○米澤説明員 お答えいたします。
まず、
委員御
指摘のとおり、あのような惨事が再び起こらないようにいろいろな面から検討する必要があろうかと思いますが、私
どもの所管の方は今御
指摘のとおりでございまして、刑法なり航空危険罪なりの面から捜査をするという、現行法制度上はそうなっております。
ところで、その事故調査
委員会と我々の捜査との兼ね合いでございますが、事故調査
委員会と申しますのは、私が言うまでもなく、当然のことながら、いろいろ事故原因を探られましてその結果を運輸行政なりいろいろな施策に活用される。他方私
どもの捜査と申しますのは、御承知のように大きな過失があってそして多大の人命が損なわれた、そういうような場合に刑罰を科することによって再犯を阻止していく、つまり不幸な事態の発生を阻止していくという目的を持っているわけでございまして、事故調査
委員会の事故の解明と捜査というものはそれぞれ目的を一にしておると思うのです。ただ手段としてそれぞれ違う経路をとりますけれ
ども、本来的には
我が国の総合的な施策の一環として捜査をする、こういうことになっておるわけでございます。
これも御承知かと思いますが、運輸省と警察庁の方とで、事故調査
委員会の調査と捜査官の捜査との総合調整をするために、たしか昭和五十年の八月一日付だったと思いますが合意が行われておりまして、例えば警察力を使いまして迅速に現場保存するという面から申しますと、事故調査
委員会側から見ても捜査が非常に迅速に行われることは好ましいであろう、それから証拠物
関係の保管につきましては、やはり証拠物を厳格に保管することになれておる捜査官側がやるのが好ましいであろうということの合意がありましたし、他方、パイロットとかあるいは事故に
関係を有する人たちからの事情聴取あるいは現場における
状況の検証、検分と申しますか、そういうものにつきましては、事故調査
委員会と実際に捜査をいたします警察との間で事前にいろいろ御相談を申し上げて、双方に支障のないように調査なり捜査なりを進めていくということが五十年の八月一日付で協定されておるわけでございます。もちろんこれは警察庁のおやりになったことで法務省がとやかく言うことではございませんが、法務、検察もそれにのっとって、事故調査
委員会の調査も十分に尊重しながら証拠物の保全あるいは証拠の収集をやってきておるわけでございます。
したがいまして、現状認識といたしましては、私
ども、捜査が事故調査
委員会の事故の解明の支障になっているとは全く思っておりません。逆に持ちつ持たれつで、例えば専門的
分野におきます事故原因の解明につきましては、事故調査
委員会の調査結果を十分尊重させていただいておる、逆にそうした現場保存等々につきましては、捜査官の捜査活動の結果を事故調査
委員会で御活用いただいておる、こういうことでございます。
なお、
委員が
先ほど申されました刑法の体系の問題、つまり事故の場合に刑罰の方はまずおいておいて、事故調査
委員会等々で事故の解明をして重大な過失または故意のある場合だけ刑事処罰の方へ持っていったらどうか、そういう法制度があるじゃないかというお話が今ございましたので、その点について申し上げますが、これは一般論として申し上げますと、御承知のように英米法
関係は過失は原則として罰しないことに昔からなっておるわけでございまして、その法体系をとっております国からいいますと、今のような場合、刑事罰よりはむしろ事故調査
委員会等々でいろいろな解明をいたしまして、例えば行政罰なり民事賠償等で解決する、そして将来の施策にその事故の解明結果を活用するということになっております。
他方、
先ほどのイタリアとギリシャとおっしゃいましたか、二つの国をお挙げになりましたが、大陸法系、つまりイタリアとギリシャを含む例えばフランスとかドイツ等では、やはり業務上過失致死傷事件というものは罰せられるわけでございまして、
我が国とそう大差はないわけでございます。ただし、
航空機事故の場合ほとんどその乗員が不幸にして死亡されるというようなこともございまして、刑事訴追されているケースがあるかとおっしゃられれば、なかなかこれは私も全部判例等を見ているわけではございません、わかりませんけれ
ども、刑法の規定からいえば、フランスもドイツも一応業務上過失致死傷という規定を持っております。
そこで、なお誤解をなさいませんように希望して付言いたしますが、英米法でも
先ほどおっしゃいました重大な過失、これはどういうことかといいますと、例えば結果発生の認識のあるような状態のもとでミスを犯しまして、やはり果たせるかな結果を発生させたというような、我々の国でいいますと未必の故意なり認識ある過失と言っておりますが、そういう事例はやはり過失でも英米法では処罰されるわけでございます。
さて、立法問題として業務上過失致死傷を余り問題にしない方がいいじゃないか、例えば
航空機事故なり何なりに、こういう御意向かと思いますが、例えば鉱山の爆発事故とか、それからホテルの大規模火災とか、それから工場の大規模災害あるいは公害罪等の
関係も見ていただきますとおわかりのとおり、結果が非常に悲惨でございまして、その場合に行政的な措置だけで足るのかどうか。やはり当該行為者がいて、過失が大きければ、例えば業務上の過失があれば、やはり刑事罰を科することを国民の皆さん、現段階では欲しておられるのではないかと思います。したがいまして、遠い将来のことをとやかく言ってもなんでございますが、
一つの法制度として英米法にそういうものがあって、それが
日本にとってプラスになるのかどうかということは、一般論として常に我々としても検討しておるところでございます。
ただ、伝え聞くところによりますと、今回の事故につきましても、被害者の遺族の方々が近い将来告訴されるというようなことも伝え聞いておりますので、やはり国民の皆様から言えば、現在大規模災害について刑事処罰の対象から外せというような御意向はないように私としては伺っておるわけでございます。