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渡辺国務大臣 化学物質の
審査及び
製造等の
規制に関する
法律の一部を
改正する
法律案につきまして、その提案
理由及び要旨を御説明申し上げます。
戦後における我が国化学工業の発展には目覚ましいものがあり、その量的拡大はもちろん、技術開発の進展に伴い、毎年数多くの新たな
化学物質が開発されてきております。今や
化学物質は、我々の身の回りのほとんどの家庭用品に使用され、
国民が文化的な社会生活を営んでいくためには必要不可欠なものとなっており、また、
化学物質の有効利用は、今後の我が国
産業の発展を支える上で極めて重要な役割を果たしていくものと期待されます。
しかしながら、化学工業の発展は、必ずしも順調なものであったとは言えません。
昭和四十年代半ばに発生したPCB(ポリ塩化ビフェニル)による環境汚染問題は、広く
産業活動あるいは
国民生活に有用なものとして使用される
化学物質の中に、その使用を通じて環境を汚染し、ひいては人の健康を損なうおそれがあるものがあり得ることを示すとともに、我々に
化学物質の安全性確保対策の確立の必要性を痛感させるものでありました。
こうした背景のもとに、
昭和四十八年、
世界に先駆けて
化学物質の
審査及び
製造等の
規制に関する
法律、いわゆる化審法が制定され、自来、PCB類似の難分解性と蓄積性を有し、かつ、有害性がある
化学物質による環境汚染を未然に防止するため、同法による
化学物質の
安全確保対策に万全を期してまいりました。
このように化審法は、
化学物質の
安全確保に関する
国民的要請のもとに、当時の人知を結集して制定されたものでありますが、制定後十二年の間に、
化学物質安全確保対策をめぐる内外の状況には、大きな変化が見られるに至っております。
すなわち、各国間の
化学物質規制の態様の相違が円滑な化学品
貿易の障害となることがないよう、OECDの場でも検討が進められ、
化学物質規制の国際的調和に関する勧告が取りまとめられるに至っております。
他の主要先進諸国においては、この勧告に基づく法
制度を採用してきており、我が国としても、化学品
貿易の一風の円滑化を図る観点から、他の先進諸国と同様、こうした
化学物質規制の国際的潮流に対応することが求められております。
また、国内においても、近年、PCBとは異なり、生物体内に蓄積する性質は有さないものの、難分解性及び有害性があるため、その製造、輸入、使用等の状況によっては、環境に残留し人の健康に係る被害を生ずるおそれがある
化学物質による環境の汚染が問題となっており、こうした問題に早急に対応する必要が生じているところであります。
次に、本
法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一は、新規
化学物質の事前
審査の充実であります。新規に開発された
化学物質について、これまでのPCB類似の性状の有無の判定に加え、蓄積性は有さないものの、難分解性及び有害性を存するかどうかの判定も行うこととし、このような性状を有する疑いのある
化学物質を指定
化学物質として指定することといたします。
なお、事前
審査における試験項目の決定など技術的事項については、国際的動向に十分配慮して決めることとしております。
第二は、事後管理
制度の導入であります。指定
化学物質については、製造、輸入数量の届け出を義務づけ、その使用状況等から見て必要があると認めるに至ったときは、その製造事業者等に有害性の調査を指示することができることといたします。
さらにその調査の結果、有害性が確定した
化学物質で相当程度の汚染が生じていると認められるものを第二種特定
化学物質として政令指定し、製造及び輸入の予定数量等の事前届け出を義務づけ、環境汚染防止のための技術上の指針の公表、表示の義務づけ等の
措置を講ずるとともに、環境汚染の状況によっては、製造予定数量等の変更も命令し得るようにすることといたしております。
以上が、本
法律案の提案
理由及び要旨であります。何とぞ慎重に御
審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。