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茂木参考人 茂木でございます。
私は、
東海地域に想定されております
東海地震について申し上げたいと思います。
御存じの方が多いと思いますが、
東海地域で大
地震が想定されております
根拠はどういう
根拠であるかということを、ちょっとかいつまんで御
説明申し上げたいと思います。
一つは、大
地震が
繰り返し起こってきた
南海トラフから
駿河トラフにかけての
地域で、
駿河トラフ地域だけがまだ壊れないで残っている、つまり未破壊のまま残っている
地域であるということで注目しております。
それから、第二番目は、この
地域の
地殻のひずみが
蓄積されているということがわかっております。それは国土地理院の水準測量、それから三角測量、最近は辺長測量となっておりますが、それによりますと、駿河湾の西側が顕著に沈降している。
それから、駿河湾を挟んで伊豆半島と静岡側の水平の距離が、ここ数十年の間に一メートル
程度も短縮している。こういうように
駿河トラフを挟んで沈降が起こり、それから水平距離の短縮が起こっているということは何を
意味するのかと申しますと、これはプレートの潜り込みによります弾性エネルギーが
蓄積しつつある、
蓄積しているということを
意味するものであります。さらに、近年に至りまして御前崎と掛川間の水準測量を
繰り返し実施しております。これは国土地理院が現在は年四回
実施しておりますが、これによりますと、御前崎側、つまりトラフ側がほぼ一定の速度で沈下を継続している。これはとりもなおさず、ひずみエネルギーが着実に増大しているということを
意味するわけでございます。こういう増大しつつあるひずみエネルギーはいつまでも増大し続けるというわけにはまいりませんのでありまして、そこで大きい
地震が起こってこれを解放する
可能性がある、こういうことで
東海地域で大
地震発生の
可能性があるというふうに考えておるわけでございます。
そこで、問題はその
発生時期でございます。これについてはいろんな推定方法がございますが、一番確かなのは、先ほど来
浅田参考人、末
廣参考人から
お話がございました
前兆現象をとらえる方法、これが最も信頼できる方法でございます。つまり定常的にひずみが確かに
蓄積しつつある。しかし、それからの
変化ですね、それをとらえるということであります。したがって、そういう
変化に注目しているわけでございます。
それで、私どもが
調査したところによりますと、最近の十年間、その前の二十年間と比較してみますと、どうも
地震活動に
変化が認められるように思います。
その
一つは、
東海地震が想定されております
地域を囲む周辺
地域、ここで
マグニチュード六・五から七という大きい
地震が一九七〇年ごろからかなり頻発しております。このことは同
地域の応力が高まっていることを
意味する
可能性があるわけです。
第二番目は、想定されている
東海地震の震源域を含む
駿河トラフ、
南海トラフのトラフ沿いの
地域の
地震活動が一九七三年ごろから有意に低下している。こういう
地震の前に
地震活動が低下するということは大きい
地震の前にこれまでも見られることでございますので、これも注目していることの
一つでございます。
それから第三番目は、
東海地域の陸側について
地震の深さの
変化を見てみますと、最近の十年間に、最初は浅いところで
地震が起こっておったのでございますが、それが最近深い方で活発になっているという、
地震活動が浅いところから深い方への移動のパターンが見られるようである。非常にはっきりしているわけではございませんが、そういう見方をすれば見えるということです。実はこういう浅いところから深いところに
地震活動が移るという同じようなパターンは、一九四四年、
昭和十九年の
東南海地震の前に見られたパターンと似ております。そういうことで、これが大きい
地震の
前兆現象である
可能性が考えられるということで、以上指摘しました諸
変化が大
地震の
発生と単純に結びつくかどうかはまた問題でありますが、その
可能性もあるということで、この
変化に注目して今後の推移を十分見守る必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
こういう
変化はきのうきょうわかるということでございませんで、やはりある年数継続して初めてわかるということでございまして、近年になってそういうことを判別できるようになったということでございます。これらの
変化はいわゆる長期的な
変化でございます。こういうことが見られたからあしたどうなるということではもちろんないわけです。
東海地域では、十数年以上前から、大
地震が起こる
可能性があるとして
各種の
観測が集中して
実施されてまいりました。直前の
前兆現象をとらえる
努力を重ねられてきておるわけでありますが、こういう最近の
変化を見ますと、こういった十数年前からの
努力は決してむだなことではなくて非常に適切な投資であったと思われます。こういう準備を全くしていないときにこのくらいの
変化があったとすると、やはり急遽
観測を始めなければいけないというようなことになったかもしれません。
私の感じでは、今の
東海地方は全く
地震の気配がないという状態ではなくて、お天気で申しますれば少し曇っているというような状態ではないか、からりと晴れ上がっているという状態ではないという感じがいたします。この曇りがそのまま晴れる場合もあるでしょうし、それから大雨の前触れであることもあるわけでございます。
これからどうなるかは、これらの
観測を今後も見守るほかはないと思いますが、現在
東海地域に展開されております
観測データが
気象庁に
テレメーターされて二十四時間
監視体制をとっておられますので、直前の
前兆があればこれでとらえられる
可能性は非常に高いのではないかと考えております。現在の
観測が十分かといいますと、かなりいい線にいっているのではないかと思います。もちろん
観測手法は日進月歩でございますので、絶えずこれを取り入れて活用するよう常に努めていきたい、こういうふうに思っております。
以上でございます。