き下げというのは与える影響が極めて大きいと思っております。  それはどういう観点からかと申し上げますと、つまり生活保護の受給対象者の比率が同和地域の皆さんは非常に多いわけですよ。なぜそうなっているのかということは、これは歴史的に見ましても、ずっと差別の中で生活が非常に厳しい状態に置かれてきている。だから生活保護に言うならば協力を求めながら日々の生活を送っていかざるを得ない。これはもう本人たちの意思とは無関係にそういう生活条件にあるということを物語っていると思うわけです。一般の皆さんと比べて対象者が非常に多いということは、そういう同和地域の皆さんにとってみれば、これは好むと好まざるとにかかわらずそういう生活実態を余儀なくされている。そういう意味ではこれはもう二重の差別なんだ、この生活保護の削減というのは二重の差別なんだ、このように考えているわけですし、私たちもそう思っています。  だから施策としては、生活保護の場合には、法律を見ましても、これは憲法の基本的な考え方を受けまして政府としてもこれだけは国がやるということで、歴史的にも一番早い段階から出発されて今日まで来られているわけですが、しかし、全体の財政事情が厳しいからということでこの部分に対しても補助率引き下げられていくということでは、いかんせん、言うならば国が誇る社会保障の一番の根幹であった施策まで捨てていかなきゃいかぬということで、なかなかこれは納得というのですか、もちろんこれは自治体が負担すると言ってしまえば終わりなんですが、ツケは結局それによって生活をしている皆さんに回ったような格好ですから、だからここに対しては慎重でなければいかぬ、私はこう思っているわけですよ。  そういう観点で、同和地域の皆さんも非常に厳しく受けとめているわけですし、私自身もそのように考えますから、この辺の問題意識をしっかり持って――いろいろ見直したとか何とか言われていますね。次長の話によりますと、永遠の課題だ、ばあんと言い切られましたけれども、しかし、永遠の課題だからやっていって、みんなすぱすぱいくんだ、そうはならぬと思うのです。ですから、その辺の施策の重要性、これの持つ意味、歴史的な経過、そういうものを踏まえてこれは慎重に対処しなければいかぬのじゃないか、私はこのように考えているわけですが、大臣いかがでございましょう。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に現実的な問題としてお受けとめになっておるというふうに私も理解さしていただきましたが、政策選択の際、問題意識としてどのようにそれを踏まえていくかということになりますと、直ちに私から今お答えするだけの用意がございません。
  91. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いずれ最後の方でまた大臣にもお伺いしたいと思っておるわけですが、地対法関連の補助の関係なんですけれども、国の段階で削られてくる分を県が負担をするという点では、これはもう全国自治体どこでも事情は一緒だろうと思うのです。  それで、地対法の関連で私は例を二、三申し上げたいと思うのですけれども、これが今回の削減の対象になっているいないにかかわらず、これまで国としても積極的な姿勢に基づいていろんな事業をやられてきた。現地に行きますとそれが実っていると思いますが、例えば、教育の集会所の整備だとかそういう箱物はできていまして、しかもそこにはいろんな教育の器材なんか入っているわけですが、残念なことには、小さいところへ行きますと、それを運営をする、その施設を管理する人が配置をされていないわけなんです。そうすると、箱は立派にできましたけれどもそれを運営する管理監督の要員がいないものですから、今社会一般に言われておりますようなカルチャーセンターというような格好で、自主的にみんなが集まって自主管理でやっていこうというのができれば理想的なんでしょうけれども、それはやっぱり生活実態と直結をしておりましてなかなかそういう暇人はいない、だれかが管理してほしいと思うけれどもそういう人員配置がないものですから、結局かぎをかけたままでその立派な箱物は眠っている、機能してないということじゃ、これは目的からいっても非常に問題があるんじゃなかろうか、このように私は思っているのです。どうして人がいないんだろうと聞きますと、なかなか予算が厳しくて思うように人の配置がされない。やると言うんだったら県段階でやらなきゃいかぬ、県にも予算がないからいつも交渉の議題に上ってしまう、それでわんわんやるんだというようなことで、仏つくって魂が入らないということを一歩も出ていないケースが非常に多く見受けられるわけです。  こういう点を考えますと、同和対策事業についてはまだまだそういうソフトの面というのが非常に不足をしていまして、残事業そのものも相当持っております。今日まで関係省庁でも抽象的な金額が明らかにされておりまして、聞くところによると全体では五千七百十六億程度ですか、厚生省の管轄の事業だけで八百十六億ですか、こういうことを私は数字で聞いているわけですが、それくらいの残事業があるということについては間違いないわけですね。お聞きしたいですが、厚生省どうですか。
  92. 小島弘仲

    ○小島政府委員 地域改善事業といたしまして、環境整備等を中心に厚生省もいろいろ担当してまいっておるわけでございますが、現在、法施行後新たに追加的な地区指定と申しますか、地域として認定いたしまして新たに出てきた事業量を含めまして、残事業というものが六十二年度以降約八百億程度になろうかと考えております。
  93. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 これは全体としてはどんなものなんですか。厚生省だけしかわからないですから。
  94. 熊代昭彦

    熊代説明員 お答えいたします。  法の有効期限も約一年残しておりますので、現段階で確たることは全体としても申し上げられないことは御了承いただきたいと思いますが、まず第一点といたしまして、地対法制定時に予定いたしました事業につきましては、一部の事業を除きまして法期限内に大部分が実施見込みとなっております用地対法制定時予定した事業のほかに、その後新規に加わった事業を加えますと、建設省が約三千三百億円、それから厚生省は、ただいまお答えがございましたが、約八百億円、農林水産省が約五百八十億円、文部省が約十七億円、自治省が約十五億円というふうに各事業所管庁では把握しております。これらにつきましては、各事業所管庁で今後十分精査をされるというふうに承知いたしております。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 総務庁の方から今関係省庁の残事業の総額ですか、御答弁をいただいたわけですが、厚生省の管轄の具体的な内容というのはおわかりですか。ここでわからなければ別途資料をいただきたいと思うのです。
  96. 小島弘仲

    ○小島政府委員 大きなものは地区道路でございまして、その他橋梁、排水、簡易水道等々がございます。
  97. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今説明のあったことを中心にして、具体的な内容をひとつ資料でいただけますか。
  98. 小島弘仲

    ○小島政府委員 現在各関係地方公共団体へ上がってきたものを総計した額が八百億ということでございまして、今後その内容は精査しなければならぬ性質のものでございますが、それぞれ事業別に取りまとめた数字をお出しできると考えております。
  99. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ひとつ資料の方をよろしくお願いを申し上げたいと思います。  いずれにしても、これは所管が総務庁なんですけれども、そのような残事業が残っておりまして、地対法のリミットまでの間にそれを完成をしていくというのですか。それができなければさらに継続をして取り組んでいくという課題になるわけですね。そういう考え方で理解していいですか。
  100. 熊代昭彦

    熊代説明員 先ほども申し上げましたが、現在まだ約一年弱ございますので、これらの事業の取り扱いにつきまして、現時点においては現行地域改善対策特別措置法の有効期限内に所期の成果を上げる、それがまず先決であるということでございます。  その後残ります事業、確かにあり得るわけでございますので、それをどうするかということでございますが、真に必要である事業は必ず実施するというのが基本的な精神ではないかというふうに考えておりますが、いかなる方法でそれを実施するかということは現在検討中でございます。地域改善対策協議会におきましても基本問題検討部会を現在設置していただいておりまして、同和対策の適正化対策とともに今後の課題等についても十分御検討いただけるのではないかというふうに期待しているところでございます。
  101. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いかなる方法でやるかというのはともかくとして、必要なものは引き続きやっていかなければいかぬ、こういうことなんですね。  そうすると、必要なものをやっていくということになれば、それは法律に基づいてやらなければ、勝手にやれないと思うのですね。その点どうですか。
  102. 熊代昭彦

    熊代説明員 真に必要なものはやっていくということが基本的な精神ではないかと申し上げたわけでございますが、現行の法律がございまして、それに対しまして補助率のかさ上げ等を行っているのが地対法でございますので、現行法の体系でやるのか、従来の方針でやるのか、あるいは新しい方針が打ち出されるのか、そういうことを含めて検討中ということでございます。
  103. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ですから、どういう法律でやるかというのは、今おっしゃられたようにまたそれの検討が必要なんですけれども、いずれにしても何らかの法的措置をとってやっていかないとできないわけですから、そうなんでしょうとお聞きしているわけです。どうですか。
  104. 熊代昭彦

    熊代説明員 ただいまお答えしたとおりでございますが、何らかの法的措置と申しましても、現行の地対法以外に関連の法律がございまして、現行施策の中で法律が整っているということでございます。地対法はそれに対する特別措置を定めているということでございますので、極論すれば、現行の他の法律でやるというのも一つの方法でございましょう。それから現在の地対法のような特別の法的措置をつくるというのも一つの方法でございましょうが、それらの方法を含めましてどういう措置が同和問題の解決のために一番適切であるか、そういうことを検討して決めてまいりたい、こういう趣旨でございます。
  105. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私は細かい技術論を聞いているわけじゃなくて、そういう何らかの法的措置でもってやらなければいかぬけれども、その検討される基本的な立場というのは、歴史的に見ましても同対審答申から始まっているわけですから、そういう考え方に立って検討される、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  106. 熊代昭彦

    熊代説明員 検討いたします基本的な立場は、いかなる措置が同和問題の解決のために最も適当であるか、そういう観点だというふうに考えております。
  107. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いずれにしても残事業があって、現行法制下の期限内ではその残事業が完了できないということになれば、引き続いてそれを何らかの法的な措置でやっていかなければいかぬ。その場合にいろいろな検討がされるでしょうけれども、しかし、その立場というのは、やはり同対審の考え方に立ってやっていただきたい、このように強く求めたいと私は思うわけです。  次の問題に移りたいと思います。  国民健康保険団体連合会ですか、この問題にかかわりまして質問をさせていただきますけれども、この連合会のやっております仕事というのは、保険者から委任をされた仕事をやっているわけですから非常に重要な仕事だと思うのです。ですから、連合会に対しまして交付金ですか毎年出ておりまして、五十九年が二十一億八千万、六十年度が二十億、六十一年度が二十一億と、金額の増減は多少ございますけれども、これはそのように知事が認可しておる団体でもございますし、国としても国民健康保険の仕事を一手に引き受けて作業をやってくれている団体だ、こういうふうに重要な団体であるということを認めて交付金を出しているんだ、このように私は思うのですが、そういう理解でよろしゅうございますか。
  108. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の国民健康保険団体連合会でございますが、これは国保の保険者が共同してその目的を達成するというために組織されました保険者の連合体でございまして、国民健康保険上におきます公法人であるわけでございまして、先生御指摘のような審査、支払いの事務その他、保険者が共同して効率化という面から非常に重要な役割を果たしているということでございまして、そのために私どもが予算を計上いたしまして、その事務を推進していくための補助をしているわけでございます。
  109. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 補助金をもらった団体連合会の方ではどういうものに使っているのですか。これは人件費ですか事務費、その辺をちょっと……。
  110. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 国民健康保険団体連合会に対する補助の中身は、審査、支払いの事務とか、各種の共同事業をやっていただいておりますので、その事務費に充てるという考え方でございます。
  111. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 この補助金というのは、団体連合会が運営しています総予算の中に占める割合というのはどの程度ですか。アバウトでいいです。
  112. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 ただいま資料を持っておりませんのでわかりませんが、国民健康保険団体連合会の主な収入は審査、支払いの手数料というものを各保険者からいただいて運営しておりますので、私どもの補助しているのはそのごく一部だというふうなことでございまして、正確な数字は今ちょっと持ち合わせておりません。
  113. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いずれにしましても、国民健康保険の制度を三十六年からそのようにしまして皆保険制度がしかれてからというのは、この団体の業務のパブリックサービスの重要性というのはふえることはあっても減ることはない、こういう性格の仕事をやっているところだ、私はこのように考えるわけです。  ところが、心配なのが二つほどございまして、一つは、そういう重要な仕事をやっている団体なのですけれども、昨今の財政事情が厳しいという中で、この交付金にまで削減の手が及んでいくということになるんじゃなかろうか、こういう心配があります。二つ目は、もちろんそれとは無関係ではないのですが、言うならば仕事が行革関連の中で見直しをされていくという状況が想定されるんじゃなかろうか。これは、そこに働く職員にしてみれば職場確保の問題、生活の問題ということになっていくわけでして、そういう心配について厚生省としてはどのような立場をおとりですか。
  114. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 国庫補助の関係でございますけれども、六十一年度におきましては二十億一千六百万ということでございまして、非常に厳しい国家予算の中で昨年度を上回る金額を確保したわけでございます。  現在、国保の関係は大変厳しい状況に置かれているわけでございまして、医療費の適正化といいますのが非常に大きな課題であるわけでございまして、国保の連合会におきます診療報酬の審査事務といいますのはますます重要になってきているわけでございます。それから、退職者医療制度ができましたりあるいは高額医療費制度が複雑化する、こういったように国保の事務が複雑化しておりまして、その事務の効率化と申しますのが非常に重要になってきているわけでございます。これの効率化という面から、保険者事務の共同電算処理事業とかあるいは保健施設事業とか、こういったものを私どもは非常に国保連の方に期待しているわけでございまして、国保連の活性化といいますのが私ども国保課の重要な任務になっているわけでございます。  国保連の業務と申しますのはますます重要になっているということでございますので、厚生省といたしましては、今後とも国保連の事業が円滑に運営されますように配慮してまいりたいというふうに考えております。
  115. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 わかりました。職場の方でもそれらしい不安というのが声となって出ているというのがよくわかるのですが、恐らく事務の電算化、合理化ということがそういう不安として声になっているように思うのですね。私も答弁を聞きまして思うのですが、この国保法の四十五条の第五項では診療報酬支払基金とそれから国保連合会の二つの団体が併記をされておりまして、何か分担をして仕事に携わるというのですか、法律の条文でいきますと「委託することができる。」こうなっています。ですから、厚生省のそういう今の発言を聞きますと、恐らく当該団体としては、こういうような条文の関係もあって、二つの団体を一つにひっつけて、それで事務の簡素化、合理化で、仕事そのものはおっしゃったようにこれはもう絶対的に大事な仕事だというのはわかっているのだけれども、そういうふうに具体的にやられたらこれは先行き大変不安じゃないかという気持ちが出てくる、そこへ行ってしまうのですが、このことは関係ないですね。どうでしょう。
  116. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 先ほど御指摘の支払基金でございますが、これはまさに審査支払いの専門機関であるわけでございます。国保の連合会の関係は、これは市町村の共同事業というふうな形でやっていただいておりますので、一般論としては、これは公の法人でございますので社会的に有用である限りは存続するということになるわけでございます。したがいまして、保険者である市町村なりあるいは国保組合、こういったものから指示され、必要不可欠のものであるという限りにおいて必要な団体だというふうになるわけでございます。したがいまして、現段階では国保の関係の全団体が国保連の方に審査支払いを委託する、それから共同事業もやっていただいているというふうな関係があるわけでございますので、その限りにおきましては、私どもも後押しをしましてこれを発展させていきたいというふうに考えているところでございます。
  117. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 よくわかりました。言われているその趣旨は私も正しく理解したいと思っておりますが、結局こういうことですね。法的な地位がはっきりしているということですね。ですから、そんなことであいまいにいく問題じゃなくて、ちゃんとこの法律によって法的な地位がきちっとしているのだ、表現はこんな表現になっていますけれども、何かそのことだけをとらえていたずらに不安に考えるということは要りませんよというか、そういう問題と次元が違いますよ、こういうふうに理解していいですね。
  118. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 現在、支払基金と国保連の両方に委託される条文の形になってきているわけでございますが、私どもの立場からすれば、支払基金と申しますのはまさに審査支払いの専門機関でございますので、この地位そのものを否定するというわけにはいかないわけでございます。したがって、実質的に国保連が保険者にとって有用なものであるという限りにおきましては、当然国保連の方を優先してやるべきだというふうに考えております。
  119. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 とにかくそういうことなんで、余り心配はするな、法的にもちゃんと守られているということを聞きまして、一応この問題については終わりたいと思います。  最後の問題になるのですが、大蔵省に二、三点お伺いを申し上げます。  補助金の見直しと今後の対処方針ですが、将来の展望などはこれまでの審議を通じまして随分深められてきたところであります。私は一、二点お伺いするわけですが、今回の特例法がもし成立すれば、六十三年まではやられていくというのですが、それ以降の補助金の見直しの問題、地方自治体との業務分担、事業分担のあり方の問題、こうなるわけですけれども補助金というのは、よって来るところ、財政が厳しくて、財政再建の計画路線の問題とは不離不可分の問題だ、私はこう考えるのですが、次長の御発言を聞いていますと、何かそれがそういうふうにセットで、財政再建ができれば補助金の問題は片がついたんですよという問題ではない、補助金補助金のあり方として、財政再建のいかんにかかわらず、永遠の課題としてこれは追求していくんだ、このようにお考えなんでしょうか。その辺はどうでしょう。
  120. 保田博

    ○保田政府委員 今回の補助金の一括引き下げを含みます補助金の総合的見直しのきっかけは、先生まさに御指摘のとおり、現在の非常に危機的な財政状況がそのきっかけをなした、このことは我々も否定するものではありませんし、検討会の報告にもそのことは書いてございます。  と同時に、その検討会の報告の冒頭の部分であったと思いますが、そこに書いてございますように、補助金というものは、国の施策を全国レベルで一定の水準に維持する、さらには特定の行政目的を奨励、助長するための非常に大きな政策的手段として意味のあるものである。そういうことではございますけれども、一方では、従来からいろいろな意味での批判がございます。既得権化するとか、それから地方の自主性を損なうとかそういった指摘がございますので、そういうものの是正という意味では、今回の補助金の総合的な見直しをもって補助金の整理合理化あるいは効率化といったものが終わったということではなくて、さらに今後もそういう方向で補助金の整理合理化は進めていかなければならない、そういうことを申し上げておるわけであります。
  121. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 これは当面のいわゆる特例措置というふうに名称がなっているごとく、やはり私たちはそういう受けとめ方だと思うのです。おっしゃるような本当に総合的、体系的に手をつけていくその出発点が既に一昨年であったし、昨年から始まっているということになるのだったら、このことは今回の法案審議に際しても、大蔵当局として大方針はこうなので、少なくとも中期的に整理統合なりあるいは自治体との分担の問題にしてもこのようにやっていくという、言うなれば将来展望をずっと持っていけるような中期展望の具体的な中身というのが出なければ、どうも私は審議しておっても、当面これでいってというような格好で、それじゃけしからぬとかけしかるとかいう議論にどうしたってなるのじゃないかと思うのです。  一方、受けて立つような立場に立っています自治体にしてみれば、いろいろな事業をやってきて、重要な事業というのはやはりどうしても補助金と絡んできたと思うんですね。そこのところが、国はあなたがおっしゃるような格好で来ているのだろうけれども、自治体の方にしてみればそういう立場でどこまで地方議会でも議論がされているんでしょうかと、私は随分疑問に思っておりますよ。ですから賛成反対という、ちょっと言葉は過ぎるかもしれませんが、そんな短絡的なことになっていったとしたら、これは中央と自治体との関係でぎくしゃくする、そのことで問題が起こるということでは、これは補助金制度の抜本的な見直しにかかられている大蔵省の立場としてもやはり意が満たないのじゃないかと私は思うんですよ。  ですから、そうだとするならば、やはりもっときちっとしたものを出されて、こうなんだから向こう三年間このようにしたい、さらにその次はこのようにやっていきたい、その上で皆さんどうでしょうかというふうに問題提起があってもいいように私は思うのでございますが、その点はどうでしょうか。
  122. 竹下登

    竹下国務大臣 いささか政治課題でございますが、これは私見を申し述べると大変失礼な話ですが、本来は、国の財政というのは基本的に国の外交、防衛、治安、教育というようなことであって、身近な問題は地方団体でそれぞれ分担されるというのが、本当は地方自治のあり方からすれば望ましい姿であるとかねがね私は考えております。  しかしながら、三千三百二十四でございますかの各都道府県、市区町村の税源がばらばらでありますから、どうしても国で調整する措置をとらなければいかぬというのがかつての平衡交付金制度であり、今の交付税であろうというふうに考えております。したがいまして、そういう夢のような話といいますか大方針は別といたしまして、現状から見てみますと、まずは車の両輪である。そこで今おっしゃった、何よりも大事なことは言ってみれば国と地方との信頼関係だ、その信頼関係が、やはり私ども国会でも追及を受け、反省したのが昨年の法律審議の際ではなかったか。まあ言ってみれば、間に合わぬのでアバウト一律で、とにかく一年限りで、その間に何とか勉強しますからという性質の法律を提出をして御論議をいただいた。したがって、その信頼感をどうしてもつないでいくためにはというので、今度は閣僚会議のもとに検討会を設けて、村長さんも市長さんも知事さんも入ってもらってというところで、幾らかでも信頼感というものを回復していこうという考え方に立って行ってきたわけであります。  したがって、今度の検討会等の報告書を読んでみますと、確かに身近なものは地方でやって、そして基本的には半々で、しかし、より国にその責任の度合いの強いものは三分の二で、あるいはより少ないものは三分の一でとかいうような感じで、ある程度コンセンサスができた。ところが社会保障の、なかんずく生活保護に対してだけはコンセンサスができなかったから両論併記をいただいた。  そういうことでございますから、私も率直に申しまして、ある程度コンセンサスがいただけたものだとすれば、最初は、せめて財政再建期間中というので五年間でお願いしようかなと思いました。しかし一方、考えてみますと、税制の抜本策の審議が今行われておる。そうしますと、いわば国税、地方税のあり方というようなものでも変化が全くないとは言えない。そうすると、答申がことしの秋までにいただけて、仮にいろいろな税制が六十二年から稼働いたしますと、中には十月実施とかいろいろなものが出てくるかもしらぬ。そうすると、六十三年ということになれば、それが平年度化するということが一つ考え方。それからもう一つは、やはり生活保護は両論併記だったから可能な限り詰めた議論を引き続いてしなければならぬ、こういう考え方で三年、こういうことにしたわけですから、三年が理論的に、かくも正しいものはないというような気持ちでは、率直に言って私もございません。この辺が適当であろうというまさに政策判断としてそうしたというだけのことであります。  したがって、将来の税源配分をどうやったら一番いいかということは、やはり毎年毎年の議論の中で進んでいくべき課題であって、その都度都度の財政事情等を考慮しながらやっていかなければならぬから、あらかじめ定量的な一つの青写真をお示しするというのは、実際問題やってみると大変難しい話でございます。最初私が言ったように、外交、防衛は国で、あとは地方で、こういうようなところまで描けばなおのこと税源配分のアンバランス等からして大変なことでございますので、したがって、今おっしゃるように、地方とて中期的な計画をいろいろ立てていかなければならぬわけですから、可能な限り安定したものにするという基本的考えは私も賛成でありますし、そうした努力は今後とも積み重ねていかなければならない政策課題であるというふうに思っております。
  123. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 もう最後にしたいと思うのですけれども大臣から見解をお伺いしておりまして私思うのですけれども、結局夢のような話、確かにそうだと思うのですね。どこで線を引くかとかどうあるべきかと描いてみたって、政治は動いておりますし、毎年毎年の予算を組まなければいかぬ、なかなかそうはいかぬと思うのです。大きなチャンスといいますと、今もお話がございましたように財政再建、そのために六十五年脱出ということで税制の抜本的な改正に取り組まれると政府は言われているわけですから、そのときの税源配分の問題なり税の分担のあり方なりの検討を離れてはこの補助金問題はなかなかメスが入らないと思うのです。これは与野党それぞれの立場での意見の濃淡はあります、違いもありますけれども、言うならば非常に国家的な一つのチャンスのときに抜本的なものをひとつびしっと出せば、それでまた一定期間は、言うならば自治体は自治体で、そのようになったんだから我々もこのようにやっていこうという腹構えができるように思うのです。  私、いつも不思議に思いますのは、補助金カットの問題が出ますね。全国の知事の皆さん方も反対だといっていろいろやられますね。議会で議論が半ばしてきますと、案分比例の問題でもそうですが、一転しまして、今度は、早くやってくれというような電報が私たちにも参ります。一体これはどういうことなんでしょうか。そういうふうな考え方で自治体もその場しのぎで金さえ取ればいいんだ、そんなこと思っていないと思いますけれども、言うならばそういう気持ちを強く受けるわけです。  そんな格好で地方自治体も対処されていくというのでは、今大臣が国と地方が本当にしっかりコンセンサスを得ながらと一口に言われますけれども、克服すべき課題も多いのではないか。そういうものを整理していく時期が来ているように思いますので、私たちは私たちの考え方がございますけれども大臣の方もひとつ英断を下していただいて、こういう展望なんだということを早く出していただかないと、その都度その都度の議論になるじゃないか、こういう感を強くしておりますので、時間がありましたらもう少しG10の問題も聞きたかったのですが、この辺で質問を終わらせていただきたいと思います。
  124. 小泉純一郎

    小泉委員長 午後一時五十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十分開議
  125. 小泉純一郎

    小泉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田弘君。
  126. 柴田弘

    柴田(弘)委員 中曽根・レーガン日米首脳会談が行われました。私どもも、これは新聞、テレビ等で報道される範囲内でしか理解がないわけでありますけれども大蔵大臣の御理解はいかがですか。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 私も外務省へ入りました公電を読ましていただいたということと、新聞を読ましていただいたということで、大蔵省として部内でそれ一つ一つを分析してという状態にはまだございませんが、従来からの経緯を確認され、私に直接関係のある部分においては、今後とも両国が密接な関係をとりながら、いわば世界経済に貢献していくために政策の調和をやっていこうというようなことが基本的に合意された、なお見ますと、前川提言に対する関心が非常に深かったというふうに、まだ今見届けておるという程度の状態でございます。
  128. 柴田弘

    柴田(弘)委員 大蔵大臣のおっしゃるとおりだと思います。  こういった質問をするのは確かに先走って酷かもしれませんが、しかしこれはサミットも控え、非常に大事なことですので、そして我が国も内需拡大の要請が非常に強いということで、それとの関連において私はいろいろと御質問をしたいと思っているのですが、やはり私いろいろ考えておりまして、相当な重荷を背負わされたのじゃないかなという理解を直観的にしているわけであります。  つまり、一つは、MOSS協議の個別品目の中に自動車部品を繰り入れるという問題、それからワインですとか半導体ですとかたばこ、これをレーガン大統領から輸入拡大を要請されて、そして一応継続協議ということになったにしましても、やはり総理は輸入拡大ということをきちっと表明されている、こういった一つのミクロの問題。そしてもう一つ、これは大蔵大臣にも大いに関係があると思いますが、マクロの経済運営というものは非常に大事である。つまり今、経構研の報告のお話があったわけでありますが、一私的諮問機関である経構研の報告というのが、まだ十分国会においても議論されておりません。そういったものをアメリカは非常に評価したということのようでありますが、やはりこれについてのしっかりとした議論もしていかなければならないと私は思います。  それはさておいて、要するに輸出依存型経済から輸入依存型、つまり内需拡大型の経済への転換、つまりマクロで言う経済調整というものが私は非常に大きな課題になってくるのではないかという理解をいたしているわけでありますが、大臣いかがでしょうか。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 今御指摘なさいましたように、いわゆるMOSS協議の具体的問題点、まさに、ミクロの問題につきましては、今のところ具体的品目においてどういうものがこれから議題にされるかというようなことにつきましては、まだ詳しい報告を受けておりません。ただ、いわゆる中期、長期といいますか、長期の関係になりますと、おっしゃいますとおり我が国の経済の構造そのものを変化させていくという方向で、今いみじくもおっしゃいましたこの輸出依存型から内需依存型へ、なお突っ込めば偉大なる輸出国から偉大なる輸入国へ、こんなようなことであろうと思っております。  それから中期の問題につきましては、私もきのうちょっと勉強してみましたが、原油価格が二月の終わりまではまだ二十七ドル台でございますが、初めて二十二ドル台の分が到着したというような問題、これが大きな影響を及ぼすでございましょう、徐々に下がっていくわけでございますから。さらには、いわゆるドルベースではJカーブでまだ輸出がふえておりますが、円ベースないしは数量ベースでは輸出が減ってきておりますし、それからやっと数量ベースで輸入の方がふえてきたというのが、三月末の統計で初めてきのう見せていただいたわけでございますけれども、逐次、いわば今まで行ってきた通貨調整と我が国の内需拡大策の効果が、ほんの逐次でございますけれども、あらわれてきておるなというふうに見ておるところでございます。  いずれにいたしましても、マクロの経済体質の改善というのは、いずれの日か日本としてくぐっていかなければならない問題が非常に近いところに来たというふうな問題意識は、柴田さんと等しくいたしております。
  130. 柴田弘

    柴田(弘)委員 やはり大蔵大臣と私の考え方というのはそんなに違わないと思います。十分御理解いただいております。  これは私、ミクロとマクロという言葉を使って恐縮でありますが、この個別品目の問題も大事ですけれども、これも難しい問題でありますよ。だが、このマクロの問題というのは、この間大蔵省が発表いたしておりました我が国の六十年度の貿易黒字、これも五百二十五億八千四百万ドルですね。最高であった五十九年度三百五十億六千六百万ドルを五〇%も上回る史上空前の水準にある。しかも、このうち対米黒字というのは四百三十三億四千八百万、これもまた史上最高であります。私はマクロと言いますが、大蔵大臣は中長期とおっしゃる。やはり本当に今後の経済運営あるいは金融政策のとり方が非常に大事になってくるということは、これは大蔵大臣もよく御認識をいただく。  そこで、さらにお尋ねしていきたいわけでありますけれども一つは、先ほど来お話がありました経構研の問題です。これは一私的諮問機関なんですね。これにアメリカは非常に興味を持ったといいますか、理解を示した。しかし中曽根総理は、この具体的な手順というか方向というものはまだ示されなかった。ところが、きょうの報道を見てまいりますと、要するに計画をつくるために推進本部をもう設置する、こういう報道があったわけでありますね。一歩踏み込まれた。果たしてどうかなという疑問を私、持っておるのですね。  それから二つ目には、今後の経済運営を考えてまいりますと、私はどうしても第三次の公定歩合の引き下げというのは、総合対策の第一番目に挙げられておりますように、いわゆる金融政策の一つの大きなポイントでもあろう、こんなふうな理解をいたしております。  それから三つ目には、公共事業の拡大、追加措置、それにあわせての所得税を中心とする減税、こういったものがきちっとかみ合っていかなければ、アメリカ側の言うそういった要求というものの貫徹はできない。しかし、これはまた、ミクロの問題でも個別的な問題でも、また一つの大きな問題が出てくる、こういうことでありますよね。  概括的に申しましたが、まずこの三点について、大蔵大臣の御理解というのはいかがでありましょうか。
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 まず第一番に、経構研の位置づけということについて御意見を交えての御質問でございますが、おっしゃるとおり、総理大臣の私的諮問機関であることは事実でございます。税制調査会とか財政審とか、そういう法律に基づくものでない。したがいまして、昨日もちょっと議論がございましたが、例えば税制の問題に触れたとすれば、それはやはり正確に税調に報告して、その中で結論は出していただけるものであろうというふうに考えるわけでございます。  それから、財政政策の問題につきましては、やはりそれらを踏まえて財政審等でも恐らく御議論をいただけることであろうというふうに思っておるところでございます。  今、それを踏まえての三つの問題でございますが、一つはいわゆる弾力的な金融政策の運営についてでございます。私どもG10の合意と申しますか、いわば日本、西ドイツほどではないにしても、他の先進国もインフレがだんだんに鎮静しておりますので、したがって、そういう環境は整ったということであると私も思っております。ただ、いずれにせよ、公定歩合の操作というのはこれは中央銀行の専権事項であるということで、適切な判断がなされるものであろうというふうに私どもは期待をしておる。恐らく、三月三十一日で連動金利が決まって、政策金利はこの間の八日に決まったわけでございますから、それらの推移を眺めて適切な判断を行われるであろうというふうに考えておるわけであります。  二番目の税制の問題は、これは六十一年度税制に対して、税制の改革をする場合抜本策の審議中だから根幹には触れない措置をとってもらうようにという税調の答申をいただいて、先般税法等を通していただいた。一方、幹事長書記長会談の年末までにという問題も残っておりますが、これには最大の協力を申し上げることは事実でありますが、恐らくあの方々も税制調査会の推移を横目で見ながらいろんな御議論をなさるであろうというふうな感じで受けとめておるところであります。したがって、いずれにせよこの税制の抜本策につきましては、やはり税制調査会の答申をちょうだいした後、政策選択の課題として上るであろうというふうに思っておるところであります。  それからもう一つの、いわゆる公共投資の拡大の問題でございますが、先般の総合経済対策、その決まる日にはちょうど私留守にしておりましたけれども、この問題につきましては、いわば戦後最大の前倒し率とでも申しましょうか、なかなかこの問題は、何・何%ということをお示ししてそれが間違ったときにはまた政府の信用にも関しますので、建設省は八〇%やれますとかいろんな議論があるようでありますが、いずれにせよ、この問題につきましてはこれからいわば戦後最高の率を目指して前倒しをやっていこう。そもそもが四・三%伸びております上に、御案内のように原材料が皆下がってまいりますから、私は事業量というものでは相当な期待ができるのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  132. 柴田弘

    柴田(弘)委員 一番初めの御答弁、重大な課題である、重大な認識に立っておるという答弁と今の三点についての答弁は、これはものすごく僕は矛盾していると思うのですね。これは、今までどおりの答弁の繰り返しであります。  日米首脳会談を踏まえて、果たしてアメリカ側からいろいろな点を言われた、それに対して総理は相当な決意を表明された。それに対してアメリカ側もやはり期待がある。そして、マスコミの報道によれば、日米が協力してこのサミットを乗り切っていこう、こういうことですね。これは表面的なものだけであって中身は何もないじゃありませんか。先回も発表されました七項目にわたる第三次の総合経済対策だって、これはそんなことを申しては恐縮ですが、私は、何も第三次の総合対策だと言って打ち出すまでもない。今まで既に実施をすべきものであり、また今後当然実施をしていかなければならぬことばかりであります。私は、そんな理解であります。  だから、今日のこういった、いわゆる五月のサミットを迎え、日米首脳会談を終えて、これだけの大きな貿易黒字がある、これに対して本当に日本経済構造の調整ということをやっていくには何か一歩踏み出したものがなければならない、こういった観点で私は質問いたしておるわけであります。いかがですか。
  133. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆるマクロ経済の持っていき方についての認識は、共通した土俵の上において行われた。それで、具体的な今日的問題につきましては、これはMOSS協議等これからの問題でございましょう。しかし、基本的な考え方としてはそういうスタートをするわけでございますから、私どももこれに対しては十分な配慮を行っていかなければならぬ課題だというふうに考えております。  金融政策はちょっと外に置きまして、二番目の税制の問題につきましては、やはりこれは抜本審議にその大宗はゆだねるべきものではなかろうかというふうに考えております。  それから三番目の、公共事業の問題につきましては、今、前倒し執行ということでありますが、今度の場合、約三分の一くらいでございましたか、補助率関係のないものはすべて箇所づけを行った。そして、補助率関係のあるものにつきましては、まさに御審議いただいている法律が成立するや否や、諸準備は整えておりますので、これを執行段階に移していくというもろもろの準備はそれぞれの原局で今行われておるというふうに考えておりますので、日米首脳会談の成果が着実に実を結ぶように私どもも努力しなければならないと考えております。
  134. 柴田弘

    柴田(弘)委員 実を結ぶように努力をしていかなければならぬ、こうおっしゃっておるのですが、私もくどく言いたくないのですが、一歩も踏み出していらっしゃいませんよ。だからこれはアメリカ側にただ期待感を持たせるだけじゃないか。私はそのようなお答えであれば憂慮せざるを得ない。  第二点目の減税の問題だって、税制調査会で今審議をされている、そんなことは私もよく知っています。そして六十二年度に税制の抜本改正を行う、これもよくわかるのでありますが、今五百億ドルを超える貿易黒字、これを何とか解消していかなければならない、こういった点、私はやはり内需拡大一つの最たる目玉の政策である、こう思います。だから私どもは、中曽根総理に対しても、制度改正というのは大変なんだから、そういうことを今やっておみえになりますから、戻し税減税というのもいかがなものであるかという提言もいたしております。これは、一つ意見として申しておきましょう。  三番目の公共事業の拡大というのは、六十一年度予算が成立した今の時点において、前倒し八〇%をされた後の追加措置をどうされるのかということをお聞きしているわけでありますが、どうも答弁になっていませんね。金丸幹事長が十二日に大津において記者会見をされて、建設国債を発行して追加措置をしましょう、大型補正が必要ですよなんということを発表されたとも私は記憶しております。私は、公共事業の追加措置というのは、日米合意を踏まえてサミットを乗り切っていく、そして、夏から秋にかけて本年度の経済運営でとり得る一つの大きな政策選択ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  135. 竹下登

    竹下国務大臣 公共事業の前倒しの効果というのはこれから見定めていかなければなりませんし、さはさりながら、日米双方が基本的に合意しておりますのはインフレのない持続的成長をしようということでありますから、いわば過度の集中とかいうようなことをさせてもなりません。  それから、柴田さんおっしゃいましたけれども、予算の上がった今、まだその執行の基礎になる補助金法案も御審議いただいておるさなかに、私は補正予算を考えていますと言うわけには、大蔵大臣、そうはまいらないということでございます。
  136. 柴田弘

    柴田(弘)委員 いよいよ本音が出てきましたね。私の気持ちはわかっていただけるでしょう。そういうマクロの経済運営というのは、これから極めて難しいというか、厳しいときに入ってきたのではないかということを御認識いただいたと思います。具体的には、減税あるいは公共事業の追加措置等々はこれからの一つの大きな課題になってくる、こういうことを御指摘申し上げまして、時間の経過もありますので、補助金の問題に移りたいと思います。  そこで大臣、今回の補助金削減は地方への負担転嫁がなされた、こう私は思っておりますが、どうなのでしょうか。
  137. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに昨年度六十年度の法律というのは、財政事情がこのような状態にあります、個別に事業執行の分野調整とか費用負担のあり方とかを議論する時間的な余裕もなかった、したがって、アバウト一割削減ということでお願いをした。そのかわり、一年かかって本格的な議論をいたします、それに基づいて、閣僚協議会、検討会におきまして今日の時点における一つの費用負担のあり方というものの報告をいただきまして、補助金補助率関係法律案を今審議していただいておる、こういうことであります。  もちろん、国、地方の財政状況というものを全く加味しないわけではございませんが、村長さんから市長さんから知事さんからそれぞれ入っていただいた検討会において、生活保護の問題につきましては両論併記でしたけれども、現状において一応の御報告をいただいたものを最大限尊重して法律として仕上げて出しておる。そして、それに伴う地方負担の増につきましては、これこそマクロの地方財政計画の中で適切な措置をしておる、こういうことで御審議をお願いしておるというのがまさに現状そのものでございます。
  138. 柴田弘

    柴田(弘)委員 では、大臣に反論する意味において、自治省お尋ねいたします。余分なことは言わないで、簡潔にイエスかノーかで答えてください。  私も、昨年一年間地方行政委員会で勉強させていただきまして、補助率一律カットの問題を審議させていただいたわけであります。いろいろお尋ねしたいのですが、一つは経常経費の補てんの問題です。  六十年度と六十一年度の補助金カットを比較してまいりますと、私は経常経費の補てんについては後退しているのではないかというふうに思います。六十年度の場合は、交付団体分の二分の一つまり二千億の二分の一でありますね、これを交付税特例加算一千億ということでしております。しかし今回は、交付団体の影響の二分の一は現金で、つまり特例加算で補てんするというようになっていない。二分の一相当額は二千四百四十億円でありますが、これに対してたばこ消費税の引き上げの交付団体分八百五十億、そして交付税特例加算一千二百億、合計二千五十億円で、なお二分の一に不足をし、その差額三百九十億――大蔵省なり自治省から出た調査報告によれば四百億となっておるわけでありますが、これは六十六年度以降に交付税に加算することとされている。つまり交付団体にとっては、影響額が二千億から四千八百八十億円に増加した上に、六十一年度における現金による補てんは影響額の二分の一に達せず、六十年度以下の割合にとどまっている、こういう計算になるわけですね。
  139. 持永堯民

    ○持永政府委員 六十年度あるいは六十一年度の当該年度だけの措置を見ますと御指摘のとおりでございますが、今お話がありましたように六十一年度の場合は後年度加算がございますので、それを含めて考えますと同じ措置をとっておる、こういうふうに理解をいたしております。
  140. 柴田弘

    柴田(弘)委員 要するに私の指摘するのは、経費の補てんについて六十一年度は影響額の二分の一に達しない、六十年度以下の割合にとどまっている、だから後退している、こういうふうに理解するわけですが、これはいいですね。  二つ目は、地方財政の硬直化という問題でお尋ねしたいわけであります。  今回の財源不足は形式的には補てんをされております。その財源構成も、増税による地方税あるいは交付税の特例加算、つまり一般財源二千四百億円で、比率は二〇・五%、建設地方債が九千三百億円で七九・五%。六十年度の一般財源、交付税特例加算が一千億、一七・二%、建設地方債が四千八百億で八二・八%、これより若干改善されておると言えますね。しかし、建設地方債は九千三百億円で、六十年度の四千八百億円の二倍に近いわけであります。これは公債費の増加となって今後の地方財政構造の硬直化を一層進行させ、圧迫を加えるのではないか、こういうふうに思うわけであります。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕  連合審査においていろいろ指摘があったわけでありますが、既に昭和五十八年度決算は、公債費の負担比率が一五%というのが自治省の警戒ラインということでありますが、それ以上の団体が千七百八十八団体。これが五十九年度には千九百七十八団体。全体の五四・一%から五九・九%に上昇をいたしております。それから危険ラインと言われる二〇%、これ以上が六十年の八百二十団体、二四・八%から千三十三団体にふえまして三一・三%になっております。このような財源補てん措置が果たして妥当と言えるかどうかという疑問を私は持っております。でありますから、特に地方財政というのは六十年度末で五十六兆四千三十八億円の借入金残高を抱えておりまして、この借入全体質からの脱却と財政構造の健全化が迫られているときに、こうしたことは逆行するのではないか、こういうような考え方をいたしております。この辺はいかがでございましょうか。
  141. 持永堯民

    ○持永政府委員 今数字を挙げてお話ございましたとおりでございます。  それで、そういうことでございますので、この財源措置につきましても、できれば地方税とか交付税とかいういわゆる一般財源で措置をすることがベターであることは申し上げるまでもないわけでございますが、ただ、現在の財政状況のもとでやはりそれもなかなか難しいわけでございますので、地方債を使っていくということもやむを得ない措置であろうと考えております。  その結果として、御指摘のように財政硬直化になることは事実でございますが、ただ、そのことによって将来の地方財政なり将来の個々の団体の財政運営に支障が来るようなことでは困るわけでございますので、そういった公債の償還の問題につきましては、後年度におきまして交付税の特例加算あるいは毎年度の地財計画、地財対策を通じて遺漏のないように対応をしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  142. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それで、交付税の償還ですが、やはり交付税総額というのはこれによってふえるのですか。ふえないでしょう。三二%でしょう。その中で元利償還をやっていくわけでしょう。そうすれば、実質的に、交付税総額が一遍に、下がってくると私は思っておるのです。これは昨年も議論いたしました。その辺はどうですか。
  143. 持永堯民

    ○持永政府委員 毎年度の交付税は御案内のとおり国税三税の三二%でございますから、その中から元利償還に充てていくということになりますと、残りの分は圧迫されるということは御指摘のとおりでございます。  そこで、これは将来の毎年の交付税の伸びがどうなるか、あるいは地方税がどういうことになるかということとももちろん関連があるわけでございますが、そういったものを踏まえた上で毎年の必要な交付税総額、今御議論になっております公債償還費をも含めまして毎年の地方財政の支出すべきものがどの程度あるかということは、地財計画の策定を通じて数字を出していくわけでございますから、それを賄えるだけの交付税総額というものは確保していかなければならない。したがいまして、従来も三二%とは別に、特例加算とかあるいは臨時特例交付金とかいういろいろな形で、いわば上積みといいましょうか、三二%部分にプラスアルファをしてきた例もあるわけでございまして、今後とも必要に応じてそういう措置をとることによって毎年の必要な交付税総額を確保していくということが必要であろうと考えております。
  144. 柴田弘

    柴田(弘)委員 要するに、この元利償還によって交付税総額の減につながる、こういうことが実際はあってはならぬと思っておるわけです。これはもう昨年も議論いたしました。でありますから、今地財計画、こうおっしゃいましたが、私はどうもその辺がいかがなものかという疑問を正直言ってまだ持っているのです。自治省、一生懸命御答弁をされて、そのお気持ちはようわかるのでありますが、どうも私は疑問が払拭されません。これは一言申しておきます。  それから次は、生活保護の問題について、これは先日の連合審査のときにも議論をいたしましたが、厚生省にお尋ねします。  生活保護というのはやはり国の責任において行う、これはもう先般厚生大臣もたしかそのように御答弁なさったと記憶いたしておりますが、これはどうでしょうか。
  145. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 生活保護は、おっしゃるとおり憲法二十五条の理念に基づきまして、最終的には国の責任におきまして国民の最低生活を保障するというような性格のものでございます。
  146. 柴田弘

    柴田(弘)委員 御答弁があったように、生活保護法第一条にそのようにうたわれているわけでございます。  今回十分の七に据え置いた理由というのは、私はどうしてもわからない。検討会報告は十分の八に戻せ、あるいはまた三分の二でいい、こういう議論もあったわけでありますが、要するに結論が出なかったわけであります。結論が出なかったのであれば、私は当然これは十分の八に戻すべき性格のものである、こういう考え方を持っているわけでありますが、大臣、どうですか。
  147. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘がありましたとおり三分の二という意見と、それから十分の八という意見とがあって、結論から言いますと、おっしゃるとおり議まとまらず、いわば両論併記という報告をちょうだいしたわけでございます。したがって、ぎりぎり、今度は政府部内においての政策選択の問題ということになりまして、昨年どおり十分の七というもので――大体今度は二分の一、三分の一、三分の二という非常にわかりやすい補助率で整理したいという気持ちはありましたが、一年やってみた十分の七でもって三年間やらしていただこうという結論に達しましたので、今十分の八にもう一遍返すという考えには残念ながら立てないというのが現状でございます。
  148. 柴田弘

    柴田(弘)委員 大臣お尋ねしますけれども、この生活保護の問題を含めまして地方制度調査会あるいは地方財政審議会のいろいろ答申がありますね。その答申というものについて政府がそれをどのように実行していくか、つまり政策を選択しているか、こういったものを考えた場合に、こう言っているわけなんですね。  地方制度調査会は、これは総理の諮問機関でありますけれども、対象事務事業の廃止縮小を基本とすべきであり、国の財政負担を地方公共団体に転嫁すべきではない、それから、補助金の創設は厳に抑制されるべきである、これは補助金の整理合理化に逆行するものである、あるいは国の財政上の都合によって一律に国庫負担率を引き下げてはいけない、こういうようにいろいろ言っているわけですね。  それから地方財政審議会は、これは自治大臣の問題ですが、事務事業の見直しを行うことなく補助負担率のみを引き下げることは、単なる地方への負担の転嫁であり、とるべきでない、それから、国の負担率の見直しは国と地方との機能分担の見直しとあわせて行うべきであり、国の財政上の都合によって国の負担率のみを引き下げることは単なる地方への負担の転嫁であり、国と地方との間の財政秩序を乱すことになるので行うべきではない、こう言われております。  そこで、一つは今の生活保護の問題も、地方財政審議会の答申、「とくに、生活保護行政については、今後とも国の責務として実施されるべきものと考えられるので、国と地方との負担割合は変更すべきでない。」こうあるのです。確かに十分の八に戻しなさいということは数字的なものでは言っていませんが、この心はやはり、生活保護というのは国の責任において行うべきものなんだ、だから十分の八にすべきだということが込められているというふうに私は理解しておるわけなのです。それは間違いないと思っております。大臣は、十分の八に戻さない、こういうことでありますけれども、これは大蔵、厚生、自治三省で合意したと言われますが、一番問題になったのはここだったと理解しているわけであります。自治省、厚生省、この点どうでしょうか。
  149. 持永堯民

    ○持永政府委員 ただいま地方制度調査会なり地方財政審議会の意見について御指摘がございましたが、この意見につきましては今お話があった趣旨で書かれているものと受けとめております。  したがいまして、私どもといたしましても、生活保護については事務事業の見直しということもなかなか難しい面がございますので、そういったことから補助率の変更というのはなかなか難しい問題ではなかろうかと考えまして、検討会におきましても閣僚会議におきましても意見調整は大変難しかった。ただ、最終的には大蔵大臣が御答弁されましたようなことで、政策の選択として今御提案申し上げておりますような道を三年間は選ぶ、その後の問題は引き続いて三大臣で協議していこうということに相なったわけでございます。
  150. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 補助金問題検討会で福祉関係、生活保護を除きますほかの事業につきましては事務の性格を変えたわけでございますが、生活保護については機関委任事務という性格は変えない、こういうことになったわけでございまして、それだけ国の責任は重いということははっきりしておりますが、具体的な補助率について意見が分かれたわけでございます。  私どもといたしましては、国の責任ということを考えますとほかの福祉関係の仕事と比べて補助率が高いのは当然だと存じますが、その具体的な補助率をどのようにするかというのは今後の検討課題と考えておるところでございます。
  151. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今、今後の検討課題と厚生省から答弁がありました。私は絶えずこの法案は撤回せよと言ってまいりましたが、撤回せよと言っても大臣は撤回しませんとおっしゃるでしょうね。私が百歩も千歩も二千歩も譲って――くどいように言いますけれども、この法案には反対なのですが、大臣、今回十分の七に据え置かれたというのは財政事情が一番だったと思うのです。そして三省、三大臣で合意されたと思うのです。だから、自治省の答弁が一番そっけないわけで、それから厚生省は、何とか検討課題だとおっしゃる。そこで大蔵大臣なのです。三年間暫定措置と言われておるわけです。いろいろ税制の大改革もあり、財政改革も行われてくるでしょう。であれば、三年たって四年目に戻すという答弁はできないかもしれませんが、生活保護は国の責任で行う事業であることにかんがみ、そういう方向での努力をするというぐらいは答弁してもおかしくないと思うのですよ。どうですか。
  152. 竹下登

    竹下国務大臣 憲法第二十五条に基づいたこの問題、昭和二十一年以来議論していらっしゃったものを一遍読ませていただいたことがありますが、本当に長い間大議論をなすって――それは、戦前フィフティー・フィフティーの時代もありました。それから、戦後わずかな時代でございますが、全額国費であった時代もあったやに聞いております。そうして、長い間の議論の末十分の八というものがずっと継続している、その重みは私も理解ができるところでございます。そしてまた、憲法二十五条に基づく生活保護法第一条、そういう精神は私どもも十分理解できることでございますから、この補助率をどうするこうするということはその時点で三省協議して決めることになっておりますので今日そのことを具体的に申し上げるわけにはまいりませんが、憲法二十五条からきた生活保護法第一条の精神というものは極めて重いものであるという問題意識は私も持っております。
  153. 柴田弘

    柴田(弘)委員 検討会の報告を非常に尊重された。昨年議論いたしておりまして私どもが期待しておったのは、補助率について一年かけて役割分担、費用負担のあり方をじっくりと検討することになっておった。ところが、今の生活保護を初めとして両論併記があったり、あるいは個々の補助率について検討会が何も言っていない。この間私が指摘しましたけれども、例えば義務教育費国庫負担金の恩給費とか共済追加費用というのは検討会報告で何ら触れられておりません。従来の二分の一を三分の一に引き下げてしまった。それは、見直せということは検討会で言っているかもしれませんよ。けれども、三分の一にしなさいなどということは言っていませんよ。公共事業についても、社会資本の計画的整備や内需拡大にこたえ、事業費確保のための財源対策として見直しを行うことはやむを得ないと言っているだけであって、個別に見直す場合の基準あるいはあるべき補助率の方向性等については何ら触れられておりませんよ。これは大臣もよく御承知だ。  やっと大蔵省からそれについての資料をいただきました。ここで一々これを読み上げる暇はありませんが、河川法による補助事業は十分の六から十分の五・五、砂防法補助事業が同じく十分の五・五、国土調査法十分の五・五ですね。きちっとしたそういう報告がないのにかかわらず引き下げられているという問題もあります。検討会の報告を尊重すると言っておられますが、本当に尊重されているのだろうか、そのようになっているか。どうも私は疑問を禁じ得ません。  だからどうだということはきょうは質問いたしませんが、検討会の最後の「むすび」のところで「今回の措置は、当分の間の暫定的なものとして行われるべきものと考える。」「国・地方の財源配分のあり方についての抜本的な見直しは今後の課題とされている」そして「政策分野の特性に配慮しつつ、今後とも引き続き事務事業の見直しを行う必要がある」こういったことから暫定措置だ。しかも、前段では「基本的には、事情の許す限り極力安定的なもの」にしなさいとも言っておるわけであります。  そういうことをあれこれ考えてまいりますと、私は申しわけない言い方をして本当に恐縮でありますが、検討会のメンバーの方は真剣にやっていただいた、十二回も一生懸命に会談を重ねられたのですが、本当の見直しということについては未成熟ではなかったかという気持ちを禁じ得ません。本当にこれが金科玉条になるかどうかというふうにも、申しわけない言い方をして恐縮でありますが、思っているわけであります。この辺は大臣、どうお考えでありますか。
  154. 竹下登

    竹下国務大臣 粗っぽく申しますと、いわば公共事業関係につきましては事業費の確保ということが前提にあったことも事実であります。したがって、定量的な書き方でなく、御報告は、今御指摘なさいましたとおり、かくかくするも適切な配慮を行うべきであるとか、やむを得ないとか、そういう書き方になっております。主として議論をいたしました社会保障の問題については、生活保護を除く一応の考え方がまとまった。元来、総論に書いてありますとおりです。本当は安定しておってこそ、地方自治体も先に対する計画も組みやすいでございましょうし、また毎年毎年変わったら地方負担の点もございますので、非常に先の見通しもつかないということがございますので、可能な限り恒久的なものがいいという考え方は、私も思いを一つにいたしております。  私の個人的な考えの中にありましたのは、財政再建期間中、いわば五年というような気持ちがなかったわけじゃもちろんございません。が、一つは、生活保護問題がいわゆる両論併記になっておるし、もう一つは、税制改正というものが一方にあって、それらに照準を合わせたら三年というものが妥当なのかなという結論に到達したわけでありますが、総論に掲げてありますように、可能なことならばこれは安定したものであってほしいということは事実でございます。しかし、社会保障によらず、いろいろ御議論をいただいたことは事実でありますので、やはりこの報告を可能な限り尊重すべきものであるという観点に立ったわけであります。
  155. 柴田弘

    柴田(弘)委員 私の質問に対して、ずっとどこかへ飛んでいっちゃったような感じでして、どうですか、端的に聞きましょう。  三年間せっかくの暫定期間があるのですから、やはり安定的なものにするという観点からも、一遍きちっとした見直しをする期間というものを考えられたらどうか、こんなふうに私は思っているのですが、大臣はそんなお考えはありませんか。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 もう一度いわゆる補助金問題検討会、名前は別にいたしましても、そういうしっかりしたもので十分検討を行って洗い直す考えはないか、基本的にそのような御趣旨であろうと思っております。  六十一年度以降の補助率の見直しということで今回補助金問題検討会において、国と地方との役割分担、費用負担のあり方等について十分な検討を行っていただいて、その結果を踏まえた補助率の総合的見直しということで今御審議をお願いしておるわけでございます。その限りにおいては、六十年度とりました補助率のあり方、補助率のあり方を一年かけて検討しますので一年の暫定措置にしてくださいというのとは基本的に性格は変わっておるではなかろうか。それで、補助率のあり方についての関係閣僚会議がなされました後、その目的を終えたものとして一応廃止しておるわけでございます。  したがって、これからの問題につきましては、要するに補助金問題というのはエンドレスに毎年毎年議論していかなければならぬ問題でございますから、必要なものは取り上げるにしても目的を終わったものは終止符を打たなければなりませんし、そういう毎年毎年の努力をしながら、そして六十四年に至りましたならば、いわゆる今後の情勢というものを見きわめながらまた三大臣寄りまして相談して決めなければいかぬことだから、今八条機関とかあるいは私的機関とかを設けて別途審議していただこうという考え方には現段階では立っておりません。
  157. 柴田弘

    柴田(弘)委員 最後に、先般も当委員会において参考人の方からいろいろ御意見をいただきました。なるほどなと思ったのが、私、三点あります。  この補助金の整理合理化、これは一体どういった観点でやっていくかという問題でいろいろ御意見をいただいたわけでございますが、一つは、やはり二十一世紀を展望して、地方がそれぞれの特性を生かし伸ばしていく国と地方とのあり方をもっともっと議論すべきじゃないか、こういった御意見がありました。私もなるほどと思いました。だから今、補助金の整理合理化の中でこういった議論一つはきちっとしていくべきだ、こういうふうに私も考えております。  それから二つ目には、きょうは時間がありませんでしたからこの問題は質問できませんでしたが、今地方は一生懸命行革をやっております。自治省の行革大綱に基づいて地方行革をやっている。その地方行革をやっている地方自治体が努力をして報われる補助金の整理合理化のあり方、政策選択の展開というものをやはり図っていかなければいけない、これが二つ目です。  それから三つ目は、これを言うとまた大臣の答弁は決まっているので本当は言いたくないのですけれども、「昭和六十一年度の地方財政についての意見」、これは、先ほど来私が言っております地方財政審議会。あるいは地方制度調査会、こういったところの答申を見てまいりましても、「国・地方をあわせた効果的な財政の再建を達成するため、国は、早急に中長期に及ぶ財政再建の具体的な方策とスケジュールを明らかにすべきである。」あるいはまた「国は、早急に財政再建のための中長期に及ぶ具体的な方策を樹立し、明らかにすべきである。」これは地方制度調査会。つまり財政再建計画ですな。やはり地方に負担を求める以上は、今大臣も安定的にしなければならぬとおっしゃったが、国の財政の都合だけによってこのような補助率のカットが行われる、こういうのは地方にとってはたまったものではないわけでありますね。しかもこの財政再建計画というのは、本委員会で私がしばしば申しておりますように、国が財政再建を進めていく上にも、国民の共感を得るためにもやはり必要なものである、私はこういうふうにも考えているわけであります。  時間がありませんのでその三点、ひとつ簡単で結構でございますから、御答弁をいただきたいと思います。
  158. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、二十一世紀を見通したという、これはまさに政治のあるべき姿であろうと私は思っております。  それから二番目の、地方行革を熱心にやったところが結果として報われるということは、いわばそれを行ったところへ特別の助成を行うということでなく、結果として現実が報われる姿になるということは、この行政改革というのを進めていけば必然的にそういう結論が出ていくべきものであろうというふうに私は思っております。  それから三番目の問題は、これはいつも議論される、いわゆる国の財政再建とももちろん符合する話になりますが、この問題についてなかなかリジッドなものを出すわけにいかない。したがって、毎年毎年少しでも新しい資料を出して、国民のコンセンサスが那辺にあるかを見きわめながらやっていかなければいかぬということで、私は、最初からリジッドなものをきちんと出すというのはどう作業をしても本当に難しいものだということで、苦悩をしておるというのが毎日でございます。
  159. 柴田弘

    柴田(弘)委員 三点目の財政再建計画は、たまたま私が昭和五十四年に本委員会に初めて席を得ましたときに、大蔵省としても何とかつくろうかということで頑張っておみえになったんですよ。ところが、結果的に「財政の中期展望」だとか「仮定計算例」になってしまったんですね。私は、つくるのは、今大臣がくしくもおっしゃったように本当に難しいことだと思いますよ。難しいことですが、その必要性というのは大蔵大臣でもお認めになっているのじゃないかということを私は感じております。答弁は要りません。ちょうど時間になりました。その点だけ申し上げまして、私の質問を終わります。
  160. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 安倍基雄君。
  161. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この補助金カット法案につきましては、去年も同じ話がございました。同僚議員もいろいろな面からもう既に追及している点かと思いますけれども、このカットはいわば一年限りだったというつもりがいつの間にか長くなって、今度は六十一年から六十三年までだというぐあいに決まってきたわけでございます。これだって同僚議員もお話がございましたけれども補助金率は変わってくる。それが予見されない形だ。一遍カットされてもとへ戻ると思って考えていたのが、そうじゃなくてやはり続く、そしてまた新しく導入される、そうなると、非常に計画しづらい話が出てくるということで、基本的にまたそれが続くのか、あるいはまたもっと導入されるのか、その辺非常にあいまいでございます。補助金は将来どんどん削っていくというのであれば、これはまた随分いろいろ議論があると思いますけれども、やはり正直にどうなんだという姿勢であるべきなのではないか。  去年の補助金カットのときに、どうもはっきりしない、一年限りでございますということを非常に強く言われまして、我々もそうなんだろうなと思っておりましたら、やはりそうではなかった。今度は三年間。このカットが一時的なものか、恒久的なものか、むしろ補助金は全体的にこれよりも減らしていくつもりなのか、基本姿勢がどうもちょっとあいまいなんで、本当に減らしていくなら減らしていくぞ、そのかわり別の手を考えるということをむしろ正直に言うべきじゃないか。この辺どうなんでございましょう。今度の補助金カットというのがまた恒久化されるのか、あるいはもっと導入されるのか、もとへ戻るのか、どうもその辺がちょっとはっきりしないのでございます。  既に大臣も何回もお答えになっていると思いますけれども、冒頭に、どういう姿勢でおられるのかまずお聞きしたいと思います。
  162. 竹下登

    竹下国務大臣 去年は、確かに、私も一年かかって本格的な検討をいたします、したがって、その一年間の検討をする間いわゆる一律一割カットということで御容赦いただきたいというので、一年限りの暫定措置ということでお願いをしました。  そこで一年かかって、閣僚協を持ち、その下に関係者の検討会を設けていただいて、十二回の審議をしていただいて報告をちょうだいをいたしたというものに基づいたものでございますから、私もいつも申しますように、可能な限り安定した方がいいに決まっておりますので、実際問題、少し長くすることも考えないわけではございませんでしたが、結論から申しますと、社会保障については両論併記、こういうことになったという諸般の情勢を考えて三年間ということでお願いをすることにした。  されば四年目はどうするかということになりますと、今税調審議していただいております国税、地方税のあり方ということで財源配分とかいうものがうんと変わってくればまた別になりますが、それとの推移を見るにはちょうどまた三年が適当であろうというふうに思っておるところであります。将来どうするかということはまさにそのときに考えるべきことでございますが、本来ならば、可能な限り国は外交とか防衛とか治安とかそうしたところをやって、身近な問題は地方でおやりいただくというのが好ましいあるべき地方自治の姿であると私は前々から思っておりましたけれども、何分税源が大変にばらばらでございますので、そんなに一概に私が言うような理想像が描けるとは思いません。しかし、六十四年度以降の問題については、今後行われるであろう税制改正等もすべて含め、その時点において三者でまた相談をしょう、こういうことになっておるわけでございます。
  163. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 そういたしますと、むしろ補助金は基本的には減らしていった方がいい。それは逆に、税源を案分することによって地方は地方で自立させるべきである。そういうことであるとすると、長期的に見たときに、補助金はむしろ減らしていく方向になるのでございましょうか。これは今のお答えのように税源配分はどうなるかということにも依存しておりますから、一概には言えないわけでございますが、税源配分がうまくいくのであれば、いわば先々の理想像としては補助金はむしろ減らしていくという話し方のように受け取りましたけれども、そう理解してよろしゅうございましょうか。
  164. 竹下登

    竹下国務大臣 一概に断定することは私もできなかろうと思いますが、私がいわば政治家として前々から考えておるのは、可能な限り自主財源が地方自治にはあった方がいいという基本認識であります。ただ、今御指摘なさいましたように、税源に大変な差があるわけでございますから、そこにそれらの調整措置というものはやむを得ないと思っておりますが、私自身が政治家としてかつて描いたのは、可能な限り自主財源で地方自治の本領が発揮されるのが妥当であろうという考え方は持っております。
  165. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、このような場でお話ししたことがあるいはあるかと思いますけれども、海外におりましたときに、ある地方自治体が新しい発電所をつくるのについて、みんなから金を取って新しいのをつくるか、あるいは今のままで我慢するかということをけんけんがくがく議論して、結局は今のままで我慢しようという結論を出したのを見まして、これが本当の地方自治なのかと思った。周りの町村、あるいは地方自治体がよくなればそれに合わせて自分の財源を無視してもやるというのではなくて、それぞれの財源を持っておって、その中でどのくらい大きな政府にするか、小さな政府にするか、政府じゃなくて市町村ですね、そういうことを考えていくのが本当の自治体なんだろうな。となれば、この程度の財源はあるけれども、それをフルに使うか使わないか、それは地方がそれぞれ決めていくというのが一番いいのじゃないかなという気持ちを昔持ったことがございますけれども、あるいは大臣の御意見もそれに似たようなことかと思います。私は、いわば地方の財政というものが非常に中央ともたれ合って、それで大きなむだを生じておるという気がいたします。  その点がございますから、この補助金が将来カットされるのかどうかということは、今の財源との割り振りとおっしゃいますけれども、基本的には財源を与えることによって補助金をなくしていくという方向で考えられると言われるのではないか、私もそれがいいのじゃないかという気がいたします。  それと関連しまして、さっき同僚議員も話されましたけれども、いわゆる生活保護などというものは補助金なのかどうか。むしろ全国一律に同じレベルでやるのであれば補助金の概念で考えていくべきものなのかどうか、物によっては地方に任すものがある、あるものについては国全体が見るべきものがある、となると、生活保護なんといってきますと、これはローカルのそのところどころによる生活費の高い安いという要素はあるかもしれませんけれども、生活費的なものは別といたしまして、これはむしろ全国レベルで物を考えるべきだな、これを地方負担、一部は補助金という概念で割り切るのはどうなのかなということで、むしろいろいろのものにつきまして、本来国がやるべきものあるいは地方と分担すべきものということを分けて考えていくべきものではないかな。  でございますから、今度の老人福祉法、児童福祉法、これは何か話を聞きますと、それぞれある程度裁量権を与えて、それで地方地方である程度負担する。最初老人福祉法と書いてありましたから、老人福祉もやはり全国一律にすべきじゃないかなと思ったのでございますけれども、中身をよく聞いてみますと、養護老人ホームに入るような総合基準とかいうものは全国で決めるけれども、それを運用でもう少し地方に任せるという意味合いにおいて地方の負担をある程度ふやすというぐあいに聞いておりますが、そういう税源の見直しとともに国のやるべきこと、あるいは地方と分担してやるべきこと、これのもう一遍洗い直しが必要じゃないかなという気がいたします。国がやるべきことについては、補助金という概念ではなくて国が直接負担するんだという概念で考えていいんじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  166. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいはこれは厚生省からお答えをいただいた方がより正確かと思いますが、今度の社会保障を主としての検討会の作業を見させていただきますと、随分その議論がなされて、そこで機関委任事務の団体委任事務化を行うとかいうような、今おっしゃった裁量権等を与えながら、基準は基準として持ちながら、身近なものから地方の事務事業の見直しあるいは費用負担のあり方というようなもので決まっていった。生活保護だけは、今おっしゃったように憲法二十五条から生活保護法第一条でございますか、私も見させていただきましたが、戦前五分五分であった。それかう一時期全額国庫であった。これは占領下でございましょうが、その後八割対二割というもので五十九年まで継続してきておるという意味においては、そのあり方についてまさに見直された結果が今度の改正になった。三分の二と八割の問題は両論併記でありましたから、十分の七ということにしましたものの、そういうお考えで見直された形が今度の検討会の報告になったというふうに私どもは理解をいたしておるところでございます。
  167. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今大体の私の考えにつきましても御賛同いただけるようでございますが、これからの問題で、たしか私も以前から指摘するのでございますけれども、税源配分ということが一番問題になっておる。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕  税源配分は、国と地方の税源配分が基礎になっておるわけでございますけれども、本会議でも指摘したのですけれども、大都市と地方の中小との差と申しますか、その辺がだんだんと広がってきているのじゃないかな。最初それを導入したころはそんなに差はなくても、これが長い目で見たときに都市の地価が上がる、本社もそういうところに持ってくるというところから、当初意図したときと比べまして、これは非常に長いレンジで物を見なければいけないわけでございますけれども、いわゆる地方税収入がメガロポリスに集中しつあるのではないかな。  この間私、本会議でお話ししたときは人口九・六%の東京都に一七%の地方税収入が落ちてきている。たしか法人住民税なんかはもう四分の一くらいではなかったかなというぐあいに記憶しておりますけれども、こういったことがいわば放置されているというか、これは地方自治だから仕方がないという考えもあるのです。といって、地方自治といっても国と地方に対する税源配分はもともとあるスタートラインで決まったわけですから、地方自治地方自治と言うのは、その辺が本当に偏在していく税源であればそれ自体見直さなければいかぬという問題があるかと思うのでございます。  自治省にお伺いしたいのですが、地方税収入がメガロポリスに集中している程度、これはどうなっているのか、長期的に見てどうなっているのかということをお聞きしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  168. 前川尚美

    ○前川説明員 お答えを申し上げます。  地方税収入がメガロポリスに集中してきているのではないか、あるいはその程度がどの程度かということでございます。  先ほど先生の方からいろいろ数字の御指摘もございました。私ども、地方税につきましてはできるだけ地域的に普遍性の高い税目によって地方税の体系を構成することが望ましい、そういう要請がございますし、また一方では、応益原則に適合する税目をあわせてその体系に取り込む、こういうことも地方団体の役割としては非常に重要なことではないかと考えているわけでございます。そういうことで、その両要請を満たす体系を持つようにしてまいりたいと常々検討いたしているわけでございますが、しかし、結果的に地域地域で経済力に格差がございますと、その限りにおいてはある程度税源の偏在ということは避けられないことでもあろうかと考えるわけでございます。  先ほど御指摘がございましたが、昭和五十九年度の決算で見てみますと、例えば東京都における地方税のシェアといいますか地方税全体に占める構成割合は一七%をちょっと上回る形でございます。一七・二%ということになっております。  あと、メガロポリスとしてどの辺を考えるかということもございますけれども、神奈川、愛知、大阪といったようなものを含めますと四〇%をちょっと超える程度のシェアがそこにある。これは一つには、単に税源がどうあるかということもございますが、あわせてやはり事務配分、それぞれ国と地方の役割分担あるいは都道府県と市町村の役割分担、そういったことがいろいろ総合された結果として税源配分というものを考えられているということで、御指摘がございましたが、やはり大都市の需要増に対処するためにかつて大都市の税源の充実が図られてまいったという経緯もあるわけでございます。  今後これがどういう傾向をたどるかというあわせてのお尋ねもございました。先ほど五十九年度の決算の数字を申し上げましたが、手元の数字によりまして四十八年度の決算と最近の五十九年度の決算を対比してまいりますと、いわゆるメガロポリス地域と言われておるところの税収のシェアというのは、若干ずつではございますが低下をする傾向をたどっているというのがある程度中長期的に見た全体の傾向ではないかと考えるわけでございます。  ただ、そうした中で経済力の高い地域ではある程度税収の伸びもございます。それがそのときどきの日本経済、国際経済の中でいろいろな影響を受けてまいりますから、単年度単年度で比較して増があった、減があったということもございますけれども、それをなべてこれから先どう推移するかということになりますと、私どももう少しその状況を見守ってまいる必要があるのではないかというふうに考えております。
  169. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間がないと思ったので余り昔の数字まで取り寄せなかったのですけれども、四十九年と五十九年の十年間というのが本当の意味の傾向性をあらわすかどうかという問題があるのですね、いわゆるオイルショック以後の時期ですから。ですから、もう少し昔のいわば交付税が導入され地方税体系が大体できてきたころと比較してみますと、恐らくだんだんとアンバランスが拡大してきているのではないかなと僕は思います。  四十九年から比べると五十九年はむしろメガロポリスは少し減ってきているよとおっしゃいますけれども、これは急にお話を聞いたものですから余りそこは追及いたしませんが、この辺はより長期的にもう一遍調べていただきたいと思います。その結果は、私の観測としては当初よりも恐らく集中してきている。例えば東京都では、緑のおばさんが月給を二十万円もらっています、二十三区全部でたしか八十億くらい使っていますというような話を私はこの委員会で聞いたことがあると思うのですけれども、それを地方に行って話しますと、みんな目を丸くするわけですね。要するに、地方の市町村なんというのは本当にぴいぴいして、それで交付金に頼っておる。ところが東京あたりでは、私の記憶が正しければ、緑のおばさんで八十億使っているというような返事があった。ということは、一方においては財源が集中しているためにむだが行われている。ですから、国税の三分の一を地方にどんどん流し込んであれするのも、それは貧乏なところには仕方がないのですけれども、富裕なところは黙っていても――何も東京ばかりを目のかたきにするわけではないのですが、今度の東京都庁の新しい庁舎なんかすばらしいものをつくる。そんなお金があるのだったら、もう少し地震対策とかをやった方がいいのではないかと内心、これは内心ではなくて僕は本当に思っているのです。  さっき、地方自治体の財源と補助金との関係というお話が出ましたけれども、まさにこの偏在――例えば法人住民税なんというのは、本社を東京に置けば自然に集まってきてしまうわけですね。これが果たして地方税としていいのだろうかという問題もあるわけです。ですから、さっき大臣御自身がおっしゃったように、地方に財源を与える場合にどの財源を与えるかというのは非常に大事なので、余り一部に偏在するような財源を与えてはいけないのではないかと思います。これはまた後で一括して御感想をお聞きします。  これとの関連自治省の方にお聞きしますけれども、交付税と地方税収入の比較、あるいは地方財政に占める国の補助金の割合、それは中長期的にどう変化しておるのですか。
  170. 持永堯民

    ○持永政府委員 地方交付税と地方税収の割合につきまして、昭和四十九年と五十九年、十年間の間の数字を申し上げたいと思います。  決算ベースで申し上げますと、昭和四十九年度におきましては歳入決算総額の中の三五・一%が地方税でございます。それが五十九年度には三九・一%ということで、地方税の構成比は上昇いたしております。  地方交付税につきましては、同じく歳入決算総額に占める構成比は四十九年度で一七・九%であったわけでございますが、五十九年度では一五・五%ということで、若干減少いたしておるわけでございます。  それから国庫補助金でございますけれども、手元の資料は地方財政計画ベースのものでございますので決算とはやや異なるかもしれませんが、おおむね変わりはないと思います。昭和四十九年度の歳入中に占める国庫支出金が二六・一%。これが五十九年度では二一・三%ということで、五%弱減っておる、こういう推移に相なっております。
  171. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 大体十年間の動きがわかったわけでございますけれども、地方税がふえていることはいいことというか、頼り方が少なくなっているということでございますね。  それで、この間における地方債の残高がどう動いてきておるのかということをお聞かせ願えますか。
  172. 持永堯民

    ○持永政府委員 具体的な数字は今ちょっと持ち合わせておりませんが、昭和五十年度以降、御案内のように国も地方も財政収支にギャップが出てまいりました。そのギャップを補てんするために、五十年度以降、地方財政におきましても毎年かなり大幅な地方債の増発を行ってまいっております。そういったことの結果、四十九年度と五十九年度を比較いたしますと、残高はかなりふえているということは申し上げ得ると思います。
  173. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私が急に質問したものですからまことに申しわけなかった。  私は手元にございますが、地方債の残高は四十九年度が八兆五千億ですかな、これが四十一兆になっているのですな。急に資料をとったものですからあれですが、これを見ますと地方債がべらぼうにふえている。確かに地方税収入、交付税、ある程度ふえておりますけれども、交付税は十年間に倍程度だ。地方税収入が三倍ぐらい。これを見ると地方債の残高はすごいふえ方でございまして、このままで地方財政やっていけるのかなという気がいたします。ここで補助金をどんどんカットしておいて、地方にいわばしわ寄せしていくということもさることながら、この地方債の増加を考えますと、これは非常に寒心にたえないというか、本当に心が寒くなる思いでございます。  要するに国がこういった財政難に陥った。その次のことを地方が行っている。その過程において補助金がどんどん切られていく。しかもその切られ方が生活保護とか福祉にまで及んでいるというわけでございます。補助金カットもいいのですけれども、本当の意味の地方財政の今後についてどう考えていらっしゃるのか。行革行革と言っておられますけれども、私は国の行革については世間の目も厳しくて相当進行してきていると思います。しかし、地方の行革というのは、非常に大事だと言っておりますけれども一番おくれているという気がいたします。その点、自治省はどういうぐあいに考えておられるのか。地方の自主性を重んずるということでそのままにしておくのか。その辺の、今後の態度と申しますか方針をお聞きしたいと思います。
  174. 持永堯民

    ○持永政府委員 御指摘ございましたようなことで地方債残高は大変ふえております。六十一年度末の見込みといたしましては、地方債以外に違う形の借入金もございますけれども、いずれにしても借入金、借金総額は五十八兆程度になるというふうに見込んでおるわけでございます。そこで、将来これが大変負担になるという御心配は私どももそのように認識をしておるところでございます。  さすれば今後どう対応していくかということでございますけれども、やはり今お話もございましたように、まずは行財政の簡素化と申しましょうか、あるいは行政改革と申しましょうか、そういう経費の節減合理化を図っていくということは当然のことながらやっていかなくちゃならぬと思います。しかし、そのことだけで地方財政の健全化ができることは、計数的に考えましてもとても難しいだろうというふうに考えております。その意味で、これから税制改正についての議論もあるわけでございますけれども、地方財源の問題、地方税あるいは地方交付税等々の充実を図っていく必要があるだろうというふうなことで考えておるわけでございます。  あわせまして、国と地方の仕事の役割分担と申しましょうか、関係でございますけれども、本委員会でもたびたび御議論がございますが、補助金等について整理合理化を進めるべきであるという御議論もございます。確かに補助金等によりまして地方はいろんな仕事をやっておりますけれども、やはり地域地域の必要性に応じた仕事の仕方をしていく。もちろん生活保護とかあるいは義務教育とかいうものは全国どこでもやらなくちゃならない仕事でございますが、ある地域によっては必要ない、ある地域では必要であるというような性格の仕事も随分あるわけでございますので、そういった面については補助金の整理合理化をしていただき、あるいは一般財源化をしていただくことによって、地方の本当に必要な仕事に絞ってやっていくという意味で国、地方を通じた簡素化ができると思いますので、そういったことも努力をしていかなくちゃならない。いろんなことをあわせまして対応しなければならないと思っておりますが、そうは申しましても現実には大変困難な面もあると思いますけれども、いずれにしても、地方財政の健全化に向けて最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  175. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは事務当局のみならず自治大臣にもお聞きしなくちゃいけない話だったかと思いますけれども、以前から国と地方との業務の再配分あるいは税源の再配分ということが議論されているのでございます。なかなかそれはそう簡単でないことは事実でございまして、それぞれの既得権と申しますか、それぞれの今までの歴史がございますから一刀両断にはできない話でございますけれども、まずこれだけ国の財政が悪くなってきた、地方に対する補助金にしても、援助をカットせざるを得なくなってきた、一方において地方の方もだんだんとその債務がふえてくるというこの時期において、私はやはり二つのことをやらなくてはいかぬだろうと思うのです。  事務と税源の再配分、これがまず第一点でございます。それとともに、さっき経済力の差によってという話もございましたけれども、明らかに偏在せざるを得ない税目が随分あるわけですね。そういったものを放置しておくと、本当に富んだメガロポリスはますます富み、そこでは非常なぜいたくが行われる、ところが、本当にローカルの小さな都市においてはひいひい言っておって、国からの援助がないとやっていけぬ。税源といってもなかなか固有財源はない。これから税源を再配分するといっても、経済的に発展していないところは本当に税源がないということで非常に格差が広がる。例えば今度の定数是正の話があっても、これは大都市周辺にどんどんと人間が移動してきちゃうところから生じておるわけでございますね。経済原則という面もありましょうけれども、その経済原則を超えて、税源的な話でももうちょっとその辺の案分がうまくいっていれば、あるいは一方において過疎ができ一方において人口がどんどん集中するということもある程度是正されるのじゃないか。  したがいまして、私がここで提言している第二の点、これは以前ここでもお話ししたことでございますけれども、何か偏在しない地方税、余り不公平にならない地方税というものを探し出していく。偏在するようなものについてはむしろ交付税みたいなものにして、逆にそれをプールして交付税みたいな形で流し出す。と申しますのは、現在の我が国の地方交付税は、いわゆる基本税でございます三税の三分の一が地方に行くわけでございますから、増税をしても三分の一は天引きだ、片一方では富裕なメガロポリスがあり、ますますその格差が広がる。全体としての不合理が非常に目につくわけでございます。でございますから、補助金カットといういわば対症療法ではなくて、体質そのものを変えていくというような是正措置が長期的には必要なのではないか。  私は、十年前はどうだった、二十年前はどうだったということをよく聞くのですけれども、どうも我々の論議はこの数年間ばかりを問題としてされているのです。だから、さっきの交付税にしても、そのころから比べてどう変わってきているんだ、その辺をよく見ながら、この制度は発足当時はまあまあだったけれどもそれが適応しなくなっているのではないかなというような洗い直しがやはり必要だと思うのです。その点私は、地方自治だから国が容喙できないという話じゃなくて、もともと国と地方との財源案分を最初ある時点でやったんだ、それは既得権と言うけれども、長い間にはだんだん適応しなくなってきている可能性がある、それをもう一遍洗い直すという作業を始めなくてはいけないのじゃないかと思うのです。  確かに国の行革は大分進んできた。地方の行革は一向に進まない。国はどんどんと切っていくが地方はどんどんと借金をふやしていく、こういうところを本当に今こそ基本的に考え直して取り組むべきじゃないか。確かに補助金問題検討会は、この補助金についてはカットすべきだとか、この補助金については国の負担すべきもの、これは地方でやるべきものという、そういった種類の検討はされていますけれども、これはあくまで対症療法でございまして、一歩踏み込んで、体質というかそういうところへ目を向けた、いわば大蔵、自治の一緒になった研究というのが必要なのじゃないのかと私は思います。  まず第一のメガロポリス集中についてどうお考えになるかということと、第二点のそういう体質的なもののいわば再検討ということについて大臣はどうお考えになるかということをお聞きしたいと思います。
  176. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘の意味は私にも十分理解できますが、五十八年の十一月に税制調査会の中期答申をちょうだいしたときの文章で、「地方税の充実を図ることが必要であり、特に、基礎的自治体である市町村の税源の充実に配慮する必要がある。この場合、地域的な税源の偏在もあるので、地方財源はできるだけ地方税により充足するという基本的態度をとりつつ、財源調整制度の活用によって調整することも必要である。」と書かれてありますが、どう考えてみてもやはり税源というものが偏在しておりますから、そういう調整措置としての交付税、こういうようなものが必要になってくる。今おっしゃいましたように、社会経済情勢の推移の中でより偏在が傾斜していくというようなこともあろうかと私も思うのでありますが、これこそ税制調査会で国税、地方税のあり方について御審議いただいておるところのまさに大問題ではないかな、こういう感じをいつも持っておるところでございます。いろいろなものを考えても、偏在というものをなくすような手法というのは非常に難しい問題であるというふうに思っております。
  177. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 でございますから、本当に偏在するようなものならむしろ国税にするというとまた抵抗があるかもしれませんけれども、そういったのは逆にプールして使うというような考え方、交付税の思想そのものも結局国が全体から取るものについてそれを地方に流してやった方がいいという考えでございますから、特に偏在する税源のものについては、その自治体のいわば特権と考えずに、そういったものはむしろ交付税の財源といっては言い方が悪いけれども、みんなにばらまく種類の交付税と見るのか、地方税と見るのか、そういう作用がないと、一方では国が貧乏しながら三分の一をごそごそ渡していく、一方においては本当に左うちわで、ぜいたく三昧と言っては変だけれども、そういう形になっておるのはおかしいのではないか。  交付税の思想そのものがそういういわば税源の偏在を是正するというか、国が面倒を見るというのであれば、それだけ地方税そのものに偏在が起こってきたら、これを地方税に置いておくのはどうなんだ。地方税として置いてもいいのですけれども、その自治体の地方税だけにするのはおかしい。私がこの前問題を提起したときに、地方自治の問題があるからそれはできないというのが最初に言ってきた答弁だったのですけれども、自治そのものがもともと国と地方の、地方への案分のもとにおける自治だったわけですから、それはいわば発足当時の状況であって、それが長い間変化してきたらそれを自治だ、既得権だと言い張るのが逆におかしい。それだけ偏在するものならむしろ国税的なものとして考えるか、あるいは地方に使うのだったらプールして使うかという構想をいつの日か考えていくべきときじゃないかなと思います。  これは全く私個人の考えでございますけれども、私はまた同じような議論になると思いますから、その点ひとつこれからも対症療法から超えて体質改善を目指すということが必要だと思いますし、その点について大臣の御意見もちょっと承りたいと思います。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に難しい問題であると思います。  率直に言って、税源の偏在というのは決め手というのはないのじゃないかと私はいつも思うわけであります。ただ、偏在を過度にするものを別途プールして調整財源に使うというようなことについてまでは私も自信がございません。ある意味においては自然に税源に恵まれたところもあるでございましょうが、財政、行革等の努力によって不交付団体になられたところもあるでございましょう。だから、全部を大なり小なり不交付団体にして財源調整措置でそれをならしていくというのも、地方自治の原点からいうと、それは自己努力というものを絶えず否定しているような感じもいたします。だから結局は、五十八年の中期答申の考え方もございますが、その問題については国、地方税のあり方についてという税制調査会の抜本議論にまつべきものではなかろうかな、こんな感じがしております。
  179. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは非常に難しい問題なんですけれども、私の一つ考えは、それだけ財源が偏在する場合は地方税として置いておくのはどうかなという問題が第一点でございます。  それから行革による自助努力と申しますけれども、私は個人的には鈴木知事をよく知っていますから余り言いたくないのですが、美濃部さんのころは簡単に言えばめちゃくちゃだったわけですね。鈴木さんが確かに行革をしたことは事実です。しかし、財源的にはちょっとした努力で黒字になる体質を東京都は持っておったわけです。だから、地方都市が本当に血のにじむ努力をして行革をしているのと違って東京都がちょっとあれしてよくなったというのは、行革の努力がそうべらぼうにあったから黒字になったとも思えないのですね。それは確かに美濃部時代から比べてまさに隔世の感があるけれども、一〇%以下の人口で一七%の地方税収入が入ってくるわけですからね。そういった意味で、行革の努力を評価しなければいかぬといっても、もともとがそういう金が入るような体質になっているということも否めないので、そういったある地域に偏在するような税金はむしろ国税で考えてもいいんじゃないか、それがむしろ大きな交付税の財源になって全体を潤していくということの方がいいんじゃないかと私は思うのです。これは私の前からの持論でございまして、まあ別に私の考えを取り上げろと言っていませんけれども、そうしていかないと、何か増税、増税といってみんなから取る、取ったものが本当に天引きされていく、片一方ではむだ遣いをしている、そういう不合理というか、国全体が大きなむだ遣いをしているような気が私はするのです。  地方行革、地方行革と言っても、そういうメガロポリスでは、最近は若干よくなっているといいますけれども、地方公務員の給与の最低でさえも大体国家公務員よりも高いくらいの話になっているわけですからね。結局いいところに横へ倣えして、経済事情が悪いところも高くする。それは国のお金で行く。結局、いいところはべらぼうにいいからそういうことで引きずられるという要素もございまして、私はここの点は今後考えていかなければいけない問題じゃないかと思います。この問題は、これからの何年間かの問題かと思います。  大体、今度の補助金関連であれでございますので、あすはまた総理質問がございますから別のことも伺いますが、せっかく大臣に久しぶりにお会いしたと言っては言い方があれですが、質問の機会がございますので、補助金法案そのものからちょっと外れまして、二、三の点をお聞きしたいと思います。  一つは、最近、特殊金融機関、いわばいろいろな半官半民の金融機関を民営化すべきだというような意見がちょこちょこ出てきているような話も聞きますが、特に中小企業対策という面からいいますと、そういう政府関係機関が非常に大きな役割を果たしているんじゃないかなという感じがいたしまして、この点、特殊金融機関のいわば民営化という動きがあるのかどうか、それについてどういうお考えを持っているのかをちょっとお聞きしたいと思います。
  180. 亀井敬之

    ○亀井(敬)政府委員 今お尋ね政府関係機関でございますけれども、特に今先生御指摘のような中小金融機関は中小金融のために非常に重要な役割を果たしておるわけでございます。これを民営化というような意見があるかどうかということでございますが、行革審等で今議論が行われておりますけれども、私ども考え方といたしましては、そういう重要な役割を果たします政府関係中小金融機関等が民営化といったようなことになりますと、その求められている役割、中小企業金融の円滑な役割といったようなことがなかなか困難になる、あるいは融資条件等におきましても不利になる、こういったような問題等がありまして、政策金融の実効性が危ぶまれる心配があるわけでございまして、こういった機関の民営化ということは極めて困難だ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  181. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この話は、行革審で何か言っているということが相当みんなに響いているのですね。民営化あるいは自由化というメリットもありますけれども、物によってはそのために存在しているようなものが随分あるわけです。特に最近円高中小企業あたりは随分厳しい目を見ているという状況のもとに、またせっかくの中小金融機関、いわば駆け込み寺みたいなところが民営化されてしまうとどうなるのだという空気が非常に強いわけです。  行革審もいいのですが、どうも総理がつくったそういうものが何かオールマイティーみたいな歩き方をしている。むしろこういう委員会こそもっともっと中心であるべきところに、特別機関というものが何かえらい発言力を増している。それは議員の不勉強もあろうかと思いますが、解散風をあおるものだから勉強する暇はないわけです。常に解散でおどかすなどということでもって立法府が本当の機能を持たないで、逆に、わけのわからぬと言ったら悪いけれども、任命された有識者と言われている者が提案して、それがまかり通るというような気持ちが非常に強いわけです。中小企業のための特殊機関を民営化すべきだなどというのは、実態を知らない人々の民営化すれば効率化になるのだという意見なわけでございますので、その点は大蔵大臣としても、行革審につまらぬことを言わせないよ、言ったってこちらはきちっと対応するんだよ、むしろ我々がこの国会でやる委員会でもっと発言をしてもらうというような態度が必要なんじゃないかと思います。この政府関係機関をどう評価されているのか、今後どういうぐあいに持っていかれようとするのか、それとともに行革審がこう言ったことでみんなをあれしておりますけれども、それについての御意見を承りたいと思います。
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 最初の審議は、恐らく政府関係金融機関あるいは特殊法人等についてのあり方からいろいろな意見が出てきたものだと思っております。したがって、我が方で言えば輸出入銀行あるいは開発銀行、東北開発公庫、住宅金融公庫それから国民金融公庫、中小企業金融公庫。この間調べてみましたら、商工中金、農林中金等は理事長で、総裁と名のつく人が二十四人いらっしゃるということがわかりましたが、この商工中金等につきましては、農林中金にもいろいろな議論があるようでございますが、従来、政策金融として活力ある多数がすなわち中小企業である。したがって、国の大きな柱となっておるものであるが、予算とか税制とか政策金融等によっていろいろ対策は行われておる。その中の大きな柱の一つ中小企業者の自主的努力を助長するということで、いわゆる中小企業基本法に、それが政策金融であるということがうたわれておるわけでございます。  それだから、確かに国際化、自由化の今日でございますけれども、政策的意図を持ったものがいわば変質した場合、恐らく対応する方も図られると思うのです。どうしても民間金融というのは貸し付け先が優良なものに偏ってまいりまして、いわゆる信用力の乏しい中小企業等については、どうしても資金供給が――これも偏在するという言葉がよろしかろうかと思われますが、そうしたところへ偏在していくから、中小企業金融にはやはり政策金融というようなものが大事である、こういう考え方に立って我々は対応していかなければならぬ課題であるというふうに思っておるところでございます。  ただ、商工中金に限らず、中小企業金融公庫にせよ、あるいは各種制度金融が時代の推移に応じてニーズが変化したものに対応していくだけの努力はこちら側としてもいつもしていなければならぬ課題だという問題意識で対応すべきだろうと思っております。
  183. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今言うように、金利自由化になりますと金利コストが上がってきますから、簡単に言えば民間金融が選別をしていく、融資についていいと悪いを分けていく、この傾向が実は強まるのですね。それだけ逆に政策金融の必要性が、特に中小企業グループに対しまして出てくるわけです。でありますから、そういう全体の動きを見たときに、私は、むしろ政策金融等の駆け込み寺的なものがますます重要性を増してくる可能性があると思う。金利の自由化を進めるのであれば、一方においてそういう救済措置というか、弱者を見守る機関が必要になってくる。でありますから、これを民営化した方が効率がいい、こういう見方はまさに弱肉強食一本になってしまう。私も、何もルーズにやっている企業を全部救えと言うわけじゃないので、そんなことをしたら大変でございます。ただ、選別が強まるだけに政策金融の持つ役割がふえてくると私は思います。そういう意味で、行革審とか妙なあれに惑わされないで、その辺を十分配慮した施策というものを考えていただきたい。  これは金利の自由化のテンポの問題もありますけれども、金利の自由化というのは、それは帰らざる川かもしれぬけれども、前後左右をちゃんと見回しながらやっていかないととんだことになる、私は以前からそういう話もいたしましたので、そういう自由化のテンポとの関連もあって、この政策金融についての政府の立場というのを堅持していただきたいと思います。  最後にお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 金融の国際化、自由化、なかんずく自由化の中には金利の自由化というのがおいおい入っていくわけでございますから、今おっしゃったように、確かに別の角度から見れば政策金融の必要性がより以上に増してくる、その議論は私にも十分理解できる問題でございます。そこで、中小金融に限らず政府金融自体も、時代の変遷についていく自己努力をまたしなければならぬというふうに考えております。
  185. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 質問を終わります。
  186. 小泉純一郎

  187. 正森成二

    ○正森委員 昨年の補助金カット一括法案の審議の際もそうでございましたが、今回の一括カット法案でも、竹下大蔵大臣初め政府は、国民生活には直接影響はないとか、地方に対し万全の財源措置を講じているという趣旨の御答弁を何回かなさったと思います。しかし、それはこの法案の内容をよく見てみますとそう言えないのではないかというように思います。  まず第一に、二千四百億円の措置がたばこ消費税の値上げによって行われましたが、これは国民への直接の負担転嫁というようには言えないでしょうか。生活には影響がないと言われますが、この部分については少なくとも国民に対する直接負担転嫁だと思いますが、いかがですか。
  188. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 今回のたばこ消費税の引き上げに伴いまして、小売定価が一本一円引き上げられた場合の国民生活に対する影響でございますが、私どもで試算いたしましたところによりますと、一カ月当たりの家計の負担増は約百四十四円と相なります。これは五十九年分の家計調査をもとに試算したものであります。  それから消費者物価への影響は、一円すべてを計算いたしまして〇・一四%程度でございます。
  189. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁は、比較的影響が少ないが影響はあるという答弁ですな。全然影響がないということではないわけですね。
  190. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 国民生活にただいま申し上げました程度の影響はございますが、このたばこ消費税の引き上げは、六十一年度予算における補助金等の整理合理化に伴う地方財政対策の一環といたしまして、臨時異例的にお願いしたものでございます。地方財政対策上やむを得ない措置であることを御理解いただきたいと思います。
  191. 正森成二

    ○正森委員 それはよくわかっているのです。よくわかっているのですが、昨年から、今回は地方と国との負担割合を変えるだけで国民には直接負担はないというようなことを再々答弁されておりましたので、そういう意味では、わずかであっても国民に影響があるということになりますねということを確認しているわけであります。  第二番目に、ここに整理の表を持ってまいりましたけれども、その二千四百億円を除いた部分につきましても、交付団体分の四百億円については六十六年度から六十八年度に国が交付税に加算する。それから二千四百四十億円については暫定的に六十六年度以降交付税に加算するが、今後調整するというようになっておりまして、国の負担の暫定約束ということになっております。この四百億と二千四百四十億円というのは、これは必ず実行されるわけですか。
  192. 持永堯民

    ○持永政府委員 まず、四百億円につきましては、六十六年度以降に加算をするということで、現在地方行政委員会で御審議をいただいております地方交付税法の改正案に明記をしておるわけでございます。そういった意味で、はっきりしたものでございます。  二千四百四十億円につきましては、今回の国庫負担率の見直しが暫定的なものであるということでもございますので、暫定期間終了後に、この取り扱いについて大蔵省、自治省両省で協議をして調整をしていくということに相なっておりまして、暫定的に一応加算するという形に相なっております。
  193. 正森成二

    ○正森委員 ですから、皮肉な言い方をすると、二重に不確定なんじゃないですか。三年たってから相談して加算するやら加算しないやらわからないという意味での不安定と、それから六十六年度以降というのは、六十五年までに特例公債依存から脱却するということが前提なんで、これが二年、三年と延びればそれもまた延びるということで、二重に不確定なんじゃないですか。
  194. 持永堯民

    ○持永政府委員 二千四百四十億円につきましては、今申し上げましたとおり、不確定と言えば不確定でございます。  それから四百億の方につきましては、財政再建との関係で、六十六年という御指摘もございましたが、そういう見方もあるいはあるかもしれませんけれども、私ども考え方としては、地方交付税の特別会計におきまして五兆数千億の借り入れがあるわけでございまして、その償還が六十六年から始まるということも考えまして六十六年にしておるという事情もあるわけでございます。
  195. 正森成二

    ○正森委員 今の分もそうである上に、それ以外の残りの部分については建設地方債等でいろいろ措置するのですが、今言ったものの残りは地方交付税で手当てするという格好になっているわけです。これは、現行の地方交付税率の枠内での手当てということであれば、他の委員もお聞きになりましたが、結局は、地方全体から見ますと持ち出しということになるのではないのですか。これは経常経費についても、あるいは投資的経費についても、あるいは企業会計の方で賄われる下水道関係についても、全部言えることだと思いますが、いかがですか。
  196. 持永堯民

    ○持永政府委員 残りの分につきましては一応地方財源で対応していくという前提に立っておりますけれども、そういった意味では、御指摘ございましたように、現在の制度で言えば交付税三二%の枠内ということに相なります。しかし、たびたび申し上げておりますように、地方交付税につきましても、原則はあくまで三税の三二%でございますけれども、毎年度の地方財政の収支の状況によりまして、年度によりましては特例加算あるいは従来は臨時特例交付金といったようなことで特別の手当てをした例もあるわけでございまして、結局、将来とも、毎年度毎年度の全体の地方財政の収支の見込みに基づきまして地方財政なり各地方団体の運営に支障がないように交付税総額というものを確保していく必要がある。そういった意味では、基準財政需要額の算定を通じてこの償還費を地方団体に措置いたしますが、そのことによって交付税総額が足りなくなるとか、あるいは地方の財政運営に支障が起こるということのないように、そういう措置を講じていきたいと考えておる次第でございます。
  197. 正森成二

    ○正森委員 措置を講じていきたいという意気や壮たるものがあるのですが、去年のこの一括補助金カット法案の答弁では、当時は土田政府委員が答弁しておりますが、もう少しはっきり地方財政に対する危惧の念を答弁しているんですね。  三月二十七日の衆議院大蔵委員会の答弁ではこう言っております。「それから、建設地方債につきましては、投資的経費に見合った配分をいたすわけでございますが、これの元利償還につきましても地方交付税に算入するという措置を講じますので、当面と申しますか、昭和六十年度につきまして、それぞれの地方団体につきましては直接持ち出しになるような財政負担というものに出てまいらないわけでございますけれども、四千八百億という借金をさらに積み増すということになりますから、その分だけまた元利償還費というのは将来かさんでくる。その分は地方財政の圧迫要因になるということでございます」、こういうようにはっきり答えているのです。それからさらに、別の委員に対する答弁で、同じく土田政府委員が「財政措置の問題でございますが、マクロ的には五千八百億ということで地方財政計画上の対応をいたしておりますが、個別団体につきましては、地方交付税の算定を通じて対応するということになろうかと思います。そういう場合におきまして、今回の対応は、大蔵のペーパーでは、地方財政の健全性を損なうことがないと書いてございますけれども、そこまでは私どもとしては言えるかどうか自信がございません。」こういうように、大蔵のペーパーではそんなことが書いてあるけれども我々には自信がないというようにはっきり答えております。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  こういう答弁の態度は一貫しておって、別のところでは、例えば投資的経費で事業量がふえますね。その分について、去年の場合は千二百億ふえたのですが、それについて「千二百億の地方負担の増につきましては、これは普通の、ほかの事業と色分けのされない通常の地方負担の増でございますので、これにつきましては地方交付税の三二%の枠内で処理し、通常の財政措置をする、これにつきましても地方の負担とする、こういうことでございます。」というように明確に答えているんですね。地方財政の圧迫要因になる、地方の負担になる、それについては、地方の財政について大蔵省のペーパーはどうか知らぬが、自治省としてははっきり自信がない、こういうように、一年限りと思った気安さがあるかもしらぬのですが、比較的正直に答えているんですね。  三年ということになり、しかもその三年が恒久化されるかもしらぬという状況では、所変われば品変わると言うかもしらぬけれども自治省の答弁が微妙に変化しているように思うのですが、もしそういうぐあいに私が感じるのが正しいとすれば、なぜそういうぐあいに去年と変化したのですか。
  198. 持永堯民

    ○持永政府委員 考え方が基本的に変わっているということはないわけでございます。地方債でこの財源の措置をいたしますから、当然のことながら将来償還費の負担が出てくるわけでございまして、そういった意味におきましては圧迫要因になることも事実でございますし、地方財政の健全性という意味からいたしましても、公債費の負担が現にふえるということは事実でございますから、そういう意味においても健全性が高まるということはない、むしろ逆の方向だということは、私どもも今御指摘になりました昨年の答弁と同じ認識を持っておりますが、そのままでほうっておきますと地方財政の運営に支障が出てまいりますので、そこで、事実は事実としてそういうことがございますけれども、そういう公債償還費を払いながらなおかつ地方財政の運営に支障がないように今後適切な措置をし、適切な対応をしていくということを申し上げている次第でございますので、御理解いただきたいと思います。
  199. 正森成二

    ○正森委員 それから最後に、前回簑輪委員が質問になり、きょうも私の後で質問をされると思いますが、実際上は、生活保護の受給要件が非常に厳しくなって、簑輪さんは弁護士ですから鋭くおっしゃったのですが、中には、民法にはないおい、めいとおば、おじとの間の扶養義務が当然あるかのような通達や指針が流されることがあるということで、国民生活に非常に影響を与えているということをやはり指摘せざるを得ないと思うんですね。  次に、別の問題に移りますが、三年間の暫定措置ということになっております。これについては大蔵大臣は他の委員にも再々御答弁になりましたが、私は後ろで答弁の趣旨を聞いておって、一年前と非常に違うと思うのは、私の聞き方が誤っているかもしれませんよ、物によってはもとの姿に戻すものも出てくるかもしれないというようにとれる御答弁だったと思うんですね。ということは、三年経過後はもとの姿に戻さないことが建前、原則になっているということを前提にして、物によってはもとの姿に戻すというか、そういうものがあるかもしれないと受け取れる御答弁のように聞こえたのですが、大蔵大臣の御真意はいかがでしょうか。私のそういう受け取り方でよろしゅうございましょうか。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、どう答弁しましたか、今の答弁そのものには、今ちょっと正確に記憶をたどるだけの余裕がございませんでしたが、本来、今度は一年間かけて検討しますのでというのではなく、検討はしましたということを言っているわけでございますから、大筋において、これからの財政事情の変化とか税制改革とかが仮にあるとすれば、恒久とはちょっと言えないにしてもまあまあこれでコンセンサスだなというふうに理解させてもらった。したがって、大きく変わるようなことはないであろう。ただ、生活保護については両論併記だったから、これは今のところ、その時点で相談しますとしか言えないというふうな趣旨のことを繰り返して申しておりまして、その中でもとに返るかもしらぬということを仮に言ったとすれば、私の頭の中にありました、公共事業関係等におきまして、例えば明日香の問題なんかは、いわゆる地方の方にいわば近代生活をするのを勘弁してもらっているというようなものですから、そういうようなものが出てくるかなという印象は持っておりましたが、具体的に今私の印象の中で、こうしたものはもとに戻す可能性があるということは言えないと思います。ただ、仮に目的税みたいなものができたとか、これは社会保障でないにしても、そんなときにはそれはそういうこともあり得るのかな、だから余り断定してはいかぬなと思って言葉を選んで言ったのだと思います。
  201. 正森成二

    ○正森委員 今の御答弁でお考えは大体わかりましたが、私の方でまとめてみますと、三年間検討した結果どのような姿になるかというのを考えますと、理論的には五つのケースが考えられると思うのです。  一つは、国の負担補助率をもとに戻す。これは私たちとしては望むところですけれども、なかなか難しいかもしれない。二番目には、今回の引き上げ措置をさらに一定期間継続する。三番目には、引き上げ率を上下に手直しして一定期間継続していく。四番目には、地方に事務として同化定着したもの等について負担補助規定を削減し、地方交付税による措置に切りかえる。第五番目には、制度、施策を手直しして引き上げ措置をその中に吸収する。こういう五つのケースが考えられると思うのです。  第一と第二については今までの御答弁でほぼ出ていると思うのですが、第三、第四、第五についてどういうぐあいにお考えになるか、お聞かせ願いたいと思うのですね。  具体的な例をちょっと申し上げますと、第四の例では、本法案の中に老人保健事業の医療事務に係る国庫負担と結核予防のための健康診断等に要する経費に対する国庫補助を地方交付税措置に切りかえるということにしておりますが、こういうものが三年後はもっとふえてくるのではないか。それからまた、義務教育諸学校の事務職員、栄養職員の給与に対する国庫負担や教職員の恩給、年金に係る国庫負担を地方交付税措置に切りかえるとか、こういうこともお考えになっているのじゃないかと思う。  それはなぜかというと、連合審査のときに我が党の山原委員も質問になりましたが、大臣には御相談せずに事務当局の考えとしてペーパーを出しましたという趣旨の答弁だったと思いますが、「教育改革と財政問題に関する基本的考え方」のスクラップ・アンド・ビルドというのを見ますと、そういうものがずらっと「スクラップ」の中に入っているのですね。だからそういうことがあるのじゃないかと思います。  第五の制度、施策の手直しという点では、厚生年金に対する国庫負担四分の一カット措置を基礎年金導入の年金制度の手直しの中に事実上吸収された。あるいは養護老人ホームや特別養護老人ホームを中間施設化するということが今度十カ所ほど行われることになっておりますが、こういうものをどんどんふやすことによって吸収していくというようないろいろなケースが考えられると思うのです。  時間の関係で一遍に申しましたから整理がしにくうございますが、五つほどに分けて私が申しましたうち、終わりの方の部分について大臣の率直な意見を伺いたいと思います。
  202. 竹下登

    竹下国務大臣 上下手直して継続するというのは非常にレアなケースじゃないかな。  二番目の、順序からいうと四番目になりますが、地方に同化定着したものとしていわば自主財源にゆだねる、これは結局、不断のたゆまざる検討課題ではなかろうかと言わざるを得ないと思っております。  それから五番目の制度の手直し、吸収によるケースというようなことも、今ちょっと私も具体的に浮かんでまいりませんが、やはり補助金というものの見直し政策の中へは入る、その範疇に入るものではなかろうかというようにとっさに感じさせていただきました。
  203. 正森成二

    ○正森委員 率直に答弁していただきましたが、そういう御答弁を伺いますと、三年間の暫定措置ということですが、基本的には一年検討した結果だからというので、恒久とは言わないまでも一定期間続く可能性が非常に多く、私が第四、第五というケースで挙げました地方の事務で交付税で措置していくとか、あるいは根本的に制度、施策そのものを見直していくというようなケースも、今直接に事例として浮かばないにしても考えておられるということで、国民にとっては非常に心配せざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。  最後に、大きな三番目の問題でありますが、今回の補助金一律カットの臨時特例法案ですね、地方自治法改正案というのが地方行政委員会で提案されておりまして、その中には機関委任事務について裁判抜き代執行というのが入っております。また別に、事務整理合理化法案というのが内閣委員会に出ておりまして、国の事務を機関委任事務にし、機関委任事務を団体委任事務にするということで、国の許認可権限の地方委譲も含めていろいろ問題になっております。こういう三つの法案の三点セットということで国としては考えておられるのではなかろうかというように思いますが、いかがですか。
  204. 保田博

    ○保田政府委員 御指摘の三つの法案のうち、総務庁から提出されております事務整理合理化法案と今回御審議をいただいております補助金の特例法案とは非常に密接な関連を持っていると思います。ただ、地方自治法の一部改正法案につきましては、正直申し上げまして今までそれほどの認識は実は持っておりませんでした。
  205. 正森成二

    ○正森委員 私ども考えでは、国の事務を機関委任事務にし、機関委任事務を団体委任事務にするという流れの中で、知事に対する機関委任事務が国の思惑どおり行われない場合を想定して裁判抜き代執行の対象にするということが自治法の改正の内容で、これは国の意図を下々まで貫徹するということを考えたものであるというように私どもは思わざるを得ないわけであります。  こういうように変えていきまして、権限委譲に伴う財政上の措置というのが必ずしも行われていないのじゃないでしょうか。私どもの見たところでは、輸出水産物製造事業場の登録権限の地方委譲については、手数料収入が都道府県の収入になるのでこれを措置しますが、その他については地方交付税で措置する、つまり国庫からの支出はゼロ、こういうことになっているのではないですか。
  206. 持永堯民

    ○持永政府委員 地方に権限移譲、事務移譲が行われた場合におきましては、一般的には、地方の責任で行う事務でございますから、交付税制度を通じて財源措置をするということになります。ただ、地財法に決めておりますような国庫負担事業については申し上げるまでもなく性格が異なりますが、一般的にはそういうことでございます。
  207. 正森成二

    ○正森委員 よくわからない答弁ですが、次の問題に移ります。  団体委任事務にするということで、例えば社会福祉施設については入所措置基準、それから施設の最低基準、費用徴収基準というものを地方自治体に大幅に権限を与えるというように変わるようですが、そうしますと、入所措置の基準なんかが変わりますと、Aという市ではこの人は入所できるが同じ人がB市へ行けば入所できないというようなことが起こってくるのではないか。施設の最低基準でいえば今までだったら保母が何人というふうに決まっておったのが、それの半分くらいで済まして経費を節約しようというようなところが非常に財政の苦しいところでは起こってくるのじゃないか。あるいは費用徴収基準についていえば、今まで国の基準というのが費用の最高で、これを超えてはいけないということだったけれども、これからは条例さえつくれば幾らでも超えることができる。幾らでもと言うとぐあいが悪いかもしれませんが……。というようなことで、結局、団体委任事務で地方の権限が増大するかのように一見見えるけれども、財政措置が十分に行われていないために、相当富裕な市あるいは地方自治体とそうでないところでは、入所基準にしても、費用にしても、あるいはその施設の内容にしても、非常にアンバランスになるということで、結局今まで措置制度で一定の最低基準が保たれていったものが事実上の崩壊になるおそれがあるのじゃないですか、厚生省。
  208. 小島弘仲

    ○小島政府委員 お尋ねの三基準と申しますか、入所基準につきましては、これは法律で基本的な施設ごとに対象者の考え方を定めまして、具体的には、例えば特別養護老人ホームでございますと、施設に入所させることにするかあるいは在宅対策としてのショートステイとかデイサービスというようなことを活用するぐあいにするかというのは、その地域における施設の整備状況等には多少の違いはあろうかと思いますが、基本的にそう大きく変わることはないのではないかという認識を持っております。ただ、地域の事情、施設の整備事情によって少しずつの合理性は出てくる、また、その有機的な連携を持ってやるのが望ましい、こう考えております。  それから、施設の最低基準と申しますか施設の運営基準につきましては、これは今後とも国の機関委任事務として国が定める考え方をとっております。ただ、これにつきましては、臨調等におきましてできるだけ簡素化してはどうか。合理性のある簡素化は考えていかなければならぬと思いますが、一方では施設における入所者の処遇の適正化ということも考えなければなりませんので、むしろ重点はそこに置いておく。適正度を保ちつつ例えば簡素化できるものはどこがあるのかという方向でこれは整備してまいりたい、こう考えております。  それから費用の徴収基準につきましては、これは従来から大人の施設は団体委任事務という形で行っておりまして、児童の施設は機関委任事務でございました。これを児童施設も団体委任事務化するということで、団体委任事務に統一するという格好になります。  お尋ねのように、従前の様子を見ますと、国の徴収基準を緩和して運用している例が一般でございまして、これをきつくするというケースは、先生お尋ねのように財政状況でどう左右されるか、そこは地方財政計画を通ずる財政措置もあわせましてそういうことのないように、国の基準というのはこれが適正だと考えている徴収基準でございますから、少なくともそれを担保できるような方向での財政対策は十分講じていかなければならぬだろう、こう考えております。ただ、むしろ議論としては、余り地方に徴収基準を任せますと緩めるところは大きく緩めるところがあって不均衡じゃないかという御意見、中央社会福祉審議会などにはそういう御意見もありました。また、一方では、地方の事情、全体のバランスを考えて余り国でそこはきつく練らない方がいいという御意見もありましたが、いずれにしてもその適正な処遇、利用しやすい形の担保ということは考えていかなければならぬと考えております。
  209. 正森成二

    ○正森委員 小島さんの答弁はなかなかいいように聞こえるのですけれども、情けないかな厚生省はお金の担保をする力がなくて、今までも当然増経費を毎年毎年七千億、八千億と削られているところを見ますと、言はいいけれども実行は地方ごとに非常にアンバランスになって、しかも、それは低い方におりていくというおそれを私はどうしても払拭することができないように思うわけです。  最後に、自治省に伺いますが、自治省は地方行革大綱ということを非常に言われて、地方自治体にそれをやるように言われているのですけれども、地方行革なんというのは地方自治体が自主的にやるべきものではないですか。ところが私のところに一九八五年二月四日に自治省の行政局行政課がつくった想定問答集みたいなものがあるのですけれども、それを見ると、あなた方は随分画一的に言っておりますね。  例えば、「地方公共団体にあっては、自治省が策定した「地方行革大綱」の中の重点事項七項目を含めてつくってもらいたい。」こう言っているのです。七項目はぜひとも入れろというようなことを言ってみたり、「行革推進本部は必置とする。構成に議員の入っているものはだめだ。」こう書いてありますね。まるで断定的に言っております。  それから、本部の名称は、「できる限り統一するため「行政改革推進本部」と入れることとする。」こういうぐあいになっております。  それから、「大綱策定の時期は、八月末まででなければならないのか」というのに対しては、「八月策定が目標である。若干はあり得るかもしれないが、基本的には弾力的運用はできないと考えている。」というように言ってみたり、それからほかにいろいろありますが、定員の適正化計画というものは「できる限りすべての団体が策定することとする。」「さらに、その策定状況の報告も求めたい考えである。」とか、随分隅から隅までにわたって、想定問答という形をとって地方自治体に指示していくという格好をとっておりますが、こういうことで憲法で言う地方自治の本旨が本当に守られるのでしょうかという点が一点。  第二点に、あなた方のこの指示に従わなければ何らかの制裁措置でもとるつもりなんですか、それともそういうことはしないのですか。
  210. 濱田一成

    ○濱田説明員 地方行革大綱について想定問答を自治省として作成したのではないかというお尋ねでございますが、こういったものを作成したことはございません。ただ、地方行革大綱の策定後の昨年二月四日から二月八日にかけて都道府県の担当課長との打合会を行いましたが、その際に、地方行革大綱に関する都道府県からの照会事項を事務執行上の参考のため想定質問としてまとめて配付したことはございます。  その考え方につきましては、口頭で御説明したのでございますが、これは口頭でやりましたことで、ニュアンスについては必ずしもおっしゃるようなことではないと私ども考えております。行政改革そのものはやはり地方公共団体が自主的、総合的に取り組んでいただくべき問題であると基本的に考えておるわけでございます。したがいまして、そのことが地方自治の本旨に反することはないと思いますし、また、自主的、総合的に取り組んでいただくことについて制裁をもって臨むというような趣旨ではございませんので、よろしくお願いいたします。
  211. 正森成二

    ○正森委員 ここにちゃんと「資料七」と書いてあるわけですから、だからこれは想定質問ということで、地方の関係課長ですか、そういうのが集まったときに言う材料としてつくったかもしれませんが、こういうものを渡して説明をしたことは事実です。その中には相当断定的に言っている文句があるわけですが、地方自治の本旨に反しないように、ここにも、よく読むと、制裁措置などをとる考えはないという項目も入っていますね。だから、それは必ず厳守していただきたいというように思います。  それでは、私の残り時間、簑輪議員が関連質問されますので、私の質問は終わらせていただきます。
  212. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 関連して、蓑輪幸代君。
  213. 簑輪幸代

    簑輪委員 私は、この補助金カットの法案について、きょうは教育問題についてお尋ねしようと思って文部大臣出席を求めました。ところが、文部大臣は都合で出席できないという御返事をいただいて、私はまことに遺憾であるというふうに考えております。この法案については、文部省も重要な関連を持ち、この大蔵委員会の質疑に当たっても、関係大臣として出席し、答弁をいただくのが当然だと思っていましたところ、この法案審議よりもいかなる重要な課題があったのか知りませんけれども、私は、やはりこの法案の審議をいささか軽視しているのではないかということで、まず最初に遺憾の意を強く表明をしておきたいというふうに思っております。  この法案について文部省関連では、昨年既に義務教育費国庫負担法の改正ということで、教材費、旅費等の国庫負担を廃止して一般財源化するという恒久措置をとりました。さらにまた、義務教育費の国庫負担のあり方ということでさまざまな論議がされる中で、この法案でも義務教育費国庫負担の一部カットということは、私は重大な問題だというふうに受けとめているところです。  連合審査の中でも山原委員から指摘がありましたように、この義務教育費国庫負担法の問題を初めとして、教育と財政という観点について大蔵省が臨教審に対してのメモを出したというような問題がありました。これに関連して何点かお尋ねをしたいというふうに思います。  義務教育費の国庫負担の問題については、憲法、教育基本法に基づく国の重要な責務だというふうに思います。この問題は昨年も論議さしていただきましたけれども、義務教育費国庫負担金のうち、さらにその事務職員とそれから学校栄養職員の給与について国庫負担の対象から外すという方向がかねてから論議をされているところです。私は、児童生徒の教育を受ける権利を保障していくためには、教職員全体、事務職員や栄養職員を含めて学校関係者がみんなで力を合わせて教育に携わるということが非常に重要であるというふうに考えております。  そういう点で、まず最初に、文部省は、この教育権の保障という観点から見て事務職員、栄養職員の仕事を一体どのように評価しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  214. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 事務職員、栄養職員の二つの種類の職種につきましてこれまでこの委員会連合審査等におきましても文部大臣からもたびたびお答えをいたしておりますけれども、学校の場合には、教員と並んで事務職員、栄養職員、これが一体となって運営に当たっていくべき性格のものと考えておりますので、かねてお答えしておりますように、学校の基幹的な職員である、かように認識をいたしております。
  215. 簑輪幸代

    簑輪委員 昨年の質疑の中で中曽根総理大臣は、旅費とか教材費というようなものは事務的性格を持っているけれども、「給与となると、やはり生活を維持していくメインの性格を持っているこというふうに区別をしておられましたけれども、給与ということならば、教員の場合も事務職員も同じ性格を持っている。学校教育の重要な構成部分として位置づけておられるということだろうと思います。それにつきましては、ぜひともこの国庫負担が外されることのないように文部省としては格別な御努力をいただかないと、大蔵省の方から再三にわたってここがねらわれているという状況でございますので、私は、ぜひその辺を文部省として腹をくくって対応していただかなければならないというふうに思っております。  私のところにも、もう地元のたくさんの事務職員、学校職員の方々から、毎年毎年要請書や激励のはがき等をいただいております。この次代を担う子供たちのための十分な予算措置というのは国の当然の義務であり、学ぶ権利を保障していくということはすべてに優先していかなければならないということだと思います。  大蔵大臣は、この学校事務職員、栄養職員の国庫負担という点について、重要性を認識し、これを堅持していくという方向でぜひ御努力をいただきたいと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  216. 保田博

    ○保田政府委員 御指摘を受けております学校の事務職員と栄養職員、これを義務教育費国庫負担の対象外とするかどうかということにつきましては、六十年度予算編成の過程におきましても、六十一年度の予算編成の過程におきましても、各方面の御議論を聞きながら検討をしてまいったものでございます。これらの職員が学校教育という面でどのような働きをしているかということも我々よく承知をしておるわけでございます。  ただ、これらの職員の給与を国庫負担の対象とするかどうかという点は、理屈からいいますと、職員の職務の重要性といったものと本当にストレートに結びつくものかどうかという点について、我々は多少先生とは異なった見解をあるいは持っておるのかもしれません。いずれにいたしましても、大蔵省としましても、教育の国家施策における重要性ということをよく認識いたしておるわけでございます。しかしながら、この教育も非常に巨額のお金を要するものでもございますので、我々としましては、教育の重要性というものと、もう一方で要請されております財政改革の要請にこたえるという二つの面の兼ね合いを考えながら、今後の予算編成に当たってまいりたいと思っております。
  217. 簑輪幸代

    簑輪委員 教育の重要性を口にしながら一方で財政事情を口にする。そして財政事情を優先して教育の方を圧迫していくという姿勢が何かららちら見え隠れしているわけですね。  そこで、私は、やはり政治家としての、この日本の将来を担う子供たちに対する教育のあり方という点について、大蔵大臣の見識ある見解をお尋ねしたいと思うのです。財政事情によって教育のあり方がそう気楽に左右されてはたまらない。やはり義務教育費国庫負担法の意義というものをしっかり受けとめて、大蔵大臣として、あるいは政治家としてのこの辺の御見識を伺いたいと思います。
  218. 竹下登

    竹下国務大臣 教育の重要性ということは私も思いを等しくしているのじゃないかなと思って聞いておりました。  ただ、教育とて年々の予算編成に際し聖域ではないと言わざるを得ないのではなかろうか。財政が教育を引っ張っていく、財政に左右されて教育の基本が失われるというようなものであってはならないが、基本を守るために財政が可能な限りの対応をしていくべきものだというようなところでございましょう。
  219. 簑輪幸代

    簑輪委員 私は、やはり聖域ではないという言葉を使いながら、この際どうしても一言申し上げなければならないのは、財政事情を口にして結局教育予算を削減するという方向と、また、財政が大変厳しいという中でやはり軍事費はふえているということと、どうしても対比して考えざるを得ないわけですね。私はそういう点で今の大蔵大臣の御見解というのは、教育というものについて重要性を口にしながら、それよりもどうも財政事情の方を優先しておられるやに承らざるを得ないのがとても残念だというふうに思います。  続いて、大蔵省の基本的考え方の「義務教育費国庫負担の見直し」の中で「負担割合の見直し」というようなことも言われているわけですけれども、そこでは教員の給与そのものに対する国庫負担率の引き下げということが画策されているのではないかと懸念されるわけです。現在は二分の一の国庫負担率ですけれども、これがさらに切り下げられて、あるいは三分の一になるあるいはもっと下がるというようなことになってはまことにゆゆしいことだというふうに思いますが、文部省はこの教員の給与そのものに対する国庫負担率の引き下げの点についてはどうお考えでしょうか。
  220. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  公立学校で義務教育を担当しておるわけでございますけれども、義務教育は国民として必要な基礎的な資質を養うということで、市町村と都道府県と国とが共同責任でこれに対応していくという性格のものである、こういうふうに考えておるわけでございまして、現在の義務教育費の国庫負担法もそういう精神に基づいてつくられている、こう考えております。そういったようなことから、ときどきの事情によって若干のバリエーションがあり得ることはあるとは思いますけれども。義務教育費の国庫負担制度の基本というのは大事にしていかなければならないというのが文部省の立場でございます。
  221. 簑輪幸代

    簑輪委員 今の答弁、非常にひっかかるところがありましたね。そのときの事情事情においてバリエーションがあることもあり得るというようなお話、これでは私は意味がよくわからないんで、義務教育費の国庫負担というのは、国の教育に対する責任という点からいって、二分の一などというのは最低のことだと私は思うのです。もっと国庫負担率が高くなっても当然だと思っているわけで、バリエーションによって多少のというような発言は、文部省としてはいささか穏当を欠く答弁ではないか。二分の一の国庫負担率を断固として守ってまいりたいというような決意表明がなければおかしいのではないかと思いますが、再度御答弁をいただきたいと思います。
  222. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私が基本的なところは守っていきたいと申し上げましたのは、一つは対象経費の種類ということ、それからもう一つ負担率ということ、両方あわせまして一番基本的な部分は守っていかなければならない。バリエーションがあり得ると申し上げましたのは、その年その年で例えば地方財政事情が大変苦しかったときに教材費を国庫負担にしたとか、そういうようなたぐいのバリエーションというのはあり得ることだと思っておるわけでございますけれども、基本のところは先ほど申し上げたように守っていくのだ、こういう考え方でございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 簑輪幸代

    簑輪委員 教員の給与そのものというのは大変基本のところということですから、これを守っていきたいという答弁のように伺いましたし、そうでなければならないというふうに私は思います。  続いて、私学助成についてです。これについても、自律自助というような観点等も踏まえながら、あるいは地方一般財源化というようなことを踏まえながら、私学助成をカットしていくということが画策されているやに見えるわけですが、私学助成というのは非常に切実な要求になっていると思うのです。文部省の調査でも、教育費の家計に占める割合は年々重くなって、父母負担が限界にまで達しているという状況だと思います。昨年九月からこの二月までの私学助成の大幅増を求める署名というのは既に千八百七十九万七千六百十七名に達している。こんなにたくさんの署名が集まるというのは、いろいろな要求の中でもそうそうあるものではありません。このような父母、関係者の切実な要求というものを一体どのように受けとめておられるのか、文部省それから大蔵大臣の御見解をまず簡単にお伺いしたいと思います。
  224. 泊龍雄

    ○泊説明員 お答え申し上げます。  私学助成につきましては、我が国における私学の果たしている役割というものの重要性にかんがみまして、かねてより各私学の教育条件の維持向上あるいは修学上の経済負担の軽減に資するといったような観点から、推進に努めてまいっておるところでございます。  六十一年度の予算におきましても、現下の財政状況のもとではございますが、私立大学等の経常費補助につきましては前年度同額の二千四百三十八億五千万円を計上する。また一方で、特色ある教育研究等の推進という観点から、私立大学の研究装置等に対する補助金につきましても対前年度四億円増の四十四億円を計上するといったような措置を講じているわけでございます。また高等学校につきましても、経常費助成費補助につきましては、高等学校における教育費の負担といったような観点からも考慮いたしまして、対前年度四億円増の七百二十億円を計上いたしておるところでございます。  私どもといたしましては、今後とも私立学校振興助成法の趣旨を体しまして努力をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  225. 簑輪幸代

    簑輪委員 大蔵大臣がこの私学助成というものをどう受けとめておられるのか、一言だけお伺いして次に進みたいと思います。
  226. 竹下登

    竹下国務大臣 一言でしたら、大事だと受けとめております。
  227. 簑輪幸代

    簑輪委員 大事だとおっしゃっておりますので、予算上の措置をきちっととっていただくように強く要望したいというふうに思います。  何しろ文部省が発表した高校退学者の実態調査なんというのを見ますと、家庭の経済的事情で退学しているものというのも大変ふえています。こういう実態を踏まえて、例えば年収四百万円の家計に占める教育費は約三九%、三百万円で三〇%にも達しているという状況を踏まえて考えてみますと、私学助成の総額の抑制を図るなどというようなことが財政審等でも言われておりますけれども、一九八八年まで高校生もふえていきますし、とんでもないことです。今大蔵大臣が大事だとおっしゃっておりますので、予算をきちっとつけていただくようにしっかりと見守りたいというふうに思います。  続いて、やはり大蔵省が臨教審に出したと言われておりますメモの中で、「義務教育教科書有償化」というものが述べられております。義務教育教科書無償制度というのが現在続けられているわけですけれども、これについての文部省の基本的見解をお尋ねいたします。
  228. 伊田和身

    ○伊田説明員 お答え申し上げます。  義務教育教科書無償給与制度は、憲法二十六条に掲げております義務教育無償の精神をより広く実現するための施策として、昭和三十八年度以来実施されてきているものでございます。この制度につきましてはいろいろ経緯がございますが、昭和六十一年度予算におきましても引き続き所要の措置を講ずるということで、四百五十六億円計上されている次第でございます。  この制度の今後の取り扱いにつきましては、私どもといたしましても、さらに各界の御意見に耳を傾けつつ適切に対処していきたいと思っておりますが、文部省といたしましては、従来どおりこの制度が堅持されますように努力をしてまいりたい、そのように思っている次第でございます。
  229. 簑輪幸代

    簑輪委員 義務教育教科書の無償制度というのは、義務教育は無償であるという憲法の規定に基づく具体化ということで、これはどんなことがあっても私は維持して、さらに充実させていかなければならない制度だというふうに考えております。文部省のただいまの見解をお聞きし、これを堅持したいという方向でございますが、これを財政的にもきちっと裏づけていくように求めていきたいと思います。  続いて、大蔵省からの問題点の指摘として、「学校給食費」、これについては「受益者負担の適正化」ということで指摘がされております。学校給食について、この意義と今後どうあるべきかという点について文部省の基本的なお考えをお聞かせください。
  230. 小西亘

    ○小西説明員 学校給食に関する経費の負担につきましては、現在学校給食法におきまして規定がございまして、人件費、施設設備費につきましては市町村が負担し、あるいはまた食材料費につきましては保護者が負担するということになっているわけでございます。この人件費等を保護者の負担にするということにつきましては、学校給食法あるいはまた地方財政法の規定に反することでもございますし、かつまた、学校給食が学校教育の一環として実施されているということもございますので、このことについては今後とも慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  231. 簑輪幸代

    簑輪委員 学校給食が子供の成長と教育に非常に重要な役割を果たしているということで、昨年も私、文部大臣にこの問題で質疑をいたしましたけれども、やはりこれを充実させていくという方向性を示さないと、文部省としての姿勢ではないように私は思います。  もう一つ、続いてですが、ここでやはり指摘されております「国立大学授業料」も、「受益者負担の適正化」ということで言葉は非常にいいように書いてありますけれども、結局のところ大学授業料の値上げということではないかと思います。これについての文部省のお考えをお聞かせください。  そして続いて、時間もありませんので、育英奨学制度、「育英奨学事業のあり方」というのがやはり指摘され、「有利子貸与の活用」ということで無利子制度が危機に当面しているのではないかと思いますが、この「育英奨学事業のあり方」について、文部省のお考えをあわせてお聞かせください。
  232. 佐藤光夫

    佐藤説明員 お答えいたします。  まず、国立大学の授業料につきましては、従来から社会、経済情勢の変化に応じてその改定が行われ、最近では隔年ごとにその改定が行われてきたところでございますけれども昭和六十一年度におきましては既に入学料が改定がされておりましたために、入学料との同時改定による家計負担の急増を緩和するということで、昭和六十一年度は据え置きまして、授業料改定の時期を昭和六十二年度に繰り延べ、大学・学部で二十五万二千円から三十万円に改定することにいたしたわけでございます。  文部省としましては、教育の機会均等の見地から、かねてから、日本育英会の奨学金の貸与のほかに、授業料免除制度を活用することによりまして授業料改定の及ぼす影響というものを極力抑制してまいっているところでございます。  それから、二つ目の育英奨学事業についてでございます。経済的に恵まれない優秀な者に対しまして、教育の機会均等に寄与するという見地から必要な奨学制度を設けることが教育の基本的次施策として重要だというふうに考えているわけでございます。このために、昭和五十九年度に日本育英会の法律を改正いたしまして、文部省所管の日本育英会の事業として、長期低利で奨学金を貸与する有利子の奨学金制度を設けたわけでございます。これは、高等教育の普及状況等を踏まえた上で奨学生の量的拡充を図るということに意味があったわけでございます。  御承知のように、この制度は日本育英会が財政投融資資金を借り入れまして、奨学生に在学中は無利子、卒業後は年三%の利子を付して貸与するものでございます。今年度もその三年次目に当たりますので、必要な予算を計上しているわけでございます。  今後とも奨学金の額等につきましては、学費を含めました学生生活費の動向を踏まえて検討してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  233. 簑輪幸代

    簑輪委員 最後に、大蔵大臣お尋ねいたしますけれども、大蔵省が臨教審に出したというメモの中で、いろいろ見てみますと、財政事情から教育の充実というのをうんと切り捨てていくという観点が露骨に見えて仕方がないのですね。その上、それだけではなく、そこにいろいろ理屈をこねてと言うと失礼ですけれども、理屈をつけていろいろ合理化をしておられますけれども、その中で特に「受益者負担の適正化」ということがしばしば出てくるわけです。福祉問題でも教育問題でもそうですが、受益者負担ということで負担をうんと国民に転嫁していくというやり方が最近目に余って仕方がないと私は考えております。  教育における受益者とは一体何なのかということを改めて考えてみる必要があると思います。時間がもうないので論議できないのですけれども、教育における受益者というのは、果たして子供が受益者なんだろうかあるいはまたその子供を学校にやっている父母が受益者なんだろうか。いや、そうではなくて、その子供が学問を身につけ、そして役に立つ人間となって社会に還元をして、すべての国民に利益が広がっていくということを考えてみたとき、国民すべてが受益者と言えるのではないか。あるいはまた有能な人材が企業で働き、そしてそこで企業利益を生み出すという意味で言えば、その企業も内部留保をたっぷりため込むに当たっては受益者ではないかというようなことをいろいろと考えることができるのではないかと思っているところです。  それが、この受益者というのが、非常に狭い、教育を受ける子供あるいはその子供を学校にやっている父母というところに限定されがちな感じがしてなりませんが、大臣は教育における受益者というものを一体どのようにお考えか、最後にお尋ねをして、私は質問を終わりたいと思います。
  234. 竹下登

    竹下国務大臣 財政的な角度から見れば、受益者というのは非常に狭義に解すべきであろう。しかし、今の簑輪哲学というのは私も勉強させてもらいまして、公式の場か非公式の場かは別といたしまして、私の考えもまとめてみたいと思いますので、そのようにきょうはよろしくお願いいたします。
  235. 簑輪幸代

    簑輪委員 それでは、この問題はまた続いて別の機会に論議をさせていただくことにして、質問を終わります。
  236. 小泉純一郎

    小泉委員長 上田卓三君。
  237. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵大臣は、先週四月八日に先進十カ国蔵相、それから中央銀行総裁会議G10に御出席されております。また、四月九日と十日にはIMF、国際通貨基金暫定委員会が行われたわけでございます。そういう意味で、立て続けに重要な会議がなされているわけでございますが、これらの会議では、発展途上国の累積債務問題と国際通貨問題が中心的な議題として協議されたようでございます。また、先進国の利下げと通貨安定のための各国の経済政策の監視、サーベーランスを強化する必要があるとの合意がなされた、このように報道されておるわけであります。  円高によって円は上がったが、大蔵大臣の人気は下がる、名前は「登」であるが下るである、こういうようなことも英語でどこまで直訳できておったかわからない、そういうお話を当委員会で出された記憶があるわけでございますが、まず、G10に参加されまして、この前のG5以後のドル高是正、円高問題等についてどのように確認され、どのように考えておるのか、ひとつ御報告を兼ねてお答えをいただきたい、このように思います。
  238. 竹下登

    竹下国務大臣 G10に参りましてお話ししたことはいろいろございましたが、まず、世界経済全体につきましては、インフレが比較的鎮静し、まさにインフレなき持続的成長という方向に若干ながらも改善されつつあるのではないか、こういうことが一つございます。  次の問題は、G5以降のいわゆるドル高是正が進展して、為替相場は各国の経済ファンダメンタルズをよりよく反映するようになっておる、その方向はよろしい、こういうことでございます。さらに安定することがもとより好ましいということは原則的にあるわけでありますが、私どもがいささか急激に過ぎた発言をしますから、安定すべきだということは合意ではなかったかと思っております。  それから、金利の問題については、地球的低金利時代とでも申しましょうか、日本や西ドイツみたいにインフレが鎮静した国はないにいたしましても、全般において鎮静しておるからその環境は整っておる。したがって、各中央銀行の総裁が連絡しながら適正な措置をされるであろうということであります。  最後の問題が、いわゆる累積債務国問題でありますが、産油国は油の値段が下がりましたからなお深刻な状態になるのではないかということと、さはさりながら、自己努力を一生懸命された国から国際機関、各国それぞれがケース・バイ・ケースで協力していくことが必要であろう、こういうような話し合いでございました。  一つ落としましたが、先ほど御指摘のありましたサーベーランス、いわゆる相互監視というものは、今まではどちらかと言えば五カ国ぐらいでやっておったが、十カ国ぐらいが可能な限りいろいろな指標をお互い指摘し合ったりして経済政策の調整のためのサーベーランス、相互監視は、折に触れ一層ふやしていこう、こういうことでございました。
  239. 上田卓三

    上田(卓)委員 G5で、急激なドル高に対し是正すべきだということから、日本円高に持っていこうということであったろうと思うのですが、当時、一ドル当たり幾らぐらいと想定しておったのか。それは想定してなかった、要するにドル高を是正するのだという程度のものであったように前回の当委員会での大臣の答弁があったのじゃないか。私は、一時二百円から百九十円ぐらいのときに、あれが順当な云々という発言もあるやに聞いたわけでございますが、その後百八十円から百七十五円ということで一時から見ると七十円の切り上げ、こういうことで、大変な円高メリットで笑いがとまらないほどもうかって仕方がない企業もありますが、中小零細企業を中心とした輸出業者がそのために倒産の憂き目を見るということで大変苦しい状況にあるわけであります。最近は百八十円前後ということで、逆介入等の効果もあったのだろうと想像するわけでございますが、大体現在の水準で安定するということなんですか。これは一時的なことであってまた上がる、上げなければならぬと思っておるのか、その点国民が非常に関心を持っておるわけでありますので、どうなったのかということを聞きたいのが一点。  それから、百八十円前後であれば日本経済政府が言うように四%成長が維持できる、本当にこういうように思っておるのかどうかということもあるのではなかろうか、こういうように考えておりますので、現在の水準を維持することが前提になるならば、四%成長をしようと思えばさらに抜本的な内需拡大策が必要である、そうでなければ四%成長は到底無理だと考えておるわけでありますが、大蔵大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。
  240. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、きょうの終わり値が百七十九円三十銭でございまして、参考のためにきのうを見てみますと、ドルに対して日本はちょっと円安になり、ドイツ・マルクに対してもほんのわずかでございますけれども円安、ポンドに対しては恐らくちょっと強くなっておるのかな、こんな感じがいたします。  最初ニューヨークの九月のG5の際には、私ども共通認識としては、ドルの独歩高が要するに経済のファンダメンタルズを反映してないのだというのが五カ国の共通認識であったと思っております。それで、各国それぞれがおよそどれぐらいということは、これは中央銀行総裁も大蔵大臣も、一つのターゲットというものは示さないということで話し合いが行われ、それがきっかけとなって、それが市場に反映いたしまして、いささか急激にドル以外の通貨が上昇した。その中でも、二百六十円しておりました当時から見ますとドイツ・マルクと同じぐらいになりますけれども、あの九月から見ればドイツ・マルク以上に円が高くなっておるというような状態でございます。したがって、私どもとしてはやはり安定が必要だというところまでが合意でございまして、特定のターゲットというのは、双方の国々それぞれ事情がございますから、これはそこで合意すべき性格のものではないという共通認識を持っております。  そこで、若干当時と変化したかなと思いますのは、石油価格の低下が続きましたことと、経済の諸指標が、米国経済が期待されたほど好調でないとの見方が多く、金利もアメリカの方も下がっていったといったようなことが、急速であったドルの独歩高の是正、あるいはドル安の要因ではないかなと考えておるところでございます。  そこで、中小企業は大変厳しい、これは私も十分承知しております。この間の日曜日に、私は最初予定しないでおりましたが、多治見の陶磁器と関孫六の刃物のところへ参りまして、大変なおしかりといってはいけませんが、御意見を賜ってまいりました。確かにデメリットの出たところというのは大変だという印象を強くいたしました。それがためにも、内需拡大の施策をとらなければなりませんし、そういうこととかてて加えておっしゃいましたいわゆる実質四%成長も初めて可能になるであろうと思っております。  ただ、四%と言いましたときよりも変化して、より一層の円高という状態になっておりますが、これだけがいわば成長を引っ張り上げる要因ではございませんので、メリットも出てまいりますし、石油価格の下落、たびたび行われますところの金利下げ、さらには公共事業の前倒し、あるいは原燃油の下落に伴いますところの一兆円程度の還元というようなことが総合されて初めて可能なことではなかろうかと思っております。
  241. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしましても、円高があなた任せのどの程度で落ちつくのだというようなことではいけないと思うのです。日本の財政収支ということを考え、そして四%実質成長を維持する、これがいいかどうかというと、我々、もう少し高くすべきだという考え方を持っておるわけですが、政府が言っている四%自身が百八十円前後では到底無理な状況にあるのではないかと私は思っておるわけであります。  四月八日に政府が発表した総合経済対策の内容を見ますと、七項目ほどあるわけですけれども、その中で内需拡大に効果があると見られるのは、公定歩合の引き下げ、あるいは差益の還元、それから電力の設備の投資、そんな程度のものではないか、こういうように思っておるわけでございまして、経企庁はこれで成長率が〇・六%から〇・七%アップすると言っておるわけでございますけれども、これで円高デフレがどこまで緩和できるのかということは、私は大変疑問だと思っておるわけでございます。今回の政府の対策は、昨年の十月それから十二月に続いて第三弾ということでございますが、この分ではまた次の総合対策を出さざるを得なくなるのではないかというように心配をいたしておるわけであります。  具体的に円高差益の問題でありますが、電気、ガスで約一兆円差益還元がされる、これはどう進めていくつもりなのか。その点について経企庁などによりますと、円高差益それから原油価格の低下のプラス効果というものは五兆七千億円ぐらいにも達するのではないかということも言われておるわけでありますが、これが国内の産業に回るのではなしに、また、国民に還元されるのではなしに、海外に流出するということになれば、何の効果もないと私は思っておるわけであります。卸売物価は少し下がっておるようでございますけれども、消費者物価は全然下がってないと言っていいのではないかというようなことでございまして、そういう点で円高デフレ、デメリットに対して、メリットの部分でどうきちっとしたカバーをするのかということが一番大事ではないかと私は考えておりますので、その点についてもう少し大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  242. 竹下登

    竹下国務大臣 つい先日、あるいはきのう、総理が向こうで申し上げましたことに対して、整理したものを事務当局から御報告申し上げた方が適切な面もあろうかと思っておりますが、要するに公定歩合につきましては一月三十日、その次が三月十日、それで〇・五%ずつ引き下げが行われて、この措置を実効あらしめるために預貯金金利短期プライムレートについても三月三十一日から同幅引き下げられましたので、金利水準全体が低下いたしましたから、企業収益と申しますか、そういうことに対してはいい方向でございましょうし、非製造業に対して、非製造業というのは輸入物価が安くなりますから、直接円高のメリットを受けるところがさらに設備投資意欲を起こすということにますます有益に働くのではないかな、私はこういうふうに考えております。  それから円高のデフレの面は、実際それは先生よく御承知のとおりです。私も言われまして――いささか話が長くなって申しわけありませんが、いわゆる陶磁器の関係者にしてみると、私ら一遍も日米経済摩擦を起こしたことはないんだ、アメリカでつくってないわけでございますから、ただ、NICSに追い上げられてぎりぎりのところへ、韓国はドルリンクしておりますし、競争力を失って注文もずっと向こうへ行ってしまうというような大打撃を受けておる、こういう趣旨でございました。そのとおりでございます。したがって、これらが経済の足を引っ張るといいますか、減速傾向に働くことは私もよくわかりますから、これに対してはこの間成立させていただいた法律の適用をして、また八日から下げさせていただいた金利等を活用して、通産省で対応していただかなければならぬ課題だなと思ってみました。  それからメリットの方は、初めて私感じましたのは、原油でございますけれども、三月末の分が初めて二十二ドルになっております。二月末までまだ二十七ドルでございますから、五ドル下がったということになれば、この傾向が続けばかなりのメリットが出てくるんだなという印象を持っておるところであります。そういうものがひいては、春闘相場は低い低いとはいえ、実質購買力が上がるわけでございますから、景気にプラスの方へ左右するんじゃないかなというふうな期待を持っております。  また、公共事業にいたしましても、例えば棒鋼でございますか、そういうものは確かにうんと下がっておりますから、実質の量としては伸びるのじゃないか、こういう期待もあるのではないかなと思っております。  消費者物価そのものは、これは市場原理を通じて下がっていくわけでございますけれども、強烈という言葉は適切でないかもしれませんが、かなり強い指導をしなければいかぬと思っております。  きょう、ちょっと今忘れましたが、デパートで下がった品目のリストを見ましたが、ははあやっぱりやっと出てきたな、こんな感じでございます。
  243. 上田卓三

    上田(卓)委員 円高のメリットをどう活用するのかということですが、そういうことと、もう一つは、公定歩合の引き下げによってそういうだぶついた資金というものが景気回復のために実際目に見えた形で還元される、あるいは使われるということじゃなしに、例えばきのう、きょうは株も大分下がっておるようですけれども、ここずっと円高傾向の中で、また、公定歩合が二次にわたって引き下げられたということもあって、相当株が高騰した。それと同時に東京都心部を中心に、土地それから世物、マンションというものが異常な形で上がっているということでございまして、こういうことが景気にいい影響を与えるはずはないと私は思っておるわけでありまして、こういう傾向に対してどう抑制策をとるように考えておるのか、あるいはこういう面において税制面での対策というのをどう考えておるのか、ちょっとその点をお答えいただきたいと思います。
  244. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに金融が緩んでおるとでも申しましょうか、それの投資先というのが株式投資、そして、私は具体的にそれを詰めておるというわけじゃございませんが、今御指摘なさいました東京都心を中心とする地価の異常な値上がりが私どもにも予測されることでございます。  それに対しても絶えず注意を払っていなければならぬことでございますが、株式市場の問題については、いわゆる東京証券取引所で行われる範囲の措置というものは、私ども見ておりますところ、かなり適切に昨今やられておるような印象を持っております。  それから土地問題につきましては、税制というのは、今まで何回もやってみましたが、やはり根本的なものではなく、いわば補完的なものではないかと考えられますので、いわばこれも指導の範囲内に入るわけでございますけれども、企業等の土地投機に対する貸し出しの抑制でございますとかそうしたことは指導の中に十分考えていかなければならぬことではなかろうかと思っております。  ただ、ポイント二つは、確かに今の経済運営の中で注目していなければならない大切な事柄だと思っております。
  245. 上田卓三

    上田(卓)委員 株が上がったり、あるいは不動産の値段がだんだん上がっていくという現象は、そっちにお金が投入されていっているからであるわけでありまして、健全な企業育成のためにそういう資金が導入されるとかいうことじゃなしに、財テクのような形、一種のばくちですね、あるいは高利貸しというのですか、働かないで利息で生活しようということがはやるということは、社会自身が健全でなくなっている証拠ではないかと思うわけです。そういう点で、もっと国内でそういう資金が健全に使われるような強力な指導をぜひともお願い申し上げたいと思います。  そこで、総合経済対策ということで、国際協調のための経済構造調整研究会、いわゆる経構研の報告を見ますと、経済政策のあり方を歴史的に転換させると、大変意気込んだ形で述べておるわけでございます。しかし、その中身たるや、あるいはその具体化の問題については、大変問題があるのではないかと思っておるわけでありまして、具体的な提案ということになりますと、マル優制度の見直しと週休二日制の完全実施だけではないのかと思わざるを得ないわけであります。  マル優制度の見直しということでありますが、欧米に比べて日本の貯蓄志向が非常に高いというのは、単に日本人の性格と見るべきではなしに、日本の社会保障、あるいは子供の教育、それから将来の住宅というものに対して大変不安があるから、自分で自己防衛という形で貯蓄をしているという面が多いのではないか。マル優制度があるから貯蓄に励むという側面もあるかもわかりませんが、そういう意味で内需の拡大ということを考えるならば、今補助金のカット法案が審議されておるわけでありますが、社会保障とか教育とか住宅政策というものももっと総合的にやっていかなければならないのではないかと私は思っておるわけでございます。  週休二日制の問題も、確かに内需拡大に大きな役割を果たすことは当然だろうと思っておるわけであります。この問題については、例えば役所とか学校などの公共機関を週休二日制にしてしまうとか、もう一つは銀行など金融機関の完全週休二日制、こういうことになろうかと思うわけであります。ちなみに一九八三年の数字で各国の年間実労働時間のデータがあるわけでございますが、日本は一年間で二千百五十二時間、イギリスが千九百三十八時間、アメリカが千八百九十八時間、フランスが千六百五十七時間、西ドイツが千六百十三時間ということで、主要国との関係を見ますと、年間二百時間から五百時間、日にちに直しますと二十五日から六十日間もの労働時間の差がある、こういうことでございます。週休二日の完全実施だけでその分の雇用増あるいはレジャー産業の拡大で四兆円か五兆円の需要創出になるという数字も実はあるわけでございます。そういう点で、特に金融機関の完全週休二日制についてどのように考えておるのかということも含めて、ひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  246. 亀井敬之

    ○亀井(敬)政府委員 金融機関の週休二日制のお尋ねでございましたが、金融機関の週休二日制の拡大につきましては、今先生御指摘のありましたように、大きな時代の流れであると私ども考えておるわけでございます。また、ただいま御指摘のように、これが消費の拡大を通じまして内需拡大にも資するものである、こういう観点もあろうかと考えておりまして、その拡大につきましては、民間金融機関のそういう拡大の動きを私ども積極的に支援いたしてきたところでございます。こういう観点から、ことしの八月にも月二回の土休制が実施できますように、各種の銀行法、施行令等の手配等をいたしておるわけでございます。  なお、これからの完全週休二日という御指摘でございますけれども、月二回から、その次はそういった方向へ目指していくわけでございますが、そういう場合にはやはり金融界のコンセンサスももちろん必要でございましょうし、またそれのみでございませんで、広く利用者であります国民や企業等の理解を得ながら進めていく必要があるのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  247. 竹下登

    竹下国務大臣 週休二日制というのは、今御指摘ありましたように、私も賛成でございます。本当に賛成になるまでには、私と上田さんとかなりの年齢の差がありますので……。私、IMFに出まして、先進国の会議と開発途上国の会議二つございますね。先進因の会議へ行くと、日本はもっと休め、こういう話になります。開発途上国の会議へ行くと、日本のように勉強して日本のように働こうなんという話になりまして、頭の切りかえにちょっと困るというような感じを受けたこともございますが、全体的に私どもは週休二日というのは進めていかなければならぬ。  歴史的に見ますと、やはりこれは民間企業から始めるべきだ、いや、公務員は何としても全体に対する奉仕者だから一番最後にやるべきだというような議論から十年間ずっと今日まで経緯をたどってまいりまして、それで、今いろいろな試行が行われて定着しつつある。金融機関も御多間に漏れず、銀行の中でもいつも晩七時まで開いている銀行なども特別にございますし、いわゆるCDを稼働させないと休みのときに不便を顧客に与えるというようなことで銀行それから郵便局。さらに農協なんということになりますと、一方の仕事場では働いてこっちは閉めておる。いろんなことを総合して、今労働省中心でいろいろ御協力、御指導いただいておりますが、我が方の所管の金融機関の週休二日制はおよその目標も立てられ、大体いい方向へ行っているなというふうに私は見ておりますので、これが可及的速やかに実施に移されることを私も望んでおります。
  248. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、東京サミットを前にして、やはりサミット参加国の人々だけじゃなしに世界じゅうの人々に日本が何を具体的に提示するのか、こういうことだろうと思うのですね。だから、そういう点、経構研の報告では、先ほど申し上げたように、非常に言うはやすく行いがたしというように――実際、実行あるのみだというように思うのですね。それと、実行の中身ということにもなろうと思うわけであります。  そういう意味で、ここ四、五年続いてまいりました、これは鈴木前総理の時代も含めてでありますけれども、そういう財政再建という名のもとの経費面の支出等のカット、そして、一方には増税なきと言いながら増税つきの財政再建、こういうことではなかっただろうか。そして、減税はずっと見送られるといいますか、労働者の可処分所得の問題についてもやはり実質の低下、こういう形になっておるわけでありまして、はっきり申し上げて、財政が苦しいから国民は我慢してもらいたい、地方自治体に泣いてもらいたいということは、一つの企業で例えたら、経営努力もしない社長が、自分の無能力さを棚に上げて、会社は苦しいんだから交際費を削れと言うようなもので、交際費を削ったら、これまた営業の面に逆にはね返ってくるわけであります。また同時に、労働者の賃金をカットするということになりますと、労働者の労働意欲にも関係してくるし、また厚生面とかあるいは扶養手当とか、そういうようなものでカットしてくると、家族にもそれが影響してくる、こういう形になってくるのではないか。  そういう意味で、今世界の景気を引っ張っていく牽引車的な役割を世界の人々は日本に求めておるわけでありますから、世界の景気が悪いから日本もそこそこの成長率でいいんだということはもってのほかだ。そういうことをやってきたこと自身、日本経済を窒息させてしまって財政再建もままならない、こういう悪循環となってあらわれておるのではないか、こういうように私は思うわけであります。そういう点で内需の拡大ということを考えただけでも教育や福祉や住宅政策を充実することが大事であって、そこらあたりをカットすること自身が時代錯誤も甚だしい、こういうふうに言わざるを得ないのではないか。  当然、日本がこういうような円高を目指さなければならないということの一つの大きな原因にアメリカの異常なドル高、高金利というものがある。そして、これはアメリカの慢性的な赤字財政、あるいはその原因であるところの対ソ関係、世界戦略ということにも関連するわけでありますけれども、やはり防衛力の増強というのでしょうか、軍事費にお金を使い過ぎているというところに問題がありはしないだろうか。そして、高金利のために発展途上国が債務奴隷に転化してしまって政情不安定になる。だからますます軍事費を増強して世界の憲兵たらんとする形になっている。アメリカ自身がまじめに平和国家として、そして世界に迷惑をかけないような健全な社会として努力をすることが大事ではないか。  それと同時に、やはり我が国においても応分の努力ということが大事ではないか。そういう意味では、端的に申し上げて東京サミット前に、今春闘が解決したところもあれば解決してないところもあるのですけれども、ここで大幅賃上げ、大幅減税をするだけで大きな内需拡大、また、サミットへ来る方々に対する大きなお土産になるのではなかろうか。あるいは、補助金のカット法案を上げたらサミットで云々というのではなしに、こういうものを廃案にすることの方が土産になりはしないだろうか、こういうように申し上げたいと思っております。  同時に、今赤字――財確の方でもまた討議はさせてもらいたいと思いますけれども、何といっても国民消費の中で個人消費の占める位置というのは五五%ぐらいあるのですか、そういう意味では直接個人のポケットに入るような対策として賃上げと減税、あるいはいろいろな形の補助金をカットするのではなしに、それを上げるぐらいな状況に持っていくことが大事であろう。また、国家の、公共事業の占める位置も大きいわけでありますから、今までのような萎縮したやり方ではなしに、建設国債の発行によって公共事業にカンフル注射を打つというようなこともこの際拡大均衡の――だからといってインフレを醸し出すようなことは、これは十分考えなければならぬと思うわけでありますが、そういう形で、増税によって増収を図るのではなしに、景気回復によって税収が伸びるという増収のやり方があるわけでありますから、そういう形に路線転換をすることが大事ではないのか、これは、いつも大臣との論争の的になっておるわけであります。その点、大臣は次期をうかがうニューリーダーの中のニューリーダーでございますので、気持ちのいいすかっとした御発言をいただきたい、このように思います。
  249. 竹下登

    竹下国務大臣 いつも上田拡大均衡、竹下縮小均衡というような印象の問答を繰り返しておりますが、今私どもの立場としては、いわゆる「増税なき財政再建」というかんぬきの中に自分を置いておるわけでございます。これは本来は、歳出削減努力をしなさいよ、安易に増税を志向してはいけませんよという意味のかんぬきであると私は思っております。したがって、厳しい経済の一部として、緊縮財政と言われるこの財政を今日までとり続けてきたわけであります。  振り返ってみますと、オリンピックの翌年の四十年に初めて公債が発行されて、あのとき二千億でございますが、あれは私は即効性があったと思っております。そうして、ちょうど十年間で九兆六、七千億になると思います。もちろん建設国債だけでございますが、これも私はそれなりに寄与をしたと思っております。五十年から結局第一次オイルショックで、ドルショックもございましたけれども、おおむね六倍に原油価格が上がった。そのときに、国民の貯蓄があったから公債が発行できたと思っております。その後、百数十兆発行しておるわけでございます。したがって、公債政策そのものは大きな誤りであるとは私は思っておりません。  ただ、五十五年のときを思い出してみますと、公定歩合を途中で二回上げさせていただかなければいかぬほどいわば物価が上がるような状態になった。また、建設国債によらず国債が売れなくなったというような状態もありまして、したがって財政再建というものが始まっていった。可能な限りまずは赤字公債をなくして、それから公債依存度をずっと下げていこうということで、数字の上では公債依存度は下がってきておりますけれども、確かに厳しい財政を進めてきておるということは否めない事実です。  そこで、上田理論では、要するに経済運営のよろしきを得て自然増収が出るような施策が一番いいじゃないか、私もそう思います。ただ、その自然増収というのは……(上田(卓)委員「賢い経営者はそうしますよ」と呼ぶ)経営者とはまた別の問題で、義務的にやらなければならぬ仕事が国家財政の中にはたくさんあるわけでございます。そうすると、富の再配分ということからすれば、いわゆる負担する者も国民、受益者も国民ということになれば応分の負担も願わなければならぬ。それを、負担を願わない形の中でやっていきますから厳しくなってくる。今、あるいは思っていらっしゃると思いますが、日本は国債発行をすればその売れる市場は確かにございます。それによって、かつてのようにぼんと金利が上がることもないと思いますが、それをやりますと、今までやった要するに国債減額政策というのが一朝にして崩れてしまうという悩みを非常に感ずるわけでございます。公債政策のあり方がすべて悪だというような考えはございませんが、そこにジレンマを感じながら、しかも、国際社会の中で民間の金が一番余計ある国になってしまったわけでございますから、応分の努力をしていくということに毎日毎日悩みながら対応していかなければならぬというふうに考えております。  ただ、一つだけ、牽引車論というのはこれは五十三年に日本と西ドイツにあって、あのこと自体は世界全体が非常に、何といいますか牽引車論だけはやめようやと。おっしゃる意味はわかりますが、仮に日本、西ドイツが牽引車になりますと、かつての宗主国であるイギリスもフランスもみんなやらなければいかぬようになって、それで金利が上がって開発途上国が逆に困る。したがって、節度ある国際社会への果たさなければならぬ役割――即効性は大事です。マクロ的には経構研のことをやっていかなければならぬと思いますが、即効性のあるものについてもこれから一生懸命知恵を絞って対応していくべき課題だというふうに考えております。
  250. 上田卓三

    上田(卓)委員 牽引車論の問題については、そういう論というよりも、実質的に日本が世界各国からそうやって期待されておるわけでありますから、そういう期待に沿うように実効を上げていくということではないか、言う言わないは別にして、やはり実際の行動で示すということではないかと思います。  財確のときにもまた議論させていただきますが、こういうような赤字国債、そして国債残高が百四十三兆円。その利子だけでも十一兆円。その十一兆円の利子を渡す金がないためにまた十一兆円近い国債を発行しなければならぬ。そして、国債の償還期間十年がたった。ところがその支払いのお金がないということでまた借換債を発行していくということで、新年度は二十二兆円くらいになるのじゃないですか。そういうようなことで、本当にあらかた火の車、国民は泣いてくれ、こういう形に今なっているのだろうと思うのです。そうやって苦しくなっておるということは事実でありますが、そういうべらぼうな借金を抱えて借金財政をしてきたのはとりもなおさず政府であり、与党の自民党の責任ではないかと思うのです。ここまで来て、だから仕方がないのだというよりも、ここへ来るまでにだれがしたのだ、そのことをまず明らかにしなければならぬし、また、ここまで来た段階で、そういうけちけちムードで財政緊縮でやるということが正しいのか、もっと経済の政策転換をすべきなのかということは、これは与野党の対立というよりも、はっきり言ってポスト中曽根をめぐって与党内部、あるいは財界の中でもこういう両方の意見が当然あってしかるべきだし、また中道的な意見もあってしかるべきだと思うのです。それをどうとっていくかということが政治家の役目ではないか。  そういう点で、社会党さんの言うことを大体三年おくれくらいに実行しておったら云々というような大臣言葉もありますものですから、もうそろそろやっても遅くない時期に来ているのではないか、だんだん空気が陽気になってきているのではないか、そうせざるを得ないという意味で実質的に中曽根行革は失敗に終わった、こういう形で衣がえをすることになるのではないか、こういうように思います。  そこで、時間も少なくなってまいりましたので、具体的な法案の中身について若干御質問を申し上げたいと思います。  いずれにいたしましても、七省庁にまたがる法案を一括して、それも財政上の理由ということで大蔵委員会におろされる、連合審査もあったとはいうものの、本来ならば各委員会におろして慎重審議するのが当然のことでありまして、それが国会のルールではなかっただろうか、このように私は思っておるわけでございます。今後こういうことは絶対にないようにぜひともお願い申し上げたい。  それから行革関連特例法の三年延長、一年限りということであったわけでありますが、暫定的にさらに三年、こういうことのようでございます。大体政治家はうそつきやということになっておるのかもわかりませんけれども政府の役人が、総理大臣以下閣僚が一年と言ったら一年なんですよ。民間でもそうですよね。一年だけお金貸してくれと言うたら一年後にはちゃんとお金を返すものですよね。それを返さないで、ないからしようがないじゃないか、もう一年、もう三年というようなことは許されないのではないか。小学校や中学校、高校でもそうですけれども、学校で子供から、国会で言われている一年限りというのは四年のことかとか、五年のことかとか言われたり、一年限りと言うたら一年限りでないんだなというようなことにもなってくるのではないかと私は思っているわけであります。  そういう点で、少なくとも、この法案によりまして昨年は地方負担が五千八百億、ことしは一兆一千七百億、国の負担は本年度は九千七十億円の減ということのようでございます。しかし、この中を見ますと、この生活保護法、それから児童福祉法、それから老人福祉法に関する削減額だけで四千二百八十七億円、約四七%。それから、その他の社会保障関係削減分を加えると五千百五十億円、五七%になるんですよね。社会保障関係だけで五七%、こういうことでありますから、これは補助金削減一括法というよりも社会保障、福祉削減一括法と言ってもいいのじゃないかというように僕は思うのですね。むだな補助金削減しているのじゃなしに、福祉関係をねらい撃ちにした福祉等、等をつけたらいいと思うのですね、福祉だけじゃないのだから。福祉等削減一括法、こういうように言わざるを得ないのではないか、こういうように思うわけであります。  また、去年も私申し上げたわけでありますが、生活保護も含めてでございますが、これらは全部当然国が負担しなければならない負担金の地方への委譲、こういうことでありまして、補助金等削減一括法というよりもこれは国庫負担金等の削減一括法じゃないか、名前にごまかしがあるのではないか、こういうように僕は申し上げたわけでありますが、そういう点で、本当にこの地方自治体の現状というものを一体どのように思っておられるのか、その点について大臣から言いただきたい、このように思います。
  251. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、確かに公債残高でございますとかそういうものを比較して数字だけ見た場合に、国よりは地方が余裕があると言う人がございますが、私は、その考え方には立ってはいけない、これは車の両輪たるもの、その都度その都度の財政状態の中でいろいろな調整を行うのは結構でございますが、地方団体富裕論という立場から物を律してはいけないというのは絶えず自分に言い聞かしておるところでございます。言い方によれば、貧乏度合いの何か対照比率でもあれば参考にすべきかもしれませんが、現実にそういう富裕論というようなものに立って対応してはいけない、あくまでも車の両輪として事務事業の見直しと費用負担のあり方の中に納得して位置づけをすべき課題だというふうに思っております。  最初おっしゃった問題等に返ってみますと、一年限りかというところからになります。一年限りというのは、当時私が言葉を非常に整理して申しましたのは、財政状態からしてアバウト一割削減を行おうと思いました、しかし、なかなか個々にわたっての行き届いた議論ができませんでした、したがって、一年かかってその議論をいたしますから、一年限りの暫定措置としてこのアバウト一割カットは認めてください、こういうことを、言葉を選んで言っておりました。そこで一年かかってやった。だから一応のコンセンサスを得たものが出ました。しかし、社会保障等は、御存じのように両論併記であった。だから、ここで私の考え方の中には、一つは五年という考え一つ考えとしてはございました。すなわち財政再建期間ということを意識したからでございます。しかし、やはり両論併記というものがあった限りにおいては、五年ではいかにも長過ぎるという感じがございました。と同時に、いま一方、税制改正の国、地方税のあり方についての御答申がこの秋いただけるとすれば、六十二年度税制、六十三年度税制というようなものも念頭に置くと、ちょうどその三年がお願いする妥当なところではないかなというふうに思ったからそういうことにしたわけでございまして、三年に物すごい論理的根拠があるとは私も実は必ずしも思っておりません。  ただ、御指摘になりましたように、元来、経済政策にしましても、そしてまたこういう財政政策にしましても、本当は、国会というものがあってそこで与野党のコンセンサスが得られるというのが一番望ましい姿だと私も思っております。多少のよって立つ基盤の相違はあっても、大筋ではやはりコンセンサスが得られる状態になるようにお互いが努力をしなければならぬ課題だというふうに思っておるところでございます。
  252. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、一年限りと言えば一年限りだと思っているのですよ。これはもう日本語はそうだと思うのですね。ただ、まあ一年の間にいろいろ検討してという言葉はありますが、やはり一年ということでありますから、だれでも一年だけであって後で戻るんだなと――行革特例法の場合でもそうだと思うのですよ。三年と言うたら三年だけだなというように思うわけでありまして、そういう国民をペテンにかけるという言い方はおかしいが、言葉のあやでそうやってだましていくということは果たしてどうだろうか。気にさわったらあれでございますけれども……。  例えば去年の場合は高額補助金をカットすると言いましたね。それなら、そうか、高額、八割補助とか七割、それが一応高額というんだなと思っておりましたら、今度は二分の一を三分の一にするんでしょう。それは、二分の一はもう高額の部類に入るんだという理屈になってくるのかよくわかりませんが、少なくとも去年に関しては高額補助というのは七割とか八割のものについて、あるいは六割もあったと思いますが、そういうものだなというように我々は想像しておった。そして二分の一になる。生活保護は七割ということでありましたが……。そういう意味で暫定的だ、そしてもとへ戻るんだというようにだれでも思っておったし、厚生大臣と自治大臣大蔵大臣との三者の中でも、生活保護の問題についてはやはり八割に戻してもらいたいという形、大蔵は三分の二というようなことのようで、結局検討会でまとまらなかった、こういうことでございます。やはり、まとまらなかったらもとへ戻す、一年限りということであったのですから、戻すことが当然のことではないか、私はこういうように考えておりますので、この部分について、時間がございませんけれども、厚生省と自治省の方お見えでございましょう、ちょっとお聞かせいただきたい。この法案を提出しているということでありますから、三年たったら今度は本当に正真正銘にもとへ戻すということになるのかどうか、ひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  253. 小島弘仲

    ○小島政府委員 大蔵大臣からも御答弁申し上げましたように、補助金問題検討会では、生活保護につきましては両論ありました。それを受けまして関係閣僚会議の御討議の結果、三年間は六十年度並みの十分の七、その後の扱いについては改めて検討するということでございますので、大蔵大臣から御答弁がありましたように、今後行われるであろうところの税制改革等々の事情も踏まえまして、国と地方の財政事情等も勘案されながらその時点で改めて協議が行われ、決定されることになるものと考えております。
  254. 持永堯民

    ○持永政府委員 生活保護の補助率の問題でございますけれども、今御指摘ございましたように、もとへ戻すべきではないかという点でございますが、今日の結論が出るまでの過程といいましょうか、いきさつといたしましては、生活保護については事務事業の見直し、あるいは国、地方の役割分担の見直しということが非常に難しい情勢であろうということもございまして、私どもとしては十分の八に戻すべきではなかろうかという見解も持って、そういうことで対応してまいったわけでございますけれども決着につきましては、今までいろいろ御説明があったようなことで、三年間暫定的に十分の七でいくということであります。これから三年間の間にその後のあり方を三大臣で協議をすることになりますが、その際には、私どもとしては、やはり生活保護というのは国の責任が最も重い分野の行政であるという基本的な認識の上に立って対応をしてまいりたいと考えております。
  255. 上田卓三

    上田(卓)委員 三年たったら検討してまただめだということのないように、ちゃんと国民に約束されておるわけでありますから、それをぜひとも実行に移していただきたいということと、それから抜本的な税制の改正というところに逃げ口を設けるのではなしに、先ほどの言葉にあると思いますが、自然増収によって財政が潤うようなことも考えていかなければならぬだろう、こういうふうに思います。そうでなければ、結局は今のカット方法が将来そのまま定着してしまうということにならざるを得ないのではないか。これは言うまでもなくむだな補助金をカットするのじゃなしに、福祉関係補助金、教育関係負担金、そういう実質的に国が負担しなければならぬものを地方に転嫁するということ以外の何物でもない。また、地方自治体負担するということは、制度とか中身の改悪につながらないといっても、実質的には負担が重なってきておるわけでありますから、例えば生活保護などにおいても、人数を厳しくチェックして一人でも二人でも減らそうということになってくるのではなかろうか、私はこういうように思っておるわけであります。また、機関事務の地方への委譲についても、権限だけじゃなしに財政もやはり自主財源も含めたところの手厚い措置がなければ無理ではないか、こういうふうに思っております。  そこで社会局の小島局長にちょっと質問しますが、一九八一年の不正受給の防止を名目としたところの厚生省の百二十三号通知、これを一つの口実にして、要保護者に対する保護の打ち切りやあるいはむちゃな就業指導――私の事務所へもいろいろ訴えられておるわけですけれども、昼バイトをしておった、ところがだめだ、夜の商売でもしなさいというように言われるとか、あるいは昼アルバイトして、経験も少ないから一万円か二万円くらいしか実際収入がないのに、これでは絶対受け付けない、七万か八万収入があるというように雇い主に書いてもらいなさい、こういうようなことがある。また、先ほどもお話があったように、扶養義務者でないおじとかおばとかめいとかおいに強要をするとか、あるいは別れた亭主は今どうしているのだ、そこから援助をしてもらえないものだろうかというようなことまでやって、いろいろな嫌がらせが現実に起こっておるようでございますが、そういう事実があるのかないのか、あるとすれば正してもらわなければならぬし、そういうことが現実に私どもの方に伝わっているということでありますから、そういう点について善処方をぜひともお願い申し上げたい、このように思います。
  256. 小島弘仲

    ○小島政府委員 お尋ねの百二十三号通知というのは、「生活保護の適正実施の推進について」という五十六年の通知かと思います。これは先生も御承知のとおり、暴力団による不正受給問題を契機としまして、一般的な生活保護制度の適正化ということで、特に所得の把握それから資産状況の把握等を適正にやるようにという通知でございます。  もちろん生活保護というものは、本当に保護の必要な方に十分にその保護ができるようにという運営を最も基本的な制度のあり方として考えていかなければならぬものでございますので、本当に保護の必要な人がそういうようないろんな措置によって受けられないことがあってはならないということは、先生御指摘のとおりでございます。  確かにいろいろな例を引かれた御質問も承っておりますが、我々としてはそれが本当に適正に運営されるようにということを常に念頭に置いて当たらなければならぬという形で地方を指導をしておるところでございます。  今のお話を伺っておりまして、一つにはやはり物の言い方、また相手の受け取り方ということとの兼ね合いで、その辺でもっと注意をしなければならぬことがあるのかというふうに考えております。  確かに就労指導につきましても、現在のその人の能力、体力等から見てもう少しいいところがあるということで指導することは、これは自立を促進するという意味で、労働当局とも協力しながらやっていって差し支えないことであるし、やるべきことだと思いますが、例えば夜の仕事にというようなことがあってはならないことはまた当然のことでございますので、十分配慮しながらその適正な実施に努めてまいります。
  257. 上田卓三

    上田(卓)委員 この不正受給を受けた世帯は、厚生省の五十九年度の監査結果によると、七百七十六世帯で、約六億八千万円となっていますね。これは全保護世帯総数七十八万九千六百のうちたったの、たったでいいわけですけれども、〇・一%ですよね。総予算にしますと一兆四千八百八十七億円の〇・〇五%ということでありますから、一部というよりも一部の中の一部のそういう不正受給のために、全体の受給者が何か悪いことをしてごまかしておるんだというような目でケースワーカーに見られるということは大変なことだ、こういうように思うわけです。だから、そういう口実を設けてそういうカットをするということのないようにぜひともお願いを申し上げたい、このように思います。  次に、教育扶助の問題でございますが、今、中学校の卒業生で高校へ進学している率が九〇%を超えておるというように思うのです。生活保護を受けている家庭の子供は高校へ行くと教育扶助を受けられない、小中の義務教育課程だけが教育扶助を受けられる、こういうことのようでございます。やはり中学を卒業して働くよりも、高等学校を出れば収入もそれだけ安定した企業に勤められるという形になるわけでありますから、そういう点で、日本経済大国というのならば、また九〇%以上の高校進学率であるということを考えた場合、生活保護者の子弟の高校への進学の場合の教育扶助はぜひともしてやってもらいたい、私はこういうように思います。  また同時に、現在教育扶助を受けられないけれども中学校卒業ではだめだというので高校へ行っているんですね。ところが、生活がやっていかれないということでアルバイトをするケースがあるのです。そうするとそれは収入認定になって、その分だけカットされてしまう、こういうようなこともあるわけでありますが、そこはやはりそういう冷たい態度をとるのじゃなしに、そういう生活保護家庭での子供の進学の問題について手厚い手を差し伸べることが大事だと思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  258. 小島弘仲

    ○小島政府委員 確かに高校進学率が上ってまいりまして、現在九四%をちょっと上回る程度かと思います。一方、生活保護世帯を見ますと、ほぼ七〇%ということでございますので、そこに有意の差があるのは御指摘のとおりでございます。ただ、現行法では、教育扶助の対象としては義務教育段階まで、これは高校が義務教育じゃない、少なくとも中学を出て働いている人もあるということとの均衡も考えたことだと思いますが、できるだけ高校進学の便宜を与えるべきことは先生御指摘のとおりでございます。したがって、高校に進学しておりましても、生活費そのものは生活保護の体系で見ます。ただ、教育扶助だけは御指摘のようにない。そのために活用する手段としては、世帯更生資金あるいは育英制度というような資金の活用もひとつ積極的に進めていっていいことだと思いますし、御指摘のようにアルバイトの者につきましても、これもできるだけ本当に進学の趣旨に資するようにという趣旨で、まず勤労控除のほかに、これは未成年特別加算もございますし、そのほかに高校進学に必要な学用品費、それから通学費、その他のスポーツ用具というようなものも含めまして、高校教育を支障なく受けられるような控除制度はアルバイト収入についても実施しておりますので、その辺さらに改善する合理性があれば今後とも十分高校進学を推進できるような形で考えてまいりたいと考えております。
  259. 上田卓三

    上田(卓)委員 今、塾へ通う子が四人に一人、あるいはそれ以上かもわかりませんが、そういう時代でもあるわけでありますから、受給者の子弟の教育の問題について応分の御理解をいただいてさらに善処をしていただきたい、このように思います。  次に、これも私の地元にも非常に関係があるわけでございますが、地方交付税の算定基準のうちごみ処理、それからし尿処理などの清掃費の密度補正に係る処理人口は住民基本台帳登載人口となっているために、外国人の人口は算入されていない、こういうことになります。このため、私の地元のある市では、人口約五十万人のうち約四%の二万二千人の外国人居住者が算定基礎から除外されている、こういうことでありまして、その実際の損害といいますか実損は千六百万円ぐらいになるようでございます。そういう点で、外国人であっても税金はちゃんと納めておるわけでありますし、また、当然そういうごみ処理とかし尿処理等の清掃にはその地区だけ、その人たちのところだけ抜くというわけにはいかないわけであります。これはどうしても不合理ではないか。基本台帳の登載人口というのは確定的だということでありましょうけれども、これは五年に一回ですか、国勢調査があるわけでありますから、そういう点である程度外国人人口の推定というものはされるわけでありますから、私はちゃんとしてあげることが大事だと思いますが、お答えをいただきたいと思うのです。
  260. 持永堯民

    ○持永政府委員 ごもっともな御指摘でございまして、若干事務的な面にわたるかもしれませんけれども御説明をさせていただきますと、今御指摘ありましたように、処理人口につきましては、交付税の算定上公共施設状況調という調査の数字を使って算定をいたしておりまして、その調査自体が住民基本台帳人口を基礎にしているために、結果として外国人人口が算定から外れてくるということに相なっているわけでございます。しかし、外国人人口につきましても当然ごみ、し尿の処理は必要でございますから、そういったことで、これも算定上加味していくことが妥当であろうというふうに考えておるわけでございます。そこで、今申し上げました公共施設状況調につきまして、外国人人口を含めることについていろいろ検討してまいったわけでございますが、その結果として、ことしの調査からこれに外国人人口を入れるようにしようということに相なりました。したがいまして、そのことによりまして六十二年度の交付税の算定からは、外国人人口がごみ、し尿処理の経費の算定に反映されるということに相なるわけでございまして、そういったことで対処してまいりたいと考えております。
  261. 上田卓三

    上田(卓)委員 その点はひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  最後に部落解放問題、いわゆる同和対策の問題について若干、時間の許す限り、お答えをいただきたい、このように思います。  総務庁の方もお見えのようでございますので、同和対策特別措置法が地域改善対策特別措置法、地対法に変わったわけでございますが、その法律が来年三月三十一日で切れるということで、同和対策の現状がどうなっておるのか、それから今後どういうような形で施策をしようとしておるのか、先ほども伊藤先生の質問の中で答弁をいただいておりますので、簡単に地対室長からお答えいただきたいと思います。
  262. 熊代昭彦

    熊代説明員 同和対策の現状ということでございますが、地対法、それからその前の同対法の十七年の施策等を通じまして、物的事業につきましては相当に改善、成果を見た、それからソフトの面の生活実態につきましてもかなりの成果を上げたのではないか。それで、心理的差別でございますが、心の差別という面につきましては、物的ないしは生活実態の向上ということで改善は見ましたけれども、なおかつ問題を残している、このような現状かというふうに認識しております。  今後の問題といたしましては、特に啓発を主にいたしまして、国民の心の中に残りました差別を解消していくということが特に重要ではないか、このように考えております。
  263. 上田卓三

    上田(卓)委員 法務省の方もお見えのようでございますので、差別事件が非常に悪質化している、そして頻発しているというふうに理解しておるのでありますが、部落差別の内容それから傾向、そういうものについて、資料がありましたらそれに基づいて御答弁いただきたい、このように思います。
  264. 落合紹之

    ○落合説明員 お答えします。  法務省の人権擁護機関は部落差別事象を悪質な人権侵犯事件として調査、処理してまいっております。また差別意識を解消するために啓発に努めてまいっておるところでございますが、残念ながらいまだに差別事象は後を絶たない状況にございます。  これらの事件の傾向を見てみますと、差別言動のほか、結婚や就職に際しての差別事象が依然として後を絶っておりません。また最近ねたみ意識に基づくと思われる落書きや差別文書等が目立ってきております。  今後ともこれらの差別事件につきまして人権侵犯事件として調査、処理を行うとともに、差別を生む土壌そのものを変えるための啓発活動を積極的に行ってまいりたい、このように考えております。
  265. 上田卓三

    上田(卓)委員 自治省の方、お見えだと思いますが、今までずっと長年にわたりまして同和対策のための国の補助金、あるいは自治省においてはそれの起債あるいは交付金で対策する、こういうことでありますが、いわゆる同和債の残高はどのぐらいになっているのか、その返還の見通しをお答えしていただきたい、このように思います。
  266. 持永堯民

    ○持永政府委員 同和対策事業債の残高でございますが、五十九年度末の数字で申し上げますと、七千三十四億ということに相なっております。  その償還の見通しにつきましては、これは政府資金でございますから、貸付条件に従って償還をしていくわけでございますが、内訳といたしましては、いわゆる五条債と言っておる分が七千三十四億の中で三千三百二十億ございまして、これについては御案内のような交付税上の措置がある。残りの三千七百十四億につきましては、交付税上の措置は個別の公債費としてはいたしてないわけでございますので、それぞれの市町村の財源で対応していただく、こういうことでございます。
  267. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵大臣、私もその一人でありますけれども、団体の人も毎年予算時期にはいろいろ御陳情申し上げておるところでございますし、また、いろいろ御配慮いただいておることもよくわかっておるわけでありますが、この五年間の予算の推移を見ますと、今までそれなりにずっと増加傾向にあったわけでありますが、やはり財政再建という名のもとで非常に予算が少なくなっておる。この同和対策は時限法ですから、限られた時間のうちに限られた事業を終えようということでありまして、予算がふえていくということは、十年のものが九年になるし、九年のものが八年になるというような、そういう面を持っておるわけであります。そういう予算額が減額されるということによってこの問題の解決が少しずつ遠のいてしまう、こういうことから、当初十年間で解決しようとした同和対策事業特別措置法が十年で終わらないであと三年延長された。そして、さらにそれでも終わらないということで、地対法ということで五年間の新しい法律ができたわけでありますが、それがあと一年足らず、こういうことでありまして、今地対室長からの御報告がありましたように、物的なものについてはある程度進んだということでありますけれども、はっきり申し上げて、進んだ点は確かにあるにしても、まだ相当の、残事業という言葉は私は余り好きじゃないのですが、事業が残っておる、私はこういうふうに思っております。いわんや、法務省からのお話のように、差別事件、それも悪質なものが非常に増発しておる、こういうことでございまして、この法律の趣旨というものは、地域を改善するために改善しているのではなしに、忌まわしい部落差別をなくするために地域の改善もし、あわせてそういう教育啓蒙、啓発あるいは就労対策等、産業対策とか総合的な面でやられておるわけでありまして、そういう点でやはりソフトの面が相当残っておるということが現状ではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  部落問題をどうしたら解決できるのかということについては、昭和四十年の同対審の答申の精神から見ても、今日も相当間違った認識の閣僚もおるようでございまして、予算委員会なり分科会等でも相当超党派的にこの問題を取り上げてまいったわけでございますが、そういう点で、大蔵大臣がこの部落問題について一体どのようにお考えになっておるのかということをお聞かせいただきたい。特に、例えばこの同和対策をしたために約七千三十四億円の起債、借金が自治体にある。しかし、そのうちの三千三百二十億、これは五条債ということでありますから最後は交付税で裏づけがある、こういうことになるのではないか、こういうふうに思っておるわけでありますが、あと残りの三千七百十四億円、これは恐らく補助金が少ないものですから、規模、基準に満たないので超過負担になった部分とか、あるいは国の補助金がいただけないので府県の単独事業とか市町村の単独事業ということで、起債は見てもらったがその償還元利は地方自治体負担、こういうような形で大変苦しい状況にあるわけでございます。この同和対策というのは、戦前は全部国庫負担で、国の事業でやられておったわけでありますし、そういう意味では、生活保護がかつて全額であったように、高率補助で市町村に余り負担をかけない。同和地区の所在する府県もあれば、ない府県もあって、まあ全国的に網羅しているとはいうもののやはり自治体によって相当な差があるということもこれまた事実であります。そういう自治体に相当な負担がかかっているがゆえに、また部落に対するねたみ差別というのですか、部落だけよくなってという形でやはり差別の対象になっておるということもこれまた事実ではないか、こういうように思っておるわけでありまして、その点についてひとつ大臣考えをお聞かせいただきたい、このように思います。
  268. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょうど昭和四十年の同和対策審議会の答申が出まして、私は内閣官房副長官をしておって、八木一男先生が一緒に総理のところに案内してくれと言われて、本当言いますとそのときに勉強さしていただきました。それまで深い知識を持っておったとは自分でも思っておりません。  それで、私もその後の推移を見ますと、確かにおっしゃいますように、あのときの答申に書かれておるとおり、基本的人権にかかわる課題であり、その解決は国の責任であるとともに国民的課題であること、また差別には心理的差別と実態的差別があり、これが相互に悪循環を繰り返して差別を助長していること、したがって、地区の環境を改善し、地区住民の生活安定と地位の向上を図るための方策等が重要であるというような指摘があって、それで、その後法律ができたとき、また八木先生がお礼に見えたことを覚えております。私のところじゃございません、亡くなった佐藤総理のところでございましたけれども。  その後、私なりに見ておりますと、確かにおっしゃいますとおり、また総務庁からのお答えにもありましたとおり、ハードの面はそれぞれできて、それでことしの予算でもたった一つだけ言いましたのは、残事業ができるだけ消化できるような予算措置をしなさいよということだけは言いまして、伸び率は二・何%でございますけれども、事業費にすればもう少しふえておるのでございましょう。したがって、これから先の問題になりますと、恐らく総務庁、同対審のいろいろな御協議の場でお考えになるのだろうと思っておりますので、直接所管でもない私が予見を申し述べるわけにもまいりませんが、そうしますと、総務庁が中心になっていろいろなお考えをおまとめになったことに対して、国庫大臣としてそれから御相談に応ずることではないかなというふうに思っております。
  269. 上田卓三

    上田(卓)委員 この部落問題に対して国民が一体どう思っておるのかということ、あるいは有識者がどう思っておるのかということにもなってくると思うのですね。差別事件が続発する、悪質になっているという一つに、新聞等マスコミで話題にもなっているえせ同和、えせ同和という名前は字のとおりにせものの同和団体だということになるわけですね。ところが世間には、えせ同和が悪いことをしたということになりますと、また同和の人が悪いことをしたというような形にしか映っていないというように思うのですね。我々非常に残念だと思っておるのです。部落の人間でない人間が、あたかも自分たちが部落民であるがごとき装いをして、団体を組んで、そして銀行とかあるいは時には税務署へ乗り込んでいって、机の一つでもたたけば税金がまかるとか、あるいは担保もないのに何億という金が借りられる。私は不思議でならないのですけれども、いいことはなかなかだれもまねしませんけれども悪いことはだれでもまねしたがるものです。だから、そういうものをのさばらしているというのは、私は行政の責任であり、金融機関の責任だと思うのですが、そういうことが結果的に部落解放運動のマイナス要因になっているということも事実であるし、我々団体などにおいても、そういう不正なことのないように、国民に支持されるような運動をしていかなければならぬということで頑張っておるわけであります。  いずれにいたしましても、この問題の解決のために府県なり市町村に大変御苦労をいただいている、ところが、御存じのように非常に財政難の折である、こういうことでありますから、やはり国のそういう対策があってこそやっと支えられて市町村行政が前へ進むということになるのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  それに関連いたしまして、それじゃこの問題があと三年あったら解決するとか五年あったら解決するというような、そんな問題じゃないと私は思うのですね。大臣、どうでしょうか。この部落問題というのは法律だけでももう十七年間経過してきているということを考えた場合に、まだまだ相当長期にわたって、やはり心の問題もこれありでございまして、物的なものはある一定の段階まで来ればということにもなるかもわかりませんが、そういう点で今日の時点で法が切れるということになりますと、今まで法があったから差別をしてあかなんだ、しかし法が切れたんだからこれから差別をしてもいいんだというような形に逆になりかねないのではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  そういう意味で、今後のこの問題の解決については、一定の期間に問題を解決するということはわかるのですけれども、時限法的なものじゃなしに、やはり基本法的な問題で、昔こんな法律があったな、しかしもう今非常に問題解決してよかったな、まだそんな法律あるのかと言われるような時期の一日も早からんことを我々は望んでおるわけでございます。  今、政府の方で、これをどうするとかあるいは与党の自民党さんの方でどうするということになっていないようでございますから、私が今ここで即答を求めることもないと思います。しかし、大臣、今まで御理解いただいておりましたので、そういう方向で前向きに、さらに今後の法的な問題も含めて善処方をお願い申し上げたいということが一つと、東京都かにも同和地区がありますが、一番いいのは関西の方だと思いますが、歴代の大臣も、大蔵大臣じゃないですよ、割と地元の地域視察などもやっていただいているということもあります。竹下大蔵大臣も将来のあるニューリーダーでございますから、島根県にも地域があると思いますけれども非常に小さな地域だと思うので、やはり大都会、あるいはその地域でも結構でございますので、お忙しい日程だろうとは思いますが、そういう視察もぜひとも実現していただくように切にお願い申し上げたいと思います。その地域視察の問題についてちょっと御回答いただきたいと思います。
  270. 竹下登

    竹下国務大臣 私は選挙区の隣館へ二回、視察というよりも国会報告演説会に行ったことはございますが、今お示しになりましたような広い地域と申しますか、そういうところは視察というようなことはしたことはございません。勉強になるだろうと私も思いますので、時間さえあれば私も考えてみなければならぬという感じはお話をお聞きしながらいたしました。
  271. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、私もいろいろ法案審議がありますので、いつの時期に大臣にこの問題を質問しようかと思っておったわけでございますが、国会審議だけじゃなしに、ひとつまたいろいろと時間を割いていただきまして、我々の意見も十分聞いて前向きにこの問題の解決のために御努力いただきたい。  非常に重要な問題でありながら時間が制約されて十分言い尽くせなかったわけでございますが、また後日もあろうかと思いますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  272. 小泉純一郎

    小泉委員長 次回は、明十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十六分散会