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山科参考人 日本玩具協会の
会長を務めております
山科でございます。
お話の当初に当たりまして、皆さんのお子さんや皆さんにもなじみの深いおもちゃのことでございますので、少しおもちゃ
業界の現況をお話ししてみたいと思います。
私
どもの登録いたしております事業者数は
全国に五千五百社ございます。
従業員数は四万三千名、主要産地は東京、大阪、名古屋、一部静岡あるいは栃木というように散在をしておりまして、そのうちの六〇%は東京並びに東京の近在の
生産でございます。
生産額は、多種多様でございますが約四千五百億円、
輸出額は一千五百億円でございます。これは
生産の約三〇%に匹敵するわけでございます。
ただいま御先輩各氏から
円高におけるところのいろいろな
実情のお話がございましたので、私
どもは一番私
どもが打撃を受けておりますアメリカの
実情から少しばかりお話を申し上げ、御理解を得たいと思います。
従来、今から約十五年ぐらい前までは、私
どもはアメリカや欧米の先進国からいろいろ玩具を見習いまして、それに私
ども自身の創造力を付加をいたしまして、そして
日本の玩具が大変世界の寵児として
輸出されたわけでございますが、その後御
承知のように
日本をめぐる近隣三国が
日本以上に実力をつけてまいりまして、現在は韓国と台湾と香港で
日本の約四倍以上の実績を持って、一番の
輸出国であるアメリカへ
輸出しているわけでございます。そして、アメリカは全体の需要総額の約八〇%近くまでは東洋に
生産拠点を依存をしておるわけでございます。言葉をかえて申し上げますならば、アメリカで売られているところの玩具並びにそれに類するものの八割までは、ほとんど東南アジアで
生産されていると言っても過言でないわけでございます。その中の
日本の占める割合は、年によっても若干の変動はございますが、七%から一割以内に抑えられているのが現在の
状況でございます。
そうして、このような
円高になる前にアメリカに大きな
産業構造の変化が出てまいりまして、アメリカではほとんど玩具を先ほど申し上げましたように
生産をしていないというふうな
実情でございます。将来とももうアメリカは
産業構造の変化から、今のような
円高・ドル安というようなことになりましても、失業者の
救済やあるいはまた輸入を抑制する、そういうような状態に今日なっていないというわけでございます。
そして、アメリカと我々が話し合いをやっておりますときに到達いたしましたのは、原点の発想はアメリカは大変すぐれている。しかし、それに付加価値をつけ、創造力をつけ、応用問題で
一つの玩具をつくり上げることは
日本の方がすぐれている。また、それを廉価で、しかも品質をよくつくるのは韓国、台湾、香港、加うるにマカオ、シンガポールというような東南アジアにその
生産拠点を移動しておる。言うならば、おのおのの国の長所を生かした国際分業というようなものを次第に進行していこうではないか、必然的にそういうような方向を認めておったや
さきに、この
円高の問題が出てきたわけでございます。そのために、私
どももいずれはというように覚悟はしておりましたけれ
ども、その
円高のテンポが余りにも急激でありまして、手の打ちようがないというのが現在の
実情でございます。
私が一番憂えておりますのは、先ほ
ども先輩各位からもいろいろ各地のお話ございましたが、いろいろな問題点もありますが、私
どもは長年、特にこの近年、
日本経済の異常な成長につれまして、多少の蓄えは皆ございます。一番今
業界の下請だとかあるいは部品
関連工場が困っておりますのは、新規の発注が全くない。言うならば、例年でありますならば、多小値段の方はきつくても、それに伴っていわゆる先物の予約があるわけでございますが、今年に関しましては、いわゆるバイヤーやあるいはOEMをやっております向こうのメーカー、あらゆるものがこの
円高がまだいくのではないか、このような不安定なときに発注はできないというようなことで、全く発注がないということが、非常に私
どもの
業界の仕事に携わっている人たちに夢や希望をなくし、やる気をなくしているというのが私は一番大きな問題でなかろうかな、このように考えているわけでございます。
そのために、私
どもはできるならば二百円程度まで戻してもらえば、私
どもも懸命な
努力を重ねることによっていわゆる
合理化をしていこうというようなことは指導もし、考えているわけでございます。もちろん、そのための運転資金の確保であるとか、あるいはまた
受注減はこのままでいきますと約半分ぐらいになるのではないかというふうに思っておりますので、操業の短縮、その他もろもろのための雇用調整給付というようなものはぜひとも
お願いをいたしたい、このように考えておるわけでございます。
それからまた、皆さんも御
承知のように、玩具はいつも新しい夢とロマンを与えるというようなことで、新しい商品を次々と改良をしてまたつくっておるわけでございますので、新製品の
開発ということは世界の
業界をリードするというために大変大切なことでございまして、
業界挙げでそのような方向へ行こうということをやっているわけでございますが、たまたま今回のようなことがありますと、米国と同じように
産業構造の空洞化とでも申しましょうか、もう
日本ではおもちゃはできないというような方向へも傾斜していくことを大変苦慮しているわけでございます。
したがいまして、私
どもはぜひ諸
先生方に
お願いをいたしたいと思いますので、何とぞ二百円まで引き戻されるようにひとつ御配慮願えぬだろうか。それから、今のようなことでは、アメリカ
政府の高官がまだ
円高になるのではなかろうかと言ったようなことからとまっておりますので、どうか現段階での閣僚その他の
方々の御発言は、
円高を誘導するようなことはもうやめていただけないだろうか。この上追い打ちをかけられるようでは、まことに為政者として惻隠の情に欠けるものがあるのではなかろうかと私は思う次第でございます。しかも、いわゆる対米感情がよくなるのならいいのですが、むしろ逆に悪くいっているのではなかろうかと私は考えております。
それから中長期的な
措置といたしましては、貿易摩擦解消のために輸入
促進ということについての予算
措置を講じていただきたい。私は昨年年末とことしと、先般約半月前にアメリカへ行ってまいりましたが、ジェトロでも、
政府の皆さんは、とにかく輸入なくして
輸出なしというぐらいに、今までとは急角度に変わった、輸入をしろということを強く言っておられます。私
どももそのような国策に準じて、できるならばぜひ輸入をいたしたいということは考えておりますが、これに関してはかけ声だけ、あるいはまた総理が一人百ドル買えというような呼びかけだけでは決してこの問題は解決しないのではなかろうかな、私はこういうように考えるわけでございます。
したがいまして、輸入も
輸出もいわゆる国際協調というようなことから相並行してやる必要があるのではないか。私
どもは小さな
業界ではございますが、米国玩具の輸入
促進につきまして、輸入は単に
政府間の、
先生方だけの仕事ではない、我々
業界もまた個人の
企業も応分な負担をすることは当然だというようなことで、業者間の輸入協定というようなことを、一応法律的な拘束はありませんが、いわゆる紳士間で守っていこうじゃないかというようなことを契約をしてきたわけでございますが、これもちょっと逆目に出まして、言うならば、
輸出をするのに向こうの業者から文句が出なければ、問題がなければということのために、向こうの業者もある程度輸入をしてほしいということを我々に勧告されたわけでございます。ところが、今回の急速な
円高誘導のために肝心かなめの
輸出をするところか、どうしても
輸出なくしてはやはり
日本の国、殊に我々のような
資源のない加工付加価値に依存をしておる
業界は絶対なのでございまして、そういう面につきましても私
どもは今後とも
努力していきたいと考えておるわけでございます。
最後に、新しい
産業構造の変化が
円高によって行われていくであろう、そういうときに、私
ども中小企業に特にこれから入ってくる青年や若い人たちのために、新しい
産業の精神的なビジョンを与えていただけないだろうかということでございます。私
どもは年でございますので古くさいかもしれませんが、戦争前は八紘一宇であるとか海外雄飛、殖産
振興というような
一つの立派な目標を国全体が孜々に与えてくれました。しかし今私
どもは、片方では
経済的や仕事の方では困っておりますが、将来に対して明るい展望を少しでも、我々の仕事に従事する人たちに心のともしびをつけてやるのが私
ども業界人の仕事ではなかろうかというわけでございます。
したがいまして、どうか若者に夢とロマンを与えるような新しい
日本の
産業ビジョンを言葉で、また
政府が率先してやっていただくことを心から
お願いする次第でございます。
どうも大変ありがとうございました。(
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