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永井委員 労働省の理解というのは、ちょっと私は素直に受け取ることができないのです。これは後で総裁とのやりとりもありますから、それを聞いた上でさらにつけ加えてお聞きしていきたいと思います。
さて、そのいわゆる余剰人員でありますが、一応国鉄再建監理
委員会の答申の中に盛り込まれた数値というのは、旧国鉄に引き継ぐ者を含めてでありますが、九万三千名、こう言われておるわけであります。その処理を、
政府は
対策委員会を設置してまで万全を期すと今
大臣も言われておるように
対応されようとしているわけでありますが、
中曽根総理も本
会議における施政方針演説に対する代表
質問に対する答弁の中で、国鉄職員を一人たりとも路頭に迷わせないという決意で臨むというふうに答弁をされていらっしゃるわけです。それはそれで私は当然のことだし、
政府の
政策として進めるのだからこれは当たり前のことだと思うのでありますが、
労働省としての最大の使命は、国民全体の
雇用安定という視点に立たなくてはいけないと私は思うのであります。
今回の広域異動の問題、これに絞って恐縮でありますが、広域異動の問題がどういう問題をもたらすかということの
認識について私はお伺いしておきたいと思うのでありますが、この三千四百名の余剰人員を、今
局長が言われたようにアンバランスを解消するために調整をするのだということで異動されるということにしたとして、そのことがどういうことになってくるか。後で総裁にもお尋ねいたしますが、職員に対して希望を募る。希望を募って、希望を言ってくる者の要望というものは最大限に生かすようにしていきたい、こういうことを国鉄当局の募集要綱でも明らかにしているわけです。例えば「将来の配属に際しての希望は、可能な限り、優先的に配慮する。」あるいは配転先において「本務グループに編入することを基本とする。」ということが、全部は読み上げませんけれ
ども、触れられているわけです。
そうすると、どんな問題が起きるか。私は三月二十五日の
社会労働委員会でも、この希望ということ、呼び方は希望でありますけれ
ども、現実は希望になっていないということを具体的な例として申し上げたことがありました。ついこの間、三月二十五日であります。その希望がどういう条件であれ、どういう
立場であれ、希望されたものは、将来の自分の
雇用について本人の意向を尊重してそれを優先するということになってくると、それは即、新会社に希望する場合は新会社へ配属することを優先するということになってくるわけです。これを私
どもの言葉で言うと切符を手にする、こういうわけです。通行の切符を手にするというわけです。
では、通行の切符を手にしたときはどういうことが起きてくるのか。これは東北新幹線が開業した、山陽新幹線が開業したといういわゆるビルドの場合と違って、あのときはビルドでありますからそこに職場を新たにつくる、そこへ人を持っていかないと営業が開始できないというビルドの
関係だったわけですね。今回、いみじくも言われているように余剰人員の調整だ、こういうわけです。
では、
東京や名古屋、大阪がどうかというと、人が余っている。余剰人員を持っている。人の余っているところへ北海道や九州の余った人を持ってくるのです。その余っているところへ来た人が優先権という切符を持っているとすると、もともと
東京や大阪や名古屋で過員になっている人々はそのために新会社へ行く機会というものはなくなっていくわけですね。はじき飛ばされていくわけです。これを玉突きと私たちは呼んでいるわけです。あるいは本務に入れるということを約束するとなると、今
東京や名古屋や大阪で本務についている者は本務から外れる者ができてくる。そうすると、例えば乗務員でいいますと、本務につくかつかぬかによって月七万円の減収につながるのです。駅勤務の職員でいうと、平均二万円減収になると言われているのです。
東京や大阪にいる人も
生活がかかっているのです。そこへ北海道や九州から持ってきて、おれがはじき飛ばされるのだとなったらこれはどんなことが起きますか。
あるいはそれだけではない。私はあえて
労働省は国民全体の
雇用政策に責任を持つべきだと言ったのでありますが、はじき飛ばされた人を、一人たりとも路頭に迷わせないということで仮に関連
企業などを
中心にしてそこへ再就職をさせるということをやったとする。では、その
企業ではどういうことが起きてくるのか。今、現に雇われている人がそのために解雇される。新規採用がストップする。学卒者にすれば就業の機会がそれだけ狭まってくる。失われていくのです。
だから、国鉄の職員を路頭に迷わせないということ、そのことは当然なことでありますが、よほどこれは慎重に扱っていかないと
雇用不安
拡大政策と言わざるを得ない。この間も
労働大臣に私は直接お話し申し上げたことがあるのですが、そういう状態が起きてくると、
労働組合は複数にありますが、
労働組合の所属を別にして、職場で血の雨が降ることだって想定できるのですよ、自分の
生活がかかっているのだから。そういう状態なのにこれが当局の
政策としてどんどん進められていく。ある組合とは協定が結ばれてもある組合とは協定が結ばれていないというままで進められていくということが果たして許されていいのか。
労働省はこれまた手をこまねいて見ているのかどうなのかをお答えいただきたいと思います。