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1986-04-25 第104回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二十五日(金曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 馬場  昇君    理事 桜井  新君 理事 村岡 兼造君    理事 渡辺 秀央君 理事 中村  茂君    理事 松前  仰君 理事 薮仲 義彦君    理事 滝沢 幸助君       鹿野 道彦君    鍵田忠三郎君       佐藤  隆君    笹山 登生君       田中 直紀君    近岡理一郎君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       原田昇左右君    若林 正俊君       佐藤 徳雄君    富塚 三夫君       吉原 米治君    遠藤 和良君       森本 晃司君    菅原喜重郎君       中川利三郎君    三浦  久君  出席政府委員         国土庁防災局長 杉岡  浩君  委員外出席者         参  考  人         (東海大学教授浅田  敏君         参  考  人         (財団法人日本         気象協会相談         役)      末廣 重二君         参  考  人          (東京大学教授茂木 清夫君         特別委員会第二         調査室長    鎌田  昇君     ――――――――――――― 三月二十日  防災事業推進等に関する請願津川武一君紹  介)(第一六六三号)  同(辻第一君紹介)(第一六六四号)  同(藤木洋子紹介)(第一六六五号)  同(三浦久紹介)(第一六六六号)  同(川俣健二郎紹介)(第一七六六号) 同月二十六日  防災事業推進等に関する請願佐藤観樹君紹  介)(第一八九五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一八九六号)  同(清水勇紹介)(第一八九七号)  同(中川利三郎紹介)(第一八九八号)  同(野口幸一紹介)(第一八九九号)  同(不破哲三紹介)(第一九〇〇号)  同(藤田スミ紹介)(第一九〇一号)  同(山原健二郎紹介)(第一九〇二号)  同(横江金夫紹介)(第一九〇三号)  同(遠藤和良紹介)(第二〇二九号)  同(田中美智子紹介)(第二〇三〇号)  地震予知及び防災対策強化等に関する請願(林  百郎君紹介)(第二〇二八号) 同月二十九日  防災事業推進等に関する請願梅田勝紹介  )  (第二〇八五号)  同(木島喜兵衛紹介)(第二〇八六号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第二〇八七号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一七〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第二一七一号)  同(東中光雄紹介)(第二一七二号)  同(前川旦紹介)(第二一七三号)  同(簑輪幸代紹介)(第二一七四号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二二三八号) 四月一日  防災事業推進等に関する請願野間友一君紹  介)(第二四三六号) 同月三日  防災事業推進等に関する請願経塚幸夫君紹  介)(第二六一二号) 同月九日  防災事業推進等に関する請願中林佳子君紹  介)(第二九三六号)  同(浦井洋紹介)(第三〇二三号) 同月十八日  防災事業推進等に関する請願工藤晃紹介  )  (第三四七七号) 同月二十三日  防災事業推進等に関する請願小沢和秋君紹  介)(第三六一五号)  同(正森成二君紹介)(第三六一六号)  同(関晴正紹介)(第三六九〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  災害対策に関する件(地震対策)      ――――◇―――――
  2. 馬場昇

    馬場委員長 これより会議を開きます。  災害対策に関する件、特に地震対策について調査を進めます。  まず、震災対策現況について政府から説明を聴取いたします。国土庁杉岡防災局長
  3. 杉岡浩

    杉岡政府委員 我が国震災対策現況につきまして御報告申し上げます。  我が国震災対策は、災害対策基本法、同法に基づく防災計画大都市震災対策推進要綱等によりまして推進いたしております。その重点は三つありまして、第一が都市防災化推進、第二が防災体制強化防災意識高揚、第三が地震予知推進であります。以下、その主なものを中心にいたしまして御説明申し上げます。  第一の都市防災化推進でございますが、地震が起きた場合に被害をできるだけ軽減するために地震に強い町づくりを行うということでございまして、各種事業対策推進しております。  まず、住民の安全な避難確保するために、避難地避難路整備を行っており、また、延焼火災防止を図るために、都市防災不燃化促進事業、市街地再開発事業等実施によりまして建築物不燃化と空き地の確保を進めております。  また、個々建築物につきましては、昭和五十五年に耐震基準を改正いたしまして耐震性の向上を図っております。  一方、道路、鉄道、港湾等公共施設につきましては、点検を行い、要対策箇所整備を進めており、また、市民生活に不可欠な電気、ガス、水道、電話などにつきましては、個々構造物耐震対策とともに、ライフラインシステムとして、総合的な防災対策推進しております。  また、火災防止対策といたしまして、危険物施設に対する耐震基準の設定、消防設備設置の義務づけ、消防力充実等を図っており、特に、初期消火延焼防止を図るために耐震性貯水槽設置、可搬式小型動力ポンプ配備等を行っております。  さらに、高圧ガス設備といたしましては、高圧ガス取締法及び液化石油ガス法の改正によりまして耐震設計の義務づけを行っております。  重点の第二は、防災体制強化及び防災意識高揚であります。すなわち、災害発生時に災害対策活動が円滑に実施されるため、防災関係機関防災体制強化、さらには、防災意識高揚に努めております。  その第一は、防災業務計画及び地域防災計画に基づく防災体制整備であります。指定行政機関指定公共機関地方公共団体防災関係機関は、防災計画を策定し、災害対策要員の参集、災害対策本部設置情報の収集及び伝達消防避難誘導緊急交通確保救護対策等災害応急対策に係る防災体制整備しております。  その二は、防災無線整備であります。迅速かつ的確な災害情報伝達を行うため、中央防災無線消防防災無線などを初めとする防災無線整備を進めております。  その王といたしまして、発災時におきまして円滑な救護活動に必要となります食糧、水、医薬品等応急物資確保を図るために備蓄、調達体制整備を図っております。  また、発災時の交通規制計画を定めております。  さらに、高層建築物、地下街、劇場、百貨店等多数の人が利用する建築物及び石油コンビナート高圧ガス危険物等に関する施設につきましては、消防法等に基づきまして防災に関する管理者の選任や計画の策定を義務づける等の総合的な防災対策を講じております。  また、平素より、地域住民へのテレビ、ラジオによる広報、防災週間実施、パンフレットの配布などによる防災知識普及活動を行っております。  さらに、国、地方公共団体等が協力して震災対策訓練実施するとともに、地域住民による自主的な防災活動を促進するために自主防災組織育成強化推進しております。  重点の第三の地震予知推進は、地震による被害を軽減するために極めて重要な施策でございまして、長期的予知あるいは短期的な予知に有効な観測研究充実強化地震発生機構の解明のための研究推進等を図っております。  さらに、東海地震につきまして、近い時期に発生する可能性が大きいということから、予知体制整備を図るとともに、予知を前提とした地震防災対策実施するため、大規模地震対策特別措置法昭和五十三年に制定され、同法に基づき、静岡県を初めとする六県の百六十九市町村を地震防災対策強化地域と指定しております。  予知体制整備につきましては、この強化地域中心として、地震計、埋め込み式体積ひずみ計等観測機器を集中的に設置するとともに、これらによる観測データは、直ちに、テレメーターによって気象庁に送られ、二十四時間の常時監視が行われております。  また、強化地域については、国、地方公共団体等防災関係機関及び民間の防災上重要な施設管理者は、警戒宣言が出された場合に実施する地震防災応急対策地震防災上緊急に整備すべき施設整備等内容とする地震防災計画整備いたしております。  特に、避難地避難路消防用施設公立小中学校等について地震防災上緊急に実施すべき地震対策緊急整備事業につきましては、昨年延長されました地震財特法に基づきまして、補助率かさ上げ等、国の財政上の特別措置を講ずることによりましてその推進を図っているところであります。  さらには、地震防災対策が円滑に実施されますよう、国、地方公共団体等が協力して総合防災訓練実施しているところであります。  今までその概要につきまして申し上げましたように、震災対策につきましては三つの柱を中心として、また、東海地震対策につきましては関係省庁が緊密な連携のもとに、その推進に努めておるところでございます。  以上、御報告を申し上げます。
  4. 馬場昇

    馬場委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 馬場昇

    馬場委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  災害対策に関する件、特に地震防災等の諸問題について、本日、東海大学教授浅田敏君、日本気象協会相談役廣重二君及び東京大学教授茂木清夫君に参考人として御出席を願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 馬場昇

    馬場委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  7. 馬場昇

    馬場委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  各位には、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。  本委員会は、地震対策についてこれまでしばしば調査を重ねてまいりましたが、本日は、その分野に極めて深い学殖をお持ちの皆様をお招きし、忌憚のない御意見を伺い、今後の審議に資してまいりたいと存じている次第であります。  何とぞよろしくお願いいたします。  なお、参考人各位には、議事の整理上、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えくださるようお願いいたします。  それでは、まず浅田参考人からお願いいたします。
  8. 浅田敏

    浅田参考人 浅田でございます。  地震予知に関してお話し申し上げたいと思っておりますが、昔の議事録を読んでみますと、昭和五十三年に地震予知に関することをいろいろ申し上げたのであるいはまたダブることになるかと思いますが、本日はまた基本的なことについて簡単に申し上げ、もうちょっと具体的にお話をしたいと考えております。  地震というものは、要するに、海洋底地殻が移動するために大陸の地殻がひずんで、そのためにひずみがたまり、それに耐え切れなくなって破壊するのが地震でございます。したがいまして、地震というのは繰り返し起こるということはほとんど自明のことと今日考えております。ただし、その繰り返しでございますが、ほぼ同じようなタイプの地震繰り返し起こるのでございますが、繰り返しのことは周期とは申しません。再来時間と申しております。というのは、周期と申すほど正確なものではないからでございます。  また、日本に起こります地震を簡単に分類いたしますと、太平洋沿岸地震内陸地震と二つございます。  太平洋沿岸地震は、関東地震とかあるいは東南海地震南海地震というような大型の地震でございまして、その再来時間は百年とか二百年とかいう時間である、こういうふうに考えられております。  一方、内陸地震というものはずっと小型でございまして、大部分はマグニチュード七・三ぐらいまででございます。日本海岸に起こる地震マグニチュード五以上の地震が起こることもございますが、内陸地震マグニチュード三ぐらいでございます。しかし、地方都市の直下に起こったときは激烈な被害を生じまして、その例としては鳥取地震とか福井地震とかいうものがございます。この再来時間は非常に長くて、一番短くても数百年あるいは千年、数千年、あるいは万を超えるのもあると最近は考えられるようになりました。でありますから、一度そういう内陸地震が起こったその断層には我々と関係を持つような地震は起こらない、こういうふうに考えてよろしいのでございます。でありますから、活断層ということをいろいろお聞き及びと思いますが、活断層も最近起こった活断層はそのような活動をすることはないので、歴史活動記録のない活断層の方が危ないのであるというふうに、昔とは考えが変わってまいりました。  そういうふうに地殻にひずみがたまりますと地震になるのでございますけれども、地殻というものはガラスとか金属のように均質でないものでございますから、ひずみが強くたまってまいりますと前兆現象というものを生じます。つまり、地震には前兆現象があるということでございます。昔から、まだ機械観測がない時代から前兆現象というものは人間に気がつかれていたのでありまして、歴史上いろいろな記載があります。そのものには信用のできるものもそれほどできないものもあるようでございますが、例えば海岸の汀線が移動したというような話が日本海岸ではございますし、それから井戸水の話もよく出てくるのでございます。  前兆には長期的前兆短期的前兆とあるというのが今日の学界で同意されている考え方でございますが、我々が東海地震に対処するのは短期的前兆捕捉して警報を出そう、こういう思想でございます。長期的前兆と申すものは非常に長く続くと言われておりまして、その長期的前兆をつかまえるためには非常に長い何十年も続く、しかも密度の高い観測が必要でございますので、長期的前兆としてとらえられているものの例はそんなにたくさんはない、しかし短期的前兆は、昔から言われておる話も含めましてかなり数が多いのであります。  問題は短期的前兆でございますけれども、一番最近はっきりした例がとられたのは一九七八年の伊豆大島近海地震のときでございます。このときは中伊豆のラドン記録において非常にはっきりとした記録がとれました。それから、気象庁容積変化計、石廊崎のものも非常に特別な記録を書きました。これは本当に特別な記録であるのか、あるいは偶然そうなったのであるかという問題は絶えず残るのですけれども、以来、両方ともそういう特別な記録は書いたことがありません。例えばラドンもいろんなところに観測点がありますので、延べにすると何十年と言っていいかと思います。これは容積変化計の方もそうでございます。が、時間がたつとともにこれが本当の異常であるということがはっきりしてきたわけです。  それからもう一つ東海地震につきましては、昔、東南海地震のときに測量しておりまして、そのときつかまえた変化があります。それをここにおられる茂木参考人が見やすくまとめた図がございますが、これも非常に明快な変化でございまして、もし、こういう変化が今度も起こってくれるとしたらこれは非常に間違いなく予知ができると我々は考えております。  さて、地震予知というものは非常に気の長い話でありまして、その後、つまり昭和五十三年から今までどういうふうに進歩してきたかという問題にもちょっと触れたいと思いますが、結論を言いますと、地震予知進歩というものは、地震前兆捕捉に関する経験とその実例蓄積が主であります。でありますから、機械類密度がふえてくるということが一番根本の大事な進歩でございます。観測ネットワークは多種多様であることと密度が多いということが必要であります。新しいものを開発することも必要であります。こういう努力は怠るわけにはまいりません。  それからもう一つは、例えばサイズモテクトニクスという言葉がございますが、これは言ってみれば関東地震というものはどういう地震であるか、東海地震というものはどういう地震であるかという考え方でありますが、そういう考え方に関する進歩も必要であります。  東海地震観測ネットワーク時々刻々密度がふえていると私は了解しておりますが、ここでもう一つ申し上げたいことは、前兆捕捉するためにほかの地域にも観測網が必要であるということであります。東海地方だけでは足りません。ほかの地域にも観測網があって前兆現象捕捉に関する経験蓄積するということが非常に大事であります。  最後に、例えばどういうふうに地震予知研究といいますか、地震予知事業といいますか、これは進むべきかということでございますけれども、地震関係は実験ができませんので非常に気の長い観測を続けなければなりません。それがすなわち内陸地震まで全部予知をするということにつながるのであります。気の長い観測をし、かつ観測網はますますいろんな多種多様なものを密に置くということが必要になるのであります。したがいまして、このことについて実例を申し上げたいと思いますが、今日、例えば天気予報ですね、百年の歴史を持っている天気予報に対する気象庁蓄積というものは非常に膨大なものであるということは、例えばテレビを見ていればすぐ感じることでございますが、地震予知についてもやはりそういうふうに最終的にはなることが必要でありますので、非常にはっきり申しますと、予算がだんだん先細りになるようなことは極度に望ましくない、こう考えております。  以上でございます。
  9. 馬場昇

    馬場委員長 次に、末廣参考人にお願いいたします。
  10. 末廣重二

    ○末廣参考人 私は、多年にわたりまして地震及びそれに関連する現象観測に携わってまいりましたので、その観点から若干申し上げまして、諸先生の御参考に供したいと存じます。  ただいま浅田参考人から東海地震のおそれということに中心を置いたお話がございまして、特に前兆現象の把握ということが述べられましたが、このためには、それ相応の観測網を張りまして、観測を続けるということがその出発点でございます。  御案内のとおり、来るべき大規模地震発生のおそれがありとされる東海沖中心といたしまして、東海地方を挟んで関東から中部にかけて、世界でも類を見ない高密度観測網が現在稼働しております。この詳しい内容は略させていただきますが、人間で例えれば、脈拍とか血圧とか脳波とか体温とかいったような人間の健康に関する各種の検査がございますが、それに相当する地殻に関する各種連続観測をいたしまして、これは全部で七十六個の観測機器が今申し上げた関東から中部地方に展開してございますが、これがすべて気象庁に常時テレメーターされておりまして、昼夜を分かたぬ監視下に置かれているわけでございます。  それで、ただいまも前兆現象があるということでございましたが、これは、ふだん観測しているものから何か異変、異常な観測値があらわれるということでございまして、これはいつあらわれるかわからない、したがって、我々は四六時中監視をしていなければならないわけでございます。  これをちょっと気象観測と比べますと、気象観測の場合には、やはり毎日連続的な観測をしておりますけれども、これを直ちに解析いたしまして、天気予報という形で皆様にもお伝えいたし、かつ、それが当たったか外れたかという成果がすぐはね返ってくるわけでありまして、ある意味では大変張り合いがございます。それに比べますと、この東海地方中心に展開しております特別の観測網は、あしたすぐ成果が見られるというものではなくて、いつ起こるかわからない異常に対して絶対に見逃しをしないように見張っているということでありまして、大変忍耐努力の要る仕事でございます。この責任は現在気象庁が負っているわけでありますが、今後とも決して気を緩めることなく、この辛抱強い仕事に立ち向かってもらいたいと思っているわけでございます。  今申し上げましたこういう特別の観測網は、大体昭和五十年の初めから展開が始まったのでございますが、中にはもう既に十年以上測器を展開いたしましてから時間がたっております。やはり私ども、観測をする以上、正しい、間違いのない資料を提供して御研究を願うし、また、特に法律にのっとりました警戒宣言につながる判断をしなければならないわけでありまして、観測値が質が悪かったりあるいは間違っていたりしますと大変なことになります。そういう意味で、やはりある種の機器はもう相当年数がたっておりますので、これを新しいものに更新をして、刻々得られる観測値が常に正しい、正確なものであるということも期していただきたいと思います。  さらに、浅田参考人から観測網はなるべく密度が高いことが望ましいというお話がございましたけれども、昭和五十八年に出されました測地学審議会の第五次の建議によりますと、この地方においては、気象庁のみならず各大学あるいは政府研究機関各種連続観測をしていらっしゃいます。そのうち前兆現象の発見に有効と思われるようなものは順次、常時観測網の中に繰り入れるようにということがうたってございます。この線に沿いまして各種研究機関大学等におかれましても、これは役に立つとお思いのことがございましたら、積極的に気象庁の常時観測網の中に繰り入れて、実質的な連続的観測密度が今後とも向上していくことを望む次第でございます。  さらに、若干つけ加えさせていただきますと、現在、予知が可能、しかも防災に結びつく予知が可能と考えられておりますのは、東海沖発生のおそれのある大規模地震だけでございまして、内陸部地震に対しては残念ながらまだそこまで技術が及んでおりません。しかしながら、内陸部である程度以上の大きな地震が起こりますと、必ず数多くの余震に見舞われます。その余震の中でも、本震マグニチュードにして一段階ぐらいは違いますが、相当大きな余震というのがございます。これにつきましては、たとえ本震について予知ができなくても、その後起こる余震がどのような広がり方をしているかということを時々刻々観測からつかみまして、これを防災機関あるいは地域住民の方にお知らせすれば、余震から受ける被害に対しては相当程度防災効果がありますので、こういった意味で、日本における、東海地方も含めまして全国的な地震監視責任を持っております気象庁でこのような方向にお進みになることを私は強く望んでおります。  最後に、地震予知というのは、地震防災に対する有効な手段ではございますが、決してすべてではございません。たとえ予知ができましても、地震発生を食いとめることはできません。したがいまして、この近代化され、高度化された日本社会というものは、一たん地震に遭いますと、十年前あるいは二十年前には考えられなかったような被害が生ずるわけでございますので、地震予知も含めまして、日本社会全体を地震に強い体質に変えていくということは、これから先未来永劫、地震とともに生存していかなければならない我々日本人の子孫に対する大きな遺産の一つになると思う次第でございます。  どうもありがとうございました。
  11. 馬場昇

    馬場委員長 次に、茂木参考人にお願いいたします。
  12. 茂木清夫

    茂木参考人 茂木でございます。  私は、東海地域に想定されております東海地震について申し上げたいと思います。  御存じの方が多いと思いますが、東海地域で大地震が想定されております根拠はどういう根拠であるかということを、ちょっとかいつまんで御説明申し上げたいと思います。  一つは、大地震繰り返し起こってきた南海トラフから駿河トラフにかけての地域で、駿河トラフ地域だけがまだ壊れないで残っている、つまり未破壊のまま残っている地域であるということで注目しております。  それから、第二番目は、この地域地殻のひずみが蓄積されているということがわかっております。それは国土地理院の水準測量、それから三角測量、最近は辺長測量となっておりますが、それによりますと、駿河湾の西側が顕著に沈降している。  それから、駿河湾を挟んで伊豆半島と静岡側の水平の距離が、ここ数十年の間に一メートル程度も短縮している。こういうように駿河トラフを挟んで沈降が起こり、それから水平距離の短縮が起こっているということは何を意味するのかと申しますと、これはプレートの潜り込みによります弾性エネルギーが蓄積しつつある、蓄積しているということを意味するものであります。さらに、近年に至りまして御前崎と掛川間の水準測量を繰り返し実施しております。これは国土地理院が現在は年四回実施しておりますが、これによりますと、御前崎側、つまりトラフ側がほぼ一定の速度で沈下を継続している。これはとりもなおさず、ひずみエネルギーが着実に増大しているということを意味するわけでございます。こういう増大しつつあるひずみエネルギーはいつまでも増大し続けるというわけにはまいりませんのでありまして、そこで大きい地震が起こってこれを解放する可能性がある、こういうことで東海地域で大地震発生可能性があるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、問題はその発生時期でございます。これについてはいろんな推定方法がございますが、一番確かなのは、先ほど来浅田参考人、末廣参考人からお話がございました前兆現象をとらえる方法、これが最も信頼できる方法でございます。つまり定常的にひずみが確かに蓄積しつつある。しかし、それからの変化ですね、それをとらえるということであります。したがって、そういう変化に注目しているわけでございます。  それで、私どもが調査したところによりますと、最近の十年間、その前の二十年間と比較してみますと、どうも地震活動変化が認められるように思います。  その一つは、東海地震が想定されております地域を囲む周辺地域、ここでマグニチュード六・五から七という大きい地震が一九七〇年ごろからかなり頻発しております。このことは同地域の応力が高まっていることを意味する可能性があるわけです。  第二番目は、想定されている東海地震の震源域を含む駿河トラフ南海トラフのトラフ沿いの地域地震活動が一九七三年ごろから有意に低下している。こういう地震の前に地震活動が低下するということは大きい地震の前にこれまでも見られることでございますので、これも注目していることの一つでございます。  それから第三番目は、東海地域の陸側について地震の深さの変化を見てみますと、最近の十年間に、最初は浅いところで地震が起こっておったのでございますが、それが最近深い方で活発になっているという、地震活動が浅いところから深い方への移動のパターンが見られるようである。非常にはっきりしているわけではございませんが、そういう見方をすれば見えるということです。実はこういう浅いところから深いところに地震活動が移るという同じようなパターンは、一九四四年、昭和十九年の東南海地震の前に見られたパターンと似ております。そういうことで、これが大きい地震前兆現象である可能性が考えられるということで、以上指摘しました諸変化が大地震発生と単純に結びつくかどうかはまた問題でありますが、その可能性もあるということで、この変化に注目して今後の推移を十分見守る必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。  こういう変化はきのうきょうわかるということでございませんで、やはりある年数継続して初めてわかるということでございまして、近年になってそういうことを判別できるようになったということでございます。これらの変化はいわゆる長期的な変化でございます。こういうことが見られたからあしたどうなるということではもちろんないわけです。  東海地域では、十数年以上前から、大地震が起こる可能性があるとして各種観測が集中して実施されてまいりました。直前の前兆現象をとらえる努力を重ねられてきておるわけでありますが、こういう最近の変化を見ますと、こういった十数年前からの努力は決してむだなことではなくて非常に適切な投資であったと思われます。こういう準備を全くしていないときにこのくらいの変化があったとすると、やはり急遽観測を始めなければいけないというようなことになったかもしれません。  私の感じでは、今の東海地方は全く地震の気配がないという状態ではなくて、お天気で申しますれば少し曇っているというような状態ではないか、からりと晴れ上がっているという状態ではないという感じがいたします。この曇りがそのまま晴れる場合もあるでしょうし、それから大雨の前触れであることもあるわけでございます。  これからどうなるかは、これらの観測を今後も見守るほかはないと思いますが、現在東海地域に展開されております観測データ気象庁テレメーターされて二十四時間監視体制をとっておられますので、直前の前兆があればこれでとらえられる可能性は非常に高いのではないかと考えております。現在の観測が十分かといいますと、かなりいい線にいっているのではないかと思います。もちろん観測手法は日進月歩でございますので、絶えずこれを取り入れて活用するよう常に努めていきたい、こういうふうに思っております。  以上でございます。
  13. 馬場昇

    馬場委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  14. 馬場昇

    馬場委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  15. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 時間がございませんので、そのものずばりで聞かしていただきます。  まず、今お三方から大変適切なお話を伺いまして感謝申し上げる次第でございますが、最近における予知の技術というのは非常に進歩したのかどうなのかという点について、実は私ども選挙のありました昭和五十一年に、選挙の直前に東大のだしか地震研の助手の方でしたか、石橋さんでしたか、東海地方地震が起こっても不思議ではないということでお話がありまして、それから大変な騒ぎになって、選挙の際も地震対策をやろうという話になって、自民党の方でも地震対策特別委員会設置いたしまして検討をし、そして大規模地震対策特別措置法というのが生まれてきたわけでありますけれども、その際議論いたしましたのは、相当予知技術も進んだ、したがって地震が起こるということに対する警報は出せる、こういうことでああいう法律の仕組みになったわけであります。つまり、予知を主体にして対策をとろうということになったわけでございますが、その後いろいろ観測網整備され、今非常に評価がされたわけでございますけれども、私ども、最近におきましてもわからないのは、東海地震は起こらないというような所説も出ておるわけですね。これは東大の地震研の助手ですか、何というか名前は忘れましたが、何か新聞に出ておる。それから、断層のすべりによってできるんだ、トラフ説じゃないのですね。そういうこともありますし、どういうように予知技術というのは進歩しているのかなとちょっと疑問に思うものですから、その点についてお教えをいただきたい。
  16. 浅田敏

    浅田参考人 昭和五十年ころ石橋さんの話がありまして、以来今日見られるような対応がされておるのであります。  東海地震が起こらないという説の話でございますが、あらゆることを考えることは考えられるのであります。もちろん、一生懸命考えをまとめまして、東海地震は起こらないかもしれないという考えをまとめるということも可能かと思います。しかし、我々の今の考えでは、例えば御前崎が年間数ミリ着実に沈降しておる、あるいは伊豆半島と駿河湾西岸は着実に近づきつつある、このような大きな量の変動が毎年起こっていて二百年も何もないで済むとは考えられません。しかし、物を考えることは自由自在でありまして、これは実は水あめのように変化しているのであるというようなことを言えばもうそれだけの話で、世界じゅうの地震をなくすことも可能であります。でありますが、そういうことを申して、ですから何もしないでいいんだということには到底ならないと思います。ですから、私は地震は起こらないという考えはそれほど価値がないと思っております。それよりもっと大事なことは、そういう考えに基づいて計画をつくっていくことはなおさら適切でないと考えております。  あと進歩の件でございますけれども、観測網密度が非常に進みました。これ自体進歩であります。それから、前兆現象に関する機械観測による経験も非常に蓄積されてまいりました。これも進歩であります。ただ、地震関係は実験ができませんので、何百億円とか何千億円とかいうお金をつぎ込めば瞬間的に進歩するというようなことはないので、やはりお金も大事でありますけれども時間も大事でございます。  以上でございます。
  17. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 ありがとうございました。  そこで、茂木先生に伺いたいのでありますが、茂木先生のおっしゃったドーナツ型の現象が起こっておるとか深部にだんだん行っておるとかいうお話ですが、どうなんでしょうか、前の一九四四年の地震と類似しておるという点はよくわかりますが、もう一、二例があると非常にコンビンシングになるのじゃないかと思うのですが、一つしか今までの例がないのですか。もう少し何か、各国との資料の交換とか何かでそういう事例がたくさん出ておると非常にいいと思うのですが、その辺はどんなものでしょうか。
  18. 茂木清夫

    茂木参考人 東南海地震の場合は、先ほど申しましたように、特に駿河トラフ南海トラフ沿いの隣に起こった地震なので、これは非常に特に参考になるということで一段と私どもがウエートを置いて考えていいケースだと思います。  それで、こういう深い地震と浅い地震関係につきましては、実はもう十年以上も前でございますが、日本海溝沿いの一九三三年の三陸沖地震、一九五二年の十勝沖地震、一九五三年の房総沖地震、こういった地震の一、二年前に深いところで、もう少し前からですが、地震活動が活発になって、そして浅いところで巨大地震が起こるということを指摘しております。非常に似ておりますが、これは日本海溝でございますので、そういう潜り込みが非常に深くまで行っておりますので、三百キロ、五百キロというところで深い地震が、大きいのが起こったところで間もなく浅いところで大きい地震が起きる、そういう例が四例ほどございますので、この南海トラフ駿河トラフ沿いに関しましては、そういう深発地震面がせいぜい六十キロ、七十キロでございますので、そういうことはないんじゃないかと思っていたのですが、そういう浅いところでも類似の現象があったということで、そういう浅い地震について見つかったのは今回が初めてでございます。深い地震で類似のことが既にあるということです。  なお、ただいま先生から御指摘がありましたもっとほかの似たような例は、日本にはございませんが海外にはございますので、そういうところの例もこれから調査してまいりたいと思っております。  以上です。
  19. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そこで、ひずみエネルギーがかなり蓄積されておる、また、ひずみエネルギーの蓄積観測できるというのは東海地区だというお話でございますが、ほかにもそういう地域があるのかないのか、その点も伺いたい。  それからもう一つ、短期的に観測予知ということを考えますと、長期の今の問題につきましては、既にこの地域観測強化しよう、あるいは防災強化しようという防災の特別地域に指定してありますから、これに対しての対応は我々としても手配はしたということになっておるわけですけれども、短期で警報を出すということになりますと、直前の変化をとらえなければならないわけですね。それについての観測網なり今までの考え方に誤りはないのかどうか、もう少しこういうことからつかまえなければならぬという技術的な問題はないのかという点についてもお伺いさせていただきたいと思います。
  20. 浅田敏

    浅田参考人 太平洋沿岸地震に関しましては、東海地方以外に今候補地はないということになっております。ただし、房総の外房から福島県にかけては昔津波が起こったことがございますので、津波が起こる可能性は否定できないと思います。しかし、津波の被害を起こすような地震でも、例えば具体的に言えば、東京に地震災害を起こすようなことはないだろう、こう考えられております。  あとの問題は内陸地震でございますが、内陸では、例えば人が一人二人亡くなるというような地震は数年に一遍ぐらい起こっております。あるいは人が数百人亡くなるというような損害あるいはもっと損害の出るような地震は三、四十年に一遍起こっております。これはやはりそういうふうに起こるのだと思います。  実は内陸にはこの数十年間、そんな大きい地震は起こっておりません。福井地震とか鳥取地震とか非常な損害がありましたが、その後、そういう大きな損害のある地震は起こっておりません。これは学説の範囲を余り出ないのでございますが、今後とも当分起こらないのだという結論を下すことは到底できないと思います。  最後に、一つ申し上げたいことは、内陸地震をその短期的前兆をつかまえて短期的に警報を出すというためには、今先生のおっしゃったように、さらに研究が必要でございますが、今具体的に言いますと、例えば地震の前の電磁波の放射というような新しいこともわかってまいりましたし、あるいは地電流もやる値打ちがあるのかもしれません。あるいは、さっき申し上げましたけれども、地下水位などももっと積極的に取り上げる値打ちがあるのではないかと思います。もちろん、例えば在来あるような傾斜計とか伸縮計とかいう機械もさらに磨き上げる必要があることは明らかであります。そういうことによって、例えばもっと小さな前兆ももっと遠くから取り上げることができるようになりましたら、これは観測網が少なくてもできるようになるのでありますから、今よりは実現に向かって近づいたということになります。ですから、絶え間ないその種の研究は必要でございます。  以上でございます。
  21. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の先生のお話ですと、電磁波とか地電流とか地下水位とか、こういったものももう少し掘り下げる価値があるということでありますし、そういうものが進歩することによって、また、そういうものの観測網内陸型についても張ることができるとすれば、内陸型の予知もかなり可能になってくる、こういうように考えてよろしいですか。
  22. 浅田敏

    浅田参考人 それを研究すれば可能になるというのは、ちょっと言い方が簡単に過ぎると思いますが、さっき申し上げましたように、非常に小さな前兆でも確実に把握するような機械進歩させていく、それにはもちろん、例えば地下水位も入れば電波放射も入る、そういう意味でございます。
  23. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そういういろいろな新しいテクノロジーを実際に現地においていろいろ試してみるということは、どこが取り上げて、どんなふうにやっておられるわけですか。
  24. 浅田敏

    浅田参考人 そういうことは主として大学がやっております。しかし、大学以外でも、例えば地質調査所とか防災科学技術センターとかというところもやっております。あるいは気象庁にも研究所がございますし、測量上の新しい試みは国土地理院でもなさっていると思います。  以上でございます。
  25. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 先ほど御質問した、あと一時間後とか二、三時間後に警報ができるかどうかという点について、例えば東海地震の場合、そういうことは可能かどうかということについて、もう少し具体的にお伺いしたいのです。
  26. 浅田敏

    浅田参考人 東海地震については、もともとそういうことは可能であるという考えのもとにいろいろなことが進んでまいりました。一番具体的にいつも取り上げられる例は、日本海岸地震は潮汐の振幅が非常に少ないものでございますから、地震の前になぎさ線が移動する。隆起すればなぎさ線は遠くに参りますが、そういうことが気がつかれた例が一、一ある。これが、地震の直前の予知ができるということを昔から言っておりますときに、一番最初に頭にくることでございます。  それからもう一つ、非常に重大なことは、南海地震のときに、今村明恒先生という方が、当時の陸地測量部に頼んで測量をしておったのでございます。これはもちろん今村先生は東海地震がそろそろ起こるのではないかと思ったから、そういうふうに陸地測量部に御依頼になったのでありますが、それがまさに東海地震の一日前でございまして、そのために水準測量の結果に理解しがたいことがあらわれたのです。それは今日では、傾斜変動が数日前から、最初はわずか、次第に急速に起こったということになっておりまして、ここにいる茂木参考人がそのことをうまくまとめて、図面になっております。この変化は巨大でありますので、そのような変化があれば必ずわかると思っております。  以上でございます。
  27. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それから、津波の予知はできるのか、できないのかという点についてもひとつ教えていただきたい。
  28. 浅田敏

    浅田参考人 これは私より気象庁の方の方が適任であるかと存じますけれども、つまり津波は、起こってから来るスピードがのろいのです。でありますから、気象庁は現に津波警報ですかを出しております。多くの場合成功しておるのだと私は理解しております。
  29. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いや、私の申し上げているのは、地震が起こってから津波ではなくて、同時に、これは津波を伴う地震であるとかないとかというのは予報できるのかどうか。
  30. 浅田敏

    浅田参考人 それは非常に難しいかと存じます。つまり、具体的に言いますと、海の底にある地震予知をしなくてはならぬことがまず第一でございます。その次に、その地震は津波を多く出すような性格を持っているかどうかということもあらかじめ知らなくてはならない。  ただし、例えば関東地震が起こればどういう津波が起こる、東海地震が起こればどういう津波が起こるということは、これは、今考えていることはそんなに間違ってないと思います。そういう意味でならできますけれども、一般的には難しゅうございます。
  31. 末廣重二

    ○末廣参考人 ただいまの浅田参考人の御説明に若干つけ加えさせていただきますと、原理的には、地震発生いたしましてできるだけ早く、現在気象庁では二、三分を目指しておりますが、その極めて短時間に、発生した場所、地震の大きさを察知、推定、測定いたしまして、それによって津波の発生可能性ということから津波警報を出しているのでございます。  今、特に注目されております東海沖あるいは房総沖には、海底地震計というものが設置されておりまして、この海底地震計の先端部、あるいは中間点には、津波が発生した、つまり海水の表面の昇降を伴ったということを直接はかる機器が装置されておりますので、地震発生と同時に津波も発生したということを東海洋及び房総沖地震については直ちに知ることができるようになっております。
  32. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。
  33. 馬場昇

    馬場委員長 富塚三夫君。
  34. 富塚三夫

    ○富塚委員 私はちょうど神奈川県の小田原に住んでおりまして、東海、相模湾の大地震が起きるということが連日報道されたり、いろいろな問題意識を持って市民の皆さんは非常に心配をしているわけであります。  きょうまた改めて先生方からいろいろ見解をお伺いいたしまして、そこで、若干御質問申し上げたいのは、神奈川県の「温泉地学研究所報告」という中で、民間の研究団体であると思うのですが、小田原付近に直下型の地震発生、そこから東海大地震につながっていくみたいな見解が出されているのです。直下型地震というのは一体どういうふうにすれば予測することが可能なのかという点で、先ほど浅田先生ですか、おっしゃった、井戸水の流れ、動きを調べるということが非常に大事なんじゃないかということが言われておるのですけれども、直下型地震の問題について、東海大地震との関係、何か直下型地震が起きてから東海大地震発生する可能性があるということが言われているのですが、そういうことについてどんなふうに見ておられますか、お尋ねをいたしたい。
  35. 浅田敏

    浅田参考人 最初に、相模湾の大地震のことについて申し上げますが、相模湾の大地震というのは実は関東地震のことでございます。これはまだ起こらないということになっております。多分、百年とか百五十年とか二百年後になるであろうと考えておりますので、ちょっと暇があるのではないかというのが結論でございます。  もう一つの小田原の地震でございますが、これについては七十年に一遍起こると言っている人がございます。その根拠は、今までそうであったというのです。さらに、そのもう一つ根拠は、関東地震のときに同時に小田原付近の地震も起こったのだ、それを一つと数えまして、それから七十年前に地震が起こった、もう一つ前に起こっている、そのうち二つは関東地震の前、元禄地震のときにも一緒に起こった、こう言っておるのであります。ですから、それが一緒に起こったといたしますと、確かに七十年に一遍起こっておるということになります。関東地震から七十年というのはもうじきでございますが、そのときに起こるかという問題でございますが、いや、そんなことはないのだ、起こりっこないのだと言って決めつけることは到底できないと思います。しかし、起こるに決まっていると言うことはできません。地震のような現象は、例えば一カ月ごとに起こって、何カ月何回も起ったから次も起こるだろうと思うと起こらないということがよくあるのでございますので、何回起こったからその次にも起こるという論理は用心しないといけないのでございます。  小田原地震が起こるとしたときにその前兆をつかまえられるかという問題でございますが、あの付近には気象庁容積変化計もございますし、たしか傾斜計もございますし、私の東海大学にも傾斜計を据えつけようと思っております。新型の傾斜計を据えつける予定でございます。ですから、前兆があったとき、それをつかまえることができるという望みを非常に持っております。  問題は井戸でございますが、井戸の話は昔から非常にございまして、地震の前に濁ったとか水がなくなったとかいう話がございますので、これはやはり取り上げる値打ちがあると思います。今、小田原の地震があるだろうと言った人はなまずの会ではないのでありまして、地震学者という名前のついている人が言ったのであります。なまずの会が井戸の研究をなさっていることは、私は非常に結構なことだと思っております。
  36. 富塚三夫

    ○富塚委員 茂木先生のお話で、御前崎―掛川間ですか、震源地のそういった動きというものについてあったのですが、相模湾周辺というのはどんな感じに見ておられるのでしょうか。
  37. 茂木清夫

    茂木参考人 相模湾周辺については、浅田参考人から今お話がございましたように、第一に、皆さん頭に浮かぶのは、相模湾の真ん中に起こる関東地震の巨大地震でございます。先ほどお話がございましたように、これの繰り返し間隔は相当長いだろうということで、まだ数十年しかたっておりませんのでこれと同じ規模の大地震は当分ないだろう、同じ場所で起こるということはないでしよう。  それで、ちょっと繰り返しになりますが、確かに最近話題になっておりますのは小田原の地震でございます。周期が七十年程度で、確かに過去何回か繰り返しているのでございますが、地震繰り返し周期というのは確かに注目している一つの見方でございます。ただ、アメリカのサンアンドレアス断層というところの地震は、これも非常に一定間隔で、これは二十二年ぐらいで繰り返しているのですが、この場合は地震そのものもほとんど同じ大きさで規則的に繰り返しているのですが、小田原の地震を調べてみますと、一つ地震はもう非常に大きいのですけれども次の地震は非常に小さいということで、大きい地震も小さい地震も皆まじり合っていて、そういうのを並べてみると七十年になっている。こういうのが周期的に繰り返すというのは物理的には非常に考えにくいことなので、見かけの周期である可能性があるのではないかという疑いを、もちろん否定はできませんが、持っております。  ただ、小田原地域といいますか、神奈川県西部は、一九七四年以来、伊豆半島で、伊豆半島沖地震伊豆大島近海地震、それから一九八〇年には伊豆半島東方沖地震が起こっておりまして、非常に活発な状態を続けましたその北側の隣接地域でございますので、私どもとしても、この地域観測をかなり集中して現在注目はしております。  ほかは、マグニチュード七クラスの地震が例えば周辺地域で起こるかどうかということは、可能性は否定できないと思いますが、この地域東海地域に準じて測量、連続観測をかなりやっておりますので、かなり明瞭な異変があった場合はとらえられる可能性があるのではないかというふうに思っております。もちろん東海地域のようないわゆる常時監視体制にはございません。  以上です。
  38. 富塚三夫

    ○富塚委員 大規模災害、地震による。災害の中で、実は山津波が関東大震災のときに根府川地区に起きまして大惨事となった経験があるわけです。一般的な津波と山津波の関係なんですが、この現象といいますか、こういうものを事前に把握することができるのかどうかという問題がまた非常に心配な問題なんですが、山津波の問題などについてはどのように見られておるでしようか。
  39. 末廣重二

    ○末廣参考人 私、専門でございませんので、若干受け売りになることをお許しいただきたいのでございますが、先生御指摘のように、地震が起こりますと、ただ単に地面が揺れることによって建物が崩壊するということの被害だけではございません。がけ崩れ、あるいは最近の長野県西部地震のように山が大きく崩れまして家ごと押し流してしまうというような被害が出るわけでございます。  こういったことに対しまして、私の聞き知っている限りにおきましては、国土庁、建設省などが中心におなりになって、いわゆる危険な急傾斜地というものの御指定をなすっていらっしゃると聞いておりますので、そういった危険な急傾斜地を背に負っているような住家あるいは市町村等に対しては特別な警戒をするように既に十分な広報あるいは指導がなされていると聞いております。
  40. 富塚三夫

    ○富塚委員 限られた短い質問時間ですので、ちょっと政府関係にお尋ねしたいのですが、神奈川県内で民間の研究団体が県の補助金などによって地下の水位を調べている程度研究がなされているわけです。その程度しかなされていないということなんですが、やはり本格的に地下水の動きなどを研究していく必要があるのじゃないか、あるいは温泉地における温泉のそういった問題も調べていく必要があるのじゃないかと思うのです。  こういう点について、政府として、先生方の御意見を受けてもっと本格的にそういう問題を調べていく必要があるのじゃないかと思うのですが、どういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  41. 杉岡浩

    杉岡政府委員 お答えいたします。  突然の御質問なものですから、私、その方の専門じゃございませんけれども、ただいま参考人の諸先生方から地震予知についていろいろとお話がございました。関係省庁におきまして、いろいろな研究所におきましてそれぞれの持ち分に応じて調査をいたしております。地下水等につきましても、地質調査所を中心として、あるいはいろいろなところも調査をいたしておりますが、今の小田原とかそういったところの調査につきまして現在どういうふうな調査をしておるのか、私、現実に存じておりませんので、そういった面につきまして調べましてまた御報告に上がりたい、こう思っております。
  42. 富塚三夫

    ○富塚委員 駿河湾には海底に地震の探知器を埋めてあると聞くのですけれども、相模湾にはないみたいなことを聞いているのですが、この点はどうなんでしょうか。これは先生の方に。
  43. 末廣重二

    ○末廣参考人 ただいま海底にまで手を伸ばした地震観測と申しますのは、御前崎から約百キロ先の海底下まで海底ケーブルによる海底地震施設がございますし、もう一つは、最近設置を終わりました、房総半島の勝浦からやはり太平洋の沖へ向かって百キロ以上延ばした海底地震計がございます。  なぜ相模湾にそのような施設がまだないかということでございますが、これは、先ほど浅田参考人がお述べになりましたとおり、今から六十三年前の大正十二年に相模湾の内部は大破壊をいたしまして、関東の大地震を引き起こしたわけでございます。そのことからいたしまして、再度相模湾の内部が大崩壊をするということはあり得ると思いますが、それはまだ遠い将来である、相当な時間があるということで、現在相模湾はまだ安全である、相模湾の内部が大崩壊をするということに対してはまだまだ当分安全であるというのが地震研究者の大体一致した意見でございますので、そういったことから、まず緊急の地方に海底地震計設置したわけで、相模湾にはまだ設置してないというわけでございます。
  44. 富塚三夫

    ○富塚委員 先ほど浅田先生がおっしゃったのでしょうか、海岸の汀線移動とか井戸水の問題とか、そういう問題が非常に大事な問題になって研究されているということの中で、先生方が、皆さんがほとんど大地震が短期的に想定されるいろいろな問題を提起されているわけですが、地元の人たちは非常に不安になっている。問題は、あらかじめ予知して知らせることが可能なのかどうかという問題。先ほども末廣先生からも現状の気象観測みたいなことのお話も聞きましたけれども、先生方から見られて、私どもはもっと政府が力を入れて、県が力を入れて、行政が力を入れてこの地震対策を根本的にひとつ考えていかないと、でまてしまってから、発生した後では遅い、こういうふうに現実に考えて先生方にもいろいろお話を承っているのですが、現実に今のような状況のままでは非常に不安がある。避難の問題もそうです、予知、予防の問題もそうだと思うのですが、その点で先生方に、現状をどういうふうに我々政府なり国会の対応などを見ておられるか、所感がありましたらひとつお聞かせをいただきたい。
  45. 浅田敏

    浅田参考人 今先生のおっしゃったのは小田原の地震のことかと思いますが、さっき申し上げましたように、小田原の付近は、例えば国土地理院による測量の繰り返しなども特に留意されているところだと思います。ただ、我々が直前の警報を出すために見張っているのは東海地震でありまして、小田原地震について特にそういうふうなことをするということにはなっていないと思います。このことについてどういうふうに考えたらいいのかという問題でございますが、やはりこれは行政の方の問題ではないかと考えております。
  46. 富塚三夫

    ○富塚委員 時間が参りましたから、きょうは先生方からいろいろお話を承るということが主でありますが、私はやはり政府に要請をしておきたいことは、どうも総論では非常に危機感を持って対応されていますが、各論になると非常に行政、対策もスローテンポになっているように見受けられます。前回も災特の委員会でいろいろ問題を提起させていただきましたけれども、どうかひとつ積極的に、東海、相模湾地震対策について政府は力を出していただきたい、努力をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わることにします。  ありがとうございました。
  47. 馬場昇

    馬場委員長 薮仲義彦君。
  48. 薮仲義彦

    薮仲委員 本日は、浅田先生、末廣先生、茂木先生、大変お忙しい中を当災特の委員会で貴重な御意見を開陳していただきまして、大変にありがとうございました。私は、自分が静岡でございますから、専門の先生方の御意見を大変貴重な御意見として拝聴させていただきました。句点か素朴な質問をさせていただきますので、限られた時間でございますから、簡潔な御答弁をいただければ大変幸せでございます。  まず、諸先生のお話を伺って我々がわかることは、いわゆるプレートテクトニクスという理論によって発生するであろう海洋型の地震については、今、東海地震を想定してあらゆる観測網を網羅しておるというお話でございます。現在の技術である程度予測可能なのは東海地震であろうというお話でございます。  そこで、言葉の上で正確を期すために教えていただきたいのは、地震予知の場合に、よく、ただいま諸先生のお話の中にも出てまいりましたけれども、直前とか直近というお言葉、それから短期、それから長期という表現がございます。これは非常にあいまいな理解をいたしますと、私たち判断を誤りますので、これはできれば浅田先生から、直前、直近、短期、長期という場合に、時間としてどのくらいを正確に理解したらよろしいか、教えていただきたいと思います。
  49. 浅田敏

    浅田参考人 実は、その言葉自身、非常に熟している言葉ではございません。人によっては第一種の前兆、第二種の前兆というような言い方をなさる方もあります。しかし、私が今申し上げた意味では、長期的前兆というのは年のオーダーでございます。例えば、具体的に言えば、新潟地震のときの測量の結果を解釈して、このときは長期的前兆があったということになっておりますけれども、十年以上続いておりました。マグニチュード八の地震長期的前兆は、十年とか二十年とか三十年とか四十年とか、非常に値はばらつきますけれども、その程度の長さ続く、こう考えられております。  短期的前兆でございますけれども、昔は言い伝えの話が多かったものでございますから、人間の目でわかることですから、どうしても数時間ということになります。しかし、だんだん機械観測による短期的前兆というものを見てまいりますと、場合によっては一カ月、二カ月前からあるのではないかというものも出てまいりました。それから、例えば、昔の地震を調べますと、百日前から地鳴りがあったというような話も出てまいりますから、この場合、ただ短期と申しますと、やはり場合によっては一カ月、二カ月前と考えなければならないのではないかというふうに考え方が変わってきております。  では、直前の前兆というのはどういうことかといいますと、直前の前兆といいます場合は、地震の三十分前とか一時間前の汀線の異常というようなことがもとになっております。これが一番もとでありますから、普通数時間と考える癖がついておりますが、例えば井戸水が濁ったとか減ったとかいう話は数日前からでございますから、あるいは直前という場合は数日前からというふうに考えておいた方がいいのかもしれません。  以上でございます。
  50. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう少し時期的な問題で事柄を正確にするために教えていただきたいのは、大規模地震対策特別措置法によりまして国土庁長官、もちろん総理が一番の責任者でございましょうけれども、警戒宣言を発令いたします。その警戒宣言を発令する以前に判定会の招集で六人の先生方が集められます。この判定会招集ということは、直前の前兆現象に異常を来した、直前あるいは直近という前兆によって判定会が招集される、こういうことでよろしいのですね。
  51. 浅田敏

    浅田参考人 それでよろしいと思います。
  52. 薮仲義彦

    薮仲委員 じゃ、これから今度は大変お答えにくいことを素朴に質問いたしますので、三先生にお答えいただきたいのです。  我々、地元でございますので、各新聞社が地震学会あるいは諸先生の調査研究を発表されます。そうしますと、同じ社の新聞の内容も見出しが全く違ってくるわけですね、諸先生の発表によって。県民にとっては、一体これはどういうことだと不安に思うことがあるわけでございます。大変恐縮でございますが、我々が理解しておりますのは、東海地震は、まず先ほど申し上げた海洋型の地震があるという大前提に立って今県民は努力しております。ある、それに立ち向かっていこうと言っております。まず、あることが前提です。しかし、あることについて、きょうあっても不思議じゃないし、百年先にあっても不思議じゃないしという、非常にタイムラグといいますか、長い時間での覚悟を我々は要求されるわけでございます。  しかし最近、きょうお見えの茂木先生の調査研究の発表、先ほど開陳なさった三つの要素のお話も新聞に出てまいります。あるいは、後でお伺いしたいと思いますけれども、東海地震の主犯は富士川断層であるということを東大地震研究所の恒右先生がおっしゃっています。そうすると、新聞の見出しが揺らぐわけですね。例えばどういう内容かといいますと、ここにございますが、「東海地震 今世紀はない」とか、それから茂木先生が発表なさいますと、「一、二年」か「まだ先」かという見出しが出たり、あるいは「意外に早い」というような見出しに変わり、大変新聞の内容に振れがあるわけでございます。  そこで、きょうはせっかくのこういう機会でございますから、三先生独自にこの東海地震の時期について、正確にこのように言えば間違いないというお話をちょっとしていただきたいのです。どういうことが一番正確な、現時点において国民に対して、東海地震の時期についてはこういうことが最も正しいという御意見を三先生からちょっとお伺いしたいのです。
  53. 浅田敏

    浅田参考人 そもそも一番最初に、東海地震はあした起こっても不思議ではないという言葉が事の発端であったかと存じます。あのころは直前の前兆観測する観測網もございませんでしたし、我々の前兆に関する知識その他も何もありませんでした。ですから、非常に幅を広くとらなければならなかった。その幅の一番近い方があしたということであったわけでございます。じゃ、今日はどうかと申しますと、絶えず気象庁が直前の前兆を見張っているわけでございます。今はそれはないわけでございますから、あしたはないと思っております。  それじゃ、いつまでないかという問題でございますね。これもだんだん経験を積んでまいりますと、例えば一九七八年の伊豆大島近海地震のときは一、二カ月前からラドン濃度の変化が出てまいりました。非常に経験を積んでおりますので、例えばラドンは何もないときはどういう変化をするかということがわかってまいっておりますね。それがもう十二月の前から少しずつ変わっていた。こういうことに現実にぶつかると、それに気がつくかどうかということはまだ留保いたしますが、ですから、このことについては仲間でもう一度よく相談しなければいけないと思いますが、今何もないということは、あと一カ月は何もないと言っていいことかもしれません。余り私自身が先走って申し上げると怒られるということになりますけれども、だんだんそういうふうに感じております。  では、東海地震は今ないし、今こんなに静かである、しかも判定会、打ち合わせ会を毎月毎月やって新聞記者会見をいたしますけれども、何も変わったことはないというので何カ月も続くこともあります。あるいは大きな地震がここに起こったので、これは関係あるかもしれないということもありますけれども、多くの場合は何もないのでございます。じゃ、本当にこんなに何もないのだから、もうあと数年は何もないのではないかというふうに思いたくなる方もいるかと思いますけれども、あと数年間は地震はないんだということは、これはどうしても申し上げられないのであります。  ですから、あしたから、百年ではありません、百年は遠過ぎます、あしたから何年かまでの間という、延びたのはこういうふうに縮まったわけでございますね。最後は、一番長いところをどこに置くかという問題がありますけれども、これについて非常に学術的にはっきりしたことはありません。ですから、十年とか二十年とかいうふうに漠然と考えております。これは今までのいろいろな大きな地震の起こり方などから得られる心証でございます。  あともう一つ重ねて申し上げますが、富士川断層が動くのが東海地震であると申しますけれども、あの意見には、地質学者というものは我々から見ますと非常に独特な性格がございまして、地質学というのは目で見る学問であります。我々は機械ではかる学問であります。富士川断層にも潜り込みをあらわすような地震の分布がちゃんとわかっております。これは駿河湾内と同じように二十度ぐらいの角度で斜めで西の方に行っております。でありますから、富士川断層が、ストライクスリップと申しますけれども、こういうふうにずれて起こるのだというのは間違っておりまして、もちろんずれの成分もありますけれども、英語でいいますディップスリップと申しますが、こういう成分も非常にあると思われますので、あれは駿河トラフの続きが大体あの位置にあるのではないかと私は思っております。これはまだ私が思っておりますという程度でございまして、多くの方は今の富士川断層が大事だという意見は比較的無視なさるのですね。しかし、これは無視するのはよくないと私は思っておりますので、私はそのように考えております。  以上でございます。
  54. 茂木清夫

    茂木参考人 時期につきましてはいろいろな評価、推定の仕方がございます。  一つは、繰り返しの間隔、例えば南海トラフ沿いの地震は百年から百五十年間隔で起こる、そうすると、前の地震が起こってから何年たったからだんだん切迫している、こういうような評価の仕方もございます。  それから、ひずみですね。地殻のひずみがだんだん限界に達すると地震が起こる、現在までどのくらいたまったから地震が近づいているのではないか、こういうような評価の仕方がありますが、いずれもそういう繰り返し間隔で申しますと、その繰り返し間隔というのは非常にばらつきがあります。  それから、そういう限界のひずみに近づいているかどうかというのを見る場合には、その限界ひずみの評価、それがまた非常にばらついておりまして、いずれも大ざっぱな目安しかないわけです。そうしますと、ただ定常的にひずみがたまりつつあるということだけですと時期の推測はできないわけでございますので、先ほど申しましたように、変化があればそれを手がかりにするということで、前兆現象があるかどうかというのが今一番頼りになる手がかりだと思いますが、そういう目で見ると、ここ十年ほどはその前の二十年と比べると変化がございますので、全く定常的な状態が進行しているというのではないのではないか。  それではいつかということになりますと、まずこの変化が本当に前兆なのかどうかということについては、その可能性がある、だから曇りの状態にある、そうすると、もしそれが本当ならばそう遠くはないということでありまして、だから何年ということは現状では特に言えないと思います。それは経過を見ていくと、これが本当に前兆なのかどうかということが判定できるかと思いますが、やはり直前の前兆をつかまえるというのが本命であろうと思います。  以上であります。
  55. 末廣重二

    ○末廣参考人 大変乱暴なことを申し上げますと、東海沖の大規模地震歴史的に過去四回起こっていることが確かめられております。その一番古いものから次の地震までの間隔を申し上げますと、百七年、百二年、百四十七年、そして一八五四年の安政の東海大地震が起こりまして、それ以来現在まで百三十二年既に経過しております。この事実と、東海地方には測量の観測始まって以来、刻々とひずみがたまって今まで来たということ、さらに茂木参考人のおっしゃいましたように、ここ十年来周囲の様子が若干変わったように見えることから総合判断いたしまして、これは全く個人的な感触でございますが、少なくとも防災対応をする以上、今世紀に起こり得るということを前提とすべきかと存じます。
  56. 薮仲義彦

    薮仲委員 じゃ、これは浅田先生にちょっとお伺いしたいのでございますが、いわゆる我々県民としますと、警戒宣言発令しましてから学校に行っている子供の避難誘導であるとか、職場でいろいろな、例えばガスであるとか石油コンビナートであるとかの事前の予防体制に入るわけです。もちろん原子力発電所もその範疇に入るわけでございますが、例えば我々が高速道路上の車を避難させるとかいろいろな手続をやるときに、直下型、予知のできない地震ですとどんと来るわけでございますけれども、東海大地震については警戒宣言が発令されるという、他の地震とは避難の手続が全く異なる状態があろうかと思うのです。  警戒宣言が発令されて発災されるまでの最も短い時間をどの程度と想定して我々は避難あるいは防災体制を確立すればいいのか。警戒宣言が出ました、最短とのくらいですか。もしこれが二日、三日に及びますと、これまた国民生活、社会生活に大きな影響を及ぼしますので、可能である発災時間まで発災しなかった、そしたらどの時点で警戒宣言は解除できるのか、今もし大体想定できるのであれば、お話しいただきたいと思います。またそれが現段階で困難であれば、困難であるというお話でも結構でございます。この点はいかがでございますか。
  57. 浅田敏

    浅田参考人 警報の文章はある程度決まっておりまして、二日以内に大地震が起こるおそれがあるということになっております。この二日というのは必ずしも地震学的な根拠ではなくて、これは防災の方の根拠が強いのであると私は理解しております。でありますから、地震側といたしましてはあらゆる努力を払って、今先生が申されましたように、二日以内にあると言ってもないというようなことは起こらないように、これは昔から空振りと称しておりますけれども、こういうことはないようにするということになっております。でも、空振りよりもっと悪いのが、これも昔から言われております見逃しでございますが、あいにくなことに正確に時間をうまくやろうと思えば思うほど見逃しの危険性が多くなるのであります。このことについては非常に難しい問題でありますから、観測網はもうあらゆる種類があっても、あるいは密度についてもこれでいいんだということは申し上げられない、もう立派な上にも立派を期したい、こういうふうに申し上げているわけであります。  それじゃ、例えば一番短い方はどれぐらいかということでありますが、今までの公式の説明、多分気象庁の公式の説明だと思いますが、これはその文章は、二日以内に起こるというのは、二日目に起こるというのではなくて今から起こる可能性があって一番おくれても二日だ、こういうふうになっているのかと思います。早く気がつけば気がつくほど招集されてから起こるまで間が長くなるわけでございますね。この点については、せめて数時間はできるようにしたいと思って努力が行われている、こういうふうに理解しております。
  58. 薮仲義彦

    薮仲委員 ありがとうございました。
  59. 馬場昇

    馬場委員長 滝沢幸助君。
  60. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。三先生、御苦労さまです。  大変単純なことをお伺いしますが、先ほども富塚先生からもおっしゃってちょうだいしたと思いますが、地震研究のために政治がなすべきことは何だろうということを私たちとしては責任を感じているわけでありますが、特に大学の先生方でございますから、大学研究等に対して政治がもっとなすべくして今日なしていないものは何なのか、ひとつ端的におっしゃってちょうだいできればありがたいと思います。
  61. 茂木清夫

    茂木参考人 現在、私どもといたしましては、東海地域についてはもし異常があったらかなり的確に把握できるだろうという観測網整備することができております。したがって、ある程度、現在の技術水準で可能という、判断をすることができるという段階にありますが、実は日本列島いろいろなところで地震が起こる可能性がございます。そういうところで、もちろん東海地震のように非常に大きい地震が起こるということが想定されているところはほかには現在ございませんが、もう一段小さいマグニチュード七クラスの、内陸に起こりますとかなりの被害を伴うという地震が起こる可能性というのは日本列島所々方々にございますので、そういうところはどうなっているのかということでございますが、やはりそこについても東海地域並みの徴密な各種観測を総合的に集中的に行わない限り十分な監視はできない、こういうふうに思っております。     〔委員長退席、中村(茂)委員長代理着席〕  特にそういう内陸地震は柄が小そうございますので観測網密度は一層細かくしないといけない、そのためには、ちょっと試算いたしましただけでも非常に膨大な経費になります。それと現実に地震予知に現在使われております費用とのギャップというのは非常に大きいものがございまして、一挙にそこにというのはなかなか難しいでしょうけれども、やはり相当発想を転換するくらいのお考えで相当の増強をしていただかないと、とても内陸地震監視については信頼できる情報を提供できるようにはならないのじゃないか、人員及びそういう費用、金額でございますが、そういう方面の増強というのが私どもとしては非常に必要であろうと思っております。
  62. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変御遠慮なさりながら、結論としては政府がもっと人間も金も出せというふうにおっしゃっていただいたと存じまして、そのように受けとめ、努力させていただきます。  ところで、これは先生方にはちょっと御無礼な申し上げ方かもしれませんが、何も地震のことだけではなくて世のことすべてにつきまして、学者さんというのはどうも民間素人さんのなさることについては、いささかこれを尊重なさらぬというような嫌いがあろうと思うのであります。     〔中村(茂)委員長代理退席、委員長着席〕  相ともに、きょうは大臣が見えなくて大変残念なんでありますが、行政というものも政治の部門も、学者の意見は聞くけれども素人の提言については極めて冷淡無礼というものを多々見受けるわけでございます。先ほどまで鍵田先生が席に着いていらっしゃいましたけれども、かの先生もそのお一人でございますが、民間にもたくさんのいわば地震のことに造詣のお深い方がおられまして、それぞれの立場で研究をなさっているわけであります。  私は少年時代に読んだのでありましたが、関東地震が起きまする前の日に、あみ民間の研究家、この人は何十年かにわたって地温を二時間に一回、昼夜を問わずお一人ではかっていらっしゃる、そして雲の動きをいろいろと見ていらっしゃる、そして東京気象台長に、あす正午東京方面に大地震ありという電報を打ってよこしたところが、気象台長は、折からドイツ語の本を読んでいらっしゃったが、その本の中に電報を挟んだまま大震災に至ったということを読んだことがあります。  大変御無礼でありますが、そのようなことは学問の世界、いわば象牙の塔にいらっしゃる方々もおありじゃないのか。ましてや役所というものは民間に対して、先ほど申し上げましたとおり、むしろこれに排除の論理でもって向かっている。つまり、東大の先生がこの情報を提供されればこれは大変に尊重しても、民間の名もなき者が提言をよこしても何を言うかというような態度が、これは地震のことには限りません、あるのでありまして、そういう意味では大臣に聞いてほしかった話でありますが、このようなことにつきまして、大変御無礼でありますが、末廣先生、民間の知識との協力体制というようなものについていかがお考えでございましょうか。
  63. 末廣重二

    ○末廣参考人 大変難しい御質問と受けとめさせていただきますが、私は他のお二方の参考人の方と違いましてずっと気象庁で育ちましたので、象牙の塔ではございませんで、むしろ民間の方と御接触する機会が多かったわけでございますが、そういった意味で、そういう民間の大変御熱心な方から御提言がありました場合には、決して私ども等閑に付した覚えはないわけでありまして、それなりに検討はさせていただいてきたつもりでございます。  ただ、大変難しいのは、例えば関東地方でございますと、東京に住んでいらっしゃいますと、月に三回ないし四回体に感ずる地震がございます。でございますから、関東地方にもうじき地震があると言いますと、これは当たってしまうわけでございます。ただし、そこに果たして有意義な関係があって、その方のおっしゃる前兆現象があったときに必ずその方のおっしゃるような地方にある大きさの、そして時間もある程度限定した地震が起こるかといいますと、私どもの検証いたしました限り、必ずしもそうでない場合が多かったわけでございまして、そういう意味で、民間の方の御熱心な御研究の態度ということに対しましては十分な敬意を払い、これに対する検証もしてまいりましたが、これならいけるというものは残念ながら現在まで見つかっていないというのが正直なところでございます。
  64. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 話は少し変わりますが、これはまことにいわゆる知識のない者の問いでありますが、先ほど地殻のひずみの話、前兆現象お話を承りました。その中で、これは同僚の菅原議員と話し合ったのでありますが、小さいひずみが頻発していくことによって大きなひずみを除去できるものだろうか。つまりは、小さなひずみが頻発しないでおれば大きなショックが一瞬やってくるというようなことがあるものだろうか、こういうふうなことを話し合ったのでございますが、いかがなものでございましょうか。どなたの先生でも。
  65. 茂木清夫

    茂木参考人 大きい地震を小さい地震でなし崩しに解消したらどうかというお話かと存じますが、非常に大きい地震関東地震みたいなのを解消するためには、東京周辺でほとんど毎日有感地震を感じていなければいけない、そのくらいエネルギーが違うのですね。だから、大きい地震一つを解消するためには我々が体で相当がくんがくんと感ずるような地震をほとんど連続して感じるくらいに起こらないと、とても大きい地震一発を解消するということはできませんので、実際はどちらがいいかというのは非常に問題ですし、実際技術的にはできるかどうかも問題でございます。そうやった方がいいかどうかも問題であると思います。
  66. 浅田敏

    浅田参考人 ちょっと追加いたしたいと思いますが、マグニチュード八の地震を小さい地震でなし崩しにするとしますと、マグニチュード六の地震だと千回必要でございます。ですから、関東地震をなし崩しにするのに平塚、湘南地方でございますね、マグニチュード六を千回、例えば数年間であるとするとマグニチュード六といえどもばかになりませんので、千回もあると相当な被害が出る。できるかできないかは別といたしまして余り実際的ではないかと考えております。
  67. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 私は雪国でありますが、人工雪崩というような発想でわっと出まして、人工地震は先生方の話ではどうもうまくいかぬようで、月賦では倒産を免れないようなものでございます。  ところで、またこれも素人の話で恐縮でありますが、ダムの構築を国土庁、農林省、一生懸命やって、多目的ダム、発電のためのダム、数々ございますが、このダムの水が一つは水圧もありましょうし、一つはその水が地殻に浸透していくことによりまして地殻に一種の破砕現象を起こす、そして、これが局地的な地震につながるとある日新聞に見えておりましたが、こういうことは実際学問的根拠のあることでございましょうか。どなたが御専門かわかりませんが。
  68. 茂木清夫

    茂木参考人 学問的にはございます。ただし、それはいろいろな条件が重なった場合に起こるのでございまして、全体の例からいたしますとかなり限られております。理屈としてもございますし、実例としてもございます。  以上です。
  69. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 そのような状況によって起きたかどうか知りませんけれども、私は会津でありますが、会津の下郷町を中心としまして、群発地震というんだそうでありますが、小さい地震をたびたび体に感じて町民は不安におののいております。特に私の町なんかは大規模な鉱山の、私たちにとりましては乱掘と言いたいところでありますが、そうしたことがあった後に閉山になりました経過もありまして鉱山の乱掘による地殻の変動かというような説もありましてあれでありますが、このようなことは各地にあるものでありましょうか、そして、それは何らの心配のないものでございましようか。
  70. 茂木清夫

    茂木参考人 最近、福島県の下郷で群発地震が頻発しております。この地域昭和十八年でしたか、田島地震が起こった近くでございまして、比較的こういう地震が起こりやすいところの一つである、そういうところでございまして、地表での、そういう浅いところでの、鉱山の影響というようなのはごく浅いところに限られておりますので、地震はもっと深いところに起こっておりますので、とてもその影響ではないのではないかというふうに思います。
  71. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 これまた新聞の話で、大変無責任な話でありますが、最近テレビで、ビルの屋上に大きなおもりをつけることによってビルの横ぶれを防げるというふうな研究をなさっているというふうなことを聞きました。これが学問的に、また実験的に有効なものであるならば建築基準法の改正ということによってビルのいわゆる横ぶれは大変防げるということもあるのでありましょうが、これはいかがなものでございましょうか。
  72. 浅田敏

    浅田参考人 私たち、地震学者ということになっておりますが、地震関係したことすべて知っているわけではございませんので、ビルの話は新聞で読んだ程度でございます。そして、ビルのことは耐震工学という部門がございまして、その方々がやっておるものというふうに理解しております。
  73. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 時間がないですから最後に端的にお伺いしますが、先ほど末廣先生から都市構造の改革ということをおっしゃっていただきまして我が意を得たりと思うのでありますが、人口がかくのごとく都市に集中している現象、まことに危険と私は申し上げたいのであります。  要するにその結論は、首都圏ないし太平洋沿岸等に集中している人口を政治的に、行政的に分散させること、列島改造論か知りませんけれども、それが非常に大事なことと私は思うのでありますが、これは簡単に一言、いかがなものでございましょうか。
  74. 末廣重二

    ○末廣参考人 確かに日本全体を地震に強い体質に変えていくということは国家的な一つの大きな問題であろうと考えるわけでございます。先生のおっしゃったように人口の分散を図るということも一つでございましょうし、また宮城県沖地震のときに経験しましたように、自分の住んでいるアパートには何らの被害もないのに水道、ガス、電気がとまって生活不便が、地震が揺れ終わってしまってから一カ月も二カ月も続くというような、昔なかったような被害が出てきているわけでございますので、そういった人間の生活を支える、ライフラインと申しておりますが、それを地下の共同溝に改築するとか、これは大変お金がかかると承っておりますが、あえてそういうことを推し進めていくのが、やはり日本社会地震に強い体質に変えていくことの一つの動きであろう、こう考えております。
  75. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。三先生御苦労さまでした。
  76. 馬場昇

  77. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 御苦労さまでございます。  最初に、浅田先生にお伺いいたします。  地震予知の当面の重点一つに首都圏直下型地震があると言われますね。先生はシンポジウムでも深井戸の観測強化について述べられています。今は府中なんかにありますけれども、とりわけ首都圏でも神奈川県だけにはこの深井戸がございませんが、先ごろ出された「地震と横浜」という本ですか、その中でも、横浜の直下型地震のおそれについて先生も述べられているようでありますね。しかも、さらにちょっと前の先生のお話には、観測網はできるだけ密度が高い方がよいとおっしゃっておるわけでありますが、神奈川地域における深井戸がないことについて、先生の御所見をお聞きしたいと思います。
  78. 浅田敏

    浅田参考人 東京の直下型地震というものは、一八五五年にありました地震で、下町に非常に被害を生じるものであります。横浜の直下型地震についてどういうことをそのとき申したか、失念してしまいましたが、さしあたり問題を東京の下町の下の地震に限りますと、具体的には小さな地震がふだんどういうふうにそこでは起こっているかということを知ることが非常に必要であります。でありますから、防災センターの深井戸はそれを調べるために元来あるものでありますから、府中にあるからといって府中のことがわかるというのではございません。でありますから、そういう一種の観測網という立場から、今三個ありますのをふやすとしたらどこに置くべきかということが決まるのでありまして、神奈川県にあるかないかということは、実は余り重要なことではございません。そういう立場から場所は決めるべきであると考えております。  横浜の直下型地震ということでありますけれども、横浜に固有の直下型地震があるかないかは私には今わかりません。もしあるとしたら、これはやはり何百年とか何千年に一遍ということになるのではないかと考えております、横浜にとって一番最大の被害を生じる地震関東地震ではないかと考えております。
  79. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま一度浅田先生にお伺いしますが、しかし今の問題についても、やはり地域的に密度が高い方がいいということになりますと、神奈川県にないということですから、地元の要望もあるようでありますので、その辺について、神奈川にやればそれでいいんだ、それだけで決まるものじゃないということのお話がありましたけれども、私、そういうものかなと思ったりしてちょっと疑問に思うわけでございます。しかし、時間がございませんので、次に進ませていただきます。  三宅島の問題ですが、五十八年の爆発のとき初めて臨時につくられた地震計がそのまま臨時についているだけで、正規の地震観測は一点観測のままだと言われていますね。測地学審議会でも総理大臣に対しまして、増設をせよということで具体的に建議されているのでありますが、いまだにやられていない状況がございます。これについて浅田先生の御見解を簡単にお述べいただければありがたいと思います。
  80. 浅田敏

    浅田参考人 今現在は二カ所だそうでございます。火山の噴火の予知のためには、観測網はやはりたくさんあった方がよろしいのでありますので、将来次第にふえていくのではないかと思います。
  81. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、末廣先生にお伺いしたいと思いますが、先ほど先生は予知ができても地震は防げないということをおっしゃいました。そのためには社会全体が地震に強い体質をつくることが非常に大事だということの意味お話がございました。私も全く同感でございます。  そこで、お聞きしたいのでありますが、東京湾横断道路の新設計画の問題であります。御承知のように、この東京湾横断道路の計画では十キロもの海底にトンネルを通す、あるいはそれを人工の島に結んだりする、また五キロにもわたるような長大な橋をつくったりすることになっておるわけですね。これが予想される、確率性の非常に高いと言われる首都圏の直下型地震に対して、こういう計画は乱暴なものじゃないだろうかと私は思うのですね。今でさえ超過密都市のこの地域にさらに人も車もふやしていくようなこういう大プロジェクトをやるということは、防災に携わる専門家としてどのような御所見をお持ちなのかどうか、お聞きしたいと思います。
  82. 末廣重二

    ○末廣参考人 私は、地震観測の方で今まで御奉公してきたわけでございまして、そういった構築物の耐震性ということについては素人でございますけれども、いろいろ聞くところによりますと、日本の建物あるいは橋梁、その他構築物については、まず地震に耐えられるか耐えられないかということが第一の問題として取り上げられ、それについては十分な配慮が払われているというふうに聞き及んでおります。  今、特に先生の御指摘になった東京湾横断のそういった地下あるいは橋梁あるいは島を結んだ道路が防災的にどういうものであるかということにつきましては、残念ながら私、それに対して大丈夫であるとかあるいは危険であるとかという判断をする力がございませんので、御客赦いただきたいと思います。
  83. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 やはり学者にお願いしたいことは、確かに先生の御専門、御専門があるということはわかりますが、そういう御専門の分野から社会的な問題に対してどんどん発言をなさっていただければもっと私たちはありがたいことであるな、こう思うわけであります。  あわせまして、末廣先生にいま一度お聞きしたいのは、地震観測による地下核実験の探知の問題でありますが、先生はこういう方面でも非常に大事なお仕事をしていらっしゃるということをお聞きしておるわけであります。最近の地震学の大変な進歩は、核兵器廃絶の部分的阻止と結びついた包括的な地下核実験禁止に必要な検証能力を持つレベルに達しておるという、つまり検証なんというのは今の科学技術、地震学の進歩の中ではほとんど必要ない状況になっているということを聞くのですね。しかし、これまでこの問題での米ソ対立の議論の中心はやはり表面上は検証の技術問題、これが難しいからということでなかなかうまく進展してこなかったという歴史がございます。  そこで、お聞きしたいことは、すべての条件を考慮しても、現在の地震学では地下核実験禁止に必要な十分な検証能力を持っていると言われる以上、問題は検証云々ではなくて核廃絶に対する政治的合意、それと関係国の善意ですね。それこそ今日における最大の課題であり、かぎなのではないか、こういうことを学会でも先生方の御主張の中に見られるわけでありますが、先生の御所見はいかがでしょうか。
  84. 末廣重二

    ○末廣参考人 先生御指摘のように、核実験の全面禁止ということが究極的には核兵器をこの地上からなくしてしまうということにつながる大事な第一歩であるというのは、今までの軍縮の論議を見ましても明確な事実であろうかと思います。また、この核実験禁止、現在は地下だけで行うことになっておりますが、これを禁止するためには必要な検証能力が伴わなければ条約はなかなか結べないというのもまたこれ事実でございます。したがいまして、私ども地震関係者は国際的に協力いたしまして、また日本政府の方針にも十分従いまして、この検証能力というものがどこまで進んでいるかということを現実に立証しつつ、政治的決断を迫っていくということが我々科学者の道である、こう思っております。  それで、我が国はっとに国際的な地震学による地下核実験の検証の問題につきましては熱を示しておりまして、我が国の提唱によりまして一昨年でございますか、東側、西側、非同盟三十七カ国会わせまして七十五カ所の地震観測所が協力いたしまして、検証には絶対欠かせない国際的なデータの交換の実験を行うというところまで現在こぎつけております。ただ、国際政治はなかなか早急には進まないところでございますが、私ども国際の場でお互いに技術を交換し合って検証能力の実証、ここまで来ているんだということを国際的に示すという努力は今後も怠らないつもりでございます。
  85. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私、お聞きしたことは、今の地震学の進歩で、検証をすることが必要ないほどに核実験と普通の地震の相違を見分ける、しかも相当長距離のあれを判定できるという能力があるということでありまして、そういう点で先生からお話しの、我が国がそれに対応できるような、いろいろ皆さん方の御努力で世界的なそういうシステム化を今やっているということはわかりますけれども、技術水準からいえばそういうものは必要なくなっている、そこの段階まで来ているんだ、こういうことについてはいかがでしょうか。
  86. 末廣重二

    ○末廣参考人 これはまだ十分な研究が進んでおりませんので、果たして全部の地下核爆発実験を世界的な地震観測網で探知、識別できるかどうかという問題にはまだ若干研究の余地が残っております。また、私は軍事的な知識は全くございませんのでよくわかりませんが、最近は非常に小さな威力の核兵器もできているやに聞いておりますが、そういう極めて小さなものを地下の深所に埋没させて爆発させた場合には、現地に乗り込めば別でございますが、相当離れたところから地震学的に探知するということにはやはり一定の限界があるというのが現在の国際的な常識でございます。
  87. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今、御承知だと思いますが、検証問題で絶えずそれを前面に出して難色を示しておるアメリカが、お話あるように、みずから検証困難な小さな核弾頭といいますか、SDI絡みの小さいもの、検証できないものを、普通の二十キロ以上ですか、ほとんど検証できると言われていますが、それ以下の小さいものをどんどん開発している、こういう格好で、そこまでは捕捉できないという意味だと私は思うわけでありますが、検証、検証ということで追いかけていきますと、核軍縮ではなくてやはり小さいものをたくさんエスカレートして、結局はイタチごっこになっていくような感じもするわけでありますが、善意の学者の皆さんから、やはりそういうことじゃだめなんだ、核廃絶という政治的合意があればもうこんなものは解決するんだという、そういう御意見もいただいているわけですが、この点について再度御答弁いただければありがたいと思います。
  88. 末廣重二

    ○末廣参考人 地震学的方法による地下核実験探知につきましては、相手の国の実験場に踏み込んでいかない限りある程度の限界があるというのは事実でございますが、検証し得る範囲は少なくともやめてもらう、つまり大きなものはすべてやめてもらう。若干小さなものが野放しになるということはあるかもしれませんが、さらに検証技術を向上させて、さらに頭打ちの度合いを低いところへ抑え込むということはやはり核実験を極めて困難な立場にだんだん追い込んでいくということになると思いますので、私は現在の検証技術に見合ったところまでまずやめてもらう、さらに技術の向上を期してその頭打ちの度合いを強めるという方法は極めて現実的である。結局核実験をやりにくくするということにつながるかと思っております。
  89. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 わかりました。  それでは、茂木先生にお伺いいたします。  三宅島の問題でありますが、今米軍空母艦載機による夜間の発着の訓練基地をつくる問題で大きな注目を集めていらっしゃるわけです。この計画が発表されてからいろいろな地震、火山の専門家、学者の皆さんから、ジェット機の離発着だけで約二百トンの衝撃波を地面に与えることだとか、そうした衝撃が本物の火山性地震と見誤りやすいとか、または電気的障害もあるなどということから常識的には考えられないという声が圧倒的です。中には、それはもう地震観測にとって自殺行為だ、こう言う方もいらっしゃるわけでありまして、こういう点について、住民の安全のためだけではなくて世界の地震学の発展のためにも今必要なことは観測強化こそすれ、わざわざノイズを持ち込ませることはないじゃないか、こう思うわけでありますが、先生のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。
  90. 茂木清夫

    茂木参考人 私、ジェット機が発着するとどの程度、どういうノイズが出るかという実態を実は余りよく知ってはおらないのですが、若干の影響はあるかと思います。ただ、現在具体的に私自身そういう点について余り存じておりませんので、ちょっとこれ以上お答えできかねます。
  91. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今の三宅島の問題について、茂木先生が専門外の分野に属するというようなお話でございましたので、もし差し支えなければ末廣先生なり浅田先生にお願いしたいと思います。
  92. 浅田敏

    浅田参考人 それにお答えするためには本当はジェット機が離着陸するとどれくらいの弾性波動を発生するかということを調べなければいけないはずでございますが、私はそういうことを全然やったことがないので想像もつきません。ただ、例えば目方が十トンくらいの物を上から落とすとどれくらいの地震動が起こるかという問題にすりかえますと多少の見当はつくわけですけれども、しかし物を落とすのと飛行機が離着陸するのとはかなり違うのではないかと思うわけです。原則としてはこのようなものは地震計を深いところに埋める、あるいは地震計の数をふやすというようなことによって補うことはできるのです。ですから、一概に火山観測にとって致命的であると申し上げるのは適切ではないというふうに感じております。
  93. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 末廣先生、いかがですか。
  94. 末廣重二

    ○末廣参考人 私も、果たして三宅島でどのような施設が設けられ、どの程度の訓練が行われるかという正確なデータを把握しておりません。報道機関等で報ぜられるところを聞き及んでいる程度でございますが、私、思いますには、やはり現在の地震計は地表にございまして、そのような場合には多少の影響は、これはあり得ると考えるのが正直なところかと思います。  しかし、これに立ち向かう手が全くないというわけではございませんので、ただいま浅田参考人からもお話のありましたとおり、地震計等を地表面に集中する雑音から守るといったような適切な処置あるいは観測点をふやすというようなことを図りますれば、現在、三宅島で行っております火山の常時監視の水準は、今後も我々のそういった対処の方法によって維持され得るのではないかと考えております。
  95. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  96. 馬場昇

    馬場委員長 これにて質疑は終了いたしました。  参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十一分散会