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1986-04-02 第104回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二日(水曜日)     午後一時一分開議 出席委員   委員長 山崎  拓君    理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君    理事 高橋 辰夫君 理事 浜田卓二郎君    理事 池端 清一君 理事 村山 富市君    理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君       古賀  誠君    自見庄三郎君       戸井田三郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜野  剛君    上田  哲君       金子 みつ君    河野  正君       竹村 泰子君    永井 孝信君       森井 忠良君    沼川 洋一君       森本 晃司君    伊藤 昌弘君       塚田 延充君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 林  ゆう君  出席政府委員         労働省労政局長 加藤  孝君         労働省労働基準         局長      小粥 義朗君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯課長  石瀬  博君         労働大臣官房政         策調査部長   小野 進一君         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道職         員局次長    葛西 敬之君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ————————————— 委員の異動 四月二日  辞任         補欠選任   網岡  雄君     上田  哲君 同日  辞任         補欠選任   上田  哲君     網岡  雄君     ————————————— 三月二十九日  老人医療費患者負担増大反対等に関する請願  (稲葉誠一紹介)(第二〇五六号)  同(坂口力紹介)(第二二〇九号)  国立療養所松戸病院国立柏病院統廃合反対  等に関する請願新村勝雄紹介)(第二〇五  七号)  老人保健法等の一部を改正する法律案に関する  請願田中直紀紹介)(第二〇五八号)  同(藤井勝志紹介)(第二一二七号)  同(村岡兼造君紹介)(第二一二八号)  同(湯川宏紹介)(第二一二九号)  同(橋本龍太郎紹介)(第二二一二号)  同(町村信孝紹介)(第二二一三号)  同(山下元利紹介)(第二二一四号)  公共事業による失業対策推進等に関する請願  (梅田勝紹介)(第二〇五九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二〇六〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一三一号)  同(瀬崎博義紹介)(第二一三二号)  同(東中光雄紹介)(第二一三三号)  同(簑輪幸代紹介)(第二一三四号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二二一六号)  同(村山富市紹介)(第二二一七号)  国立久留米病院存続等に関する請願細谷治  嘉君紹介)(第二〇六一号)   同(細谷治嘉紹介)(第二一三五号)  同(細谷治嘉紹介)(第二二一八号)  看護婦夜勤日数制限等に関する請願竹村泰  子君紹介)(第二〇六二号)  同(村山富市紹介)(第二二一九号)  大分県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願阿部喜男紹介)(第二〇六三  号)  同(阿部喜男紹介)(第二一三六号)  栃木県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願武藤山治紹介)(第二〇六四号)  同(武藤山治紹介)(第二一三七号)  長崎県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願石橋政嗣君紹介)(第二〇六五号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二一三八号)  沖縄県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願瀬長亀次郎紹介)(第二〇六六  号)  鹿児島県の国立病院療養所統廃合反対等に  関する請願上西和郎紹介)(第二〇六七  号)  同(上西和郎紹介)(第二一三九号)  同(川崎寛治紹介)(第二一四〇号)  同(上西和郎紹介)(第二二二一号)  向外一件(川崎寛治紹介)(第二二二二号)  同(村山喜一紹介)(第二二二三号)  宮崎県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願兒玉末男紹介)(第二〇六八号)  同(松浦利尚君紹介)(第二〇六九号)  同(松浦利尚君紹介)(第二一四二号)  鳥取県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願武部文紹介)(第二〇七〇号)  同(武部文紹介)(第二一四三号)  同(武部文紹介)(第二二二五号)  愛媛県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願田中恒利紹介)(第二〇七一号)  同(藤田高敏紹介)(第二一四四号)  国立大牟田病院存続等に関する請願細谷治  嘉君紹介)(第二〇七二号)  同(細谷治嘉紹介)(第二一四五号)  同(細谷治嘉紹介)(第二二二六号)  静岡県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願元信堯君紹介)(第二〇七三号)  国立花巻温泉病院廃止反対等に関する請願  (小川仁一紹介)(第二〇七四号)  同(小川仁一紹介)(第二一四七号)  同(菅原喜重郎紹介)(第二一四八号)  同(小川仁一紹介)(第二二二八号)  香川県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願前川旦紹介)(第二〇七五号)  同外一件(前川旦紹介)(第二一四九号)  同外一件(前川旦紹介)(第二二二九号)  国立療養所長良病院国立療養所岐阜病院の統  廃合反対等に関する請願簑輪幸代紹介)  (第二一二一号)  国立療養所静澄病院国立津病院統廃合反対  等に関する請願外二件(中井洽紹介)(第二  一二二号)  同(坂口力紹介)(第二二一〇号)  老人保健法改悪反対等に関する諭願小沢和秋  君紹介)(第二一二三号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一二四号)  同(高沢寅男紹介)(第二一二五号)  同(山花貞夫紹介)(第二一二六号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二二一一号)  医療保険制度改善に関する請願岩垂寿喜男君  紹介)(第二一三〇号)  国立療養所霧島・阿久根・志布志病院統廃合  反対等に関する請願川崎寛治紹介)(第  二一  四一号)  同(村山喜一紹介)(第二二二四号)  カイロプラクティック等立法化阻止に関する  請願戸井田三郎紹介)(第二一四六号)  老人保健法改善等に関する請願(有島重武岩沼  介)(第二二一五号)  福岡県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願河野正紹介)(第二二二〇号)  国立療養所秋田病院移譲反対等に関する請願  (川俣健二郎紹介)(第二二二七号) 四月一日  老人保健法改悪反対等に関する請願上野建一  君紹介)(第二二六一号)  同(沢田広紹介)(第二二六二号)  同(池端清一紹介)(第二三五九号)  同(森井忠良紹介)(第二四一一号)  老人保健法等の一部を改正する法律案に関する  請願高村正彦君紹介)(第二二六三号)  同(玉置和郎紹介)(第二二六四号)  同(山崎武三郎紹介)(第二二六五号)  同(戸井田三郎紹介)(第二三六〇号)  同(宇野宗佑紹介)(第二四一二号)  同(熊川次男紹介)(第二四一三号)  同(葉梨信行紹介)(第二四一四号)  国立久留米病院存続等に関する請願細谷治  嘉君紹介)(第二二六六号)  同(細谷治嘉紹介)(第二四一六号)  看護婦夜勤日数制限等に関する請願外一件  (村山富市紹介)(第二二六七号)  同(森井忠良紹介)(第二四一七号)  鹿児島県の国立病院療養所統廃合反対等に  関する請願川崎寛治紹介)(第二二六八  号)  同(村山喜一紹介)(第二二六九号)  同(川崎寛治紹介)(第二三六三号)  同(村山喜一紹介)(第二三六四号)  同(村山喜一紹介)(第二四二一号)  鳥取県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願武部文紹介)(第二二七〇号)  国立大牟田病院存続等に関する請願細谷治  嘉君紹介)(第二二七一号)  同(細谷治嘉紹介)(第二三六五号)  同(細谷治嘉紹介)(第二四二四号)  国立療養所秋田病院移譲反対等に関する請願  (川俣健二郎紹介)(第二二七二号)  香川県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願前川旦紹介)(第二二七三号)  同(前川旦紹介)(第二三六七号)  同(前川旦紹介)(第二四二六号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (浦井洋紹介)(第二三四三号)  同(小沢和秋紹介)(第二三四四号)  同(工藤晃紹介)(第二三四五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二三四六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二三四七号)  同(中島武敏紹介)(第二三四八号)  同(林百郎君紹介)(第二三四九号)  同(東中光雄紹介)(第二三五〇号)  同(不破哲三紹介)(第二三五一号)  同(松本善明紹介)(第二三五二号)  同(三浦久紹介)(第二三五三号)  同(山原健二郎紹介)(第二三五四号)  国立腎センター設立に関する請願近江巳記夫  君紹介)(第二三五五号)  同(河上民雄紹介)(第二三五六号)  同(長谷川峻紹介)(第二三五七号)  同(春田重昭紹介)(第二三五八号)  同(宮下創平紹介)(第二四二七号)  公共事業による失業対策推進等に関する請願  (近江巳記夫紹介)(第二三六一号)  同(野間友一紹介)(第二四一五号)  青森県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願関晴正紹介)(第二三六二号)  同(関晴正紹介)(第二四二〇号)  国立療養所東高知病院存続等に関する請願  (平石磨作太郎紹介)(第二三六六号)  老人保健法医療費拠出金加入者按(あん)  分率に関する請願木下敬之助紹介)(第二  四〇八号)  同(小平忠紹介)(第二四〇九号)  腎疾患総合対策確立に関する請願大原亨君紹  介)(第二四一〇号)  福岡県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願中西績介紹介)(第二四一八号)  同(宮田早苗紹介)(第二四一九号)  広島県の国立病院療養所統廃合反対等に関  する請願大原亨紹介)(第二四二二号)  同(森井忠良紹介)(第二四二三号)  カイロプラクティック等立法化阻止に関する  請願佐々木良作紹介)(第二四二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
  3. 永井孝信

    永井委員 まず初めに大臣にお聞きをいたしますが、毎年のことでございますけれども、いわゆる労働者賃上げ中心とする春闘の山場と言われている時期が目の前に迫ってまいりました。そういうことから、この春闘問題についてまず初めに御質問申し上げていきたいと思うのです。  まず賃金問題について初めに質問していきたいと思うのでありますが、五月に東京サミットが開かれるわけです。その日程も既に発表されているわけでありますが、そのサミットの最大の問題というのは世界経済成長をいかに確保するかということだと思うのです。日本アメリカあるいは日本とヨーロッパの貿易摩擦問題がずっと継続してきているのでありますが、我が国のその貿易摩擦に対する対応というのは世界から注目をされています。アメリカでは日本輸出増に対しまして、かつての忌まわしい思い出でありますが、真珠湾問題を持ち出されてみたり、あるいはいわゆる文化的な摩擦という問題にまで発展をしてきているわけでありまして、日本内需拡大策というのは世界経済発展貿易摩擦の解決というためには今強く世界から求められてきている、私はこういう認識を持っているのでありますが、これについて大臣はどのような御認識を持っていらっしゃるが、まずお伺いしたいと思います。
  4. 林ゆう

    林国務大臣 ことしのサミットが間近に迫っております。そしてまた、その前に春闘も大きな山を近く迎えようといたしております。そういった認識のもとで、私どもといたしましては、今後日本の中でどうしていくかということを考えていかなければならない大変な時期に来ていると思います。  先生御指摘のとおり、賃上げあるいはまたこれに伴いますところの時間の短縮といったようなものがいろいろと技術革新の中での適当な利益の配分につながり、それがまた内需拡大にもつながるという認識のもとにこういったことが今後大いに議論さ丸ていかなければならない、このように考えている次第でございます。
  5. 永井孝信

    永井委員 基本的な認識は私も大臣もおおむね変わっていないと思うのであります。  さてそこで、三月二十日にフランスのパリで開かれましたTUACの第七十六回総会では東京サミットに向けた声明の中でこのように述べているわけであります。ちょっと読み上げてみますと、「日本政府政策は、まだ国内需要拡大に合わせるように調整されてはいないのである。一九八六年度予算では、防衛費だけが伸びる一方で、雇用福祉関係予算は削減され、減税は見送られたのである。日本経営者団体賃上げ抑制で厳しい姿勢を見せており、企業国際競争力の維持を理由に労働時間の短縮に反対しているのである。日本政府実質賃金引き上げ労働時間の短縮大幅減税社会資本蓄積のための措置を講じることは、日本経済世界経済双方利益にかなうことなのである。」このように声明の中で述べているわけです。大変厳しい指摘TUACは第七十六回総会で行っているわけであります。  あるいは、これはおとといの新聞でありますが、労働サミット共同声明案が確定をしたということが報道されています。これはTUAC声明を受けてのことでありますけれども、三十日に一応共同声明案がまとまった、このように新聞で触れているわけであります。その中でどういうことを言っているかというと「必要な経済成長を実現するため日欧国内需要拡大必要性を強調」している。そして労働時間短縮大幅減税社会資本蓄積のための措置実質賃金引き上げ日本経済世界経済双方利益にかなうと強く主張しているわけです。これは四月下旬に東京労働サミットとして開かれるわけでありますが、こういう世界各国日本を見る視点というものについてどのように受けとめていらっしゃるか、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  6. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 この五月のサミットに先立ちまして労働サミット東京で開かれる、そしてこのサミットの場に参加国労働組合意見を反映させるということでサミット構成国労働組合指導者などが一堂に会していろいろ討議をされる、こういうことが昭和五十三年以降労働組合の自主的なものとして開催をされてきておるわけでございます。そこで行われます討議がこういう欧米先進諸国の民主的な労働組合の代表的な意見として傾聴に値するものである、私どももこういう認識を持っておるわけでございまして、こういった御意見を参考にしながら、今後の労働政策の展開に反映していくべきものであろう、こんな認識を持っておるわけでございます。  しかしながら、それぞれ日本の国と実情についてのいろいろな誤解なりあるいはまた十分説明されていない点もあると思いますので、そういった点についても我々は十分必要な説明もしながら、そういう先進諸国の理解も得ていかなければならぬだろう、こんなふうに考えておるところでございます。
  7. 永井孝信

    永井委員 労働サミットが開かれるに当たってのそういう世界労働界の意思というものが傾聴に値するという御発言であります。私どもは、またそうでなくては日本の国も貿易摩擦の解消について具体的な施策を講ずることができなくなるというふうに認識をいたしておりますので、そういうことを前提に受けまして、それでは内需拡大のために一体どうすればいいのかという問題が具体的な政策として浮かび上がってこなくてはいけないと思うのです。いわゆる緊縮型の経済社会政策というものの基調を私は転換させる必要があると思うのであります。  しかし、この問題は既に予算委員会などで多くの論議がされておるわけでありますが、それを繰り返しては言いませんけれども中曽根総理からも内需拡大が極めて重要であるとの態度表明がなされているわけであります。国内景気を財政で引っ張ることが今現実にできていない状況の中でありますから、内需拡大を実現しようとすればGNPの六〇%を占めると言われている雇用者所得が着実に伸びなくては私は内需拡大型の成長というものは望めないと思うのです。雇用者所得の着実な伸びのためには、だからこそ思い切った賃金改善と大幅な所得税減税などがセットで行われなくてはならないと思うのです。  私どもよく平たく物を言い過ぎる方でありますが、これを平たく言えば景気をよくするために労働者賃金を思い切って上げてやる、思い切って大幅減税を行う。そうすると、家庭の中では少しは余裕が出てくるのだから、お父さんの服一枚でも買いかえてみようかとか子供のものについてもひとつ買ってやろうか、こういうことになってまいりますね。だから、商品がどんどん売れていく。商品が売れていくということになれば、商品をつくる企業生産拡大しないと追いつかないものですから、どんどん生産を上げていく。生産を上げるためには労働者雇用しなくてはいけない、雇用拡大になっていく。だから、完全失業者が減少してくる。こういう回りが結果として内需拡大具体化になっていくと思うのです。だから、そういう立場でいうと、所得税減税と思い切った賃金引き上げは不可欠な要素だと私は思うのであります。  これについて、この前、三月二十五日の日経新聞でありますが、労働大臣がインタビューに応じていらっしゃいます。その記事の中にも、そのことを理解された立場大臣は述べていらっしゃるわけですね。私は、大臣として非常にすばらしいことを言っていらっしゃると思うのであります。大臣が言われたことを私が紹介するのもちょっとなにでありますが、新聞記事を引用させていただきますと、「内需拡大のためには、経済発展成果賃金などに適切に配分することが望ましい。」このように言われているわけであります。そういう趣旨のことがずっと連なってまいりまして、もちろん一般の企業ではなくて公務員の場合のことについても触れられていらっしゃるわけでありますが、そのことでもう一度この委員会大臣から直接所見というものをお伺いしておきたいと思うわけであります。
  8. 林ゆう

    林国務大臣 内需拡大のために賃金減税労働時間の短縮といったようなことを積み重ねていくのが必要だと考えるけれども、どう思うか、こういった御質問だと思いますが、内需中心として経済拡大を図るということは現下の重要な課題でありまして、政府といたしましても、その当面の対策について検討が進められているところでございます。また、技術革新など経済発展成果を中長期的に見て賃金労働時間短縮へ適切に配分するということは、勤労者福祉あるいはまた生活の向上、そういったものにも大きな役割を示すというふうに思いますし、内需中心の均衡のとれた経済成長を達成する上で望ましいというふうには思っております。  また、所得減税のことについてもお話がございましたが、これは今税制調査会で全般的に税制改革をどうするかということの議論が進められているところでございます。  また、勤労者賃金はもっと積極的に対処しなければいけぬじゃないか、こういった御質問でございましたけれども賃金の問題は、再三繰り返して申し上げておりますように労使間の良識ある話し合い賃金が決定をされるということが大原則でございまして、払えるところはできるだけ豊かにしていただきたい、総体としてこういったことが内需拡大に結びつくということを私どもとしては期待いたしておるわけでございます。  具体的な賃上げにつきましては、先ほども申し上げましたようにそれぞれの労使が自主的に良識ある話し合いをして、それを通じて適切に解決されますことを私どもといたしましては期待いたしておるような次第でございます。
  9. 永井孝信

    永井委員 今いみじくも大臣が答えられましたように、内需拡大のためには、あるいは雇用を確保していくためには、賃金の問題とか減税の問題ということとはまた別に、時間短縮も非常に重要な問題を持っている、今大臣もそのようなことを言われたわけでありますが、私もそう思うわけであります。したがって、余暇拡大といいますか余暇活動のための社会資本の形成というものも誘発をするように内需拡大政策の中では十分な検討と努力が必要だと私は思うのです。加えて住宅投資の強化なども含めて、個人消費そのものが着実に浸透していくようにこれはぜひともやり遂げねばならないと思うのであります。  とりわけ、これもおとといの新聞でありますが、労働省調査で去年の製造業平均賃金伸び率が発表されました。三十九年以来最低の三・二%だということがこの中に書かれているわけであります。労働省はそういうことを直接調査されているわけでありますから、内需拡大のために今言われたように賃金引き上げを初めとして何が重要なのかということはもう十分認識はされているわけですね。それをどうやって具体化するかということでありますから、ぜひひとつその具体化の問題についてこれからも積極的な対応を求めておきたいと思うのであります。  さて、その次に具体的な中身に入っていくわけでありますが、日本消費経済研究所というのがございます。この経済研究所が三月二十七日に四月から九月にわたる今年度上期の消費動向予測というものを発表いたしました。これはあくまで予測でありますけれども、これによりますと、景気の先行きに対する不安が消費意欲を低下させることになるというふうに分析しているわけであります。あるいは予測指数も、昨年秋以降連続して低迷しているということもこの中で触れているわけであります。  また、三月二十八日総務庁が六十年の貯蓄動向調査(速報)というものを発表しているわけであります。これは生活防衛的な意識から貯蓄に回る割合がふえていると分析しているのでありますが、片方で、春闘共闘日本生活協同組合連合会の家計調査を見ますと、貯金は実質額で前年度より大きく減っているということが具体的な調査指摘をされているわけであります。調査のなされ方にもよるのでありましょうけれども生活防衛意識が強く前面に出てきていることだけは間違いない。それはどういうことかというと、まず今触れましたように、所得税減税がないために実質増税になっているということです。  これは大蔵省が国会に提出いたしました六十一年度の税収についての説明資料によりましても、六十一年度に賃金が五%上がったと想定をしました場合、サラリーマンの所得税が平均して一万六千円ふえるというふうに出ているわけであります。だから、そういう問題が生活防衛という関係前面に出てまいりまして、いわゆる内需拡大型につながるような消費活動に大きなブレーキになっているということを私は指摘をしておきたいと思うのであります。  あるいは中高年齢者は非常に高い教育費を負担している、こういうことが五十九年度の文部省による学生生活調査で明らかにされているわけであります、これも新聞に報道されたわけでありますが、私立に入学して東京で勉強している子供に対して平均的な親の仕送りは百五十万円に達している、こう言われているわけです。実際の必要経費は平均百七十九万円だというふうに文部省が調査の結果数字を出しているわけであります。これは大卒の初任給の一年間の所得に匹敵する金額なんですね。こういうことがまた消費活動に大きなブレーキになってくる。  あるいは住宅ローンの返済についても、住宅金融公庫の利用者調査というものがあるのですが、二月建ての住宅の購入者は平均して月七万一千四百円の支払いを続けている、あるいはマンションを買った人は月に七万七千九百円の支払いを進めている、こういうふうに言われているわけであります。これでは内需拡大になるわけがないではないか。  労働大臣として、こういう立場からも当面賃金改善問題について、国際的な貿易摩擦などの問題もあるわけでありますから、その責任を果たすために積極的な対処が私は必要だと思うのです。もちろん賃金引き上げに対する労使の交渉に直接介入はできないにしたって、労働省として一定の政策を持ってそれを誘導するということは当然なし得べきことだし、またなさねばならないことだと思うのでありますが、これについて大臣の所見を伺っておきたいと思うのであります。
  10. 林ゆう

    林国務大臣 最近の勤労者家計を見てみますと、可処分所得というものが着実に改善はされておりますけれども、実収入の伸びに比べますと低くなっております。これは実収入の伸びに比べまして非消費支出の伸びが大きいためでありまして、その中で教育費あるいは住宅ローンが可処分所得の中から支払われるものでありますので、これらの支出の増加がいわゆる可処分所得伸びに直接影響を与えるものではないとは思いますけれども、中期的に見まして勤労者の家計の余裕感に影響を与えている可能性は否定できないと思います。  労働省といたしましては、いわゆる賃金が決定をされますには労使の良識のある話し合いということが大原則でございます。払えるところはできるだけ豊かに払っていただきたい、そしてまた、総体として内需拡大にやはり結びつくということを私どもは大きな期待を持っているということでございますので、こういった労使の自主的な話し合いを通じまして適切に解決をされますことを期待を申し上げているところでございます。
  11. 永井孝信

    永井委員 大臣、重ねて聞きますが、労使の交渉に直接介入はできないことは、これはわかっているのです。しかし、労働行政というものはそれだから手をこまねいておっていいというものではないと思うのですね。だから大臣は、この日経新聞に書かれておりますように、大臣がそのインタビューに答えた中に、内需拡大のためには賃金には適切にこの成果を配分させなくてはいけない。払えるところはできるだけ豊かに支払うという方向で進むべきだということを大臣は言われているわけですね、この新聞記事によりますと。あるいは、この実質可処分所得がふえていないという国民の不満があることは知っている。不公平税制の是正も、だから重要だということも触れられているわけです。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  しかし、この春闘の山場を迎えて、今までは賃金相場を形成してきたと言われている鉄なんかの関係で言いますと、きょうは二日でありますけれども、きょうあたりが一つの大きな実質的な山場だと言われているのです。聞くところによると、定昇込みで三%の賃上げに乗るかどうかということが大変微妙な段階だということも、事実かどうかは知りませんけれども仄聞をしているわけです。ところが、そういう景気の動向もあって、鉄が非常に鉄冷えしているという関係もあるのでありましょうが、そういうところに低い賃金が決められていって、それに全体が引きずられていくということになってまいりますと、労働大臣が言われているように、内需拡大に必要ないわゆるこの成果賃金に適切に配分するということにはなっていかないと思うのですね。それを手をこまねいて見ているということはないのではないか、私はこう思うのです。  重ねてもう一つ、これにつけ加えて聞きますが、例えば大企業と中小零細企業賃金格差の問題がこれまたやかましく言われてまいりました。これはかなり縮まってきておったのでありますが、最近の調査によりますと、ここ二年間はむしろ格差が広がる傾向を示しているのです。これでは地域の経済の活力も生まれてこないし、そのことがひいては日本経済そのものを結果的に足を引っ張って底冷えさせてしまう、こういうことがありますので、大臣に重ねてお聞きして恐縮でありますが、積極的に賃金改善ができ得るような労働行政というものをすべきではないのか、これについてもう一言お答えいただきたいと思います。
  12. 林ゆう

    林国務大臣 いわゆる技術革新など経済発展成果を中長期的に見て賃金労働時間短縮に適切に配分するなどは、勤労者福祉あるいはまた生活の向上のみならず内需中心の均衡のとれた経済成長を達成する上で望ましいということは私もかねてから申し上げておるようなところでございますし、実質賃金の問題になりますと、これはあくまでも労使が自主的に決定をしていただく問題でございまして、労働省といたしましては、そういったことが行われるような環境づくりに私どもとしては努力をしてまいりたい、このように思う次第でございます。
  13. 永井孝信

    永井委員 その環境づくりを非常に私は重視をするわけでありますが、例えば経済界ですね、経団連とか日経連というこの経済界は、ことしも春闘の前段では、賃金を抑制しないと、賃金が余り上がり過ぎると競争力を失うとかいろいろなことを実は言っているわけであります。だから、そうではなくて、中曽根総理内需拡大が極めて重要だと言ってきているのでありますから、中曽根内閣の閣僚の一人として、とりわけ労働行政を預かる一人として、経済界に対しても、賃金の抑制だけを進めるべきではないというぐらいのことは、これは労使の交渉というよりも経済界に対してひとつそういう働きかけをするということがあっていいのではないか、私はそう思いますので、これについてはやりとりは時間がかかりますので、強く私はそういう労働行政のあり方の問題として指摘をしておきたいと思うのです。  そうでありませんと、生計調査でも明らかなように、働く人々の中でもとりわけ三十代、四十代のやりくりが極めて厳しい、衣服や娯楽費というものは完全な形で切り詰められているということも調査資料として発表された新聞報道もされているわけです。これでは、本来のアメリカやヨーロッパ諸国から指摘をされている貿易摩擦の解消という問題についても、幾ら東京サミット中曽根総理は立派なことを言おうとも、具体性を持っていないということでさらに指摘をされることは間違いないわけでありますから、ひとつ積極的な対応を私は求めておきたいと思います。  時間の関係で次の問題に入りますが、その次に今大臣も冒頭に触れられましたけれども、この内需拡大にこれまた大きな影響を及ぼすのでありますが、いわゆる労働時間の短縮問題について触れておきたいと思うわけであります。  労働時間は、国際比較によりますと、これは一九八三年度の統計でありますけれども、年間、日本は二千百五十二時間となっています。イタリアや西ドイツ、フランスなどに比べますと、実に年間で約五首時間ぐらい日本の方が労働時間が長いわけですね。率にいたしまして約三〇%も高くなっているわけであります。しかも時間外労働がこれらの国に比べて異常な高さを示している。このような実態は私は極めて好ましくないと思うのです。  所定内労働時間が幾ら縮まってきたとしても、縮まった分が時間外労働に転化されていくということになりますと、実質労働時間の短縮ということはできないわけでありますが。これについて基本的な大臣の考えを聞いておきたいと思います。
  14. 林ゆう

    林国務大臣 我が因の労働時間は欧米先進国に比べまして長目となっておることは承知をいたしておりますし、それは我が国の経済社会が終身雇用慣行下で生産調整を雇用よりは所定外労働で行う、こういったような傾向がございますので、所定外労働時間が長くなっているというような我が国特有の事情があるように思うわけでございます。  我が国では、好不況にかかわりなく恒常的な所定外労働が見られるというのも、これまた現実な事実でございます。このため、これら恒常的な所定外労働時間の短縮を図ることを含めた労働時間短縮にさらに一層努めてまいりたいと思うのでございます。
  15. 永井孝信

    永井委員 労働時間の短縮問題を今質問をしているわけでありますが、ちょっとこの質問を最前賃金関係で落としておりましたので、ちょっと逆戻りしますけれども賃金の問題、もう一つ質問をぜひしておきたいと思います。  民間賃金関係については最前私が触れたわけでありますが、政府が事実上雇用者である公共企業体の職員の賃金改善について私は伺っておきたいと思うわけであります。  そのまず第一は、六十一年度の予算では、昨年まではたとえわずかであっても一%の給与改善強が組まれておりました、ことしはこれが組まれていないのですね。これまでの政府御答弁では、単なる予算編成上の技術的な問題であるというふうに言われてきているわけであります。しかし、給与改善費がゼロだということで有額回答ができないなどということは私はないと理解しているのですが、それでよろしゅうございますか。あるいは有額回答というのは、この委員会で、私、何回も取り上げたことがあるのですが、民賃準拠ということが定着してきたと私は思っているのでありますが、この民賃の動向を公正に反映させたものを可能な限り速やかに行うべきだと考えるのでありますが、これはどうでございましょうか。これは説明は要りませんので、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  16. 林ゆう

    林国務大臣 給与改善費は給与改定に備えるための単なる財源措置、先生のおっしゃるとおりでございまして、今までも、改善費の計上がなされていなかったときにおきましても一定の有額回答が行われておりますし、また、給与改善費が導入されました昭和四十六年度以降におきましても、給与改善費を上回る有額回答が行われたという実績もございますので、公企体等の賃金問題は、先ほどからも再三申し上げますように労使間の問題である、有額回答につきましても、それぞれの当局において民間賃金の動向、交渉の経過などを踏まえて適宜に措置をされるものと私どもは考えております。
  17. 永井孝信

    永井委員 もう一つは、有額回答に当たっては、企業間格差というものは絶対につけるべきではないと私は考えるわけであります。なお、この点に関しまして、山口前労働大臣は、労働大臣立場では格差を設けるべきでないと考えるという態度をこの国会の場でも明らかにされてきているわけであります。したがって、林労働大臣も同じ姿勢で公企体職員等給与関係閣僚会議に臨むものと私は理解をするわけでありますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  18. 林ゆう

    林国務大臣 公企体の賃金問題は労使間の問題でございます。  さきの山口労相がどういう御発言をなさったかということは私はつまびらかにいたしておりませんけれども、それぞれの当局におきましては、民間賃金の動向、交渉の経過などを踏まえて適宜措置されるものと考えております。
  19. 永井孝信

    永井委員 そこは大臣労働大臣ですから、歴代の労働大臣はいわゆる労働大臣立場では格差を設けるべきでないんだということを言ってきているわけでありますから、そこのところは大臣、ちゃんと今までのそういう歴史的な経過も踏まえて、ひとつきちっとした毅然たる態度で閣僚会議に臨んでくださいよ。どうですか。
  20. 林ゆう

    林国務大臣 それぞれの当局に担いてこういった賃金の交渉がなされているわけてございますから、そこで決められるまでには、民間賃金の動向、いろいろな交渉の経過などを踏まえながら決められるものというふうに私は認識をいたしております。そこで、私の立場といたしまして、格差を設けるべきではないとかあるとかいったようなことを一概にここで申し上げることはできないというふうに思います。
  21. 永井孝信

    永井委員 これは歴代の労働大臣と比べたら随分後退した姿勢なんですよ。これは政府の統一見解を示せと言っておるわけじゃない。労働行政を預かる立場から、労働大臣としての見解を求めているんだから、世の中がどんどん進んでいくときに、そんなもとへ戻るような答弁は納得できませんよ。もう一回答えてください。
  22. 林ゆう

    林国務大臣 再三同じことの御答弁で大変恐縮でございますけれども、各当局において民間賃金の動向とか交渉の経過などを踏まえて適宜に措置をされるものと私は考えております。
  23. 永井孝信

    永井委員 どうもここはどうしても私は納得できないんですね。納得できないのですが、何回繰り返しても同じ答弁では、これは時間を使うばかりでありますから、ひとつ私の方からきつく申し上げておきますが、担当労働大臣としては、本来公共企業体というのは、法律の精神からいきまして営利を目的とする事業でないわけだから、だから基本的には格差を設けるべきでないんだということで積極的な姿勢を示してもらいたい、これは強く要望しておきます。労働大臣の言われたことは僕は納得できませんので、従来の労働行政の後退にならないように、私は強く要求しておきたいと思うわけであります。  三つ目は、公共企業体等職員の給与改善は、もちろん形の上では労使の自主交渉で本来は決定すべきものでありますが、不幸にして従来そうなっていないのですね。したがって、公労委に持ち込まれて仲裁裁定が出されたという事態になった場合には、政府としては、労働基本権の代償措置であるという立場から、仲裁裁定を政府の責任で完全に実施すべきだと考えるのでありますが、どうでありましょうか。これも労働大臣立場としてお答えください。
  24. 林ゆう

    林国務大臣 六十一年度の仲裁裁定につきましては、これが出されました場合には、私といたしましては公労法三十五条の精神を踏まえまして完全実施に向けて努力をしてまいる所存でございます。
  25. 永井孝信

    永井委員 それでは労働時間短縮の問題に戻りたいと思うのでありますが、NHKが六十年度の国民生活時間調査というものをやりました。これは御承知かと思うのでありますが、非常にユニークな答えが出てまいっているわけであります。その答えというのは、成人の三分の一が睡眠不足になっている、その最大の原因が仕事のために、こうなっている。勤め人の生活時間の変化を見ますと、五年前に比べて労働時間が平日で二十分、土曜日で十分、日曜日で十二分、日曜日の十二分というのは平均ですが、それだけ公休出勤が多かったということでしょうね、それぞれ長くなっているのですね。労働時間は短縮どころか逆に実は延長の傾向にあるのです。  また、電機労連が電機労働者の国際意識調査というのをやっております。大変な努力が必要だったと思うのでありますが、その国際意識調査によりますと、時間外労働日本が平均で三十六時間、これは一番長いのですね。ハンガリーの七倍、西ドイツ、スウェーデンのほぼ六倍になっているわけであります。この影響で家族と過ごす家庭サービスの回数はどうなっているかというと、月平均で日本が四回。これは丸一日じゃないのですよ。例えば二時間の外食の時間をとるにせよ、そういうものを含めて回数では日本は四回。ポーランドは二十六回、毎日のように家族と過ごす時間、家庭サービスの時間をとることができているということなんですね。イギリスでは二十回、スウェーデン十八回等、こういう数字になっておりまして、まさに話にならぬような開きになっているわけですね。  そうなってきますと、当然、夫婦の対話も不十分だし、子供との対話も極めて不足してくる。これが今教育の場でも問題になっているようないじめの問題にも発展してきているのではないか、そういう遠因になっているのではないかという気がするわけでありますが、そういう私が今示しましたような調査の結果の数字なども参考にしながらでありますが、労働時間の短縮というのは緊急の課題ではないのか、こう思うのでありますが、労働省はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  26. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 御指摘のように、労働時間をサミット構成諸国と比較いたしますと、今先生が御指摘になりました残業時間が、今ポーランドとの比較等ございましたが、サミット構成諸国との比較ですと、例えばアメリカあたりとは年間で約五十時間、一方、西ドイツあたりとの比較ですと百二十時間ぐらいの差がございます。と同時に、それ以外の休日の日数あるいは年休の日数、それらでも差があるものですから、比較した場合に長時間というような形になるわけでございます。  労働時間の短縮は、先生も御指摘になりましたように労働者の健康の問題あるいは生活上の観点はもちろんでございますけれども、それ以外に国際的な貿易摩擦の問題あるいは内需拡大といった視点も含めまして、さらには長期的に見た雇用の確保といった観点も加えまして、これはぜひ進めていかなければならない課題であるというふうに考えております。既に政府としましても昨年の十月に経済対策閣僚会議におきまして、内需拡大対策という観点から、週休二日制の拡大中心といたします労働時間短縮を積極的に進めていくという姿勢を打ち出しているわけでございまして、御指摘のように今後もさらに積極的に進めていかなければならない課題だというふうに考えております。
  27. 永井孝信

    永井委員 今、私は電機労連の調査を参考にさせていただいたわけでありますが、まだおもしろい項目があるのですね。日本労使関係というものが世界の話題になってきたことは事実でありますけれども企業への忠誠心というのは調査の対象九カ国中七位なんです。職場生活に満足を持っているかということについては第八位なんです。それは過酷な労働条件、とりわけ長時間労働というものがむしろそういう企業への忠誠心を失わせてきているのですね。これはある意味でいうと、本来の、世界の今までの姿に近寄っているとも言えるし、また悪い面でいうと日本経済の活力を失わせる危険性さえ持っている、こう指摘せざるを得ないわけでありますから、そういう意味では、とりわけ時間外労働というものは極めて問題がある、時間外労働はできるだけ少なくするということが必要だと私は思うのです。  そこで、労働省は一九八二年に三十六条協定適正化と時間外労働上限規制の指針というものを策定されたわけですね。そして、それに基づいて行政指導を行ってきているわけでありますが、それから既に四年たっているのです。どのように効果があったのか、時間がありませんから、その結果を簡潔に明らかにしてください。
  28. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 実は、残業時間の上限についてのガイドラインを出しましてから四年間で三六協定の内容がどう変わってきたか、断片的には私ども把握しているのでございますが、全国的な把握をまだいたしておりません。この四月から五月にかけまして労働時間の総合的な実態の調査をいたしますので、その中で三六協定の実情についても把握をいたす予定にしておりますから、その結果でそうした面も明らかにできると思います。
  29. 永井孝信

    永井委員 労働省が出している毎勤統計を見ますと、時間外労働はむしろこの四年間ふえているのです。だから、これはできるだけ早く把握してもらって、次の施策を具体的に進めるためにひとつ対応を実効あるものにするように求めておきたいと思います。  その次に、労基研報告を見ますと、時間外労働問題についての実態に問題があるということを認めているわけですね。しかし、時間外労働の最長規制の水準値をその中では示していないのです。時間外労働に問題があると言いながら最長規制の水準値を示していないというのは問題があると私は思うのですね。行政指導で効果があらわれていないという現状では、労働基準法の改正に当たってその規制の数値というものを厳しく定めるべきだと思うのですが、これは一言で答えてください。説明は要りませんから。
  30. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 実は研究会の内部でも労働時間法制のあり方として三点議論がございまして、一つが法定労働時間の短縮であり、一つが残業時間の規制であり、もう一つが年休日数の増加ということです。その中でのプライオリティーのつけ方としては、法定労働時間の短縮を優先すべきであるという考え方に立ったために、残業時間の規制とあわせ強行規定であることには現在の各企業あるいは産業の実情からして問題があるということで、プライオリティーを法定労働時間の方に当てたということでございます。
  31. 永井孝信

    永井委員 所定内労働時間が幾ら短縮されても、それを時間外労働で補っていけば何にもならぬわけですよ。ですから、これはひとつ注文をつけておきますが、厳しく規制でき得るような方向で対応してもらいたいと思うのです。既に労働四団体は、年間百五十時間、四週で二十四時間、一日二時間ということで規制をするように求めているわけですね。ここらについては、きょうは時間がありませんから多くやりとりできませんので、ひとつこういう労働団体の要望も積極的に取り上げるという立場対応を求めておきたいと思います。  もう一つは、現在の日本におけるいわゆるバカンスといいますか、一番集中しているのは夏のお盆の時期なんですね。これはもう既に国民的行事になっていると私は思うのです、東京の都区内が空っぽになるくらい民族移動があるわけですから。労働省企業規模別の夏季休暇実施状況調査を見ますと、夏季休暇については企業規模による格差というものはほとんど見られないのですね。大企業も中小企業もほとんど見られません。千人以上では八五%、百人以下では八四%という数字でありますから、ほとんどその格差はないのですが、ただ一つ大きな格差があるのは、中小零細企業賃金の保障のないところが多いということなんです。賃金の保障がないままに夏季休暇の拡大がなされていっても、これは消費拡大につながっていかないのですね。ですから、夏季休暇取得の実態とその賃金の支払い状況などについて把握をされているかどうか、把握をされているなら明らかにしてもらいたいと思うのです。  なお、つけ加えておきますが、朝日生命が試算したところによりますと、これは夏季休暇だけではないのですけれども、今ちょっと触れられましたように、年休を全部消化すれば自動的に一兆二千億円の内需拡大になるという調査結果も出ているのです。あわせてお答えいただきたいと思います。
  32. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 夏季休暇をどういう形でとっているかという調査は五十九年にしたものがございます。それでいきますと、夏季に連続休暇を実施した企業の中で、週休日を当てる、さらに週休以外の休日を当てる、それから、週休日及び週休以外の休日の振りかえ日を設定して夏季連続休暇をとる、さらに年次有給休暇をつけ足す、こういう形でいろいろ工夫してやっております。  それで、問題は、今挙げました中で週休以外の休日というのはどういう性格のものかということになると思うのですが、通常これは特別休日という形で、企業のサイドからしますと夏季休暇という名前をつけているケースが多いわけでございます。この場合はいわゆる企業の負担において休日扱いということになりますから、例えば自給制の場合はこれは欠勤扱いにはならないということで、その部分に関して賃金の問題は出てこないわけでございます。ただ、純然たる日給制の企業ですと休んだために収入が減るといった問題は出ようかと思います。  問題は月給制と日給制がどれくらいのウエートかということになるわけでございますが、現在、いわゆる日給月給と言われるものを含めまして月給制が七割ぐらいをカバーしておりますので、純然たる日給制あるいは時間給の人は比較的少ないわけでございますが、その辺が収入との関係でどうなるか、そこまでのデータは私どもつかんでおりません。夏季休暇の中身が、いずれも今申し上げたように大体企業の負担においてやられる休暇になっておりますので、この夏季休暇は、とれる雰囲気が今相当程度できつつあるというふうに私どもは考えております。  それから、朝日生命の試算については私どもも見ましたが、結局、労働者の権利として認められている年休が四割以上残っているわけでございます。したがって、これをできるだけ消化していただく、そのためにどういう手法が一番効果があるかという点では、年間を通じた計画的な消化ということがやはり一番いいのではないか、こういうふうに私どもは考えておりまして、既に前からそうした関係労使に対して、労使で年間の年休の計画的消化の筋道というものを考えていただくあるいは計画を立てていただく、そういうことでの指導をやっておりますが、まだ必ずしも徹底しておりませんので、今後さらに徹底していきたいというふうに考えております。
  33. 永井孝信

    永井委員 夏季休暇などについては企業の負担による傾向がある、こう言われておるわけでありますが、ひとつ実態を調べてもらって、そういうバカンス的なものがもっと定着するように積極的に検討してもらいたいと思うのですね。調査をしてくれますか、どうですか。
  34. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 先ほど申し上げたような夏季休暇の実態については、私ども、大体年次的に調査をするようにいたしておりますので、さらにその点は細部について把握できるように検討したいと思います。
  35. 永井孝信

    永井委員 時間がだんだんなくなりましたので、あとはちょっと急いでいきたいと思うのですが、円高政策ですね。  この円高政策というのは、世界五カ国の蔵相会議の結果、政策として進められているのでありますが、これが輸出産業あるいはそれに関連する地場産業に大変な影響を与えてきているわけです。この円高対策として、雇用対策あるいは経営の維持に対するてこ入れといいますか、そういうものが積極的に進められなくてはいけないと思うのですが、これについて労働省としても積極的な対応をしてもらいたい。  もう一つは、下請企業、いわゆる中小零細企業などにパート労働者というのが非常に多いのですね。このパート労働者に集中的なしわ寄せがきているわけです。ある企業によってはパート労働者が全部やめさせられていったとか、あるいは一日の働き時間が、極端なところでは半分になるとか、こういうことで大変な影響を受けている。このパートというのは結局弱い労働者でありますから、こういうものについてひとつ積極的な対応をしてもらいたい。  その中で、例えば雇用保険についていいますと、これは四八・二%しか加入してない。これは東京都の調査であります。あるいは労災保険にいたしましても、未加入者が二四%も存在をしているという数値も出てまいっています。いろいろな面でパートにしわ寄せがくる。パートで働いておる人には雇用保険も労災保険も一般の企業に働く常用労働者と同じようなことが保障されていない。あらゆる面でしわ寄せを受けているわけでありますから、このパート労働者に対する総括的な労働省対応について、時間がありませんからひとつ簡単にお答えいただきたいと思うのです。
  36. 佐藤ギン子

    ○佐藤(ギ)政府委員 パートタイム労働者につきましては、先生御指摘のとおりさまざまな問題がございます。  そこで五十九年の十二月にパートタイム労働対策要綱をつくりまして労使雇用の安定、労働条件の改善につきまして周知その他指導いたしておりますので、さらにこれからも実態把握も含めまして努力いたしてまいりたいと存じます。
  37. 永井孝信

    永井委員 時間があれば細かいことを全部数値を挙げて答弁を求めるのですけれども、時間の関係で私、はしょっているわけですよ。しかし、那辺に問題があるかということは婦人局長は先刻御承知のはずでありまして、常用労働者すらしわ寄せを受けるという状況の中だからパートは辛抱しるというのが一般的な経営側、雇用側の思想なんですよ。そこを打破することがないと、本当の内需拡大のための底入れなんてできっこないですよ、パート労働者はどんどんふえているのだから。だから、今一言で答えられました。私は時間をせいているので、簡単にと、こう言ったけれども、余りにもそれはそっけないのじゃないですか。もうちょっと積極的な対応を示す決意ぐらい、ちゃんとあなた言いなさいよ。
  38. 佐藤ギン子

    ○佐藤(ギ)政府委員 私の言葉が足りませんでしたが、熱意は言葉以上にございますので、これからは精いっぱい努力してまいりたいと思います。
  39. 永井孝信

    永井委員 また、これは別の機会にこのパート問題をやりましょう、じっくりと時間をかけて。ですから、きょうはちょっとさわりだけで終わりますけれども、ひとつ積極的な対応を求めておきたいと思います。  さて、その次に国鉄問題について質問をしてみたいと思うわけであります。  国鉄の分割・民営法案にかかわるものが国会に上程されまして、六十一年度中に緊急に実施すべきことを盛り込んだ法律案の趣旨説明がきのうの本会議でなされました。ごく一部について今法律案の審議に入ろうとしている段階なんです。この法案審議の進捗に合わせて国鉄当局がいろいろな準備を進めることは当然あり得ると私は思うのですね。しかし、この法の成立というものを既定事実として具体的な施策をどんどん実施に移すことがあるとすれば、それは国会軽視にならないのか。  この間、電車の中のつり広告に、私、読みましたけれども昭和六十二年の四月一日から国鉄は生まれ変わります、これこれの会社に分割されまして新しい会社になりますということで、よろしくお願いしますという趣旨のつり広告が出されました。これは法律案がまだそのときは国会に出てなかったものですから、法律案が国会に出てない段階でおかしいではないかと国会の中で質問が出まして、後藤田長官がこれについては弁明し、行き過ぎだということでいわゆる陳謝をされたわけです。  では、今問題になっている国鉄の広域異動という問題がありますが、この新会社の設立に向けて、それを具体的に実行に移すために第一次に三千四百名を北海道、九州から東京や名古屋、大阪に異動をさせるというものであります。これはPRじゃないんですね。実行行為が伴っているのです。こういうことが今直ちにどんどん進められていくということは果たして国会軽視にならないのかどうなのか、労働大臣としての見解を求めておきたいと思うのです。
  40. 林ゆう

    林国務大臣 国鉄経営はまさに危機的状況にございます。こうした中で余剰人員問題は関係者が一体となってその解決に向けて取り組むべき最も重要な課題の一つとなっておるのでございます。  国鉄におきましては、現在でも多数の余剰人員を抱えており、この余剰人員の解消を円滑に進めていくためには、余剰人員の地域的なアンバランスを調整する必要があるという観点から広域異動の募集を実施していると聞いております。  なお、政府といたしましては、余剰人員問題の解決を図るためには、国鉄自身の最大限の努力を前提に雇用の場の確保等の施策を推進していくことが重要であると考えておりまして、このため、先般再就職の促進のための法案を国会に提出したところでございます。法案につきましては十分御審議を願いたいと考えております。
  41. 永井孝信

    永井委員 今、大臣言われましたように、雇用の問題は非常に大切な問題だ、だから、そのための雇用を確保するための法律案も国会に上程している、こう言われておるわけです。それは私も承知しております。まだ趣旨説明も行われていないのです。その段階で具体的に第一陣の三千四百名もの人について、新社会の設立に向けて今の時点で動かしていくための具体的な作業が始まることは国会軽視になっていかないのか。準備を、いろいろな計画をしていくことはあっていいと思うのです。労使関係でも話し合いも必要でしょう。しかし、今具体的に人を動かさなくてはいけないということまでやることは、国会がこれから審議をするのだから、審議の行く末はどうなっていくか理屈の上ではわからないわけですから、それはちょっと行き過ぎではないのか。計画段階で、計画をどうやって実行に移せるかということの準備を進める段階ならいいけれども、実際に実行行為に移ることは問題あるのではないか、こう聞いているわけです。閣僚の一人としてお答えください。
  42. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 今、大臣お答え申し上げましたように、国鉄におきましては現在でも多数の余剰人員を抱えているわけでございまして、この余剰人員の解消を円滑に進めるために、余剰人員の地域的なアンバランスを調整する必要があるという観点から広域異動の募集を実施していると聞いているわけでございまして、国会軽視ではないというふうに考えております。
  43. 永井孝信

    永井委員 これは余剰人員があることは百も承知しておるのです。それがつくられたものであれ、できてきたものであれ、余剰人員があることは事実。だから当局も労働組合の側も、余剰人員対策というものは非常に真剣に考えているのです。だから、計画をして、こういうふうになったときはどうしようかということの相談が労使の場でも持たれていいし、そういう計画が、国鉄の諸君を路頭に迷わせないためにもあって不思議ではないと思う。  しかし、今これから法案の審議に入ろうかという段階で、そのことがもうできてしまっているのだというような前提で人を動かすことは少し時期尚早ではないのか、そのことが結果的に将来の国鉄の新しい再建ということに対して、きのうも総裁は職員に対して訓示をされておりますが、そういう決意をもって臨むことはいいとしても、具体的な行動に移ることまでが果たしていいのかどうなのかを労働省に聞いているのです。大臣、ひとつお答えくださいよ。
  44. 林ゆう

    林国務大臣 国鉄が多くの余剰人員を抱えまして、そしてこの方々が将来職場を離れて、いわゆる、表現は大変悪いようでございますけれども、路頭に迷わないようにということで、国鉄自身がいろいろとその余剰人員問題に取り組んでいるということで私どもは聞いておりますし、今回の広域的な配置転換と申しますのは、国鉄内部におきましてこの余剰人員の解消を円滑に進めていくための一つの方策としてこういったようなことを実施しているというふうに私どもは聞いております。
  45. 永井孝信

    永井委員 執拗に繰り返して恐縮ですけれども、国鉄と関係ない問題で言えば、例えば法律が改正される、法律案が上程されるという段階で、関係の業者団体などが具体的にこういうことをやりたいと思うかどうか、こういうことがよくあります。いや、それは法律をこれから審議するのだからちょっと待ってくれ、今までそういうことの繰り返しだったわけですよ。なぜ国鉄だけがそれが許されるのかということを私は聞いているのです。なぜ国鉄だけがそれが許されるのですか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 国鉄だけが許されるというのではなくて、先ほどから大臣が答弁いたしておりますように、その法案の成立を前提としてすべてをやっておられるわけではなくて、余剰人員の地域的なアンバランスを解決するためにやっているものと労働省としては理解しているわけでございます。
  47. 永井孝信

    永井委員 労働省の理解というのは、ちょっと私は素直に受け取ることができないのです。これは後で総裁とのやりとりもありますから、それを聞いた上でさらにつけ加えてお聞きしていきたいと思います。  さて、そのいわゆる余剰人員でありますが、一応国鉄再建監理委員会の答申の中に盛り込まれた数値というのは、旧国鉄に引き継ぐ者を含めてでありますが、九万三千名、こう言われておるわけであります。その処理を、政府対策委員会を設置してまで万全を期すと今大臣も言われておるように対応されようとしているわけでありますが、中曽根総理も本会議における施政方針演説に対する代表質問に対する答弁の中で、国鉄職員を一人たりとも路頭に迷わせないという決意で臨むというふうに答弁をされていらっしゃるわけです。それはそれで私は当然のことだし、政府政策として進めるのだからこれは当たり前のことだと思うのでありますが、労働省としての最大の使命は、国民全体の雇用安定という視点に立たなくてはいけないと私は思うのであります。  今回の広域異動の問題、これに絞って恐縮でありますが、広域異動の問題がどういう問題をもたらすかということの認識について私はお伺いしておきたいと思うのでありますが、この三千四百名の余剰人員を、今局長が言われたようにアンバランスを解消するために調整をするのだということで異動されるということにしたとして、そのことがどういうことになってくるか。後で総裁にもお尋ねいたしますが、職員に対して希望を募る。希望を募って、希望を言ってくる者の要望というものは最大限に生かすようにしていきたい、こういうことを国鉄当局の募集要綱でも明らかにしているわけです。例えば「将来の配属に際しての希望は、可能な限り、優先的に配慮する。」あるいは配転先において「本務グループに編入することを基本とする。」ということが、全部は読み上げませんけれども、触れられているわけです。  そうすると、どんな問題が起きるか。私は三月二十五日の社会労働委員会でも、この希望ということ、呼び方は希望でありますけれども、現実は希望になっていないということを具体的な例として申し上げたことがありました。ついこの間、三月二十五日であります。その希望がどういう条件であれ、どういう立場であれ、希望されたものは、将来の自分の雇用について本人の意向を尊重してそれを優先するということになってくると、それは即、新会社に希望する場合は新会社へ配属することを優先するということになってくるわけです。これを私どもの言葉で言うと切符を手にする、こういうわけです。通行の切符を手にするというわけです。  では、通行の切符を手にしたときはどういうことが起きてくるのか。これは東北新幹線が開業した、山陽新幹線が開業したといういわゆるビルドの場合と違って、あのときはビルドでありますからそこに職場を新たにつくる、そこへ人を持っていかないと営業が開始できないというビルドの関係だったわけですね。今回、いみじくも言われているように余剰人員の調整だ、こういうわけです。  では、東京や名古屋、大阪がどうかというと、人が余っている。余剰人員を持っている。人の余っているところへ北海道や九州の余った人を持ってくるのです。その余っているところへ来た人が優先権という切符を持っているとすると、もともと東京や大阪や名古屋で過員になっている人々はそのために新会社へ行く機会というものはなくなっていくわけですね。はじき飛ばされていくわけです。これを玉突きと私たちは呼んでいるわけです。あるいは本務に入れるということを約束するとなると、今東京や名古屋や大阪で本務についている者は本務から外れる者ができてくる。そうすると、例えば乗務員でいいますと、本務につくかつかぬかによって月七万円の減収につながるのです。駅勤務の職員でいうと、平均二万円減収になると言われているのです。東京や大阪にいる人も生活がかかっているのです。そこへ北海道や九州から持ってきて、おれがはじき飛ばされるのだとなったらこれはどんなことが起きますか。  あるいはそれだけではない。私はあえて労働省は国民全体の雇用政策に責任を持つべきだと言ったのでありますが、はじき飛ばされた人を、一人たりとも路頭に迷わせないということで仮に関連企業などを中心にしてそこへ再就職をさせるということをやったとする。では、その企業ではどういうことが起きてくるのか。今、現に雇われている人がそのために解雇される。新規採用がストップする。学卒者にすれば就業の機会がそれだけ狭まってくる。失われていくのです。  だから、国鉄の職員を路頭に迷わせないということ、そのことは当然なことでありますが、よほどこれは慎重に扱っていかないと雇用不安拡大政策と言わざるを得ない。この間も労働大臣に私は直接お話し申し上げたことがあるのですが、そういう状態が起きてくると、労働組合は複数にありますが、労働組合の所属を別にして、職場で血の雨が降ることだって想定できるのですよ、自分の生活がかかっているのだから。そういう状態なのにこれが当局の政策としてどんどん進められていく。ある組合とは協定が結ばれてもある組合とは協定が結ばれていないというままで進められていくということが果たして許されていいのか。労働省はこれまた手をこまねいて見ているのかどうなのかをお答えいただきたいと思います。
  48. 林ゆう

    林国務大臣 現在国鉄が進めております広域異動につきましては、余剰人員の発生状況が地域的に偏りがあるなどの状況を踏まえて、今後の余剰人員対策を円滑に進めていくための措置であると私どもは理解をいたしております。私といたしましても、それは必要なことであろうと考えております。しかし、この広域異動は、一人一人の国鉄職員にとってみますれば、家族を含め一生にかかわる重大な問題と言えますので、出す側あるいはまた受け入れる側、または労使双方、いずれの関係者にとりましても温かな配慮が特に望まれるところであると考えております・  このような観点から、関係者が十分な意思疎通を図りつつ、広域異動が円滑に進められることを強く期待しておりますし、また私のこの気持ちを関係者に伝えてまいりたいと思っております。そしてまた、この膨大な数に上る余剰人員の問題の解決を図ることは、何と申しましても不可欠な問題でございますので、政府といたしましては、公的部門、関連企業、一般産業界など幅広い分野で雇用の場の確保に努め、国鉄職員の再就職の促進に努力をいたしているところでございます。  こうした施策の推進に当たりましては、関連企業や一般産業界等の十分な理解と協力を求めまして、問題の生じないよう取り組んでいくことは重要であると考えており、労働省といたしましては、今後とも国鉄等関係機関との密接な連携、協力のもとに再就職促進のための施策を講じてまいりたいと考えております。
  49. 永井孝信

    永井委員 それでは、総裁にお聞きをいたしたいと思うのでありますが、まず初めに、去る三月七日の予算委員会分科会で、今ここにいらっしゃいますけれども、我が党の村山議員が総裁に質問をいたしています。そのときに、余剰人員の問題につい」てこのように言われているわけですね。「近代化、合理化というものの結果といたしまして今までも既に発生をしておりますし、これからも発生するであろう、そういうような総体の余剰人員でございます。」こういうふうにお答えになっていらっしゃるわけであります。そのとおりですか、もう一回確認をさせていただきたいと思います。
  50. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今、国鉄は、近代化、合理化等の過程におきまして、その最終的な終結の姿としまして余剰人員がたくさん発生している、こういうことを私は申し上げたつもりでございます。
  51. 永井孝信

    永井委員 いずれにいたしましても、近代化、合理化などの集積として余剰人員が生まれてきているということのお答えであります。だとすると、近代化、合理化であれば、本来の、例えば幹部職員の異動であるとかそういう通常の人事異動とは言えないのではないのですか。一言で答えてください。
  52. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 これは、私いわば余剰人員の問題の最終的な姿と申し上げたのは、そこの違いがあるわけでございますが、一回一回の近代化、合理化の結果としての広域配転というものではございません。地域間のアンバランスというものが結果的に生じたものをどうやってこれを解消したらいいかということの措置でございます。
  53. 永井孝信

    永井委員 どのように国会で言葉の上のテクニックで言い逃れをしてみても、三千四百名という人が、今大臣も言われたように家族で相談をし、自分の生活基盤を根本から変えるという一生の問題なんですよ。この一生の問題が労使話し合いの中や交渉の中でも明らかにされているわけでありますが、本人の希望をとってやるんだから、あくまで本人の希望によるものだから通常の希望異動だということにはなっていかない。国鉄の政策として三千四百名を第一陣調整をするということからもともと出発をしているのです。  だから、そうだとすると、これは単なる通常人事異動ということにはなっていかないことは私は明らかだと思うのです。この種のケースが通常人事異動と言えるかどうかということについて、たくさんの労働行政の中で実例に携わってこられた労働省として、一般的な通常の人事異動に該当するのかどうなのか、労働省認識をちょっと聞かせていただけますか。
  54. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 人事異動の概念、よくわかりませんが、人事異動の一環としてやられているというふうに聞いておりますので、人事異動であろうというふうに思っています。
  55. 永井孝信

    永井委員 このようなことなんですよ。三千四百名という人が住んだこともない東京や大阪へ、一家を畳んで不動産まで処分をして出てくる人もいるかもしれない。これが通常の人事異動であって配置転換ではないということはどこから言えるのですか。配転協定は何のためにあるのですか。配転協定が一方的に打ち切られたという組合もありますが、複数の組合の中で配転協定が現に存在している組合もたくさんあるのです。総裁、私はこれでも国会議員をやるまでは国鉄労働組合で二十五年間専従生活をしてきているのですよ。国鉄の問題についてはとりわけ多くの経験を積んできているのです。  配転協定に基づいて配転をする場合は主として局管内なんですよ。もちろん局外もありますけれども、それはごく限られたものであって、ほとんど局内です。局内で異動する者が当局の施策によって異動する場合は配転協定が適用されて、北海道や九州から東京や大阪に出てくるのがなぜ配転にならないのですか。なぜ通常の大事なんですか。そんなごまかしで組合と対応するからうまくいかないのですよ、総裁。そこをはっきりさせてくださいよ。
  56. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 組合との関係におきましても、今回の広域異動というものは今まで余り例がございませんし、それから相当な人数でございます。したがいまして、私どもはこの内容を十分説明をし、それから、この問題に付随いたしまして労働条件の問題で申し出があれば十分に検討し、交渉いたしましょうというようなことで現在まで各組合と交渉を持ってやっておる事案でございます。  ただ、当局の方から積極的に働きかけてやるべきではないかというようなお話ではございますが、そういう意味におきましては、中身の説明は各組合に十分にやっておりますけれども、今までございますいろいろな転勤のルールに従ったそういうもので我々はできるというふうに判断をしておるわけでございまして、それ以上の御要求がございますれば組合側と十分にお話ししましょうということで、既に三組合とはこの内容の妥結を見ております。国労との間でも今まで具体的な事案につきまして交渉を持ってきておる状況でございます。
  57. 永井孝信

    永井委員 時間がありませんから具体的なことを聞きますが、通常の人事異動と片方で言いながら、複数の組合とは了解事項、議事録確認が交わされているわけですね。これはいわば労使協定でしょう。通常の人事異動だと当局がおっしゃるのなら、なぜこの協定を結ばれたんですか、労働条件に関係するから協定を結んだんでしょうが。片方でそういう行為をやりながら、片方でこれはいわゆる管理運営事項に属することであって通常の人事異動だということで済まされますか。そうじゃないんですか。どうしても、言葉でごまかそうとするから変なことになっていくんですよ。  例えば、私はあえて言いますが、組合との交渉の中でこういう発言も出ています。血の入れかえが必要だという発言もありました。血の入れかえということは一体何のことを指しているのですか。それは、私の推測が当たっているかどうかわかりませんけれども、例えば特定の組合活動家などを職場から排除するためにそこに別の人を入れてきてその人を排除するということに私たちは勘ぐることができるのですよ、血の入れかえという言葉は。あるいはこの間私が質問しましたように、あくまで強制、強要の懸念はございませんと国鉄当局が国会で答弁をしながら、現実には業務命令だから説得を受けろと言って強引に缶詰状態にして説得している箇所もあるのです。  もしそれが事実だとすると、総裁は、あくまでこれは労使交渉の場でも国会答弁でも言っていらっしゃるわけでありますが、絶対に強制、強要にわならないようにする、その懸念はございませんと言ったんだから、もしも具体的に強制、強要をした管理者があれば、総裁命令に管理者が違反しているのだから管理者を懲戒免職にしなさいよ、どうですか、総裁。
  58. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 やはり長年住みなれましたふるさとを離れるというようなそういう内容のものでございますので、管理者側としましては、それぞれの希望を持った各個人に対しましては、教育問題、住宅問題、いろいろな問題があろうかと思います。したがいまして、よく事情を聞き、御本人の希望を聞き、また我々の中身をよく話をするということがぜひ必要であるというふうに考えておるわけでございまして、その過程におきまして決して強要、強制ということはないというふうに私は信じておるわけであります。
  59. 永井孝信

    永井委員 もう一つ具体的な問題を聞いてみたいと思うのですが、去る三月二十日に参議院で我が党の糸久議員がこの問題について触れた中で、例えば京都新聞に出された三月九日の記事でありますけれども、鉄道労働組合の志摩書記長が、鉄労の組合員三万二千人は新会社に座席指定を確保した、こう言っている。約束されたわけです。こんな約束しているのかと問うと、当局は、そんな約束はしていない、約束はできるはずもない、するはずもない、こう言っているのです。  ところが、片方で鉄道労働組合東京地方本部の出しました第二十一号という文書を見ますと、どういうことが書いてあるかというと、「鉄労組合員は、原則として新事業体へ行くことを確認している。従って、特段の事情がある人を除いて優先順序の欄にはこれは調査票に記入することでありますが、こういうところに回答しなさいということまで指示している。当局は、そんな事実はありませんと言っている。では、これはどうなっているのですか。本当に事実はないのですか。もしあったとすると、これはどのように対応されたのですか。
  60. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 なかなか大変な中身を持ったものでございますだけに、本人の希望というものをできるだけ私ども尊重したいということでございます。したがいまして、受け入れ側におきまして、本人がこういうふうにしたいというようないろいろな希望があると思います。そのとおりいかない場合もあるでしょう。しかしながら、できるだけ本人の希望に沿うように私どもは努力したい、そういうふうに思っているところでございます。
  61. 永井孝信

    永井委員 私の質問に対して具体的に答えていないのですよ。たくさん労働組合ありますが、鉄道労働組合では、その最高幹部が鉄労の組合員に、もう既にその約束ができているから心配しなくていい、だから、当局からいろいろな調査票が配られるけれども、そこにはこの欄に丸をつけなさい、ここまで指定しているわけです。こういう事実があるのかという問いに対して、国鉄当局は国会の答弁で、そんな事実はありません、そんな約束はできるわけもないしするはずもない、こう答えている。  ところが、片方で組織的にそういう文書まで流されているという事実がある。これは一体どうなのか。国鉄当局がそんな事実がないとするなら、ないことを堂々とやっていることに対して当局は一定のしかるべき措置をとるべきでしょう。これを聞いているのですよ。
  62. 葛西敬之

    ○葛西説明員 そのような約束をした事実は全くございません。  それから、先生今お話しになりました鉄道労働組合が流した文書というのは、我々はそういう文書があることを知っておりませんが、アンケートを実施した一月時点において、そのようなことを鉄道労働組合が一たん下部に流そうとしてそれを撤回したという話は聞いております。
  63. 永井孝信

    永井委員 撤回したかどうか知りませんけれども、これが職場に流れていることは事実なんです。私が言っているのは、総裁の初めからの答弁じゃありませんけれども、国鉄の再建問題を考える場合に、国会で言葉の上のテクニックを使ってその場その場を切り抜けていくということであってはならない。私どもは国鉄が今のままでいいとは言っていないのです。国鉄を積極的に活用できるような公共性を持った国民の足として確保していかなくてはいけない、そのためには政府にも責任を持ってもらおう、労働者にも一定の血を出してもらうことはやむを得ないということで私たちもやっているのです。  ところが、国会では審議が始まっていないのに、どんどん実行行為が進められている。しかも、本人の一生にかかわるような問題が堂々と進められていく。そこで、職場で混乱が起きる。私が言ったように血の雨が降ることだって想定できる。関連企業にも影響を与える。これは政府政策としては雇用不安の拡大政策ではないのか。しかも、ビルドと違って、三月二十日から四月十九日の一カ月間に限定して希望をとっているのでありますが、これを七月に実施しなくてはいけないということは——今業務はどこの場所でも正常に動いているのです。  人が足らないからそこへ人を早く持っていかなければいかぬということではないのでありますから、仮に来年の四月に目途を置いたとしても、今一カ月という短期間に集中的に募集をやって、七月に人を動かさなければいかぬという必然性はないと私は思うのです。もっと計画がスムーズにいくように労使がお互いに合意をして、複数の組合がありますけれども、組合の所属を超えて職場で職員同士が助け合って、肌と肌を触れ合うようにして、今の難局を乗り切っていけるようにするための労使関係というものはきちっとなされるべきでしょう。  まず、合意をすることに積極的に対応することであって、何が何でも四月十九日までにまとめてしまって、優先順位をつけて、場合によっては、鉄労問題じゃありませんけれども、選別の危険性すら持ちながら七月にやらなくてはいけないという必然性は私はないと思う。だから、でき得れば七月にこだわらずに、まず合意をすることを前提にして積極的に胸襟を開いて話をするようにしてもらいたい。労働大臣もそういうことを強く期待して、そのための努力を払うことは惜しまないと言っていらっしゃるわけでありますから、まず当面の責任者である国鉄総裁のそういうことについての態度をお伺いしたいと思います。
  64. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 労使関係におきましては、こういう時期でございますればこそいろいろな問題を十分に話をしていきたい、これは私の基本姿勢でございます。  広域異動の問題につきましても、各組合にそれぞれ交渉を持ったところでございまして、決してないがしろにしているつもりはございません。
  65. 山崎拓

    山崎委員長 永井君に申し上げますが、時間が参っておりますのでよろしくお願いします。
  66. 永井孝信

    永井委員 時間が来ましたので、これでおきますけれども、とにもかくにも人の一生にかかわる問題であります。慎重な上にも慎重に扱っていただくように、そして複数の労働組合がありますが、特定の組合を敵視したりすることのないように、胸襟を開いて具体的に話をされて円満に問題が解決できて進んでいきますように重ねて強く要望して、準備したものは全部できませんでしたけれども、意のあるところを酌んでもらって私の質問を終わりたいと思います。
  67. 山崎拓

    山崎委員長 上田哲君。
  68. 上田哲

    上田(哲)委員 春闘一般についての質疑の時間をいただいておりますので、八六春闘の山場がいよいよ迫っている段階で、八六春闘の特殊な問題についてお伺いをいたしたいと思います。  労働大臣に二、三御見解を承っておきますが、八六春闘はさなきだにアメリカとの五百億ドルに及ぶ貿易黒字の問題等々も含め、内需拡大が非常に大きく言われております。それはイコール、賃上げを大幅にしていくということでなければならないと思いますが、御見解はいかがでありますか。
  69. 林ゆう

    林国務大臣 中長期的には技術革新など経済発展成果賃金などに適切に配分することは、勤労者福祉生活の向上のみならず、今日の課題である内需中心の均衡のとれた経済成長の達成という面からも望ましいと認識をいたしております。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 賃上げをしっかりやれというふうに受け取っておきます。  もう一つの特色は、いわゆる第三次産業共闘というものが今回の春闘で大きなウエートを占めております。ここが非常決意なども宣言をしているわけでありますが、こうした面の盛り上がり、ここに向かっての賃上げの大きな意味づけ、これを大臣はどのようにお考えでありますか。
  71. 林ゆう

    林国務大臣 ことしから新たに第三次産業の一つのまとまった形での賃上げ対応する組織ができたということは伺っておりますけれども賃上げの問題につきましては、それぞれの労使の中で十二分な話し合いをされて、それに基づいての賃上げがなされるということでございますので、私どもといたしましては、そういった新しい動きにつきましては十分に心して今見守っておる状況でございます。
  72. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一つの特徴が、年次累増しておりますパート労働者の問題であると思います。パート労働者の増大が日本の産業構造あるいは労働構造の上にどういう意味づけを持つのであるか、またそのことが今日の春闘の中でどういう意味づけを持つのであるか、御見解を承りたいと思います。
  73. 林ゆう

    林国務大臣 今、我が国の経済社会の中におきましてパート労働者の占める比率は非常に大きなものになってまいりました。そういう中で、今のパート労働者の組合組織率はまだ一割程度というような状況でございます。私どもといたしましては、多くのパート労働者の方々がそれぞれの企業の中で、そしてまた地域の中で大きな役割を果たしていくことに期待を持って見守っているところでございます。
  74. 上田哲

    上田(哲)委員 どうやら、パートの人々の働きが今日の日本の産業状況の中で非常に重大であると見なければならぬというふうに御発言なさったのだろうと思います。  念のために、日本労働構造の中でパートの占めるウエート、また婦人労働者の中でパート労働者はどれぐらいのウエートを占めているのか、数量的に御説明をいただきたいと思います。
  75. 佐藤ギン子

    ○佐藤(ギ)政府委員 男子も含めましたパートタイム労働者の割合は一割でございますが、女子について見ますと二割を超えておりまして、働く婦人の五人に一人はパートタイム労働者だということでございます。
  76. 上田哲

    上田(哲)委員 大ざっぱなところでお答えいただいているのですが、しかし、非常に大きなウエートであり、増大を続けていく、注目しなければならないというところでありましょう。  念のために押さえておきたいのですが、性別のいかんはもちろん問わないところでありますが、パートの方々、性別のいかんで言っているわけではありませんが、パートの皆さん方の労働権あるいは組合をつくった団結権、その他もろもろの権利、それらはパートでない、いわば正規のノーマルな労働者ないしは労働運動というものとの格差はあるべきではない。特にまた女性であるがゆえに不当な立場を与えられるべきものではない。当然のことだと思いますが、確認をしておきたいと思います。
  77. 佐藤ギン子

    ○佐藤(ギ)政府委員 一般的に申し上げますと、労働関係の諸法規はパートタイム労働者であれフルタイム労働者であれ、男子であれ女子であれ同じように適用になるということでございます。
  78. 上田哲

    上田(哲)委員 時間がないので、私は突っ込まないようにしているのですけれども、一般的にはとおっしゃるのは、大変ひっかかります。一般的にはそうだが、やはり婦人労働者には差別があっても仕方がないという観念がどこかにありますか。一般的にという言葉の意味をもし訂正されるならばきちっとしていただきたい。
  79. 佐藤ギン子

    ○佐藤(ギ)政府委員 パートタイム労働者がフルタイムの労働者と性格的に違っている場合に一部適用の関係で違ってくるところがございます。例えば雇用保険の場合には非常に短い労働時間の方の場合には雇用保険が必ずしも適用にならないというようなごく一部の例外を除いて同じように適用になる、こういうことでございます。
  80. 上田哲

    上田(哲)委員 およそ差別というものがあるべきではないのだという立場をおとりになっている、こういうふうに理解をして話を進めてまいります。時間の関係があるものですから、個別的な問題をとらえてできるだけ普遍的な問題として考えていきたいと思うのであります。  東京品川区にございます月めん、これは御存じと思いますけれども、念のために申し上げておくと、冷凍めんなどでここ十年ほど急成長いたしました九十名ほどの中小企業でありますが、この月めんで労働争議が起きております。その概要について調査を求めておきましたので、御報告をいただきたいと思います。
  81. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 東京都内に本社を置いております月めんで、工場移転をめぐりまして、移転に反対をいたします労働組合との間に労使紛争が発生をした、この関係労働組合が昨年の八月に都労委に対して、こういう組合員の勤務が困難となるような工場移転は支配介入に当たる、こういう申し立てを行い、現在都労委におきまして不当労働行為救済申し立て事件として係属をしておるというふうに聞いております。また、労働組合の前委員長及び執行部の九名が解雇されまして、これらの方が地位保全の仮処分申請を東京地裁に提起して、現在この地裁に係属しておる、こういうような事情を承知をしておるところでございます。
  82. 上田哲

    上田(哲)委員 いわゆる中小零細、大企業にあらざる経営というものが直面する幾つかの問題があるわけですが、それが労働争議という形で噴出することが大変心配をされるわけであります。これがきょうのテーマでなければなりませんが、私が月めんを取り上げるのは、大変憂慮すべき暴力事案等を発生せしめている、この問題について解明をしなければならぬからであります。これについてはどのように把握されておりますか。
  83. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 具体的な点については余り詳細には承知しておりませんが、東京都の労政機関が労働組合の方から伺っておりますところでは、会社が工場移転のために昨年の十月二十八日にガードマン立ち会いのもとに機械の搬出を行った、この際、搬出に反対する組合役員一名が負傷した、こういうようなことを伺っておるところでございます。
  84. 上田哲

    上田(哲)委員 今お答えの中にガードマンというのがありましたね。これは大変乱暴な非常識な出入りがあったようでありまして、このことは救急車が走った、けが人が出た、障害を残したという平面的なとらえ方ではなくて、いま少しく奥深い問題として考えておかなければならない課題があるように思っております。  これはひとり月めんのみならず、ここしばらくの間にあらゆるところで同じようなケースが起きている。つまり、おっしゃるようなガードマン、これは警備業法に基づく企業が存在をしているわけでありますけれども、適法な警備業務であるのか、これが暴力事案と認定されなければならないものであるのか、この辺のところは当局において十分注意をされていなければならないはずでありますし、その点はこの月めん問題だけではなくて、各地にこうした同種のトラブルが発生しているというふうに我々は聞いております。  これも調査を求めておきましたので、その辺の経過あるいは処理の内容等々について御報告をいただきたい。
  85. 石瀬博

    ○石瀬説明員 今ほどお尋ねの株式会社月めんの資機材の搬出に伴うトラブルについてでございますけれども、ガードマン立ち会いのもとにという御指摘であったわけでございますが、私ども調査の結果では、資機材等の搬出に従事する運送会社の作業員とこれを阻止しようとする労組員との間にトラブルが生じて、支援労組員の一人の方がけがをされた、こういうふうに聞いております。この問題につきましては、被害者からの被害届が出ておりませんで、警視庁では目撃者からの事情聴取等により所要の捜査を推進いたしておりますけれども、現在なお被疑者の特定には至っていないという状況でございます。  この種の暴力事案につきましては、警察として法に触れる点があれば厳正に対処するというのが基本的な姿勢でございまして、こういった方針につきましては今後とも変わりがないというふうに申し上げておきたいと思います。  なお、過去のガードマン、警備員による労働争議についての介入、その過程における暴力事案の状況というようなことでございますけれども、実は警備業法が制定されましたのは昭和四十七年でございますが、その前の昭和四十五年、四十六年当時につきましては、例えば報知新聞社における争議とか細川鉄工所における争議とか本山製作所における争議等におきまして暴力事案の発生がありまして、それが大きな社会問題になった、それが一つのきっかけになりまして現在の警備業法が制定されたということでございます。  警備業法はその後五十七年に改正されておりますけれども、法の趣旨がかなり浸透しつつありまして、ここ数年警備員が用心棒的に使われる事案は若干ございますけれども、警備業法違反として処理しなければいかぬという事案はほとんどございません。件数的には非常に少ないものでございます。
  86. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっとこれは報告が甘いんじゃないですか。例えば最近、月めんと似ているところで言うと梅田ネームプレートの問題があります。これが抜けていましたね。ガードマンという指摘があったからという初めの答弁のせりふですが、私のせりふじゃないんですよ。これは政府側の答弁の中にあった言葉を私はとらえたのでありますから、きちんと聞いた上で今のような甘ったるいことじゃなくて、もうちょっと突っ込んでみてください。
  87. 石瀬博

    ○石瀬説明員 月めんのことに関しましては、警察の調査の結果では、これは名称を申し上げるのはいかがかと思いますが、天草運輸という会社の作業員等とこれを阻止しようとする労組員との間に小競り合いがあったという、こういう報告を警視庁から聞いております。  それから、最近の事例ではどうかということでございますが、今、梅田ネームプレートの事案はどうかというお尋ねがあったわけです。この梅田ネームプレートという杉並区にある会社が、五十六年の十二月に経営不振を理由に倒産いたしたわけでございますが、その財産の処分方法等をめぐりまして争議に発展した、こういうふうに聞いております。会社側では三社の警備保障会社に依頼いたしまして警備に当たらせていたわけでございますが、告訴合戦みたいなことになりまして、これが五十九年の二月に双方告訴を取り下げるということの条件で和解しておる、こういうことは聞いております。  ただ、この告訴の内容につきましては、警備業法違反とか暴力、暴行、傷害、そういう中身にはなっていないように聞いております。
  88. 上田哲

    上田(哲)委員 どうも隔靴掻痒ですね。  もう少し絞って聞きますけれども、あえて私が梅田の場合を例にあわせて申し上げたのは、一つには、どうも暴力介入ということが日常的に行われているぞということと、もう一つは、労働運動あるいは組合要求というものを忌避するために工場移転とかそういう種類の手段に力ずくで出てくるというケースが目立っているということを言いたいからでありまして、そういう面では、今度の月めんの問題とか、あえて私が名前を申し上げた梅田の問題などというのは、当局としては注意しなければならないケースではないか、こう私は言っているわけでありまして、それが抜けているのではないか。これはいかがですか。
  89. 石瀬博

    ○石瀬説明員 舌足らずであったかと思いますが、今ほど御指摘のありましたようなケースに関連いたしまして、暴力事案が発生しているというような事実があるとすれば警察としては法に照らして厳正な対応をする、こういう基本方針でこれまでもまいっておりますし、今後もそういうふうな方向でまいりたいと考えております。
  90. 上田哲

    上田(哲)委員 どうもまだぴんと来ないのだが、いいですか、ここにいっぱい書類があるのだが、残念ながらこれを全部やっている時間がないので、いろいろ調査をさきに依頼しておいたのですが、例えば月めんの場合、経営側から出された工場移転妨害排除等仮処分申請というのがありまして、これが東京地裁から決定が出ているわけであります。この決定文の中を読みますと、元来、工場の移転は会社側の経営権に属するものではあるけれども、労基法等の存在もこれあり、できればそれを事前に話しをしていくのが望ましいではないかということがやはり指摘されているわけであります。  そういう円満な形を、こうした方がよかろうよと言っている、言うなれば公的見解に対して、そうした労基法を無視し、あるいは反対する者を解雇するというような形で工場移転を強行し、そしてまた工場移転を強行することを阻止する者には力ずくで、つまりそこにガードマンの存在が出てくるわけでありますが、やる。いわんやそのガードマンなるものが警備会社じゃなくて、警備会社じゃない業種のものが出てきてやることになってくれば、これは時間を省いてポイントを伺っておきたいのだが、警備業法四条ないし八条に抵触するものとして考えなければならない事案ではありませんかということをお答えをいただきたいのであります。
  91. 石瀬博

    ○石瀬説明員 前段にお話がございました会社側と組合との労働関係につきましては、私どもお答えする限りではないと思いますので、後段の暴力問題につきまして限って申し上げますならば、警備業法八条というのは、御指摘のように、正当な団体活動に干渉してはならない、こういうことを明記いたしております。また、警備業法四条では、警備業を営む場合には認定を受けなさい、こういうふうになっておりますので、もしそのような法規に明確に違反するというような事実がございましたら、警察としては厳正に対応する、また、暴力事案につきましては、刑法その他の規定に照らして厳正に対応する、こういうことでございます。
  92. 上田哲

    上田(哲)委員 ありましたならば厳正に対応するというのは一般論で、私はそれについては不満がありますよ。例えば前もって調査を依頼した某某警備保障会社がありますね。これは私ども指摘に対して事前のそちらの調査では、既に廃業しておると言っておるのですね。廃業しているのですか、していないのですか。これは私の方の調査によると、警備業法上の廃業はしておるが、商法上は存在しておる。この辺のところは調査したのでしょう。調査したのなら、その辺のところは、もし違反がありますれば云々なんという話じゃない。四条、八条というのはもう少し取り締まり当局としてはぴしっとしてもらわなければ議論になりませんよ。その某々についてしっかり答えてください。
  93. 石瀬博

    ○石瀬説明員 御指摘のございました警備保障会社、恐らく特別防衛保障という会社のことではないかと思いますが、この会社につきましては五十七年十月九日に東京都公安委員会に対しまして警備業としての廃業の届け出を出しております。  なお、問題になりました昨年十月二十八日でございましょうか、その時点におきまして月めんという会社が何らかの警備保障会社と警備契約を締結したかという事実を調査いたしましたが、そういう警備契約はその時点では締結していなかった、こういう報告を現場から聞いておるところでございます。したがいまして、その限りにおきましては警備会社の警備員が警備に当たっていたということはありませんので、警備業法第八条の問題というものは生じないと思いますけれども、しかし、何らかの形におきまして労使紛争に関して暴力事案等の不法事案があったとすれば、それにつきましては厳正に対応もしなければいけないし、現在そういうことで被疑者は特定してはおりませんけれども、捜査中であるということを先ほど御説明申したところでございます。
  94. 上田哲

    上田(哲)委員 大分譲ってきたように見えるけれども、これはだめだ。そんなことじゃだめだ。三時間ぐらい時間がないとこれは詰め切れないけれども、そんなことを言っていたのではだめです。契約を結んだことがよくわからぬと言う。わからぬと言うのなら例えば傍証を一つ出しましょうか。この会社はそういう排除要員を用意した——抽象的に言いますよ。用意した。用意した結果、金がかかった。機械を運搬するための費用とは別に排除するための費用とは別に排除するための費用が六百万かかったので、この六百万は、そもそも争議を起こした者が悪いのだから、したがってこの金をそちら側で払いなさいということがある。ここに内容証明がある。見てください。いいですか、内容証明がここにあるんだよ。その金まで払えと言ってきているということは、その契約がなかったら存在しないじゃないか。そんなこともあなたの方は調査していないのですか。  私はそれぐらいのことは十分調査してくれと言ってあるのに、ればとかなんとかいう話をして、厳正、厳正と言ったって、やる気がなければ厳正にならぬじゃないですか。これを見てごらんなさい。委員長、ひとつ見せてやってください。こういうものがちゃんとあるのですよ。社会労働委員会へ来て予算委員会でやるようなやり方をやらせないでくださいよ。健全な労使関係をつくり上げなければならぬと思う。私はあと六分しかないんだ、六分しかないから、何とかそこへ持っていこうと思いながら話をしているんだが、そうそうあっちこっち逃げ回るような話をされては話にならぬじゃないですか。少なくとも再調査、しっかり調査するぐらいのことは約束してください。これを見てください。
  95. 石瀬博

    ○石瀬説明員 いろいろ御指摘がございましたが、私ども現場の報告を聞きました限りにおきましては、警備業者との契約の事実は存在しなくて、したがって警備員はそこにガードしていなかった、こういう報告を聞いておりますけれども、なお、せっかくの御指摘でございますので、引き続いて調査いたすことにいたしたいと思います。
  96. 上田哲

    上田(哲)委員 せっかくの御指摘でありますからというのは言葉としてはよくないよ、君、それは。  委員長日本語の再教育を求めておいて、労働省、こういうことは労働組合法八条に抵触するじゃないですか。労働組合法八条は、正当な労働争議が行ったことについて、その対価を求めてはならぬとはっきり書いてあるじゃないですか。こんなものが出てきたら、催告書まで出して金を払えと言っているのですよ。おまけに言えば、売り上げが悪くなったので、冷めんについてコマーシャルを出すといった何千万という金も払ってくれと書いてある。そこまではきょう時間がないから言わないのだが、こんなものまで出ているのは労働組合法八条にぴしっと当たるじゃありませんか。労働省、いかに。
  97. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 労働組合法第八条では、「使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。」という規定がございます。
  98. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、それに当たるかどうかと言っているのだ。読んでくれとは頼んでいない。答弁。
  99. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 具体的な事実関係を承知しないまま、正当か正当でないかとか、その辺の判断は即座にはいたしかねますので、答弁を保留させていただきます。
  100. 上田哲

    上田(哲)委員 答弁は何ですか。(「保留、具体的な内容がわからぬから」と呼ぶ者あり)今、言われたからすぐわからぬでありましょうが、詰め方としては、一般論としてこういう場合はどうかと聞けば、答えなければならぬのです。あなたの立場もあるだろうから詰めませんよ。詰めませんが、条文をこの前で読むようなことをしてもらっては困る。(「調査をさせます」と呼ぶ者あり)ちゃんと言っているじゃないですか、あなた、調査をさせます、そのとおりお答えなさい。時間がないのだから早くしてくれなければだめだよ。——労働大臣がせっかく立つと言っているのだから、局長が立つやつがあるか。
  101. 林ゆう

    林国務大臣 先ほど先生の御指摘、事実関係がまだつまびらかでなかったからああいった答弁になったと思いますけれども調査はさせます。
  102. 山崎拓

    山崎委員長 委員長の指名に従って立ってください。上田君。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 今、大臣が出ていただいて、ちゃんと調査してあるべき労使関係の観点から問題を処理するということを約束していただいた。警察当局もそういう立場でしっかり調べて、もし違法の問題があればきちっとやる、あるべき姿に戻すというふうに考えておられる、そういう趣旨の答弁であったというふうに受け取っておきます。いいですね。いいですね、警察も。
  104. 石瀬博

    ○石瀬説明員 先ほど先生お示しの書類等も拝見させていただく機会等が得られますならば、さらにそういったものを参考にさせていただきまして、よく調査してみたいと思います。  しかし、私どもが先ほどまで現場から聞いた限りの状況では、そういったようなことで既に廃業しておるということとか、あるいはまた警備契約が締結されないということでございますので、よくその辺も調べてみたいと考えております。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 五月のサミットまで一万八千人の警備態勢がとられているので、そっちの方へ手が回らなかったのでしょうが、この程度のことが三日かかってできないようじゃ困るんだということを都民の一人としても申し上げておいて、時間がありませんから、残念ですけれども私は結論を急ぎたい。  うんと事案を挙げて、いかにこれが労働法上に言うところの不当労働行為に当たるか、まじろぎもせず不当労働行為そのものであるかということをいっぱい立証したい。こんなにあるのです。見てください。ぜひひとつ時間の範囲で、写真だけでもいい、こういういろいろなのがありまして、今の御答弁というのがいかに十分でなかったかということが、写真が全部出ています。委員部、全部見せてくれ。ちゃんと出ているのだ。だから、こういうものを見ていただいて、これはしばらく貸しておきますから、特に春闘のさなかであるので、こういう事案が起きては困るということを私はこの場で国会の光に当てて皆さんに御論議をいただきたいと思っているわけです。  しかし、事は中小企業なんです。そしてパートのおばさんたちの問題なんです。この人たちが、工場が移転され、閉鎖され、職を奪われる。弁当を持っていったって全然届かないような遠くへ工場が移転してしまって、ではこっちへ来られるかということは、具体的には首切りになってしまう。これは困るのですよ。パート労働者というものが差別なく保障されなければならないのだという答弁が冒頭にあったことを考えると、百尺竿頭一歩を進めてというのか千歩を譲ってというのか、私がここで御提案をしたいのは、今この月めんがこんな争議をしていたために経営が非常に危なくなっている。したがって、何とかしてこの経営を、地場産業でもありますからもとに戻して、健全な経営に戻して、そして雇用も回復をしてもらいたい。そして、一日も早く正常な労使関係に戻してもらいたい。これが私の最後のお願いなんであります。  小さいところには目が届かぬということもあるでしょうけれども、取り締まりをしっかりしろというのが今の趣旨の中心ではない。何とかそうした力ずく、まあ同族会社ですから、みんな父ちゃん、母ちゃん一緒になって専務や重役をやっているわけだから、そういう中で近代経営を求めることには無理もあったと思うから、百歩譲って新しい労働関係の光を当てていただいて、労働省当局におかれては、この小さな一つの企業の争議という問題を一つの大事なイグザンプルと考えていただいて、正常な労使関係に戻す、そして企業も再建をして、因っているおばちゃんたちを、もうパートであるからということではない社会的事情を踏まえて、雇用の回復をきちっとしてもらいたい、こういうことに御努力をいただきたいものだということを私は労働大臣にお願いをしたいのであります。
  106. 林ゆう

    林国務大臣 中小企業におきましては労務管理の立ちおくれが大変見られますし、また昨今、大企業との間では賃金を初め労働条件、福祉の面でも格差が拡大する傾向が見られます。これらの問題は、国民の大多数を占めます中小企業労働者労働条件、福祉の向上という観点から、労働行政にとりましても最重要課題の一つと考えております。労働省におきましては、従来から中小企業に重点を置きまして各種労働対策を推進してまいってきたところでございますが、さらに、六十一年度からは中小企業労働対策室を設置いたしまして、各方面の御意見、御要望も聞きながら中小企業の人事労務管理の改善労働者福祉の増進のための総合的な施策を展開する所存でございます。  御指摘のように、労働争議が経営に多大な影響を及ぼすことは多いわけでございますが、労働行政が経営再建に直接手を差し伸べることは困難であると考えますが、今申し上げたようなことで、中小企業対策には全力を挙げて意を尽くしてまいりたいと考えている次第でございます。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 委員長、一問だけ。
  108. 山崎拓

    山崎委員長 上田哲君、時間が参りましたので、最後の質問にお願いします。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 今、特別室をつくる、これは六十一年度から。きょうは四月の二日でありますから、まだ二日目だ。したがって、そのせっかくつくった特別室を最初にひとついいように使っていただくという決意を表明していただく。そして、日本じゅうを持っている労働省ではありますけれども、今、国会に幸いにしてお聞き取りいただくことのできたこの小さな争議を、ぜひとも何らかの形で円満に前進、解決をしていただくということに御努力をいただきたい。これが一つ。  そして、私どもは、きょう大臣が誠意を持って答えられたと受けとめさせていただいて、この発言を地域に持っていって争議の解決に努力をするので、ぜひその面についても温かい御支援も賜りたい。もう一遍だけお願いをして終わりたいと思います。
  110. 林ゆう

    林国務大臣 今年度から中小企業労働対策室というものを設置をいたします。それで、各中小企業のいろいろな問題に対しまして、私どもといたしましては、きめの細かい配慮をしながら取り組んでまいりたいと思います。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 ありがとうございました。終わります。
  112. 山崎拓

    山崎委員長 大橋敏雄君。
  113. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私も春闘問題につきまして若干お尋ねしたいと思うのですが、今週から来週にかけまして八六年春闘の最大の山場を迎えることになるわけでございますが、まず春闘を取り巻く環境といいますかそういう状況認識が、私と労働大臣と余り違っていれば論議になりませんので、私はこういうふうに感じておりますが、いかがですかと申し上げますので、よく聞いておいていただきたいと思います。  経営者側の姿勢というものは非常に厳しい。経済の先行き不安あるいは円高デフレの中で、八六年春闘を取り巻く環境は極めて厳しいものがある。これが一つですね。  それから、それに対しまして、労働組合側は生活向上を目指して、今までも毎年のように抑えつけられた格好でございまして、その生活向上を目指し、また内需拡大のために七%もしくはそれ以上の統一要求基準を掲げて挑戦している。これが二つですね。  三つ目は、今や我が国は従来の経済政策及び国民生活のあり方を基本的に転換させるべき時期に来ている。このことは、我が国の新しい経済政策の基本方針を示す国際協調のための経済構造調整研究会というのがあるわけでございますが、その最終報告案にも示されている内容でございます。  したがいまして、賃金問題というのは労使交渉が原則ではございますけれども、単に労使に任せておけばそれでいいんだといった考えはもう通らなくなった、そういう客観的な状況が今回の八六年春闘を取り巻く内容である、私はこういう認識に立っているわけでございますが、大臣はいかがでございましょうか。
  114. 小野進一

    ○小野説明員 この春闘を取り巻く労働経済の環境でございますが、私どもがこの二月に調査いたしました労働経済動向調査によりましても、四月−六月の製造業生産は去年よりも厳しいというものが多くなっておりまして、この厳しい環境の中で雇用安定を図っていくためには内需拡大中心とした景気の持続的な拡大を図っていくことが極めて肝要な時期だろうというふうに考えている次第でございます。
  115. 大橋敏雄

    ○大橋委員 今私がこういうことを認識して今度の春闘を見ようとしているんだけれども、私の認識についてどうですか。もし私の今言ったことについておかしさがあれば遠慮なく指摘をしていただきたいし、訂正を願いたいわけですが、いかがですか。
  116. 小野進一

    ○小野説明員 先生御指摘のとおり、大変厳しい環境にあるというふうに認識いたしております。
  117. 大橋敏雄

    ○大橋委員 一番肝心なところは、従来の経済政策及び国民生活のあり方を基本的に転換させるべき時期に来ているということについて、これは別に異論はないでしょう。
  118. 小野進一

    ○小野説明員 先ほどお答え申し上げましたように、これからの経済運営の第一として内需中心とした景気の持続的な拡大を図っていくことが極めて肝要であろうというふうに認識いたしております。
  119. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに円高デフレ、著しい円高の中で原油価格の値下げ等から経常収支の黒字は解消にまではならず、外圧は強まる一方でございまして、非常に複雑な環境であることを改めて認識をしていただきたいと思います。  そこで、労働者の家計が非常に苦しいんだということを私今から申し上げたいわけでございますが、それは総評、中立労連等の労働組合勤労者家計実態調査というのがありますが、その中でその苦しさが訴えられております。まず総評と中立労連で構成しております八六年国民春闘共闘会議の家計調査を見てまいりますと、名目上の収入がふえても物価の上昇や税金で消えていき、預貯金を取り崩して何とか生活しているんだという実態が浮き彫りになっているということが一つです。  それから全民労協、つまり六十二組織と五百四十万人の全民労協でございますが、この調査でも、ここ数年の可処分所得、いわゆる収入から税金や社会保険料などの支払いを除いた残りの実際に使えるお金ですね、この可処分所得伸びは一から二%台に低迷しているということを述べております。  また、同盟が先般発表いたしておりますけれども、八六年春闘に向けた生活実態調査でも、生活に窮迫を覚えている人が六割以上にもなっている。そういう中から今度統一要求が七%もしくはそれ以上、こういうことになってきたわけでございますけれども、今の労働組合等の実態調査からすればその根拠は極めて明確でございますし、当然の要求であり、実現を期待したいところでございます。  そこで大臣にお尋ねいたしますが、多くのサラリーマンの生活実態について、今述べられたようなことについて大臣はどのように受けとめられているか、お尋ねしたいと思います。
  120. 小野進一

    ○小野説明員 最近の勤労者の家計を見ますと、御指摘のように、可処分所得は着実に改善いたしておりますが、実収入の伸びに比べますと低くなっております。これは御指摘ございましたように非消費支出の伸びが大きいことによるものでございます。それから、支出も着実に伸びておりますが、収入の伸びほどに支出が伸びておらない、これは住宅ローンだとかあるいは老後の蓄え等の貯蓄に充てている面があろうかと思われます。これが家計の圧迫感というものに影響を与える、その可能性は否定できないと思います。その辺の事情がお述べになりました調査にあらわれているのではないかというふうに感じました。
  121. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、難しいことを聞いているのではないのです。今の労働組合の実態調査に示されるように、多くのサラリーマンの生活実態は非常に苦しいものに落ち込んできている、そういう実情を労働大臣認識なさいますかと、こう聞いているわけです。いかがです。
  122. 林ゆう

    林国務大臣 可処分所得は着実に伸びておるというふうに私どもは思っておりますけれども、ただ消費にいわゆる教育費とかあるいはまたローンとか、そういったようなものがかなり高い比率にございますので、それほど可処分所得伸びたような実感が一般のサラリーマンの中では感じられないというようなことがあろうかと思います。
  123. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いよいよ春闘も本番に突入するわけでございますが、これまでの労使の交渉の結果、回答が出ているものがございますけれども、昨年の水準の五・〇三%、これ以下、まさに四%台後半の攻防との見方が非常に強まっているわけでございます。特に春闘相場のリーダー格であります金属労協関係、IMF・JCですね、円高、構造不況の波をもろにかぶっていることから従来の役目が果たせない状況になってきている。金属労協の軸となっております鉄鋼は史上最低と言われました三・一%をさらに割り込むのではないかと見られている状況にあるわけでございます。また日立、三井の両大手の組合がベア要求を見送った、造船重機ではゼロ回答も予想されているわけでございます。また電機、自動車も円高影響で昨年の実績を下回る気配が濃厚になってきております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  こうして労働側を取り巻く環境はなかなか厳しいものになってきているわけでございますが、先ほど申しましたように、従来の春闘労使交渉にゆだねたらそれでいいんだという傍観的な立場にいてもまあまあということだったのでしょうけれども、我が国を取り巻く環境の変化の上に立って労使とも最善の努力を尽くすべきだと私は思うのでございます。こういう点について大臣の指導といいますか誘導と申しますか、そういう点が必要ではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  124. 林ゆう

    林国務大臣 急激な円高によりまして、我が国の経済にとりましてはメリット、デメリット両面がございますが、メリットは徐々に浸透してくるという性格を持っております。そこで、賃上げへの春闘に対してどういうふうなことをやっていくかというようなお話でございますが、経済審議会のリボルビング報告や産業構造審議会、いわゆる産構審の中間報告などで、内需拡大のために中長期的には経済発展成果賃金労働時間短縮に適切に配分することを提唱いたしております。労働省といたしましても、この考えには同感でございますが、労使間の問題につきまして個々の具体的決定には労使がそれぞれ決めてもらうということが大原則でございますので、先生御指摘のように、ここらで労働省しっかり何とかやらないかというようなお話でございますが、事賃金の問題につきまして、あるいは労働時間短縮の問題につきましては、これはそれぞれの労使話し合いの上で決められていくべきもの、このように私どもは受けとめておるわけでございます。
  125. 大橋敏雄

    ○大橋委員 労使交渉が原則であることは十分わかっているわけでございますが、今回は政府関係機関から内需拡大のためには大幅に賃上げをやるべしという趣旨の内容が次々と出されているわけですよ。ただ労働大臣がそんな冷ややかな態度でいたならば、まるでもう労働大臣の資格はないと指摘を受けても仕方ないんじゃないか。むしろ今後の労使の交渉が、我が国を取り巻く経済環境が少しでも上昇できていくように取り計らっていかねばならぬ。今後の交渉で頑張ってもらいたいわけですよね。そこで、鉄鋼や造船に引きずられましていわゆる低位平準化していくと、労働者生活向上はまたまた期待外れになるわけでございまして、また内需拡大の実現もできなくなってくる。そういうことで労働大臣の指導力を発揮して善処していってくださいよ、こう申し上げたわけでございます。  実は三月三十一日に、国際協調のための経済構造調整研究会、座長さんは前川春雄さん、前日銀総裁でございますが、その最終報告書案が明らかになっております。それを見ましても、明らかに、内需拡大のため消費拡大賃上げをと訴えております。  また、昨年の十二月の経済審議会の報告も、また産業構造審議会企画小委員会も、「経済発展成果賃金と休日増・労働時間短縮へ適切に配分すること等を通じ、可処分所得や自由時間の適度な増加を図ることが必要である。」こう述べているわけでございますが、これらの政府系の機関が賃上げ支援の声明を行うということは私は前代未聞だと思うのですね。そこで、内需主導型への大転換の最大の課題が今の我が国の立場ではないか、この点については大臣はどう思われますか。
  126. 林ゆう

    林国務大臣 現在、我が国を取り巻く情勢は大変厳しいものがございまして、その中で特に今問題となっておりますのは、いわゆる労働時間の問題とかあるいはまた賃金の問題とか、いろいろなことが我が国をめぐる経済情勢の中で大変な問題を惹起しているように私どもは思っておりますが、こういった中で、政府といたしましても、いろいろと先ほど御答弁申し上げましたように、経済審議会のリボルビング報告の中にも、中長期的に見て内需拡大のために経済発展成果賃金労働時間に適切に配分するということがうたわれております。  私どもといたしましても、そういったことを踏まえまして、今度の賃上げの問題にいたしましてもそれぞれ労使の中で話し合われることでございますが、払えるところには豊かにそういうことを払ってもらいたいということを期待をいたしておるところでございます。
  127. 大橋敏雄

    ○大橋委員 要するに、これまでの外需依存型経済から内需主導型経済に大転換をしていき、いわゆる可処分所得をふやしてそうした内容を盛り上げていかねばならぬ最大の時期に来ているんだということをしっかり認識しなければならぬと思うわけであります。  そこで問題点なんですが、日経連が生産性基準原理というものを主張しておりますが、これに固執している限り経済成長成果配分が不適切となりまして、また賃金が抑制され、可処分所得も減少し、内需が停滞し、貿易摩擦が回避されない、こういう状況になっていくと私は思うのでございます。私は昨年の春闘の時期も、この委員会でデータを示しながら生産性基準原理の物の考え方がもう崩れているんではないかというものを示しながら、問題点を指摘しながらお尋ねしたわけでございますが、それがそのまま、政府系の各機関の報告書を見ましても、まさに私が心配していたことが指摘されております。  したがいまして、私は、日経連のこうした発想の転換が肝心ではないかな、こう思うのでございますが、その点、大臣はどう思われますか。
  128. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 日経連がかねてから物価上昇というものをゼロにするということを理念といたしまして生産性基準原理なるものを唱えられておるわけでございますが、これはマクロで見た考え方ということで言われておるものでございます。具体的に個々の賃金交渉においては、経営者側は、それぞれ各企業の中長期的な安定成長を念頭に置いた支払い能力の範囲内ということで決めるべきだ、その結果としてマクロ的にいわゆる生産性基準原理で算定された率内におさめる、こういうような主張をことしもされておるわけでございます。  一方、労働側の方は、これに対して、実質可処分所得の増加というものを図って、そうしたことをてこに日本経済構造を内需拡大というものによって経済発展を支えるような構造に転換すべきだ、こういうようなことで、今双方そういうマクロ的な議論というもの、そしてまたそういったものを踏まえて個別企業でのいろいろ論議が行われておる、こういうことでございまして、それぞれ労使双方の主張というものはそれぞれまた意味のあるものではあると思いますが、これはどっちが正しいとかどういう交渉理論が正しいとか、ちょっとその辺については労働省として一概に申し上げかねる問題であるということで御了解いただきたいと思います。
  129. 大橋敏雄

    ○大橋委員 実は先ほど申しました経済・社会政策研究会代表の佐々木孝男さんという方が、三月七日付の日本経済新聞の「経済教室」でございますが、このように言っていますよ。   今年の日経連の労働問題研究委員会報告書は「生産性基準原理は経済情勢の変化にかかわらず、永遠に追求されるべき理想である。われわれが生産性基準原理をとなえ始めた昭和四十四年以来十六年、昭和五十八年度、昭和五十九年度の両年度においては、この理想を達成しえた」と述べている。 その後が問題ですね。   生産性基準原理の考え方は「全国の平均賃金上昇率を国民経済生産性の範囲内」にすることであり、労働分配率不変と仮定すれば、理想達成の時期には物価上昇率はゼロないしマイナスになるはずである。生産性(就業一人当たり実質国民総生産性の上昇率)算定の基礎になっている実質国民総生産はGNP(国民総生産)デフレーターによって算出されるから、物価安定の目標となる物価はGNPデフレーターということになる。八三年度、八四年度のGNPデフレーター上昇率は〇・六%、一・六%でゼロではない。当然、労働分配率の低下が予想されるわけだ。したがって、実質賃金上昇率はGNPデフレーターで計算した場合でも、生産性上昇率よりも低いことになる。消費者物価を使って計算した実質賃金生産性の上昇率格差はさらに拡大する。 といって、生産性基準原理の物の考え方は崩れましたよと指摘していますよ。この責任者の方が明確に指摘しております。  ところが、今回、日経連が相変わらず生産性基準原理のもとに今回の賃金闘争を考えているようでございますが、先ほど申しましたように、労働側の統一要求は七%ないしそれ以上、これに対しまして日経連は生産性基準原理によるベアなし、つまり定期昇給のみの賃上げを主張しております。私はこの点が問題だと言いたいわけですよ。今も申し上げましたとおり、そうした意味からも日経連のこの発想の転換への適切な指導を行うべきである。いいですか。いいとか悪いとかじゃなくて、実際の内容をもって日経連に正しく適切な指導を与えるのが労働省の役目ではないか、こう私は思うのでございますが、いかがですか。
  130. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 政府の考え方といたしましては、経済審議会あるいはまた産構審等からの答申、報告等にもございますように、こういう経済成長成果労働時間あるいは賃金というものに適切に配分をしていただくということが中長期的に必要である、それがまた今後の日本経済内需拡大を通しての発展に寄与するものである、こういう考え方であり、またそういう考え方に立って、そういう考え方を踏まえて労使が話し合われることを期待しておるということを例えば産労懇等の場においても明らかにし、あるいはまた国会においても政府の考え方として総理等からもそういうニュアンスのお答えを申し上げておるというところでございます。
  131. 大橋敏雄

    ○大橋委員 日経連の生産性基準原理の考え方が実際に実施されてきた過去を振り返って、これでは経済成長成果賃金労働時間にも適切に配分していかなければならぬのにそうはなっていないということを先ほどの佐々木孝男さんはこう言っておりますよ。   マクロの労働分配率について、どの程度が公正な分配、効率的な分配を示すか定説があるわけではない。しかしこの三年間の経験は明らかに、労働分配率が利潤にかたよってきたことを示すものといっていい。 と言うのです。つまり、労働分配率は低くなって、利潤の方、企業の方に行ってしまっている。  企業利益の急増と賃金、家計の停滞、経常収支の黒字を超える巨額の海外証券投資、都市部での土地騰貴など労働分配率低下による”金あまり”の兆候と考えていい。 と言っている。つまり、本来ならば賃金を上げて労働者の方に影響していかなければならないのをその基準原理に従ってどんどん自分の方の利潤の方に吸収している、金余りの兆候と考えていいが   実質賃金の停滞は勤労者世帯の消費拡大を妨げる。実質消費の伸びは七九−八四年間に五・〇%増、年率では一%に満たない。同じ時期に実質政府固定資本形成は五・七%減になっている。このため八〇年度以降、国内需要伸びは低水準にくぎづけされることになった。 こう述べています。ですから、これは大いに日経連等に物の考え方について指導をいたすべきだと思います。  次に移ります。  組合の組織率が非常に低下してきておりますね。昭和二十四年は五五・八%でございましたが、昭和六十年は二八・九%、このようにぐんぐんと組合の組織率が低下してきているわけでございますが、いかなる理由なんですか。ちょっとお尋ねしたいと思います。
  132. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 かつてのピーク時五五%が現在二八・九%というふうに下がってきておりまして、特に、昭和四十五年以来年々着実に低下をしてきておるというような傾向があるわけでございます。  この原因といたしまして、私どもの見ておりますのは、一つには産業構造がいわゆる第三次産業にだんだんウエートが移ってきている。裏を返しますと、こういう第三次産業というのは労働組合の組織化の非常に難しい業種、業態であるということが一つ大きな問題でございます。それからまた、就業構造の変化ということで、いわゆるパート労働者とか派遣的労働者というような方がふえてきておる、こういった方々もなかなか組織化が難しい。それからまた、いわゆる高齢者層の就業がいわゆる定年延長というような形でふえてきておる、こういう方たちについてもなかなか組合の組織化が一般的には難しい対象とされておる、こういうような構造的な問題も一つあると思います。いま一つは、若者を中心といたしますいわゆる労働組合離れというようなものも一面においては進んでおるというようなこともこうした組織率低下の一つの原因ではないか、こんなふうに見ておるところでございます。
  133. 大橋敏雄

    ○大橋委員 組合の組織率の低下の理由はいろいろあると思いますが、一つは、労働組合に対する魅力が低下してきているのじゃないかな。というのは、賃上げにしても何にしても余り期待どおりになっていかないし、今回などは特に要求を貫徹しなければならない客観情勢ができ上がっているのですけれども、それでもなかなかうまくいかない。つまり労働組合に対する魅力がなくなっていっていることも一つではないか。  しょせん経営者側に対して労働者というのは非常に弱い立場にある。だからこそ労働組合でも結成して、団結の力で、あるいは労働三権等の保障のもとにその目的を達していくということでなきゃならぬわけでございますが、こうした組織率の低下というのは労働省の行政指導も問題があるのではないか。労働条件の確保については労働組合の組織率アップを図ることが緊要ではないかと思うのでございますが、この点はいかがですか。
  134. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 こういう労働組合の組織率の低下傾向につきまして、労働組合側としては大変な危機感を持っておられるわけでございまして、最近の労働組合の運動方針等におきましては、パートの組織化の問題であるとか、あるいはまた中小企業の組織化の問題であるとか、あるいはまた魅力ある労働組合づくりといいますか、そういうことを目指して、労働組合の共済活動等の積極的な推進というようなことなども今懸命に努力をされておるというふうに承知をしておるわけでございますが、この労働組合をつくる、組織化を進めるということは、これはやはり団結する自由あるいはまた団結しない自由、そういう団結に対する介入というような問題もまた生ずるわけでございますので、こういう労働組合の組織化問題については政府あるいは労働省は中立でなければならぬ、こんなふうに考えておるところでございます。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、先ほど私は労働分配率の問題を取り上げたわけでございますが、この資料を見てまいりましても、昭和五十六年度は五五%、五十七年度は五五・五%、六十八年度は五五・八%、こういうことだったのですが、五十九年度はがくんと下がって五五%にまた戻りましたですね。六十年は、一月から十二月の内容でございますけれども、五四・五%、また低下をいたしておりますが、特に五十九年度などは、企業の営業収益を対前年度比で見ますと、二〇%も四〇%も上がったのですね。こういう好成績にもかかわらず賃金の方は抑えられてきた。こういうことは先ほど言った生産性基準原理の考えがあったからだろうと私は思うわけでございますので、こういう現実の姿の上からもう一度そういう点を整理して、適切な指導を労使にしていただきたい、こういう考えです。  最後に、私はこれで終わりたいと思いますが、労働大臣、政労懇談会というのがあるんじゃないでしょうか。労働組合等の幹部の皆さんと、大臣中心労働省との間で懇談会が持たれますね。もし近くそういうものが行われるとするならば、労働組合の皆さんをしっかり激励してほしいのですよ。特に今回の春闘などは、ただ目標を達成すればいいというような安易な気持ちだけではなくて、日本経済あるいは貿易摩擦等を解消していく内容も含まっているんだから張り切って頑張りなさい、これくらい激励してくださいよ。よろしいですか。
  136. 林ゆう

    林国務大臣 先生御指摘の件は産労懇のことかと思います。産労懇はたびたび開かれておるわけでございますが、先生御指摘のようなことは、労働省として組合側あるいはまた使用者側にこれこれというようなことを申し上げる場ではございませんで、お互いにその場でいろいろな労使の問題を取り上げてディスカッションをしながらそれをお互いの中に反映をしていく、こういった性格のものでございますから、会合の開かれるたびにそれぞれのその時点の問題を労使が忌憚のない意見を吐いて懇談をするという組織でございます。そういった中で春闘につきましてもそういった話が今までもなされておりますことをお話し申し上げ、私の御答弁とさせていただきます。
  137. 大橋敏雄

    ○大橋委員 春闘もいよいよ山場であり、この後半が問題ですから、ひとつできるだけ労働者立場に立ち、そして日本経済のことを思っていい方向に進みますように御努力を願って、質問を終わります。
  138. 山崎拓

    山崎委員長 塚田延充君。
  139. 塚田延充

    ○塚田委員 現在、我が国の経済には三つの課題があると私は分析しておりますが、それは皆様も御承知のとおり、対外経済摩擦の解消、そして二番目には円高による景気減速が進んできているけれども、それにどう対応するのか、そして中曽根内閣を初め自民党政府が常々言っております「増税なき財政再建」、この三つだと思います。  特に近年、我が国の大幅な貿易黒字を背景として、対外経済摩擦の激化というのは諸外国における保護貿易の台頭を許すような情勢となっておりますし、一方では我が国の国際的な孤立を招きかねない、そのような危機的な様相にあることは御承知のとおりだと思います。  ところが、幸か不幸かというか、円安、円安ということでおったのが、急速にG5以来円高になり過ぎてしまった。何でも過ぎたるは何とかというようなことでございまして、結局のところ輸出関連産業を中心といたしまして大変な悪影響を今もたらしておりまして、我が国の景気は急速に悪化状況に進んでいるんじゃないかということが個々の産業の方から報じられているところでございます。となりますと、税収の面でございますけれども景気が悪くなれば見込んだほど税収が伸びないということになると、またまたうたい文句でございます「増税なき財政再建」というのは達成が苦しくなってくる。さあこの三つの課題をいかに総合的に解決するかというのが大変な課題になっているわけでございますけれども、そんな中で最近では政府はよく民活、民活ということを言っておる。総理も力を入れておられる。しかしながら、どうもこれは唱え文句だけで、そう簡単に民活が経済に活を入れるほどの、いわゆる方向転換になるほどの影響を与えるとは私どもは判断しておりません。  何よりも、我が民社党が常々主張しておりますように、今の経済運営がどうも縮小均衡型になり過ぎているんじゃなかろうか。ここで、「増税なき財政再建」ということはあるけれども、そういう原則を踏まえた上で、積極的な拡大均衡型の経済政策に転換する必要がある。そして、その柱というのは、一般的な言葉ではありますが、内需拡大、これしかないということは衆目の一致したところだと私は信じております。抽象的な概念ではございますけれども内需拡大ということについて労働大臣としては基本的にどのような御見解をお持ちなのか、御回答をいただきたいと思います。
  140. 林ゆう

    林国務大臣 政府は、内需中心とした景気の持続的拡大を図るとともに、雇用の安定を図ることを経済運営の第一と考えております。  今後とも政府といたしましては、円レートの動向とその国内経済に及ぼす影響に十分注意を払いながら、引き続き機動的な経済運営に努めることといたしておりますので、予算成立直後を目途といたしまして総合的な経済対策検討してまいる所存でございます。  労働省といたしましても、関係省庁と連携をとりながら、雇用の安定、勤労者生活の安定に努めるとともに、経済対策の策定、実施に際しましても、内需拡大が必要との認識に立ちまして取り組んでまいりたいと思っております。
  141. 塚田延充

    ○塚田委員 内需拡大をしていくためには三つの方策が考えられているわけでございます。一つは減税であり、二番目には公共投資であり、三番目には賃上げでございます。  私は政治家として非常に未熟でございますから、いろいろな本を読んでもこの三つぐらいしかずばりというのは見当たらないのですけれども、中曽根内閣の重要閣僚であり、また政治家として大先輩でございます労働大臣として、この三つ以外に内需拡大のための方策、こんなものがあるよというのがあるのかどうか、なければ、この三つだけなのか、お答えいただけたらと思います。
  142. 小野進一

    ○小野説明員 大きな基本的な柱はこの三つかと思いますけれども、財政金融政策を通ずる施策だとか、そのほかまだあろうかと思いますが、基本的にはこの三つが大きな柱だと思います。
  143. 塚田延充

    ○塚田委員 この三つしかないということを、大臣ではなかったけれども、御確認いただいたわけでございます。  まず第一の減税でございますけれども、私ども民社党を初めとする野党は、この減税必要性をいやというほど強調してまいったわけでございますが、六十一年度の予算を見る限り、これは結局は実施されないというわけでございます。  二番目の公共投資でございますが、これも六十一年度の予算においては、前年度に比べて逆に二・三%減ってしまう。三年連続マイナスということになっておるわけです。となると、内需拡大と言ったって絵にかいたもちになってしまう。  そして今、賃闘の時期でございますけれども、この賃上げもだめということになってしまったならば、前に申し上げました経済摩擦の解消も、景気の上昇も、「増税なき財政再建」という政府の旗印も、何から何までだめになってしまう。ところが幸いなことに、この三つのうちの一つに大きな影響力を持っておられる労働省が頑と構えておられる。そしてある程度の力を発揮できるのが賃上げの件だと思います。  私は賃上げ減税、公共投資と並んで三つの要素の一つであるというふうに申し上げたわけでございますけれども、この賃上げ内需拡大に対してどのような効果を及ぼすのか、その辺について労働省はどう認識されておられますか。
  144. 小野進一

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  賃上げは、基本的には家計収入の増加をもたらしまして、これに伴う消費支出の増加を通じて内需拡大に資すると考える次第でございます。  特に家計による最終消費支出がGNPで五八%を占める今日、賃金のアップというのが、もしその賃金がアップしても消費の割合が変わらないとすれば、消費に与える影響というのは大きいのだろうと思うのでございます。  ただ、賃上げが他方ではコストの増加を通じて企業収益の減少をもたらし、そして設備投資を縮小させるとか価格の上昇を招くとかという別の面も持っている、このことも注意しなければならないと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、内需中心として持続的な経済拡大を図ること、これが当面、極めて重要なことでありまして、経済発展成果賃金などに適切に配分することは、中長期的に見て、勤労者福祉あるいはその生活の向上のみならず、内需中心の均衡のとれた経済成長の達成という面からも望ましいと考えているわけでございます。
  145. 塚田延充

    ○塚田委員 四月二十一日から三日間、労働サミットというのが東京で開かれることになっておりますが、これは例年、定例になっておりまして、いわゆるサミットの前に、サミットが行われる土地において開かれているわけであり、これにつきましては労働大臣も御承知だと思います。  そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、今までずっと継続的に行われておりました労働サミットの意義をどのように理解しておられ、そしてこれまでこの労働サミットが果たしてまいりました実績を労働省としてはどのように評価されているのか、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  146. 林ゆう

    林国務大臣 労働サミットは、いわゆるサミットに先立って、そのサミットの場に労働組合意見を反映をさせる、そういったような意味を持ちまして、サミット構成国の労組の指導者などが一堂に会して討議を進めるため、五十三年以降、自主的に開催をされてきたと承知をいたしております。  そこでの討議は、いわゆる先進諸国のうち民主的労働組合の代表的意見として傾聴に値するものと認識をいたしておりまして、その御意見を参考として、今後の労働政策の展開に反映をしてまいりたい、このように思っている次第であります。
  147. 塚田延充

    ○塚田委員 現在、伝えられておりますこの労働サミットのスケジュールの中で、第二日目でございます四月二十二日に、労働サミット参加者が中曽根総理に面会を求めて会談されるということを私はマスコミなどを通じて聞いているのですが、このようなスケジュールアップされておることを労働省は御存じでしょうか。
  148. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 日本のこの労働サミット関係の組合の方から、総理との会見の場のセットについて御要望がございまして、今先生おっしゃるような線で準備を進めつつある、そういうことでございます。
  149. 塚田延充

    ○塚田委員 労働サミットにおきましては、サミットと同様に最終的には共同声明をまとめ上げるのを課題としているわけでございまして、既にそのたたき台ができているというように伝えられております。この中で、普通は特定国を名指しで特定の案件を共同声明の中に盛り込むということは、まずなかったはずでございますが、今回伝えられております情報によりますと、共同声明が我が日本を名指しで勧告といいましょうか忠告を行うということが伝えられておりますけれども、どんな内容になるのか、労働省としては確認されているでしょうか。
  150. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 正式にはこの総理との会見の場においてそういったものが日本政府に提出をされるということで承知をしておりますが、伝え聞いておりますのでは、その内需拡大政策への転換、あるいはまた、そのための賃上げなり労働時間短縮なりといったような問題についての指摘等がされておるというふうに承知をしております。
  151. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、私が得た情報を申し上げますと、共同声明案は既に三月三十日にまとまっておる。それによりますと、「必要な経済成長を実現するため日欧国内需要拡大必要性を強調。日本政府政策がその方向で調整されていないと名指しで批判して「日本政府実質賃金引き上げ労働時間短縮大幅減税社会資本蓄積のための措置を講じることは、日本経済世界経済双方利益にかなう」と主張している。」ということでございます。  申し上げましたとおり、日本政府に対して主要先進国がはっきりと名指しで申し入れを行う、これは考えようによっては内政干渉ともとりかねないわけでございますけれども、現今の経済摩擦の状況などを見た場合、いたし方のないことだなという気もいたします。それは、これまで日本政府内需拡大を口先だけで言ってお茶を濁しておって、結果的には縮小均衡型の経済運営をずっと踏襲しておることに対する痛烈な批判じゃないかと受けとめなければいけないと私どもは思っているわけであります。政府はこうした批判を真摯に受けとめて対策を講じていかなければいけないと思います。  そこで、今私が申し上げましたように、共同声明というのはずばり実質賃金引き上げを求めているわけでありますが、このような共同声明が出た場合、私は出るというほぼ確定した情報をつかんでおるわけでございますが、そして、私が今読み上げた中身そのものが四月二十二日の中曽根総理との会見において申し入れされるはずでございますが、労働省としてどういう対応をすべきと考えておられますか。
  152. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 労働時間短縮の問題につきましては、労働省あるいは通産省等々関係省庁とも協力しながら、例えば時間短縮のための週休二日制の問題あるいは年次休暇の取得の問題あるいは連続休暇の消化の問題とか、現在いろいろ鋭意努力をいたしておるところでございます。  また、賃金につきましては、これは政府賃金を上げるというわけのものではございません。これは労使で決まる問題でございますので、あえて申し上げれば、実質賃金の向上という観点から、一層物価の安定に努力する形によって現在の賃金の実質的価値を高めることが政府として直接対応し得る問題であろうと考えておるところでございます。
  153. 塚田延充

    ○塚田委員 賃上げの問題につきましては、確かに個別企業といいましょうか、そこの労使の交渉事項でございますから、政府が云々言える立場のものではないということは百も承知ですけれども世界経済全体の中から見ても、今の日本労使がやっておることが非常に悪影響に近いような状況になっておる。となれば、政府としての責任があるのじゃないか、このような背景のもとに、ずばり政府に対して、政府賃上げをしろというのじゃないけれども、そのような誘導政策なり政府としてできることをきちんとやりなさいよという勧告になるはずでございまして、それに対しては、賃上げのための環境整備について具体的にこういうことをやりたいというような答えを出さないことには、他の諸国は納得しないと思うのです。  労使交渉にゆだねているということだけを言えば、前から全く同じで何ら変わりないじゃないか、いつまで日本世界に対して迷惑をかけ続けるのだというようなことで中曽根総理が立ち往生すると思う。そんなことのないように労働省として賃上げに対する指導方針といいましょうか、もしくは日経連とかいうような経済団体に対するマクロ経済からの、また日本経済全体からの、世界経済全体からの必要性を指導するとかいうことが必要な場面に追い込まれて、その回答を要求されることになると思うのです。その件についていかがでしょうか。
  154. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 たびたび申しておりますが、賃金につきましては、経済成長成果労使間の直接の話し合いで適切に配分される、正確に配分されることを政府としては期待するということ以上に、具体的に政府が、賃金をもっと上げるという形で介入していく、あるいは逆に賃金をもっと下げるという形で場合によっては介入していくというようなことがなし得るような性格のものでない、そういった点はひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  155. 塚田延充

    ○塚田委員 今、対外圧力ということで賃上げ必要性を強調させてもらったわけでございますが、国内においても、それも政府内部のきちんとしたいろいろな審議会においても、賃上げ必要性が何回にもわたって指摘されているわけでございます。  例えば、昨年十二月の経済審議会の報告では、「GNPの約六割を占める個人消費の拡大を図るため、技術革新など経済発展成果賃金労働時間短縮に適切に配分すること等を通ずる可処分所得や自由時間の適度な増加、物価の安定等を図る。」という指摘があり、本年二月の産業構造審議会の「二十一世紀産業社会の基本構想」でも「消費者の消費に対する欲求を現実の消費に結びつけるためには、第一に、可処分所得伸びを確保することが不可欠である。そのためには、まず、中長期的な観点から賃金の決定が可処分所得の増大につながるよう検討されることが重要である。」と指摘されております。  このように国内の、しかも政府系の審議会でも賃上げの重要性をはっきりと指摘されておるわけでございますから、これについて労働省も、単に労使間の交渉という百年一日のごとき逃げ口上ではなくて、労働省労働という名前がつくからには労働行政全般をリードする立場にあるわけですから、何らかの指導方針というか、指導できないということまでは私はわかるのだけれども、国家のために新機軸を生み出さなければ、結局、我が国経済はへたってしまう。そういう意味におきまして、このような審議会の指摘による賃上げの重要性を労働省としてはどのように受けとめ、どのように生かしていこうとされているのか、見解を求めます。
  156. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 日本経済を現在内需拡大型の経済構造に変えていかなければならぬということ、そしてそのためには経済成長成果賃金あるいは労働時間短縮というものに適切に配分されていかなければならぬ、こういう考え方については我々も全く同じ考え方でございます。労使が今後、その成果を適切に配分されるように、こういう考え方を踏まえて交渉の場で交渉していただくことを期待しておるわけでございまして、こういう労使のあるいは公益のトップの今の産労懇等でもそういった考え方を申し上げておるというようなことでございまして、先生おっしゃるウルトラC的な形で賃上げあるいはまた賃下げを誘導するというような、賃金政府が上げたり下げたりというような形での具体的な方法論というのは我が国においてはなかなか難しいものではないだろうか、こんなふうに考えております。
  157. 塚田延充

    ○塚田委員 経済政策の上で賃上げが必要であろうということについての認識労働省としては十分持っておられる、しかし、それを指導するわけにはいかぬ、こういうことでございますが、昨年十月に政府が決定した内需拡大策の中に、どうも内需拡大のために賃上げが必要であるという認識がほとんど盛り込まれておらない、こんなように私には受けとめられるわけでございます。  そういうわけで、労働省としては賃上げ経済政策上有効な手段であるという認識を持たれておるならば、政府内部でもっと頑張っていただいて、内需拡大のための環境条件の整備という呼びかけを働きかけていって、例えばこの政府内需拡大策の中に、抽象的ではあるかもしらぬけれども賃上げのための環境条件の整備を政府は一生懸命やらなければいけないというような一項目を、精神規定になる危険性はあったとしてもぜひ盛り込むように労働省としては政府部内で頑張るべきだ、このように考えておりますが、いかがでしょうか。
  158. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 それぞれのそういうペーパーの性格にもよるかと思うわけでございますが、具体的に賃上げというものを織り込むとした場合に、労使の自主的な交渉でこの賃上げがあるいは賃金が決まるという原則というものが大原則としてある。それに対してあたかも具体的に介入してどうこうするというような誤解を受けるようなわけにもまたまいりませんし、その辺はなかなか難しいところであろうかと思うわけでございます。
  159. 塚田延充

    ○塚田委員 確かに、労使間交渉に政府であれもしくは経営者団体であれ団体として介入するということはやるべきじゃないし、できないことだと思います。しかしながら、例えば日経連のような経済団体が、先ほどから論議がございますように、生産性基準原理などというようなことで単に抑え込めばいいというような指導を政府にかわってしておるんじゃないか、こういうような実態があるわけでございます。確かに、日経連のことは労働布が指導しているというのは私はそうは申し上げませんけれども、この日経連の指導内容というのは、私に言わせれば、昔のマルクス・レーニン主義みたいなことを教条主義と言うけれども、これこそ教条主義の最たるものだと思うのですよ。  生きた経済の状況を全然踏まえずに、確かにインフレが高進しておるそんなときには、日経連が指導原理として出した生産性基準原理というのは日本経済全体を鎮静化させるというか正しい発展をさせるためにあったかもしらぬ。単に労使交渉を抑え込むとかいうよりも、マクロの経済政策の上でも意味があった時期があったと私は思う。しかし、今ではこれがいかに時宜に適しておらぬのかということ、これを日経連の方々はわからない。  そして、日経連の方々は言うならばサラリーマン経営者の成り上がり、すごろくの上がりの方ばかりです。そして、今の経営者というのは単に自分の保身を考える。保身を考える立場からいえば、労使交渉においてはそれは幾ら出す原資があったって、抑えて抑え込めばそれだけ経営者としての実が上がる。そしていわゆる日本経済全体のことを考える余裕がない。本来そういう余裕がないところに対して経営者団体というのはもっとマクロ的な意味でもって指導しなければいかぬものを、石頭でもってつまらぬ指導をされておる。  こういうような状況でございますから、確かに労使間交渉には介入できないけれども、日経連のそういう誤った教条主義の指導方針に対しては、世界経済の中に置かれた日本経済の今の状況、そして賃上げができるならば日本経済のためにいかに役立つのか、そして経営者が属しておってその恩恵を受けておるこの日本経済の中で、いかにめぐりめぐっては経営者のためにもなるのかということを啓蒙する必要があるのじゃないかと私は思っております。  非常に難しい問題だと思いますけれども、教条主義のために日本経済がみずから坂道を転げ落ちておって、そしてその経済発展の恩恵を一番受けるべき経営者がみずからの首を絞めておるということを私は強調しておきたいと思いますし、その辺のことだったらば、労働省は指導といいましょうかアドバイスするチャンスはあるし、またすべきじゃなかろうか、そういう場なり方法なりどのように持っていくのか、私は具体的には発言できませんので、ぜひ労働省としてお考えいただけたらと思っております。  さて、今まではマクロ経済立場から賃上げ必要性を強調させていただいたわけでございますけれども、実はそんなところではなくて、勤労者全体がいかに賃上げ必要性を痛感しておるか、悲痛な叫びであるかということをここで御認識いただきたいと思います。  まず労働大臣にお願いしたいのですが、私、前もって、そのような労働者のというよりは労働者の家計を預かっておる労働者の奥さん方の悲痛な生の声をぜひお聞きいただきたいということで一番新しい資料として、多分三月三十日に発表されたはずでございますが、全日本労働総同盟が出しておられます「86賃金闘争に向けての生活実態奥さんアンケート調査」、これの「結果報告書」が出ており、お忙しいでしょうけれども、ぜひ目を通してほしいとお願いしたのですが、目は通していただけたでしょうか。
  160. 林ゆう

    林国務大臣 同盟が行いました「86賃金闘争に向けての生活実態 奥さんアンケート調査」という小冊子をちょうだいいたしました。
  161. 塚田延充

    ○塚田委員 お渡しさせていただいたことは事実でございまして、目を通していただいたでしょうか、お忙しいけれどもいかがでございましょうか。
  162. 林ゆう

    林国務大臣 ちょうだいいたしましたということは、熟読玩味とまではいかなくても、さらりと読まさせていただいたということでございます。
  163. 塚田延充

    ○塚田委員 いや、お忙しいのですから当然でございまして、結構でございます。  この調査結果によりますと、奥さん方の六割強の方が、以前と比べて生活が「苦しくなった」もしくは「少し苦しい」と答えておられるわけでございます。そして、何よりも私どもの胸を打ったのは、そのアンケートの中に自由に感想を書いてもらう欄があったわけでございますが、その中には、例えば夫が四十歳代のある専業主婦だそうでございますけれども、「外出するのにもお金がなく、大切な用事以外にはほとんど外出もなし。一回外出したら生活費にもひびくので、生活苦としかいいようがない。」などというのもありますし、また、「十年前と比べ役職は上がって労働時間も長くなったが、年収が変わらないこの現実が淋しい。生産性向上には十分に尽くした結果だから、なおさら……。」エトセトラでございまして、かなり前から我が国の勤労者は既に中産階級になっておるんだというようなことが宣伝されておるけれども、実態は今申し上げたような状況でございます。  働けど働けど我が暮らし楽にならざりというところで勤労者があえいでおる。そしてそのあえいでおる大もとというのはここ数年の間ほとんど実質賃金伸びていない、これに対する憤りに近い悲痛な叫び声だと私どもは受けとめておるわけでございます。  大臣、ぱらっと目を通してくださったそうでございますが、このような奥さん方の悲痛な叫び声に対しましてどのような感想をお持ちになられたでしょうか。
  164. 林ゆう

    林国務大臣 先生御指摘の同盟の調査結果につきましては、傘下の組合員の生活実態とその意識を多面的に把握をした一つの貴重な資料であると私どもは受けとめておりまして、こうした組合員の家族の方々のニーズを的確に把握されて労働運動を進めておられる姿勢には敬意を表するものでございます。  勤労者生活の総合的な充実を図っていくべき立場にあります労働省といたしましても、労働組合が行う各種調査の結果について、政策の立案、推進の参考にさせていただきたいと思っております。
  165. 塚田延充

    ○塚田委員 先ほど別の委員からも質疑が行われたようでございますが、昭和六十一年度の政府予算案では、人事院勧告の実施を凍結した年にもずっと行ってきた給与改善費の計上を本年度は行っておらず、すなわち六十一年度人事院勧告を予算上の裏づけのないものとしております。公務員の賃金及びその改定に伴う費用は義務的費用であって、また、政府勤労者所得伸びを勘案して税収の伸び予算に計上しているわけです。となると、これは矛盾したことでございまして、人事院勧告が民間準拠である以上勤労者所得伸びを見込んで給与改善独を計上すべきじゃなかろうか、このように私は考えております。  そこで労働省にお尋ねいたしますが、労働省が管轄されております公企体労働者賃金改定のいわゆる有額回答はどういう扱いになるのでしょうか。ゼロ回答になるのでしょうか、的確にお答えください。
  166. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今回、給与改善費が計上されていないということに関連してのお尋ねでございますが、この給与改善費は給与改定に備えるための単なる財源措置でございまして、それが当局の有額回答の目安になるとか、あるいはまた労使の自主交渉を制約するというようなものではないと考えております。実際、これまでの例を見ましても、給与改善費が計上されておりませんでした昭和四十五年度以前におきましても一定の有額回答も行われておる、あるいはまた給与改善のための仲裁裁定も行われておるということでございます。そういう意味におきまして、有額回答の問題あるいはまた仲裁裁定の問題は給与改善費の計上のこととは関係がないということで御理解をいただきたいと思います。
  167. 塚田延充

    ○塚田委員 賃上げにつきましては労使間の交渉にゆだねざるを得ないという事実はそのとおりでございますが、今や労働省は、先ほど私が申し上げましたとおり世界じゅうから注目されておる日本政府の中の最重要官庁の一つになっておる。すなわち賃上げのための条件整備を行うべき重要なポジションに置かれておるわけでございますので、今後とも、労使間の話だからというそれだけの考えではなくて、十二分に労働省としての役割を果たし、世界経済の中に貢献できるポジションにあるということをよく認識いただきまして、賃上げのための条件整備にいろいろ知恵を絞って勤労者のために頑張っていただきたいとお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  168. 山崎拓

  169. 浦井洋

    浦井委員 まず中労委の問題についてお尋ねをしたいのですが、今労働者の間からは中労委の命令や決定が出ないとか非常に遅いとかあるいは非常に悪いというような不満の声が続発しておるわけであります。  事実、平均処理日数の総平均が五十九年度で千百三十四日かかっておる。再審申し立ては八割近くは経営者から出ておる。しかもその命令や決定、四割くらいが改悪されておる、こういうことであります。また、全体の事件数がふえておるにもかかわらず命令、決定件数が減っておる。四十八年には三十二件あったのが六十年には十五件になっておる。繰り越しの係属件数が六十年には二百十八件、これも非常にふえておるわけなんです。こういうような事態について労働省としてはどういうふうに考えておるのか、まず最初にお答え願いたいと思います。
  170. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 中労委におきまして不当労働行為の審査が長期化をしておる、あるいはまた地労委においてもそういう傾向があるというようなことで、かねてから各方面から審査の迅速化について強い要望が寄せられておりますことは十分承知をいたしておるところでございます。  このため労働省としてもいろいろ努力を続けてきておるところでございまして、中労委の審査を担当します課をさらにふやすということ、あるいはまた審査官、審査室、こういったものの設置などをいたしまして中労委の事務局体制を強化拡充するなど努力をいたしておるわけでございまして、何とかこの不当労働行為事件の審査が促進されるように、どういう条件整備に努力をしてきたところでございます。  今後とも事件の迅速な処理というものに一層努力をしていかなければならないものである、こんなふうに考えておるところでございます。
  171. 浦井洋

    浦井委員 加藤さんの前向きの答弁は、それはそれでよろしいのですけれども、しかし現実にはやはり改善されていないわけなんですよね。労使関係法研究会報告書でも、おくれを解決するようにこれが指摘されておる。それ以降もほとんど改善されておらぬ。これはこういうところでやっておる限りは議論になるのですけれども、実際に不当労働行為に対して闘っておる労働者は、これがおくれると大変な負担になるわけなんです。早く命令や決定を出すために、もっと体制づくりのために労働省として努力すべきではないかと私は思うわけなんであります。  その内容をよく見ると、命令作成作業に最も時間がかかっておる。今の研究会の報告書の段階別処理日数を見てみますと、結審してから四百日以上もかかって命令などを出しているところに問題があるのではないかと私は思うのです。  だから、私の提案ですけれども調査、審査あるいは命令交付までの期間の目標を決めるべきではないか、むしろ強制的に。強制的にと言うたらおかしいですけれども。また、結審したら裁判で行われているように救済命令の言い渡し日を明確にする。そういうような、ある程度強制力を果たさなければいつまでたっても改善されぬ、そういうように私は提案したいわけなんです。そういうふうにすれば、労使の方も和解に向けて努力をすることは間違いないわけであります。具体的な提案でありますから、具体的にお答え願いたいと思います。
  172. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘の御提案の趣旨はわかりますが、一面におきまして、やはり中労委で事件解決の一番多いパターンは和解という形でございます。そうすると、命令で解決するというのも必要な場面もございますが、やはり和解で解決する、労使双方納得の上で解決するということを一つの姿として描きます場合に、和解という努力がされておる、あるいはまた特定の日を設定することによってそれで和解のチャンスをつぶすというような問題等もございますので、おっしゃる趣旨はよくわかりますが、やはりそういう和解の可能性をさらにつぶすようなことでのそういう設定というのも、一面においてまた問題があるのではないかというふうにも考えるわけでございます。
  173. 浦井洋

    浦井委員 私は、命令で和解をつぶせというようなことは言ってないわけです。今の現状からすれば、そういうふうに言い渡し日を明確にしたりなんかすることによって、むしろ和解を促進するのではないかということを言っているわけなんですね。それは議論してもあれですけれども。  もう一つの問題は、いろいろな事件の六割以上が関西で起こっているわけなんです。だから、研究会の報告書でも言っておるのですけれども、中労委の関西出張所をつくってみたり、あるいは現地審問をもっと頻繁に行うべきではないか。争議中の人たちは経済的にも恵まれておらぬわけですから、そのたびに上京して東京へ来るということになるわけですから、労働者救済のためにもそういうような方法をとるべきではないかと思うのですけれども、どうですか。
  174. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 不当労働行為事件を審査し、決定する権限は公益委員に属する、こういうことでございまして、通常公益委員の指揮のもとに審問、調査等が進められておるわけでございます。最終的には、この公益委員全員の参加いたします公益委員会議において決定がされるというような仕組みになっておるわけでございます。  そういう意味で、この出張所の設置、あるいは事務職員の出張による案件処理というようなものには、制度上いろいろ検討を要する問題があると思うわけでございます。特に、この出張所の設置ということになりますと、一面、また行政機構の簡素合理化、こういうような面からもいろいろ問題もあるところでございまして、一つの御提言としてはわからぬでもないわけでございますが、これはなかなか容易な問題ではない、こんなふうに思います。
  175. 浦井洋

    浦井委員 この問題はこれでやめますけれども、公益委員なんかの方でも大学の教授が多いわけでしょう。先生が多いわけでしょう。悪く言えばマンネリになっている。忙し過ぎるというようなこともあるわけなんで、これは簡素合理化の傾向だといいながら、やはり労働者の救済の方が大事ですから、そのためにも一層努力してください。大臣、一言。
  176. 林ゆう

    林国務大臣 審査の迅速化のためにさらに努力をしてまいりたいと思います。
  177. 浦井洋

    浦井委員 全体として前向きだったというふうに私は受け取っておきたいと思うのです。特に加藤さんには、しかとそういうふうに私は受け取っておる、だからそういう点で期待をしておる、そういうふうに理解をしておっていただきたいと思うのです。  それから、今までも議論になりましたけれども春闘の問題でありますが、労働者賃金というのは、税金や社会保険費用、非消費支出ですね、これがだんだんふえていって可処分所得が年年低下しておる。数字を挙げてみますと、昭和四十九年から十年間を見ましても、実収入は約二百五十八万から約五百十四万へ二倍くらいになっておるわけですね。実質可処分所得は約二百三十六万から二百六十一万とわずか一〇・三%しか伸びておらない。だから、そういう意味では労働者あるいは労働組合が大幅な賃上げあるいは非消費支出の縮小のために減税を要求するのは当然だというふうに私は思うのです。  政府の方でも内需拡大が緊急の課題だというふうに言われておるわけなんでありますけれども、その内需拡大のためにも大幅賃上げが必要だ。私は、その点でまず大臣の決意を聞いておきたいと思う。
  178. 林ゆう

    林国務大臣 賃金の上がるということは、中長期的には技術革新など経済発展成果を適切に配分することということになろうかというふうに思います。そこで、今日の課題である、賃上げによりまして内需中心の均衡のとれた経済成長の達成という面からも望ましいということを私ども認識をいたしておるわけでございます。
  179. 浦井洋

    浦井委員 どうも大臣のお答えは抽象的なんですけれども、総理の諮問機関である経済審議会では、個人消費拡大のため「経済発展成果賃金と休日増・労働時間短縮へ適切に配分する」必要がある、こういうふうに述べておるわけですね。それから、産業構造審議会でも、八三、八四年度の名目、実質賃上げが実質労働生産性の伸びを下回ってきた、こういうふうに指摘しておるわけなんです。だから、やはり賃上げ労働時間の短縮というのは非常に大事なんで、これに対してどういうふうに取り組むか、これも大臣にひとつしかとした御返事を賜りたいと思います。
  180. 林ゆう

    林国務大臣 そういった考え方は適切な考え方だと私は思います。そこで、そういった考え方を踏まえながらこれから問題に対処してまいりたいと思っております。
  181. 浦井洋

    浦井委員 それならひとつ賃上げ労働時間の短縮、時短のために一生懸命やってくださいよ、任期中は。  それから、休暇と労働時間の問題ですけれども、年次有給休暇を消化すると約一兆二千四百億円の内需拡大になる、こういう朝日生命の試算もあるわけなんですね。だから、こういうことをやれば当然雇用拡大になるわけですし、これについてどう思われますか。
  182. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 年休消化が内需拡大に効果があるという朝日生命の件につきましては、先ほども他の委員から御質問がございましてお答えをしたわけでございますが、ただ、それが雇用拡大にどういうふうにつながっていくかという問題になりますと、いわゆるワークシェアリング、時短によるワークシェアリングが個々の企業あるいは個々の産業において即、効果があるかということになりますと、実はヨーロッパでいろいろな先例があるわけでございます。例えばフランスの例あるいは西ドイツの例ございますが、そのワークシェアリングの効果については必ずしも見解が一致してない面がございます。長期的に見た場合には、労働時間短縮雇用機会の確保という面に効果を持つというふうに考えておりますけれども、個別企業あるいは個別産業の問題として即効性があるかということになりますと必ずしも一概には言えないというのが率直なところでございます。
  183. 浦井洋

    浦井委員 即効性も必要ではありますけれども、マクロで見て労働省としては十分に検討に値する問題ではないかと思うわけです。  私の時間が限られていますから、次に進みます。  労働省は、円高不況の自治体に雇用対策本部を設置するということを言われておりますが、これはどういうことをするわけですか。
  184. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  先ほどからいろいろ議論になっておりますように、円高の急速な進展によりまして産業、経済にかなりの影響を与えており、特に輸出比率の高い産地では雇用調整等の問題も出てきております。そういうような地域等におきましては、全体として総合的に対応をしていただきたいということで雇用対策本部の設置をお願いしているわけでございます。
  185. 浦井洋

    浦井委員 そうすると、例えば神戸では、大臣も御承知のように川崎重工、三菱重工、川鉄、神戸製鋼、これは鉄鋼、造船ですから、そもそもの構造不況の上に急激な円高不況ですね。こういうところでは、当然そういうものを設置することになるわけですか。
  186. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、関係都道府県の自主的な判断によるわけでございますが、労働省としてはそういうことでお願いいたしておるわけでございます。  神戸を含みます兵庫県につきましては、先生おっしゃいましたように造船を中心とした構造不況業種を非常に抱えておるわけでございまして、兵庫県造船関係産業安定対策協議会というのを設置するというふうにお伺いしております。これは、国の出先機関、兵庫県、神戸市、関係企業関係労働組合団体等をメンバーとして、経営の安定と雇用の確保その他を図っていくための協議会とするということでございまして、四月十一日に初会合を持つというふうに伺っております。
  187. 浦井洋

    浦井委員 名称は違いますけれども、実質的にいわゆる雇用対策本部ですね。これが発足するのはよいことだろうとは思うのですけれども、今の局長の答えでは総合的に対応するということです。そうすると、今、神戸の川重にしても三重にしても川鉄にしても神鋼にしても、まず大企業は軒並み人員削減計画を出してきているわけです。労働者の話は後でしますけれども、これは下請から商店街から神戸全体の経済にとっては大打撃になるわけです。そういう点で、労働省としてはいわゆる雇用対策本部をどういうふうに指導するのか、また、雇用対策本部なるものはどういうふうに対応すべきなのか、それはどうですか。  もう一つ、少なくとも大企業の人員削減の合理化計画については、労働組合に対してはもちろんですけれども、そこの自治体に対してあらかじめ計画書を出して意見を聞き、それを尊重するというような方向で、そこの経済に重大な打撃を与えないようなことをしなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  188. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  その地域の経済の安定に非常に影響を与える問題、それから企業がやむを得ず人員整理その他をやっていくということにつきまして、都道府県の自主的判断によるものではございますけれども関係者が集まっていろいろ協議しながらそれらに対応していく、そういう協議会をつくっていただきたいということで労働省は指導しておるわけでございます。  今おっしゃいました大企業の合理化に当たっての事前の計画その他でございますが、一カ月に三十人以上の大量の離職者を生ずる事業規模の縮小等につきましては、雇用対策法の二十一条に基づきまして事前に公共職業安定所に届け出なければならないということになっております。なお、造船業につきましては、この届け出については特定不況業種・地域雇用安定法に規定する再就職援助等計画を提出するということになっております。  これらの届け出、計画によりまして、関係都道府県と十分連絡をとりながら企業の人員整理等の状況について事前に把握して雇用の維持を図るということになるわけでございますが、そういう届け出、計画等の周知または指導というようなものを安定所で行うということになっておりますので、それらを活用しながら、今先生がおっしゃいましたような対応を図っていくべきではないかと思っております。
  189. 浦井洋

    浦井委員 とにかく労働者にとって不利にならないように、労働省として強力に指導をしていただきたいというふうに思うわけです。  その肝心の労働者でありますけれども労働省のやられた労働経済動向調査では、この一−三月期に雇用調整をする企業が一五・二%を占めておる。これは言うたら配転出向ですよ。こういうことをやれば労働者にもろに影響があるわけなんですよ。私はここが大事だと思う。  特に川崎重工の例を資料として皆さん方に私お渡ししましたけれども、ここでは、要するに配転が猛烈な格好でやられているわけです。造船から撤退をしようということで、坂出にはやらぬで、明石の二輪車を製造する川崎という会社や航空機の岐阜にほとんどやる。こういうところでさまざまな悲劇が出てきておるわけです。川重明石で、岐阜へ行くか会社をやめるかと迫られて、やむなく配転を承知せざるを得なかったというような我々の聞き取り調査もあるわけなんです。  少し前になりますけれども、八一年には窪さんという人が板挟みになって苦し紛れに農薬自殺をしておる。ことしの二月には山本康昭さんという人が、うつ病という診断名ではあるけれども実際には自殺をしておるわけなんですよ。  それからもう一人、中谷正一さんという方ですけれども、この方は、岐阜へやられたけれども体の調子が悪いので神戸に帰してほしいということで、いろいろと会社の方に願い出たけれどもなかなか帰してくれない。病気になって、やっと治療のために帰してもらったけれども、一応軽快したらまた岐阜に戻された。そして働いていたのだけれども、いよいよだめになったのでもう一度神戸に帰って、二日後に死亡されておるわけなんです。  その人の遺品を整理しておるとこういうものが出てきたわけです。会社に対する嘆願書です。この左側は一生懸命字を練習されておるわけです。「嘆願書」とか「相談」とか「勧告」、そして四行目に「治癒」と書いてあって「ジリョウ」になっていますね。それから「物質面」とか、こういうふうに一生懸命字を練習されて、そしてその嘆願書の右側のメモを読んでいただいたらおわかりになると思うのですけれども、「自分自心の健康がすぐれず」——「自身」が間違っておりますね。「(今年三月)始より現在まで病院に通院しています(胃腸、肝臓)病で。つかれやすく、病状もはかばかしくないのでなやんでいます。また毎週通院のたびごとに……」、読めへんわけですよね。必死になって書いておるわけですよ。  最後に「現在の二重生活ではまったく、けいざい面金銭面部質面」、これは、「物質面」というのが「部質面」になっていますね。最後の下から四行目、「部質面等で苦るしくこれ以上(この土地)……ため」、ちょっとわからぬのですよね。「今回神戸に返して下さる様お願にまいったしだいです。」云々、こういうふうに書いてある。読むのに一苦労するほど苦労して書かれておる。これが亡くなられて遺品の整理をやってきたら出てきたわけなんですよね。ここまで労働者は苦しめられておるわけなんですよ。これ、大臣どう思われますか。
  190. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  今先生お配りになりましたメモ、非常に悲惨なことで大変なことだというふうに思います。  そういうことがいろいろ労使話し合いの中でうまく解決されればなというふうに思うわけでございますが、しかし、先ほどからお話しございますように、造船業自体におきましても、構造的な不況を抱えまして、また昨今の円高の影響も受けて厳しい状況にある。各企業は懸命に雇用の維持の努力を重ねておりますし、労働組合との話し合いの中でも、労働組合雇用の維持を選ぶかどっちを選ぶかということで、両者、労使懸命の努力を重ねている結果、やはり雇用の維持を選ぶということで配置転換や出向を選んでいるのではないかというふうに思います。  そして、それに対しまして、労働省としましてもいろいろな援助をしながらバックアップをいたしているわけでございますが、それらの制度を活用していただきながら今後とも労使が十分な話し合いを行って、相互の理解の上でこの各種の対策が得られるように。やっていっていただきたい、我々としてはそれを側面から援助してまいりたい、そういうふうに思うわけでございます。
  191. 浦井洋

    浦井委員 労働省というのは、労働者労働組合の味方なんですか、あるいは経営者の味方なんですか。一番根本の問題なんですよ。  私が言いたいのは、この配転や出向のときには決して強制をしない、やはり本人の意思を尊重するということを厳重に行政指導してほしいというように思うわけなんです。きのうの新聞にも、やはり大事には人情が必要だといって生産性本部の白書にも書いてあるわけなんです。  それで、企業の方は本当にどうなのかといったら、川重でいえば、内部留保が八百億ある、それから株の含み資産が四百億あるわけなんですよ。  そして、海造審、海運造船合理化審議会の予測では、建造量が日本は、去年一九八五年では八百万総トンだけれども、もう五年たって一九五〇年になれば千三百七十五万総トンになるというふうに予測をしておるわけなんです。  だから、こういう実情を見れば、不況だということにつけ込んで、円高不況だ、構造不況だということでつけ込んで無理やりに合理化をやっているように私は思えて仕方がない。五年間、労使が本当に真剣に努力するならこんな悲惨な事故を起こさぬで済むのではないか。そこのところを十分にわきまえて川重なら川重を指導してほしい、このことを私は申し伝えたい。どうですか。
  192. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  もちろん労働省労働者福祉を図る、労働者の味方でございまして、今その造船業自体が抱えております異常な苦しみ、先ほど一九五〇年とおっしゃったけれどもちょっと数字をお間違いではないかと思いますが、その中で現在は確かに建造量が落ち込んでいるわけでございますから、その非常に厳しい状態の中で造船会社が配転、出向、しかもこれは労使ちゃんと協定を結んでやっているというふうに聞いております。そういうことで進めている、労使がともに非常に厳しい対応をしているわけでございますので、それらに、先ほど申し上げましたようないろいろな助成を図りながら労働省としても側面的な援助を図ってまいりたい。それから離職者が出る場合には、先ほど申し上げましたように、ちゃんと計画を出していただいて、公共職業安定所でそれをチェックしていくということをいたしているわけでございます。
  193. 浦井洋

    浦井委員 大臣どうですか、一言。
  194. 林ゆう

    林国務大臣 ただいま局長から御答弁申し上げましたように、労働省といたしましては精いっぱいの手だてを尽くしておるというふうに私ども認識をいたしております。
  195. 山崎拓

    山崎委員長 次回は、明三日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会