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1986-04-08 第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月八日(火曜日)    午後四時開議 出席委員   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 上田 卓三君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       大島 理森君    金子原二郎君       東   力君    藤井 勝志君       村上 茂利君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    沢田  広君       戸田 菊雄君    中村 正男君       堀  昌雄君    柴田  弘君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵省主計局次         長       保田  博君  委員外出席者         参  考  人         (成蹊大学経済         学部教授)   肥後 和夫君         参  考  人         (地方自治総合         研究所常任研究         員)      澤井  勝君         参  考  人         (東洋大学法学         部教授)    坂田 期雄君         参  考  人         (法政大学社会         学部講師    中西 啓之君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 四月三日  昭和六十一年度の財政運営に必要な財源の確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出第五号) 同月四日  外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する  法律案内閣提出第八〇号)(参議院送付)  有価証券に係る投資顧問業規制等に関する法  律案内閣提出第八三号)  国有財産法の一部を改正する法律案内閣提出  第八四号) 同月八日  預金保険法及び準備預金制度に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第八二号) 同月三日  国民本位税制改革に関する請願伊藤茂君紹  介)(第二四六三号)  同(兒玉末男紹介)(第二四六四号)  同(城地豊司紹介)(第二四六五号)  同(正森成二君紹介)(第二四六六号)  同(簑輪幸代紹介)(第二四六七号)  同(梅田勝紹介)(第二五八二号)  同(浦井洋紹介)(第二五八三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二五八四号)  同外一件(工藤晃紹介)(第二五八五号)  同(中林佳子紹介)(第二五八六号)  同(藤木洋子紹介)(第二五八七号)  同(山原健二郎紹介)(第二五八八号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願池端清一紹介)(第二四六八号)  同(上西和郎紹介)(第二四六九号)  同(佐藤徳雄紹介)(第二四七〇号)  同(沢田広紹介)(第二四七一号)  同(中村正男紹介)(第二四七二号)  同(野口幸一紹介)(第二四七三号)  同(山中末治紹介)(第二四七四号)  同(横江金夫紹介)(第二四七五号)  同(吉原米治紹介)(第二四七六号)  同(和田貞夫紹介)(第二四七七号)  所得税減税等に関する請願五十嵐広三紹介  )(第二四七八号)  同(中村正男紹介)(第二四七九号)  たばこ消費税引き上げ反対に関する請願(五十  嵐広三紹介)(第二四八〇号)  同(池端清一紹介)(第二四八一号)  同(稲葉誠一紹介)(第二四八二号)  同(川崎寛治紹介)(第二四八三号)  同(小林恒人紹介)(第二四八四号)  同(兒玉末男紹介)(第二四八五号)  同(後藤茂紹介)(第二四八六号)  同(佐藤誼紹介)(第二四八七号)  同(沢田広紹介)(第二四八八号)  同(城地豊司紹介)(第二四八九号)  同(竹村泰子紹介)(第二四九〇号)  同(武部文紹介)(第二四九一号)  同(中村重光紹介)(第二四九二号)  同(堀昌雄紹介)(第二四九三号)  同(山中末治紹介)(第二四九四号)  大型間接税導入反対等に関する請願津川武  一君紹介)(第二五八九号)  同(林百郎君紹介)(第二五九〇号)  大型間接税導入反対大幅減税等に関する請願  (林吾郎紹介)(第二五九一号) 同月七日  北陸財務局存続に関する請願戸田菊雄紹介  )(第二六四三号)  同(戸田菊雄紹介)(第二七七一号)  大型間接税導入反対等に関する請願伊藤茂君  紹介)(第二六四四号)  同(上野建一紹介)(第二七七二号)  同(薮仲義彦紹介)(第二七七三号)  国民本位税制改革に関する請願伊藤茂君紹  介)(第二六四五号)  同(梅田勝紹介)(第二六四六号)  同(浦井洋紹介)(第二六四七号)  同(経塚幸夫紹介)(第二六四八号)  同(浜西鉄雄紹介)(第二六四九号)  同(細谷昭雄紹介)(第二六五〇号)  同(八木昇紹介)(第二六五一号)  同(横江金夫紹介)(第二六五二号)  同(伊藤茂紹介)(第二七七四号)  同(経塚幸夫紹介)(第二七七五号)  同(戸田菊雄紹介)(第二七七六号)  同(浜西鉄雄紹介)(第二七七七号)  税制改革減税に関する請願川俣健二郎君紹  介)(第二六五三号)  同(河上民雄紹介)(第二六五四号)  同(木間章紹介)(第二六五五号)  同(串原義直紹介)(第二六五六号)  同(上坂昇紹介)(第二六五七号)  同(左近正男紹介)(第二六五八号)  同(佐藤観樹紹介)(第二六五九号)  同(佐藤敬治紹介)(第二六六〇号)  同(渋沢利久紹介)(第二六六一号)  同(嶋崎譲紹介)(第二六六二号)  同(新村源雄紹介)(第二六六三号)  同(田中克彦紹介)(第二六六四号)  同(馬場昇紹介)(第二六六五号)  同(松前仰君紹介)(第二六六六号)  同(後藤茂紹介)(第二七七八号)  同(坂口力紹介)(第二七七九号)  同(伏屋修治紹介)(第二七八〇号)  同(二見伸明紹介)(第二七八一号)  同(堀昌雄紹介)(第二七八二号)  同(松浦利尚君紹介)(第二七八三号)  大型間接税導入反対等に関する請願浦井洋  君紹介)(第二六六七号)  同(兒玉末男紹介)(第二六六八号)  所得税減税等に関する請願竹内猛紹介)(  第二六六九号)  同(戸田菊雄紹介)(第二六七〇号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願井上一成紹介)(第二六七一号)  同(伊藤忠治紹介)(第二六七二号)  同(小川仁一紹介)(第二六七三号)  同(加藤万吉紹介)(第二六七四号)  同(兒玉末男紹介)(第二六七五号)  同(山下洲夫君紹介)(第二六七六号)  同(和田貞夫紹介)(第二六七七号)  同(渡部行雄紹介)(第二六七八号)  同外一件(小川仁一紹介)(第二七八四号)  同(渡部行雄紹介)(第二七八五号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第二七八六号)  たばこ消費税引き上げ反対に関する請願外十七  件(伊藤茂紹介)(第二六七九号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二六八〇号)  同(岡田春夫紹介)(第二六八一号)  同(上坂昇紹介)(第二六八二号)  同(佐藤観樹紹介)(第二六八三号)  同(佐藤敬治紹介)(第二六八四号)  同外一件(新村勝雄紹介)(第二六八五号)  同(新村源雄紹介)(第二六八六号)  同(関山信之紹介)(第二六八七号)  同(戸田菊雄紹介)(第二六八八号)  同(土井たか子紹介)(第二六八九号)  同(中村正男紹介)(第二六九〇号)  同(浜西鉄雄紹介)(第二六九一号)  同(細谷昭雄紹介)(第二六九二号)  同(山下洲夫君紹介)(第二六九三号)  同(上野建一紹介)(第二七三八号)  同(小澤克介紹介)(第二七三九号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第二七四〇号)  同(中村茂紹介)(第二七四一号)  同(渡部行雄紹介)(第二七四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  国の補助金等臨時特例等に関する法律案(内  閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  ただいま建設委員会において審査中の内閣提出、東京湾横断道路の建設に関する特別措置法案について、同委員会に対し連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小泉純一郎

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時につきましては、関係委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 小泉純一郎

    小泉委員長 内閣提出、国の補助金等臨時特例等に関する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として成蹊大学経済学部教授肥後和夫君、地方自治総合研究所常任研究員澤井勝君、東洋大学法学部教授坂田期雄君及び法政大学社会学部講師中西啓之君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位には、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、各参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、肥後参考人からお願いいたします。
  5. 肥後和夫

    肥後参考人 成蹊大学経済学部肥後でございます。  私は、五十六年十一月十二日の参議院行政改革特別委員会及び六十年三月二十九日の衆議院のこの大蔵委員会、それから今回と三回にわたって、重ねて補助金整理合理化等に関する法案について参考人として意見を述べる機会を与えられた次第でございます。ずっと通しておりまして、財政再建のための緊急対策としての補助金整理合理化から、次第に制度の中身に入った整理合理化へと進展しているように思いまして、結構なことだと思っております。  今回の補助金特例法案は、累次の臨調答申及び六十年の補助金問題関係閣僚会議の決定に基づきます補助金問題検討会報告の趣旨を踏まえまして、第一に、補助率引き下げにより一般、特別両会計を通じて六十年度対比五千二百四十四億円、五十九年度対比一兆一千六百三十七億円の節減を図るとともに、第二に、地方団体事務事業として同化定着している補助金負担金一般財源化を講じまして六十五億円、第三に、厚生年金保険事業に係る国庫負担金繰り入れ特例のほか、地震再保険及び自賠責再保険に係る事務費繰り入れ廃止等による負担の軽減により三千四十八億円、法律、政令による措置を含めて五十九年度対比総額一兆四千七百五十億円、六十年度対比八千三百五十七億円の節減目的とするものであります。  これらは、さきにも述べましたように、累次の関連答申を踏まえまして、国の補助金負担金等について行われるものであり、国の財政収支の改善に寄与するものでありまして、前二回の先例も考慮しつつ、一本の法案として提案されたものと理解されるのでありますが、なお、次の点について所見を述べたいと思います。  第一に、事務事業別補助率見直しが行われ、地方に定着している身体障害者福祉法老人福祉法児童福祉法等について機関委任事務団体委任事務とされましたことは、地方団体自主性の尊重という点で大きな前進であると思います。  第二に、補助率につきましては、特に国と地方の間でなお意見相違等も見られるようでありますけれども、今回の措置は六十三年までの暫定措置であると理解されておりますので、六十四年度以降に経済社会情勢の変化を踏まえて、国と地方分担関係を考慮してさらに見直しが行われるものと考えております。  第三に、公共事業につきましては、補助率の切り下げが行われる一方でその余裕財源公共事業費拡大に充当されておりますのは、国と地方協力に基づく内需拡大措置として評価されるものではないかと思います。  第四に、国の補助金整理合理化努力財政再建の点でかなりの成果を上げつつありますことは、評価しなければなりません。  補助金件数につきましては、五十六年度の三千五百十五件から六十一年度は二千四百二十三件に減少し、一般会計予算に占める補助金総額は、五十八年度当初予算における十四兆九千九百五十億円をピークとして、五十九年度以降六十一年度まで三年連続減額を続け、六十一年度十四兆千九十億円となっております。  一般会計に占める補助金割合も、五十一年度の三三・七%から逐年低下して六十一年度は二六・一%となり、関連して公債依存度も、五十四年度の三四・七%から六十一年度には二〇・二%に低下していることは、財政史的に見ても特筆すべき財政再建のための努力と言わなければなりません。  ただし、国債発行残高の累増のために、一般会計に占める国債利子費割合が一九・六%と主要経費中第一位となり、国債発行額のほとんど全額が利払いに充てられている現状、それからマクロ国際比較から見て、公債依存度公債残高の対GNP比率利払い費歳出総額に占める比率、税収の歳出総額に占める比率あるいは人口高齢化の度合い、いずれの指標をとりましても、国の財政状態を楽観せしめるものはまだありません。今後とも、財政再建への努力をゆるがせにすべきではないと思います。  第五番目に、他方、三千三百の事情を異にする地方団体財政収支の総計としての地方財政マクロ指標を単一の政府である国のマクロ指標と単純に比較して地方財政余裕があるとするのは問題でありますが、国と地方が集権と分権の立場を踏まえて、主張すべきは主張しつつその都度切迫した緊張関係の中で協力し合っていることは望ましいことでありますし、今後ともそうあってほしいと思います。  ただし、国の財政立場からの緊縮は、大蔵省財政調整権があるとはいえ、各省庁の所管権限という縦割りの壁を前提にしつつ行われるものであるという問題点があります。補助金の真の整理合理化は総事業費節減合理化によって達せられるものでありますから、単なる地方への負担のしわ寄せにならないよう縦の壁を少しでも打開し、地方住民に身近な事務事業については、統合メニュー化一般財源化あるいは申請手続簡素化等をさらに進められることを期待したいと思います。他方地方自治体の側でも、地方自治の本旨の本来の理念を踏まえつつ、地方の行革に一層の努力を払うべきであろうと思います。 このような国と地方双方の側の努力が、国と地方の真の緊張関係の中での協力のもとに進められることを今後とも期待するものであります。(拍手)
  6. 小泉純一郎

    小泉委員長 ありがとうございました。  次に、澤井参考人にお願いいたします。
  7. 澤井勝

    澤井参考人 御紹介いただきました澤井でございます。  私は、以下に述べる二つの理由、一つは行政責任明確化という観点、それからもう一点は地方財政への負担の転嫁という二点からこの法案には反対したいと思います。その理由を以下二点についてお話ししたいと思います。  まず第一点ですが、国庫補助負担金整理について。地方自治体自主性自律性を強める、これは臨調基本答申の提言の中の言葉でありますが、その自主性自律性を強めるという意味であれば賛成していきたいと思います。しかし、残念ながら今回の国庫補助負担金負担率補助率引き下げはそうなってはいないのではないかと思っております。 まず、地方自治を強化する、そういったような観点から国庫補助負担金を見直す場合には、その国庫補助負担金にかかわる事務事業につきまして、国と地方公共団体の間でその行政目的を達成するに当たっての責任の所在、それから分配のあり方が明確になっている、そういう必要があります。同時に、それとの関係費用負担をどのレベル団体がどれほどするのか、そのための財源配分をいかにするかというのが明らかになっている必要があると思います。  こういうふうにして初めて納税者である国民あるいは住民にとりまして、地方自治体がその特定の事務事業についていかほど責任を持ち、あるいは地方自治体の財布から幾ら出ているかがつかめることになり、そのことによって初めてみずからそれをコントロールする意欲も生まれてくるのじゃないだろうかというふうに思います。  ちょっと話が変わりますけれども、この法案を基礎づけておると思っております補助金問題検討会報告を見ますと、「補助率は、基本的には、例えば(イ)国として当該行政に係る関与の度合やその実施を確保しようとする関心の強さ、(ロ)地方住民に与える利益の程度、(ハ)国及び地方財政状況等の諸要素を総合的に勘案の上、決定されるものと考えられる。」と述べられています。この書き方は、専ら国の都合を一方的に優先させているというふうにとらえられますので、補助率の変更についてこういう形ではちょっと承服しがたいというふうに思います。  ただし、その中で、次いで「個々補助率あり方については、基本的には国と地方関係についての幅広い角度からの見直しや、個々事務事業見直しを踏まえて検討すべきである。」というふうに述べられております。この点については、もしかしたら考える方向が逆なのかもしれませんが、文言上は意見が一致いたしております。  また、それに続いて「国及び地方公共団体が、双方で等しく負担を分かち合う性格事業補助率は二分の一が適当」と述べた後で、「なお、もとより個別補助率見直しに当たっては個々補助金目的性格等相違を考慮する必要があり、画一的に律しきれないものがあることはいうまでもない。」というふうに述べられておりますが、これも全く私は賛成であります。この線で議論がされておればいいというふうに思います。  ところが、他方補助率簡素簡明化が唱えられておりまして、そのためか、個別事業ごとの慎重な見直しという原則がかなり崩れているというふうに思います。結果的には、一律引き下げと同じ結果になっているのじゃないだろうかというふうに思っています。つまり、個々事務事業補助負担金関係ですね、その行政目的あいまい化、ひいては各レベル行政の間の行政責任の不明確さがもたらされているように思います。  例えば、老人福祉法関係ですが、その中に老人ホームへの入所措置がございます。老人福祉法の第十一条ですが、この費用負担については、御案内のとおり昨年度については、市町村及び都道府県設置養護老人ホーム特別養護老人ホーム措置費については十分の七が国、それから十分の三がそれぞれを設置する地方公共団体負担というふうになっていたわけであります。ところが、この費用負担には特例がございまして、老人ホームに入所された方のうち居住地を持たない御老人というのがいらっしゃるわけですが、この居住地を持たない御老人入所措置に要する費用については、市町村の施設であっても当該市町村負担をする義務を持っておりません。老人福祉法の第二十四条第一項及び第二十六条第一項によりまして、六十年度の場合、十分の三を都道府県が、それから十分の七を国が負担していますので、この居住地が明らかでない御老人については、市町村制度的には一銭たりとも持たなくていい。そうしますと、市町村の方から見ますと、この点は、生活保護法における負担関係よりもさらに厳密に国の責任が示されているというふうに考えられるわけです。  ところが、この法案を拝見しますと、第二十五条ですが、この方々の入所措置に要する費用については、他の居住地の明らかな御老人方と同様に国の負担を二分の一にしている。と同時に、都道府県負担も十分の三から二分の一に引き上げられておりまして、非常に奇妙なことになっていると思います。それで、市町村の設置する老人ホームへの入所者のうちで居住地の明らかでない人々について市町村負担責任がないのは従前のとおりであります。この法案でもそういうふうになっております。  つまり、この入所措置事務については、基本的には生活保護以上の取り扱いをするという行政あり方、その責任あり方、すなわち、国の責任で行うという性格は変わっていないわけであります。にもかかわらず、国の負担を二分の一にしているというのはどういう理屈になっているのだろうかというふうな疑問を非常に強く持ちます。同時に、どうして都道府県責任がそんなに重くなったのであろうかという点も非常に奇妙なことと思います。これは、補助金問題検討会理屈にも合っていないというふうに思います。このような理屈に合わない補助率引き下げでは、どうしても行政責任明確化ができるというふうには思えません。それはむしろその行政責任政府間、各団体間の責任を混迷に導くだけではなかろうかというふうに思います。  他の部分についても同じような問題があるのじゃないかと思いますけれども、何分にも法案をいただいてから三日か四日しかたっておりませんので十分検討できておりませんが、その点で慎重な御審議をお願いしたいというふうに思います。  次に、理由の二番目を申し上げますが、地方財政法の第二条第二項は、国は「地方公共団体負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」と定めております。私は、この法案については、これに抵触する疑いがあると考えます。  それは、この法案の第九章の「地方公共団体に対する財政金融上の措置」に関してでありますけれども、具体的にどんな措置がとられたかという点で申しますと、これは御案内のとおり、国庫補助負担金補助負担率引き下げに伴って、今年度一兆一千七百億円の地方一般財源負担増があったとされております。これをちょっと見てみますと、この調子でいきますと、三年間の措置ですので仮に六十一年度ベースで単純に計算しましても、一兆一千七百億円掛ける三で三兆五千百億円プラス六十年度で五千八百億円ございましたので、合計ちょっと丸めまして四兆一千億円、四年間でこれを地方一般財源で賄っていくということになるわけです。四年間で四兆一千億、これに対して財政金融上の措置をとることになっておりますけれども、これが決定的に不十分であると思いますし、これが結果的に地方財政の全般的な悪化を招くことになりはしないかというおそれを持っているわけです。  たしか自治省が一昨年でしたか、お出しになっている地方財政参考試算では、国と違いまして地方財政は収支均衡するような数字になっておりましたし、現実に地方財政計画上は昨年から収支均衡しておるわけであります。しかしながら、地方財政というのは三千三百有余の自治体総合ですから、マクロ数字だけでは本当の姿はつかめないというふうに思います。ぜひ具体的な自治体財政状況十分考慮の上で、御審議をいただきたいというふうに思います。  その点をもうちょっと敷衍いたしますと、今年度一兆一千七百億円の国庫補助負担金の削減に対する地方財政対策というのは、そのうち二千四百億円は御案内のとおり国税、地方税たばこ消費税引き上げでありますが、残りの九千三百億円はすべて建設地方債であります。これが結局地方自治体の将来にわたる負担増になるというのは非常に自明のことでありますけれども、では、この地方債地方自治体が受け取る余裕があるかどうか、その点を慎重に見きわめていただきたいと思うわけであります。  私どもで、政府の出しておられる統計自治省関係統計でありますが、分析いたしました。最近、公債費比率が非常に上がっているというふうに言われておりますけれども、具体的に自分たちの手でさわってみますとかなり具体的な手ごたえがございまして、地方自治体公債費比率は著しく上昇しておる。一般的には、地方財政運営、自治体財政運営の場合を考えますと、公債費比率が一八%を超えますと財政運営が非常に苦しくなります。そのためにいろいろな無理をいたしまして、やみ起債とか転がしとか、いろいろ脱法行為といいますか、違法までいきませんけれども、相当工夫してやっておられる団体もかなりあるわけであります。事実、一八%を超えますと、財政再建計画をつくって再建を進めないと、その自治体地方財政再建促進特別措置法による再建団体に陥らざるを得なくなるだろうというふうに私は思っています。  その点をちょっと見てみますと、この公債費比率が上昇したというのは——ちょとお断りしておきますけれども、昭和五十年代に、昭和五十年度補正からとられました地方財政対策の結果として公債費比率は上昇しておりますので、財政運営上の地方自治体の方の責任がないとは言いませんけれども、構造的には地方側の責任とは言えない、地方財政対策の結果であるというふうにまず押さえていただきたいと思うわけであります。  五十六年度決算と五十九年度決算でこれを見ますと、公債費比率が一八%以上の都市は、五十六年度では、全体で六百四十九市のうちの三・九%であります。町村二千六百六町村でありますが、そのうち四・二%が一八%以上。それから三年たった五十九年度になりますと市の数が六百五十一市になりますが、六百五十一市のうち実に一六%の団体、つまり、百四市が一八%以上の公債費比率になっています。町村では二千六百四町村のうち一七・五%に当たる四百五十八町村が、五十九年度決算で一八%の公債費比率を超えております。つまり、都市、町村とも二割近くの団体が、財政運営が具体的に困難になる水準にまで公債費負担が既にふえているという点を注意していただきたいと思うわけです。  もう一つ注意していただきたいのですが、この公債費負担については地域的に大変なばらつきがあるということです。北海道、青森県、岩手県、秋田県といった道県、福島県、群馬県なども悪い団体がふえています。新潟県、石川県、それからちょっと地域的には飛んでいるのですけれども山梨県、それから滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県の関西、それから島根県、鳥取県の山陰、山陽の岡山、徳島県、高知県の南四国、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の九州諸県、さっきのは全体の数字でしたが、このパーセンテージをかなり大きく超える団体が一八%を超えております。したがって、一六%以上の公債費、一六%でもかなり苦しいわけですが、一六%以上の公債費ということになりますともっとふえるわけですね。こういった地域が今回の財政金融措置でかなりの苦境に立たされるというのは避けられないだろうと思います。その点を十分に考慮していただきたいと思うわけです。  最後になりますが、今回の財政金融措置が具体的にどうあらわれておるかについて触れておきますと、ある県庁所在都市、人口二十万規模ですけれども、この都市の場合は、五十九年度をベースにしまして、六十一年度は今回の補助率引き下げのために約八億円の一般財源負担増になります。保育所と老人ホームが大きいのですけれども、このための財源をどう捻出したかといいますと、この都市の場合、投資的事業をコントロールするために、各年度で可能な起債のアッパーリミットというものを設定しております。これは要するに国の財政再建の仕方に似ているわけですけれども、これが約四十億円です。毎年度四十億円の幅に起債を抑えるという政策でやってきたのです。ところが、補助負担率引き下げのために増加しました一般財源負担を賄うのに、六十一年度に予定しておりました建設事業に向けるべき一般財源地方債に振りかえまして、つまり建設事業から一般財源をはがしまして、それを経常的経費の負担増に回しておるわけです。その結果、この起債のアッパーリミットを四億円ほど超過してしまったわけです。いわゆる調整債と言われる分ですが、その分を起債予定にしましたのではみ出してしまった。  このように自治体の計画的財政運営は、そういう意味で言いますと崩されたわけでありますが、同時に将来にわたる公債費負担は増加するということになりますので、非常に苦しい財政運営を迫られる。同時に、自治体の行うべき仕事も、今国会に別に提案されております地方自治法改正案の別表の改正を見ますと、地方自治体並びにその機関のやる仕事が非常にふえております、この十二年間ですね。地方自治体のやるべき仕事は、機関、団体ともふえておりまして、そういうふうに仕事が増加している中での財政運営を考えなければならないということになっております。それに今回の措置が加わりますと、かなり難しいことになるのではなかろうかというふうに思っております。  以上、行政責任の不明確化地方財政への負担転嫁、この二つの理由から本法案には賛成できないということを申し述べまして、私の意見といたします。  どうもありがとうございました。
  8. 小泉純一郎

    小泉委員長 ありがとうございました。  次に、坂田参考人にお願いいたします。
  9. 坂田期雄

    坂田参考人 私、東洋大学の坂田と申します。  国の補助金等臨時特例等に関する法律案でございますが、内容は、公共事業補助率を前年度に比べて大体一〇%引き下げる、社会保障関係は、特に高率補助金を原則として二分の一に引き下げる、三年間これを凍結するという内容のようでございます。国の財政が非常に窮迫しておりますので、地方にその財源を求めるという方向であるわけでございますが、地方協力を求めるのであれば、その前提として、少なくとも次のことがまず必要なのではなかろうか。そういう観点から三ないし四点、問題点をちょっと申し上げてみたいと思うわけでございます。  まず第一は、国が地方協力を求めるのであれば、国の財政について全体的、総合的、長期的な財政再建計画というものを国民の前に明示すべきではないか。単年度の単なる収支つじつま合わせということではなくて、全体的な財政再建計画、そのうち地方に幾ら負担を求めるのか、国民にどういう負担を求めるのか、あるいは歳出カット、行革でどういうふうにやっていくのか、そういう全体計画も何もないままにただ求めるというのはおかしいのではないか。もし民間企業であれば、当然再建計画を立てなければ株主総会は通りませんし、地方自治体であっても、これほどの重症になれば、当然財政再建計画を立てなければ起債も許可されない。国だけがこういう計画のないままというのは大変おかしいのではなかろうか。  これまで国の財政は、ここ数年来非常に窮迫してまいりましたので、その打開の方向として、後年度に負担をツケ回す、歳出を先送りする、他会計へ振りかえる、他項目あるいは財投へ振りかえる、もう一つは地方へツケ回すということでやってこられた形のようでありますが、それもいよいよ行き詰まってきている。それで、どうしても大きな金目が出るものということで、それでは補助率引き下げてということに今年度なってきたのではないかと思われるわけでございます。しかし、大蔵省にしても、また、中央だけでなく地方省庁の役人の方々にしても、大体二年ないし三年でかわっていかれる。大臣も一年くらいでかわっていかれる。皆さんは自分がそのポストにいる間だけ何とか収支つじつまを合わせていくという形で、財政を長期的に見てどういうふうにするのかということを一体だれが考えているのか、そういう議論がどこでなされているのであろうか、何か国民から見た場合非常に不安を感ずるわけでございます。  第二番目といたしまして、地方負担を求めるのであればまず国がしっかり行革をやって、国はもう行革をやったんだ、それをもっとはっきりさせるべきではなかろうか。果たして国は十分行革をやったと言えるのであろうかどうか。確かに国鉄初め三公社の民間への移管あるいは医療とか保険等について、つまり、国民負担を求める方向での改革はかなり行われましたが、行革の本体とも言うべき中央省庁の権限とか機構あるいは国の出先機関など、これは単に看板をかけかえた程度でほとんど行革は行われていない。中央省庁では大体もう行革は終わったというような感じを皆さん持っておられるが、国庫補助金そのものもほとんど見直しは行われていないという状況でございます。確かに毎年マイナスシーリングということで行われていますが、これらの一律減量というようなことは非常な不合理を招くものでして、地方自治体ではどこもこんなことは行っていないわけでございます。  それでは地方の行革はどうか。確かに鎌倉の退職金とか高い給与の団体とかが新聞で取り上げられたりしておりますが、そういう一部の自治体を除けば、多くの自治体はここ数年来地道にかなり行革を進めてきております。六十一年度の予算を見ましてもいろいろやっておりまして、五年間で五%定数を減らし、次の五年間でさらに五%減らしていこうとか、民間委託あるいはOA化、組織も見直す、あるいは事業補助金も見直す、いろいろなことでかなり進めてきておるわけでございます。特に地方自治体の場合には、こういう財政が苦しい状態になりますと町づくりを進める財源がない。そこで、人件費のような内部経費をなるべく節減カットして、行革をやって財源を生み出して町づくりを進めようとして行われてきております。したがいまして、地方に求めるのであれば、まず国がもっと行革を進めることが必要ではないか。  もう一つ、これに関連する問題ですが、地方が行革を進めようと思いましても、それを妨げている国のいろいろな状況が一向に改善されていない。自治体の定数、組織に対して国がいろいろ決めておりまして、なかなかそれが改善されない。あるいは国庫補助金による干渉、束縛もなかなかなくならないという状況でございます。  問題点の第三といたしまして、これは今回いろいろ議論されておることでございますが、この法案の内容は、行革というよりは地方へのツケ回してはないかということでございます。国庫補助金整理ということであれば、まず第一番目には、時代の変化に対応して、もう要らなくなったような補助金がたくさんあるわけでございますが、そういう補助金全体を見直しをして整理廃止する。もう一つは、国と地方との関係地方の事務に同化しているような補助金とか地方の人件費補助、そういうものはもう補助金をやめて一般財源に切りかえる。つまり、補助金そのものを縦に切って、要らないもの、地方に任じてもいいものを外していくというのが本来の補助金の検討であろうと思うわけでございますが、今回のやり方は縦に切るのではなくて横に切る、負担率だけを見直すということで、これでは単なるツケ回しで、本来の行革にはならないのではないか。  もちろん、補助負担率を見直すということは時代の変化に応じて当然必要だと思うわけでございますが、それならば、基本的な議論が必要であったのではなかろうか。確かに、補助金問題検討会でいろいろ議論されたようでございますが、国民の側から見ると、最後の最後まであの中でどんな議論がされたのか、何か秘密で全然公表されていない。地方財政措置が決まったのと大体相前後して発表になったような状況でありまして、その辺が非常にわからない。  また今回、保育所とかいろいろな社会保障関係補助率が二分の一になったわけでございます。これは別に八割に固執するわけではございませんで、当然そういう改革が必要だと思うわけです。ただ、保育所は、戦後間もないころは子供を抱えて生活のために働く母親を中心にした福祉の施設だったのが、今日ではそういう低所得者階層はほとんどいない。かなり裕福な家庭、中流階層がほとんど大部分の状況になってきて、こういう保育所に今までのように税金をこんなにつき込んでいいのかどうか、もっと受益者負担あり方を見直すべきではないかという基本的な議論を行って、その上で国と地方負担割合をどうするか、措置費という制度はこのままでいいのかどうか、そういう議論が全然ないままで、ただ金目の問題だけで、ただ五割ということだけで線を出してしまう。余りにも当面の応急策ということだけで進められて、基本論が全く飛ばされてきたのではなかろうかという気がするわけでございます。  それから四番目といたしまして、二十一世紀に向けて活力ある社会ということで、ここ数年来、今までの上からの画一行政ではなくて、各地方がそれぞれの地域の特性を生かして、あるいは町興し、村興し、あるいは地域アイデンティティー、地方競争時代、知恵とアイデア、そういう新しい芽がぐんぐん伸びておるわけでございますが、これからの国、地方を通ずる制度を議論する場合には、そういう観点から地方の創意が伸ばせるように、国と地方のいろいろな仕組みを見直していくという基本が必要なのではなかろうか。国庫補助金でいろいろ縛りつけている面、あるいは組織や定数について中央がいろいろと縛っている点、そういうものを見直していく。行革審でいろいろ審議されたり、あるいは国会でも若干改正が行われておりますが、これはもう各省庁どうでもいいような端っぱのものしか改善されておりませんで、本体はほとんど改善されていないという状況でございます。  こういう点から見まして、もう少し基本的なあり方を踏まえた上での議論、あるいは長期的な財政あり方というものをもう少し数字ではっきり詰めた議論を行って、それを国民に明示して、その上で地方にこういう協力を求めるのだという段階、進め方が必要であったのではないかと思うわけでございます。  もう一点、最後でございますが、地方はいろいろ努力をして、行革で財源を生み出して町づくりに使おうと首長が一生懸命やっておるわけでございます。その地方努力して生み出した財源を、今回のような法律案でございますと国に取り上げられてしまう。地方の行革の努力を国に横取りされると言ったらちょっと言葉が悪いかもわかりませんが、そういう感じになるのではなかろうか。もっとも、今年度はたばこ消費税とか起債とか、若干現金で手当てはされておりますが、基本的にはそういう問題がある。やはり行革に努力をする自治体が報われる、努力をして町づくりに回そうと思っている財源が減らされ、取られてしまうのではなくて、そういうやる者、やる自治体が報われるような形に持っていくということが必要なのではなかろうかと思うわけでございます。  それでは、以上申し上げまして、終わりにさせていただきたいと思います。(拍手)
  10. 小泉純一郎

    小泉委員長 ありがとうございました。  次に、中西参考人にお願いいたします。
  11. 中西啓之

    中西参考人 御紹介いただきました中西でございます。  昨年四月三日にこの大蔵委員会で国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律審議がございまして、参考人で出させていただきましたが、そのときに、一年限りということが大変強調されておりました。例えば、参考人で滋賀県の知事さんだとかあるいは北海道の千歳の市長さんが御出席なさっておられまして、こういう地方自治体に一方的に負担を転嫁するようなやり方は一年限りにしてほしい、次はもう行わないでほしいということを大変強調していらっしゃったわけですね。一年限りといいますと、当然一年たったらもとに戻すという意味に普通の人はとると思うわけですが、一年たってみますと、もとに戻るどころかますます悪くなった。保育所や老人ホーム措置費につきましては、八割から七割になって、七割がまた五割になるというふうにだんだん削減をされてきておりまして、額につきましても、昨年が五千八百億だったのがことしは一兆一千七百億というふうにだんだんふえてくるということでございまして、これは大変遺憾なことであるというふうに私は考えております。  今回提案されましたこの法案についてですが、一つは、先ほども澤井参考人が申されました財政金融上の措置ですね、これが問題であろうと思います。二千四百億をたばこ消費税で補てんをして、あと建設地方債で補てんをするということでありますが、この方法は幾つかの問題点があるのではないかというふうに考えております。  第一は、建設地方債による補てん、これは九千数百億で非常に大きな部分を占めているわけですけれども、この建設地方債による補てんというのは、直接的な補てんではなくて間接的な補てんであるという点が大変問題であろうと思います。私の調べましたところでは、例えば経常経費の場合、建設地方債をそのまま充当はできないわけで、いわば交付税を増額するという方法をとる、つまり基準財政需要額を引き上げる、しかし交付税の総額は変わらないわけですから、投資的経費のどこかの交付税を減らすという操作になるわけですね。つまり、そういうやや複雑な操作で数字上のつじつまを合わせるという形の間接的な補てんでありますから、自治体の現場で考えますと、どうしても削減された部署の行政がおろそかになってくるという問題が生じてまいります。これが第一点の問題であります。  それから第二点は、この地方債による補てんが後年度の自治体負担をさらに増大させていく、建設地方債で補てんをしておいてそれを償還するときに一体どうやるのかという、この補てんがまた問題になるわけですね。その補てんのやり方というのはやや複雑でありますけれども、例えば不交付団体について申しますと、これはたばこ消費税によってわずか三百五十億ほど補てんをされて、あとはもう補てんはしません、建設地方債を充当した分は自分で償還しなさいということのようでありますし、交付団体の経常経費につきましても、半分ぐらいの元利償還を後で国が考えるということでありまして、かなり大きな部分が自治体負担になってきて後年度の財政を圧迫してくるということになる。そういう意味で今自治体財政担当者は大変な危惧を抱いておりまして、こういう事態にどうやって対応するかということで大変頭を悩ましているようであります。これが二番目の問題点であります。  私は、こういう補助金の削減、それから地方債の増発、それに伴う自治体負担増国民の暮らしに一体どんな影響を与えるのかという、ここが一番問題であろうというふうに考えるわけです。  この補助金削減の影響は三つぐらいに分けて考えられると思います。一つは、福祉関係補助金削減がどういう影響を与えるか。もう一つは、教育関係補助金削減がどんな影響を与えるか。三番目は、公共事業関係補助金削減がどんな影響を与えるか。  これはそれぞれ大変重大な影響を与えていくと思うわけですが、福祉の問題に限って、昨年も削減をされてどんな状況が起こっているのかということなんですが、第一は、住民負担が非常にふえてきているという問題がございます。例えば、これは国の方の費用徴収基準が上がっているということと対応しているわけですけれども、老人施設の利用者負担割合、つまり老人ホームにかかる経費のうちで利用者負担が何%を占めるのかということを見てまいりますと、昭和五十五年で全体の経費に占める利用者負担割合が三・一九%、これが六十年には七・六二%に上がっている。六十一年のことしは九・二六%ということで、昭和五十五年と六十一年を比べまして実に三倍に上がってきているということで、大変大きな負担増がかかってきている。  あるいは保育料にいたしましても、ごく普通の所得の人がゼロ歳児、三歳未満児を預けると六万円を超える保育料を払う。従来は、地域の実情に応じて自治体の方で若干負担をしながら安くするということもやれたわけですが、保育の補助金が削減されてまいりますとそういうことがやれなくなる、もう国の徴収基準いっぱいあるいはそれを上回るような保育料をどんどん決めていくというふうな事態が進んでいるように思われます。  第二番目には、現在進んでおります地方行革との関連で、住民の暮らしにとって必要な施設が廃止されたりあるいは統合されたりしていくという問題であります。例えば一つの例を挙げますと、昨年の春、広島市で、非常に便利な場所にある保育園が二つ廃園になっております。あるいは兵庫県の赤穂市でも、非常に長く続いてきた地方農村部の保育園が休園になるというふうな事態が起こっているわけであります。  それから第三番目に、いわば福祉の窓口というのが非常に不親切とか冷たいということにとどまらず、物すごい状況になってきている。一つの例を挙げますと、ある生活保護を受給されている方の保護費が突然、何の断りもなく銀行振り込みが来なくなっちゃった。そこで、不審に思って福祉事務所の窓口に行きましたところ、大きな紙を一枚出されて、この紙に印鑑を押せば、ここに保護費があるから渡しましょうと。その大きな紙は何であったかというと、これは辞退届の用紙であった。これは実際に昨年の夏に東京荒川区で起こった出来事であります。早速、その後に複数の人がもう一度交渉いたしまして、福祉事務所の側も、これは違法であったということを認めまして撤回されたそうでございます。これもやはり生活保護費の非常に多額にわたる補助金の削減が福祉の現場に非常に重大な影響を与えているということの一つの実例であろうというふうに考えるわけであります。  最後に、今回の法案が三年の期間ということになっておりますけれども、三年後に一体どういうことが起こるのかという、ここが私は大変重要な問題ではないかというふうに考えております。  例えば一月十四日に厚生省が、福祉制度の全面見直しについて、中央社会福祉審議会と身体障害者福祉審議会、中央児童福祉審議会に対して、中長期にわたる社会福祉制度の全般的見直しについての検討を要請されております。これがどういう方向で進むかということは、いまだ確たることは必ずしもわからないわけですが、この補助金の削減が昨年、ことしというふうに進んでいって、その延長線上で福祉制度見直しがやられるとすれば、これは公的な福祉の全面的な解体といいますか撤退といいますか、そういうことになりかねないのではないかという危惧を抱いております。  そういう意味で、私は国民の暮らしにこの法案が大変大きな影響を与えるということを申しまして、この法案はいわば地方財政にとっても住民の暮らしにとっても大変な悪法であるというふうに考えております。その意味では廃案にすべきであるという意見を申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。
  12. 小泉純一郎

    小泉委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  14. 沢田広

    沢田委員 諸先生には大変お忙しい中、しかも私たちの審議の終わった後ということでありまして、皆さん大変御苦労さまであります。厚く敬意を表する次第であります。  順不同で御質問を申し上げますが、まず委員長にお願いしたいことは、お忙しい中をおいでいただきました諸先生方の意見が、私たちの質問はさることながら、やはり忠実に政府に伝わっていくという保証が欲しいと思うのです。単なる行事として終わらせるということではなくて、やはりこういう意見が述べられたということを委員長の方では正確に政府に伝えていただきたい、こういうふうに思いますので、委員長からまず伝えていただけるのかどうか、ひとつその点を確認してから質問に入りたい、こういうふうに思います。
  15. 小泉純一郎

    小泉委員長 御意見としてよく承っておきます。
  16. 沢田広

    沢田委員 質問があちこちにいくかもわかりませんが、今度の補助金の減額によりまして、大体今年度で一兆三千三百八十三億程度の増加、現在の赤字累積は四十三兆六千十一億、もしこの状態が三年継続するとすれば、経済成長率をどの程度見るかあるいは地方財政の伸び率というものもありますが、ほぼ一兆円程度の赤字が上積みされていくことになるのではないか、常識的にそう判断できるわけでありますが、その場合、例えばそれでいくと四十六兆円ぐらいになってまいります。ことし、六十一年度で元利償還は五兆八千七百三十六億、前年度よりも二千五十九億ふえてきている、こういうことになりますと、金利が下がるにいたしましても相当な負担地方団体にかかっていくのではないかというふうにまず総体的なものとして考えられるわけですが、それが行革だから何らかの工夫をして財源を出せ、そういう趣旨なのだからやむを得ないというふうに、中身は別として総体論としてはこれはしようがないものなのか、いや、やはりそれはちょっとどうかなというふうに思われているのか。これは肥後先生も賛成の方ですから一言、その点はどうなのか。それから澤井先生。全部お願いしてしまうと時間がなくなってしまいますから、肥後先生と澤井先生からまずとりあえずお答えいただきたい。
  17. 肥後和夫

    肥後参考人 それじゃお答えします。  基本的に、地方自治というものを徹底するということは市民主権あるいは住民主権という理念を徹底することだと思います。国の政策につきましては、これはやはり国民主権を徹底する。国民あるいはある個人は、一方では国民であり、一方では市民でありますから、私は、国と地方を全く相対立するものとして考えるべきではなくて、両方のそれぞれの役割分担においてとらえるべきである、そういうふうに思っておるわけでございます。
  18. 澤井勝

    澤井参考人 私の意見は先ほど申しましたとおりなんですが、国の方の財政が非常に苦しくなってきたというのはわかります。それを具体的には、一つは地方財政対策として地方債の増発、それから交付税特会での資金運用部への借金ですね、この二つで交付税増額をやってきました。そういう意味でいいますと、これは自治体の側も、国の事情やむを得ずという点もありますけれども、再建に協力してきたというふうに評価していただいていいのじゃないだろうかというふうに思います。それは、昭和五十年度に始まりまして十年間たちまして、そういった形のツケ回しといいますか、借金を再び自治体に負わせるには既にもう限界に来ておるということです。それが例えば昭和五十九年度とか昭和六十年度、つまり二、三年前の話からもっと急激に悪化してきておりますので、従来のようなパターンで国に金がないのでお願いしますと自治体の方に言っても、無理して受け取れば自治体の方は倒れるのではないか。  危惧しておりますのは、六十年度決算というのが議会の方としては大体ことしの十二月議会にかかっていくわけですけれども、自治省のおやりになる決算統計では、大体七月二十日過ぎには六十年度決算が明らかになってまいります。その段階で、先ほど申しました数字は多分がなりもっと悪化がはっきりすると思いますし、この政策を続けていきますと、六十一年度、六十二年度に公債費の負担だけで赤字再建というような団体がぼろぼろ出てくる可能性がかなり高いというふうに思います。ですから、五十年代の財政運営の考え方で自治体財政を見ていただいたら困る、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  19. 沢田広

    沢田委員 そこで、まず今度の補助金というものの本来の性格なんですが、今、肥後先生は中央、地方一体だ、こういうふうに言われましたから、憲法で保障された地方自治の自主の権利の本旨にのっとれば、補助金で仕事をさしていくということではなくて、財源を与えて仕事をさしていくというのが本来のあり方なのではないか。これも十兆円ですね、総額でいきますと十兆円になります。例えばこれを三税でいくか交付税でいくかということになりましても、その仕事は地方住民の意思によってやる、こういうことと同じだと思うのです、もし金額が同じなら、赤字になる分は別としましてね。だから、十兆円はひもつきじゃなくて自主的に地方団体に任せる、同じ十兆円なら十兆円を任せる、そのかわりこういう一つの目標で地方自治体としては運営してほしい、こういう提起の方が素直なのではないか、こういうふうにも思われるのでありますが、その辺は、今度は済みませんがまた肥後先生と坂田先生から……。これは補助金というもので、ひもつきで中央が仕事をさしていくということはあえて言うなら邪道なのではないか、地方自治の本旨というものを揺るがしているのではないのか、あるいは信用しないのではないのか、あるいは官僚がそれだけ地方に対する発言権を確保するための素地なんじゃないか、こういう疑義も持たれるわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  20. 肥後和夫

    肥後参考人 補助金は、全国的に一定の行政水準を確保するとかあるいは本来は地方責任であるけれども国の立場から見てやはり奨励したいというような場合に、国の政策を実現するための重要な手段の一つであるということは私は否定できないと思います。  ただ、今まで地方の側から絶えず主張されましたように、本来地方責任でやるべきであるし、既にそういうふうに定着しているような事業であるとか、あるいは本来はもっと有機的に結び合わせて統合してやった方がいいようなものについて、一々縦割りの壁ができているとかで非常に不効率であるとか、そういうものについては、やはりこれは一般財源化するとか、あるいは補助金ですと裏負担がつきますから、財政力の弱い地方団体については交付税で見るとか、そういうふうにすべきであると思っているわけでございます。
  21. 坂田期雄

    坂田参考人 ただいまの点でございますが、国庫補助負担金と申しましてもいろいろございます。例えば公共事業とか基盤整備のような事業に対する補助金あるいは国庫負担金はこれを全部税とか交付税に移しかえるというのは、ちょっと今の段階では難しいのじゃなかろうか。特に、大都市圏周辺で今まで基盤整備がおくれているところは、交付税になってしまいますと人口とか面積を基準に配分されますから、いつまでたっても整備できない。そういう意味において、いろいろアンケート調査をいたしましても、地方自治体は、そういうところではやはり国庫補助負担金は残しておいてほしいという声が非常に強いわけでございます。ただ、その場合に、余り細部まで干渉してやるのじゃなくて、なるべく枠配分という格好で与えて、地方が地域の特性を生かした町づくりをできるような格好で補助金を与える、そういう方向への改革が必要じゃないかと思うわけでございます。  もう一点補助金で、やはり奨励的な補助金でございますが、これはできれば廃止をして地方一般財源に振りかえるべきではなかろうか。ただ、それは従来、総論では皆さん割今言われてきたのですが、いざ各論ということになりますと、中央省庁の人は自分の権限が減りますから絶対これを放そうとしない。それから国会議員の先生方も、各論になりますと積極的にそういう方向へ動いてくださるのはなかなか難しいのじゃなかろうか。それから地方自治体にしても、各論になるとやはり補助金が欲しいという声があってなかなかこれが具体論に結びつかないというのが現状じゃないかという気がいたすわけでございます。
  22. 沢田広

    沢田委員 もう一つ、同じで恐縮ですが、予算獲得の時期になりますと、地方の首長から議員から全部が東京へ集まってきて、そして補助金をつけてくれ、予算をつけてくれと言いに来るわけですが、補助金はもらいたい、こうやることが本当の民主主義につながるのであろうか。逆に言うと、事によればかえって利権の方につながることになる危険性もなくはない。いわゆる集票するという目的に使うこともあるいは出てくる。だから、そういうことで、果たしてそういう補助金行政が真の行政と言えるのか、民主主義と言えるのかという疑問にも我々は突き当たるわけであります。順で行きましたから、これも、肥後先生が年じゅう出番になっちゃうのも意見が違うから余計聞きたいわけなので、肥後先生と中西先生からその点ひとつお答えいただきたい。
  23. 肥後和夫

    肥後参考人 私は、五十六年の参議院の大蔵委員会で、本来制度の改革が先で、金目のことは後に制度改革の帰結として出てくるべき問題じゃないかというような御質問がありましたときに、それも全くもっともな御意見でありますけれども、実際問題として各省庁の縦割りの権限というものが牢固としてある中で、実際に実質的な行財政の改革を進めていくとすれば、むしろ金目の方から、要するに金がない、それを一体どうして生み出すかというような形でやっていくよりほかないのじゃないかと申しました。結局、表から行くか裏から行くかということで、やはり裏から行くことはやむを得ないのではないでしょうか。  その場合に、先ほども私、意見陳述の際に申しましたけれども、国と地方が初めからすぐに妥協、協調するというような形は、各省庁の縦割りの権限の壁を破るのにはよくない、むしろぎりぎり地方立場からの主張がなされまして、そして各省庁を引き出してそこでぎりぎりもむ中で、だんだん各省庁の権限の壁も打開されていくのではないか。そういう厳しい緊張関係の中での国と地方の協調関係が望ましいと申し上げたわけでございます。
  24. 中西啓之

    中西参考人 私は補助金の機能を三つくらいにとらえておりまして、一つは、政策誘導的機能と申しますか、いわゆる補助金をつけることによって中央省庁の意図する政策を実現していく、こういう機能がございます。それから二番目は、いわゆる政権維持機能と申しますか、補助金を交付することによっていわば基盤をつくるというふうな機能があると思います。三番目は、財源保障機能ということで、補助金自体も現行制度のもとでは地方自治体の大変重要な財源になっているという、この三つの機能がいわば不可分に絡み合っているところに大変難しい点があると思うわけです。  確かに、指摘されておられますように、補助金制度そのものに伴う弊害と申しますかむだといいますか、縦割りの矛盾といいますかあるいは今おっしゃったような陳情合戦とか、そういうことはいいことではない。つまり、いわば行政のむだの典型と言ってもいいと思うのです。しかし問題は、今回の場合はそういうことをなくすということが重点にあるのじゃなくて、ともかく国の方の財政が苦しいから切るのだということを重点にして行われているのじゃないか。そうしますと、この補助金の非常に重要な機能である財源保障機能が主としてカットされていくという結果になる、そこを私は大変危惧しているという意見であります。
  25. 沢田広

    沢田委員 さっき坂田先生のお話では、補助金は、選択的な政策というような、地域のアンバランスをなくしていく、公正、公平を期していくという意味においてのある意味の価値観というものがあり得ると言われましたので、ちょっと念のために具体的に申し上げますと、例えば流域下水道などがやはり下げられておる、あるいは地すべりなども下げられている、危険校舎の改築も下げられておる。一方、基地周辺の道路整備あるいは騒音対策、そういうものは全然下げられない、ほぼ一〇〇%の保障である。じゃ、どちらが国の責任で、どちらが地元自治体責任なのかという区分を我々は迫られるわけであります。そうなりますと、必ずしもそれが政策選択の公平を強めることには通じないのではないかというふうにも思えるわけですが、これは坂田先生、澤井先生からお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  26. 坂田期雄

    坂田参考人 ただいま公共事業について流域下水道、基地交付金といろいろ例を挙げられたわけでございますが、確かに現在の補助率負担率というものにどの程度理論的根拠があるかというと、必ずしも根拠がない。そのときどきのいろいろな状況で決められてきておるといういきさつがあったのじゃなかろうか。そういうこともございまして、補助金総合的な負担率を少し調整しようということで今回の法案が検討されたのではないかと思うわけでございます。  それにいたしましても、そういう基盤整備的な公共事業は、自治体一般財源だけではなかなかできないので、これに国庫補助事業や国庫負担事業という形での財源措置は必要なのではなかろうか。その場合に、補助率負担率をどのくらいにするかということになりますと、本来国の受け持つべき役割分担の比重が非常に強いかどうか、そういうような点も加味してもう一つ別の議論になるのじゃなかろうかと思うわけでございます。
  27. 澤井勝

    澤井参考人 例えば、流域下水道と地すべり対策というのは違うと私は思うのです。緊急度とか、生命、生活の安全の問題からいいますとこれは明確に違っておりまして、流域下水道の場合でしたら、今かなり小規模下水への転換とかいう政策的な選択の幅が広がっております。そういう選択をしながら補助率負担率を考えていくことが可能なのですが、地すべり対策の場合はかなり緊急度を要すると思います。それを一律に下げるということは、政策の合理性の面からいいますと非合理的ではなかろうかと思います。  基地の問題については非常に困ったことがございまして、財政運営を見ておりまして、文部省の学校施設整備補助金が大分圧縮されております。そうしますと、基地周辺の義務教育諸学校について、いわゆる基地交付金、これをやってくれまいかという指導がございます。そういう意味では、補助率が高うございますので、教育も含めて、文教施設もそうですが、あの基地交付金があるために基地周辺で意外に過大投資になっている、そういう問題があると思います。その過大投資の結果どういうことになるか。具体的に言いましたら、人がふえる、維持管理もかかってくる、財政的な面ではそういう問題点がございます。そういう意味では、防衛関係経費だけが聖域化されていくということは政治的に許されないということはもちろんなのですけれども、財政的にもいろいろなゆがみをもたらしている、そういった問題を持っていると思います。
  28. 沢田広

    沢田委員 具体的な問題に入りますが、一般的には保険事業なり医療、精神衛生、生活保護、心身障害者、老人保護、老人医療の給付金、こういうような分野は減額率が極めて高い。防衛関係、施設庁は全然いじられていない、聖域になっておる。そして弱い立場にある人たちが一番多くその負担を強いられていく。補助減額になっておる。これは地方負担額がそれだけふえているということを私は申し上げたかったわけであります。これは皆前年度対比ですが、生活保護で百二十一億、心身障害者で百六十一億、老人保護で七百四十八億、老人医療の給付で三百十三億、児童保護負担においては千五百二十七億、こういうふうに、ほかのところとの比較で見ますとどうしても生活関連経費に負担が重くかかってきておる、そして林業、バス、都市計画その他の同じ関係においてはそれほどの減額は行われていない。そういう補助金減額の総体的な傾向からして、果たしてこれでバランスがとれていると言えるのだろうかという疑問に突き当たるわけであります。この制度が三年続くということは、地方の弱い人たちの立場がより一層深刻な状況に追い込まれる。こういうことで、事業はしなくても痛くはない、しかし、これはそれぞれの国民が痛さを感ずるものであるとも思えるわけでありますが、この点は肥後先生と澤井先生からお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  29. 肥後和夫

    肥後参考人 先ほど陳述の際に、国際比較マクロ指標から見た場合に、人口高齢化比率という点でも日本は必ずしもよくないということを申しました。まだ若いわけで、これから本格的に高齢化社会に突入していく中で社会保障関係財源をどう確保するかということは、日本国民全体の大問題でございます。  私も社会保障財政を幾らか勉強しておりますが、非常にきついわけでございまして、そういう中で考えますと、生活にお困りになっている方については、全力を傾けて健康にして文化的な最低限を保障しなくてはならない。ただ、負担能力がある方については、例えば先ほど保育所の負担の問題なんかの議論もありました。あるいは下水道料金でもそうですが、国民負担が増加することは何でもかんでも悪いと言ったら、高齢化社会に突入する段階での社会保障財政はとても収拾がつかないことになります。そういう中で、例えば老人ホーム負担であれ、保育所の保護者の負担であれ、ひところと比べて一般的に国民余裕が出ている——余裕が出ていると言っても、税金と住宅ローンと子供の教育費で決して楽ではないと言えば楽ではないのですが、昔の、終戦直後から十年あるいは十数年のあの飢餓状態から比べればよくなっているわけで、その中で幾分負担していただかないともたないということは事実じゃないか。全体としての租税負担率をどうして高めるかということとの関連の中で広く検討していかなくてはならない問題だろうと思っております。
  30. 澤井勝

    澤井参考人 公共事業関係補助金の下げ方と社会福祉関係補助率の下げ方でバランスしているかという点ですが、バランスを失していると私は思います。  ただし、この連合審査会の持ち方についても問題はあると思うのです。例えば社会福祉関係ですと、一応団体事務化というのが行われることになっております。どの程度自治体の事務になるのか、その点も含めて論議をしないと、補助率負担率についてその仕事の内容との関連でどうなのかという議論がしにくいものですから、こういうふうに、地方公共団体の機関が国の機関として執行するという長い名前の法律ですけれども、これがまた別のところで議論されるというのでは、結局、お金の問題と仕事の関係がばらばらの議論をされてしまう。そういう点でいいますと、本来くっつけて議論すべきところがくっつけられてなくて、分離してはならないところが分離しているというような審議の格好になっているようにお見受けいたします。その点は一つつけ加えておきたいと思います。
  31. 沢田広

    沢田委員 一つ大ざっぱな話なんでありますが、国と地方は大体五十四兆円ぐらい、大体とんとんで来ているわけです。ですから財源地方に五〇%、中央に五〇%、そういうことで、いわゆる総合計画というものをそれぞれが分担する。非常にラフな話でありますが、そういう発想で物を考えるということが許されるのだろうか、今の能力や機能からは許されないのであろうか。これは本当にどちらかで、四人の方から財政運営というものに対しての見解を一言ずつお答えいただきたいと思います。
  32. 中西啓之

    中西参考人 国と地方のいわゆる財源配分の問題でありますが、これは地方自治一般論から申しますと、いわゆる三割自治というふうなことが言われて、できるだけ自主財源をふやすべきだということが言われまして、原則的には私も趣旨には賛成なんですけれども、この地域経済の現状を見ますと、税金を取ろうにも農村部では取りようがない。  私がこの間調べましたところでは、例えば東京のようなところでは七割の地方税が入る、しかし千葉県の農村では一割しか入らないということですから、総体としての自主財源というよりも、全体としての財源保障を一体どういう方法でやるのかということ、ここが非常に重要な問題でありまして、その点では、今の地域経済を前提にすれば、地方交付税制度を充実していくということが非常に重要な意味を持つのではないか。その意味で交付税財源が年々非常に窮屈にされてきているということ、ここが非常に問題であろうというふうに考えております。
  33. 坂田期雄

    坂田参考人 年度によって違いますが、大まかに言いまして、現在国民の税金のうち大体七割が国税として徴収されて地方が大体三割ぐらい、実際には七割以上が地方で使われて、国が直接使うのは三割ぐらいだ。そういう観点から見ますれば、実際に七割近く地方が使っているのであれば、もう最初から地方が直接税金を徴収するのが一番望ましいのではないかと一般論としては言えるかと思うのです。ただし、税源が日本は地域によって非常に偏在しておりますから、そういうわけにもいかない。確かに、税だけ見ますと三割自治、あるいは自治体によっては一割自治になるところも随分あるわけでございますが、交付税とこれを合わせてみますと、大体平均して五割自治ぐらいになっていると言えるのじゃないか。地方団体のいろいろな要望を見ましても、大府県あるいは大きい都市は地方税の増強ということを言いますが、小さい府県、小さい都市はそういう税制改正があっても自分のところはふえない、やはり地方交付税の増強ということで、地方自治体の中でも、今後の財源措置については分かれてきておるわけでございます。  そういう観点から申しまして、自治体の大きな財源は、税と地方交付税と国庫補助金と、この三つあるわけでございますが、今後の方向は、税と地方交付税の比重をなるべく高めて、ひもつきの国庫補助金というのはできるだけ少なくしていく、そういう方向が一番望ましいと言えるのじゃないかと思います。
  34. 澤井勝

    澤井参考人 国庫補助金の改革の問題でお話ししておきたいと思いますが、一つは、国庫補助金についてはアメリカとかイギリスにおいても国庫補助金がかなりふえてきまして、アメリカの場合も連邦政府補助金が非常にふえまして、そういう意味で言えば、アメリカの場合ですと非常にクリアカットの行政と言われまして、連邦と州と郡というぐあいに分かれておりましたけれども、この補助金のおかげでマーブルチョコレートみたいに非常に権限が入り乱れてしまったというふうな話も出ているくらいなんです。そういう意味でいいますと、現在の国家のシステムから考えまして、この補助金の機能が量的にも質的にも拡大してきておるというのが大体六〇年代、七〇年代を通じての流れであったと思います。その流れの中で、日本もまた例外ではないと思いますので、改革の問題はそれを土台にして論議をする必要があるだろう、それを急に全廃していくというのはかなりいろいろな点で摩擦を生むであろうと思います。  ただ、そういう意味でいいますと、前のお二方が言ったように、自治体の方からいいますと、交付税なり地方税の強化をしながらこの国庫支出金の改革を進めていく。具体的に、前私たちのところで議論になった点で申しますと、公共事業関係経費について、この箇所づけの権限を例えば都道府県に与える。今度の地方自治法改正では都道府県基本構想の義務づけは出ておりませんけれども、それはなぜ出てこなかったか、ちょっと不思議ですが、そういう形で、要するに陳情行政とかいう形での弊害を霞が関から除去していくという点からいいますと、都道府県に権限を与えて都道府県計画と市町村計画とのすり合わせをしながらやっていく。それで、国庫補助金財源についてはそこに枠配分をしていく、その枠配分をするのだけがある意味でいいますと中央政府の機能というふうなことも考えてしかるべきだろうと思います。ただし、その場合には、陳情行政の弊害が都道府県の方に移るだけということになりかねませんので、その点は注意が必要である、こういうふうに思います。
  35. 肥後和夫

    肥後参考人 固有財源としての地方税地方の歳出全体に占める割合が多いか少ないかという点で申しますと、国際比較の中では必ずしも少なくないんじゃないかという見方もありまして、これはやはり国と地方の役割分担の中で実質的に考えるべきものかと思います。  それで、先ほど坂田さんも言われましたけれども、一割しか税収が入らないところでは、やはり地方交付税が重要な財源でございますので、地方税地方交付税を含めて見れば、現在かなりの程度財源の保障はされているのじゃないか。ただ、今度の補助金特例法案の場合にも、地方が強く主張したのは、こういうような一割の財源しかないところでも、基本的な行政サービスをやっていくのに必要な財源が確保されなければならない。その点について、地方交付税と地方債で十分に確保されるということが主張されたわけでございます。  その中での財源対策債分については、今元利償還費については、あるいは将来、五十六年度以降について国が負担するという約束もありますし、一応現在のところではとにかく収支つじつまが合っているという点は認めなくてはならないと思うのですが、これからどうなのかというのは、やはり国と地方の役割分担について現在制度的に詰めている問題をさらに進展させる中で自然に解決されていくものではないか。ただ、その場合に一概に、例えば大都市圏の地方団体財源余裕があるとは必ずしも言えないかもしれないのですけれども、しかし一方では、保育料でも下水道料金でも一応受益者負担という観点から見てまだ余裕がある、むしろ税金で賄っているという面もありますので、この辺はまさにこういう国と地方のつばぜり合いの中で詰めていく問題であろうと思っております。
  36. 沢田広

    沢田委員 基準財政需要額の基本を改める段階に来ているのではないだろうかという問題ですが、例えば道路の舗装率も、国道その他はほぼ一〇〇%である、地方道もそうである。しかも河川も、五十分の一なり三十分の一なり百分の一なり、改修が終わったところもあるし終わらないところもある、それも一緒くたに全部河川の延長で見ておる。農業に至っては農家数で見ている。これは農家人口で見るとか、あるいは農耕面積、まあ面積は入っていますが、あるいは減反面積も考慮に入れるべきであろう。あるいは恩給の受給者数なんというのが特別飛び込んできて、年金受給者数は入ってこないということ。あるいは、下水道はこの前ようやく入りましたが、上水道が入らない。それから交通対策が入ってない。それから交通の乗客人数が入らない。そういうふうに見ますると、基準財政需要額を考える場合の根底が今のアンバランスを生んで補助金をつくっているということも言えるのではないかというふうにも思えますが、これは肥後先生にお願いして、時間が余りありませんから、次に行きたいと思います。
  37. 肥後和夫

    肥後参考人 経済社会情勢が絶えず変化しているわけでございますから、沢田先生の言われたような見直し努力を絶えず続けていくことは必要であろうかと思いますが、具体的にどうしなければならないかという点については、私、成案を持ち合わせておりません。御趣旨の線は確かにそうであろうと思います。
  38. 沢田広

    沢田委員 最後に、直轄事業負担金というのがとんでもないところに出るのですが、それぞれ補助金は出すけれども、またそれぞれは、極端なことを言うと、一般の道路の掃除は一般住民がやる、国道の掃除は国道事務所がやると、そこでは金がかかって、それは住民市町村負担になる。これは出して取ってという形になるので、住民感情からすれば、何もあんなガードレールをふいてもらう費用まで、車がぶつかるかすれるかわからぬけれども、その方をきれいにするための費用地方税で納める、これもどうも納得できない。特に、すべすべした方が自動車の方にあって、とがった方が住民が通る歩道にある、これもなかなか理解がつかない。正月などは振りそでを着るとみんな引っかけて破ってしまう、こういうこともなくはない。こういう点は、果たしてそれが政治と言えるのであろうかという疑問もあります。  簡単な実例で申し上げましたが、その点ひとつ、いいことか悪いことかどちらでも結構ですが、これは一つの政治のシンボルでありますから、先生方から一言ずつお話を聞いて、質問を終わりたいと思うのです。お願いします。
  39. 肥後和夫

    肥後参考人 できるだけ住民の身近な行政を大事にしていくことは必要だろうと思います。ただ、直轄事業負担は、やはり地域の住民の便益のある度合いに応じては地元が負担するのはやむを得ないのではないかと思っております。(沢田委員「ガードレールはどうですか」と呼ぶ)要するに、地域の住民の利益になる点はきめ細かくやはり配慮すべきだと思います。
  40. 澤井勝

    澤井参考人 直轄事業負担金については大分整理はされてきていると思いますけれども、なおそういった意味で調整する必要がかなりあると思います。かなり優遇されておりますので、その辺の見直しは引き続き進めるべきだと思います。
  41. 坂田期雄

    坂田参考人 国直轄事業負担金というのは国庫補助金と反対で、地方建設局とか地方農政局で国が大規模な広域的な事業についてやって、地方から負担を取るものでございますが、これにつきましては、ただいまお話がございましたように、例えば建設は国の段階でやっても、維持管理費のようなものは自治体に任せてもいいじゃないかという議論は前からあるのじゃなかろうか。それから、負担金の額が果たして適当かどうなのか、その負担金がどういうふうに算出されたのか、その根拠をもっと自治体に明確に示すべきじゃないか、そういう不満というか意見自治体の側からもかなり前からあり、また主張されているのではないかと思っております。
  42. 中西啓之

    中西参考人 直轄事業負担金につきまして、どういう事業がやられているのかということが問題だろうと思うわけです。私が実は昨年手がけました財政分析のときに、これは北海道の根室なんですけれども、あの地域にしては非常に大きな規模の港湾の建設が国の直轄事業でありまして、地元に相当大きな負担がかかる。私なんかが考えましたところでは、ああいう大きな港湾を建設した場合に、非常に長期的な国策としては意味があるかもしれないけれども、地元にとっては土木事業の刺激になるぐらいで、そこの後背地の産業発展に結びつかないわけです。そういうものを一時的な公共事業の刺激というだけのことで地元に誘致をして、それで自治体が過大な負担をするという仕組み自体には大変問題があるわけでございまして、こういうものは負担あり方そのものを根本的に見直すべきじゃないかと考えております。
  43. 沢田広

    沢田委員 ありがとうございました。失礼な点もあったかと思いますが、その点御了承いただきたいと思います。  終わります。
  44. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 坂口力君。
  45. 坂口力

    坂口委員 参考人の皆さんには、大変遅い時間にお出ましをいただいて御審議をいただきまして、まことにありがとうございます。大蔵委員会はいつも遅い時間にやっておるものですから、我々気にせずにこんな時間にお招きすることになりましたが、ひとつお許しをいただきたいと思います。  それぞれ参考人の皆さん方からいろいろお聞かせをいただきましたが、実は今回の補助金のカットにつきまして地方自治体の首長の皆さん方にもいろいろと御意見を聞いたわけでございます。その中で、これは保守系の市長さんでございますが、昨年一年限りということで法案が提出をされて、そしてそれが裏切られることになった、大変残念だけれども、ことしはまた三年ということでここに提出をされた、百歩譲ってやむを得ないとしても、しかし三年後どうなるかということだけは明確にしておいてもらいたい、それだけはどうしても譲れない一線であるということを言われたわけでございます。いろいろお立場は異なりますが、まず最初に肥後参考人に、その市長さんの言われるお気持ちも十分わかるわけでございますが、その辺のところをどういうふうに御理解になりますか、お聞きしたいと思います。
  46. 肥後和夫

    肥後参考人 昨年もこの場所で意見を述べる機会を与えられたわけでございますが、確かに昨年の補助金特例法案は一年限り、その際は、さらに国と地方関係あるいはその事務事業の中身について見直しをするという、そういうことであったと思います。そういう意味での暫定であったと思います。それに対して補助金検討会が結局答申を出し、それを踏まえて今回の法案が出た、こういうふうに理解するわけでございます。  それで、今御指摘の問題でございますが、確かに、例えば国民健康保険の場合も、医療費の基準から給付費の基準に変わって実質三割の給付率の減額になったとか、いろいろそういう問題が地方財政の方に出て、これに対して今真剣な対応を迫られているわけでございますけれども、申すまでもありませんが、国は地方に対して依然として不信感を持っている、地方もまた国に対して不信感を持っているということで、その国の地方に対する不信感が地方財政余裕論だろうと思います。  ただ、やはりこれに対して不満を言われているだけでは足りないので、地方地方で行財政の合理化に徹底的に取り組んで、その上で言うべきことは言わなくちゃならぬのじゃないか。その場合の考え方がいろいろ論者によって違うことはよく承知しております。しかし、私はやはり負担能力のある人は、例えばそれぞれの地方の便益等がある場合に、便益に応じて負担をするといったような問題点はさらに改善すべきじゃないか。あるいは、かなり地方団体として直営中心のやり方をやっておりますが、こういったような問題についてもなお改善の余地があるのではないか。  こういう点もありますし、国が金がなくて困っているのは事実でございます。その面から今度の合理化の法案が出ているわけでございます。これに対して、地方はやはり地方立場から切り返しの主張がある。この緊張関係の中で改善をしていかなければならないので、地方が困っている、これをまた三年も続けられたら困るという、それはごもっともなんだけれども、しかし、例えば本来受益者負担で賄うべきものの公費負担率がかなり高いじゃないか、直営の比率はかなり高いじゃないか、もっとOA化を進める余地があるのではないかという議論が国から出されたときに、反論できるだけの努力はやらないと、国の財政が火の車であるという問題に対して切り返しができないのではないか。そういう立場で、私は国と地方財政両方を見ているわけでございます。
  47. 坂口力

    坂口委員 坂田参考人にひとつ次にお聞きをしたいと思いますが、先ほど五項目でございましたか、国が地方に押しつける場合の前提条件というものをお示しをいただきまして、感銘深く聞かせていただいたわけでありますが、今も肥後参考人からお聞きいたしましたように、この三年間というのが、例えば法律が通ったと仮定をいたしまして三年間続いた後にこれがもう続かない、その後はもうこの三年間で終わりになるという保証はこれまたないわけでございます。  そこで、先ほど五項目の中にはございませんでしたけれども、国と地方との税源配分の問題が一つ問題になってきやしないだろうか。先ほども社会党さんの方からの質問にも若干ございましたけれども、三二%の国税の考え方というもの、この辺のところももう一遍考え直していかないといけないのではないかというような意見もございますが、その点について坂田先生はどんなふうにお考えになっているか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  48. 坂田期雄

    坂田参考人 ただいまの国と地方の税源配分の問題でございますが、これは、これから特に財政窮迫で大きな新しい財源の手当てがされたということになってくればまた新しい問題も出てこようかと思うわけでございますが、税源配分の前提といたしまして、先ほどからもお話が出ておりますが、国と地方の事務の分担、配分を一体どうするのか、その辺をまずはっきりして、その上で、では国はどの程度の税源を、地方はどの程度の税源をという見直しが改めてもう一度必要なのではなかろうか。それでその結果、三二%につきまして、一部の側からこれを引き下げてもいいのではないかという声もありますし、地方の側からはこれをもっと引き上げてもらわなくてはだめだという、両方の意見があるわけでございますが、単なる財源、税源だけの議論じゃない、そういう事務配分論といいますか、そこからのもう一遍の見直しが必要なのじゃないかという気がいたすわけでございます。
  49. 坂口力

    坂口委員 次に、今回の改正案の中で、特に厚生省関係のものが非常に多いわけでございます。先ほど数えてみましたら、厚生省関係が十五項目ございます。厚生省のいわゆる当然増がずっと続いているわけでございますが、昭和五十七年でしたか、それが一部認められないということになりまして、以後毎年厚生省予算は当然増も認めないというのがずっと続いているわけであります。五十七年には老人保健法が創設されましたし、五十九年には健保改革で一割負担の導入が行われました。六十年には年金制度の改革がございましたし、そしてまたことしは老人保健法の改革で四百円が千円になるというようなことで、当然増をぐっと抑える政策がずっと続いてきているわけであります。そのほかに、厚生年金でございますとか政管健保の積立金を一時借用する、それをまだ返してないというようなこともあるわけであります。  こういうふうなことが続いておりますことを前提にして、これから来年も当然増は当然起こるわけでありますので、これを一体どうしていったらいいかということが議論として大きく浮かび上がってくるわけでございます。先日の予算委員会におきましても、大蔵省の主計局長さんからだったと思いますが、六十二年度の社会保障移転支出は十二兆五千五百億円でことしよりも大体七千億ぐらいふえる、五・六%の増加ではないか、こういう議論が出されたわけであります。そういたしますと、来年それだけの——これはどれだけになりますかはっきりわかりませんが、これを信ずるといたしますと七千億ぐらいでございますけれども、そういたしますと、それもまた来年当然増を切り込んでいかなければならないということになりますと、今度は一体切れるところがあるのかということになろうかと思います。  そこで、もうこういうことを繰り返していくことはできないわけでありますので、どんな方法をこれからとっていったらいいかということについて、四人の先生方の御意見をお伺いしたいと思うわけでございます。
  50. 肥後和夫

    肥後参考人 非常に大きな問題で果たしてお答えできるかどうかわかりませんけれども、やはり基本的には、一つは財源を確保する努力をすることであるし、もう一つは給付の効率化を図っていくことであろうと思います。  財源を確保するという観点につきましては、例えば保険関係事業費等について社会保険料の適正化を図っていくということであります。もう一つは、先ほども幾つか出ましたが、いろいろ対人的な福祉サービス等についてある程度見直しをしていく、受益者あるいは家族に負担してもらうべきものについては負担していただく。さらに、社会保障に充当される税収の確保を図っていく。これについては、現在税制の抜本的な改革の一つの大きなテーマになっているのではないかと思います。  給付面につきましては、どこまで国の責任で生活の保障をするのかという点についての国民的な合意を繰り返し問い直して確認していくことではなかろうかと思います。基本的な問題として、健康にして文化的な最低限は国が全力を挙げて確保しなければならないけれども、その上のサービスについて一体どうするのか、これが年金制度改革の一つの問題点でもあったと思うのです。あるいは今度の補助金の関連につきましては、例えば老人ホームであれ国民健康保険であれ、結局は国民負担してくれなければできないわけで、その負担してくれる範囲内でできるようにするにはどうしたらいいかという問題の中で、税制あるいは社会保険制度あるいは受益者負担の問題等を考えていくということではなかろうかと思っております。
  51. 澤井勝

    澤井参考人 非常に難しい問題ですけれども、当然増といいましても、例えば年金もございますし生活保護の問題もございますし、それぞれの事業によって当然増の中身が違っておりますので、個別に検討を進めることが必要であろう。いわゆる当然増というふうに丸めて議論しますと、結局年金とか生保といった基礎的な部分が割を食ってしまうことになりますので、年金財政をどうするのか、あるいは生活保護の水準をどうしていくのかという論議を詰めていく必要があるというふうに思います。  その場合に、去年の春くらいから社会保障特別会計ですかという提案が出されたりしておりますけれども、あれは一つの検討の素材になるだろうと私は思っています。つまり、どの程度年金あるいはその辺の関係がふえているかということを国民の前に明らかにしていくという意味で、同時に、その場合には財源をそれに充てることになっておりますので、そういう意味では仕事の中身と財源との関係が明確になるはずですので、検討に値すると思います。ただその場合に、そのために防衛費にはまっている一%枠のたがが緩んではならないだろう。ですから、同時に防衛費の伸びのあり方について、関連した問題としてきちんとした論議がされていく必要があるのではなかろうかと思います。
  52. 坂田期雄

    坂田参考人 ただいまの社会保障費の増大の問題でございますが、これは高齢化社会の進展に伴いまして当然増加してくるわけでございます。そのためたも、やはり一方で行革はできるだけ徹底してやって身軽になって、高齢化に対応する財源づくりをしていかなければならない、これが基本だと思うわけでございます。その上で、高齢化に対応いたしまして年々ふえてくる負担をどうするのか。  その場合のまず第一は、これを全部公費で、税金でということではなくて、セルフヘルプ、地域あるいは家庭で、自分たちでできることは自分たちでという方向を国民の間にこれからもっと確立していかなければいけないのではないか。つまり能力ある者、ある程度所得能力がある中流階層の方々はこれからは福祉をお金で買う、受益者負担ということをはっきりさせていって、そしてどうしても能力がない低所得者だけを公費で税金で面倒見る、そういう行政の守備範囲のあり方をもっと明確にしていく必要があるのではなかろうか。  その上で、どうしても税金で対応しなければならないものについては、これからの高齢化社会に対応して、財源を新たな増税に求めるということが国民の間の新たな課題になってくるのではなかろうかと思うわけですが、そのためにも、これからの長期の負担がどういうふうになっていくのかという財政の見通しを国民の前に示して、そして、さあその負担をどうするのかという論議をもっと深めあるいは広めていくことが必要なのではなかろうかというふうに思っております。
  53. 中西啓之

    中西参考人 問題が非常に基本的な問題でありますから、基本的なことになっていくと思うのですが、やはり厚生省予算、いわゆる社会保障費の総額が抑制されてきているというところに根本的な問題があると思うわけです。  もちろん、負担をするのは何でも反対とかいうことでは決してないわけですけれども、明らかに八〇年代に入りまして社会保障費の伸び率が非常に低く抑えられてきている。例えば、防衛費の場合は八一年から八六年にかけて一・四倍にふえているわけですけれども、社会保障費は一・一二倍くらいに抑えられている。あるいは教育費はほとんどふえていない。政策的な見地から意識的に社会保障費が低く抑えられてきて、それに対して防衛費とか経済協力費が意識的に高く上げられてきているというところに基本的な問題があると思うわけですね。  さらにもっと根本的な問題、今の財政危機をどうするかということになりますと、やはり税制改革の問題になると思うわけです。今、国、地方を含めて公的財政というのは非常に赤字といいますか累積債務がふえているわけですが、これは新聞でも時々報道されているわけですけれども、企業の自己資本比率とか預金高というのはこの間非常にふえてきておるわけであります。ここに手をつけて改革をする。どういう方法でやるかというのはまだ非常に難しい問題になると思いますけれども、そういうことで考えていかないと、今日のような深刻な財政危機は解決できない。それでじわりじわりと国民の生活にかかわる経費に一番しわが寄ってきている、ここが一番問題であろうというふうに考えております。
  54. 坂口力

    坂口委員 最後の質問にしたいと思いますが、先ほど澤井参考人が特別会計の問題に触れられまして、検討の余地ありというお話でございました。坂田先生はこの特別会計についてどのようにお考えになっておりますかをひとつお聞かせをいただいて終わりにしたいと思います。
  55. 坂田期雄

    坂田参考人 私も、基本的には、これからの高齢化、社会保障費の増大に対する新しい財源は、新しい特別会計といいますか、そういう方向で一般の経費と区別して国民の前にはっきり示すという方向が一般的には望ましいのじゃなかろうかという感じはいたしております。ただ、具体的な話になりますと、これからもっと検討する必要があるのじゃないかと思います。
  56. 坂口力

    坂口委員 もう一問だけ肥後参考人にお聞きをして終わりにさせていただきますが、財源確保ということを肥後参考人は最初おっしゃいました。財源確保の中身でございますが、どんなものを財源として確保していくかということについてもう少し触れていただきたいと思います。
  57. 肥後和夫

    肥後参考人 税制の問題でございましょうか。(坂口委員「そうです」と呼ぶ)  私は、やはり大きな問題は、シャウプ勧告以来の直接税体系が実質的に不公平になって、不公平感を国民に深刻に抱かせるようになっているということ、それから法人税にも現在いろいろ問題が出ているという意味では、これからの一つの問題は、負担能力を消費に求めて、EC型の付加価値税のようなものを導入する手しかないというふうに思っております。
  58. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  59. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 玉置一弥君。
  60. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 参考人の先生方には大変遅くまで本当に御苦労さまでございます。  今回の補助金一括法案、昨年もいろいろ論議が出たところでございますけれども、補助金あり方が問題視されている中で、とりあえず時間がないからということで去年は一律カットというような形で出てまいりまして、財政論議をふだんやっている者にとりましては多少やむを得ないかなという気持ちがあったのでございますけれども、昨年も各地方のいろいろ公聴会等やりましたそのときの御意見で、ほとんどの方が、一年限りでぜひやめてほしい、非常に悪い法律といいますか、こういうことで大変強い要望があったわけでございます。今回出てまいりましたのは、それに輪をかけたようなもっと悪い法律でございまして、そういう意味では大変問題ありというふうに思うわけでございます。  昨年の公聴会のときにもいろいろ御意見が出まして、一つは、先ほどからお話が出ておりますように、補助金行政あり方をやはり見直すべきではないかというのが一つ。それから、余りにも補助金が細分化され過ぎる。ですから、地方として自由に方向を選択できない。先ほどのお話にもございましたように、自主性が発揮できない、ひもつきの補助金の寄り集まりというふうな形でやっている、こういうことでもございます。  ただ、もう一方の意見としては、補助金がひもつきであった方がいいという御意見もございまして、これはやはり、地方が独自でいろんな計画をしていく実力がないというのは本当かどうかわかりませんけれども、それだけ逆に言えば、今の財源状態から思い切ったことができない、我々はそういうふうに受け取ったわけでございます。そういう意味で、むしろひもつきで引っ張ってもらった方がいい、こういうようなものもあるわけでございます。  そういうようなところから見ていきますと、少なくとも今回の補助金一括法案から見ますと、補助金の総額規制ということでございまして、いい補助金、悪い補助金、区別なく一律に引き下げをして総額で削減をするということで、行政の改善という面から考えると全然進歩していない、こういうふうに思えるわけでございます。  そこで、各先生方にそれぞれお聞きを申し上げたいと思いますけれども、まず一つ、今の補助金行政は非常に陳情回数が多いとか、あるいは細目にわたってあるために場合によったら三つぐらい同時にかかる補助金があるわけでございます。それも省庁が違った場合になかなか進展していかない。こういう煩雑といいますか、複雑といいますか、そういう補助金体系になっているわけでございまして、今の補助金体系を考えてみて、今の補助金行政あり方についてどういう御意見をお持ちであるか、肥後参考人の方から順々にお願いしたいと思います。
  61. 肥後和夫

    肥後参考人 先ほども申しましたけれども、補助金が、いわゆる補助金と申します場合特定補助金でございますが、補助金が国の政策を遂行するための重要な手段であるということはこれを認めなければなりませんけれども、今御指摘のようないろいろな弊害が指摘され、痛感されていることは事実でございまして、これらをやはり合理化していくということは必要である。ただ残念ながら、各省庁の所管権限に対する執着といいますか、これが尋常一様ではありませんので、問題は、困ると言っていただけでは一向に進展しないわけでございまして、ひとつこういう財政危機の中で、この縦割りの壁の中に踏み込んで、この関係省庁を引き出してその合理化を進めていただくように議会にお願いしたいと思います。  まあ少しずつ事態は改善されているのではないか。例えば今回の補助金法案でも統合メニュー化が進められているものも幾つかあると思いますが、地方立場で見ますと、敷地は限られているのに縦割りになっているために、例えば施設でもなかなか効率的な設計ができないというようなことはよく指摘されていることでありますし、あるいは全国の都道府県市町村の事務所が東京に集まっているというようなことから見ても、そしてもらった補助金よりも申請にかかるコストの方が多かったというような話もよく聞きますから、こういう点はもう目を光らせて改善するように、むしろ議会に一段の御努力をお願いしたいと思っております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 澤井勝

    澤井参考人 先ほどは、国庫補助金負担金が現代国家の中でかなり重要な位置を占めてきているということをお話ししたわけです。そういうことを前提にして議論した方がいいだろうというふうに申しましたけれども、やはり根本的には、全部なくしてみたらどうかというので徹底的に考えてみるというのが必要だというふうに思います。  現実的には、昭和二十五、二十六、七年については国庫補助負担金というのは、シャウプ勧告によりまして一部を除きましてなくなったわけです。そのときに同時に地方財政平衡交付金というのができまして、そのもとに全部統合されたわけです。ただ、その統合のされ方が非常にまずかったものですから、自治体の方がかなり財政危機に陥ったのは事実であります。と同時に、この昭和二十七年に一たん退治をしました国庫補助負担金のうち、特に義務教育国庫負担金を先頭にして復活してきた。これはやはり各省庁、文部省を先頭にして、またこの場合は地方団体も一生懸命復活を要求するという構造になっていまして、そういった地方団体の方も国庫補助、負担金の復活を要求する。いろんな経緯がございますようですけれども、結局それを引き連れまして復活してきたということになっているわけです。  ですから具体的に考えますと、そういったふうな中央の省庁、特に係とかぐらいが持っている補助金というのはたくさんございますけれども、それと地方自治体との間の具体的な関係をどういうふうに整理するかというのを政策化する必要があるだろう。先ほど申しました公共事業なんかに関して、例えば都道府県へ集めてしまったらどうかとかいうふうな、少し頭の体操も必要になるだろうというふうに思います。
  63. 坂田期雄

    坂田参考人 国庫補助金制度というのは国の政策を推進するために必要な制度だということは一面で言えるかと思うのですが、しかし現実には、各省庁が自分の省庁の権限を拡大するものあるいは地方を自分の省庁の意図のままに動かすそういう用具、手段として国庫補助金が使われているという実態になっている。そういう現状から見まして、国庫補助金地方のいろんな主体性あるいは創意、そういう芽を摘んでしまうという点が非常に多いわけでございます。そういう点から考えまして、できれば国庫補助金というようなものはなるべく少なくして自主財源に振りかえるのが望ましいわけですが、実際にはそれを言ってもなかなか進まない。  そこで、当面の方向として各自治体が望んでおりますのは、先ほど来もお話が出ておりますが、一つは国庫補助金制度は残しても、枠配分化あるいは総合補助金化して、細かい点まで干渉しないようにしてもらいたい。それでそういう方向で、例えば総合補助金あるいはメニュー補助金という形で二つ三つの補助金を一本にまとめられるという改革が行われてきている例がここ数年来幾つかございますが、ただその現状を見てみますと、補助金の名前が二つあったのが一つに合わさったというだけで、実際の手続は以前とほとんど同じ手続がとられて、何も実態は改善されていないという声が地方から非常に強く出ているわけでございます。これは各省庁からしてみますと、それぞれ担当課が自分の権限を放したくないものですから、やはり自分の権限と結びつくから、枠配分化といってもなかなか進まないという実態ではないか。  もう一つは、補助金は残しても、手続、手間が非常に大変なのでこれを何とか改善してほしいというのがほとんど全部の自治体からの要望意見ではなかろうか。現在自治体行政のうち、県と市町村では違いますが、大体半分前後ぐらいがこの補助金の申請事務に使われている。そこで、手続、手間を簡素化すべきだというので非常に自治体が困っているという例が、私が参加しております地方自治経営学会からも二度ほど報告が出まして、国会でもその点を取り上げて御審議いただいておるようでありまして、おかげさまでといいますか、だんだんと少しずつ改善されてきておるのではなかろうかというふうに見受けられるわけですが、ただ、補助金の手続の手間というのは、各省庁の局長とか課長とか上の偉い人の段階ではなくて、せいぜい係長がそのもう一つ下の段階ぐらいの担当者の段階で一行ぐらい書き加えられますと、これが県におりますと、県の人は十メートルぐらい走らなくちゃならない。市町村におりると、さらに百メートルぐらい走らなくちゃならない。こういうような影響が出てまいりまして、国会でいろいろ御指導いただきましても、末端にまで浸透していくのにはなかなか時間がかかるのじゃなかろうか。今後もいろいろ国会の方面でそういう御指導をひとつよろしくお願いできれば大変ありがたいのじゃないかというふうに思っております。
  64. 中西啓之

    中西参考人 補助金制度そのものが持っている弊害というのは、諸先生方御指摘のとおりだと思うのです。ただ、今回審議されておりますこの法案というのは、先ほども申しましたように、補助金制度の弊害をなくそうというふうなねらいとかあるいは効果を持って出されているのではなくて、要するに財源保障の非常に重要な機能をなくしていく、専らそういうねらいと、またそういう効果をもたらすところに大変重要な問題がある。にもかかわらず、例えば新聞なんかの論調でも、補助金の持っている財源保障機能が失われるという面が今の非常に大事な面であるのに、それに余り触れずに補助金制度の弊害を是正するというふうなことを論じるということになりますと、何か問題の重点がすりかわってしまって、肝心な重大なことがどこかに行ってしまって、補助金制度そのものを改革するというのが非常に大事な課題なんですけれども、現在の時点で、それでない、財源保障機能がカットされるという問題が何かぼかされちゃうようなところがどうもなきにしもあらずというふうに感じております。そういう点では、この財源保障機能、つまり昭和五十年の地方財政危機以降交付税や税が削減をされてきている、それに加えて補助金が削減される、私はこれが一番大事なところだというふうに思っております。  そういう前提をつけて、あえて補助金制度論から申しますと、先ほども御指摘になった補助金の交付基準をもっと簡素化していくということ、つまり中央省庁が補助金の交付と結びついて、悪い言葉で言えば細部にわたって干渉をするということになっているわけでして、この交付基準というのを地域の特性に応じて自治体自主性がもっと反映されるように変えていく必要があるのではないか。そういう面では多少よくなってきている面もあると私は思うわけです。だから、中央省庁の地方自治体に対する機能といいますか、指導機能といってもいいと思うのですけれども、これを一から十まで細かいところまで拘束せずに、もっと大きな視点に限るというふうな改革がいずれにしても必要ではないかと考えております。
  65. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 一通りお聞きしていると時間がなくなりますので、ちょっと限定をしてお伺いをいたしたいと思います。  坂田参考人にお聞きをいたしたいと思います。先ほどからのお話の中でもありましたように、いわゆる零細補助金、あるいは第二交付税といいますか、我々第二交付税的要素と言っているわけですけれども、地方自治体自主性を尊重し、なおかつ干渉されないという、制度を残して細かいところまで干渉しないというお話でございました。交付税にした場合に不交付団体との関係、そして特に財源の少ないところにおいては事業に着手するまで踏み切る勇気、その辺がなかなか難しいのじゃないかというような感覚もあるわけです。しかし一方では、あれもこれもひもつきで動きがとれないから地方自治体自主性を持たせたい、こういうのもございまして、この辺から考えていきますと、零細補助金を特に主体にして考えた場合に、あるいは複合の補助金といいますかこの辺も考えた場合に、やはり一括交付的な補助金というものが必要ではないかと我々も思っているわけですけれども、これについてもうちょっと詳しく御意見を伺いたいと思います。いわゆる第二交付税的な要素、この交付の仕方だとかあるいは制度的にどうしたらいいかとか、御意見がございましたらお願いしたいと思います。
  66. 坂田期雄

    坂田参考人 ただいまのお話は、国庫補助金というようなものの改革の一つの方向として第二交付税という方向をとることはどうかということではないかというふうにお聞きしたわけでございますが、確かに現在の交付税は一応そのままにして、国庫補助金というものの弊害を改める一つの方向として、これを一括して第二交付税という形にしてやる、これは地方自治自主性という点から見ますと非常に望ましい方向ではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、そこにはいろいろな問題も当然出てくるのではなかろうか。第二交付税というものをつくった場合に、さあそれは一体どこで、だれがどういう基準で配分するのか、人口、面積等に応じて配分するのか、あるいは自治体の今までの補助金といいますか、特に基盤整備的な事業の需要の大きいところ少ないところいろいろあるわけでございますが、どういう判断、どういう基準で配分するのか、その辺の具体的な点の詰めが行われないと、考え方、構想としてはなかなかいいのですが、非常に難しい点がまだまだ残っておるのではなかろうか。  そこで、第二交付税までいかないで、少なくとも現在の補助金は少しずつ大枠にくくっていって、その中で枠配分という格好で地方に与えて、地方が地域の特性を生かしながらそれを使えるという、第二交付税を少し小型化したような格好じゃないかと思うのですが、当面そういうような格好で実験的に進めていって、その上でそれをまた全体をくくったのが第二交付税というような考え方にいくのじゃないかとも思うのですが、方向、考え方としては非常に検討すべき意味の大きい御提案ではなかろうかというふうに考えております。
  67. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 まだまだお聞きしたいことがあるわけでございますが、全般としてやはり統合化をやっていかないと、あるいは補助金の効果を見ていかないといけない時代にもう既に来ている、こういうふうに考えるわけでございます。  きょうは本当にまだまだお聞きしたいことがたくさんあるわけでございますけれども、今後また引き続きお教えいただくということで質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  68. 小泉純一郎

  69. 簑輪幸代

    簑輪委員 参考人の皆さん方には、本当にお忙しい中遅くまで御苦労さまでございます。与えられた時間がわずかでございますので、いろいろお尋ねしたいこともありますが、絞ってお聞きしたいと思います。  我が国の予算の中でいつも私ども問題にしております、軍事費が毎年ふえ続けている、そして軍事費と並んで対外経済援助も聖域とされてふえ続けてきているということを指摘してまいりました。こうした中で、近年対外経済援助というのはいろいう問題があるという指摘がありながら、それが放置されてくる中で、特にフィリピンで我が国の対外経済援助が独裁者マルコス一族の蓄財に流れていったのではないかという重大な疑惑が生じております。そしてその疑惑を解明するための特別委員会も設置されようとしている状況でございますけれども、こうした状況と、また一方で、毎年国の予算の中で社会保障、社会福祉の予算が切り込まれている、あるいは教育予算が切り込まれている、国民生活に重大な被害が起こってきているということが指摘されてきています。  そうした中で、補助金カットは、昨年一年限りということでありながら、特に生活保護とか保育所、老人福祉など弱い者にしわ寄せをしてきたという点で非常に問題があったと思いますし、これまでもそのためにさまざまな被害が具体的に報告されております。このような補助金カットというのが地方財政に影響を与えるだけではなく、ひいては住民国民に被害をもたらしてきているという状況対比して考えてみますと、国民感情から見ていかがなものか。やはりこのとき国の財政を考えてみても、また国民の暮らしを考えてみても、こうした対外経済援助などについては厳しいメスを入れて、そして社会保障を手厚くすべきではないかという意見も多々聞いておるわけですけれども、四人の参考人の皆さん方にこれに関する御感想なり御意見なりをそれぞれお述べいただきたいと思います。
  70. 肥後和夫

    肥後参考人 高齢化社会に向けて、国民が安心して生活できるように社会保障を構築していかなくてはならないということはもう御指摘のとおりであります。ただ、国際収支の黒字が七百億ドルにもなりそうだという今日でございますので、対外経済援助にも力を入れなくてはならない時代ではないかと思います。ただ、対外経済援助の仕組みが、今回フィリピンの問題をめぐりまして御指摘のようなことになりましたので、その対外援助の仕組みについてはやはりそういうことにならないようにもっと工夫しなくてはならない、こういうふうに思っているわけでございます。
  71. 澤井勝

    澤井参考人 簑輪さんのおっしゃるとおりだと思います。ただ、私たちが気をつけなくちゃいけないと思いますのは、弱者にしわが寄せられているというふうに言ってきましたけれども、具体的にしわが出ますのはこれからであるというふうに思います。というのは、六十年度まで、六十一年度も大体そうでございますけれども、生活保護費にしましてもそれから保育所の措置費にしましても、行政の中でどういう負担関係にするかという行政内部の議論なわけです。ですから、もちろんそれを先取りしましていろいろな意味で経営の合理化といいますか、あるいは生活保護の方でいいますと審査の厳格化とかが進んできておりまして、それは中西さんのおっしゃるとおりですが、それがもっときつくなるのはこれからであるというふうにとらえた方がいい。  特に、地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理合理化に関する法律案というのが出ておるようですが、あの中で、例えば保育所とか老人福祉施設については機関委任事務団体委任事務化するということになっております。そうしますと、要するに今まではそういった施設については通達でやっておればよろしかったわけで、通達ないし要綱でやっていたわけです。例えば保育料についても、中央のつくる要綱でやっていたわけであります。法案の行く末がちょっとわかりかねますけれども、もしもことし法案が通るとすると、これが規則ではなくて条例で保育料を決めることになっていくわけです。それから措置基準についてどう考えているか。これもまだはっきりわかりませんけれども、措置の中身についても政令に従って条例でやる、こういうふうになっておりますから、政令と条例の力関係というものをどうするのだという問題が残っております。というよりは、これからずっと議論しなくちゃいけませんけれども、その落ちどころによっては、保育とかあるいはそういった施設関係の福祉についての本格的な整理といいますか見直しというのは、各自治体レベルで進むということになります。その点を非常に注意深く見ておいていただきたいというふうに思います。  それから対外経済援助については、一般的に言えばああいうふうにやるべきではあります。ただ、やる以上はいやはり全面的に情報は公開する。どこに行って、どこまで行ったというのは、それはやはり税金の使い道ですので、漫画にもかいてありますけれども、イメルダの一千足になったとかというのは、素朴な感情としてもそうなんです。ですから、その点を明らかにするというのはやはり国会の任務ではないでしょうか。  それと同時に、今後やるとしたら、本当に必要なところに援助をする。そういう意味では、企業が絡んでの仕事じゃなくて、民間の援助機関を育てるといいますか、それに対する資金的な援助とかということもやる、その方がかえって身軽かもしれませんので、そういったことも考えるべきではなかろうかというふうに思います。
  72. 坂田期雄

    坂田参考人 ただいまのお話は、社会保障関係に今回の法案予算が切り込まれていって弱者にしわ寄せがいっているのじゃないかという御指摘でございましたが、私は今回のこの法案といいますか予算といいますか、これは国と地方との割合を変えるということであって、国から地方財源をツケ回したというだけであって、国と地方を合わせた総額で見ました場合には生活保護も福祉も別に変わっていない。そういう意味では、今回のこの法案は社会保障とか弱者にしわ寄せしていると必ずしも言えないのじゃなかろうかというふうに思っているわけでございます。  ただ、その場合に、今度は弱者との関係の問題は、行政住民との関係あり方負担の持ち方ということになろうかと思います。今回そういう議論がこういう法案が出される前提として当然なされるべきでなかったかと思うのです。それがなされないままで、ただ金目の問題だけで法案が出されてきたのはまことに残念だと思うわけでございますが、その場合でも、福祉だから、弱者だからということで何でも税金で面倒を見るということでなくて、やはり社会情勢が変わってきておりますから、どこまで行政が持つべきか、どこまで各人が自己負担で持つべきか、そういうことを改めて見直すべき時期に来ておるのではなかろうかというふうに思っております。
  73. 中西啓之

    中西参考人 ただいま、今回の措置というのは国と地方割合を変えるだけで社会保障に特に影響するというわけじゃないというふうな御発言だったと思うのですが、おっしゃる意味は、要するに建設地方債を含めて補てんが行われている、だから数字上のつじつまは合っているというふうなことを指していらっしゃるのかなというふうに思っていたのですが、これは私先ほども申しましたように、建設地方債の補てんというのは、補助金による財源保障と非常に違った効果を福祉の現場で現にもたらしているという、ここのところが非常に大事なところではないかと私は思うわけです。  補助金の場合ですと、例えば生活保護であれば、これはストレートに福祉事務所に交付をされる。しかし、建設地方債でそれを補てんするということは、これは間接的な補てんでありますから、そこに自治体の政策というワンクッションがどうしても入ってくる。そこの自治体が非常に意識的に福祉を重視するということでやりくりをしてこれを補てんするということであればまだましかもしれないけれども、福祉に回る補助金を大幅に削って建設地方債で埋め合わせたということになりますと、どうしても福祉の財政というのは現場で削られてしまうわけですね。その結果、現在福祉の現場で大変な事態が進行してきている。保育でいえば、保育所をやめてしまうとか、上げなくてもいい保育料を上げる。例えば松江で、三年前までは市民税の納税をしていない世帯は無料だったけれども、そういうところにまで保育料をかける。非常に低所得で、いわば行政改革の趣旨からいっても保障すべきところにまで自治体の政策としてかけていく、こういう効果を今回の措置というのは生み出しているのではないか。そこが非常に大きな問題であろうというふうに私は思うわけです。  それを基本的に突き詰めていくと、やはり全体として国の社会保障に回る財源が削減されてきている。それにもかかわらず、防衛や経済協力費というのが増額されてきている、特別に増額されてきているというところに基本的な問題があるというふうに考えます。もちろん、先ほど肥後先生も御指摘のように、七百億ドルにも上る貿易収支の黒字を何とかしないと経済はうまくいかないという問題も、これは大変重要な問題だと思うのですね。これの解決策というのはいろいろあると思うのですけれども、例えばその問題に関連して申しますと、今回の公共事業費補助率の削減、補助金の削減ですね、これは今御指摘になった日本の貿易収支の黒字をなくすというふうな方向とは全く逆の方向の効果を持つと私は思うわけです。つまり、地方公共事業費というのは割ときめ細かな、そこの地域の産業に結びついた事業がたくさんあるわけで、特に地方でそれをカットされるということは、そこの産業が衰退していく、ということは、日本の非常に底辺といいますかいろいろな地域の暮らしに響いていく、いわゆる国民の暮らしに直結した内需がここで阻害されていくというふうな効果を生むのではないかと思うわけですね。  そういう点で、確かにアフリカで食糧不足が起きているわけで、本当の意味の経済援助は必要だと私も思うのですが、大企業の利害に非常に結びついて、必ずしもその国の経済発展に結びつかないような援助のあり方、これは私はやはり問題だと思いますし、またどういうふうに財源を配分するのかという場合に、経済援助を特に優遇して、それで日本の地方自治体に回る公共事業費が削減されるというのは、これはどう考えても非常にいびつな財源配分ではないかというふうに考えるわけです。
  74. 簑輪幸代

    簑輪委員 もう時間がありませんので、最後に一点だけ簡潔にお尋ねしたいと思いますが、中西参考人に、先ほど来話がありました社会保障特別会計論についての御見解を簡単にお述べいただきたいと思います。
  75. 中西啓之

    中西参考人 この社会保障特別会計というやり方に私は大変危惧を抱いておるわけです。それはなぜかと申しますと、いわゆる社会保障特別会計というふうな形で限定をしてきますと、従来からも、これだけの給付をする以上は負担もしなければいけないというふうなことがいろいろな形で強調されてきたと思うのですね。ここは一つ私は大変大事なところだと思うわけですけれども、社会保障というのは、例えば自治体で経営しております地方公営企業とか民間企業とかとは違って、これは憲法二十五条、つまり生存権を保障している、そういう観点から、やはり基本的には租税でもってこの水準を引き上げるような努力が絶えず必要だろうというふうに思うわけですね。そういう点で、社会保障特別会計というふうに限定してしまいますと、ここの会計が苦しいからここの財源をまた確保する、つまり租税の配分と切り離される形でまた増税や負担拡大につながるような危険性が一つは起こってくるのではないか。つまり、社会保障財源というのはこういう形で限定されていますよというふうなことで、ここで制限してしまうような役割を果たしかねないという危惧を一つは持つわけです。  例えば、これは税制改正にも絡むわけですけれども、いわゆる福祉目的税、これなんかもちょっと同じようなにおいを感ずるわけです。福祉に使われるのならば増税してもいいじゃないか、あるいは大型間接税に連なるような税金を導入して、福祉に使うからいいじゃないか、これは私は必ずしもそういうことにはならないと思うのですね。本来租税で充当されるべきものを充当せずに、それで何か別の財源をここでまた確保というようなやり方は、本来的な財政運営あり方から見ておかしいのではないか、こういうふうに考えるわけです。
  76. 簑輪幸代

    簑輪委員 終わります。ありがとうございました。
  77. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十分散会