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渡辺国務
大臣 お答えをいたします。
外需依存の体質から脱却すると言うけれ
ども具体的にどうするのだ。これは、ややもすると今までは輸出第一主義、資源のない
日本としては外貨がなくては何もできない、石油も仕入れられないという発想がありまして、そして輸出輸出ということで、池田さんが高度
経済成長のころ世界じゅうを歩いて、トランジスタの行商人なんて悪口を言われたこともあったわけですから、確かに、資源がないから輸出で稼いで、それで国内の必要な材料を買おうという体質にあったことは間違いありません。しかしながら、輸出だけで、しかもこのようにアンバランスになりますと、いろいろな非難を受けてまいります。
私は
基本的には、
アメリカと
日本の場合におきましても、インバランスというものは二国間だけで問題にするのはおかしいのじゃないかという持論をもともと持っているんです。全体としてバランスがとれればいいのじゃないか。
アメリカと
日本では、確かに私の方は黒字、向こうは
赤字。しかし
日本とオーストラリアを見ると、
日本は
赤字、オーストラリアは黒字。オーストラリアと
アメリカの間を見ると、
アメリカは黒字でオーストラリアは
赤字、こうなっているわけですね。そういうような場合に、それじゃ
アメリカの自動車をオーストラリアは買わないで
日本の自動車を買え、そういうふうにお互いに調整をし合ったら貿易は拡大しないわけです。
日本はインドネシアに対しても
赤字だし、サウジに対しても大
赤字であるけれ
ども、必要だから石油を買っておるのであって、これは仕方がないことなんですね。同じことが
アメリカだって言えるじゃないかという議論が
一つあるのです。ところが、
アメリカは全体にしてももう大
赤字、対日貿易でも大
赤字、こうなっているものですから余計騒ぎが出ている。
私としては、
基本的には、多少のことは構いませんが、貿易はグロスで大体バランスがとれればいいのじゃないかという考えをもともと持っております。そうなりますと、やはり輸出増進というだけでなくて、バランスをとらせる
ためには
日本の輸入ももっとしなければならない。輸入をする
ためには、必要のないものは輸入しないわけですから、必要なものを生みたす
ためには内需の拡大ももちろん必要ですよ。それから、納期がおくれたりなんかされたのでは外国から買えといってもなかなか買わぬわけですね。
日本のようにきちっと納期を守ってやる
企業はいいんですね。だから、
日本の
企業が投資をして、その投資先から
日本が購入するというようなことは必要である。だから部品なりなんなり輸入する、そういうようなことなど抽象的に外需脱却の方法として例示的に今挙げたわけですが、そういうことを言ったつもりなわけであります。
それから今
先生は、貿易全体のバランスがとれても個別案件で非常にインバランスになれば騒ぎが残るのじゃないかということをおっしゃいました。これは確かにあるのですね。
日本と
アメリカが仮に貿易バランスがとれたとしても、
アメリカの鉄鋼業がつぶれてなくなるということでは、向こうだって
雇用問題があるわけですから、鉄鋼に勤めていた人をどさっと今度は電機の方へ回すといったら、実際はそう簡単にいかない。ですから、これにつきましてはやはりある
程度の配慮をしなければならぬし、
特定な品目が
特定な国に一時的に集中豪雨的に輸出されるという場合は、今
先生が御
指摘になったように、全体のバランスがよくても
特定な
業種が非常に短時間で大打撃を受けるということは、これは確かに摩擦が起きますよ。
したがって、これらについては貿易の自由の原則からすればちょっと例外的になるが、全体を保護主義にしない
ために、やむを得ず鉄鋼の自主規制をやったりあるいは繊維の規制をやったりする過去の実績もあるし、自動車についてもかつて二、三年前までは全く似たようなことで自主規制をやったということがございます。したがって、これらは個別個別の案件についてそのときの
状況で判断をしていくことが応急策として必要である、そう思っております。
それから国際分業の問題で、弱いものはみんなやめちゃって外国から買えばいいじゃないかということにまですぐには実際は発展しないのですね。ただ私の言っていることは、
日本がGNPの一割もの大きな
経済国家になってきた以上は、やはり国際的責任がある。
日本から投資をし
技術を移転し製品をつくらせて安くていいものができたときに、その品物を
日本が買わないというようなことを言えば、これはうまくいくわけないですね。したがって、国内にあってもやはり安くていいものは、必要なものは妨害しないで入れてやるということが必要だろう。鉄なんかももう現にそうなっちゃっているわけですね。韓国に設備をつくってやって
技術を移転して、それでつくったものが、安いものが現にどんどん
日本へも入ってきている。しかし、また
日本でなければできないものは逆に輸出しているというようなことがありますから、これはやはり
一つの国際分業になっておりますし、繊維なんかも現にそうなっていますね。シンガポールとか香港とかに
日本の
技術が行ってかなりのものを向こうで布にして
日本に入れて
日本でプリントして世界に輸出しておる。これはもう現にそうなっていますよ。ですから、そういうようなことを今後はもっと広げていかざるを得ない。
それでは既存の業者はどうするんだねということになりますが、負けないように頑張ってくださいということが
一つですよ。しかしどうしても負けるという場合には、時代に応じて転
廃業というのは避けられない、これは仕方がないのじゃないか、そう私は思っておるわけです。例えばそんなことは国内だって言えるわけでして、銀座の真ん中でともかく昔から呉服屋をやっておる。私は昔から呉服屋なんだから呉服以外は一切扱いません。ところが洋服着る人が多くなっちゃって、そこで洋服屋やれば売れるかも知らぬけれ
ども呉服屋だけじゃ売れない。しかし昔からやっておるのだから絶対に洋服屋やらぬ、こう頑張られちゃっても何とも困るのですね、実際は。だからやはりそれは時代に合わせて職業をかえていくということは、自由
経済では生き延びる
ためには仕方がないことである。しかし、極端にやれば失業問題も出まずし社会的混乱がありますから、
政府は分業調整、
業種の産業調整というものをやる中でも、軟着陸できるように、自然と衰退産業はだんだんなくなって隆昌産業の方に切りかえていく。これは
日本は長生きする
ためには仕方ないんじゃないか。どんなことであっても時代が変わってくるわけですから、需要がなくなったらだめなわけですから。
問題は、
失業者が出ては困るわけですよ。だからそれには職業訓練をするとか、いろんな面倒を見るとかして
失業者を出さない。
雇用の場を確保しながら、要するにそこで職種
転換が行われ、民族移動が行われていく。長い目で見ればそれによってもっと高賃金がもらえる。もうだめなところでつぶれる会社にいつまでもおって退職金ももらえなくなってしまうよりも、別なところへ移転して今まで以上に月給が上がったり退職金ももらえるならその方がいいですね、なれない
仕事であっても。だからそういうところをうまく
転換をさしていくということも中長期的には常に考えていかなければならない問題だということを言おうとしておるわけであります。
それから
技術開発の問題については、
技術を開発してどんどん輸出増強につながらないか、それはなるかもしれませんよ。しかしながら、我々は今まで持っている
技術を移転するわけですから、彼らはそれによってつくって
日本に輸出するわけですから、全部買ったのではこっちが参ってしまいますからね。買うものは買うけれ
ども、さらに一歩進んだ
技術を開発をして、
日本は付加価値の高いもので生きていかなければならぬ。これをやめるわけにいかない。ですから常に先に先に行くということが必要で、付加価値の高いものをつくって、労働時間も少なくして、高齢化社会になりますから退職の年限も長くなりますし、ですからどうしたって労働時間は少なくしなければならぬし、少なくして今度賃金切り下げては困るわけですから、やはりもうかるようにしてやらなければいかぬわけです。ですからこれは難しいですよ。難しいけれ
ども、あえてその難しいことに取り組んでいかなければだめだという発想でそのようなことを書いてみたわけでございます。ひとつ十分御指導と御批判をお願いをいたしたいと存じます。