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1986-02-24 第104回国会 衆議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月二十四日(月曜日)     午後四時一分開議 出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 糸山英太郎君 理事 上草 義輝君    理事 近藤 元次君 理事 林  大幹君    理事 新村 勝雄君 理事 渡部 行雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 玉置 一弥君       衛藤征士郎君    金子 一平君       小坂徳三郎君    小山 長規君       中村正三郎君    仲村 正治君       古屋  亨君    松野 頼三君       渡部 恒三君    小川 国彦君       渋沢 利久君    斉藤  節君       春田 重昭君    伊藤 英成君       塚本 三郎君    中川利三郎君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 今井  勇君         農林水産大臣  羽田  孜君         通商産業大臣  渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 三塚  博君         郵 政 大 臣 佐藤 文生君         労 働 大 臣 林  ゆう君         建 設 大 臣 江藤 隆美君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     小沢 一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江﨑 真澄君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      古賀雷四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      河野 洋平君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 森  美秀君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 山崎平八郎君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  中嶋 計廣君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         警察庁長官官房         会計課長    立花 昌雄君         総務庁長官官房         会計課長    塩路 耕次君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         経済企画庁長官         官房会計課長  長瀬 要石君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁調整         局審議官    宮本 邦男君         科学技術庁長官         官房審議官   川崎 雅弘君         科学技術庁長官         官房会計課長  平野 拓也君         環境庁長官官房         会計課長    山下 正秀君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         沖縄開発庁総務         局会計課長  五郎丸日出昇君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         国土庁長官官房         会計課長    斎藤  衛君         国土庁土地局長 末吉 興一君         法務大臣官房会         計課長     清水  湛君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵大臣官房会         計課長     田中 誠二君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         厚生大臣官房会         計課長     末次  彬君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房経理課長   松下 一弘君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         農林水産省食品         流通局長    鴻巣 健治君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業大臣官         房会計課長   植松  敏君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         運輸大臣官房会         計課長     近藤 憲輔君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省国際運輸         ・観光局長   仲田豊一郎君         気象庁長官   内田 英治君         郵政大臣官房経         理部長     成川 富彦君         労働大臣官房会         計課長     石岡愼太郎君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         自治大臣官房会         計課長     大島  満君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         消防庁長官   関根 則之君  委員外出席者         人事院事務総局         管理局会計課長 大坪 波雄君         公正取引委員会         事務局官房庶務         課長      矢部丈太郎君         総務庁行政管理         局管理官    伏屋 和彦君         総務庁統計局統         計調査部労働力         統計課長    大戸 隆信君         防衛庁経理局監         査課長     粟  威之君         防衛施設庁総務         部会計課長   大原 重信君         経済企画庁経済         研究所国民所得         部国民支出課長 江崎 芳雄君         法務省刑事局刑         事課長     原田 明夫君         大蔵省主計局司         計局長     西澤  裕君         厚生省保険局保         険課長     奥村 明雄君         厚生省年金局年         金課長     谷口 正作君         会計検査院長  大久保 孟君         会計検査院事務         総局次長    磯田  晋君         会計検査院事務         総局第一局長  三原 英孝君         会計検査院事務         総局第三局長  小川 一哉君         会計検査院事務         総局第四局長  立石 一雄君         会計検査院事務         総局第五局長  秋本 勝彦君         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道常         務理事     岡田  宏君         日本国有鉄道常         務理事     前田喜代治君         国民金融公庫総         裁       田中  敬君         農林漁業金融公         庫総裁     松本 作衛君         日本開発銀行総         裁       吉瀬 維哉君         日本輸出入銀行         総裁      大倉 真隆君         参  考  人         (日本たばこ産業         株式会社社長) 長岡  實君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   小山 長規君     仲村 正治君   藤尾 正行君     中村正三郎君   森下 元晴君     衛藤征士郎君   塚本 三郎君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     森下 元晴君   中村正三郎君     藤尾 正行君   仲村 正治君     小山 長規君   伊藤 英成君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十七年度政府関係機関決算書  昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書(全所管)      ――――◇―――――
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、まず、内閣所管総理府所管総理本府等、大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本たばこ産業株式会社社長長岡實君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、内閣官房長官大蔵大臣及び農林水産大臣概要説明会計検査院検査概要説明日本専売公社国民金融公庫当局日本開発銀行当局日本輸出入銀行当局及び農林漁業金融公庫当局資金計画事業計画についての概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――    昭和五十七年度内閣所管一般会計歳入歳出決算概要説明  昭和五十七年度における内閣所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  内閣主管歳入につきまして、歳入予算額は、一千三百九十九万円余でありまして、これを収納済歳入額二千三百九十三万円余に比較いたしますと、九百九十三万円余の増加となっております。  次に、内閣所管歳出につきまして、歳出予算現額は、百四億七千八百四十七万円余でありまして、これを支出済歳出額百二億三千五百二十三万円余に比較いたしますと、二億四千三百二十三万円余の差額を生じますが、これは人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和五十七年度総理府所管一般会計歳入歳出決算概要説明  昭和五十七年度における総理府所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府主管歳入につきまして、歳入予算額は、八百四億八千四百四十七万円余でありまして、これを収納済歳入額八百八十二億七千六百五十六万円余に比較いたしますと、七十七億九千二百九万円余の増加となっております。  次に、総理府所管歳出につきまして、歳出予算現額は、五兆六千百九十億八百六十二万円余でありまして、支出済歳出額は、五兆五千三百七十三億八千四十三万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比較いたしますと、八百十六億二千八百十九万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は、七百四十二億九千三百二十八万円余であり、不用額は、七十三億三千四百九十一万円余であります。  総理府所管歳出決算のうち、警察庁、行政管理庁、北海道開発庁防衛庁経済企画庁科学技術庁環境庁沖縄開発庁及び国土庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、総理府本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は、一兆八千四十四億七千九百三十一万円余でありまして、これを支出済歳出額一兆七千六百四十二億九千三百六十万円余に比較いたしますと、四百億八千五百七十一万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は、三百九十六億一千五百六十四万円であり、不用額は、四億七千七万円余であります。  翌年度繰越額は、恩給費でありまして、これは文官等恩給及び旧軍人遺族等恩給の請求の遅延及び履歴等調査確認に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  また、不用額は、人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和五十七年度決算内閣についての検査の概要に関する主管局長の説明                               会計検査院  昭和五十七年度内閣の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十七年度決算総理本府等についての検査の概要に関する主管局長の説明                               会計検査院  昭和五十七年度総理府決算のうち、歳入並びに総理本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十七年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書に関する説明  昭和五十七年度大蔵省主管一般会計歳入決算並び大蔵省所管一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入決算につきまして申し上げます。  昭和五十七年度の収納済歳入額は四十六兆三千四百五十六億七千九百三十七万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと三千九百十五億八千四百二万円余の増加となっております。  以下、歳入決算のうち、主な事項につきましてその概要を申し上げます。  第一に、租税及印紙収入でありますが、その決算額は二十九兆四千四百六十九億三千六百九十七万円余で、これを予算額と比較いたしますと百三十九億三千六百九十七万円余の増加となっております。これは、所得税及び法人税等において課税額の伸びが見込みを上回ったこと等によるものであります。  第二に、公債金でありますが、その決算額は十四兆四百四十七億四千六百五十六万円余で、これを予算額と比較いたしますと三千二億五千三百四十三万円余の減少となっております。これは、歳出の不用が見込まれたこと等により、公債の発行額を予定より減額したことによるものであります。  以上のほか、専売納付金七千六百五十一億三千二百七十七万円余、官業益金及官業収入八十三億三千七百五十七万円余、政府資産整理収入六百七十四億千五百五十四万円余、雑収入一兆四千九百九億二千六百四十五万円余、前年度剰余金受入五千二百二十一億八千三百四十七万円余となっております。  次に、一般会計歳出決算につきまして申し上げます。  昭和五十七年度の歳出予算現額は七兆九千三十二億二千八百六十六万円余でありまして、支出済歳出額は七兆七千四百五十二億四千四十三万円余、翌年度繰越額は三百三十七億八千三百九十二万円余でありまして、差引き、不用額は千二百四十二億四百三十万円余となっております。  以下、歳出決算のうち、主な事項につきましてその概要を申し上げます。  第一に、国債費につきましては、国債整理基金特別会計へ繰り入れるため六兆九千六十九億三千二百八十六万円余を支出いたしましたが、これは、一般会計の負担に属する国債、借入金の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務取扱費の財源に充てるためのものであります。  第二に、政府出資につきましては二千百十五億円を支出いたしましたが、これは、海外経済協力基金等への出資であります。  第三に、経済協力費につきましては四百三十九億八千三十四万円余を支出いたしましたが、これは、開発途上国等に対する食糧増産等援助等のためのものであります。  この支出のほか、食糧増産等援助費につきましては、相手国国内事情等のため三百二十億八千六百三十六万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  以上申し述べました経費のほか、科学的財務管理調査費国家公務員共済組合連合会等助成費国庫受入預託金利子公務員宿舎施設費国際復興開発銀行出資特定国有財産整備費特定国有財産整備諸費及び国民生活安定対策等経済政策推進費として八百十八億八千三百六十一万円余並びに一般行政を処理するための経費として五千九億四千三百六十一万円余を支出いたしました。  なお、以上の支出のほか、公務員宿舎施設費につきましては十六億九千七百五十五万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  次に、各特別会計歳入歳出決算につきましてその概要を申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきまして収納済歳入額は百八十二億二百四十万円余、支出済歳出額は百八十一億八千四百八十九万円余でありまして、損益計算上の利益は二千三十一万円余であります。  この会計の主な事業である補助貨幣の製造につきましては、二十八億枚、額面金額にして千百七十五億六千万円を製造し、その全額を発行いたしました。  次に、印刷局特別会計におきまして収納済歳入額は六百八十四億千九百四十三万円余、支出済歳出額は六百二億六千七十万円余でありまして、損益計算上の利益は九十八億六千二百十一万円余であります。  この会計の主な事業である日本銀行券の製造につきましては、三十四億六千万枚、額面金額にして十一兆千百億円を製造し、その全量を日本銀行に引き渡しました。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部国債整理基金外国為替資金産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計歳入歳出決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  最後に、各政府関係機関決算書につきましてその概要を申し上げます。  まず、国民金融公庫につきましては収入済額は三千六百七十一億七千五百四万円余、支出済額は三千五百九十六億五千六百十九万円余でありまして、損益計算上の損益はありません。  この公庫の貸付けは、百万件余、金額にして二兆六千四百七十九億八千五百六十五万円余でありまして、これを当初の予定に比較いたしますと、三千百二十億千四百三十四万円余の減少となっております。  このほか、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上が昭和五十七年度における大蔵省関係決算の概要であります。これらの詳細につきましては、さきに提出しております昭和五十七年度歳入決算明細書及び各省各庁歳出決算報告書等によって御了承願いたいと存じます。  なお、会計検査院の検査の結果、不当事項として税務署等における租税の徴収に当たり過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に堪えないところであります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の合理化と改善に努めたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十七年度日本専売公社収入支出決算書に関する説明  昭和五十七年度日本専売公社収入支出決算書にっきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、たばこ事業の概況につきまして申し上げます。  昭和五十七年度の製造たばこ販売数量は三千百六十七億本余、金額にして二兆四千七百一億四千三百八十五万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において十四億本余、金額にして百十五億六十一万円余の増加となっております。  また、葉たばこの購入数量は二十一万七千トン余、金額にして三千四百十九億八千七百四十四万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において一万二千トン余、金額にして三百十二億六千六百五十八万円余の減少となっております。  次に、塩事業の概況につきまして申し上げます。  昭和五十七年度の塩販売数量は、一般用塩百四十九万六千トン余、ソーダ用塩五百八十万一千トン余、金額にして合計九百四十八億三千六百十万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百三十二万四千トン余、金額にして百三十九億四千九百三十三万円余の減少となっております。  また、塩の購入数量は、国内塩九十六万五千トン余、輸入塩六百二十九万三千トン余、金額にして合計六百六十四億二千七百六万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百三十七万六千トン余、金額にして百三十億二千八十一万円余の減少となっております。  次に、決算の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、収入支出につきまして申し上げます。  昭和五十七年度における収入済額は二兆五千七百五十一億四千二百十七万円余であり、収入予算額二兆五千七百三十三億九百六十四万円余に比較いたしますと十八億三千二百五十三万円余の増加となっております。  これに対しまして支出済額は二兆四千九百六十八億二百三十八万円余、翌年度に繰り越した額は二百十八億三百六十一万円余、合計二兆五千百八十六億六百万円余であり、支出予算現額二兆六千二百四十四億四千三百十三万円余に比較いたしますと、差引き、不用額は千五十八億三千七百十三万円余となっております。  次に、損益計算につきまして申し上げます。  総収益二兆五千七百九十三億三千六百十三万円余から、総損失二兆四千六百四十二億八千三百十九万円余を控除した利益は千百五十億五千二百九十三万円余であります。この利益は、日本専売公社法第四十二条の十三の二第一項の規定により全額利益積立金として積み立てております。  最後に、専売納付金につきまして申し上げます。  専売納付金は、小売人等に売り渡した製造たばこにつき小売定価に数量を乗じて得た額に納付金率を乗じて得た額から、納付したたばこ消費税の額を控除した額七千六百五十一億三千二百七十七万円余であり、予定額七千五百九十九億二千七百八十八万円余に比較いたしますと五十二億四百八十九万円余の増加となっております。  以上が、昭和五十七年度日本専売公社決算の概要であります。  なお、会計検査院の昭和五十七年度決算検査報告におきまして、意見が表示された事項が一件ございますが、これにつきましては、指摘の趣旨に沿い所要の改善に努めるようより一層指導監督の徹底を図る所存であります。  何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十七年度決算大蔵省及び日本専売公社についての検査の概要に関する主管局長の説明                               会計検査院  昭和五十七年度大蔵省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件であります。  検査報告番号九号は、租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。  これらの徴収過不足の事態は、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたり、申告内容の調査が十分でなかったため経費等の額を誤って所得を計算していたり、納税者が申告書等において所得金額、税額の計算を誤っているのにそのままこれを見過ごしていたりしていたことによって生じたものであります。  また、検査報告番号一〇号から一二号までの三件は、資金運用部資金の貸付けが不当と認められるもので、これらは、貸付対象事業の一部が実施されていなかったり、貸付けの対象とならない事業を対象としていたり、割戻しなどにより貸付対象事業費より低額で事業が実施されていたりしていたものであります。  次に、昭和五十七年度日本専売公社決算につきまして検査いたしました結果の概要を説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  これは、国内産葉たばこの在庫量に関するものであります。  現在、日本専売公社においては、たばこの主要原料としての国内産葉たばこを三十七箇月分保管しておりますが、これは、標準在庫量とされております二十四箇月分からみますと十三箇月分が過剰となっておりまして、しかも、その中には使用する際に特別の処理を要する用途区分葉と呼ばれている品質の劣っている葉たばこが多量に含まれております。  このような事態となっておりますのは、公社においても廃滅作による生産調整を行うこととしたわけでありますが、たばこ耕作農家に対する配慮等から生産調整が必ずしも積極的なものではなかったこと、また、用途区分葉の発生を十分に抑制できなかったことなどによるものであります。  このため、年間に約二千八百四十億円の資金が固定するばかりでなく、約三十億円の保管寄託料を負担する結果となっておりまして、しかも、今後それらの状態が継続することになると思われますので、種々困難な事情はあるにしても、国内産葉たばこの過剰在庫を解消するために各般の対策を講ずる要があると認め、意見を表示したものであります。  以上をもって概要の説明を終わります。     …………………………………    昭和五十七年度決算国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行についての検査の概要に関する主管局長の説明                               会計検査院  昭和五十七年度国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十七年度日本専売公社決算および    業務の概要  昭和五十七年度の日本専売公社決算および業務の概要を御説明申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済額は二兆五千七百五十一億四千二百十七万円余、支出済額は二兆四千九百六十八億二百三十八万円余でありまして、差引き収入超過は七百八十三億三千九百七十九万円余となりました。  これを損益計算面から申し上げますと、総収益は二兆五千七百九十三億三千六百十三万円余、総損失は二兆四千六百四十二億八千三百十九万円余、差引き純利益は一千百五十億五千二百九十三万円余となっております。  これを、たばこ事業および塩事業について、それぞれの概要を区分して、御説明申し上げます。  まず、たばこ事業でございますが、昭和五十七年度の製造たばこ販売数量は三千百六十七億本余でありまして、これは予定に比べ十四億本余、また、前年度に対しては二十九億本余それぞれ増加となっております。  たばこ販売面におきましては、キャビン85・マイルドセブン等の販売促進活動を積極的に進めてまいりました結果、前年度に対し数量で〇・九パーセント、売上高で一・九パーセントの増加となりました。  また、たばこ製造面におきましては、たばこ工場の製造設備の改善と作業の効率化によって生産性の向上を図り、あわせて供給の円滑化に努めてまいりました。  以上の結果、損益計算におきましては、総売上高は二兆四千七百三億五千七百六万円余、売上原価は六千七百四十一億六千八百九十八万円余、差引き売上総利益は一兆七千九百六十一億八千八百七万円余となり、これから販売費及び一般管理費一千五百七十六億七千八百六十八万円余、専売納付金七千六百五十一億三千二百七十七万円余、たばこ消費税七千六百五十六億四千百四十五万円余を控除し、さらに営業外損益十一億九千七百三十四万円余を加えた純利益は一千八十九億三千二百五十万円余となりました。  これは予定に比べ四百六十六億二千百六十万円余の増加、また、前年度に対しては二百二十三億九千四百三万円余の減少となっております。  なお、専売納付金は予定に比べ五十二億四百八十九万円余の増加、また、前年度に対しては百五十一億七千七百一万円余の減少となっております。  つぎに、塩事業について申し上げますと、昭和五十七年度の塩販売数量一般用塩で百四十九万トン余、ソーダ用塩で五百八十万トン余、合計七百二十九万トン余でありまして、これは予定に比べ百三十二万トン余、また、前年度に対しては二万トン余それぞれ減少となっております。  以上の結果、損益計算におきましては、総売上高は九百四十八億三千六百十万円余、売上原価は七百二十二億二千六百六十四万円余、差引き売上総利益は二百二十六億九百四十六万円余となり、これから販売費及び一般管理費百六十六億八千八百三十五万円余を控除し、さらに営業外損益一億九千九百三十二万円余を加えた純利益は六十一億二千四十三万円余となりました。  これは予定に比べ三十二億七千百六十六万円余、また、前年度に対しては十億七千百十五万円余それぞれ増加となっております。  塩事業の純利益が前年度に対し増加いたしましたのは、新商品を発売したこと、および収納価格を引下げたこと等によるものであります。  なお、昭和五十七年度決算検査報告におきまして、会計検査院より意見の表示をされた事項が一件ございますが、これにつきましては指摘の趣旨に沿い、所要の施策を推進し、改善に努める所存でございます。  以上簡単でございますが、昭和五十七年度の決算および業務の概要について御説明申し上げました。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十七年度業務概況    国民金融公庫  国民金融公庫の昭和五十七年度の業務の概況についてご説明申し上げます。  昭和五十七年度のわが国経済は、国内需要が盛り上がりに欠けたことや輸出が減少したことにより、前年度に引き続き総じて低調に推移しました。このため、中小企業の景況も、内需依存度の高い分野については業況回復が遅れ、また、輸出に直接、間接に関連する分野においては業況が悪化する等停滞色の濃い推移を示し、中小企業の経営環境は依然として厳しい状況にありました。  このような状況におかれた中小企業者に対して、当公庫は、貸付限度の引き上げ等により、中小企業金融の円滑化のために積極的に対処するとともに、川内及び越谷の二支店を新設しまして中小企業者のためにいっそうの便宜を図ってまいりました。  昭和五十七年度の貸付につきましては、当初計画二兆九千六百億円に対しまして、前年度に比べ三・二パーセント増の二兆六千四百七十九億八千五百六十五万円余の実行をいたしました。  貸付種類別に貸付の実績を申し上げますと、普通貸付は、六十八万六千件余二兆四千六百三十四億一千二百四十五万円、恩給担保貸付は、二十三万件余一千四百六十七億一千四百五十四万円余、記名国債担保貸付は、七十一件五百八十一万円余、進学資金貸付は、八万二千件余三百七十億九千五百五十万円余となりました。  なお、普通貸付の貸付実績のなかには、生鮮食料品等小売業近代化資金貸付、流通近代化資金貸付等の特別貸付が、一万五千件余五百六十九億一千七百七十六万円、小企業等経営改善資金貸付が、十八万六千件余四千七十六億五千九百五十九万円含まれております。  一方、五十七年度において貸付金の回収が、二兆三千九百六十三億三百四十五万円余、滞貨償却が、二十億六千三百五十二万円余ありましたので、五十七年度末現在の総貸付残高は、二百七十五万八千件余四兆六千六百二十二億五千六百六十四万円余となりました。  前年度末残高に比べますと、件数が四万七千件余の増加、金額が二千四百九十六億一千八百六十六万円の増加となり、これを率でみますと、件数で一・七パーセントの増加、金額で五・七パーセントの増加となりました。  貸付金の延滞状況は、五十七年度末において延滞後六カ月以上経過したものが、一千二百十二億四千四百十一万円余でありまして、前年度末に比べ二百三十二億三百七十五万円余の増加となっております。総貸付金残高に対する割合は、二・六パーセントであり、前年度の二・二パーセントに比べ〇・四ポイント増加しております。  昭和五十七年度の貸付に要した資金は、二兆六千四百七十一億三千七百三十五万円余でありまして、その原資は、資金運用部からの借入金一兆八千四百六十九億円、簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金八百二十億円、一般会計からの借入金百八十六億円のほか、貸付回収金等六千九百九十六億三千七百三十五万円余をもってこれに充てました。  受託業務につきましては、環境衛生金融公庫からの受託貸付は、五十七年度における貸付の実績が、七万九千件余一千八百七十五億七千七百四十三万円余、回収額が、一千八百七十二億六千八百九十七万円余となり、五十七年度末貸付残高は、四十四万七千件余六千六百二十二億六千八百十五万円余となっております。また、労働福祉事業団からの受託貸付の五十七年度における貸付の実績は、八十一件九千五百九十九万円となっております。  最後に、五十七年度の収入支出決算及び損益の計算について申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済額は、三千六百七十一億七千五百四万円余、支出済額は、三千五百九十六億五千六百十九万円余となりました。  次に、損益の計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、四千六十六億七千八百九十五万円余、借入金利息、事務費、滞貨償却引当金繰入等の総損金は、四千六十六億七千八百九十五万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、昭和五十七年度の業務概況のご説明を終らせていただきます。     …………………………………    日本開発銀行昭和五十七年度の業務概要  昭和五十七年度における日本開発銀行の業務の概要についてご説明申しあげます。  一、先ず、五十七年度の資金運用計画は、当初計画として一兆一千百十五億円を予定しておりましたが、その後景気対策として資金需要の強い資源エネルギーに対し五百億円の追加が行われ、最終的には一兆一千六百十五億円の貸付計画となりました。  これに対し、五十七年度中の運用額は、貸付実行額が一兆一千六百十四億九千八百万円となっております。  これの項目別内訳は資源エネルギー五千二百九億五千六百万円、技術振興一千百三億九千万円、海運一千三百四十三億七千三百万円、都市開発一千三百九十八億六千五百万円、地方開発一千四百五億八千三百万円、国民生活改善八百九十四億七千万円、その他二百五十八億六千百万円であります。  以上の五十七年度の運用額の原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金八千四百九十億円と貸付回収金等三千百二十四億九千八百万円をもってこれに充てました。  二、次に五十七年度の貸付運用の特色を申し上げますと、  (1) 資源エネルギーについては、石油業に対する融資制度を拡充し、石油産業の集約化のための融資及び民生用石油製品の安定供給を図るための融資を行うとともに、原子力発電推進のための融資、石油及びLPG備蓄タンクに対する融資、水力発電・液化ガス発電等電源多様化をはかるための融資、都市ガスの高圧、高カロリー化設備に対する融資、石油代替エネルギーの利用の促進のための融資の他、資源エネルギーの有効利用と産業の省資源・省エネルギー等を促進するための融資を積極的に行ったこと  (2) 技術振興については、わが国自主技術の開発促進および技術水準の向上をはかるため、引き続き国産技術振興融資、電子計算機振興融資等を行ったこと  (3) 海運については、貿易物資の安定的輸送確保の点から計画造船による外航船舶の建造に対し引き続き融資を行ったこと  (4) 都市開発については、都市交通の整備改善、市街地の開発整備及び流通機構の近代化に寄与する事業等に対する融資を引き続き拡充したこと  (5) 地方開発については、九州、四国、中国、北陸の四地方の開発のため融資を引き続き強化するとともに、地方都市圏の機能整備、地方適地産業の育成、工業の適正配置の促進について特に留意したこと  (6) 国民生活改善については、環境保全の観点から公害防止の推進をはかるとともに、ビル防災等の推進のための安全対策設備に対する融資及び食品供給体制の近代化のための融資を行ったこと  (7) その他については、引き続き「工場分散」、「海洋開発」及び「福祉関連機器振興」等の融資を行ったことなどがあげられます。  三、次に五十七年度における既往貸付の回収は、外貨貸付金の回収二十二億六千五百十四万円余を含めまして六千百八十七億七千六百八十八万円余となっております。  なお、五十七年度は貸付金の債権償却は行わず、この結果、五十七年度末における貸付残高は、国内資金貸付六兆四千四百八十四億八千八百四万円余、外貨貸付十億三千九百七十一万円余の合計六兆四千四百九十五億二千七百七十六万円余となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十七年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は三百八十三億七千七百五万円余で、前年度末に比して十億七千六百四十五万円余の増加となっております。貸付残高に対する割合は、〇・六パーセントとなっております。  四、また、五十七年度においては、新規の外貨債務の保証はなく、年度末保証残高は二千八十九億三千八百六十三万円余となっております。  五、最後に、五十七年度決算の概要について説明いたしますと、五百一億九千六百四十一万円余の純利益を計上し、このうち三百二十二億四千七百六十三万円余を法定準備金として積立て、残額百七十九億四千八百七十八万円余を国庫へ納付いたしました。  以上、五十七年度における日本開発銀行の業務の内容につきましてご説明申し上げた次第でございます。     …………………………………    日本輸出入銀行の昭和五十七年度業務概況  一、昭和五十七年度における日本輸出入銀行の業務状況につき概要をご説明申し上げます。  まず、昭和五十七年度は年度当初の事業計画において一兆一千六百六十六億円の貸付を予定いたしました。  これに対し昭和五十七年度の貸付額の実績は一兆三千五百十八億四千二百八十五万円余で、年度当初の事業計画における貸付予定額を十六パーセント程上回りました。  なお、この昭和五十七年度の貸付額を昭和五十六年度の貸付額一兆一千四百五十二億九千百三十万円余に比較いたしますと十八パーセント程度の増加となっております。  以下、昭和五十七年度の貸付額の内訳につきまして、金融種類別に前年度との比較において申し述べます。  まず、輸出資金の貸付は、五千四百八十六億七百十五万円で、昭和五十六年度の五千九百六十四億四千六百九十五万円に対し、四百七十八億三千九百八十万円の減少となりました。これは、船舶輸出に対する貸付、プラント輸出に対する貸付がともに減少したことによるものであります。  次に、輸入に必要な資金の貸付は、二千五百八十六億九千百十一万円余で、昭和五十六年度の一千二十二億七千二百八十四万円余に対し、一千五百六十四億一千八百二十六万円余の増加となりました。このように輸入に必要な資金の貸付が増加したのは、緊急輸入外貨貸付が、七百三十七億八千九百三十五万円余に達したこと等によるものであります。  また、海外投資資金の貸付は、二千百七十四億一千七百十四万円となり、昭和五十六年度の二千三十三億九千七百五十万円に対し、百四十億一千九百六十四万円の増加となりました。  このほか、外国政府等に対する直接借款に係る貸付は、三千二百七十一億二千七百四十五万円余で、昭和五十六年度の二千四百三十一億七千四百一万円余に対し、八百三十九億五千三百四十三万円余の増加となりました。これはバイヤーズクレジット・バンクローンについて、大型案件に係る貸付が増加したことによるものであります。  以上の結果、昭和五十七年度末の貸付残高は、六兆四百八十二億七千四百九十三万円余となっております。  なお、この貸付残高のうち、弁済期限を六箇月以上経過した元金延滞額は、二十二億七千二百二十七万円余となっております。  昭和五十七年度の貸付資金の原資といたしましては、産業投資特別会計からの出資金百五十億円、資金運用部資金からの借入金一兆四百八十億円、外国為替資金特別会計からの借入金七百三十七億八千九百三十五万円余のほか、自己資金等二千百五十億五千三百四十九万円余をもってこれにあてました。  以上申し述べました業務の運営により昭和五十七年度の一般勘定の損益計算上における利益は、四千七百九十八億五千六百八十万円余、これに対し損失は、四千四百八十三億五千三百九十六万円余となりました。  この結果、昭和五十七年度の一般勘定利益金は三百十五億二百八十四万円余となりました。  一般勘定利益金は、うち三百一億四千七百三十四万円余を法定準備金として積立て、残額十三億五千五百四十九万円余を国庫に納付いたしました。  なお、既往のインドネシア債務救済措置の実施に関する業務につきましては、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律により一般の業務と区分して特別の勘定を設けて経理することといたしておりますが、昭和五十七年度の特別勘定の損益計算上、二億七千四百十九万円余の利益金を生じ、法令の定めるところに従い、これを全額同勘定の積立金として積立てました。  二、以上、昭和五十七年度における日本輸出入銀行の業務の概況につき、ご説明申し上げました。     …………………………………    昭和五十七年度農林水産省決算について  昭和五十七年度の農林水産省の決算につきまして、大要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、収納済歳入額は二千五十四億六千三百六十四万円余でありまして、その主なものは、日本中央競馬会法に基づく納付金であります。  次に、一般会計歳出につきましては、支出済歳出額は三兆七千四百二億六千六百九十二万円余でありまして、この経費の主なものは、生産性の向上を基本とする地域農業の展開といたしまして一千七百三十六億一千五百九十万円余、農業技術の開発普及と統計情報の整備といたしまして八百七十億一千四百七十八万円余、農業生産力向上のための農業生産基盤の整備といたしまして九千三十六億三千五百七十九万円余、需要の動向に応じた農業生産の振興といたしまして七千八百十三億七千百八十三万円余、住みよい農山漁村の建設と農業者の福祉の向上といたしまして二千十四億八百五万円余、農産物の価格安定と農業所得の確保といたしまして七千五百七十六億二千百八十七万円余、食品産業対策・消費者対策の推進と農水産物の消費拡大といたしまして三百三十七億九千八百五十七万円余、農林漁業金融の充実といたしまして一千四百九億八千一万円余、農業団体の整備といたしまして三百二十五億五千三百六十七万円余、森林・林業施策の充実といたしまして三千四百八十億六千六百十八万円余、水産業の振興といたしまして二千七百二十八億九千八百七十五万円余、食料の安全保障の確保と国際協力の推進といたしまして百三億九千四百七十一万円余、その他災害対策等の重要施策といたしまして三千五百八十五億九千五百二十七万円余の諸施策の実施に支出したものであります。  続いて、各特別会計につきまして申し上げます。  まず、歳入につきましては、収納済歳入額は食糧管理特別会計各勘定合計において八兆四百二十億一千五十万円余、国有林野事業特別会計各勘定合計において六千二百六十九億八千八万円余、農業共済再保険特別会計各勘定合計において一千二百二十三億五千百八十八万円余、漁船再保険及漁業共済保険特別会計各勘定合計、森林保険特別会計、自作農創設特別措置特別会計及び特定土地改良工事特別会計の総合計において二千四百六十八億二千六百七十二万円余であります。  次に、歳出につきましては、支出済歳出額は食糧管理特別会計各勘定合計において八兆三百五十九億三千四百六十一万円余、国有林野事業特別会計各勘定合計において六千二百三十三億一千六百五十七万円余、農業共済再保険特別会計各勘定合計において九百四十億五千二十七万円余、漁船再保険及漁業共済保険特別会計各勘定合計、森林保険特別会計、自作農創設特別措置特別会計及び特定土地改良工事特別会計の総合計において一千九百四十億一千五百七十五万円余であります。  これらの事業の概要につきましては、お手元にお配りいたしました「昭和五十七年度農林水産省決算概要説明」によって御承知を願いたいと存じます。  これらの事業の執行に当たりましては、いやしくも不当な支出や非難されるべきことのないよう、常に経理等の適正な運用について、鋭意努力をしてまいりましたが、昭和五十七年度決算検査報告におきまして、不当事項等として指摘を受けたものがありましたことは、誠に遺憾に存じております。指摘を受けた事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後とも指導監督を一層徹底いたしまして、事業実施の適正化に努める所存であります。  なにとぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。     …………………………………    昭和五十七年度決算農林水産省及び農林漁業金融公庫についての検査の概要に関する主管局長の説明    会計検査院  昭和五十七年度農林水産省の決算について検査いたしました結果の概要を説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十八件、意見を表示し又は処置を要求した事項四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  これらは、補助事業の実施及び経理が不当と認められるもので、水田利用再編対策事業等の補助事業において、補助の対象とは認められないものがあったり、事業費を過大に精算しているものがあったりなどしているものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について説明いたします。  その一は、国営及びこれに附帯する道府県営のかんがい排水事業によって生じた農業用用排水施設の管理に関するものであります。  農林水産省が直轄で実施した国営かんがい排水事業及びこれに附帯して国庫補助事業で道府県が実施した道府県営かんがい排水事業によって生じた農業用用排水施設は、多額の国費を投入した専ら農業に使用される財産でありますが、国及び県における管理が適切を欠いたため、その一部の施設(国営事業費及び国庫補助金相当額計百三十億一千四百三十八万余円)が国又は県に無断で、上水道事業や工業用水道事業等の用水の取水のために使用されていたり、工場廃水あるいは生活汚水の排水路として使用されていたりしているなど農業以外の用途又は目的に使用されていて、その管理が適切を欠く事態となっておりました。  したがいまして、農林水産省において、このような事態の発生を防止するため、用排水施設の管理を委託している土地改良区等への指導、監督等を徹底するとともに、関係諸規定の整備を早急に行い、用排水施設の管理の適正を期するよう求めたものであります。  その二は、水田利用再編対策事業の実施及び効果に関するものであります。  米の生産調整と農産物の総合的自給力の向上を主眼として水稲から水稲以外の作物への転作の定着化を促進するための水田利用再編対策事業において、事業の効果が十分発現していないと認められる事態が次のとおり見受けられました。  すなわち、  (1) 水田利用再編計画のないまま転作が実施されていて、本対策事業が意図している転作の定着性の向上を図れないばかりか、事業目的の達成のうえでも障害となると認められるものが二万八千五百五十二地区八万三千六百九十九ha(これに対する奨励補助金の交付総額三百二十七億五千万円)見受けられました。  また、  (2) 水田利用再編計画のある地区においても、  ア 計画団地と認定されているがその実体はなく、転作実施水田が点在していて、水田利用再編計画のない地区と同程度となっているものが五千二百五十地区四万一千四百八十六ha(これに対する奨励補助金の交付総額二百十億七千万一円)、  イ 連担団地と認定されているが実態は団地に連担性がなかったり、作物が統一的に作付けされていなかったりしているものが百九十五地区七百四十二ha(これに対する奨励補助金の交付総額五億円)、  ウ 農業協同組合等に預託されたままとなっていて転作に結びついていない水田や、飼料作物として適当でない青刈り稲による転作実施水田を二分の一以上も含んでいる実効の少ないものが三千百四十七地区二万二千九百四十九ha(これに対する奨励補助金の交付総額百十一億七千万円)、  エ 都市計画区域内の市街化区域又は用途地域に計画団地、連担団地が設定されていて転作の定着化を期待することは困難であるものが一千百五十一地区五千五百二十二ha(これに対する奨励補助金の交付総額二十五億七千万円)  見受けられました。  更に、  (3) 転作作物のうち、転作の重点作物である大豆、麦、そばの出荷状況及び飼料作物の供与の状況についてみましたところ、  ア 大豆、麦、そばの出荷率がいずれも三〇%未満と著しく低くなっているものが二万八千五百七十一ha(これに対する奨励補助金の交付総額百六十五億九千万円)、  イ 転作した飼料作物が無償で提供されているものが二万七千八百三十三ha(これに対する奨励補助金の交付総額百七十三億九千万円)、  ウ 飼料作物が家畜に供与されていなかったり、家畜に供与されているかどうか不明であったりしているものが二万一千五百七十七ha(これに対する奨励補助金の交付総額百二十五億二千万円)  見受けられました。  したがいまして、農林水産省において、昭和五十九年度からの第三期水田利用再編対策事業を開始するに当たって、転作営農の生産性の向上とその定着化の一層の推進を図るために、抜本的な対策を講ずるよう求めたものであります。  その三は、林業改善資金の貸付けに関するものであります。  この林業改善資金の貸付事業は、林業経営の改善等を図るため、都道府県が国庫補助金の交付を受けて資金を造成し、林業従事者等に無利子で所要資金の貸付けを行うものでありますが、貸付けの対象にならないものに貸し付けているもの、貸付対象事業が実施されていないもの、貸付決定前に事業が実施されているものなど、貸付制度の趣旨に沿わない事態のものが二百九十件七億六千二百二万余円(国庫補助金相当額五億八百一万余円)見受けられました。  したがいまして、今後の貸付対象事業の適正な実施を期するため、林野庁において、都道府県及び資金の借受者に対して制度の趣旨の周知徹底を図るとともに、都道府県における貸付対象事業の審査及び確認業務を的確に実施させるなどの措置を講ずるよう求めたものであります。  その四は、沿岸漁業改善資金の貸付けに関するものでありますが、この件もただいま申し上げました林業改善資金の貸付けに関するものと同種のものでおります。  この沿岸漁業改善資金の貸付事業は、沿岸漁業経営の改善等を図るため、都道府県が国庫補助金の交付を受けて資金を造成し、沿岸漁業従事者等に無利子で所要資金の貸付けを行うものでありますが、貸付対象事業が実施されていないもの、貸付決定前に事業が実施されているものなど、貸付制度の趣旨に沿わない事態のものが百十件一億五千百九十二万余円(国庫補助金相当額一億百二十八万余円)見受けられました。  したがいまして、今後の貸付対象事業の適正な実施を期するため、水産庁において、都道府県及び資金の借受者に対して制度の趣旨の周知徹底を図るとともに、都道府県における貸付対象事業の審査及び確認業務を的確に実施させるなどの措置を講ずるよう求めたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について説明いたします。  これは、輸入小麦の買入れに当たっての国内港間の海上運送経費を政府の負担としていることに関するものであります。  食糧庁では、大阪港に到着した輸入小麦のうちの一部約八万四千tを、大阪港の港頭サイロだけでは後背地の需要に応ずる収容力が不足するとして隣接する阪南港に回送し、この運送区間の海上運送経費約九千七百万円を政府の負担としておりましたが、近年では、貨物船が接岸可能な大阪・神戸両港の港頭サイロの収容力は大幅に増加してきておりまして、相当の余裕収容力がある状況であります。  したがいまして、製粉業者等の買受者の負担で海上運送している他の輸入港と荷揚港との間の海上運送経費と同様に買受者の負担に改める要があると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、食糧庁では、五十九年一月以降の契約分から海上運送経費の政府負担をとりやめ、買受者の負担とするよう処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十六年度及び五十五年度決算検査報告に掲記しましたように、輸入麦の売渡し、沿岸漁業構造改善事業等の実施及び飼料用小麦の売渡予定価格の積算について、それぞれ処置を要求しましたが、これらに対する農林水産省の処置状況についても掲記いたしました。  以上が昭和五十七年度農林水産省の決算につきまして検査をいたしました結果の概要であります。  次に、昭和五十七年度農林漁業金融公庫決算について検査いたしました結果の概要を説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項六件であります。  検査報告番号一六二号及び一六三号の二件は、振興山村・過疎地域経営改善資金等の貸付けが不当と認められるものでありまして、農林漁業金融公庫及び受託金融機関の審査及び調査確認が適切でなかったり、受託金融機関に対する指導監督が十分でなかったりしたため、貸付対象事業の一部が実施されていなかったり、貸付対象事業費よりも低額で事業が実施されていたりしていたものであります。  また、検査報告番号一六四号から一六七号までの四件は、長野県上伊那郡箕輪町において不当の事態があった結果、土地改良資金の貸付けが不当と認められるものでありまして、貸付対象事業費よりも低額で事業が実施されていたものであります。  以上をもって概要の説明を終わります。     …………………………………    昭和五十七年度農林漁業金融公庫業務概況  昭和五十七年度における農林漁業金融公庫の業務の概況について御説明申し上げます。  国においては、食料の安定供給、健全な地域社会の形成、国土・自然環境の保全等の農林水産業の役割が一層着実かつ効率的に果たされるようにすることを基本として諸施策が展開されました。  こうした国の施策に即応して、当公庫は、業務の運営にあたりまして、関係機関との密接な連けいのもとに、農林水産業の生産基盤の整理及び経営構造の改善のための融資を推進するとともに、多様化する資金需要に対応して、融資条件の改善を含め、融資の円滑化に配慮してまいりました。  昭和五十七年度における貸付計画について申し上げますと、貸付計画額は、七千六百億円を予定いたしました。  これに対する貸付決定額は、五千九百三十七億五千六百五十六万円となり、前年度実績と比較して百九十八億九千三百四十一万円余の減少となりました。  この貸付決定額を農業・林業・水産業に大別して申し上げますと、一、農業部門四千二百三十八億七千八百二十七万円余、二、林業部門七百四億千九百九十七万円余、三、水産業部門八百九十七億五千三百六十三万円余、四、その他部門九十七億四百六十八万円となりまして、農業部門が全体の七十一・四%を占めております。  次に昭和五十七年度の貸付資金の交付額は五千九百二十八億六千五百七十五万円余となりまして、これに要した資金は、資金運用部からの借入金五千百四十億円、簡易生命保険及び郵便年金の積立金からの借入金二百八十億円並びに、貸付回収金等五百八億六千五百七十五万円余をもって充当いたしました。  この結果、昭和五十七年度末における貸付金残高は四兆五千六百六十五億四千四百四十一万円余となりまして、前年度末残高に比べて三千五十億七千四百万円余七・二%の増加となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十七年度末におきまして、弁済期限を六ケ月以上経過した元金延滞額は百九十八億六千五百八十一万円余となりまして、このうち一年以上延滞のものは百六十八億三千六百万円余となっております。  次に昭和五十七年度における収入支出決算の状況について御説明申し上げますと、収入済額は、収入予算額三千三百三十四億三千百八十八万円余に対し三千三百五十五億九千六百二十五万円余となりました。また、支出済額は、支出予算額三千三百七十八億三千六百十二万円に対し三千三百三十四億百二十二万円余となり、支出に対し収入が二十一億九千五百二万円余多くなっております。  最後に、昭和五十七年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は四千二百六十五億八千三百三十三万円余、借入金利息等の総損失は四千二百五億七千百五十八万円余となり、差引き六十億千百七十五万円余の利益金を生じましたが、この利益金は全額を繰越損失金の補てんに充てることといたしましたため、国庫納付はありませんでした。  これらの業務の遂行にあたりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、昭和五十七年度決算検査報告におきまして、総合施設資金等の貸付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後はこのようなことの再び起こることのないよう業務運営の適正化に一層努める所存であります。  以上が、昭和五十七年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。なにとぞよろしくご審議のほどお願いいたします。     ―――――――――――――
  6. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  7. 渋沢利久

    ○渋沢委員 時間が大変少ないものですから、私も率直な質問をいたしますから、答弁の方もひとつ簡潔にお願いをいたしたいと思います。  ちょうど五十七、八年に集中的に動いた金の絡みで事件化いたしております撚糸工連、いわゆる詐欺融資事件に関係いたしまして、政府の政治姿勢、監督責任等々に触れてお尋ねをしていきたいというふうに思います。  まず最初に、自治省、お見えになっていますね。  政治資金規正法は、言うまでもありませんけれども、政治団体と公職の候補者は、その責任の大きさにかんがみて、その政治資金の収受に当たっては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないよう公明正大に行わしめるということが、この法の基本理念、基本目的である。この目的に沿って、法二十二条の三において、国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付を受けた会社その他の法人は、交付決定の日から一年政治献金を禁ずる、こういうことになっているわけです。  すなわち、ここで法が言う、国から補助金その他の給付金を受けた会社その他の法人というのは、国の資金を利用して利益を受ける会社その他の法人であるということは明らかであります。法の基本目的、基本理念からいいましても、この法の二十二条の三の国から補助金を受けという部分の趣旨は、明らかに国の資金を使ってそれで利益を受ける会社や法人について政治献金を禁ずるという趣旨のものであろうと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  8. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のような法律の趣旨に基づきまして政治資金規正法第二十二条の三は規定をされておるわけでございます。ただ、同法同条の規定は、国から直接補助金等の支出を受けている会社その他の法人が国会議員等に対して政治活動に関する寄附を行うことを禁止した規定でございまして、私どもは厳密に解釈をしなければならない、このように考えておる次第でございます。
  9. 渋沢利久

    ○渋沢委員 自治大臣は先般の予算委員会でこのことに触れて、法二十二条の三の「国から」とあるのは、国から直接と解釈すべきであって、今もあなた言いたかったのでしょうけれども、中小企業事業団を通して金がおりた撚糸工連が政治献金を行うということは、いささかもこの法の対象になっておらぬ、自由であるという趣旨の見解を示した。「国から」というのは、国が直接給付する、交付する補助金その他の資金についてという解釈を展開しておるわけです。そのとおりですか。
  10. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 そのとおりでございます。これはあくまでも罰則を伴う規制でございますので、文理に従って忠実に解釈することでなければならない、このように理解をしております。
  11. 渋沢利久

    ○渋沢委員 法の趣旨からいって、国の資金を利用して利益を受けた者の政治献金を禁ずるというところが基本的なこの法の命題であります。ここを外れるわけにいかぬのでして、単に国の資金の給付の形態、交付の窓口、そこだけで政治献金を禁ずるとか禁じないなどの選択が起こってくるということは、これは異様なことであります。そんなこと、あっていいはずじゃありません。中身の問題です。この法律の趣旨は本来そういうものです。解釈はいろいろあるけれども、あなたの法の解釈は間違っている。なぜ金の給付の形態でこの法律を解釈するのか。これは違うでしょう。法の趣旨に反するじゃないですか。
  12. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  金の給付の実態で判断をしておるわけではございませんで、いかなるところからそういう給付金が出ておるかというところで、私どもは、それは法が規定しておるように国から支出されたものでなければ規制の対象にならない、このように申し上げておるわけでございます。
  13. 渋沢利久

    ○渋沢委員 だからおかしいのですよ。給付されている金の実態が問題じゃないというのです。なぜ問題じゃないのですか。政治資金規正法というのは、特に二十二条の三は、国から金が出るのです、さまざまな形で国民の税金が使われる、それで莫大な利益を受ける、その利益を受けた者が政党やあるいは議員に対して金を贈る、政治献金という形でこれがリベートになったり謝礼になったり、そういういわゆる構造的な汚職ということが言われる、こういうことに対して、天下にこの法律の趣旨が明らかにしているように、政治団体と公職の候補者は、その責任の大きさにかんがみて、その政治資金の収受に当たっては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないよう公明正大に行わしめる目的と、基本目的で明確にしている。だから、金の流れの実態を問わない、貸し方、窓口がどこかという形式だけが問題だというあなたの答弁は、この法の趣旨に反しておるじゃないですか。
  14. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 重ねて同様なことをお答えするようなことになろうかと思いますけれども、実態で判断をするということになると、いろいろ適用に当たって困難な問題が生じてくるのではないか、このように思うわけでございます。  公職選挙法の例を申し上げてみますと、国または地方公共団体の公務員は、例えば地位利用して選挙運動をやってはならないというようなことになっておりますけれども、国と同様な立場にある公社公団等の職員について規制する場合も、やはりそれぞれ具体的な団体名を列挙して規制をいたしておるわけでございまして、やはり政治資金規正法も「国」と書いてある以上は、国から直接支給された交付金が対象になる、このように考えなければならない、こういうふうに思っております。
  15. 渋沢利久

    ○渋沢委員 もう聞かぬことは答えないでもらいたい。時間が非常に少ないので、恐縮だが、あらかじめお願いしておったのです。  総務庁の行政管理局、おいでかと思うのですが、事業団は国が法律で設置して、国の施策を代行させる機関である、国の管理監督下に拘束しておる国の行政機関とおおむね変わらないものだ、これに非常に近いものだというふうに理解しているが、いかがでしょうか。
  16. 伏屋和彦

    ○伏屋説明員 お答え申し上げます。  特殊法人には、その性格とか事業から見ましていろいろなものがあるわけでございますが、特殊法人の役割という観点から一般論として申し上げますと、特殊法人はいわば国に準ずるものと言うこともできるかと考えております。その場合、個々の特殊法人の個々の法律における位置づけということにつきましては、それぞれの特殊法人及び法律の目的等から判断されるべき事柄であるというぐあいに考えております。
  17. 渋沢利久

    ○渋沢委員 企画庁が毎年作成しておられる国民経済計算報告書、これは、我が国経済のいわば評価で言えば、国にとって唯一と言っていい総合的、基礎的な主要データであると思うが、時間の関係で私の方から申し上げて返事をいただきたいと思う。  その計算方式の分類によると、国の機関を網羅する一般政府と公社、公団、公庫などの公的事業という分類に分けられておりますけれども、中小企業事業団ほかの事業団の大部分は、国とともに一般政府の類型に組み込まれているというわけであります。  公社、公団、公庫、それからごく限られた一部の事業団が持っている営利性、企業性というものと比べて、この一般政府という類に組み込んでいる大部分の事業団が持っている非営利性と国の施策の代行機関的な性格を、企画庁が委嘱した学者、専門家が大変時間をかけて一つ一つ精査して、こういう分類計算方式の中で組み立てておるというふうに理解するわけですけれども、いかがなものでしょう。このとおりでしようか。
  18. 江崎芳雄

    ○江崎説明員 御説明申し上げます。  私どもの国民経済計算は、原則といたしまして国連が示しましたガイドラインに沿って作成をしております。このガイドラインでございますが、一般政府に格付すべきものといたしまして、省庁等のいわゆる狭義の政府、それから社会保障基金、さらに政府が出資いたしまして企業性の乏しい非営利団体、この三者を一般政府に組み入れるということになってございます。  事業団でございますが、一般に事業団は他の公社公団等特殊法人に比べまして独立採算制を期待されることが薄い、かつその提供するサービスに市場制がない、いわゆる公共財と申しておりますが、そういうものであるということで、先生御指摘の国民経済計算では、一般に事業団を国連ガイドラインで言いますところの政府の中に含まれる非営利団体ということで分類をしてございます。
  19. 渋沢利久

    ○渋沢委員 まあそういうことなんであります。  官房長官、政府の部内でも、この事業団というものの性格については、これは国とみなすという扱いをその認識においてしておるのです。これは今の総務庁の行管局の解釈と、経企庁が十年越しで一流の学者、専門家とこの事業団の性格、この事業団の事業の性格一全部精査した上で国連のガイドラインに合わせるような形のものをつくっておる、そういう権威のあるものの中で、まさに国、一般政府の中に事業団は、たしか二つか三つ、食管会計絡みのものでやや事業性というか営利性を持った性質のものは公的事業の方に入れて、それで問題の中小企業団を含めて、これは国として、国の機構の中に組み込んだ計算の組み立て方をしておるのですね。つまり事業団は、政府自身も事実上これは国とみなすという扱いをしておる。  ところが、政治資金規正法で国から援助を受ける、国から出てくる金、そのことで利益を受ける会社や法人は政治献金をやってはいかぬ、こういうことがきちっと決まって、それで国民に向かって政府はこの政治資金規正法こそまさに政界浄化のシンボルであるような構えで位置づけておるにもかかわらず、その法の中で「国から」というのは、国が直接そういう企業や団体に金を出したときだけの話ですよと、実際に国の資金を使おうと何だろうと、中小企業事業団、これはもうあなた方自身が国と変わらない代行機関として位置づけているものですら、そこを通したということだけで規制の対象外だという認識に立っておるのですね。これは大変重大なことでありませんか。  これはその解釈に無理がある。自治省の解釈は、それも一つの解釈でしょう。「国から」ということをそう解釈する解釈の仕方もあるが、私のように違った解釈もある。これは国から出る金の流れの問題であって、そこで少なくとも今指摘をされたような理由によって一般政府の類型に入っている事業団は、国並みの扱いくらいしないと政治資金規正法の趣旨は全くなきに等しい、こう言わざるを得ない。これは官房長官の認識を伺いたい。
  20. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 政治資金規正法二十二条の三の解釈をめぐっての御議論だろうと思いますが、二十二条の三の解釈の際には、国から直接という解釈でございまして、中小企業事業団からの寄附を受けておる団体は入らないというのが従来からの政府の解釈、運用になっているわけでございます。したがって、撚糸工連はそれに該当しない、こういう答弁を自治省当局がしておる、それに対して滝沢さんは、けしからぬ、こういう御質問でございますが、私は滝沢さんの御議論わからぬわけではございません。しかしながら、それは現行法の解釈でなくて、立法論として考えていくべき筋合いのものではなかろうか、かように思うわけでございます。
  21. 渋沢利久

    ○渋沢委員 どうしてもここで言う二十二条の三の法解釈は、国が直接交付ということにこだわるのです。  それでは聞きますが、通産省、お見えですね。  通産省が行う融資において、六十一年度で聞きましょう。財投における国以外の政府系金融機関、公団、事業団、まあこれは国じゃないと言うのですから事業団も入れましょう、その他を通じて、いわば間接支出される融資総額は幾らですか。
  22. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 直接私の担当でございませんので、手元にございます資料でとりあえず数字を御報告したいと思います。  公団、事業団関係で通産省関係業種へ融資されますものが九千八百五十二億円、それから日本輸出入銀行日本開発銀行等いわゆる政府関係金融機関から融資が見込まれております金額が、八兆六千六百九億と承知いたしております。
  23. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そうなんですね。これは私の調べによってもそのとおりです。正確に言うと、トータルで九兆六千六百四十三億。  それでは、国が直接支出する、交付するものは幾らですか。
  24. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 やはり同様に手元にございます資料で申し上げますと、いわゆる補助金が一千三百二十四億円、負担金が八十六億円、補給金が三百二十二億円と承知いたしております。大部分は技術開発関係と承知いたしております。(渋沢委員「トータルは幾らですか」と呼ぶ)千七百億円強でございます。
  25. 渋沢利久

    ○渋沢委員 つまり官房長官、例えば通産は融資ということで一番金を使う役所です。その十兆に近い九兆七千億からの金は、まさに何々公庫、何々事業団、間接給付なんですね。それで、これは財投だけで見ている。ところが、今法律で言うところの補助金その他をずっとかき集めてみると、直接国が千七百億ですか。これは局長、国の機関が直接交付する、通産省の本省とか地方の通産局が直接交付する金額ですね。  それから、もう一つ私がここで聞いたのは、今最初に聞いたのは、財投の中での間接投資の給付の額を聞いて、これが九兆六千億というのだけれども、この中での国の直接の交付している金額は幾らですかということを聞いたのです。それは幾らですか。それはゼロでしょう。
  26. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 先ほど申し上げました補助金、負担金、補給金は、通商産業本省あるいは通商産業局から交付されるものでございますので、国というぐあいに観念すべきものだと承知いたしております。  なお、融資につきましては、通産省関係では国からの融資はゼロでございます。
  27. 渋沢利久

    ○渋沢委員 つまり、いろいろな団体に対する助成金、補助金的なものは、千七百億そこそこあるのですよ。私が聞いたのは、融資なのです。その部分で言うと、間接的に出すのは九兆六千億もあって、直接融資面ではゼロだから、ちょっと答えにくくてかわした、補助金の数字を示したんだけれども、いわゆる政策費、通産が中小企業対策とかいろいろおっしゃるけれども、ゼロなんですよ。自治省が言うところの、今官房長官がおっしゃるように、これは国から直接業者、企業や団体に出す金のことですよ、間接的に出すものは関係ありません、こうおっしゃるなら、そういう解釈なんだから、融資で見るとゼロなんですよ。通産省が直接機関として融資するものはないのですよ。これはひどい話じゃありませんか。  官房長官、この法律は直接給付ということを言っているけれども、少なくとも融資について言えば実体はないのですよ。みんな十兆からの金は間接融資なんですよ。これではこの法律が、先ほど一番最初に私が申し上げたような法の趣旨からいって、これだけの莫大な、年間十兆からの国費を投じて業界の援助をしようという、その融資に絡んでの政治献金は御自由でございます、政治資金規正法的には何の拘束も規制も受けない、直接出すものだけだ、それは一銭もない、これはどういうことですか。それでもなおかつ、いやこれはあくまで国の直接融資の部分だけしか問題にしないという解釈にこだわるのですか。もしこれに、おこだわりになるのならば、この法律は最初から実体のないもの、規制価値、規制効果などというものを最初から全く期待しない法律だ、そう言わざるを得ないのですね。いずれかですよ。いずれだとお考えですか、官房長官
  28. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 この法律の解釈、運用に関する限りは、先ほど私がお答えをいたしたとおりでございます。これは従来からの扱いでございます。やはり罰則規定の適用のある条文というものは、御案内のように構成要件に関係しますから、あくまでもそういった疑義のないようにきちんとすべきものである、私はこう思います。そういうようなことでございますから、滝沢さんのおっしゃる意味合いが私にわからぬわけではないと先ほどから申し上げておる、ならば、これはやはり立法論として将来解決すべき筋合いのものである、私はかように理解をするわけでございます。
  29. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そうすると、官房長官、これを立法問題として考えるということは、この法の不備を検討せざるを得ない、そういう趣旨ですね。この法の不備は認めますね。官房長官、認めますね。それでなければ、とてもこんな解釈は、国会が承知できる解釈じゃありませんよ。最初から実体がないのですよ。それをまことしやかにこういう言葉で装うて、そして政治資金規正法ここにありなんてとんでもない話だ。これは納得のできる解釈ではありません。この法の不備を認めて立法的な対応が必要な課題だということは、この是正について検討に着手をするということですか。それならともかく時間もないから先に進みますが、はっきり言ってください。
  30. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 まず最初に、滝沢さんと申し上げてまことに申しわけございません。渋沢先生でございます。  そこで、私が先ほどから言うように、あなたの御疑念、これは私もそれなりに理解ができます。しかし、現行法の解釈として、それを拡大解釈しろというわけにはまいりません。したがって、それはやはり立法論として理解をして、そういう点については、政治資金規正法全体についていろいろな御意見がございますから、これはやはり今後検討の課題である、私はかように考えるわけでございます。  なお、自治省当局から、この規定の最初の立法の経過、これをお答えを申し上げたい、こう思いますので、お聞き取りいただきたい。
  31. 渋沢利久

    ○渋沢委員 ちょっと官房長官、時間がないので、私一点だけ確認をしておきたい。  やはりこれは、ざる法などというような言葉は使いたくないけれども、要するに規制効果のない、規制効果を全く期待できない中身であることだけはっきりしているわけです。今の通産の融資額の状況を御説明して明らかなのです。それはお認めになりますね。そういう意味で、これは立法的に再検討を要する課題だということをお認めいただいたのだと思う。念のためにその点だけ確かめておきます。
  32. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 従来から規制効果があったかなかったか、これは自治省当局が実例を扱っていますから、自治省当局から答えさせます。
  33. 渋沢利久

    ○渋沢委員 もうそんないいかげんな話はないので、規制対象がないのだから、一銭も金を出してないところを規制しようという話は、これは全くざる法なのだ。時間がありませんから、今の答弁で承知したなどということはさらさら言える内容のものでも答弁でもありませんから、留保いたしまして、決算委員会も続くことでありますから、これは必ず執拗に究明をしていきたいと思うわけであります。ともかくこの法律の不備は認めて、そしてこれは再検討課題だということを官房長官が認めたことだけは確認をしておいて、先に進みたいと思う。  会計検査院に。  中小企業事業団、これは歴代の理事長が八人おって、七人が通産天下り。これはともかくとしても、撚糸工連の職員十二名中四名、三分の一が通産天下り。事件の内容を見ましても、まさに破廉恥、無責任な通産行政のもとで、撚糸工連同様の設備廃棄事業をやっているのが十八団体あるのですね。融資金額総額二千億を超える。これは非常に重大だ。  会計検査院はこの機会に、少ない職員で御苦労いただいて大変御苦労に思いますけれども、やはり政治不信というものを取り除く、国民の信頼を取り戻すために、こういうときにこそ会計検査院の機能を機動的に発揮してほしい。これら十八団体の設備廃棄事業について、徹底した検査を早期に着手してほしいという提起をいたします。いかがでしよう。
  34. 秋本勝彦

    ○秋本会計検査院説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、私どもも大変重要と受けとめております。年度末あるいは新年度、厳重な検査予定しております。
  35. 渋沢利久

    ○渋沢委員 これはきちんとやっていただきたいと思うのであります。  通産当局にはこのことについてお尋ねをする気がしないほど、これは全く重大な責任が明らかであると思う。通産省はどういう責任をとるのですか。このことでまた通産省が国民から受けた不信感というものはぬぐいがたいものがありますよ。重大な責任があると思う。今後どういう対処をするのか、どういう責任をとろうとしているのか、伺いたい。
  36. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、監督責任の重さを痛感をいたしているところでございます。まずは私ども自身も、今回のような事態に至りました経過あるいは問題点を総点検中、解明中でございます。また、司直サイドにおきましても御解明が進んでおると思うわけでございます。まず、こういうことが再発しないような手当てをすることが第一の責任ではなかろうかと思っております。さらに、今後どういうぐあいに司直サイドでの御解明が進むか、状況を見ながら、対応すべき問題につきましてはそれなりの方向に沿いまして対応しなければならないというぐあいに考えておるわけでございます。
  37. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そう言うほかはないということなのかもしらぬけれども、まことに型どおり、二度とこういうことは繰り返してはならないなどということは、毎回だれしも言うことだ。必ず繰り返されている。深い根っこにメスが入らない。これはあなたが今おっしゃったように、司直の手も入っているということで、そこを見ながらというような感じのお話だ。  そこで、法務省にお尋ねをいたしたいと思います。  この事件は単なる単純な詐欺事件でないことは、申し上げるまでもないと思うのであります。政府部内でもこの融資を廃止しようとする動きがあった。そして、猛然とこの廃止の動きを牽制し、抑えて、継続させようという働きかけもあった。そのために一定の時期、一定の裏金づくり、一定の工作が展開されたというのがこの事件の特性であります。  そういう意味で言うと、業界と役所と、そして議員というもの、いわばこの三つのかかわりが絡み合って不正が展開しているという、スケールの大きさやいろいろありますけれども、まさにその種構造汚職と言われるようなものの典型だという認識を持っておりますし、国会もまた国民も、その点の深部に触れた究明が行われるであろうということを期待をしていると思うのであります。その認識についてまず伺いたい。
  38. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  先生お尋ねの件につきましては、現在東京地検におきまして融資金の詐欺事件ということで捜査中であるというふうに承知しております。この事件につきまして、検察当局におきましては所要の捜査を遂げました上、事案を解明いたしまして、法に従った、事案に応じた適正な処理を行うものというふうに理解しております。
  39. 渋沢利久

    ○渋沢委員 私が申し上げましたのは、単純な詐欺事件ではなしに、まさに官界、政界絡みの事件であるという認識について申し上げたわけであります。今の御答弁は、そういう趣旨を受けてきちっとこの真相究明に対処していくという趣旨の話があったと思うのでありますが、これはやはり単に業者の事件に短小化するというか、そういうことではなしに、我々が期待し、国民が期待しているものは、権力がこの種のものにかんでこの種の不正事件を温存し、そして事件化していっているというその部分、具体的にはその金の流れ、その汚職性、そういうものに対しては当局がいやが上にも厳しい態度で対処していただくことを、そしてこの真相の究明が徹底して行われることを国会も国民も期待していると思うわけであります。そういう点でいま一言、これはひとつ決意を伺っておきたい。それで終わりにしたいと思います。
  40. 原田明夫

    ○原田説明員 ただいま検察当局が現実に捜査中の事件でございますので、その内容にわたる事項につきましては、立ち入った話を私の方から差し上げるのは、恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと思います。
  41. 渋沢利久

    ○渋沢委員 あと一分でありますからやめますが、官房長官、きょうは時間がなくて十分ただすことができないことが残念ですけれども、しかし非常に重大なことだ。しかも、このことへの対応をきちんとやりませんと、現職の閣僚の名前まで非常にマスコミに登場して、これはますます国民の不信を増幅するような事態が現にあるわけであります。しかも、政治資金規正法自体がまさにざる法である、こういう状況がこうして明らかなんであります。これは早急にこの是正方について誠意のある対応をしていただきたいということを申し上げまして、ちょうど時間でありますので、終わります。
  42. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上でもって渋沢利久君の質疑は終わりました。  次に、小川国彦君でありますが、大臣の出席等の調整を要しますので、貝沼次郎君に御質疑をお願いいたします。
  43. 貝沼次郎

    貝沼委員 大蔵省と農林水産省でありますが、せっかく大臣御出席ですから、農林水産省の方から入りたいと思います。時間が限られておりますので、こちらの方も端的に申し上げたいと思います。  初めに、五十九年十一月二十一日、これは当決算委員会でございますが、そのときに私は、国民の食生活の安全性の確保並びに養殖漁業者の生活あるいはその流通市場に携わる方々の生活の安定のために、ぜひともこういう点がはっきりしなくちゃいけないということで質問をさしていただきました。  そのときは論点が二つございまして、一つはTBTOの汚染の問題でありました。これは本日は問題にいたしませんが、TBTOによる被害をこうむって裁判になっておるところもありますし、一方、原子力潜水艦のミサイル発射にカキがつかないための一つの材料の研究であるというふうにも言われておりますが、これは私はきょうは議論いたしません。  もう一点の方であります。それは水産用の医薬品の取り扱いの問題でございます。大臣御存じのように、普通、動物などに投与するときには、必ず獣医師の指示を受けなければ薬の投与はできません。いわゆる要指示薬がございます。これは指示をする人、もちろんこれには資格があるわけでありますが、指示をする人、それから指示をされる薬、こういうふうになるわけでございます。  今までこの水産用の薬について尋ねたところ、先般佐野水産庁長官は答弁の中で、「水産用の医薬品につきましては、薬事法に基づく要指示薬の制度は、現在のところ適用いたしておりません。」こういうふうに答弁をしております。つまり、水産用とレッテルを張ったものについては、要指示薬というふうにはならないということであります。また、資格を持たない人がそれを投与してもよいということになるわけでございます。そこでまた長官は、「使用者の資格については、特に制限はございません。」こういうふうになっておりますので、いわゆる動物、例えば牛とか馬とか豚とか、こういうものに対して非常にやかましく言われておる薬でも、事魚介類になりますと、これは全く野放しという状況になるわけでございます。  これが実は問題なのでありまして、その水産用というレッテルを張りさえすれば、普通、要指示薬と言われておるそういう薬でも、自由に売買ができるし、使用ができるということで、非常に問題がございます。もちろん、五十四年から使用規制があることは知っておるわけでありますけれども、この魚介類の病を診るいわゆる資格者、これをどうすればよいのかというのが本日の私の提起する問題でございます。  政府は、いわゆる魚介類の病気の指導者、こういうふうなことを言っておりますけれども、要するに資格者をどのように決めようとするのか、それには摘発権はあるのかどうか、この点について大臣の率直な見解を伺いたいと思います。
  44. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先生から今御指摘ございましたわけでございますけれども、魚病について、養殖が特に最近盛んになってきたということでありまして、現在魚病の研究というのを水産研究所あるいは水産試験場におきまして水産技術者が担当しておることは、もう既に御案内のとおりであります。そして投薬等のあれにつきましても、現場におきましては、今申し上げた水産試験場ですとかあるいは県の試験場ですとか、そういったところの職員あるいは漁協の職員の皆さんがこれに当たっておるというのが現状であります。  なお、私が今あれしておりますのは、養殖は畜産と異なりまして、水中で数千とか数万の単位の群としての変温動物を育成するものでございまして、魚病対策は、えさのやり方あるいは養殖魚の収容密度の管理あるいは漁場環境の保全等の養殖の適正管理による防疫を基本としておるということであります。  そういうことで、畜産用医薬品を要指示薬としているのは副作用の防止と耐性菌の発生抑制等のためでございますけれども、養殖魚の場合副作用の問題はさほど重大でなく、また耐性菌の問題についても、魚の病原菌は人や家畜の病原菌とは異なるから、要指示薬を指定する必要は少ないのではないかということであります。
  45. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣、そういう答弁じゃだめなんですよ、これは。だめといいますのは、今までの歴史がある。それで去年、そういうことがはっきりしないから、例えばこれは九月の七日ごろですか、抗生物質あるいは無許可販売、こういう事件が随分と新聞で報道されておりますね。二人も逮捕されておりますね。逮捕されている人は、知らないで逮捕されているんですよ。その基本は何かというと、国にそれをきちっとする制度がないということなんです。ですから、最後にはこういう業者のところへ行くのです。  そこで、今歴史があると言いましたからちょっと申し上げておきますと、その歴史というのはこういうことなんです。魚病の問題につきまして国会で何回も問題になり、そうして第八十回国会、五十二年五月、衆参両院農林水産委員会は、獣医学教育年限延長を承認する附帯決議の一つとして、六年制獣医学教育の課程に魚病学を含め、かつ獣医学系大学の魚病研究体制を整備するよう政府に要望した。これは五十二年です。  さらに、文部省大学局長の通知でも、詳しいことは言いませんが、大学の中に魚病学を含む教育基準というものを考える。  それからさらに、ずっと国会で何回もやってまいりまして、第九十一回国会において、五十五年の三月でありますが、武藤農林水産大臣が、魚介類を獣医師の診療対象動物として明確に規定するため、獣医師法第十七条の改正を検討すると約束しているわけですよ。それからさらに、亀岡農林水産大臣も、これを整備しなければならない、こういうふうに言っております。  それから、その後も何回か取り上げられ、そして五十九年にも私が質問したときは、引き続き前向きに検討する、こういうふうに、随分長いこと検討ばかりしておるわけですけれども、一向にらちが明かない。どうも話を聞いてみると、畜産局の方と水産庁の方との葛藤があるらしい。そんなことで、私どもが口に入れる魚が汚染されているのかされてないのかわからないということでは、まことに困る。  そこできょうは、どういうふうにするかは別といたしまして、私が考えたところ、大体二つの方法があるのではないか。  一つは、これは従来から言われておる獣医師法の十七条の改正です。十七条というのは、「獣医師でなければ、家畜(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫及び鶏をいう。)の診療を業務としてはならない。」こういうふうにありますから、この中に魚介類を入れれば獣医師が診れるわけです。ところが、そうすると獣医師でなければできないというふうになってしまうので、これでは困るというのが水産庁の言い分なんです。水産庁では二百人ばかりの人を養成してきた。だけれども、また一方、昭和五十九年三月からこの獣医師法国家試験に魚病学が試験科目になり、正規の魚病学教育を受けた六年制の獣医師が巣立っておるわけです。したがって、今まで政府が言ってきたことと今やっておることは、どうも話が合わない。  そこで、もうそろそろ結論を出さなければならないときですから、獣医師法を改正するのか、それとも何か水産庁との折衷案でも考えるのか、どっちにしてもこの資格をひとつ農林水産大臣の時代に決着をつけていただきたい、こういうのが私の念願でありますが、いかがですか。
  46. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに今御指摘がございましたように、五十三年から獣医師系の大学の教育課程の中に魚病学というものが加えられ、そして五十八、九年ぐらいから卒業生が出てきておるというのが現状であります。ただ、現在まだ人数も少ないということもございましょうし、また水産と家畜と多少違うということも問題があるようであります。  しかし、この問題につきましては、今お話がありましたように、武藤大臣あるいは亀岡大臣のときにも御答弁を申し上げておったということもあります。私どもといたしましても、今すぐにそれを十七条に入れるのがいいのかどうか、しかし今おっしゃるような実態というものがありますから、こういったものにどう対応するのか、私ども、水産関係も、また獣医師さんの問題についても、今検討してございます。こういったところと十分連絡をとりながら、一つの方向をあれするために、私どもともかく積極的に検討はしていきたいと考えております。
  47. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう積極的検討は何回も聞いているのです。今回ここで質問した以上、私は積極的検討だけではどうも受け入れられない。それならば期限を切ってください。いつごろまでに結論を出しますか。
  48. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほどから御指摘がありますように、これはまさにあるいは人体にもというような、いろいろなことをおもんぱかっての委員の御指摘だと思っております。そういう意味でないがしろにしていいものでございませんから、私どもも本当に実態がどうなのかということを今までもずっと検討してきておりますけれども、現実にどう対応するのかということでございますから、ただ、時間を幾日までということを区切られましてもあれでございますけれども、今御指摘の趣旨を私どもも十分頭に置きながら一つの結論を得ることができますように積極的に努力をしていくということで、委員のお気持ちはよくわかっておりますことをお伝え申し上げたいと思います。
  49. 貝沼次郎

    貝沼委員 これをやっていると時間がなくなってしまいますのでなんですけれども、とにかく積極的じゃだめですよ、それだけじゃ。結論を出してください。私は強く要望いたしておきます。  それから、それでは大蔵省の方、いよいよ確定申告のときになりましたので、大変気になる節税の問題でございます。今納税者は節税に一生懸命でありますが、どうも割り切れないという部分が幾つかございます。私は、その具体的なものを挙げて要望したいと思います。  率直に申しまして、これは所得税法の七十七条、損害保険料控除の部分でございます。交通事故傷害保険等の傷害保険料について、現行の損害保険料控除とは別枠で所得控除の対象としてもらいたいというのが結論でございます。  昭和五十九年の交通事故の死傷者数を見ましても約六十五万人。それから、五十八年度の労災事故の死傷者数は約九十三万人と言われております。さらに、日常生活上の不慮の災害、例えば家屋等の火災、爆発による傷害、それから家事従事中の傷害、いろいろあるわけですが、これも随分ふえてまいりました。そのため、傷害医療費用というものはだんだん高額化する傾向を示しております。さらに就業不能に伴う所得の減少、これも大変深刻でございます。  こういうようなところから、災害に対応する公的保障として自動車損害賠償責任保険あるいは政府による労災保険などがあるわけでありますが、これでは不足の面がありますので、これを補完するものとして交通事故傷害保険など傷害保険が利用されておるわけでありますが、この傷害保険は、国民の身体、生命、生活を取り巻く不慮の災害に備えたものであり、死亡保険金の支払いだけでなく、後遺障害、入院、通院など程度に応じた経済的損失をカバーする身近な生活防衛手段となっていることは御存じのとおりでございます。その面では、医療費等の経済的支出を補てんし、国の福祉政策を補完しておると言ってもいいでしょう。したがって、国民の不安を少なくするためにも、生命保険に準じた保険料控除の優遇措置を考えてもよいのではないかと思うわけでありますが、当局の御見解を承りたいと存じます。
  50. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生御指摘のとおり、交通事故などによる不慮の災害あるいは疾病に伴う特別な支出に備えるために傷害保険料が存在するわけですが、それは家計が支出する生計費の一部と理解すべきものであり、このような家計支出に対応して個別に所得控除を認めることは困難ではないかと御理解いただきたいと思います。  といいますのは、税制調査会の答申でもしばしば御指摘いただいているように、さまざまな国民の生活態様の中から特定の家計支出を抜き出して税制上しんしゃくするには、おのずから限界があると指摘されていることが第一点。第二点としては、税制の簡素化についての強い要請に適合しがたいのではないか、こういう二点がございますので、御理解を仰ぎたいと思います。
  51. 貝沼次郎

    貝沼委員 そう言うと私は思っていましたけれども、それは実態に本当はそぐわないですよ。実際はこういう不慮の災害に遭って困っている家庭というのはたくさんあるわけですから、そういう人を救済するという意味でも、あるいはそういう傷害保険がふえていけば助かる家庭は多くなるわけですから、これが控除の対象になるとなるとまたふえてくるのです。したがって、大蔵省はもう少し、そう紋切り型じゃなしに検討していただきたい、お願いいたします。どうせいい答弁は出ませんから次に進みますけれども、あなたに聞いたってもうそうそれしか聞いてこないんですら言わないでしょうから、この次大蔵委員会かどこかでやります。  それから、もう一点は自賠責、これは日本国じゅうの人はほとんど掛けていると思いますね。今一軒の家に自動車あるいは原動機付自転車を入れますと一・一台ぐらいになるそうですね、平均が。私の家でも自動車三台ある。全部自賠責掛けておる。ところが、これがやはり控除の対象にならないのですね。これは考えていただいていいのではないかと思いますけれども、七十七条の分としていかがでしようか。
  52. 熊川次男

    ○熊川政府委員 この自家用自動車についての自賠責の保険料、あるいは任意の自動車保険料は、いわば便益性を有する自家用自動車を利用するために伴うところのコストの一つ、こう御理解をいただけるのではないかと思います。これを所得税の課税上しんしゃくすることというのは、これまた困難を伴うのではないかと思います。  なぜならば、まず一般論としては、税制調査会の答申でも示されているとおり、さまざまな国民の生活態様の中から特定のものを引き抜いて、それで税制上のしんしゃくの対象にするということについては、おのずから性格上限度がございます。第二点はさらに、各種の政策目標に資するために設けられたところの租税特別措置の整理合理化が叫ばれている今日であります。こういう点から見て、やはりその大原則、大きなスタンスにマッチしないんじゃないだろうかなと思いますし、第三点としては、自家用車を持っている人の所得は有利に扱われ、自家用車を持っていない人はその恩典に浴されないという、税制が目指す公平……(発言する者あり)
  53. 角屋堅次郎

    角屋委員長 答弁中は静かに願います。
  54. 熊川次男

    ○熊川政府委員 税制の最もファンダメンタルなプリンシプルであるところの公平という見地から背反しないだろうかという大きな疑問が存在する点でございますので、これらの点を御理解を仰ぎたいと思います。
  55. 貝沼次郎

    貝沼委員 今一点、二点、三点申されましたけれども、三点目はおかしいですよ。公平なんか、そんなものじゃないですよ。大体今ごろは、自動車があるから金があるとか、自動車があるからすごく便利だとか、そういうことじゃないのです。自動車がなければ仕事ができないから、自動車に乗っているのですよ。むしろ、交通の便の悪いところの人が、自動車を持たなくちゃ今は成り立たないのですよ。大蔵省みたいに、電車で来て大蔵省からまた電車で帰るというところばかりではない。地方は自動車が乗れなかったら何もできない。したがって、公平なんというのは、便利なところにおる人は自動車を持ってなくて、便利でない人は自動車を持っている。だから、その人だけ便益を与えるのではないかなんという発想はそもそもおかしい。その辺のところはひとつ大蔵省もちゃんと実態を知ってもらいたい、そう思います。時間がありませんからこれは今とは言いませんけれども、将来の問題としてぜひともひとつ検討していただきますことを要望して、次に移ります。  次の問題は印紙税です。収入印紙のあの印紙です。これがまた実際に合わないですね。今はコンピューター時代なんですね。先般のマスコミの報道にも出ております。これが非常に端的に書いてありますから、私、これにのっとってお尋ねいたします。  ある企業Aと納入業者の代金決済に使っていた手形を廃止し、ファクタリングの介入、いわゆる債権の売買方式で銀行の口座振替をコンピューターで決済する。そうすると、印紙税は要らないわけです。実際は、取引やなんかをした場合に証書をやった場合は、全部印紙税がかかる。ところが、こういうコンピューターの出現によって、印紙税を払わなくてもいい人が出てきた。実態と違う。これで節約できる印紙税は年間約五千万円と言っていますね。  それから、手形の廃止による印紙税節約作戦というのは、例えば電機業界などにもありまして、手形の一括化と分割の方式による節税。手形の印紙税は、額面に応じて税額が異なっております。そこで、五百万円の手形、印紙税が千円でありますが、これを千枚発行するのを五十億円の手形一枚、すると二十万円ですから、これに切りかえれば、印紙税は百万円引く二十万円ですから八十万円少なくなる、こういう合法的なやり方ですね。  さらに、金融機関の場合、これはキャッシュカードを使っていわゆる現金自動預け払い機で預金した場合に出てくる御利用控、国税庁の通達によって一枚につき二百円の印紙税がかかっているわけですね。あそこに入れるたびに二百円かかる。この負担は、例えば富士銀行の調べだと、年間四億円ぐらいに上るそうですね。何も私は銀行の肩を持っているわけじゃありませんけれども、こういうところを、今度は通帳持参者に限って受け入れると控えを発行しないようにした。あらかじめ登録した人だけを対象に、控えをとじ込む専用通帳を発行するようにした。そうすれば、枚数に関係なく、年間二百円の印紙税負担で済む。こういうふうに実態と印紙税というのは違うのですね。  もう一つの問題は、これはいわゆるタックスヘーブンと言われてもいいのではないかと思われる問題。時間があればもう少しやりたいと思ったのですけれども、例えばアメリカあるいは西ドイツ、こういったところはたしか印紙税は日本と違うと思うのですね。ないんじゃないですか。そこで、ある大手商社と国内メーカーが昨年在米支社間で契約書を作成し、調印した。要するに、印紙税のない国で会社をつくり、そして契約をした、こういうわけです。そして、そこで調印をする。日本の本社にはそのコピーだけが送られてくる。米国には印紙税がないから、もちろん印紙税はかからないわけでありますが、日本でもコピーには印紙税はかからない。したがって、郵便料だけで負担は済む、こういうふうになって、これは以前私ども大蔵委員会でよくやったいわゆるタックスヘーブンと同じような性格のものでございます。  したがって、こういうような時代にもはや印紙税の従来の発想というのは合わないのではないか、コンピューター化の現代に至って、この印紙税というものは考え直す必要があるのではないかと私は思いますが、当局のお考え方はいかがでしょうか。
  56. 熊川次男

    ○熊川政府委員 お答えいたします。  先生が最近の経済の実態を的確に把握し、それらに呼応するような税制についての強い御指摘、非常に示唆に富むものであると理解しております。  確かに、我が国は一般の契約については口頭主義をとっておりますので、極めて例外なときだけに書面主義をとっている。こういう意味から、書面に形成された場合と口頭の場合とで差が生ずるというようなことでいいかというその基本に関する問題ではないか、こんなふうに受けとめ、この急速に機械化あるいはコンピューター化が進んでいるとき、御指摘の点は十分留意しなければならない点と理解しております。  さような点から、検討を急ぐべき問題ではあると思いますが、先生と同じような形でもって昨年暮れに税制調査会の答申が出ております。御案内のとおり、大きな抜本的な改正を目指して同調査会が鋭意今努力中であって、この印紙税に関するものについても、掘り下げて検討を進めるべきだという御指摘もございます。それらの点をさらに先生が早くかつ強力にという点でありますので、今鋭意検討中の答申などもまちながら、先生の御期待に沿うような方向で急がせてみたいと思っております。
  57. 貝沼次郎

    貝沼委員 抜本的というところがありましたが、私はそれをすべて認めているわけじゃありませんよ。印紙税のことを今言っている。抜本のことを認めたりしたら、大型間接税なんか出てきちゃう。そっちの方はそう簡単に乗らない。ですから、こういう時代に合わないものが出てきております。殊にコンピューター化によってそういうものが、何も印紙税だけじゃないのです。いろいろと出てきている。例えば会社の重役会議にしたって、テレビの会議ができるんですね。ところが、同じ部屋で例えば議事録が必要だとかなんとかということになるとそれが会議にならないとか、いろんなコンピューターによる問題は調整しなければならぬところはたくさん出てきておりますから、これを一つの問題として取り上げ、考え方をひとつ転換していかなくちゃならない時代ではないか、こう言っているわけでありますので、ひとつ期待に沿うようにということですから、強力に進めていただきたいと思います。  それからもう一点は、長期にわたって出し入れのない預金ですね。以前塚本委員長も取り上げておったようでありますが、長期にわたって出し入れのない預金、俗に言う睡眠預金でございます。郵政省の方ですと睡眠預金、睡眠通帳とか言っております。これが話題になっておるわけでありますが、大蔵省は、この睡眠預金というのは金額にして大体どれくらいと見ておりますか。
  58. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 全体の統計はございませんけれども、都銀で残高にいたしまして、毎年ということではございませんが、今まで累積されておりますのは四百億という数字が出ております。
  59. 貝沼次郎

    貝沼委員 今四百億という数字が出ましたが、四百億とか六百億とか、あるいはアングラマネーを入れれば一兆円とか言われておる残高ですね。     〔委員長退席、林(大)委員長代理着席〕 これは現在わかりませんが、しかしそれだけのお金が眠っておる。といっても、実際は運用されておるわけですけれども、持ち主のはっきりしないものでございます。この扱いでございますが、大蔵省はこの扱いについて、たしか十二月の二十日ごろだと思いますが、銀行協会といろいろ話し合いをして、ある一つの方向が決まったかに言われておりますけれども、これはどういう方向で話が決まったのでしようか。     〔林(大)委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 熊川次男

    ○熊川政府委員 お答え申し上げます。  全国銀行協会では、六十年度中の実施を目途にして、先生御指摘の睡眠預金の取り扱いのルールの概要を次のように定めました。  十年を経過した一万円以上の睡眠預金については、最後の引き出しの行為があってから十年を経過した日から六カ月以内に、長い間出入りがないということをまず通知を行うこと、そしてその通知が受取人不在とかというような形で返ってきたものについては、通知から二カ月を経過した日のその日の属する決算期に利益金に計上する。それから、十年を経過した一万円未満の睡眠預金については、十年を経過した日から六カ月後の応当日の属する決算期にその利益金として計上する。ところで、これらはいずれも銀行の経理上の内部の問題の扱いでございます。預金者との関係においては、利益金処理後も、請求があれば支払いに応じることになっております。  御案内のとおり、郵便貯金については、十年間貯金の預け入れあるいは払い戻し等がなかった場合には、預金者に催告をして、その催告を発した日から二カ月以内に何らの請求がない場合においては、預金者の権利そのものを消滅させております。しかし、このような郵便貯金の扱いの方策は問題がありはしないかと考えております。といいますのは、幾ら少額といえども、あるいは長い間眠っているといえども、預金者の権利を消滅させも、剥奪するといういわば除斥期間的な発想はちょっとどうだろうかな、こういう気がいたします。  銀行預金の消滅時効については、商法の適用、いわゆる商事債権の消滅時効である五年を持っておりますが、預金者との取引の実態だとか預金者の利益だとかいうものを勘案いたしまして、やはり時効の援用をいたすまでは権利が消滅しない、いわば預金者保護の基本的なスタンスをぬぐい去ることはできない、こんなふうに理解しております。
  61. 貝沼次郎

    貝沼委員 確認いたしますが、それは決定ですか。
  62. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 これは全国銀行協会の中での申し合わせ事項でございますので、こういうことを申し合わせたということで一応傘下の各金融機関には連絡いたしますけれども、基本的には申し合わせ事項でございますのでそれがルールとして、基本的にはルールでございますけれども、必ずしも拘束されるものではないと理解しておるわけでございます。
  63. 貝沼次郎

    貝沼委員 私が聞いておるのは、銀行の意見を聞いておるのじゃないのです。大蔵省はそれは決定の意見ですかということを聞いておるのです。
  64. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 この睡眠貯金、ここまでの取り扱いについては手続でありますし、民事関係のものになるわけでございます。基本的には銀行と預金者との関係というのは民法並びに商法が適用されるわけでございますので、その一方の債務者としての当事者たちがこのルールを検討したわけでございまして、大蔵省には報告はございましたけれども、大蔵省の決定ではございません。
  65. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ、ちょっとさっきのと話が違いますよ。大蔵省が決定しないのをどうして――例えば郵便貯金には問題がありはしないかというような意見めいた先ほどの答弁もありましたけれども、これは大蔵省がそれに応じたのではないですか。どうなんですか。大蔵省がかんでいないのなら、何もここで答弁してもらう必要なんかないのです。
  66. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 先ほど申し上げましたのは、こういうことにしたいという報告があったということでございまして、その前に非公式な相談などはございました。
  67. 貝沼次郎

    貝沼委員 報告があったのを、認めたわけですね。
  68. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 さようでございます。
  69. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかりました。これはやはり大蔵省が認めておるわけであります。  そこで、大蔵省がこれを認めていきますと、先ほど答弁がありましたように、郵貯との関係が食い違ってくるんですね。郵貯の方は十年たったら国庫に没収ですね。国庫にちゃんと入るのです。そのかわり、一生懸命連絡するのです。ところが、大蔵省の方は没収しないで運用させ、運用益に税金をかける、こういうことですね。それで預金者の権利を守ったのだ。預金者の権利を守るのなら、貯金者の権利も国としてはやはり認めてやらなくてはいけないので、この辺は郵政省と大蔵省の話し合いというものが今後必要ではないかと私は考えます。この点はいかがかということが一つ。  それからもう一点は、これは預金者の権利を守った、そしてこういう扱いにするらしい、それを側面から認めた、こういうことですけれども、それならば、これはもともと国民の預金したものなんですから、運用の仕方について大蔵省はもっと物を言ってもいいのではないかと思います。国民の睡眠預金なんですから、それならばそれはもっと公共的に、例えば国債を持つとかいろいろな面で運用する方法もあったのではないかと考えるわけでありますけれども、その辺の御検討はなされたのでしょうか。この二点についてお伺いいたします。
  70. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 事柄の性格でございますけれども、先ほど申し上げましたように、銀行に対する預金は、これは民事ないし商事法規のもとで、顧客との取引慣行や顧客の利益を勘案して自主的なルールを定めたということでございます。したがいまして、そういうルールに基づきまして、この預金者に通知をいたしましてその通知書が返戻された場合には、相手方がその睡眠預金があるかどうかについて確認できていないという状況でございますので、それにつきましては一応利益金として計上いたしますけれども、利益金として計上した場合には益金として法人税を納めまして、それから後にいつでも預金者があらわれたときには返戻するという意味で預金者の利益を守っているわけでございます。  一方、郵便貯金のことにつきましては、郵貯関係でございますので、当省が御答弁申し上げるのはいささか問題かとは思いますけれども、あえて申し上げますと、これは国で営む事業でございますので、郵便貯金法で民事法規とは異なる特例を定めているというふうに解しておるわけでございます。  それから第二点の、国に納付するかどうかでございますけれども、あくまでも預金者の財産でございますので、先ほど申しましたように、一応益金等を計上するものの、法人税を納めた後になお預金者があらわれる場合には返戻するということで、預金者の利益を守っているというのが銀行の考え方でございます。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 あと時間が二分になりましたので、もう以上で終わりたいと思いますが、とにかく同じ政府のもとで大蔵省関係と郵政省関係では扱いが違う、しかも先ほど御答弁の中に、これは郵貯に問題がありはしないか、こういう言葉も入っておりましたので、さらにお互いに話をするみたいなニュアンスの話もありましたから、そういう話が進むのだろうと思って今私はお尋ねをしたわけでございます。いずれにいたしましても、国民の納得のいくような方向でこの処理をお願いしたいと思います。
  72. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 先ほどの答弁の中で、私の舌足らずの点があったかと思いますけれども、報告を受けた、したがって認めたという言葉につきまして、そのとおりでございますというふうに申し上げましたが、あくまでも基本は、銀行が自主ルールで定めたものを報告があったわけでございます。それで、私どもといたしましては、銀行が自主的なこのような取り扱いを定めることについて、銀行監督責任者として、それ自体は自主的に決めて問題はないというふうに考えたわけでございます。
  73. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  74. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で貝沼次郎君の質疑は終わりました。  引き続き、玉置一弥君。
  75. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 私は、特に問題点を絞って農林省関係、その中でもこれからの農業に対する構造改革、こういう観点でお聞きをしてみたいと思います。  もう農政ではまさに通のうちのオーソリティーの一番上くらいでございますから、大臣には何を聞いても大丈夫だということで、本当は通告なしでやろうと思ったのですが、なかなかそうはいきませんので、大臣が今時に農林省の方で方針として出しておられますいわゆる土地利用型農業あるいは産業化を進めていこう、こういう姿勢があろうかと思いますけれども、この辺についていろいろお伺いをしていきたいと思います。  御存じのように、農家の数がだんだん減ってまいっておりまして、もう既に四百数十万軒というような状況の中で、農業人口が五百万人を切っている、こういうふうに農業に従事される方の人数が非常に低下をしてきている。そして、特に専業農家、この数字が三〇%をやや上回る程度でしかない。こういう状況でございまして、面積も若干減ってきているし、そしていろいろな面で農業に対して非常に悪い環境が定着してしまっている、こういうふうに思うわけでございます。  農業従事者の減少というのは、高齢化もありますし、あるいは兼業して、あるいは規模拡大という今農水省の方向がございますけれども、この方向に合わないためになかなか大規模農業ができない、それだけ手間をかけることができないから農業から離れてしまっている、こういうことになるかと思います。  これは農業団体の予測でございますけれども、昭和六十五年くらいになりますと、農業従事者が、男子で六十歳未満の方で大体八十五万人、六十歳以上の方で七十八万人と、ほぼ六十歳を境にして同数がおられるというような形で非常に高齢化してしまう、こういうことがございます。  こういう状態の中で、今時に対外経済政策というか、政府が出しておられるいろいろな政策がありますけれども、この中で毎年出てくるのが農産品の輸入拡大という動きがあるわけでございまして、話はわかるのですけれども、いわゆる工業製品の代償として農業を対象にするというのはちょっと筋違いじゃないかというふうな気持ちも持っておりまして、そういう面で、やはりこれからの農業に対してもっと積極的に行政が指導していくという形、あるいは農家のあるいは農業従事者の方々の頭の切りかえをやっていくような、こういう施策を実施していかなければいけないかというふうに思うわけでございますが、まず国際化を踏まえて農林大臣としてどういうふうにこれからの農業を考えておられるか、時間が全部で二十五分ですから、なるべくまとめてお願いしたいと思います。
  76. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まさに今日本の農業に課せられている基本的な問題の御質問で、短い時間でお答えするのは大変難しいのですけれども、いずれにいたしましても、我が国の農業というのは、酪農ですとかあるいは施設園芸、これもまた国際的な比較ということになりますと決してまさるということは申し上げることができませんけれども、しかし養鶏ですとかあるいは卵ですとか、また酪農につきましても、ECに大体追いつきつつあるという状況でございまして、ともかく施設の園芸ですとかこういったものについても相当なところまできているというふうに確信をいたしております。  ただ問題は、国土資源というものが制約されておるということと、もう一つは、日本の国土というものが非常に山が入り組んでおるというような事情もございまして、基盤整備をして土地を集約していくといっても、なかなか実際には実は難しいということで、この点につきましては、まだ私どもこれから相当あれしていかなければならぬなということと同時に、規模の拡大できない部分については、小さな例えば水田、そしてその他の複合経営というようなものをこれから考えていかなければいけないのではないかというふうに思っております。いずれにいたしましても、基本的にはまずそういう難しい環境の中でもこれからも基盤整備というものをきちんとしていくということが一つの基本でありましょう。  それから、技術あるいは経営能力、こういったもの、今農業者自身の感覚というものもだんだん切りかえていかなければいけないんじゃないかという御指摘もありましたけれども、やはりこれからの農業というのは、市場の動向なんかもみずから判断しながらそれに対応していくというものも必要でありましょうし、あるいはこれから新しい技術なんかもどんどん発展してくる、こういうものも技術をみずからが取り入れていく、こういうことが必要でありますので、こういう面での教育というものは非常に重要であろうというふうに考えております。いずれにいたしましても、そういうものを整備しながら足腰の強い農業をやっていく、そういう中で国際的ないろいろな外圧に対してきちんと対応していくということが重要じゃないかなというふうに考えております。
  77. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに国土の整備といいますか、この辺は狭い日本でございますから、わざわざ開墾するというような形にもなるわけですし、また良質の水を得るためのいろいろな施設といいますか、こういうものも必要になってくるわけで、従来は自然放流といいますか、森林から流れてくる大きな河川から農業用水をとっておりましたけれども、これからは新しい水を確保するために山間部にダムをつくったり、こういうことも逆に考えていかなければいけない、こういうように思うわけです。  特に問題になっておりますのは、価格の問題じゃないかというように思います。価格の問題と簡単に言いますけれども、先ほどおっしゃいましたように農業経営に対していろいろな取り組み姿勢があるわけで、この問題も含めて考えていかなければ、農産品の価格、これの国際レベルとの競合というのはまず考えられない。  それから、規模ですけれども、大臣も御存じのように、アメリカとかブラジルとかへ行きますと、見渡す限りの中に数軒しか家がないのですね。そういうような中でこちらは見渡す限りのところに、大体見渡せるところが余りないですけれども、そういうところで密集した村落といいますか、農家がある、こういうような状態ですから、そこで競合するというのは非常に難しい。  そうなってまいりますと、今の時勢から兼業が非常に進んできた、こういう状態の中で、もう今の実態を是認して考えていきますと、農業を一つの産業として、あるいはちょっとした会社組織といいますか、そういうような形にまで発展させるような方法を講じていかなければ規模拡大ができないのじゃないか。ですから、一軒一軒小さいところを、二、三ヘクタールぐらいはあるというこれはいわゆる中堅ぐらいになりますけれども、またそれ以下のところをある程度集約する、そして、それを株になるかあるいはどういう形で参画するかわかりませんけれども、会社組織に委託をする、それに対して配当を払う、こういうようなことも考えられると思うのですけれども、農業自立のための産業化というんですか、そういうためにそういう法人化とか、こういうことも考えていかなければいけないと思うのです。  それからもう一つは、生産基盤でございます土地、これが非常に土地価格が高い、工事費が高い、こういうことで、今土地改良事業が、従来大体五年ぐらいでおさめられたのが八年なり十年、場合によってはもっと延びる可能性があるわけですね。この辺から考えていきますと、そう時間をかけてやるわけにはいかない問題でございますし、ある程度地域を集約して年数を長くかけるというよりも、該当する軒数は減りますけれども、逆にその地域に集中して短期に仕上げてしまう、こういうことも考えていかなければ、そこだけの地域から見て非常に生産効率の悪い状況が続く、こういうことになるわけでございまして、この辺を今の予算の中で考えていかなければならない。  非常に苦しい状況でございますが、今一番最初に申し上げました産業としての農業を考えた場合に法人化、こういうような形まで進めるようないわゆる頭の切りかえをやって、あくまでも今までの一軒一軒の農業じゃないんだというような形にまで規模拡大をやるのか。やるのかというよりは私の案ですけれども、そういう方法があるのじゃないか。  それからもう一つは、基盤整備の時期的な問題、この辺をなるべく短期に仕上げるような方法に持っていく方がいいんじゃないか、こういうふうに私自身思うのですけれども、それについて御意見を伺いたいと思います。
  78. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいま御指摘ありましたように、確かに農業というもの、これを産業としてとらえていくという考え方に私も賛成であります。やはり将来本当に農業産業の中で生きていくんだ、そしてその中で新しい技術とかまた地域に応した農業をやっていくんだ、そういう意思を農業者自身が持たないと、これからのいろいろな移り変わっていく、新しい技術が開発されてくる、こういうものに対応できないということで、基本的に私はその御意見に賛成したいと思います。  それと同時に、今お話がありましたように、コストというものを少しでも下げていく。そのためには会社とか法人というものは必要なんじゃないかというお話がありました。確かに形態の幾つかはそういうものができてくる。もう現実に、たしか愛知県ですとかそういったところにも出てきておりますし、また皆様の各地域にもそういうものが生まれてきております。例えば機械なんかをオペレーターを置きながらいろいろな人の耕作を、例えば二種兼業農家の皆さん方の耕作を引き受けるという農業法人をつくっておやりになるというような方もいらっしゃいますし、また、畜産なんかでもそういった形態が生まれてきていることも事実であります。しかし、これが全体でそうかということになると、やはりその土地土地、地域地域の実情によって異なるのじゃないかなというふうに思います。いずれにしましても、中核的な農家というものが中心になって、そこに一種兼業あるいは二種兼業というものが一緒になって構成していくということが、これからの一つの大宗じゃなかろうかというふうに思います。  なお、そういうことを進めるためにも土地改良というものは非常に大事なものでありまして、機械が導入できないようではこれはどうにもならないということでありますから、そういう意味で何とか基盤整備というものを促進させていくというのは、やはり至上命題であろうというふうに思っております。そういうことで、ことしの場合にも、土地改良にっきまして、確かに国費の点では昨年に比べて少し小さくなりましたけれども、実際に事業量というのは百数%ということでそれを伸ばすことに、これは財投資金なんかを活用しながらやろうということをしております。  それと、今御指摘がありましたように、その地域によって要請されるものというのは、同じ土地改良でもいろいろと違います。そういうことで、地域の実情に合ったものを進めていくことが大事じゃないかなというふうに考えまして、今小規模のそういったものも進められるような制度も進めておるところであります。
  79. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 コスト意識の極論を言いますと、例えば昔の農業は、本当はもっと長いのですけれども、わかりやすく言いますと一日十時間ぐらい働いていた。そこに耕作のためのいろいろな新しい機械を導入して、働く時間がだんだんと短くなってきている。私たちの観念からいいますと、例えば今まで十時間働いていてその働く時間が四時間になったということになると、六時間はかの仕事をすれば確かに合理化になるのですけれども、ただ単に機械を買っただけで六時間はかの仕事もしないで、そして楽になった。確かに楽になることはいいことですけれども、その分結局負担がふえてしまっている。これが今までの農林省の機械化の指導だったのですね。むしろ、生産効率を上げてあいた時間をどうするのか、あるいは土地利用でもあいた土地をどうするのか、そういうようなことを考えていかないと、原価低減、コストダウンにはならないわけです。  それから、もう一つは流通の問題でございます。例えば青果物などは、隣の人がいいものをやってそれが当たったとなりますと、翌年からはみんながそれをやるようになって、値段が大幅にダウンして運賃も出ないという状態が続いているわけですね。こういうことを考えていきますと、それぞれの地域の中核になっております農協組織を利用して価格情報を提供するとか、あるいは今の機械化のための共同購入、これは制度としてはありますけれども、昔団地でありましたようなテレビとか冷蔵庫を競争で買ったというようなことでなくて、人が買うなら自分は要らないというぐらいに、共同に活用できるようなことを考えていくべきではないかと思うわけです。  そういういろいろな指導あるいは情報提供というような形でのセンターを各地域につくって、中央市場との価格の連絡を行って、この価格で出しなさいとかということを生産者に流す、そういうような形でやっていけば、今以上に生産者価格の安定が図れるのではないかと思うわけでございますが、大臣としてはどのようにお考えになりますか。
  80. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今御指摘ありましたように、確かに機械のウエートが相当高いというところがよく議論になっております。そういう意味で、機械購入に際しましても、作付規模といったものなどをよく見きわめた上で購入することが必要でありましょうし、また、機械そのものについての共同利用なども重要なことだと思っております。  従来から農業機械銀行を農協等に設置しまして、農作業の受委託の仲介、あっせんといったことなども進めてまいったわけでありますけれども、特に六十一年度から新たに農業機械の計画的、効率的な利用を促進するため地域全体の機械利用改善計画を策定しまして、これに基づいて地域内の農業機械利用の総合調整を推進する新農業機械銀行の育成も実は図っておるところであります。  確かに私ども見ましても、田んぼなどの場合で、同じ地域であるのに作付が一力月半も違うところがあるのですね。こんなところなども機械をうまく活用すればよろしいということもありますので、こういった問題は私どももさらに勉強していかなければいけないのじゃないかな、また農業団体などもこういったことに対して積極的に取り組んでいただく必要があるのではなかろうかと思っております。  なお、野菜等につきましても、生産コストというものの低減を図るための共同出荷施設なども必要じゃないかという御指摘でありますけれども、私どもとしましても、まさに今そういうものの整備を進めておるところであります。  なお、例えば生鮮食料品の市場情報といったものを提供することが重要ではないかということでありますけれども、まさに今グリーントピアというのを私の農林水産省の方でも進めております。今日、ニューメディアが進んできておる中にあって、市場が、そして消費者のニーズがどうあるのかということを的確に把握して生鮮食料品を提供することが、農民の所得も大きくなっていくということでありますので、こういう意味で、情報の処理ですとか通信技術の進歩を取り入れながら、生鮮食料品の流通情報ネットワークを通じながら情報を提供する、こんなこともこれからの新しい時代の中の農業経営にとって非常に大事なことであろうと考えております。
  81. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今自分がいるところが農家の近くでありますし、また人口密集地の近くでもあるという非常に微妙なところなんですけれども、農家が前の晩から取り出してきて市場に持っていったらただみたいな値段だった、慌てて捨ててきたなんてよくあるのですね。というのは、出してしまうとまたみんなにしかられるということもあるわけです。そういうことがありますから、できるだけ安定した値段、そして持っていく前にある程度農家にわかるようなシステムをぜひ考えていただきたい、かように思うわけでございます。  それから、特に我々の場合は都市在住の方々のいろいろな意見が強く入ってくるわけでございますが、マスコミの影響か何かわかりませんが、どうも農家に対する不信感といいますか、土地を持っていて楽して――大体都会に住んでいる人は土地を持っていることをうらやむのですけれども、農業所得が少ないと言われながらいい家に住んでいるとか車を持っているとか、こういう言い方で言われるわけです。だから野菜の値段が高いのだ、あるいは米が高いのだ、こういうことを言われるわけです。  私も京都で、そういう都市の人たちを集めて、農家の人たちと懇談をやってほしいということでセットしまして何回かやったのですけれども、それをやりますと、お互い本当によく理解してくれて、一切言わなくなる。むしろ、いろいろな面でお互い協力しようじゃないか、こういう形になっておるわけです。そういう面で考えますと、消費者と生産者の代表といった方々がいろいろな面で話し合いをしていく場をもっとつくっていくべきじゃないかと思うわけです。逆に言えば、消費者にもっとPRすべきだと思うわけでございますが、そういう機会が余りないように思うのです。これについてどういうふうにお考えになっておられますか。
  82. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 全く御指摘のとおりでありまして、双方が余り理解しておらないという面が現実にあります。しかし、米価のときなんかにも、例えばある県では自分のところのお米を持ってくる、みそを持ってくる、菜っぱを持ってくる、そのほか漬物なんかも持ってきまして、自分の県の出身者の県人会か何かに訴えて、その人たちに集まっていただいて、今我々の県はこういうことをやっていますよというようなことをやっている話も聞いております。  それから最近では、野菜は一体どんなふうにできるのか、例えば都市の団地の皆さん方が生産地に来られて一緒になって収穫をする、そういう中で、明け方みたいなときにカンテラをつけながらやっている姿を実際に見た消費者の方々は、今お話しのとおり、これは大変なんだなということで、文句どころか、いいものを、しかも余りむちゃに農薬を使わないでくださいねなんという対話がお互いにある。そういう中で消費者の方も理解するし、農業者も、消費者はそんなことを心配してくれているのだなということをよく理解しております。  かって農林水産委員会で、私が委員長のときでしたか、消費者の方々にもおいでをいただきながら、外国からの輸入の問題も話しましたけれども、そのときに私もふっと気がついたのは、ともかく多少高くても余り輸入に頼らない方がいいという、それはなぜかというと、消毒だとかについて国内の方がよりチェックしやすいからだという話がありまして、やはり消費者との対話というのは大事だなということを思っております。  そういうことで、農林水産省の玄関入ったすぐ左側のところに消費者の部屋というので、今熊本県をやって、前回は岡山県をやっておりますけれども、いずれにしましてもそういうものを通じて各県の産物についてごらんいただいたりつまんでいただいたり、そこで代表者の方々と対話していただく、こんなことも農林水産省やっておりましたり、一日農林水産省の開催ですとかあるいは新聞ですとか雑誌、こういったものを通じながら各界の消費者の皆様方に農業生産がどうあるんだということを知っていただく、そして今こんなものがありますよということを知っていただく、あるいは日本型食生活はこんなものですよということなんかも知っていたたく、こういうことについては私どももより積極的に進めていきたいと考えております。
  83. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 最後に、三十秒ぐらいでお答えいただきたいのですが、水田再編の毎年毎年の方針が出ていまして、今第三期に入っているわけですけれども、達成率が大体一〇〇を上回っている。いろいろな話を聞きますと、もうこれ以上は無理だという地域が非常に出てきておりまして、特に我々の地域は、いわゆる公益のための土地供出でありますとかあるいは住宅地とかとられているわけで、これから水田再編がどういう方向にいくのか、これはもう数秒ぐらいでお願いします。
  84. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 数秒では大変難しいのですけれども、米の需要拡大をこの九年間やってまいりましたけれども、残念だけれども、まだ需要が減退しておるということでございますので、さあそれでは今度ポスト三期は何をつくっていただくのかということについて、農業者あるいは流通の皆さん方、私ども役所、そして県、地方自治体、それぞれがみんなで話し合って進めていきたいと考えております。
  85. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。
  86. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で玉置君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部昭吾君。
  87. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今文明論を展開する時間もあれもないのでありますが、私つい先般、大阪空港から秋田空港まで飛んだのであります。そのときに、そのコースは名古屋の上空から羽田農林水産大臣の郷里の松本、上田、あのあたり、日本列島のちょうど背骨の上を飛びまして秋田空港に行った。恐らく標高八千メーターぐらいのところを飛んだんだと思うのですが、太平洋側の方も日本海側の方も両方全部見えるのであります。そういたしますと、日本の国というのは、物も人もいろいろなもの全部太平洋側にたくさん集めておるということが非常に明瞭に見えるのであります。その中に今の農業問題や農政問題というものがあるんだと私は思うのであります。  私は、それは確かに人間の社会の発展過程というのはだんだん農村から都市に集中する、そのことの繰り返しだったのではないかと思うのであります。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕 ローマ帝国にしてもギリシャにしても、どこにしても都市に集中して、それが爛熟して崩壊をして、また再び歴史は繰り返すということだったのじゃないかと思うのでありますが、我が国のこの四十年間の戦後の足取りというのは、まさにそういう非常に急激な流れをたどっておる。今官房長官、どんなにいい頭をひねられましても、定数是正なんという問題はなかなか政治的に難しい。なぜそれが起こっているかというのは、今のこの根本問題に根差しておるのではないかと私は思うのであります。  そこで、今玉置委員の御指摘に農政問題の専門家であります羽田農林水産大臣、いろいろ答弁をされました。そこで、農業の中も、確かにいろんな多面的な農業の中における複合的なやり方――もう私の郷里なんぞは、ササニシキの本場ですけれども、専業農家というのは成り立たぬのです。したがって、何かみんな農業そのものも複合をやらざるを得ない。昔なら、三ヘクタールくらいのササニシキをやっておれば、十二カ月間の農業のローテーションというのはちゃんと組めたんです。今はもう組めない。機械が進みましたから、どんどんわずかの期間で終わってしまう。いろんな意味で複合をやらざるを得ない。しかし、今の日本の農村の技術の水準で複合農業で全部をやり出したら、市場はパンクすると思いますよ。だから、今の日本の農村の持っておる生産力をあらゆる意味でフル回転させるわけにいかないんですよ、市場がパンクしますから。  同時に、さっき大臣言われましたように、やはり土地はよそに比べて非常に狭小である。したがって、大豆や麦やそういうものが全く足らぬじゃないか、日本の国内でやれ、こう言っても、それは価格の問題やコストの問題で全然ペイしないという事態が起こってくる。したがって、日本でいいのは、さっき大臣おっしゃるように施設園芸であるとか、同じ畜産の中でも広大な牧場などを余り必要としないような小ぢんまりとした鶏だの卵だの、こういうものはまあまあ何とかなっていく、こういう流れですね。そうすると、今日本農業というのは、日本の農村の持っておるエネルギー、この生産力をフル回転させたら全部市場はパンクする。したがって、残念ながら抑制せざるを得ないという段階にあるわけです。  その抑制の最たるものは、今の水田再編だろうと僕は思うのですね。水田再編のみならず、この間、大臣、これはいじわるに言うんじゃないのですけれども、畜安法をどうするか、したがって保管買い上げを豚肉の場合にやりましょうといってやりましたね、二十九万トン。どうか知らぬけれども、六、七万トンでとめちゃって、余り買い上げは最近やらない。六百円まではいかずに、五百五、六十円くらいのところで足踏みさせたままで、ずっと今推移をしておるわけです。これは何だろうかと思うと、養豚なんぞも余り生産力がフルに回転しちゃいかぬ、ある程度どこかできつくなっておらないとどんどん生産が上がってしまうから、二十九万トンの買い上げをやろうとしておるのだけれども、六、七、八万トンくらいでちょっと抑えておこう、こういう何かがあるのじゃないかというように、僕ら、つまり長い間農政とか畜産とかいろんな問題にかかわってきた人間は、羽田農林水産大臣をもってしてもやはりそういう流れの上で身動きがつかぬのかなという思いが実はするわけですよ。  それはそれでさておきまして、どうするんでしょうか。私は、農業の中の複合体制をいろんな意味で追求していくしかない、もう一つは、農村の社会構造という問題があるんだろうと思う。私は大臣の郷里の長野に最近しばしば行って感心するのは、あそこは農業が非常に熱心なところと思ったら、近代工業というのか、精密工業とか物すごく盛んですね。したがって、農林業が相当きついにかかわらず、大臣の郷里など相当活気を持っておると私は見ました。原因は何だと思ったら、近代工業が相当導入されて、農林業と近代工業との複合化があの地域の社会構造の中に非常に強力に根づいておる。  したがって、やはり政治の責任として言えば、農業の中で単なるフル生産をやったら市場がパンクするとわかっておるんなら、生産はここまでだよ、そうかといって外国にやるほどのペイするようなものはできませんよというなら、農村の社会構造というものを、大臣の郷里のように農林業に近代工業をどのように複合化させていくかとか、こういう大胆なことを、やはり農政の枠組みの中と他のいろいろな分野のものとをどのように結合さしていくかという大胆な発想をしないといけないんではないだろうかというのが私の認識であります。そういう意味で、私と羽田農林水産大臣との認識に大きな差があるのかどうか、お聞かせを願いたい。
  88. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 基本的に先生のお考えと差異がないと思います。まさに、私どもがちょうど国会に議席を得たころ、十六年ちょっと前ですか、そのころ国会で審議いたしましたのは、実は農村地域工業導入促進法という法律でありました。これは農村に工業導入を促進するという意味もありましたけれども、当時は、過密である都会から少し過疎の方へ工場を追い出そうという意味も実はあったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、やはりあのころから、農村に工業を導入しながら、その中でまた逆に規模の拡大なんかも農業の面で進めることができるのじゃないか、そんな考え方もあったんじゃなかろうかと思っておりますけれども、いずれにしましても、やはり規模を拡大するためには安定した職場というものが必要でございますので、そういった面についてもやはり複合的に考えていかなければいけない、このように考えております。
  89. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、さっき申し上げました畜安法というものを、やはりこてだめにやるというのじゃなくて、やはり法律がある以上は相当大胆に発動していくということでないと、政治に対する信頼というのは貫かれないのではないかというのが私の認識であります。したがって、十一月だったと思いますが、一時枝肉が四百何十円まで割ったですね。そこで保管買い上げをやるんだということで始めましたけれども、二十九万頭というのは、今どのぐらいまで保管買い上げをやったのですか、現在の市況はそれとの関係でどういうふうにとらえているのか。
  90. 大坪敏男

    大坪(敏)政府委員 豚肉の枝肉の調整保管でございますが、これは最近時点でたしか六、七万頭に達していると思います。先生御指摘のように、予定の計画頭数は二十九万頭でございます。  最近の市況でございますが、キロ五百六、七十円という水準であるというふうに記憶しております。     〔新村(勝)委員長代理退席、渡部(行)委員長代理着席〕
  91. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今大坪局長お話しのように、畜安法では豚肉の場合は六百円ということにしておるわけであります。そこで、五百円を割って四百円台にまで落ち込んだ、さあ大変だというので保管買い上げをやろう、これは二十九万頭までやっていこう。ところが、一時期相当積極的な保管買い上げに入った。そうすると五百八十円くらいまでいったんだろうと思うのです。九十四円かな。そうしましたらもうやめちゃって、また五百四十円くらいまで落っこちてきた。最近五百五、六十円のところ、こうなっておる。  保管買い上げを二十九万頭やることにしたのですから、畜安法で六百円というのなら、やはり六百円のところまで突っ込まなければいかぬのじゃないですか。どうもそこが、五百五、六十円のところで足踏みさせておくというのは、ある意味で言うと、どうも工業生産のしわをみんな農村に乗っけよう、したがって、少々日本の畜産農業というのは縮小されることの方がよろしい、そうしないと、いろんな貿易のアンバラその他の調整が困難になる、こういう認識で、二十九万頭をやろうというものを、依然として、私の調査ではここ半月間以上全然保管買い上げをやっていませんよ。六、七万頭というのは、今から二週間前も同じようなことを言っていました。私は、畜安法で言っておる値段が六百円というなら、そこまでいくまで頑張らなければいかぬのじゃないですか、農政というなら。  結論を出そうとは思いませんけれども、これから三月に畜産物の価格の問題がくる。私は、基本的には農業の問題は農業の中だけで片がつけられると思っておらない論者であります。農村社会構造というトータルの中でどうするかということを、大臣の郷里のように農林業と精密工業との複合化を目指すというなら目指すように、やはり新しい展開が必要だろうという認識だけれども、しかし現状は畜産農家が持ちこたえがきかぬようになっておる。法律的にもこの基準があるというなら、ある目標を定めたなら、やはりそこまでやっていくということが当然のことではないかということであります。
  92. 大坪敏男

    大坪(敏)政府委員 先生おっしゃいますように、現在の畜産物価格安定制度のもとにおきましては、安定基準価格を下回って価格が下落した場合は、安定基準価格まで回復することが本旨であるとは理解するわけでございますが、最近の事情は、基本的には著しい生産過剰の状況にございまして、例えばことしの一―三月間の出荷頭数は、各月対前年比一〇九という生産頭数が見込まれまして、かつまた、一方では不需要期という基本的な時期でもあるわけでございます。そこで、やはり私ども価格の回復は目指して調整保管をやる気構えでおるわけでございますが、何と申しましても今回の事態の解決は生産を縮小することが基本でございますので、価格の回復が、タイミングなり価格帯の水準が、逆に申し上げれば生産過剰を解決しないという場合もあり得るわけでございますので、私どもそういった生産の調整状況も勘案しながら、長期的に見て価格が安定するようなことを考えながら調整保管を実施しておるということでございます。
  93. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 終わります。
  94. 渡部行雄

    渡部(行)委員長代理 以上で阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、新村勝雄君。
  95. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 官房長官にお伺いいたします。私は総理に質問をする予定だったのですけれども、ちょっと予定が変わりましたので、総理のつもりでひとつ御答弁をいただきたいと思います。  その一つは、会計検査院法の改正問題であります。この問題は、そもそもロッキード事件の反省から起こった議論でありまして、それ以来、両院において真剣な討議、特にこの決算委員会において、ぜひとも院法の改正を実現すべきであるという真剣な論議が行われまして、衆議院において決議案として採択をされ、本会議で議決をされたのが、五十二年以来五十九年まで七回本会議で決議をされております。それから、参議院では五十三年から五十九年まで六回、両院で合計十三回の決議をされておるわけでありますけれども、政府はこれに対して何らの反応を示さない、こういうことでありまして、これは大変残念な事態であります。  そこで、長官にお伺いいたしますけれども、この問題についてはもう政府は全く一顧の価値もないということなのか、それとも今後院法の改正に努力をされるのか、あるいはまた、院法の改正はどうしてもできないけれども、それにかわる諸施策をとるというお考えであるのか、その辺を伺います。
  96. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 結論からお答えをいたしますと、政府として今院法改正に着手するという考え方はとっておりません。しかしながら、会計検査というのは極めて重要な仕事でございますから、この会計検査院検査が実効が上がるような方途について政府としては全面的に御協力を申し上げると同時に、行政改革等厳しいさなかでありますけれども、会計検査院の抱えておる仕事の重要性と仕事の分量、そういうことを考えまして、定員措置等については十分政府としては配慮していく、こういう基本の考え方でございます。  それはなぜか、こう言いますと、今新村さんがおっしゃいましたように、過去何回も国会の御決議をちょうだいいたしております。政府はそれはよくわかっておるわけでございます。ただ、何と申しましても今は自由経済の中でございまするので、民間の企業に対して公権力が介入していくということになりますと、その介入の仕方いかんによっては、これは政策金融それ自身の役割が阻害をせられるという大きな課題を一方に抱えるわけでございます。     〔渡部(行)委員長代理退席、委員長着席〕 といって、会計検査院のおっしゃる意味合い、それからまた重要性、これもよくわかりますから、政府といたしましては、検査院当局とも十分協議をしながら、いわゆる肩越し検査、これに最大限の御協力を申し上げるということで、最近はそれが各種の公的金融機関等にも浸透いたしまして、私は今日の実態は検査上それほどの支障が生じておるというようには見ておりません。いずれにいたしましても、政府としては、ただいまお答え申し上げましたような趣旨に沿って、会計検査が実態的な効果を上げるような措置について検査院当局と協力をして対応しておる、かように御理解をしていただきたいと思います。
  97. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 政府にはそれなりの考え方はあるでしょうけれども、また国会の側あるいは国民の側には、検査院の機能をさらに強化してもらいたいという考え方は依然として残っております。国民の間にはあると思います。ですから、現在直ちにできないということであれば、これはやむを得ないわけでありますけれども、少なくとも国会において十三回も決議をされたというこの事実はやはり重いわけでありますから、政府もひとつその点をお忘れなく、今後の政策の中でその趣旨に沿った政策を展開していただきたい。そしてまた、この趣旨を総理にもお伝えをいただきたいわけであります。  次に、衆議院の定数是正の問題でありますけれども、これは既に論議をされ尽くされておりますけれども、一向に進まないということであります。これは、現在の衆議院の存在そのものが違憲の上に立っておるということでありますから、大変な事態でありますけれども、これについて、その是正が遅々として進まないという事実があるわけであります。そこで、大臣初め政府はこの問題についてどういう受けとめ方をしていらっしゃるのか、それをまず伺いたいと思います。
  98. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 昨年の国会等の経緯の中から、議長さんの見解も出され、そしてそれを受けて衆議院でも議決をなさいまして、速やかにこの定数是正を行う、こういうことになったわけでございます。そういうようなことを踏まえまして、現在国会対策委員会等を中心に話し合いが与野党間で持たれておるということも承知をいたしておるわけでございます。  党としましては、党の中でこの問題に対応してのいろいろの考え方の検討も鋭意今進められておる状況でございます。それで私どもといたしましては、やはりそれなりにこれは重要な国政上の課題でございますから、政府も御協力を申し上げなければならぬことは当然でございます。ただ、いずれにいたしましても、今違憲状態が継続しておるわけでございますから、これはやはり政治に対する国民の信頼という点から見ましても、何とかひとつこの国会で速やかな是正措置が講ぜられるように各党間でひとつ十分打ち合わせをいただいて、議長さんの昨年来の御出馬等の問題もありますから、そういった中でぜひ解決をしていただきたい。その際、自由民主党としましては、これは各党のグラウンドルールづくりの問題でございますから、自由民主党が突出とでもいいますか、先走るとでもいいますか、そういうことは差し控えて、できる限り各党間の話し合いの中でひとつ解決をしていただきたい、これが私どもの念願でございます。
  99. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この問題は既に論議が尽くされておるようでありまするけれども、一向に事実は進まないということであります。これは何といっても、政権党である自由民主党さん、そしてその総裁である中曽根総理大臣のもっともっと積極的な対応が必要ではないか。各党間の話し合いといいますけれども、それでは自民党さんの意思統一が完全にできているのかどうか、これは我々にはわかりませんけれども、まずそれが先決問題だと思うのです。  それからさらに、今までの話し合いの中で、二人区をどうするかということが最大のネックになっておるわけですね。ですから、その問題についてまず自民党がどうされるのか。これをお互いに、自民党さんは二人区だ、野党は反対だということで、そこのハードルを越えることができなければ、これは解決のめどが立たない。ところが、諸制度あるいは法律というのは、特にその法律なり諸制度なりを改正をするという発議なり提議がなければ、これは現状維持が原則でありますから、三人から五人の中選挙区制を守るということが現状維持の原則からしても当然のはずでありますよね。ですから、そういう原則のもとに、いかにしてこの今のネックを乗り越えるかということの努力をすべきでありますけれども、その努力を中曽根さんも余りなさっていないと思わざるを得ないわけであります。  そういう点で、閣内の重要な位置にいらっしゃる長官でありますから、ぜひひとつ、各党間の話し合いに任せる、あるいは議長に任せるということではまさに責任逃れ、そういうことではなくて、総理あるいは長官内閣が一致して推進をするという姿勢をとらなければ、これはいつになっても解決しないと思いますよ。その点でどういう御決意であるか、伺いたいと思います。
  100. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 仰せのように、この定数是正は速やかに是正をする必要があると、私どもさように考えておるわけでございますが、私は総理の身辺で毎日仕事をしているわけでございますから、総理もこの問題については党の執行部等に対してもしばしば発言もせられ、党の執行部はそれを受けて、大変問題が難しい問題であるだけに、執行部もいろいろ御苦心なさっているようでありますが、自民党としてはそれなりの検討を進めていただいておるものと、私はかように考えておるわけでございます。  なお、その際に二人区をどうするかという問題、これはまさに大きな論点の中心であろうと思いますが、私どもとしては、それをも含めて党でも御検討を今進めていただいておりますし、それから同時に、各党間の協議の場でも、やはり二人区をも含めた問題としてこれをどう扱うかということで各党間の話し合いを積極的に進めていただいて、ともかくこの国会で何とか是正措置を講じていきたい、党としてもそう考えておりますし、総理もそれを念願しておるのが実情でございます。
  101. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 二人区を含めて検討されるということでありますけれども、政府あるいは自民党が二人区について譲歩しないんだ、あくまで頑張るんだということであれば、このハードルを越えることはほとんど不可能に近い。ですから、その二人区の扱いを当然含めてということは、あくまで二人区についての譲歩をしないということではなく、譲歩することをも含めて検討しなければいけないと思います。その点はどうなんですか。二人区、あくまで頑張るとおっしゃるのですか、それとも譲歩をも含めてこれから検討するというお考えですか。
  102. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 二人区を含めてというのは、自民党の主張は御案内のとおりでございますし、野党の御主張は私ども承知をいたしておりますから、それら一切を含めて話し合いをしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  103. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、重ねてお伺いしますけれども、二人区についても柔軟に考える、こういうことですか。
  104. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 それらを一切含めてひとつ話し合いをしていただきたい、こういうことでございます。
  105. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 二人区を含めて柔軟な対応をなさるということでしょう。そういうふうに受け取って、大変難しい問題でありますけれども、このハードルを越えて、ぜひ今国会で実現をしていただきたいとお願いをいたします。  それから、時間がなくなりましたけれども、今国は、国の一般財産を含めて、国鉄の土地を含めて土地を処分しようとする方向にあるわけですね。民活というような名分もあるでしようけれども、不急不要の土地はどんどん払い下げるという方針のようであります。それから国鉄についてもそういう方針を出していらっしゃるわけでありますけれども、これについては国民としても大変疑問があるわけです。具体的な例で言えば、最近、西戸山開発株式会社に対して、国は近傍類地の値段の約半額で払い下げをしておるわけです。この詳しい点についてはきょうは触れることはできませんけれども、そういうことで国民に大変疑惑を与えておるわけであります。  国有財産、これは国民の財産でありますから、当然時価でなければいけない。あるいは競争入札によって、入札の価格は時価以上であっても一向に差し支えないわけであります。ところが、土地政策の上からいって、地価の高騰を招くということで、近傍類地あるいは適正な価格あるいはそれ以上では実際にはやるべきではないという意見が一方にあります。こういうことで、どちらにしても、安くても高くてもだめなんだということですね。  これでは、国民の最大の財産である土地をどうするのかということについて大変迷わざるを得ないわけでありますけれども、国の財政というのは、予算というのはフローの性格を持っておりますから、入ったものは全部その年度には出てしまうということでありますけれども、一方土地というのは、長い間かかって一つの固定資産形成という形で国家財政の中に蓄積をされてきた貴重な財産ですね。ですから、国有財産については、これは国だけではなくて地方自治体もそうでありますけれども、公共財産、特に土地については処分すべきではないというのが、国あるいは地方自治体の財政の原則だと思うのですよ。現在確かに国や国鉄の窮状はよくわかりますけれども、国有財産及び国鉄の財産は軽々に処分すべきではないと考えますけれども、長官はいかがですか。
  106. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 まず最初の国有地、国鉄有の土地も含めてですが、資産売却の際に一番肝心なことは何か、国民の目から見てガラス張りで公正に売り払いが行われる、これをどう担保するかということであろうと私は思います。国鉄等については審議会等の第三者機関をつくりましてきちんとやりたい、こう思っておるわけでございますが、おっしゃるように、高く売ると近隣地価に悪影響が出る、安く売ると一部の者に得をさせたのじゃないか、これは値段の決め方の大変難しい問題でありますが、要は公明、公正な処理であったかどうかということが基本であろう、私はこう考えております。  なお、その次の国有地というものは国鉄の土地も含めてめったやたらに売却すべきものでないという新村さんの御主張はよくわかります。もちろん、国有の土地というものは国民共有の財産でございますから、やはり第一義的にはこれは公用あるいは公共用に優先的に使うべき筋合いめものであろう、私はこう思います。しかし、さればといいながら、大都市の中で広大な国有地が未利用のまま十年、十五年放置せられてあるという状況は、これはやはりいかがなものかな。今日のようなこういう財政の実情でございますから、これはやはり適切な処分をすることによって民間の活力を活用していくということも必要ではなかろうか。  また、国鉄の所有土地につきましては、もちろん新会社等の事業用の資産はそれなりにきちんと残してあげなければならぬと思いますけれども、これまた膨大なる土地を事業用資産外にたくさん持っていらっしゃる、しかも国鉄の過去の債務は三十七兆三千億という多額に上る、これはいろいろな改革をやっても最後に残るのは、監理委員会の答申を見れば約十七兆円前後が国民の負担としてかかってくるということであるならば、今のあの計画の中にある五兆八千億というものはできれば上積みをして処分をしまして、そして最終的に国民の負担になる金額を軽減するという措置も必要ではなかろうかな、私はかように考えます。  新会社が引き継ぐべき資産と売却用の資産の区分けをどうするか、これもまた第三者機関で、だれが見てももっともではないか――新会社の立場に立てばできるだけ抱え込んでそれを売りたい、こういうことでしょう。しかしながらそうはまいらない。やはり清算事業体の方として、これは最終に残る国民負担を軽くする意味においてできる限りそれらの土地を売却しなければならぬ。これはお互い利害が違いますから、そこをどのように区分けをするか、ここらもやはりガラス張りでやりたい、それについては、これも審議会を設けまして、国民の目から見てなるほどな、こういうように思われるような措置を講じていきたい、かように考えておりまするので理解をしていただきたいと思います。
  107. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  108. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で新村君の質疑は終了いたしました。  次に、中川利三郎君。
  109. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 日本撚糸工業組合連合会幹部らの不正事件についてお聞きいたします。  既に新聞などでも報道されていますように、この事件の特徴は、連合会の一部の幹部が国の資金を投入する政策融資を食い物にしている、こういうこととあわせまして、小田前理事長らが繊維族と言われる国会議員多数に政治献金をしていること、さらには撚糸工連の監督官庁である通産省の役人への接待を頻繁に行っていることだと言われております。  撚糸工連は、御承知のように中小企業団体の組織に関する法律、いわゆる団体法に基づいて設立された認可法人でありまして、役員及び職員のわいろについては団体法百三条以下で厳しく罰則規定が設けられているなど、他の法人と違いまして公的色彩が非常に強いわけであります。  このような法人が国から巨額の融資を詐取したわけでありますので、この点について、この事件が起こった原因ですね、どこにあるか、通産省のお考えを聞いてみたいと思うわけでありますが、時間が非常に少のうございますので、簡にして要を得て御答弁をいただきたいと思います。
  110. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 中小企業行政につきましては、中小企業団体の機能を活用することが、やはり非常にたくさんの企業を相手にいたしておりますので必要不可欠でございますが、それだけに先生御指摘のような規定等も設けられておるわけでございまして、団体サイドでの責任感といいますか、矜持といいますか、誇りといいますか、そういったものが欠けていたということが一つだと思っております。  それからもう一つは、何といいましてもそういう心構えをつくらせること、また団体サイドでの業務のチェック体制につきまして、こういう事態が起きておるわけでございますので、何にいたしましても欠けておったところがあったと申さざるを得ないわけでございまして、私どもの監督責任の重さも痛感をいたしておる次第でございます。
  111. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この理事長の小田その他の者は、繊維業界の不況対策のために設けられました設備共同廃棄事業の融資制度を悪用したものであります。聞くところによりますと、設備共同廃棄事業の融資は、通産省、中小企業庁、関係都道府県、中小企業事業団、商工中金の五者の構成で指導会議なるものをつくって、設備廃棄事業について各団体の申請を受けて決定する。通産省、このとおりですか。
  112. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおりでございます。
  113. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そのとおりだとする中でこういう問題が起こったということは、重大だと思うのですね。つまり私、言いたいのは、通産省、ただ単に撚糸工連の監督官庁、そういう責任だけではなくて、融資の最終決定権者としての責任は重いものだと思うのですね、指導会議の中にも通産省入っているのですから。しかも小田らの犯罪の手口、虚偽の申請で不正に融資を受けたことを見ますならば、通産省は十分チェックしないで融資をしており、その責任は重い。このことはお認めになったわけでありますが、しかもこの組合は、五十三年度及び五十四年度両方とも会計検査院から不正融資の疑いを指摘されて、一億円余りを返済したという前歴もございますね。  これらの背景には、審査体制の甘さだけでなくて何かあるんじゃないかな、こういう疑惑さえ思わざるを得ないのでありますが、逮捕される前に小田が新聞記者のインタビューでこう語っておりますね。これは二月十三日の朝日新聞でありますが、「通産大臣が就任した時にはそれなりのお祝いをしてきた。以前、五十万円を贈ったことがある。今回の内閣改造でも出したらどうかという声が出たが、こういう時期なので控えた。局長クラスだと、それなりのお祝いの場をもうける。課長クラスはもっともっとささやかな席をもうけたにすぎない」、こういうことを堂々と逮捕前にインタビューで記者に語っているんですね。  また、専務理事をやっておりました井上も、これは二月十四日の毎日新聞でありますが、「夕方、役所に差し入れを持って行ったほか、飲み屋に連れ出すのは私の仕事。OBの私が相手だと心を許して豪快に飲む人もいた」、こういうことを述べているわけでありますね。撚糸工連の最高幹部二人がいずれも、許認可権者である通産省の役人を接待していることをこのような格好で暴露しているわけでありますね。  したがって、私お聞きしたいことは、通産省は撚糸工連から接待を受けていた人がいたのかどうか、この点を調査したかどうか、このことをお聞きしたいと思うのです。
  114. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 私ども、まず御指摘のようないろいろな報道がございますので、関係者が逮捕されます前に事実関係を関係者から聞くべく努力はいたしましたけれども、結果的には状況を十分聞き取ることはできませんでした。説明を回避されたというのが実情でございます。  なお、私どもの関係のことにつきましては、人事サイドにおきまして関係者から状況を聴取いたしております。担当者等の交代の際の歓送迎会というような例はあるようでございますけれども、いわゆる顔合わせあるいは儀礼の範囲を超えるものはないというぐあいに判定をいたしておるというぐあいに承知をいたしておるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、私ども公務員は厳に常に身を慎んで、いやしくも国民の疑惑を招くことのないよう心がけねばならないことは当然でございまして、今後ともその点は厳に心していかなければならないと思っておる次第でございます。
  115. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、このような関係の理事長、専務理事が堂々とインタビューで述べているのですから、通産省の中に調査したかどうかということを聞いたんですよ。ところが、あなたのお答えでは、いろいろ聴取した、お聞き取りしたということなんです。調査したかどうかということを聞いているんですよ。ですから、その点はやらないということがはっきりしたわけであります。やっていないということ。  しかも今のような御答弁、甚だ心もとない御答弁でありまして、新聞二社に対して同じようなことを接待した側の人物が言っている以上、通産省は過去にさかのぼって、私申し上げたいのは、撚糸工連から接待された人がいたのか、あるいは金品を受け取った人がいたのか、調査する必要があるということを重ねて申し上げたいと思うわけでありますが、特に通産省との癒着の問題とあわせてさらに問題なのは、撚糸工連の政治献金でございます。  撚糸工連の政界工作のねらい、目的が融資制度の維持拡大と言われていますね。昨年十二月四日付の毎日新聞の報道、ここで小田という男は政治献金について、「業界にとって大きな負担になっていた電気税、原糸の輸入制限など業界の懸案のたびに、政治家に支援を頼んだ。」これが十二月四日の毎日新聞の記事であります。それから二月十三日の読売新聞の記事では、井上という男は、「業界の発展のために、産地組合の幹部を通じて贈っていたのは事実だ。」こう言ってはっきり断言ししているわけでありますね。  五十五年五月三十一日、日付を私は限定したわけでありますが、撚糸工連正副理事長会という会議がございました。数十日後に控えた衆参同時選挙に、小田前理事長らが作成した献金リストに基づいて、多数の政治家に金をばらまくことを決定した。このことでございますが、このリストは会議後廃棄しろと小田から指示されております。この献金リストの中で献金額の多い人は数百万円にも達しているとのことである、また、本部の金を地元組合の人が持っていくとも証言していました。なぜこういうことが言えるかというと、この話を私はこの会議に参加した人から聞いているからであります。井上も、選挙時の献金につきましては、マスコミとのインタビューで、本部と地元組合が分担して地元責任者が持参したと語っています。  法務省にお聞きするのでありますが、法務省はこれらのことを把握していますか。
  116. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  ただいまのお尋ねは、現在検察当局において捜査中の事案に関する中身についてのことでございますので、現在私の方からその中身について申し上げますことは差し控えさせていただきたいと思います。
  117. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 把握しているかどうかということをお聞きしたわけでありますが、それもお答えいただけなかったわけであります。  それではもう一歩進めまして、選挙時における撚糸工連の献金攻勢はかなり幅広く行われた形跡がうかがえるのでありますが、私の手元には衆議院議員選挙時における各候補者の選挙運動費用の収支報告書、それが掲載されている各県の県公報がございます。参考までに、委員長のお許しをいただきまして、委員長と官房長官にこれ一つずつ渡していただけますか。
  118. 角屋堅次郎

    角屋委員長 よろしゅうございますか。――よろしく。
  119. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 昭和五十八年十二月十八日執行衆議院議員選挙、これは福井県の選挙区でありますが、ここには福井県撚糸工業組合十万円、平泉渉という方がはっきりと県の公報に載っているわけですね。この方は今経企庁長官だと思うのでございますが。さらには宮澤喜一、広島県撚糸工業組合から同じとき十五万円の寄附をもらっている。石川県公報から見ますと、瓦力、石川県撚糸工業組合から二十万円の寄附を受けております。それから、これは現職ではございませんが、久保田円次、この方は日本撚糸工業組合連合会から十万円の寄附を受けております。さらに、昭和五十五年の衆議院選挙の際は、宮澤喜一氏が日本撚糸工業組合連合会から十万円、それから久保田円次氏が同じく日本撚糸工業組合連合会から十万円、それぞれここに書かれているわけであります。  これは公選法第百九十九条二項の「特定の寄附の禁止」にも違反してくる疑いがあると思うわけでありますが、私が今指摘しました五十五年の同時選挙での選挙献金の裏づけが、ごく一部ではありますけれども証明されたということになろうかと思うわけであります。  巷間伝えられているところの繊維族の御三家、どういうわけか繊維族の御三家というものがあるようでありまして、この人たちや週刊誌で名前が出ている人たち、さらには、五十五年選挙時での献金リストにも名前が上がっている人たちの選挙収支報告書や自治省届け出の政治資金収支報告書をいろいろ子細に見ましても、撚糸工連産地組合の名前での寄附は見当たりません。そこで、小田や井上たちが政治家に寄附したことを公然と認めているにもかかわらず、また、それら疑わしき人物がそれなりにもらっていることをいろいろな方法でしゃべっているにかかわらず、その金を受け取った方は届け出すらしておらないということになろうかと思うわけであります。  そこで、法務省にお聞きするのでありますが、撚糸工連の政治家に対する献金も解明すべきだと私は思いますけれども、その決意をお伺いしたいのであります。
  120. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生のお尋ねにつきましても、現在捜査中の事件につきましての内容について、また今後の捜査過程にわたる事柄でございますので、私の立場から申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  121. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 捜査過程でその問題も申し上げるわけにはいかないということでありますが、社会の正義の立場で、法務当局はこれまでも一定の国民のそういう期待を担っておるわけでありますので、単なる小田個人の詐欺の問題だけではなくて、政治家に対する献金ですね、この問題こそ十分な力を尽くして、国民に納得させるような手だてを尽くすべきであるということを私は申し上げたいと思います。  それでは、最後に後藤田官房長官にお聞きするのでありますが、撚糸工連に融資されました金は国の一般会計から中小企業事業団に出資されたものでございまして、事業団は国の施策に基づいて国の出資金で事業を行っており、まさにこのお金というのは実態として補助金の性格を持っているわけですね。この金を不正に取得し、政界工作に使う。献金の性格を問わず献金を受け取った政治家には道義的にも問題があると思うわけでありますが、政治の浄化が叫ばれている今日、政治家みずから襟を正さなければならない。これらのことを含めて長官の御意見をお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。
  122. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今回の撚糸工連の事件はまことに遺憾な出来事である、かような認識でございます。事件そのものにつきましては現在検察庁で捜査中でございますから、検察当局としては事実に即し、現行法の解釈に即しながら厳正な措置がとられるもの、かように私は考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、撚糸工連は通産省の認可を受け、構造改善事業といった公的な性格を色濃く持った組合でございます。そういったことでございますので、こういった事態が再び起きないように、私は、通産当局がこの事件を一つの教訓として、今後ともこの種組合に対する指導監督を十分行うように期待をし、通産省もそのとおりおやりになっていただけるもの、かように考えているわけでございます。
  123. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  124. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で中川君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君。
  125. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、この決算の中で、特に大蔵省決算の中で、きょうは大蔵大臣にパートの婦人労働者の減税の問題について質問をいたしたいというふうに思います。  最初に私がお伺いいたしたいことは、大蔵大臣に対して、夫が配偶者控除を得られる妻の収入の限度額を百二十万円まで引き上げる、こういう措置をとれないか、こういうことが焦点でございます。こういうような考え方、発想につきまして、大蔵大臣としてはこういうお考えをお聞きになったことがあるかどうか、まず最初にちょっとお尋ねしたいと思います。
  126. 竹下登

    ○竹下国務大臣 パート問題につきましては、五十九年の国会でいろいろ議論がなされました。したがって、その議論を全部正確に税調にお伝えしまして、一番近いところでは昭和五十九年十二月十九日の答申がございます。それは、「主婦のパート収入が一定額を超えると、世帯の手取り額が逆に減少することから、労賃が低く抑えられる、あるいは年末において就労を自制するといった現象が生じているので、現行の所得要件の水準や仕組みの見直しを行うべきではないかとする意見がある。これについては、中期答申において指摘したように、主婦であっても一定以上の所得があれば相応の負担を求めるのが当然であり、また、税制の簡素化の観点から、当面、現行制度の枠内で対応することで適当であると考える。」  それがいわゆる現行制度でいろいろ工夫をいたしていただきまして、国会で議論をされて、結局給与所得控除の最低控除額を、たしか原案は五十五万にしておったような気がいたしましたが、それを五十七万として、基礎控除三十三万との組み合わせによって九十万ということが出たという経過がございますから、今小川さんのおっしゃるような議論がなされて、一番近いところでは五十九年暮れの答申になっておるということであろうと思います。
  127. 小川国彦

    小川(国)委員 一般的にこうしたパートの九十万の課税限度額の問題についての議論はなされてきていると思うのですが、私はきょうは一般的な減税要求と角度を変えまして、新たな視点から、パート労働者、特にパートの主婦労働者に対するもう少し政府の恩恵ある行政措置というものがとれないだろうかというような角度から質問をしたいと思うわけであります。  その前提として、まずパートタイマーというものが一体今どのくらいの数がいるのか、このことについて総理府統計局の方に、女性のパート、アルバイトの数、その中に占める主婦の数についてちょっとお伺いしたいと思います。
  128. 大戸隆信

    ○大戸説明員 昭和五十七年の就業構造基本調査で、パート、アルバイトというふうに勤め先で呼ばれている女子雇用者の数はおよそ四百万ぐらいでございますが、ちょっと正確な数が手元にございません。ただ、その中で主婦がどのくらいという御質問がございましたけれども、主婦については数字がございません。女子全体でございます。
  129. 小川国彦

    小川(国)委員 女子のパート、アルバイトの数は、総理府の統計の中で私ども三百十二万というふうに承っておりますが、この数字は統計局で把握されてないのですか。
  130. 大戸隆信

    ○大戸説明員 先ほどの数字でございますけれども、総数で三百九十万二千人ということになっております。失礼いたしました。
  131. 小川国彦

    小川(国)委員 その中で主婦、すなわちサラリーマンの妻の働いている数は三百十二万人というふうになっておりますが、この数字は確認されてないですか。
  132. 大戸隆信

    ○大戸説明員 ちょっと、手元の数字ではサラリーマンの妻という区分はございません。女子全体でございますけれども……。
  133. 小川国彦

    小川(国)委員 女子全体が三百九十万、こういうことでございまして、この数字についてはそちらの方の把握がないようでありますが、およそこの中の八割が主婦のパート、こういうふうに言われているわけです。  それからもう一つは、三百九十万の八三%に当たる三百二十四万人の方が九十九万円未満の所得である、この数字については把握されておりますね。
  134. 大戸隆信

    ○大戸説明員 同じ統計で、御指摘のように年間百万円未満の収入の者が三百二十四万人ですか、ということになっております。
  135. 小川国彦

    小川(国)委員 およそこれが主婦のパートであるというふうに言われているわけでありますが、そこで、厚生省に伺ってみたいと思うわけでありますが、ことしの四月一日から国民年金法の改正によりまして九十万円以上の収入があれば入らねばならない国民年金保険料は、月額七千百円、年額で八万五千二百円。いわゆるパートの主婦が九十万円の所得を超えますと、ことしの四月一日からは八万五千二百円の国民年金の保険料を払わなければならない、こういうことになると思うのですが、この点いかがでございますか。
  136. 谷口正作

    ○谷口説明員 お答え申し上げます。  この四月からの新しい国民年金制度についてのお尋ねでございますが、お話ございましたように、年収九十万円を御主人に扶養されている認定の基準といたしておりまして、年収が九十万円を超えました場合には国民年金のいわゆる第一号被保険者ということになりまして、御自分で保険料を負担していただく。その場合の年額は、この四月から月額七千百円、十二カ月分で八万五千二百円ということに相なっております。
  137. 小川国彦

    小川(国)委員 パートで働く主婦が今度九十万円を超えると、新たな負担として年間八万五千二百円ふえてくるわけですが、さらにもう一つ、健康保険の方で、パートが九十万円を超えて収入が百万円になった場合は、保険料は年額二万一千円、こういうふうに聞いておりますが、この数字はそのとおりでよろしゅうございますか。
  138. 奥村明雄

    ○奥村説明員 お答えを申し上げます。  サラリーマンの妻がパート労働をしておりまして、それで年収九十万円を超えますと、被用者保険の被保険者になる場合と国民健康保険に加入する場合と両方ケースがございますが、国民健康保険に加入する場合を考えてみますと、御承知のように、各市町村で保険料額が違ってまいりますが、仮に東京都の特別区ということで算定をいたしてみますと、百万円の場合には、先生御指摘の二万一千円ということになるわけでございます。
  139. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、パートの主婦が九十万円以上の収入になってまいりますと、夫から独立して年金、健康保険に加入しなければならない、こういうふうになりますと、この場合の国民年金の保険料八万五千二百円、それから国民健康保険保険料が二万一千円、この十万六千二百円というものが新たに主婦の負担ということになってまいりますね。  それからさらに、税の方で見ますと、夫の方へのはね返りが出てまいりまして、これはパートの妻本人の税金だけではなくて、妻が仮に九十万円から十万円ふえて百万円の収入を得たとしますと、夫の収入にも重大な負担が生じてくるわけです。例えば、夫の年収を四百万円、妻と子供二人の標準家庭を前提として考えますと、妻の年収が九十万円を超えて百万円になった場合、妻は夫の被扶養者の対象から外れるために、夫の所得税が四万四千円、住民税が二万五千九百円、合計六万九千九百円ふえることになります。  さらにまた、通常の場合、妻に九十万円以上の収入がある場合には、扶養手当が打ち切りになる場合が多くございまして、国家公務員の場合、この減収が二十六万三百円ということになります。そうすると、妻のパート収入が九十万円から百万円に十万円ふえただけで、夫の年収は三十三万二百円減収になってしまいます。この税金の負担、扶養手当の打ち切り、それに保険料負担を世帯全体で見ますと、妻の負担分は十万三千三百円、それから夫の減収分は三十三万二百円、合計四十三万三千五百円ということになるわけです。  ですから、今三百万と言われる全国のパートが九十万円で仕事をやめなければならないというのは、九十万円から十万円余計に働いたがために夫婦で四十三万三千五百円の負担増になる、四月一日からそういうふうになるからこういうふうに判断されるのですが、大蔵大臣はこの判断についてどういう御見解をお持ちでしょうか。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の家計支出の問題、私はおっしゃるとおりであろうと思いますが、税制の方でどう対応するかということになりますと、やはり税制というものはそれなりのきちんとした筋が通っていなければなりませんので、そうした個別的事情を一つ一つ勘案して税の仕組みの中へ組み入れていくというのは、なかなか難しい問題だなというふうに感じます。
  141. 小川国彦

    小川(国)委員 実はこのほかにまだ問題がございまして、夫の減収分というのは、夫婦の減収分四十三万三千五百円だけではなくて、将来の年金の減額、退職金の減額にまでなってまいります。そのために、奥さんが九十万円以上働くということについては、御主人の方から苦情が出る、不満が出る。もちろん夫婦間の収入が減るわけですから、夫婦ともにそこは考えて、もう九十万円以上働かないということになってしまうのです。  そのためにどういうことが起こるかといいますと、パートを使っているのはもう圧倒的に中小企業なんです。大体三十人未満のところが半分を超えているわけです、パートを使っているところは。半分から七割ぐらいになっているかと思いましたが……。そういう状況のために、例えばパートが月十万円で年間百二十万になってしまうといけませんから、九月になればもうパートはやめてしまう。そうすると、中小企業の商店やいろいろなところで、事業主は、暮れの忙しいところへきてパートにやめられてしまう。しかしパートは、九十万を超えたら、今もおっしゃるように、四十五万円も負担がふえてしまうわけですからこれはもう行けない、こういう現実がある。  しかし、世界の趨勢は、北欧にしてもイギリスにしてもフランスにしても、パート労働者が全労働者の半分を占める時代になってきている。そういう状況を考えてみると、日本のパート化もどんどん進んでいく、それが有夫の低所得の方々である。こういうことを考えてみると、せめて百二十万までは働かせてもらいたいというのが主婦の願いであって、そして、ふえた三十万円の分の税金は負担してもよろしいという考え方の主婦が多くなった。ただし、扶養者控除を外さないでほしい、四十五万も減収になるようなことはしないでほしい。  私は、これをいろいろな角度から研究をいたしました。この一年来、大蔵当局の皆さんにもいろいろ伺った。例えば、九十万の限界を一万円でも限度額を上げると、国としては五十億の税収減になる。今度の野党の要求で百二万円という要求が出ています。これを仮に十万円その限度額を上げたとすると、国は五百億の負担をしなければならぬということになるのです。  私は、そういう減税要求の問題は野党共同提案でやっていることで、これはこれとして、これから政府の中で考えていかなければならない問題だと思いますが、それと別な角度で、この主婦のパートを百二十万まで働かせることができるというふうに、検討した結果、そういう結論を一つ導き出した。それは、現行の所得税法の第二条三十三号のロにおいて、控除対象配偶者の要件の定めというのがありまして、「その所得の全部が給与所得等である者で、その合計所得金額が三十三万円以下であるもの」、こういう規定があるわけなんです。これでいきますと、従来の夫の控除を受ける配偶者控除額の三十二万円、これを引き上げるということは私は言っていないわけです。それとは別に、この規定のいわば控除対象配偶者の要件を定めている限度額を、三十三万円というようになっているところを六十三万円というふうに改正をするならば、それだけで主婦に百二十万働かせることができる。そのために国の税収に与える影響というのは、私は、極めて微小なものではないか、こういうふうに判断しているわけなんです。  ですからこの点は、大蔵大臣を初め大蔵省もぜひ検討を願って、この所得税法第二条三十三号のロの規定の限度額を三十三万円から六十三万円に変える、こういうことでパートが、扶養控除も外れない、安心して百二十万まで働ける、中小企業の安定にもなる、こういう考え方をひとつ御検討願えないだろうか、こういう提言を申し上げているわけですが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  142. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の小川さんの言は、そういう社会的現象を政治的な視点でとらえた場合の工夫とでも申しましょうか、そういうことからの御議論であろうと思いますが、先ほど申しましたように、小川さんもおっしゃっているとおり、労賃が低く抑えられる、あるいは年末において就労を自制するといった現象が生じておる。これは確かに、答申にもあるところでございますが、「基本的には、まず、主婦のパートや主婦の内職を雇用政策上あるいは労働法制上どう位置づけるかという視点から取り上げて議論すべき事柄であり、更に税制上の問題としても、例えば配偶者控除のあり方や課税単位といった所得税制の基本的枠組みのあり方との関連において慎重に検討を行う必要がある」、これが五十九年十二月十九日の答申であります。  それで、各党でも税の専門家の方に寄っていただきまして、この問題はいろいろ議論をし、そういうことにつきましては、今抜本的な改正のための諮問を税制調査会へしたところでございますので、国会の議論を正確にこれにお伝えすることによってその審議にゆだねなければならないではなかろうかと思っております。  ただ、今の議論で一つだけ気がかりになりますのは、言ってみれば、日本の場合は稼得者に対して税がかかりますから、御婦人の方が九十万を超して百二十万になられますと、それは納税者になられて、しかし一方、御主人の方は配偶者控除が受けられるという、税制上の恐らく仕組みの問題での議論はやはり存在するではなかろうか。しかし、今やまさに税制調査会で抜本的な改正のための御議論を行っていただいておるさなかでございますので、正確にお伝えすることは当然の義務であろうと思います。
  143. 小川国彦

    小川(国)委員 私はここ数年来の減税の流れを見てまいりましても、減税については政府当局もいろいろと苦労なすってきているという経過を見ているわけです。しかも、五十九年でパート減税で百億円の減税を政府は行いました。このときには所得税法の給与所得控除の最低限度五十五万円を二万円引き上げた。これは租税特別措置法という形で引き上げた。しかし、今大臣がおっしゃるように、これを配偶者控除で考えるということは、現実の問題としては私は極めて厳しい状況があるのではないか、こういうふうに考えるわけです。ですから、この百億の減税を租税特別措置法というような特別措置で行ったと同じように、所得税法の改正の措置でそういう特別措置が講じられるのではないか。しかもこれは、私は、国の税収にはマイナスになるどころかむしろプラスになる、こういう見解を持っているわけです。  それで、仮に九十万円の主婦は、今夫の配偶者控除さえ外されなければ、百万円、百十万円、百二十万円ぐらいまでがパートのおよその限界になっておりますが、仮に百二十万まで働かせてもらえばその三十万に見合う税金は払ってもいい、こういう考え方を持っているわけです。ですから、私はむしろ百二十万にすることによって国は税収の面でもプラスになるんじゃないか、こういうふうに考えるわけでありますが、国の方では、仮に三十万まで、百二十万まで枠を上げたことによって減収額が出てくるのか、その数字は把握されておられるでしょうか。
  144. 大山綱明

    ○大山政府委員 今先生御提案のような三十万円の引き上げを行った場合に、いろいろな前提があるわけでございますが、控除対象配偶者のほかに扶養親族の所得要件も同様に引き上げる、こんな前提で数字をあえて置いてみますと、数百億円、五百億円ないし六百億円程度の減収になるのではないか。いろいろ大担な仮定を置いての試算でございますけれども、見当としてそんな数字ではなかろうかと思っております。
  145. 小川国彦

    小川(国)委員 その五百億か六百億の減収になるという根拠について、具体的に御説明を願いたいと思います。
  146. 大山綱明

    ○大山政府委員 その措置によりまして適用される人間の数、これを税務上のいろいろな統計から引っ張り出してまいりまして、それに一人当たりの控除額三十三万円、これを掛け算をいたしますとかいうようなことで計算をいたしております。詳細につきまして私も必ずしも数字を熟知している人間ではないのでございますので、今ここで詳細申し上げる数字を必ずしも一〇〇%持ち合わせておりませんが、今統計上は百五十万円以下の給与収入を得る者が三百数十万人いるとか、その中の九十万円から百二十万円の層の者がどのくらいの割合であるとか、そういうものをいろいろな統計を大胆につなぎ合わせました数字でございます。
  147. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと大山審議官説明が、私の方はもう既に先週のうちに事務当局と打ち合わせをして、私は、皆さんの方がこの私の提案によって政府が減収になるという考え方に対して、私の方は増収になるという案を持っているので、皆さんの方が減収になる根拠を明確にひとつ示していただきたいということを申し上げているわけですね。今の審議官の答弁は答弁になっておらないわけですよ。五、六百億というかなり目の子のことで言っておられて、しかもその中身を明確に示し得ない。これを項目的に、何でどのくらいの減額になるのか、じゃ、この減額の根拠の資料はお出し願えますか。
  148. 大山綱明

    ○大山政府委員 税務上の統計をいろいろ使っておりますので、お出しいたせるかどうか、また戻りまして、先生にも個別的に御説明ができるかどうか、少し検討させていただきたいと存じますが、いずれにいたしましても、給与収入九十万円から百二十万円の階層の方々の数、これを先ほど申しました三百七十万人のうちの約半分ぐらいではないかという数の前提を置きまして、それに三十三万円を掛け算をいたしたりいたしまして出した数字でございます。  この点につきまして、私どもは減収額の方の数字をただいま数百億と申し上げました。先生はこれに対しまして増収があるのではないかという御指摘でございますが、その増収の点につきましては、私ども試算をいたすデータを持っておりませんので、減収の分だけの計算でございます。
  149. 小川国彦

    小川(国)委員 三百七十万人という数字はどこから出てきたのですか。それから、その半分という数はどこから推定されているわけですか。
  150. 大山綱明

    ○大山政府委員 税務統計でございます。五十九年の民間給与の実態調査でございます。  それから、その半分というのは、その中に単身の世帯でありますとかそういったものがございます。その分布のいろいろ密度と申しますか、そういったものを、ちょっと手元に何をもとにというデータを持ち合わせておりませんけれども、その他のいろいろな資料からとって、大担に半分と申しておるわけでございます。
  151. 小川国彦

    小川(国)委員 そういたしますと、第二条三十三号の中には、事業所得、給与所得、退職所得、雑所得、こういうものが入っているわけでございますが、この分類ごとに分けた数字ですね、それはお出しになってもらえますか。
  152. 大山綱明

    ○大山政府委員 ただいま申しましたのは給与所得でございますが、あと内職所得者、これは家内労働者でございますが、それは事業所得者ということ、あるいはその他雑所得者ということでございますが、その程度の数字については持ち合わせておりますので、後刻御説明をさしていただきたいと思います。
  153. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、大臣お聞きになっていただきたいのですが、今お聞きになっていらっしゃるように、大蔵省の方は減収になる根拠というものを明確に示し得ていないと思うのですね。ですから私は、これは大臣の責任で新たに資料を出していただいて、大蔵省が減収になると言うなら、どういう統計、どういう数字に基づいて五、六百億減収になるのか、お示し願いたいのです。  私の試算に見る限りは、少なくともパートの給与所得者は九十万を超えたら、さっき申し上げたように十万ふえただけで四十五万のマイナスになるので、もう九十万以下に八〇%のパートが集中しているのです。したがって、九十万から百二十万の間に五〇%パートがいるなんということは信じられない。大蔵省の今言っている数字は信じられない。  ですから、私の方は、むしろ三百万人のパートのうちの三〇%、百万人の人が百二十万円の収入になって、そして三十万円の収入をふやせた。そして、所得税率一〇・五%を掛けたとしますと三百十五億円の増収になる。ですから、パートの奥さん方をもう三十万円ふやして百二十万まで働かせてあげれば、大蔵省は三百十五億の増収になるという試算を私は出しているのです。これに対して、大蔵省の方から出している減額の根拠、減収になる根拠というのは、残念ながら根拠がないと思うのですね。  大蔵大臣に、行司じゃないのですが、公平に――大蔵大臣は大蔵省の言うことばかり聞いているのじゃなくて、国会議員のこうした調査にも耳を傾けて公平な行司役として考えたら一体どうなのかということを、ここで答弁ができなくても、ぜひ検討していただきたいと私は思うのです。これは全国のパート労働者の願いだと思うのですよ。一般の勤労者は、夫婦二人で子供二人ぐらいですと、大体月二十万の税引き手取り、奥さんに月十万働いてもらって三十万円で初めて家計の最低生活が成り立つという状況のときに、この三十万をふやしてやるための措置というものをやはり考えていただきたい。  それから、これは私が言っているだけじゃなくて、政府の税制調査会も中期答申の中で、「パート問題については、当面は、給与所得控除と配偶者控除の適用限度額の組合せという現行制度の枠内で対処していくことが適当であると考える。」こういうふうに答申しているのですよ。私の提案どおりのことを政府の税制調査会も言っているので、ぜひこれは大蔵大臣においても……。  私どもも研究し尽くして、政府にマイナスになるのじゃなくてプラスになる、しかも働くパートにもプラスになる、中小企業にもプラスになる。三方一両損じゃなくて三方得をとる、こういうパートのための税制政策を考え出したわけでありますから、これは大蔵大臣にもぜひ前向きの形でお取り組み願えるようにお考えをいただきたい。ひとつ積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  154. 竹下登

    ○竹下国務大臣 恐らく小川さんは、九十万が大体みんな百二十万になって、それに人数を掛けて、そして一〇・五%の税率を掛けてそれを増収分と、こういう計算だろうと思うのでございますが、現実、本当にみんなが百二十万になるかどうかという問題もございましよう。九十万が百二十万にみんながみんななるというわけにもいかぬかもしれません。しかし、一つの計算の方法ではございましょう。それからもう一つは、配偶者控除を計算しますと、今度は扶養控除というのを一緒にして計算してかかるわけですね、減収分といたしましては。したがって、その辺の差し引きしたものはどこまで正確なものが出ますかは別として、今の意見を体して計算をさせて、資料等はまたごらんに供する、こういうことにしたいと思っております。  基本的枠組みの組み合わせでやるしかないよ、こういう答申はおっしゃるとおりです。しかし、今度はさらにそれを抜本検討でやるような方向に行くであろうと思いますので、したがって、原則にも書かれてありますように、パート、そして内職、それらの労働法上の位置づけも一つは考えなきゃいかぬだろう。それからもう一つは、仮に九十が百二十になりましても、百二十一になった場合にはまた同じ逆転現象が生じてくる、こういうこともございますので、追っかけっこみたいな感じになっていくこともあり得るのかなど。  きょうの問答等を分析いたしまして、税調にも正確に報告をいたします。
  155. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣の御答弁は食い違っておるのですよ。私は、パートは三百万人いる、パートは三百万人いますが、その中の百万人だけが三十万これから一生懸命働いてくださるだろう、その九十万から百二十万にふえた人たちが納める税金が三百十五億、こう言っておるのですから、パート全部は三百万、一生懸命働いて九十万から百二十万稼ぐパートは三分の一である百万をもとにして三百十五億。これも違います、大臣の答弁と。  それからもう一つ、私は配偶者控除や扶養控除やあるいは基礎控除をいじくれと言っておるのじゃないのです。それを動かすことは政府の税収減になるから、そこは動かさない。あくまでも夫が配偶者控除を得られる妻の収入の限度額の規定を九十万から百二十万に変えることで、政府の増収になり、なおかつ実効が上がるではないかと言っておるのです。  大蔵大臣、これは私も一年間かかって非常に勉強してきたことなんで、この三十分で大臣に理解してもらうのは大変なんですが、大臣もぜひこの案を検討願って、この政策に対してひとつ積極的な御理解をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  156. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が申しましたのは、扶養控除の問題と配偶者控除の問題は同じ扱いをしなきゃならぬであろうという意味で、今の計算の基礎に置いた答えではなかったことを申し上げます。  今の一年間勉強なすった問題、私も陰ながら聞いております。陰ながらという表現はちょっとおかしいですな。正確に部下から聞いております。そして、税理論の中で問題があるという点もあろうかと思います。すなわち、諸外国の場合のように二分二乗方式、家族合算方式の税制をとっておりませんので、したがって、一方で税を納める人、それが一方で配偶者控除を受けるという税理論という問題もあり得るなということも、実はその報告を受けたときにつけ加えた勉強の課題として聞いておるわけであります。なるほどなというふうな感じで受けておりますが、その問題等なら、さらに正確に私どもの方も分析させていただきまして、その議論を税調の場で正確にお伝えして御検討の対象になり得るであろうというふうに考えます。
  157. 小川国彦

    小川(国)委員 私もこれからさらに勉強したいと思いますが、大蔵大臣もなお一層総理気構えで御勉強願って、ひとつこれに対するいいお取り組みをくださることをお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  158. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で小川君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  159. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより昭和五十七年度決算外二件について締めくくり総括質疑を行います。  中曽根総理初め御出席の大臣の皆さん、本日は決算委員会の審議に御協力ありがとうございます。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  160. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 総理にお伺いをいたします。  時間が大変短いものですからいきなり簡単にお伺いいたしますけれども、今しきりに選挙のうわさが出ております。ダブル選挙があるのではないかというようなことが言われておりますけれども、総理のお考えはどうであるか。そしてその注釈が、定数是正が行われなくとも、定数是正を国民に問うためにこの際選挙をすべきだ、こういうことが伝えられておるわけであります。その点について総理の御見解をいただきたいと思います。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、解散は考えておりません。  定数問題というものは、憲法第七条に規定する解散権とは関係ない。第七条による解散権というものは内閣に与えられた非常に重大な権能でございまして、国政の重大な場面において民意を問う、そういう最も重要な権能でございまして、これについては憲法上の他の制約はございません。法律によって憲法を制限するということはできないと考えております。
  162. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 別の観点から……。  そうしますと、現在の国会は最高裁の判断によって違憲の状態にあるわけですよね。現在の院の構成そのものが違憲である、こういうような判断が下されておるわけであります。それに対して、論議はかなり尽くされておりますけれども、一向にその是正の手続が進まないわけであります。これについては、総理は、議長にあっせんをお願いをする、あるいはまた各党の話し合いに期待をするというようなことをおっしゃっておりますけれども、やはりこれは総理みずからが一大決意を持って臨んでいただかなければ、解決のできない大変難しい問題であると思います。総理みずからがこの問題について一大決意を持って臨んでいただかなければいけないと思いますけれども、いかがですか。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 定数是正問題は、昨年の臨時国会以来の国会に課せられた重大な責任課題でございまして、既に国会の決議もあり、かつまた議長見解も出されて、各党は議長見解に従うと応諾しておるわけでございます。しかも昨年の声明、国会の決議におきましては、速やかにこの是正を図ると書いてありますので、おっしゃるように、第一党の総裁といたしましても一大決意を持ってこれが是正を速やかに図るように努力いたしたいと思っております。
  164. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それには各党の合意がもちろん必要でありますけれども、政権党である自民党が完全に意思統一をして進まなければ、これは各党の協議といっても大変難しいと思うんですね。何といっても、総裁である中曽根総理が与党自民党のこの問題に対する意思統一を速やかに図るということが必要であると思いますけれども、その点については自信がございますか。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 選挙区制の問題は、国会共通の共同責任の重大問題でありまして、国民に対して国会は大きな責任をしょっております。しかも民主政治のグラウンドルールをつくるという重要な課題でございますから、各党各派の話によってグラウンドルールがつくられることが望ましい。そういう意味におきまして、過般の国会の経験にもかんがみまして、自民党だけが突出することは必ずしも適当でない、各党各派と話し合って共通のルールをつくり出すように努力してまいりたいと考えております。
  166. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 突出ではなくて、やはり議院内閣制のもとにおいては、この問題についても総理が一番重い責任を負っていらっしゃると思うんですよ。そういうことで、突出ではなくて、まず自民党の意思統一をするということが必要だと思うのです。  そして、この問題の最大のネックは、二人区をどうするかという問題に絞られておるわけですね。ところが、この問題に対する自民党、特に総理のお考えがどうであるのか、明示をされていない。やはり総理の責任においてこの難問を乗り越えなければいけないわけであります。その点はいかがですか。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 議長見解で何項目か示されておりますが、この議長見解を尊重し、これに従いまして、各党各派によってできるだけ早期に合意を成立させるように努力すべきであると考えております。
  168. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 総理の御答弁、大変上手であるし、一面では極めて抽象的でもあるわけでありますけれども、そうしますと、これは二人区で与党、野党が頑張っていたのでは絶対に解決のつかない問題でありますが、二人区について総理が自民党の世論をまとめて、この問題についての野党との妥協を図らなければ絶対に解決しないと思います。その点で、二人区についてどう対処されますか。それを伺います。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 議長のお示しになった数項目の中には、「小選挙区制はとらない」、たしかそういうように書いてあったと思います。この言葉は、議長の見解として出されている言葉でありまして、尊重すべきであると考えております。
  170. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 さっぱり具体性がなくてわからないのですけれども、二人区についてどう対処されますか。二人区については、今のところ与野党の激突の最大の問題点になっておるわけであります。この問題を解決しなければ、定数是正は何年かかっても絶対に実現しないということになります。その点についてお伺いしたい。  それからまた、この定数問題については、一部の人たちが被害意識を持っていらっしゃるようでありますけれども、そうじゃなくて、まず、十増・十減になるか九になるかわかりませんが、緊急避難的にその措置はとるけれども、国勢調査の確定値が出た場合には抜本改正をするということを総理もおっしゃっておる。ですから、抜本改正の内容がどういうものであるかという構想も同時にお示しにならなければ、一部の人たちの被害意識に押されて一向に先に出ないということにもなるのではないかと思います。そこらいかがですか。抜本改正をどういうものにお考えてありますか。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先般の国会決議並びに議長見解及び各党の大方の御意見は、暫定値によってできるだけ速やかに改革を行う、しかる後に、今度は本式の統計が出た場合にそれを基準にして抜本的な改正を行う、そういうような方向であったと思います。私もそういう方向は適当であろうと考えて、言明もしたところでございます。  そういう考えに立ちまして、各党各派が合意を形成するように努力していくべきである。自民党は多数党でございますけれども、国会に議席を置く有力な野党である社会党や公明党や民社党や共産党やあるいは社民連やそのほかの皆さんも十分に御意見を述べ合い、お互いがお互いの立場を尊重し合いながら合意形成に向かう、これが議会政治のグラウンドルールをつくるのに適しているやり方であると考えております。
  172. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  173. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で新村君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  174. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まず、総理にお伺いいたしますが、今の流れからいって、解散権の問題についてまず最初にやっておきたいと思います。というのは、解散権というのはよく伝家の宝刀だとかいろいう言われておりますが、そういう権能が総理にあるだろうか。憲法を読んでおる限り、そういうことはどこにも書いていないように私は思うのです。この憲法七条では、内閣はただ助言と承認を与えるだけで、実際は天皇の国事行為で解散はなされるわけで、そういうふうに考えた場合、一体どこに内閣総理大臣の権能として、権限としての解散権というものがうたわれているのか、お伺いします。
  175. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 第七条の解釈につきましては、学界の通説及び裁判の判例等を見まして、既に確立しておると思います。六十九条との関係が長い間いろいろ議論がございまして、判例もございますけれども、しかし今の私が申し上げたことがほとんど多数説として確定しておる、そう考えております。  法論理につきましては、法制局長官から御答弁申し上げます。
  176. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま総理がお答えになったとおりでございますが、若干敷衍して申し上げますと、憲法第七条、これはもう委員御承知のとおり、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」ということで、その第三号に「衆議院を解散すること。」という規定があるわけでございます。したがいまして、これも天皇の国事行為の一つでございますけれども、いずれにしましても、天皇はあくまでも内閣の助言と承認によってこの国事行為を行うわけでございまして、その意味におきまして、衆議院の解散を決定する権限、これは実質的には内閣に属するというのがいわば学者の通説でもございますし、また、我々としてもそのような解釈を従来から持ち、また御説明を申し上げておるところでございます。
  177. 渡部行雄

    渡部(行)委員 学者の方が解釈をすれば、それが一つの固定された判例のようなものになるかという、そういう議論はどうも私は受け入れがたいのです。なぜならば、最高裁の判決も時によっては変わるし、そういう学者の学説も変わることがあるわけです。  そこで、本文に戻ってよくよく見てみますと、助言ということは国語辞典にどう書かれているかというと、「わきから助けになるような事を言ってやること。」これが助言であります。そうすると、主体はどこかというと天皇であって、内閣はその天皇の意思を確かめるにほかならない。そしてそれを助けてやる。それが助言であります。それじゃ承認とは何だ。承認というのは「事柄の正当なことを認めること。」こういうふうになっている。だから、天皇が主体であって、そこに正当性があるかないか、間違いを起こさせないように見るのが内閣の務めだと思うわけで、それを主体的に内閣総理大臣の当然の権限であり、権能であるというような考え方は、私は間違いだと思いますが、いかがでしょうか。
  178. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その議論も前からいろいろと出されておるわけでございますが、この憲法で言いますところの「内閣の助言と承認」ということの意味合いでございますが、これも前々から政府が御答弁申し上げておりますように、二つの行為ということではなくて、これを一体として考えまして、内閣の同意とかあるいは内閣の意思というふうに理解すべきであるというのが定説でございます。  それからまた、今お話ございましたように、内閣は単に助言とか承認とかをする立場にしかないのではないかという点につきましては、これは委員御承知のとおり、憲法の第四条におきまして、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」という規定があるわけでございまして、その第四条の規定と第七条の規定と総合して判断をいたしますると、先ほど申し上げましたように、実質的に解散を決定する権限があるのは内閣であるということに相なるわけでございます。そのように従来から政府は考えておりますし、また、そのような運用もなされておるわけでございます。
  179. 渡部行雄

    渡部(行)委員 憲法四条を持ち出されましたけれども、結局政治には天皇は関知しないわけで、解散そのものの内容が政治的であるというけれども、手続そのものは政治じゃないのですよ。これが国事行為なんです。その手続を天皇がやるのであって、内閣総理大臣は手続までは手が届かないのですよ。だから、その手続までを自分が持っておるようなことを言うから問題になるのであって、その辺をやはり明確にすべきであると私は思います。  それからもう一つ、大体今の定数というものは憲法に違反しないんですか、するんですか。ここはどういう認識をしておられるのですか。内閣総理大臣にお伺いします。
  180. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま御質問の中に解散の手続というお話がございましたが、それがどういう意味か、ちょっと私もはっきり理解ができかねて大変恐縮でございますけれども、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、解散権を行使する実体、これを実質的に決定する権限、これは内閣にあるということでございます。そして、天皇は、この実質的な権限を持っている内閣の決定に基づきまして、そうしていわば国事行為としての形式的な、名目的な行為をなされるということになるわけでございます。  それからもう一点、違憲の問題でございますけれども、これは既に、昨年の七月十七日に最高裁判所の判決がおりまして、現在の衆議院の定数配分規定は違憲であるということが断定されておるわけでございます。
  181. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、その意見をなぜ内閣総理大臣に聞いたかというと、本人が違憲状態を知っていて解散をしたとなれば、これは不法行為を知って人に金を貸すような、いわゆる賭博することを知っていて金を貸すような行為とちっとも変わらないからなんですよ。あなたがいかに解散権が独立しておる、何物にも拘束されていないという答弁をしても、それを知らないでやった場合は善意の過失ということも言えるでしようけれども、しかしそれは不法行為でおる、これは違憲であるということを知っていてやった場合の行為については、どういう責任をとるんですか。
  182. 茂串俊

    ○茂串政府委員 法律解釈の問題でございますから私から申し上げますが、前々から政府の方から答弁を申し上げておりますことは、この違憲とされた定数配分規定が是正される前に解散権の行使ができるかという問題でございますが、これにつきましては、るるいつも申し上げておりますような理由によりまして、これは法的には解散権の行使が否定されることにはならないということを申し述べておるわけでございます。  その第一の理由といたしましては、先ほども総理からお話がございましたように、解散権の制度、衆議院の解散制度というものは憲法に明定されている基本的に重要な制度でございまして、もう申し上げるまでもなく、政局が重大な局面に達したような場合にいわば民意を問うという手段でございまして、そういう意味で非常に民主的な性格を持っているわけでございますし、また同時に、いわゆる憲法がとっておりますところの三権分立制のもとにおきましては、立法府と行政府の一つの抑制の作用として働くということにもなるわけでございます  それからまた、このように基本的に重要な制度であるにもかかわらず、この解散権を行使するにつきましては、憲法上、何らその制約についての明文がございません。  それからまた、これは憲法第六十九条におきまして、委員も御承知のとおり、衆議院におきまして不信任の議決案が可決されたというような場合に、十日以内に解散がされなければ総辞職をしなければならないという規定がございますが、仮に解散ができないということになりますると、そうすると内閣はただ総辞職しか選択の道がなくなるということもございまして、それではこの規定の趣旨が全うできなくなるというようなこともございます。  まあいろいろのそういった事情がございまして、そういった事情を総合勘案して考えますと、先ほど申し上げたように、定数是正が実施される前における解散権の行使というものは、法的には否定されることにはならないというふうに前々から何回も答弁しているわけでございます。
  183. 渡部行雄

    渡部(行)委員 何を答えているのだか、さっぱりわからないですな。もっと簡明に、わかりやすく答えてください。  私の言っているのは、それでは憲法にうたっていなければ何をしてもいいのかということが第一点。それから、違憲であるということを知っていて違憲の行為をやった場合に、それが認められるのかというのが第二点。それからもう一つは、いわゆる不信任を食ったときの解散権というのはちゃんとうたっておりますよ。そんなことには及ばないのです。問題は、代表権が本当に国民に均等に代表されているかどうかということなんですよ。それは憲法以前の問題でもあるくらい重要な問題なんです。民主主義の根源の問題ですよ。それが否定されて一体何の法律ですか。その辺をわかりやすく説いてください。
  184. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほど申し上げましたようなことで、いわば解散権と定数是正の問題との兼ね合いは、法理論的には御説明したつもりでございますが、さらにまた御質問もございましたので、敷衍して申し上げますと、例えば国民の意思を問うべき事態が現実に生じたという場合に、定数配分規定の改正前であることを理由にしまして解散権を抑制して国民の意思を問わないというようなことになりますと、これは国民主権主義にのっとって、国政が国民の意思に従って行われるということを予定している憲法の精神にもむしろそぐわないことになるのではないかということが考えられるわけでございます。  それからまた、定数是正前のいわば違憲とされた定数配分規定に基づいて選挙をすること自体が問題ではないかということでございますが、これにつきましては確かにいろいろと難しい問題があります。なぜ難しいかと申しますと、これは御質問が違憲とされた公職選挙法の定数配分規定の是正が行われていないということが前提になっているわけでありますが、違憲とされた定数配分規定が是正されないままで、すなわち憲法に違反する状態のままで残っているということ自体が、法的に言って本来あってはならないと申しますか、予想されていない異例の事態でありまして、そのような特殊、異例な事態を前提としての御質問でありますから、どうしてもそのことが法理論の展開面に反映されることになるわけでございます。すなわち、任期満了に伴う総選挙でも、また解散に伴う総選挙でも同じでございますけれども、総選挙をしなければ衆議院が組織できませんで、いわば不存在になってしまうわけでございまして、これは憲法秩序全体から考えても到底放置できない事態であるわけでございます。  そこで、総選挙はやらなければならないといたしまして、その選挙を執行する手続を定めるものとしましては、違憲とされた定数配分規定を含む公職選挙法しかない、他に準拠すべき法律はないわけでございますから、政府としましてはこれに基づいて総選挙を行うほかないわけでありまして、それによって憲法全体の秩序を全うすることができるというふうに考えておる次第でございます。
  185. 渡部行雄

    渡部(行)委員 任期満了によって総選挙をするのは当たり前で、それはちゃんとうたってあるのですよ。私はそんなことを言っているのじゃないのです。伝家の宝刀として解散をするというその解散権が、違法状態を知っていて、違憲状態を知っていてできるのかどうかということに絞って質問しているのですよ。それを何か別な方にはぐらかしてはだめですよ。  それから、そんな理論が成り立つならば、憲法改正なんかする必要もないし、定数是正なんかする必要もないのですよ。解散はいつでもできるのです。そしていつでも、民意を問う民意を問うと言ってそれを金科玉条にして大義名分にしていけば、何でもできるということですよ。そんなばかな論理がどこにありますか。だれが考えてもわかる論理でしょう。  それでは、内閣はどこで最善の努力をしたということを国民に示すことができるのか、何のために国会議員に任期があるのかその辺をよく考えれば、仮に違憲状態で解散をしなければならぬときには、満期が来なければだめですよ。そこまでぎりぎり努力をして、なおかつそれを国会が、立法府が受け入れようとしなかったというならば、民意を問うということが理論づけられるけれども、それをしないでどうして民意を問うになりますか。半端なことをやっておいて、しかもそれは一党の独善によって、そしてその定数の人数割りの問題でしょう。そんなことが解散の要件になるならば、いつでも勝手なことができるのです。だから総理はたまたま本音を吐いて、この間、一期生議員を集めて、党の数をふやすために解散するんだと、そういうばかげたことを解散権をまるで私物のように考えて発言するなんというのは、総理大臣としての識見を疑われると私は思うのです。その辺に対して答弁してください。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が数をふやすために解散すると言うようなことはありません。私が申し上げたのは、政党というものは、自民党も社会党も公明党も民社党も共産党も、常に公約を掲げて国民に訴えて支持を求めて、そしてその支持によって力を得て公約を実行する。その公約を実行する支持というのが、議員の数というものが議会制民主主義だ、そういう意味で、政党というものの本質的な性格は、やはり国民の支持を求め、議員を多くする、それは社会党といえども同じ考えに立って立党というものが行われているのだ、そういうことを申し上げたのであります。
  187. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この議論は尽きることもないようですから、時間の制限がありますので一応この程度にしておきまして、やはり総理という偉大な権限を持っている方は、もっと謙虚に物事を考えて、国政を間違いないようにひとつ運用していただきたいと思います。  次は、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約の誤訳について、私が去る昨年十二月九日付の質問主意書で尋ねておったわけです。ところが、それは国会法第七十五条できちんと、一週間以内に答弁をしなければならない、答弁ができなければ期間を切ってその回答をいつまでにやるということを返事しなければならないというふうになっているわけですが、そういう手続がとられていないのじゃないでしょうか。
  188. 小和田恒

    ○小和田政府委員 渡部委員がただいま御指摘になりましたように、昨年の十二月に渡部委員から質問主意書の提出がございまして、これについて外務省としては検討いたしました。いたしましたが、実は内容が非常に複雑な経緯がございますために調査に日時を要しますので、答弁書の延期を求める閣議請議を行いまして、昨年十二月十七日の閣議で了承されたということでございます。  本年の二月一日がその答弁書の提出の期限ということで了承されたわけでございますが、調査に非常に時間をとっておりますために、一月末をもちまして答弁書は提出いたしました。いたしましたが、その答弁書の内容はさらに慎重に調査する必要があるので、最終的な回答は今の段階では残念ながらできないという趣旨のことを御答弁申し上げたわけでございます。
  189. 渡部行雄

    渡部(行)委員 答弁書はここにありますが、いつまでに答弁するとも、その理由も書かれていないのです。第七十五条の後の方に、「その理由及び答弁をすることができる期限を明示することを要する。」と書かれているのですよ。これが全然実行されていない。いかに国会を軽視しているかのあらわれですよ。これはどういうことですか。
  190. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど申し上げましたように、答弁書の提出につきましては、閣議請議を行って閣議で了承を得ることになっております。したがいまして、本件の処理につきましては、内閣におきまして国会法に基づいて所要の手続を行ったというふうに理解しているわけでございます。
  191. 渡部行雄

    渡部(行)委員 しかも、この条約は、皆さん専門家ですからどういうふうにして間違ったのか、本当にわからないのですよ。この正文は英文と仏文で書かれているのですが、間違った部分というのは、「ザ セッド パワー」を、そのとおりに訳すと「前述の国」とか「当事国」、「当該国」となるのを、全く反対に「抑留国」と訳してしまっているのです。それはこの六十七条の条文を全部読んでみればはっきりするのです。決して難しいものじゃないのです。この六十七条の中身をずっとそのままここに当て込んでいくと、「抑留国」ではおかしなことになってしまう。自分の国に自分が支払いするみたいなことになってしまうのですよ。こんなのは日本の国語解釈上からもおかしな話で、これがわからないで今調査中というのはおかしいのじゃないか。時間があればずっと一つ一つやりますけれども、ないからいたし方ありません。どうなのですか。これはいつまでに結論をつけるつもりですか。
  192. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御指摘の条約第六十七条の訳語の問題につきましては、政府としては一九五三年にこの条約に加盟いたしましたが、その際、正式な条約締結の手続によりまして慎重な審査を経た結果、「抑留国」という訳語を決めたのだと考えておりますが、最近に至ってこれが訳語として妥当かどうかという問題が提起されましたので、果たしてそれが適訳であるかどうか、改めて検討しておるというのが今の状況でございます。  今御指摘のように、ここの訳語が「抑留国」か「所属国」かという問題につきましては、六十七条の正文である英語ないしフランス語は、「ザ セッド パワー」、「ラディット ピュイサンス」という言葉になっております。これは文字どおり訳せば、今御指摘がありましたように「当該国」というふうな訳語になろうかと思いますが、「当該国」ということでは具体的にどういう国を指しているのかということが必ずしも明らかでないわけでございます。したがって、全く文法的にあるいは語学的にこの言葉を訳してどちらであるかということは決めることができないわけでございまして、この条約の趣旨、規定の内容ということから判断をして、ある意味では条約の解釈ないしは適用にわたるようなことにまで立ち入って考えなければならない、こういう状況にあるわけでございます。  他方、先ほども申し上げましたように、この条約は何分古い条約でございますので、当時の締結の経緯を調べる必要がございます。それから、まだ日本が平和条約を締結する前の条約でございますので、この会議自体には日本が参加していなかったという事情もございますので、そういう点で調査に非常に困難があるということがございます。さらには、当事国がこれについてどういう解釈をとっており、どういう実際の慣行を行っておるかということも調べる必要がございます。そういうふうなことをいろいろと含めて慎重に検討して最終的な結論を出したいと考えているわけでございます。(渡部(行)委員「いつまで」と呼ぶ)  今鋭意検討しておりまして、最終的な結論を正確な形で出したいと考えておりますので、時間についてはいつまでにというお約束は今ちょっとここでするわけにはまいりませんが、可及的速やかに結論を出したいと考えております。
  193. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは実にけしからぬ話ですよ。ちゃんと国会法では期限を切ってということをうたっているのに、いつまでかわからないなどという答弁を黙って聞いていられますか。少なくともどのくらいの期間をかしてくれというような答弁が返ってこなくてはならないでしょう。国会法を一体どういうふうに思っているのですか。  もう一つは、この条約は一九五三年十月二十一日に発効しているのです。ところが、日ソ戦争が終わったことが確認されたいわゆる日ソ共同宣言は、一九五六年十二月十二日に効力を発生している。そうすると、当然にソ連抑留者についてこの条約が適用されることは、その発効日からいっても考えられるし、仮にそうでないとしても、この国際条約が一つの歴史的な慣行に従って成り立っているわけでございまして、そうした場合にはシベリアの捕虜問題はどうしてもこの条約に拘束されると解釈できるのですが、その点はいかがでしようか。
  194. 角屋堅次郎

    角屋委員長 渡部委員に申し上げます。お約束の時間の関係もありますので、この答弁をもってよろしくお願いいたします。
  195. 渡部行雄

    渡部(行)委員 以上申し上げまして、私の質問を終わります。
  196. 小和田恒

    ○小和田政府委員 終戦の前後におきますソ連の抑留問題につきましては、これは国際法上いろいろ問題があるということは、政府が従来から御答弁申し上げているとおりでございます。ただ、この一九四九年の捕虜のジュネーブ条約の適用があるかどうかという問題につきましては、この条約が一九四九年という時点、つまり第二次大戦が終わった時点におきまして、ある程度の立法的な色彩をも含めた形で作成されておるというような事情も考慮しなければならないと思います。  いずれにいたしましても、先ほど御指摘がございました第六十七条は、こういう種類の問題について関係国が話し合いをして特別取り決めを結ぶようにということを規定しているだけでございますので、その特別取り決めの内容いかんについてこの条約が特段の指示をしているわけではない。そういう意味におきまして、これが「抑留国」であるか「所属国」であるかということによって法律的な効果が大きい影響を受けることはないと私どもとりあえず判断しているわけでございます。しかし、いずれにしても、この問題は目下裁判に係属中の問題でございますので、私どもとしても慎重に判断して結論を出したい、かように考えております。
  197. 渡部行雄

    渡部(行)委員 答弁になっていないじゃないか。でたらめだ。
  198. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、貝沼次郎君。
  199. 貝沼次郎

    貝沼委員 総理大臣に質問をするのは、決算委員会では二年弱の間ございませんでした。早くこの総括をやりたかったのでありますけれども、なかなかその機会に恵まれなかったわけでございます。そこで私は、端的に何点かにつきまして率直な御見解を承りたいと思っております。  初めに、通告してあった以外のことで大変恐縮でございますが、報道によりますと、フィリピンの情勢は大変憂慮すべき状況だと思います。レーガン大統領は二十三日、反マルコス陣営の部隊に対して攻撃を加えた場合は直ちに米国の対比軍事援助を停止する、マルコス大統領の平和的退陣に向けて具体的に動き出したと報じられております。また、フィリピンにおいて我が国の大使は、二十四日、これに合わせたかのように、マルコス大統領に直接電話をいたしまして、政府が発砲するようなことは避けてほしい、こういうふうに要請したと伝えられております。  このようなことから考え合わせてみまして、我が国政府はこの米国政府の姿勢に同調していると受け取ってよいのかどうか、この点について総理に率直にお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  200. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 フィリピンの情勢については、非常に憂慮もし、重大な関心を持って今見守っておるところでございます。特に、昨日以来の急激な変動につきましては、全精力を尽くしまして今情報の収集及びこれに対応すべき対策について、外務省、内閣挙げて努力しておるところでございます。  既に外務省におきましては、フィリピン大使館を強化するために梁井審議官をフィリピンに派遣することを決めて、今晩立つことになっております。それから、外務省の本省におきましても、フィリピン情勢に対応すべき我が国の政策等について、今タスクフォースを中心にしていわゆるオペレーションアクションというものが既に発動されてやっておるところでございます。  私は本日、アメリカの大統領府のシグール補佐官とも話しましたが、いるいろ情報の交換もいたしました。その際に一致いたしました点は、流血の惨を避ける、武力行使があってはならない、この問題はフィリピン内部の問題であるから、フィリピンの民族自決を侵すようなことはお互いしまい、しかし流血の惨が起きたり武力行使が行われるということだけはどうしても、これは人道的な観点に立ってみても避くべきである、そのためにお互いに全力を尽くし合おう、そしてよく協議していこう、今後も情報の交換そのほか協議をしていこう、そういう点については一致したのでございます。  事態は必ずしも予断を許さない状態でありまして、一人の人命といえどもこのために失われないように我々は念願をし、またそのために我々といたしましては、各国とも協力をしつつベストを尽くしてまいりたいと考えている次第であります。
  201. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまの総理大臣のお言葉を聞いておりますと、我が国は米国政府と全力を挙げてお互いに協議をし、また情報交換をしていくということのようでありますが、そうであるならば、やはり先ほど申し上げましたように米国政府の姿勢に同調していかざるを得ないと受け取らざるを得ないわけでありますが、そう受け取ってよろしいですか。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカはアメリカの主権国家であり、日本は日本の主権国家でありますから、日本がアメリカのやり方に同調するということは考えられないのであります。また、アメリカが日本のやり方に同調するということもあり得ないのであります。みんな独自の判断に基づいて、そして懸命の努力をして、平和的な収拾に向かうように努力し合うということであって、片っ方が片っ方の方法に同調するというようなことは考えておりませんし、そういうこともないと思っております。
  203. 貝沼次郎

    貝沼委員 大変くどいようでありますけれども、もちろんその国その国が独自に判断をすることは当然のことだと思いますが、アメリカが向かっておる方向と日本政府の向かっておる方向というものは、その方向性については大体同じであると解釈してよろしいですか。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  204. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 武力衝突を避け、流血の惨を招かないように、そして平和的にこれが収拾されるように事態がおさまることを念願して、そのためにお互いがベストを尽くす、そういう点においては一致しております。
  205. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからさらに、テレビの報道だと思いますが、フィリピン問題について江崎総務庁長官は、マルコス政権に危倶の念を抱いていると発言されたようでありますけれども、これは総理のお考えと同じでございますか。
  206. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本政府としては、現地の角谷大使を通じまして、マルコス大統領に対しまして、武力衝突を避けて平和的収拾が行われることを強く希望するという意味の意思表示はしております。それで私はこのように申し上げておるところでございます。しかし、ある外国の主権を持っておる国のある政権について危倶を持つとかなんとかということは、我々としては内政干渉のおそれが出てまいりますから……。  また、フィリピンに対する立場は、アメリカの立場と日本の立場はまた違います。アメリカは太平洋戦争においてフィリピンを助けて、そしてフィリピンの独立を強く推進した国であります。我々は太平洋戦争においてフィリピンに非常に大きな迷惑をかけた国であります。しかもまだ、我々の国はアジアの近隣の友邦で、お互いが友邦であるという関係もございます。そういう意味において、我々はやはりフィリピンの国民の主権、意思、独立性というものをあくまで尊重していかなければならない、内政干渉がましいことは一切行うべきでない、そう考えて、フィリピンのことはフィリピンの国民の皆さんがみずからお決めになることである、そういう立場を慎重にとっていかなければならない。  我々は、一政権を援助するとかなんとかということでやっているのではありません。経済協力等につきましても、国会で質問がありまして、私は一政府、一政権というものを相手にしてこのような協力をしているのではありません、フィリピンの国家あるいはフィリピンの民衆、国民全体の福祉と安定のために我々は協力しているのですと、こう申し上げてきた、この立場は今日においてもますます重要になってきている、そう思うのであります。
  207. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今私の名前が出ましたから念のために申し上げますが、きょうの二時から三十五分程度でしたが、シグール大統領補佐官とお目にかかったときに、今日の事態について大変憂慮にたえないということを相手が言われた。そこで私は、総理の答弁に尽きるわけでありますが、武力が行使されるということのないように我々としては心からこいねがうものである、こういうやりとりがあったということを記者会見で申したのをきっとお聞きになったのであって、私が情勢判断をしてさようなことを申したことはございません。
  208. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうもありがとうございました。  大蔵大臣にお尋ねをいたします。  実は私ども、この総括のときに毎回議決案というものを議決いたしております。この議決に対しましてとった措置が国会に報告されるわけであります。これは総理大臣名で報告されますが、毎回三月とか四月とか、非常に遅い時期になっております。  今回の議決も理事会で決定をいたしておりますが、それにも「次の常会に本院にその結果を報告すべきである。」というふうに書いてございます。この「次の常会に」という言葉の内容をはっきりしておかないと、延長国会等の場合、いつでも報告できることになってしまいますので、まあ今年は幸いにも二月七日という異例の早さで報告があったわけでありますので、これを基準にして今後もひとつ提出をしていただきたいという念願を込めておるわけでありますが、大臣の責任ある受け取り方を御説明願いたいと思います。
  209. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十五年度決算の議決の際、貝沼委員からその指摘を受けました。したがって、最大限の努力をいたしまして、今年は二月七日に提出をいたしたところでありますが、今後もその趣旨に沿って最大限の努力をいたします。
  210. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは大事な答弁でありますので、今後ぜひともこれを実行に移していただきたいと思います。  次に、今日本の国際化という問題が言われておりますけれども、とかく外国に行って日本をPRする、こういうことは割と一生懸命やろうとするわけでありますけれども、私はもう一方において、外国の方々に日本に来ていただいて、そして日本を理解していただく、こういう面が非常に大事ではないかと思っております。  ところが、外国の皆さんの観光に対する多様化といいますか、こういう面がありまして、日本に来ると、とかく富士山あるいは東京、京都、そしてお寺を眺めたり、日本人の好きなところだけ案内してもらう、これでは余りおもしろくないという声もあります。彼らは、例えば日本の近代技術の粋を集めたものとか、あるいは日本でなければ見れないようなものとか、そういうものに観光も変わってきておるようでございます。  そういった点から考えてみますと、今回いよいよできようとしておる例えば本四架橋などは、これは大変大事なものではないかと考えておるわけでありますが、こういう本四架橋、これも国際化の一つとして、PRするものの一つとして、重点を置いて考えるべきではないかと思いますけれども、この点について総理の御見解を承りたいと思います。
  211. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは民活で八〇%、官で二〇%、こういう比率でやるわけでありますが、貿易摩擦解消の上からも重要な国内消費を進めるわけでありますから、仰せのように十分宣伝をする、あるいはそういった入札などにも参加を求めるというようなことまで考えてもいいではないか、これは今政府でまだ検討中でございますが、そういうことなども含めて、もっとPRの必要があるというふうに思います。
  212. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、例えば私は岡山でありますが、岡山県などは、この機会に日本というものを徹底的にPRしよう、観光のいわばモデル地区にぜひともなってまいりたいということで、大変今心血を注いでおるわけでありますけれども、こういうお考えにぜひとも政府の御支援を賜りたいと思っておるわけでありますが、この点はいかがでしようか。
  213. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 仰せのように、岡山は非常に歴史のあるところですし、立派な公園もお持ちでございます。したがって、特に本四架橋が進んでおる折から、そういった面で、何も古都といえば京都、それには限らないと思います。  もっと広く日本を紹介することはいいことだと思いますし、特に総理を本部長にしてつくり上げましたアクションプログラムには、例のコミューター、小型機の輸送を十九人の定員から六十名にする、そういう取り決めもありますから、今後小型機の見直しとかヘリコプターの見直しとか、いろいろ活発にそういった着想が取り入れられて、観光の範囲も相当広がるであろうことが、希望が持てるように考えます。
  214. 貝沼次郎

    貝沼委員 ぜひひとつ中四国の中心でもある、あるいはまた山陽、山陰の橋渡しのところでもあり、瀬戸内という気候のいいところでもあり、いろんな面で大変いいところでありますから、ひとつ御支援を賜りたいと思います。  それから、時間がありませんので、年金の支払いの問題につきましてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  厚生年金とか国民年金の支給の適正化という問題で、先般会計検査院からも指摘をされました。例えば、私のところにもいろんな事例が来ておるわけでございます。それはこういうことです。  倉敷の人でありますが、老人二人、七十二歳、六十九歳、無職でございます。去年の六月四日に通知が参りまして、六十年の一月までにこの二人は月十七万から十八万の年金をいただいておったわけでありますが、突如、五年前の五十五年六月から六十年一月まで過去五年間にわたって、二人で百万八千円払い過ぎであったということで戻せ、こういう通知が参りました。そうして、その金は使っちゃった後でありますから大変困ったわけでありますが、月六万円ぐらいあれば二人で生活できるだろうから、その差額、残ったものは全部返せ、こういうような通知でございます。  ところが、それじゃ大変だというので話があったわけでございますが、いろいろ相談をした結果、じゃ支給する年金の半額を全部天引きをする、で半額で生活をしなさいというふうに、まあもらい過ぎたんだから返さなければならないのは当たり前なんですけれども、ちょっと酷過ぎやしないか、五年間払い過ぎになっていたものを二年間で返せ、こういうことでは私は考えざるを得ないと思ったわけでございます。  ところがさらに、今回の会計検査院の指摘によりますと、この年金受給者の死亡による年金の払い過ぎというのがございまして、厚生年金あるいは国民年金でいろいろ調べた結果、約一億一千万もの払い過ぎがある。ところが、既に亡くなった人はどうしようもないんですね、もう返す人がいないわけですから。非常にむだ遣いになっておりますし、あるいはたとえ生きておっても、それだけで生活をしておるお年寄りの方々なんですから、それを取り立てるということは私、非常に酷な話ではないか。  しかし、これはどこに問題があるかというと、その死亡したとかあるいはいろんな報告をする段階と、政府の対応という間に非常に時間のずれがある。こういうコンピューターの発達した時代に、今でもこんなことが行われている。これは体制を考え直す必要があるんではないかと思いますが、この点について率直な御見解を、できれば総理から伺いたいと思います。
  215. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えを申し上げます。  今の先生からお話がございました前段のお年寄り御夫婦の場合につきましては、多分こういうことではないかと思います。お二人で厚生年金の受給をしておられたのではないかと思うのでございますが、五十五年の法律改正によりまして、いわゆる加給年金、配偶者の分の年金につきましては、両方の方がお受けになる、だんな様も奥様もお受けになるということができなくなりまして、その際、受給者の方から申請をしていただきまして、その今おっしゃいましたところで調整をさせていただくということに法律上なったわけでございます。  この点につきましては、受給者の方に十分お知らせをさせていただいたと思うのでございますが、今先生からお話のありましたようなケースにつきましては、具体的には皆様からお預かりしておりますお金で年金をお支払いしておりますので、返還をお願いせざるを得ないわけでございますが、この場合、お二人の生活の上で支障のないような形で、御希望があればその期間を長くする、例えば半分ということでなくて、もう少し減額をするというような形での運用はさせていただいておるわけでございます。  それからもう一つの、会計検査院から御指摘がありました分につきましては、年金の受給者の方がお亡くなりになりますと、その遺族の方にお届けをいただきまして、私どもがその方の口座へ振り込みますのを差しとめるということをやっておるわけでございますが、現実問題といたしましては、遺族の方からお届けが出ますより前に私どもが銀行に振り込んでしまうというような、いわば入れ違いということがあるわけでございます。こういったケースになりますと、やはり過払いという問題が起こるわけでございますが、多くの場合は、遺族の方は遺族年金をお受けになりますので、この場合には遺族年金から調整をさせていただくということをいたしておるわけでございます。  私どもといたしましては、年金のお金は皆様からお預かりしたものでございますので、法律で定めるという形でお支払いをするということが本則でございますので、こういった過払いのないようにできる限り事務処理をやっていきたいと思いますし、また、こういった形でお受け取りをいただいた方につきましては、できる限り御理解をいただきまして、返還をお願いをいたしたいというふうに思うわけでございます。
  216. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうことはわかった上で言っているんですよ。だから、そういう過払いができるから、そういうことのないように早く実態がつかめるような方法を政府は立てるべきじゃありませんかということを言っているのであって、説明なんかを聞いているのじゃないですよ。時間がなくなってしまうじゃないですか。その体制を組むかどうか、ひとつ答弁を願います。
  217. 今井勇

    ○今井国務大臣 実態につきまして御説明をいたしまして、大変申しわけないことをいたしましたが、お説のとおり、こういうふうなことが起こらないようにきちっとすることが極めて大事なことでございます。したがいまして、今後やはりきめ細かい工夫をいたしまして事務処理の改善を図ると同時に、こういうことのないように努めてまいりたいと思います。また、過払いになりましたものにつきましても、返納についても一層の努力をしてまいりたい、このようなことが二度と起こらないような事務処理をきちっといたしたいと思います。
  218. 貝沼次郎

    貝沼委員 大体、そういうことが起こらないような事務処理をすると言うけれども、初めから起こるような事務処理をしているとは私は思っておりません。起こらないような事務処理をしておるのだけれども、間に合わないのです。そうでしょう。その連携ができないからなんですよ。その辺をもうちょっと政府としてきちっとできませんかということを言っておるわけです。一生懸命やるのはわかっているのです。ひとつお願いいたします。  それから、時間がありませんから次の問題に移りますが、総理は、輸入の問題で何回もいろいろ御発言なさっておりますが、輸入が促進されればされるほど心配になるのは、食品に対する安全性、そしてまたその安全をキープできるかという体制の問題でございます。  先般私も、横浜の埠頭あるいはいろいろな倉庫、それから検疫所あるいは防疫所をずっと視察をしてまいりました。そうして思いましたことは二つございます。  一つは、表示の問題でございます。これはワインのときも出ましたけれども、オーストリアでできたワインでも、日本でブレンドすれば国産品になるわけですね。その国の名前になるわけです。と同じように、アメリカで例えばクッキーができても、日本で袋に入れ直せば、それは国産になるのです。そういうわけで、できたところと賞味期間とかこういうものがあるにもかかわらず、我が国の国産となってしまいますと、輸入年月日とかあるいは製造年月日でも、これは袋に入れた日になるわけですから、買う者にとっては、これは大変おかしなことなんですね。法律ではそれでいいというふうになっておるからというのですけれども。したがって、私はその法律を見直していただきたい。そうしなければ輸入品がどんどん入るなんということは、とてもとても考えられません。これが一点でございます。  それからもう一点は、検疫所あるいは防疫所、これが大変忙しいにもかかわらず、体制が貧弱でございます。非関税障壁とかいろいろ言われるようですけれども、今度成田の空港は、それこそ大変なフル回転でやるということが出ておりました。これは大変なことなのですけれども、ただ時間だけ稼げばいいというものではありません。これに対してもっと抜本的な体制を講じなければならぬ。  例えばチチュウカイミバエが入っただけで、恐らく瀬戸内の果物は全滅するであろうと言われるくらい恐ろしいものです。それが今日本の水際まで来ておるわけです。先般一匹が発見されて、それを防疫所で発見して助かったという。しかも、発見した人は一晩じゅう寝られなかったということさえ言っておりました。こういうようなところから、本当に日本の農業を守り、食生活の安全を考えるならば、その体制というものは強化すべきではないかと思いますが、この二点について答弁を承りたいと思います。
  219. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 アクションプログラムの責任者としてお答えをいたします。  食品に関しては余り政府が介入すべきでない、こういう前提に立ちまして簡素化をしたわけでありますが、仰せのように生命、健康に関する問題等については、担当省とも十分話し合いをいたしまして、政府の介入は簡略化するが、国民に被害を及ぼすようなことが絶対にないよう、これは配慮いたしております。  それから、第二点の検疫所の問題につきましては、仰せのように、これは島国でもありますし、非常に厳重に調査をして検疫をして入れておるわけであります。そういうことがややもすれば外国の誤解を招いたり、いら立ちを招くわけでありますが、適当に人員の配置がえ等によって万全を期してまいる予定で事を処理しております。
  220. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間がありませんので、最後に、今の議論に対しまして総理の率直な御見解を承りたいと思います。
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 要は、国民の生命、財産及び国土の正常化を確保するということでございまして、その点については我々は綿密な注意を払い、万全を期してやってまいりたいと思います。例えばJASの制度であるとか、あるいは公正取引に関するいろいろな規制であるとか、そういうような問題はもとより、あるいは検疫、防疫等につきましてもよく細心の注意をしながら確保してまいりたいと考えております。
  222. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  223. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で貝沼君の質疑は終了いたしました。  次に、玉置一弥君。
  224. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 あと二人で終わりでございますから、もう三十五分ですから、積極的に手短にお願いを申し上げておきます。  先ほどの貝沼委員のお話の中にございましたフィリピン情勢、これについて若干お伺いをいたしたいと思います。  今回の動きを見ておりましても、大使館からの情報あるいは逆に商社からの情報、そしてアメリカからの情報、こういうような形でいろいろな情報が集まってきておりまして、それに対してアメリカが非常に早く動く。それと比較をいたしますと、日本の政府の対応がどうもなかなか踏ん切れない、こういうような感じを受けるわけです。私たちが今回の決算委員会の中でも論議をいたしましたけれども、日本独自での情報収集、こういう面もやはりかなり強化をしていかなければ、この国際化時代の中で日本が取り残されるのではないか、こういう心配もあるわけでございます。  先ほどのフィリピン情勢の中で、相手の国に対しては、確かに主権がございましてなかなかそれに対しての意見は言えないかと思いますけれども、しかし先ほどの中曽根総理の話にもございましたように、関係国と意見交換というのは可能であると思うわけです。お伺いしますと、大統領補佐官にお昼に会われたというお話でございますが、私が先ほど入手いたしました共同通信からの情報によりますと、ホワイトハウスは二十四日、初めてマルコス退陣を要求したという情報が入っております。この情報について、政府当局として情報を把握されているかどうか、そしてそれぞれどういうふうに担当大臣に御連絡され、あるいは総理に御連絡されたか、お伺いしたいと思います。
  225. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 情報について言えば、確かにアメリカはフィリピンと特別な関係にありますし、基地も二つ持っておる、そういうことで情報が十分入っておることは事実でしょう。しかし同時に、日本の場合も大使館の情報だけではなくて、マルコス、アキノ両陣営から直接的な情報も得ておりますし、あるいはまた報道陣からの情報等も得ております。日本の情報把握も、フィリピンに関して言えばアメリカに決して劣ってないだけの情報は持っておると私は考えております。  それから今、アメリカ大統領がマルコ人大統領の退陣を要求したという情報があるというお話でございますが、我々アメリカとも緊密に接触しておりますが、まだ今日の段階ではそういうことは聞いておりません。アメリカ側からもそういう説明は受けておりません。
  226. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 総理大臣にお伺いしますけれども、きょう補佐官と会われまして、そのときに、事前にある程度こういうニュアンスの話があったのかなかったのか。そして今外務大臣のお話ですと、政府として情報は入手してないということでございますが、民間の方がはるかに情報が早いわけでございまして、情報に関しての早さに関してのことと、それからもう一つは、ホワイトハウスがマルコス退陣を要求したということについてどうお感じ取りになりましたか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  227. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 けさシグール補佐官といろいろ話し合い、情報交換もいたしましたけれども、ホワイトハウス、アメリカ大統領がマルコス退陣を要求したというようなことは聞いておりません。
  228. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今お聞きになって、まだ確認されてないと思いますけれども、この辺についての感触といいますか、総理が受けられた印象はいかがですか。
  229. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 聞いてないことについて論評することは、不可能であります。
  230. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 先ほど申し上げました情報の早さという問題についてはどうですか。
  231. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 民間の情報が早いこともあるし遅いこともあるし、早い場合には非常にスペキュレーティブなことがあります。
  232. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 やはり情報が早くて正確というのが一番いいわけでございまして、早いというのは、なぜ早いかというのを民間と比較をして考えていかなければいけないと思うのですね。その辺の問題点があるかと思うのです。  それから、これはたまたま入手した情報ですけれども、きのう以来いろいろな事件が続いているわけでございますけれども、この辺につきまして政府部内で、関係閣僚の間でどういう形で論議をされたか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  233. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府としては、外務省を中心にいたしましていろいろな情報を集めて検討をいたしておりますし、その情報の経過については総理大臣にも報告をいたしております。
  234. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 では、フィリピン関係で最後に、今入手した情報につきましては政府としてどういう対応をされますか。一応有名な情報源といいますか、これは共同通信ですけれども、そういうところが流してきた情報でございますけれども、こういうところ、やはり確認されると思いますけれども……。
  235. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 非常に今はデリケートなときで、刻々事態が推移しておりますから、私と外務大臣の間では、おのおのがおのおので得た情報は迅速に電話等で交換しております。私は外務省から常時情報を得ておりますし、私もシグール補佐官との話は終わったらすぐ外務大臣に電話をして、こういう話であった、そういうふうに情報を伝えております。そういうことで、全能力を発揮しつつ、最大限、針の落ちる音も見逃さないように今情報収集をし、そしてあらゆる事態に対応できるようないろいろな考え方で対策を練っておるということは申し上げて差し支えないと思っております。
  236. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 政府の言われておりますいわゆるシーレーン防衛、こういう面から見ても非常に重要な地域でもあるわけでございますし、特に今までの友好関係を続けていくためのいろいろな情報収集ということも必要かと思いますので、ぜひより積極的な情報収集をお願い申し上げたいと思います。  引き続きまして、定数是正の問題に移っていきたいと思います。  御存じのように、昨年七月最高裁の違憲判決がでまして、それ以来初めて衆議院の中での各選挙区の定数アンバランス是正、こういうものが始まったわけでございますが、先ほどからお話を聞いていても、与野党各党が話し合いをするということでございますけれども、実は与党の内部だけでもなかなか話し合いが進まない、こういうふうな状態だと聞いております。  さきの臨時国会では、議長裁定として坂田議長から見解が示されました。今国会で検討しようじゃないか、こういうことになっているのですけれども、ところが、よく考えてみますと、政府部内で検討する部門があるわけですね。実は選挙制度審議会というものがございまして、昭和三十六年選挙制度審議会が設置されまして、その審議項目の中に、第二条の第二項でございますが、「国会議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定める基準及び具体案の作成に関する事項」、こういうことでいわゆる調査項目があるわけでございます。こういうことで見ていきますと、せっかくこういう制度がありながら何で活用されなかったのか、こういうことになるわけであります。調べてみますと、昭和四十七年の第二次の各委員の任期満了以降委員が任命されていない、こういうことになっております。  今回の定数是正の問題は、昭和五十年に公職選挙法が改正をされまして、そこで倍率が四・八倍から二・九倍、いわゆる今回の違憲判決である三倍という域内にあるわけでございまして、それが五十五年に、はるかに三・九四倍、五十八年に四・四〇倍、こういうふうに倍率が上がってまいりまして、いわゆる不平等状態、こういうことになっているわけです。  こういうものがあるわけで、これは裁判所が数字を出すまでというか、要するに訴訟があるまで数字が出てこなかったというところにも問題があるわけですし、日ごろの定数是正のお話を聞いておりますと、あくまでも議会内部の問題ということで各会派が話し合うということでございますが、我々の方から見てみますと、こういうふうに政府部内に当然あるレベルで審議をすべきところが設けられているわけでございますから、なぜここでやらないのか、そしてなぜ今までここの審議会が活動しなかったのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  237. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 定数是正の問題につきましては、前の臨時国会と今回の通常国会におきましては、性格と様相が非常に一変してきたと思うのです。すなわち、前の臨時国会におきまして議長さんがお出ましになって、これは衆議院の大きな責任であり、国民的課題である、そういうふうに宣言し、かつ、決議案にもそういう内容が盛られております。そして衆議院議長が積極的に乗り出して、これは院の仕事であるから院で片づけよう、そういう趣旨の行動をおとりになりまして、解決のための三カ条でありましたか四カ条の具体的方向も明示されて、各党はそれに同調しておるわけでございます。  そういう状況からしますと、もはや政府が今までの普通の場合のようにいろいろやるという段階から、衆議院全体の責任として議長を中心にして物が展開するという形に移行してきておりまして、我々は、国会の各政党を重要な構成要素として議長さんに協力しつつ解決していく、こういう立場に変わって、前の臨時国会と今回の通常国会におきましては、この問題に関する様相というものはまるきり変わってきたと思うのであります。  そういう意味において、各党各派で話し合いを積極的にしつつ、議長さんを助けて合意に達する、そういう方向にいくのが正しいと思いまして、今のような政府の選挙制度審議会とかそういうようなものを煩わす暇はもうなくなってきて、速やかに今国会において各党各派の話し合いによって解決する、そういう議長さんの御方針に従って、また我々が行った約束に従って速やかに解決すべき立場に来ている、そう考えております。
  238. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに、前回の臨時国会におきましては時間的に余裕がなかったというのは政府・与党といいますか、自民党さんの話でございますが、しかし先ほどから話が出ておりますように、今回の議員の任期は六十二年の十二月まであるわけでございますから、一応六十二年の十二月まで審議をしていく、あるいは早く決まるかもわかりませんし、いっぱいまでかかるかもわからない、こういうことでございます。そして昭和六十年の国勢調査の結果が今出ておりますから、そういうものに沿って本当に定数の是正をするということをやらなければいけないと思うのです。  それから、先ほどから時間がなかったから暫定でという感じで私は受け取ったのですけれども、本当を言いますと、定期的に五年ごとにとか、あるいは選挙後見直しをするとかいうような一つのルールをつくっていかなければいけないと思うのでございますが、そういう意味でも、総理の方だったと思いますけれども、第三者機関に委任をしなければいけないようなことになるかもわからない、こういうようなお話をされたことがあるかと思います。そういう意味でも、第三者機関というよりもいわゆる政府部内での審議会の中にこういう選挙制度審議会があるわけでございますから、今後の活用についてお考えになられるかどうか、それについてお伺いしたいと思います。
  239. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは将来の課題として一つの研究に値する問題であるだろうと思いますが、今日既にさきの臨時国会において決議がなされ、議長の所信表明までありまして、政治的案件としては非常に焦眉の急を要するという性格を持ってきたこの問題につきましては、そういうような処置をとる余裕はもうない、そう考えております。
  240. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 定数是正とか解散問題というのは、それぞれの立場がなかなか違うものでございますから論議が尽きないと思います。  最後に、解散問題について自民党の各会派あるいは年代別のいろいろな集会をやられて、その都度新聞紙上をにぎわしているわけでございますけれども、我々若手からしますと、解散の話が出てくるとどうも東京にいるのが落ちつかないということで、この前丹羽君なんかでもそういう話をされたということがありましたけれども、実際切実な問題として感じるわけですね。総理の場合には三年半前に着任されましてから再三そういうのが出てまいりまして、我々としてももう本当にちょっと疲れ切ったような感じでございますけれども、できるだけ重大なこと以外はもう余り発言をしないというような政治姿勢でぜひお願いをしたいと思います。  それから、東京サミットでございますが、東京サミットを一応五月に迎えるということで、今いろいろな対策がとられておりますけれども、逆に、G5以降の介入のためにかなり円高基調になりまして、これが日本の景気を後退させるのではないか、こういうような心配がございます。そしてサミットを迎えるころには、もう日本が青息吐息になるような可能性もあるような気がするのですが、そういう状態で果たして諸外国に評価されるかどうか。もし現状のままということであれば大変なことになると思いますが、この辺についてどうするのか、この辺についてお伺いしたい。  それから、外務大臣がおられませんが、先ほど一番最初に言いましてからもう二十分くらいたっておりますが、二十分たって先ほどの情報が確認できたかどうか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  241. 小和田恒

    ○小和田政府委員 とりあえず私からお答えいたしますが、報道としてそういう情報があるということは承知しております。しかしながら、政府レベルにおいてその情報が正しい情報であるという確認はまだできておりません。
  242. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 解散の問題で大変御心配のようでございますが、私は解散はしません、考えておりませんと先ほどもここで申し上げたとおりなんで、お会いする人にも聞かれれば、新聞社の皆さんにも年じゅうそう言っておるのに、なぜ新聞やテレビにああいうふうに出るのか、私は不思議にたえないのでありまして、私におっしゃっていただくよりも、新聞やテレビの方にお願いしていただいた方が適切ではないかと思っております。  東京サミットにつきましては、非常に重要な段階に来た世界情勢のもとに行われるサミットでありますから、経済でも政治でも、全世界は、これによって先進国が世界の政治や経済をどの方向に持っていこうとしているかということを注目しておると思うのです。そういう意味において、向かうべき方向あるいはプリンシプル等についてできるだけ明らかにする有意義なサミットにしていきたい、そのように考えております。
  243. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。
  244. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で玉置君の質疑は終了いたしました。  次に、中川利三郎君。
  245. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 しんがりを受けまして、三宅島火山対策とNLPの問題についてお聞きするのでありますが、まず気象庁にお伺いいたします。  この前噴火した三宅島、あの特徴は、予兆から噴火までわずか一時間二十分しかなかったというのですね。非常に短くて、またそういう特徴を持っているだけでなくて、地殻の割れ目が島内あちこちにありまして、いつどこから爆発するかわからない、そういう状況だということでありますから、火山観測体制というのは島の住民の安全、島を含めてまさに生命線だと言われているわけです。  今政府は、ここに空母艦載機の発着訓練基地をつくるということで、この国会でもいろいろ問題になっているわけでありますが、この計画発表以来数多くの地震、火山の専門家、学者から、ジェット機の離発着だけで約二百トンの衝撃波を地面に与えることだとか、また、こうしたジェット機の離発着や爆音の衝撃は本物の火山性地震と見誤りやすいことだとか、あるいは電気的障害なども指摘されるなど押しなべて、このNLP設置を常識としても理解できない、絶対やめるべきだ、多くの声が上げられているわけであります。  その代表例といたしまして、例えば皆さん御承知の初代気象庁長官、そうして地震学会会長を務めたことのある和達清夫さんが何とおっしゃっているかといいますと、こうおっしゃっているんですね。「浅間山に米軍演習場をつくる計画がもちあがったときは、県民や全国の研究者から反対の声があがりました。長い話し合いのすえに米軍が計画を撤回したことを覚えています。最近の観測機器は精度もあがっており、私としては、三宅島の火山監視に支障になることはやめていただきたい。」こういう御趣旨の発言をしていらっしゃるわけでありますね。  また、元気象庁の観測部の地震課長をしたり地震火山研究部長をしておりました諏訪彰さんという方は、日本大百科全書の月報、八五年の八月号でありますが、この月報の中で、「震動観測は波やうねりに邪魔されやすい。気象庁が常時観測中の一七火山中で、浅間山などの八火山では倍率五〇〇〇倍で実施しているが、三宅島では一〇〇〇倍にしている。米軍基地を島に受け入れることは、人工的にこの条件をさらに悪化させる、いわば自殺行為であろう。」こうおっしゃっているわけでありますね。  そこで、気象庁にお伺いするのでありますが、専門家、学者はもとより、皆さんの出身の研究家でさえも、常識では考えられないあるいはまた自殺行為だ、こうおっしゃっているわけでありますが、気象庁はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  246. 内田英治

    ○内田(英)政府委員 お答え申し上げます。  三宅島につきましては、先生も御存じのとおり、気象庁は常時観測というものを行っております。今先生の御指摘のとおり、このNLPなるものが実際行われた場合に、その訓練の詳しい内容というものはまだ十分存じてないわけでございますが、御指摘のように、現在の観測に多少の影響が出る可能性もあるというふうには考えられます。しかし、ここに仮に飛行場が建設、開設された場合でも、適切な方策を講ずるならば現在の火山監視の水準を維持するということは可能であろう、こう考えております。
  247. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 多少の影響の可能性がある。いずれ影響するということはお認めになっていらっしゃるわけでありますね。私はこのことも重大だと思うわけであります。しかも、適切な措置で現在の観測レベルを維持することが可能だ、こういうふうなことをおっしゃっておりますが、現在ですら常時観測しておるところは一カ所だけで、地震計は一つしかありませんね。  こういう状態なんでありまして、実はきのう、おとといでありますか、私の部屋にレクチャーに来た担当の方は、まさに自殺行為だ、これが専門家の全部の意見だと言ったら、顔を真っ赤にして下を向いてしまいました。私は、科学と行政の板挟みに遭ったと非常に気の毒に思ったわけでありますが、気象庁といたしましてもやはりその立場から、政府の一員であるから政府の言いなりにならなければならないという側面があったにいたしましても、やはり何とかノイズを避けて観測をしたい、予知をしたい、それが本音だということはお認めいただいたものだと私は思うわけであります。  時間がございませんから、早速次の問題に移らせていただきますけれども、今度は総理にお聞きするわけであります。――いや、多少であれ影響があるということを言明したということはほかの問題ではないのですね、農業問題でも何でもね。  そこで、私の手元に昭和二十八年、つまり一九五三年六月八日付と翌日の九日付の上毛新聞のコピーがございます。上毛新聞というのは、総理の地元の新聞であります。その内容に入る前に若干当時の背景を申し上げますと、当時米軍は、総理の地元である浅間山を米軍の演習地にしようとしておりました。政府もまた、日米安保条約に基づき米軍に対し最小限度の施設、区域の提供義務があるとして、これを強行しようとしておりました。しかし、火山活動の監視、噴火予知のための精密観測が致命的に害されるとして、学界を先頭に国内世論が沸騰いたしまして、ついに断念したという、いわばその事件のまっただ中のことでありましたが、その六月八日の新聞によりますと、「子らを守る血の叫び 米演習地反対県民大会」、そういうことが書いてあります。  決議案文を見ますと、「これらを演習地とすることは如何なる説明、説得を以つてしても了承出来ない。」と当時の新聞が書いておりまして、中曽根総理がそのために激励の熱弁を振るったということが書いてあります。同時に、その次の日の六月九日でありますが、「相次いで反対陳情」ということで、こういう文面です。「各代表約三十名は地元選出の改進党中曽根代議士とともに八日午前首相官邸で田中官房副長官と会見、」「米軍演習地化反対の陳情を行つた。」そこで、特にこの新聞に大きな総理の写真が載っておる。若かりしころのすばらしい男振りの写真でありますが、これは複写してありますから、委員長、これをちょっと見せてあげてください。三十三年ぶりのあなたですよ。  そこでお聞きするのでありますが、浅間山といい、三宅島といい、前者は米軍射撃場、後者は米軍空母艦載機の訓練基地という違いはあるにせよ、あなたの地元浅間山のときは、安保上の要請があっても、科学と住民の安全、住民の願いの見地から反対しているのですね。一変して今度の三宅島では、安保上の義務を優先して、札束でゴリ押ししようとしていると言われておりますね。人間の認識というものは変化発展することは私も理解しますが、科学技術庁長官までしたあなたがこのような態度というのは、科学と住民の利益を軍事に従属させる、まさに変節ですな。変節ではないかと思いますけれども、総理の御見解はいかがでしょうか。
  248. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  二十八年の浅間山の山岳戦訓練場の問題を御指摘でございますので、事実関係をまず私から申し上げます。  二十八年当時、米軍は確かに浅間山周辺に五千ヘクタールの山岳戦訓練場を要求したことがございます。これにつきましては、火山観測所を有する東大火山観測所その他から反対意見が出、また火山観測専門家による合同調査により、演習は支障を来すというような意見もございました。折衝の結果、妙義山地区は米軍からの提供要求の面積が大き過ぎる、火山観測活動に影響のない程度に縮小をしよう、こういうことで日米両政府が協議をいたした結果、使用区域を縮小し、妙義山周辺を射撃訓練場ではなくて山岳戦訓練場ということで、昭和二十八年十月に提供手続を閣議決定いたしました。その後、米軍の訓練場のニーズ、これが必要性がなくなったということで、三十年二月に返還になった、こういう経緯でございまして、火山活動観測に反対をしたから中止になったというものではございません。
  249. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いや、火山活動、反対したからと、新聞ではそのとおり書いてあるのですね。いわば首尾一貫してない。あなたは、王道を行くというようなことをいつもおっしゃっていますが、これは科学を軍事に従属させるものであることは明らかだと思うのです。あなたが余り長い答弁をするから、私、質問の時間がなくなってしまいました。  そこで、私もう一つ、では聞かせていただきますが、東大地震研究所が出しておる「五十年の歩み」という一九七五年十一月のあれがあるのですよ。ここに「浅間事件」という、これを単独の項目に起こした一項があるのです。そこで学者の立場からいろいろ感動的にリアルに問題を書いてあるわけでありますが、例えばこの中には、最初は地元の繁栄を求めて米軍施設の受け入れを願う、そういう動きもあった、しかし、一たん反対にまとまったらみんなそれで一致したことやら、あるいはその中で、アメリカも何としても理解させようじゃないかということで最後にはお互いに双方で実地検証した結果、たった一日やったらもうわかったということで、これを取りやめたという経緯を生々しく書いてあるのです。  そこで、私は総理大臣に聞きたいのでありますが、総理の仕事というのは決してNLPをごり押しするということだけじゃなくて、例えば総理自身が昭和五十八年五月に「第三次火山噴火予知計画の推進について」という測地学審議会からの建議も受けているのですね。測地学審議会というのは、御承知だと思いますが、主な関係省庁が全部入っているのです。その建議でさえも、三宅島にはこうしろということはほとんどやられていないわけですね。そういうことについて、いわば総理自身の仕事は、当然その島に対する障害の持ち込みだとかということについては排除すべき、そういう国民的な義務があると思うのですが、あなたはどう考えますか。
  250. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 昭和二十八年の浅間の場合は、あそこに東大の地震観測所がありまして、そこで実弾演習とかそういうものがあると著しく差し支える、そういう話がたしかあったと思います。そういうわけですから、これはいかぬ、ほかの場所でやりなさい、そう言って私は運動した記憶があります。アメリカは、ともかく著しく学問、研究に差し支えるのではというので変えたと思っております。それで、浅間は実は私の選挙区じゃないのです。私はもう少し下の方の、今あなたが申した松井田地区の岩場の山岳訓練場の方でありました。それはしかしアメリカはやめにした、新聞に書いてあるとおりであります。  三宅島の場合は、今の気象庁の話にもありますように、いろいろな対策を講ずることによってそれはできます、そういう返事であります。しかも、演習場のように四六時中使うというのじゃなくて、一年の三百六十五日の中で四、五十日、しかも夜間だけしか使わない。しかも、その飛行場は地元の住民の皆さんのために観光客やらそのほかでも非常に大きな便益を供する、プラスの面もある、そういうような面で、まるきり浅間山の場合とはケースが違う。大体たしか四十日か五十日の夜だけしか使わない、そういう場所で性格も違います。  それから第二番目に、あのころは安保条約は改正されていない。六十年安保で改正され、日本とアメリカとの関係は安保条約によって信頼関係を持って日本を守っていく、そういう形になっておるのでありまして、みずから安保条約を改定して独立の主権性を回復した今日におきましては、やはりアメリカと協力して安保条約を有効に機能せしめるようにしていくということは、防衛政策上非常に重要なことであります。そうしてまた、もし三宅島の皆さんが受け入れてくださるならば、これは神奈川県の厚木の住民の皆さんも非常に喜ぶだろう、そういうような考えに立ちまして三宅をお願いしておる、こういうことでいささかも矛盾しておるものではございません。
  251. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後でありますが、ちょっと言わせていただきたいと思います。  総理は、今三宅島の場合は何でもない、支障がない、浅間と条件が違うのだといろいろお話がありました。しかし私は、専門家のいろいろな意見を聞いておりましても、先ほどの気象庁の答弁、これは具体的検討は何もないということですね。それから類似の例も全くないということですね。何の根拠もない議論を今展開しているということは私よくわかっています。しかし、政府の一員でありますから、部局でありますから、これは本当に苦しい立場に置かれているということだと思うのでありますが、問題は人命にかかわることです。ノイズで邪魔されて、いろいろやってみたけれどもはかれませんでしたでは済まないのです。そういう点で私は断固、総理があれこれおっしゃいましたけれども、これは撤回すべきだということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  252. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で中川君の質疑は終了いたしました。  これにて昭和五十七年度決算外二件についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  253. 角屋堅次郎

    角屋委員長 昭和五十七年度決算外二件についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、各位のお手元に配付いたしております。  これより議決案を朗読いたします。     議 決 案   昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につき、左のごとく議決すべきものと議決する。  本院は、毎年度決算審議に際し、予算の効率的執行並びに不当事項の根絶について、繰り返し政府に注意を喚起してきたにもかかわらず、依然として改善の実があがっていないのは、まことに遺憾である。  一 昭和五十七年度決算審査の結果、予算の効率的使用が行われず、所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられる。  左の事項がその主なものであるが、政府はこれらについて特に留意して適切な措置をとり、次の常会に本院にその結果を報告すべきである。   1 スパイクタイヤによる粉じんの低減対策を一層推進すべきである。   2 国際性が高まり外交の比重が年々増加するなか、情報収集、分析機能等の強化を図るため、在外公館の人員を今後とも拡充する必要がある。   3 国際社会に対応するためには、学生時代から国際感覚を会得させる必要がある。また、外国人留学生の取得資格が帰国後、各国で受け入れられるよう努めるべきである。   4 国公有地については、公用、公共用優先の原則を維持しつつ、その有効活用を図るべきである。   5 無許可医療用具の流通、使用及び医療保険の不正請求の防止を図るため、厳正な監視、指導の強化等所要の措置を講ずべきである。   6 後天性免疫不全症候群(エイズ)について、その対策を一層推進すべきである。   7 郵政職員の不正行為により毎年多額の損害を生じている。本院の議決及び会計検査院の指摘もあるが、依然として後を絶たないのでこの種犯罪の絶滅を期するため、内部監査等防犯管理体制の一層の強化を図るべきである。  二 昭和五十七年度決算検査報告において、会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。  政府は、これらの指摘事項について、それそれ是正の措置を講ずるとともに、綱紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。  三 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。  政府は、今後予算の作成並びに執行に当たつては、本院の決算審議の経過と結果を十分考慮して、財政運営の健全化を図り、もつて国民の信託にこたえるべきである。     ―――――――――――――
  254. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより昭和五十七年度決算外二件を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。糸山英太郎君。
  255. 糸山英太郎

    ○糸山委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま委員長が御提案になりましたごとく、昭和五十七年度決算を議決案のとおり議決することに賛成の意を表するものであります。  この議決案に示されているように、委員会の審査の結果、適切な措置をとるべき事項として七件、また、会計検査院決算検査報告で不当事項改善処置要求事項等二百十二件、金額にして二百十八億四千四百六十五万円の指摘がなされたことは、はなはだ遺憾なことであります。  また、公債の発行残高について見ると、昭和五十七年度末で約九十七兆円の巨額に達し、その利払い経費は約七兆円となっております。このように、利払い経費の増高は、政策的経費に充てるための財源を極度に制約するものであり、赤字公債依存体質からの脱却に向けて努力していかなければなりません。  このような実情にかんがみ、政府は、予算の執行及び財政投融資等については、国の財政事情の厳しい折からさらに各段の配慮をされ、もって所期の目的を達成し、国民の信託にこたえられることを希望いたしまして、賛成討論を終わります。(拍手)
  256. 角屋堅次郎

    角屋委員長 新村勝雄君。
  257. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま委員長から提案されました昭和五十七年度決算につき、その議決案に対し、反対の意思を表明するものであります。  議決案のうち、同予算が効率的に使われず十分な成果が上がっていないと本委員会が指摘した七項目と、さきに会計検査院から指摘された不当事項については、もちろん賛成するものであります。  昭和五十七年度予算の執行は、二兆五千億円という歳入欠陥をもたらした前年度に引き続いて、またまた六兆一千四百六十億円という巨額の税収見込み違いを犯し、経済界を初め多くの国民に、国の予算見積もりに対し再び重大な疑念を抱かせ、政府に対する信頼を大きく失墜させたことは、記憶に新しいものがあります。  昭和五十七年十一月に政権についた中曽根総理は、同十二月の臨時国会で、その六兆円余の減額補正を行ったが、内訳は特例国債、いわゆる赤字国債を三兆円余追加発行し、同時に、既定経費の節減を初め、国債費及び地方交付税交付金の減額など三兆円余を圧縮して窮地を脱したのであります。  それらの失敗は、内外経済変動のあおりと五十九年度赤字国債依存脱却を金科玉条とする硬直した鈴木自民党内閣の経済財政方針がもたらしたものであり、厳しく追及されなければなりません。また、この巨大な歳入欠陥が新たな赤字国債増発という矛盾に追い込まれ、したがって、所定の財政再建が不可能となり、鈴木内閣退陣の余儀なきに至った次第であります。こうした不適切、不合理な予算編成の轍は今後は絶対に踏んではならないことを私は改めて警告するものであります。  終わりに、決算検査をさらに充実させるために、会計検査院法の改正による検査機能の強化を初めとする各省庁の内部監査体制の整備確立、また、海外経済協力基金、ODAのあり方に対する検査決算審査の拡充強化、さらに、悪徳商法の防止についての対策の確立等々を強く要望し、あわせて、政府は今後の予算編成並びに執行についてより合理的に行われるよう要求して、私の討論を終わります。(拍手)
  258. 角屋堅次郎

    角屋委員長 貝沼次郎君。
  259. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和五十七年度決算外二件に対して、これを是認できないことを表明し、さらに、ただいま委員長から提案されました議決案に対し、反対の意思を表明するものであります。  以下、反対の主な理由を申し上げます。  第一は、議決案に「前記以外の事項については異議がない。」として、この決算を総体的に是認している点が承服できないからであります。すなわち、この事項以外にも、当委員会で指摘してきたように異議が多々あるからであります。  第二は、財政運営が不適切であったということであります。昭和五十七年度予算編成に当たって、無理を承知で、安易に税収を多く見込むために、経済成長率を名目八・四%と見込んだのですが、高く見込み過ぎだとする批判のとおり、実質五・二%と低い水準に終わり、六兆円もの税収不足を生じさせたことは、当初から予想された人為的事態であり、断じて容認できないのであります。  第三は、会計検査院から指摘された事項に対する受けとめ方に極めて不満であることであります。例えば、今回のホテル火災についても、「適」マークの徹底については我々も主張してきたところでありましたし、撚糸工業組合の件にしても、会計検査院は既に五十三年度、五十四年度決算で、中小企業振興事業団における貸付金の不当事項として指摘してきたものであります。それが生かされないで、いまだに同じようなことが繰り返されています。私は、その監督体制の甘さや、俗に言う官僚の天下りによる弊害など、政府に対して強く反省を求めたいのであります。  最後に、会計検査院の権限拡充強化のもとに検査体制の整備を図るべきであることを主張し、反対討論を終わります。(拍手)
  260. 角屋堅次郎

    角屋委員長 玉置一弥君。
  261. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、昭和五十七年度決算外二件について、また、ただいま委員長より御提案の議決案に反対の意を表明するものであります。  すなわち、昭和五十七年度予算は、「増税なき財政再建」、ゼロシーリングを主軸に編成していると言いながら、我が党のかねてからの主張である経済的、社会的に恵まれない人々に対する施策に欠け、老人医療費の一部負担の新設、公共料金の値上げ等を行っていること、不公平税制の是正による一兆円の減税要求を無視し、長期景気停滞からの脱却と国民生活の安定に失敗したことであります。このように予算編成及び執行が誤っているものであるから、その結果について我が党は到底賛成できません。  また、会計検査院が指摘しております百八十一件六十二億六千万円余の不当事項、十四件百十一億三千万円余の処置要求事項等があり、なお一般会計不用額は二千四百二十二億円、翌年度繰越額五千五百四十億円、事故繰越額四十七億円となっております。これらは審議の段階でも指摘してきましたが、その執行については、公正で効率的使用とは到底認めることはできません。  また、議決案にない我が党の指摘も数々あり、第三の「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」とすることは、賛成できるものではありません。  以上の理由等に基づき、私は議決案に反対の意思を表明するものであります。  最後に、政府の進めている行政改革はしりすぼみにならぬよう全力を傾注して推進されることを強く要望して、私の討論を終わります。(拍手)
  262. 角屋堅次郎

  263. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和五十七年度決算を議決案どおり決するに反対の意を表明いたします。  まず、昭和五十七年度決算の反対理由を述べます。  反対理由の第一は、本決算が軍事費を削って暮らしと福祉、教育の充実を求める国民世論に逆行し、軍事費だけをシーリング枠を超える七・七五四%増の二兆六千億円と異常突出させていることであります。この財政難の中、自衛隊の装備、施設が増強され、危険な日米軍事同盟体制の質的強化を示すものであり、断じて容認できません。  反対理由の第二は、本決算が大企業への補助金や優遇税制には手をつけず、軍事費とともに聖域扱いしていることであります。  第三の理由は、軍事費と大企業奉仕という二つの聖域のもとで、国民には五年連続の所得減税見送りによる実質大増税、臨調行革路線のもとでの保育所予算の大幅減額、老人医療費の有料化など福祉切り捨てや公共料金値上げなど、国民に多大な負担と犠牲が押しつけられていることであります。  第四の反対理由は、税収不足が不可避であることを承知の上で粉飾予算を組んで、年度途中で大破綻を来し、赤字国債を増発したばかりか、人事院勧告の凍結、地方交付税の大幅減額を断行するなど、国民を犠牲にしてつじつま合わせをしていることであります。  第五の反対理由は、財政執行面においても、我が党が三井建設の内部文書で明らかにしたように、談合入札や持参金つき天下りなど政官財癒着の腐敗構造に起因するむだが依然として温存されていることであります。  以上の内容を持つ五十七年度決算について、ごく限られた指摘事項のほかは異議がないとする本決議案には、到底賛成することはできません。  国有財産の増減及び現在額総計算書は、広大な米軍、自衛隊基地使用が含まれているなどの内容を持った国有財産管理のあり方を示す本計算書を是認することはできません。  国有財産無償貸付状況計算書については、制度自体の意義は否定しませんが、その実態を示す資料は提出されておらず、一部に管理運用上に重大な疑義がある事態が残されたままとなっており、これを是認することはできません。  以上で私の討論を終わります。(拍手)
  264. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  265. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより順次採決いたします。  昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計算書及び昭和五十七年度政府関係機関決算書を議決案のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  266. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、議決案のとおり決しました。  次に、昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書の両件は、これを是認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  267. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につぎましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  269. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、各国務大臣から順次発言を求めます。竹下大蔵大臣
  270. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいま御決議のありました国公有地の活用につきましては、公用、公共用優先の原則を維持しつつ、今後ともその有効活用を図るよう努めてまいりたいと存します。
  271. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、安倍外務大臣。
  272. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま御決議のありました在外公館の改善につきましては、御決議の趣旨を踏まえて今後とも努力してまいる所存であります。
  273. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、海部文部大臣。
  274. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 ただいま御決議のありました教育の国際化につきましては、御決議の趣旨を踏まえ、努力してまいりたいと存じます。
  275. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、今井厚生大臣。
  276. 今井勇

    ○今井国務大臣 ただいま御決議がありました無許可医療用具の流通、使用及び医療保険の不正請求の防止につきましては、御決議の趣旨に沿って、その監視、指導の強化等所要の措置を講じてまいる所存であります。  次に、後天性免疫不全症候群(エイズ)の対策につきましては、御趣旨を体して一層の推進に努めてまいる所存であります。
  277. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、佐藤郵政大臣。
  278. 佐藤文生

    ○佐藤国務大臣 ただいま御決議のありました職員による不正行為の再発防止につきましては、従来から重ねて注意を喚起してまいりましたが、御指摘のような不祥事件が発生しましたことはまことに遺憾でございます。  当省といたしましては、御決議の趣旨に沿って、このような事態が生じないよう、今後一層指導監督の徹底を図ってまいりたいと存じます。
  279. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、森環境庁長官
  280. 森美秀

    ○森国務大臣 ただいま御決議のありましたスパイクタイヤによる粉じんの低減につきましては、従来から対策を講じてきたところでありますが、今後とも関係省庁、地方公共団体等と十分連携をとって、御決議の趣旨に沿うよう一層の努力をいたす所存でございます。
  281. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上をもちまして各国務大臣からの発言は終わりました。      ――――◇―――――
  282. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十八年度政府関係機関決算書並びに昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書の各件を一括して議題といたします。  大蔵大臣から各件について概要説明を求めます。竹下大蔵大臣
  283. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに国会に提出し、また、昭和五十八年度の国の債権の現在額並びに物品の増減及び現在額につきましても国会に報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十八年度予算は、昭和五十八年四月四日に成立いたしました。  この予算は、臨時行政調査会による改革方策の着実な実施を図るなど、歳出面においては、経費の徹底した節減合理化によりその規模を厳しく抑制しつつ、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、質的な充実に配慮するとともに、歳入面においても、税外収入等につき極力見直しを行い、これにより、公債発行額を可能な限り抑制することを基本方針として編成されたものであります。  さらに、補正予算が編成され、昭和五十九年二月二十四日その成立を見ました。  この補正予算では、昭和五十八年の年内減税等に対処するとともに、特例公債の増額を行わず、既定経費の節減、予備費の減額、税外収入の増加、前年度剰余金の受け入れにより、義務的経費の追加等通常の追加財政需要を賄うこととし、災害復旧費の追加については、建設公債の追加発行によることといたしました。  この補正によりまして、昭和五十八年度一般会計予算は、歳入歳出とも五十兆八千三百九十四億四千百七十四万四千円となりました。  以下、昭和五十八年度決算につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして、歳入決算額は五十一兆六千五百二十九億四百五十七万円余、歳出決算額は五十兆六千三百五十三億七百十万円余でありまして、差し引き一兆百七十五億九千七百四十七万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、昭和五十九年度へ繰り越しました歳出予算の財源等に充てるものでありまして、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和五十九年度歳入に繰り入れ済みであります。  なお、昭和五十八年度における財政法第六条の純剰余金は二千五百六億二千三百七十三万円余となります。この純剰余金の二分の一を下らない金額は、財政法第六条第一項の規定によりまして、公債または借入金の償還財源に充てることとなるわけであります。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額五十兆八千三百九十四億四千百七十四万円余に比べて八千百三十四億六千二百八十三万円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額五千五百四十億五千七百九十八万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和五十八年度歳入の純増加額は二千五百九十四億四百八十五万円余となるのであります。その内訳は、租税及び印紙収入における増加額四千五百六十三億二千七百八十二万円余、専売納付金における増加額百五十九億五千六百六十八万円余、官業益金及び官業収入における増加額八億六千二百五十七万円余、政府資産整理収入における増加額六十一億九百七十二万円余、雑収入における増加額八百三十八億八百十一万円余、公債金における減少額三千三十六億六千七万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額五十兆八千三百九十四億四千百七十四万円余に、昭和五十七年度からの繰越額五千五百四十億五千七百九十八万円余を加えました歳出予算現額五十一兆三千九百三十四億九千九百七十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は五十兆六千三百五十三億七百十万円余でありまして、その差額七千五百八十一億九千二百六十二万円余のうち、昭和五十九年度に繰り越しました額は六千百九十一億二百五十七万円余となっており、不用となりました額は千三百九十億九千五万円余となっております。  なお、昭和五十六年度決算上の不足に係る国債整理基金からの繰入相当額二兆二千五百二十四億九千二百七十一万円余につきましては、法律の規定に従い、同基金に繰り戻しております。  次に、予備費でありますが、昭和五十八年度一般会計における予備費の予算額は二千百億円であります。その使用額は千八百四十七億千百七十七万円余でありまして、その使用の内容につきましては、別途国会に提出いたしました予備費使用総調書等によって御了承願いたいと存じます。  次に、一般会計の国庫債務負担行為につきまして申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は二兆四百十三億二千九百六万円余でありますが、契約等による本年度の債務負担額は一兆九千八百十四億六千六十三万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額二兆八千二百十八億七千七百二十二万円余を加え、昭和五十八年度中の支出等による本年度の債務消滅額一兆七千八百六十六億五千四百九十八万円余を差し引いた額三兆百六十六億八千二百八十七万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一千億円でありますが、契約等による本年度の債務負担額はありません。また、既往年度からの繰越債務額もありませんので、翌年度以降への繰越債務額はありません。  次に、昭和五十八年度特別会計決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和五十八年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は三十三兆千二百八十四億七千四百六十四万円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は三十三兆千八十三億九千百三十七万円余でありますので、差し引き二百億八千三百二十六万円余が昭和五十八年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和五十八年度の政府関係機関の決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和五十八年度末における国の債権の総額は百十一兆三千七百四十四億二千三十万円余でありまして、前年度末現在額百二兆四千四百六十六億七千百六十七万円余に比べて八兆九千二百七十七億四千八百六十二万円余の増加となります。  その内容の詳細につきましては、昭和五十八年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品の増減及び現在額でありますが、昭和五十八年度中における純増加額は三千九百三十八億千八百九十万円余でありますので、これに前年度末現在額三兆四千四百五十八億九千三百六万円余を加えますと、昭和五十八年度末における物品の総額は三兆八千三百九十七億千百九十六万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和五十八年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が、昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等の概要であります。  なお、昭和五十八年度の予算の執行につきましては、予算の効率的な使用、経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から、百五十七件の不当事項等について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算の執行につきましては、今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。  次に、昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書を、会計検査院検査報告とともに第百二回国会に報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について御説明いたします。  昭和五十八年度中に増加しました国有財産は、行政財産一兆六千百二十九億四千六百三十八万円余、普通財産一兆七千二百四十四億三千六百四十三万円余、総額三兆三千三百七十三億八千二百八十一万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産は、行政財産四千百六十一億八千四百三十一万円余、普通財産三千九百八十七億六千七百四十三万円余、総額八千百四十九億五千百七十五万円余でありまして、差し引き二兆五千二百二十四億三千百六万円余の純増加となっております。これを昭和五十七年度末現在額三十七兆七千六百二十三億千二百四十三万円余に加算いたしますと四十兆二千八百四十七億四千三百五十万円余となり、これが昭和五十八年度末現在における国有財産の総額であります。  この総額の内訳を分類別に申し上げますと、行政財産二十三兆四千六百十七億四千八十二万円余、普通財産十六兆八千二百三十億二百六十七万円余となっております。  なお、行政財産の内訳を種類別に申し上げますと、公用財産十五兆二千百五十六億千五百八十九万円余、公共用財産四千二百八十億四千百六十万円余、皇室用財産五千四百七十六億二千九十四万円余、企業用財産七兆二千七百四億六千二百三十七万円余となっております。  また、国有財産の総額の内訳を区分別に申し上げますと、土地十兆七千二百四十四億二千五百一万円余、立木竹四兆二千七百四十六億五千八百四十万円余、建物五兆千二百八十三億九千五百七十九万円余、工作物四兆四千三百七億七千百二十一万円余、機械器具八億四千八十九万円余、船舶一兆百五十二億五千六百二万円余、航空機八千九百六十四億八千七百六十二万円余、地上権等十五億千七百八十一万円余、特許権等三十九億二百四十一万円余、政府出資等十三兆八千八十四億八千八百二十八万円余となっております。  次に、国有財産の増減の内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和五十八年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は三兆三千三百七十三億八千二百八十一万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は二兆八千二百九十二億四千六百三十五万円余、第二に、国の内部における異動によって増加しました財産は五千八十一億三千六百四十六万円余であります。  次に、減少領について申し上げますと、その総額は八千百四十九億五千百七十五万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は三千三百九十一億三千八百三十一万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は四千七百五十八億千三百四十三万円余であります。  以上が昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書概要について御説明いたします。  昭和五十八年度中に増加しました無償貸付財産の総額は千八百八億二千九百七十三万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産の総額は千六百九十八億二千百五十八万円余でありまして、差し引き百十億八百十五万円余の純増加となっております。これを昭和五十七年度末現在額六千二百四十一億三百三十一万円余に加算いたしますと六千三百五十一億千百四十六万円余となり、これが昭和五十八年度末現在において無償貸付をしている国有財産の総額であります。  以上が昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  284. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、会計検査院当局から各件の検査報告に関する概要説明を求めます。大久保会計検査院長
  285. 大久保孟

    ○大久保会計検査院長 昭和五十八年度決算検査報告につきまして、その概要説明いたします。  会計検査院は、五十九年十月十二日、内閣から昭和五十八年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十八年度決算検査報告とともに、五十九年十二月十日、内閣に回付いたしました。  昭和五十八年度一般会計決算額は、歳入五十一兆六千五百二十九億四百五十七万余円、歳出五十兆六千三百五十三億七百十万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において三兆六千五百十六億二千三百六十四万余円、歳出において三兆三千九百二億四千三百三十九万余円の増加になっており、各特別会計決算額合計額は、歳入百十九兆千九百五億三千九百五十七万余円、歳出百六兆二千七百六十六億三千四十万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において七兆四千五百三十一億六千八百四十七万余円、歳出において八兆三千九百六十九億五千九百四万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金は、収納済み額三十三兆千二百八十四億七千四百六十四万余円、歳入組み入れ額三十二兆七百九億四千百八十一万余円であります。  政府関係機関の昭和五十八年度決算額の総計は、収入二十四兆五千八百四十三億五千四百二十二万余円、支出二十四兆二千五百三十億五千七百四十六万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆千五十九億六千七百十九万余円、支出において九千九百四十八億二千九百七十五万余円の増加になっております。  昭和五十八年度歳入歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等の検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十四万余冊及び証拠書類六千五百五十六万余枚について行い、また、実施検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万千二百余カ所のうち、その八・四%に当たる三千五百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して九百余事項の質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した不当事項等について、その概要説明いたします。  まず、不当事項について申し上げます。  不当事項として検査報告に掲記いたしましたものは、合計百五十七件であります。  このうち、収入に関するものは、九件、二十一億四千百八十八万余円でありまして、その内訳は、租税の徴収額に過不足があったものが一件、十一億九千六十八万余円、保険料の徴収額に過不足があったものが三件、九億二千三百万余円、職員の不正行為による損害を生じたものが五件、二千八百二十万余円。  また、支出に関するものは、百八件、五十三億千四十万余円でありまして、その内訳は、工事に関するものとして、設計が適切でなかったため不経済になったもの、予定価格の積算が適切でなかったため契約額が割高になったものが二件、三千百八十万余円、役務に関するものとして、予定価格の積算または委託費の精算が適切でなかったため支払い額が過大になったもの、契約処置が適切でなかったため不経済になったものが三件、五千四百四十五万余円、保険に関するものとして、傷病手当金や保険給付金の支給が適正でなかったものが四件、二億三千六百七十八万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが七十四件、四十一億千八百五十六万余円、貸付金に関するものとして、貸し付けの目的を達していなかったもの、貸付額が過大になっていたものなどが二十三件、八億六千四百二十四万余円、職員の不正行為による損害を生じたものが二件、四百五十四万余円であります。  以上の収入、支出に関するもののほか、自作農創設特別措置特別会計所属の国有財産について、管理が適切を欠いたため土地が無断で使用されているものなどが一件、五億七千八百六十八万余円、郵便貯金の払戻金、簡易生命保険の貸付金等について、職員の不正行為による損害を生じたものが三十九件、三億五千三百八十三万余円ありまして、これらの合計は、百五十七件、八十三億八千四百八十万余円となっております。これを前年度の百八十一件、六十二億六千七百七十二万余円と比べますと、件数において二十四件の減少金額において二十一億一千七百七万余円の増加となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  五十九年中におきまして、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは四件、また、同法第三十六条の規定により意見を表示いたしましたものは三件であります。  このうち、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは、厚生省の船員保険の失業保険金の支給の適正化に関するもの、農林水産省の漁港整備事業の計画と実施に関するもの、日本国有鉄道の旅行センターにおける乗車券類の発売に関するもの、日本電信電話公社の電話中継所における多重変換装置の設置に関するものであります。  また、会計検査院法第三十六条の規定により意見を表示いたしましたものは、農林水産省の国営かんがい排水事業及びこれに附帯する道県営、団体営事業の施行に関するもの、集団育成事業の実施及び効果に関するもの、日本電信電話公社の電話運用業務の運営に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について説明いたします。  これは、検査の過程におきまして、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発遣するなどして検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものでありまして、検査報告に掲記しましたものは十五件であります。すなわち、総理府の戦車道の舗装工事の設計に関するもの、農林水産省の国内産米麦の買い入れ代金の決済及び自主流通米に係る概算買い入れ代金の返納の事務処理に関するもの、郵政省の郵便物の運送業務における託送船舶に係る船舶請負料の算定に関するもの、建設省の住宅新築資金等貸付事業における貸付目的を達していない期限前償還金の取り扱いに関するもの、日本国有鉄道のマルチプルタイタンパーの軌道強化工事への活用に関するもの、業務委託または役務請負契約に係る労災保険料の算定に関するもの、自動車乗車券類の発売等の委託に関するもの、日本電信電話公社の業務関係資料の運送作業の請負契約における運送方法に関するもの、住宅金融公庫公庫貸し付けを受けて購入したマンションの第三者賃貸等の防止に関するもの、日本道路公団の高速道路等の通行料金の本社への送金回数に関するもの、遮音壁等の支柱用H形鋼の仕様に関するもの、道路土工工事におけるボックスカルバートの設計に関するもの、阪神高速道路公団のテレビジョン電波受信障害改善施設の維持管理業務における保守費の積算に関するもの、住宅・都市整備公団の長期保有に係る道路等の移管予定施設に関するもの、年金福祉事業団の被保険者住宅資金の貸し付けを受けて購入したマンションの第三者賃貸等の防止に関するものであります。  最後に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  この事項は、事業効果または事業運営等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、昭和五十八年度決算検査報告には、次の三件を掲げております。すなわち、農林水産省・蚕糸砂糖類価格安定事業団の繭糸価格安定制度に関するもの、建設省の多目的ダム等建設事業に関するもの、水資源開発公団の多目的ダム等建設事業に関するものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。  引き続きまして、昭和五十八年度国有財産検査報告につきまして、その概要説明いたします。  会計検査院は、五十九年十月十二日、内閣から昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十八年度国有財産検査報告とともに、五十九年十二月十日、内閣に回付いたしました。  五十七年度末の国有財産現在額は、三十七兆七千六百二十三億千二百四十三万余円でありましたが、五十八年度中の増が三兆三千三百七十三億八千二百八十一万余円、同年度中の減が八千百四十九億五千百七十五万余円ありましたので、差し引き五十八年度末の現在額は四十兆二千八百四十七億四千三百五十万余円になり、前年度に比べますと二兆五千二百二十四億三千百六万余円の増加になっております。  また、国有財産の無償貸付状況につきましては、五十七年度末には、六千二百四十一億三百三十一万余円でありましたが、五十八年度中の増が千八百八億二千九百七十三万余円、同年度中の減が千六百九十八億二千百五十八万余円ありましたので、差し引き百十億八百十五万余円の増加を見まして、五十八年度末の無償貸付財産の総額は六千三百五十一億千百四十六万余円になっております。  検査の結果、昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、昭和五十八年度決算検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項といたしましては、農林水産省の国有財産の管理が適切を欠いているものの一件であり、また、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項といたしましては、総理府の戦車道の舗装工事の設計を適切なものに改善させたものの一件でございます。  以上をもって概要説明を終わります。
  286. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて昭和五十八年度決算外二件の概要説明聴取を終わります。     ―――――――――――――
  287. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、資料要求の件についてお諮りいたします。  例年、大蔵省当局に対して提出を求めております決算検査報告に掲記された会計検査院の指摘事項に対する関係責任者の処分状況調べについて、昭和五十八年度決算につきましてもその提出を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、長時間にわたりまして、夜遅くまで本委員会の審議に大変な御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。委員長として心から厚くお礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後十時八分散会