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1986-05-07 第104回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月七日(水曜日)     午前十一時三分開議 出席委員   委員長 北川 石松君    理事 奥田 敬和君 理事 田中 秀征君    理事 西山敬次郎君 理事 村田敬次郎君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       臼井日出男君    鍵田忠三郎君       竹内 黎一君    中山 正暉君       仲村 正治君    浜田 幸一君       町村 信孝君    岡田 春夫君       小林  進君    鳥居 一雄君       波部 一郎君    永末 英一君       岡崎万寿秀君    田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務大臣官房審         議官      都甲 岳洋君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省中南米局         長       山口 達男君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     臼井日出男君   山下 元利君     浜田 幸一君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     鯨岡 兵輔君   浜田 幸一君     山下 元利君     ————————————— 五月二日  核兵器廃絶等に関する請願八木昇紹介)  (第三七六七号)  非核三原則完全実施等に関する請願東中光雄  君紹介)(第三七六八号) 同月六日  核兵器廃絶等に関する請願近江巳記夫君紹  介)(第三八五九号)  同(佐藤敬治紹介)(第三八六〇号)  同(島田琢郎紹介)(第三八六一号)  同(嶋崎譲紹介)(第三八六二号)  同(日野市朗紹介)(第三八六三号)  同(森田景一君紹介)(第三八六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用政策に関する条約(第百二十二号)の締結  について承認を求めるの件(条約第六号)  人的資源の開発における職業指導及び職業訓練  に関する条約(第百四十二号)の締結について  承認を求めるの件(条約第七号)  原子力の平和的利用における協力のための日本  国政府中華人民共和国政府との間の協定の締  結について承認を求めるの件(条約第三号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北川石松

    北川委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 先般東京サミットを終えられた外務大臣に、非常に限られた時間でございますので、問題を絞って端的にお伺いをしたいと思います。  いろいろなことが討議されたのでございますけれども、リビア問題につきまして一つのステートメントが出されたようでありますが、前回、当外務委員会におきまして外務大臣は、アメリカリビア爆撃について、いわばどっちつかずの白紙状態で行くことが国益に合致する、その辺はまあひとつ御理解いただきたいというような意味の御答弁でございました。私どもは、またこれについては全く別な意見を持っておるわけでございますけれども、外務大臣の御答弁はそういうことに終始されたのでございます。  今回の東京サミットで、リビアを名指しで非難することに同調したのはなぜでしょうか。また、これは外務大臣前回述べられたことからいいますと、国益を損なうことになるのではないでしょうか。外務大臣の御意見を承りたい。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リビアがいわゆる一連テロ関与しているかどうかということについて、先般の委員会におきましては、ベルリンにおけるディスコに対するテロ事件に対して私が談話を出しました、これをもとにいたしましてお話を申し上げた。日本リビアと遠い関係にありますし、アメリカの一応の話を聞いておりますけれども、具体的には実情についてまだ承知をしていない、こういう立場であったわけでございます。  しかし、もちろんテロというものに対して、日本断固として糾弾しなければならない、これは一貫をしてきたわけでございますが、その後アメリカ側から、あるいはまたEC諸国から、リビアテロへの関与について、実は外交ルートを通じての詳細な説明があったわけであります。この説明を聞きまして、そして日本政府として報道官談話という形でもって、リビア関与についてはその認識を深めだということを発表したわけでございますが、それは背景としましては、アメリカを初めとするヨーロッパ諸国日本政府に対する外交ルートを通じての一連事件についての背景説明実状説明、実態の説明があった、これを受けまして、日本としましても、そういういろいろな説明を聞いている中で、これはやはり関与しているという認識を持たざるを得ないという立場に立ってああいう認識を深めた、こういうことで見解を発表したわけでございます。そういう中で実はサミットに臨んだわけです。  そしてサミットでは、首脳会議でこのテロ声明についての議論が活発に行われた。そして事前に、ある程度いろいろと文案も話し合いでできておったわけでございますが、さらにその文案についての修正等も、サミットは何といっても首脳会議ですから、首脳意見がいろいろと反映をいたしまして、そしてリビアについても明記をされるという事態になったわけでありまして、これは、サミット参加国首脳の最終的な完全な意見一致を見て、ああした則記ということになったわけでございます。  ただ、この明記をして、そしてテロ声明に基づきましていろいろ措置をとる、その場合における判断は、もちろんその国の持っておる、各国との間に結んでおる条約であるとかあるいはまた国内法、そういうものを踏まえて独自の立場でやることは当然のことでございます。その辺ははっきり留保されているわけですが、しかし、いずれにしてもリビアテロ関与しているということについてのサミット参加国首脳意見一致をして、これがテロ声明の中に書かれる、こういうことになったわけであります。
  5. 河上民雄

    河上委員 今、前回大臣の御説明と今回の東京サミットの態度との間に、大きな速いがあるわけですが、なぜ変わったかということについては、ただ、より詳細な説明情報があったということだけでございます。  今のお話で、首脳が全員一致したからということでございますが、その首脳というのは、七カ国のナンバーワンの七人の意見ということでございますか、それとも外務大臣、おたくも含めてのことでございますか。また、一致をしたといいますけれども、日本政府としては率先してそっちの方向へ行ったのか、それとも他の六カ国がそういう方向にまとまったので、議長国として七番目に同意したということなのでしょうか、その点伺いたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サミット会議の内容についていろいろと発表をし、他国の発言等について説明をするということは、申し合わせでお互いに遠慮しようということになっておりますから、余り具体的に申し上げることもできませんけれども、基本的に申し上げれば、日本議長国であった、したがって経済声明についてもあるいはまた政治宣言につきましても、これを取りまとめなければならないという役割にあったわけでございます。したがって、議長国というのは、どういう会議でもそうですが、余り初めから積極的に発言はしないで、最終的には全体の意見を取りまとめながら、同時にまた自分の国の意見もそういう中で主張していくということでしょう。むしろ、まとめるということに一つの主眼、大きな役割があったわけでございますし、このテロ声明についても最終的には議長国として、その他の国々意見を聞いて取りまとめたということでございます。その取りまとめる段階に当たっては、少なくとも参加している国々意見は完全に一致しておった、リビアという名前をメンションすることははっきり一致しておったということは、申し上げられると思います。
  7. 河上民雄

    河上委員 今のお話は、やや無責任な御答弁だと思うのであります。しかしいずれにせよ、議長国という立場上というお話もありましたけれども、一方に完全にコミットしたということは明らかだと思うのでございます。少なくとも中東諸国は、そのように受け取っておるわけでございます。  私は、ベイルートに在勤の経験のある新聞通信関係のある特派員の奥さんからお話を承ったことがありますが、ベイルートは、あのように戦争と生活が共存しているような町でも、日本通信社新聞社であることを表示して車で運転しておると安全だったという、その理由は、日本中東問題に対してやはり非常に中立的な立場をとっておる、またどの勢力にも武器輸出をしていない、こういうイメージが非常に徹底しているので、そうであったというふうに聞いておるのでございます。ところが、今回の東京サミットの結果、今後中東にいる日本人が、従来テロ対象米英人に集中しておったのですけれども、今後一はテロターゲットになる可能性が生まれてきたのではないか、そういうことがあっては困るわけですけれども、そういう心配が非常に出てまいります。その場合、東京サミットをまとめた立場からの責任というものが当然生じてくると私は思うのでありますが、外務大臣、その点いかがですか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは我々国際社会に生きている国家として、テロというもの、特に国際的なテロというものに対して断固として闘っていく、そうしてこれを防止するためにその国としての全力を尽くす、また協力関係も進めていくというのが、少なくとも国際社会に生きる国家として、特に日本としては当然のことではないかと私は思っております。そうしたテロ国際テロというものに対する断固たる姿勢、これを表明し、またこれを防止するための協力行為を進めていくということは、これまでも実はサミットでずっとやってきたわけでございます。  実は今度の声明におきましても、これはただ単に例えばアラブをねらってやったとかそういうものではありませんで、どこで行われるものであっても、あくまでもテロというものに対して断固として闘っていこうということでございますから、今御指摘がございましたように、何か今度の声明一つアラブ諸国ターゲットにしてやったということでは決してないわけでございます。テロそのものに対して、国際テロそのものに対して断固として反対をし、そうしてその防止のための措置をとっていこうということでございます。  したがって、そういう中で中東諸国でも、今度のサミットについての批判がいろいろと出ていることは事実であろうと思いますが、日本日本としてのこの中東政策についての立場は明快にしております。そうしたテロというものに対する我々の協力行動、そして防止措置についての立場というものは明らかにするわけでございますが、同時に中東政策については、これまでもあるいは今後とも日本の独自の立場はあるわけでございます。それは毫末も変化するものではないということは、私も、この声明の出された後で記者会見でも明快に申し上げておるとおりでありますし、それは今後とも貫いてまいりたい、このように思っております。
  9. 河上民雄

    河上委員 今伺っておりましても、我々ですら今外務大臣が言わんとするところがよくわからないわけでございます。ましてや中東諸国としては、自分たちの非常な利害関係にかかってくるわけですから、今の外務大臣の御説明では、やはりどうも中東政策が変わったんではないかという印象が強いと思うのです。その疑惑は払拭できないと思います。外務大臣、何かその点で中東政策について、今後この機会に中東諸国にも理解を得られるような行動なり声明なり、そういうような努力をされるおつもりでしょうか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは別に、サミットに参加している国々外交政策そのものに介入していこうということではサミットはありませんし、いろいろと話をお互いにしている中でも、中東政策についてもあるいはまたその他の世界政策につきましてもその国独自の政策というのがあるわけで、そこまで介入し、そしてブレーキをかけようということではないわけでございます。それはお互い外交政策というものがあるわけでありますから、日本日本としての中東政策テロというものに対しては、国際的に我々としては協力して防止のために努力をしていかなければならぬ、これは当然のことである。しかし、中東政策はそれぞれ独自のものをその国々が持っているわけで、日本も独自の中東政策、あるいはまたアメリカもそうですし、フランスあるいはまたイタリア、それぞれの中東政策を持っております。これは、それぞれが大いに諭し合ったわけでありますが、それはそれなりに、お互い政策をこれからも貫いていくという姿勢は変わってないわけですから、このテロ声明一つをとってみて、日本中東政策が変わったと言うことは全くの速断でありまして、我々は毫末もそういうことは考えてないし、今後ともそういう変えようなんという意思は持っておりません。これははっきり申し上げます。
  11. 河上民雄

    河上委員 前回、私がこの問題で御質問したことに対する大臣答弁から見ますと、白紙状態というか、それが国益に合致するというお立場だった点からいいますと、今や白紙状態ではなくなっているわけですから、その点は我々としてはちょっと了解しがたいことだと思うのです。  もう一つ大臣東京サミット国民が非常に関心を持っておりましたのはやはり円高問題だと思うのでありますが、大臣としては、今回の東京サミット円高をストップさせるおつもりでしたのでしょうか。その約束を取りつけることに成功したというふうにお考えでしょうか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題は、ストップさせるとかさせないとか、なかなかそう簡単に決着ができる問題ではないと私は思っておりますし、既に日米間では、この円高問題についても首脳間でも話し合っておりますし、アメリカ側としても、そうした急激な円高における日本経済界国民生活に与える影響というものについても十分承知をしていることは事実でございます。しかし、アメリカアメリカ立場がある、あるいはまたヨーロッパヨーロッパ側立場もあるわけでございますし、今そろって円高をストップさせるために各国協調するという状況にないことは、客観的によく御理解もいただけると思うわけでございます。  そういうふうな中で、しかし少なくともG7一つ協調介入といいますか、そういう一つの道といいますか、枠組みというものが生まれたということは、今後の各国経済、いろいろと変動が起こっていくでしょうが、そういう中で調整をとっていくという政策協調の道は私は開かれてきたんじゃないか。円高が進んで、日本経済に非常につらい苦痛を与えているということは、我々も政治家として身をもって感じておるわけでございますが、国際的なそうした合意というところまではいかない、そういうことまでサミットに求めることはなかなか困難であるということは我々も十分踏まえながら、しかし同時に、お互い協調枠組みというものを崩さないで、そしてこれを動かしていかなきゃならぬ、こういう点では努力をしてきたわけでございます。
  13. 河上民雄

    河上委員 今のお話では、やはりどうもストップさせることには失敗した、約束を取りつけることには失敗したというふうに大臣自身踏んでいるようでございます。しかし、今G7ということで、いわば監視機能みたいなものができる、こういうことになったようですが、これは現在の円高高値安定させようということなんですか。それとも、今大臣も言われましたように、現在の円高日本経済、特に中小企業、大企業の一部もそうですが、大変苦しんでおる、この状態をもう少し緩和するところへ持っていきたいということでございますか。それとも、もう高値安定やむなし、こういうふうに判断されたことでしょうか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、私がお答えをする立場であるかどうか問題はあると思いますけれども、少なくとも、G5以来続いてまいりました円高、そして為替調整措置、それは基本的には世界経済安定化させるといいますか、貿易の不均衡等を是正するという意味においては一つのメリットといいますか、そういうものはあったし、それなりの評価される措置であったと私は思いますが、それが急激な動きとなりまして、そして日本自身が予想している以上の円高というものが起こってきておる、こういう状況にあるわけでございます。これ以上の円高がさらに進むということになると、当初の一つ期待に反して、むしろ世界経済日本経済を混乱させるということになるわけですから、我々としては、この辺でやはり一つ安定化方向へこの為替相場が動いていくことを期待しておりますし、そのための努力も傾けてきたわけです。  水準をどこに置くかということは、これは私自身政府一員ですからここで申し上げる立場にはないわけでございますが、いずれにしても為替相場安定させなきゃならない、まだこれからどんどん動いていくんだということでは経済安定化にもつながらないということで、やはり安定させなきゃならぬということでありまして、この点については、私は諸外国もそういう考え方を持っておるんじゃないか。私は、アメリカシュルツ長官とも話し合ったのですが、そのときは私から、為替相場というのはある程度経済実勢を反映して動いておる、これはもう間違いないことであるけれども、そうした実勢を反映して動くと同時に、また為替相場というのは安定をしていかなきゃならない、それは今の世界経済安定させるためにも大事だということを申し上げました。それについてはシュルツさんも、全く同感だ、実勢背景にあるとしても為替相場としては安定をさせなきゃならぬということは言っておられるわけでございます。  しかし、水準というものに対しては、やはり各国それぞれの思惑はあると思いますが、私はそういう中で安定をしていくという一つ方向が出ることをこれからも期待をして、そのために努力をしていかなきゃならぬと思いますし、七カ国でお互いに積極的にこうした現在の経済状況等も論じ合っておるわけでございますが、そういう中で協調という姿勢政策協調についての枠組み、これはやはり積極的にこれから進めていかなきゃならないという合意といいますか、そういうお互い理解というものは随分進んだんじゃないだろうかと私は思っておるわけでございます。今自体においては、円高が進んでおるということを我々は非常に心配しておりますが、そうした合意とか枠組みというものは、これから有効に機能する可能性は十分あるのではないか、こういうふうに私は思っております。
  15. 河上民雄

    河上委員 大臣の今の御答弁は——最近どうも担当大臣が話をされたことがきっかけで、また円高が進むということをずっと続けてきているような気がするのですが、大まかに言いまして、今まで三つの段階を踏んで円高が進んできていると思うのです。去年の秋のG5の会議で、これは意図的に円高政策をとる、こういうことを決められたわけです。ところが、予想外の速さで進んできた。そこで何とかとめたいということで、四月八日、竹下大蔵大臣が百八十円で一応定着させるということについて合意ができたという談話を発表したところが、今度は諸外国から、いや、そんな話はなかったというようなことで、結局これがかえって促進して百七十円台へと進んできた。今度は東京サミット。その前に首相、外相の訪米というようなことで、何とかここら辺でというお気持ちだったかもしれませんが、どうも約束を取りつけられない。したがって、東京サミットが終わった途端に百六十五円という最高値を記録するというようなことになりました。  私ども、業界の方からいろいろ陳情を受けるのですけれども、中小企業あたりでに、二百十円以上には上がらないという前提でレートをつくったところがこの始末だ。大企業でも、二百円で何とかということでやってきたということでありますが、どうも今の状態で大変困っておるということでございます。東京サミットを今終わりまして、華麗なる政治ショーが終わっていわばうたげの後、円高はどうなりますか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私もさっぱりわかりませんが、まさに一つ相場ですから、どういうふうな動きをするか見当もつきませんけれども、日本としまして、私も政府一員としてこれ以上円高が進むというのは困る、こういうふうに思っておりますし、そのために日本としても、せっかくのこうした議長国として七カ国の合意を取りつける努力をしたわけですし、それはそれなりに七カ国も、日本以外の国々日本努力を評価しておるわけでございますし、お互い協調していこうということですから、日本立場も十分諸外国説明をして、この枠組みの中で一目も早く安定をするようにこれから国際的な協調努力をしていかなきゃならぬ。国内的にもこうした、これは中曽根総理のきのうの記者会見においても述べておられますが、円高によって非常に打撃を受けております中小企業その他に対しまして、やはり政治として手を差し伸べていかなければならないということはこれは当然のことだろう、こういうふうに思います。
  17. 河上民雄

    河上委員 ことしの二月に通産省中小企業庁が、全国四十四の産地対象に行った円高影響調査があるわけでございますけれども、それによりますと、輸出向け新規成約が完全にストップした企業が出ている産地が二十六、受注残適正水準を五〇%以上下回っている産地が三十一、資金繰りが苦しくなっている産地が三十一にも達している、こういう報告でございます。この調査を行われたときよりまた円高はさらに進んでいるわけでございますし、アメリカあたりでは百五十円を一つの目標にいろいろやろうとしているやに伝えられておるのでありますけれども、これ以上円高が進んだ場合には政府としては、今何か具体的な救いの手を差し伸べると言われましたが、具体的にいつごろそういうことを決められるのか。  また一方では、自動車部分品あるいは背高コンテナ等につきましてMOSS協議に応ずるということ、通産省も反対しておりましたのが今回応ずることになったようでございますが、こういうことも下請企業に、日本企業の特色でありますけれども部品などは下請にということでありますから、そういう点から見ますと下請企業に大打撃を与えるのではないか。その反面、海外の産業立地化動きも、一方で大企業などであるわけですね。そういうことをやっていきますと、私は、どうも日本経済の大きな空洞化が起こるのではないかという気がするのでございますが、こういう問題につきまして成り行き任せ、どうなるかわからないという率直なお話がありましたけれども、それだけではなく、もう少し政府として各省知恵を出し合って対応策を講ずる、こういうことにはならないのでございましょうか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさにその点につきましては、きのうの中曽根総理記者会見で、この円高が進む状況の中で日本経済安定国民生活の確保、特に中小企業安定のために、関係各省の協力を求めて対策を急がなきゃならぬということを述べておられますし、そうした基本路線に従ってこれから政府もいろいろな対策に取り組んでいかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。  なお、MOSSにつきましては、これは新しいMOSSの分野をお互いに設定していこうということについては両国で合意をしております。今はその具体的な詰めを行っておる状況にございます。どの分野が入るかということについては、最終的に詰めておるという事態であります。
  19. 河上民雄

    河上委員 その時期、特に中小企業に対する救いの手ということにつきましては、今まで余り具体的なことをやっておられないのですが、円レートがどのぐらいまでいったら、これはいわばなりふり構わずやらざるを得ないというふうにお考えでございますか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これはきのうの総理大臣記者会見で、きのうのサミットの終わったという事態を受け、さらに日本が今直面しておる円高の実情というものを踏まえて述べられたわけでございます。したがって、現下の具体的な日本の諸問題、諸状況というものを早速、今既に各官庁でそういう情勢は掌握しているわけですから、そうした情勢分析の上に立って早急に手を打つべきものは打っていかなければならぬということは、当然のことであろうと思います。
  21. 河上民雄

    河上委員 先ほど申しましたように、どうも、うたげの後で放心状態では大変困るわけでして、円高問題についてはもっと我々を含めて真剣に対処しないと、各地域の中小企業を含め各企業とも大変な問題で、むしろ政治課題に余りなってないのが不思議なくらいだという失望の声も起きております。きょうは十分な時間がありませんので、また適当なときに、円高問題でもう少し深く議論をする機会を得たいと思っております。  ひとつ、委員長もその点お含みいただきまして、きょうは時間が参りましたので、私の質問をこれで終わります。
  22. 北川石松

    北川委員長 次に、土井たか子君。
  23. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、今回のサミットは第十二回目であったと思うのですが、東京では第二回東京サミットということに相なるかと思います。このサミットの中で、政治討議では国際テロ対策というのが中心テーマになったと巷間伝えられております。そのように理解してよろしゅうございますか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政治問題ではもちろんテロ問題だけではございませんで、東西問題であるとか地域問題であるとかあるいはソ連の原子力事故の問題であるとか、そういう全体的な情勢、世界情勢、そういうものが議論の対象になったわけであります。テロだけが表に出ておりますけれども、決してテロ問題だけで終始したということではありません。
  25. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、いずれにしてもこの国際テロ対策というのが、今回の東京サミットでは重要議題になるというのは早々と日本としては認識をされていた、それは当然だと思われますが、いかがでございますか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはサミットを開く前のいろいろと事前の、いわゆる個人代表といいますかPR会議におきまして、東京宣言それから国際テロ声明、この二つが議題になって、そして各国ともこれを取り上げるということで意見一致しておったわけですから、したがって、国際テロの問題がサミット以前の情勢から見て大きな一つの課題になるということは、各国とも予想しておったわけでございます。そういう中で原子力の事故が起こりましたし、これはむしろ日本側から提案をして声明ということになったわけです。
  27. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどの河上委員からの御質問の中にも出たわけでありますけれども、この重要議題になるであろう国際テロ対策について、リビアテロへの関与はこういうことであったということをアメリカ側から詳細な説明を受けて、我が国も認識を深めだということが今回の東京サミットの前段にございまして、そしてこのことが公表されて、五月三日に、新聞紙上伝えられるところによりますと、リビアのサハティ外務次官が田中リビア大使をトリポリの外務省に招いて、日本政府国際テロ事件をめぐって、リビア関与について認識を深めたということを表明していることはまことに遺憾であるという意思表明があったと伝えられております。そのときに、常に米欧とアラブ諸国との間にあって中立的立場をとり、かけ橋的な努力日本は尽くしてきた、アラブ諸国はこれを高く評価しているというふうな指摘もあったと言われているのです。特にリビアは、テロにはあくまで反対の立場をとっているということも述べられています。こういう一連のいきさつを外務大臣もよく御承知であると私自身は存じているわけですが、外務大臣はこのトリポリにおける、かの地においてのサハティ外務次官の発言に対して、どのように認識を持っていらっしゃいますか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 テロに対するリビア関与について日本として認識を深めたとの外務報道官発言に関して、在リビア田中大使がリビア政府より抗議を受けた、こういうことでございますが、これはお話のあるように、サハティ外務次官より在リビア田中大使に対しまして次のとおり話があったわけです。それは第一に、日本は、これまで常に米欧とリビアを含むアラブ諸国との間にあって中立的な立場をとり、世界の緊張緩和と平和のためにかけ橋的な努力を尽くしてきたと承知している、しかし、五月一日の記者会見で波多野外務軌道官が、米と欧州の一部の国から詳細な説明を受けた結果、日本リビア関与について認識を深めたと発言したとの報道に接し、甚だ残念に思っている、リビアはあくまでもテロには反対の立場をとっており、この撲滅のためには共同の話し合いによるべしと考えておる、こういう趣旨のサハティ外務次官からの申し越しがあったわけでございます。  それは、リビアの申し越しということで日本も承ったわけでございますが、日本政府としましては、先ほどからお話をいたしましたようにいろいろな経緯があったわけですが、結局アメリカさらにヨーロッパ国々から詳細な説明を受けて、そしてこのような具体的な説明というものを踏まえて、日本としても態度をはっきりさせなきゃならぬということで、認識を深めたという立場を表明をしたわけでございます。それは具体的な説明の結果、これが信頼できる説明であるという判断に基づいたわけでございます。  しかし、こうした我々の認識と、それからいわゆる中東全体に対する日本政策というものとつながりがあるわけではございませんで、中東政策については、日本立場はこれまでも変わらないし今後も変わらないということは、これは中東諸国にも明らかにしておりますし、今度のサミットの過程の中でも、中東の大使に対しましてはいろいろと申し越しもありましたし、日本からも説明をしております。あるいは理地においても、大使館を通じて日本立場中東政策に対して変化はないという日本立場説明をしてきておる、こういうふうに思います。
  29. 土井たか子

    ○土井委員 テロをなくすというのは、これは共通の認識であり、これはどうしてもやらなきゃならないというのは、お互い努力が問われている問題であると思うのですが、リビアテロにはあくまで反対の立場をとっているということをはっきり表明して、話し合いをしていくことが肝心である、大事であると言うことに対して、外務大臣としてはどういう対応を考えられますか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、外交関係日本リビア関係にあるわけでありますし、そういう関係の中で今後ともリビア意見も聞くこともあるでしょうし、日本立場説明することもあるだろう、こういうふうに思います。いずれにしても、リビア自体も世界、特にアメリカあるいはヨーロッパ等から、名指しであのようなテロ関与しているということをはっきり言われないように、やはりリビアとしての対応を私は望みたい。リビアテロをやっていないということなら、そういう立場でこれからもひとつ進んでもらいたい。そうなれば、テロが行われなければ問題はないわけですから、まずお互いにそうした問題を明らかにして、リビアテロをしないと言うのならテロをしないということを世界に明らかにすることが、この問題を解決する一番早道ではないだろうか、こういうふうに思います。
  31. 土井たか子

    ○土井委員 まあ、それは他力本願的な発想であって、日本側からこのことに対して何を努力をしなければならないかが、今問われている問題だろうと実は思うのです。先ほどは、議長国として仕方がなかったというふうな表現でこういう問題に対して対応したことを、きょうは答弁の中に外務大臣はお述べになっていらっしゃるのですが、私たちは聞いておりまして、これはまことに情けない御答弁だなと実は思っているわけです。今回の仕方がなかったという姿勢にしろ何にしろ、リビアを名指してこの決議の中に入れた議長国としては、四月十五日にアメリカリビア爆撃をしたというあの事実に対して、これを正当化されたというふうに見ていいのですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これはまたそれぞれの国の立場があるわけですから、リビア関与したということについては、これはアメリカEC諸国も早々とこれを認めておるわけです。そして日本に対しても、両サイドからも詳しい説明があって、関与したという認識を深めたということを日本も申しておるわけでございます。しかし、これでもってそれじゃアメリカの爆撃そのものを各国が認めたかということになりますと、各国のそれぞれの対応というのはあるわけでありますから、日本日本としても、あれは自衛の措置であるということをアメリカ日本に対しても説明をしております。世界に対しても説明をしております。それはそれだけのアメリカの理由はあるだろう、私はこういうふうに思うわけでありますが、しかし、今の実態——関与したということについて我々は認識を深めたわけでございますが、アメリカの爆撃がアメリカの自衛措置であるということについては、それはアメリカなりの事情はあるだろうというふうに我々は推察をするのですけれども、しかし、それ以上我々としては詳しいことを知っておるわけじゃございませんから、それ以上に対して申し上げる立場にはないと言わざるを得ないわけであります。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 それはおかしな話ですね。中東政策は変わらないなんて、さっきから言われているのですよ。そして今度のサミットの中では、当初日本として出された案とは違ったことについて、今回は議長国として仕方がなかったと言って決めてしまわれた立場にあるのです。日本立場からいえば、どう考えようと、外国がどう見るかという目は、今日本アメリカにくみされて、そして今回サミットでの意思表示は、アメリカリビアに爆撃をしたということに対しても、以前と違った姿勢に変わってきているのではないかという目で見ている向きも大いにあると言わざるを得ません。はっきりこの点は言っておいていただかないと困りますよ。日本とすれば、リビアに対する爆撃を正当化したのですかどうなんですか。これはひとつ外務大臣、はっきり言っておいてください。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは非常に大小なことですから、はっきりと申し上げておきます。  これは日本としては、私がしばしば申し上げているように、アメリカリビアに対する爆撃については、日本の考え方というのは基本的には全く変わっていないし、今日も変わっていないわけです。これはイギリスも支持しておりますけれども、それじゃフランスがアメリカの爆撃を支持すると言っているかというとそうでもない。あるいは、イタリーはそれぞれの立場があるし、ドイツもそれぞれの立場がある。日本日本なりの爆撃に対しては立場を持っております。それは今日に至るまでも変わっていないわけでございます。これはしばしば申し上げておりますように、米国が今回のリビアテロに対する自衛のための措置である、こうして説明していることについては米国としての理由はあるのであろうが、詳細については承知をしておりませんので、事態の推移を重大な関心を持って見守るということであって、我々として事態がこれ以上悪化、拡大しないことを望んでおるわけでございますし、同時に、今のアメリカリビア攻撃というものを支持しているとかそういうことではないわけです。これは、今申し上げたのが日本の正式な見解でございます。これはサミットにおきましても、私ははっきり申し上げております。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 これはどうも歯切れの悪いことを大臣おっしゃいますね。認めていらっしゃるのか認めていらっしゃらないのか、どうもそこのところがもうひとつはっきりしない。これは、はっきりさせておいていただかないと困りますよ。なぜかというと、テロ行為というのは憎むべきものであります。しかし、どこの国がどうであったかということは、アメリカから日本は聞かされた立場にしかない。そのアメリカは、そのことを理由にして主権の侵害を軍事力を行使してやったという事実があるのです。この事実に対して、日本は追認しているのか追認していないのかということが後々大問題になってきますよ。これをもう一回、はっきりしておいてください。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、これは極めてはっきりしておるわけですね。アメリカリビア攻撃をはっきり支持しているという国は、例えばイギリスですね。これははっきり支持しておるわけです。その他の国はそれぞれの国の立場があるわけで、日本だって今申し上げましたように、アメリカリビア爆撃をいわゆる自衛の行為であるということを言っているわけですね。それは、自衛の行為であるというアメリカの理由はあるであろう、それはアメリカにはそれだけの理由があるか、こういうふうに思いますけれども、日本として果たしてそこまで、国際法上に言うところの自衛権の行使であるかどうかということについて日本がつまびらかにする立場にないわけでございますから、それ以上についてあれはアメリカが自衛の行為をやったのだ、これを認める、アメリカのあれを支持する、こういうことを申し上げる立場日本はないということを何度も申し上げているとおりでございますし、現在もその考え方には変わってないわけです。あの声明リビアという名前が出たからといって、それじゃ先進七カ国が皆アメリカリビア攻撃を支持したかというと、決してそうじゃないわけですね。それは各回それぞれの対応がある、解釈があるということはもうおわかりのとおりだ、こう思います。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 外国がどうこうしたということは結構でございます。外務大臣とされては、日本という立場アメリカリビア爆撃を正当化した立場にはない、アメリカが爆撃したことに対して日本は支援する立場にない、協力する立場にない、それを正当化する立場にない、このように理解しておいてよろしゅうございますね。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカにはアメリカの理由があるだろう、自衛権行使という理由があるだろうけれども、日本としてアメリカのそうした立場というものをそのまま認めるといいますか、わかってない面が多いわけですから、リビア関与したということについては認識を深めたわけですが、自衛権の発動ということについては日本は、我々としてはそこまで承知してないわけですから、それ以上のことは申し上げられない、こういうことを言っているわけです。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 私が質問を申し上げていることに対して、外務大臣も半ば同じ立場で今御答弁なすったように私自身は受けとめられます。いろいろ言葉遣いに非常に気を使いながら御答弁なすっていらっしゃることは、私は十二分に承知いたしておりますから、このことについてもそれ以上積極的な表現というものは差し控えながら、しかし気持ちを察しよと言わんばかりの答弁であるというふうに私は受けとめさせていただきます。  さて、私はきょうは一冊の本を持ってきた。名著なんですね。安倍外務大臣の「創造的外交をめざして」という真情を吐露された一冊の本でありますが、この中に「中東諸国日本」という、項目がございまして、百七十七ページあたりを見ますと、波多野外務省中近東アフリカ局長日本国際問題研究所主催の講演会で語られているところが引用されてあります。ちょっとここのところは非常に参考になると思いますから、そう長くないのでそのままを読んでみたいと思います。  「特に中近東の人が日本についていうのは、日本は中近東では手が汚れていない。ヨーロッパの国とは地理的にも近いし、歴史的にも経済的にも近いけれども、ヨーロッパの国と関係を深める場合には、過去のヨーロッパの国の中近東における歴史が障害になる。その点、日本は手がきれいであるというのは、よくいわれるところです。 それから、中近東の多くの国が日本と付き合いたい理由として挙げますのは、これらの国は東西いずれにも偏ることなく外交を進めていこうとしているが、日本は中近東の人のイメージとしては、必ずしも西に偏っていないということです。」こう書いてあるのです。  今回のサミットの中でこの決議が出たということになってまいりますと、こういう認識というのはどのように考えられるか。リビア立場からすると、もはや従来どおりというわけにはいかないであろうということも考えられるわけですが、この引用されている部分について外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、中東政策とか中東和平あるいはまたイラン・イラク戦争、そういうものに対する日本姿勢というものあるいはまた政策というものは、これまでも一貫しておりますし、今後も一貫をしなければならないし、変わってはならない、こういうふうに思っております。  今回の場合はいわゆるテロ国際テロが頻発している、そういうものに関連をして日本も国際的な国家としてテロ撲滅といいますか防止のために、それはそれなりに国際的な協力をしなければならぬ、いわゆるテロ防止というものが正面に立ってきたわけでございますし、そしてそれは中東というものを名指したわけではなくて一般的な国際テロ防止ということでございますから、日本としてもこの協力には参加をしたわけでございます。しかし、これと中東政策と混同すると、これは間違いを起こすし、また中東諸国でそれは混同してもらわないように、日本側の立場も十分説明をしていかなければならない。  私は、今度の声明に賛成したことによりまして、我が国が従来より展開してきた中東外交の独自性というものが失われるものではないと考えておりますし、我が国としても、今後とも中東和平問題であるとかあるいはイラン・イラク紛争等の平和解決のために、引き続き我が国独自の立場から外交努力を展開していくとともに、中東の国づくり等にも協力して援助を行っていこう、そういう方針はこれからも進めてまいる、こういう決意を持っております。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 そういう趣旨のことを当時の波多野局長の今の発言を引用しながら、外務大臣御自身の御理解としてここにちゃんと披瀝をされておりますが、今おっしゃったように、今回の問題は中東政策そのものと違うのである、従来と中東政策そのものは日本立場においては変わらないということを理解を求めていかなければならないということも言われましたが、そうすると、これはアラブ諸国に対して理解を求めるために言って多かれるわけでありますか。かの地において、基本的立場は変わらないということを誤解のないようにというので、どのような努力を払われるのでありますか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、外交努力としては非常に大事なことだと私は思っております。ただ、これは言いっ放しておりますと、御質問もございましたように、中東諸国からいろいろとこれに対して誤解も出てくるし、日本の真意が理解されないという点もありますから、サミットは終わったわけでございますし、早速中東諸国に対しましては、日本中東政策が不動のものであるということを説明する最大の外交努力をやってまいりたい、私自身も時間でもあれば参りたいと思っておるくらいでございます。  既に、在日の中東の大使等からいろいろ問い合わせ等もあるわけでありますが、そういう問い合わせに対しては十分説明しておりますが、それだけではいけない、やはり直接中東諸国に対して説明をする必要がある、こういうふうに考えております。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 中東というといろいろな国々があるわけですから、その中でリビアだけを除外するわけにはいかないでしょうし、リビアに対しても同じような対応を大臣としてはお考えになっていらっしゃるというふうに理解してよろしいですね。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リビアについてあの声明に盛られております。その声明を踏まえてどういうふうに対応していくかということについては、これから検討する面もありますけれども、しかし、既にリビアに対しては武器は売ってない、これは日本の基本的な政策であります、リビアだけの問題ではございませんが。同時にまた、日本リビア関係では貿易の面でも非常に少ないわけでありますし、あるいはまた、日本における在日リビアのいわゆる人民事務所といいますか、この規模も小さいわけでございますし、我々としてはそういうものも十分念頭に置いて対応してまいらなければならない、こういうふうに考えております。  私はリビアに対しましても、せっかくこうした外交ルートがあるわけでございますし、こういうふうないろいろな事実というものも踏まえて、各国の非難、批判が出ておるということでございますから、やはりリビアが真にテロをしない、こういうことを言っておるわけでありますし、私は去年も実はリビア外務大臣を正式に日本に招待して、そしていろいろと話し合った経緯もあるわけでございまして、そういう日本との関係も踏まえて、今後のリビアがそうした国際的な憂慮というものに対して正しく対応していただけるように外交努力はしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 さて、時間の関係がありますから、今度の東京サミット国民の関心事といえばこれをおいてほかにないと思われたのが円高の問題であります。前回の当外務委員会でも、この問題を取り上げて外務大臣に質問を申し上げましたところ、外務大臣は御答弁の中で、為替相場安定のためには努力をしたい、サミットの場所においてもできる限りの努力を払っていきたいという御答弁でありました。そしてただいま、円高の中身は急激であり、しかも異常な中身であるという御認識も披瀝されたわけであります。  サミット会議そのものはちょっと横に置いておきまして、二国間の協議の場所で、今の円高というのは異常であるということを各国のそれぞれの首脳に対して、また、外務大臣が話し合われた代表の方に対して言われたと思われるのですが、それはお話の中でもちろん真っ正面から出されましたでしょうね。いかがですか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん私とシュルツさんの話し合いでも出しましたし、竹下・ベーカー会談でも具体的に話し合いがあったのではないか、こういうふうに思っております。特に、首脳であるところの中曽根・レーガン会談におきましてはこの円高問題が出されまして、アメリカに対しまして配慮を中曽根総理として求めた、これはもう間違いはございません。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 それで、その円高の話をされて各国の反応はどうだったのですか、そのニュアンスをぜひ聞かせていただきたいのです。フランスはどうです、西ドイツはどうです、カナダはどうです、イギリスはどうです。アメリカとの間はもう大蔵大臣が行かれ、そして肝心の外務大臣と中根曽総理が行かれたといういきさつがあって、その中ではアメリカ側は、こちらが円高を幾ら一生懸命に言ったとしても、どうもそれに対して冷ややかな対応しかないということを私たちは聞き知っておりますから、今回二国間で、フランスはどうですか、西ドイツはどうです、カナダはどうです、それぞれのニュアンスをちょっと聞かせてくださいませんか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 二国間につきましては、私が同席した分と同席してない分がありますから、後で経済局長からまとめて答弁させますが、しかしまず日米間については、今お話しのように話があったわけでございます。これに対しましてレーガン大統領の姿勢は、やはりこうした為替市場というものは安定をする必要があるというようなニュアンスがあったように思いますけれども、これに対してどういう努力をしようかということについては、積極的な反応というものは十分なかったように私も思うわけです。そのかわりに、いわば今後の七カ国経済のいろいろな状況を踏まえて、場合によってはいろいろと介入しようじゃないかという協調介入的な一つ枠組みというのが話し合いに出たことは、そのとおりでございます。  サッチャー首相と中曽根総理との会談等、私も同席しておりませんし、ミッテランさんとの話し合いは余り円相場なんというのは出ませんでした。非常に文化の薫りの高い会談であったような気がいたします。ヨーロッパはどちらかといいますと、ドイツは日本と同じような立場にあるわけですから、円高に対しても一つの警戒感を持っておる、これはもう事実でございますが、全体的なヨーロッパの空気から見ますと、むしろ日本の今の円高というのは、貿易の経常収支を改善する上において非常にプラスになるのではないかというふうな、これは私がOECDに行きましたときも実感として感じたことをここでも申し上げましたが、そういう空気があったように思います。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 今、協調介入に対してある枠組みが話し合われだということをお答えの中に出されているのですが、G7といったって、日本をおいてほかの六カ国は余り困っていないのですよ。問題になっているのは日本なんですね。日本立場からすると、ある数字が出てそうなったとき、それくらいだったら協調介入というのがなされそうだというふうな話し合いはそういう枠組みの中で出たのですか、出なかったのですか。そういう感触があったのですか、なかったのですか。いかがですか。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり主として大蔵当局といいますか、御承知のように金融とか財政という問題は一つの交渉の枠組みがそれこそ決まっておりますから、むしろ私は全体的に見て最終的に経済宣言に確り込まれる、そういう中で一応の経緯は説明は受けたということでございますが、実態的にこれがどういう形で進んできてどういう形で合意をしていったかという詳しい経緯については、私もよく承知しておりません。一応形の上でずっと進んできたことについては、もちろん知っております。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 実は、今回のサミットに対して、その点で期待をかけていた人たちが多過ぎるくらいあるのですね。竹下大蔵大臣サミットの場所では、協調介入を求めるということで非常に期待を与えるような表現、発言もあったわけであります。それは、実際問題においてできたのですか、できなかったのですか。これはどうなんですか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いやそれは、やはり日本円高で困っているから何とかしてくれ、皆さんがそれでは円高から円安の方向へやりましょう、そういうふうに簡単にはもちろんいかなかったと私は思うわけですね。それは残念ながらそういうふうな、またそういうことをすれば、各国もやはり立場があるわけですから、そう簡単にそれでは日本の言い分を各国が聞いて理解をしても行動にあらわすということまでは約束はできないのが、各国のそれぞれの情勢だろうと私は思うわけでございます。しかし、全体的には日本立場というものも、非常に彼らとしても理解ができる。日本説明をいろいろ聞いて、そこまではやはり進んだのじゃないだろうか。  そして、これがサミットが終わった後どういうふうに反映してくるかというのは、私はこれからだろうと思っております。これからのやはり動きを注目すべきだろう、こういうふうに思います。各国とも、決して日本協調しないということを言っているわけではありませんから、そういう姿勢というもの、そしてまた日本のこれからの努力というものがどういうふうに反映するか、まさにこれからの姿を見ていただく必要があるのじゃないか、こういうふうに思います。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 これからこれからということをしきりにおっしゃるのですが、皮肉にもサミットが終わった瞬間に、御承知のとおり先週の終値より一挙に五円五十銭も高くなりまして、昨日の円相場は百六十四円八十五銭というのが出ておりますが、これは国民生活にとって、輸出業者なんかは深刻であり、中小零細業者なんというのは青息吐息はとっくの昔であって、もう成り立ちいくかいかないか死活問題だというところに、みんな岐路に立っていると言わざるを得ません。その一方で、円高差益でほくほくのところもあるわけです。例えば石油とか電力とか、それから食品加工等々で、輸入でその企業を賄っているというふうな立場の人たちというのは、大変これはまたほくほく顔でしょう。  こういう問題に対してどう対応するかというのが、今緊急の問題として問われているわけですから、そういうことからすると、中曽根総理は解散に対していつも、記者団の方が尋ねられるからそういうことになっていくのかしれませんけれども、えらい性急に考えられる向きがあります。外務大臣とされては、こういうことに対して横目で見ながら、それはもう今の状況そのままで解散でもあるまいというふうにお考えではなかろうかと私は思うのですが、どうですか、一言。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もわき役ですけれどもサミットで忙殺されまして、解散など考えるような気持ちでは全くありませんでした。円高の問題は大変深刻で、このままいけば中小企業国民生活に非常に打撃を与えるわけですから、今後とも国内対策としてもよほどしっかりしていかなければなりませんし、国際的にも、サミットのこれまでの議論の経緯を踏まえて、日本がこれから国際的に協調を求める、できるだけのことはやっていかなければならない、こういうふうに思っております。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、早々と解散ばかりを考えて、そのためにどうするこうするなどという問題ではないというふうな御理解ですか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が幾ら理解をしても、解散椎というのは別のところにありますから、どういうことになりますか……。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、閣僚の一人として、特に枢要な場所でいらっしゃる外務大臣とされて、国際経済という立場から今の円高問題に対しては責任があるのですよね、日本一国でどうのこうのするには限界がありますから。だから、同時選挙などという風が吹いて、解散に足早にどんどん持っていかれる中で、こういうことに対して責任ある姿勢でしっかり取り組むことができるかどうかというのは、外務大臣というお立場でまずお考えになる話じゃないかと私は思うのですよ。確かに、解散権というのは私にございません、それはそうでしょう。解散を決めるのは私じゃないとおっしゃるかもしれません。しかし、そういうことに対してのお考えが外務大臣としてはおありになるでしょう。私は、それを聞かしていただきたいと言っているのです。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、まずやるべきことをやらなければならぬと思いますね。それは政治の責任だ。特に、政府・与党の責任は大きいと思っております。  国会での大きい問題がございます。定数是正の問題にしてもそうでしょうし、あるいはまた国鉄の問題にしても、その他本委員会で御審議を願っておる条約の問題もありましょう。やはり国会が終わらぬうちから、解散、解散と言うことは決して好ましいことではない。国会で政府・与党が推進しておるいろいろな法律、条約等についてお願いをして、これらを通常国会で成立させていただくということにまず全力を挙げなければなりません。それから今の円高問題等についても、ただ国際的な問題だということでは済まないわけで、まさに国内的な大きな問題になっていますから、これに対する対応をどうするかということ、これなどもまさに我々解散と言う前に考えなければならない重要な課題だろうと思います。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 さて、今回のサミットでは、ただいまの円高問題、そして国際テロ対策、原発問題等々が非常に正面に出まして、当初から言われていたSDIそれから軍縮問題についてどういう討議がなされたかというのは、余りクローズアップされておりません。SDI、軍縮問題については、どういう話し合いがございましたか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDIについては、私は首脳会談を一応聞いておりますし、外務大臣会談もやりましなけれども、SDIの問題は大きな話し合いとはならなかったようです。ただ、もちろん東西問題についていろいろ話し合いがございました。特に、米ソの首脳会談を一日も早く実現すべきであるということは首脳間の合意でもありましたし、我々外務大臣もそれを推進すべきであるということを強く主張したりしましたし、両方の首脳の会談の前にシュルツ・シェワルナゼ会談が予定されておったのが流れたわけですから、これを早くやるべきではないかというようなことも議題になって、我々もこれを推進すべきであるということを主張しました。また、軍縮、軍備管理等についてはシュルツ長官からいろいろと話があって、これに対して各国で議論をいたしたことは事実でございます。SDIについては、非常に簡単な説明がございましたけれども、前回は相当議論があったように思いますが、具体的にこれをめぐって議論に発展はしなかったということでございます。それは、ヨーロッパ国々がそれぞれ対応をはっきりしておるということにも原因があるのではないだろうかと思います。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 ヨーロッパ国々は結構でございますが、日本としてはその対応に対して新たな見解を出されましたか、何らかの話し合いをされたのですか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDIにつきましては、既にキャンプ・デービッドの首脳会談において日本立場それなりに明らかにしております。あくまでも今のところは理解、これをどうするかということはこれから十分検討するんだということで、アメリカ側理解しているように思います。したがって、これ以上の議論にはならなかったように思います。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 さて、サミットと違うのですが、あと一問だけお尋ねします。  ニュージーランドのロンギ首相が日本を訪れるというふうな意思を表明された場合に、外務大臣としてはどのように受け答えをなさいますか。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 去年、中曽根総理がニュージーランドを訪問いたしましたときに、正式にロンギ首相の訪日を御招待しております。したがって、ロンギ首相がおいでになるということになれば歓迎をいたしますし、その日時等については外交ルートお互いにいい日を選ばなければならぬ、こういうふうに思います。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 ロンギ首相の訪日について、外務省としては後ろ向きどころか、非常に来てほしくないという意思表示をされたと巷間伝えられているのです。これは事実でないのですね。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうことは全くありません。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 先日、我が党の石橋委員長がニュージーランドを訪問いたしましてロンギ首相と会談をするという前夜に、向こうの新聞紙上を通じて日本の外務省首脳が、ロンギ首相との会談に不快の意を表明しているということが出たわけであります。このこと自身は、まことに相手に対しても失礼である、そして我が党の委員長からすると黙っているわけにいかない、不快の念を表明するだけで済む問題でもなかろうというところまでいっているわけでありますから、外務大臣としてはそういう事実を御承知になっていらっしゃるか、いらっしゃらないか。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは全く初耳ですし、そういう非礼なことは申し上げるはずはないと思います。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  70. 北川石松

    北川委員長 次に、玉城栄一君。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 今回の第十二回目の東京サミット議長国外務大臣とされて大変御苦労をされたと思います。ところが、その成果あるいは評価につきましては、いささか失敗ではなかったか、このように私は思いますし、けさの各新聞を見ましても、こんな大きな字で一面、二面、三面と、大臣もお読みになったと思いますが、たくさんありますのでちょっと代表的なものを……。  アメリカの露性な対日戦略であるとか、アメリカの手拍子で日欧踊る、アメリカ会議を終始リード、際立った米英連携とか、我が国に対しては重い宿題、円高テロ日本経済にとっても正念場であるとか、批判も映出している、これは特に与党内においてもですね。さながら対日包囲網、日本に重いツケ、円高促進がねらいではなかったか、首相の意気込みは裏目、外相、蔵相も重荷を抱える、円高で失敗、失望、懸念、悲鳴届かず等々、たくさんあるわけですね。大臣は、今度の東京サミットについては率直にどういう感想を持っておられますか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと批判はありますし、これはいつのサミットでもそうですが、特に今回は東京で行われた、日本議長国であった、それだけに日本はまとめる立場でございますから、それなりに苦労も多かったわけでございます。最終的にはいろいろの批判等もありましたけれども、やはり先進七カ国の歩調が合ったといいますか、特に経済について、政策協調という面あるいはまた構造問題の調整といった面が非常に協力関係が出たということは、ある意味においては非常によかったのではないか。政治宣言等におきましても、やはり東西、アジアの問題が大きく各国理解を得たことになりますし、その他原子力発電所の事故の問題等について、世界的な関心が平和利用というものについて集まった、安全性という問題について集まった、それに対する対応が決まった、こういうことが大変よかったと思いますし、またテロの問題につきましても、やはり国際的な国家としてテロ防止していくというのは当然の責任でありますし、そういう意味防止措置について一つ合意ができたということも、私は、今後の世界の安定の上において大きなプラスになっていくのではないだろうか。  全体的に見ては、いろいろな問題はこれからフォローアップしていかなければなりませんが、まあまあ議長国としてはその責任を果たすことができたのではないだろうかと思っております。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 議長国としての責任を果たされた、おっしゃらんとすることは全体的にはよかったということですが、決してそうは受け取れないわけですね。先ほどから御質疑がありますとおり、特に我が国の立場からしますと、国内問題では特に経済問題ですね、それからテロ声明に我が国が参加をしたという問題、そのほかありますけれども、そういう意味からしますと、やはり我が国の立場は外交的にも重大な問題が今回の東京サミットにはあったということで、一つ私もお伺いしたいのは、今回のいわゆる国際テロに対する、リビアという国を特定して非難する声明に我が国が入った、そのことは決して我が国の従来の中東に対する独自な中立的な外交、これは変化はないのだということを盛んにさっきからおっしゃっておられるわけですけれども、私はどうしてもそれは説得性がないと思うのですね。ですから、これは明らかに変化している、変わったあるいは変質している、このように思いますが、いかがでしょうか。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国際テロ防止声明については、かねがねサミットが開かれる前から各国の事務当局間で話し合いがされたわけでございます。各国とも非常に大きな関心を持ってテロ防止をしていかなければならぬということで、そのためのやはり声明を出すべきであるということについては意見一致しておりました。これまでの何回かのサミット、ロンドンのサミット、ボンのサミット、その他のサミットでも、テロ防止についての声明あるいはまた合意等も見ておるわけでございますから、日本としてもやはり参加といいますか、協力していかなければならぬということで、決まっておったわけでございます。  どういう形にするかということは、これは首脳間で話し合う、まさにサミットで話し合うということであったわけでございますが、最終的にはああした形のテロ声明になったわけで、これはいかなる国に対しても、テロを行う場合においてはこれに対して断固とした姿勢で対応していかなければならない、そのテロ防止するためのあらゆる努力はしなければならない、そういう立場でこの声明が出されたわけで、そして同時に、今日までのテロの中でリビア関与しておったということは残念ながら認めざるを得ない。これはアメリカとECは早々とこれを認めておったのですが、日本としてもその具体的な事情というものがわかりませんので、これは留保しておったわけですが、その後、詳細に説明を聞いて認識を深めたわけでございます。したがって、リビアという具体的な国名がこの中に書かれたわけでございますが、これは各国首脳のそういう点の認識一致したということであったわけでございます。  しかし、あくまでもこれはリビアを名指しで書いたからといって、中東全体をこれでもって何か対象にするとかアラブ対象にするとか、そういうものではなくて、やはり世界のテロ対象にするということでございますし、我々としてはこうしたテロ声明が出たからといって、そして日本議長国としてこれを採択した責任者になったわけでございますが、その責任者になったからといって、中東に対するこれまでの政策中東和平に対する日本の考え方、あるいはまたイラン・イラクに対する日本の外交努力、こういうものを変えていくとか新しい立場に立つとか、そういうものでは全くございませんで、これは私は内外の記者会見においてもはっきり申し上げたわけでございますが、テロを憎むという意味においてはテロ声明に対して我々は同調しましたけれども、しかし中東問題については、我々は今日までの姿勢をこれからも変える意思は全くないということでございます。これは申し上げたとおりであります。
  75. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカ側から、リビアテロ関係しておったという詳細な資料とかそういうものを我が国も説明を受けて認識を深めている、じゃ、いかなるものであったかということをお伺いしたいわけですが、これは時間もありませんので、それはそれとしまして、やはりアラブ諸国、イスラム系の民族、そして米欧、いわゆるキリスト教系の民族との関係というのは、歴史的にも宗教的にもいろいろな特殊な経過があるわけですね。ところが日本に対しては、そういうことは全くないわけです。いわゆる東洋の仲間というような感じすらあって、したがって我が国としても、アラブ諸国に対しては独自の外交が展開されるし、また大臣御自身も、いわゆる創造的外交という立場からイラン・イラク紛争等についても大変御努力してこられて、これからも努力されるとおっしゃいますけれども、しかし、今回のリビアという特定国を非難するその声明に我が国も参画した、アメリカ、西欧と一緒になって日本も参加をしたということになりますと、幾ら大臣御自身は自分では中東政策は変わらないと言っても、受ける相手側の方はそれはそのとおりは受け取らないと当然これは思うわけですね。ですから、大臣御自身も行って説明をされるとおっしゃいますけれども、リビアについてはどういう御説明を今回の声明についてはされるのでしょうか。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リビアにつきましては、これはこれまでの例えばベルリンのディスコの爆破事件等でリビア関与しておったということが、アメリカからの説明ヨーロッパからの説明で我々は認識を深めたわけで、これは具体的に日本政府は聞きまして、そうした信頼すべき国々の具体的な説明でございますし、そういう意味認識を深めたわけでございます。そういう意味で、リビア関与について声明の中に入っていったということは、これは最終的な帰結として各国一致した見解であったと思います。しかし、リビアがそういう声明の中に入っていったからといって、今回のテロ声明中東対象にしているわけではありませんし、世界のテロ国際テロ、そういうものに対する、テロをとにかく防止しなければならぬということについては、これは日本もただこういうふうにヨーロッパアメリカから離れておるからといって日本がその責任を免れるものじゃないわけで、やはり私は、国際責任としてテロ防止するという協力関係には入っていかなければならぬ。これは、これまでも実は入っていっておるわけですから当然のことであろう。ですから、これは中東対象としているものじゃない、あくまでも世界のテロというものに対する、一般のテロリズムあるいはまた国際テロリズムというものに対する日本の国際責任を明らかにするという意味で、これは参加したわけでございます。  ですから、全く中東政策とかアラブ政策というものと次元の違う立場でありまして、そういう次元の違う立場で混同してとられますと、日本外交政策に誤解が起こって、日本の国というものに対するいろいろとまた間違いの認識が出てくるわけでございますから、やはりこれは正確に今後伝えていかなければならぬ。全く違った次元で、あくまでも日本外交政策特に中東アラブ政策は変わらないということははっきり申し上げておりますし、これは十分説明をしなければならぬ。また説明をすれば、アラブ国々は十分これは理解できる——既に理解をいただいている国もありますが、十分理解していただける、こういうふうに確信しております。
  77. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから特に我が国については、この問題について従来の基本的スタンスが変わっているということで関心が非常に深まっているわけですが、リビアにも在留邦人がいるわけですね。ですから、どういう御説明リビアについてされるのか。いや、私たちも議長国としてやむを得なかったんだ、国際テロについては全くおっしゃるとおりです。しかし、この声明に我々加入せざるを得なかったのは、これは本音はそうでない、リビアと特定したこの声明に参加したくはなかったけれどもやむを得なかったんだ、その辺はよく理解してもらえないかというような話をされに行かれるんですか。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、とにかく議長国としての責任は免れないと思いますし、やはり取りまとめてそしてサミットとして声明を発出したわけでございますから、いろいろな経緯についての説明は、日本の真意についての説明はしなければなりませんけれども、また中東政策そのものについての説明は十分しなければなりませんけれども、とにかく発出した責任者の一国であることは間違いないわけでございますから、その点も十分そういうものは踏まえて、リビアアラブ諸国には理解を求めていかなければならぬ、説明をしなければならぬ、こういうふうに思います。
  79. 玉城栄一

    ○玉城委員 ところが、我が国としてはこうなんだ、こうなんだと言っても、やはり今度の東京サミットにおいてテロ声明に我が国も参加をしたということについては、受ける相手側というのはそういうことでは納得しないと思うのですね、どんなに説明されようと。ですから、例えばリビアについて、具体的にじゃ邦人についての保護対策、そういうことについては考えていらっしゃるのですか。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リビアには、御承知のように今日本人が二百数十名おりますし、イタリーの話を聞きましても四千人、一万七、八千人おったそうですが今は四千人というようなことで、フランスも随分リビアには行っております。アメリカ人も随分おるようでございます。そういう中では日本は少ない方でございますけれども、しかし、大事な日本人がそこに働いておることは事実でございます。そういうことはみんな各国でも承知しております。そういう中で、事実は事実ということで、そしてテロリズムというものに対してやっぱり闘わなければならぬ、いかにしてこれを防止するかということであれだけの声明ということになったわけでございます。我々は別に、言いわけがましいことをいろいろと言おう、こういうことではございませんで、中東政策日本姿勢というものをアラブ各国に我々は説明したい、こういうふうに思っております。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 私の立場からいいますと、安倍外相がいわゆる創造的外交という立場で独自の平和外交を展開しておられる。非常に期待もしておったわけですが、この件につき、今度のこの問題についてはやはり失望と申しますか、これはどうしても免れない、このように思います。  もう一点は、やはり大問題になっている急激な円高の問題についても、サミットが始まる前にもこの委員会で、個別にこれを何とかお互い協力し合って、我が国の経済打撃を与えているということについてはすべきではないか、大臣もそのことはちゃんと話し合います、こうおっしゃったわけですけれども、どういう話し合いをされたのですか。結果として、これもみっともない話ですけれども、サミット中に円がさらに上がっていくという、こんなことは一体どうなっているのか、こういうことでありますので御説明いただきたいと思います。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日米会談その他の会談あるいはまたサミットの場で、日本の今の立場というものを十分説明もして日本に対する理解を深めたわけでございますが、しかし各国各国なりの立場があるわけで、今それじゃ為替相場を逆転させるということについては、やはり各国なりの立場からこれに急に同調するという姿勢になかったことは事実であります。私は客観的に、今度のサミット日本説明は十分しなければならぬと思いますが、それじゃ日本の円相場日本円高相場を逆転させるほどの合意ができるかといえば、そういうものは当然難しい話であるということは、私もOECDの閣僚会議日米会談等に列席しておりますし、その辺のところは十分承知しております。しかし、日本立場は十分説明していく必要があるということで説明したわけです。  最終的には、もちろん円高相場に対して、これをどうするというふうな具体的な合意というものはなかったわけでございます。しかし、為替相場安定させなければならぬというのは、これはやはり私はサミット参加国合意でもあったように思います。そうして、これからの世界経済、その中心であるところのサミットの参加国の経済安定化させるためには、一つ協調介入的な枠組みが必要であるということで、いわゆるG7という形で経済声明にもその枠組みが盛られるということになったと承知をしております。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、中長期的なそういうこともよく承知しておりますが、当面の円高について、急激な円高、どんどんサミット会議中も進行していく、それに歯どめをかけ切れなかった。しかも、何とかこれをサミットの機会に期待もしていたし、総理もまた大臣御自身もそれをしたいということをおっしゃって臨んだ。しかしそれができなかった。これは明らかに外交的にも成功だったとは——余りにも議長国の責任ということだけが先行し過ぎて、ツケは全部国民に負わされる、こういうふうなサミットの経過並びに結果ではないか、このように思うわけですね。  それでもう一つ、いわゆるサーベーランスですね、経済運営監視機構ですか、こういうものがまた突如としてできたわけであります。これはいろんな立派な御説明もありますけれども、さっき私は新聞の見出しをちょっと申し上げましたが、これは内政干渉あるいは我が国をある意味で、まあこれは乱暴な議論かもしれませんが、袋だたきにしようと思えばできるような国際的なシステムが、我々国会でもそういう話も何もないままに一夜にしてでき上がった、こういうことになりますと、これまたどう我々理解していいのか、その辺御説明をいただきたいと思います。
  84. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、私も初めから関与していたわけじゃありませんで、財政当局間で話が進んで、そして首脳間で合意をされた中で、経済宣言という中にこれが打ち出されたわけでありますが、私は、このG7というのはG5から延長してG7ということになったわけで、これまでもG5は経済宣言に書いてあるようなことを表に立たないでやってきたことは事実だと思います。それが世界の先進国経済を非常に間違ってない方向に動かしてきたことも、私は事実じゃないかと思うわけです。これがG7という枠組みに広がったわけでございます。  しかし同時に、今のサミット国々関係というのが成熟するに従って、関係調整とか協力というのがますます必要になってきたという世界経済の実態、先進国経済の実態ですから、そういうことで枠組みというのを今度の宣言に盛り込んだのじゃないだろうか、こういうふうに考えておりますし、これは決して内政干渉に当たるものでもないと思いますし、また、日本をたたくための枠組みでもないと私は思います。日本は、七カ国の中では最も大きな発言力を持った一国でございますし、ですから、この運営についてはこれからの問題でございますが、これからの世界経済安定化させる方向によりよい仕組みとして動いていくのじゃないだろうか、こういうふうに私は考えておりますし、また、そうしなければいけない、こういうふうに思います。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 それはよくわかりますよ。一国の経済というものは独立しては成り立たないし、国際協調調整というものは必要でありますけれども、経済指標についても、経済成長率とかインフレ率とか金利とかマネーサプライとか失業率とか財政赤字率とか為替相場とか外貨準備とか、いろいろな経済指標をチェックして、こうすべきだ、ああすべきだという国際監視システムができ上がったわけですから。今度の円高問題にしても、アメリカも含めて西欧は冷ややかじゃなかったですか。ですから、こういうものができ上がったら、いわゆる対日包囲網が経済的にできたというふうに解釈されても、これは無理はないと思うのですね。  その点、もう少し——善意も結構ですけれども、今度のサミットについて、総理以下大臣も含めて非常に甘いと僕は思うのですね。やはり結果が大事ですよ、どんなことがあったにしても。そういうことからして、今の問題についてもう少し説明してください。
  86. 国広道彦

    ○国広政府委員 今の先生御指摘の点、ちょっと説明させていただきたいと思います。  インフレ率とか成長率とか金利とか失業率とか、そういう指標をまずチェックするとおっしゃいましたのですが、出てくる指標というのは、現実に経済計画を立てたり見通しを立てたりするときに使っている客観的数字でございまして、目的的数字ではないというのが私どもの理解でございます。それから、同時にまた、四半期ごととか毎月とか、そこのところはまだ決まってはおりませんが、定期的に、その指標がどういうふうに現実になっているかということを点検しよう、そういう意味のチェックでございます。  そこで、そういう指標が、本来予定されていたといいますか、経済見通しなんかの時点でそれぞれの国の政府が言っていたような指標と余り違って、だんだん変なところへ行くではないかというようなときには、それを是正をするのにどういう適切な措置があるかということについてまた了解に達するような努力をしましょう、こう言っているわけでございます。それは最善の努力をするということでございまして、自動的に、そうなったらこうしなければいかぬというふうに合意をしているわけではございません。そのときは、何か皆さんが納得する是正措置があるかどうか、そこに向かって最善の努力をしてみましょう、こういうことでございます。  それからまた、全体が今すぐどういうふうに動くかということについて、必ずしも相談をした当事者がわかっているわけではございませんで、しまいにありますように、また来年のサミットのときにこういう検討をやってみた結果を報告しよう、こういうことでございます。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 何か、今度の東京サミットを成功させるために事前にアメリカ側には日本政府としては合意していた、こういう報道もあるのですが、そのとおりですか。
  88. 国広道彦

    ○国広政府委員 こういうサーベーランスの試みというのは、この前のIMF暫定委員会のとき、それからそれに先立つG10、十カ国蔵相会議合意、そういうことで既にそういう構想そのものは出ているわけでございます。それをまたどういうふうにして実施するかについては、財政金融当局者の間でいろいろと研究が行われていると聞いておりますが、そういう意味におきまして、今回の共同コミュニケで言われていることはそれの延長線にある話であって、関係者にとって新しい話ではないという認識だと私は認識しております。  それから、事前にそういう合意があったのかということにつきましては、事前には合意はなかった、したがって、直前ないし会議の場になってこれが具体的に相談されたということでございます。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカは、ベーカー財務長官なんかが、この件では物すごい百点満点以上だと喜んでいるわけですよね。去年の九月のG5での、為替安定について協調介入するということも、今度のサミットを見ますと、こちらの都合どおりはいかないわけです。ですから、こういう問題でも手かせ足かせということで、えらいことになりはしないかなという懸念があるから申し上げているわけであります。これは出てきますよ。皆さんのやり方を見ていますと、極めて甘いという感じがしてなりません。  それでは、大臣お食事に行かれるようでありますので伺いたいのですが、私は、今度の東京サミットは余りにも得るものは少なくて失うものが多過ぎたと思いますね。そう思いませんか。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 売るとか買うとかいう気持ちでやったわけじゃありませんが、私は今度のサミットでは、全体的には日本の存在というものが世界的に非常に大きくなったということを痛感もしますし、同時にまた、それだけに国際的な責任も非常に重くなってきているということも感ずるわけでございます。  いろいろと批判はあると思いますが、東京でサミットを行った、世界じゅうが注目した。特に、日本はアジアの要請を代表してサミットで大いに発言をし、サミット参加国にアジアの実情について理解協力を求めることができたというのは大きなメリットがあったんじゃないだろうか、こういうふうに思います。また経済全体も、先進国経済はよくなっていることは事実ですから、そういう中でお互い政策協調しながら経済を確実なものにしていこう、それと同時に、開発途上国に対する対応であるとか、あるいは協力関係を大いに進めていこうということも、今回の論議の中で、これは声明にもうたわれておりますが、やはり一つの大きな意味を持ったんじゃないだろうか。政治の面においても、東西関係とかテロ問題は非常にクローズアップされてきておりますけれども、原子力発電所の事故の問題で世界的な関心が原子力発電というものに集中した中で、その安全性というものについて大いに論じ合ったということ、そして声明を出したということは大きな意義があると思いますし、東西関係についても十分話し合いができた。あるいはまた地域問題についても、二国間だけではできないお互いの忌憚のない議論が、サミット諸国の間で率直に、活発に行われたということは、それなりに大きな意味があった、こういうふうに私は思っております。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に大臣に。  安倍外務大臣は、今度の東京サミットでは大変損な立場に置かれたのではないかと思うのです。こんなことを言っては大変恐縮なんですけれども、特に中曽根外交が先行し、首脳外交で円高問題についても歯どめをかけ切れない。中曽根外交の限界といいますか、スタイル外交と新聞にもあったが、この限界性。そういう中で安倍大臣は非常に損な役割をしたのではないか。総理がよく言う「戦後政治の総決算」というのはこういうものかな。決算でなくて清算でしょうかね。  東京サミットは、我が国のこれからの経済運営についても重大な曲がり角だ。それがどうもこういう形で、今までの経過はどうあったにしても、中曽根内閣いよいよ終わりの段階ですから、終わりよければすべてよしでなくて、今まではいろいろな人気があったかもしれませんけれども、東京サミットについて言うならば、これは大臣も御存じのとおり、先ほども御質疑がありましたとおり、中小零細企業は大変ですよ。これが百六十円、百五十円になりますと、壊滅的打撃を受ける相当の部分があるわけですから、そのことを考えて、格好いいことだけやって何か言われるとどうも納得がいかないんですね。そういう意味では安倍さんの創造的外交、いわゆる中東外交についてもこれからやりにくくなるわけですから、その点はいかがでしょうか。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 損とか得とか言っても、これは同じ船に乗ったわけでありますし、これはサミットも——サミットというのはまさに頂上外交ですから、頂上間で物事は決まっていくわけでございますし、そういう中で我々もわき役としてこれを助けてきた。そういう中で、やはり責任は免れるものではありませんし、私はそういう点では、同じ船に乗った一人として責任を負っていかなければならない。  ただ、はっきり中東問題、これは私も、これまで三年数カ月にわたって外務省の諸君とともに築き上げてきた大事な中東和平外交でございますから、この基本方針というものは、これはこれまでも変わっておりませんし、今後とも変えないでいかなければならぬという決意は新たにいたしておるわけであります。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、どうぞ。  国広さん、さっきのMOSS協議なんですけれども、最後の詰めに来ている。私はこの前もお伺いしましたが、いわゆるMOSS協議に自動車部品とか背高コンテナとかを入れることを正式にアメリカに通知する予定であるということですが、どうですか。
  94. 国広道彦

    ○国広政府委員 先ほど大臣もお答えしましたとおりに、今アメリカ側に対する回答部品について最終的な詰めを行っているというのが正確な答えでございます。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、それは外務省としても、最初からすべきであるという前提でおったわけですね。
  96. 国広道彦

    ○国広政府委員 御存じのとおり、MOSSは普通の交渉ではございませんで、日米間で特定の分野につきまして、市場の障害をできるだけ少なくするということについてお互いに話し合おうということでございます。したがいまして、両方でこれをやろうという合意がなければ、どの特定の部分についてやるかという合意がなければ始まらないことでございます。今、どれを取り上げるかということについて、かなり詰めた話を関係省としておりますので、ちょっとお待ちいただきたいと思います。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 今度の東京サミット関係して、失うものが余りにも多過ぎる、代償が多過ぎる。今のMOSS協議についても、私はその一つじゃないかと思うんですね。ですから、円高を何とか歯どめをかけたい、それもできなかった、テロ問題についても日本のスタンスを変えざるを得なくなって引きずり込まれた、そして、いわゆる経済運営監視機構も何か一方的な形でつくり上げられてしまった、今のMOSS協議についてもアメリカの強い要求によってそれに引きずられる、これは外交的には大失敗ですよ。そういうことをあえて申し上げて、時間が来ましたので終わります。
  98. 北川石松

    北川委員長 次に、渡辺朗君。
  99. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 まず、私もリビア問題についてちょっとお尋ねをしたいのです。ここには中近東局長がいらっしゃいますから、専門家にお尋ねをいたします。  リビアという国について、どのような認識をお持ちなのか。端的に言いますと、今日の世界政治の中で狂犬のように言われていたりいろいろ言われますけれども、日本政府としてはどのように認識しておられるのか、これをひとつ教えていただきたいと思います。
  100. 三宅和助

    ○三宅政府委員 日本政府から一国に対する全般的な評価を、この国はどうであるかと言うことは必ずしも適切でないかと思いますが、ただ、事実関係を申し上げますと、既に大臣が申し上げましたように、日本リビアとは、昨年、その当時の外務書記であるトレイキさんが参りまして、安倍外務大臣とも十分話し合った関係にございます。ただ、この問題と、国際テロに関する関与という問題は別でございます。英米は外交関係を切っておりますが、日本は外交関係を持ち、大使はカダフィさんとも十分話し合うといりことでございます。
  101. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、アラブ世界の中で、リビアという国はどういうようなスタンスをとっているのでしょうか。
  102. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず、中東諸国を普通色分けされておりますのが、リビアとシリアとイランは友好関係にある、それから、それ以外の国は余り友好的な関係にないということは一般に言われております。ただし、中東和平そのものにつきましては、あくまでもアラブの大義、パレスチナ人の民族自決権を認めるという点におきましては、アラブの国は一致しております。イラン・イラク戦争につきましては、御承知のようにシリアとリビアがイランを支持し、それ以外の国が一般的にはイラクを支持しておるということでございまして、各問題によりましてそれぞれの国が立場が違います。したがいまして、必ずしもすべての面でアラブ諸国一致しているということではございません。中東和平問題につきましては一致しております。
  103. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 テロリズムとリビア関与の仕方の問題、この根本的な理由といいますか、背景はどこにありますか。これは、例えばアラブ原理主義というようなものから発生してきたのでしょうか。それとも、パレスチナの難民の問題、パレスチナの人々の問題というところから、いわゆるアラブの大義ということで問題が出てきているのでしょうか。そこら辺の認識を教えてください。
  104. 三宅和助

    ○三宅政府委員 中東における国際テロリズムの中には、種々の原因があるかと思われます。一つは、いわば国家利益を追求するための手段としての国際テロリズムもあると思いますし、また、アラブの大義と申しますか、パレスチナ人の民族自決を追求するための一つの手段として武力闘争ということを挙げておりますが、これにつきましては、アラブの国は多かれ少なかれ、これは国際テロリズムではない、これは武力闘争の一環である、例えばPLOなどはそういう立場をとっております。そのあたりが非常に難しいところでございまして、いわゆる民族解放闘争と申しますか、そういうアラブの大義の手段としての武力闘争なのか、一般市民を巻き込む国際テロなのかということで非常に分かれております。  確かに一つ認識といたしまして、例えばレバノンなどにおきましては、いろいろなテロの形態によりまして原因が変わってくると思います。国家利益の追求のための一つの手段としてもあり得ましょうし、あるいはアラブの大義の実現のためだという説明をしている場合もございます。ですから、中東和平の進展というものが、少なくともいわゆるテロの減少につながっていくという認識は我々も持っております。
  105. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 基本的な認識をいろいろ教えていただいて、その後、外務大臣がいらっしゃいましたら質問をして、どのように判断をしておられるのか、お聞きしたいなと思うのです。  それで、もう一、二ちょっと中近東局長にお答えをいただきたいのですが、このサミットの宣言が発せられた後、そしてリビアの国名が名指しで記載されたということについてリアクションは、具体的にはどんなものが今起こっておりますか。
  106. 三宅和助

    ○三宅政府委員 現在のところ新聞紙上その他におきまして、諸外国でございますが、また同時に大使館に対して具体的なアプローチはございません。ただ一つリビア新聞でございますが、カダフィの一つ立場として、日本人民の抵抗に遭ってサミットは不成功に終わった、日本人民の抵抗に遭ってサミット、特にアメリカの意図するところは失敗に終わったというのが新聞で出ているという報告を受けておりますが、それ以外につきましても、通常私どものところに各在京の大使が説明を求めてくることになっておりますので、きょう、あすじゅうに来ると思います。また現地でリアクションが出てくるかと思いますが、現在までのところまだリアクションは出ておりません。
  107. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 在留邦人、これの滞在許可の問題とか、あるいは新規に渡航の場合ビザ発給の問題はどうなっておりますか、あるいは貿易関係はどうなっておりますか。
  108. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず、貿易関係につきましては、リビアとの貿易は輸入はほとんどございません。これは三年ほど前から長期契約が、石油が切れまして輸入が全くないという関係からでございまして、輸入はほとんどゼロに近い状況でございますが、輸出の方につきましても、諸外国と比較しますと非常に少のうございまして約二、三億ドルの輸出でございまして、全体のリビアの輸入からいたしますと日本からの輸入は二、三%でございます。  それからビザの関係につきましては、本省経伺ということでその都度審査してビザを出しております。
  109. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 リビア政府は新規に日本人に対してビザ発給停止ということが、カダフィ大佐の直接の指令で行われ始めたのではないですか。事実関係を教えてください。
  110. 三宅和助

    ○三宅政府委員 そういうような情報が入っておりますが、現実にそうなっているかどうかということでございますが、またその理由につきましても詳細承知しておりませんので、現在照会中でございます。
  111. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それから、貿易関係の方も今まで小さいということを言われました。確かに、今日の状況では今までは小さいと思います。しかし、先般来いろいろ話し合いも行われているし、経済協力、技術協力、そういうものを進めよう、あるいは合同委員会もつくっていこうというような動きがあったやに聞いております。そして、輸銀の融資も行われるという話も来ております。そういったものは、今度のこの事態を契機に御破算になるというようなことが予想されるのではないでしょうか。
  112. 三宅和助

    ○三宅政府委員 今回の国際テロの一環としてとった行動は、あくまでも国際テロ防止するための一環として、いわば予防措置としてとったということでございます。片や経済関係につきましては、御承知のとおり、一月に米国の経済制裁が発表されたときに、日本としては米国のこういう一連措置の結果、それを損なうようなことはしないという方向で検討するということでございまして、それ以降の状況は、全く一月以降も現在も立場につきましては変わっておりません。
  113. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 中近東局長、ありがとうございました。ただ、今申し上げた例えばビザの新規発給、これの停止というようなことは私ども聞いておりますので、すぐ確認をとっていただきたい。それから在留邦人に対しての滞在許可延期、これも行わない、こういう措置も講じられつつあるという情報も入ってきております。私ども民間におりますから、それは政府の方が先に事実関係を発表していただかなければ困ると思いますので、ひとつ調べていただきたい。お願いをいたします。  さて、それでは外務大臣、お願いをいたします。  今いろいろとリビアの国際政治の中における位置づけとかあるいは日本政府認識アラブ世界の中におけるリビアの地位というようなことをお聞かせをいただきました。リビアという国を考えた場合に、今御説明があったのでは、シリアがありあるいはまたイランとの結びつきが強い、こういうような一つの大きな政治勢力というか、そういうものを持っているというふうに考えられます。ですから、貿易量が小さいとか大きいとかということで判断してはならないと思いますし、中近東政策に対する今回のサミットの宣言というものは、私は大変重大な意味合いを持ってくると思います。  ところで安倍大臣は、今日まで意欲的に中近東の和平問題に取り組んでこられましたし、私ども高い評価をしておりましたし、期待もしておりました。それだけに心配するのでありますけれども、これからの中近東外交というのは今までの御説明だと、日本側は多数派に押し切られた形で、やむなくああいうふうな宣言に同調したというようなことを説明されたようにお伺いをいたしましたけれども、中近東の国々アラブ諸国国々一は、そのように必ずしも受け取らないのではないか。そうすると、大臣の考えておられます中近東に対する和平交渉の推進ということは、選択の幅が大変小さくなるということを懸念しますが、大臣はどのように考えておられますか。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の問題、特に声明についての我々の考え方についてはもう御承知のとおりでありまして、国際テロに対してはこれは断固として防止措置を講じなければならぬ、協力しなければならぬということでやったわけで、決してアラブ諸国対象にしたものではないということは申し上げたとおりでありますし、また、中東政策は変わらないということも申し上げたとおりでありますが、中東諸国のとらえ方はその点については非常に現実的でありますし、また、非常に冷静ではないだろうかと思っております。我々がつき合った面においてもそうでありますし、要するに日本の国際的な位置づけというものを中東国々は一番よく知っておる、私はそういうふうに思っております。  ですから彼らとの話で、例えば日本アメリカとの関係日米関係というものについては、中東のすべての国は我々が話した中においても十分知っております。そういう上で日本外交政策というものを評価しておるわけでございますし、また基本的には日本との長い歴史の中で手が汚れていないというのが、彼らの日本に対する大きな評価であった、こういうふうに思います。  そして日本は、やはり日米安保条約等結んでおるし、日米関係は同盟関係でありながら中東政策については一味違った政策を持っておるし、また、これを進めてきておるということについては十分承知しておる。また日本役割が、中東和平あるいはイラン・イラク和平にとって非常に大事な役割を果たすことになるということも、中東諸国それなりの評価があるのではないか、私はこういうふうに考えておりますし、そうした考えは今日のこのサミット後の状況を踏まえても変わらない。これからも私たちは、十分アラブ諸国には日本の真意というものを説明して、そして日本役割を十分果たしていきたい、こういうふうに思っております。
  115. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 前回大臣に私、この当委員会でお尋ねをいたしました。リビアテロリストに関与する国家あるいはテロリスト国家というふうに認識されるのですかとお尋ね申し上げたのですが、そのときお答えいただいた点は、アメリカや何かの方がそのように説明しているというふうなことでございました。大臣認識は示されませんでした。今回は認識を深めたということでございます。そうすると前回立場が違ってきていますね。この点がまず一つ。  それから、今回リビアという国名を特に名指しで記載されたという点は、多数の国々が、あるいは首脳がそういうふうに言うんだから、議長国として取りまとめ上というふうな説明がございましたけれども、認識を深めたということと議長国としての取りまとめ役というのはちょっと違う次元の話なんですが、これはどういうふうに論理的に構成されますか。そこら辺御説明をいただきたいと思います。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 認識を深めたということは、サミットの前の時点におきましてアメリカさらにヨーロッパ国々から、ベルリンのディスコの事件等々について詳細な説明が実はあった。非常に詳細な説明外交ルートを通じてあったわけでございます。やはりそれぞれ信頼をする国々説明でございますし、具体的にそれほど説明を受けた側として、その限りにおいてはリビア関与というものについて認識を深めざるを得なかったということで、報道官談話を発表させたわけでございます。  そういう意味では、その以前に行われました当委員会答弁では、そういう説明も十分聞いておりませんでしたので、一応の説明程度で我々として日本立場をはっきりするわけにはいかないということでお答えをしたわけでございますが、あれほどの詳しい説明を聞いてそれが信頼すべき筋にあるということになれば、これははっきり日本としての立場を明らかにしなければならぬということで、認識を深めたという政府姿勢をはっきり打ち出したわけでございます。  同時に、リビアという文字、国を共同声明の中に入れたことについては、これは首脳会議で行われたわけでございますし、我々は外務大臣会議をやっておるわけでございますが、私の承知する限りにおきましては、各国ともその点については完全に意見一致を見たということであります。もちろん、日本議長国として各国意見も聞くし、同時に日本自身の判断もあって取りまとめをした。ですから、日本としてこれは押し切られたとか、日本は嫌だけれども最終的にそういうふうに持っていかれたとか、そういうサミットが終わった後に議長国としての、サミット参加国としての責任を転嫁するようなことは、私はむしろ言いたくないわけでありまして、これは議長の責任において、また日本の国として、政府としての判断に基づいて声明に盛ることにいたした、こういうことであろうと私は思います。
  117. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大臣、そうするとこれは重大な問題ですね。みずからの決断で、リビアを名指しで非難するという行動をとったということであります。そうすると中近東に対する政策は、これから変わってくるというふうに判断せざるを得ないと思うのです。何となれば、今までの説明でもそこにはシリアあるいはイランというものが横に並んでいる、リビアとの関係ではそこに一つの同盟関係といいますか連帯みたいなものがある。大臣は、今日までイラン・イラクの間を取り持って、和平交渉を成り立たせようという努力をしてこられた。これを放棄することにもつながってくるのじゃないでしょうか。具体的にお尋ねいたしますけれども、ではこれからリビアに対しては、制裁措置を何らか講ずるという用意はお持ちでございますか。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、制裁措置ということで決まっておるわけではありません。防止措置という形で一つの取り決めがあるわけでございますが、そうしてそれはあくまでもその国の立場の枠内において、このサミット声明に基づいて自主的な判断で決めていくわけでございます。したがって、リビアについてはこれからどうするかということは、今後の検討の課題でございます。  しかし言えることは、リビアとの武器の交流はございませんし、武器を輸出するということは、リビアだけでなくてその他の国にもないわけでございます。その他、今日本リビアの間に存在している外交関係日本におけるところのリビアの外交官の駐在も、西欧諸国と比べますと非常にわずかな存在でございます。それからまた、今リビア日本との間に具体的に何が起こっておるかといって、国内でそれでは何か起こっておるというふうな問題もございません。そういうことは全体的に判断をして、そしてテロ声明を踏まえた形で日本独自の判断で決めていくべきことであろうと思っております。  なお、中東政策が変わっていくんじゃないかと言われました。私は、少なくともサミットテロ声明に参加した国として、その辺の経緯は別にしまして、これは責任を免れるものではないと思います。そういう意味で言ったわけでございまして、その間の、どういう形でこういうふうなあれができたかということについては、具体的には申し上げることは差し控えた方がいいんじゃないか。しかし、参加したことは事実でございまして、その限りにおいては責任を持たなければいけない。  しかし同時に、これは中東全体あるいはまたアラブ全体に対して言っているわけではありませんで、またアラブのその他の国々対象にして言っているということでもございません。したがって、我々は世界じゅうのテロを支援する、あるいはテロを行う国に対する防止措置としてこれを打ち出しているわけですから、我々としての中東政策とかあるいはアラブ政策というものとテロ声明というのは次元が別だ。ですから、我々としてはこの政策を変える必要はないし、今後とも変える考えはないということを申し上げておるわけであります。
  119. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間があればその点もうちょっといろいろ深くお伺いしたいのですが、残念ながら時間がありません。したがって最後に、外務大臣がこのサミットを終わりましてから——今来られましたので改めて申し上げますが、御苦労さまでございました。サミットが終わりましてから、六日の夕方に記者団に対しましてこのように外務大臣言っておられる。サミット後の政局の運営については、内外ともに厳しい状況になってくるものと思う、みんなで乗り切っていかねばということをおっしゃった。この場合の内外というのは、どういう問題を指しておられますか。まず外の方だとどんなことでしょう、内の方だとどんなことでしょう、そこら辺をひとつおっしゃってください。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全体的な感じとして、私もサミットで随分参加国の外務大臣と議論をいたしました。それぞれみんな深刻な国際問題あるいは国内問題を抱えておるわけでございますし、また日本日本立場で、アジアの情勢等につきましていろいろと説明もいたしたわけです。私は決して、非常に安定していると言えるような状況でもないように思っております。肝心の米ソの首脳会議一つをとってみても、アメリカの話を聞いてもなかなかこれは、まだ見通しがはっきりしないような状況であります。あるいはまた我々の立場から見ますと、朝鮮半島の状況であるとかあるいはフィリピンの情勢であるとか、日ソ間にもいろいろの問題がまだ残っておる、こういうふうなこともあるわけでございまして、対外的にもいろいろと、それぞれの国がやはり問題を持っておる。そして一緒に集まって話をすると、世界情勢はそう簡単にいかない、容易でないという感じをひとしお持つわけです。  国内的にも御承知のように円高の問題、円高がこのまま進行していくとなると、これは日本経済にとっても大変大きな影響といいますか、打撃が生まれてくることは事実。これ一つとってみても大変なことになっていくであろう、私はこういうふうに思いますし、国会も終盤に近づきましていろいろな問題が山積をしてきた、これをどういうふうに処理していくか、そういうこともあるわけでございます。参議院選挙も近づいておる、内外ともにそういう意味では厳しいと言わざるを得ない、こういうふうに思うわけです。
  121. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうしますと、普通ならサミットなどというようなイベントが終わりますと、厳しいだろうけれども回るい展望が開けたとか、前向きのお話が出るものでありますが、これは結論的に残念ながら明るい状況はなくて、逆に厳しいものの方がたくさんふえてきたというふうな御判断をされたというふうに受け取ってよろしいですね。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サミットにおきまして、世界の経済、特に先進国の経済状態が回るい方向に移ってきているという点では意見一致もしましたし、また、これからさらにそれを進めていくための経済協力、構造政策調整、そういうものも進めていかなきゃならぬということでは大いな前進があったと思います。しかし、東西関係その他の地域問題等は、それでは去年からいってことしが大きく前進したかというと、必ずしもそうでない面もあるわけでございますし、サミットとは別にして、国内的にもいろいろと問題を抱えていることも事実ですから、決してサミットが成功したとか成功しないとかいう問題じゃなくて、私の時局認識としてサミットを終わるに当たって、サミットサミットなりの役割を果たしたけれども、しかし内外ともにやはり情勢は厳しい、こういうことを申し上げたわけです。
  123. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 残念ながら、期待する成果を上げ得なかったという御判断をお持ちだなという感じが私はいたして、今のお話を伺った次第でございます。ありがとうございました。
  124. 北川石松

    北川委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  125. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今回のサミットというのは、国際平和年に開かれたという点で特色がありますし、また被爆国日本で、そして日本議長国になって行われたという点でも大きな特色があろうと思うのです。国際平和年の宣言には「核の脅威を含む平和に対する種々の脅威の除去」、こういう文章もうたわれています。そういう点では、今回出されました政治宣言には核兵器の廃絶という言葉は一言もない。これはなぜでしょう。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今次サミットにおきましては、東京宣言にもありますように、米ソ軍備管理交渉に関し米国の交渉努力を評価するとともに、ソ連もまた積極的に交渉するよう呼びかけることで合意をしたわけです。我が国としては、核兵器の廃絶に向かって具体的に平和と軍縮を前進させるべきであるということを主張したことは、これはそのとおりでございます。いずれにいたしましても、そうした東京宣言で、米ソの軍備管理交渉を推進しなきゃならぬ、これまでの米国の交渉努力も評価しよう、同時にソ連も積極的に対応するように呼びかけたわけであります。米ソの首脳会談は、結局、核の廃絶ということに向かって両国の首脳が、核戦争には勝者もなし敗者もなしということを言っておるわけで、そういう方向に進んでいくわけですから、具体的に米ソの首脳会談が行われるということを呼びかけたことは、その前提、背景日本のそうした核廃絶に向かっての気持ちというものが反映されている、こういうことであります。
  127. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 気持ちは反映されていると言いますけれども、文章にはない。どの程度の努力をされたのでしょう。つまり、日本の総理としてあるいは外相として、被爆国日本で国際平和年の年に行われるそういう重大な東京サミットでございますから、ここに核兵器廃絶の言葉ぐらいは明記するように努力されるのが当然じゃないかと思うのです。しかし、ない。そういう政治合意のためにどういう努力をされたのか、具体的にお答え願いたいと思います。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理大臣は、平和と軍縮の問題については特に自分から発言し、核兵器の廃絶に向かって具体的に平和と軍縮を前進させるよう、また、特に第二次の米ソ首脳会談が行われるようにレーガン大統領に対して自分から何回も要請した、核軍縮が具体的に進むよう協力することで皆の意見一致した、こういうことを記者会見でも言っておりますが、まさに私が先ほど申し上げたとおりであります。
  129. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 記者会見で言われるだけで実際上文書に明記しなかったというのは、やはりそういう努力が弱かったということのあらわれではないか。そういう姿勢では困ると思うのですが、その反面、政治宣言の中には「抑止しうる強力で信頼性ある防衛力を維持する」、これが非常に強く指摘されているわけです。この強力なという言葉は初めてサミットの文書に出てきたように思いますが、この抑止し得る独力な防衛力というものの中にはSDIも含まれるのでしょうか。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 東京宣言でありますが、今御指摘されました表現は参加各国の一般的決意を確認したものであって、我が国にとり新しい防衛政策を決めたものでないことはもちろん当然のことです。我が国が引き続いて日米安保体制を堅持するとともに、自主的判断に基づいた自衛のための必要最小限の防衛力の整備を行っていくことは、我が国の基本の考えである。御承知のとおりであります。
  131. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍外相、私が聞いたのは、SDIも含まれるかと聞いているのです。これへの参加の動きもいろいろ報道されていますし、そのことなどを含んだ言葉がということです。
  132. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  SDIについては委員承知のとおり、米国において非核の防衛手段ということでそういうSDIというものが、技術的にそして戦略的に可能かどうかということを研究している段階でございまして、それの配備というか、その最終的な配備の決定をするかしないかという時期は一九九〇年代の中ごろというように言われているわけでございまして、米国自身がSDIをやるかやらないかということについても今申しましたように決めてないという段階でございますので、この文雄に想定されている中では、SDIというのは明確な意識としては入っていないというように承知しております。
  133. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、ここに書いてある「抑止しうる強力で信頼性ある防衛力」の中にはSDIは入っていないというように明言されましたね。よろしいですね、それで。簡単にお願いします。
  134. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 私自身、この宣言の起案に若干関係したわけでございますが、その議論の過程においてはSDIということは触れられたことがございません。
  135. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 したがって、入っていないということでしょう。  それではもう一回聞きます。安倍外相は日本の防衛問題についても触れられましたけれども、アメリカの方の強い要請で防衛大綱の見直しの問題、さらに別表を変えるという問題等が強く要望されてきていたわけです。これは日本の軍備拡大につながるわけですけれども、こういう問題はここの中には具体的に含まれていないというふうに見てよろしいですね。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 東京宣言は読んで字のごとしてございます。それ以上のことは何も含まれておりません。
  137. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いずれにせよ、こういう形で核兵器廃絶という問題を明確にしないばかりか、西側同盟国の軍拡を一層促進するような内容、私はこれは非常に国民にとっては問題の多いサミットであったということを指摘しておかなくちゃいけないと思うのです。  リビア問題について触れますけれども、私どもは、無差別に犠牲を引き起こす国際テロについては当然反対だし、そういう国際的なテロ防止措置をとるように一貫して主張しているわけですけれども、しかしテロ防止の口実で武力行使を容認するということは、これは許せないと思うのです。四月の日米首脳会談の後、アメリカリビア爆撃に対して政府は、アメリカなりの事情を理解する、そういうふうに言われましたし、その後は同情の表明もされましたね。また、きょうずっと安倍外相の答弁を聞きましたけれども、リビアを名指しで非難した国際テロに関する声則、これを客観的に読みますと、さらに一歩進めてアメリカリビア爆撃を公式に支持するような内容になっていると思うのです。  テロと軍事報復、この悪循環、私たちは双方とも許してはいけないと思うのですけれども、テロ防止についてはこういう形で国際的に一致を見ているわけですけれども、もう一方の軍事報復、武力行使を非難しないというのは一面的じゃないか。双方ともこれは私たちはよくない、非難すべきであるというふうに思うわけです。これはどうしてでしょうか。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この国際テロを排撃して、これに対して防止をするということについては、サミット参加国意見が完全に一致をしたわけであります。そして、テロ防止するためにどういう措置をとったらいいか、これまでの防止宣言その他の宣言を踏まえて、そして今度の宣言に盛り込まれたような防止措置が組み込まれたようなわけでございます。  ただ、リビアに対するアメリカの攻撃をどういうふうに評価するかということについては、これは各国それぞれの対応があるわけで一致しておりませんから、したがって、サミットにおいていろいろともちろんこの点について各国の見解は述べられましたけれども、一致した見解として出ているものはありませんし、また、一致しない以上はサミット合意にはならないわけであります。
  139. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それではお聞きしますけれども、西ドイツで起きたディスコ事件リビア関与したということについては詳細な説明を受けた、認識を深めたというふうに外相おっしゃいました。それでは、もう一方のアメリカリビア爆撃について、なぜ詳細な説明を受けないのか。大臣は、詳細な説明を受けてないので申し上げる立場にないというふうに答弁なすっていますけれども、当然リビア爆撃についても詳細な報告を受けてよかったのではないか。受けられていますか、受けられていないのか。努力をされたのか、されなかったのか。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ベルリンのディスコに対するテロだけじゃなしに、その他のテロ事件、連発しておりますが、そういうテロ事件についてその背景あるいはまた経緯、関係関与等について、アメリカ政府さらにまたヨーロッパの諸政府から詳細かつ具体的な説山を受けました。その結果として日本政府としてもリビア関与している、こういう認識を深めざるを得ない、こういうことでその趣旨の発表をいたした次第であります。  それから、アメリカリビア攻撃につきましては、これはアメリカが爆撃したとき、ちょうど私もアメリカにおったわけでございますし、アメリカが攻撃をしたということについてはアメリカから説明を受けております。そしてまた、アメリカは自衛の措置をとったわけである、自衛の手段に出たものである、こういう点についての説明は受けたわけでございますが、これについては詳細を知るに至っておりませんし、したがって判断は我々としてはできないというのが日本立場である、これは今日に至っても変わっておりません。
  141. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 国際テロについては詳細な報告を受けた、アメリカリビア爆撃については詳細な説明を受けてないので判断できない、これではやはり一面的だと思うのですね。アメリカと会っているわけですから、当然その情報についても説明を受けるべきであったというふうに思うのです。  今、大臣は、リビア爆撃についてアメリカが、自衛上の措置だということについてわかった、また同情を示したということも報道されていましたけれども、国連憲章の五十一条に基づく自衛権の行使というのは三つの厳しい要件があるわけです。御承知のとおりですけれども、一つは急迫不正な侵害であること、二つは他に手段がないということ、三つ目には最小の対抗措置であるということ、この三つの要件に照らしてアメリカリビア爆撃のどこが自衛上の措置として同情できるのか、理解できるのか、お答え願いたいと思うのです。
  142. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいまの御質問につきまして、先ほど外務大臣がお答えしたことを若干補足する点も含めてお答えしたいと思います。  委員が御指摘になりましたように、現在の国連憲章のもとにおきまして許される武力行使というのは、安保理の決定の場合以外は自衛権ということでございますし、自衛権については先ほど御指摘のあったようなことが要件とされるということは、一般論としてそのとおりでございます。  そこで、今度の場合について私どもが従来から申し上げておりますのは、要するにアメリカ側説明によりますと、一連の同じパターンの事件が継続して繰り返されておりまして、そういう状況の中においてアメリカが必要最小限度のこれを阻止する行動をとらなければ、アメリカに対してさらにテロ的な実力行使が加えられるおそれがある、そういう状況においてこういう措置をとることが必要であった、こういうのがアメリカが力説している説明であるというふうに理解をしているわけでございます。  先ほども大臣がお答えいたしましたように、私どもといたしましては、そういう欧州における一連テロ行為に対して果たしてリビア関与していたのかどうかというようなこと、あるいはさらに今後リビアが具体的にどういう行動をどういう形で計画をしておるのかということがわからなければ、最終的な判断をすることはできないということで、私どもとしては、政府としての確定的な判断を申し上げる立場にはない、こういうことを申し上げてきたわけでございます。  つまり、自衛権の問題につきましては、そういう要件が満足されるような状況があるかどうかという一般論と、それから具体的な事実関係がそういうものを正当化するに足るものであるかどうかということの二つの面があるわけでございますけれども、アメリカ側の自衛権についての説明について、もちろんこの事件に直接私ども日本がインボルブされているわけではございませんので、そういう意味におきまして直接の当事者ではないということもございまして、事実関係の詳細について正確に把握する立場にはない、こういうことであったわけでございます。  その後、米国からリビア関与しておったということについては、さらに非常に具体的かつ詳細な説明を受けましたので、その限りにおいて私どもとしては、このリビア関与ということについては認識を深めたわけでございますけれども、自衛権の要件を最終的に満足しているかどうかということになりますと、先ほど来申し上げておりますような事実的な関係と、それに対する法理的な問題というものを総合的に判断をして判定しなければならないわけでございまして、そういう意味日本として最終的な判断をするような立場にはない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  143. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今の話によっても最終的な判断をすべき立場にないということですが、連続してそういうテロ事件が起こったからといって他に手段がないわけじゃないわけですね。武力行使というのが最小限の措置であるということは、とんでもないことなんです。こういうことなどについては、アメリカ側にもっと説明を求めるべきだったと思うのです。とにかく国際テロと侵略行動、ともに許すべきじゃないのであって、片方の国際テロについては防止についてやるけれども、アメリカ側リビア爆撃等については黙認しておく、同情を示す、これはアメリカ追随外交と言われても仕方がないと思うのです。  時間がもうなくなってきましたから、最後に円高問題について触れていきますが、この円高政策をとっているのは結局は日米貨易摩擦からきているわけで、日米貿易摩擦の原因というのはよく言われているように、アメリカの方では大軍拡と財政赤字による高金利なんです。日本では、低賃金と下請企業の犠牲による大企業の異常な国際競争力だというふうに思うのです。この原因にメスを入れないと根本的な解決はつかない、やはりそこに目を向ける時期に来ておるように思うのです。アメリカに対して軍事費削減による今の赤字解消の問題等について、安倍さんは何回もシュルツさんその他に会っていますので、こういう問題提起はなさっているでしょうか。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ自身の問題として、アメリカが財政赤字等を解決するためのいわゆる財政均衡法等に従って今努力しております。また、アメリカ経済は今非常に上向きになっておるということも、これは事実であります。それぞれの国の政策というものはあるわけで、お互いにこれを尊重しながら相協力していくということが日米間にとっては特に必要であろう、こういうふうに考えます。
  145. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 各国政策、それぞれあったにしても、やはり赤字の原因がアメリカの大軍拡にあるということなどは率直に指摘すべきではないか、そういうふうに思うのです。  それで、経済宣言に書かれている各国経済政策を監視する機構、これは内政干渉的な仕組みになる懸念が表明されています。特に日本に対しては、それが向けられてくるのではないかという懸念が大きいわけです。これでは日本経済主権そのものが侵されることになるわけですが、大臣、その点についていかがでしょう。
  146. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サミット参加国お互いに主権という面については非常に厳しい判断を持っております。したがって、主権の侵害とか主権の介入ということに対しては、各国とも毅然とした姿勢サミットにおいても論議をしております。したがって、主権を侵害するとか干渉するとか、そういうふうなことはサミットの取り決めの中でもないわけでございます。  ただ、協調ということになると、これは今の国際経済情勢から見て、経済政策協調というのは非常に必要だということをみんな認識を深めてきておる。その政策協調は必要だ、あるいはまた構造調整が必要だ、そういう面から今日のG5からG7に発展した、そうした枠組み合意をされた、こういうふうに見ておりますし、これが直ちに内政の干渉につながるというふうには思いませんし、日本を特別にターゲットにした、こういうことでも決してない、私はこういうふうに思っております。
  147. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 リビア問題をとりましても円高問題をとりましても、結局アメリカに押されっ放してはありませんか。これでは日本国益は守れないと思うのです。ロン・ヤス関係を言うならば、やはりもっと日本の自主的な立場を強く主張する関係であってほしいと思うのですが、今回の東京サミットに見られるロン・ヤスというのは、ロンの言うことだったら何でも受け入れるという形になっていること、こういう点を私たちは厳しく批判するものであります。  もっと質問したいのでありますが、時間が来ました。やむを得ませんから、これで終わります。      ————◇—————
  148. 北川石松

    北川委員長 次に、雇用政策に関する条約(第百二十二号)の締結について承認を求めるの件及び人的資源の開発における職業指導及び職業訓練に関する条約(第百四十二号)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  両件に対する質疑は、去る四月二十五日に終了いたしております。  これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、雇用政策に関する条約(第百二十二号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  149. 北川石松

    北川委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、人的資源の開発における職業指導及び職業訓練に関する条約(第百四十二号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  150. 北川石松

    北川委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 北川石松

    北川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  152. 北川石松

    北川委員長 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本政府中華人民共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。     —————————————  原子力の平和的利用における協力のための日本   国政府と中華人局共和国政府との間の協定の   締結について承認を求めるの件     〔本場末尾に掲載〕     —————————————
  153. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本政府中華人民共和国政府との間の協定の結納について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、中華人民共和国政府との数次にわたる交渉を経て、昭和六十年七月三十一日に東京におきまして、我が方私と先方呉学謙国務委員兼外交部長との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定の主な内容としまして、両国政府は、専門家及び情報の交換、核物質等の供給並びに役務の提供等について協力することとなっており、この協定に基づいて受領された核物質等は、いかなる核爆発装置の開発または製造のためにも、また、いかなる軍事的目的のためにも使用してはならないこととなっております。また、このため、両国政府は、この協定に基づいて受領された核物質等に関し、国際原子力機関に対し保障措置を適用することを要請することとしております。  この協定を締結することは、日中間の協力の分野を広げることになり、日中関係を長期にわたりより安定的に発展させることに資するものと考えられます。また、この協定は、我が国として中国に対する原子力発電に関連する食器材等を輸出することを可能にするものであり、さらに、核拡散防止条約の非締約国で核兵器国である中国との間で、国際原子力機関の保障措置の適用に関する規定を含む協定を締結することは、核不拡散のための国際的努力に資するとの点からも意義は大きいものと考えられます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  154. 北川石松

    北川委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る九日金曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。      午後一時四十九分散会      ————◇—————